説明

経鼻デリバリー用組成物

カンナビジオールおよび酢酸グラチラマーの組み合わせと医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液体媒体と水混和性有機溶媒との組み合わせを含む水性媒体による生物活性物質の皮膚および細胞膜へのデリバリー(送達)が、本技術分野において記載されてきている。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、リン脂質およびエタノールを含む水性輸送システム(これらの成分の重量比は40:1〜1:20)が記載されている。
特許文献2には、リン脂質、エタノールおよび水を含んでなる溶液(それぞれの重量比は10:16:74)が記載されている。
【0003】
特許文献3、特許文献4および特許文献5には、エタノール存在下でベシクル(エソソーム)を含む水性組成物が記載されている。
特許文献6には、鎮痙剤の経鼻粘膜への投与に適した担体が記載されている。この担体の有機溶媒含量が比較的高いようである(30〜60%のエタノール、30〜60%のプロピレングリコール)。
【0004】
特許文献7には、活性物質の鼻内投与に適したベシクル組成物の製造における、リン脂質、1以上のC〜Cアルコールおよび水の使用が記載されており、当該組成物中のリン脂質および1以上のアルコールの濃度は、それぞれ0.2〜10重量%および12〜30重量%の範囲であり、当該組成物の水の含量は30重量%以上である。記載を通して、材料の濃度は、組成物の全重量に対して示されている。
【0005】
特許文献8には、多発性硬化症の治療のためのカンナビジオールの使用が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP158441
【特許文献2】米国特許第5711965号
【特許文献3】米国特許第5540934号
【特許文献4】米国特許第5716638号
【特許文献5】WO03/000174
【特許文献6】米国特許第6627211号
【特許文献7】WO2007/043057
【特許文献8】米国特許第6410588号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、カンナビジオールと酢酸グラチラマーとの組み合わせおよび医薬的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。好ましくは、本発明の担体は経鼻投与または非経口投与に適する。したがって、本発明の担体は、液体形態(粘性液体を含む)または半固体(例えば、ゲル、クリーム)であってもよい。これについては、水、1以上のC〜Cアルコールおよびリン脂質を含む担体が特に適していることを見出した。カンナビジオールおよび酢酸グラチラマーは、好ましくは、相乗的に有効な量で組成物中に含まれる。さらに具体的には、カンナビジオールおよび酢酸グラチラマーの濃度は、それぞれ0.5〜40%および0.5〜30%の範囲にある。
【0008】
最も好ましくは、本発明は、酢酸グラチラマーとカンナビジオールとの組み合わせ、ならびに、30重量%以上の水、12〜30重量%のC〜Cアルコールおよびベシクル構造にされた0.2〜10%のリン脂質を含む担体を含んでなる、鼻内投与に適した医薬組成物に関する。C〜Cアルコールは、好ましくはエタノールである。好ましくは、本発明の組成物は、1〜30重量%の範囲の濃度でポリオール、より具体的には、プロピレングリコールをさらに含む。カンナビジオールおよび酢酸グラチラマーを含む本発明の組成物は、多発性硬化症の治療に適する。
【0009】
また、本発明は、多発性硬化症の治療のための経鼻投与または非経口投与可能な組成物の製造における、カンナビジオール、酢酸グラチラマーおよび医薬的に許容される担体の使用に関し、好ましくは、当該担体が、リン脂質、1以上のC〜Cアルコールおよび水を含み、当該組成物中のリン脂質および1以上のアルコールの濃度がそれぞれ0.2〜10重量%および12〜30重量%の範囲であり、当該組成物の水の含量が30重量%以上である。好ましくは、C〜Cアルコールはエタノールであり、本発明の組成物はプロピレングリコールなどのポリオールをさらに含んでもよい。
【0010】
また、本発明は、ジアゼパムおよびフェンタニルからなる群から選択される少なくとも1の有効成分とジクロフェナクとの組み合わせ、および、30重量%以上の水、12〜30重量%のC〜Cアルコール、0.2〜10%のベシクル構造にされたリン脂質を含む担体を含んでなる、鼻内投与のための医薬組成物に関する。好ましくは、当該組成物は、ポリオール、より具体的には、プロピレングリコールを、1〜30重量%の範囲の濃度でさらに含んでもよい。
【0011】
また、本発明は、疼痛治療のための経鼻投与可能な組成物の製造における、ジアゼパムおよびフェンタニルからなる群から選択される少なくとも1の有効成分、ジクロフェナクおよび医薬的に許容される担体の使用に関し、好ましくは、当該担体がリン脂質、1以上のC〜Cアルコールおよび水を含み、当該組成物中のリン脂質および1以上のアルコールの濃度がそれぞれ0.2〜10重量%および12〜30重量%の範囲であり、本発明の組成物の水の含量が30重量%以上である。好ましくは、C〜Cアルコールはエタノールであり、当該組成物はプロピレングリコールなどのポリオールをさらに含んでもよい。
【0012】
他の側面において、本発明は、治療的有効量のブロチゾラムまたはその医薬的に許容される塩、リン脂質、1以上のC〜Cアルコールおよび水を含んでなる、不眠症治療のための医薬組成物に関し、当該組成物中のリン脂質および1以上のアルコールの濃度がそれぞれ0.2〜10重量%および12〜30重量%であり、当該組成物の水の含量が30重量%以上であり、当該組成物中でリン脂質がベシクルを形成している。好ましくは、C〜Cアルコールはエタノールであり、本発明の組成物はプロピレングリコールなどのポリオールをさらに含んでもよい。また、本発明は、鼻内投与に適した組成物の製造における、ブロチゾラム、リン脂質、1以上のC〜Cアルコールおよび水の使用に関し、当該組成物中のリン脂質および1以上のアルコールの濃度がそれぞれ0.2〜10重量%および12〜30重量%であり、当該組成物の水の含量が30重量%以上である。好ましくは、C〜Cアルコールはエタノールであり、当該組成物はプロピレングリコールなどのポリオールをさらに含んでもよい。
【0013】
他の側面において、本発明は、治療的有効量のプレドニゾロンまたはその医薬的に許容される誘導体または塩、リン脂質、1以上のC〜Cアルコールおよび水を含んでなる医薬組成物に関し、当該組成物中のリン脂質および1以上のアルコールの濃度がそれぞれ0.2〜10重量%および12〜30重量%であり、当該組成物の水の含量が30重量%以上であり、当該組成物中でリン脂質がベシクルを形成している。好ましくは、C〜Cアルコールはエタノールであり、本発明の組成物はプロピレングリコールなどのポリオールをさらに含んでもよい。また、本発明は、鼻内投与に適する組成物の製造における、プレドニゾロン、リン脂質、1以上のC〜Cアルコールおよび水の使用に関し、当該組成物中のリン脂質および1以上のアルコールの濃度がそれぞれ0.2〜10重量%および12〜30重量%であり、当該組成物の水の含量が30重量%以上である。この組成物は、多発性硬化症の治療に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1A〜Bは、ペントバルビトンナトリウム(40mg/kg)による睡眠導入5分前にブロチゾラム(薬剤投与量:0.25mg/kgまたは2.5mg/kg)を経鼻投与した後のマウスの反応潜時(図1A)および総睡眠時間(図1B)を、薬剤水溶液(穏当な投与量)の経口投与、および、未処置のコントロールに対して示す棒グラフである。
【図2】図2は、プレドニゾロン組成物(投与量:3mg/Kg動物)を予防的に鼻内投与した際のミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOGペプチド)(n=6)によって誘導される実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の臨床症状を、薬剤水溶液(穏当な投与量)の皮下投与、および、未処置のコントロールに対して示すグラフである。
【図3】図3は、プレドニゾロン組成物(投与量:5.7mg/Kg動物および13.7mg/Kg動物)を鼻内投与した際のMOGペプチドによって誘導されるEAEの臨床症状を、薬剤水溶液(13.7mg/kg)の皮下投与、および、未処置のコントロールに対して示すグラフである。
【図4】図4は、ジアゼパムおよび/またはジクロフェナクのアマルガム組成物を経鼻投与した後のマウスライジング試験の結果を、未処置のコントロールに対して示す棒グラフである。
【図5】図5は、CBDおよびGAを鼻内投与した後のEAEの臨床症状を、CBDおよびGAの皮下投与、および、未処置のコントロールに対して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の組成物の製造における使用に適したリン脂質として、ホスファチジルコリン(PC)、水酸化ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PPG)およびホスファチジルイノシトール(PL)が挙げられる。本発明に従って用いることができるリン脂質の化学構造は、参照により本明細書に含まれるUS4614730に記載されている。好ましくは、リン脂質は、0.5〜5重量%の濃度で本発明の組成物に含まれる。
【0016】
本明細書で使用するC〜Cアルコールとの用語は、2、3または4の炭素原子を含むアルカノールをいう。本発明によって用いられるアルコールは、具体的には、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコールおよびtert−ブチルアルコールを含む(より前者が特に好ましい)。鼻内ドラッグデリバリー媒体としての使用が本発明で予定されているエタノールの濃度は、15〜27重量%の範囲である。アルコールとリン脂質の重量比は2:1以上であり、より好ましくは5:1以上である。
【0017】
本発明の特に好ましい態様によると、本発明の組成物は、1以上の水混和性ポリオール、特にグリコール(エチレングリコールなどの1,2−ジオールおよびプロピレングリコール;後者が特に好ましい)を、好ましくは5〜20重量%の濃度でさらに含む。
【0018】
本発明の組成物は、種々の成分、すなわち、水、リン脂質、1以上のC〜Cアルコール(可能であれば、1以上のポリオールも)および有効成分を、ベシクルを形成させる条件下で一緒に混合することにより製造してもよい。より具体的には、本発明の組成物は、リン脂質をアルコール(またはアルコール/グリコール混合物中)へ溶解させ、水溶液の形態または固体形態のいずれかで有効成分を添加し、さらに水を添加することにより簡便に製造し得る。本発明の組成物の製造は、典型的には室温下または好ましくは50℃以下に昇温下で、好ましくは撹拌しながら行われる。
【0019】
あるいは、可能であれば加熱しながら、アルコールを任意にポリオール(例えば、エタノールおよびプロピレングリコールの混合物)と一緒に水中のリン脂質および有効成分に撹拌下で添加して分散剤を製造する。
【0020】
また、カプセル化した有効成分をその中に含む凍結乾燥した脂質ベシクルを最初に製造した後、水、C〜Cアルコールおよび任意のポリオールの混合物中で同じものを分散させることもできる。
【0021】
本発明の組成物が、界面活性剤、保存剤、増粘剤、共溶媒、接着剤、抗酸化剤、緩衝剤、粘性および吸着を強化する物質、製剤のpHおよび浸透圧を調製可能な物質などの本技術分野で周知の賦形剤をさらに含有してもよいことに留意すべきである。
【0022】
本発明に使用し得る好ましい界面活性剤として、イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤または両性界面活性剤が挙げれる。より具体的には、親水性界面活性剤(例えば、Tweens、Tween 80、Myrj、Brjs、Labrasolなど)または親油性界面活性剤(例えば、Span 20、Span 60、Myrj、Arlacel 83など)を、好ましくは0〜25重量%の範囲の濃度で好適に使用できる。
【0023】
本発明の製剤に使用可能な好ましい保存剤として、例えば、ベンジルアルコール、パラベン、クロロブタノール、ベンザルコニウム塩およびその組み合わせが挙げられる。抗酸化物のいくつかの例として、トコフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、メタ重亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、パルミチン酸アスコルビルなどが挙げられる。 これれらの保存剤および抗酸化剤は、約0.001%から最大約5%(w/w)の濃度で製剤中に存在してよい。
【0024】
緩衝剤に関しては、経鼻デリバリーシステムは、本発明の製剤を約7.0のpHに維持する緩衝剤を含んでもよい。具体的な緩衝剤は、使用する具体的な経鼻デリバリーシステム、同様に具体的な活性分子の選択に応じて、もちろん変更できる。本発明における使用に適した緩衝剤として、例えば、酢酸、クエン酸、プロラミン、炭酸塩およびリン酸塩の緩衝剤およびその組み合わせが挙げられる。本発明の医薬製剤は、pH調整剤を含んでもよい。
【0025】
増粘剤に関しては、医薬的に許容される増粘剤を使用して、本発明の製剤の粘性を所望のレベルに維持することができる。本発明の組成物に添加できる増粘剤として、例えば、メチルセルロース、キサンタンガム、トラガカント、接着剤、グアーガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩、アカシア、キトサン、ポリ(アクリレート)などの粘膜接着性ポリマー系、セルロース誘導体、ヒアルロン酸誘導体、キチン、コラーゲン、ペクチン、デンプン、ポリ(エチレングリコール)、硫酸化多糖類、カラギナン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ペクチンおよびその組み合わせが挙げられる。増粘剤の望ましい濃度は、選択された増粘剤、および所望の粘性によって決まるであろう。
【0026】
また、本発明の組成物は、カルボポール、アルギン酸、スクレログルカン、セルロース誘導体、デンプン、アルブミン、プルロニックジェル、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファデックス、ポリカルボフィル、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、デンプン、ゼラチン、コラーゲンなどのゲル形成または生体接着性化合物を含んでもよい。また、本発明の組成物は、w/oクリーム、o/wクリーム、親水性軟膏または親油性軟膏、ゲル、他の半固体ベース中に含んでもよい。本発明の組成物は、ピペッター、専用装置、エバポレーター、ベポライザー(vaporizator)などを使用し、小滴(drop)、ミスト、エアロゾル、滴下物(instillation)として鼻腔まで送達できる。
【0027】
また、本発明の製剤は、粘膜の乾燥の軽減または防止および粘膜の炎症防止のために、耐性強化剤(tolerance enhancer)などの物質を含んでもよい。
本発明の組成物は、液体、噴霧、エアロゾル、噴霧器(nebulizer)または半固形製剤として鼻腔に適用できる。半固形製剤は、ゲル、w/oもしくはo/wクリームまたは親水性/親油性軟膏をベースにしてよい。本発明の組成物は、分子状に分散した(溶解、可溶化など)活性物質または活性物質の微粒子/微結晶を含んでもよい。本発明の組成物は、鼻スプレー、定量スプレー、スクイーズボトル、液体点滴、使い捨て点滴(1回投与)、噴霧器、単位投与アンプルを用いたカートリッジシステム、単回投与ポンプ、2回投与ポンプ、複数回投与ポンプまたは他のいずれの装置からも投与できる。例えば、本発明の組成物は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」(第16版)の83章および92章に詳細に記載されているように、噴霧またはエアロゾル装置/コンテナに貯蔵し、噴霧またはエアロゾル装置/コンテナから送達してもよい。
【0028】
噴霧装置に関して、単回(単位)投与システムまたは複数回投与システムの両方を使用できることに留意すべきである。典型的には、噴霧装置は、ボトルおよびポンプを含み、このような装置は、様々なところから市場において入手可能である。典型的には、単回噴霧作動で投与される液体の量は、5〜250μl/各鼻孔/単回投与の範囲であり、製剤中の有効成分の濃度は、鼻孔への1回以上の噴霧が投薬計画に沿うように容易に調製できる。
【0029】
また、カンナビジオールおよび酢酸グラチラマーを含む上記組成物が、非経口的(例えば、静脈注射により)にも適用できることに留意すべきである。
カンナビジオールは、2−[3−メチル−6−(l−メチルエテニル)−2−シクロヘキセン−l−イル]−5−ペンチル−l,3−ベンゼンジオールである。(−)体のカンナビジオールの合成法は、例えば、「HeIv. Chim. Acta」(T. Petrzilka等、52、1102 、1969)、「Z. Naturforsch.」(H. J. Kurth等、36B、275、1981)に記載されており、(+)体のカンナビジオールの合成法は、例えば、「J. Am. Chem. Soc.」(R. Mechoulam, Y. Gaoni、87、3273、1965)に記載されている。カンナビジオールは、10〜400mgの1日投与量で投与してもよい。
【0030】
典型的には、酢酸グラチラマーは、1〜60mgの1日投与量で投与される。酢酸グラチラマーは、それぞれ約4.6:1.5:3.6:1.0のモル比のアラニン、グルタミン酸、リジンおよびチロシンで構成されるポリペプチドの混合物であり、ここで、4つのアミノ酸は化学重合により合成され、生成物の平均分子量は、約4000〜約13,000ダルトンである。対応するモル分率は、アラニンは約0.427、グルタミン酸は約0.141、リジンは約0.337、チロシンは約0.093であり、約+/−10変動し得る。酢酸グラチラマーの合成法は、例えば、US7049399に記載されている。典型的には、酢酸グラチラマーは、20mgの1日投与量で、皮下(SC)注入により投与される。
【0031】
ジクロフェナクは、2−(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)フェニル)酢酸である。ジクロフェナクの合成法は、例えば、米国特許第3558690号(A. Sallman、R. Pfister、1971)に記載されている。典型的には、ジクロフェナク25〜150mgの1日投与量で投与される。
【0032】
ジアゼパムは、7−クロロ−1,3−ジヒドロ−1−メチル−5−フェニル−2H−1,4−ベンゾ−ジアゼピン−2−オンである。ジアゼパムの合成法は、例えば、「キナゾリンおよび1,4−ベンゾヂアゼピン、III置換2−アミノ−5−フェニル−3H−1,4−ベンゾジアゼピン 4−オキシド(Quinazolines and 1 ,4-benzodiazepines III substituted 2-amino-5-phenyl-3H-1,4-benzodiazepine 4-oxides.)」(Sternbach LH, Reeder E、Keller OおよびMetlesics W.、J Org Chem、26、4488-4497、1961)に記載されている。典型的には、ジアゼパムは、0.2〜100mgの1日投与量で投与される。フェンタニルは、N−(l−フェネチル−4−ピペリジル)−N−フェニル−プロパンアミドである。典型的には、フェンタニルは、100〜400mgの1日投与量で投与される。その製造は、例えば、「J. Chem. Res.」(Gupta, P. K 等、2005、7、452-453)および「Def. Res. Dev. Establ.」(Gwalior 474 002、India, Eng.)に記載されている。
【0033】
ブロチゾラムは、8−ブロモ−6−(o−クロロフェニル)−l−メチル−4H−s−トリアゾロ[3,4c]チエノ[2,3e]l,4−ジアゼピンである。その合成法は、例えば、特開昭51−80899(米国特許第4094984号)に記載されている。典型的には、ブロチゾラムは、0.01〜1mgの1日投与量で投与される。
【0034】
プレドニゾロンは、11,17−ジヒドロキシ−17−(2−ヒドロキシアセチル)−10,13−ジメチル−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン−3−オンである。プレドニゾロンの合成法は、例えば、「18−ヒドロキシル化されたコルチゾールおよびプレドニゾロン、ステロイドの簡易合成(Convenient synthesis of 18-hydroxylated Cortisol and Prednisolone. Steroids.)」(Kurosawa T、Ikegawa S、Chiba H、Ito Y、Nakagawa S、Kobayashi K、Tohma M、1992 Sep、57(9)、426-9)に記載されている。典型的には、プレドニゾロンは、5〜60mgの1日投与量で投与される。
【0035】
本明細書で用いられるように、経鼻的投与または経鼻投与には、鼻の鼻孔から哺乳動物の鼻道または鼻腔の粘膜へ組成物を投与することが含まれる。このような製剤は、任意の新型または旧型の装置を用いて、例えば、鼻内噴霧、鼻内吸入器、点鼻剤、エアロゾル、推進剤(propellant)、加圧分散(pressured dispersion)、水性エアロゾル、噴霧器、鼻懸濁液、滴下物、鼻ゲル、鼻軟膏および鼻クリームにより投与できる。また、本発明の組成物の投与は、組成物を含む鼻タンポンまたは鼻スポンジを用いることによっても行うことができる。
【0036】
本明細書で特定される活性化合物が、医薬的に許容される塩、ラセミ体および分離されたエナンチオマーの形態であってもよいことに留意すべきである。
【実施例】
【0037】
参考例1:酢酸グラチラマー(GA)を含有する本発明の経鼻組成物
【0038】
【表1】

【0039】
最終組成物は12mg/mLのGAを含有する。
参考例2:皮下(SC)投与に用いるGA溶液(コントロール溶液)
【0040】
【表2】

【0041】
参考例3:ジアゼパム経鼻組成物(低投与量)
【0042】
【表3】

【0043】
参考例4:ジアゼパム経鼻組成物(高投与量)
【0044】
【表4】

【0045】
上記の製剤を以下のように製造した。リン脂質をエタノールに溶解させ、プロピレングリコールをこの溶液に加えた後に、ビタミンEを添加して混合した。つぎに、ジアゼパムを混合物に添加した。Heidolph オーバーヘッド攪拌機(Overhead Stirrer)を用いて撹拌しながら、水をゆっくり添加した。この組成物をさらに15分間撹拌した。最終組成物は6.25mg/mLのGAを含有する。
【0046】
参考例5:酢酸グラチラマー(GA)を含有する発明の経鼻組成物
【0047】
【表5】

【0048】
10グラムの上記製剤を以下のように製造した。0.5gの大豆リン脂質を1.5gのエタノールに溶解させ、2gのプロピレングリコールをこの溶液に添加した後に、ビタミンEを添加して5分間混合した。つぎに、Heidolph オーバーヘッド攪拌機を用いて撹拌しながら、20mg/mLのGAを含有するGA水溶液をゆっくり添加した。この組成物をさらに15分間撹拌した。最終組成物は12mg/mLのGAを含有する。
【0049】
参考例6:皮下(SC)投与に用いるGA溶液(コントロール溶液)
・コパキソン(登録商標)注入(20mg/mL)180μl
・標準生理食塩水〜3000μl
参考例7:経鼻投与に用いるGA溶液(コントロール溶液)
【0050】
【表6】

【0051】
実施例1:ブロチゾラム(催眠/睡眠作用)経鼻組成物
【0052】
【表7】

【0053】
製剤を上記方法に従って製造した。最終製剤は、0.25mg/gのブロチゾラムを含有する。
ヒトにおけるブロチゾラムの投与量は、睡眠前の1回投与あたり0.01〜約1mg、好ましくは約0.05〜約0.3mgである。
【0054】
実施例2:本発明の組成物の経鼻投与後のブロチゾラムのマウス催眠(睡眠)作用(実施例1の組成物の試験)
ペントバルビトンで誘導したマウスの睡眠評価を利用する以下の実験プロトコルにより、上記ブロチゾラム含有組成物の鼻内投与の有効性を試験した。以下の試験において、ペントバルビトンによる治療および正向反射の消失の後の時間(分)を睡眠潜時とし、正向反射の消失と正向反射の回復との間の時間を睡眠時間とした。このモデルは、ラットおよびマウスにおける薬剤の催眠/鎮静作用の評価に広く使用されている(Avoka等、J. Ethnopharmacol、2006、103、166-75)。
【0055】
実験プロトコル
本実験を、6〜7週齢のメスC57B1/6マウスで行った。
以下の動物グループを使用した(n=4):
・グループ1: 0.25mg/Kg動物(18μl/マウス)の投与量でのブロチゾラム組成物の鼻内投与。実施例1の組成物9μlを各鼻孔に投与した。
・グループ2: 0.25mg/kg動物(18μl/マウス)の投与量でのブロチゾラムの経口投与。
・グループ3: 水で経口投与される未処置のコントロール動物。
【0056】
これらの動物に上記組成物を投与し、5分後にフェノバルビタールナトリウム−SP(40mg/kg、腹腔内)を注入した。正向反射の消失の発現(onset)と正向反射の消失の期間を、反応潜時および総睡眠時間(TST)としてそれぞれ記録した。
【0057】
図1にこの実験の結果を示す。ブロチゾラムの経鼻治療により、たった5分前のペントバルビトン投与で、反応潜時が有意に短縮され、ペントバルビトンで導入した睡眠のTSTが有意に延長されたようだった。コントロールと比較して、経口のブロチゾラムは両パラメータに有意な効果を有さなかった。
【0058】
多発性硬化症の治療および予防のための製剤
実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)モデル(多発性硬化症の動物モデル)で発症した神経学的症状の予防および治療のための製剤の使用における、本発明の経鼻担体の効果が示された。
【0059】
多発性硬化症の予防
実施例3:コルチコステロイドを含有する本発明の経鼻組成物
【0060】
【表8】

【0061】
上記実施例に記載した方法で、この組成物を製造した。最終組成物は、2.5mg/mLのプレドニゾロンを含有する。
実施例4:皮下(SC)投与のためのプレドニゾロン溶液(コントロール溶液)
【0062】
【表9】

【0063】
プレドニゾロンを、PEG400および生理食塩水の混合物に溶解させた。0.5mg/mLのプレドニゾロンを含有する透明溶液を得た。
実施例5:コルチコステロイド経鼻製剤のEAE予防効果
マウスのEAEは、ヒトの多発性硬化症の許容モデル(accepted model)である。
【0064】
EAEの誘導
既に公開されたプロトコル(Kataoka H等、Cell MoI Immunol、2005)を若干修正したものにより、6〜7週齢のメスC57B1/6マウス(重量:17〜18g)においてEAEを誘導した。この手順により、完全フロインドアジュバント(CFA)中でミコバクテリアと混合したミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG35−55)ペプチドによりマウスを免疫化し、その直後および48時間後に百日咳毒素を注入した。
【0065】
臨床評価は、以下のEAE基準スコアに基づいて行われる。
【0066】
【表10】

【0067】
以下の実験グループ(各6匹の動物を有する)を用いた。
・グループ1: 3mg/Kg動物(0.05mg/20μl/マウス)の投与量でのプレドニゾロン組成物(実施例3)の予防的鼻内投与。10μlの組成物を、EAE誘導後1〜4日に1日2回各鼻孔に投与し、その後、1.5mg/kg(0.025mg/10μl/マウス、5μl/norise)を実験終了まで1日1回投与した。
・グループ2: 予防的皮下投与。プレドニゾロン3mg/kg(0.05mg/100μl/マウス)、実施例4の溶液をコントロールとして皮下投与。この溶液を、EAE誘導後1〜4日に1日2回皮下注入し、その後、1.5mg/kg(0.025mg/50μl/マウス)を、実験終了まで1日1回SC投与した。
・グループ3: コントロール(未処置)
図2の結果は、同じ薬剤投与量を含む溶液のSC投与と比較して、プレドニゾロン(実施例3)を含有する本発明の組成物の鼻内投与により、EAEの発症(development)が効率的に抑えられることを示す。
【0068】
多発性硬化症の治療
実施例6:コルチコステロイドを含有する本発明の経鼻組成物
【0069】
【表11】

【0070】
本発明の組成物を、上記実施例に記載された方法で製造した。最終組成物は5mg/mLのプレドニゾロンを含有する。
実施例7:コルチコステロイドを含有する本発明の経鼻組成物
【0071】
【表12】

【0072】
本発明の組成物を、上記実施例に記載された方法で製造した。この経鼻組成物は10〜120mg/mLのプレドニゾロンを含有する。
本発明の組成物は、小滴、斑点(nebulation)、噴霧、装置、脳への経鼻デリバリーのための専用装置で投与できる。
【0073】
ヒトの投与量: プレドニゾロンの初回投与量は、1日2mg〜60mgであってよい。この初回投与量は、十分な反応があるまで維持または調製すべきである。
本発明の経鼻組成物は、毎日または隔日または週1回、1〜4回投与される。
【0074】
実施例8:EAEの治療におけるGAおよびプレドニゾロンの革新的製剤の効果
実施例5に記載のプロトコルにしたがい、体重16.84±1.23g、6〜7週齢のメスC57B1/6マウスにおいてEAEを誘導した。
【0075】
コントロールに対する本発明の経鼻組成物を用いたEAE治療
〜11日目から始まり(個々のマウスにおいて臨床スコアEAE≧0.5を発症してから治療を開始した)この研究の終了まで、この組成物を1日1回投与した。
【0076】
4つの実験グループ(各6匹の動物を有する)用いた。
・グループ1: 5.7mg/Kg動物(0.1mg/20μl/マウス)の投与量でのプレドニゾロン組成物(実施例6)の鼻内投与。10μlの組成物を1日1回各鼻孔に投与した。
・グループ2: 13.7mg/Kg動物(240mcg/20μl/マウス)の投与量でのGA組成物(参考例1)の鼻内投与。10μlの組成物を1日1回各鼻孔に投与した。
・グループ3: 投与量13.7mg/kgでのGAコントロール溶液(参考例2)の皮下投与。200μlの溶液を1日1回マウスに投与した(240μg GA/動物/日)。
・グループ4: コントロール(未処置)
図3は、この実験で得られた結果を示すプロットである。この結果は、本発明(実施例6)の組成物のプレドニゾロンの鼻内投与が、EAE(多発性硬化症モデル)を有効に治療することを示す。例えば、22日〜実験最終日において、以下のEAEスコアはプラトーであった。
・グループ1(鼻内プレドニゾロン新規組成物)〜0.4
・グループ2(鼻内GA対照組成物)〜0.5から0
・グループ3(皮下GA対照溶液)〜1.5
・グループ4(未処置のコントロール)〜3
ジアゼパムおよびジクロフェナク混合組成物の鼻内投与による疼痛治療
実施例9:ジアゼパム(低投与量)およびジクロフェナクのアマルガム経鼻組成物
【0077】
【表13】

【0078】
上記製剤を以下のように製造した。リン脂質をエタノールに溶解させ、プロピレングリコールをこの溶液に添加した後、ビタミンEを添加して混合した。その後、ジアゼパムこの混合物に添加した後、ジクロフェナクナトリウムを添加してさらに10分撹拌した。Heidolph オーバーヘッド攪拌機(Overhead Stirrer)を用いて撹拌しながら、水をゆっくり添加した。この組成物をさらに15分間撹拌した。最終組成物は6.25mg/mLのジアゼパムを含有する。
【0079】
実施例10:ジアゼパムおよびジクロフェナクの経鼻アマルガム組成物
【0080】
【表14】

【0081】
実施例11:鎮静剤(opiates)および抗炎症剤を含有する組成物
【0082】
【表15】

【0083】
フェンタニルの推奨投与量は、10〜300(mcg/各投与)の範囲である。
ジクロフェナクの推奨投与量は、0.05〜100(mg/各投与)の範囲である。
実施例12:ジアゼパムおよびジクロフェナク経鼻組成物のマウス鎮痛効果試験
ジクロフェナク−ジアゼパムおよびジアゼパム含有組成物(実施例9および参考例3〜4でそれぞれ詳細に示した組成物)の鼻内投与による鎮痛効果を試験した。
【0084】
メスC75/BLマウス(8〜9週齢)を用いてこの実験を行った。
以下の実験グループ(各4匹の動物を有する)を用いた。
・グループ1: 参考例3で得られたジアゼパム低投与量組成物の鼻内投与。
・グループ2: 参考例4で得られたジアゼパム高投与量組成物の鼻内投与。
・グループ3: 参考例9で得られた、低投与量のジアゼパムおよびジクロフェナクを含有するジアゼパムおよびジクロフェナク組成物の鼻内投与。
【0085】
結果を未処置のコントロール動物と比較した。
酢酸希釈液の腹腔内注入は、激痛に似た、侵害受容の(nociceptive)ステレオタイプ行動(ライジング)を誘導する。このモデルは、抗疼痛剤の鎮痛(抗侵害受容)効果の評価に広く用いられている。
【0086】
イソフルラン(登録商標)麻酔の下でマウスを治療した。治療の30分後、3グループの全マウスに、酢酸0.6%(10ml/kg)を腹腔内投与し、滑らかな平面床のケージに個別に収容した。
【0087】
酢酸の注入後10分間、身もだえ(writhe)の回数を計測することにより痛覚抑制効果を記録した。身もだえは、腹部収縮および少なくとも1の後肢のストレッチにより示される。
【0088】
図4の結果から、実施例9で得られたジクロフェナクおよびジアゼパムの経鼻組成物の投与が、酢酸溶液の注入で誘導された疼痛を完全に減少させたことが明らかである。本発明の組成物は、同じ低投与量を投与したジアゼパム、および、2倍の高投与量を投与したジアゼパムの効果をも大幅に上回った。これらの結果から、組み合わせ組成物の使用により薬剤投与量を低下できることが推測される。
【0089】
酢酸グラチラマー(GA)およびカンナビジオール(CBD)混合組成物の鼻内投与を用いた多発性硬化症治療
実施例13:GAおよびCBD(カンナビジオール)を含有する本発明の経鼻組成物
【0090】
【表16】

【0091】
本発明の組成物を、上記方法で製造した。
最終組成物は、11.2mg/mLのGAおよび40mg/mLのCBDを含有する。
実施例14:GAおよびCBDを含有する本発明の経鼻組成物
【0092】
【表17】

【0093】
本発明の組成物を、上記方法で製造した。
最終組成物は、11.2mg/mLのGAおよび20mg/mLのCBDを含有する。
実施例15:GAおよびCBDを含有する本発明の経鼻組成物
【0094】
【表18】

【0095】
最終組成物は、11.8mg/mLのGAおよび12mg/mLのCBDを含有する。
実施例16:GAおよびCBDを含有する本発明の経鼻組成物
【0096】
【表19】

【0097】
本発明の組成物を、上記実施例に記載した方法で製造した。リン脂質/エタノール/プロピレングリコール相にCBDを混合/溶解させた。GAを水溶液として添加した。
本発明のGA溶液は、緩衝剤、グリコール、ポリグリコール、クエン酸エステルなどの可溶化剤、炭水化物、マンニトール、糖アルコール、塩、安定化剤、抗酸化剤(BHA、BHT、硫化物、トコフェノール、アスコルビン酸誘導体)を含有できる。
【0098】
本発明の経鼻組成物は、5〜100mg/mLのGAおよび1〜100mg/mLのCBDを含有する。
本発明の組成物は、小滴、斑点、噴霧、装置、脳への経鼻デリバリーのための専用装置で投与できる。
・ヒトのGA投与量: 0.5〜80mgのGAが必要に応じて投与される。
・ヒトのGA投与量: 0.5〜80mgのGAが必要に応じて投与される。
・ヒトのCBD投与量: 0.1〜500mgのGAが必要に応じて投与される。
【0099】
本発明の経鼻組成物は、毎日または隔日または週1回投与される。
実施例17:鼻内におけるGA−CBDの組み合わせを用いた実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の治療(ニューロン再生の証拠)
マウスのEAEは、ヒトの多発性硬化症の許容されるモデルである。
【0100】
EAEの誘導
既に公開されたプロトコル(Kataoka H等、Cell MoI Immunol、2005)を若干修正したものにより、6〜7週齢のメスC57B1/6マウス(重量:17〜18g)においてEAEが誘導された。この手順により、完全フロインドアジュバント(CFA)中でミコバクテリアと混合したミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG35−55)ペプチドによりマウスを免疫化し、その直後および48時間後に百日咳毒素を注入した。
【0101】
臨床評価は、EAE基準スコアに基づいて行われる(詳細は実施例5参照)。
以下の実験グループ(各6匹の動物を有する)を用いた。
〜11日目から始まり(個々のマウスにおいて臨床スコアEAE≧0.5を発症してから治療を開始した)この研究の終了まで、1日1回すべての治療グループのマウスにこの組成物を投与した。
【0102】
4つの実験グループを用いた。
・グループ1: GA−CBD組成物の鼻内投与。
6.8mgのGA/Kg動物および24.45mgのCBD/Kg動物(10μl/マウス)の投与量の実施例13の組成物を、EAEの発症から最初の3日間投与した。
【0103】
さらに、6.8mgのGA/Kg動物および12.2mgのCBD/Kg動物(10μl/マウス)の投与量の実施例14の組成物を、実験終了まで投与した。組成物を1日1回投与した。
【0104】
実験の最後にマウスを犠牲にし、ニューロン分析のために脳を取り出した。
・グループ2: GA投与量6.8mg/Kg動物(120mcg/10μl/マウス)のGA組成物(参考例5)の鼻内投与。組成物を1日1回投与した。
・グループ3: GA投与量6.8mg/kgのGAコントロール溶液(参考例6)の皮下投与。100μlの溶液を1日1回マウスに投与した(120μgGA/動物/日)。
・グループ4: コントロール(未処置)
2匹のマウスに、脳のニューロンを分化させるDNAに組み込むチミジンアナログであるBrDU(5−Br−2’−デオキシウリジン)を50mg/Kg、20日目から実験の最終日まで毎日腹腔内注入した。
【0105】
実験の最後にマウスを犠牲にし、ニューロン分析のために脳を取り出した。
図5の結果は、低投与量のGAおよびCBDを含有する複合組成物の鼻内投与は、同じ投与量のGA単独鼻内投与または同じ投与量のGA皮下投与よりも、マウスのEAEの治療にさらに有効であることを示す。
【0106】
実験の最後(26日目)に、以下のEAEスコアが得られた。
・グループ1(鼻内、GA−CBD組成物)〜0.5
・グループ2(鼻内、GA組成物)〜2
・グループ3(皮下、GAコントロール溶液)〜3.4
・グループ4(未処置のコントロール)〜3
GA−CBD(グループ1から)を用いて鼻内に施したマウスの組織断片にのみ、活性ニューロンの高度な再生が見られた。
【0107】
実施例18:マウスのEAEにおける、GA−CBD組成物を用いた鼻内治療の効果
(未処置のコントロール動物およびGA水溶液を用いて投与された動物における再生)
治療
実施例5に記載したように、メスC57B1/6においてEAEを誘導した。
【0108】
本発明の担体中ではないGA溶液の経鼻投与がEAEモデルにおいて有効かどうかを試験するために、この実験を実行した。
〜11日目から始まり(個々のマウスにおいて臨床スコアEAE≧0.5を発症してから治療を開始した)この研究の終了まで、この組成物を1日1回投与した。
【0109】
以下の実験グループ(各6匹の動物を有する)を用いた。
・グループ1: 13.7mg/Kg動物(240mcg/20μl/マウス)の高投与量でのGA水性コントロール(参考例7)の鼻内投与。組成物10μlを各鼻孔に1日1回投与した。
・グループ2: コントロール(未処置)
この結果から、水溶液からのGAの鼻内投与がEAE(多発性硬化症モデル)に効果がなかったこと、未処置のマウスと相違しなかったことがわかる。
【0110】
EAE誘導から16日後から、以下の治療スケジュール計画にしたがって動物を4つの新しいグループに再分類した。
・グループ1A: GA水溶液を鼻内に施していたグループの2匹に対して、実施例15の組成物を鼻内に施した。
・グループ1B: GA水溶液を鼻内に施していたグループの2匹に対して、何も処置せず。
・グループ2A: 未処置の3匹のマウスに対して、未処置のまま。
・グループ2B: 未処置の1匹のマウスについて、実施例15の組成物を鼻内に施す。
【0111】
表4に実施例18の実験結果を示す。GAおよびCBDの組み合わせを用いて治療された16日目以降のマウスの場合、条件の再生を示すEAEスコアの低下が見られることが、この結果から示された。グループ1Aの22日目における平均スコアが、1スコアの低下(3から2へ)を示す2であり、1Aの22日目における平均スコアが、1スコアの低下(3から2へ)を示す2であり、グループ2Bにおける低下は、4から2への2スコアであった。未処置マウスの両グループ1Bおよび2Aにおいて、スコアは実質的に同じであった。
【0112】
【表20】

【0113】
実施例19:EAEマウスモデルで経鼻投与および皮下投与された、酢酸グラチラマーおよびカンナビジオール(GA&CBD)の新規組合せ薬の治療有効性
本実験を、6〜7週齢のメスC57B1/6マウスで行った。
【0114】
完全フロインドアジュバント(CFA)中で0.1ml(5mgのミコバクテリア)と混合したMOG35−55ペプチドによりマウスを免疫化した。0.2mlの量の混合物を各マウスの尾の根元に注入した。その直後および48時間後に0.1mlの量の百日咳毒素(200ng/マウス)を注入した。臨床評価を、以下の基準(EAEスコア、実施例5参照)に基づいて行った。
【0115】
以下の製剤を製造した。
【0116】
【表21】

【0117】
この組成物をさらに15分間撹拌した。最終組成物は12mg/mLのGAおよび12mg/mLのCBDを含有する。
【0118】
【表22】

【0119】
最終組成物は2.4mg/mLのGAおよび2.4mg/mLのCBDを含有する。
以下の実験グループ(各グループが5匹の動物を有する)を作った。
・グループA(鼻内、酢酸グラチラマーおよびCBD、製剤A): それぞれ5匹のマウスに投与、1日1回、10μlの製剤Aの組み合わせ(GA&CBD酢酸グラチラマー:6.8mg/kg、CBD:6.7mg/kg)。個々のマウスが臨床スコアEAE≧0.5となった際に治療を開始し、研究の終了まで行った。
・グループB(皮下、酢酸グラチラマーおよびCBD、製剤B): それぞれ5匹のマウスを入手、1日1回、50μlの製剤Bの組み合わせ(GA&CBD酢酸グラチラマー:6.8mg/kg、CBD:6.7mg/kg)。個々のマウスが臨床スコアEAE≧0.5となった際に治療を開始し、研究の終了まで行った。
・グループC(コントロール、未処置): 未処置マウス
【0120】
【表23】

【0121】
上記の表および図5は、CBDおよびGAの鼻内投与、CBDおよびGAの皮下投与に続くEAEの臨床症状を未処置のコントロールに対して表し、複合薬剤の経鼻投与および皮下投与の両方が、コントロールの病気マウスに対して病気の減少において統計的に有意な効果を示した。P<0.05(製剤A vs コントロール)、**P<0.05(製剤B vs コントロール)であり、経鼻投与が最も有効な治療であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンナビジオールおよび酢酸グラチラマーの組み合わせと医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項2】
前記担体が経鼻投与に適する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記担体が液体担体である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記担体が、水、1以上のC〜Cアルコールおよびリン脂質を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
30重量%以上の水、12〜30重量%のC〜Cアルコールおよび0.2〜10%のベシクル構造にされたリン脂質を含んでなる担体中に、酢酸グラチラマーおよびカンナビジオールの組み合わせを含む、請求項4に記載の鼻内投与に適した医薬組成物。
【請求項6】
〜Cアルコールがエタノールである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
1以上の水混和性ポリオールをさらに含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
多発性硬化症の治療のための経鼻投与または非経口投与可能な組成物の製造における、酢酸グラチラマーおよび医薬的に許容される担体と組み合わせてのカンナビジオールの使用。
【請求項9】
前記担体が、リン脂質、1以上のC〜Cアルコールおよび水を含む、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記組成物中のリン脂質および1以上のC〜Cアルコールの濃度がそれぞれ0.2〜10重量%および12〜30重量%の範囲であり、前記組成物の水の含量が30重量%以上である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
〜Cアルコールがエタノールである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物が1以上の水混和性ポリオールをさらに含む、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
ジアゼパムおよびフェンタニルからなる群から選択される少なくとも1の有効成分とジクロフェナクとの組み合わせおよび担体を含んでなる、鼻内投与用の医薬組成物であって、当該担体が、30重量%以上の水、12〜30重量%のC〜Cアルコールおよび0.2〜10%のベシクル構造にされたリン脂質を含む、上記医薬組成物。
【請求項14】
〜Cアルコールがエタノールである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
1以上の水混和性ポリオールをさらに含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
疼痛治療のための経鼻投与可能な組成物の製造における、ジアゼパムおよびフェンタニルからなる群から選択される少なくとも1の有効成分、ジクロフェナクならびに医薬的に許容される担体の使用であって、当該担体が、リン脂質、1以上のC〜Cアルコールおよび水を含み、当該組成物中のリン脂質および1以上のアルコールの濃度がそれぞれ0.2〜10重量%および12〜30重量%の範囲であり、当該組成物の水の含量が30重量%以上である、上記使用。

【請求項17】
前記組成物中に存在するC〜Cアルコールがエタノールである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記組成物が1以上の水混和性ポリオールをさらに含む、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
治療的有効量のブロチゾラムまたはその医薬的に許容される塩、リン脂質、1以上のC〜Cアルコールおよび水を含んでなる、不眠症治療のための医薬組成物であって、当該組成物中のリン脂質および1以上のアルコールの濃度がそれぞれ0.2〜10重量%および12〜30重量%であり、当該組成物の水の含量が30重量%以上であり、当該組成物中でリン脂質がベシクルを形成している、上記医薬組成物。
【請求項20】
不眠症治療のための経鼻投与可能な組成物の製造における、ブロチゾラム、リン脂質、1以上のC〜Cアルコールおよび水の使用であって、当該組成物中のリン脂質および1以上のアルコールの濃度がそれぞれ0.2〜10重量%および12〜30重量%であり、当該組成物の水の含量が30重量%以上である、上記使用。
【請求項21】
治療的有効量のプレドニゾロンまたはその医薬的に許容される誘導体または塩、リン脂質、1以上のC〜Cアルコールおよび水を含む医薬組成物であって、当該組成物中のリン脂質および1以上のアルコールの濃度がそれぞれ0.2〜10重量%および12〜30重量%であり、当該組成物の水の含量が30重量%以上であり、当該組成物中でリン脂質がベシクルを形成している、上記医薬組成物。
【請求項22】
鼻内投与に適する組成物の製造における、プレドニゾロン、リン脂質、1以上のC〜Cアルコールおよび水の使用であって、当該組成物中のリン脂質および1以上のアルコールの濃度がそれぞれ0.2〜10重量%および12〜30重量%であり、当該組成物の水の含量が30重量%以上であり、当該組成物中でリン脂質がベシクルを形成している、上記使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−522741(P2010−522741A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500438(P2010−500438)
【出願日】平成20年3月30日(2008.3.30)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000445
【国際公開番号】WO2008/120207
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(592024572)イッサム・リサーチ・ディベロップメント・カンパニー・オブ・ザ・ヘブルー・ユニバーシティ・オブ・エルサレム・リミテッド (6)
【Fターム(参考)】