説明

結合剤の塗布検査方法

【課題】 結合剤の塗布状況を安価かつ簡単な構成で検査可能な検査方法を提供する。
【解決手段】 結合剤gを用いて第1部材1と第2部材2とを接合するときの前記結合剤の塗布状態を検査する塗布状態検査方法において、導電性を有する結合剤gを塗布領域に塗布し、前記塗布領域の一端側と他端側との間の電気抵抗値を測定し、前記電気抵抗値に基づいて前記結合剤の塗布状態を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合剤(接着剤ないし溶剤等)を用いて部材を結合する際の結合剤の塗布状態を検査する結合剤の塗布検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
枠体や部品の固定手段としては、ビスや熱かしめ、樹脂接合(溶融樹脂の注入による固定)等が、一般的に用いられている。その他にも、部品の固定手段としては、ホットメルトや超音波溶着等の接合技術が採用されている(特許文献1参照)。
【0003】
その他、リモネンを含有する添加物を用いて、継手樹脂の表面を溶解し、更に溶解状態で熱をかけることにより継手樹脂表面をかき混ぜ、その状態で継手樹脂を目的のものに融着する、という技術も提案されている(引用文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−20744号公報
【特許文献2】特開2002−20703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の背景技術とは異なり、予め第一の部材と第二の部材とを接触させ、続いて第一の部材と第二の部材のいずれかに設けた溝形状や凹凸形状等で形成された微小な隙間に液状の結合剤を注入するという方法を用いた結合を本願出願人は開発した。このような結合剤を用いた結合は、ビス留め・熱カシメ・超音波溶着等の他の結合方法と比較して、スペースや形状の制約が少なく、比較的簡単な装置で接合が行える等のメリットがある。しかしその一方で、結合剤の塗布状況の確認を装置で行う場合には、CCD等の画像取り込み装置と画像処理装置とを用いる等する必要が有り、検査が複雑になるという問題があった。
【0006】
更に、部材と部材との接合面に結合剤を注入する接合方法においては外部からの検知は困難である故に、一般には接合した部材と部材とを剥がして確認する等の破壊試験を行う必要があり、非破壊の検査方法が求められていた。
【0007】
本発明は前述のような問題を鑑みたものであり、その目的は、結合剤の塗布状況を安価かつ簡単な構成で検査可能な結合剤の塗布検査方法を提供するものである。
【0008】
また、他の目的は、部材と部材との接合面に結合剤を注入する接合方法においても部材と部材とを剥がすことなく結合剤の注入状況を検査できる、非破壊で検査できる結合剤の塗布検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明における代表的な手段は、結合剤を用いて第一部材と第二部材とを結合する際の前記結合剤の塗布状態を検査する結合剤の塗布検査方法において、 前記第一部材と前記第二部材とを結合するために、前記第一部材に設けられた結合部に導電性を有する結合剤を塗布し、 前記塗布した結合剤の少なくとも二点間の電気抵抗値を測定し、 前記電気抵抗値に基づいて前記結合剤の塗布状態を検査することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は導電性の結合剤を用いて部材を接合する際に、結合部材の塗布領域の少なくとも二点間の電気抵抗値を測定し、その電気抵抗値に基づいて塗布状態を検査することで、簡単な構成で確実に結合剤の塗布状況を確認することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に本発明の一実施形態に係る結合剤の塗布検査方法について図面を参照して説明する。
【0012】
〔第1実施形態〕
図1は第1実施形態に係る第一部材および第二部材の斜視説明図であり、図2は結合剤の塗布検査方法の説明図である。
【0013】
本実施形態では、第一部材1に結合剤gを塗布し、該結合剤gの塗布部に第二部材2を押圧・接合する際の、結合剤gの塗布状況確認方法について説明する。
【0014】
まず、第一部材1はスチレン系樹脂組成物で形成されており、結合剤注入溝1cを有する。結合剤注入溝1cは幅3mm、深さ1mmに設定されている。
【0015】
第二部材2は、第一部材1同様にスチレン系樹脂組成物で形成されており、幅2.8mm、高さ1.2mmの接合リブ2aを有する。
【0016】
一方、結合剤gは、d−リモネンと、導通材としてのエタノールと、の混合物である。ここで、d−リモネンとは、スチレン系樹脂の溶剤となることが知られているテルペン系炭化水素類の一種であり、絶縁性の液体である。エタノールは導電性の液体であり、d−リモネンにエタノールを適量(本実施形態では重量比45%)混合することで、結合剤gに導電性を持たせている。
【0017】
第一部材1と第二部材2との結合に際し、まず、図2(a)に示すように、第一部材1の結合剤注入溝1cに結合剤gが注入される。ここで第一部材1は、結合剤注入溝1cが上方向を向く形で略水平に保たれている。また、注入器Xは矢印X1に沿って移動しながら結合剤gを結合剤注入溝1cに注入する。
【0018】
続いて結合剤gの塗布状況の検知が、第一プローブY1と第二プローブY2と判定手段Y3と報知手段Y4とで構成される検知装置Yを用いて行われる。ここで、第一プローブY1と第二プローブY2は導電材で形成されており、判定手段Y3と電気的に接続されている。一方、判定手段Y3は、第一プローブY1と第二プローブY2との間の導通の有無を判定可能に構成されている。
【0019】
検知に際しては、図2(b)に示すように、結合剤注入溝1cの一端側に第一プローブY1、結合剤注入溝1cの他端側に第二プローブY2が挿入され、第一プローブY1と第二プローブY2とが結合剤注入溝1cに挿入された状態で、判定手段Y3は第一プローブY1と第二プローブY2との間の導通の有無を判定する。ここで結合剤gは導電性であるため、結合剤注入溝1cに結合剤gが充填されていれば結合剤gを介して第一プローブY1と第二プローブY2との間で導通がとれるため、検知装置Yによって結合剤gの塗布状況が正常であると判定される。一方、導通がとれないときは結合剤gの塗布が正常に行われていないと判定し、結合剤gを塗布し直すようにする。
【0020】
尚、結合剤の塗布状態が正常か否かの判定に際し、第一プローブY1と第二プローブY2との間が電気的に導通しているか否かで判定する場合以外に、両者間の電気抵抗値を検知し、その抵抗値が所定値以下の場合は結合剤gが正常に塗布されていると判定し、所定値よりも大きいときは結合剤gが正常に塗布されていないと判定してもよい。
【0021】
検知装置Yによって結合剤gの塗布状況が正常であると判定されると、図2(c)に示すように、第二部材2が第一部材に組み付けられる。この際、第二部材2は、接合リブ2aが結合剤注入溝1cに入り込むように第一部材1に組み付けられる。ここで、結合剤注入溝1cには結合剤gが注入されているため、第一部材1の結合剤注入溝1c部近傍と、第二部材2の接合リブ2a近傍とが溶解され、結合剤gが乾燥した際には溶解された材料が結合して第一部材1と第二部材2との結合工程が完了する。
【0022】
尚、注入器Xの液切れあるいは目詰まり等によって、結合剤注入溝1cへの結合剤gの注入が適正に行われなかった場合は、結合剤gは第一プローブY1と第二プローブY2との間の導通経路として作用しない。このため、第一プローブY1と第二プローブY2との間の導通は取られない。このとき、検知装置Yは結合剤gの塗布状況が異常であると判定し、報知手段Y4を介して結合剤gの塗布状況が異常であることをオペレータに報知する。
【0023】
尚、本実施形態では結合剤注入溝1cを幅3mm、深さ1mmと設定しているが、本発明はこれに限定されるものでないことは当然であり、部材の大きさや求められる接合強度等に合わせて設定されるものである。また、予めスチレン系樹脂組成物を混入するなどして結合剤gに十分な粘性を与えれば、結合剤注入溝1cや接合リブ2aを設けずに部材の結合を行うことも可能である。
【0024】
また、本実施形態においては、結合剤gとしてd−リモネンにエタノールとの混合液を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、結合剤に導電性を持たせる手段として、エタノールの代替としてグラファイト等の炭素系材料の粉末や金属系材料の粉末を分散してもよいし、あるいは、d−リモネンの代替としてl−リモネン、dl−リモネン、テルピノレン、d−α−ピネン、d−β−ピネン、α−テルピネン等の他のテルペン系溶剤、あるいは、ウレタン系、エポキシ系、ゴム系等の接着剤でも前述の効果が得られる。
【0025】
本実施形態は前述のように第一部材1と前記第二部材2をスチレン系樹脂で形成し、前記結合剤gとしてテルペン系溶剤とエタノールの混合液、あるいは導電性の炭素系材料を分散したテルペン系溶剤で構成することで、導電性の結合剤gによって部材を確実に接合することができる。そして、導電性の結合剤gを塗布したときに、その塗布領域の両端間の電気抵抗値を検知することで塗布が正常になされているか否かを簡単な構成で判定することができる。
【0026】
尚、本実施形態では結合される部材の材質としてスチレン系樹脂を紹介したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ポリスチレン等の他の樹脂、セラミック類、コンクリート、あるいは、金属類でも前述の結合剤gによって確実に接合することができる。
【0027】
また、結合される部材の少なくとも一方を導電性材質で形成した場合、図3に示すように、導電性材質で構成した部材側にプローブY1,Y1が接触するのを防止するための絶縁性のスペーサSを設けるのが好ましい。このように、スペーサSを設けることにより、プローブY1,Y1が導電性部材に接触して検知装置Yが誤動作するのを防止することができる。
【0028】
〔第2実施形態〕
次に第2実施形態に係る結合剤の塗布検査方法について図4及び図5を参照して説明する。なお、図4は第2実施形態に係る第一部材および第二部材の斜視説明図であり、図5は結合剤の塗布検査方法の説明図である。なお、ここでは前述した第1実施形態と異なる本実施形態の特徴となる構成についてのみ説明する。また、前述した実施形態と同一機能を有する部材には同一符号を付す。
【0029】
本実施形態では、第一部材1と第二部材2とを接触させた状態で、第一部材1と第二部材2との接触面に結合剤を注入することで第一部材1と第二部材2とを接合する際の、結合剤gの塗布状況確認方法について説明する。
【0030】
本実施形態においても、第一部材1はスチレン系樹脂組成物で形成されており、結合剤注入溝1cを有する。本実施形態において結合剤注入溝1cは幅0.5mm、深さ0.5mmに設定されている。
【0031】
第二部材2は、第一部材1と同様にスチレン系樹脂組成物で形成されており、結合剤注入穴2bと検査穴2cとが設けられている。
【0032】
結合剤gは、d−リモネンに、導通剤としてグラファイト粉末を分散した物であり、グラファイト粉末が分散された結合剤gは導電性を有する。
【0033】
一方、本実施形態において、結合剤gの注入と結合剤gの塗布状況の検知は、図5に示すように、導電材で形成された注入器Z1と、導電材で形成されたプローブZ2と、電気抵抗値によって結合剤gの塗布状態を判定する判定手段Z3と、結合剤gを射出する射出手段Z4と、前記判定手段Z3による判定結果を報知する報知手段Z5と、で構成された注入検知装置Zを用いて行われる。
【0034】
第一部材1と第二部材2の結合に際し、まずは、図5(a)に示すように、第一部材1と第二部材2との組付けが行われる。ここで、第一部材1は不図示の付勢手段で第二部材2に押圧されている。
【0035】
続いて、注入検知装置Zを用いた、結合剤gの注入と、該結合剤gの塗布状況検知が行われる。まず、注入装置Zの注入器Z1は結合剤注入穴2bに挿入され、注入装置ZのプローブZ2は検査穴2cに挿入される。続いて注入器Z1から結合剤gが結合剤注入穴2bから結合剤注入溝1cに注入される。
【0036】
注入された結合剤gは、図5(b)に示すように、結合剤注入溝1cを伝わって検査穴2c側まで浸透する。この際、結合剤gは、いわゆる毛細管現象によって第一部材1と第二部材2との間の微小な隙間にも浸透する。
【0037】
結合剤注入穴2bから注入された結合剤gが検査穴2c側まで浸透すると、浸透した結合剤gが注入器Z1とプローブZ2の間で導通経路として作用するため、注入器Z1とプローブZ2との間で導通が取られる。判定手段Z3はこの導通を検知し、射出手段Z4に対して結合剤gの射出を停止するよう命令を下し、結合剤gの注入は停止される。
【0038】
結合剤gの注入が施された第一部材1と第二部材2は、図5(c)に示すように、結合剤注入溝1cを中心に第一部材1と第二部材2の隙間に結合剤gが浸透した状態にて放置・乾燥される。この際に結合剤gに含まれるd−リモネンが第一部材1と第二部材2の表層を溶解し、結合剤gが乾燥した際には部材同士が固着して第一部材1と第二部材2の結合工程が完了する。
【0039】
尚、判定手段Z3は予め設定された最大射出量を記憶しており、射出量が該最大射出量を超えた場合には、注入器Z1とプローブZ2との間での導通が得られていなくても射出手段Z4に対して結合剤gの射出を停止させる命令を下すとともに、報知手段を介してオペレータに結合プロセスの異常を報知する。
【0040】
尚、本実施形態では結合剤注入溝を幅0.5mm、深さ0.5mmとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、結合剤の粘性等に合わせて自在に設定しても良い。
【0041】
また、本実施形態では結合剤注入溝1cを第一部材1に設けているが、図6に示すように、結合剤注入溝1cを第二部材2に設けるようにしても良い。
【0042】
更には、本実施形態においては結合剤としてグラファイト粉末を分散d−リモネンを例示しているが、本発明はこれに限定される物ではなく、金属系材料の粉末を分散してもよいし、あるいは第1実施形態同様に、d−リモネンにエタノールとの混合液を用いてもよい。また、d−リモネンの代替としてl−リモネン、dl−リモネン、テルピノレン、d−α−ピネン、d−β−ピネン、α−テルピネン等の他のテルペン系溶剤、あるいは、ウレタン系、エポキシ系、ゴム系等の接着剤でも前述の効果が得られる。
【0043】
また、実施形態では被結合部材の材質としてスチレン系樹脂を紹介したが、本発明はこれに限定される物ではなく、ポリスチレン等の他の樹脂、セラミック類、コンクリート、あるいは、金属類でも良い。
【0044】
尚、少なくとも一方の被結合部材を導電性材質で形成した場合には、前述した第1実施形態で述べたように、プローブが誤って被結合部材に接触するのを防止するためにプローブに絶縁スペーサーを用いるのが好ましい。
【0045】
上記のように部材と部材との接合面に結合剤を注入するときに、電気抵抗値を測定して結合剤の塗布状態を検査することで、部材と部材とを剥がす必要がなく、いわゆる非破壊での結合剤塗布状況(浸透状況)の検査が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1実施形態記載の第一部材および第二部材の斜視図である。
【図2】第1実施形態の部分断面図である。
【図3】絶縁性スペーサーを用いた例を示す断面図である。
【図4】第1実施形態記載の第一部材および第二部材の斜視図である。
【図5】第2実施形態の部分断面図である。
【図6】絶縁性スペーサーを用いた例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
S …スペーサ
X …注入器
Y …検知装置
Y1 …第一プローブ
Y2 …第二プローブ
Y3 …判定手段
Y4 …報知手段
Z …注入検知装置
Z1 …注入器
Z2 …プローブ
Z3 …判定手段
Z4 …射出手段
g …結合剤
1 …第一部材
1c …結合剤注入溝
2 …第二部材
2a …接合リブ
2b …結合剤注入穴
2c …検査穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤を用いて第一部材と第二部材とを結合する際の前記結合剤の塗布状態を検査する結合剤の塗布検査方法において、
前記第一部材と前記第二部材とを結合するために、前記第一部材に設けられた結合部に導電性を有する結合剤を塗布し、
前記塗布した結合剤の少なくとも二点間の電気抵抗値を測定し、
前記電気抵抗値に基づいて前記結合剤の塗布状態を検査することを特徴とする結合剤の塗布検査方法。
【請求項2】
前記第一部材は前記結合剤を塗布するための結合剤注入溝を有し、前記第二部材は前記結合剤を注入するための結合剤注入穴と該結合注入穴との間の電気抵抗値を測定するための検査穴とを有し、
前記第一部材と第二部材とを組み付け、
前記結合剤注入穴から前記結合剤注入溝に前記結合剤を注入する際に、前記結合剤注入穴と前記検査穴との間の電気抵抗値を測定することを特徴とする請求項1記載の結合剤の塗布検査方法。
【請求項3】
前記結合剤の注入量が予め設定した最大注入量に達した場合には、前記結合剤の注入を停止することを特徴とする請求項2記載の結合剤の塗布検査方法。
【請求項4】
スチレン系樹脂で構成した前記第一部材及び第二部材をテルペン系溶剤とエタノール混合液で構成した前記結合剤により結合する際の結合剤塗布状態を検査する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の結合剤の塗布検査方法。
【請求項5】
スチレン系樹脂で構成した前記第一部材及び第二部材を導電性の炭素系材料を分散したテルペン系溶剤で構成した前記結合剤により結合する際の結合剤塗布状態を検査する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の結合剤の塗布検査方法。
【請求項6】
前記第一部材又は前記第二部材の少なくとも一方が導電性材質の場合は、前記電気抵抗値を測定する部材と前記導電性材質の部材とを絶縁する絶縁スペーサを用いることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の結合剤の塗布検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−47177(P2006−47177A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230572(P2004−230572)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】