説明

絞りの検査方法及び内視鏡装置

【課題】絞りが組みつけられた状態で容易に且つ確実に絞りの開口の形状を検査することができる絞りの検査方法及び内視鏡装置を提供すること。
【解決手段】被検体の像を取得するための光学系を有する光学機器に組みつけられた絞りを検査する絞りの検査方法であって、検査光を出射する検査光源を前記絞りよりも前記光学系の像面側に配置し、前記検査光を前記絞りの開口を覆う範囲に照射する照射工程S2と、前記絞りを通過した前記検査光により前記開口の像を撮像し、前記撮像された像の形状に基づいて前記絞りを検査する検査工程S5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞りの検査方法及び該検査方法を適用可能な内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の内部を観察するために、被検体の内部の像を被検体の外部まで伝送して被検体の内部を観察する内視鏡装置が知られている。このような内視鏡装置は、被検体の内部に挿入されて使用される光学系を備えている。
このような内視鏡装置の例として、特許文献1には、光学系の光路を透過する光量を調整するための可変絞りを備えた内視鏡装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−208915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された絞りなどの開口の形状などを検査するためには、一般的に、光学系における物体側から、レンズなどを介して絞りを覗くようにして絞りを顕微鏡などで観察する。また、絞りの開口の形状を精度よく検査する目的で、内視鏡装置などの装置から絞りを取り出したりすることも考えられる。しかしながら、この場合、絞りを駆動する駆動機構や内視鏡装置の筐体から絞りが外されてしまうので、内視鏡装置が組み上がった状態における絞りの開口の形状や位置が必ずしも検査結果に反映されず、開口の形状不良や芯ずれなどの不良が見落とされてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、絞りが組みつけられた状態で容易に且つ確実に絞りの開口の形状を検査することができる絞りの検査方法及び内視鏡装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本実施態様にかかる絞りの検査方法は、被検体の像を取得するための光学系を有する光学機器に組みつけられた絞りを検査する絞りの検査方法であって、検査光を出射する検査光源を前記絞りよりも前記光学系の像面側に配置し、前記検査光を前記絞りの開口を覆う範囲に照射する照射工程と、前記絞りを通過した前記検査光により前記開口の像を撮像し、前記撮像された像の形状に基づいて前記絞りを検査する検査工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記照射工程において、前記検査光源は、前記光学機器の外部から内部へ、前記光学系の光軸に対して側方から挿入されることが好ましい。
【0008】
前記検査工程において、前記光学系のうち前記絞りより物体側に設けられた光学系を取り外して前記像を撮像することが好ましい。
【0009】
本実施態様にかかる内視鏡装置は、被検体の内部を観察するための内視鏡装置であって、前記被検体の内部に挿入される挿入部と、前記挿入部を前記被検体に挿入する挿入方向の先端に配置され、前記被検体の内部の画像を取得するための撮像光学系が収められた鏡筒と入射光量を調整するための絞りとを有する画像取得部と、を備え、前記画像取得部は、前記撮像光学系の像面側から前記絞りに向けて検査光を照射する検査光源を前記画像取得部の内部に挿入するために、前記鏡筒の外壁を貫通して形成された検査孔を備えることを特徴とする。
【0010】
前記画像取得部は、前記画像を取得する撮像素子をさらに有し、前記検査孔は、前記絞りと前記撮像素子との間に前記検査光源を挿入可能に形成されていることが好ましい。
【0011】
前記検査孔の中心軸線は、前記検査孔から前記鏡筒の中心軸線に向かう方向に対して傾斜していることが好ましい。
【0012】
前記検査孔の中心軸線は、前記結像光学系の光軸に交差する方向に延びていることが好ましい。
前記検査孔の中心軸線は、前記結像光学系の光軸に直交する方向に延びていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の絞りの検査方法によれば、照射工程において、絞りの開口を覆う範囲に、光学系の像面側から検査光を照射するので、絞りが組みつけられた状態で容易に且つ確実に絞りの開口の形状を検査することができる。
【0014】
また、本発明の内視鏡装置によれば、鏡筒を貫通して形成された検査孔が設けられているので、検査孔を通じて検査光源を鏡筒の内部に導くことができ、絞りが組みつけられた状態で容易に且つ確実に絞りの開口の形状を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の内視鏡装置を示す斜視図である。
【図2】(A)及び(B)は、同内視鏡装置の一部の構成を示す斜視図である。
【図3】同内視鏡装置の内部構造を示す図で、(A)は分解斜視図、(B)は断面図である。
【図4】図3(B)のA−A線における同内視鏡装置の断面図である。
【図5】(A)及び(B)は、同内視鏡装置の一部の構成を示す正面図である。
【図6】本発明の絞りの検査方法を示すフローチャートである。
【図7】(A)及び(B)は、同検査方法の工程を説明するための工程説明図である。
【図8】(A)は絞りの正常な形状を示す正面図、(B)は、同検査方法において検出された(A)に示す絞りの開口の画像を示す模式図である。
【図9】(A)は絞りの開口の形状に不良がある状態を示す正面図、(B)は同検査方法において検出された(A)に示す絞りの開口の画像を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の一実施形態の内視鏡装置1、及び本発明の一実施形態の絞りの検査方法について説明する。
まず、本実施形態の内視鏡装置1の構成について図1ないし図5を参照して説明する。図1は、内視鏡装置1を示す斜視図である。また、図2(A)及び図2(B)は、内視鏡装置1の一部の構成を示す斜視図である。また、図3は、内視鏡装置1の内部構造を示す図で、(A)は分解斜視図、(B)は断面図である。また、図4は、図3(B)のA−A線における内視鏡装置1の断面図である。また、図5(A)及び図5(B)は、内視鏡装置1の一部の構成を示す正面図である。
【0017】
図1に示すように、内視鏡装置1は、近位端から遠位端に向かって延びるシース(挿入部)2と、シース2の遠位端に配置され対象物を撮影する画像取得部3と、シース2内で画像取得部3の近位端側に配置されシース2を湾曲動作させる湾曲駆動部2aと、シース2の近位端に配置されて湾曲駆動部2aを湾曲動作させるための操作部4と、操作部4からさらに近位端側に延びて接続された本体5とを備えている。
【0018】
シース2は、詳細は図示しないが可撓性を有する筒状に形成され、その内部には操作部4および本体5から画像取得部3および湾曲駆動部2aまで延びる配線路が挿通されている。
【0019】
画像取得部3は、シース2の遠位端に固着される光学アダプタ31を備え、光学アダプタ31を介して被検体の内部などの像を撮像できるようになっている。
【0020】
操作部4には、湾曲駆動部2aを湾曲させるために使用者が湾曲方向を入力するためのジョイスティック4aが設けられている。本実施形態の内視鏡装置1では、ジョイスティック4aは、中立位置に対して傾けられることで湾曲駆動部2aを湾曲させる方向が入力されるようになっている。
【0021】
本体5は、画像取得部3によって取得された画像を表示するためのディスプレイ5aと、画像取得部3及び湾曲駆動部2aの動作を制御する制御部50を備えている。
【0022】
続いて、内視鏡装置1の画像取得部3の内部構造について説明する。
図2(A)に示すように、光学アダプタ31の内部には、被検体からの光を集光するための第一の撮像光学系31Aと、被検体に対して照明光を照射する照明光源Lと、照明光源Lに照明信号を送信するための信号線に接続するコネクタ61A、62Aとを有している。
【0023】
図2(B)に示すように、画像取得部3の内部には、画像取得部3の光学系の鏡筒となる鏡筒本体37と、鏡筒本体37に固定された略筒状の鏡筒カバー32が設けられている。
鏡筒本体37は、光学アダプタ31が取り付けられたときに画像取得部3の内部に液体や異物が進入しないように、例えばOリング37Aなどを有している。
【0024】
図2(B)及び図3(A)に示すように、鏡筒カバー32には、鏡筒カバー32の軸方向に鏡筒カバー32を貫通して形成されたカバー開口33およびカバー開口34と、鏡筒カバー32の外周面に開口された検査孔35(図2(B)参照)と、鏡筒カバー32を鏡筒本体37にネジ止めするために鏡筒カバー32の外周面を貫通して形成されたねじ孔36とが形成されている。
カバー開口33は、光学アダプタ31に設けられた第一の撮像光学系31Aを通った光が入射する開口である。
カバー開口34には、光学アダプタ31に設けられたコネクタ61A、62Aに導通する端子61、62が挿入されている。
【0025】
検査孔35は、鏡筒カバー32の外壁をその厚さ方向に貫通して形成されており、検査孔35は後述する鏡筒本体37をさらに貫通して鏡筒本体37の内周面に開口している。
【0026】
図3(A)に示すように、ねじ孔36は、ねじ39がすり合わせにより密着するように形成されたテーパー形状の内壁面を有し、この内壁面は、ねじ39がねじ孔36に挿通されて締め付けられたときに鏡筒本体37の近位端側へ鏡筒カバー32を押し付けるようになっている。
【0027】
鏡筒カバー32の内部には、カバー開口33を通じて入射した入射光の光量を調整するための絞り7が、支持体6に取り付けられて設けられている。さらに、絞り7の近位端側には、絞り7を通過した入射光を屈折させて像を結像させる結像光学系8が設けられている。
【0028】
結像光学系8は、焦点を調節するズームレンズ部81と、ズームレンズ部81を通過した入射光を結像させる結像光学部84とからなり、ズームレンズ部81は連結部材82を介して摩擦係合により連結され、後述する進退駆動部83によって光軸方向に沿って進退駆動するようになっている。
【0029】
結像光学系84より近位端側には、結像光学系84から出射された像を撮像するための像面が配置された撮像素子85と、撮像素子85に取り付けられ撮像素子85からの信号を増幅するための制御基板86とが設けられている。
【0030】
図3(A)に示す進退駆動部83は、図示しない圧電アクチュエータによって軸方向に振動する棒状に形成されており、圧電アクチュエータの振動で進退駆動部83を振動させて連結部材82及び連結部材82に取り付けられたズームレンズ部81をSmooth Impact Drive Mechanism (SIDM)(登録商標)によって進退駆動させるようになっている。
また、詳細は図示しないが、本実施形態では、絞り7もSIDMによって駆動され、圧電アクチュエータを有する進退駆動部79(図3(B)参照)によって絞りの開口の大きさを変化させられるようになっている。
【0031】
図4に示すように、鏡筒本体37の内部には、鏡筒本体37と鏡筒カバー32とが組みつけられているときに同軸状となるように鏡筒本体37を貫通して形成された検査孔38が設けられている。検査孔35と検査孔38とによって、鏡筒カバー32と鏡筒本体37とをともに貫通して鏡筒本体の内部に開口する検査孔が構成されている。本実施形態では、検査孔35および検査孔38は、筒状の鏡筒カバー32における外壁の厚さ方向に対して傾斜して形成され、検査孔35および検査孔38によって構成された検査孔の中心軸線O1は、検査孔35および検査孔38から鏡筒本体37の中心軸線Oに向かう方向に対して傾斜している。
さらに、本実施形態では検査孔35および検査孔38の中心軸線O1は、結像光学系84の光軸L1に交差するように光軸L1に向かって延びており、本実施形態では中心軸線O1と光軸L1とは直交している。
【0032】
図5(A)に示すように、絞り7は、同形同大に形成された8つの羽部材(羽部材73a、羽部材73b、羽部材73c、羽部材73d、羽部材73e、羽部材73f、羽部材73g、羽部材73h、以下、「羽部材73a〜73h」と略して称する。)が環状の連結部71及び連結部72のそれぞれに連結されている。
【0033】
連結部71は、図3(A)に示す支持体6に固定されており、羽部材73a〜73hに挿通された8つの突起(突起71a、突起71b、突起71c、突起71d、突起71e、突起71f、突起71g、突起71h、以下、「突起71a〜71h」と略して称する。)が、光軸L1から等距離の位置に形成されている。
【0034】
連結部72は、羽部材73a〜73hに挿通された8つの突起(突起72a、突起72b、突起72c、突起72d、突起72e、突起72f、突起72g、突起72h、以下、「突起72a〜72h」と略して称する。)が、それぞれ光軸L1から等距離の位置に形成されている。また、突起72a〜72hは、突起71a〜71hよりも径方向外側に位置している。また、詳細は図示しないが、連結部72には、ピン76を介して上述の進退駆動部79に連結される連結部材75が形成されている。
【0035】
羽部材73a〜73hは、連結部71に対して連結部72が光軸L1回りに相対回転動作されると、羽部材73a〜73hのそれぞれが光軸L1に向かって近接したり光軸L1から離間したりするように旋回動作するようになっている。羽部材73a〜73hによって形成される絞り7の開口の形状は、光軸L11を中心とする略円形になっており、絞り7の開口の径は、進退駆動部79によって最大口径d1と最小口径d2との間で連続的に変化させることができるようになっている。
【0036】
以下では、本実施形態の絞りの検査方法について、上述の内視鏡装置1の絞り7を検査する例を用いて、図6ないし図9を参照して説明する。図6は、本発明の絞りの検査方法を示すフローチャートである。また、図7(A)及び図7(B)は、絞りの検査方法における照射工程及び検査工程を説明するための工程説明図である。また、図8(A)は絞りの正常な形状を示す正面図、図8(B)は、絞りの検査方法において検出された図8(A)に示す絞りの開口の画像を示す模式図である。また、図9(A)は絞りの開口の形状に不良がある状態を示す正面図、図9(B)は絞りの検査方法において検出された図9(A)に示す絞りの開口の画像を示す模式図である。
【0037】
本実施形態では、絞り7の開口を検査するために、例えば図7(A)及び図7(B)に示すように、光ファイバ92によって内視鏡装置1の外部から鏡筒本体37の内部に検査光を導入する検査光源91と、検査光源91の検査光を内視鏡装置1の外部で受光して絞り7の開口の画像を撮像する撮像部93と、撮像部93において撮像された絞り7の開口の画像に基づいて絞り7の開口の形状を検査するコンピュータ94とを備えた検査機を用いる。
【0038】
光ファイバ92は、その中心軸線に対して約45度の角度で傾斜して形成された先端面92Aを有しており、先端面92Aから検査光を照射するようになっている。
また、撮像部93は、検査光源92が発する検査光を屈折させる結像光学部93Aと、結像光学部93Aによって屈折された光が結像されて絞り7の開口の像が撮像される撮像素子93Bとを有している。
【0039】
図6に示すように、絞り7を検査するためには、まず、内視鏡装置1の光学アダプタ31(図2(A)参照)を画像取得部3から取り外した状態にする取り外し工程S1が行われる。光学アダプタ31を画像取得部3から取り外すと、図2(B)に示すように画像取得部3の内部に設けられた鏡筒カバー32が外部に露出される。鏡筒カバー32を外部に露出させたら、取り外し工程S1は終了して照射工程S2に進む。
【0040】
照射工程S2は、内視鏡装置1の絞り7を検査する検査機に内視鏡装置1をセットし、絞り7の開口を検査するための検査光を照射する検査光源を内視鏡装置1の検査孔35から挿入して検査光を絞り7へ照射する工程である。
【0041】
照射工程S2では、鏡筒カバー32が鏡筒本体37に固定された状態のまま、鏡筒カバー32及び鏡筒本体37に形成された検査孔35を通じて、先端面92Aの側から光ファイバ92を挿入する。このとき、先端面92Aは、図7(B)に示すように絞り7側に向けられている。
【0042】
照射工程S2では、検査光源91の光ファイバ92は、結像光学部84及びズームレンズ81の光軸L1に交差する方向から、結像光学部84とズームレンズ81との間へ挿入される。すなわち、検査光源91は、絞り7よりも撮像素子85側(像面側)に配置される。
【0043】
なお、照射工程S2では、光ファイバ92に曲げ応力が加わるのを抑制するために、検査光源91を保持して内視鏡装置1に対して相対移動させるマニピュレータを用いて光ファイバ92を先端92Aから検査孔35へ挿入してもよい。
【0044】
結像光学部84とズームレンズ81との間へ検査光源91の光ファイバ91が挿入されたら、検査光源91から、光ファイバ92に検査光が伝送され、この検査光は光ファイバ92の先端面92Aから出射されて鏡筒本体37の内部で絞り7の開口を覆う範囲に照射される。
これで照射工程S2は終了して撮像工程S3へ進む。
【0045】
撮像工程S3は、絞り7を通過した検査光を撮像部93において取得し、絞りの像を撮像する工程である。
上述の照射工程S2において、検査光は、光ファイバ92の先端面92Aから、ズームレンズ81を透過して絞り7の羽部材73a〜73h(図5参照)に照射されている。このとき、絞り7では、検査光の一部が羽部材73a〜73hによって遮られ、絞り7の開口を通過する検査光が撮像部93に入射する。
【0046】
撮像工程S3では、撮像部93において、絞り7の開口を通過した検査光を撮像素子93Bが受光し、画像データに変換して絞り7の開口の画像データをコンピュータ94に伝送する。
【0047】
また、撮像工程S3では、進退駆動部79を動作させて羽部材73a〜73hを旋回動作させ、最大口径d1から最小口径d2までの間で開口の口径を複数の大きさに変化させ、絞り7の開口の画像データを撮像素子93Bによって撮像してコンピュータ94に伝送する。
絞り7の開口の画像データがコンピュータ94に伝送されたら、撮像工程S3は終了し、画像加工工程S4へ進む。
【0048】
画像加工工程S4は、撮像部93で撮像された画像データをコンピュータ94によって加工する工程である。
画像加工工程S4では、コンピュータ94に伝送された絞り7の開口の画像データを、2値の画像データに変換する。これにより、羽部材73a〜73hによって遮られた部分が暗部、羽部材73a〜73hに遮られずに絞り7を通過した部分が明部となるように絞り7の開口の像が2値化される。例えば図8(A)及び図8(B)に示すように、画像加工工程S4において得られた暗部と明部との境界Q1は、絞り7の開口の形状を反映している。
これで画像加工工程S4は終了し、検査工程S5へ進む。
【0049】
検査工程S5は、暗部と明部との2値に変換された絞り7の開口の画像データに基づいて、コンピュータ94にあらかじめ記憶された基準円と比較して絞り7の形状不良を検出する工程である。
【0050】
検査工程S5では、開口の口径の設計上の大きさに基づいて設定された真円形の基準円C1、D1を、図8(B)に示すように絞り7の開口の画像データに重ねる。ここで、基準円C1の直径の大きさは、絞り7の開口の口径の直径が口径dとなるように進退駆動部79が駆動されたときの制御目標値の許容誤差の上限であり、基準円D1の直径の大きさは、このときの許容誤差の下限である。
【0051】
検査工程S5において、境界Q1で囲まれる領域と基準円C1及び基準円D1とを比較して、境界Q1で囲まれる領域が基準円C1、D1から許容誤差以上ずれていれば絞り7の芯ずれ(不良)が発生していると判定される。また、境界Q1で囲まれる領域が基準円C1よりも大きい、あるいは基準円D1よりも小さい場合には、羽部材73a〜73hの駆動量が進退駆動部79における制御目標値からずれている(不良)と判定される。
【0052】
図9(A)には、絞り7の開口の形状不良が発生している一例を示している。図9(A)においては、突起71c及び突起72hが磨耗して変形している例が示されている。図9(A)に示すように、羽部材73a〜73hのそれぞれを支持する突起71a〜71hあるいは突起72a〜72hが変形したりすると、羽部材73a〜73hのそれぞれの組み合わせにずれが生じ、絞り7の開口に隙間X1、X2などが発生して開口が略円形とならない場合がある。このような場合、検査工程S5では、図9(B)に示すように、絞り7の開口の形状を示す境界Q2が、隙間X1、X2の形状に沿って基準円C1より外側に位置する画像データが得られる。これにより、検査工程S5において絞り7の開口の形状不良であると判定される。
【0053】
このように、検査工程S5においては、絞り7の開口の口径の大きさ、及び絞り7の開口の形状について検査が行われ、口径及び形状に上述の不良が発生している場合には、開口の基準に対する位置ずれや、不良の種類と不良箇所が例えばコンピュータ94のモニタ上に示される。
【0054】
これで検査工程S5は終了する。検査工程S5の終了後、検査光源91を検査孔35から抜去して、検査孔35を接着剤などによって封止する。この接着剤は、水などの液体が検査孔35を通じて進入するのを防止するとともに、検査孔35を通じて外部の光が鏡筒本体37の内部に進入するのを防止するためのものである。
以上で内視鏡装置1の絞り7の検査は終了する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の内視鏡装置1によれば、検査光源91の光ファイバ92を鏡筒本体37の内部に案内する検査孔35が設けられているので、撮像素子85とズームレンズ81との間から絞り7の羽部材73a〜73hに向けて検査光を照射して、羽部材73a〜73hに遮られずに絞り7を通過した検査光を撮像部93で撮像できる。このため、内視鏡装置1に絞り7が組みつけられた状態で容易に且つ確実に絞り7の開口の形状を検査することができる。
【0056】
また、検査孔35の中心軸線O1が、検査孔35から鏡筒本体32における光軸L1に向かう方向に対して傾斜しているので光ファイバ92の先端面92Aは検査孔35の内壁面によって光軸L1上に案内される。このため、光ファイバ92を通じて伝送された検査光を効率よく絞り7に向けて照射することができる。
【0057】
また、本実施形態の絞りの検査方法によれば、照射工程S2において、撮像素子85とズームレンズ81との間に挿入された光ファイバ92から絞り7の開口を覆う範囲に検査光を照射するので、絞り7が内視鏡装置1に組みつけられた状態で容易に且つ精度よく絞り7の開口の形状を検査することができる。
【0058】
また、照射工程S2において、検査光源91を内視鏡装置1の外部から鏡筒本体37の内部へ、光軸L1の側方から挿入しているので、検査光源91の光ファイバ92が折れ曲がることなく鏡筒本体37の内部に光ファイバ92を容易に挿入することができる。
【0059】
また、検査工程S5においては、取り外し工程S1で光学アダプタ31が取り外された状態で絞り7の開口を検査しているので、例えば光学アダプタ31の第一の撮像光学系31Aなどのレンズ類を透過させずに、絞り7から出射された検査光を撮像部93に入射させることができる。その結果、絞り形状を直接検出することが可能になり、不良原因に対する対策を行うことができる為、精度よく検査することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述の実施形態では、検査孔35は鏡筒本体35における光軸L1に向かって中心軸線O1が延びるように形成されている例を示したが、検査孔の形状はこれに限られるものではない。例えば、検査孔の中心軸線が、光軸L1に交差する方向のいずれに向かって延びていてもよい。この場合、鏡筒本体の内部で検査光を出射させる位置を最適化すして絞りの開口を通過する光のむらを低減することができるため、絞りの開口の像を鮮明に撮像することができる。
【0061】
また、上述の実施形態では、光ファイバ92の先端面92Aは光軸L1上に位置する例を示したが、光ファイバ92の先端面92Aから照射される検査光が絞り7の羽部材73a〜73hに照射される位置であれば、検査孔35が光ファイバ92の先端面92Aを光軸L1上以外に案内するものであってもかまわない。
【0062】
また、検査光源91が光ファイバ92によって検査光を鏡筒本体32の内部に導入する例を示したが、これに限らず、検査光を発する発光部材を直接鏡筒本体32の内部に導入してもよい。
【0063】
また、本実施形態では光学アダプタ31を内視鏡装置1から取り外して絞り7の検査を行う例を示したが、内視鏡装置1の製造工程で光学アダプタ31を取り付ける直前の状態の内視鏡装置1の絞り7を検査するときには、取り外し工程S1を行わずに照射工程S2に進んでもよい。
【0064】
また、撮像部93において2値の画像データをコンピュータ94に伝送してもよく、この場合には、画像加工工程S4は省略されてもよい。
【0065】
また、上述の実施形態では、内視鏡装置1の絞り7を検査する例を示したが、これに限らず、本発明の絞りの検査方法によって、被検体の像を取得するための光学系を有する光学機器に組みつけられた様々な絞りを検査することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 内視鏡装置
2 挿入部
3 画像取得部
7 絞り
32 鏡筒カバー
37 鏡筒本体
35 検査孔
91 検査光源
L1 光軸
S1 取り外し工程
S2 照射工程
S4 撮像工程
S5 検査工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の像を取得するための光学系を有する光学機器に組みつけられた絞りを検査する絞りの検査方法であって、
検査光を出射する検査光源を前記絞りよりも前記光学系の像面側に配置し、前記検査光を前記絞りの開口を覆う範囲に照射する照射工程と、
前記絞りを通過した前記検査光により前記開口の像を撮像し、前記撮像された像の形状に基づいて前記絞りを検査する検査工程と、
を備えることを特徴とする絞りの検査方法。
【請求項2】
前記照射工程において、前記検査光源は、前記光学機器の外部から内部へ、前記光学系の光軸に対して側方から挿入されることを特徴とする請求項1に記載の絞りの検査方法。
【請求項3】
前記検査工程において、前記光学系のうち前記絞りより物体側に設けられた光学系を取り外して前記像を撮像することを特徴とする請求項1または2に記載の絞りの検査方法。
【請求項4】
被検体の内部を観察するための内視鏡装置であって、
前記被検体の内部に挿入される挿入部と、
前記挿入部を前記被検体に挿入する挿入方向の先端に配置され、前記被検体の内部の画像を取得するための撮像光学系が収められた鏡筒と入射光量を調整するための絞りとを有する画像取得部と、
を備え、
前記画像取得部は、前記撮像光学系の像面側から前記絞りに向けて検査光を照射する検査光源を前記画像取得部の内部に挿入するために、前記鏡筒の外壁を貫通して形成された検査孔を備えることを特徴とする内視鏡装置。
【請求項5】
前記画像取得部は、前記画像を取得する撮像素子をさらに有し、
前記検査孔は、前記絞りと前記撮像素子との間に前記検査光源を挿入可能に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記検査孔の中心軸線は、前記検査孔から前記鏡筒の中心軸線に向かう方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項4または5に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記検査孔の中心軸線は、前記結像光学系の光軸に交差する方向に延びていることを特徴とする請求項4または5に記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記検査孔の中心軸線は、前記結像光学系の光軸に直交する方向に延びていることを特徴とする請求項4または5に記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−137745(P2011−137745A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298559(P2009−298559)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】