説明

給茶方法及び給茶装置

【課題】苦渋味と雑味が少なく旨みが多く、抽出鮮度の高い香味や水色に優れた茶飲料を低温、高温の双方で連続的に好みの濃度で給茶でき、機械装置等をコンパクトにでき、加熱効率を高め、抽出液の増殖を抑制し安全性を高めた給茶方法及び給茶装置を提供する。
【解決手段】茶葉2を低温で長時間かけてBrix値1.0〜4.0%の高濃度の抽出液11を抽出する抽出装置1と、抽出した抽出液を冷蔵保存する液体用クーラー5と、液体用クーラーから抽出液を取り出して送り出す定量供給装置12と、取り出された抽出液11を瞬間加熱する瞬間加熱装置6と、加熱された高温の抽出液を給茶する高温給茶口7と、取り出された抽出液を低温のまま給茶する低温給茶口9と、取り出された抽出液を高温給茶口側と前記低温給茶口側とに切り換える切換弁13と、高温の抽出液に温水を加水する温水加水装置8と、低温の抽出液に冷水を加水する冷水加水装置とから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉等の原料からお茶を抽出して給茶する給茶方法及び給茶装置に関し、特に、低温のお茶と高温のお茶を給茶できる給茶方法及び給茶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、茶葉を複数杯分または一杯分毎に高温の熱水で飲用に適する濃度で抽出し、そのまま直接給茶するか、または一時保存した後に給茶する給茶装置が製品化されている。
【0003】
また、コーヒー粉や茶葉等の原料から飲料を高温で抽出し、抽出した飲料を瞬間冷却して低温保存し、保存した飲料を供するとき、その飲料を加熱装置で適温に昇温するものも知られている。この例として、図10に示す飲料供給装置がある。
【0004】
図10の飲料供給装置は、茶葉106等の原料から飲料を熱水107で抽出する抽出装置101と、この抽出装置101により抽出した飲料を急速に冷却する瞬間冷却装置102と、瞬間冷却装置102により冷却された飲料を所定量保冷する保冷容器103と、保冷容器103から汲み出しポンプ104を介して飲料を急速に加熱する瞬間加熱装置105とから構成されている。また、保冷容器103には、飲料の変質を防ぐため不活性ガス供給装置が接続されている。瞬間加熱装置105は、加熱機によって加熱された加熱用ブラインが循環する断熱容器と飲料が通る加熱パイプとから構成される熱交換器を備え、加熱パイプを流れる飲料と加熱用ブラインを熱交換することにより、飲料を瞬間加熱するようになっている。
【0005】
このように構成された飲料供給装置では、茶葉106等の原料を収納した抽出装置に85°Cに加熱した熱水107を供給して、複数杯分の日本茶等の飲料を抽出し、抽出した飲料108を瞬間冷却装置102によって、4°Cまで急速に冷却する。急速冷却された飲料108は、保冷容器103に供給され、保冷容器内で4°Cの温度で保存される。保冷容器103からカップ109に飲料108を供給するときは、保冷容器103からカップ109一杯分の飲料108を汲み出しポンプ104を介して瞬間加熱装置105に供給して70°Cまで昇温して供給するようになっている。また、保冷容器103に保存した飲料108の変質を避けるため、保冷容器103内に不活性ガスが供給されている。
図10の飲料供給装置に関連する文献として、後掲する特許文献1がある。
【0006】
さらに、茶葉等の原料を低温抽出する飲料生成装置も知られている。この例として、図11に示す飲料生成装置がある。
【0007】
図11の飲料生成装置は、茶葉等の飲料原料205から抽出されるエキスを液体206に混合して飲料207を生成する抽出室201と、飲料原料205と抽出室において生成された飲料207とを分離する濾し部材202と、抽出室201に連通し、濾し部材202によって分離された飲料207を収容する収容室203と、抽出室201と収容室203のうち少なくとも一方を加熱する加熱手段204とから構成され、抽出室201で飲料原料205を60°C以下、好ましくは、20°C〜60°Cの液体206で低温抽出したり、あるいは、20°C以下、好ましくは10°C以下の液体206で低温抽出するようになっている。
【0008】
この飲料生成装置で、高温の飲料を供給するときは、加熱手段204により、低温抽出した飲料207を所望の温度まで昇温して供給し、低温の飲料を供給するときは、加熱手段204を作動させないで、低温抽出した飲料207をそのまま供給するようになっている。
図11の飲料生成装置に関連する文献として、後掲する特許文献2がある。
【0009】
【特許文献1】特開平8−89406号公報
【特許文献2】特開2007−75575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した従来の茶葉を高温の熱水で短時間で抽出するものは、高温短時間で抽出されるタンニン及びカフェインなどの苦渋味成分が多量に抽出されることで味のバランスが失われ苦渋い、お茶になったり、抽出液の味を阻害する雑味成分類も多く抽出され、お茶の味が阻害されるおそれがある。また、高温によりクロロフィルやタンニンの酸化が進み、抽出液本来の鮮緑色の水色が短時間に褐変してしまうことがある。
【0011】
前述した高温抽出した飲料をそのまま一時保存する方式の抽出装置の場合、保存中に酸化等による香味劣化が起こることがある。
【0012】
前述した一杯毎に抽出する方式で一杯毎に茶葉を交換する方式の場合、抽出時間が30秒前後と短時間であるため、お茶の旨み成分で溶出に時間を要するテアニン等のアミノ酸類を十分に抽出できないという問題がある。
【0013】
前述した一杯毎に抽出する方式で同一の茶葉バッチから複数杯抽出する方式の場合、一杯目と複数杯目とでは、濃さが変わるという問題が生じる。
【0014】
前述した図10の飲料供給装置は、高温の熱水で抽出するため、前述した高温抽出と同様の問題がある上、高温の熱水で抽出した飲料を低温保存するため、瞬間冷却装置が必要で、装置が高価となる。また、高温の飲料を供給する場合、高温抽出した飲料を急速冷却し、その後、加熱装置で昇温して供するため、飲料の温度変化が大きく、風味を損なうおそれがある。
【0015】
さらに、図10のものでは、低温の飲料を供給しようとすれば、瞬間加熱装置の熱交換器の断熱容器を流れる加熱用ブラインの循環を止めたり、ヒータを止めたりして行なう必要がある。この状態で、低温の飲料が流れると、断熱容器内の加熱用ブラインは、低温の飲料によって冷却されてしまう。そのため、低温の飲料に続いて連続的に高温の飲料を供給しようとすると、すでに断熱容器内の加熱用ブラインが冷えており、飲料を加熱するのに時間がかかり、短時間で十分に加熱されないおそれがある。また、高温の飲料に続いて連続的に低温の飲料を供給する場合には、低温の飲料が断熱容器内の加熱用ブラインの余熱で加熱されてしまい、所望の低温の飲料を供給できないおそれがある。すなわち、図10のものは、高温の飲料と低温の飲料を連続的に供給することを意図していない。
【0016】
前述した図11の飲料生成装置は、低温抽出ができるものであるが、加熱手段が抽出室あるいは収納室に設けられているため、例えば、高温の飲料から低温の飲料に切換える場合、収納室の高温の飲料をすべて排出し、再度抽出作業から行なわなければならず、高温の飲料の供給と低温の飲料の供給を即座に連続して行なうことができない。
【0017】
さらに、前述した従来のものは、いずれも抽出した飲料をそのままの濃度で供給するため、一定の低濃度でしか抽出されず、消費者の好みに合わせた濃度で飲料を供給することができないという問題があった。
【0018】
また、飲用濃度であるBrix値0.2〜0.4%という低濃度で抽出するため、抽出するための液体の量を多くする必要があり、抽出装置、保存容器、加熱装置、冷却装置等の機械装置が大きくなり、飲料抽出装置や飲料生成装置をコンパクトにまとめることが困難であったり、抽出液の加熱昇温効率が悪く、加熱時間と加熱コストが大きくなるという問題があった。また、低濃度で抽出し、保存するため、抽出液中で微生物が繁殖するおそれもある。例えば、図10に示すものでは、抽出液の変質を防ぐため、不活性ガス供給装置を保冷容器に接続している。このため、図10のものでは、装置が複雑となったり、窒素ガス代による運転コストの上昇やガスボンベ交換の煩雑さがある。
【0019】
本発明は、前述した従来技術の問題点に鑑み、苦渋味と雑味が少なく旨みが多く、緑茶の場合は、鮮やかな緑色が保持された抽出鮮度の高い香味や水色に優れた好みの濃度の茶飲料を低温、高温の双方で短時間に連続的に給茶でき、また、機械装置等をコンパクトにでき、しかも、加熱効率を高め、抽出液の冷蔵保管中の菌の増殖を抑制し安全性を高めた給茶方法及び給茶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の課題を解決するための第1の解決手段は、特許請求の範囲の請求項1のように、茶葉、茶粉等の原料から抽出液を抽出して給茶する給茶方法であって、前記原料を低温で長時間かけてBrix値1.0〜4.0%の高濃度かつ低温の抽出液を抽出装置によって抽出し、該抽出した抽出液を液体用クーラーに冷蔵保存し、該冷蔵保存した抽出液を給茶の都度、定量供給装置によって定量取り出し、該取り出した抽出液を瞬間加熱装置で瞬間加熱して高温の抽出液として給茶する高温給茶と前記取り出した抽出液を低温のまま抽出液として給茶する低温給茶とを切換弁によって選択的に切り換えるようにし、前記高温給茶が選択されたとき、前記給茶された高温の抽出液に所望の量の温水を温水加水装置によって加水し、前記低温給茶が選択されたとき、前記給茶された低温の抽出液に所望の量の冷水を冷水加水装置によって加水し、前記高温給茶と前記低温給茶を連続的に行なえるようにしたことにある。
【0021】
本発明の課題を解決するための第2の解決手段は、特許請求の範囲の請求項2のように、茶葉、茶粉等の原料から抽出液を抽出して給茶する給茶装置であって、茶葉や茶粉等の原料を低温で長時間かけてBrix値1.0〜4.0%の高濃度かつ低温の抽出液を抽出する抽出装置と、該抽出した抽出液を冷蔵保存する液体用クーラーと、該液体用クーラーから給茶の都度定量の抽出液を取り出して送り出す定量供給装置と、該定量供給装置で取り出された抽出液を瞬間加熱する瞬間加熱装置と、該瞬間加熱装置で加熱された高温の抽出液を給茶する高温給茶口と、前記定量供給装置で取り出された抽出液を低温のまま給茶する低温給茶口と、前記定量供給装置で取り出された抽出液が前記高温給茶口側と前記低温給茶口側とのいずれかに供給されるように切り換える切換弁と、前記高温給茶口から給茶された高温の抽出液に所望の量の温水を加水する温水加水装置と、前記低温給茶口から給茶された低温の抽出液に所望の量の冷水を加水する冷水加水装置とから構成したことにある。
【0022】
これら解決手段によれば、茶葉を低温度帯でかつ長時間かけてBrix値1.0〜4.0%という高濃度に抽出することにより、低温での溶出が遅い苦渋味成分(タンニン、カフェイン)及び雑味成分の抽出を極力抑制し、一方、低温でも比較的溶出速度の速い旨み成分(テアニン等のアミノ酸類)を極力多く抽出し、低温により抽出中の酸化及び褐変を抑制し、さらに高濃度に抽出することで、抽出液中の微生物の繁殖を抑制する。この抽出した高濃度の抽出液を冷蔵保存することで、酸化、褐変及び微生物繁殖を抑制し、いつでも鮮度の高い抽出液を連続的に給茶せしめる。さらに、高濃度の抽出液を給茶の都度瞬間加熱装置により瞬時加熱し、高温度帯で給茶するか、あるいは低温のまま冷茶として給茶する。また、給茶時に、温水または冷水を加水して、抽出液の濃度を好みに応じた濃度に自由に調整したお茶が供給できる。
【0023】
前述した解決手段における実施の形態として、例えば、次のものがあり、これら実施の形態は、それぞれ適宜選択して実施することができる。
【0024】
抽出液を抽出する抽出温度は、0〜40°Cであり、好ましくは、5〜30°Cがよい。茶葉を抽出する時間は、5〜90分である。高濃度の抽出液を冷蔵保存する温度は、5〜10°Cであり、冷蔵された抽出液を瞬間加熱する温度は、70〜90°Cである。瞬間加熱された抽出液に加水される温水の温度は、70〜90°Cであり、また、冷蔵された抽出液に加水される冷水の温度は、5〜20°Cである。温水や冷水を加水することなく、高濃度の茶飲料をそのまま給茶してもよい。Brix値は、1.0〜4.0%でよいが、好ましくは、1.6〜4.0%、より好ましくは、2.8〜4.0%とするのがよい。
【0025】
茶葉を抽出する抽出方式は、その用途に応じて、バッチ抽出方式や連続抽出方式等が採用できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、苦渋味と雑味が少なく旨みが多く、緑茶の場合は、鮮やかな緑色が保持された抽出鮮度の高い香味、水色に優れた好みの濃度のお茶を低温、高温の双方で短時間に連続的に給茶することが可能となる。
また、高濃度抽出であることにより、機械装置をコンパクトにし、抽出液の加熱昇温効率を高め、加熱時間と加熱コストを低減でき、また、抽出液の冷却及び冷蔵コストも低減できる。さらに、抽出液の冷蔵保管中の菌の増殖を抑制し、安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の給茶方法及び給茶装置の実施の形態を図1乃至5に基づいて説明する。図1は、本発明の基本的な給茶方法及び給茶装置の一実施の形態を示す。図2は、本発明に使用されるバッチ方式の抽出装置の一例を示し、図3、本発明に使用される連続抽出装置の一例を示す。図4は、本発明の液体用クーラーや冷水加水装置の一実施の形態を示し、図5は、本発明の瞬間加熱装置や温水加水装置の一実施の形態を示す。
【0028】
本発明の基本的な給茶方法の一実施の形態を、図1を参照して説明する。まず、茶葉2や茶粉等の原料に液体3を加え、低温で長時間かけてBrix値1.0〜4.0%の高濃度かつ低温の抽出液を抽出装置1で抽出する。次いで、該抽出した抽出液を液体用クーラー5で冷蔵保存する。該冷蔵保存した抽出液11を給茶の都度、定量供給装置12によって定量取り出す。取り出した定量の抽出液を瞬間加熱装置6で瞬間加熱して高温の抽出液として給茶する高温給茶と低温の抽出液のまま給茶する低温給茶とを切換弁13によって切り換えて高温給茶と低温給茶のいずれかの給茶を行なう。次いで、高温給茶が選択されたとき、給茶された高温の抽出液に所望の量の温水を温水加水装置8によって加水し、低温給茶が選択されたとき、前記給茶された低温の抽出液に所望の量の冷水を冷水加水装置10によって加水する。このようにして、高温のお茶と低温のお茶を連続的に給茶できるようにする。
【0029】
この給茶方法を実施する給茶装置の一実施の形態を図1に基づいて説明する。図1において、符号Aは、筐体Bに収納された給茶装置である。給茶装置Aは、基本的には、茶葉や茶粉等の原料2に液体3を加え、低温で長時間かけてBrix値1.0〜4.0%の高濃度かつ低温の抽出液11を抽出する抽出装置1と、抽出装置1で抽出した抽出液11と原料を分離する固液分離器4と、固液分離器4で分離した抽出液11を冷蔵保存する液体用クーラー5と、該液体用クーラー5から給茶の都度定量の抽出液11を取り出して送り出す定量供給装置12と、定量供給装置12で取り出した抽出液11を瞬間加熱する瞬間加熱装置6と、瞬間加熱装置6で加熱された高温の抽出液11を給茶する高温給茶口7と、定量供給装置12で取り出した抽出液11を低温のまま給茶する低温給茶口9と、定量供給装置12で取り出した抽出液11が高温給茶口7側と低温給茶口9側とのいずれかに供給されるように切り換える切換弁13と、高温給茶口7から給茶される高温の抽出液11に所望の量の温水を加水する温水加水装置8と、低温給茶口9から給茶される低温の抽出液11に所望の量の冷水を加水する冷水加水装置10とから構成されている。なお、抽出装置1で固液分離できる場合は、固液分離器4は、省略してもよい。
【0030】
この給茶装置Aにおいて、抽出装置1と液体用クーラー5は、供給配管14で接続されており、この配管14中に固液分離器4が配設される。
【0031】
液体用クーラー5には、抽出液11を取り出すための取り出し配管15が配設されている。この取り出し配管15は、切換弁13を介して、瞬間加熱装置6に接続される高温給茶用配管16aと、低温給茶口9に接続する低温給茶用配管17に接続されている。さらに、瞬間加熱装置6と高温給茶口7は、高温給茶用配管16bによって接続されている。定量供給装置12は、液体用クーラー5と切換弁13との間に配設されている。
【0032】
温水加水装置8は、温水配管18によって、高温給茶用配管16bに接続されている。また、図示しないが、温水配管18は、高温給茶口7に直接接続してもよい。冷水加水装置10は、冷水配管19によって、低温給茶用配管17に接続されている。また、図示しないが、冷水配管19は、低温給茶口9に直接接続してもよい。
【0033】
次に、給茶方法及び給茶装置Aの各構成を具体的に説明する。
茶葉を低温で抽出する抽出温度は、0〜40°C、好ましくは、5〜30°Cとされる。この抽出温度は、茶葉の種類によって異なり、例えば、緑茶の場合、深蒸し緑茶は、低温でも抽出速度や抽出効率が高いので、5°C程度でも効率よく所望の抽出液を得ることができる。抽出温度が5°C未満でも抽出ができないことはないが、茶葉の抽出効率や抽出速度も5°C以下であると低下し、迅速な提供やコストに影響がでること、後述するように、液体用クーラー5で冷蔵保存される抽出液11の温度が5〜10°Cであること、水道水の年間最低温度は通常5°Cであること等を考慮して、5°C以上にするのが好ましい。
【0034】
逆に、抽出速度の遅い浅蒸しの緑茶は、温度を30〜40°C程度に設定して抽出を促進しなければ効率よく抽出液を得ることができない。抽出温度が40°C以下であれば、苦渋味と雑味が少なく旨みが多く、緑茶の場合は、鮮やかな緑色が保持された抽出鮮度の高い香味、水色に優れた抽出液が抽出できる。抽出温度が高温になると、抽出装置で抽出される抽出液に苦渋みの原因物質であるタンニン及びカフェインが高濃度に抽出され、苦渋いお茶になったり、抽出液の味を阻害する雑味成分類も多く抽出され、本来の味が阻害されるおそれがある。したがって、抽出温度は、40°C以下とし、また、より低温で抽出するためには、抽出速度の遅い浅蒸しの緑茶は抽出温度が30°C程度でも効率よく抽出できること、液体用クーラー5で貯蔵される抽出液11の温度が5〜10°Cであること、水道水の年間最高温度は通常30°Cであること等を考慮して、30°C以下にするのが好ましい。
【0035】
茶の味を構成する主要3成分(タンニン、アミノ酸、カフェイン)の抽出温度の違いによる溶出速度に関する一試験結果を図6及び7に表とグラフで示す。図6は、本発明の低温抽出の結果を示し、図7は、従来の高温抽出の結果を示す。
この試験方法は、国産緑茶葉3.0gを200mlの30°Cの低温(本発明の低温抽出)と85°Cの高温(従来の高温抽出)の2温度帯の純水で、各1分、2分、3分、5分、20分、60分間抽出し、各抽出水のタンニン量を酒石酸鉄比色法で、総アミノ酸量をニンヒドリン比色法で、カフェインを高速液体クロマトグラフ法で測定したものである。
この試験結果によれば、一般的な給茶機などの平均的抽出温度である85°Cで抽出した場合、図7に示すように、お茶の旨味成分であるアミノ酸、渋味成分であるタンニン、苦味成分であるカフェインの主要3成分の全てが2分前後でその多くが急速に溶出することが分かる。
一方、本発明の30°Cの低温で抽出した場合は、図6に示すように、味を構成する主要3成分の内、アミノ酸の溶出量と溶出速度に比し、タンニンとカフェインの溶出速度と溶出量が抑制されることが分かる。30°Cの低温抽出では、全体的にアミノ酸を抽出しつつ、タンニンとカフェインの溶出を制限することができる。さらに抽出時間によって溶出速度の異なる主要3成分の溶出バランスを選択することで、抽出液の味を調整することができる。
【0036】
茶葉を抽出するため抽出装置1に供給される液体3は、通常、水道水の温度が、年間を通して5〜30°C程度であり、水道水をそのまま使用して抽出できるが、季節変動があり、茶葉の種類等に応じて効率のよい抽出温度で抽出を行なうためには、後述するように、抽出装置1に温度制御手段を設けて制御するのがよい。
【0037】
抽出液中の微生物の繁殖を抑制するため、茶葉2はBrix値1.0〜4.0%の高濃度で抽出される。好ましくは、1.6〜4.0%、より好ましくは、2.8〜4.0%とするのがよい。このような高濃度で抽出するため、抽出装置1での抽出時間は、茶葉2の量、種類に応じて、5〜90分に設定される。抽出時間が5分未満であると、茶葉の種類あるいは抽出温度によっては、Brix値1.0以上の高濃度の抽出液11を抽出できないおそれがある。抽出時間が90分を超えても、溶出し得る有益な成分が既に溶出されているため、それ以上効率的な抽出は期待できない。
【0038】
ここで、Brix値とは、抽出液を分光糖度計により測定した値で、可溶性固形分の濃度を示す指標であり、通常飲用するお茶のBrix値は0.2〜0.4%という低濃度である。Brix値と抽出時間の相関について、一試験結果を図8の表に示す。この試験の条件は、次のとおりである。
使用茶葉:普通煎茶
抽出水:純水を使用
茶葉量・抽出水量:茶葉10gに対し抽出水量100cc
抽出温度:茶葉投入時水温30°C。常温で放置。
攪 拌:計測時直前(固液分離直前)にガラス棒にて攪拌
この試験結果では、抽出時間が5分未満でもBrix値が1.0%以上となっているが、使用茶葉が普通煎茶で、抽出温度を30°Cとしたためであり、前述したように、抽出時間が5分未満であると、茶葉の種類や量あるいは抽出温度によっては、Brix値1.0以上の高濃度の抽出液11を抽出できないおそれがある。例えば、この試験で茶葉10gに100ccというのは、高いBrix値を得るため抽出水量に対し茶葉量がかなり多い設定であり、この設定比率では、抽出中の茶葉と抽出液の流動性がかなり悪く、扱い難い状態となる。現実的に機械抽出に落とし込む場合は、茶葉の比率をもう少し落とし、抽出中の液体の機械適性を高めることになり、この結果、抽出液のBrix値は、5分未満であると1.0を超えるのが難しくなる。
【0039】
次に、Brix値と微生物の繁殖に関する一試験例を図9の表に示す。この試験方法は、無菌状態で秤量した国産緑茶葉100gを30°Cの無菌蒸留水1000ccで定期的に攪拌しながら60分間抽出し、茶漉しでろ過した後Brix値2.8%の高濃度抽出液を得た。同抽出液を滅菌蒸留水でBrix値1.6%に希釈した中濃度区と、一般的な緑茶の飲用濃度であるBrix値0.3%に希釈した低濃度区を作成した。
各濃度区の抽出液の菌の増殖に対する抑制作用を測定するため、大腸菌群(Enterobacter Aerogenes)のEasy QA Ball:菌数10,000cfu/ball(日水製薬(株)製)を各濃度区60mlに対し1個を添加し室温下にて静置した。菌の添加直後、及び3、6、9、12、18時間後に、各濃度区の抽出液1mlをシャーレに採り、50°Cに保った標準寒天培地20mlを加え混合し平板固定し、35°Cで48時間培養した後に出現したコロニーをカウントし、各2つの平板での測定値の平均値を菌測定値(cfu/ml)とした。また、別に菌を添加しない各濃度区の抽出液を作成し、同様に菌を測定した。
この試験によれば、茶飲料などでの一般的な飲用濃度であるBrix値0.3%の茶抽出液では、菌の添加から6時間前後には菌の増殖が始まり、以後急激に増殖が進む。一方、Brix値1.6%の中濃度の抽出液では、菌の増殖が始まる時間が9時間後と遅れると同時に増殖速度も鈍り、さらにBrix値2.8%の高濃度区ではより菌の増殖抑制効果が顕著に見られた。
このことから、茶を高濃度に抽出することにより抽出液中の菌の増殖を抑制し、抽出液一定時間保管する場合に安全性を確保することができることが分かる。
【0040】
茶葉から抽出液11を抽出する抽出装置1は、用途に応じて、バッチ抽出方式や連続抽出方式等が使用される。
【0041】
バッチ抽出方式の抽出装置20の一例を図2に示す。抽出装置20は、所望の量の茶葉2と液体3とを収納できる断熱性の抽出槽21内に必要量の茶葉2と液体3を一度で全量投入し、抽出槽21内でそのまま5〜90分かけてBrix値1.0〜4.0%の抽出液11を抽出し、抽出が終了した後、抽出槽21内の抽出液11を給茶に供するものである。抽出槽21に供給する液体3は、用途に応じて、抽出槽21に直接投入するか、あるいは、筐体B内に設けた液体貯留槽(図示せず)から供給したり、水道管を抽出槽21に接続して供給する。また、抽出槽21には、茶葉2と抽出液11を撹拌し、抽出速度や抽出効率を高めるため、撹拌手段、例えば、モータ駆動31の回転撹拌翼30や、あるいは、振動装置(図示せず)等を設けるとよい。
【0042】
抽出槽21の底部は、供給配管14に設けた弁29を介して固液分離器4に接続されている。弁29は、抽出装置20で抽出が終了したとき開かれ、抽出槽21内の抽出液11と茶葉2が固液分離器4へ送られる。弁29は、例えば電磁弁として、タイマー(図示せず)等で抽出時間をセットし、タイマー等が抽出時間の完了を計時したとき、タイマー等に連動して弁29を開いたり、後述する冷却ブラインの循環を停止するとよい。さらに、抽出槽21に低水位センサー(図示せず)を設け、抽出装置20で抽出した抽出液11を液体用クーラー5に供給し終わったとき、すなわち、低水位センサーが低水位を検知したとき、弁29を閉じるようにして、供給配管14を通して液体用クーラー5に空気や抽出槽21に残った残液が入らないようにし、液体用クーラー5に貯蔵された抽出液11の酸化及び褐変等を抑制する構成としてもよい。
【0043】
抽出槽21には、抽出温度を0〜40°Cに維持するため、熱交換器が設けられている。熱交換器は熱交換パイプ22から構成されている。熱交換パイプ22には、図示しない、圧縮機、凝縮器、減圧装置、蒸発器からなる冷凍機23で冷却された冷却用ブラインが循環する。冷却用ブラインは、ポンプ24によって冷凍機から送り管27を介して熱交換パイプ22に送られ、抽出槽21内の液体3と熱交換した後、戻り管28から冷凍機23に戻るようにされている。また、送り管27には、温度制御手段として、流量調節弁25とヒータ26とが順次設けられており、流量調節弁25とヒータ26とによって抽出温度が設定温度になるように制御される。
【0044】
連続抽出方式は、撹拌翼を備えた抽出槽内に茶葉と液体を連続的に供給して混合して抽出液を抽出し、抽出された抽出液と茶殻を分離して順次連続的に取り出すようにしたもので、この抽出装置の一つの例として、交流式連続抽出装置32の一例を図3に示す。抽出装置32は、長手方向に緩やかに傾斜して液体3が傾斜に沿って流れるようにした横長の抽出槽33と、抽出槽33内の長手方向に軸支され、モータ35で駆動され、茶葉2を移送・攪拌する回転撹拌翼34とを備えている。液体3は、用途に応じて、前述した液体貯留槽から供給したり、水道管を抽出装置32に接続して供給する。
【0045】
液体3の流れ方向にみて、抽出槽33の天板の上流側には、液体3を抽出槽33に供給する液体供給口37が設けられ、その天板の下流側には、茶葉2を抽出槽33に供給する茶葉供給口36が設けられている。液体3は、流量調節弁(図示せず)等によって、抽出量や抽出濃度に応じた所定の量の液体3が所定の時間をかけて、液体供給口37から抽出槽33に連続的に供給され、抽出槽33の上流側から下流側に流れる。一方、茶葉2も、流量調節弁(図示せず)等によって、所定の量の茶葉が所定の時間をかけて、コンベア(図示せず)等を介して茶葉供給口36から抽出槽33に連続的に供給され。供給された茶葉2は、回転撹拌翼34によって撹拌されながら抽出槽33の下流側から上流側に移送され、上流側から流れてくる液体3と交流、混合しながらBrix値1.0〜4.0%の抽出液11が抽出される。
【0046】
抽出装置32は、タイマー(図示せず)等で抽出時間をセットし、タイマー等が抽出時間の完了を計時したとき、運転を停止したり、後述する冷却ブラインの循環を停止するようにするとよい。また、前述した茶葉2や液体3の流量を調節する流量調節弁も、抽出装置32の運転に連動して開閉するとよい。さらに、供給配管14に前述した弁29と同様の弁(図示せず)を設け、抽出装置32を運転しているときは該弁を開き、抽出装置32で抽出した抽出液11を液体用クーラー5に供給し終わったとき、例えば、抽出装置32での抽出が完了したことを検知したとき、この弁を閉じて、供給配管14を通して液体用クーラー5に空気や抽出槽33に残った残液が入らないようにし、液体用クーラー5に貯蔵された抽出液11の酸化及び褐変等を抑制するようにしてもよい。また、この交流式抽出装置の場合、抽出速度と抽出濃度を調整する方法の一つとして、抽出槽33の角度を調整するようにしてもよい。この抽出槽33の角度を大きくすれば、抽出液11の下流へ流れる速度が増し、抽出時間が短くなり、逆に抽出濃度が高くなる。
【0047】
また、抽出槽33の上流側端部には、抽出液11を抽出した後の茶殻4‘を取り出す茶殻取り出し口39が設けられ、抽出槽33の底部下流側には、抽出した抽出液11を取り出す抽出液取り出し口38が設けられている。抽出液取り出し口38は、供給配管14に接続され、抽出装置32で抽出された抽出液11が、順次連続的に液体クーラー5へ供給される。
【0048】
抽出槽33の底部には、抽出温度を0〜40°Cに維持するため、回転撹拌翼34に沿って、伝熱盤40が設けられている。伝熱盤40の内部には、冷却通路41が設けられており、前述した冷凍機23と同様に構成された冷凍機42で冷却された冷却用ブラインが、ポンプ43によって送り管46を通って伝熱盤40の冷却通路41へ送られ、ここで抽出槽33内の抽出液11と熱交換した後、戻り管47から冷凍機42に戻るようになっている。また、送り管46には、温度制御手段として、流量調節弁44とヒータ45とが順次設けられており、流量調節弁44とヒータ45とによって抽出温度が設定温度になるよう制御される。(符号48〜49欠番)
【0049】
固液分離器4は、フィルターを備え、固液分離が完了したとき、手動で、あるいは、自動で茶殻4’を外部に排出する。
【0050】
液体用クーラー5は、抽出した抽出液11が酸化したり、褐変したり、あるいは、微生物が繁殖しないように、抽出液11を5〜10°Cの温度で冷蔵保存するもので、図4に示すように、抽出した抽出液11を収納できる大きさの断熱容器50と、断熱容器50に設けられ、冷却パイプ51からなる熱交換器を備えている。また、断熱容器50に高水位センサーと低水位センサーを設け、高水位センサーが高水位を検知したとき、前述した弁29を閉じるようにすれば、液体用クーラー5から抽出液11があふれるのを防止することができる。また、低水位センサが低水位を検知したとき、警報を発するか、あるいは、表示するようにすれば、液体用クーラー5が空であることを知らせることができる。
【0051】
図4において、冷却パイプ51には、前述した冷凍機23と同様に構成された冷凍機52で冷却された冷却用ブラインが循環する。冷凍機52で冷却された冷却用ブラインは、ポンプ53によって送り管56,56aを通って冷却パイプ51へ送られ、液体用クーラー5の抽出液11を冷却した後、戻り管57を通って冷凍機52に戻るようになっている。抽出液11を5〜10°C内の所望の特定の温度に設定する場合には、送り管56aに、温度制御手段として、流量調節弁54とヒータ55を設け、流量調節弁54とヒータ55とによって抽出液11が設定温度になるように制御するとよい。(符号58,59欠番)
【0052】
定量供給装置12は、液体用クーラー5に保存された抽出液11を給茶の都度一定量取り出して送り出すもので、例えば、定量ポンプから構成できる。この定量供給装置12は、例えば、スイッチ(図示せず)を操作している間、所望の抽出液11を送り出したり、あるいは、スイッチを操作したとき、一定量の抽出液11を送り出すように構成できる。切換弁13は、高温給茶が選択されたとき、取り出し配管15が高温給茶用配管16aに連通し、低温給茶が選択されたとき、取り出し配管15が低温給茶用配管17に連通するように切り換えるもので、例えば、電磁切換弁として構成できる。定量供給装置12及び切換弁13は、高温給茶や低温給茶の操作、例えば、高温給茶・低温給茶選択スイッチの選択操作に連動して作動するようにするとよい。
【0053】
瞬間加熱装置6は、液体用クーラー5から給茶の都度取り出した抽出液11を高温の給茶に適した70〜90°Cに瞬間加熱するもので、図5に示すように、加熱機60と熱交換器とから構成される。加熱機60は、ヒータ(図示せず)から構成され、加熱用ブラインを加熱する。熱交換器は、加熱用ブラインが循環する断熱容器61と、抽出液11が通る加熱パイプ62とから構成されている。
【0054】
加熱機で加熱された加熱用ブラインは、ポンプ63によって送り管65,65aを通って断熱容器61へ送られ、断熱容器61から戻り管66を通って加熱機60に戻るようになっている。一方、定量供給装置12から送り出された抽出液11は、高温給茶用配管16aから加熱パイプ62へ送られ、断熱容器61内の加熱用ブラインと瞬時に熱交換して高温となって、高温給茶用配管16bへ送られる。抽出液11を70〜90°C内の所望の特定の温度に設定する場合には、送り管65a中に、温度制御手段として、流量調節弁64を設けて、抽出液11が設定温度になるよう制御するとよい。
【0055】
温水加水装置8は、70〜90°Cの温水を高温給茶口7から給茶される高温の抽出液11に加水するもので、用途により、温水貯留方式や図5に示す瞬間加熱方式が採用される。
【0056】
温水貯留方式は、筐体Bに設けた断熱性温水容器(図示せず)と、温水容器に設けた加熱器(図示せず)と、後述する可変定量供給手段70と同様の可変定量供給手段(図示せず)とを備えている。この方式では、温水容器で加熱貯留された温水が、可変定量供給手段によって給茶の都度取り出され、温水配管18を介して、高温給茶口7から給茶された高温かつ高濃度の抽出液11に加水されるようになっている。加熱器を流れる加熱用ブラインは、後述する瞬間加熱手段67の加熱用ブラインと同様の手段によって加熱される。温水容器に貯留される水は、直接投入する外、前述した液体貯留槽から供給したり、水道管に接続して供給してもよい。
【0057】
図5に示す瞬間加熱方式は、瞬間加熱手段67と可変定量供給手段70とを備えている。水道管からの水や前述した液体貯留槽の水が、この可変定量供給手段70、瞬間加熱手段67を順次通って、所望の量が加熱されて、温水配管18へ送られる。瞬間加熱手段67は、瞬間加熱装置6と同様の加熱機60と熱交換器とから構成されている。熱交換器は、加熱された加熱用ブラインが循環する断熱容器68と、断熱容器68内に設けられ、水が通る加熱パイプ69とから構成されている。
【0058】
加熱機60で加熱された加熱用ブラインは、ポンプ63によって送り管65,65bを通って断熱容器68へ送られ、断熱容器68から戻り管66を通って加熱機60に戻るようにされている。一方、定量供給手段70から給茶の都度定量送り出された水は、加熱パイプ69へ送られ、断熱容器68内の加熱用ブラインと瞬時に熱交換して温水となって、温水配管18へ送られる。温水を70〜90°C内の所望の特定の温度に設定する場合には、送り管65bに、温度制御手段として、流量調節弁71を設け、温水が設定温度になるよう制御するとよい。
【0059】
温水加水装置8で用いられる可変定量供給手段は、例えば、可変定量ポンプ等から構成され、消費者の好みに応じて所望の量の温水を供給する。例えば、温水スイッチ(図示せず)を操作している間、所望の温水を供給したり、あるいは、大量、中量、小量等の温水スイッチ(図示せず)を設け、これらスイッチの操作に応じて所望の量の温水を供給するとよい。また、温水スイッチを操作したとき、予め設定された一定量の温水が供給される構成としてもよい。
【0060】
冷水加水装置10は、低温給茶口9から給茶された低温の抽出液に5〜20°Cの冷水を加水するもので、用途により、冷水貯留方式や図4に示す瞬間冷却方式が採用される。
【0061】
冷水貯留方式は、筐体Bに設けた断熱性の冷水容器(図示せず)と、冷水容器に設けた冷却器(図示せず)と、後述する可変定量供給手段75と同様の可変定量供給手段(図示せず)とを備えている。この方式では、冷水容器で冷却貯留された冷水が、可変定量供給手段によって給茶の都度取り出され、冷水配管19を介して、低温給茶口9から給茶された低温かつ高濃度の抽出液に加水されるようになっている。冷却器を流れる冷却用ブラインは、後述する瞬間冷却手段72の冷却用ブラインと同様の手段によって冷却される。冷水容器に貯留される水は、直接投入する外、前述した液体貯留槽から供給したり、水道管に接続して供給してもよい。
【0062】
図4に示す瞬間冷却方式は、瞬間冷却手段72と可変定量供給手段75とを備えている。水道水あるいは前述した液体貯留槽からの水が可変定量供給手段75、瞬間冷却手段72を順次通って、所望の量が冷却され、冷水配管19へ送られる。瞬間冷却手段72は、冷凍機52と熱交換器とから構成されている。冷凍機52は、冷凍機23と同様に構成され、冷却用ブラインを冷却する。熱交換器は、冷却用ブラインが循環する断熱容器73と、断熱容器73に内蔵され、水が通る冷却パイプ74とから構成されている。
【0063】
冷凍機52で冷却された冷却用ブラインは、ポンプ53によって送り管56,56bを通って断熱容器73へ送られ、断熱容器73から戻り管57を通って冷凍機52に戻るようにされている。一方、可変定量供給手段75から給茶の都度定量送り出された水は、冷却パイプ74へ送られ、断熱容器73内の冷却用ブラインと瞬時に熱交換して冷水となって、冷水配管19へ送られる。冷水を5〜20°Cの範囲内の所望の特定の温度に設定する場合には、送り管56bに、温度制御手段として、流量調節弁76とヒータ77とを順次設け、流量調節弁76とヒータ77とによって冷水が設定温度になるよう制御するとよい。
【0064】
冷却加水装置10の可変定量供給手段75は、例えば、可変定量ポンプ等から構成され、消費者の好みに応じて所望の量の冷水を供給する。例えば、冷水スイッチ(図示せず)を操作している間、冷水を供給したり、あるいは、大量、中量、小量等の冷水スイッチ(図示せず)を設け、これらスイッチの操作に応じて所望の量の冷水を供給するとよい。また、冷水スイッチを操作したとき、予め設定された一定の量の冷水が供給される構成としてもよい。
【0065】
前述した液体貯留槽を設けるときは、抽出装置1での抽出回数や、液体貯留槽から温水加水装置8及び冷水加水装置10へ液体を供給する場合には、その供給量も考慮して液体貯留槽の容量が決められる。
【0066】
前述した液体貯留槽や抽出装置1や温水加水装置8や冷水加水装置10等に供給される水として水道水を使用する場合は、水道水をそのまま使用してもよいが、浄水装置で浄化しておくとよい。液体貯留槽や温水容器や冷水容器に水を貯留しておく場合には、水道水以外に、ミネラルウォーター等を使用できる。
【0067】
抽出装置1や液体用クーラー5や冷水加水装置10で使用される冷凍機は、それぞれ別個に設けてもよいが、液体用クーラー5の冷凍機52と共用するとよい。同様に、瞬間加熱装置6や温水加水装置8で使用される加熱機も、それぞれ別個に設けてもよいが、瞬間加熱装置6の加熱機60と共用するとよい。冷凍機や加熱機を共用すれば、構造が簡略化し、コストの面からも有利である。また、各冷凍機23,42,52と各ポンプ24、43,53との間や加熱機60とポンプ63との間に、冷却用ブラインや加熱用ブラインの量を確保するため、冷却用ブラインや加熱用ブラインを貯留する断熱容器からなるバッファタンク(図示せず)を設けるとよい。
【0068】
このように構成された実施の形態の給茶装置は、図4の冷却方式や図5の加熱方式を採用した場合では、次のように作動する。
予め、抽出装置1や液体用クーラー5や冷水加水装置10等の冷凍機、ポンプ、ヒータを運転して、冷却用ブラインを循環させておくとともに、瞬間加熱装置6や温水加水装置8等の加熱機やポンプを運転して、加熱用ブラインも循環させておく。
【0069】
次いで、抽出装置1に茶葉2と液体3を供給し、5〜40°Cの低温でかつBrix値1.0〜4.0%の高濃度の抽出液11を抽出する。この抽出液11は、固液分離機4で茶殻4’と分離され、液体用クーラー5に送られ、液体用クーラー5で5〜10°Cで冷蔵保存される。
【0070】
冷蔵保存された高濃度の抽出液11を高温で給茶する場合は、例えば、温茶・冷茶選択スイッチの温茶選択スイッチを操作することで、切換弁13が液体用クーラー5と高温給茶口7とが連通するように切り換わるともに、可変定量供給装置12が作動する。可変定量供給装置12は、液体用クーラー5から給茶の都度一定量の抽出液11を取り出し、取り出した抽出液11は、順次取り出し配管15、切換弁13、高温給茶用配管16aを介して瞬間加熱装置6の加熱パイプ62へ送られる。
【0071】
加熱パイプ62へ送られた抽出液11は、瞬間加熱装置6の断熱容器61内の加熱用ブラインと瞬時に熱交換して、70〜90°Cに加熱される。加熱された抽出液11は、高温給茶用配管16bを介して高温給茶口7から高温で高濃度のお茶として給茶される。
【0072】
このとき、高温で低濃度のお茶を所望の場合は、温水加水装置8の温水スイッチを操作する。この操作により、温水加水装置8の可変定量供給手段70が作動し、可変定量供給手段70で設定された所望の量の水が、水道管や前述した液体貯留槽から瞬間加熱手段67の加熱パイプ69へ送られる。加熱パイプ69に送られた水は、断熱容器68内の加熱用ブラインと瞬時に熱交換して、70〜90°Cの温水となる。温水は、温水配管18を介して、高温給茶された高濃度の抽出液11に加水される。その結果、高温でかつ好みに応じた濃度のお茶として供される。
【0073】
冷蔵保存された高濃度の抽出液11を低温で給茶する場合は、例えば、高温給茶・低温給茶選択スイッチの低温給茶選択スイッチを操作することで、切換弁13が液体用クーラー5と低温給茶口9を連通するように切り換わるとともに、定量供給装置12が作動する。定量供給装置12は、液体用クーラー5から給茶の都度一定量の抽出液11を取り出す。取り出された抽出液11は、順次取り出し配管15、切換弁13及び低温給茶用配管17を介して低温給茶口9から低温で高濃度のお茶として給茶される。
【0074】
このとき、低温で低濃度のお茶を所望の場合は、冷水加水装置10の冷水スイッチを操作する。この操作により、冷水加水装置10の可変定量供給手段75が作動し、可変定量供給手段75で設定された所望の量の水が瞬間冷却手段72の冷却パイプ74へ送られる。冷却パイプ74に送られた水は、断熱容器73を循環する冷却用ブラインと瞬時に熱交換して、5〜20°Cの冷水となる。冷水は、冷水配管19を介して低温給茶された高濃度の抽出液11に加水される。その結果、低温でかつ好みに応じた濃度のお茶として供される。
【0075】
このように構成された実施の形態の給茶方法及び給茶装置によれば、重複記載を避けるため詳述しないが、前述の段落0022や0026に記載したと同様の作用、効果を奏する上に、次のような利点がある。
【0076】
高濃度の抽出液11を加水することなくそのまま給茶して、アルコール飲料類と混合しお茶割りを作ったり、果汁飲料や他種のお茶等と混合することで、相手方の飲料を薄めることなく、お茶ブレンドの飲料を楽しむことができる。
【0077】
また、温水加水装置や冷水加水装置を単独で操作できるようにすれば、温水・冷水供給装置としても使用できる。
さらに、高温専用の高温給茶口7と低温専用の低温給茶口9をそれぞれ設けたので、高温給茶口7と低温給茶口9の双方にカップをセットしておくことで、高温給茶と低温給茶を連続して行なうことができる。高温給茶口7で高温給茶し、低温給茶口9で冷水を供給したり、あるいは、低温給茶口9で低温給茶し、高温給茶口7で温水を供給したりするなど、多様な使い方ができる。
【0078】
さらに、取り出し配管15に切換弁13を設け、切換弁13を介して高温給茶用配管16aと低温給茶用配管17とにそれぞれ抽出液11を切り換えて供給するようにしたので、配管構造を簡略化しながら、高温給茶と低温給茶を連続して行なうことができ、また、簡単な部品で配管構造を構成できる。
【0079】
抽出装置1の運転をタイマー等で制御するとともに、ポンプ24,43や供給配管14に設けた弁29等を抽出装置1の運転に連動して運転することで、抽出液11の抽出操作と抽出液11の液体用クーラー5への供給操作を自動的に行なうことができ、長時間の抽出を行なっても人がそばで監視している必要がなく、使い勝手のよい給茶装置を得ることができる。
【0080】
前述した液体貯留槽を設ければ、水道管を直接接続できないような場所に給茶装置を設置することができる。さらに、温水加水装置8や冷水加水装置10に温水貯留方式や冷水貯留方式を採用すれば、簡単な構造で、供給される温水や冷水の温度を常に一定に保つことができ、例えば、温水スイッチや冷水スイッチを、該スイッチを操作している間温水や冷水を供給したり、あるいは、大量、中量、小量等の温水や冷水を供給したりする構成にした場合、常に一定温度の温水や冷水を供給できるので好適である。また、温水加水装置8や冷水加水装置10で瞬間加熱方式や瞬間冷却方式を採用すれば、瞬間加熱手段67や瞬間冷却手段を流れる加熱用ブラインや冷却用ブラインの量が少なくてすみ、加熱機60や冷凍機52等の負荷を小さくでき、また、熱交換器をコンパクトに構成することができる。
【0081】
冷却用ブラインは、流量調整弁とヒータによって温度制御され、加熱用ブラインは、流量調整弁によって温度制御されるようにすれば、温度制御が容易であり、きめ細かな温度設定が可能となる。そのため、茶葉の種類に応じた抽出温度を設定したり、冷蔵保存する抽出液の温度や、加水する温水や冷水の温度を好みの温度に設定することができる。
【0082】
以上、本発明の実施の態様を説明したが、本発明は、この実施の態様に限定されず、種々の設計変更が可能である。また、緑茶の抽出、給茶に限ることなく、ウーロン茶等の飲料にも実施できる。さらに、抽出装置1は、図示した抽出装置20や抽出装置32に限定されず、低温かつ高濃度の抽出液が抽出できるものであればよい。温水加水装置8や冷水加水装置10も、図示したものに限らず、温水や冷水を加水できるものであればどのようなものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の給茶装置及び給茶方法の一実施の形態を示す図。
【図2】本発明のバッチ抽出方式の抽出装置の一実施の形態を示す図。
【図3】本発明の交流式連続抽出装置の一実施の形態を示す図
【図4】本発明の液体用クーラーや冷水加水装置の一実施の形態を示す図。
【図5】本発明の瞬間加熱装置や温水加水装置の一実施の形態を示す図。
【図6】30°Cの低温抽出での主要3成分の溶出率に関する試験例の結果
【図7】85°Cの高温抽出での主要3成分の溶出率に関する試験例の結果
【図8】抽出時間とBrix値に関する試験例の結果
【図9】Brix値と微生物の繁殖に関する試験例の結果
【図10】従来の給茶装置を示す図
【図11】他の従来給茶装置を示す図
【符号の説明】
【0084】
1・・・・・・抽出装置
2・・・・・・茶葉
3・・・・・・液体
4・・・・・・固液分離器
5・・・・・・液体用クーラー
6・・・・・・瞬間加熱装置
7・・・・・・高温給茶口
8・・・・・・温水加水装置
9・・・・・・低温給茶口
10・・・・・冷水加水装置
11・・・・・抽出液
20・・・・・バッチ抽出方式の抽出装置
21・・・・・抽出槽
22・・・・・冷却パイプ
23・・・・・冷凍機
32・・・・・交流式連続抽出装置
33・・・・・抽出槽
34・・・・・回転撹拌翼
40・・・・・伝熱盤
42・・・・・冷凍機
50・・・・・断熱容器
51・・・・・冷却パイプ
52・・・・・冷凍機
60・・・・・加熱機
61・・・・・断熱容器
62・・・・・加熱パイプ
67・・・・・瞬間加熱手段
68・・・・・断熱容器
69・・・・・加熱パイプ
70・・・・・可変定量供給手段
72・・・・・瞬間冷却手段
73・・・・・断熱容器
74・・・・・冷却パイプ
75・・・・・可変定量供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉、茶粉等の原料から抽出液を抽出して給茶する給茶方法であって、前記原料を低温で長時間かけてBrix値1.0〜4.0%の高濃度かつ低温の抽出液を抽出装置によって抽出し、該抽出した抽出液を液体用クーラーに冷蔵保存し、該冷蔵保存した抽出液を給茶の都度、定量供給装置によって定量取り出し、該取り出した抽出液を瞬間加熱装置で瞬間加熱して高温の抽出液として給茶する高温給茶と前記取り出した抽出液を低温のまま抽出液として給茶する低温給茶とを切換弁によって選択的に切り換えるようにし、前記高温給茶が選択されたとき、前記給茶された高温の抽出液に所望の量の温水を温水加水装置によって加水し、前記低温給茶が選択されたとき、前記給茶された低温の抽出液に所望の量の冷水を冷水加水装置によって加水し、前記高温給茶と前記低温給茶を連続的に行なえるようにしたことを特徴とする給茶方法。
【請求項2】
茶葉、茶粉等の原料から抽出液を抽出して給茶する給茶装置であって、該給茶装置は、茶葉や茶粉等の原料を低温で長時間かけてBrix値1.0〜4.0%の高濃度かつ低温の抽出液を抽出する抽出装置と、該抽出した抽出液を冷蔵保存する液体用クーラーと、該液体用クーラーから給茶の都度定量の抽出液を取り出して送り出す定量供給装置と、該定量供給装置で取り出された抽出液を瞬間加熱する瞬間加熱装置と、該瞬間加熱装置で加熱された高温の抽出液を給茶する高温給茶口と、前記定量供給装置で取り出された抽出液を低温のまま給茶する低温給茶口と、前記定量供給装置で取り出された抽出液が前記高温給茶口側と前記低温給茶口側とのいずれかに供給されるように切り換える切換弁と、前記高温給茶口から給茶された高温の抽出液に所望の量の温水を加水する温水加水装置と、前記低温給茶口から給茶された低温の抽出液に所望の量の冷水を加水する冷水加水装置とから構成されていることを特徴とする給茶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−125456(P2009−125456A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305986(P2007−305986)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(597064089)ハラダ製茶株式会社 (2)
【出願人】(000005913)三井物産株式会社 (37)
【Fターム(参考)】