説明

絶縁劣化検出装置

【課題】スイッチングインバータを構成するスイッチング素子の状態に関わらず、駆動回路とボディシャーシとの絶縁劣化を検出する。
【解決手段】駆動回路2とボディシャーシBとの間に絶縁劣化が発生していない場合には、両者の間にほとんど電流が流れず、コンデンサ33の左端における電圧の振幅はしきい値Vm以上となっている。一方、絶縁劣化が発生すると、両者の間に電流が流れることで、抵抗32において電圧降下が生じ、コンデンサ33の左端における電圧の振幅がしきい値Vmよりも小さくなる。また、コンデンサ33の右端には、定電圧源34から一定の正電位が付与されており、還流ダイオード22aのアノード端子の電位は、カソード端子の電位を基準として、常に、還流ダイオード22aの立ち上がり電圧よりも高い電位となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路における絶縁劣化を検出するための絶縁劣化検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の地絡検出回路は、電気自動車に設けられており、高電圧直流電源、複数のドライブ素子及びダイオードを含んでおり、高電圧直流電源から供給された直流電圧を交流電圧に変換するインバータ、及び、この交流電圧により駆動される交流モータを含む走行駆動回路における地絡(車体との間の絶縁劣化)を検出するためのものである。
【0003】
この地絡検出回路においては、発振回路において生成された矩形波パルスがインピーダンス変換器から検出抵抗に出力される。ここで、検出抵抗の出力端子は、カップリングコンデンサを介して高電圧直流電源及びインバータの正極側の端子に接続されている。走行駆動回路に地絡が発生していないときには、検出抵抗の出力側の端子における矩形波パルスの高さが基準電圧V1よりも高くなっている。一方、走行駆動回路に地絡が発生すると、カップリングコンデンサ及び検出抵抗を含む経路に沿って電流が流れることにより、検出抵抗の出力側の端子における矩形波パルスの高さが、基準電圧V1よりも低くなる。
【0004】
そして、比較器、平滑回路などを含む回路により、検出抵抗の出力側の端子における矩形波パルスの高さが基準電圧V1よりも低くなったことを検出することによって、走行駆動回路に地絡が発生していることを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−70503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、走行駆動回路において地絡が発生する場合として、特許文献1には、(i)マイナス母線と車体との間に地絡が発生する場合、(ii)プラス母線又はバッテリ群(高電圧直流電源)と車体との間に地絡が発生する場合、(iii)交流給電線であるU相線、V相線、W相線あるいは交流モータと車体との間に地絡が発生する場合が記載されている。そして、上記(i)、(ii)の場合には、電流が流れる経路にインバータのドライブ素子及びダイオードが含まれていないため、インバータのドライブ素子の状態に関わらず走行駆動回路における地絡を検出することができる。
【0007】
これに対して、上記(iii)の場合、矩形波パルスがハイレベルのときには、インピーダンス変換器、検出抵抗、カップリングコンデンサ、バッテリ群、インバータ内のダイオード、交流給電線(U相線、V相線、W相線のいずれか)、交流モータ、地絡抵抗、車体、アースライン及びインピーダンス変換器の経路で電流が流れることになるため、インバータ内のドライブ素子がオンであってもオフであっても電流は流れる。一方、矩形波パルスがローレベルのときには、電流の向きが上述したのとは逆となり、インバータ内のダイオードには電流が流れず、インピーダンス変換器、アースライン、車体、地絡抵抗、交流モータ、交流給電線、インバータ内のドライブ素子、放電抵抗、バッテリ群、カップリングコンデンサ、検出抵抗及びインピーダンス変換器の経路で電流が流れることになるため、電流を流すためにはドライブ素子をオンにした状態に保持する必要がある。
【0008】
このため、上記(iii)の場合も含めて地絡を確実に検出するためには、ドライブ素子をオンの状態に保持にしておく必要がある。しかしながら、走行駆動回路を駆動していないときに、ドライブ素子をオンにしようとしてドライブ素子に電源を接続すると、地絡が発生している箇所によってはドライブ素子を介して過電流が流れるなど危険な状態となる虞がある。さらに、走行駆動回路の駆動時にはドライブ素子においてオンとオフとの切り替えが繰り返し行われるため、ドライブ素子をオンにした状態に保持して地絡を検出する際には、走行駆動回路の駆動を停止させる必要がある。つまり、走行駆動回路を駆動しながら地絡を検出することができない。
【0009】
本発明の目的は、インバータのスイッチング素子の状態に関わらず、駆動回路とボディシャーシとの絶縁劣化を検出することが可能な絶縁劣化検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る絶縁劣化検出装置は、所定の基準電位に保持されたボディシャーシと絶縁された駆動回路であって、直流電源と、複数のスイッチング素子、及び、前記複数のスイッチング素子の両端をそれぞれ接続する複数の還流ダイオードとを有しており、前記直流電源から印加された直流電圧を交流電圧に変換するスイッチングインバータと、前記交流電圧により駆動される電動機とを有しており、前記複数のスイッチング素子が、前記スイッチングインバータの負極側の入力端子と前記スイッチングインバータの出力端子との間に接続された第1スイッチング素子を含み、前記複数の還流ダイオードが、前記スイッチングインバータの負極側の入力端子にアノード端子が接続されるとともに、前記スイッチングインバータの出力端子にカソード端子が接続されることで、前記第1スイッチング素子の両端を接続する第1還流ダイオードを含む駆動回路における、前記ボディシャーシとの間の絶縁劣化を検出するための絶縁劣化検出装置であって、所定の一定振幅の交流電圧信号を出力する交流電圧信号出力手段と、前記交流電圧信号出力手段に接続された第1抵抗と、一端が前記第1抵抗に接続されているとともに、他端が前記スイッチングインバータの負極側の入力端子に接続されたコンデンサと、前記コンデンサの他端に、前記基準電位よりも高い所定の一定の正電位を付与する正電位付与手段と、前記コンデンサの一端における電圧の振幅を検出する振幅検出手段とを備えており、前記正電位付与手段は、前記駆動回路と前記ボディシャーシとの間の絶縁劣化の程度に関わらず、前記第1還流ダイオードのアノード端子の電位が、カソード端子の電位を基準として、常に前記還流ダイオードの立ち上がり電圧よりも高い電位となるような一定の正電位を付与することを特徴とするものである。
【0011】
これによると、駆動回路とボディシャーシとの間に絶縁劣化が生じると、コンデンサの一端(第1抵抗とコンデンサとの間の部分)における電圧の振幅が小さくなるため、当該電圧の振幅変化により、駆動回路とボディシャーシとの間の絶縁劣化を検出することができる。
【0012】
また、正電位付与手段が、駆動回路とボディシャーシとの間の絶縁劣化の程度に関わらず、第1還流ダイオードのアノード端子の電位が、カソード端子の電位を基準として、還流ダイオードの立ち上がり電圧よりも高い電位となるような一定の正電位を付与しているため、インバータの出力端子と交流モータとの間の部分又は交流モータと、ボディシャーシとの間に絶縁劣化が発生した場合に、常に還流ダイオードに電流が流れる。したがって、スイッチング素子がオフの状態でも、当該絶縁劣化を検出することができる。
【0013】
第2の発明に係る絶縁劣化検出装置は、第1の発明に係る絶縁劣化検出装置であって、前記正電位付与手段が、定電圧源と、前記定電圧源と記前コンデンサの他端との間に接続された第2抵抗と、前記コンデンサの他端と前記ボディシャーシとの間に接続された第3抵抗とを備えていることを特徴とするものである。
【0014】
これによると、定電圧源と第2抵抗及び第3抵抗により正電位付与手段を構成することができる。
【0015】
第3の発明に係る絶縁劣化検出装置は、第1又は第2の発明に係る絶縁劣化検出装置であって、前記コンデンサの他端と前記スイッチングインバータの負極側の入力端子との接続及びその遮断を切り替えるスイッチをさらに備えていることを特徴とするものである。
【0016】
これによると、絶縁劣化の検出を行わないときに、絶縁劣化検出回路を駆動回路から切り離すことができる。
【0017】
第4の発明に係る絶縁劣化検出装置は、第3の発明に係る絶縁劣化検出装置であって、前記スイッチは、前記コンデンサの他端と前記スイッチングインバータの負極側の入力端子との接続が遮断されている状態で、前記直流電源と前記スイッチングインバータとを接続し、前記コンデンサの他端と前記スイッチングインバータの負極側の入力端子とが接続されている状態で、前記直流電源と前記スイッチングインバータとの接続を遮断するように構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
直流電源が高電圧であるときには、直流電源によりスイッチングインバータに電圧が印加された状態では、スイッチング素子におけるスイッチング時にノイズが発生するため、この状態で絶縁劣化を検出しようとすると、このノイズの影響により正確に絶縁劣化を検出することができない場合がある。
【0019】
しかしながら、本発明では、駆動回路と絶縁劣化とを接続したときに、直流電源とインバータとの接続が遮断されるため、上述したようなノイズの影響を受けることなく、正確に駆動回路とボディシャーシとの絶縁劣化を検出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、駆動回路とボディシャーシとの間に絶縁劣化が生じると、コンデンサの一端(第1抵抗とコンデンサとの間の部分)における電圧の振幅が小さくなるため、当該電圧の振幅変化により、駆動回路とボディシャーシとの間の絶縁劣化を検出することができる。
【0021】
また、正電位付与手段が、駆動回路とボディシャーシとの間の絶縁劣化の程度に関わらず、第1還流ダイオードのアノード端子の電位が、カソード端子の電位を基準として、還流ダイオードの立ち上がり電圧よりも高い電位となるような一定の正電位を付与しているため、インバータの出力端子と交流モータとの間の部分又は交流モータと、ボディシャーシとの間に絶縁劣化が発生した場合に、常に還流ダイオードに電流が流れる。したがって、スイッチング素子がオフの状態でも、当該絶縁劣化を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明における実施の形態に係る駆動回路及び絶縁劣化検出回路の構成を示す回路図である。
【図2】変形例1の図1相当の図である。
【図3】変形例2の図1相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態に係る駆動回路及び絶縁劣化検出装置の構成を示す回路図である。ここで、本実施の形態に係る駆動回路2及び絶縁劣化検出装置3は、例えば建設機械などに設けられるものである。
【0025】
図1に示すように、駆動回路2は、高電圧バッテリ11(直流電源)、スイッチ12、13、スイッチングインバータ14、平滑コンデンサ15、三相交流モータ16などを備えている。また、駆動回路2は、グランド電位に保持された、建設機械などのボディシャーシBと絶縁されている。
【0026】
スイッチングインバータ14は、6つのトランジスタ21(スイッチング素子)と6つの還流ダイオード22とを有している。6つのトランジスタ21は、それらのうち2つずつが、高電圧バッテリ11に対して直列に接続されているとともに、このように直列に接続された、3組のトランジスタ21の組が高電圧バッテリ11に対して並列に接続されている。また、直列に接続された2つのトランジスタの間の部分が、それぞれ出力端子となっており、三相交流モータ16のU相、V相及びW相に接続されている。
【0027】
還流ダイオード22は、各トランジスタ21の2つの端子の間に接続されている。より詳細には、還流ダイオード22のアノード端子が、トランジスタ21の負極側の端子に接続されているとともに、カソード端子が、トランジスタの正極側の端子に接続されている。
【0028】
なお、本実施の形態では、上記6つのトランジスタ21のうち、図1において下側に配置されている、スイッチングインバータ14の負極側の端子と出力端子との間に接続された3つのトランジスタ21aが、本発明に係る第1スイッチング素子に相当する。また、上記6つの還流ダイオード22のうち、3つのトランジスタ21aの両端を接続する3つの還流ダイオード22aが、本発明に係る第1還流ダイオードに相当する。
【0029】
そして、駆動回路2においては、高電圧バッテリ11により供給される直流電圧が、スイッチングインバータ14においてトランジスタ21のオンとオフとが繰り返し切り替わることにより交流電圧に変換され、この交流電圧が、三相交流モータ16のU層、V層及びW層に出力されることにより、三相交流モータ16が回転する。なお、スイッチングインバータ14の動作については、従来と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0030】
平滑コンデンサ15は、高電圧バッテリ11に対して、スイッチングインバータ14と並列に接続されている。そして、平滑コンデンサ15が設けられているため、スイッチングインバータ14から出力される交流電圧が、滑らかな交流電圧となる。
【0031】
絶縁劣化検出装置3は、駆動回路2とボディシャーシBとの間の絶縁劣化を検出するための装置であって、交流電圧信号出力装置31、抵抗32(第1抵抗)、コンデンサ33、定電圧源34、抵抗35(第2抵抗)、抵抗36(第3抵抗)、スイッチ37、アンプ38、A/D変換器39、制御装置40を有している。
【0032】
交流電圧信号出力装置31は、正弦波や矩形パルス波などの交流電圧信号を出力するものであり、互いに直列に接続された抵抗32、コンデンサ33、スイッチ37を介して、スイッチングインバータ14の負極側の入力端子に接続されている。ここで、絶縁劣化検出装置3には、スイッチ37が設けられているため、駆動回路2とボディシャーシBとの間の絶縁劣化を検出しないときなどには、絶縁劣化検出装置3を駆動回路2から切り離すことができる。
【0033】
また、スイッチングインバータ14の負極側の入力端子に接続されたコンデンサ33の図1における右端(他端)は、スイッチングインバータ14の負極側の入力端子と接続されている。また、コンデンサ33の右端は、抵抗32を介して定電圧源34に接続されているとともに、抵抗36を介してボディシャーシBに接続されている。なお、抵抗35の抵抗値R2及び抵抗36の抵抗値R3は、後述する駆動回路2とボディシャーシBとの間の絶縁抵抗41〜44の抵抗値と比べて十分に大きなものとなっており、さらに、抵抗36の抵抗値R3は、抵抗32の抵抗値R1、抵抗35の抵抗値R2と比べて十分に大きなものとなっている。
【0034】
ここで、定電圧源34から出力される直流電圧Vccは、抵抗35と、抵抗36とに分圧されるため、コンデンサ33の右端には、抵抗35の抵抗値R2と抵抗36の抵抗値R3との比によって決まる一定の正電位が付与される。また、抵抗35の抵抗値R2及び抵抗36の抵抗値R3を調整することにより、コンデンサ33の右端に付与される正電圧の大きさを調整することができる。なお、本実施の形態においては、定電圧源34及び抵抗35、36をあわせたものが、本発明に係る低電位付与手段に相当する。
【0035】
さらに、定電圧源34は、コンデンサ33の右端に、交流電圧ではなく一定の電圧(直流電圧)を付与しているため、コンデンサ33の右端に付与された電圧がコンデンサ33の左端(一端)に伝達されることがない。したがって、後述するように駆動回路2とボディシャーシBとの間に絶縁劣化が生じているか否かを示す、コンデンサ33の左端における電圧の振幅が、コンデンサ33の右端に付与された電圧の影響で変動してしまうことがない。
【0036】
アンプ38は、入力端子が抵抗32とコンデンサ33との間に接続されているとともに、出力端子がA/D変換器39に接続されている。そして、アンプ38は、コンデンサ33の左端(抵抗32とコンデンサ33との間の部分)における電位を増幅させてA/D変換器39に出力し、A/D変換器39は、入力された電位を対応するデジタル信号を制御装置40に出力する。
【0037】
制御装置40は、交流電圧信号出力装置31に交流電圧信号の出力を指示するとともに、スイッチ37にそのオンとオフとを切り替えるための信号を出力する。また、制御装置40は、A/D変換器39から入力されたコンデンサ33の左端における電位に基づいて、駆動回路2とボディシャーシBとの間に絶縁劣化が生じているか否かを判定する。具体的には、後述するように、A/D変換器39から入力される電圧の振幅が、所定のしきい値Vm以上のときには、絶縁劣化が生じていないと判定し、しきい値Vmよりも小さいときに、絶縁劣化が生じていると判定する。また、絶縁劣化が生じていると判定した場合、制御装置40は、絶縁劣化が生じたことを示す信号を出力して、例えば、駆動回路2のスイッチ12、13をオフにさせたり、絶縁劣化が生じていることを示す警告を出させたりする。
【0038】
次に、絶縁劣化検出装置3により、駆動回路2とボディシャーシBとの間の絶縁劣化を検出する方法について説明する。ここで、駆動回路2とボディシャーシBとの間に絶縁劣化が生じる場合としては、図1に示すように、(a)スイッチングインバータ14の負極側の入力端子とボディシャーシBとの間、(b)スイッチングインバータ14の陽極側の入力端子とボディシャーシBとの間、(c)高電圧バッテリ11とボディシャーシBとの間、及び、(d)スイッチングインバータ14の出力端子とボディシャーシBとの間で、それぞれ、絶縁劣化が生じる(絶縁抵抗41〜44の抵抗値が低下する)場合がある。
【0039】
絶縁劣化を検出するためには、スイッチ37をオンにするとともに交流電圧信号出力装置31から交流電圧信号を出力する。これにより、この交流電圧信号が駆動回路2に入力される。
【0040】
駆動回路2とボディシャーシBとの間に絶縁劣化が生じていなければ、駆動回路2とボディシャーシBとの間(絶縁抵抗41〜44)にはほとんど電流が流れない。そして、このとき、抵抗32とコンデンサ33との間の電位は、所定のしきい値Vmよりも高くなっている。
【0041】
一方、駆動回路2とボディシャーシBとの間に絶縁劣化が生じると、駆動回路2とボディシャーシBとの間の絶縁抵抗41〜44の抵抗値が小さくなるため、交流電圧信号出力装置31、抵抗32、コンデンサ33、及び絶縁抵抗を流れる電流の値が大きくなる。これにより、抵抗32における電圧降下が大きくなり、その結果、コンデンサ33の左端における電圧の振幅が小さくなる。そして、本実施の形態の絶縁劣化検出回路3では、抵抗32とコンデンサとの間の部分における電圧の振幅が上記しきい値Vmよりも小さくなったことを検出することにより、駆動回路2とボディシャーシBとの間に絶縁劣化が生じていることを検出する。
【0042】
ここで、上記(a)の場合には、交流電圧信号出力装置31、抵抗32、コンデンサ33、スイッチ37、絶縁抵抗41及びボディシャーシBの経路、上記(b)の場合には、交流電圧信号出力装置31、抵抗32、コンデンサ33、スイッチ37、絶縁抵抗42及びボディシャーシBの経路、上記(c)の場合には、交流電圧信号出力装置31、抵抗32、コンデンサ33、スイッチ37、絶縁抵抗43及びボディシャーシBの経路で、それぞれ電流が流れるが、いずれの経路にも還流ダイオード22が含まれていないため、流れる電流の向きに関わらず、上述したようにして駆動回路2とボディシャーシBとの絶縁劣化を検出することができる。
【0043】
一方、上記(d)の場合には、交流電圧信号出力装置31、抵抗32、コンデンサ33、スイッチ37、還流ダイオード22a、絶縁抵抗44及びボディシャーシBの経路で電流が流れることになるが、還流ダイオード22aのカソード端子の電位を基準としたアノード端子の電位が、還流ダイオード22aの立ち上がり電圧Vdよりも低くなるとすると、還流ダイオード22aに電流が流れないため、トランジスタ21aをオンの状態に保持しておかないと、絶縁劣化を検出することができない。
【0044】
しかしながら、駆動回路2を駆動させていない状態で、駆動回路2とボディシャーシBとの間の絶縁劣化を検出する場合に、トランジスタ21aをオンにするために電源を接続すると、絶縁劣化が生じている場合に、当該電源から過電流が流れるなど危険な場合がある。
【0045】
また、駆動回路2の駆動中は、トランジスタ21aがオンとオフとを繰り返すため、トランジスタ21aをオンに保持しておく必要があるとすると、駆動回路2の駆動中に絶縁劣化を検出することができない。
【0046】
そこで、本実施の形態では、定電圧源34、抵抗35及び抵抗36を設けることにより、還流ダイオード22aのカソード端子の電位を基準としたアノード端子の電位が、絶縁抵抗44の抵抗値(絶縁劣化の程度)に関わらず、常に還流ダイオード22aの立ち上がり電圧Vdよりも高くなるように、コンデンサ33の右端に一定の正電位を付与している。
【0047】
より詳細に説明すると、定電圧源34から駆動回路2に供給される電流(供給電流)、すなわち、定電圧源34から、抵抗35、スイッチ37、還流ダイオード21及び絶縁抵抗44を経てボディシャーシBに流れる電流は、絶縁抵抗44の抵抗値が0となったとき(完全に短絡したとき)に最大となる、すなわち、定電圧源34から駆動回路2に供給可能な電流の最大値ISOURCEは、還流ダイオード22の立ち上がり電圧をVdとすると、
SOURCE=(Vcc−Vd)/R2・・・・(1)
となる。
【0048】
一方、このときの、駆動回路2から絶縁劣化検出装置3に流れる電流(吸い込み電流)、すなわち、駆動回路2の負極側の端子からスイッチ37、コンデンサ33及び抵抗32を経て交流電圧信号出力装置31に流れる電流は、交流電圧信号出力装置31から出力される交流電圧信号の振幅をVsとすると、交流電圧出力装置31からの出力される電位の値が−Vsのときに最大となり、その最大値IDRAINは、
DRAIN=(Vs+Vd)/R1・・・・(2)
となる。
【0049】
そして、前述したように抵抗36の抵抗値R3は抵抗32の抵抗値R1よりも十分に大きいため、抵抗36に流れる電流を無視すると、ISOURCE>IDRAINとなるように定電圧源34の電位Vcc、及び、抵抗値R1〜R3を設定している。これにより、上記(d)の場合に、常に還流ダイオード22aに電流が流れ、トランジスタ21aの状態に関わらず、駆動回路2とボディシャーシBとの絶縁劣化を検出することができる。
【0050】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0051】
上述の実施の形態においては、高電圧バッテリ11によりスイッチングインバータ14に電圧が印加された状態で、駆動回路2とボディシャーシBとの絶縁劣化を検出していたが、高電圧バッテリ11によりスイッチングインバータ14に電圧が印加された状態では、トランジスタ21のスイッチング時にノイズが発生し、このノイズの影響により、絶縁劣化を正確に検出することができない場合がある。
【0052】
そこで、一変形例(変形例1)では、スイッチ13、37の代わりに、スイッチ51が設けられている。スイッチ51は、スイッチングインバータ14の負極側の入力端子を、高電圧バッテリ11の負極側の端子及び絶縁劣化検出装置3の出力端子のいずれかに選択的に接続することができるように構成されている。
【0053】
そして、駆動回路2を駆動させる際には、スイッチ12をオンにするとともに、スイッチ51によりスイッチングインバータ14の負極側の入力端子を、高電圧バッテリ11の負極側の端子と接続する。一方、駆動回路2とボディシャーシBとの絶縁劣化を検出する際には、スイッチ51により、スイッチングインバータ14の負極側の入力端子を絶縁劣化検出装置3の出力端子と接続する。
【0054】
この場合には、高電圧バッテリ11によりスイッチングインバータ14に電圧が印加されていない状態で駆動回路2とボディシャーシBとの絶縁劣化が検出されるため、上述したようなスイッチングインバータ14におけるスイッチング時のノイズの影響を受けず、絶縁劣化を正確に検出することができる。
【0055】
また、上述の実施の形態では、定電圧源34、抵抗35、36を設けることにより、コンデンサ33の他端に一定の正電圧を付与していたが、これには限られない。別の一変形例(変形例2)では、図3に示すように、定電圧源34、抵抗35、36が設けられる代わりに、一定電圧出力装置61(正電位付与手段)がコンデンサ33の他端に接続されている。一定電圧出力装置61は、例えば、出力電圧が変化させることができる直流電源、及び、当該電源とコンデンサ33の他端との間に設けられた抵抗を有しており、当該抵抗の出力端子における電位をフィードバックして直流電源からの出力電圧を調整することにより、コンデンサ33の他端に、上述の実施の形態と同様の一定の正電位を付与する装置などである。
【0056】
この場合でも、上述の実施の形態と同様、上記(d)の場合に、常に還流ダイオード22a電流が流れるため、トランジスタ21aの状態に関わらず、駆動回路2とボディシャーシBとの絶縁劣化を検出することができる。
【0057】
また、上述の実施の形態では、コンデンサ33の他端と、スイッチングインバータ14の負極側の入力端子との接続及びその遮断を切り替えるスイッチ37が設けられていたが、スイッチ37が設けられておらず、コンデンサ33の他端と、スイッチングインバータ14の負極側の入力端子とが常に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
2 駆動回路
3 絶縁劣化検出装置
14 インバータ
21 トランジスタ
22 還流ダイオード
31 交流電圧信号出力装置
32 抵抗
33 コンデンサ
34 定電圧源
35 抵抗
36 抵抗
37 スイッチ
38 アンプ
39 A/D変換器
40 制御装置
51 スイッチ
61 一定電圧出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の基準電位に保持されたボディシャーシと絶縁された駆動回路であって、
直流電源と、
複数のスイッチング素子、及び、前記複数のスイッチング素子の両端をそれぞれ接続する複数の還流ダイオードとを有しており、前記直流電源から印加された直流電圧を交流電圧に変換するスイッチングインバータと、
前記交流電圧により駆動される電動機とを有しており、
前記複数のスイッチング素子が、前記スイッチングインバータの負極側の入力端子と前記スイッチングインバータの出力端子との間に接続された第1スイッチング素子を含み、
前記複数の還流ダイオードが、前記スイッチングインバータの負極側の入力端子にアノード端子が接続されるとともに、前記スイッチングインバータの出力端子にカソード端子が接続されることで、前記第1スイッチング素子の両端を接続する第1還流ダイオードを含む駆動回路における、
前記ボディシャーシとの間の絶縁劣化を検出するための絶縁劣化検出装置であって、
所定の一定振幅の交流電圧信号を出力する交流電圧信号出力手段と、
前記交流電圧信号出力手段に接続された第1抵抗と、
一端が前記第1抵抗に接続されているとともに、他端が前記スイッチングインバータの負極側の入力端子に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサの他端に、前記基準電位よりも高い所定の一定の正電位を付与する正電位付与手段と、
前記コンデンサの一端における電圧の振幅を検出する振幅検出手段とを備えており、
前記正電位付与手段は、前記駆動回路と前記ボディシャーシとの間の絶縁劣化の程度に関わらず、前記第1還流ダイオードのアノード端子の電位が、カソード端子の電位を基準として、常に前記還流ダイオードの立ち上がり電圧よりも高い電位となるような一定の正電位を付与することを特徴とする絶縁劣化検出装置。
【請求項2】
前記正電位付与手段が、
定電圧源と、
前記定電圧源と記前コンデンサの他端との間に接続された第2抵抗と、
前記コンデンサの他端と前記ボディシャーシとの間に接続された第3抵抗とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の絶縁劣化検出装置。
【請求項3】
前記コンデンサの他端と前記スイッチングインバータの負極側の入力端子との接続及びその遮断を切り替えるスイッチをさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁劣化検出装置。
【請求項4】
前記スイッチは、
前記コンデンサの他端と前記スイッチングインバータの負極側の入力端子との接続が遮断されている状態で、前記直流電源と前記スイッチングインバータとを接続し、
前記コンデンサの他端と前記スイッチングインバータの負極側の入力端子とが接続されている状態で、前記直流電源と前記スイッチングインバータとの接続を遮断するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の絶縁劣化検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−27629(P2011−27629A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175504(P2009−175504)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】