説明

絶縁成形部品とその製造方法

本発明は、上側部品(7)と下側部品(8)とを備えた絶縁成形部品に関し、本発明によると、気密状態で相互に分離された室(3)としてそれぞれが構成される空洞を内部に有するワンピースの射出成形またはダイカスト部品として上側部品(7)と下側部品(8)とが構成される。このような絶縁成形部品を製造するための対応する方法において、第1方法ステップでは、射出成形又はダイカスト方法の範囲内で上側部品(7)の複合材料が天然材料又はリサイクル材料で作られた添加物とともに第1モールドへ導入されて、第2方法ステップでは、可融コアプロセスの範囲内で下側部品(7)の複合材料が天然材料又はリサイクル材料で作られた添加物とともに第2モールドへ導入され、第2モールドの開口部(1)の手段により外部へ接続される個々の可融体を備える可融コアを第2モールドが有し、第2方法ステップの後で、個々の室(3)を形成するため可融体が溶融される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の、上側部品(Oberteil)と下側部品(Unterteil)とを備える絶縁成形部品に関連する。本発明はさらに、このような絶縁成形部品の製造のための方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
例えば金属でハニカム状の構造体が製造されてから真空排気される、つまり負圧、好ましくは真空状態に置かれるような絶縁成形部品は周知である。この種の絶縁成形部品は、真空排気された空洞の逆熱伝導の結果、良好な熱絶縁特性を示す。金属材料が結果として熱橋を生じさせるが、これらの部品はさらに比較的重量があり、製造費用が高い。またさらに、多孔材料または粒状体が一緒に空気不透過膜に溶着されて、封入された空気が後で除去されるような成形部品が周知である。この種の成形部品が示す形状保持力および安定性は限定的である。異なる材料を用いることにより絶縁性と安定性との間で折り合いがつけられるような二分割または多分割の成形部品が周知である。この種の成形部品は、高い製造要件とその結果生じる高い生産コストとをもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのため、周知の短所を回避し、低コストでの生産が特に容易であり、良好な絶縁能力および高い安定性を付与する絶縁成形部品を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらの目的は、請求項1の特徴により達成される。請求項1は、上側および底側の部品を備える絶縁成形部品に関連し、本発明により、気密状態で相互からそれぞれが分離された室として構成される空洞を内部に包含する一体的な射出成形またはダイカスト部品として上側部品および下側部品が構成されるようになっている。空洞には真空が用意されることが好ましいが、それは、こうして絶縁能力が高められるからである。真空排気が可能な空洞を備える絶縁成形部品の製造には、今まで射出成形またはダイカスト方法が提案されておらず、特にこれらの方法を利用した絶縁成形部品の一体的構成が試みられたことはない。しかし、本発明による絶縁成形部品の製造が射出成形またはダイカスト方法により可能であるばかりでなく、周知の絶縁成形部品よりも絶縁能力に関して優れている絶縁成形部品が得られることが認知されている。また、射出成形またはダイカスト方法は低コストで実施可能である。
【0005】
気密状態で相互からそれぞれが分離された室としての空洞の構成を持つ結果として、以下でより詳細に説明するように製造が単純化されるばかりでなく、成形部品全体の絶縁能力を損なうことなくサイズに合わせた自由な切断が可能であるため本発明による絶縁成形部品の一層容易な処理が実際に可能となる。切断の影響を受ける室に空気が到達することで真空状態を弱めるが、気密分離の結果として、他の室はすべて影響されないままで真空状態であり続ける。本発明による絶縁成形部品の実際の装着、特にその取り付けは、上側部品および下側部品がそれぞれ立方体の状態で構成されるような方法でさらに簡易化され、上側部品は下側部品に対して斜方向に若干ずれている。その結果、例えば建物ファサードで相互に重複するように構成されて、絶縁状態が非常に良好なエリア全体としての設置が可能である。
【0006】
好適な実施形態によれば、天然材料またはリサイクル材料が添加された複合材料で上側部品が製作される。天然材料はここでは、それぞれ調製、特に粉砕により射出成形またはダイカスト方法に容易に使用することができ、視覚に訴えるデザインを持つ装飾的表面を介した上側部分での処理が可能である、岩石、木材、ガラス、麻、粘土、または土として理解されるものとする。古紙、厚紙、プラスチック、金属、またはガラスなど従来の有価物が、リサイクル材料として使用されるとよい。天然材料またはリサイクル材料が添加された複合材料で下側部品も製作されることが好ましい。
【0007】
射出成形またはダイカスト方法に必要とされる上側および下側部品の複合材料の特性を考慮に入れる必要があることは言うまでもない。複合材料は、射出成形またはダイカスト方法に充分な粘度を有していなければならない。またさらに、複合材料が硬化する温度範囲が本発明では提案される。これは、以下でより詳細に記される。ここでは、複合材料は通常、「マトリックス樹脂(Matrixharz)」としても知られる成分を包含するとの言及に留めておく。上側部品と下側部品のマトリックス樹脂の間の相違については以下で時折言及するが、両方の部品に同じ複合材料が使用されてもよい。
【0008】
本発明によれば、上側部品と下側部品とを備える絶縁成形部品を製造するための方法も提案される。射出成形またはダイカスト方法の範囲内の第1方法ステップで、天然材料またはリサイクル材料が添加された上側部品の複合材料が第1モールドへ導入されて、ロストコア方法の範囲内の第2方法ステップで天然材料またはリサイクル材料が添加された下側部品の複合材料が第2モールドへ導入され、第2モールドの開口部を介して外側との接続状態にある個々の可融体を備える可融コアを第2モールドが包含し、個々の室の形成のため第2方法ステップの後で可融体が溶融することが提示される。可融体を溶融させるためと、例えば加熱槽への溶融材料の排出のために、周知の方法で開口部が使用され、その後、室の形の空洞が残る。本発明による射出成形またはダイカスト方法とロストコア方法との組み合わせは、室に似た空洞を備える絶縁成形部品の製造については未だ提案されていない。可融コアを溶融させた後で室に負圧を発生させ、その後、室が気密状態で密封されることが好ましい。真空の印加は、空洞を真空排気するために行われるばかりでなく、可融コア材料と絶縁成形部品の硬化の過程で発生する汚染蒸気とが除去されるという長所を提供する。
【0009】
絶縁成形部品が後でUV放射により硬化を受けることが好ましい。
【0010】
上側部品および下側部品の複合材料は、好ましくは8,000から12,000mPa.s(10,000センチポイズ)の粘度を25℃で有し、93.3℃と121.1℃(200°Fと250°F)の間の温度で硬化する。これらの物理的特性は、本発明により提案される方法の最適な使用を可能にする。
【0011】
上側部品および下側部品の複合材料の組成については、流体フェノール樹脂とグリシジル末端エポキシ希釈剤と少なくとも一つの潜伏性架橋剤とを包含するマトリックス樹脂を含有することが提案される。エポキシ希釈剤は、1,4−ジグリシジルオキシブタンに関係することが好ましい。潜伏性架橋剤は、82℃と121℃(180°Fと250°F)の間の温度で活性化されることが好ましく、三塩化ホウ素アミン錯体が提案される。エポキシ希釈剤は、マトリックス樹脂の総量の5から12重量%の量、好ましくは8から10重量%の量、好ましくは9重量%の量で含有されることが好ましい。潜伏性架橋剤は、マトリックス樹脂の総量の1から10重量%の量、好ましくは3から7重量%の量、好ましくは5重量%の量で含有されることが好ましい。
【0012】
図面に示された実施形態を参照して、本発明がより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による絶縁成形部品の実施形態の様子を三つの異なる図で示す。
【図2】図1の左下角の内側状態についての拡大図を示す。
【図3】図1のA−A線における断面図を示す。
【図4】本発明のよる絶縁成形部品の斜視図を示す。
【図5】図3の細部「C」の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上側部品(Oberteil)7と下側部品(Unterteil)8とを備える本発明による絶縁成形部品は、多様な形態を有していてもよい。上側部品7および下側部品8が多様な組成の複合材料で製作されるか、上側部品7が装飾的表面を備えていてもよい。またさらに、上側部品7と下側部品8とが付加的絶縁壁部10を備えてもよい。この場合、いくつかの空洞を備えるモールドが必要とされ、スクリュにより、または岩石の場合には小粒を粉砕しないようにさらに圧力シリンダを用いて、上側部品7の複合材料が第1方法ステップで装飾材料として第1モールドへ導入される。この目的のため、第1モールドには負圧を補助的に発生させる。上側部品7の複合材料が導入されてしまうと、上側モールド半分が交換され、個々の可融体を備える可融コアを含有する第2モールドが第1モールドに位置決めされる。二つのモールドが一緒に押圧され、底側部分8の複合材料が負圧状態で射出され、この底側部分が可融コアを封入する。個々の可融体は第2モールドの開口部1を介して外部との接続状態にあるため、その後、溶融材料が例えば適温の溶融槽へ排出されることが可能である。例えば円錐状に構成された開口部1を介して、こうして得られた室3の空洞には負圧、好ましくは真空を発生させるとよい。残留の可融コア材料ばかりでなく硬化プロセス中に発生した何らかの蒸気も、硬化複合材料から除去されることになる。およそ5mbarの負圧を室3の空洞に発生させることが好ましく、個々の室3の間のウェブ4の壁厚に応じても、負圧は変化し得る。続いて、加硫材料、シリコーンで製作されたボール等により開口部1が気密状態で密封されるとよい。負圧の印加中に二つのモールドで複合材料が充分に硬化するため、完成した絶縁成形部品が問題なくモールドから取り外される。モールドからの取り外しの後に、UV放射を受けて硬化が完了するとよい。装飾的表面が所望でない場合には、可融コアが挿入された単一のモールドのみが必要である。
【0015】
モールド内の複合材料から所望の絶縁成形部品を製造できるようにするため、可融コアが最初に鋳造または噴霧される必要がある。可融コアは周知のように、スズ・ビスマス合金またはワックス材料など、比較的低温で溶融する材料で構成される。可融コアが続いてモールドに挿入されて、複合材料が噴霧される。続いて、プラスチックの射出成形部品から可融コアを溶融させる必要があり、これは、熱媒としての脂肪族アルコール内で電気誘導式に、またはUV光線により行われる。室3の空洞から自動的に流出しない可融コア残留物が、熱媒流体の振動によって除去されることになる。溶融した可融コア材料は容器の底部分に流体相で蓄積し、鋳造設備に再び供給され、これにより可融コア材料のサイクルが閉じられる。
【0016】
絶縁成形部品は、絶縁壁部10さえも有さない簡易な実施形態で製造可能である。この場合に装飾的表面が所望である場合には、各々が空洞を備える二つのモールドが必要であり、上側部品7の複合材料が最初にスクリュまたは圧力シリンダによって導入される。複合材料の比重に応じて、モールドの中で沈降または浮上する。複合材料が導入されてしまうと、モールドの上半分に対して交換が行われ、第2モールドが第1モールドに位置決めされる。上側部品7の複合材料の半流動体状態ですでに開始可能である第2射出成形プロセスの範囲において、今度は下側部品8の複合材料が射出されて、第2空洞が充填される。複合材料の硬化は第2射出成形プロセス中にすでに開始しており、その後、絶縁成形部品が容易にモールドから取り外される程度まで継続する。第1および第2射出成形プロセスは負圧によってそれぞれ補助され、それぞれの複合材料の硬化の過程で発生するいかなる蒸気も除去される。装飾的表面が所望でない場合には、一つの空洞を備える単一のモールドのみが必要である。
【0017】
本発明による用途では、複合材料のマトリックス樹脂は非常に低い射出粘度を有していなければならない。架橋および樹脂の成分が使用直前に結合される必要のあるいわゆる「二成分」エポキシ樹脂組成物が、主として使用可能であろう。またさらに、架橋反応を防止して保存期間を延長するには管理下の低温で保存される必要のある「単成分」エポキシ樹脂組成物が知られている。マトリックス樹脂として使用されるエポキシ樹脂ベースの組成物は、少なくとも一つの芳香族ポリエポキシドと、フルオロン含有エポキシと、9,9−ビス(アミノフェニル)フッ素硬化剤とを包含する。マトリックス樹脂は、加熱を必要とする高粘度ペーストであるため、モールドへの射出が可能である。エポキシ樹脂ベースの組成物を硬化させるには、最低176.7℃(350°F)までモールドが加熱される必要がある。
【0018】
本発明によれば、安定組成物は室温で低粘度を持つことが好ましく、93.9と121.1℃(200と250°F)の間の温度で硬化可能である。流体フェノール樹脂と、グリシジル末端エポキシ希釈剤と、少なくとも一つの潜伏性架橋剤とを包含する複合材料とがこの目的のために提案され、天然材料またはリサイクル材料が添加される。
【0019】
適当なフェノール樹脂は、Araldite(登録商標)EPN 1138(エポキシ価:0.55〜0.57equ./100g)、Araldite(登録商標)EPN 1139(エポキシ価:0.56〜0.58equ./100g)、およびDEN(登録商標)438(エポキシ価:0.55〜0.57equ./100g)などのエポキシノボラックを包含するエポキシ樹脂であるが、これらに限定されない。好適なエポキシ樹脂の例は、2,4−ジメチレンフェノールグリシジルエーテルと、2,6−ジメチレンフェノールグリシジルエーテルと、以上の混合物とをベースとする流体組成物である。
【0020】
2,4−ジメチレンフェノールグリシジルエーテルモノマーと2,6−ジメチレンフェノールグリシジルエーテルモノマーとをベースとするポリマー混合物が好ましい。エポキシ樹脂成分は、エポキシ樹脂組成物全体のおよそ60から90重量%の量、好ましくはおよそ80から90重量%の量、好ましくはおよそ85重量%の量で、エポキシ樹脂組成物に含まれる。
【0021】
エポキシ希釈剤は、グリシジル末端化合物であることが好ましい。酸素、窒素、または硫黄の原子に直接結合されたグリシジルまたはメチルグリシジル基を含有する化合物が、特に好ましい。樹脂は、1分子につき2個以上のカルボン酸基を含有する物質と、エピクロロヒドリン、グリセリンジクロロヒドリン、またはメチルエピクロロヒドリンとのアルカリの存在下での物質変換により得られるポリグリシジルおよびポリ(メチルグリシジル)エステルを包含する。
【0022】
シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、あるいは二量化または三量化リノレン酸などの脂肪族カルボン酸から、ヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、および4−メチルテトラヒドロフタル酸などの脂環式カルボン酸から、あるいはフタル酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸などの芳香族カルボン酸から、ポリグリシジルエステルが得られる。
【0023】
使用が可能な他のエポキシ樹脂は、1分子につき2個以上のアルコール性ヒドロキシル基または2個以上のフェノールヒドロキシル基を含有する物質と、エピクロロヒドリン、グリセリンジクロロヒドリン、またはメチルエピクロロヒドリンとのアルカリ条件下での物質交換、あるいは代替的に酸性触媒の存在とその後のアルカリ処理により得られるポリグリシジルおよびポリ(メチルグリシジル)エーテルを包含する。エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールなどのポリ(オキシエチレン)グリコール、プロピレングリコールおよびポリ(オキシプロピレン)グリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘキサン−2,4,6−トリオール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン、およびペンタエリトリトールなどの脂肪族アルコールから、キニット、1,1−ビス(ヒドロキシメチルシクロヘキサ−3−エン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、および2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンなどの脂環式アルコールから、またはN,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)アニリンおよび4,4’−ビス(2−ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンなどの芳香族コアを含有するアルコールから、このようなポリグリシジルエーテルが生成される。
【0024】
ポリグリシジルエーテルは、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、特にフェノールホルムアルデヒドまたはクレゾールホルムアルデヒドノボラック樹脂、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAとしても知られる)、および2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなど、1分子につき2個以上のフェノールヒドロキシ基を含有する物質から生成されることが好ましい。
【0025】
またさらに、例えば、アニリン、n−ブチルアミン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、およびビス(4−メチルアミノフェニル)メタンなど、窒素に直接結合される少なくとも2個の水素原子を含有するエピクロロヒドリンとアミンとの反応生成物の脱塩化水素により得られるポリ(N−グリシジル)化合物が使用されてもよい。使用が可能である他のポリ(N−グリシジル)化合物は、トリグリシジルイソシアヌレート、エチレン尿素および1,3−プロピレン尿素など環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、および5,5−ジメチルヒダントインなどのヒダントインのN,N’−ジグリシジル誘導体を包含する。環状およびアクリル性ポリオレフィンのエポキシ化により得られるエポキシ樹脂は、ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、3,4−エポキシジヒドロジシクロペンタジニエルグリシジルエーテル、エチレングリコールのビス(3,4−エポキシジヒドロジシクロペンタジエニル)エーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシラートとその6,6’−ジメチル誘導体、エチレングリコールのビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート)、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシアルデヒドと1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−3,4−エポキシシクロヘキサンとの間に形成されたアセタール、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、およびエポキシ化ブタジエンまたはスチレンとビニルアセテートなどのエチレン化合物とブタジエンとの共重合体としても使用可能である。
【0026】
適当な脂肪族または芳香族エポキシ希釈剤は、さらに、ブタンジオールジグリシジルエーテル、オルトトルイジンのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテルである。特に好適なエポキシ希釈剤は、1,4−ジグリシジルオキシブタンである。Ciba Specialty Chemicals CorporationのAraldite(登録商標)DY 026SPなど、エポキシ希釈剤は市販されている。
【0027】
エポキシ樹脂組成物全体のおよそ5からおよそ12重量%の量、好ましくはおよそ8からおよそ10重量%の量、好ましくはおよそ9重量%の量で、エポキシ希釈剤成分がエポキシ樹脂組成物に含まれる。
【0028】
潜伏性架橋成分は、82℃(180°F)と121℃(250°F)の間の温度で活性化されることが好ましい。適当な潜伏性架橋剤の例は、三塩化ホウ素アミン錯体を包含する。最も好適な潜伏性架橋剤は、ニューヨークTarrytownのCiba Specialty Chemicals CorporationによるDY 9577の商標名で入手可能である三塩化ホウ素アミン錯体である。多くの三塩化ホウ素アミン錯体が市販されている。
【0029】
エポキシ樹脂組成物全体のおよそ1からおよそ10重量%の量、好ましくはおよそ3からおよそ7重量%の量、好ましくはおよそ5重量%の量で、潜伏性架橋成分がエポキシ樹脂組成物に含まれる。
【0030】
複合材料は、低熱伝導性のPU硬質フォームに関係するとよい。またさらに、熱硬化性材料または低熱伝導性の他の材料が使用されてもよい。
【0031】
ガラス繊維、タルカム、石英砂、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、および(軽量化のための)中実ガラスまたは中空ガラスボールなどの材料が、複合材料への添加物として使用されてもよい。ミニチュアボールのいわゆるボールベアリング作用は、複合材料の流動特性を促進する。より一定した表面構造であれば、低い収縮量および焼結ひずみにより生産を増加させる可能性など、さらにプラスの効果を持つ。
【0032】
本発明の重要な面は、採用される複合材料の組成が室温で安定していて、93.3℃と121.1℃(200と250°F)の間の温度で硬化が可能だということである。したがって、潜伏性架橋剤または潜伏性架橋剤の混合物以外の、安定性を低下させるか硬化温度を下げる他のいかなる架橋剤も含有しない。組成物が25℃でおよそ10,000mPa・s(10,000cP)、50℃で800mPa・s(800cP)、または70℃で200mPa・s(200cP)の粘度を有することは、本発明のさらなる態様である。任意であるが、消泡剤その他などの充填剤が添加されてもよい。充填および補強の物質に加えて、処理能力に影響を与える目的のための、酸化防止剤、光安定剤、UV安定剤、熱安定剤、難燃剤、潤滑剤、衝撃促進剤、可撓性付与剤、顔料および着色料などの染料、殺真菌性および殺菌性の添加剤などのバイオスタビライザ、殺菌剤、推進剤、核生成剤、架橋剤、および結合剤などの機能的添加剤を添加することも可能である。その結果、耐湿性または低可燃性など、複合材料の固有特性を意図的に設定することが可能である。
【0033】
上述した組成物は、比較的容易に処理され、室温で長期の保管安定性を呈し、高いガラス転移温度(148.9〜160.0℃または300〜320°F)を持つ組成物に生成され、93.3℃(200°F)で硬化し、70℃でも長い潜伏期間を持つ。
【0034】
そのため本発明による方法の実施形態は、以下のようにして用意することができる。
a)一つまたはいくつかの空洞を備えるモールドを用意する。
b)マトリックス樹脂を包含する複合材料をモールドへ射出する。マトリックス樹脂は、
1)流体フェノール樹脂、
2)グリシジル末端希釈剤、
3)少なくとも93.3℃(200°F)の温度に露出された時のみ架橋が生じる少なくとも一つの潜伏性架橋剤、
4)天然材料またはリサイクル材料の添加(粉末状鉱物または粉砕圧縮紙を複合材料の総量の40%まで添加することが可能であると試験中に証明された。)、
を包含する。
c)射出成形またはダイカストを介して透明複合材料を導入する。
d)エッジおよび底面に射出成形して、樹脂およびリサイクル材料とUV放射軽減のための一体的フィルム細片とで絶縁成形部品の一部を被覆するように、第1モールドの上側部品を交換して可融コアを備える第2モールドを位置決めする。
e)溶融槽において開口部からモールドを取り出した後で可融コアを取り除くことにより、室3の空洞が外側と接続される。
f)開口部1を介して室3の空洞に負圧を発生させ、加硫材料で開口部1を閉鎖および密封する。
g)部分的に硬化した中実の絶縁成形部品を製造するため、充分な時間をかけて少なくとも93.3℃(200°F)までモールドを加熱すること。
h)絶縁成形部品をモールドから取り出してUV放射で硬化を行う。マトリックス樹脂は、真空に露出された状態で硬化する。真空の印加が、硬化プロセス中に発生する蒸気を除去することになる。
【0035】
本発明による方法の結果は、図1乃至5に示されたような絶縁成形部品である。図1は、本発明による絶縁成形部品の実施形態の様子を三つの異なる図で示し、室3の空洞から可融コアが取り出されるためと、続いて室3が真空排気されるための開口部1が示されている。そのため、図の実施形態では16個の室3であるいくつかの室3が絶縁成形部品を構築し、室はウェブ4を介して相互に気密状態で分離されている。貫通孔6は締結孔を表す。
【0036】
図2は、図1の左下角の内部状態の拡大図を示し、室3およびウェブ4が明示されている。またさらに、図の実施形態では各室3に2個の開口部1が設けられるように開口部1が選択されて、開口部が室3の中で正反対に構成されていることを図2は示している。室3の表面には、隆起表面部2が見られる。
【0037】
図3は、図1のA−A線における断面図を示し、ウェブ4を介して気密状態で相互に分離されている個々の室3が示されている。図の実施形態では上側部品7と下側部品8とがそれぞれ立方体の状態で構成され、上側部品7は下側部品8に対して斜方向に若干ずれている。こうして周方向肩部9が形成されて、相互に当接するいくつかの絶縁成形部品の重複状態取り付けを可能にする。
【0038】
図4は、装飾的表面としての構成が可能である上側部品7と、下側部品8とを包含する、本発明による絶縁成形部品の斜視図を示す。またさらに、貫通孔6の形の締結孔を備える周方向肩部9が示されている。
【0039】
上側部品7と下側部品8とを備える本発明による絶縁成形部品を製造するための方法の別の実施形態によれば、射出成形またはダイカスト方法の範囲内の第1方法ステップで、天然材料またはリサイクル材料がそれぞれ添加された上側部品7および下側部品8の複合材料が三分割モールドへ導入される。中央モールド部品が存在する状態で、下側部品8が底側モールド半分で、上側部品7が上側モールド半分で成形される。底面および側壁を備える下側部品8が上側部品7と同時に射出される。第2方法ステップでモールドが開かれて、中央モールド部品が取り出される。その結果、上側部品7および外側部品8が側面の一方でモールドからそれぞれ取り出されるが、それぞれのモールド半分の中に入ったままである。第3方法ステップでは、二つのモールド半分が再び閉じられ、これにより上側部品7と下側部品8とが相互に押圧され、それぞれの複合材料が架橋する。第3方法ステップの前に上側部品7と下側部品8とがまだ架橋可能な状態で存在しているように、第1および第2方法ステップは充分迅速に実施されなければならない。
【0040】
この製造プロセスは負圧を受けた製造スペース内で実施されることが好ましく、それはこの場合には後の室3の真空排気を省略することが可能だからである。この場合、例えば3mbarなどの負圧状態に維持されてそれぞれのゲートを介してアクセス可能である密封室に、射出成形またはダイカスト機械が置かれる。
【0041】
またさらに、低圧と高圧の両方の範囲でRIM(反応射出成形)方法が適用されてもよい。
【0042】
そのため、簡易かつ低コストでの製造が可能であって良好な絶縁能力および高い安定性を提供する射出成形部品が、本発明を利用して用意される。
【符号の説明】
【0043】
1 開口部
2 隆起表面部
3 室
4 ウェブ
6 貫通孔
7 上側部品
8 下側部品
9 周方向肩部
10 付加的絶縁壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側部品(7)と下側部品(8)とを備えた絶縁成形部品において、気密状態で相互から分離された室(3)としてそれぞれが構成された空洞を内部に有する一体的な射出成形またはダイカスト部品として、前記上側部品(7)と前記下側部品(8)とが構成され、前記上側部品(7)と前記下側部品(8)とがそれぞれ立方体状態で構成され、前記上側部品(7)が斜方向において前記下側部品(8)に対して若干ずれて配置されていることを特徴とする、絶縁成形部品。
【請求項2】
前記室(3)に負圧が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の絶縁成形部品。
【請求項3】
前記上側部品(7)が複合材料で製作されて天然材料またはリサイクル材料が添加されることを特徴とする、請求項1または2に記載の絶縁成形部品。
【請求項4】
前記下側部品(8)が複合材料で製作されて天然材料またはリサイクル材料が添加されることを特徴とする、請求項1乃至3の一つに記載の絶縁成形部品。
【請求項5】
前記複合材料が、中空ガラス球が添加された低熱伝導性のPU硬質フォームに関係することを特徴とする、請求項1乃至4の一つに記載の絶縁成形部品。
【請求項6】
上側部品(7)と下側部品(8)とを備えた絶縁成形部品を製造するための方法において、射出成形またはダイカストプロセスの範囲内の第1方法ステップで、前記上側部品(7)の複合材料が、天然材料またはリサイクル材料が添加されて第1モールドへ導入されて、可融コアプロセスの範囲内の第2方法ステップで、前記下側部品(7)の複合材料が、天然材料またはリサイクル材料が添加されて第2モールドへ導入され、前記第2モールドの開口部(1)を介して外部と接続される個々の可融体を備える可融コアを前記第2モールドが含み、個々の室(3)を形成するための前記第2方法ステップの後で前記可融体が溶融されることを特徴とする、方法。
【請求項7】
前記室(3)内での前記可融体の溶融の後で負圧が発生され、後に前記室(3)の気密密封状態が生じることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記絶縁成形部品が、UV放射による事後硬化を施されることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記上側部品(7)および前記下側部品(8)の前記複合材料が、25℃で8,000〜12,000mPa.s(10,000センチポイズ)の粘度を有することを特徴とする、請求項6乃至8の一つに記載の方法。
【請求項10】
前記上側部品(7)および前記下側部品(8)の前記複合材料が、93.3℃と121.1℃(200°Fと250°F)の間の温度で硬化することを特徴とする、請求項6乃至9の一つに記載の方法。
【請求項11】
前記上側部品(7)と前記下側部品(8)との前記複合材料が、流体フェノール樹脂とグリシジル末端エポキシ希釈剤と少なくとも一つの潜伏性架橋剤とを包含するマトリックス樹脂を含有することを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項12】
前記エポキシ希釈剤が1,4−ジグリシジルオキシブタンに関係することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記潜伏性架橋剤が、82℃と121℃(180°Fと250°F)の間の温度で活性化されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記潜伏性架橋剤が、三塩化ホウ素アミン錯体に関係することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エポキシ希釈剤が、前記マトリックス樹脂の総量の5から12重量%の量、好ましくは8から10重量%の量、好ましくは9重量%の量で含有されることを特徴とする、請求項11乃至14の一つに記載の方法。
【請求項16】
前記潜伏性架橋剤が、マトリックス樹脂の総量の1から10重量%の量、好ましくは3から7重量%の量、好ましくは5重量%の量で含有されることを特徴とする、請求項11乃至15の一つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−505852(P2013−505852A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530047(P2012−530047)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/AT2010/000224
【国際公開番号】WO2011/035352
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512072625)
【Fターム(参考)】