説明

線焦点を作成する光学システム、この光学システムを用いる走査システム、および基板のレーザ加工方法

【課題】基板の表面上の入力光ビームからできるだけ収差がない、特にボウタイ型誤差を示さない線焦点を作成する光学システムを提供する。
【解決手段】伝搬方向に伝搬する入力光ビームを放射する光源44であって、入力光ビーム42は、伝搬方向に対して直角の第1次元xにおける延長部分および第1次元xおよび伝搬方向に対して直角の第2次元yにおける延長部分を有する光源44と、入力光ビームを第1次元xにおいて拡大するための少なくとも一つのビーム拡大光学素子46と、第2次元yにおいて湾曲される集束光学素子であって、集束光学素子が入力光ビームを第2次元yにおいて表面上の線焦点Fに集束させる集束光学素子48と、線焦点がまっすぐでありかつ線焦点の少なくともほぼ全長にわたって表面上の平坦な焦点面にあるように、線焦点を平らにするための少なくとも一つの補正光学素子50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームの線焦点を基板上に作成する光学システムに関する。
本発明は、さらに走査ビーム焦点を基板上に作成する走査システムに関する。
なおさらに、本発明は、基板のレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、基板のレーザ誘導結晶化の分野において、フラットパネルディスプレイまたは有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ製造工程の分野において、例えば大基板の焼きなましに役立つ。
本明細書および本請求の範囲において用いられる「線焦点」という用語は、ビームの伝搬方向に直交するビームの2つの横方向次元間に大きなアスペクト比を有するビーム形状であると理解される。このようなアスペクト比は、特に100より大きいこともある。
【0003】
線焦点または線ビームを、例えば大基板のシリコン焼きなましで用いられるように作成する、例えば下記特許文献1に開示されるような先行技術による光学システムは、集束光学素子としてシリンドリカルレンズを備える屈折光学システムを用いている。
現在の光学システムでは、例えば200mmである線焦点の長さと、例えば1mmである線焦点の幅との典型的な比は、およそ100〜200である。しかしながら、いくつかの応用としては、線焦点の長さと幅との比が600〜10000まで増加するように、非常に薄い(<0.05mm)および長い(>300mm)線焦点を持つことが望ましい。
【0004】
しかしながら、線焦点の幅が減少するにつれて、補正の必要がある屈折シリンドリカルシステムの収差、特にいわゆるボウタイ型誤差(bow-tie error)が見られる。以下では、これらの欠陥を、先行技術による線焦点を作成する光学システムに関してより詳細に説明する。
図1〜図3は、先行技術に従って光ビームの線焦点を基板の表面上に作成する光学システムを示す。
【0005】
光源は、通常、ほぼ正方形または円形断面を持つ直径Dの入力光ビーム10を発する。細長い線ビームまたは線焦点を入力ビーム10から作成するために、光学システムは、図1〜図3に図示されるように、光ビーム10の伝搬方向に対して直角の1次元において(x方向より下方という)光ビーム10を拡大し、第1次元に対しても同じく直角の伝搬方向に対して直角の第2次元において(y方向より下方という)入力光ビーム10を集束させるのに必要とされる。図1は、yz平面での光ビーム10を示し、図2は、xz平面での光ビーム10を示し、図3は、光ビーム10の斜視図である。図1〜図3に示されるような光学システムは、例えば、上述の下記特許文献1に記載されている。
【0006】
集束は、yz平面で行われ、一方ビーム拡大は、xz平面で行われる。
入力光ビーム10の集束は、通常、シリンドリカルレンズ12によって行われる。最小達成可能線幅Wは、レンズ12のF数f#に関する。最小(回折限界)線幅Wは、積W=2f#・λによって与えられ、式中λは、入力光ビーム10の動作波長である。したがって、小さいf#<20は、非常に細い線焦点に必要とされる。レンズ12のx方向の焦点距離fは、入力ビーム直径Dから追従してf=D・zy#となる。例えば、直径D=20mmの入力ビーム10は、約f<400mmの焦点距離を必要とする。したがって、レンズ12と線焦点が形成される基板との間の距離は、典型的に短距離に限定される。
【0007】
図2に示すような入力光ビーム10のx方向の拡大は、通常ビーム拡散光学素子またはビーム拡大素子14によって作成される。例えば、拡大素子14は、負シリンドリカルレンズ、シリンドリカルレンズアレイ、回折光学素子、または1次元拡散板であってもよい。
全入力ビームを拡大する代わりに、該ビームを、線焦点が時間の関数として走査されうるように高速ステアリングミラー(例えば、ガルボミラー)によって偏向することもできる。しかしながら、時間平均では、ステアリングミラーは、素子14と同じ機能となるだろう。
【0008】
これらの上記素子のすべては、導入角度ω(図2参照)が小さい(およそ数度)場合、製造がより容易であり、収差が少なくなる。それにもかかわらず、入力ビーム直径Dの数倍の長さLの長い線焦点Fを達成するためには、拡大素子14と基板Sとの間の距離Δzは、L=D+2・Δz・tan(ω)であるので、典型的に大きくなる。結果として、拡大または拡散素子14は、光ビーム10の伝搬方向(正z方向)で見ると、集束素子12の前に位置決めされる。
【0009】
このことはまた、x方向の入力光ビーム10のエッジでの光線、例えば、端部光線16および18(図3参照)が、x方向の非ゼロ角ω(図3参照)で集束素子12に入射することを意味する。しかしながら、レンズ12のようなシリンドリカルレンズが、y方向である集束方向に直交する入射角ω、すなわち図3における角度θで用いられる場合、レンズ12の後ろで結果として生じる屈折角θ’に関連する背面焦点距離は、ωに依存する。これは、屈折の法則に影響する正弦関数における非線形性によるものである。
【0010】
n・sin(i)=n’・sin(i’)であり、式中i、i’はそれぞれ合計入射角であり、ゆえにそれぞれωとθ、ω’とθとの組合せである。
結果として、入力光ビーム10が集束する平面は平坦にはならず、湾曲する。このことは、基板Sが典型的に平坦であるので望ましくない。特に、入力光ビーム10の端部光線16,18については、鮮明な焦点は中央光線の焦点よりもレンズ12に近くなる。言い換えると、入力光ビーム10は、x方向の基板S上のビームのエッジでは焦点が外れる。この状況を、図5に示す。発生した収差は、基板S上の図4に示すビームフットプリントがボウタイ形状であるので、通常ボウタイ型誤差と呼ばれる。
【0011】
したがって、上記欠陥を克服する、特にボウタイ型誤差を示さない線焦点を作成する光学システムの必要がある。
【特許文献1】米国特許第5,721,416号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、基板の表面上の入力光ビームからできるだけ収差がない、特にボウタイ型誤差を示さない線焦点を作成する光学システムを提供することである。
本発明の他の目的は、前述した目的を達成する走査ビーム焦点を基板の表面上に作成する走査システムを提供することである。
本発明のさらに他の目的は、できるだけ収差がない線ビームまたは線焦点を持つ基板のレーザ加工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらのおよび他の目的は、線焦点を入力光ビームから基板の表面上に形成または作成する光学システムによって、本発明の第1態様に従って達成される。本光学システムは、伝搬方向に伝搬する入力光ビームを放射する光源であって、入力光ビームは、伝搬方向に対して直角の第1次元における延長部分および第1次元および伝搬方向に対して直角の第2次元における延長部分を有する光源と、入力光ビームを第1次元において拡大するための少なくとも一つのビーム拡大光学素子と、第2次元において湾曲される少なくとも一つの集束光学素子であって、集束光学素子が入力光ビームを第2次元において表面上の線焦点に集束させる集束光学素子と、線焦点がまっすぐであり、かつ線焦点の少なくともほぼ全長にわたって表面上の平坦な焦点面にあるように、線焦点を平らにするための少なくとも一つの補正光学素子とを備える。
【0014】
本発明の他の態様によれば、走査ビーム焦点を基板上に作成する走査システムが提供される。本走査システムは、伝搬方向に伝搬する入力光ビームを放射する光源であって、入力光ビームは、伝搬方向に対して直角の第1次元における延長部分および第1次元および伝搬方向に対して直角の第2次元における延長部分を有する光源と、 入力光ビームを第1次元において拡大するための少なくとも一つのビーム拡大光学素子と、第2次元において湾曲される少なくとも一つの集束光学素子であって、集束光学素子が入力光ビームを第2次元において平面上の線焦点に集束させる集束光学素子と、線焦点がまっすぐであり、かつ線焦点の少なくともほぼ全長にわたって表面上の平坦な焦点面にあるように、線焦点を平らにするための少なくとも一つの補正光学素子とを備える。
【0015】
本発明のさらに他の態様によれば、基板のレーザ加工方法が提供される。本レーザ加工方法は、伝搬方向に伝搬する入力光ビームを放射する光源であって、入力光ビームは、伝搬方向に対して直角の第1次元における延長部分および第1次元および伝搬方向に対して直角の第2次元における延長部分を有する光源と、入力光ビームを第1次元において拡大するための少なくとも一つのビーム拡大光学素子と、第2次元において湾曲される少なくとも一つの集束光学素子であって、集束光学素子が入力光ビームを第2次元において平面上の線焦点に集束させる集束光学素子と、線焦点がまっすぐであり、かつ線焦点の少なくともほぼ全長にわたって表面上の平坦な焦点面にあるように、線焦点を平らにするための少なくとも一つの補正光学素子とを使用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面に示し、かつ図面を参照して以下でより詳細に説明する。
以下では、光ビームの線焦点を基板上に形成または作成する光学システムの好ましい実施形態を説明する。
本発明に従って入力光ビームから線焦点を基板の表面上に作成する光学システムは、一般に、入力光ビームを発する光源を備えている。入力光ビームは伝搬方向に伝搬し、入力光ビームは、伝搬方向に対して直角の第1次元における延長部分および第1次元および伝搬方向に対して直角の第2次元における延長部分を有している。
【0017】
少なくとも一つのビーム拡大光学素子が、入力光ビームを第1次元において拡大するために設けられている。
さらに、第2次元において湾曲される少なくとも一つの集束光学素子は、該集束光学素子が入力光ビームを第2次元において基板の表面上の線焦点または線ビームに集束するように設けられている。
【0018】
以下でより詳細に説明する本発明による光学システムの実施形態は、少なくとも一つの補正光学素子が、線焦点がまっすぐであり、かつ線焦点の少なくともほぼ全長にわたって基板の表面上の平坦な焦点面にあるように、線焦点を平らにするために設けられるという共通点がある。
第1の種類の実施形態において、少なくとも一つの補正光学素子は、少なくとも一つの集束素子と基板の表面との間に位置決めされ、入力光ビームの集束素子への斜め入射によって生じる線焦点での収差を補正するために負出力を有している。好ましくは、少なくとも一つの補正光学素子は、この場合入力光ビームの伝搬方向において見ると、基板の表面の前の最後の光学素子である。補正光学「素子」は、主に表面、特に集束レンズの光出口面にすぎないことを理解されたい。
【0019】
補正光学素子は、第1次元もしくは第2次元、または必要な場合にはその両方、すなわち第1次元および第2次元において負出力を有することができる。
他の種類の実施形態では、少なくとも一つの補正光学素子は、少なくとも一つの集束光学素子の前に位置決めされ、入力光ビームが少なくとも一つの集束光学素子に少なくともほぼ直角に入射するように入力光ビームを平行にする平行光学素子である。図1〜図5を参照して上で説明したように、ボウタイ型誤差は、集束光学素子上およびそれを通過する入力光ビームの斜め入射によって生じる。入力光ビームが集束光学素子に入射する前に入力光ビームを平行にすることによって、このような斜め入射を回避し、ひいてはボウタイ型誤差のような収差も回避する。
【0020】
この場合、少なくとも一つの補正光学素子を、第1次元もしくは第2次元において、または好ましくは、必要な場合には第1次元および第2次元において入力光ビームを平行にし、その結果第1次元ならびに第2次元において入力光ビームが直角に入射するように設計することができる。
以下で説明するさらなる好ましい実施形態では、中間焦点を基板と光源との間に作成するように光学システムを設計することができる。このような光学システムに好ましくは中間焦点を設ける理由は、光源によって放出される入力光ビームは平行になっていないことがよくあるが、収束性または発散性であるからである。入力光ビームは回折限界ではないことがよくあるが、ある固有ビーム発散を有してもよい。このような非回折限界ビームを集束させた場合、積W=2・f#・λによって与えられる最小(回折限界)線幅にはならないが、限界ビーム品質のため大きくなる。したがって、ビームを中間位置に集束させること、および中間焦点領域に配置され、入力光ビームのシャープエッジを第1次元および第2次元のうち少なくとも一方において作成するためのマスク(開口)を用いることが望ましい。
【0021】
このような開口(マスク)は、例えば、長方形のスリットを有することができる。
中間焦点を第2次元において作成する光学システムでは、入力光ビームは、入力光ビームを第2次元において基板上に集束させる集束光学素子上に斜めに入射し、それによりボウタイ型誤差の形の収差が再び生じることになる。
したがって、本問題を解決するために、中間焦点を作成するさらなる集束光学素子には、(入力光ビームの伝搬方向で見ると)中間焦点の後ろに配置され、第2次元において入力ビームを平行にするためのさらなる平行光学素子が割り当てられる。したがって、入力光ビームは、該入力光ビームを第2次元においても少なくともほぼ直角に基板の表面上に集束させる集束光学素子に入射され、それによって斜め入射およびこのような斜め入射によって生じる収差を回避する。
【0022】
好ましくは、中間焦点を作成するさらなる集束光学素子およびさらなる平行光学素子を構成して、例えば歪像ケプラー望遠鏡状の無限焦点望遠鏡を形成することができる。「無限焦点」は、さらなる集束光学素子およびさらなる平行光学素子の焦点距離が互いに異なり、その差を第1次元ビームエクスパンダまたはコンプレッサを形成するために用いることができるということを意味し、それゆえ同時に、入力光ビームの大きさを光学システムに必要な大きさに合わせるために入力レーザビームを拡大または圧縮するために用いてもよい。
【0023】
前述したすべての種類の実施形態では、少なくとも一つのビーム拡大光学素子は、高速ステアリングミラー、例えば、ガルボミラー、また好ましくは、負シリンドリカルレンズ、シリンドリカルレンズアレイ、回折素子、または1次元拡散板であってもよい。
さらに、少なくとも一つの集束光学素子はシリンドリカルレンズであってもよく、前述したさらなる集束光学素子もシリンドリカルレンズであってもよい。
【0024】
本発明による光学システムは、屈折素子、または屈折素子と反射素子との組合せのみを用いることができる。屈折素子はフッ化カルシウム(CaF)を含むことがある。
さらに、入力光ビームは、波長が、線焦点を持つ処理対象基板の波長に対する吸収係数が高くなるように選択される光を備えることができる。
基板自体は半導体膜を備えることができ、または例えばアモルファスシリコンを含むことができる。
【0025】
前述したような光学システムで用いられる光源は、好ましくは、50W以上の光学出力を与える高出力レーザである。好ましくは、光源は、エキシマレーザである。
ボウタイ型誤差の補正が、入力光ビームを基板の表面上に直角で集束させる集束光学素子に入力光ビームを入射させる主構に基づく場合には、線焦点は、本発明の光学システムのさらなる利点としては、多くの場合に望ましいように、基板の表面上ではテレセントリックである。「テレセントリック」は、光が基板の表面に直角で入射することも意味している。
【0026】
「線焦点」という用語は上記または以下で用いる限りでは、大略的には光ビームの伝搬方向に対して直角の光ビームの2つの横方向次元間に大きなアスペクト比を有するビーム形状について述べる。特に、上述のアスペクト比は、100より大きい。
「シリンドリカル光学素子」という用語は以下の説明で用いる限りでは、簡略化のために用いられ、光ビームの伝搬方向に対して直角の1次元においては必ずしも球面ではない湾曲面を有し、および第1次元および光ビームの伝搬方向に対して直角である他の次元においてはまったくまたは実質的に湾曲がない光学素子(レンズおよび鏡)のすべての形状を含んでいる。「シリンドリカル光学素子」という用語は、原則として、非球面湾曲を有する光学素子(レンズおよび鏡)も含んでいる。本発明では、「シリンドリカル光学素子」の湾曲の特定の形状は、多項式または円錐面によって説明することができる放物線状、楕円状、または非球面状である。
【0027】
さて図6を参照して、入力光ビーム22の線焦点Fを基板の表面S上に作成する光学システム20を示す。
入力光ビーム22は、入力光ビーム22を図6のz方向である伝搬方向に放射する光源24によって放射される。入力光ビーム22は、図6のx方向でありかつ光ビーム22の伝搬方向に対して直角である第1次元における延長部分および図6のy方向でありかつ第1次元および入力光ビーム22の伝搬方向に対して直角である第2次元における延長部分を有している。光源24によって放射されるような入力光ビーム22の断面の形状は正方形であってもよいが、異なる形状、例えば、円形、楕円形、長方形、または任意の他の形状であってもよい。
【0028】
光学システム20は、入力光ビーム22を第1次元において、すなわちx方向に拡大するためのビーム拡大光学素子26をさらに備えている。ビーム拡大光学素子26は、例えば、負シリンドリカルレンズである。
光学システム20は、入力光ビーム22を、拡大の後基板の表面S上の線焦点Fに集束させる集束光学素子28をさらに備えている。集束光学素子28は、例えば、Y方向に正出力を持つシリンドリカルレンズである。
【0029】
図6で分かるように、入力光ビーム22は、拡大後、入力光ビーム22の中央部分30でのみ直角に集束光学素子28に入射し、一方入力光ビーム22のエッジ、すなわち端部光線32,34は、中央部分30から端部光線32,34までの傾きの増加に伴って、集束光学素子28に斜めに入射する。入力光ビーム22のエッジの領域における斜め入射は、通常、図5に示すような焦点面または線焦点Fの湾曲の結果である、図4に示すようなビームフットプリントを生じさせる。線焦点Fの湾曲を補正するために、補正光学素子36は基板の表面Sと集束光学素子28との間に位置決めされ、図7および図8に示すように線焦点Fを基板の表面S上でまっすぐにするために負出力を有している。図8において、x軸は基板の表面Sに依存するように選択されている。
【0030】
図9および図10は、本発明に従う光学システム40の他の実施形態を示す。
図6に示す実施形態と同じように、光学システム40はz方向に伝搬する入力光ビーム42を放射する光源44、入力光ビーム42をx方向に拡大するビーム拡大光学素子46、および拡大された入力光ビームをy方向に集束させる集束光学素子48を備えている。
光学システム40は、入力光ビーム42の伝搬方向において見ると、集束光学素子48の前に配置される平行光学素子として構成される補正光学素子50をさらに備えている。平行光学素子50は、入力光ビーム48がx方向の入力光ビームの全延長部分にわたって直角に集束光学素子48に入射するように拡大された入力光ビーム42を平行にする。簡単な本実施形態では、平行光学素子50は、入力光ビーム42を、このようにしてx方向において平行にする。図2の角度ωはこのようにしてゼロとなり、スネルの屈折の法則は、もはやωに依存していない。
【0031】
基板の表面S上の線焦点Fは、このようにまっすぐかつ一平面にあり、その結果線焦点Fのビームフットプリントは、図7に示すものと同じである。
光学システム40のさらなる利点は、集束された後の入力光ビーム42が基板の表面Sにも直角に入射し、それにより光学システム40はテレセントリック光学システムになるということである。
【0032】
線焦点Fは、図7および図8に示すように、線焦点の全長にわたって均一な細線である。
図11は、他の光学システム60を示している。光学システム60は、入力光ビーム62を発する光源64、入力光ビーム62をx方向に拡大するビーム拡大光学素子66、入力光ビーム62を基板の表面S上においてy方向に集束させる集束光学素子68、およびx方向の拡大後の入力光ビーム62を、x方向に平行にする平行光学素子の形の補正光学素子70を備えている。
【0033】
光学システム60は、中間焦点Fを中間焦点面に作成するために、入ってくる入力光ビーム62をy方向に集束させるさらなる集束素子72をさらに備えている。開口76を持つマスク74は、すでに上述したように、線焦点Fのシャープエッジまたはシャープラインを作成するために、中間焦点Fにまたはその近くに配置されている。開口76は、例えば長方形のスリットとして構成することができ、よって入力光ビーム62のシャープエッジをx方向およびy方向に作成する。
【0034】
さらなる集束素子72は、図11に示すように、入力光ビーム62をy方向に集束させる。
中間焦点Fに起因して、入力光ビーム62は、入力光ビーム62がビーム拡大光学素子66を通過、および入力光ビーム62が平行光学素子70を通過するにつれて、y方向の斜め入射角(図3では、θとされている)を有している。したがって、入力光ビーム62が基板の表面S上に集束する平面は、図12に示すように、要望したように、再び湾曲されかつ平坦ではない。線焦点の曲がりの影響は、図1〜図3の場合におけるように、入力光ビームのx方向の斜め入射の影響としては重要ではないが、線焦点Fの擾乱として考えるには十分大きいだろう。
【0035】
図11の光学システム60に関して生じる問題を解決する他の光学システム80を、図13および図14に示す。
光学システム80は、入力光ビーム82を放射する光源、入力光ビーム82をx方向に拡大するためのビーム拡大光学素子86、拡大された入力光ビーム82を基板の表面S上に集束させるための集束光学素子88、拡大された入力光ビーム82をx方向に平行にするための平行光学素子90、中間焦点Fを中間焦点面に作成するさらなる焦点光学素子92、および中間焦点Fに配置される開口96を有するマスク94を備えている。
【0036】
さらなる集束光学素子92には、入力光ビーム82の伝搬方向において見ると、中間焦点Fの後ろであって、かつビーム拡大光学素子86の前に配置されるさらなる平行光学素子98が割り当てられている。さらなる平行光学素子98は、入力光ビーム82をy方向に平行にし、よって入力光ビーム82が集束光学素子88にy方向に非ゼロ角で入射するのを回避する。したがって、光学システム80は、すべてのシリンドリカル光学素子86および88について、入力光ビーム82がx方向およびy方向に、すなわちそれぞれの素子86および88の集束方向に直交する方向に、非ゼロ角ではなくこれらの素子86および88に入るように、つまり、入力光ビーム82が出力(集束)方向に直交する方向に常に平行になるように設計されている。
【0037】
光学システム80は、図7および図8に示すように、ボウタイ収差がなく、線焦点Fを示している。
さらなる集束光学素子82およびさらなる平行光学素子98は、ともに歪像ケプラー型無限焦点望遠鏡を形成する。素子92および98の焦点距離が互いに異なるように選択される場合、光学システム80の当該部分は、1次元無限焦点ビームエクスパンダまたはコンプレッサを形成し、したがって同時に、出ていく入力光ビーム82の大きさを光学システム80にとって必要な大きさに適合させるために、入ってくる入力光ビーム82を拡大または圧縮するために用いられてもよい。
【0038】
光学システム20,40,80は、走査ビーム焦点を基板上に作成する走査システムの一部またはそのものであってもよい。「走査」は、好ましくは、線焦点が、基板を線焦点に対して機械的に移動させること、または線焦点を基板上で移動させるための光学手段によって、線焦点に垂直な方向に基板全体にわたって走査または掃引されることを意味している。
【0039】
このような走査システムは、好ましくは、例えば、基板をレーザ加工、好ましくは、アモルファスシリコンまたは半導体膜のレーザ焼きなまし、半導体膜のレーザ誘導結晶化、フラットパネルまたはOLED、ディスプレイ製造、または任意の他の種類のレーザ材料加工のためのさまざまな方法において使用される。
以上で説明したような光学システムの応用に従って、光源によって放射される光の波長は、基板の本波長についての吸収係数が高くなるように選択される。特に、レーザ源24,44,84は、高出力エキシマレーザまたは他の高出力光源であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】先行技術に従って線焦点を作成する光学システムのyz平面における平面図である。
【図2】図1の光学システムのxz平面における平面図である。
【図3】図1および図2の光学システムの斜視図である。
【図4】図1〜図3の光学システムによって作成された基板の表面上の線焦点のビームフットプリントである。
【図5】図1〜図3の光学システムによって作成されたxz平面における焦点線を示すグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態による光学システムのxz平面における平面図である。
【図7】図6の光学システムによって得られる基板の表面上の線焦点のビームフットプリントである。
【図8】図6の光学システムによって作成される線焦点のxz平面におけるグラフである。
【図9】本発明の他の実施形態による光学システムのxz平面における平面図である。
【図10】図9の光学システムの斜視図である。
【図11】本発明の他の態様を図示する光学システムの他の実施形態のyz平面における平面図である。
【図12】図11の光学システムによって得られるxz平面における線焦点を示すグラフである。
【図13】図11の光学システムに関して改良される本発明の他の実施形態による光学システムのyz平面における平面図である。
【図14】図13の光学システムのxz平面における平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線焦点を入力光ビームから基板の表面上に作成する光学システムであって、
伝搬方向に伝搬する前記入力光ビームを放射する光源であって、前記入力光ビームは、前記伝搬方向に対して直角の第1次元における延長部分および前記第1次元および前記伝搬方向に対して直角の第2次元における延長部分を有する光源と、
前記入力光ビームを前記第1次元において拡大するための少なくとも一つのビーム拡大光学素子と、
前記第2次元において湾曲される少なくとも一つの集束光学素子であって、前記集束光学素子が前記入力光ビームを前記第2次元において前記基板の表面上の前記線焦点に集束させる集束光学素子と、
前記線焦点がまっすぐであり、かつ前記線焦点の少なくともほぼ全長にわたって前記基板の表面上の平坦な焦点面にあるように、前記線焦点を平らにするための少なくとも一つの補正光学素子とを備える、光学システム。
【請求項2】
前記少なくとも一つの補正光学素子は、前記少なくとも一つの集束素子と前記表面との間に位置決めされ、負出力を有する、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記少なくとも一つの補正光学素子は、前記第1次元および前記第2次元のうち少なくとも一方において前記負出力を有する、請求項2に記載の光学システム。
【請求項4】
前記少なくとも一つの補正光学素子は、前記入力光ビームが前記少なくとも一つの集束光学素子に前記第1次元および前記第2次元のうち少なくとも一方において少なくともほぼ直角に入射するように前記少なくとも一つの集束光学素子の前に位置決めされ、前記入力光ビームを前記第1次元および前記第2次元のうち少なくとも一方において平行にする平行光学素子である、請求項1に記載の光学システム。
【請求項5】
前記少なくとも一つの集束光学素子と前記光源との間に配置され、中間焦点を前記第1次元および前記第2次元のうち少なくとも一方において作成するための少なくとも一つのさらなる集束光学素子をさらに備える、請求項1に記載の光学システム。
【請求項6】
開口が前記入力光ビームのシャープエッジを前記第1次元および前記第2次元のうち少なくとも一方において作成する前記中間焦点の領域に配置される、請求項5に記載の光学システム。
【請求項7】
前記開口は長方形のスリットを有している、請求項6に記載の光学システム。
【請求項8】
前記さらなる集束光学素子には、前記中間焦点の後ろに配置され、前記入力光ビームを前記第2次元において平行にするためのさらなる平行光学素子が割り当てられる、請求項5に記載の光学システム。
【請求項9】
前記さらなる集束光学素子および前記さらなる平行光学素子は、無限焦点望遠鏡を形成するように配置される、請求項8に記載の光学システム。
【請求項10】
前記さらなる平行光学素子は、前記少なくとも一つのビーム拡大光学素子の前に配置される、請求項8に記載の光学システム。
【請求項11】
前記少なくとも一つのビーム拡大光学素子は、高速ステアリングミラー、例えば、ガルボミラーである、請求項1に記載の光学システム。
【請求項12】
前記少なくとも一つのビーム拡大素子は、少なくとも一つの負シリンドリカルレンズ、シリンドリカルレンズアレイ、少なくとも一つの回折素子、第1次元拡散板を含むグループから選択される、請求項1に記載の光学システム。
【請求項13】
前記ビーム拡大素子は前記ビームも均質にする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項14】
前記少なくとも一つの集束光学素子はシリンドリカルレンズである、請求項1に記載の光学システム。
【請求項15】
前記少なくとも一つのさらなる集束光学素子はシリンドリカルレンズである、請求項5に記載の光学システム。
【請求項16】
前記少なくとも一つのビーム拡大光学素子の少なくとも一つ、前記少なくとも一つの集束光学素子、および前記少なくとも一つの補正光学素子のうち少なくとも一つはフッ化カルシウムを含む、請求項1に記載の光学システム。
【請求項17】
前記入力光ビームは、波長が、前記基板の前記波長に対する吸収係数が高くなるように選択される光を備える、請求項1に記載の光学システム。
【請求項18】
前記基板は半導体膜を備える、請求項1に記載の光学システム。
【請求項19】
前記基板はアモルファスシリコンを含む、請求項1に記載の光学システム。
【請求項20】
前記光源は50W以上の光出力を与える高出力レーザである、請求項1に記載の光学システム。
【請求項21】
前記光源はエキシマレーザである、請求項1に記載の光学システム。
【請求項22】
前記線焦点は前記基板の前記表面上でテレセントリックである、請求項1に記載の光学システム。
【請求項23】
走査ビーム焦点を基板上に作成する走査システムであって、
伝搬方向に伝搬する入力光ビームを放射する光源であって、前記入力光ビームは、前記伝搬方向に対して直角の第1次元における延長部分および前記第1次元および前記伝搬方向に対して直角の第2次元における延長部分を有する光源と、
前記入力光ビームを前記第1次元において拡大するための少なくとも一つのビーム拡大光学素子と、
前記第2次元において湾曲される少なくとも一つの集束光学素子であって、前記集束光学素子が前記入力光ビームを前記第2次元において前記平面上の前記線焦点に集束させる集束光学素子と、
前記線焦点がまっすぐであり、かつ前記線焦点の少なくともほぼ全長にわたって前記表面上の平坦な焦点面にあるように、前記線焦点を平らにするための少なくとも一つの補正光学素子とを備える、走査システム。
【請求項24】
前記少なくとも一つの補正光学素子は、前記少なくとも一つの集束素子と前記表面との間に位置決めされ、負出力を有する、請求項23に記載の走査システム。
【請求項25】
前記少なくとも一つの補正光学素子は、前記第1次元および前記第2次元のうち少なくとも一方において前記負出力を有する、請求項24に記載の走査システム。
【請求項26】
前記少なくとも一つの補正光学素子は、前記入力光ビームが前記少なくとも一つの集束光学素子に前記第1次元および前記第2次元のうち少なくとも一方において少なくともほぼ直角に入射するように前記少なくとも一つの集束光学素子の前に位置決めされ、前記入力光ビームを前記第1次元および前記第2次元のうち少なくとも一方において平行にする平行光学素子である、請求項23に記載の走査システム。
【請求項27】
前記少なくとも一つの集束光学素子と前記光源との間に配置され、中間焦点を前記2次元において作成するための少なくとも一つのさらなる集束光学素子をさらに備える、請求項23に記載の走査システム。
【請求項28】
開口が前記入力光ビームのシャープエッジを前記第1次元および前記第2次元のうち少なくとも一方において作成する前記中間焦点の領域に配置される、請求項27に記載の走査システム。
【請求項29】
前記開口は長方形のスリットを有している、請求項28に記載の走査システム。
【請求項30】
前記さらなる集束光学素子には、前記中間焦点の後ろに配置され、前記入力光ビームを前記第2次元において平行にするためのさらなる平行光学素子が割り当てられる、請求項27に記載の走査システム。
【請求項31】
前記さらなる集束光学素子および前記さらなる平行光学素子は、無限焦点望遠鏡を形成するように配置される、請求項30に記載の走査システム。
【請求項32】
前記さらなる平行光学素子は、前記少なくとも一つのビーム拡大光学素子の前に配置される、請求項30に記載の走査システム。
【請求項33】
前記線焦点を前記基板全体にわたって走査する手段をさらに備える、請求項23に記載の走査システム。
【請求項34】
基板のレーザ加工方法であって、走査ビーム焦点を前記基板の表面上に作成する走査システムを使用し、前記走査システムは、
伝搬方向に伝搬する入力光ビームを放射する光源であって、前記入力光ビームは、前記伝搬方向に対して直角の第1次元における延長部分および前記第1次元および前記伝搬方向に対して直角の第2次元における延長部分を有する光源と、
前記入力光ビームを前記第1次元において拡大するための少なくとも一つのビーム拡大光学素子と、
前記第2次元において湾曲される少なくとも一つの集束光学素子であって、前記集束光学素子が前記入力光ビームを前記2次元において前記平面上の前記線焦点に集束させる集束光学素子と、
前記線焦点がまっすぐであり、かつ前記線焦点の少なくともほぼ全長にわたって前記表面上の平坦な焦点面にあるように、前記線焦点を平らにするための少なくとも一つの補正光学素子とを備える、方法。
【請求項35】
前記線焦点を前記基板全体にわたって走査するステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記線焦点を前記基板全体にわたって機械的に走査するステップをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記線焦点を前記基板全体にわたって光学的に走査するステップをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記基板はシリコン基板である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記基板は半導体膜である、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記レーザ加工は前記基板を焼きなますステップを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記レーザ加工は前記基板のレーザ誘導結晶化を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記レーザ加工はフラットパネルディスプレイ製造工程で行われる、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記レーザ加工は有機LEDディスプレイ製造工程で行われる、請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−503593(P2009−503593A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524395(P2008−524395)
【出願日】平成18年7月22日(2006.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007233
【国際公開番号】WO2007/014662
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(503187084)カール ツァイス レーザー オプティクス ゲーエムベーハー (14)
【Fターム(参考)】