説明

線維症の進行の予測用バイオマーカー

本発明は、線維症を有する対象における線維症の進行を予測するための方法およびキット、ならびに線維症を有する対象における線維症の進行を遅延させ得る化合物を同定するための方法、線維症を有する対象における線維症の進行を低下させる治療の有効性をモニターするための方法、線維症の処置のための臨床試験に参加するための対象を選択する方法、および線維症を有する細胞または対象における線維症の進行を阻害するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2009年11月5日に提出した米国仮出願番号第61/258293号の利益を主張する。前記出願の完全な内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
線維症とは、過度の線維組織の形成である。線維症は、壊死、損傷、または慢性の炎症に対する応答の結果であり得る。これは、薬剤、毒素、放射線、あらゆる組織または細胞のホメオスタシスを妨害するプロセス、毒性損傷、血流変化、感染症(ウイルス、細菌、スピロヘータ、および寄生性)、貯蔵障害、および毒性代謝物の蓄積をもたらす障害などの様々な物質により誘導され得る。線維症は、心臓、肺、腹膜および腎臓に最も一般的である。
【0003】
肺の線維症の1つのタイプは、特発性肺線維症(IPF)である。IPFは、一般的には、高い死亡率および満たされていない臨床的必要性を有する慢性の進行性の肺疾患である。IPFは、肺に対して未知の損傷原因から発生し、重度の肺胞破壊、細胞外マトリクスの過度の沈着を伴う様々な炎症ならびに正常な肺機能の完全な損失を特徴とする不可逆的な瘢痕をもたらすことが広く認められている(Wynn,T.A.(2008) J Pathol 214:199-210)。IPFの発症機序は完全には理解されていないが、持続性の線維芽細胞の増殖および活性化が、IPFの治療介入のために標的化が可能なメカニズムの最前線で残っている。線維芽細胞は、ホメオスタシスおよび細胞外マトリクス(ECM)タンパク質の産生による正常な創傷修復の基礎である。繊維性疾患における線維芽細胞の制御されていない増殖、筋線維芽細胞へのその分化、およびECMの過剰産生は、正常な間質構造の破壊をもたらす。
【0004】
IPF患者における疾患経過は、長期間比較的疾患が安定している数人の患者にて著しく変動するが、一方でその他の患者は急速な疾患進行を示すことが徐々に判ってきた(Martinez, F.J., et al. (2005) Ann Intern Med 142:963-967)。数人のIPF患者は生理学的低減を示すが、その他の患者は、急性劣化、即ちIPFの急性増悪(AE-IPF)を経験する(Hyzy, R., et al. (2007) Chest 132, 1652-1658;Collard, H.R., et al. (2007) Am J Respir Crit Care Med 176:636-643)。そのままでは、徐々にIPF患者における疾患進行が生理学的進行を含む複合(composite)アプローチを用いて規定されてくるにつれて、AE-IPFおよび/または全てが死亡する。疾患進行の病因、リスク因子、および発症機序を理解することを目的とした正確な試験は、IPFの正確な管理には必要である。多くの現行の処置試験は、中期的な結果を重視するので、最初の評価の期間に疾患の経過を規定することは、多大な実用的価値を有するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、IPFなどの線維症に罹患している患者における線維症の進行についての良好な診断指標、ならびに線維症罹患患者において線維症の進行を阻害するためのより効果的な方法についてこの分野における差し迫った必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、線維症を有する対象における線維症の進行を予測するための方法およびキット、ならびに線維症を有する対象における線維症の進行を遅延させ得る化合物を同定するための方法、線維症を有する対象における線維症の進行を低下させる際の治療の有効性をモニターする方法、線維症の処置のための臨床試験における候補者としての対象を選択する方法および線維症を有する細胞または対象における線維症の進行を阻害するための方法を提供する。
【0007】
本発明は、少なくとも一部には、経過期間一年目の間に急速な疾患進行を示すとして臨床学的に分類されたIPF患者の肺生検においてTLR9が過剰発現するという発見を基にしている。本発明はまた、少なくとも一部には、肺の維芽細胞におけるTLR9発現が、細菌およびウイルスDNA上に存在する非メチル化CpGのDNAモチーフによりイン・ビトロで上方調節されるという発見を基にしている。免疫不全C.B.17SCID/bgマウスに進行が急速な者または安定な者由来のヒト肺の線維芽細胞を用いる養子免疫伝達モデルを用いた場合に、進行が急速な者由来の線維芽細胞により、マウスが1回の経鼻投与によるCpG攻撃を受容した場合に悪化したマウスの肺において線維症が増大することが示された。本明細書に提示したデータは、CpGがヒトCD14+単球の分化を線維芽細胞様細胞に誘導し、ヒトA549肺上皮細胞においてEMTを媒介することを初めて示したものである。
【発明の効果】
【0008】
従って、本発明は、線維症を有する対象における線維症の進行を予測するための方法を提供する。該方法は、該対象由来のサンプル中のToll様レセプター9(TLR9)の発現レベルを決定すること、該対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルをコントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較することを含んでおり、ここで該コントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較して該対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルの増加は、該線維症が急速に進行するという指標であり、かくして線維症を有する該対象における線維症の進行を予測する。
【0009】
別の態様において、本発明は、線維症を有する対象における線維症の進行を遅延させ得る化合物を同定するための方法を提供する。該方法は、該対象由来のサンプルアリコートを化合物の各メンバーのライブラリーと別々に接触させること;化合物のライブラリーのメンバーの効果を、各アリコート中のToll様レセプター9(TLR9)の発現レベルを決定すること;および、コントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較して、アリコート中のTLR9の発現レベルを低下させる化合物ライブラリーのメンバーを選択すること、かくして線維症を有する対象における線維症の進行を遅延させ得る化合物を同定すること、を含む。
【0010】
さらに別の態様において、本発明は、線維症を有する対象における線維症の進行を低下させる際の治療の有効性をモニターする方法を提供する。該方法は、該対象への治療の投与前および少なくとも一部分の投与後に、該対象由来のサンプル中のToll様レセプター9(TLR9)の発現レベルを決定すること;および治療の投与前の対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルを、少なくとも治療の一部分の投与後の対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルと比較すること、ここで該治療の投与前のサンプル中のTLR9の発現レベルと比較して、該治療の少なくとも一部の投与後のサンプル中のTLR9の発現レベルにおける低下が、該対象が治療に応答しているという指標であり、かくして線維症を有する該対象における線維症の進行を低下させる際の治療の有効性をモニターすること、を含む。
【0011】
別の態様において、本発明は、線維症の処置のための臨床試験における候補者として対象を選択する方法を提供する。該方法は、線維症を有する対象由来のサンプル中のToll様レセプター9(TLR9)の発現レベルを決定すること、および対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルをコントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較することを含み、ここでコントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較して、該対象由来のサンプルにおける高いTLR9の発現レベルは、該対象が臨床試験に参加すべきであるという指標であり、かくして線維症の処置のための臨床試験における候補者としての対象を選択する。
【0012】
本発明の一実施態様において、該線維症は、特発性肺線維症、肝臓移植後の肝臓線維症、慢性肝炎C型ウイルス感染後の肝臓線維症、および巣状分節状糸球体硬化症における間質性線維症からなる群から選択される。本発明の別の実施態様において、該線維症は、膵臓および肺の嚢胞性線維症、注射線維症、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、腹膜後方線維症、進行性の重度の線維症、腎性全身線維症からなる群から選択される。一実施態様において、該線維症は、人工臓器の外科的移植により引き起こされる。
【0013】
本発明の方法は、該対象由来のサンプル中の非メチル化CpGの存在または非存在を決定すること;該対象由来のサンプル中のγヘルペスウイルスの存在または非存在を決定すること;および/または該サンプル中の、アネキシン1、α平滑筋アクチン、好中球エラスターゼ、KL-6、ST2、IL-8、αデフェンシン、β3-エンドネキシン、セリンプロテアーゼ阻害剤、Kazalタイプ、プラスミノーゲン活性化剤阻害剤-1、HPS3、Rab38、Smad6、ADAMTS7、CXCR6、Bcl2-L-10、およびMMP-9からなる群から選択される追加マーカーの発現レベルを決定すること、をさらに含み得る。
【0014】
該サンプル中のTLR9の発現レベルは、TLR9遺伝子の転写されたポリヌクレオチドまたはTLR9遺伝子のその一部分のサンプル中の存在を検出することにより決定され得る。検出ステップは、cDNAを検出するステップおよび/または転写されたポリヌクレオチドを増幅するステップを含み得る。また、該サンプル中のTLR9の発現レベルは該サンプル中のTLR9タンパク質の存在を検出すること、例えば、該タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを用いることによっても決定できる。
【0015】
該サンプル中のTLR9の発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、定量的な逆転写酵素PCR分析、ノーザン・ブロット分析、ウェスタン・ブロット分析、免疫組織化学、ELISAアッセイ、アレイ分析、およびそれらの組合せまたは下位の組合せからなる群から選択される技術を用いて決定されてもよい。
【0016】
該対象から得たサンプルは液体を含んでいてもよく、例えば、気管支喘息洗浄、血液、嘔吐物、関節内液体、唾液、リンパ液、胆嚢液、尿、腹膜洗浄によって集めた体液、および婦人科系体液からなる群から選択される液体である。一実施態様において、対象由来のサンプルは、気管支喘息洗浄により収集した液体である。該対象から得られたサンプルは、例えば、肺、結合組織、軟骨、肺、肝臓、腎臓、筋肉組織、心臓、膵臓、骨、および皮膚からなる群から選択される組織などの組織またはその成分を含むか、または別に含んでも良い。一実施態様において、該組織は、肺またはその成分である。
【0017】
本発明の一実施態様において、該対象はヒトである。
【0018】
別の態様において、本発明は、線維症を有する対象における線維症の進行を予測するためのキットを提供する。該キットは、Toll様レセプター9(TLR9)の発現レベルを決定するための手段および線維症を有する対象における線維症の進行を予測するためのキットを使用するための指示書を含む。
【0019】
別の態様において、本発明は、線維症を有する対象における線維症の進行を予測するためのキットを提供する。該キットは、該対象由来の生物学的サンプルを得るための手段、TGFβおよびCpGに対するサンプルの応答性を決定するための手段、および線維症を有する該対象における線維症の進行を予測するキットを使用するための指示書を包含する。一実施態様において、かかるキットは、Toll様レセプター9(TLR9)の発現レベルを決定するための手段をさらに含む。別の実施形態において、かかるキットは、TLR9の発現レベルを決定するための手段を含まない。
【0020】
様々な実施形態において、本発明のキットは、対象由来の生物学的サンプルを得るための手段;コントロールサンプル;非メチル化CpGの存在または非存在を決定するための手段;γヘルペスウイルスの存在または非存在を決定するための手段;および/またはアネキシン1、α平滑筋アクチン、好中球エラスターゼ、KL-6、ST2、IL-8、αデフェンシン、β3-エンドネキシン、セリンプロテアーゼ阻害剤、Kazalタイプ、プラスミノーゲン活性化阻害剤-1、HPS3、Rab38、Smad6、ADAMTS7、CXCR6、Bcl2-L-10、およびMMP-9からなる群から選択される追加マーカーの発現レベルを決定するための手段、をさらに含み得る。
【0021】
また別の態様において、本発明は、例えば、肺細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、心臓細胞、筋骨格細胞、皮膚細胞、眼細胞、または脾臓細胞などの細胞における線維症の進行を阻害する方法を提供する。該方法は、細胞と有効量のTLR9アンタゴニストを接触させること、かくして該細胞における線維症の進行を阻害すること、を包含する。
【0022】
別の態様において、本発明は、ヒト対象などの対象における線維症の進行を阻害する方法を提供するものであり、有効量のTLR9アンタゴニストを該対象に投与することにより、該対象における線維症の進行を阻害する。一実施態様において、かかる方法は、該対象に別の治療剤を投与することをさらに含み得る。
【0023】
一実施態様において、該アンタゴニストは、該対象に、静脈注射、筋肉注射、または皮下注射により投与される。
【0024】
別の実施形態において、該線維症は、特発性肺線維症、肝臓移植後の肝臓線維症、慢性肝炎C型ウイルス感染後の肝臓線維症、および巣状分節状糸球体硬化症における間質性線維症からなる群から選択される。本発明のさらに別の実施態様において、該線維症は、膵臓および肺の嚢胞性線維症、注射線維症、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、腹膜後方線維症、進行性の重度の線維症、腎性全身線維症からなる群から選択される。一実施態様において、該線維症は、人工臓器の外科的移植に起因する。
【0025】
一実施態様において、TLR9アンタゴニストは、抗体、例えば、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、およびキメラ抗体、Fab、Fab'2、ScFv、SMIP、アフィボディ、アビマー、バーサボディ、ナノボディ、またはドメイン抗体;低分子;核酸、例えばアンチセンス分子、例えばRNA干渉剤、およびリボザイム;融合タンパク質;アドネクチン;アプタマー;アンチカリン;リポカリン;またはTLR9から得られたペプチド様化合物からなる群から選択される。
【0026】
本発明の別の特徴および利点は、以下の発明の詳細な説明および特許請求の範囲より明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1A-1Dは、特発性肺線維症(IPF)の急速および緩徐に進行する様々な患者の臨床的特徴およびTLR9発現を表す。A.進行が急速な者または緩徐な者として分類したIPF患者の生存。B. 20xおよび40x倍率で観察された、緩徐な進行(1,2)および急速な進行(3,4)を示す患者におけるIPFの代表的な組織構造。C. 進行が急速なおよび緩徐な者由来の上葉SLBにおけるTLR9遺伝子発現の定量的TaqMan PCR分析。この示されたデータは、正常なSLBs mRNA値(GAPDHハウスキーピングに対して標準化した)の平均と比較した全ての組み合わせた上葉mRNA値の平均である。エラーバーは、進行が急速な者(n=10)および安定な(n=13)者の患者群における全データのSEMを示す。両側P値を、ウェルチの修正を用いる不対t検定により決定した。D. 20x倍率で観察される7人の進行が緩徐な者(1)および5人の進行が急速な者(3)由来のSLBにおけるTLR9の代表的な免疫学的組織染色。該対応する領域を2および4で見られるアイソタイプのコントロール(IgG)により染色した。
【図2】図2A-2Fは、線維芽細胞様細胞中でのCD14+ヒトの分化の誘導を図示する。A.イン・ビトロでのCD14+単球の分化についての実験図式。B.血清不含培地または10 ng/ml TGFβを含有する血清不含培地中で培養して、3日目になし(1,2)、50 μg/mLの非CpG (3,4)、50 μg/mLのCpG(5,6)、または50 μg/mLのポリIC(7,8)により刺激した単球の顕微鏡写真。C. 線維芽細胞マーカーのqRT-PCR分析。3日間血清不含培地+/−CpG中で培養した単球における24時間のαSMA 遺伝子発現(1)。血清不含培地またはTGFβ、+/-CpGまたはポリI:C(2)において3日間培養した単球におけるコラーゲンI遺伝子発現。D. 血清不含培地(1)またはTGFβ(2);血清不含培地+CpG(3)またはTGFβ+CpG(4)で培養した単球(40x倍率)中のコラーゲンIに対する蛍光ICC。TGFβ+CpG(5)中で培養した単球に対する放射性同位体コントロール。血清不含培地およびCpGを含有する血清不含培地で培養した単球由来の全CD14+CD45+細胞のコラーゲン発現についての代表的なFC(n=3) (%として)。E. TGFβ(1)またはTGFβ+CpG(2)を含有する血清不含培地中で培養した単球の前方および側方散乱FC。抗CD14で染色した、血清不含培地中で培養した単球(3)またはTGFβを含有する血清不含培地中で培養した単球(4)由来の全細胞のCD14の代表的なFC(n=3) (%として)。抗CD45で染色し、かつCD14発現に関してゲート処理した(gated)、血清不含培地中で培養した単球(5)またはTGFβを含有する血清不含培地中で培養した単球(6)由来のCD14-細胞のCD45についての代表的なFC(n=3)(%として)。代表的なデータ(n=3)を、抗CD45で染色し、かつCD14発現に関してゲート処理した、血清不含培地中で培養した単球およびTGFβを含有する血清不含培地中で培養した単球由来のCD14+細胞の%としてグラフに示した。
【図3】図3A-3Eは、CpGにより誘導されたヒトA549細胞中の上皮間葉転換(EMT)を表す。A.培地(DMEM+10%FCS)(1)、TGFβ(2)、そしてCpG漸増濃度5μg/mL (3)、10μg/mL (4)、50 μg/mL (5)、100 μg/mL (6)、および 200 μg/mL (7)にて96時間培養したA549細胞の代表的な顕微鏡写真。B. 96時間CpGの濃度を漸増させて培養したA549細胞中のαSMA(1)、ビメンチン(2)、およびe-カドヘリン(3)のqRT-PCR分析。C. 96時間CpGの濃度を漸増させて培養したA549細胞におけるIFNαのqRT-PCR分析。D.培地(1)、10μg/mL CpG (2)、50 μg/mL CpG (3)、および100 μg/mL CpG(4)中で96時間培養したA549細胞(40x倍率)中のコラーゲン1に対する蛍光ICC。100 μg/mL CpG(5)と共に培養した細胞を用いるコラーゲンI抗体に対する放射性同位体コントロール。E. CpG EMTアッセイにおけるA549細胞中のTLR9のsiRNAノックダウン:非標的化コントロールsiRNA、サイクロフィリンB コントロール siRNA、およびTLR9 siRNAによる、siRNA処置後のA549細胞溶菌物中のTLR9タンパク質およびβアクチン担持コントロールのウェスタン・ブロット分析;培地(1-4)およびトランスフェクション薬剤単独(5)中で、非標的siRNA(6)およびTLR9 siRNA(7)と共に培養したCpGDNA処置前のA549細胞の顕微鏡写真;72時間、siRNA処置後に、培地およびトランスフェクション薬剤単独(8)、非標的siRNA+75 μg/ml CpG(9)およびTLR9 siRNA+75 μg/ml CpG-DNA(10)を用いて刺激したA549細胞の代表的な顕微鏡写真(n=4);72時間、siRNA処理し、75μg/ml CpGにより培養したA549細胞におけるビメンチン(11)およびe-カドヘリン(12)のqRT-PCR分析。データは平均±SD。*** p<0.0001。
【図4】図4A-4Jは、急速なおよび緩徐な進行性のIPF肺の線維芽細胞におけるTLR9発現およびCpGに対する応答を表す。A. IL-4(10 ng/ml)の存在または非存在において、CpG-ODN非存在(非処置)またはCpG-ODN(10 μg/mL)で24時間処置した、代表的な急速なUIP/IPF(n=5-8)(a)および緩徐なIPF(n=5-8)(b)の線維芽細胞細胞系におけるTLR9遺伝子発現のqRT-PCR分析。各々非処理線維芽細胞と比較した疾患各群における倍数増加を算出した。IFNα(cおよびd)、PDGF(e およびf)、MCP-1/CCL2 (gおよびh)、および MCP-3/CCL3 (iおよびj)に対する急速なまたは緩徐なIPF線維芽細胞馴化培地のBioplex分析。線維芽細胞系を、IL-4 (10 ng/ml)の存在または非存在において、CpG-ODNを用いずに(非処置)またはCpG-ODN(10 μg/mL)を用いて24時間処置した。データは、少なくとも5つの緩徐なIPFおよび5つの急速なIPFの線維芽細胞系の代表例である。データは平均±SEMである。** p<0.001および*** p <0.0001。
【図5】図5A-5Cは、IPFのヒト-SCIDマウスモデルにおいて、急速に進行するヒト肺の線維芽細胞におけるCpGにより誘導された線維症の増悪を表す。A. AE-IPFのヒト-SCIDモデルを確立するための実験図式。B. 線維症の程度を描画するためにマッソントリクロームにより染色された、正常なヒト肺の線維芽細胞を受容して35日目に生理食塩水(1)またはCpG(2)を用いて経鼻投与により攻撃されたマウス、35日目に生理食塩水(3)またはCpG(4)を用いて経鼻投与により攻撃された急速なUIP/IPFヒト肺の線維芽細胞を受容したマウス、ならびに35日目に生理食塩水(5)またはCpG(6)を用いて経鼻投与により攻撃された緩徐なUIP/IPFヒト肺の線維芽細胞を受容したマウス由来の代表的なマウス肺切片。C. 急速なUIP/IPFのヒトの肺線維芽細胞(1)および安定なUIP/IPFのヒトの肺線維芽細胞(2)を受容して、生理食塩水攻撃またはCpG攻撃されたマウス由来の半分の肺均質物におけるヒドロキシプロリンレベル。データは、各時点での5匹のマウスからの平均±SEMである。データは平均±SEMである。** p<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも部分的には、経過期間の一年目に急速な疾患進行を示すと臨床学的に分類されたIPF患者の肺の生体組織においてTLR9が過剰発現したという発見に基づく。本発明は、少なくとも部分的には、肺の線維芽細胞におけるTLR9発現は、細菌およびウイルスDNA上に存在する非メチル化CpGのDNAモチーフによりイン・ビトロで上方調節されるという発見を基にしている。免疫不全C.B.17SCID/bgマウス中に進行が急速または安定な者由来のヒトの肺の線維芽細胞を有する養子免疫伝達モデルを用いた場合に、進行が急速な者由来の線維芽細胞が、マウスが1回の経鼻投与によるCpG攻撃を受容した場合に悪化したマウスの肺における線維症を増大させた。本明細書に提示したデータは、CpGが線維芽細胞様細胞中でヒトCD14+単球の分化を誘導し、ヒトA549肺上皮細胞においてEMTを媒介することを初めて示したものである。
【0029】
従って、方法およびキットは、本明細書において、線維症を有する対象における線維症の進行を予測するために提供され、ならびに線維症を有する対象における線維症の進行を遅延させ得る化合物を同定するための方法、線維症を有する対象における線維症の進行を低下させる際の治療の有効性モニターする方法、線維症の処置のための臨床試験における候補者として対象を選択する方法、および線維症を有する細胞または対象における線維症の進行を阻害するための方法もまた提供される。
【0030】
本明細書に記載したTLR9の発現レベルの変化を特発性肺線維症(IPF)において同定したが、本発明の方法は、IPFの予後、診断、特徴分析、治療、および予防のための使用に限定されるものではない、例えば本発明の方法は、本明細書に記載したようなあらゆる線維性疾患に適用され得る。
【0031】
本発明の様々な態様は、以下にさらに詳細に記述される:
I. 定義
本明細書において使用されるように、以下の各用語は、この章において該用語に関連のある意味を有する。
【0032】
本明細書において使用する冠詞「a」および「an」は、該冠詞の文法上の目的として1または1以上(即ち、少なくとも1の)を指す。例として、「要素(an element)」とは、1の要素または1以上の要素を意味する。
【0033】
本明細書において使用されるように、用語「線維症」は、細胞、臓器または組織において過剰な繊維性結合組織の異常形成または進行をいう。線維症は、例えば、身体的損害、炎症、感染、および毒素への暴露を理由とする、細胞、組織または臓器における回復または反応過程の一部としておこる。いくつかの線維症の型があり、例えば、膵臓および肺の嚢胞性線維症;筋肉内注射の合併症として、特に子供でおこり得る注射線維症;心内膜心筋線維症;肺の肺線維症;縦隔線維症;骨髄線維症;腹膜後方線維症;進行性の重度の線維症、炭坑作業員塵肺症の合併症;および腎性全身線維症である。
【0034】
本明細書において使用されるように、用語「線維症」は、線維症を特徴とするあらゆる障害、症状または疾患を含む用語「線維化障害」、「線維化症状」、および「線維化疾患」と互換的に使用され得る。線維化障害の例は、以下のものを包含するがこれらに限定するものではない:血管線維症、肺線維症(例えば、特発性肺線維症)、脾臓線維症、肝臓線維症(例えば、肝臓移植後または肝炎Cウイルス感染後)、腎臓線維症(例えば、巣状分節状糸球体硬化症における間質性線維症および腎性全身線維症)、筋骨格線維症、心臓線維症(例えば、心内膜心筋線維症、特発性心筋症)、皮膚線維症(例えば、強皮症、外傷後、手術による皮膚の痕跡化、ケロイド、および皮膚のケロイド形成)、眼の線維症(例えば、緑内障、眼の硬化、結膜、および角膜瘢痕、および翼状片)、進行性の全身性硬化症(PSS)、慢性移植対宿主疾患、ペイロニー疾患、膀胱鏡後の尿道狭窄症、特発性および薬理学的誘導性の腹膜後方線維症、縦隔線維症、進行性の重度の線維症、増殖性線維症、腫瘍性線維症、および人工臓器の外科的移植により生じる線維症。線維症と関連した他の疾患、障害、および症状は、例えば、肝臓の線維症をもたらし得る硬変、びまん性肺疾患、精管切除後の疼痛症候群、肺の線維症をもたらし得る結核、脾臓の肥大および最終的には線維症をたらし得る鎌状赤血球細胞貧血、リューマチ関節炎、および腸壁の線維症をもたらす腸組織の反復性の炎症および治癒を引き起こし得るクローン疾患を含む。線維症は、血色素症の合併症、ウィルソン疾患、アルコール依存症、住血吸虫症、ウイルス肝炎、胆管障害、毒素への暴露、および代謝障害としてもおこる。
【0035】
本発明の一実施態様において、線維症とは、肺線維症、例えば、特発性線維化肺胞炎としても知られる特発性肺線維症(IPF)およびIPF/UIP(通常の間質性肺炎)である。
【0036】
線維症は、当業者には既知の方法を用いて対象において診断されてもよい。例えば、線維症は、通常の血液化学分析、超音波、放射線、CT、MRI、生検、および組織学的試験を用いて診断され得る。遺伝子検査(例えば、CFTR遺伝子の)もまた、対象における線維症を診断するために使用され得る。
【0037】
本明細書において使用されるように、用語「線維症を有する対象における線維症の進行」とは、線維症の症候の開始から決定された生存速度(survival rate)をいう。対象は、「進行が急速な者(rapid progressor)」(または「疾患の進行が早い者」)または「進行が緩徐な者(slow progressor)」(または「疾患の進行が遅い者」)として分類される。
【0038】
「進行が急速な者」とは、症状の発病後、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、約12ヶ月、約13ヶ月、約14ヶ月、約15ヶ月、約16ヶ月、約17ヶ月、約18ヶ月、約19ヶ月、約20ヶ月、約21ヶ月、約22ヶ月未満、または約23ヶ月未満の間生存する対象である。
【0039】
「進行が緩徐な者」とは、症状の発病後、約23ヶ月、約24ヶ月、約25ヶ月、約26ヶ月、約27ヶ月、約28ヶ月、約29ヶ月、約30ヶ月、約31ヶ月、約32ヶ月、約33ヶ月、約34ヶ月、約35ヶ月、約36ヶ月、約37ヶ月、約38ヶ月、約39ヶ月、約40ヶ月、約41ヶ月、約42ヶ月、約43ヶ月、約44ヶ月、約45ヶ月、約46ヶ月、約47ヶ月、約48ヶ月、約49ヶ月、約50ヶ月、約51ヶ月、約52ヶ月、約52ヶ月、約54ヶ月、約55ヶ月、約56ヶ月、約57ヶ月、約58ヶ月、約59ヶ月、約60ヶ月、約61ヶ月、約62ヶ月、約63ヶ月、約64ヶ月、約65ヶ月、約66ヶ月、約67ヶ月、約68ヶ月、約69ヶ月、約70ヶ月、約71ヶ月、約72ヶ月、約73ヶ月、約74ヶ月、約75ヶ月、約76ヶ月、約77ヶ月、約78ヶ月、約79ヶ月、約80ヶ月、約81ヶ月、約82ヶ月、約83ヶ月、約84ヶ月、約85ヶ月、約86ヶ月、約87ヶ月、約88ヶ月、約89ヶ月、約90ヶ月、約91ヶ月、約92ヶ月、約93ヶ月、約94ヶ月、約95ヶ月、約96ヶ月、約97ヶ月、約98ヶ月、約99ヶ月、約100ヶ月、約101ヶ月、約102ヶ月、約103ヶ月、約104ヶ月、約105ヶ月、約106ヶ月、約107ヶ月、約108ヶ月、約109ヶ月、約110ヶ月、約111ヶ月、約112ヶ月、約113ヶ月、約114ヶ月、約115ヶ月、約116ヶ月、約117ヶ月、約118ヶ月、約119ヶ月、約120ヶ月を超えるか、またはそれよりも長い間生存する対象である。
【0040】
加えて、急速に疾患が進行する対象は、進行が緩徐な者、例えば線維症の診断後の約6ヶ月の平均レベル以下で安静時に酸素飽和レベル(SpO2)を有し得る。SpO2レベルは、測定時に酸素により飽和したヘモグロビンの%の指標であり、例えばパルス酸素濃度計を用いて決定されてもよい。
【0041】
進行が緩徐な者および進行が急速な者は、症候の発症および/または医師への提示の時点で類似する生理的およびレントゲン写真の特徴を有し得る。
【0042】
さらに、「進行が緩徐な者」のなかには、病気の末期に生じる急性の臨床的劣化(「IPFの急性増悪」(「AE-IPF」))を示す患者の下位群がある。AE-IPFの症候は、例えば、呼吸困難の突然の悪化、新たに進展する広範囲のX線像の不透明部分、低酸素症の悪化を含み、感染性の肺炎、心不全、または敗血症の欠如を含む。本明細書に規定したような進行が急速な者は、AE-IPFを有する対象ではない。
【0043】
本明細書において使用されるように、用語「Toll様レセプター」または「TLR」は、微生物由来の構造的に保存された分子を認識する1回の膜貫通非触媒性レセプターをいう。IL-1レセプターおよびIL-18レセプターなどのインターロイキン-1 レセプターと共にTLRは、「インターロイキン-1 レセプター/Toll様レセプタースーパーファミリー」として知られるレセプタースーパーファミリーを形成する。このファミリーの膜は、MyD88を含むTIRドメイン含有アダプター、TIRドメイン含有アダプター(TIRAP)、およびIFNβ(TRIF)を含むTIRドメイン含有アダプターを介して(recruiting)(TIR-TIR 相互作用による)、下流のシグナル伝達のためのプラットフォームを形成する細胞外のロイシンリッチリピート(LRR)ドメイン、膜近傍システイン残基の保存パターン、および細胞質内のシグナル伝達ドメイン(Toll/IL-1耐性またはToll-IL-1 レセプター(TIR))を構造的特徴とする(L. A. O'Neill, A. G. Bowie (2007) Nat Rev Immunol 7:353)。
【0044】
TLR9のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、当分野では知られており、例えば、gi:20302169、gi:157057165 (TLR9ヒトおよびマウス各々)に存在し得る。
【0045】
TLR9の「高い発現レベル」または「発現レベルにおける増加」は、発現を評価するために用いたアッセイの標準誤差を超える試験サンプル中の発現レベルをいい、好ましくはコントロールサンプル(例えば、線維症に罹患していない健康な対象由来のサンプルおよび/または緩徐な疾患進行を有する対象由来のサンプルおよび/またはいくつかのコントロールサンプル中のTLR9の平均発現レベルを有する対象由来のサンプル)中のTLR9の発現レベルの少なくとも2倍、およびより好ましくは3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍またはそれ以上である。
【0046】
TLR9の「低い発現レベル」または「発現レベルにおける低下」は、発現を評価するために用いられるアッセイの標準誤差を超えない試験サンプル中の発現レベルをいい、好ましくはコントロールサンプル(例えば、急速な疾患進行を有する対象由来のサンプルおよび/または線維症のための治療の一部の投与前および/またはいくつかのコントロールサンプル中のTLR9の平均発現レベルの該対象由来のサンプル)中のTLR9の発現レベルの少なくとも2、より好ましくは3、4、5、6、7、8、9、または10またはそれより低いものである。
【0047】
用語「既知の標準レベル」または「コントロールレベル」は、対象から得られるサンプル中のTLR9発現レベルを比較するために使用される、認められたまたは予め決定されたTLR9の発現レベルをいう。一実施態様において、TLR9のコントロール発現レベルは、緩徐な疾患進行を有する対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルを基にしている。別の実施形態において、TLR9のコントロール発現レベルは、急速な疾患進行を有する対象由来のサンプル中の発現レベルに基づいている。別の実施形態において、TLR9のコントロール発現レベルは、罹患していない対象、即ち非疾患患者、即ち線維症を有さない対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルを基にしている。また別の実施態様において、TLR9のコントロール発現レベルは、線維症に対する治療の投与前の対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルに基づいている。別の実施形態において、TLR9のコントロール発現レベルは、試験化合物と接触していない線維症を有する対象(複数を含む)由来のサンプル(複数を含む)中のTLR9の発現レベルに基づいている。別の実施形態において、TLR9のコントロール発現レベルは、試験化合物と接触される線維症を有さない対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルに基づいている。一実施態様において、TLR9のコントロール発現レベルは、線維症の動物モデル由来のサンプル、線維症の動物モデルから得た細胞または細胞系中のTLR9の発現レベルに基づいている。
【0048】
本発明のさらなる別の実施形態において、TLR9の発現のコントロールレベルは、繊維化がないことが判っている線維症を有する該対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルに基づいている。例えば、腹腔鏡検査または他の医療的方法により、臓器の一部分で線維症の存在が明らかとなった場合、TLR9の発現のコントロールレベルを、臓器の罹患してない部分を用いて決定することができ、そしてこの発現のコントロールレベルを、臓器の罹患部分(即ち、線維化部分)におけるTLR9の発現レベルと比較することができる。
【0049】
あるいは、特に、別の情報を本明細書に記載した通常の実施の結果として利用できるようになるので、TLR9の発現の「コントロール」レベルに対する母集団平均値を使用できる。別の実施形態において、TLR9の「コントロール」の発現レベルは、対象における線維症発病が疑われる前の対象由来の、保存された対象サンプル由来の対象サンプル中のTLR9の発現レベルを決定することにより決定されてもよい。
【0050】
本明細書において使用されるように、用語「患者」または「対象」は、ヒトおよび非ヒト動物、例えば、獣動物患者をいう。用語「非ヒト動物」には、全ての動物、例えば、哺乳動物および非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、トリ、両生類、およびハ虫類が含まれる。一実施態様において、該対象はヒトである。
【0051】
本明細書において使用されるような用語「サンプル」は、対象から単離された同様の細胞または組織の収集物、ならびに対象内に存在する組織、細胞、および体液をいう。用語「サンプル」は、あらゆる液体(例えば、血液、リンパ液、婦人化系の体液、胆嚢液、尿、眼の体液および気管支喘息洗浄および/または腹膜洗浄により収集された液体)、または対象由来の細胞を含む。一実施態様において、組織または細胞は、該対象から採取される。別の実施形態において、組織または細胞は該対象内に存在する。他の対象サンプルには、涙、血清、脳脊髄液、糞便、唾液、および細胞抽出物が挙げられる。一実施態様において、生物学的サンプルは、試験対象由来のタンパク質分子を含有する。別の実施形態において、生物学的サンプルは、試験対象由来のmRNA分子または試験対象由来のゲノムDNA分子を含み得る。
【0052】
線維症の少なくとも1つの症状が、存在すると考えられるか、あるいは緩和される、停止する、遅行する、減退され、または防止されると考えられる場合に、線維症の進行は「遅延される」である。
【0053】
キットは、TLR9を特異的に検出するための少なくとも1つの試薬、例えばプローブまたはプライマーを含むあらゆる製品(例えば、パッケージまたは容器)であり、該製品は、本発明の方法を実施するためのユニットとして、促販、頒布、または販売される。
【0054】
II.発明の用途
A. 診断方法
本発明は、線維症を有する対象における線維症の進行を予測するための方法を提供する。該方法は、該対象から得られるサンプル中のToll様レセプター9(TLR9)の発現レベルを決定すること、および対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルをコントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較することを含んでおり、ここで該コントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較した該対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルの増加は、該線維症が急速に進行するという指標である。
【0055】
一実施態様において、サンプル中のTLR9の発現レベルを決定することには、該対象から得られたサンプルを、TLR9の発現レベルが検出されるような様式にてサンプルを転換する(transform)物質と接触させることを含む。
【0056】
線維症を有する対象から得た任意のサンプルを使用して、TLR9の発現レベルを決定し得る。例えば、該サンプルは、該対象から得られた任意の液体またはその下位成分、例えば、気管支喘息洗浄により収集された液体、血液、血清、血漿、嘔吐物、関節内液体、唾液、リンパ液、胆嚢液、尿、腹膜洗浄により収集された液体、滑液、または婦人化系体液であってもよい。該サンプルは、該対象から得られた任意の組織またはフラグメントまたはその下位成分、例えば、気管支、肺、骨、結合組織、軟骨、肝臓、腎臓、筋肉組織、心臓、膵臓、骨、および皮膚であってもよい。
【0057】
対象に由来するサンプルを得るための技術または方法は、当分野ではよく知られており、例えば、サンプルを、拭き取る、洗浄、吸引、または生検により得ることを含む。体液または組織サンプル(例えば、細胞またはRNAまたはDNA)の下位成分の単離は、当分野には既知の技術および下記の実施例に記載された技術を用いて達成され得る。
【0058】
発明の一態様において、診断方法は、線維症を有する対象からサンプルを得ること、該サンプルを2連で(in duplicate)培養すること、およびTGFβに対するサンプルの応答性を決定すること、およびCpGに対する2連のサンプルの応答性を決定することを含んでおり、ここで、TGFβと培養したサンプルの応答性およびCpGと培養した2連のサンプルの応答性は、急速に進行するという指標である。かかる方法は、TLR9の発現レベルを決定することをさらに含み得るか、またはある実施形態においては、TLR9の発現レベルを決定することを含まなくてもよい。
【0059】
本発明の方法は、さらに該対象由来のサンプル中の非メチル化CpGの存在または非存在を決定することを含むことができる。非メチル化CpGの存在または非存在を決定することは、例えば、DNAの重亜硫酸ナトリウム処置、メチル化感受性制限酵素、および/またはメチル化特異的PCR(例えば、米国特許第5,786,146号に記載されたとおり、この全てを出典明示により本明細書に組み込まれる)の使用を含み得る。
【0060】
本発明の方法もまた、対象由来のサンプル中のγヘルペスウイルス(例えば、Lymphocryptovirus、Rhadinovirus、Macavirus、およびPercavirus)の存在または非存在を決定することをさらに含む。γヘルペスウイルスの存在または非存在を決定することは、例えば、血清学的分析、免疫蛍光染色、PCR分析、および/または対象サンプル由来のウイルスの培養を含み得る。
【0061】
加えて、本発明の方法は、サンプル中のアネキシン1、α平滑筋アクチン、好中球エラスターゼ、KL-6、ST2、IL-8、αデフェンシン、β3-エンドネキシン、セリンプロテアーゼ阻害剤、Kazalタイプ、プラスミノーゲン活性化剤阻害剤-1、HPS3、Rab38、Smad6、ADAMTS7、CXCR6、Bcl2-L-10、およびMMP-9からなる群から選択されるマーカーの発現レベルを決定することをさらに含み得る。任意のこれらのマーカーの発現レベルは、本明細書に記載したような該方法および技術の何れかを用いて決定され得る。
【0062】
アネキシン1のアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference No. GI:4502100で見出され得る;α平滑筋アクチンのアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference No. GI:47078293に見出され得る;好中球エラスターゼのアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference No. GI:58530849に見出され得る; KL-6のアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference Nos.GI:67189006、GI:67189068、GI:113206023、GI:113206025、GI:113206027、GI:113206029、および GI:65301116に見出され得る;ST2のアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference Nos. GI:27894327 、およびGI:27894323に見出され得る;IL-8のアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference No. GI:28610153に見出され得る;αデフェンシンのアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference No. GI:12621915に見出され得る;β3-エンドネキシンのアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference No. GI:27597074に見出され得る;セリンプロテアーゼ阻害剤、Kazalタイプのアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference No. GI:195234783に見出され得る;プラスミノーゲン活性化剤阻害剤-1のアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference No. GI:169790801に見出され得る;HPS3のアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference No. GI:28416957に見出され得る;Rab38のアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference No. GI:11641236に見出され得る;Smad6のアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference Nos. GI:236465444およびGI:236465646に見出され得る;ADAMTS7のアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference No. GI:133925806に見出され得る;CXCR6のアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference No. GI:5730105に見出され得る;Bcl2-L-10のアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference No. GI:20336328に見出され得る;およびMMP-9のアミノ酸配列のヌクレオチドは知られており、例えば、GenBank Reference No. GI:74272286に見出され得る。
【0063】
さらに、本発明の方法は、線維症を有する対象における線維症の進行を診断するために熟練した医師により使用されるその他の方法と組み合せて行いうる。例えば、本発明の方法は、細胞分析を含む当分野では知られている線維症の任意の臨床的測定および/または他の分子マーカーの検出(および適切ならば定量)と共に行ってもよい。
【0064】
対象から得たサンプル中のTLR9の発現レベルは、サンプル内のTLR9を、検出および定量できる成分に変換する任意の様々な既知の技術および方法により決定され得る。かかる方法の非限定的な例示は、タンパク質の検出のための免疫学的方法、タンパク質精製方法、タンパク質機能または活性アッセイ、核酸ハイブリダイゼーション方法、核酸逆転写法、および核酸増幅方法、イムノブロッティング、ウェスタンブロッティング、ノーザン・ブロッティング、電子顕微鏡検査法、質量分析法、例えば、MALDI-TOF、およびSELDI-TOF、免疫沈降、免疫蛍光、免疫組織化学、酵素結合免疫吸着剤アッセイ(ELISA)、例えば、増幅ELISA、定量的な血液を基にしたアッセイ、例えば、血清ELISA、尿を基にした定量的アッセイ、フローサイトメトリー、サザンハイブリダイゼーション、アレイ分析などを用いて、および組合せまたはその下位の組合せを用いて、サンプルを分析することを含む。
【0065】
例えば、mRNAサンプルは、対象由来のサンプル(例えば、標準的な方法により気管支洗浄、口腔スワブ、生検、または末梢血液単核細胞)から得てもよく、および該サンプル中のTLR9をコードしているmRNA(s)の発現は、標準的な分子生物学的技術、例えばPCR分析を用いて、検出および/または決定されてもよい。PCR分析の好ましい方法は、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)である。mRNAサンプル分析のための他の好適なシステムは、マイクロアレイ分析(例えば、アフィメトリクス・マイクロアレイ系またはイルミナのBeadArray技術を用いる)を含む。
【0066】
基本的に、核酸またはタンパク質レベルで、TLR9の発現レベルを検出するために、当分野で確立されたあらゆる技術的手段を使用して、本明細書において議論されるようなTLR9の発現レベルを決定できるということは、当業者により容易に理解されるであろう。
【0067】
一実施態様において、サンプル中のTLR9の発現レベルは、TLR9遺伝子の転写されたポリヌクレオチド、またはその部分、例えば、mRNAまたはcDNAを検出することにより決定される。RNAは、RNA抽出技術を用いて、例えば、酸フェノール/グアニジンイソチオシアネート抽出(RNAzol B; Biogenesis)、RNeasy RNA 調製キット(Qiagen)またはPAXgene (PreAnalytix, Switzerland)を用いて、細胞から抽出され得る。リボ核酸ハイブリダイゼーションを利用する通常のアッセイフォーマットは、核ラン・オンアッセイ(run-on assay)、RT-PCR、RNase保護アッセイ(Melton et al., Nuc. Acids Res. 12:7035)、ノーザン・ブロッティング、イン・サイチュ・ハイブリダイゼーション、およびマイクロアレイ分析を含む。
【0068】
一実施態様において、TLR9の発現レベルは、核酸プローブを用いて決定される。用語「プローブ」とは、本明細書において使用されるように、特定のTLR9に選択的に結合できるあらゆる分子をいう。プローブは、当業者により合成されるか、または適切な生物学的調製物から得てもよい。プローブを標識されるように特異的に設計できる。プローブとして利用できる分子の例示は、RNA、DNA、タンパク質、抗体、および有機分子を含むが、これらに限定するものではない。
【0069】
単離されたmRNAを、次のものに限定しないが、サザンまたはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析、およびプローブアレイなどを含むハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイにおいて使用できる。mRNAレベルの決定のための1つの方法は、TLR9 mRNAにハイブリダイズできる核酸分子(プローブ)と単離したmRNAを接触させることを含む。核酸プローブは、例えば、完全長cDNAまたはその部分であり得、例えば、少なくとも約7、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、250または約500ヌクレオチド長であり得、ストリンジェントな条件下でTLR9ゲノムDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチド長であり得る。
【0070】
一実施態様において、mRNAを、固体表面で固定して、プローブと接触させる(例えば、アガロースゲル上で単離されたmRNAを泳動させ、該ゲルから該mRNAをニトロセルロースなどの膜に移す)。別の実施態様において、該プローブを、固体表面で固定して、mRNAを、例えばアフィメトリクス・遺伝子チップアレイでプローブと接触させる。当業者は、既知のmRNA検出方法を、TLR9 mRNAのレベルを決定する際に使用するために容易に適合させ得る。
【0071】
サンプル中のTLR9の発現レベルを決定するための別の方法は、サンプル中の核酸および/または逆転写酵素(cDNAを調製するために)、例えばmRNAの増幅工程、例えば、RT-PCR (Mullis, 1987, U.S特許第4,683,202号に記載した実施態様)、リガーゼ連鎖反応(Barany (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189-193)、自己持続配列複製法 (Guatelli et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874-1878)、転写増幅 (Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173-1177)、Q-βリプリカーゼ(Lizardi et al. (1988) Bio/技術 6:1197)、ローリング・サークル複製(Lizardi et al., U.S特許第5,854,033号)またはその他の核酸増幅方法を含み、続く当業者にはよく知られている技術を用いる増幅された分子の検出を含む。これらの検出スキームは、かかる分子が非常に小量で存在する場合に核酸分子を検出するために特に有用である。本発明の特別な態様において、TLR9の発現レベルは、定量的な蛍光RT-PCR(即ち、the TaqManTM System)により決定される。かかる方法は、通常、TLR9に特異的なオリゴヌクレオチドプライマー対を利用できる。既知の配列に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを設計するための方法は、当分野ではよく知られている。
【0072】
TLR9 mRNAの発現レベルは、膜ブロット(例えば、ノーザン、サザン、ドットなどのハイブリダイゼーション分析にて用いられる)、またはミクロウェル、サンプルチューブ、ゲル、ビーズまたは繊維(または、結合核酸を含むあらゆる固体支持体)を用いてモニターできる。U.S特許番号第5,770,722号、第5,874,219号、第5,744,305号、第5,677,195号、および第5,445,934号を参照されたい(これらは、出典明示により本明細書に組み込まれる)。TLR9発現レベルの決定は、溶液中の核酸プローブの使用もまた含み得る。
【0073】
本発明の一実施態様において、マイクロアレイを用いて、TLR9の発現レベルを検出する。マイクロアレイは、様々な実験間の再現性の点からこの目的には非常に好適である。DNAマイクロアレイは、多数の遺伝子の発現レベルの同時測定のための1つの方法を提供する。各アレイは、固体支持体に結合した捕捉プローブの再現性のあるパターンを構成する。標識されたRNAまたはDNAを、アレイ上で相補的プローブにハイブリダイズさせ、その後レーザースキャンにより検出する。アレイ上で各プローブについてのハイブリダイゼーション強度を決定して、相対的な遺伝子発現レベルを表す定量的な値に変換する。U.S特許番号第6,040,138号、第5,800,992号、および第6,020,135号、第6,033,860号、および第6,344,316号を参照されたい(これは出典明示により本明細書にの一部に組み込まれる)。高密度オリゴヌクレオチドアレイは、サンプル中の多くのRNAについて遺伝子発現プロファイルを決定するために特に有用である。
【0074】
特定の状況において、TLR9のmRNAによりコードされたタンパク質生成物を検出する検出試薬を用いて、タンパク質レベルにてTLR9の発現についてアッセイすることが可能であろう。例えば、検出されるべきTLR9タンパク質生成物に特異的に結合し、他のタンパク質には結合しない抗体試薬を利用できれば、かかる抗体試薬を使用して、当分野では既知の標準抗体を基にした技術(例えば、FACS分析など)を用いて、該対象由来の細胞サンプルまたは該細胞サンプルから得た調製物中のTLR9の発現を検出できる。
【0075】
タンパク質レベルにてTLR9を検出するための他の既知の方法は、例えば電気泳動、毛細血管電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高拡散(hyperdiffusion)クロマトグラフィー等、または様々な免疫学的方法、例えば、液体またはゲル沈降反応、免疫拡散法(一元または二元)、免疫電気泳動、放射免疫アッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着剤アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、およびウェスタンブロッティング方法などの方法を含む。
【0076】
サンプル由来のタンパク質は、当業者には既知の技術を用いて単離され得る。用いられるタンパク質の単離方法は、例えばHarlowおよびLane(Harlow and Lane, 1988, Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)に記述されている技術が可能である。
【0077】
一実施態様において、抗体または抗体フラグメントは、発現されたタンパク質を検出するために、例えば、ウェスタン・ブロットまたは免疫蛍光技術において使用される。TLR9の発現を検決定するための抗体を、例えば、Imgenex (Sandiego、CA; www.imgenex.com/Toll-likeReceptors.php)から購入でき、例えばTLR9特異的抗体 IMG-431、およびIMG-305A;Invivogen (Sandiego, CA; www.invivogen.com/family.php?ID=162&ID_cat=2&ID_sscat=102)、例えばTLR9特異的抗体 mab-mtlr9;Santa Cruz Biotechnology, Inc.(Santa Cruz, CA; www.scbt.com/table-tlr.html)、例えばTLR9特異的抗体 sc-52966, sc-13218およびsc-25468;および Cambridge Bioscience (Cambridge, UK; www.bioscience.co.uk/newsDetail.php?newsID=107368)、例えばTLR9 特異的抗体 HM1042, 905-730-100, IMG-305AおよびIMG-431である。
【0078】
一般的に、ウェスタン・ブロットおよび免疫蛍光技術については固体支持体上で抗体またはタンパク質のいずれかを固定することが好ましい。好適な固体相支持体または担体は、抗原または抗体を結合できるあらゆる支持体を含む。周知の支持体または担体は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および人工セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩、およびマグネタイトを含む。
【0079】
当業者は、抗体または抗原を結合するための多くの他の担体を知っており、本発明に従って使用するためにかかる支持体を適合させることができる。例えば、細胞から単離したタンパク質を、ポリアクリルアミド電気泳動で泳動させ、固体支持体、例えばニトロセルロース上に固定する。該支持体を、その後好適な緩衝液により洗浄して、その後検出可能な標識抗体を用いて処置する。次いで、該固体支持体を、緩衝液で2回洗浄し、未結合抗体を除去する。固体支持体上の結合標識の量を従来の手段により検出できる。電気泳動技術を用いるタンパク質を検出する手段は、当業者にはよく知られている(一般的に、R. Scopes (1982) Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y.; Deutscher、(1990) Methods in Enzymology Vol. 182: Guide to Protein Purification, Academic Press, Inc., N.Y.を参照されたい)。
【0080】
他の標準的な方法は、当業者には既知の免疫アッセイ技術を含んでおり、Principles and Practice Of Immunoassay 2nd Edition, Price and Newman, eds., MacMillan (1997) and Antibody, A laboratory Manual, Harlow and Lane, eds., Cold Spring Harbor laboratory, Ch. 9 (1988)に見出され、これは出典明示により本明細書に組み込まれる。
【0081】
TLR9の発現レベルを決定するために免疫アッセイにおいて使用される抗体は、検出可能な標識を用いて標識され得る。該プローブまたは抗体に関して、用語「標識された」とは、該プローブまたは抗体に対して検出可能な物質を連結する(即ち、物理的結合)ことにより該プローブまたは抗体の直接標識を含むこと、ならびに直接標識した別の試薬との反応により該プローブまたは抗体の間接標識を含むことを意図する。間接標識の例示は、蛍光標識された二次抗体を用いる一次抗体の検出および蛍光標識されたストレプトアビジンを用いて検出され得るようなビオチンを用いるDNAプローブの末端標識を包含する。一実施態様において、該抗体は、標識された抗体、例えば、放射性標識抗体、発色団標識抗体、蛍光分子標識抗体、または酵素標識抗体である。別の実施形態において、抗体誘導体(例えば、基質またはタンパク質リガンド対(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン)のタンパク質またはリガンドと対合した抗体、あるいは抗体フラグメント(例えば、一本鎖抗体、単離抗体超可変ドメインなど)であり、これはTLR9と特異的に結合する。
【0082】
本発明の一実施態様において、プロテオミクス方法、例えば質量分析法が使用される。質量分析法は、荷電分子(またはそのフラグメント)を発生させるために化学物質をイオン化し、その質量−対−電荷比を計測することからなる分析技術である。典型的な質量スペクトル分析方法において、サンプルを対象から得て、質量スペクトル分析に投入し、その成分(例えば、TLR9)を、様々な方法(例えば、電子ビームとの衝突により)によりイオン化して、荷電粒子(イオン)を形成させる。次いで、粒子の質量−対−電荷比(mass-to-charge)を、それらが電磁場を通過する時のそのイオン運動より計算する。
【0083】
例えば、血清などの生物学的サンプルを、タンパク質-結合チップ(Wright, G.L., Jr., et al. (2002) Expert Rev Mol Diagn 2:549; Li, J., et al. (2002) Clin Chem 48:1296; Laronga, C., et al. (2003) Dis Markers 19:229; Petricoin, E.F., et al. (2002) 359:572; Adam, B.L., et al. (2002) Cancer Res 62:3609; Tolson, J., et al. (2004) Lab Invest 84:845; Xiao, Z., et al. (2001) Cancer Res 61:6029)に適用することを含む、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化の飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)または表面が増強されたレーザー脱離/イオン化の飛行時間型質量分析法(SELDI-TOF MS)は、TLR9の発現レベルを決定するために使用され得る。
【0084】
さらに、TLR9の発現レベルの決定のためのイン・ビボ技術は、TLR9に対する標識化抗体を対象に導入することを含み、これはTLR9に結合して、TLR9を検出可能な分子に変えることを含む。上記に議論したとおり、対象における検出可能なTLR9の存在レベルまたは位置は、標準的なイメージング技術により検出および決定できる。
【0085】
一般的には、線維症を有する対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルおよびコントロールサンプル中のTLR9の量の間の相違が、可能な限り大きいことが好ましい。発現レベルを検出するための方法の検出極限程度小さくてもよいが、この相違は、少なくとも評価方法の標準誤差より大きいことが好ましく、評価方法の標準誤差の、少なくとも 2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、15-、20-、25-、100-、500-、1000倍またはそれよりも多い相違が好ましい。
【0086】
B. 線維症を有する対象における線維症の進行を遅延させ得る化合物の同定
本明細書に記載の方法を用いれば、様々な分子、特に細胞膜を通過できるのに十分な低分子を、TLR9の発現および/または活性を調節する(例えば、低下させる)分子を同定するためにスクリーニングできる。そのように特定された化合物を、該対象において線維症の進行を阻害または遅延させるために、線維症を有する対象に提供され得る。
【0087】
線維症を有する対象における線維症の進行を遅延させ得る化合物を同定するための方法(本明細書においてスクリーニングアッセイという)は、該対象由来のサンプルのアリコートを化合物のライブラリーの各メンバーと別々に接触させること;各アリコート内のToll様レセプター9(TLR9)の発現レベルに対する化合物のライブラリーのメンバーの効果(または、TLR9の活性)を決定すること;および、コントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較して、アリコート内のTLR9の発現レベルおよび/または活性を低下させる化合物のライブラリーのメンバーを選択することを含み、これにより線維症を有する対象における線維症の進行を遅延させ得る化合物を同定する。
【0088】
本発明において互換的に使用されるように、用語「TLR9活性」、および「TLR9の生物学的活性」は、標準的技術に従ってイン・ビボおよび/またはイン・ビトロで決定されるような、TLR9応答細胞または組織、例えば樹状細胞(DC)、またはTLR9核酸分子またはタンパク質標的分子、に対するTLR9タンパク質によって発揮される活性を含む。TLR9活性は、直接的な活性であり、例えば、TLR9-標的分子との結合、例えばアダプター分子、例えばMyD88との結合または相互作用である。あるいは、TLR9活性とは、間接的な活性、例えば、TLR9が関与するシグナル伝達経路において、TLR9タンパク質とTLR9-標的分子との、例えばEDEMまたは他の分子との相互作用により媒介される下流の生物学的事象である。TLR9の生物学的活性は、当分野では知られており、例えば、リンパ球増殖、サイトカイン産生、核ファクターκB (NF-κB)の活性化、CpG DNAに対する応答、DCの成熟、および/またはT-ヘルパータイプ-1応答を含む。
【0089】
TLR9の発現および/または活性に対する化合物の効果を決定するための方法は、当分野では知られておりおよび/または本明細書に記述される。
【0090】
多様な試験化合物を、本明細書に記載のスクリーニングアッセイを用いて評価できる。用語「試験化合物」には、本発明のアッセイに用いられるあらゆる試薬または試験試薬を含み、TLR9の発現および/または活性に影響を及ぼすその能力についてアッセイされる。2以上の化合物、例えば複数の化合物を、スクリーニングアッセイにおいて、TLR9の発現および/または活性を調節するその能力について同時に試験できる。用語「スクリーニングアッセイ」は、好ましくは、読み出す情報(readout)に影響を及ぼす1つの化合物の能力を試験するよりというよりもむしろ、選択範囲の読み出す情報に影響を及ぼす複数の化合物の能力を試験するアッセイをいう。好ましくは、目的とするアッセイは、スクリーニングされる効果を有することが予め知られていない化合物を同定する。一実施態様において、ハイスループットスクリーニングを、化合物の活性をアッセイするために使用できる。
【0091】
候補/試験化合物は、例えば、1)Ig-テイルド融合ペプチドおよび無作為ペプチドライブラリー(例えば、Lam, K.S. et al. (1991) Nature 354:82-84; Houghten,R. et al. (1991) Nature 354:84-86を参照されたい)、およびD-および/またはL-立体配置アミノ酸から構成されるコンビナトリアル・ケミストリ由来の分子ライブラリーのメンバーを含む可溶性ペプチドのようなペプチド;2)ホスホペプチド(例えば、無作為および部分的縮重、有向のホスホペプチドライブラリーのメンバー、例えば、Songyang、Z. et al. (1993) Cell 72:767-778を参照されたい);3)抗体(例えば、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラ、および一本鎖抗体、ならびにFab、F(ab')2、Fab 発現ライブラリーフラグメント、および抗体のエピトープ-結合フラグメント); 4) 有機低分子および無機低分子(例えば、コンビナトリアルおよび天然産生ライブラリーから得られた分子);5)酵素(例えば、エンドリボヌクレアーゼ、ヒドロラーゼ、ヌクレアーゼ、プロテアーゼ、シンセターゼ、イソメラーゼ、ポリメラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、オキシド−レダクターゼ、およびATPアーゼ)、6)TLR9分子の変異形態、例えば、分子のドミナントネガティブ型変異体、7)核酸、8)炭水化物、および9)天然生成物の抽出化合物、を含む。
【0092】
試験化合物を、当業者には既知のコンビナトリアルライブラリー方法を用いて得ることができ、これには、生物学的ライブラリー;空間的接近可能平行固相または溶液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;"1ビーズ−1化合物"ライブラリー法;および親和性クロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法が含まれる。生物学ライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーに制限されるが、別の4つの方法は、ペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは化合物の低分子ライブラリーに適用できる(Lam, K.S. (1997) Anticancer Agent Des. 12:145)。
【0093】
分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当分野において見出されており、例えば: DeWitt et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909; Erb et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422; Zuckermann et al. (1994) J. Med. Chem. 37:2678; Cho et al. (1993) Science 261:1303; Carrell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059; Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061; 、および Gallop et al. (1994) J. Med. Chem. 37:1233である。
【0094】
化合物のライブラリーは、溶液(例えば、Houghten (1992) Biotechniques 13:412-421)、またはビーズ(Lam (1991) Nature 354:82-84)、チップ(Fodor (1993) Nature 364:555-556)、細菌(Ladner USP 5,223,409)、胞子(Ladner USP '409)、プラスミド(Cull et al. (1992) Proc Natl Acad Sci USA 89:1865-1869)またはファージ(Scott and Smith (1990) Science 249:386-390; Devlin (1990) Science 249:404-406; Cwirla et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. 87:6378-6382; Felici (1991) J. Mol. Biol. 222:301-310; Ladner 上掲)上に提示される。
【0095】
スクリーニングアッセイにて同定された化合物は、TLR9により制御される1以上の生物学的応答、例えば、線維症を調節する方法に使用され得る。必要であれば、細胞とそれらを接触させる前に医薬組成物としてかかる化合物を製剤してもよいことが理解されるであろう(上掲のとおり)。
【0096】
一旦試験化合物を明細書に前記した様々な方法のいずれか1つにより同定すれば、その後、選択した試験化合物(または「目的の化合物」)を、細胞に対するその効果をさらに評価できる、例えば、目的とする化合物を、イン・ビボ(例えば、目的の化合物を対象または動物モデルに投与することにより)またはエキソ・ビボ(例えば、該対象または動物モデルから細胞を単離し、該単離した細胞を目的の化合物と接触させることにより、あるいは目的の化合物を細胞系と接触させることにより)のいずれかで細胞と接触させて、適切なコントロール(例えば、非処置細胞または生物学的応答を調節しないコントロール化合物または担体で処置された細胞)と比較して細胞に対する目的の化合物の効果を決定することにより評価できる。
【0097】
また、既知の構造を用いるコンピューターを基にしたTLR9の分析を使用して、TLR9に結合する分子を同定できる。かかる方法は、レセプター部位に相補的なその形状に基づいて分子を順位付けする。例えば、3-Dデータベース、例えばDOCKなどのプログラムを用いて、TLR9に結合するであろう分子を同定する。DesJarlias et al. (1988) J. Med. Chem. 31:722; Meng et al. (1992) J. Computer Chem. 13:505; Meng et al. (1993) Proteins 17:266; Shoichet et al. (1993) Science 259:1445を参照されたい。加えて、TLR9に対する分子の電気相補性(electronic complementarity)を分析して、TLR9に結合する分子を同定できる。これを、例えば、Meng et al. (1992) J. Computer Chem. 13:505 および Meng et al. (1993) Proteins 17:266 に記述されたような分子メカニズム力場を用いて決定できる。使用され得る他のプログラムは、推定リガンドのドッキングの際のGRID力場を使用するCLIXを含む。Lawrence et al. (1992) Proteins 12:31; Goodford et al. (1985) J. Med. Chem. 28:849; Boobbyer et al. (1989) J. Med. Chem. 32:1083 を参照されたい。
本発明は、前記スクリーニングアッセイを用いて同定される化合物にも関する。
【0098】
C. 線維症を有する対象における線維症の進行を低下させる際の治療の有効性をモニターするための方法
【0099】
治療または処置レジメン[例えば、進行中の原因(例えば、毒または感染薬剤)の除去、炎症の抑制(例えば、コルチコステロイド、IL-I レセプターアンタゴニスト、または他の薬剤を用いる)、γインターフェロンまたは抗酸化処置、マトリクス分解の促進、あるいは線維症の進行を低下または遅延させるおよび/または線維症を有する対象における線維症を処置するために有用なその他の治療方法]の有効性をモニターする方法もまた提供される。これらの方法において、一対のサンプル(第一のサンプルは処置レジメンに供しない、および第二のサンプルは少なくとも部分的には処置レジメンに供される)中のTLR9の発現レベルを評価する。第二のサンプルと比較して第一のサンプル中のTLR9の発現レベルの低下は、この治療が線維症を有する対象における線維症の低減に有効であるという指標である。
【0100】
一実施態様において、該治療は、抗CCL21 抗体(Pirece et al AJP 2007 and Pierce et al ERJ 2007)、抗PDGFβ抗体、抗IL-13抗体、抗TGFβ抗体、抗インテグリン抗体、キナーゼ阻害剤、LBAレセプター阻害剤、またはBMPモジュレーターの使用を含む。別の実施形態において、該治療は、TLR9阻害剤、例えば、免疫調節配列(IRS)(例えば、U.S. Patent 6,225,292)、および他のDNA配列を含む(例えば、Stunz LL. et al. (2002) Eur J Immunol. 32(5):1212-22を参照されたい)。
【0101】
D. 線維症の処置のための臨床試験の候補者として対象を選択するための方法
Noble, P.らは、線維症進行に関する変動性は、線維症の処置に関する臨床試験において得られたデータを混乱させたということを近年報告していた(例えば、Noble、P., et al. (2009) Am. J. Respir Crit Care Med. 179:Al129を参照されたい)。TLR9の発現レベルは、進行が早い患者と進行が遅い患者を区別するという本発明の発見は、線維症の処置に関する臨床試験に参加する患者母集団の変動性を軽減するのに役立つ。TLR9の発現レベルを決定することは、例えば、新規処置または既知の処置(例えば、副作用に関する高リスクプロファイルを伴う既知の処置)に最も利益がありそうな対象を同定することにより、線維症の処置のために臨床試験に関与する対象を選択するためにも有用である。例えば、医師は、通常、該対象に対して予測される実質的な価値に基づいて対象の処置のための治療レジメンを選択する。この実質的価値とは、リスク対価値の割合により得られる。本方法は、治療的介入により恩恵を受けそうな対象の選択を可能とし、かくして治療レジメンを選択する際の医師の助けとなる。これには、予測される価値に関する可能性が増加する場合にはより高いリスクプロファイルを有する薬剤を用いることが含まれ得る。同様に、臨床研究者らは、特定のプロトコールを用いて実質的な価値を得る高または低い可能性を有する集団を臨床試験のために選択することを望むかもしれない。臨床研究者は、本明細書に記載した方法を用いてかかる対象を選択することができる。従って、ある実施形態において、本方法は、進行が急速な者および/または進行が緩徐な者である対象を選択することにより、臨床試験のための対象を選択するための参加基準および方法を提供する。
【0102】
臨床試験における候補者ための対象を選択するための方法は、線維症を有する対象由来のサンプル中のToll様レセプター9(TLR9)の発現レベルを決定すること、および対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルをコントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較することを含み、ここで本明細書においてコントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較した場合の対象由来のサンプル中の高いTLR9の発現レベルは、該対象が臨床試験に参加すべきであるという指標であり、それにより線維症の処置のための臨床試験における候補者としての対象を選択することを含む。別の実施形態において、コントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比べて、対象由来のサンプル中の低いTLR9の発現レベルは、該対象が臨床試験に参加すべきであるという指標である。
【0103】
E. TLR9アンタゴニストを用いる線維症の進行を阻害する方法
本発明は、細胞、例えば、肺細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、心臓細胞、筋骨格細胞、皮膚細胞、眼細胞、または脾臓細胞中の線維症の進行を阻害するための方法もまた提供する。該方法は、該細胞を、有効量のTLR9アンタゴニストと接触させることにより、細胞中の線維症の進行を阻害することを含む。
【0104】
本発明は、さらに対象における線維症進行を阻害するための方法を提供する。該方法は、有効量のTLR9アンタゴニストを該対象に投与することを含み、かくして該対象における線維症の進行を阻害することを含む。
【0105】
「線維症の進行を阻害する」方法は、かかる処置がない場合に予測される状況よりも対象における健康または生存を治癒または延長させるために、対象にTLR9アンタゴニストを投与することを含む。一実施態様において、「線維症の進行を阻害する」とは、線維化の疾患または症状に関する1以上の症候に関する重症度の低下または改善が含まれる。例えば、「線維症の進行を阻害する」には、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の、対象における線維化疾患症状 (例えば、息切れ、疲労、咳、体重減少、肺線維症または拒食症に関連した食欲減退、疲労、または体重減少)の緩和が含まれる。
【0106】
本明細書において使用されるような用語「患者」または「対象」は、ヒトおよび動物の患者を含むことが意図される。特別な実施態様において、該対象はヒトである。用語「非ヒト動物」は、あらゆる脊椎動物、例えば、哺乳動物および非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ウシ、トリ、両生類、およびハ虫類を含む。
【0107】
本明細書において使用されるように、用語「アンタゴニスト」は、TLR9活性を下方調節するあらゆる成分をいい、これにはTLR9発現を下方調節する成分またはTLR9機能を阻害する成分が含まれる。発明の一態様において、該アンタゴニストは、TLR9を直接拮抗するあらゆる成分であってもよい。例えば、一実施態様において、該アンタゴニストは、TLR9に結合するペプチドまたは抗体であり、TLR9がそのリガンド(例えば、CpG)と結合することを防止し、それによりTLR9シグナル伝達を阻害する。別の実施形態において、該アンタゴニストは、TLR9のリガンドに結合するペプチドまたは抗体であり、TLR9がこのリガンドに結合することを防止する。本発明の別の態様において、該成分は、TLR9シグナル伝達経路における下流のメディエーターの活性を調節することによりTLR9を間接的に拮抗する。
【0108】
代表的なアンタゴニストは、抗体、核酸(例えば、アンチセンス分子、例えば、リボザイム、およびRNA干渉剤)、免疫結合体(例えば、治療剤と結合した抗体)、低分子阻害剤、融合タンパク質、アドネクチン、アプタマー、アンチカリン、リポカリン、およびTLR9から得られたペプチド様化合物を含むが、これらに限定しない。
【0109】
本発明の一実施態様において、本明細書において記述された治療および診断上の方法は、例えば、直接的または間接的に結合してTLR9活性を阻害するおよび/またはTLR9発現を下方調節する抗体を用いる。
【0110】
本明細書において互換的に使用される用語「抗体」または「イムノグロブリン」は、全抗体および任意の抗原結合フラグメント(即ち、「抗原-結合部分」)またはその一本鎖を含む。「抗体」は、ジスルフィド結合により相互連結された少なくとも2つの重鎖(H)および2つの軽鎖(L)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域 (本明細書においてVHとして略す)および重鎖定常領域からなる。この重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VLとして本明細書において略す)および軽鎖定常領域からなる。該軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから構成される。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分され、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存性が高い領域と共に組み入れられ得る。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端から炭素末端まで以下の順にて配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、宿主組織または因子とイムノグロブリンと結合を媒介し得て、これには様々な該免疫系細胞(例えば、エフェクター細胞)および伝統的な補体系の第一成分(Clq)が含まれる。
【0111】
本明細書において使用されるように、抗体の「抗原-結合部分」なる用語(または、単に「抗体部分」)は、抗原(例えば、TLR9)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上のフラグメントをいう。抗体の抗原-結合機能は、全長抗体のフラグメントにより為されうることが知られている。抗体の「抗原-結合部分」なる単語に含まれる結合フラグメントの例には、次のものが含まれる:(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結した2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VHおよびCH1 ドメインからなるFd フラグメント;(iv)抗体の1つのアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHおよびVLドメインを含むdAb;(vi)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al. (1989) Nature 341、544-546);(vii)VHまたはVLドメインからなるdAb;および(viii)単離した相補性決定領域(CDR)または(ix)合成リンカーにより所望により連結され得る2以上の単離されたCDRの組合せ。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは、別々の遺伝子によりコードされているが、組み換え方法を用いて、それらを1つのタンパク質の鎖として作成できる合成リンカーにより連結することができる、ここで該VLおよびVH領域は対をなして一価分子を形成する(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al. (1988) Science 242、423-426;、および Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85、5879-5883を参照されたい)。かかる一本鎖抗体は、抗体の「抗原-結合部分」なる単語の範囲に含まれることを意図される。これらの抗体フラグメントは当業者には既知の従来技術を用いて得られ、そして該フラグメントは、インタクトな抗体と同じ手法にて有用性についてスクリーニングされる。抗原-結合部分は、組み換えDNA技術によるか、またはインタクトな免疫グロブリンの酵素的または化学的解裂により作成されてもよい。
【0112】
用語「抗体」は、本明細書において使用されるように、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体、および天然に生じるまたは当分野ではよく知られている方法に従って組み換え産生されたものを含む。
【0113】
一実施態様において、本発明の方法において使用するための抗体は、二重特異性抗体である。「二重特異性」または「二機能性抗体」は、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab'フラグメントの結合を含む多様な方法により作成され得る。例えば、Songsivilai & Lachmann、(1990) Csystemxp. Immunol. 79, 315-321; Kostelny et al. (1992) J. Immunol. 148, 1547-1553を参照されたい。
【0114】
別の実施形態において、本発明の方法において使用するための抗体は、ラクダ(camelid)抗体であり、例えば、PCT公開公報のWO94/04678に記載されており、これらを出典明示によりこの内容の全てを本明細書の一部として組み込まれる。
【0115】
VHHとして同定された低分子の一本鎖可変ドメインであるラクダ抗体の領域は、標的に対して高親和性を有する低分子タンパク質を得るための遺伝子操作により得ることができ、「ラクダナノボディ」として知られる低分子量抗体派生タンパク質が得られる。米国特許第5,759,808号;Stijlemans et al., 2004 J. Biol. Chem. 279: 1256-1261; Dumou系統t al., 2003 Nature 424: 783-788; Pleschberger et al.、2003 Bioconjugate Chem. 14:440-448; Cortez-Retamozo et al., 2002 Int. J. Cancer 89: 456-62;および Lauwereys. et al., 1998 EMBO J. 17: 3512-3520 を参照されたい。ラクダ抗体および抗体フラグメントの改変抗体は、例えばAblynx Ghent(Belgium)から購入し得る。従って、本発明の特徴は、TLR9に対して高親和性を有するラクダナノボディである。
【0116】
本発明の別の実施形態において、本発明の方法における使用のための抗体は、ダイアボディ、一本鎖ダイアボディ、またはジ−ダイアボディ(di-diabody)である。
【0117】
ダイアボディは、二価の二重特異性分子であり、ここでVH およびVLドメインは、同じ鎖上では2つのドメイン間の対形成を行うには余りに短いリンカーにより連結されることにより一本のポリペプチド鎖上で発現される。このVHおよびVLドメインは、もう一本の鎖の相補的ドメインと対をなし、これにより2つの抗原結合部位を構築する(例えば、Holliger et al., 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak et al., 1994 Structure2:1121-1123を参照されたい)。ダイアボディは、同じ細胞内で構造VHA-VLBおよびVHB-VLA(VH-VL立体配置)のいずれかまたはVLA-VHBおよびVLB-VHA(VL-VH立体配置)を有する2本のポリペプチド鎖を発現することにより製造され得る。それらの大部分を、細菌内の可溶性形態にて発現され得る。
【0118】
一本鎖のダイアボディ(scDb)を、2つのダイアボディ形成ポリペプチド鎖をおおよそ15のアミノ酸残基リンカーと連結することにより作成する(Holliger and Winter, 1997 Cancer Immunol. Immunother., 45(3-4):128-30; Wu et al., 1996 Immunothechnoloty 2(1):21-36を参照されたい)。scDbは、可溶性の活性な単量体形態にて細菌中で発現され得る(Holliger and Winter, 1997 Cancer Immunol. Immunother., 45(34): 128-30; Wu et al., 1996 Immunothechnoloty, 2(1):21-36; Pluckthun and Pack, 1997 Immunothechnoloty, 3(2): 83-105; Ridgway et al., 1996 Protein Eng., 9(7):617-21)。
【0119】
ダイアボディは、「ジ-ダイアボディ」を生成するためにFcと融合され得る(Lu et al., 2004 J. Biol. Chem., 279(4):2856-65を参照されたい)。
【0120】
そのフレームワークおよび抗原結合部分を他のポリペプチド(例えば、抗体遺伝子によりコードされるか、またはイン・ビボで抗体遺伝子の組み換えにより生成されたもの以外のポリペプチド)に由来するが、抗体の機能特性を示すTLR9結合分子もまた本発明の方法に使用され得る。これらの結合分子の抗原結合ドメイン(例えば、TLR9結合ドメイン)は、直接的な進化過程により生成される。米国特許第7,115,396号を参照されたい。抗体の可変ドメインの全体的な折り畳み(「イムノグロブリン様」折り畳み)と類似する折り畳みを有する分子は、好適なスキャッホルドタンパク質である。抗原結合分子を得るために好適なスキャッホルドタンパク質は、フィブロネクチンまたはフィブロネクチンダイマー、テネイシン、N-カドヘリン、E-カドヘリン、ICAM、チチン、GCSF-レセプター、サイトカインレセプター、グリコシダーゼ阻害剤、抗生物質クロモプロテイン、ミエリン膜接着分子P0、CD8、CD4、CD2、クラスIMHC、T-細胞抗原レセプター、CD1、C2、およびVCAM-1のI-setドメイン、ミオシン-結合タンパク質CのI-setイムノグロブリンドメイン、ミオシン-結合 タンパク質HのI-setイムノグロブリンドメイン、テロキンのI-setイムノグロブリンドメイン、NCAM、ツイチン(twitchin)、ニューログリアン、成長ホルモンレセプター、エリスロポエチンレセプター、プロラクチンレセプター、インターフェロン-γレセプター、β-ガラクトシダーゼ/グルクロニダーゼ、β-グルクロニダーゼ、トランスグルタミナーゼ、T-細胞抗原レセプター、スーパーオキシドジムスターゼ、組織ファクタードメイン、シトクロームF、緑色蛍光タンパク質、GroEL、およびソーマチン(thaumatin)を含む。
【0121】
非抗体結合分子を生成するために、クローンのライブラリーを作成し、ここで抗原結合表面(例えば、抗体可変ドメインイムノグロブリンの折り畳みに関するCDRの位置および構造において類似した領域)を形成するスキャッホルドタンパク質の領域中の配列がランダム化される。ライブラリークローンを、目的の抗原(例えば、TLR9)への特異的な結合および別の機能(例えば、TLR9の生物学的活性阻害)について試験する。選択されたクローンを、さらなるランダム化および抗原のより高い親和性誘導体を作成するための選択について基礎として使用できる。
【0122】
高親和性結合分子は、例えば、米国特許第6,818,418号および第7,115,396号; Roberts and Szostak, 1997 Proc. Natl. Acad. Sci USA 94:12297; 米国特許第6,261,804号; 米国特許第6,258,558号;および Szostak et al. WO98/31700に記載されており(これらの全ての内容を出典明示により本明細書に組み込む)に記載される、スキャッホルドとしてフィブロネクチンIII(10Fn3)の第10番目のモジュールを用いて作成される。
【0123】
非抗体結合分子を、標的抗原に対するアビディティーを増加するためにダイマーまたはマルチマーとして生成できる。例えば、抗原結合ドメインは、Fc-Fcダイマーを形成する抗体の定常領域(Fc)を有する融合物として発現される。例えば、米国特許第7,115,396号を参照されたい;これらの全ての内容を参照して本明細書に組み込む。
【0124】
本発明の治療方法を、抗体フラグメントおよび抗体模倣体の使用により実施してもよい。以下に記載したとおり、広範囲の抗体フラグメントおよび抗体模倣技術は、現在開発されており、当業者には知られている。例えばドメイン抗体、ナノボディ、およびユニボディなどの数多くの技術は、伝統的な抗体構造に対するフラグメントの使用またはその他の修飾を活用するが、アドネクチン、アフィボディ、DARPins、アンチカリン、アビマー、およびヴァーサボディ(バーサボディ)などの、異なるメカニズムから生じて、異なるメカニズムにより機能する伝統的な抗体結合を模倣する抗体結合を用いる別の技術も存在する。これらの別の構造のいくつかは、Gill and Damle (2006) 17: 653-658に概説されている。
【0125】
ドメイン抗体(dAbs)は、ヒト抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)鎖の可変領域に対応する抗体の最小の機能的結合ユニットである。ドマンティス(Domantis)は、一連の広範なおよび高度な完全ヒトVHおよびVLdAbsの機能ライブラリーを開発しており(各ライブラリーにおいて10億以上の異なる配列)、これらのライブラリーを使用して、治療標的に特異的であるdAbsを選択する。多くの従来抗体とは異なり、ドメイン抗体は、細菌、酵母、および哺乳類細胞系において良好に発現される。ドメイン抗体およびその製造方法のさらなる詳細は、米国特許第6,291,158号;6,582,915;6,593,081;6,172,197; 6,696,245;米国特許出願番号第2004/0110941号;欧州特許出願番号第1433846号、および欧州特許番号第0368684号 & 0616640号;WO05/035572、WO04/101790、WO04/081026、WO04/058821、WO04/003019、およびWO03/002609を参照して得ることができ、この内容はその全てを参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
ナノボディは、天然の重鎖抗体の独自構造および機能特性を含有する抗体から得た治療タンパク質である。これらの重鎖抗体は、一つの可変ドメイン(VHH)および2つの定常領域ドメイン(CH2およびCH3)を含有する。重要なことに、該クローン化および単離VHHドメインは、元来の重鎖抗体の完全な抗原-結合能力を担持する好ましい安定なポリペプチドである。ナノボディは、ヒト抗体のVHドメインと高いホモロジーを有し、いずれの活性も失わずに、さらにヒト化され得る。
【0127】
ナノボディは、一本の遺伝子によりコードされ、殆ど全ての原核生物および真核生物宿主、例えば、E. coli (例えば、米国特許第6,765,087号、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる)、菌類(mold)(例えば Aspergillus または Trichoderma)、および酵母(例えば、Saccharomyces、Kluyveromyces、HansenulaまたはPichia) (例えば、米国特許第6,838,254号を参照されたい;これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる)中で効率良く産生される。産生過程は拡大縮小が可能であり、複数kg(multi-kilogram)量のナノボディが産生される。ナノボディは従来の抗体と比較して優れた安定性を示すため、それらを長期保存の、即時使用の溶液として製剤され得る。
【0128】
ナノクローン方法(例えば、WO06/079372を参照されたい;これらはその全てを参照により本明細書に組み込まれる)は、B細胞の自動化された高度な全選択に基づいた、所望の標的に対するナノボディを生成するための独自方法であり、本発明においても使用され得る。
【0129】
ユニボディは、別の抗体フラグメント技術であるが、この技術は、IgG4 抗体のヒンジ領域の排除に基づいている。ヒンジ領域の削除は、伝統的なIgG4 抗体の基本的には半分のサイズであって、IgG4 抗体の二価の結合領域よりもむしろ一つの結合領域を有する分子をもたらす。IgG4 抗体は不活性であって、免疫系と相互作用しないこともまたよく知られており、これは免疫応答が望まれない疾患の処置のために有利であり、その利点はユニボディに伝搬されることが知られている。ユニボディのさらなる詳細な点が、特許出願WO2007/059782を参照して得られ、その全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【0130】
アドネクチン分子は、フィブロネクチンタンパク質の1以上のドメインから得られる結合タンパク質から設計される。一実施態様において、アドネクチン分子は、ネイティブタンパク質を改変することによりフィブロネクチンタイプIII ドメインから得られ、これは、2つのβシートの間に分布した複数のβ鎖から構成される。発生組織に拠り、フィブロネクチンは、例えば、1Fn3、2Fn3、3Fn3等で表され得る複数タイプのIII ドメインを含有し得る。アドネクチン分子は、単純な単量体10Fn3 構造よりもむしろ10Fn3 関連分子の重合体より得られ得る。
【0131】
ネイティブ10Fn3 ドメインはインテグリンと通常結合するが、アドネクチン分子となるように適合された10Fn3 タンパク質は、目的の抗原、例えばTLR9に結合するように変更される。一実施態様において、10Fn3 分子への変更は、少なくとも1つの変異をβ鎖に含む。好ましい実施態様において、10Fn3 分子のβ鎖を繋ぐ該ループ領域は、目的とする(例えば、TLR9)の抗原に結合するように改変される。
【0132】
10Fn3中の改変は、次にものに限定しないが、エラープローンPCR、部位特異的変異、DNAシャッフリング、または、本明細書中で参照されている組み換え突然変異生成の他のタイプを含み、当分野では知られている任意の方法により為し得る。一例において、10Fn3 配列をコードするDNAの変異体を、イン・ビトロで直接合成し、後にイン・ビトロまたはイン・ビボで転写および翻訳してもよい。あるいは、天然の10Fn3 配列は、標準的方法(例えば、米国特許出願番号第20070082365号を実施するように)を用いて、ゲノムから単離またはクローン化されてもよく、その後当業者には既知の突然変異生成方法を用いて変異されてもよい。
【0133】
アプタマーは、本発明の方法に使用され得る抗体-模倣体の別のタイプである。アプタマーは、通常、特異的分子標的に結合する小さなヌクレオチドポリマーである。アプタマーは、一本または二本鎖の核酸分子(DNAまたはRNA)であるが、アプタマーを基にしたDNAは、通常二本鎖である。アプタマー核酸に関する長さの規定はない;しかしながら、アプタマー分子は、通常15〜40ヌクレオチド長である。
【0134】
アプタマーは、イン・ビトロ選択(Ellington and Szostak.(1990) Nature. 346(6287):818-22)およびSELEX方法(systematic evolution of ligands by exponential enrichment:指数的増幅によるリガンドの体系的生成)(Schneider et al. 1992. J Mol Biol. 228(3):862-9) を用いて元々開発された多様な技術を用いて作成されてもよく、これらの内容は出典明示により本明細書に組み込まれる。アプタマーの他の作成方法および使用は、以下の文献に記載されている;Klussmann. The Aptamer Handbook: Functional Oligonucleotide and Their Applications. ISBN: 978-3-527-31059-3; Ulrich et al. 2006. Comb Chem High Throughput Screen 9(8):619-32; Cerchia and de Franciscis. 2007. Methods Mol Biol. 361:187-200; Ireson and Kelland. 2006. Mol Cancer Ther. 2006 5(12):2957-62; US Pat. Nos.: 5582981; 5840867; 5756291; 6261783; 6458559; 5792613; 6111095; and US Pat. App. Nos.: 11/482,671; 11/102,428; 11/291,610; and 10/627,543。これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0135】
ヌクレオチドの代わりにペプチドから作成したアプタマー分子もまた、本発明の方法に使用され得る。ペプチドアプタマーは、多くの特性をヌクレオチドアプタマーと共有し(例えば、小さなサイズおよび高親和性を有する標的分子と結合する能力)、それらはヌクレオチドアプタマーを生成するために使用された方法と類似した原理をもつ選択方法、例えばBaines and Colas. 2006. Drug Discov Today. 11(7-8):334-41;および Bickle et al. 2006. Nat Protoc. 1(3):1066-91(これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる)により作成され得る。
【0136】
アフィボディ分子は、スタフィロコッカル(staphylococcal)タンパク質AのIgG-結合ドメインから得られる58のアミノ酸残基のタンパク質ドメインを基にした親和性タンパク質のクラスを表す。この3つのヘリックス束ドメインを、コンビナトリアル・ファージミドライブラリー構築のためのスキャッホルドとして使用することができ、ファージディスプレイ技術(Nord K, Gunneriusson E, Ringdahl J, Stahl S, Uhlen M, Nygren PA, Binding proteins selected from combinatorial libraries of anα-helical bacterial receptor domain, Nat Biotechnol 1997;15:772-7. Ronmark J, Gronlund H, Uhlen M, Nygren PA, Human immunoglobulin A (IgA)-spsecific ligands from combinatorial engineering of protein A, Eur J Biochem 2002;269:2647-55)を用いて所望の分子を標的とするアフィボディ変異体から選択できる。アフィボディおよびその製造方法のさらなる詳細は、米国特許第5,831,012号の参照により得られ得る;この全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0137】
DARPins (Designed Ankyrin Repeat Proteins:設計されたアンキリン反復蛋白質)は、非抗体ポリペプチドの結合能力を活用する抗体模倣体DRP(Designed Repeat Proteins)技術の一例である。反復タンパク質、例えば、アンキリンまたはロイシンリッチ反復タンパク質は、様々な抗体、細胞間および細胞外で起こる偏在性結合分子である。それらの特有のモジュラー構造は、反復構造ユニット(リピート)を特徴とし、これは長い反復ドメインを提示する可変およびモジュラー標的-結合表面を形成して一緒にスタック(stack)される。このモジュール性に基づいて、高度に多様な結合特異性を有するポリペプチドのコンビナトリアルライブラリーを作成する。この方法は、可変表面残基を提示する自家和合性リピートの統一設計(consensus design)および反復ドメインへのそのランダムアセンンブリを含む。
【0138】
DARPinsおよび他のDRP技術に関する追加の情報は、米国特許出願公開公報第2004/0132028号および国際公開公報第WO 02/20565号において見出され得る、これら双方は、出典明示により本明細書に組み込まれる。
【0139】
アンチカリンは、追加抗体の模倣技術であるが、しかし、この場合、結合特異性はリポカリン、ヒト組織および体液中で天然におよび豊富に発現される低分子量タンパク質のファミリーから得られる。リポカリンは、強い化学的感受性のある化合物または不溶性化合物の生理学的輸送および貯蔵と関連したイン・ビボの機能範囲を実施するために発生させる。リポカリンは、タンパク質の4つのループを一端で支持する高度に保存されたβバレルを含むロバスト内因性構造を有する。これらのループは、結合ポケットの入り口を形成し、分子のこの部分における立体構造の差違が個々のリポカリン間の結合特異性の相違を表す。
【0140】
リポカリンをクローニングし、そのループを、アンチカリンを作成するために遺伝子操作した。構造的に異なるアンチカリンのライブラリーが構築される。アンチカリンディスプレイは、選択、結合機能のスクリーニング、その後さらなる分析のための原核生物または真核生物系統における可溶性タンパク質の発現および産生を可能にする。研究により、実際に任意のヒト標的タンパク質に特異的である開発され得るアンチカリンが単離され、ナノモルまたは広い範囲における結合親和性が得られるということが成功裏に示された。
【0141】
アンチカリンはまた、2つの標的タンパク質、いわゆるデュオカリン(Duocalins)として整えられ得る(formatted)。デュオカリン(Duocalin)は、2つの結合ドメインの構造的配向に関わらず、標的特異性および親和性を保持しながら、標準的製造方法を用いて容易に産生された単量体タンパク質の中に2つの異なる治療標的を結合する。
【0142】
アンチカリンに関する追加情報は、米国特許第7,250,297号および国際公開WO 99/16873に見出され得るが、これらの双方は、それらの全てを参照により本明細書に組み込まれる。
【0143】
本発明の文脈において有用な他の抗体模倣技術は、アビマーである。アビマーは、イン・ビトロのエキソンシャッフリングおよびファージディスプレイにより広範囲のヒト細胞外レセプタードメインのファミリーから生じ、結合特性および阻害特性を有するマルチドメインタンパク質を生成する。複数の独立した結合ドメインの連結は、アビディティーを創出することが判っており、従来の1つのエピトープ結合タンパク質と比べて改善された親和性および特異性をもたらす。他の潜在的利点は、Escherichia coliにおける簡易かつ効果的な複数標的-特異的分子の産生を含み、熱安定性およびプロテアーゼに対する耐性を改善する。ナノモル以下の親和性を有するアビマーが様々な標的に対して得られた。
【0144】
アビマーに関する追加情報は、米国特許出願公開第2006/0286603号、第2006/0234299号、第2006/0223114号、第2006/0177831号、第2006/0008844号、第2005/0221384号、第2005/0164301号、第2005/0089932号、第2005/0053973号、第2005/0048512号、第2004/0175756号に見出され、これら全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
バーサボディは、本発明において使用され得る他の抗体模倣技術である。バーサボディは、通常のタンパク質がもつ疎水性コアに代えて>15%システインを有する3-5kDaの小分子ランパク質であって、これは高いジスルフィド密度のスキャホルドを形成する。少数のジスルフィドと共に疎水性コアを含む多数の疎水性アミノ酸の置換は、より小分子のより親水性の(凝集しにくくおよび非特異的な結合)、プロテアーゼおよび熱により耐性のあるタンパク質となり、T-細胞エピトープの低い密度を示す。この理由は、MHC提示に最も関与する残基が疎水性残基であるためである。全ての4つのこれらの特性は、免疫原性に影響することが十分に知られていると共に、それらは免疫原性の大きな低下をもたらすと考えられる。
【0146】
バーサボディに関する追加情報は、米国特許出願公開第2007/0191272号に見出されており、これら全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【0147】
SMIPTM(Small Modular ImmunoPharmaceuticals-Trubion Pharmaceuticals)は、標的結合、エフェクター機能、イン・ビボの半減期、および発現レベルを維持および至適化するために設計した。SMIPSは、3つの異なるモジュラードメインからなる。第一に、それらは、特異性(例えば、細胞表面レセプター、一本鎖抗体、可溶性タンパク質など)を付与する任意のタンパク質から構成し得る結合ドメインを含有する。第二に、それらは、結合ドメインおよびエフェクタードメインの間でフレキシブルリンカーとして働くヒンジドメインを含有し、またSMIP薬剤のコントロール多量体化に役立つ。最終的に、SMIPSは、Fcドメインまたは他の特異的に設計されるタンパク質を含む多様な分子から得ることができるエフェクタードメインを含有し得る。多様な異なる結合、ヒンジおよびエフェクタードメインによりSMIPの簡易な構築が可能とする設計に関するモジュール性は、迅速なおよびカスタマイズ可能な薬剤設計を提供する。
【0148】
SMIPの設計方法の例を含むSMIPに関する追加情報は、Zhaoら(2007) Blood 110:2569-77、下記の米国特許出願番号第20050238646号; 20050202534; 20050202028; 20050202023; 20050202012; 20050186216; 20050180970;および 20050175614号に見出され得る。
【0149】
別の態様において、本発明の方法は、TLR9を標的とし、TLR9を阻害するかまたは下方調節する免疫結合剤を用いる。TLR9を標的とし得る薬剤は、細胞毒性剤、抗炎症性剤、例えば、ステロイド性または非ステロイド性の炎症剤、または細胞毒性代謝物(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル デカルバジン)、アルキル化剤 (例えば、メクロレタミン、チオテパ(thioepa)、クロラムブシル(chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシン C、および cis‐ジクロロジアミン白金 (II) (DDP) シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)、およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、および アンスラマイシン (AMC))、および有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン、およびビンブラスチン)を包含するが、これらに限定しない。
【0150】
用語「細胞毒」または「細胞毒性剤」は、線維化組織に有害(例えば、殺傷)であるあらゆる剤を含む。例示には、タキソール、サイトカラシン B、グラミシジン D、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、およびその類似体またはホモログを含むが、これらに限定するものではない。
【0151】
免疫結合体は、(例えば、化学的に連結するまたは組換え的に発現する)抗体を好適な治療剤に連結することにより形成されうる。好適な剤は、例えば、細胞毒性剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物または動物起源の酵素的に活性な毒素またはそのフラグメント)、および/または放射性同位体(即ち、放射性コンジュゲート)を含む。使用できる酵素的に活性な毒素およびそのフラグメントは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、菌体外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、α-サルシン、オオアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質 (PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポナリア(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセンが含まれるが、これらに限定されるわけではない。多様な放射性核種が、放射性コンジュゲート抗体の産生のために利用できる。例には、212 Bi、131 I、131 In、90Y 、および 186 Reが挙げられる。
【0152】
免疫結合体は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性抗体誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベラート)、アルデヒド(例えば、グルタルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などの多様な二機能性タンパク質カップリング剤を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., Science 238: 1098 (1987) に記載のとおりに作成できる。炭素-14-標識化1−イソチオシアネートベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA) は、放射性ヌクレオチドと抗体を連結させるためのキレート剤の例である(例えば、WO94/11026を参照されたい)。
【0153】
別の実施形態において、本発明の方法で用いられるTLR9アンタゴニストは低分子である。本明細書において使用されるように、本明細書において用いられる用語「低分子」は、約7500未満、約5000未満、約1000未満の分子量または約500未満の分子量であり、かつTLR9活性を阻害する分子である。例示的な低分子は、有機低分子(例えば、Cane et al. 1998. Science 282:63)および天然生成物の抽出ライブラリーを含むがこれらに限定されるものではない。別の実施形態において、該化合物は、小さな有機非ペプチド様化合物である。抗体のように、これらの低分子阻害剤は、TLR9の活性を間接的または直接的に阻害する。
【0154】
別の実施形態において、本発明の方法において用いられるTLR9 アンタゴニストは、TLR9をコードする遺伝子またはその遺伝子部分に相補的なアンチセンス核酸分子または該アンチセンス核酸分子をコードするリコンビナント発現ベクターである。本明細書において使用されるような「アンチセンス」核酸は、タンパク質をコードする「センス」核酸に相補的である、例えば、二本鎖cDNA分子のコード鎖に相補的な、mRNA配列に相補的な、または遺伝子のコード鎖に相補的であるヌクレオチド配列を含む。従って、アンチセンス核酸はセンス核酸と水素結合できる。
【0155】
細胞内の特定のタンパク質の発現を下方調節するアンチセンス核酸の使用は、当分野ではよく知られている(例えば、Weintraub、H. et al., Antisense RNA as a moleculartool for genetic analysis, Reviews - Trends in Genetics、Vol. 1(1) 1986; Askari, F.K., and McDonnell、W.M. (1996) N. Eng. J. Med. 334:316-318; Bennett、M.R., and Schwartz、S.M. (1995) Circulation 92:1981-1993; Mercola、D., and Cohen, J.S. (1995) Cancer Gene Ther. 2:47-59; Rossi, J.J. (1995) Br. Med. Bull. 51:217-225; Wagner, R.W. (1994) Nature 372:333-335)。アンチセンス核酸分子は別の核酸分子のコード鎖と相補的な核酸配列(例えばmRNA配列)を含み、したがって当該別の核酸分子のコード鎖と水素結合できる。mRNAの配列相補的なアンチセンス配列は、mRNAのコード領域、mRNAの5'または3'の非翻訳領域またはコード領域と非翻訳領域を繋ぐ領域(例えば、5'非翻訳領域およびこのコード領域の結合部分)において見られる配列と相補的であり得る。さらに、アンチセンス核酸は、mRNAをコードする遺伝子の制御領域、例えば転写開始配列または調節エレメントと配列にて相補的であり得る。好ましくは、アンチセンス核酸は、コード鎖上の開始コドンまたはmRNAの3'非翻訳領域に先行するかもしくは橋渡しをする領域と相補的であるように設計される。
【0156】
アンチセンス核酸は、WatsonとCrickの塩基対形成則に従って設計できる。アンチセンス核酸分子は、TLR9 mRNAの全コード領域と相補的であり得るが、より好ましくは、TLR9 mRNAのコードまたは非コード領域の一部にのみアンチセンスなオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドはTLR9 mRNAの翻訳開始部位の周辺の領域に相補的であり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50ヌクレオチド長であってよい。
【0157】
アンチセンス核酸は当該技術分野において既知の方法を用いて、化学合成および酵素的ライゲーション反応を用いて構築できる。例えば、アンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は天然に生じるヌクレオチドまたは分子の生物学的安定性を増大するかもしくはアンチセンスとセンス核酸間で形成された二本鎖の物理的安定性を増加させるために設計された多様な修飾ヌクレオチドを用いて化学的に合成でき、例えばホスホロチオエート誘導体とアクリジン置換ヌクレオチドを用いることができる。アンチセンス核酸を作成するために使用できる修飾ヌクレオチドの例は、次のものを含む:5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル−2-チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキュエオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル−2-チオウラシル、β−D−マンノシルケウオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、偽ウラシル、キュエオシン、2-チオシトシン、5-メチル−2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6-ジアミノプリン。あるいは、アンチセンス核酸は、核酸をアンチセンス配向にサブクローン化する発現ベクターを用いて、生物学的に作成できる(すなわち、挿入した核酸から転写されたRNAは目的の標的核酸とアンチセンス配向のものである。さらに詳しくは次のセクションに記載する)。
【0158】
本発明の方法に利用可能なアンチセンス核酸分子は、典型的には、それらがTLR9をコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズまたは結合して、転写および/または翻訳を阻害することによって発現を阻害するように対象に投与されるか、あるいはインサイチュで生成される。ハイブリダイゼーションは安定な二本鎖を形成するための常套のヌクレオチド相補性によるか、あるいは例えばDNA二本鎖と結合するアンチセンス核酸分子の場合には、二本鎖ヘリックスの主溝における特異的相互作用により得る。アンチセンス核酸分子の投与経路の例は、組織部位での直接注射を含む。あるいは、選択した細胞を標的とするようにアンチセンス核酸分子を修飾して全身的に投与できる。例えば全身投与のために、アンチセンス分子は、それらが選択した細胞表面で発現されるレセプターまたは抗原と、例えば細胞表面レセプターまたは抗原と結合するペプチドまたは抗体とアンチセンス核酸分子との結合によって、選択した細胞表面において発現されるレセプターまたは抗原と特異的に結合するように修飾できる。アンチセンス核酸分子はまた、当分野ではよく知られており、本明細書に記載のベクターを用いて細胞に送達できる、例えば、US20070111230の全ての内容を本明細書に組み込まれる。十分なアンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するために、アンチセンス核酸分子が強力なpol IIまたはpol IIIプロモーターの制御下に置かれるベクター構築物が好ましい。
【0159】
また別の実施態様において、本発明の方法に使用されるアンチセンス核酸分子は、αアノマー核酸分子を含んでいてもよい。αアノマー核酸分子は通常のβユニットと相補的な相補的RNAと特異的な二本鎖ハイブリッドを形成し、該ストランドは互いに平行に走る(Gaultier et al. (1987) Nucleic Acids. Res. 15:6625-6641)。アンチセンス核酸分子はまた、2'-o-メチルリボヌクレオチド(Inoue et al. (1987) Nucleic Acids Res. 15:6131-6148) またはキメラ RNA-DNAアナログ(Inoue et al. (1987) FEBS Lett. 215:327-330) を含んでいてもよい。
【0160】
別の実施形態において、本発明の方法に使用されるアンチセンス核酸は、RNAiを仲介する化合物である。RNA干渉剤は、TLR9またはそのフラグメントと相同のRNA分子もしくはそのフラグメントを含む核酸分子、「低分子干渉RNA(siRNA)」、「低分子ヘアピン」もしくは「低分子ヘアピンRNA(shRNA)」およびRNA干渉(RNAi)によって標的遺伝子の発現に干渉するかあるいは阻害する低分子を含むが、これらに限定されない。RNA干渉は、転写後標的遺伝子サイレンシング技術であり、二本鎖RNA(dsRNA)を用いてdsRNAと同じ配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)を分解する技術である(Sharp, P.A. and Zamore, P.D. 287, 2431-2432 (2000); Zamore, P.D., et al. Cell 101, 25-33 (2000).Tuschl, T. et al. Genes Dev. 13, 3191-3197 (1999))。このプロセスは、内因性リボヌクレアーゼが長いdsRNAを短い21または22ヌクレオチド長のRNA(低分子干渉RNAまたはsiRNAと呼ばれる)に切断する場合に生じる。次いで低分子RNAセグメントは標的mRNAの分解を媒介する。RNAiの合成のためのキットは、例えばNew England Biolabs および Ambionから商業的に入手可能である。一実施態様において、アンチセンスRNAに使用するための1以上の上記化学的手法を用いてよい。
【0161】
さらに別の態様において、アンチセンス核酸はリボザイムである。リボザイムは、それに相補性な領域を有するmRNAのような一本鎖核酸を切断できるリボヌクレアーゼ活性を有する、触媒的RNA分子である。即ち、リボザイム(例えばハンマーヘッドリボザイム(Haselhoff and Gerlach, 1988, Nature 334:585-591に記載されている))を用いてTLR9 mRNA転写産物を触媒的に切断して、TLR9 mRNAの翻訳を阻害することができる。
【0162】
あるいは、TLR9の制御領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)と相補的なヌクレオチド配列を標的として、TLR9遺伝子の転写を防止するトリプルヘリカル構造を形成することにより、遺伝子発現を阻害できる。一般に、Helene, C., 1991, Anticancer Drug Des.6(6):569-84; Helene, C. et al., 1992, Ann. N.Y. Acad. Sci. 660:27-36;およびMaher, L.J., 1992, Bioassays 14(12):807-15を参照されたい。
【0163】
別の実施形態において、本発明の方法において使用されるTLR9アンタゴニストは、TLR9アミノ酸配列から得られる融合タンパク質またはペプチド化合物である。特に、本阻害化合物は、TLR9と融合タンパク質またはペプチド化合物との接触がTLR9と標的分子との相互作用を競合的に阻害するような、TLR9と標的分子(例えば、CpG)の相互作用を媒介する融合タンパク質またはTLR9の一部(またはその模倣体)を含む。かかる融合タンパク質およびペプチド様化合物を、当業者には既知の標準的技術により作成できる。例えば、ペプチド化合物を、標準的なペプチド合成技術を用いた化学合成により作成し、次いでペプチドを細胞に導入するための当業者には既知の多様な手段(例えば、リポソームなど)により導入できる。
【0164】
本発明の融合タンパク質またはペプチド化合物のイン・ビボ半減期は、TLR9へのN結合グリコシル化部位の付加または例えばリシン−モノペグ化によって、TLR9をポリ(エチレングリコール))(PEG;ペグ化)と連結させるようなペプチド修飾を為すことにより改善できる。かかる技術は、治療用タンパク質薬剤の半減期を延長するために有用であると証明されている。本発明のTLR9ポリペプチドのペグ化は同様の医薬的利点をもたらし得ると考えられる。
【0165】
さらに、さらに、本発明のポリペプチドのいずれかの部分における非天然アミノ酸の導入によって、ペグ化が達成できる。特定の非天然アミノ酸は、Deiters et al., J Am Chem Soc 125:11782-11783,2003; Wang and Schultz, Science 301:964-967,2003; Wang et al., Science 292:498-500, 2001; Zhang et al., Science 303:371-373,2004 または、米国特許第7,083,970号に記載の技術によって導入され得る。すなわち、これらの発現系のいくつかは、本発明のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームへの、アンバーTAGのような非センスコドンを導入する部位特異的突然変異誘発を含む。次いでかかる発現ベクターは、導入された非センスコドンに特異的なtRNAを利用できる宿主に導入され、選択した非天然アミノ酸が加えられる。本発明のポリペプチドと物質とのコンジュゲート化の目的に有益な特定の非天然アミノ酸は、アセチレンおよびアジド側鎖を有するものを含む。これらの新規アミノ酸を含むTLR9ポリペプチドを、次いで該タンパク質中のこれらの選択した部位でペグ化できる。
【0166】
本発明の方法はまた、他の治療方法との組合せにおいてTLR9アンタゴニストの使用を含む。即ち、TLR9アンタゴニストの使用に加えて、本発明の方法は、該対象に、線維化障害を処置するための1以上の「標準的」治療を投与することを含み得る。例えば、アンタゴニストは、細胞毒素、免疫抑制剤、放射性毒性剤および/または治療抗体と組合せて(即ち、イムノコンジュゲートと共にまたは結合させて)投与され得る。本発明に含まれる特定の共療法は、ステロイド(例えば、コルチコステロイド、例えばプレドニゾン)、免疫抑制剤および/または抗炎症性剤(例えば、γ−インターフェロン、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ペニシラミン、シクロスポリン、コルヒチン、抗胸腺細胞グロブリン、ミコフェノール酸モフェチル、およびヒドロキシクロロキン)、細胞毒性薬剤、カルシウムチャンネル遮断薬(例えば、ニフェジピン)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)阻害剤、パラアミノ安息香酸(PABA)、ジメチルスルホキシド、形質転換増殖因子-β(TGF-β)阻害剤、インターロイキン-5(IL-5)阻害剤、およびパンカスパーゼ阻害剤を含むが、これらに限定するものではない。TLR9アンタゴニストと共に組合せ使用され得る追加の抗線維化剤は、レクチン(例えば、米国特許第7,026,283号の全ての内容は、参照により本明細書に組み込まれる)を含む。ピルフェニドン(5-メチル-1-フェニル-2-(1H)-ピリドン)もまた、TLR9アンタゴニストと組合せて使用されてもよい[米国特許第3,974,281号;同第3,839,346号;同第4,042,699号;同第4,052,509号;同第5,310,562号;同第5,518,729号;同第5,716,632号;および同第6,090,822号(この全ての内容を、参照により本明細書に組み込まれる)は、本発明の方法における使用のために好適な医薬組成物においてピルフェニドンおよび特異的ピルフェニドンアナログの処方を記述している]。
【0167】
TLR9アンタゴニストおよび共治療剤、または共治療は、同一製剤または別々に投与され得る。分離投与の場合には、TLR9アンタゴニストは、共治療剤または共治療の前、後または同時に投与されてもよい。1つの剤は、分から週の間の間隔にて他の薬剤の投与に先行するか、またはその後であってもよい。実施形態において、2種類以上の異なる治療剤が対象に別々に適用される場合、当業者は一般的に、有意な時間、この異なる種類の薬剤が依然として標的組織または細胞に対して有利な併用効果を発揮できるように、各々送達時間の間に失効しないことを確保するであろう。
【0168】
一実施態様において、TLR9アンタゴニスト(例えば、抗TLR9抗体)は、例えば、抗体(即ち、これにより二価特異的分子を形成する)またはTLR9上の異なる標的または異なるエピトープに結合する連結され得る他の結合剤などの第二の結合分子に結合されてもよい。
【0169】
用語「有効量」および「治療上有効量」は、本明細書において使用するとき、対象に投与したとき、対象における線維症の進行を阻害するに十分であるTLR9アンタゴニストの量を意味する。治療上有効量は、該対象および線維症の重症度、対象の体重および年齢、投与様式等に依存して変化し、これは当業者によって容易に決定され得る。本発明のTLR9アンタゴニストの投与量は、例えば、約1 ng 〜 約10,000 mg、約5 ng 〜 約9,500 mg、約10 ng 〜 約9,000 mg、約20 ng 〜 約8,500 mg、約30 ng 〜 約7,500 mg、約40 ng 〜 約7,000 mg、約50 ng 〜 約6,500 mg、約100 ng 〜 約6,000 mg、約200 ng 〜 約5,500 mg、約300 ng 〜 約5,000 mg、約400 ng 〜 約4,500 mg、約500 ng 〜 約4,000 mg、約1 μg 〜 約3,500 mg、約5 μg 〜 約3,000 mg、約10 μg 〜 約2,600 mg、約20 μg 〜 約2,575 mg、約30 μg 〜 約2,550 mg、約40 μg 〜 約2,500 mg、約50 μg 〜 約2,475 mg、約100 μg 〜 約2,450 mg、約200 μg 〜 約2,425 mg、約300 μg 〜 約2,000、約400 μg 〜 約1,175 mg、約500 μg 〜 約1,150 mg、約0.5 mg 〜 約1,125 mg、約1 mg 〜 約1,100 mg、約1.25 mg 〜 約1,075 mg、約1.5 mg 〜 約1,050 mg、約2.0 mg 〜 約1,025 mg、約2.5 mg 〜 約1,000 mg、約3.0 mg 〜 約975 mg、約3.5 mg 〜 約950 mg、約4.0 mg 〜 約925 mg、約4.5 mg 〜 約900 mg、約5 mg 〜 約875 mg、約10 mg 〜 約850 mg、約20 mg 〜 約825 mg、約30 mg 〜 約800 mg、約40 mg 〜 約775 mg、約50 mg 〜 約750 mg、約100 mg 〜 約725 mg、約200 mg 〜 約700 mg、約300 mg 〜 約675 mg、約400 mg 〜 約650 mg、約500 mg、または約525 mg 〜 約625 mgのTLR9 アンタゴニストの範囲である。投与レジメンは、最適な治療応答を提供できるように調節できる。有効量はまた、TLR9 アンタゴニストの何らかの毒性または有害な効果(すなわち副作用)が最小限となり、そして/または有益な効果が上回るものである。
【0170】
本発明の方法に使用するTLR9アンタゴニストの実際の投与レベルは、具体的な患者、組成物および投与形態に対して、患者には毒性なく、所望の治療的応答、例えば線維症の進行の阻害を達成するために有効な有効成分の量が得られるように変更されてよい。選択される投与レベルは、多様な薬物動態因子、例えば使用する具体的なTLR9アンタゴニストまたはそのエステル、塩もしくはアミド、投与経路、投与時間、使用する具体的なTLR9アンタゴニストの排出速度、処置期間、使用する具体的なアンタゴニストと組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康および薬歴等の医学分野で周知の要因に依存する。通常の技術を有する医師または獣医は、必要なアゴニストの有効量を容易に決定および予測することができる。例えば医師または獣医は、所望の治療効果を達成するために必要とされるものよりも低いレベルで該アンタゴニストの投与を開始して、所望の効果が得られるまで用量を漸増することができる。一般に、TLR9アンタゴニストの好適な1日用量は、治療効果を奏するのに有効な最低用量である。かかる有効用量は一般に、上記の要因に基づく。好ましくは、静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下投与され、好ましくは標的部位の近くに投与される。所望により、TLR9アンタゴニストの有効1日用量は2、3、4、5、6またはそれ以上の分割用量で、1日の適切な間隔で別個に、所望により単位投与形態で投与してもよい。本発明のTLR9アンタゴニストを単独で投与することも可能であるが、医薬製剤(組成物)として該アンタゴニストを投与することが好ましい。
【0171】
投与レジメンは最適な所望の応答(例えば治療応答)が得られるように調節される。例えば1回ボーラスを投与し、複数分割用量を経時的に投与し、あるいは治療状況の緊急度によって示されるとおりに用量を比例的に増加または減少することができる。例えば、本発明の方法に使用されるTLR9アンタゴニストは週に1回もしくは2回皮下注射で、または月に1回もしくは2回皮下注射で投与できる。
【0172】
本発明の方法に使用するTLR9アンタゴニストをある投与経路で投与するためには、その不活性化から防止するのに好適な処方にてTLR9アンタゴニストを含むことが必要であり得る。例えば、TLR9アンタゴニストは適切な担体、例えばリポソームまたは希釈剤中で対象に投与できる。医薬上許容し得る希釈剤は、生理食塩水および水性緩衝溶液を含む。リポソームは水中油中水型のCGFエマルジョンならびに常套のリポソームを含む(Strejan et al. (1984) J. Neuroimmunol. 7:27)。
【0173】
医薬上許容し得る担体は、滅菌水溶液または分散剤および滅菌注射液または分散剤の即時調製用の滅菌粉末を含む。医薬的活性物質のためのかかる媒体および物質の使用は、当該技術分野において既知である。いずれかの常套の媒体または物質が活性TLR9アンタゴニストと非適合性である場合を除き、医薬組成物におけるその使用が意図される。補助的活性化合物もTLR9アンタゴニストと共に導入されてよい。
【0174】
本発明の方法で使用されるTLR9アンタゴニストは、滅菌されており、製造および貯蔵条件下で安定であるべきである。該アンタゴニストは溶液、ミクロエマルジョン、リポソームまたは高薬物濃度に適したその他の注文構造として製剤できる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液性ポリエチレングリコール等)およびそれらの好適な混合物を含む、溶媒または分散媒であってよい。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティング剤の使用、分散剤の場合には必要な粒子サイズを維持すること、そして界面活性剤の使用によって維持できる。多くの場合、組成物中に張性調節剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコールまたは塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続吸収は、吸収を遅延する物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによって達成できる。
【0175】
滅菌注射液は、上記成分の1つまたは組合せを有する適切な溶媒中に、必要量の活性アンタゴニストを組み込み、所望により、次いで滅菌精密濾過することで調製できる。一般に分散剤は、分散基剤と上記のものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに活性化合物を組み込んで調製される。滅菌注射液調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、有効成分と何れかのさらなる所望の成分の粉末を、予め滅菌濾過したその溶液から、真空乾燥および凍結乾燥(凍結乾燥法)することである。
【0176】
本発明の方法に使用できるTLR9アンタゴニストは、経口、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、直腸、膣および/または非経腸投与に適したものを含む。該製剤は、簡便には単位投与形態に調製でき、薬学分野では既知の何れかの方法によって調製できる。単剤形態を製造するために担体物質と組み合わせることができる有効成分の量は、処置される対象および具体的な投与形態に依存して変化する。単剤形態を製造するために担体と組み合わせることができる有効成分の量は、一般に、治療効果を奏するアンタゴニストの量である。一般に、百分率として、この量は約0.001%〜約90%の有効成分、好ましくは約0.005%〜約70%、最も好ましくは約0.01%〜約30%の範囲である。
【0177】
用語「非経腸投与」および「非経腸的に投与する」は、本明細書において使用するとき、経腸および局所投与以外の投与形態、通常は注射による投与形態を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節腔内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および輸液を含むが、これらに限定されない。
【0178】
本発明の方法に使用するTLR9アンタゴニストと共に使用され得る好適な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびそれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油ならびに注射用有機エステル類、例えばオレイン酸エチルを含む。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティング物質の使用、分散剤の場合には必要な粒子サイズを維持すること、そして界面活性剤の使用によって維持できる。
【0179】
TLR9アンタゴニストは保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントと共に投与されてもよい。微生物の存在の防止は、上記滅菌手段ならびに多様な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等を含めることの両方によって確保され得る。組成物中に、例えば糖、塩化ナトリウム等の等張剤を含めることも望まれ得る。さらに、注射用の医薬形態の持続吸収は、アルミニウムモノステアリン酸およびゼラチンのような吸収を遅らせる物質を含めることによって達成され得る。
【0180】
本発明の方法に使用するTLR9アンタゴニストがヒトおよび動物に投与されるとき、それらは単独でまたは例えば0.001〜90%(より好ましくは、0.005〜70%、例えば0.01〜30%)の有効成分と医薬上許容し得る担体を組合せて含有する医薬アンタゴニストとして投与できる。
【0181】
TLR9アンタゴニストは、当該技術分野において既知の医学用デバイスによって投与されてもよい。例えば、好ましい実施態様において、アンタゴニストは無針皮下注射デバイス、例えば米国特許第5,399,163号、同第5,383,851号、同第5,312,335号、同第5,064,413号、同第4,941,880号、同第4,790,824号または同第4,596,556号に記載のデバイスで投与してもよい。本発明に有用な周知のインプラントおよびモジュールの例は以下のものを含む:米国特許第4,487,603号は、制御された速度で薬物を分配するための移植可能なマイクロ輸液ポンプを開示している;米国特許第4,486,194号は、皮膚を通して薬物を投与するための治療デバイスを開示している;米国特許第4,447,233号は、正確な注入速度で薬物を送達するための、薬物注入ポンプを開示している;米国特許第4,447,224号は、連続的な薬物放出のための、可変流量の移植可能な注入装置を開示している;米国特許第4,439,196号は、多重チャンバー区画をもつ、浸透圧薬物送達系を開示する;および米国特許第4,475,196号は、浸透圧薬物送達系を開示する。多くの他のこのようなインプラント、送達系およびモジュールが当業者には周知である。
【0182】
III.本発明のキット
本発明はまた、線維症を有する対象における線維症の進行を予測するためのキットを提供する。これらのキットは、TLR9の発現レベルを決定するための手段および該キットを使用するための指示書を含む。
【0183】
本発明のキットは、所望により本発明の該方法を行うために有用な追加成分を含む。例として、キットは、対象由来の生物学的サンプル、コントロールサンプル、例えば、緩徐に進行する線維症を有する対象および/または線維症を持たない対象由来のサンプルを得るための手段、1以上のサンプル区分、本発明の方法の実施および組織特異的コントロール/標準物を記述する指示書類を含んでも良い。
【0184】
TLR9の発現レベルを決定するための手段には、例えば、発現を評価するためのアッセイ(例えば、mRNAまたはタンパク質レベルのいずれかにて)に使用するための緩衝液または他の試薬を含むことができる。この指示書には、例えば、TLR9の発現を評価するためにアッセイを行うための指示が印刷される。
【0185】
対象からの生物サンプルを単離するための手段は、対象からの液体または組織を得るために使用され得る1以上の試薬、例えば、気管支喘息洗浄または経気気管支生検を得るための手段を含むことができる。該対象由来の生物学的サンプルを得るための手段はまた、例えば、単球の正の選択または負の選択により(ここで単球以外の全ての他の細胞型が除去される)、血液サンプルから末梢血の単核細胞を単離するための手段を含んでもよい。
【0186】
本発明のキットは、対象から得たサンプルを培養するための手段をさらに含み得る。
【0187】
本発明のキットはまた、非メチル化CpG存在または非存在を決定するための手段、γヘルペスウイルスの存在または非存在を決定するための手段、アネキシン1、α平滑筋アクチン、好中球エラスターゼ、KL-6、ST2、IL-8、α デフェンシン、β3-エンドネキシン、セリンプロテアーゼ阻害剤、Kazalタイプ、プラスミノーゲン活性化剤阻害剤-1、HPS3、Rab38、Smad6、ADAMTS7、CXCR6、Bcl2-L-10、およびMMP-9からなる群から選択される追加マーカーの発現レベルを決定するための手段、ならびに/または対象から得た培養サンプルのTGFβおよびCpGに対する応答性を決定するための手段、を含んでも良い。
【0188】
一実施態様において、本発明のキットは、さらに、α平滑筋アクチンの発現および/または活性の変調を決定するための手段を含んでも良い。一実施態様において、α平滑筋アクチンの発現および/または活性の変調を決定するための手段は、該対象から得たサンプルのTGFβおよびCpGに対する応答性を決定するための手段を含んでもよい。
【0189】
一実施態様において、本発明のキットは、対象由来の生物学的サンプル(例えば、経気気管支生検)を得るための手段、α平滑筋アクチンの発現および/または活性の変調を決定するための手段(例えば、対象から得た生物学的サンプルのTGFβおよびCpGに対する応答性を決定するための)、およびキットを使用するための指示書を含む。一実施態様において、かかるキットは、TLR9の発現レベルを決定することをさらに含み得る。別の実施形態において、かかるキットは、TLR9の発現レベルを決定するための手段を含まない。
【0190】
好ましくは、キットは、ヒト対象と共に使用使用するために作成される。
【0191】
本発明は、さらに下記の実施例により説明されるが、これれはさらなる制限として解釈されるべきではない。本願を通じて引用した配列表、図面ならびにあらゆる文献、特許および公開特許出願の内容は、参照により明示的に本明細書に組み込む。
【0192】
実施例
I.材料および方法
このセクションにおいて、実施例において使用した材料および方法を説明する。
【0193】
マウス
下記の全ての方法は、滅菌層流環境において行われており、動物実験委員会により承認されたものである。成体で同齢のメスC.B-17-scid-beige(C.B-17SCID/bg)マウス(Taconic Farms, Germantown, NY)を使用した。SCIDマウスを、別々のSPF(特定病因を含まない)施設で飼育した。免疫不全マウスC.B-17SCID/bg マウスは2つの変異を有する:第一はscid 変異であり、第二はbeige変異であって、細胞毒性T-細胞およびマクロファージ機能における主な欠損ならびにNK細胞機能における選択的な障害をもたらす。
【0194】
AE-IPFのヒト-SCIDモデル
IPF/UIP(臨床学的に分類された進行が急速なまたは緩徐な者由来の)および正常な線維芽細胞の単一細胞調整物を、150-cm2組織培養フラスコのトリプシン処理後に得て、製造者の指示書に従ってPKH26染料で染色した(Sigma Co., St. Louis, MO)。各々標識された線維芽細胞系を、2 x 106 細胞/mLにリン酸緩衝液生理食塩水(PBS)で希釈し、この懸濁液(0.5 ml)を、5〜10匹のSCIDマウス群に尾部血管から注射した。35日間後に、全てのマウス群を、穏やかに麻酔し、経鼻送達によりCpG-ODN(滅菌生理食塩水に溶解した)の単回ボーラスまたは生理食塩水を投与した。マウスを、ヒト肺線維芽細胞の静脈注射による移入後63日目に、頚部脱臼により安楽死させた。全肺組織を、この時点で組織学的および生物学的分析のために解剖した(下記を参照されたい)。
【0195】
IPF患者
総合的解析、臨床的/放射線学的/病理メカニズムを用いてIPFを有すると診断された23人の患者を分析した(Flaherty, K.R., et al.. (2004) Am J Respir Crit Care Med 170:904-910)。ベースラインのデータは、詳細な臨床的評価、生理学的試験、高解像度コンピューター断層撮影(HRCT)、および外科的肺生体組織検査(SLB)を含む。HRCT異常の半定量的スコアを、有効な方法を用いて作成した(Kazerooni, E.A., et al. (1997) AJR Am J Roentgenol 169:977-9 83)。患者を、様々な処置レジメンにより処理し、その後の急性事象中の生理学的試験および臨床的情報の収集に供した。経過観察一年間の疾患進行を実証した方法を用いて生理学的劣化の複合物(composite)を利用した(Flaherty, K.R., et al. (2006) Am J Respir Crit Care Med 174:803-809)。生理学的基準は、ベースラインの生理学的異常を基にしたFVC低下>10%およびDLCO低下>15%を含む。IPFの急性増悪は、基準(Collard, H.R., et al. (2007) Am J Respir Crit Care Med 176:636-643)または全死因死亡率を用いて規定された。この複合的アプローチは、NHLBI(ACE IPF)および企業主導臨床試験(BUILD 3, Artemis) (www. Clinicaltrials.gov)において一般的である。
【0196】
細胞培養および単球分化アッセイ
血液を、健康な成人ボランティアから採血した。PBMCを製造者の指示に従ってFicoll-Paque Plus(GE Healthcare Biosciences, Piscataway, NJ, USA)によりEDT血液から単離した。CD14+単球を、ヒト単球単離キットIIおよびMACS(登録商標)LS カラム分離剤 (Mil1tenyi Biotec)を用いる負の選択により精製した。要するに、CD3、CD7、CDI6、CD19、CD56、CD123、およびCD235aに対するビオチン結合抗体のカクテル(Glycophorin A)ならびに抗ビオチンミクロビーズにより、磁気標識された細胞の枯渇により得た純度がより高い非標識単球を得た。CD14+単球(>97% 純度、FACSにより検出されたとおり)分析物を、10 ng/mL TGFβを含むかまたは含まないEX-細胞(登録商標)Hybri-MaxTMタンパク質不含培地 (Sigma-Aldrich)+0.5% 滅菌 BSAを含有する6-ウェルプレート中で2.5 x 106 細胞/ウェルの密度にて播種した。3日後に、単球を、刺激しないか、あるいは50μg/mLの滅菌CpG-ODN、非CpG、またはポリICにより再度刺激した。24時間後、単球培養物を、位相差顕微鏡検査法の下で画像化するか、または記載のようにFACS分析のために処理した。遺伝子発現分析のために、TriZol(登録商標)試薬を、各ウェルに加え、RNA抽出を製造者の指示に従って行った。RNAを、RNAeasy RNA cleanup kit (Quiagen)を用いて精製し、カラム上でDNAase消化(Quiagen)を行った。RNA濃度および精製度を、Nanodropにより決定し、アガロースゲル電気泳動により確認した。精製したRNAを、次にrtPCRによりcDNAに逆転写し、同様の処置を分析のために蓄積した。
【0197】
A549 細胞培養およびEMTアッセイ
A549 細胞を、10% 子ウシ血清、100 U/mLペニシリン(penicitlin)および100 μg/mL ストレプトマイシンを加えたDMEMを含有する12ウェル培養プレートに、40,000 細胞/ウェル濃度で播種した。処置は、培地単独、CpG(5、10、50、100、または200 μg/mLにて)またはTGFβ(0.1、0.5、1、5、l0 ng/mL)から構成した。細胞を、72時間または96時間処理して(表示のとおりに)、次いで記載したとおりに分析のためにトリプシン処理を行った。
【0198】
TLR9のsiRNAノックダウン
A549 細胞を、5% 子ウシ血清を加えたDMEMを含有する12ウェル培養プレート中、10,000細胞/ウェルの濃度で播種した。24時間後、細胞を、非処置で維持するか、または製造者の指示に従ってDharmaFECT トランスフェクション試薬において50 nM ON-TARGET+非標的化siRNAプール、50 nM ON-TARGET+シクロフィリンB コントロールsiRNA プール、または50 nM TLR9 ON- TARGET+siRNA SMARTプール(Dharmacon, Thermo Scientific)で処理した。細胞を、RNA分析のために48時間またはタンパク質分析のために96時間インキュベートし、TLR9のノックダウンを確認した。CpG-介在性のEMTについて、表示した濃度のCpGを、72または96時間(表示のとおりに)siRNA処理細胞に添加し、その後記載したとおりに分析のためにトリプシン処理を行った。
【0199】
統計学的分析
全ての結果を、必要に応じて平均±SEMまたは中央値として表す。患者のベースラインの特徴を、必要に応じて対応のないt-検定またはMann Whitney検定により対比させた。全生存特徴を、Cox回帰分析を用いて、疾患が無かった患者と比較して、経過期間一年の間に疾患進行を経験する患者間で対比した。様々な時点での群間平均を二元分散分析により比較した(Ivanova, L., et al. (2008) Am J Physiol Real Physiol 294:F1238- 1248)。個人差を、対応のないt-検定を、表示した場合にはTukey-Kramer多重検定試験を用いてさらに分析した。P<0.1 (*)、P<0.01 (**)、およびP<0.001 (***)の値を有意とみなした。
【0200】
IPFのヒト-SCIDモデルの組織分析
頸部脱臼の後、各マウス由来の右葉を切開し、10% ホルマリン溶液にて完全に膨潤させて、24時間新しいホルマリンに置き換えた。標準的な組織学的技術を用いて、各右葉をパラフィン埋包に供し、5μmの切片を組織学的分析のためにマッソントリクローム染色で染色した。
【0201】
原発性肺線維芽細胞系統の単離および培養
UIP(臨床学的に分類された進行が急速なまたは安定した者由来の)および正常なSLBを、細かく切断し、この分散組織片を、15%子ウシ血清、1 mmol/L グルタミン、100 U/ml ペニシリン、および100μg/ml ストレプトマイシンを加えたDMEMが入った150cm2の細胞培養物フラスコ中に投入した。全ての原発性肺細胞系を、先に詳細に記載したように、5% CO2インキュベーターにおいて37℃でDMEM-15内に維持し、計5回連続継代して、純粋な肺の線維芽細胞集団を得た(Hogaboam, et al. 2005 Methods Mol Med. 117:209-21)。各患者群由来の全ての原発性線維芽細胞細胞系を、下記に概要した実験では6〜10回継代して用い、全ての実験を比較可能な条件下で行った。6ウェル組織培養プレートにおいて各ウェルを、2.5×105線維芽細胞を用いて播種し、75%のコンフルエンス時に、培地単独、あるいは100 mMのCpG-ODN(Cell Sciences,CA)、即ちTLR9の合成アゴニストを含むかまたは含まずに10 ng/mlのヒト組み換え体IL-4を用いて24時間刺激した。24時間後、細胞不含上清を分析のために回収した。
【0202】
SLBおよび原発性肺線維芽細胞系統由来のRNAおよびcDNAの調製
上記したような処置の後に、TriZol 試薬(Invitrogen Life Techcology, Carlsbad, CA)を、各ウェルに加え、その後全RNAを製造者の指示に従って調製した。同じプロセスを、それらを氷上で融解させた後に、7つの(上および下葉)急速なIPF/UIP、7つの(上および下葉)安定なIPF/UIP、および7つの正常なSLBに適用した。SLBおよび線維芽細胞由来の精製RNAを、次にBRL逆転写キットおよびオリゴ(dT)12-18のプライマーを用いてcDNA中に逆転写した。この増幅緩衝液には、50 mmol/L KCl、10 mmol/L Tris-HCl(pH 8.3)、および 2.5 mmol/L MgCl2が含まれる(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)。
【0203】
リアルタイムTaqMan PCR分析
ヒトTLR9、コラーゲン1、およびαsma遺伝子発現を、ABI PRISM 7500 配列検出系(PE Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いるリアルタイム定量RT-PCR法により分析した。SLBサンプル由来のこのcDNAをTLR9について分析し、培養した単球およびA549 細胞由来のcDNAをコラーゲン1およびαsmaについて分析した。GAPDHを、内部コントロールとして使用した。TLR9について使用したプライマーおよびプローブを、Applied Biosystemsから購入した。コラーゲン1について使用したプライマーおよびプローブは次のとおりであった:
フォワード TGGCCTCGGAGGAAACTTT (配列番号1)、および
リバース TCCGGTTGATTTCTCATCATAGC (配列番号2)、
MGB プローブ CCCCAGCTGTCTTAT (配列番号3);

αsmaについて:
フォワード GCGTGGCTATTCCTTCGTTACT (配列番号4)、および
リバース GCTACATAACACAGTTTCTCCTTGATG (配列番号5)、
MGB プローブ TGAGCGTGAGATTGT (配列番号6)。
遺伝子発現を、GAPDHに対して正規化し、標的遺伝子発現の倍数増加を、各実験に示したとおり計算した。
【0204】
ヒドロキシプロリンアッセイ
各マウス由来の左葉サンプルを、切開し、均質化し、ヒドロキシプロリンアッセイについて記載したように生化学的に処理した(ES Chen, BM Greenlee, M Wills-Karp, DR Moller:Attenuation of lung inflammation and fibrosis in interferon-gannma-deficientt mice after intratracheal bleomycin. Am J Respir Cell Mol Biol 2001, 24:545-55)。ヒドロキシプロリン濃度を、ヒドロキシプロリン標準曲線(0−100 μg ヒドロキシプロリン/ml)から計算した。各サンプル中のレベルを、ブラッドフォードタンパク質アッセイにより測定した各サンプル中に存在するタンパク質に対して正規化した(mg)。
【0205】
フロー・サイトメトリー分析
単球を、処置4日後に、細胞培養物プレートから剥離を促進するためにAccutaseTM(eBiosciences)と共に15分間インキュベートし、先に記載したフロー・サイトメトリー分析のためのプロトコールに供した(D Pilling, T Fan, D Huang, B Kaul, RH Gomer: Identification of makers that distinguish monocyte-derived fibrocytes from monocytes, macrophages, and fibroblasts. PLoS One 2009, 4:e7475)。単球を、抗CD14-PE-Cy7、抗CD45RO-Pacific Blue、抗CXCR4-FITCにより染色した。TLR9およびコラーゲン染色のために、単球を、BD Perm/WashTMを用いて透過処理して、TLR9-PEにより染色し、コラーゲン-ビオチン標識し、その後ストレプトアビジン-APCに供した。細胞をFACSCaliburおよびCell Quest software (BD Biosciences, San Jose, CA)を用いて分析した。
【0206】
免疫蛍光
単球を、350,000細胞/ウェルの細胞密度にて、0.5% 滅菌 BSAを含有するEX-細胞(登録商標)Hybri-Max TMタンパク質不含培地(Sigma-Aldrich)および特定の実験のために表示した処置をふくむ8ウェルガラスLabtek (Nunc Inc.,Naperville, IL)組織培養プレートに添加した。A549細胞を、10%子ウシ血清、100 U/ml ペニシリン、および100 μg/ml ストレプトマイシンおよび特定の実験に対する表示された処置を加えたDMEMを含有する8-ウェルガラス Labtekプレートに20,000 細胞/ウェルの密度にて添加した。細胞を、4%のパラホルムアルデヒドを用いて固定し、終夜4℃でウサギポリクローナル抗ヒトコラーゲン1(Abcam ab292)またはウサギIgGアイソタイプコントロール(Abcam)により染色した。PBSにて繰り返して洗浄した後、単球を、FITC-結合マウス抗ウサギIgG と共に1時間4℃でインキュベートした。細胞を、PBSにて再度洗浄して、固定し、40X倍率にて蛍光顕微鏡を用いて可視化した。
【0207】
実施例1.急速な進行性のIPF対緩徐な進行性のIPFの形態の臨床的特徴および外科的な肺生体組織検査における示差的TLR9発現の同定
10人のIPF患者は、経過期間の最初の一年の間に疾患進行を示したが、13人は示さなかった;患者についての経過期間の平均時間は1154 ± 03 日間であった。経過期間の最初の一年の間に進行性の疾患を経験する10人の患者のうち、8人は、生理学的進行に基づく発症を特徴とし(6人はFVC、2人はDLCO)、1人はIPFの急性増悪を経験し、1人は急性増悪を規定したよりも長い時間枠にわたり呼吸を病因として死亡した。全体的な生存率は、経過期間の一年間に疾患進行を示した患者と比較して、疾患進行を示さなかった患者において良好であった(p=0.03)(図1A)。表1は、ベースラインでの臨床的、生理学的画像化、および組織学的特徴を示す。
【0208】
表1:急速な進行性IPFと緩徐な進行性IPFに罹患する患者の臨床的特徴
【表1】



*経過期間の最初の一年の間の最初の事象までの時間
【0209】
人口統計、生理学的重症度、またはHRCT/組織学的半定量的異常において注目される統計的に有意な相違がないことが明らかである。図1Bは、緩徐な(パネル1および2)および進行が急速な者(パネル3および4)についての代表的な組織学を示す。患者の双方のタイプにおいて、外科的肺生体組織検査は、構造変形を伴う不均質間質性線維症(パネル1および3)およびUIPに特徴的な多発性線維芽細胞病巣(パネル2および4)を示した。外科的な肺生検時にIPFの急性増悪(即ち、びまん性肺胞損傷)の事象を示した症例はなかった。
【0210】
近年、TLR9がIPF肺内に高度に発現し、CpG-ODNがイン・ビトロでIPF肺の線維芽細胞の筋線維芽細胞分化を駆動させるということが報告されている(Meneghin, A., et al.(2008) Histochem Cell Biol 130:979-992)。TLR9の発現が急速な進行性IPFにおいて異なるかどうかを試験するために、TLR9発現を、進行が急速または安定な者として臨床学的に分類されたIPF患者由来の外科的な肺生体組織検査にて定量した。図1Cは、TLR9遺伝子発現が、正常および安定な者と比較して、急速な進行性のIPF患者の肺において上昇したことを示す。これらの結果は、進行が急速なおよび緩徐な者由来の外科的肺生体組織検査において、TLR9タンパク質の強度および局在性の双方を提示するTLR9の免疫組織化学分析により確認された(図1D)。図1Dは、進行が緩徐な者と比較して進行が急速な者の肺の間質性領域におけるTLR9タンパク質の増加を示す(図1D パネル3)、ここで強いTLR9染色は免疫細胞により提示されたと考えられる(図1Dパネル1)。
【0211】
実施例2.CpG-ODNはTGFβの存在下においてイン・ビトロで原発性ヒト血液単球における線維症様の表現型を誘導する
CpGはIPF線維芽細胞の筋線維芽細胞分化を誘導するという先の知見に基づいて、CpGはまた、IPFの病原に関して他の細胞型において線維症様の表現型を駆動するかどうかを決定した。病原体の侵入に対する免疫学的応答の中心的な促進物質であるヒト血液単球に影響するCpG効果を試験した。別の研究から、血清不含条件下で4日以内に、線維症様細胞(「線維芽細胞」)が、精製ヒトCD14+単球から生じ得ることが以前に報告されている(Pilling, D., et al.(2003) J Immunol 171:5537-5546; Shao, D.D., et al. (2008) J Leukoc Biol 83:1323-1333; Hong, K.M., et al. (2007) J Biol Chem 282:22910-22920)。これは、他の報告とは異なり、線維芽細胞集団が、血清存在下で7日後のヒトPBMC培養物中にはCD14がないことを示すことを報告している(Hong, K.M., et al. (2007) J Biol Chem 282:22910-22920;Yang, L., et al. (2002) Lab Invest 82:1183-1192)。これらの研究において、PBMC培養物へのTGFβの添加により線維芽細胞分化が促進されるが、紡錘形の形態学およびコラーゲンI発現による規定はあまりなされていない。従って、CpGが線維芽細胞様表現型を精製CD14+単球において駆動するかどうかを決定した。
【0212】
健康なヒトドナー由来の末梢血単球を、T細胞およびB細胞、樹状細胞、NK細胞、赤血球および幹細胞を枯渇させる負の選択により、CD14-発現細胞のために精製した。図2Aは、精製CD14+細胞を、3日間TGFβ(10 ng/mL)の存在または非存在下で血清不含培地に播種して、その後それらを、さらなる日数の間、なし、コントロールの非刺激性CpG-ODN(非CpG)、CpG ODN、またはTLR3アゴニスト(ポリI-C)により刺激した。位相差顕微鏡検査法による形態学的評価から、培地単独またはTGFβを組合せて培養した単球は、単球表現型特有の丸い形状を維持したことが明らかとなった(図2Bパネル1および2)。同じ表現型が、TGFβの存在および非存在双方において、非CpG(図2Bパネル3および4)およびポリI-C(図2Bパネル7および8)で刺激したマクロファージにおいて観察された。これに対して、CpG単独(図2Bパネル5)を用いて、および/またはTGFβの存在下でCpG(図2Bパネル6)を用いて刺激された単球は、線維芽細胞に類似した伸張した紡錘形の異なる細胞集団を示した。
【0213】
培養物中で観察された差違が、線維芽細胞マーカーの誘導に関連するかどうかを決定するために、RNAを、該付着細胞から単離して精製し、定量的TaqManリアルタイムPCRにより遺伝子発現分析を行った。α平滑筋アクチン(αSMA)は、間葉細胞上で、例えば平滑筋、および線維芽細胞で主に発現される特異的タンパク質マーカーであり、一般的に非構造細胞にはない。上方調節は、筋線維芽細胞の分化、最近では線維芽細胞の分化に関連づけられている。αSMA遺伝子転写産物の誘導は、CpGで刺激された単球においてのみ観察された(図2Cパネル1)。TGFβは、CpGで刺激した細胞においてαSMA遺伝子発現を変化させなかったので、この培養系におけるαSMA遺伝子発現の上方調節はCpGに特異的であるということを示す。
【0214】
先の研究と一致して、単球が、TGFβの存在下で培養した場合に(図2Cパネル2)、コラーゲン1の上方調節を示すことを観察した。しかしながら、興味深いことに、刺激されていない単球もまたコラーゲンを発現することが観察されたが、これはマクロファージがコラーゲンの全てのレパートリーを実際に発現するということを報告した先の報告と一致している(Schnoor, M., et al. (2008). J Immunol 180: 5707-5719)。観察された先の形態学的差違(即ち、CpG誘導性の伸張した紡錘形細胞)と相関するコラーゲン発現における差違を認めなかったが、これらのデータから、TGFβがCD14+単球においてコラーゲン発現を増加させるが、この効果はTGFβのみに制限されている可能性があることが確認される。
【0215】
次に、培養したCD14+単球においてCpGがコラーゲンタンパク質発現に影響するかどうかを免疫組織化学により決定した。図2Dは、TGFβ単独(パネル2)で培養したおよび培養中でCpG単独(パネル3)により刺激したCD14+単球におけるコラーゲン染色の特異的上方調節を示す。CpGおよびTGFβ両方を用いる処理は、コラーゲン1染色(パネル4)を増強し、これは図2Bのパネル6に示された形態学的変化と一致している。さらに、コラーゲン−陽性のCD14+CD45+単球のフロー・サイトメトリーの定量は、CpGがTGFβ-培養細胞(パネル6)においてコラーゲン1のタンパク質発現を増強することを示している。
【0216】
線維芽細胞様単球を、フロー・サイトメトリー分析を用いて特徴づけた。TGFβの存在または非存在下にて培養したCD14+単球の前方散乱光および側方散乱特性の初期観察により、CpGは線維症様細胞の形状と一致する形態学的変化を誘導することが確認された。図2E(パネル1)は、TGFβ単独で培養した多数の単球は、サイズが小さくなったことを示す(パネル1)。これに対して、TGFβの存在下でCpGにより刺激された単球は、細胞サイズおよび複雑性(パネル2)の指標となる前方散乱光および側方散乱の増加を示す細胞を含んでなる主要集団(全細胞の72.3%)を有する。
【0217】
単球由来の線維芽細胞は、CD14-陰性として広く特徴づけられており、他のグループは線維芽細胞への分化の際にPBMCがCD14発現を失うことを示している(Abe, R., et al. (2001) J Immunol 166:7556-7562; Gomperts、B.N. & Strieter, R.M. (2007) J Leukoc Blol 82:449-456)。さらに、CD14は、細菌感染中に動員(shed)され得るTLR4およびMD-2と共にマクロファージ上のLPSに対する細胞表面コレセプターである(Moreno, C., et al. (2004) Microbes Infect 6:990-995: Sandanger, O., et al. (2009) J Immunol 182:588-595)。TGFβの存在または非存在が、本明細書に記載のこの培養系において、線維芽細胞分化中のCD14+単球集団に影響を与えるかどうかを決定した。図2Eのパネル3は、4日間後に、全細胞の>95%は、培地単独で培養した場合にはCD14-であり、CpGは該集団に影響しないことを示した。反対の結果はパネル4に示されており、ここでCD14+単球は、TGFβあるいはTGFβおよびCpGを含有する培地中で培養した場合の細胞集団のほぼ100%を含む。これらの結果は、単球上のCD14発現はダイナミックであり、CD14発現の喪失または維持は、それらの線維芽細胞分化と必ずしも相関する必要はないことを示す。
【0218】
確立された線維芽細胞マーカーの上方調節について、CD14+およびCD14-単球集団に対するCpGの効果を、フロー・サイトメトリーにより決定した。CD14-細胞において、CpG単独またはTGFβとの組合せは、線維芽細胞を特徴分析するために広く使用される造血マーカーであるCD45の発現を誘導することがわかった(図2Eパネル5および6)。CpGによるCD45の上方調節も、TGFβを用いて培養したCD14+単球において認められた(図2Eのパネル6)。CD45発現に対する効果は、培地単独で培養されたCD14+細胞においては認められなかった(図2Eのパネル5)。まとめると、これらのデータから、CpGは、伸張した紡錘形の形態の誘導により規定されるCD14+単球における線維芽細胞様の表現型ならびにαSMA、コラーゲン1、およびCD45タンパク質の上方調節を誘導することを示す。
【0219】
実施例3.CpG-ODNはA549細胞の上皮間葉転換を誘導する
単球中で認められたCpG効果に基づいて(図2)、CpGが上皮細胞中の典型的なEMT応答を誘導し得るということを仮定した。ヒト腺癌タイプII肺胞上皮細胞系統のA549は、TGFβ駆動性のEMTを考察するために広く使用されている(Rho,J.K., et al. (2009). Lung Cancer 63:21 9-226; Illman, S.A., et al. (2006) J Cell Sci 119, 3856-3865; Kasai, H., et al. (2005) Respir Res 6:56)。A549のTGFβによる処置は、細胞の広がりおよび伸張、E-カドヘリンなどの上皮細胞マーカーの欠失およびαSMA、コラーゲン1、およびビメンチンなどの間葉タンパク質の発現をもたらす。培養培地において96時間後の非処置A549細胞は、丸石様の上皮形態および成長パターンを維持した(図3Aのパネル1)。ポジティブコントロールとしてA549細胞を、TGFβ濃度を漸増させて処理し、わずか0.1 ng/mL程度により明らかな形態学的変化を観察した。図3Aのパネルbは、5 ng/mLで96時間培養したA549 細胞の代表的な画像であり、TGFβ誘導の細胞分散および線維症様形態を示す。CpGもこのような変化を誘導できるかどうかを試験するために、A549細胞を、CpGの濃度を漸増させて24、48、72、および96時間処理し、形態学的変化およびEMTマーカーの発現を評価した。図3Aパネル3-7は、CpG処置が、濃度依存様式で96時間の処置にて細胞の広がりおよび伸張した紡錘形の細胞を誘導することを示す。
【0220】
位相光学顕微鏡検査法の下で評価した細胞形態における変化を、CpGの最小濃度にて早くて24時間で観察したが、殆どの劇的な効果は72および96時間後に起こった。CpGを用いて観察される形態学的変化がEMTと相関するかどうかを試験するために、RNAを、培養したA549細胞から単離して、EMTマーカーの遺伝子発現を測定した。図3Bは、CpGがαSMAの発現を刺激すること、200μg/mLのCpGにて最適な効果(パネル1)および発現を有することを示す。A549細胞のCpG処置もまた、200 μg/mLのCpGにて最適な効果と共にビメンチンの濃度依存性の誘導をもたらす(図3Bのパネル2)、これにはE-カドヘリン発現の損失も伴う(図3Bのパネル3)。加えて、蛍光免疫細胞化学から、96時間後にA549細胞において、CpGによるコラーゲン1の用量依存性の誘導が明らかとなった(図3Dパネル1-4)。これらのデータは、CpGが肺上皮細胞においてEMTを誘導することを示す。CpGが、A549細胞から固有(innate)の免疫応答も誘導できるかどうかを決定するために(Ronni, T., et al. (1997) J Immunol 158:2363-2374)、IFNα遺伝子発現をCpG濃度増加後に測定した。最適なIFNα遺伝子転写が200 μg/mLにより処置された細胞において検出され(図3D)、この濃度で観察されたEMT効果はまた固有の免疫応答と相関することを示す。
【0221】
A549細胞においてEMTのCpG-DNA誘導がTLR9依存性であるかどうかを決定するために、RNA干渉およびノックダウンにより標的としたTLR9タンパク質発現を、これらの細胞におけるCpG媒介性EMTを試験する前に評価した。なし(非標的)、参照タンパク質サイクロフィリンB、またはTLR9に対して4つの異なる特異的配列からなるsiRNAプールで処置したA549細胞を、96時間の処置後に溶菌させた。図3Eのパネル1-4は、TLR9タンパク質発現が、非標的またはサイクロフィリンB siRNAではなくTLR9 siRNAで処置した細胞において排除されたことを確認した。さらに、この時点でA549細胞は、処置培地+トランスフェクション試薬単独(図3Eのパネル5)で培養したものとしてみて、ストレス応答または形態学的変化に関する指標が、非標的siRNA(図3Eのパネル6)、サイクロフィリンB siRNA、またはTLR9 siRNA(図3Eのパネル7)を用いて培養した細胞には存在しないことを顕微鏡により認めた。同じ実験からの3つのウェルの1つにおいてTLR9タンパク質のサイレンシングをウェスタン・ブロット(図3Eのパネル1-4)により確認した後、残っている2つのウェル中のsiRNA処置A549細胞を、さらに72時間CpGDNAにより刺激して、形態学的変化についてモニターした。処置培地+トランスフェクション試薬中で培養したA549 細胞の形態は変化しないようであった(図3Eのパネル8)。図3Eのパネル9は、非標的siRNAは、細胞の広がりおよび伸張した紡錘形の細胞により示されるような、CpG媒介性EMT阻害に対して効果がないことを示す。この効果は、サイクロフィリンBsiRNAによりストレスを受けた細胞においても観察された。これに対して、TLR9siRNAにより処置されたA549細胞は、同様の形態学的変化を示さなかった(図3Eのパネル10)。これらの細胞は、ストレスを受けかつアポトーシス性のようにみえ、このことはTLR9の完全な排除により、CpG-DNAの存在下では肺胞上皮細胞において別の固有の免疫応答を駆動され得るということを示す可能性がある。CpGが、TLR9依存様式においてEMTを誘導することをさらに示すために、siRNAおよびCpG処理済み培養A549細胞からRNAを単離し、EMTマーカーの遺伝子発現を測定した。図3Eのパネル11および12は、siRNAによるTLR9サイレンシングは、ビメンチン発現のCpG-媒介性誘導およびE-カドヘリン発現の下流調節を各々阻害するということを示す。
【0222】
実施例4. 急速な進行性のIPFにおいて増加されるTLR9発現およびCpG-ODNに対する応答
早期な疾患進行を示す患者から得た外科的肺生体組織検査からの代表的な肺の維芽細胞を、イン・ビトロにて培地単独または線維化促進刺激剤であるIL-4の存在下において培養し、TLR9遺伝子転写産物の誘導を試験する。非メチル化CpG-ODNであるTLR9アゴニストによる線維芽細胞細胞系統204A(進行が急速な者)の刺激は、細胞系統100Aで観察された(進行が緩徐な者(図4b)その応答と比べてTLR9発現の増加をもたらした(図4a)。
【0223】
急速および緩徐な進行性の維芽細胞によるイン・ビトロ サイトカイン産生は、培養された細胞上清中で測定され、それらの応答性をIL-4の存在または非存在におけるCpG-ODNと比較した。タイプIインターフェロンは、有効なTLR9シグナル伝達の際に細胞により分泌されるので、IFN-αタンパク質レベルを、培養した線維芽細胞細胞系からの上清中において測定した(Osawa, Y., et al. (2006) J Immunol 177:4841-4852)。急速な進行性の細胞系統204A(図4c)は、IL-4の存在においてCpGで刺激した場合に、緩徐な進行性の系統100A(図4d)と比較してIFN-α産生の増強を示す。この所見は、CpG-ODNおよびIL-4の双方の204Aの存在による増大したTLR9の発現と一致している(図4a)。急速な進行性の細胞系統204Aはまた、CpG-ODNおよびIL-4の双方で刺激した場合に、線維化促進性サイトカインPDGF(図4e)、MCP-I/CCL2 (図4g)、およびMCP-3/CCL3 (図2h)の分泌の増加を示す。これは、緩徐に進行する系統100Aで観察される応答とは反対であり、IL-4の存在においてCpGによる線維化促進性サイトカインの産生に匹敵する効果を示さない(図2f、2h、および2j)。考え併せると、これらのデータは、急速および緩徐に進行するIPF肺由来の肺の維芽細胞間でTLR9の示差的発現パターンおよびCpGに対する応答を示す。
【0224】
実施例5. 急速な進行性のヒトIPF線維芽細胞はIPFのヒト化SCIDモデルにおける増加した線維芽形成性(線維形成性)を示す
以前に記載したヒト化SCIDマウスモデルを使用して、イン・ビボで進行が急速対緩徐な者からのヒト肺の維芽細胞の線維形成の可能性を試験した(Pierce, E.M., et al. (2007) Am J Pathol 170, 1152-1164)。進行が急速または緩徐な者由来の培養された代表的な肺の維芽細胞を、予めイン・ビトロにて分析し(図4)、C.B.17SCID/bgマウスに静脈的に移入した。移入後35日目に、マウスを、50 μg CpG-ODNまたは生理食塩水を用いて経鼻投与により攻撃し、線維症を移入後63日目に評価した(図5A)。肺の組織病理は、正常な肺の維芽細胞を受容したC.B.17SCID/bg マウスにおいて観察されなかった(図5Bのパネル1)。さらに、この効果は、35日目にCpGにより攻撃された場合に、これらのマウスにおいては観察されなかった(図5Bのパネル2)。移入後63日目のトリクローム染色によるマウス肺の組織学的評価から、急速な進行性のヒトUIP/IPF維芽細胞の移入が、重度の間質性肥厚および再構成と関連のあるコラーゲン沈着および明らかな肺胞腔の剪断を示したことが判った(図5Bのパネル3)。さらに、35日目にCpG攻撃を受容したそれらの肺において、線維症が著しく増大した(図5Bのパネル4)。これは、安定なヒトUIP/IPF維芽細胞およびCpG攻撃を受容したマウスの肺において観察される線維症の程度とは著しく異なる。図5Bは、安定なUIP/IPFヒト肺の維芽細胞は、移入後63日目に評価した場合、CpG刺激により増強されない(パネル6)マウス肺において穏やかな線維化応答をもたらす(パネル5)ことを示す。ヒドロキシプロリンは、線維症の実験モデルにおいてデ・ノボでのコラーゲン合成の一般的に使用されるマーカーである。この試験において、35日目に進行が急速な者由来のUIP/IPFヒト維芽細胞を受容し、35日目に生理食塩水またはCpGにより攻撃したC.B.17SCID/bg マウス由来の半分の肺サンプルにおけるヒドロキシプロリンレベルを測定した。図5Cパネルに示したとおり、CpG攻撃は、急速な進行性のUIP/IPF患者由来の維芽細胞を移植したマウス肺中でのみ有意にヒドロキシプロリン含量を増加させ、急速な進行性のUIP/IPF線維芽細胞により養子導入されたマウス由来の胚において増加したコラーゲン沈着の組織学的評価と相関している。さらに、図5Cのパネル2から、図5Bにおける組織構造を確認した(パネル5および6:CpG攻撃は、緩徐な進行性のUIP/IPF患者由来の維芽細胞を移植したマウス肺におけるヒドロキシプロリン含量を増加させない。
【0225】
考察
特発性肺線維症(IPF)は、高い死亡率および未解決の臨床的必要性の慢性の一般的な進行性の肺疾患である。内在している線維芽細胞の増殖に加えて、これらの細胞もまた、他の細胞源、例えば、骨-骨髄-誘導性の線維芽細胞および上皮細胞から生じることが明らかになりつつある(Laurent, G.J., et al. (2005) Proc Am Thorac Soc 5:311-315)。いくつかのグループは、線維芽細胞が、ケモカイン依存性のメカニズムにより損傷した組織に入り、コラーゲンを産生する筋維芽細胞に成長することを示す(Mehrad, B., et al. (2007) Biochem Biophys Res Commun 353:104-108; Ishida, V., et al. Am J Pathol 170:843-854; Moore, B.B., et al. (2006) Am J Respir Cell Mol Biol 35:175-181; Kisseleva, T., et al. (2006) J Hepatol 45:429-438)。さらに、他のグループは、上皮構造は、上皮間葉転換(EMT)を介して筋維芽細胞へと分化することを示す(Iwano, M., et al. (2002) J Clin Invest 110:341-350; Kim, K.K., et al. (2006) Proc Natl Acad Sci USA 103:13180-13185; Rygiel, K.A., et al. (2008) Lab Invest 88:112-123; Zeisberg,M., et al. (2007) J Biol Chem 282:23337-23347)。これらの提案された線維化疾患の病原についてのメカニズムは、全ての組織、例えば、腎臓、肝臓、皮膚、および肺において共通している。この関連経路のさらなる研究は、線維化疾患、例えばIPFの様々な形態を有する患者の処置を改善することができる。
【0226】
いくつかの仮定が、IPF疾患進行の病因について提案されているが、依然として合意には達していない。抗炎症性薬剤などの治療剤は、頻繁に線維症を処置するために使用されるが、かかる処置は望ましくない副作用効果を示し得る。さらに、線維化障害についての完全な効果的処置または治癒は現在のところ存在しない。
【0227】
IPF患者における該疾患の経過は、長期間疾患の安定を示す数人の患者おいて大きく変動するが、その他の患者は急速な疾患進行を示すことが徐々に明白となった(Martinez, F.J., et al. (2005) Ann Intern Med 142:963-967)。数人のIPF患者は、生理学的低下を示すが、他の患者はIPF(AE-IPF)の急性増悪を経験する(Hyzy, R., et al. (2007) Chest 132, 1652-1658)。それ自体、IPF患者における疾患進行は、生理学的進行、AE-IPFおよび/または全死因死亡率を含む複合的アプローチを用いて規定されている。該病原、疾患進行の病因、リスク因子の理解を目的とした厳格な研究は、正確な処置、IPFの予後およびIPFの予測因子のためには必要である。疾患進行における変動の実用的意義が、近年報告された2つのピルフェニドン治験のこの一致しない結果により注目されている(Noble, P., et al. (2009) Am. J. Respir Crit Care Med. 179:Al129)。双方の研究において、ピルフェニドン処置群は、経過期間中に現行(in forced)予測された肺活量%(-6.49%)と類似の低下を示したが、プラセボ群は、ある試験において9.55%まで低下し、他の試験では7.23%低下した。この相違は、主要な分析とは大きく異なる結果をもたらした(1つにはp=0.001および2つにはp=0.501)。多くの現行処置として、この研究は、初期評価の期間の疾患経過を規定するおおよそ1年間の結果が非常に実用的な値を示すことを力説する。
【0228】
AE-IPFは、依然としてあまり理解されておらず、該疾患のこの加速する段階を呈する患者の死亡率は、数週間から数ヶ月の間に死に直面する。IPFのAE罹患患者に由来する血清およびBALの組織学的研究はなく、それ自体、AE-IPFの病原に関する進行中の分子学的調査は存在しない。AE-IPFの原因は未知ではあるが、ある1つの可能性についての説明が、IPF患者の肺のEBVの検出により浮上してきた(Tsukamoto, K., et al. (2000) Thorax;Stewart, J.P., et al. (1999) Am J Respir Crit Care Med 159:1336-1341;Tang, Y.W., et al. (2003) J Clin Microbiol 41:633-2640):ウイルスまたは細菌感染症に対する固有の免疫応答は、進行中の線維化応答を増強し得る。本試験は、IPFにおいて急速な進行を駆動させるために、該TLR9、即ち病原認識レセプターの過剰発現に強く関与している。この試験において、この目的は、TLR9がCpGDNAのその認識により線維化過程を促進させるという作用メカニズムを同定することであった。
【0229】
本明細書に記載のとおり、急速な進行性のIPF患者由来の外科的肺生体組織検査は、安定なIPF患者由来のものと比較して、TLR9遺伝子の転写産物の発現の上昇したレベルを臨床的に示す。これらの患者に由来する臨床的データは、TLR9発現がIPFの急速または緩徐な進行性の表現型と関連することを本明細書において表している。急速な臨床的進行を経験するこれらの患者は、人口学的特性、生理学異常、半定量放射線異常、および病理異常に関して、経過期間の一年にわたり比較的安定な患者と類似していた。当然のことながら、急速な進行を示す患者は、相対的に安定な患者と比較して全生存不良を示した。このように、該データは、TLR9はIPF疾患進行の指標であることを示す。近年、アネキシンIは、AE-IPFに罹患する患者中に存在する新規の自己抗原として同定された。しかしながら、これらの患者が、急速な進行性の疾患の堅固なさらなる評価基準を持っているかどうかには対処されていなかった(Kurosu, K., et al. (2008) J Immunol 181:756-767)。驚くべきことに、この試験は、炎症性浸潤物(主要なリンパ球、好中球、および好酸球)が、これらの急性の炎症性細胞の検出不能な量を示した安定なIPF患者由来のものと比較して、AE-IPFの気管支肺胞洗浄において上昇したということを報告した。好中球エラスターゼ、ムチンタンパク質KL-6、ST2タンパク質、IL-8、およびαデフェンシンの上昇もまた、数人のAE患者において以前に報告されており、活性化されたT細胞および好中球についての役割を示唆している(Mukae、H., at al. (2002) Thorax 57:623-62; Tajima, S., et al. (2003) Chest 124:1206-1214; Ziegenhagen,M.W. ,et al. (1998) Am J Respir Crit Care Med 157:762-768; Akira,M., et al. (1999) J Comput Assist Tomogr 23:941 -948; Yokoyama,A.,et al. (1998) Am J Respir Crit Care Med 158:1680-1684)。しかし、これらのマーカーの血清レベルは、予後の一貫した予測因子を証明するものではなかった(Shinoda, H., et al. (2009) Respiration)。
【0230】
TLR9がIPFにおける病原センサーおよび線維化促進因子双方として機能し得ることによるメカニズムを詳細に分析するために、健康なドナー由来の末梢血単球を用いて研究を行った。近年の報告から、循環性の線維芽細胞(CD45+-ColI+として規定された)は、AE-IPFの事象期間に評価したIPF患者における末梢血白血球の15%の平均まで増加することが確認された(Moeller, A., et al. (2009) Am J Respir Crit Care Med)。現行試験は、線維芽細胞の試験を、CpG DNAの病原センサーとしてそれらを同定するために行う。急性増悪の最中のIPF患者由来の血液単球を入手する方法はないため、線維症の関係においてナイーブ血液単球を利用して、CpGのアゴニストの可能性を調査する。以前の研究では、骨髄派生細胞(線維芽細胞)が、創傷部位に動員することにより、そして線維化疾患における筋維芽細胞の寄与源として機能することにより創傷修復を促進することが示された。線維芽細胞が単球から生じるかどうかは、依然として論争中であるが、TGFはCD14-/コラーゲン-1線維芽細胞へのイン・ビトロでCD14+単球の分化を誘導するということが示されている。培養された肺の維芽細胞においてCpGが筋線維芽細胞の分化を誘導するということは以前に示されている(Meneghin, A., et al. (2008) Histochem Cell Biol 130:979-992)。さらに、初期の研究は、CD14+単球が有意なレベルのTLR9遺伝子転写物を発現することを示しており、これは線維芽細胞において、TLR9ではなくTLR7の発現を示したBalmelliらによる以前の報告とは異なる(Balrnelli、C.、et al. (2007) Immunobiology 212:693-699)。現在の試験において、CpGもまたCD14+単球の線維芽細胞への分化を誘導し得るというこの仮説を試験した。本明細書に提示したデータは、CpG処置が、線維芽細胞マーカー(紡錘形の形態、CD45、コラーゲン1、およびα-sma発現)およびCD14両方を所有するハイブリッド単球表現型をもたらすことを示す。また、細胞サイズの増加およびコラーゲンについての免疫染色の増加により示されるように、CpGはTGF分化を増強することが本明細書において示される。これらのデータから、単球が、線維化促進様式にてCpGに応答できること、および肺における筋線維芽細胞集団に関与する別々の細胞源を表し得ることが確認された。
【0231】
これらの結果に一致して、本明細書において、A549ヒト肺胞上皮細胞系統におけるCpG媒介性の分化は、筋線維芽細胞の表現型と相関することを示した。A549細胞が機能的に活性なTLR9を発現すること、およびCpGが腫瘍進行を促進し得る抗アポトーシス効果を誘導することが以前に示されている(Droemann, D., et al. (2005) Respir Res 6:1)。サイトカインの分泌を本明細書においてA549細胞中では測定しなかったが、CpGへの応答におけるMCP-1/CCL2の産生は免疫細胞の誘引(attraction)をもたらし得る(Droemann, D., et al. (2005) Respir Res 6:1)。本明細書において報告されたCpGの効果は、形質転換された癌細胞系統に由来するものであり、IPF患者由来の原発性の肺胞上皮細胞においてではないが、このデータは、IPF肺由来の肺胞上皮細胞が、IPF肺における上皮細胞損傷、過形成、およびEMTを駆動させることを示したWnt/カテニンシグナル伝達の増強により明らかなように、正常な肺胞上皮細胞に劣ることを示す(Konigshoff, M., et al. (2008) PLoS ONE 3:e2142; Kim, K.K., et al. (2009) J Clin Invest 119:213-224)。実際に、これらのデータから、CpG-DNAは、EMTを促進する肺胞上皮細胞上で発現したTLR9により認識され、AE-IPFの病原についての候補メカニズムであるということを結論づけることができる。
【0232】
外科的肺生体組織検査から、IPF患者由来の肺の維芽細胞を培養することは、IPFのヒト化マウスモデルを確立するための助けとなる(Pierce, E.M., et al. (2007) Am J Pathol 170、1152-1164)。この試験において、このモデルを、進行性のIPFにおけるTLR9活性化の役割を調査するために拡大適用した。急速な進行性の経過を経験している患者由来の肺の維芽細胞が、SCIDモデルにおいてCpG DNA攻撃に対する過剰応答を示すということが決定された。急速な進行性のIPF維芽細胞を移植されたマウスに経鼻投与により投与したCpG DNAの単回のボーラスは、正常なまたは安定なIPF線維芽細胞を移植したたものと比較して、マウスの肺において肺線維化応答を増大させた。イン・ビトロの研究は、CpG刺激が急速な進行性の線維芽細胞由来の線維化促進性サイトカインの産生を増大させるということを示した同じIPF線維芽細胞細胞系を用いて行った。それ故に、このSCIDモデルにおいて、CpGは、マウス肺においてヒト線維化促進性サイトカインの産生を誘導し、線維症を増加させるヒト維芽細胞由来の自己分泌応答を促進する。これらのデータは、維芽細胞におけるTLR9によるCpG認識は、細菌またはウイルスの構成成分が進行性のIPFの間に繊維形成を増強するメカニズムのもう1つの要素であることを示す。
【0233】
TLR9は、近年他の繊維化疾患の実験モデルに関与している。実験用肝臓線維症においてTLR9の役割を調査する試験から、TLR9欠損マウスは、肝臓線維症の進行において細菌DNAおよびTLR9についての病理学的役割を示す肝臓線維症の胆管結紮(BDL)モデルにおける保護的な線維化効果を示すということが提示された(Gabele, E., et al. (2008) Biochem Biophys Res Commun 376:271-276)。尋常性狼瘡腎炎についてのマウスモデルを用いる別々の試験において、MRLlpr/lprマウスの間質性線維芽細胞増殖量により検討して、CpG-ODNは腎臓の線維症を増大させることを示した(Anders, H.J., et al. (2004) FASEB J 18:534-536)。さらに、異常な細胞活性化および増殖をもたらす癌などの他の疾患は、感染性増悪に対して感受性である。CpGは、TLR9媒介性メカニズムにおける乳癌上皮細胞ならびに前立腺細胞中の細胞浸潤を促進する(Ilvesaro, J.M., et al. (2008) Mol Cancer Res 6:1534-1543; Ilvesaro, J.M.、et al. (2007) Prostate 67:774-781; Merrell, M.A., et al. (2006) Mol Cancer Res 4:437-447)。肝細胞癌と関連のある慢性肝炎C型ウイルス(HCV)感染は、感染肝細胞においてEMTを誘導し、細胞浸潤および転移を促進することが近年示されている(Battaglia, S., et al. (2009) PLoS ONE 4:e4355)。今回の試験において、肺胞上皮細胞が細菌またはウイルス成分に同じ様式にて応答するかどうかを試験した。
【0234】
IPF肺の維芽細胞から取得したイン・ビトロおよびイン・ビボのデータと組合せた本明細書に記載の実験に利用した臨床的評価は、肺胞区分におけるTLR9発現が、急速な進行性のIPFの指標となることを意味する。免疫細胞上のTLR9の発現は、病原性刺激因子に暴露されたIPF患者においておこる過度の創傷治癒応答に関与することを本明細書に示す。即ち、常套の診断試験からの外科的肺生体組織生検におけるTLR9発現の測定は、IPF患者が急性増悪および急速に進行する表現型の顕在に感受性があるかどうかを決定するための予測ツールとなり得る。血清および腹水液中の細菌DNAの存在は、現在、肝硬変患者における予後不良の指標として積極的に試験されている(Zapater, P., et al. (2008) Hepatology 48:1924-1931; El-Naggar, M.M., et al. (2008) J Med Microbiol 57:1533-1538)。TLR9はこれらの研究において評価されなかったが、それらは、IPF患者由来の血清およびBAL中の非メチル化CpGならびにIPF患者における肺生体組織検査におけるTLR9発現の測定に対する論理的根拠を提供する。さらに、今回の試験は、特異的TLR9アンタゴニストの治療の設計を調査するための推進力を提供する。この追加の診断パラメーターは、リスクを同定でき、IPF患者の処置プロトコールを改善し、急性増悪に対する感受性を最小にするための予防方法として役立ち得る。
【0235】
実施例6.IPFを有する対象から得た原発性線維芽細胞培養物を、急速な進行性のIPFを予測するために使用できる。
経気気管支生体組織(おおよそ20 mgの組織)を、IPFを有すると診断された対象から単離し、培養した。各々の原発性線維芽細胞系統由来の2つの培養物を、TGFβまたはCpGのいずれかにより処理した。結果は、臨床的疾患進行に関わらず、全ての線維芽細胞培養物はTGFβに対して応答するが、進行が急速な者由来の維芽細胞のみがCpGに応答するということを示した。
【0236】
等価物
当業者は慣用の実験、本明細書に記載されている特定の実施態様に関する多くの等価なもののみを使用して確認するか、または確かめることができる。かかる等価なものは本発明の範囲および特許請求の範囲内であると意図される。独立項に開示した実施形態の何れかの組合せは本明細書の範囲に含まれると意図する。
【図1−1】


【図1−2】

【図1−3】

【図2−1】

【図2−2】

【図2−3】

【図2−4】

【図2−5】

【図3−1】



【図3−2】

【図3−3】

【図4−1】

【図4−2】

【図5−1】

【図5−2】

【図5−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維症を有する対象における線維症の進行を予測するための方法であって、
以下の工程を含む方法:
該対象由来のサンプル中のToll様レセプター9(TLR9)の発現レベルを決定する工程、
および
該対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルをコントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較する工程;
ここで、該コントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較して、該対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルの増加が、該線維症が急速に進行するという指標であり、かくして線維症を有する該対象における線維症の進行を予測する。
【請求項2】
線維症を有する対象における線維症の進行を遅延させ得る化合物を同定するための方法であって、以下の工程を含む方法:
該対象由来のサンプルのアリコートを、化合物のライブラリーの各メンバーと、別々に接触させる工程、
該アリコート各々におけるToll様レセプター9(TLR9)の発現レベルに対する化合物のライブラリーのメンバーの効果を決定する工程、および
コントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較して、アリコートにおけるTLR9の発現レベルを低下させる化合物のライブラリーのメンバーを選択し、かくして線維症を有する対象における線維症の進行を遅延させ得る化合物を同定する工程。
【請求項3】
線維症を有する対象における線維症の進行を低下させる際の治療の有効性をモニターする方法であって、以下の工程を含む方法:
該対象に治療の投与前および少なくとも一部分の投与後の該対象由来のサンプル中のToll様レセプター9(TL9R)の発現レベルを決定する工程、および
該治療の投与前の対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルを、該治療の少なくとも一部分の投与後の該対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルと比較する工程;
ここで、該治療の投与前のサンプル中のTLR9の発現レベルと比較して、該治療の少なくとも一部の投与後のサンプル中のTLR9の発現レベルの低下が、該対象が該治療に応答するという指標であり、かくして線維症を有する該対象における線維症の進行を低下させる際の治療の有効性をモニターする。
【請求項4】
線維症の処置のための臨床試験における候補者として対象を選択する方法であって、以下の工程を含む方法:
線維症を有する該対象由来のサンプル中のToll様レセプター9(TLR9)の発現レベルを決定する工程、および
該対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルをコントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較する工程;
ここで、コントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較して、該対象由来のサンプル中の高いTLR9の発現レベルが、該対象が臨床試験に参加すべきであるという指標であり、かくして線維症の処置のための臨床試験における候補者として対象を選択する。
【請求項5】
該線維症が、特発性肺線維症、肝臓移植後の肝臓線維症、慢性肝炎C型ウイルス感染後の肝臓線維症、および巣状分節状糸球体硬化症における間質性線維症からなる群から選択される、請求項1-4いずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該線維症が、膵臓および肺の嚢胞性線維症、注射線維症、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、腹膜後方線維症、進行性の重度の線維症、腎性全身線維症からなる群から選択される、請求項1-4いずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
該線維症が人工臓器の外科的移植により生じる、請求項1-4いずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該対象由来のサンプル中の非メチル化CpGの存在または非存在を決定することをさらに含んでいる、請求項1-4いずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
該対象由来のサンプル中のγヘルペスウイルスの存在または非存在を決定することをさらに含んでいる、請求項1-4いずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
該サンプル中の追加マーカーの発現レベルを決定することさらに含み、該追加マーカーが、アネキシン1、α平滑筋アクチン、好中球エラスターゼ、KL-6、ST2、IL-8、αデフェンシン、β3-エンドネキシン、セリンプロテアーゼ阻害剤、Kazalタイプ、プラスミノーゲン活性化剤阻害剤-1、HPS3、Rab38、Smad6、ADAMTS7、CXCR6、Bcl2-L-10、およびMMP-9からなる群から選択される、請求項1-4いずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
該サンプル中のTLR9の発現レベルが、該サンプル中のTLR9遺伝子の転写されたポリヌクレオチドまたはその一部の存在を検出することによりに決定される、請求項1-4いずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
該検出工程がcDNAを検出する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該検出工程が、転写されたポリヌクレオチドを増幅することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
該サンプル中のTLR9の発現レベルが、該サンプル中のTLR9タンパク質の存在を検出することにより決定される、請求項1-4いずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
該タンパク質の存在が、該タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを用いて検出される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該サンプル中のTLR9の発現レベルが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、定量的逆転写酵素PCR分析、ノーザン・ブロット分析、ウェスタン・ブロット分析、免疫組織化学、ELISAアッセイ、アレイ分析、およびそれらの組合せまたはそれらの下位の組合せからなる群から選択される技術を用いて決定される、請求項1-4いずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
該サンプルが、該対象から得られた液体を含む、請求項1-4いずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
該液体が、気管支喘息洗浄により収集した液体、血液、嘔吐物、関節内液体、唾液、リンパ液、胆嚢液、尿、腹膜洗浄により収集した液体、および婦人科系の体液からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該サンプルが、気管支喘息洗浄により収集した液体である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
該サンプルが、該対象から得られた組織、またはその成分を含む、請求項1-4いずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
該組織が、肺、結合組織、軟骨、肺、肝臓、腎臓、筋肉組織、心臓、膵臓、骨、および皮膚からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
該組織が、肺、またはその成分である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
該対象がヒトである、請求項1-4いずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
線維症を有する対象における線維症の進行を予測するためのキットであって、
Toll様レセプター9(TLR9)の発現レベルを決定するための手段、および
線維症を有する対象における線維症の進行を予測するためのキットを使用するための指示書を含んでいる、キット。
【請求項25】
対象由来の生物学的サンプルを得るための手段をさらに含んでいる、請求項24記載のキット。
【請求項26】
コントロールサンプルをさらに含んでいる、請求項24記載のキット。
【請求項27】
非メチル化CpGの存在または非存在を決定するための手段をさらに含んでいる、請求項24記載のキット。
【請求項28】
γヘルペスウイルスの存在または非存在を決定するための手段をさらに含んでいる、請求項24記載のキット。
【請求項29】
アネキシン1、α平滑筋アクチン、好中球エラスターゼ、KL-6、ST2、IL-8、α デフェンシン、β3-エンドネキシン、セリンプロテアーゼ阻害剤、Kazalタイプ、プラスミノーゲン活性化剤阻害剤-1、HPS3、Rab38、Smad6、ADAMTS7、CXCR6、Bcl2-L-10、およびMMP-9からなる群から選択される追加マーカーの発現レベルを決定するための手段をさらに含んでいる、請求項24記載のキット。
【請求項30】
細胞における線維症の進行を阻害する方法であって、
該細胞を有効量のToll様レセプター9(TLR9)アンタゴニストと接触させること、かくして該細胞における線維症の進行を阻害することを含む、方法。
【請求項31】
該細胞が、肺細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、心臓細胞、筋骨格細胞、皮膚細胞、眼細胞、および脾臓細胞からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
対象における線維症の進行を阻害する方法であって、
有効量のToll様レセプター9(TLR9)アンタゴニストを該対象に投与すること、かくして該対象における線維症の進行を阻害することを含む、方法。
【請求項33】
該線維症が、特発性肺線維症、肝臓移植後の肝臓線維症、慢性肝炎C型ウイルス感染後の肝臓線維症、および巣状分節状糸球体硬化症における間質性線維症からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
該線維症が、膵臓および肺の嚢胞性線維症、注射線維症、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、腹膜後方線維症、進行性の重度の線維症、腎性全身線維症からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
該線維症が人工臓器の外科的移植により生じる、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
該対象に追加の治療剤を投与することをさらに含んでいる、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
該対象がヒトである、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
該アンタゴニストが、該対象へ静注、筋肉注射、または皮下投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
該TLR9アンタゴニストが、抗体、低分子、核酸、融合タンパク質、アドネクチン、アプタマー、アンチカリン、リポカリン、およびTLR9から得たペプチド様化合物からなる群から選択される、請求項30または32の方法。
【請求項40】
該抗体が、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、およびキメラ抗体からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
該抗体が、Fab、Fab'2、ScFv、SMIP、アフィボディ、アビマー、バーサボディ、ナノボディ、およびドメイン抗体からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
該核酸が、RNA干渉剤およびリボザイムからなる群から選択されるアンチセンス分子である、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
対象における線維症の進行を阻害するためにToll様レセプター9(TLR9)アンタゴニストの効力をモニターする方法であって、
TLR9アンタゴニストを投与されている対象由来のサンプル中のToll様レセプター9(TLR9)の発現レベルを決定すること、および
該対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルを、コントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較すること;
ここでコントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較して、該対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルの増加は、TLR9アンタゴニストが、該対象における線維症の進行を阻害するのに有効でないという指標であって、そしてコントロールサンプル中のTLR9の発現レベルと比較して、該対象由来のサンプル中のTLR9の発現レベルの低下は、TLR9アンタゴニストが該対象における線維症の進行を阻害するのに有効であるという指標である、
を含む方法。

【公表番号】特表2013−509869(P2013−509869A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537396(P2012−537396)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066786
【国際公開番号】WO2011/054893
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【出願人】(506277410)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (19)
【Fターム(参考)】