説明

締付け固定具

【課題】 締付け体と締付け操作部とによる締付け固定時における長尺体の変形を抑制する。
【解決手段】 長尺体2又は集束された複数本の長尺体束Aに外装可能な締付け体3とそれを締付け側に操作する締付け操作部4とで長尺体2又は長尺体束Aを被取付け面1aに締付け固定するように構成し、前記長尺体2又は長尺体束Aの周りに環状に配置される複数個の押え体5の各々に、それに対面する長尺体2の外周面に当て付け可能な弧状又は略弧状の押え面5aを形成するとともに、前記締付け体3には、前記締付け操作部4の締付け操作に連れて締付け体3と長尺体2又は長尺体束Aの外面との間に配置される押え体5の外面に対して外方から押圧する押圧部3Aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電設備やトンネルなどの壁面や天井面等に固定された取付け基材等の被取付け面に、電線管やケーブル等の長尺物を一本又は複数本単位で締付け固定する締付け固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の締付け固定具としては、特許文献1,2に示すように、取付け基材の被取付け面に形成された被係合部に対して係脱自在な係止部を下端側に備えた板状の左右一対の押え部材と、両押え部材の上端部同士を締付け側に相対近接移動させるボルト・ナットとを用いて、長尺体を取付け基材の被取付け面に締付け固定するクランプ方式と、特許文献3に示すように、長尺体の長手方向視でU字状又は略U字状に形成されたボルトとこれの両端に螺合されるナットを用いて、長尺体を取付け基材の被取付け面に締付け固定するU字状ボルト方式とが提案されている。
【0003】
前記クランプ方式の締付け固定具では、左右一対の押え部材の上端を上方に延出して、ボルト・ナットに対する連結片を形成するとともに、前記両押え部材のうち、長尺体の外面に沿って当て付けられる弧状押え部には、弾性変形可能な軟質合成樹脂製の保護カバーが外嵌装着されている。
【0004】
前記U字状ボルト方式の締付け固定具では、前記取付け基材の被取付け面と長尺体の下面との間に、長尺体の外面に沿う弧状の受け面を備えた受け台を設け、この受け台の左右両側部に、前記U字状ボルトの左右の軸部が入り込む凹部を形成するとともに、前記U字状ボルトの押え部及び前記受け台の弧状受け面には、弾性変形可能な軟質合成樹脂製の保護カバーが外嵌装着されている。
【0005】
【特許文献1】実開平2−134387号公報
【特許文献2】実開平7−1385号公報
【特許文献3】特許第2948804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記クランプ方式の締付け固定具による場合は、取付け基材の被取付け面に載置されている長尺体に対して、取付け基材の被係合部に係止された左右一対の押え部材を外装し、両押え部材の連結片同士にわたって設けたボルト・ナットの締め付け操作により、長尺体を取付け基材の被取付け面に締付け固定するのであるが、このとき、前記取付け基材の被取付け面と長尺体の外面との間に横断面視において押え部材の下半側に向かって開口する三角形状の空間が形成されているため、ボルト・ナットの締め付け操作に連れて長尺体が三角状空間側に入り込みながら歪に圧縮変形される不都合がある。
【0007】
また、前記U字状ボルト方式の締付け固定具では、取付け基材の被取付け面と長尺体の下面との間に、長尺体の外面に沿う弧状の受け面を備えた受け台を設けるものの、受け台と長尺体の外面との間にも、U字状ボルトの両軸部側に向かって開口する三角形状の空間が形成されているため、ナットの締め付け操作に連れて長尺体が三角状空間側に入り込みながら歪に圧縮変形される不都合がある。
【0008】
更に、前記U字状ボルト方式の締付け固定具では、二本の長尺体を取付け基材の被取付け面に締付け固定する場合、下層側の長尺体の外面に沿う弧状の第1受け面と上層側の長尺体の外面に沿う弧状の第2受け面とを備えた間隔規制具を用いるため、上層側の長尺体及び下層側の長尺体が共に三角状空間側に入り込みながら歪に圧縮変形される不都合があり、しかも、長尺体の隣接間に間隔規制具を介在させるために締付け固定具全体が大型化し易い。
【0009】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、締付け体と締付け操作部とによる締付け固定時における長尺体の歪な圧縮変形を抑制することのできる締付け固定具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による第1の特徴構成は、長尺体又は集束された複数本の長尺体束に外装可能な締付け体とそれを締付け側に操作する締付け操作部とで長尺体又は長尺体束を被取付け面に締付け固定する締付け固定具であって、
前記長尺体又は長尺体束の周りに環状又は略環状に配置される複数個の押え体の各々に、それに対面する長尺体の外面に当て付け可能な弧状又は略弧状の押え面を形成するとともに、前記締付け体には、前記締付け操作部の締付け操作に連れて締付け体と長尺体又は長尺体束との間に配置される前記押え体の外面に対して外方から押圧する押圧部を設けた点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、被取付け面に載置された一本の長尺体又は集束された複数本の長尺体束に対して、弧状又は略弧状の押え面を備えた複数個の押え体を、それの弧状押え面を対面する長尺体の外面に当て付けた状態で環状又は略環状に配置し、それらに外装される締付け体と締付け操作部との締付け操作によって長尺体又は長尺体束を被取付け面に締付け固定するから、環状又は略環状に配置された押え体と長尺体の外面又は長尺体束の外面との間に発生する空隙が少なくなり、締付け固定操作に伴う長尺体の歪な入り込み変形を抑制することができる。
【0012】
しかも、前記締付け体に設けた押圧部により、締付け操作部の締付け操作に連れて締付け体と長尺体又は長尺体束との間に配置される押え体の外面が外方から押圧され、かつ、被取付け面に接する底面側の押え体も反力を受けるので、各押え体の弧状押え面で長尺体の外面を極力均等に押圧することができ、長尺体の歪な変形を抑制することができる。
【0013】
従って、締付け体と締付け操作部とによる締付け固定時における長尺体の歪な圧縮変形を抑制することができる。
【0014】
本発明による第2の特徴構成は、長尺体に外装可能な締付け体とそれを締付け側に操作する締付け操作部とで長尺体を被取付け面に締付け固定する締付け固定具であって、
前記長尺体の外面周りに略三角環状形に配置される三個の押え体の各々に、長尺体の外面に当て付け可能な弧状又は略弧状の押え面を形成するとともに、前記締付け体には、前記締付け操作部の締付け操作に連れて締付け体と長尺体との間に配置される左右の押え体の外面における押え面形成相当箇所に対して外方から押圧する押圧部を設けた点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、被取付け面に載置された長尺体に対して、弧状又は略弧状の押え面を備えた三個の押え体を、それの弧状押え面を長尺体の外面に当て付けた状態で略三角環状形に配置し、その押え体に外装される締付け体と締付け操作部との締付け操作によって長尺体を被取付け面に締付け固定するから、略三角環状形に配置された押え体と長尺体との間に発生する空隙が少なくなり、締付け固定操作に伴う長尺体の歪な入り込み変形を抑制することができる。
しかも、前記締付け体に設けた押圧部により、前記締付け操作部の締付け操作に連れて締付け体と長尺体との間に配置される左右の押え体の外面における押え面形成相当箇所が外方から押圧され、かつ、被取付け面に接する底面側の押え体も反力を受けるので、各押え体の弧状押え面で長尺体の外面を極力均等に押圧することができ、長尺体の歪な変形を抑制することができる。
【0016】
従って、一本の長尺体を被取付け面に締付け固定する際、締付け体と締付け操作部とによる締付け固定操作に伴う長尺体の歪な圧縮変形を抑制することができる。
【0017】
本発明による第3の特徴構成は、横断面視略三角形状に集束された複数本の長尺体に外装可能な締付け体とそれを締付け側に操作する締付け操作部とで前記長尺体束を被取付け面に締付け固定する締付け固定具であって、
前記長尺体束の底面側及び左右の斜面側に沿って略三角環状形に配置可能な複数個の押え体に、それに対面する長尺体の外面に沿って当て付け可能な弧状又は略弧状の押え面を形成するとともに、前記締付け体には、該締付け体と長尺体束の斜面側との間に配置される左右の押え体の外面における押え面形成相当箇所に対して外方から押圧する押圧部を設けてある点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、被取付け面に載置された横断面視略三角形状に集束された複数本の長尺体に対して、弧状又は略弧状の押え面を備えた複数個の押え体を、それの弧状押え面を対面する長尺体の外面に当て付けた状態で略三角環状形に配置し、その押え体に外装される締付け体と締付け操作部との締付け操作によって長尺体束を被取付け面に締付け固定するから、略三角環状形に配置された押え体と長尺体束の外面との間に発生する空隙が少なくなり、締付け固定操作に伴う長尺体の歪な入り込み変形を抑制することができる。
【0019】
しかも、前記締付け体に設けた押圧部により、前記締付け操作部の締付け操作に連れて締付け体と長尺体束の斜面側との間に配置される左右の押え体の外面における押え面形成相当箇所が外方から押圧され、かつ、被取付け面に接する底面側の押え体も反力を受けるので、各押え体の弧状押え面で長尺体の外面を極力均等に押圧することができ、長尺体の歪な変形を抑制することができる。
【0020】
従って、複数本の長尺体を断面視略三角形状に集束した状態で締付け固定する場合でも、締付け体と締付け操作部とによる締付け固定操作に伴う長尺体の歪な圧縮変形を抑制することができる。
【0021】
本発明による第4の特徴構成は、前記各押え体の両端部に外方に突出する連結部が設けられ、前記各連結部には、前記締付け体が係合可能な係合部が形成されている点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、長尺体又は集束された複数本の長尺体束の周りに環状に配置される複数個の押え体に対して締付け体を外装する際、この締付け体を各押え体の両端部の連結部に形成されている係合部に係合させることにより、複数個の押え体の環状配置形態を維持することができるとともに、長尺体長手方向での各押え体のずれ動きも防止することができる。
【0023】
本発明による第5の特徴構成は、前記複数個の押え体が屈曲変形可能な連結体を介して連結されている点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、長尺体又は集束された複数本の長尺体束の周りに環状に配置される複数個の押え体を一単位として、この一単位の押え体を連結体にて連結しておくことにより、長尺体又は長尺体束に対する押え体の巻き付けや位置合わせ等の作業性を高めることができるとともに、押え体同士を連結する連結体が屈曲変形可能であるため、保管時や輸送時等においては展開した状態で積層することができ、締付け固定具の保管や輸送等をスペース面で有利に行うことができる。
【0025】
本発明による第6の特徴構成は、前記押え体の少なくとも弧状押え面を被覆する軟質樹脂皮膜が形成されている点にある。
【0026】
上記特徴構成によれば、前記押え体として剛性のある金属製のものを用いても、この押え体の弧状押え面に接するケーブル等の長尺体の損傷を抑制することができる。
【0027】
本発明による第7の特徴構成は、前記押え体の一端部に、隣接する両押え体の端部間に臨む長尺体の外面に沿って当て付け可能な弧状の補助押え片が設けられている点にある。
【0028】
上記特徴構成によれば、前記締付け操作部の締付け操作に連れて長尺体の一部が両押え体の隣接端部間に存在する空間に向かって歪に入り込み変形することを弧状の補助押え片によって抑制することができる。
【0029】
本発明による第8の特徴構成は、前記締付け体がU字状又は略U字状のボルトから構成され、前記締付け操作部が前記U字状ボルトの両端部に螺合されるナットから構成されている点にある。
【0030】
上記特徴構成によれば、前記締付け体及び締付け操作部としてU字状ボルト及びナットを用いるから、例えば、前記締付け体を、取付け基材の被取付け面に形成された被係合部に対して係脱自在な係止部を下端側に備えた左右一対の押え部材から構成するとともに、前記締付け操作部を、前記両押え部材の上端部同士を締付け側に相対近接移動させるボルト・ナットから構成する場合に比較して締付け固定操作の簡素化と構造の簡素化を図り易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
〔第1実施形態〕
図1〜図6は、風力発電設備やトンネルなどの壁面や天井面等に適宜固定手段で固定された取付け基材1の被取付け面1aに、長尺体の一例である可撓性のある電気ケーブル2を一本単位で締付け固定する締付け固定具を示し、前記取付け基材1の被取付け面1aに載置された一本の電気ケーブル2に対して外装可能な締付け体の一例であるU字状又は略U字状のボルト3と、このU字状ボルト3を締付け側に操作する締付け操作部の一例で、取付け基材1の取付け孔1bを貫通する前記U字状ボルト3の両雄ネジ部3Aに螺合されるナット4及びロックナット9と、前記電気ケーブル2の外周面(外面)とU字状ボルト3との間及び電気ケーブル2の外周面と取付け基材1の被取付け面1aとの間において、電気ケーブル2の外周面周りにケーブル軸線方向視(横断面視)において略三角環状形に配置される三個の金属製(ステンレス鋼等)の押え体5とを主要構成として備えている。
【0032】
前記各押え体5の中間部5Aを電気ケーブル2の外周面の周方向に沿って弧状に湾曲形成して、この弧状中間部5Aの内側面に、電気ケーブル2の外周面のうち、中心角が120度よりも少し小さな領域に沿って当て付け可能な弧状の押え面5aを形成するとともに、前記各押え体5の両端部5Bを電気ケーブル2の径方向外方に折り曲げ形成し、この折り曲げ端部5Bをもって、前記電気ケーブル2の外周面への当て付け時に隣接するもの同士が径方向に沿って相対向する連結部を構成し、更に、前記各連結部5Bには、電気ケーブル2に対して上方から外装されるU字状ボルト3が係合可能な係合部の一例である係合凹部6が形成されている。
【0033】
そして、前記電気ケーブル2の外周面周りに略三角環状形に配置される三個の押え体5に対してU字状ボルト3を外装する際、このU字状ボルト3を各押え体5の各連結部5Bに形成されている係合凹部6に係合させることにより、三個の押え体5の環状配置形態を維持することができるとともに、電気ケーブル2の軸線方向(長手方向)での各押え体5のずれ動きも防止することができる。
【0034】
前記各押え体5のうち、電気ケーブル2の外周面周りに配置したときに隣接する連結部5B同士、詳しくは、前記係合凹部6の幅方向一側脇に位置する連結片5bの同士を、押え体5の板厚よりも薄く、かつ、前記連結片5bの幅よりも細幅に形成された屈曲変形操作可能な金属製(ステンレス鋼等)の連結体7を介して連結されているとともに、前記押え体5及び連結体7の全体が耐熱塩化ビニール樹脂等の合成樹脂製の軟質樹脂皮膜8で被覆されている。
【0035】
そして、上述のように前記電気ケーブル2の外周面周りに略三角環状形に配置される三個の押え体5を一つの装着単位として、この一単位の押え体5を連結体7にて連結しておくことにより、電気ケーブル2に対する押え体5の巻き付けや位置合わせ等の作業性を高めることができるとともに、押え体5同士を連結する連結体7が屈曲変形可能であるため、締付け固定具の保管時や輸送時等においては水平方向に展開した偏平に近い状態で積層することができ、電気ケーブル2への装着作業性を高めながらも締付け固定具の保管や輸送等をスペース面で有利に行うことができる。
【0036】
前記U字状ボルト3のうち、電気ケーブル2の外周面とU字状ボルト3との間に傾斜姿勢で配置される左右の押え体5の弧状中間部5Aの外側面に接する両軸部3Bを接線方向に沿う直線状に形成して、この直線状軸部3Bを、前記両ナット4の締付け側への螺合操作に連れてU字状ボルト3と電気ケーブル2の外周面との間に配置される左右の押え体5の弧状中間部5Aの外面における頂部相当箇所、つまり、弧状中間部5Aの周方向中央位置に対して径方向外方から押圧する押圧部に構成してある。
【0037】
そして、前記取付け基材1の被取付け面1aに載置された電気ケーブル2に対して、弧状押え面5aを備えた三個の押え体5を、それの弧状押え面5aを電気ケーブル2の外周面に当て付けた状態で略三角環状形に配置し、それらの押え体5に外装されるU字状ボルト3と両ナット4との締付け操作によって電気ケーブル2を取付け基材1の被取付け面1aに締付け固定するから、略三角環状形に配置された押え体5と電気ケーブル2の外面との間に発生する空隙が少なくなり、締付け固定操作に伴う電気ケーブル2の歪な入り込み変形を抑制することができる。
【0038】
しかも、前記U字状ボルト3に設けた押圧部3Bにより、前記ナット4の締付け操作に連れてU字状ボルト3と電気ケーブル2の外周面との間に配置される左右の押え体5の弧状中間部5Aの外面における頂部相当箇所が径方向外方から押圧され、かつ、取付け基材1の被取付け面1aに接する底面側の押え体5の弧状中間部5Aの外面における頂部相当箇所も径方向の反力を受けるので、各押え体5の弧状押え面5aで電気ケーブル2の外周面の略全域を極力均等に押圧することができ、電気ケーブル2の歪な圧縮変形を抑制することができる。
【0039】
〔第2実施形態〕
図7〜図12は、風力発電設備やトンネルなどの壁面や天井面等に適宜固定手段で固定された取付け基材1の被取付け面1aに、長尺体の一例である可撓性のある電気ケーブル2を三本単位で締付け固定する締付け固定具を示し、前記取付け基材1の被取付け面1aに横断面視略三角形状に集束された状態で載置された三本一組の電気ケーブル束Aに対して外装可能な締付け体の一例であるU字状又は略U字状のボルト3と、このU字状ボルト3を締付け側に操作する締付け操作部の一例で、取付け基材1の取付け孔1bを貫通する前記U字状ボルト3の両雄ネジ部3Aに螺合されるナット4及びロックナット9と、前記電気ケーブル束Aの外面とU字状ボルト3との間及び電気ケーブル束Aの外面と取付け基材1の被取付け面1aとの間において、電気ケーブル束Aの周りにケーブル軸線方向視において略三角環状形に配置される三個の金属製(ステンレス鋼等)の押え体5とを主要構成として備えている。
【0040】
前記各押え体5の中間部で、かつ、三角形状に集束された電気ケーブル2と対面する二箇所5Aを夫々電気ケーブル2の外周面の周方向に沿って弧状に湾曲形成して、各弧状中間部5Aの内側面に、電気ケーブル2の外周面のうち、中心角が120度よりも少し小さな領域に沿って当て付け可能な弧状の押え面5aを形成するとともに、前記各押え体5の両端部5Bを電気ケーブル2の径方向外方に折り曲げ形成し、この折り曲げ端部5Bをもって、前記電気ケーブル束A周りへの環状配置時に隣接するもの同士が径方向に沿って相対向する連結部を構成し、更に、前記各連結部5Bには、電気ケーブル束Aに対して上方から外装されるU字状ボルト3が係合可能な係合部の一例である係合凹部6が形成されている。
【0041】
前記各押え体5のうち、電気ケーブル束Aの周りに環状配置したときに隣接する連結部5B同士、詳しくは、前記係合凹部6の幅方向一側脇に位置する連結片5bの同士は、押え体5の板厚よりも薄く、かつ、前記連結片5bの幅よりも細幅に形成された屈曲変形操作可能な金属製(ステンレス鋼等)の連結体7を介して一体的に連結されているとともに、前記押え体5及び連結体7の全体が耐熱塩化ビニール樹脂等の合成樹脂製の軟質樹脂皮膜8で被覆されている。
【0042】
前記U字状ボルト3のうち、電気ケーブル束Aの斜面側とU字状ボルト3との間に配置される左右の押え体5の両弧状中間部5Aの外面に接する軸部3Bを接線方向に沿う直線状に形成して、この直線状軸部3Bを、前記両ナット4の締付け側への螺合操作に連れてU字状ボルト3と電気ケーブル2の斜面側との間に配置される左右の押え体5の両弧状中間部5Aの外面における頂部相当箇所、つまり、両弧状中間部5Aの周方向中央位置に対して径方向外方から押圧する押圧部に構成してある。
【0043】
そして、前記取付け基材1の被取付け面1aに横断面視略三角形状に集束された状態で載置された電気ケーブル束Aに対して、二つの弧状押え面5aを備えた三個の押え体5を、それの両弧状押え面5aを電気ケーブル2の外周面に当て付けた状態で略三角環状形に配置し、それらの押え体5に外装されるU字状ボルト3と両ナット4との締付け操作によって電気ケーブル束Aを取付け基材1の被取付け面1aに締付け固定するから、略三角環状形に配置された押え体5と電気ケーブル束Aの外面との間に発生する空隙が少なくなり、締付け固定操作に伴う電気ケーブル2の歪な入り込み変形を抑制することができる。
【0044】
しかも、前記U字状ボルト3に設けた押圧部3Bにより、前記ナット4の締付け操作に連れてU字状ボルト3と電気ケーブル束Aの外面との間に配置される左右の押え体5の両弧状中間部5Aの外面における頂部相当箇所が径方向外方から押圧され、かつ、取付け基材1の被取付け面1aに接する底面側の押え体5の両弧状中間部5Aの外面における頂部相当箇所も径方向の反力を受けるので、各押え体5の弧状押え面5aで電気ケーブル2の外周面を極力均等に押圧することができ、集束された電気ケーブル2の歪な変形を抑制することができる。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0045】
〔第3実施形態〕
上述の第2実施形態において、図13〜図15に示すように、前記押え体5の一端側の連結部5Bには、前記両押え体5の隣接間に臨む電気ケーブル2の外周面に沿って当て付け可能な円弧状の補助押え片10が、前記係合凹部6よりも小なる幅で該係合凹部6内を通して延設されているとともに、この補助押え片10の補助押え面10aとこれに連なる弧状中間部5Aの弧状押え面5aとが電気ケーブル2の外周面に沿う一連の弧状面に形成されている。
【0046】
また、前記補助押え片10は、押え体5及び連結体7と一緒に耐熱塩化ビニール樹脂等の合成樹脂製の軟質樹脂皮膜8で被覆されている。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0047】
また、上述の第1実施形態において、上述の第3実施形態と同様に、前記押え体5の一端側の連結部5Bに、前記両押え体5の隣接間に臨む電気ケーブル2の外面に沿って当て付け可能な円弧状の補助押え片10を、前記係合凹部6よりも小なる幅で該係合凹部6内を通して延設してもよい。
【0048】
更に、上述の第3実施形態では、前記補助押え片10を押え体5の一方の連結部5Bの係合凹部6内を通して延設したが、前記押え体5の係合凹部6から外れた部位に前記補助押え片10を設けてもよく、更にまた、前記補助押え片10を押え体5とは別体に製作して、押え体5に後付けするように構成してもよい。
【0049】
〔第4実施形態〕
上述の第1・第2実施形態では、前記電気ケーブル2又は電気ケーブル束Aの周りに略三角環状形に配置される三個の押え体5を一つの装着単位として、この一装着単位の押え体5を連結体7にて連結するとともに、前記押え体5及び連結体7の全体を耐熱塩化ビニール樹脂等の合成樹脂製の軟質樹脂皮膜8で一体的に被覆したが、図16〜図19に示すように、前記一装着単位の押え体5を各別に製作するとともに、各押え体5に対して密着状態で着脱自在に外套装着される横断面略角Cの字状の軟質合成樹脂製の保護カバー11を設け、前記の一装着単位にあたる三つの保護カバー11を連結体12で一体形成して、この一体化された三つの保護カバー11及び連結体12をもって、前記一装着単位(複数)の押え体5を屈曲変形自在に連結する連結体7に構成してもよい。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0050】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の第2実施形態では、取付け基材1の被取付け面1aに、電気ケーブル等の可撓性の長尺体2を3本単位で締付け固定する締付け固定具について説明したが、2本又は4本以上の単位で長尺体2を締付け固定する締付け固定具についても本発明の技術を適用することができる。
また、2本の長尺体2を締付け固定する締付け固定具の場合では、長尺体2の外面と取付け基材1の被取付け面1aとの間に、2本の長尺体2の外周面に当て付け可能な二つの弧状押え面5aを備えた第1押え体5を配置し、前記長尺体2の外面とU字状ボルト3との間には、1本の長尺体2の外周面に当て付け可能な一つの弧状押え面5aを備えた左右の第2押え体5を配置することになる。
そのため、2本の長尺体2を集合して被取付け面1aに締付け固定する場合では、前記三個の押え体5は、長尺体束Aの周りにケーブル軸線方向視において略楕円環状形に配置されることになる。
また、この実施形態の場合、上述の第1実施形態及び第2実施形態では同一形状の押え体5を用いることができたが、形状の異なる第1押え体5と第2押え体5との二種類を準備する必要がある。
【0051】
(2)上述の各実施形態では、複数個の押え体5を屈曲変形可能な連結体7を介して一体的に連結したが、複数個の押え体5を屈曲自在に枢支連結してもよく、また、隣接する押え体5同士を脱着自在に係合連結してもよい。
【0052】
(3)上述の各実施形態では、前記締付け体3をU字状又は略U字状のボルトから構成し、前記締付け操作部4を前記U字状ボルト3の両端部の雄ネジ部3Aに螺合されるナットから構成したが、前記締付け体3を、取付け基材1の被取付け面1aに形成された被係合部に対して係脱自在な係止部を下端側に備えた板状の左右一対の押え部材から構成し、前記締付け操作部4を、前記両押え部材の上端部同士を締付け側に相対近接移動させるボルト・ナットから構成してもよい。
要するに、前記締付け体3としては、長尺体2又は集束された複数本の長尺体2に外装可能であり、前記締付け操作部4としは、締付け体3を締付け側に操作することのできるものであればよく、更に、前記締付け体3に、締付け操作部4の締付け操作に連れて締付け体3と長尺体2の外面又は長尺体束Aの外面との間に配置される左右の押え体5の外面に対して外方から押圧する押圧部3Bを設けてあればよい。
【0053】
(4)前記長尺体2又は集束された長尺体束Aの周りに環状又は略環状に配置される複数個の押え体5の押え面5aは、長尺体2の外周面の横断面形状又は長尺体束Aの横断面視での輪郭形状に沿って連続又は略連続する形状が望ましい。
【0054】
(5)上述の第1実施形態及び第2実施形態では、前記押え体5及び連結体7の全体を軟質樹脂皮膜8で被覆したが、前記押え体5だけを軟質樹脂皮膜8で被覆してもよく、また、前記押え体5の長尺体2に対面する側の片面又は弧状押え面5aのみを軟質樹脂皮膜8で被覆してもよい。
【0055】
(6)上述の第1実施形態及び第2実施形態では、前記連結部5Bに、電気ケーブル等の長尺体2に対して外装されるU字状ボルト3が係合可能な係合凹部6を形成したが、前記連結部5Bに、長尺体2に対して外装されるU字状ボルト3が係合可能な係合突起を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態を示す施工状態での締付け固定具全体の断面正面図
【図2】施工状態での締付け固定具全体の断面側面図
【図3】締付け固定具全体の展開状態での正面図
【図4】締付け固定具全体の展開状態での平面図
【図5】図4におけるV−V線断面図
【図6】締付け固定具全体の装着姿勢での一部切欠き正面図
【図7】本発明の第2実施形態を示す施工状態での締付け固定具全体の断面正面図
【図8】施工状態での締付け固定具全体の断面側面図
【図9】締付け固定具全体の展開状態での正面図
【図10】締付け固定具全体の展開状態での平面図
【図11】図10におけるXI−XI線断面図
【図12】締付け固定具全体の装着姿勢での一部切欠き正面図
【図13】本発明の第3実施形態を示す締付け固定具全体の展開状態での平面図
【図14】図13におけるXIV−XIV線断面図
【図15】施工状態での締付け固定具全体の断面正面図
【図16】本発明の第4実施形態を示す締付け固定具の押え体及び保護カバーの分解正面図
【図17】保護カバーの展開状態での平面図
【図18】(イ)、(ロ)は押え体の平面図と正面図
【図19】施工状態での締付け固定具全体の断面正面図
【符号の説明】
【0057】
A 長尺体束(電気ケーブル束)
1 取付け基材
1a 被取付け面
2 長尺体(電気ケーブル)
3 締付け体(U字状ボルト)
3B 押え部
4 締付け操作部(ナット)
5 押え体
5A 弧状中間部
5B 連結部
5a 押え面
6 係合部(係合凹部)
7 連結体
10 補助抑え片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺体又は集束された複数本の長尺体束に外装可能な締付け体とそれを締付け側に操作する締付け操作部とで長尺体又は長尺体束を被取付け面に締付け固定する締付け固定具であって、
前記長尺体又は長尺体束の周りに環状又は略環状に配置される複数個の押え体の各々に、それに対面する長尺体の外面に当て付け可能な弧状又は略弧状の押え面を形成するとともに、前記締付け体には、前記締付け操作部の締付け操作に連れて締付け体と長尺体又は長尺体束との間に配置される前記押え体の外面に対して外方から押圧する押圧部を設けてある締付け固定具。
【請求項2】
長尺体に外装可能な締付け体とそれを締付け側に操作する締付け操作部とで長尺体を被取付け面に締付け固定する締付け固定具であって、
前記長尺体の外面周りに略三角環状形に配置される三個の押え体の各々に、長尺体の外面に当て付け可能な弧状又は略弧状の押え面を形成するとともに、前記締付け体には、前記締付け操作部の締付け操作に連れて締付け体と長尺体との間に配置される左右の押え体の外面における押え面形成相当箇所に対して外方から押圧する押圧部を設けてある締付け固定具。
【請求項3】
横断面視略三角形状に集束された複数本の長尺体に外装可能な締付け体とそれを締付け側に操作する締付け操作部とで前記長尺体束を被取付け面に締付け固定する締付け固定具であって、
前記長尺体束の底面側及び左右の斜面側に沿って略三角環状形に配置可能な複数個の押え体に、それに対面する長尺体の外面に沿って当て付け可能な弧状又は略弧状の押え面を形成するとともに、前記締付け体には、該締付け体と長尺体束の斜面側との間に配置される左右の押え体の外面における押え面形成相当箇所に対して外方から押圧する押圧部を設けてある締付け固定具。
【請求項4】
前記各押え体の両端部には外方に突出する連結部が設けられ、前記各連結部には、前記締付け体が係合可能な係合部が形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の締付け固定具。
【請求項5】
前記複数個の押え体が屈曲変形可能な連結体を介して連結されている請求項4記載の締付け固定具。
【請求項6】
前記押え体の少なくとも弧状押え面を被覆する軟質樹脂皮膜が形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の締付け固定具。
【請求項7】
前記押え体の一端部には、隣接する両押え体の端部間に臨む長尺体の外面に沿って当て付け可能な弧状の補助押え片が設けられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の締付け固定具。
【請求項8】
前記締付け体がU字状又は略U字状のボルトであり、前記締付け操作部が前記U字状ボルトの両端部に螺合されるナットである請求項1〜7のいずれか1項に記載の締付け固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−292167(P2007−292167A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119396(P2006−119396)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(390013479)
【Fターム(参考)】