説明

繊維強化複合材料、繊維強化複合材料の成形方法、一対のプリプレグ及び一対のプリプレグ製造方法

【課題】繊維強化複合材料及び繊維強化複合材料の成形方法において、成形コストをより低減することである。
【解決手段】繊維束に樹脂を含浸した一方のプリプレグ28における端30と、繊維束に樹脂を含浸した他方のプリプレグ32における端34とを連結し、長尺プリプレグ40として成形される繊維強化複合材料であって、一方のプリプレグ28における端30と、他方のプリプレグ32における端34との連結部42は、一方のプリプレグ28における端30に、突起36が形成され、他方のプリプレグ32における端34に、一方のプリプレグ28における端30に形成された突起36を嵌め込む嵌め込み溝38が形成され、一方のプリプレグ28における端30に形成された突起36を、他方のプリプレグ32における端34に形成された嵌め込み溝38に嵌め込んで連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂複合材料、繊維強化複合材料の成形方法、一対のプリプレグ及び一対のプリプレグ製造方法に係り、特に、繊維束に樹脂を含浸した一方のプリプレグにおける端と、繊維束に樹脂を含浸した他方のプリプレグにおける端とを連結し、長尺プリプレグとして成形される繊維強化樹脂複合材料、繊維強化複合材料の成形方法、一対のプリプレグ及び一対のプリプレグ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮水素ガスや圧縮天然ガス(CNG)等を貯蔵する、例えば、車両用高圧タンク等の圧力容器には、軽量化のために、繊維強化複合材料が用いられている。繊維強化複合材料には、例えば、強化繊維としての炭素繊維等に、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂等を含浸させて成形した繊維強化複合材料が使用される。
【0003】
繊維強化複合材料の成形には、例えば、フィラメントワインディング(Filament Winding:FW)成形法等が用いられる。フィラメントワインディング成形法は、例えば、ボビン等から送り出された繊維束に樹脂を含浸させた後、樹脂含浸した繊維束をマンドレル等に連続して巻き付けることにより繊維強化複合材料を成形する成形方法である。
【0004】
ここで、高圧タンクのライナ等に繊維束を連続して巻き付けるために、ボビン等から送り出された成形中の繊維束の端は、ボビン等に巻かれた成形に用いられていない新しい繊維束の端と重ね合わせて接合され、長尺繊維束として送り出される。そして、成形中の繊維束の端と、新しい繊維束の端とは、例えば、接着剤等で接着して接合される。
【0005】
特許文献1には、強化プラスチック用ガラス繊維ロービングの連結方法において、ガラス繊維の一方のロービングの尾部と、他方のロービングの頭部とをそれぞれ所望の長さに引出し、両者を一束に引揃えた後、両者をその先端において、それぞれ2分岐し、かつ、一方のロービングの分岐条と他方のロービングの分岐条とをそれぞれ絡み合わせ、その片方の絡み合わせ糸条で輪を形成し、この輪に他方の絡み合わせ糸を挿通し、片方の絡み合わせ糸条と他方の絡み合わせ糸条とを再び一束に引き揃え、これを、さらに、他方のロービングの頭部により形成した輪に挿通したうえ結束することが示されている。
【0006】
特許文献2には、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)の材料として用いられるガラス繊維ロービングの連結体において、一方のガラス繊維ロービングの尾部と他方のガラス繊維ロービングの頭部とを重ね、この重ね部に圧縮エアーを吹き付けて各ロービングを構成するガラス繊維同士を絡ませて継ぎ、この継ぎ部に、シアノアクリレート系等の常温で低粘性の液状であり且つ常温で固化する速乾性接着剤を付与して継ぎ部の所定長さ部分を固着することが示されている。
【0007】
【特許文献1】特開昭51−124158号公報
【特許文献2】実開平2−64567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、例えば、フィラメントワインディング成形法で繊維強化複合材料を成形する場合において、成形中における繊維束への樹脂含浸を省略して成形時間を短縮するために、予め繊維束に樹脂を含浸したプリプレグが使用される。そして、プリプレグは、一般的に、ボビン等に巻き付けられて供給される。ボビン等から送り出されたプリプレグは、フィラメントワインディング装置のマンドレル等に連続して巻き付けられて積層されることにより、繊維強化複合材料が成形される。
【0009】
ここで、ボビン等に巻かれたプリプレグの残量が少なくなると、フィラメントワインディング装置を停止し、プリプレグ残量が少なくなったボビンを取り外し、新品のボビンと交換する。そして、新品のボビンからプリプレグを引き出して、フィラメントワインディング装置にプリプレグを取付けた後、フィラメントワインディング装置を再度、始動させる。そのため、プリプレグ残量が少なくなったボビンを新品のボビンと交換して、新品のプリプレグをフィラメントワインディング装置に取り付けるための工数が掛かり、繊維強化複合材料の成形コストが大きくなる場合がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、プリプレグを用いて繊維強化複合材料を成形する場合において、成形コストをより低減した繊維強化複合材料、繊維強化複合材料の成形方法、一対のプリプレグ及び一対のプリプレグ製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る繊維強化複合材料は、繊維束に樹脂を含浸した一方のプリプレグにおける端と、繊維束に樹脂を含浸した他方のプリプレグにおける端とを連結し、長尺プリプレグとして成形される繊維強化複合材料であって、一方のプリプレグにおける端と、他方のプリプレグにおける端との連結部は、一方のプリプレグにおける端に、突起が形成され、他方のプリプレグにおける端に、一方のプリプレグにおける端に形成された突起を嵌め込む嵌め込み溝が形成され、一方のプリプレグにおける端に形成された突起を、他方のプリプレグにおける端に形成された嵌め込み溝に嵌め込んで連結されることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る繊維強化複合材料の成形方法は、繊維束に樹脂を含浸した一方のプリプレグにおける端と、繊維束に樹脂を含浸した他方のプリプレグにおける端とを連結し、長尺プリプレグとして繊維強化複合材料を成形する繊維強化複合材料の成形方法であって、一方のプリプレグにおける端に、突起を形成する突起形成工程と、他方のプリプレグにおける端に、一方のプリプレグにおける端に設けられた突起を嵌め込む嵌め込み溝を形成する溝形成工程と、一方のプリプレグにおける端に形成された突起を、他方のプリプレグにおける端に形成された嵌め込み溝に嵌め込む嵌め込み工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る一対のプリプレグは、繊維束に樹脂を含浸した一方のプリプレグにおける端と、繊維束に樹脂を含浸した他方のプリプレグにおける端とを連結し、長尺プリプレグとして繊維強化複合材料を成形する一対のプリプレグであって、一方のプリプレグにおける端に、突起が形成され、他方のプリプレグにおける端に、一方のプリプレグにおける端に形成された突起を嵌め込む嵌め込み溝が形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る一対のプリプレグ製造方法は、繊維束に樹脂を含浸した一方のプリプレグにおける端と、繊維束に樹脂を含浸した他方のプリプレグにおける端とを連結し、長尺プリプレグとして繊維強化複合材料を成形する一対のプリプレグ製造方法であって、一方のプリプレグにおける端に、突起を形成する突起形成工程と、他方のプリプレグにおける端に、一方のプリプレグにおける端に形成された突起を嵌め込む嵌め込み溝を形成する溝形成工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記のように本発明に係る繊維強化複合材料、繊維強化複合材料の成形方法、一対のプリプレグ及び一対のプリプレグ製造方法によれば、繊維束に樹脂を含浸した一方のプリプレグにおける端と、繊維束に樹脂を含浸した他方のプリプレグにおける端とを短時間で連結できるので、繊維強化複合材料の成形コストをより低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。まず、繊維強化複合材料を成形する繊維強化複合材料成形装置について説明する。図1は、繊維強化複合材料成形装置10の構成を示す図である。
【0017】
プリプレグ供給装置12は、繊維束に樹脂を含浸したプリプレグ14を送り出す機能を有している。プリプレグ供給装置12には、例えば、クリールスタンド(Creel Stand)等を用いることができる。プリプレグ供給装置12は、プリプレグ14が巻き付けられる複数のボビン16と、複数のプリプレグ14における繊維束に負荷される張力を調整するための複数の繊維張力調整装置18とを有している。それにより、複数のボビン16から送り出された複数のプリプレグ14を、繊維張力調整装置18で所定の張力に調整して供給することができる。勿論、他の条件次第では、プリプレグ14の本数は、複数本に限定されることはなく、1本でもよい。
【0018】
プリプレグ14に用いられる繊維束の繊維には、高強度繊維または高弾性繊維である炭素繊維等を使用することができる。そして、炭素繊維には、レーヨン系炭素繊維、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile:PAN)系炭素繊維またはピッチ系炭素繊維等が用いられる。勿論、プリプレグ14に用いられる繊維束の繊維には、炭素繊維に限定されることはなく、ガラス繊維またはアラミド繊維等を用いることができる。
【0019】
プリプレグ14に用いられる繊維束には、繊維径が、例えば、1μmから5μmの単繊維であるフィラメントを束ねたヤーン、ストランド、ロービング等を用いることができる。例えば、炭素繊維を用いた繊維束には、炭素繊維フィラメントを1万本〜5万本束ねた炭素繊維ストランドを用いることができる。また、プリプレグ14に用いられる繊維束には、一方向材だけでなく、平織や朱子織等で織られた織物材の繊維シート等を使用してもよい。勿論、他の条件次第では、プリプレグ14に用いられる繊維束は、これらの形態に限定されることはない。
【0020】
プリプレグ14に用いられる合成樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂または不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を使用することができる。勿論、プリプレグ14に用いられる合成樹脂は、上記樹脂に限定されることはない。
【0021】
繊維張力測定装置(図示せず)は、プリプレグ供給装置12から送り出された複数のプリプレグ14の繊維束に負荷された張力を測定する機能を有している。繊維張力測定装置(図示せず)には、一般的に、炭素繊維等の張力測定に用いられている張力測定装置を使用することができる。
【0022】
フィラメントワインディング装置20は、繊維張力測定装置(図示せず)から送り出されたプリプレグ14を、型または心金であるマンドレル22(Mandrel)等に巻き付ける機能を有している。フィラメントワインディング装置20は、プリプレグ14をマンドレル22等の円周方向や軸方向等に巻き付けることができる。フィラメントワインディング装置20は、例えば、マンドレル22等の回転軸方向に対して略垂直に巻き付けるフープ巻き(Hoop Winding)や、マンドレル22等の回転軸方向に対して所定の角度で巻き付けるヘリカル巻き(Helical Winding)等によりプリプレグ14をマンドレル22等に巻き付けて積層することができる。
【0023】
圧力容器、例えば、高圧タンク等を製造する場合には、マンドレル22の代わりにポリアミド樹脂等により成形された樹脂ライナまたはアルミニウム等により成形された金属ライナ等を使用することができる。そして、プリプレグ14は、フィラメントワインディング装置20により、張力を与えつつ樹脂ライナまたは金属ライナに巻き付けられて積層される。
【0024】
制御装置24は、プリプレグ供給装置12と、繊維張力測定装置(図示せず)と、フィラメントワインディング装置20とにリード線とコネクタ等を用いて接続される。制御装置24は、プリプレグ供給装置12と、繊維張力測定装置(図示せず)と、フィラメントワインディング装置20とを制御することができる機能を有している。例えば、制御装置24の制御によりフィラメントワインディング装置20等の始動及び停止を行うことができる。また、制御装置24は、繊維張力測定装置(図示せず)から出力されるプリプレグ14の繊維束における張力データの電気信号を入力し、プリプレグ14の繊維束における張力を制御することができる機能を有している。かかる制御装置24は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等で構成することができる。また、制御装置24と接続されたデータロガ26には、プリプレグ14の繊維束における張力データ等が記憶されて保存される。
【0025】
次に、繊維強化複合材料の成形方法について説明する。まず、一対のプリプレグにおけるプリプレグ製造方法について説明する。一対のプリプレグ製造方法は、硬化工程と、突起形成工程と、溝形成工程とを含んで構成される。
【0026】
硬化工程は、繊維束に樹脂を含浸した一方のプリプレグにおける端と、繊維束に樹脂を含浸した他方のプリプレグにおける端とにおいて、プリプレグに含まれる樹脂を硬化させる工程である。図2は、ボビン27から繰り出された一方のプリプレグ28における樹脂硬化した端30と、ボビン31から繰り出された他方のプリプレグ32における樹脂硬化した端34とを示す図である。プリプレグ28、32に含まれる樹脂を硬化させることにより、一方のプリプレグ28における端30と、他方のプリプレグ32における端34とに、より高い剛性を付与することができる。プリプレグ28、32に含まれる樹脂の硬化は、例えば、プリプレグ28、32の端30、34を熱板で圧着して加熱する加熱方法や、誘導加熱で加熱する加熱方法で行うことができる。勿論、プリプレグ28、32の端30、34における樹脂硬化方法は、上記加熱方法に限定されることはない。
【0027】
突起形成工程は、一方のプリプレグ28における端30に、突起を形成する工程である。図3は、一方のプリプレグ28における突起36が形成された端30を示す図である。一方のプリプレグ28における樹脂硬化した端30を、切断加工や打抜き加工等で機械加工することにより突起36を形成することができる。
【0028】
突起36の形状は、例えば、四角形状とすることができる。勿論、突起36の形状は、他の多角形状でもよい。プリプレグ28の幅が15mm〜20mmの場合には、突起36の幅Aを、例えば、2mm〜3mmとし、突起36の高さBを、例えば、10mmとすることができる。勿論、突起36の幅と高さは、上記寸法に限定されることはない。
【0029】
溝形成工程は、他方のプリプレグ32における端34に、一方のプリプレグ28における端30に形成された突起36を嵌め込む嵌め込み溝を形成する工程である。図4は、他方のプリプレグ32における嵌め込み溝38が形成された端34を示す図である。他方のプリプレグ32における樹脂硬化した端34を、切断加工や打抜き加工等で機械加工することにより、一方のプリプレグ28における端30に形成された突起36を嵌め込む嵌め込み溝38を形成することができる。
【0030】
嵌め込み溝38の幅C及び深さDは、一方のプリプレグ28における端30に形成された突起36を嵌め込むために、一方のプリプレグ28における端30に形成された突起36の幅A及び高さBと略同じか、または突起36の幅A及び高さBよりも大きくなるように形成されることが好ましい。勿論、他の条件次第では、嵌め込み溝38の幅C及び深さDは、上記寸法と異なるように形成されてもよい。
【0031】
以上により、プリプレグ28、32を有する一対のプリプレグの製造が完了する。なお、上述したプリプレグ28、32の製造方法では、硬化工程と、突起形成工程と、溝形成工程とを別々に行ったが、例えば、熱間プレス加工等により、硬化工程と突起形成工程、硬化工程と溝形成工程とを略同時に行うこともできる。
【0032】
また、プリプレグの一端のみに突起36または嵌め込み溝38を形成するだけでなく、プリプレグの両端に突起36または嵌め込み溝38を形成することができる。また、プリプレグの一端に突起36を形成し、一端に突起36が形成されたプリプレグの他端に嵌め込み溝38を形成してもよい。
【0033】
次に、プリプレグ28、32を用いて繊維強化複合材料成形装置10で繊維強化複合材料を成形する方法について説明する。図5は、繊維強化複合材料成形装置10の動作を示す図である。一方のプリプレグである、ボビン27から繰り出された繊維強化複合材料成形中のプリプレグ28における端30と、他方のプリプレグである、新品のボビン31から繰り出された成形に使用されていない新品のプリプレグ32における端34とを連結し、長尺プリプレグ40として、繊維強化複合材料が成形される。ここで、ボビン27から繰り出された繊維強化複合材料成形中のプリプレグ28における端30と、新品のボビン31から繰り出された成形に使用されていない新品のプリプレグ32における端34との連結は、嵌め込み工程で行われる。
【0034】
嵌め込み工程は、繊維強化複合材料成形中のプリプレグ28における端30に形成された突起36を、成形に使用されていない新品のプリプレグ32における端34に形成された嵌め込み溝38に嵌め込む工程である。図6は、繊維強化複合材料成形中のプリプレグ28と、成形に使用されていない新品のプリプレグ32とを連結する連結部42を示す図である。繊維強化複合材料成形中のプリプレグ28における端30に形成された突起36を、成形に使用されていない新品のプリプレグ32における端34に形成された嵌め込み溝38に嵌め込むことにより連結部42が形成される。そして、繊維強化複合材料成形中のプリプレグ28における端30に形成された突起36を、新品のボビンに巻き付けられた未使用のプリプレグ32における端34に形成された嵌め込み溝38に嵌め込むことにより、長尺プリプレグ40とすることができる。
【0035】
このように、繊維強化複合材料成形中のプリプレグ28における端30に形成された突起36を、成形に使用されていない新品のプリプレグ32における端34に形成された嵌め込み溝38に嵌め込むことにより連結部42が形成されるので、例えば、一方のプリプレグと他方のプリプレグとを接着して接合する場合や、一方のプリプレグに含まれる繊維束と、他方のプリプレグに含まれる繊維束とを結んで連結する場合等よりも、更に短時間で連結することができる。また、繊維強化複合材料成形中のプリプレグ28における端30と、成形に使用されていない新品のプリプレグ32における端34とを連結することにより、ボビンに巻かれたプリプレグの略全てを成形に使用することができるので、繊維強化複合材料成形中のプリプレグにおける残量が少なくなった時点でボビンを交換する場合よりも、プリプレグの歩留まりをより向上させることができる。
【0036】
再び、図5に戻り、連結部42を含む長尺プリプレグ40は、繊維張力調整装置18により所定の張力に調整されてプリプレグ供給装置12から送り出される。プリプレグ供給装置12から送り出された長尺プリプレグ40は、繊維張力測定装置(図示せず)により長尺プリプレグ40の繊維束に負荷されている張力が測定される。ここで、繊維張力測定装置により測定された張力データは、繊維張力測定装置から制御装置24へ出力され、データロガ26に記憶されて保存される。また、例えば、長尺プリプレグ40の繊維束に基準となる所定の張力が負荷されていない場合には、制御装置24が、張力の異常を検知して異常信号等を出力する。それにより、例えば、繊維強化複合材料成形装置10が停止する。
【0037】
張力測定された長尺プリプレグ40は、フィラメントワインディング装置20へ送られる。長尺プリプレグ40は、フィラメントワインディング装置20により、マンドレル22または高圧タンクのライナ等にフープ巻き等により巻き付けられて積層される。長尺プリプレグ40に含まれる連結部42は、プリプレグ28における端30に形成された突起36を、プリプレグ32における端34に形成された嵌め込み溝38に嵌め込まれて形成されるため、マンドレル22または高圧タンクのライナ等の曲面等に対して、連結部42での変形をより容易に生じさせることができる。それにより、長尺プリプレグ40は、より均一にマンドレル22または高圧タンクのライナ等に巻き付けられて積層される。
【0038】
ここで、長尺プリプレグ40に含まれる連結部42は、プリプレグ28における端30に形成された突起36を、プリプレグ32における端34に形成された嵌め込み溝38に嵌め込まれて形成されるため、一方のプリプレグと他方のプリプレグとを接着して接合する場合や、一方のプリプレグに含まれる繊維束と、他方のプリプレグに含まれる繊維束とを結んで連結する場合等よりも、連結部42と、連結部42でない一般部との段差をより小さくすることができる。それにより、このような段差の大きい部分で生じやすいボイドや、樹脂含有率の高い部分である樹脂リッチ部の形成が抑えられ、繊維強化複合材料における引張強度や圧縮強度等の低下が抑制される。その後、マンドレル22またはライナ等に巻き付けて積層された長尺プリプレグ40を、樹脂硬化炉等(図示せず)で加熱することにより、樹脂が硬化されて繊維強化複合材料が成形される。
【0039】
なお、繊維強化複合材料成形中のプリプレグ28が巻かれたボビン27と、未使用のプリプレグ32が巻かれた新品のボビン31とを自動で交換するボビン自動交換装置(図示せず)を使用することにより、更に、短時間でボビン交換を行うことができるので、繊維強化複合材料の成形時間がより短縮され、成形コストを更に低減することができる。また、上記構成では、繊維強化複合材料成形中のプリプレグとして、突起36が端30に形成されたプリプレグ28を使用し、成形に使用されていない新品のプリプレグとして、嵌め込み溝38が端34に形成されたプリプレグ32を使用したが、勿論、繊維強化複合材料成形中のプリプレグとして、嵌め込み溝38が端34に形成されたプリプレグ32を使用し、成形に使用されていない新品のプリプレグとして、突起36が端30に形成されたプリプレグ28を使用してもよい。
【0040】
上記構成によれば、繊維強化複合材料の成形に使用中のボビンに巻き付けられたプリプレグにおける端に形成された突起を、まだ成形に使用されていない新品のボビンに巻き付けられたプリプレグにおける端に形成された嵌め込み溝に嵌め込んで連結することにより、繊維束に樹脂を含浸した一方のプリプレグにおける端と、繊維束に樹脂を含浸した他方のプリプレグにおける端とを短時間で連結してプリプレグを連続して供給することができる。それにより、繊維強化複合材料成形装置を1度停止して、プリプレグ残量が少なくなったボビンを取り外して新品のボビンと交換し、新品のボビンからプリプレグを引き出して、フィラメントワインディング装置にプリプレグを取付けた後、繊維強化複合材料成形装置を再度、始動させるよりも、繊維強化複合材料の成形時間を短縮することができ、繊維強化複合材料の成形コストをより低減することができる。
【0041】
上記構成によれば、繊維強化複合材料の成形に使用中のボビンに巻き付けられたプリプレグにおける端に形成された突起を、まだ成形に使用されていない新品のボビンに巻き付けられたプリプレグにおける端に形成された嵌め込み溝に嵌め込んで連結することにより、成形中のボビンに巻き付けられたプリプレグの略全てを使用して消費することができる。それにより、繊維強化複合材料成形装置を1度停止して、プリプレグ残存量が少ないボビンを新品のボビンと交換してプリプレグを供給するよりも、プリプレグの歩留まりをより向上させて、繊維強化複合材料の成形コストをより低減することができる。
【0042】
上記構成によれば、繊維強化複合材料の成形に使用中のボビンに巻き付けられたプリプレグにおける端に形成された突起を、まだ成形に使用されていない新品のボビンに巻き付けられたプリプレグにおける端に形成された嵌め込み溝に嵌め込んで連結することにより、繊維強化複合材料におけるマトリックス樹脂と異なる材料である接着剤等が繊維強化複合材料に混入されるのが抑制されるため、より均一に繊維強化複合材料を成形することができる。
【0043】
上記構成によれば、繊維強化複合材料の成形に使用中のボビンに巻き付けられたプリプレグにおける端に形成された突起を、まだ成形に使用されていない新品のボビンに巻き付けられたプリプレグにおける端に形成された嵌め込み溝に嵌め込んで連結することにより、長尺プリプレグの連結部と、連結されていない一般部との段差を、より小さくすることができる。それにより、繊維強化複合材料において、プリプレグの積層方向における段差が大きい部位に生じやすいボイドや樹脂リッチ部等の欠陥を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態において、繊維強化複合材料成形装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態において、ボビンから繰り出された一方のプリプレグにおける樹脂硬化した端と、ボビンから繰り出された他方のプリプレグにおける樹脂硬化した端とを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態において、一方のプリプレグにおける突起が形成された端を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態において、他方のプリプレグにおける嵌め込み溝が形成された端を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態において、繊維強化複合材料成形装置の動作を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態において、繊維強化複合材料成形中のプリプレグと、成形に使用されていない新品のプリプレグとを連結する連結部を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
10 繊維強化複合材料成形装置、12 プリプレグ供給装置、14、28、32 プリプレグ、16、27、31 ボビン、18 繊維張力調整装置、20 フィラメントワインディング装置、22 マンドレル、24 制御装置、26 データロガ、30、34 プリプレグにおける端、36 突起、38 嵌め込み溝、40 長尺プリプレグ、42 連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束に樹脂を含浸した一方のプリプレグにおける端と、繊維束に樹脂を含浸した他方のプリプレグにおける端とを連結し、長尺プリプレグとして成形される繊維強化複合材料であって、
一方のプリプレグにおける端と、他方のプリプレグにおける端との連結部は、
一方のプリプレグにおける端に、突起が形成され、
他方のプリプレグにおける端に、一方のプリプレグにおける端に形成された突起を嵌め込む嵌め込み溝が形成され、
一方のプリプレグにおける端に形成された突起を、他方のプリプレグにおける端に形成された嵌め込み溝に嵌め込んで連結されることを特徴とする繊維強化複合材料。
【請求項2】
繊維束に樹脂を含浸した一方のプリプレグにおける端と、繊維束に樹脂を含浸した他方のプリプレグにおける端とを連結し、長尺プリプレグとして繊維強化複合材料を成形する繊維強化複合材料の成形方法であって、
一方のプリプレグにおける端に、突起を形成する突起形成工程と、
他方のプリプレグにおける端に、一方のプリプレグにおける端に設けられた突起を嵌め込む嵌め込み溝を形成する溝形成工程と、
一方のプリプレグにおける端に形成された突起を、他方のプリプレグにおける端に形成された嵌め込み溝に嵌め込む嵌め込み工程と、
を備えることを特徴とする繊維強化複合材料の成形方法。
【請求項3】
繊維束に樹脂を含浸した一方のプリプレグにおける端と、繊維束に樹脂を含浸した他方のプリプレグにおける端とを連結し、長尺プリプレグとして繊維強化複合材料を成形する一対のプリプレグであって、
一方のプリプレグにおける端に、突起が形成され、
他方のプリプレグにおける端に、一方のプリプレグにおける端に形成された突起を嵌め込む嵌め込み溝が形成されることを特徴とする一対のプリプレグ。
【請求項4】
繊維束に樹脂を含浸した一方のプリプレグにおける端と、繊維束に樹脂を含浸した他方のプリプレグにおける端とを連結し、長尺プリプレグとして繊維強化複合材料を成形する一対のプリプレグ製造方法であって、
一方のプリプレグにおける端に、突起を形成する突起形成工程と、
他方のプリプレグにおける端に、一方のプリプレグにおける端に形成された突起を嵌め込む嵌め込み溝を形成する溝形成工程と、
を備えることを特徴とする一対のプリプレグ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−174630(P2008−174630A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8757(P2007−8757)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】