説明

義歯洗浄剤組成物

【課題】炭酸塩化合物と酸とを含有することによって水に溶解させた際に発泡する固体状の義歯洗浄剤組成物であって、起泡力がより向上し、かつ起泡力を容易にコントロールできる組成物を提供する。
【解決手段】ポリビニルピロリドン(PVP)とポリエチレングリコール(PEG)とを、重量比でPVP:PEG=3:7〜7:3となる割合で含有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総義歯、部分義歯、歯列矯正器具といった義歯類等(以下これらを総称して「義歯」という)の洗浄・殺菌に用いられる義歯洗浄用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯は、装着している間に、食物残渣や着色物だけでなく、口腔内微生物由来の汚れが付着する。このような汚れを取り除くために、従来、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを含有する義歯洗浄剤が用いられており、より具体的には界面活性剤に漂白剤成分や酵素等を配合した組成物に、比較的不活性な成分、例えば滑剤、増量剤、バインダー、着色剤、染料及び香料等を適宜加えることにより、所望の大きさや密度または色および香味の義歯洗浄剤を得ている。
【0003】
また、物理的な洗浄効果を向上させるため、上記活性剤成分を配合する組成物に炭酸塩化合物と酸からなる二酸化炭素生成混合物をさらに配合して発泡型洗浄剤とすることが行われている。
【0004】
これにより、義歯に付着した汚れを、界面活性剤による表面張力低下機能、発泡剤の物理的作用、及びその他の有効成分の作用の複合作用により、漂白、殺菌、除菌、タンパク分解、糖質分解等の効果をもって洗浄することが可能となっている。
【0005】
しかしながら、このような発泡型洗浄剤において、その起泡力(発生する泡量)を組成によりコントロールし、洗浄効果感の得られる起泡力を設定することは非常に困難とされている。例えば、特開平10−17453号公報には、ステアリン酸マグネシウムを用いて起泡力をコントロールすることが提案されているが、その起泡力は不十分である。
【0006】
本発明は、ステアリン酸マグネシウムに変わる起泡力調整成分を用いることにより、従来以上の起泡力を与え、洗浄効果を増大できる義歯洗浄剤組成物を得ることを目的として鋭意研究を行う中で、ポリビニルピロリドンとポリエチレングリコールを一定割合で併用することにより、起泡力を高め、コントロールすることが可能であることを見出し、本発明に至った。
【0007】
なお、ポリビニルピロリドン(以下PVPと表記する場合もある)とポリエチレングリコール(以下PEGと表記する場合もある)は、従来、それぞれを単独で発泡型洗浄剤に限定されない義歯洗浄剤一般に、滑剤もしくはバインダーとして使用できることが知られており、また歯磨き等の口腔用組成物にタバコのやになどのステイン除去剤として使用されてもいる(特許文献2,3参照)。
【0008】
しかし、これらを発泡型の義歯洗浄用組成物において起泡力の向上やコントロールのために使用するという発想は従来はなかった。
【特許文献1】特開平10−17453号公報
【特許文献2】特開2006−117600号公報
【特許文献3】特表2002−519314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、起泡力がより向上し、かつ起泡力を容易にコントロールできる義歯洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の義歯洗浄剤組成物は、炭酸塩化合物と酸とを含有することによって水に溶解させた際に発泡する固体状の義歯洗浄剤組成物であって、上記の課題を解決するためにポリビニルピロリドン(PVP)とポリエチレングリコール(PEG)とを、重量比でPVP:PEG=3:7〜7:3となる割合で含有するものとする。
【0011】
上記において、ポリビニルピロリドンはK値が17〜100の範囲内であることが好ましい。
【0012】
また、ポリエチレングリコールは重量平均分子量が400〜10000の範囲内であることが好ましい。
【0013】
ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールの配合量は、両者の合計量で5重量%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、十分な洗浄効果感が得られる起泡力を有し、またその起泡力のコントロールも容易な義歯洗浄剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の義歯洗浄剤組成物は固体状であり、洗浄に使用する前、好ましくは直前に水に溶解させて使用するものである。ここで固体状とは、錠剤状のような塊状、顆粒状、粉末状のいずれをも含むが、使用時の取扱いが容易な点では錠剤状が好ましい。従って、以下では主として錠剤状として使用することを想定して説明する。
【0016】
本発明において使用するポリビニルピロリドンとはビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンの直鎖重合体である。またポリエチレングリコールとは、水又はエチレングリコールに酸化エチレンを付加させた重合体である。これらPVP及びPEGは各種分子量のものが市販されているので、市販されているもののうち、下記条件に適合するものを本発明の組成物に利用することができる。
【0017】
本発明の義歯洗浄剤組成物においては、ポリビニルピロリドンとポリエチレングリコールとの配合比率を、重量比でPVP:PEG=7:3〜3:7の範囲内とし、好ましくは4:6〜6:4の範囲内とする。両者の割合を変化させることにより起泡力がコントロールできる。PVPが7割を越えると親水性が大きすぎて、洗浄剤の溶解速度が速くなり過ぎ、起泡力が過剰となる。また、PVPが3割未満であると、PVPの持つ親水性、水和性という特長が発揮されず、起泡力が乏しくなる。
【0018】
本発明で用いるポリビニルピロリドンは、K値が17〜100の範囲内であることが好ましく、25〜50の範囲内であることがより好ましい。K値とは、ドイツの化学者フィケンチャーにより提案された重合度を表わす定数である。K値が17未満であると親水性が高くなりすぎて洗浄剤の水分調整が困難になり、100を越えると洗浄剤が水に溶解しにくくなる。
【0019】
また、ポリエチレングリコールは重量平均分子量(Mw)が400〜10000の範囲内であることが好ましく、600〜10000の範囲内であることがより好ましく、さらに2000〜10000の範囲内であればなお好ましい。重量平均分子量が400未満であると洗浄剤を錠剤状としたときにもろくなり、10000を越えると洗浄剤が水に溶解しにくくなる。
【0020】
上記ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールの洗浄剤組成物中の配合量は、両者の合計量で5重量%以上であることが好ましい。5重量%未満であると、十分な気泡の発生が得られにくい。
【0021】
本発明の義歯洗浄剤組成物には、発泡成分として炭酸塩化合物と酸からなる二酸化炭素生成混合物を含有させる。この炭酸塩化合物としては、アルカリ金属炭酸塩または炭酸水素塩、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムまたはルビジウムの、炭酸塩または炭酸水素酸塩を用い得る。酸成分としては、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸等の有機酸、またはこれらの混合物が用いられるが、酸性リン酸ナトリウム、もしくはカリウムを含むその他の酸、またはそれらの混合物であってもよい。
【0022】
本発明の義歯洗浄剤組成物には、上記以外に従来の義歯洗浄剤組成物に含有されているのと同様の活性成分、すなわち界面活性剤、漂白剤成分、酵素等を使用できる他、滑剤、増量剤、バインダー、着色剤、染料及び香料等の不活性成分についても従来と同様のものを、本発明の目的に反しない範囲で配合することができる。上記各成分の具体例を以下に挙げるが、本発明で使用可能な成分はこれらに限定されるものではない。
【0023】
界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸モノグリセリンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−アシルグルタメート等のN−アシルアミノ酸塩、マルチトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0024】
漂白剤成分の例としては、過酸化ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、モノ過硫酸水素カリウム等の酸素系漂白剤、次亜塩素酸ナトリウム、ジクロルイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロルイソシアヌル酸ナトリウム等の塩素系漂白剤が挙げられる。
【0025】
酵素成分の例としては、アルカリプロテアーゼ、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、イヌラーゼ、グルカナーゼ、リパーゼ、パパイン等が挙げられる。
【0026】
滑剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0027】
増量剤の例としては、シリカ系研磨剤、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0028】
着色剤の例としては、青色1号等の色素、酸化チタン等の顔料が挙げられる。香料の例としては、ミントオイル、1−メントール等が挙げられる。
【0029】
なお、バインダーとしては、本発明の目的に反しない範囲であれば、上記ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコール以外のバインダー成分を用いることもできる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
[実施例・比較例]
下記表1に示した各成分を表に示した割合(重量部、合計で100重量部)で配合して十分に混合し、打錠成型した。使用したポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールの詳細は以下の通りである。また、打錠成型の条件としては、洗浄剤組成物2.8gを700kg/cmで1分間プレスし、直径2.5cmの錠剤を得た。
【0032】
PEG:第一工業製薬(株)製 PEG6000P
PVP K−30:第一工業製薬(株)製 ピッツコールK−30
PVP K−50:第一工業製薬(株)製 ピッツコールK−50
PVP K−90:第一工業製薬(株)製 ピッツコールK−90
【0033】
得られた錠剤状の洗浄剤を用いて起泡力を調べ、評価した。すなわち起泡力は200mlのメスシリンダーに30℃の水150mlを注ぎ、上記錠剤を入れ、その泡量の最大体積を測定した。この泡量に基づき、以下の基準で評価した;
30ml未満 ×
30ml以上40ml未満 ○
40ml以上 ◎
【0034】
【表1】

【0035】
表に示された結果から分かるように、ポリビニルピロリドンとポリエチレングリコールとを所定の割合で併用した実施例の洗浄剤は、いずれか一方を用いた比較例の洗浄剤と比較して優れた起泡力を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸塩化合物と酸とを含有することによって水に溶解させた際に発泡する固体状の義歯洗浄剤組成物であって、
ポリビニルピロリドン(PVP)とポリエチレングリコール(PEG)とを、重量比でPVP:PEG=3:7〜7:3となる割合で含有する
ことを特徴とする義歯洗浄剤組成物。
【請求項2】
ポリビニルピロリドンはK値が17〜100の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の義歯洗浄剤組成物。
【請求項3】
ポリエチレングリコールは重量平均分子量が400〜10000の範囲内であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の義歯洗浄剤組成物。
【請求項4】
ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールの配合量が両者の合計量で5重量%以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の義歯洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2008−50323(P2008−50323A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230490(P2006−230490)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】