説明

耐引掻性の硬化された材料の製造法

化学線で硬化可能な物質混合物からなる硬化された材料を、次のスペクトル分布および線量のUV線:波長λ=400〜320nm;線量=500〜2500mJ/cm2;波長λ=320〜290nm;線量=700〜3000mJ/cm2;波長λ=290〜180nm;線量=100〜500mJ/cm2を使用することにより、UV線での照射によって製造するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、硬化された材料を製造するための新規方法に関する。更に、本発明は、新規方法により製造された、移動手段のボディ(Karosserien von Fortbildungsmitteln)、殊に自動車用ボディおよびその部材、屋内領域および屋外領域での建築物およびその部材、ドア、窓、家具、ガラス中空体、コイル、容器、包装品、小型部材、光学的構造部材、機械的構造部材および電子技術的構造部材、ならびに白色製品のための構造部材をコーティング、接着、密閉、包装および梱包するための硬化された材料の使用に関する。
【0002】
背景技術
硬化された材料は、特に熱硬化性である。本発明の範囲内で、熱硬化性材料は、熱可塑性材料とは異なり僅かな範囲内でのみ変形可能であるかまたはもはや熱時には変形不可能である三次元架橋された物質である。
【0003】
硬化された材料を製造するための方法は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10202565号明細書A1の記載から公知である。公知方法の場合、硬化された材料は、熱的に硬化可能および化学線で硬化可能な物質混合物から加熱およびUV線での照射によって製造され、この場合には
(1)硬化後に少なくとも107.5Paのゴム弾性範囲内の貯蔵弾性率E’および最大0.10の20℃での損失ファクターtanδを有する熱的に硬化可能および化学線で硬化可能な物質混合物を使用し、この場合この貯蔵弾性率E’および損失ファクターは、40±10μmの層厚を有する自由被膜に対する動的機械的熱分析(DMTA)で測定されたものであり、
(2)スペクトルがUV−AおよびUV−Bと共に、200〜280nmの波長範囲内でこの波長範囲内の水銀中圧蒸気灯のスペクトルの相対スペクトル線密度の2〜80%を有するUV−C分を有するUV線で照射を実施し、この場合200〜240nmの波長範囲内でUV−C分の相対スペクトル線密度は、前記波長範囲内の水銀中圧蒸気灯のスペクトルの相対スペクトル線密度より常に低く、この場合、
(3)放射線量は、100〜6000mJcm-2である。
【0004】
本発明の範囲内において、化学線は、電磁線、例えば近赤外線(NIR)、可視光線、UV線、X線またはγ線、有利にUV線、ならびに粒子線、例えば電子線、β線、中性子線、陽子線およびα線、有利に電子線である。殊に、化学線は、UV線である。
【0005】
周知のように、UV線のスペクトルは、3つの領域に区分される:
UV−A:320〜400nm、
UV−B:320〜290nm、
UV−C:290〜100nm。
【0006】
一般にUV線源のUVスペクトルは、180〜200nmの波長だけが使用される。それというのも、僅かな波長の放射線は、放射線源の石英体によって吸収されるからである(R. Stephen Davidson, >>Exploring the Science, Technology and Applications of U.V. and E.B. Curing<< , Sita Technology Ltd., London, 1999, Chapter I, >>An Overview<<, 第3〜34頁参照)。
【0007】
生じる公知の硬化された材料は、僅かな黄変だけを有する。前記材料は、耐引掻性を有し、引掻の後にごく僅かな光沢損失を示す。同時に、前記材料は、高い硬度および高い耐化学薬品性を有する。
【0008】
しかし、市場での絶えず成長する要件には、硬化された材料の耐引掻性、殊に自動洗浄路での負荷の際の耐引掻性をさらに改善することが必要とされている。更に、殊に金属、プラスチックおよび別の硬化された材料からなる基材上での硬化された材料の硬化は、さらに改善されなければならない。殊に、実質的に異なる組成および/または機能の硬化された材料の層間の中間層付着力は、殊に多層ラッカー塗布においてさらに改善されなければならない。
【0009】
課題
本発明の課題は、公知技術水準の欠点をもはや長時間有さず、特に簡単に特に許容される方法で、前記の好ましい要件プロフィールを満たし、その上、殊に洗浄路での負荷の際に改善された耐引掻性ならびに殊に金属、プラスチックおよび別の硬化された材料からなる基材上での改善された付着力を有する硬化された材料を供給する、硬化された材料を製造するための新規方法を提供することである。殊に、新規方法は、殊に蒸気噴流での負荷の際に、殊に多層ラッカー塗布において実質的に異なる組成および/または機能の硬化された材料の層間での改善された、中間層の付着力を有する硬化された材料を提供することである。
【0010】
解決
それに応じて、化学線で硬化可能な物質混合物(物質混合物)からなる硬化された材料を、次のスペクトル分布および線量のUV線:
波長λ=400〜320nm;線量=500〜2500mJ/cm2
波長λ=320〜290nm;線量=700〜3000mJ/cm2
波長λ=290〜180nm;線量=100〜500mJ/cm2を使用することにより、UV線での照射によって製造するための新規方法を見出すことであった。
【0011】
以下、硬化された材料を製造するための新規方法は、「本発明による方法」と呼称される。
【0012】
他の本発明の対象は発明の詳細な説明から明らかである。
【0013】
発明の利点
先行技術を考慮して、本発明の基礎となる課題が、本発明による方法により解決できることは意外でありかつ当業者に予想できなかった。
【0014】
殊に、本発明による方法が特に簡単に特に許容される方法で公知のUV線源、電子的、光学的および機械的な構造部材ならびに照射装置を使用して、特に簡単に特に許容される方法で硬化される材料、殊に僅かな黄変、高い硬度および高い耐化学薬品性を有するだけでなく、さらに殊に洗浄路での負荷の際に改善された耐引掻性ならびに殊に金属およびプラスチック、および別の硬化された材料に対して改善された付着力を有する熱硬化性材料を提供することは、驚異的なことであった。殊に、本発明による方法は、殊に蒸気噴流での負荷の際に、殊に多層ラッカー塗布において実質的に異なる組成および/または機能の硬化された材料の層間での改善された、中間層の付着力を示す硬化された材料を提供することであった。
【0015】
更に、なお、多種多様の組成のUV線で硬化可能な物質混合物で本発明による方法を実施することができることは、驚異的なことであった。それによって、前記の物質混合物は、予想しない好ましい方法で多種多様の使用目的に最適に適合させることができ、したがってこの物質混合物は、有利に被覆剤、接着剤、シール材料、および成形部材およびシートのための出発材料として使用することができた。この場合、殊に被覆剤を特に有利に電着塗装ラッカー、充填剤、舗装用砕石からの保護のためのプライマー、単一被覆用ラッカー(Unidecklacke)、ベースラッカーおよびクリヤーラッカーとして使用することができることは、驚異的なことであった。
【0016】
とりわけ、コーティング、接着層、シール、成形部剤およびシート、特にコーティング、殊に電着塗装コーティング、充填剤コーティング、舗装用砕石からの保護のためのプライマーコーティング、単一被覆用コーティング(Unidecklackierung)、ベースコーティングおよびクリヤーコーティングとしての硬化された材料の極めて広い使用可能性は、驚異的なことであった。特に、前記の硬化された材料は、移動手段のボディー、殊に自動車のボディー、およびその部材、屋内領域および屋外領域での建築物、およびその部材、ドア、窓、家具、ガラス中空体、コイル、容器、球体、小型部材、例えば雌ねじ、ボルト、リムまたは車輪用キャップ、光学的構造部材、機械的構造部材、電子技術的構造部材、例えばコイル製品(巻き枠、固定子、回転子)および白色製品のための構造部材、例えばラジエーター、家庭用機器、冷蔵庫用被覆材または洗濯機用被覆材をコーティング、接着、密閉および包装するのに有利に好適であった。
【0017】
本発明の詳細な説明
本発明による方法は、硬化された材料、殊に熱硬化性材料を、化学線で硬化可能な物質混合物(以下、略記して「物質混合物」と呼称する)からUV線での照射によって製造するのに使用される。
【0018】
本発明によれば、次のスペクトル分布および線量のUV線が使用される:
波長λ=400〜320nm;線量=500〜2500mJ/cm2、特に750〜2000mJ/cm2
波長λ=320〜290nm;線量=700〜3000mJ/cm2、特に1000〜2000mJ/cm2
波長λ=290〜180nm;線量=100〜500mJ/cm2、特に200〜450mJ/cm2
【0019】
この場合、出力は、幅広く変動しうる。特に、次のスペクトル分布および出力のUV線が使用される:
波長λ=400〜320nm;出力=100〜600mW/cm2、特に120〜550mW/cm2
波長λ=320〜290nm;出力=100〜600mW/cm2、特に140〜550mW/cm2
波長λ=290〜180nm;出力=20〜120mW/cm2、特に30〜100mW/cm2
【0020】
本発明による方法の範囲内での照射の場合、物質混合物の表面へのUV線源の距離は、幅広く変動しうる。特に、この距離は、20〜250mm、殊に40〜100mmである。
【0021】
照射時間は、所定の線量の場合に照射装置中での基材のベルト速度(Bandgeschwindigkeit)または前進速度(Vorschubgeschwindigkeit)に左右され、および反対に、前記ベルト速度または前進速度は、照射時間に左右される。
【0022】
本発明により使用することができるUV線のための照射源としては、それ自体当該のスペクトルを放出する全ての常用の公知のUV灯を使用することができる。しかし、実際には本発明により使用することができるUV線を放出せずに、スペクトルがその間に本発明により使用することができるUV線に付加される少なくとも2つのUV灯の組合せが使用されてもよい。更に、望ましいスペクトルがフィルターおよび/またはレフレクターにより調節されるようなUV灯が使用されてよい。閃光灯もこれに該当する。
【0023】
適当な閃光灯の例は、VISIT社の閃光灯である。
【0024】
特に、UV灯としては、水銀灯、有利に低圧水銀灯、中圧水銀灯および高圧水銀灯、殊に中圧水銀灯が使用される。特に有利には、変性されていない水銀灯および適当なフィルターおよび/またはレフレクター、または変性された、殊にドープされた水銀灯が使用される。
【0025】
適当に変性された水銀灯の例は、ガリウムがドープされた、および/または鉄がドープされた、殊に鉄がドープされた水銀灯であり、例えば前記水銀灯は、R. Stephen Davidson, "Exploring the Science, Technology and Applications of U.V. and E.B. Curing", Sita Technology Ltd., London, 1999, 第I章, "An Overview", 第16頁, 10図、またはDipl.-Ing. Peter Klamann, "eltosch System-Kompetenz, UV-Technik, Leitfaden fuer Anwender", 第2頁, 1998年10月、に記載されている。
【0026】
適当な変性されていない水銀灯および適当なフィルターおよび/またはレフレクターの例は、Arccure社のUV照射器である。この照射器は、UV線が直接に硬化すべき物質混合物に衝突するのではなく、間接的にのみ反射された放射線が2本の縞状の光束で硬化すべき物質混合物に衝突するように構成されている。2本の縞状の反射光のためには、全てのUVスペクトルを反射する("幅広く")か、UVスペクトルの長波長成分をよりいっそう強くプラスチック成形部材上に反射する("A+B")か、またはUVスペクトルの短波長成分をよりいっそう強く試料上に反射する("C")異なるレフレクターが使用されてよい。
【0027】
光源の配置は、物質混合物の空間的状況または該物質混合物が塗布されている基材の空間的状況、ならびに処理パラメーターに適合させることができる。例えば、自動車ボディのために設けられているような複雑に成形された基材の場合に、放射線が直接到達しない領域(影の領域)、例えば中空室、褶曲部および別の構造に依存するアンダーカット部は、点状−、小面積−または周囲照射装置を用いて、この放射装置用の自動的な運動装置と接続して、中空室または縁部を硬化させることができる。
【0028】
特に、本発明による方法の範囲内で酸素濃度が減少された雰囲気下で照射が実施される。
【0029】
"酸素濃度が減少された"とは、物質混合物の表面で雰囲気中の酸素の含量が空気の酸素含量(20.95体積%)よりも低いことを意味する。特に、酸素濃度が減少された雰囲気の最大含量は18体積%、有利に16体積%、特に有利に14体積%、殊に有利に10体積%、殊に6.0体積%である。
【0030】
この雰囲気は、根本的に酸素不含であってよく、即ち不活性ガスが重要である。しかし、完全または十分な酸素不含性は、物質混合物の表面を酸素不透過性フィルムで被覆することによって達成されてもよい。
【0031】
しかし、この場合酸素の不足する抑制効果は、放射線硬化の著しい促進を生じることができ、それによって本発明によるコーティング中での不均一性および応力が生じうる。従って、全ての場合に雰囲気の酸素含量を零体積%に減少させることは、有利ではない。
【0032】
特に、酸素の最少含量は、0.1体積%、殊に0.5体積%である。
【0033】
酸素濃度が減少された雰囲気は、種々に調節されうる。特に、相応するガス混合物が製造され、圧力瓶中で使用される。好ましくは、濃度の減少は、少なくとも1つの不活性ガスをそれぞれ必要とされる量で、硬化すべき層の表面上に存在するエアクッション中に導入することにより達成される。当該表面上に存在する雰囲気の酸素含量は、元素状酸素を測定するための通常の公知の方法および装置により連続的に測定されることができ、場合によっては自動的に望ましい値に調節されることができる。
【0034】
不活性ガスは、使用される硬化条件下で化学線によって分解されないガスであり、この場合この化学線は、硬化を抑制せずおよび/または物質混合物と反応しない。特に、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオンまたはアルゴン、殊に窒素および/または二酸化炭素が使用される。
【0035】
本発明による方法で使用される物質混合物は、化学線、殊にUV線で硬化可能である。これは、物質混合物が化学線で活性化可能である成分を含有するかまたは該成分からなることを意味し、それによって物質混合物は、ラジカル重合またはイオン重合、殊にラジカル重合される。それによって、物質混合物の三次元架橋が行なわれ、それにより硬化された材料、殊に熱硬化性材料が生じる。
【0036】
付加的に、物質混合物は、物理的および/または熱的に硬化可能であってよい。
【0037】
本発明の範囲内で、"物理的硬化"の概念は、物質混合物からの溶剤の放出によるフィルム形成によって、殊に被覆剤からの層の形で物質混合物が硬化することを意味し、この場合コーティング内での結合は、結合剤のポリマー分子が管状に形成されること(この概念に関しては、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, "Bindemittel", 第73および74頁参照)により行なわれる。又はこのフィルム形成は、バインダー粒子の凝集を介して行なわれる(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, "Haertung",第274および275頁参照)。このためには、通常、架橋剤は不要である。
【0038】
本発明の範囲内で、"熱的硬化"の概念は、物質混合物、殊に被覆剤からの層の熱によって開始される硬化を意味し、この場合には、通常、結合剤および別に存在する架橋剤が使用される。通常、これは、当業界で異質架橋と呼称される。架橋剤が結合剤中に既に組み込まれている場合には、自己架橋とも呼ばれる。本発明によれば、異質架橋は、有利であり、したがって有利に使用される(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, "Haertung"、第274〜276頁、殊に第275頁以降参照)。
【0039】
当業界では、化学線で硬化可能および熱的に硬化可能である物質混合物は、デュアル熱硬化性物質混合物(Dual-Cure-Stoffgemische)とも呼ばれる。
【0040】
特に、本発明による方法の場合には、硬化後に少なくとも107.5Pa、特に少なくとも107.6Pa、有利に少なくとも108.0Pa、殊に少なくとも108.3Paのゴム弾性範囲内の貯蔵弾性率E’および最大0.10、有利に最大0.06の20℃での損失ファクターtanδを有する物質混合物が使用され、この場合この貯蔵弾性率E’および損失ファクターは、動的機械的熱分析(DMTA)で40±10μmの層厚を有する自由フィルムにつき測定されたものである。
【0041】
粘弾性材料、例えばポリマーの変形の際に再び回収されるエネルギー分(弾性分)は、貯蔵弾性率E’の大きさによって定められ、一方、この経過の際に使い果たされる(消耗される)エネルギー分は、損失弾性率E’’の大きさによって記載される。弾性率E’およびE’’は、変形速度および温度に依存する。損失ファクターtanδは、貯蔵弾性率E’および貯蔵弾性率E’からの商として定義されており、tanδは、動的機械的熱分析(DMTA)により測定することができ、フィルムの弾性特性と可塑性特性との比のための基準である。DMTAは、コーティングの粘弾性特性を測定するための一般に公知の測定方法であり、例えばMurayama, T., Dynamic Mechanical Analysis of Polymeric Materials, Elsevier, New York, 1978およびLoren W. Hill, Journal of Coatings Technology, 第64巻, No.808, 1992年5月, 第31〜33頁に記載されている。DMTAによるtanδの測定の際の処理条件は、Th. Frey, K.-H. Grosse Brinkhaus und U. Roeckrath in Cure Monitoring of Thermoset Coatings, Progress In Organic Coatings 27 (1996), 59-66またはドイツ連邦共和国特許出願公開第4409715号明細書A1またはドイツ連邦共和国特許第19709467号明細書C2に詳細に記載されている。特に、次の条件が使用される:引張モード;振幅:0.2%;周波数:1Hz;温度傾斜:室温から200℃で1℃/分
貯蔵弾性率E’は、当業者によって、化学線で硬化可能な一定の成分ならびに場合によっては物理的および/または熱的に硬化可能な一定の成分、該成分の官能性および本発明により使用すべき物質混合物の割合を選択することによって調節されることができる。
【0042】
貯蔵弾性率E’は、化学線で硬化可能な成分により、一般に、該成分の種類および量を特に物質混合物の固体1g当たり化学線で活性化可能な結合が0.5〜6.0ミリ当量、有利に1.0〜4.0ミリ当量、特に有利に2.0〜3.0ミリ当量存在するように選択することによって調節されうる。
【0043】
本発明の範囲内で、固体は、物質混合物の成分の総和であり、この総和は、物質混合物から製造された硬化された材料を構成する。
【0044】
本発明の範囲内で、化学線により活性化可能な結合とは、化学線で照射した際に反応性になり、かつこの種の他の活性化された結合と、ラジカルおよび/またはイオンのメカニズムにより進行する重合反応および/または架橋反応が行われる結合であると解釈される。適当な結合の例は、炭素−水素−単結合または炭素−炭素−、炭素−酸素−、炭素−窒素−、炭素−リン−または炭素−ケイ素−単結合、または炭素−炭素−、炭素−酸素−、炭素−窒素−、炭素−リン−または炭素−ケイ素−二重結合である。この中で、炭素−炭素−二重結合は、特に好ましく、したがって本発明によれば特に有利に使用される。簡略化のために、前記結合は、以下、"二重結合"と呼称される。
【0045】
特に好ましい二重結合含有化合物は、アクリレート基含有化合物である。
【0046】
物質混合物は、酸基を含有することができる。この物質混合物を使用する場合には、この酸基は、固体1g当たり0.05ミリ当量を上廻る、有利に0.08ミリ当量を上廻る、特に有利に0.15ミリ当量を上廻る、殊に0.2ミリ当量を上廻る量で存在する。この場合、存在する量の酸基は、固体1g当たり15ミリ当量、有利に10ミリ当量、特に有利に8ミリ当量、殊に5ミリ当量を上廻らない。
【0047】
酸基を使用する場合、この酸基は、特にカルボキシル基、ホスホン酸基、スルホン酸基、酸性の燐酸エステル基および酸性の硫酸エステル基、殊にカルボキシル基からなる群から選択される。
【0048】
本発明による方法の場合に使用することができる物質混合物の物質的組成は、重要ではなく、化学線、殊にUV線で硬化可能、ならびに場合によっては物理的および/または熱的に硬化可能な全ての通常の公知の物質混合物が使用されてよい。
【0049】
このような物質混合物の適当な成分、適当な物質混合物それ自体および該物質混合物の製造法は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10202565号明細書A1、第4頁、段落[0029]〜第8頁段落[0079]、またはドイツ連邦共和国特許第19709467号明細書C2の記載から公知である。
【0050】
本発明による方法は、
(i)1つ以上のオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/または1つ以上のポリウレタン(メタ)アクリレートを含み、および
(ii)統計的平均で1分子当たり1個を上廻るオレフィン系不飽和二重結合、
(iii)1000〜10000ダルトンの数平均分子量、
(iv)ラジカル架橋可能な成分1000g当たり1.0〜5.0個の二重結合の二重結合含量、
(v)統計的平均で1分子当たり1個を上廻る分枝点、
(vi)それぞれ成分の質量に対して5〜50質量%の環状構造要素および
(vii)鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族構造要素を有する、少なくとも1つのラジカル架橋可能な成分または硬化可能な成分を含有する物質混合物を用いて実施する場合に、特別の利点を提供し、この場合ラジカル架橋可能な成分は、カルバメート基および/またはビウレット基および/またはアロファネート基および/または尿素基および/またはアミド基を含有する。
【0051】
好ましくは、ラジカル架橋可能な成分は、1つ以上のオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/または1つ以上のポリウレタン(メタ)アクリレートを、それぞれラジカル架橋可能な成分の固体含量に対して少なくとも50質量%、特に有利に少なくとも70質量%、殊に有利に少なくとも80質量%含有する。殊に、ラジカル架橋可能な成分は、100%が1つ以上のオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/または1つ以上のポリウレタン(メタ)アクリレートからなる。
【0052】
更に、好ましくは、ラジカル架橋可能な成分は、モノマー、有利にはオリゴマーおよび/またはポリマー、殊にポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル官能性(メタ)アクリルコポリマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、アミノ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートおよび/またはシリコーン(メタ)アクリレート、有利にポリエステル(メタ)アクリレートおよび/またはエポキシ(メタ)アクリレートおよび/またはポリエーテル(メタ)アクリレートを最大50質量%、特に有利に最大30質量%、殊に有利に最大20質量%含有する。この場合、好ましいのは、二重結合に加えてなおヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基および/またはチオール基を含有するポリマーである。最も多くの場合には、他のラジカル架橋可能な成分の使用は、不必要である。
【0053】
この場合、有利にはラジカル架橋可能な成分は、殊に本質的に検出不可能な有利イソシアネート基をそれぞれラジカル架橋可能な成分の質量に対して5質量%未満、有利に1質量%未満含有する。
【0054】
更に、ラジカル架橋可能な成分が異なる二重結合含量、分子量、二重結合当量、分岐点の含量および環状構造要素ならびに長鎖状脂肪族構造要素の含量、およびカルバメート基、ビウレット基、アロファネート基、アミド基および/または尿素基の異なる含量を有していてよい種々のオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタン(メタ)アクリレートの混合物を含有することは、好ましい。
【0055】
この場合、この混合物は、異なるオリゴウレタン(メタ)アクリレートまたはポリウレタン(メタ)アクリレートが混合されるかまたは相応するオリゴウレタン(メタ)アクリレートまたはポリウレタン(メタ)アクリレートの製造の際に同時に異なる生成が生じることによって得ることができる。
【0056】
良好な架橋を達成させるために、有利には、官能基の高い反応を有するラジカル架橋可能な成分、特に有利に官能基としてアクリル系二重結合を含有するラジカル架橋可能な成分が使用される。
【0057】
ウレタン(メタ)アクリレートは、当業者に公知の方法でイソシアネート基含有化合物およびイソシアネート基に対して反応性の基を含有する少なくとも1つの化合物から、これらの成分を任意の順序で混合することによって、場合によっては高められた温度で製造されることができる。
【0058】
この場合、好ましくは、イソシアネート基に対して反応性の基を含有する化合物は、イソシアネート基含有化合物に、有利に数工程で添加される。
【0059】
殊に、ウレタン(メタ)アクリレートは、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートを装入し、その上、別のオレフィン系不飽和カルボン酸のヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシアルキルエステルを添加し、それによって最初にイソシアネート基の一部分を反応させることにより、得ることができる。次に、ジオール/ポリオールおよび/またはジアミン/ポリアミンおよび/またはジチオール/ポリチオールおよび/またはアルカノールアミンの群からの連鎖延長剤が添加され、こうして残留するイソシアネート基は、連鎖延長剤と反応される。
【0060】
更に、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートを連鎖延長剤と反応させ、引続き残留する有機イソシアネート基を少なくとも1つのオレフィン系不飽和ヒドロキシアルキルエステルと反応させることによって、ウレタン(メタ)アクリレートを製造することは、可能である。
【0061】
勿論、前記の2つの方法の全体的な中間形も可能である。例えば、ジイソシアネートのイソシアネート基の一部分は、最初にジオールと反応されることができ、引続きイソシアネート基の他の部分は、オレフィン系不飽和ヒドロキシアルキルエステルと反応され、これに続いて、残留するイソシアネート基は、ジアミンと反応させることができる。
【0062】
一般に、反応は、5〜100℃、有利に20〜90℃、特に有利に40〜80℃、殊に60〜80℃の温度で実施される。
【0063】
この場合、好ましくは、無水条件下で作業される。この場合、無水とは、反応系中の含水量が5質量%以下、有利に3質量%以下、特に有利に1質量%以下であることを意味する。殊に、含水量は、検出限界を下廻る。
【0064】
重合能を有する二重結合の重合を抑制するために、好ましくは、酸素含有ガス下、特に有利に空気または空気−窒素混合物の下で作業される。
【0065】
酸素含有ガスとしては、有利に空気または酸素または空気と使用条件下で不活性のガスとの混合物が使用されることができる。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、低級炭化水素またはその混合物が使用されてよい。
【0066】
酸素含有ガスの酸素含量は、例えば0.1〜22体積%、有利に0.5〜20体積%、特に有利に1〜15体積%、殊に有利に2〜10体積%、殊に4〜10体積%であることができる。勿論、必要に応じて、よりいっそう高い酸素含量が使用されてもよい。
【0067】
反応は、不活性の溶剤、例えばアセトン、イソブチルメチルケトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、ブチルアセテートまたはエトキシエチルアセテートの存在下で実施されてもよい。
【0068】
この場合には、使用されるジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート、連鎖延長剤およびヒドロキシアルキルエステルの種類および量を選択することによって、ウレタン(メタ)アクリレートの他の特性値、例えば二重結合含量、二重結合当量、分岐点の含量、環状構造要素の含量、少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族構造要素の含量、ビウレット基、アロファネート基、カルバメート基、尿素基またはアミド基等の含量は、制御される。
【0069】
更に、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートおよび連鎖延長剤のそれぞれ使用される量を選択することによって、ならびに連鎖延長剤の官能性によって、エチレン系不飽和二重結合と共になお別の官能基、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基および/またはチオール基等を含有するウレタン(メタ)アクリレートを製造することもできる。
【0070】
殊に、ウレタン(メタ)アクリレートが水性物質混合物中で使用される場合には、反応混合物中に存在する有機イソシアネート基の一部分は、なお、特にヒドロキシル基、チオール基、および第1アミノ基および第2アミノ基、殊にヒドロキシル基からなる群から選択されるイソシアネート反応性基、ならびにカルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基およびホスホン酸基からなる群から選択される少なくとも1個、殊に1個の酸基、殊にカルボキシル基を含有する化合物と反応される。この種の適当な化合物の例は、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシプロピオン酸またはγ−ヒドロキシ酪酸、殊にヒドロキシ酢酸(グリコール酸)である。
【0071】
本発明による方法のためには、物質混合物は、多種多様の物理的状態および三次元的な形で存在することができる。
【0072】
即ち、物質混合物は、室温で固体または液状であることができるかまたは流動性であることができる。しかし、物質混合物は、室温で固体であってもよく、よりいっそう高い温度で流動性であってもよく、この場合には、特に熱可塑性の挙動を示す。
【0073】
殊に、この物質混合物は、慣用の有機溶剤含有混合物、水性物質混合物、実質的にかまたは完全に溶剤不含および無水の物質混合物(100%系)、実質的にかまたは完全に溶剤不含および無水の固体粉末、または実質的にかまたは完全に溶剤不含の粉末懸濁物(粉末スラリー)である。更に、デュアル熱硬化性物質混合物は、結合剤および架橋剤が同時に存在する一成分系であってもよいし、結合剤および架橋剤が適用の直前まで互いに別々に存在している二成分系または多成分系であってもよい。
【0074】
方法論的には、本発明により使用することができる物質混合物の製造は、全く特殊性を有しないが、しかし、前記の成分を慣用かつ公知の混合法及び装置、例えば撹拌釜、撹拌ミル、押出機、混練機、ウルトラターラックス(Ultraturrax)、インラインディゾルバ、スタティックミキサ、マイクロミキサ、リングギア分散機(Zahnkranzdispergator)、圧力解放ノズル(Druckentspannungsduese)および/またはマイクロフルイダイザを用いて、特に化学線の排除下に混合しかつ均質化することによって行なわれる。所定の個々の場合に最適な方法の選択は、なかんずく物理的な状態および物質混合物を有する三次元の形に左右される。例えば、熱可塑性の物質混合物がシートまたは貼合せ物の好ましい形で存在する場合には、殊に物質混合物の製造およびその成形のための広幅スリットノズルによる押出がこれに該当する。
【0075】
本発明による方法の範囲内で、物質混合物は、多種多様の使用目的に使用される硬化された材料、殊に熱硬化性材料の製造に使用される。
【0076】
好ましくは、物質混合物は、成形部材およびシートのための出発生成物であるかまたは被覆剤、接着剤およびシール材料である。
【0077】
好ましくは、硬化された材料は、成形部材、シート、コーティング、接着層およびシールである。
【0078】
殊に、被覆剤は、有色性および/または効果付与性、導電性、磁気遮蔽性または蛍光性の単層ラッカー塗膜または多層ラッカー塗膜、殊に有色性および/または効果付与性の多層ラッカー塗膜を形成させるための電着塗装ラッカー、充填剤、舗装用砕石からの保護のためのプライマー、単一被覆用ラッカー(Unidecklacke)、水性ラッカーおよび/またはクリヤーラッカーとして使用される。多層ラッカー塗膜を形成させるためには、通常の公知のウェット・オン・ウェット塗布法および/または押出法ならびに通常の公知のラッカー構造部材またはシート構造部材が使用されてよい。
【0079】
硬化された材料の製造のために、本発明による方法の場合には、本発明による使用することができる物質混合物は、通常の公知の一時的または永続的な基材上に適用される。
【0080】
特に、シートおよび成形部材の製造のためには、通常の公知の一時的な基材、例えば金属テープおよびプラスチックテープ、および金属箔およびプラスチックシート、または金属、ガラス、プラスチック、木またはセラミックからなる中空体が使用され、この中空体は、物質混合物から製造されたシートおよび成形部材が損なわれることなしに容易に取り除かれることができる。
【0081】
物質混合物が、コーティング、接着剤及びシールの製造のために使用される場合には、永続的な基材、例えば移動手段のボディ、殊に自動車のボディおよびその一部分、屋内領域及び屋外領域での建築物ならびにその部分、ドア、窓、家具、ガラス中空体、コイル、容器、梱包材、小部品、光学的、機械的および電子工学的な構造部材ならびに白物製品のための構造部材が使用される。本発明による方法で製造されるシートおよび成形部材は、同様に永続的な基材として使用することができる。
【0082】
方法論的には、本発明による方法で使用することができる物質混合物の適用は、全く特殊性を有しないが、しかし、それぞれの物質混合物に適した全ての通常の公知の適用法、例えば押出、電着塗装、噴霧、粉末吹き付けを含む吹き付け、ナイフ塗布、刷毛塗り、フローコーティング、浸漬、滴下(Traufeln)またはロール塗布によって行なうことができる。有利には、押出法および噴霧塗布法が使用される。適用の際には、物質混合物の早期の架橋を回避するために、化学線の排除下で作業することが推奨される。
【0083】
本発明による方法の1つの好ましい実施態様において、物質混合物は、物質混合物からなる少なくとも1つのシートならびに場合によっては特に熱可塑性プラスチックからなる少なくとも1つの担体シートを含めてシートの形、殊に平面状の貼合せ物の形で使用される。
【0084】
本発明による方法の特に好ましい実施態様において、シートまたは貼合せ物は、硬化前に成形加工される。
【0085】
成形加工は、特に深絞り成形および/または熱可塑性プラスチックでの背面吹付け("射出成形")またはプラスチックの反応性前駆体での背面吹付け("反応射出成形")によって通常の公知の射出成形機中で行なわれる。それによって、なお硬化可能な形成されたシートまたは貼合せ物は、相応する形成されたプラスチック基材上に生じる。
【0086】
硬化可能なシートまたは貼合せ物が少なくとも1つの熱可塑性担体シートを含む場合には、このシートまたは貼合せ物は、担体シートがUV線源から離反するように基材またはその前駆体と結合される。
【0087】
物質混合物は、適用後に冒頭に記載された方法で硬化される。
【0088】
生じる硬化された材料、殊に生じるシート、成形部材、コーティング、接着層およびシールは、移動手段のボディー、殊に自動車のボディー、およびその部材、屋内領域および屋外領域での建築物、およびその部材、ドア、窓、家具、ガラス中空体、コイル、容器、球体、小型部材、例えば雌ねじ、ボルト、リムまたは車輪用キャップ、光学的構造部材、機械的構造部材、電子技術的構造部材、例えばコイル製品(巻き枠、固定子、回転子)ならびに白色製品のための構造部材、例えばラジエーター、家庭用機器、冷蔵庫用被覆材または洗濯機用被覆材を被覆、接着、密閉、包装および梱包するのに有利に好適である。
【0089】
本発明による方法は、クリヤーコートの形成に使用される場合には、特殊な利点を提供する。
【0090】
クリヤーコートは、通常、本質的に目視的な全体の印象(外観)を定める、多層ラッカー塗膜、またはシートまたは貼合せ物の最も外側の層であり、基材および/または多層ラッカー塗膜、またはシートまたは貼合せ物の有色性層および/または効果付与性層を機械的および化学的な損傷および放射線による損傷から保護する。それ故に、硬度、耐引掻き性、耐化学薬品性および黄変に対する安定性を欠くことは、クリヤーコートの場合に特に明確な影響が現れる。しかし、本発明による方法で形成されたクリヤーコートは、僅かな黄変を有するにすぎない。このクリヤーコートは、高い耐引掻性を有し、引掻の後にごく僅かな光沢損失を示す。殊に、光沢損失は、アムテック/キストラー(Amtec/Kistle)による洗浄路シミュレーション試験で極めて僅かである。同時に、前記クリヤーコートは、高い硬度および特に高い耐化学薬品性を有する。とりわけ、前記クリヤーコートは、殊に蒸気噴流での負荷の際に優れた基材付着力および中間層付着力を有する。
【0091】
実施例
製造例1
ラジカル的に硬化可能または架橋可能なウレタンアクリレートの製造
ウレタンアクリレートを次に記載の構成成分から、水素化ビスフェノールAを2−ヒドロキシエチルアクリレート中に60℃で攪拌しながら粗く分散させることにより、製造した。この懸濁液にイソシアネート、ヒドロキノンモノメチルエーテル、1,6−ジ−第三ブチル−パラクレゾールおよびメチルエチルケトンを添加した。ジブチル錫ジラウレートの添加後に、このバッチ量を加熱した。75℃の内部温度で、反応混合物のNCO値が実際にもはや変化しなくなるまで数時間攪拌を行なった。場合によっては反応後になお存在する遊離イソシアネート基を微少量のメタノールの添加によって反応させた。
【0092】
構成成分:
水素化ビスフェノールA104.214g(0.87当量のヒドロキシル基に相当する);BASF AG社のBasonat(登録商標)HI 100=21.5〜22.5%のNCO含量を有するヘキサメチレンジイソシアネートの市販のイソシアヌレート147.422g(0.77当量のイソシアネート基に相当する)(DIN EN ISO 11909);BASF AG社のBasonat(登録商標)HB 100=22〜23%のNCO含量を有するヘキサメチレンジイソシアネートの市販のビウレット147.422g(0.77当量のイソシアネート基に相当する)(DIN EN ISO 11909);Degussa社のVestanat(登録商標)T1890=11.7〜12.3%のNCO含量を有するイソホロンジイソシアネートの市販のイソシアンレート124.994g(0.51当量のイソシアネート基に相当する)(1.13当量のヒドロキシル基に相当する)、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.328g(固体に対して0.05%);1,6−ジ−第三ブチル−パラクレゾール0.655g(固体に対して0.1%);メチルエチルケトン(固体に対して70%);ジブチル錫ジラウレート0.066g(固体に対して0.01);メタノール4500g(0.14当量のヒドロキシル基に相当する)。
【0093】
こうして得られたウレタンアクリレート(ラジカル架橋可能な成分)は、次の特性値を有していた:1分子当たり平均で2.2個のエチレン系不飽和二重結合;ウレタンアクリレート固体1000g当たり1.74個の二重結合の二重結合含量;1分子当たり平均で2.2個の分岐点;ウレタンアクリレートの固体含量に対して環状構造要素25質量%。
【0094】
製造例2
UV線で硬化可能なクリヤーラッカーの製造
適当な攪拌容器中に製造例1のウレタンアクリレートの上記の有機溶液100.00質量部を装入した。
【0095】
装入のために、30分間でTinuvin(登録商標)2921.0質量部(ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートとの混合物をベースとするCiba Specialty Chemicals社の市販のHALS光保護剤)とTinuvin(登録商標)4002.0質量部(2−(4−((2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)ー4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと2−(4−((2−ヒドロキシ−3−トリドデシルオキシプロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)ー4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンとの混合物をベースとするCiba Specialty Chemicals社の市販の光保護剤)とLucirin(登録商標)TPO-L0.8質量部(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシドをベースとするBASF AG社の市販の光開始剤)とIrgacure(登録商標)1842.40質量部(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンをベースとするCiba Specialty Chemicals社の市販の光開始剤)とByk(登録商標)3060.2質量部(ポリエーテルで変性されたポリジメチルシロキサンをベースとするByk Chemie社の市販の添加剤)との混合物を絶えず攪拌しながら室温で添加し、生じる混合物を3−ブトキシ−2−プロパノールで48%の固体含量に調節した。引続き、生じる混合物を室温で30分間攪拌した。
【0096】
製造例3
被覆された熱可塑性担体シートの製造
担体シートとして800μmの厚さのBASF AG社のLuran(登録商標)S778からなる熱可塑性シートを使用した。担体シートの被覆すべき表面を0.5ワットのコロナ放電の前処理に掛けた。
【0097】
このシートの片面をメタリック水性ラッカー(色調:"シルバーメタリック")で被覆した。ベースラッカーを37cmの幅の箱形ナイフ塗布装置(Kastenrakel)で0.5m/分のベルト速度で担体シート上に塗布した。この塗布を0.2m/秒の弱い空気流、21±1℃の一定の温度および65±5%の一定の相対空気湿度で実施した。生じる湿ったベースラッカー層(第1のベースラッカー層)の層厚は、100μmであった。この湿ったベースラッカー層を前記条件下で3分間通気し、引続き第1のベースラッカーに対して4質量%の揮発性物質の残留含量になるまで乾燥した。約20μmの層厚の生じる状態調節された第1のベースラッカー層を冷却ロールで30℃未満の表面温度に調節した。
【0098】
状態調節されかつ温度処理された第1のベースラッカー層上に同じベースラッカーを次の条件下で空気圧吹付け塗布のためのシステムを用いて塗布した:
流出速度:100ml/分:
空気圧:噴霧空気:2.5バール;クラクション空気:2.5バール;
ノズルの処理速度は、噴霧噴流の60%が重なるような程度の高さである;
ノズルとシートの間隔:30cm。
【0099】
この塗布を0.5m/秒の弱い空気流(シートに対して垂直方向の流れ)、21±1℃の一定の温度および65±5%の一定の相対空気湿度で実施した。生じる湿ったベースラッカー層(第2のベースラッカー層)の層厚は、50±2μmであった。第2のベースラッカー層を前記条件下で3分間通気し、引続き第2のベースラッカー層に対して4質量%の揮発性物質の残留含量になるまで乾燥した。この場合、空気温度は、90℃であり、空気湿度は、10g/m3であり、かつ空気速度は、10m/秒であった。約10μmの層厚の生じる状態調節された第2のベースラッカー層を冷却ロールで30℃未満の表面温度に調節した。
【0100】
状態調節されかつ温度調節された第2のベースラッカー上に37cmの幅の箱形ナイフ塗布装置(Kastenrakel)で製造例2に記載のUV線で硬化可能なクリヤーラッカーを塗布した。この塗布を0.2m/秒の弱い空気流、21±1℃の一定の温度および65±5%の一定の相対空気湿度で実施した。生じる湿ったクリヤーラッカー層の層厚は、120μmであった。このクリヤーラッカー層を前記条件下で6分間通気し、引続きクリヤーラッカー層に対して2.5質量%の揮発性物質の残留含量になるまで乾燥した。この場合、炉内の空気温度は、全ての乾燥段階に対して119℃であった。生じる乾燥されているが、しかし、なお完全には硬化されていない、60μmの層厚の層を、冷却ロールで30℃未満の表面温度に調節し、ポリプロピレンからなる、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10335620号明細書A1、実施例1に記載の保護フィルム(Bischof+Klein社, Lengerich在の市販製品GH-X527)で被覆した。
【0101】
生じる多層シートをロールに巻き取り、この形でさらに使用するまで貯蔵した。
【0102】
実施例1〜3
プラスチック成形部材の製造
プラスチック成形部材を次の一般的な規定により製造した:
製造例3に記載の多層シートを前形成した。引続き、透明のなお完全には硬化されていない被覆を保護フィルムの引き剥がし後にUV線で完全に架橋した。ポジ型として立方体を使用した。生じる前形成された部材を金型内に挿入した。この金型を閉鎖し、立方体を液状プラスチック材料で背面吹付けした。
【0103】
照射のために、Arccure社のUV照射器を使用した(ドープされていない水銀管)。この照射器は、UV線が直接にプラスチック成形部材に衝突するのではなく、間接的にのみ反射された放射線が2本の縞状の光束でプラスチック成形部材に衝突するように構成されていた。2本の縞状の反射光のためには、全てのUVスペクトルを反射する("幅広く")か、UVスペクトルの長波長成分をよりいっそう強くプラスチック成形部材上に反射する("A+B")か、またはUVスペクトルの短波長成分をよりいっそう強く試料上に反射する("C")異なるレフレクターを使用することができた。実施例1および3〜6の場合には、UV露光装置へのプラスチック成形部材の通過方向に見て、レフレクターの配置:1."幅広"および2."C"を選択した。実施例2の場合には、レフレクターの配置:1."A+B"および2."A+B"を選択した。
【0104】
プラスチック成形部材を酸素濃度が減少された二酸化炭素雰囲気中で照射した。
【0105】
表には、UV線源とプラスチック成形部材のクリヤーラッカー層の表面との間の使用される最短距離、クリヤーラッカー層上の雰囲気の酸素含量、スペクトル分布ならびにそれに属する線量および出力、ならびにプラスチック成形部材の生じるクリヤーコートの耐引掻き性および付着力が記載されている。
【0106】
【表1】

【0107】
洗浄路シミュレーション試験でAmtec Kistler社の実験室用洗浄路を使用した(T. KLimmasch, T. Engbert, Technologietage, Koeln, DFO, Berichtsband 32, 第59〜66頁, 1997参照)。応力を洗浄路シミュレーション試験後の試料の残留光沢の測定および洗浄ベンジンで含浸された雑巾での次の拭き取りによって測定した。80%を上廻る残留光沢度を達成した。
【0108】
ダイムラー−ベンツ蒸気噴射試験(Daimler-Benz-Dampfstrahlpruefung)のための当業界で公知の試験仕様書に記載の蒸気噴射試験のために、十字の印を実施例1〜6のクリヤーコート中に刻み込んだ。刻み込まれた位置に噴射水を吹き付けた(Walter社LTA2型の機器;圧力:67バール;水温:60℃;ノズル先端/試験体の距離:10cm;負荷時間:60秒;機器調節:F1)。
【0109】
塗料の剥げ落ちおよび浸潤の程度を目視的に評価した。結果は、万事オーケーであった(In Ordnung)。
【0110】
表の結果は、実施例1〜6のプラスチック成形部材のクリヤーコートが、殊に実際の条件下で極めて良好な中間層付着力および高い耐引掻き性を有することを示す。
【0111】
更に、実施例1〜6のプラスチック成形部材のクリヤーコートは、卓越しており、DIN 67530による極めて高い光沢(20°)を示した。前記のクリヤーコートは、堅固で柔軟性を有し、耐化学薬品性であり、かつ支障のある黄変を有していなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学線で硬化可能な物質混合物(物質混合物)からなる硬化された材料を、UV線での照射によって製造するための方法において、
次のスペクトル分布および線量のUV線:
波長λ=400〜320nm;線量=500〜2500mJ/cm2
波長λ=320〜290nm;線量=700〜3000mJ/cm2
波長λ=290〜180nm;線量=100〜500mJ/cm2を使用することを特徴とする、化学線で硬化可能な物質混合物(物質混合物)からなる硬化された材料を、UV線での照射によって製造するための方法。
【請求項2】
次のスペクトル分布および線量のUV線:
波長λ=400〜320nm;線量=750〜2000mJ/cm2
波長λ=320〜290nm;線量=1000〜2200mJ/cm2
波長λ=290〜180nm;線量=200〜450mJ/cm2を使用する、請求項1記載の方法。。
【請求項3】
次のスペクトル分布および出力のUV線:
波長λ=400〜320nm;出力=100〜600mW/cm2
波長λ=320〜290nm;出力=100〜600mW/cm2
波長λ=290〜180nm;出力=20〜120mW/cm2を使用する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
次のスペクトル分布および出力のUV線:
波長λ=400〜320nm;出力=120〜550mW/cm2
波長λ=320〜290nm;出力=140〜550mW/cm2
波長λ=290〜180nm;出力=30〜100mW/cm2を使用する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
照射の場合、物質混合物の表面へのUV線源の距離は、20〜250mmである、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記距離は40〜100mmである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
照射の場合、物質混合物の表面で雰囲気中の酸素含量は減少されている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
雰囲気中の酸素含量は、18体積%未満である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
物質混合物は、付加的に物理的および/または熱的に硬化可能である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
物質混合物は、シートとして存在するかまたは貼合せ物の成分として存在する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
物質混合物は、硬化後に少なくとも107.5Paのゴム弾性範囲内の貯蔵弾性率E’および最大0.10の20℃での損失ファクターtanδを有し、この場合この貯蔵弾性率E’および損失ファクターtanδは、40±10μmの層厚を有する自由被膜に対する動的機械的熱分析(DMTA)で測定されたものである、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
物質混合物は、固体1g当たり0.5〜6ミリ当量のUV線で活性化可能な結合の含量を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
UV線で活性化可能な結合の含量は、固体1g当たり1〜4ミリ当量である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
UV線で活性化可能な結合は、炭素−炭素二重結合である、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
物質混合物は、
(i)1つ以上のオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/または1つ以上のポリウレタン(メタ)アクリレートを含み、および
(ii)統計的平均で1分子当たり1個を上廻るオレフィン系不飽和二重結合、
(iii)1000〜10000ダルトンの数平均分子量、
(iv)ラジカル架橋可能な成分1000g当たり1.0〜5.0個の二重結合の二重結合含量、
(v)統計的平均で1分子当たり1個を上廻る分枝点、
(vi)それぞれ成分の質量に対して5〜50質量%の環状構造要素および
(vii)鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族構造要素を有する少なくとも1つのラジカル架橋可能な成分を含有し、この場合ラジカル架橋可能な成分は、カルバメート基および/またはビウレット基および/またはアロファネート基および/または尿素基および/またはアミド基を含有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
物質混合物は、被覆剤、接着剤、シール材料、および成形部材およびシートのための出発材料である、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
硬化された材料は、コーティング、接着層、シール、成形部材およびシートである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
被覆剤は、コーティングの形成に使用される、電着塗装ラッカー、充填剤、舗装用砕石からの保護のためのプライマー、単一被覆用ラッカー、ベースラッカーまたはクリヤーラッカーである、請求項16記載の方法。
【請求項19】
コーティングは、電着塗装ラッカーコーティング、充填剤コーティング、舗装用砕石からの保護のためのプライマーコーティング、単一被覆用ラッカーコーティング、ベースラッカーコーティングまたはクリヤーラッカーコーティングである、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
コーティングは、有色性および/または効果付与性の多層ラッカー塗膜、またはシートまたは貼合せ物である、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
請求項1から19までのいずれか1項に記載の硬化された材料の製造法において、物質混合物を永続的または一時的な基材上に塗布し、UV線で照射することを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項に記載の硬化された材料の製造法。
【請求項22】
基材は、金属、プラスチック、ガラス、木材、織物、皮革、天然石および人造石、コンクリート、セメントまたは前記材料の複合材からなる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
成形部材およびシートを一時的な基材から取り除く、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
永続的な基材は、移動手段のボディおよびその部材、屋内領域および屋外領域での建築物およびその部材、ドア、窓、家具、ガラス中空体、コイル、容器、包装品、小型部材、光学的構造部材、機械的構造部材および電子技術的構造部材、ならびに白色製品のための構造部材である、請求項21から23までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2008−545829(P2008−545829A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512797(P2008−512797)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062139
【国際公開番号】WO2006/125723
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】