説明

肺癌を診断および治療する組成物並びに方法

本発明は、肺細胞状態の診断を補助するための方法、および肺癌細胞の細胞溶解またはアポトーシスについての潜在的治療剤をスクリーニングするための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌生物学の分野に関する。特に、本発明は、新生物肺細胞を同定するための組成物および方法を提供する。また、これらの方法によって同定される新生物肺細胞の増殖を阻害するための組成物および方法を提供する。なお、本出願は、2003年12月2日に出願された米国仮出願第60/526,528号に対して、米国特許法第119項(e)の下で優先権を主張し、その内容は、参照として本開示に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
医学研究におけるいちじるしい進歩にもかかわらず、癌は、米国で二番目に主な死因のままである。先進工業国では、およそ5人に1人が癌で死亡する。外科的切除、放射線療法、および化学療法などの臨床看護の従来の様式では、特に固形腫瘍について、有意な不全率を有する。不全は、初期腫瘍が、感受性が鈍いためか、または当初の部位および/または転移での再成長による再発のためか、いずれかによって生じる。
【0003】
肺癌は、世界的に最も一般的悪性腫瘍のうちの1つであり、男性における癌死の第二の主因である。American Cancer Society, Cancer Facts and Figures, 1996, Atlantaを参照されたい。1997年には、約178,100の新たな肺癌の症例が診断されており、癌診断の13%の原因であった。1997年には、肺癌による約160,400人の死は、全ての癌死の29%の原因であった。肺癌についての1年生存率は、主に外科的技術の改善により、1973年の32%から1993年の41%に増大した。全ての段階を合わせた5年生存率は、14%だけである。生存率は、疾患がまだ局在しているときに検出された場合に関して48%であるが、早期に発見されるのは、肺癌の15%だけである。種々の形態の肺癌の中で、非小細胞肺癌(NSCLC)は、毎年全ての新たな肺癌症例のほぼ80%を占める。NSCLCと診断される患者に対しては、外科的切除が、意味ある生存の唯一のチャンスを提供する。一方、小細胞肺癌は、肺癌のうち最も悪性かつ最も速く増殖する形態であり、肺癌の新たな症例の残りの約20%の原因である。原発腫瘍は、一般に化学療法に応答するが、広範な転移を伴う。診断時の生存期間の中央値は、約1年であり、5%の5年生存率である。
【0004】
外科的切除、放射線治療、および化学療法の改善を含む癌療法の大々的進歩にもかかわらず、肺癌のための良好な処置は、特に癌細胞の早期検出に依存する。良性腫瘍を生じる新形成は、外科的に腫瘤を除去することによって完全に治癒し得る。腫瘍が悪性になる場合は、周囲組織の浸潤によって明らかにされるように、これを根絶するのがずっと困難となる。したがって、当技術分野において、早期段階に疾患を検出するための方法の開発に対して、依然としてかなりの要望がある。また、当技術分野において、疾患の進行をモニターし、または予測する診断法、並びに種々の関連する病状を治療する方法を開発することに対し、差し迫った要望が存在する。本発明は、これらの要望を満たし、同様に関連する利点を提供する。
【発明の開示】
【0005】
発明の開示
本発明は、肺細胞の状態の診断を補助するための、正常肺細胞と新生物肺細胞とを同定し、および/または区別するための、並びに被検体の新生物肺細胞の細胞溶解、アポトーシス、もしくは死滅を誘導し、および/または被検体に新生物肺細胞が存在することと関連する症候を寛解させるための潜在的治療剤を同定するための方法を提供する。新生物肺細胞の細胞溶解、アポトーシス、または死滅を誘導し、および/またはインビボで新生物肺細胞と関連する症候を寛解させる組成物並びに方法がさらに提供される。
【0006】
したがって、一つの態様は、肺細胞における遺伝子の差動的発現が肺細胞の新生物状態を表す肺細胞を含むか、含むことが疑われる試料から単離された差動的に発現された遺伝子の存在についてスクリーニングすることにより、肺細胞の状態を診断するための方法である。一つの局面において、遺伝子は、正常肺細胞と比較して、新生物扁平上皮肺細胞または肺腫瘍細胞においてより発現され、かつポリミン(Porimin)、タンパク質チロシンホスファターゼ受容体K型(「PTPRTK」)、GITR(a/k/a TNFRSF18)、リンホトキシンβ-受容体(「LTβR」)、および上皮膜タンパク質2(「EMP2」)から選択される。もう一つの局面において、遺伝子は、新生物腺癌肺細胞または腫瘍においてより発現される。遺伝子は、レクチン様NK受容体(「LLNKR」)、4Span4(a/k/a「MS4A8B」)、タンパク質チロシンホスファターゼ受容体C型(a/k/a「CD45」)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー14(「TNFRSF14」、a/k/a「LIGHTR」)、Toll様受容体2(「TLR-2」)、およびDKF2P56400823(「DKFZ」)からなる群より選択される。さらに他の局面において、これらの遺伝子は、肺癌細胞と関連することが従来公知ではなく、したがって、診断および予後マーカー、並びに治療標的を提供する。
【0007】
検出は、たとえば、遺伝子から転写されるmRNAの量、または遺伝子から転写されるmRNAの逆転写によって産生されたcDNAの量、または遺伝子によってコードされるポリペプチドもしくはタンパク質の量を検出することを含む、任意の適切な方法によることができる。これらの方法は、試料に基づいて、または高スループット解析用に修飾することにより、試料に対して行うことができる。加えて、細胞試料から単離された定量的完全もしくは部分的転写物またはタンパク質配列を含むデータベースにより、転写物または発現された遺伝子産物の存在および量について検索し、および解析することができる。本方法は、特に扁平上皮腫瘍または肺の腺癌の診断を補助するために有用である。
【0008】
本発明のもう一つの局面は、細胞溶解、アポトーシス、もしくは細胞死を誘導する治療剤を同定するか、または肺新形成および腫瘍を治療するためのスクリーニングであって、肺細胞および/または腫瘍が下記の表1で同定される少なくとも1つの遺伝子の差動的発現によって特徴づけられるスクリーニングである。本方法は、この遺伝子型を有することが以前に同定された細胞を、潜在性薬剤の有効な量と接触させる工程、および細胞の細胞溶解または除去についてアッセイする工程を含む。
【0009】
(表1A)扁平上皮腫瘍肺癌標的に過剰発現される

【0010】
(表1B)肺腺癌肺癌標的に過剰発現される

*ウェブアドレス= ncbi.nlm.nih.gov/LocusLink/list.cgi.
【0011】
表1で同定される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを、異なる時間にてアッセイし、遺伝子(転写物または発現産物)の発現レベルを比較して発現が増減したかどうかを決定し、これにより被検体における肺癌をモニターすることにより、被検体における肺癌をモニターするための方法が本発明によってさらに提供される。診断法または薬物スクリーニングに使用するためのキットが、さらに本明細書に提供される。キットは、表1で同定される少なくとも1つの遺伝子の発現を検出する少なくとも1つの薬剤(たとえば、プローブ、プライマー、または抗体)と使用説明書とを含む。
【0012】
タンパク質、これらの断片、またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(本明細書において、遺伝子発現産物とも称される)、これらのポリヌクレオチドを含む遺伝子送達媒体、およびこれらのポリヌクレオチドを含む宿主細胞がさらに提供される。タンパク質、ポリペプチド、またはこれらの断片は、これらの分子を特異的に認識し、結合する抗体を作製するためにも有用である。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであることができる。これらの抗体は、表1で同定される遺伝子から発現されるタンパク質またはポリペプチドを単離するために使用することができる。これらの抗体は、被検体に投与されるときに、受動的免疫療法のためにさらに有用である。
【0013】
また、本発明は、表1の遺伝子もしくはその発現産物および/またはこれらの断片を含む単離された宿主細胞および組換え宿主細胞を提供する。細胞は、原核生物または真核生物であることができ、たとえば例示するだけであるが、細菌、酵母、動物、哺乳類、ヒト、およびたとえば、幹細胞、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)、もしくはT細胞などのこれらの特定のサブタイプのいずれか1つまたは複数であることができる。
【0014】
加えて、本発明は、本明細書に記載されたような、タンパク質、ポリペプチド、およびこれらの断片を被検体に送達することにより、被検体に対する免疫応答を誘導する能動免疫療法のための方法を提供する。一つの局面において、タンパク質および/またはこれらのポリペプチド/ペプチドは、MHC分子の状況に送達することができる。
【0015】
また、本発明は、MHC分子の状況において、上記表1で同定される遺伝子から発現されたポリペプチド断片を提示する抗原提示細胞の存在下で、および犠牲にして、インビボまたはインビトロで産生される免疫エフェクター細胞を提供する。また、本発明は、被検体に対してこれらの免疫エフェクター細胞の有効な量を投与することを含む、養子免疫治療の方法を提供する。
【0016】
本発明のさらにもう一つの態様は、表1で同定される遺伝子の差動的発現によって特徴づけられる肺細胞の細胞溶解または除去を、治療剤と細胞を接触させることよって誘導する方法である。
【0017】
配列表の簡単な記述
配列番号:1は、ポリミンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。
【0018】
配列番号:2は、ポリミン遺伝子からコードされるポリペプチド配列である。
【0019】
配列番号:3は、PTPRTKポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。
【0020】
配列番号:4は、PTPRTK遺伝子からコードされるポリペプチド配列である。
【0021】
配列番号:5は、GITRポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。
【0022】
配列番号:6は、GITR遺伝子からコードされるポリペプチド配列である。
【0023】
配列番号:7は、LTβRポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。
【0024】
配列番号:8は、LTβR遺伝子からコードされるポリペプチド配列である。
【0025】
配列番号:9は、EMP2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。
【0026】
配列番号:10は、EMP2遺伝子からコードされるポリペプチド配列である。
【0027】
配列番号:11は、LLT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。
【0028】
配列番号:12は、LLT1遺伝子からコードされるポリペプチド配列である。
【0029】
配列番号:13は、4Span4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。
【0030】
配列番号:14は、4Span4遺伝子からコードされるポリペプチド配列である。
【0031】
配列番号:15は、CD45ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。
【0032】
配列番号:16は、CD45遺伝子からコードされるポリペプチド配列である。
【0033】
配列番号:17は、LIGHTRポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。
【0034】
配列番号:18は、LIGHTR遺伝子からコードされるポリペプチド配列である。
【0035】
配列番号:19は、Toll様受容体2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。
【0036】
配列番号:20は、Toll様受容体2遺伝子からコードされるポリペプチド配列である。
【0037】
配列番号:21は、DKFZポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。
【0038】
配列番号:22は、DKFZ遺伝子からコードされるポリペプチド配列である。
【0039】
本発明を実施する様式
本開示を通じて、様々な刊行物、特許、および公開された特許明細書が、識別する引用によって参照される。これらの刊行物、特許、および公開された特許明細書の開示は、本発明が属する技術分野の現状をより詳しく説明するために、本開示内に参照として本明細書に組み入れられる。
【0040】
定義
本発明の実施は、特に明記していなければ、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来の技術を用い、これらは当業者の範囲内である。たとえば、Sambrook, Fritsch and Maniatis, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd edition (1989); CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel, et al. eds., (1987)); the series METHODS IN ENZYMOLOGY (Academic Press, Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M.J. Mac Pherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, および ANIMAL CELL CULTURE (R.I. Freshney, ed. (1987))を参照されたい。
【0041】
本明細書に使用される特定の用語は、以下に定義された意味を有する。
【0042】
本明細書および請求の範囲において用いられるように、単数形「一つの」および「その」には、文脈が明白に他の意味を指示していない限り、複数の言及を含む。たとえば、「細胞」という用語には、その混合物を含む複数の細胞が含まれる。
【0043】
「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはこれらの類似体のいずれかの任意の長さのヌクレオチドの重合体形態をいう。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができ、既知または未知の任意の機能を遂行してもよい。以下のものは、ポリヌクレオチドの非限定の例である:遺伝子または遺伝子断片(たとえば、プローブ、プライマー、EST、またはSAGEタグ)、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝のポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾されたヌクレオチドを含むことができる。存在する場合は、ヌクレオチド構造に対する修飾は、重合体構築の前または後に与えることができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断することができる。ポリヌクレオチドは、標識化成分での抱合などにより、重合後にさらに修飾することができる。また、本用語は、二本鎖および一本鎖分子の両方をいう。他に明記され、または必要でない限り、ポリヌクレオチドである本発明の任意の態様は、二本鎖形態と、二本鎖形態を構成することが公知であるか、または予測される2つの相補的一本鎖形態のそれぞれの両方を包含する。
【0044】
ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド塩基の特定の配列:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G)およびチミン(T)で構成される。したがって、「ポリヌクレオチド配列」という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表現である。このアルファベット表現は、中央処理装置を有し、かつ機能的ゲノム科学および相同性検索などの生物情報学的適用のために使用されるコンピュータのデータベースに入力することができる。
【0045】
「遺伝子」は、転写され、翻訳された後に特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含むポリヌクレオチドをいう。本明細書に記載されている任意のポリヌクレオチド配列は、これらに付随する遺伝子のより大きな断片または全長コード配列を同定するために使用してもよい。より大きな断片配列を単離する方法は、当業者に公知である。
【0046】
「遺伝子産物」または「遺伝子発現産物」は、遺伝子が転写され、翻訳されるときに産生されるアミノ酸(たとえば、ペプチドまたはポリペプチド)をいう。
【0047】
「ポリペプチド」という用語は、「タンパク質」という用語と交換可能に使用され、その最も広い意味において、2つまたはそれ以上のサブユニットのアミノ酸、アミノ酸類似体、またはペプチド擬態の化合物をいう。サブユニットは、ペプチド結合によって連結されていてもよい。もう一つの態様において、サブユニットは、その他の結合、たとえばエステル、エーテルなどによって連結されていてもよい。本明細書に使用される、「アミノ酸」という用語は、グリシンおよびDまたはL光学異性体、並びにアミノ酸類似体およびペプチド擬態を含む天然および/または非天然または合成アミノ酸のいずれかを意味する。3つまたはそれ以上のアミノ酸のペプチドは、ペプチド鎖が短ければ一般的にオリゴペプチドと呼ばれる。ペプチド鎖が長い場合、ペプチドは一般的にポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる。
【0048】
「転写制御下」とは、当技術分野で十分に理解されている用語であり、ポリヌクレオチド配列、通常はDNA配列の転写が、転写の開始に関与するか、または転写を促進するエレメントに、機能的に結合していることに依存することを示す。「機能的に連結された」とは、エレメントが、これらが機能するように配置されている近接位置を意味する。
【0049】
本明細書に使用される「ポリミン遺伝子」という用語は、本明細書に記載されているような生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする、隣接するポリヌクレオチド配列の少なくともORFをいう。Zhang, et al.(2001)PNAS 98(17):9778-9783は、COS細胞発現クローニングによってポリミンcDNAをJurkat細胞cDNAライブラリーから単離した。3,337bp cDNAは、567bpのORFを有し、189アミノ酸のI型膜貫通タンパク質をコードする。細胞外ドメインは、多くのO連結され、および7つのN連結されたグリコシル化部位を含むことが示され、これをムチン・ファミリーの新たなメンバーとして定義した。著者は、Jurkat細胞に発現したときに、Hisタグを付けたポリミンcDNA構築物が、内因性ポリミンタンパク質の分子量に合致した特異的110kDaサイズ・タンパク質の産生を生じたことを報告する。COS7トランスフェクタントに発現されたポリミン受容体の架橋により、細胞内乳酸脱水素酵素の漏れによって測定される細胞膜統合性および細胞死の喪失を生じた。ポリミン遺伝子は、ヒト染色体11q22.1にマップされ、133kbのゲノムDNAにわたる4つのエキソンで構成される。
【0050】
配列番号:1は、ポリミン遺伝子の一例であり、その他にも、当技術分野において公知であり、その例には、表1で同定される配列および本明細書で定義したとおりのポリミン遺伝子発現産物をコードする配列を含むが、これらに限定されるわけではない。また、配列番号:2のポリペプチドをコードする配列、およびデフォルト・パラメーター下で実行されるパーセント同一性配列分析によって決定すると配列番号:1などの例示的配列と少なくとも90%または少なくとも95%の相同性を有するものなどの生物学的に等価の配列もこの定義に含まれる。また、高ストリンジェンシー条件下でマイナス鎖にハイブリダイズする能力によって同定される生物学的に同等の遺伝子またはポリヌクレオチドもこの定義内にある。非ヒト遺伝子を使用することが望ましく、そのポリヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。たとえば、UniGene Cluster Hs. 172089を参照されたい。また、ポリヌクレオチド断片も当技術分野において公知であり、たとえばGenbankアクセッション番号BF797608.1;BG506543.1;およびBF105935.1下で同定されるものを含むが、これらに限定されるわけではない。これらは、特にプローブまたはプライマーとして有用である。
【0051】
本明細書に使用される「ポリミン遺伝子発現産物、タンパク質、またはポリペプチド」という用語は、遺伝子発現系、たとえば細菌またはその他の原核細胞、酵母細胞、サル、ウシ、もしくはヒト細胞などの哺乳類細胞に関係なく、配列番号:2のアミノ酸配列、並びに上で同定されるポリミン遺伝子から転写および翻訳されたアミノ酸配列を含む。本用語は、組織試料から単離された、単離された天然に存在するポリペプチド、並びに組換えで産生されたタンパク質およびポリペプチドを含む。また、本用語は、配列番号:2に対して少なくとも90%または少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列を有し、かつ本明細書に記載されているとおりの生物活性を有するポリペプチドを含む。相同的アミノ酸配列の例は、配列番号:2のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは保存的アミノ酸置換によって修飾されたその他のポリミン遺伝子発現産物を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0052】
本明細書に使用される「タンパク質チロシンホスファターゼ受容体K型(PTPRTK」)」という用語は、本明細書に記載したとおりの生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする、隣接するポリヌクレオチド配列の少なくともORFをいう。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、チロシンホスファターゼ(PTP)ファミリーのメンバーである。PTPは、細胞増殖、分化、分裂周期、および腫瘍化転換を含む種々の細胞プロセスを制御するシグナリング分子であることがLocusLink www.ncbi.nlm.nih.gov/LocusLinkによって報告されている。このPTPは、細胞外領域、単一の膜貫通領域、および2つの直列型触媒ドメインを有し、したがって、受容体型PTPを表す。細胞外領域は、メプリン(meprin)-A5抗原-PTPmu(MAM)ドメイン、Ig様ドメインを含むことが報告されており、4つのフィブロネクチンIII型様繰り返しが、おそらく接合部におけるβおよびγ-カテニンとの相互作用を介して同種親和性の細胞間の相互作用を媒介することが報告された。この遺伝子の発現は、TGF-β1によって刺激されることが見いだされており、これは、ケラチノサイト増殖の阻害にとって重要であるかもしれない。
【0053】
配列番号:3は、PTPRTK遺伝子の一例であり、その他にも、当技術分野において公知であり、その例には、表1で同定される配列、および本明細書で定義したとおりのPTPRTK遺伝子発現産物をコードする配列を含むが、これらに限定されるわけではない。また、配列番号:4のポリペプチドをコードする配列、およびデフォルト・パラメーター下で実行されるパーセント同一性配列分析によって決定すると、配列番号:3などの例示的配列と少なくとも90%または少なくとも95%の相同性を有するものなどの生物学的に等価の配列もこの定義に含まれる。また、高ストリンジェンシー条件下でマイナス鎖にハイブリダイズする能力によって同定される生物学的に同等の遺伝子またはポリヌクレオチドもこの定義内にある。非ヒト遺伝子を使用することが望ましく、そのポリヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。たとえば、UniGene Cluster Hs.5796を参照されたい。また、ポリヌクレオチド断片も当技術分野において公知であり、たとえばGenbankアクセッション番号BM925031.1;BI755683.1;およびBG680354.1下で同定されるものを含むが、これらに限定されるわけではない。これらは、特にプローブまたはプライマーとして有用である。
【0054】
本明細書に使用される「PTPRTK遺伝子発現産物、タンパク質、またはポリペプチド」という用語は、遺伝子発現系、たとえば細菌またはその他の原核細胞、酵母細胞、サル、ウシ、もしくはヒト細胞などの哺乳類細胞に関係なく、配列番号:4のアミノ酸配列、並びに上で同定されるPTPRTK遺伝子から転写および翻訳されたアミノ酸配列を含む。本用語は、組織試料から単離された、単離された天然に存在するポリペプチド、並びに組換えで産生されたタンパク質およびポリペプチドを含む。また、本用語は、配列番号:4に対して少なくとも90%または少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列を有し、かつ本明細書に記載されているとおりの生物活性を有するポリペプチドを含む。相同的アミノ酸配列の例は、配列番号:4のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは保存的アミノ酸置換によって修飾されたその他のPTPRTK遺伝子発現産物を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0055】
本明細書に使用される「GITR遺伝子」という用語は、本明細書に記載したとおりの生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする、隣接するポリヌクレオチド配列の少なくともORFをいう。前記LocusLinkは、この遺伝子によってコードされるタンパク質がTNF受容体スーパーファミリーのメンバーであることを報告する。この受容体は、T細胞活性化に発現増加を有することが報告されており、これが、CD25(+)CD4(+)抑制性T細胞によって維持される優性の免疫学的自己寛容において重要な役割を果たすと考えられる。また、マウスにおけるノックアウト研究は、この受容体の役割が、CD3駆動T細胞活性化およびプログラム細胞死の制御にあることを示唆する。異なるアイソフォームをコードするこの遺伝子の3つの選択的にスプライスされた転写物変異体が報告された。
【0056】
配列番号:5は、GITR遺伝子の一例であり、その他にも、当技術分野において公知であり、その例には、表1で同定される配列、および本明細書で定義したとおりのGITR遺伝子発現産物をコードする配列を含むが、これらに限定されるわけではない。また、配列番号:6のポリペプチドをコードする配列、およびデフォルト・パラメーター下で実行されるパーセント同一性配列分析によって決定すると配列番号:5などの例示的配列と少なくとも90%または少なくとも95%の相同性を有するものなどの生物学的に等価の配列もこの定義に含まれる。また、高ストリンジェンシー条件下でマイナス鎖にハイブリダイズする能力によって同定される生物学的に同等の遺伝子またはポリヌクレオチドもこの定義内にある。非ヒト遺伝子を使用することが望ましく、そのポリヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。たとえば、UniGene Cluster Hs.212680を参照されたい。また、ポリヌクレオチド断片も当技術分野において公知であり、たとえばGenbankアクセッション番号:BI911657.1;AI499936.1;AI214481.1;およびAI923712.1下で同定されるものを含むが、これらに限定されるわけではない。これらは、特にプローブまたはプライマーとして有用である。
【0057】
本明細書に使用される「GITR遺伝子発現産物、タンパク質、またはポリペプチド」という用語は、遺伝子発現系、たとえば細菌またはその他の原核細胞、酵母細胞、サル、ウシ、もしくはヒト細胞などの哺乳類細胞に関係なく、配列番号:6のアミノ酸配列、並びに上で同定されるGITR遺伝子から転写および翻訳されたアミノ酸配列を含む。本用語は、組織試料から単離された、単離された天然に存在するポリペプチド、並びに組換えで産生されたタンパク質およびポリペプチドを含む。また、本用語は、配列番号:6に対して少なくとも90%または少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列を有し、かつ本明細書に記載されているとおりの生物活性を有するポリペプチドを含む。相同的アミノ酸配列の例は、配列番号:6のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは保存的アミノ酸置換によって修飾されたその他のGITR遺伝子発現産物を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0058】
本明細書に使用される「リンホトキシンβ-受容体(「LTβR」)遺伝子」という用語は、本明細書に記載したとおりの生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする、隣接するポリヌクレオチド配列の少なくともORFをいう。前記LocusLinkは、この遺伝子によってコードされるタンパク質が腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーのメンバーであることを報告する。これは、TおよびBリンパ球以外の上皮および骨髄球性系統の細胞を含む、大部分の細胞型の表面に発現されている。タンパク質は、リンホトキシン膜型(リンホトキシン-αおよびリンホトキシン-βの複合体)に特異的に結合する。コードされるタンパク質およびそのリガンドは、リンパ組織および形質転換細胞の発生および組織化に役割を果たす。コードされるタンパク質の活性化は、アポトーシスをトリガーすることが報告されている。
【0059】
配列番号:7はLTBR遺伝子の一例であり、その他にも、当技術分野において公知であり、その例には、表1に示したGenBankアクセッション番号下に記載したもの、および本明細書で定義したとおりのLTβR遺伝子発現産物をコードする配列を含むが、これらに限定されるわけではない。また、配列番号:8のポリペプチドをコードする配列、およびデフォルト・パラメーター下で実行されるパーセント同一性配列分析によって決定すると配列番号:7などの例示的配列と少なくとも90%または少なくとも95%の相同性を有するものなどの生物学的に等価の配列もこの定義に含まれる。また、高ストリンジェンシー条件下でマイナス鎖にハイブリダイズする能力によって同定される生物学的に同等の遺伝子またはポリヌクレオチドもこの定義内にある。非ヒト遺伝子を使用することが望ましく、そのポリヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。たとえば、UniGene Cluster Hs.4055を参照されたい。ポリヌクレオチド断片は、公知の組換え技術を使用して作製することができる。これらは、特にプローブまたはプライマーとして有用である。
【0060】
本明細書に使用される「LTβR遺伝子発現産物、タンパク、質またはポリペプチド」という用語は、遺伝子発現系、たとえば細菌またはその他の原核細胞、酵母細胞、サル、ウシ、もしくはヒト細胞などの哺乳類細胞に関係なく、配列番号:8のアミノ酸配列、並びに上で同定されるLTβR遺伝子から転写および翻訳されたアミノ酸配列を含む。本用語は、組織試料から単離された、単離された天然に存在するポリペプチド、並びに組換えで産生されたタンパク質およびポリペプチドを含む。また、本用語は、配列番号:8に対して少なくとも90%または少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列を有し、かつ本明細書に記載されているとおりの生物活性を有するポリペプチドを含む。相同的アミノ酸配列の例は、配列番号:8のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは保存的アミノ酸置換によって修飾されたその他のLTβR遺伝子発現産物を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0061】
本明細書に使用される「EMP2遺伝子」という用語は、本明細書に記載したとおりの生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする、隣接するポリヌクレオチド配列の少なくともORFをいう。このファミリーのタンパク質は、サイズが約160〜173アミノ酸残基であり、4回膜貫通セグメントを含む。また、このファミリーは、NおよびC末端が細胞質側にある密着結合の成分であるクラウディング(claudins)を含む。
【0062】
配列番号:9は、EMP2遺伝子の一例であり、その他にも、当技術分野において公知であり、その例には、表1に示したGenBankアクセッション番号下に記載したもの、および本明細書で定義したとおりのEMP2遺伝子発現産物をコードする配列を含むが、これらに限定されるわけではない。また、配列番号:10のポリペプチドをコードする配列、およびデフォルト・パラメーター下で実行されるパーセント同一性配列分析によって決定すると配列番号:9などの例示的配列と少なくとも90%または少なくとも95%の相同性を有するものなどの生物学的に等価の配列もこの定義に含まれる。また、高ストリンジェンシー条件下でマイナス鎖にハイブリダイズする能力によって同定される生物学的に同等の遺伝子またはポリヌクレオチドもこの定義内にある。非ヒト遺伝子を使用することが望ましく、そのポリヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。たとえば、UniGene Cluster Hs.2013を参照されたい。また、ポリヌクレオチド断片は、当技術分野において公知であり、GenBankアクセッション番号:BQ678787.1;BQ425935.1;およびBF673715.1を含むが、これらに限定されるわけではない。これらは、特にプローブまたはプライマーとして有用である。
【0063】
本明細書に使用される「EMP2」遺伝子発現産物、タンパク質、またはポリペプチド」という用語は、遺伝子発現系、たとえば細菌またはその他の原核細胞、酵母細胞、サル、ウシ、もしくはヒト細胞などの哺乳類細胞に関係なく、配列番号:10のアミノ酸配列、並びに上で同定されるEMP2遺伝子から転写および翻訳されたアミノ酸配列を含む。本用語は、組織試料から単離された、単離された天然に存在するポリペプチド、並びに組換えで産生されたタンパク質およびポリペプチドを含む。また、本用語は、配列番号:10に対して少なくとも90%または少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列を有し、かつ本明細書に記載されているとおりの生物活性を有するポリペプチドを含む。相同的アミノ酸配列の例は、配列番号:10のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは保存的アミノ酸置換によって修飾されたその他のEMP2遺伝子発現産物を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0064】
本明細書に使用される「レクチン様NK受容体(「LLNR」)」という用語は、記載したとおりの生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする、隣接するポリヌクレオチド配列の少なくともORFをいう。ヒト・レクチン様NK細胞受容体は、Boles, K. S., et al. (Boles, K.S. et al. (1999) Immunogenetics 50 (1-2): 1-7) によって、ヒトNK遺伝子複合体に位置するNK細胞受容体の新たなメンバーであることが報告されている。タンパク質構造は、N末端近くに膜貫通領域と、その他のNK細胞受容体と共有されたC型レクチン様ドメインに対して類似性をもつ細胞外ドメインとを含むことが報告されている。
【0065】
配列番号:11は、LLNR遺伝子の一例であり、その他にも、当技術分野において公知であり、その例には、表1に示したGenBankアクセッション番号下に記載したもの、および本明細書で定義したとおりのLLNR遺伝子発現産物をコードする配列を含むが、これらに限定されるわけではない。また、配列番号:12のポリペプチドをコードする配列、およびデフォルト・パラメーター下で実行されるパーセント同一性配列分析によって決定すると配列番号:11などの例示的配列と少なくとも90%または少なくとも95%の相同性を有するものなどの生物学的に等価の配列もこの定義に含まれる。また、高ストリンジェンシー条件下でマイナス鎖にハイブリダイズする能力によって同定される生物学的に同等の遺伝子またはポリヌクレオチドもこの定義内にある。非ヒト遺伝子を使用することが望ましく、そのポリヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。たとえば、UniGene Cluster Hs.356250を参照されたい。また、ポリヌクレオチド断片は、当技術分野において公知であり、GenBankアクセッション番号:BF103655.1;BQ276634.1;およびBM919567.1を含むが、これらに限定されるわけではない。これらは、特にプローブまたはプライマーとして有用である。
【0066】
本明細書に使用される「LLNR」遺伝子発現産物、タンパク質またはポリペプチド」という用語は、遺伝子発現系、たとえば細菌またはその他の原核細胞、酵母細胞、サル、ウシ、もしくはヒト細胞などの哺乳類細胞に関係なく、配列番号:12のアミノ酸配列、並びに上で同定されるLLNR遺伝子から転写および翻訳されたアミノ酸配列を含む。本用語は、組織試料から単離された、単離された天然に存在するポリペプチド、並びに組換えで産生されたタンパク質およびポリペプチドを含む。また、本用語は、配列番号:12に対して少なくとも90%または少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列を有し、かつ本明細書に記載されているとおりの生物活性を有するポリペプチドを含む。相同的アミノ酸配列の例は、配列番号:12のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは保存的アミノ酸置換によって修飾されたその他のLLNR遺伝子発現産物を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0067】
本明細書に使用される「4Span4遺伝子」という用語は、本明細書に記載したとおりの生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする、隣接するポリヌクレオチド配列の少なくともORFをいう。この遺伝子は、前記LocusLinkによって膜貫通4A遺伝子ファミリーのメンバーであることが報告されている。このタンパク質ファミリーのメンバーは、共通の構造的特徴および同様のイントロン/エキソンスプライス境界によって特徴づけられ、造血細胞と非リンパ系組織との間で独特の発現パターンを示す。このタンパク質をコードする遺伝子は、ファミリーメンバーのクラスター内の11q12.3に局在されている。
【0068】
配列番号:13は、4Span4遺伝子の一例であり、その他にも、当技術分野において公知であり、その例には、表1に示したGenBankアクセッション番号下に記載したもの、および本明細書で定義したとおりの4Span4遺伝子発現産物をコードする配列を含むが、これらに限定されるわけではない。また、配列番号:14のポリペプチドをコードする配列、およびデフォルト・パラメーター下で実行されるパーセント同一性配列分析によって決定すると配列番号:13などの例示的配列と少なくとも90%または少なくとも95%の相同性を有するものなどの生物学的に等価の配列もこの定義に含まれる。また、高ストリンジェンシー条件下でマイナス鎖にハイブリダイズする能力によって同定される生物学的に同等の遺伝子またはポリヌクレオチドもこの定義内にある。非ヒト遺伝子を使用することが望ましく、そのポリヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。たとえば、UniGene Cluster Hs.150184を参照されたい。また、ポリヌクレオチド断片は、当技術分野において公知であり、たとえばGenBankアクセッション番号:BI820508.1;BI771406.1;およびBI766299.1を含むが、これらに限定されるわけではない。これらは、特にプローブまたはプライマーとして有用である。
【0069】
本明細書に使用される「4Span4遺伝子発現産物、タンパク質、またはポリペプチド」という用語は、遺伝子発現系、たとえば細菌またはその他の原核細胞、酵母細胞、サル、ウシ、もしくはヒト細胞などの哺乳類細胞に関係なく、配列番号:14のアミノ酸配列、並びに上で同定される4Span4遺伝子から転写および翻訳されたアミノ酸配列を含む。本用語は、組織試料から単離された、単離された天然に存在するポリペプチド、並びに組換えで産生されたタンパク質およびポリペプチドを含む。また、本用語は、配列番号:14に対して少なくとも90%または少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列を有し、かつ本明細書に記載されているとおりの生物活性を有するポリペプチドを含む。相同的アミノ酸配列の例は、配列番号:14のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは保存的アミノ酸置換によって修飾されたその他の4Span4遺伝子発現産物を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0070】
本明細書に使用される「CD45」という用語は、本明細書に記載したとおりの生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする、隣接するポリヌクレオチド配列の少なくともORFをいう。コードされるタンパク質は、この遺伝子が、チロシンホスファターゼ(PTP)ファミリーメンバーであることにより、前記LocusLinkによって報告されている。PTPは、細胞増殖、分化、分裂周期、および腫瘍化転換を含む種々の細胞プロセスを制御するシグナリング分子であることが公知である。このPTPは、細胞外ドメイン、単一の膜貫通セグメント、および2つの直列型細胞質内触媒ドメインを含み、したがって、受容体型PTPに属する。この遺伝子は、造血細胞に特異的に発現される。このPTPは、TおよびB細胞抗原受容体シグナリングの必須な制御因子であることが示された。これは、抗原受容体複合体の成分との直接相互作用か、または抗原受容体シグナリングのために必要とされる種々のSrcファミリーキナーゼを活性化することによるか、いずれかを介して機能する。また、このPTPは、JAKキナーゼを抑制し、したがって、サイトカイン受容体シグナリングの制御因子として機能する。この遺伝子の、異なるアイソフォームをコードする4つの選択的にスプライスされた転写物変異体が報告されている。
【0071】
配列番号:15は、CD45遺伝子の一例であり、その他にも、当技術分野において公知であり、その例には、表1に示したGenBankアクセッション番号下に記載したもの、および本明細書で定義したとおりのCD45遺伝子発現産物をコードする配列を含むが、これらに限定されるわけではない。また、配列番号:16のポリペプチドをコードする配列、およびデフォルト・パラメーター下で実行されるパーセント同一性配列分析によって決定すると配列番号:15などの例示的配列と少なくとも90%または少なくとも95%の相同性を有するものなどの生物学的に等価の配列もこの定義に含まれる。また、高ストリンジェンシー条件下でマイナス鎖にハイブリダイズする能力によって同定される生物学的に同等の遺伝子またはポリヌクレオチドもこの定義内にある。非ヒト遺伝子を使用することが望ましく、そのポリヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。たとえば、UniGene Cluster Hs.444324を参照されたい。また、ポリヌクレオチド断片は、当技術分野において公知であり、たとえばGenBankアクセッション番号:BG756746.1;BG542146.1;BG398445.1;およびAW502785.1を含むが、これらに限定されるわけではない。これらは、特にプローブまたはプライマーとして有用である。
【0072】
本明細書に使用される「CD45遺伝子発現産物、タンパク質、またはポリペプチド」という用語は、遺伝子発現系、たとえば細菌またはその他の原核細胞、酵母細胞、サル、ウシ、もしくはヒト細胞などの哺乳類細胞に関係なく、配列番号:15のアミノ酸配列、並びに上で同定されるCD45遺伝子から転写および翻訳されたアミノ酸配列を含む。本用語は、組織試料から単離された、単離された天然に存在するポリペプチド、並びに組換えで産生されたタンパク質およびポリペプチドを含む。また、本用語は、配列番号:16に対して少なくとも90%または少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列を有し、かつ本明細書に記載されているとおりの生物活性を有するポリペプチドを含む。相同的アミノ酸配列の例は、配列番号:15のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは保存的アミノ酸置換によって修飾されたその他のCD45遺伝子発現産物を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0073】
本明細書に使用される「TNFRSF14」という用語は、本明細書に記載したとおりの生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする、隣接するポリヌクレオチド配列の少なくともORFをいう。前記LocusLinkは、この遺伝子によってコードされるタンパク質がTNF受容体スーパーファミリーのメンバーであることを報告する。この受容体は、単純ヘルペスウイルス(HSV)侵入の細胞のメディエータとして同定された。この受容体タンパク質に対するHSVウイルスのエンベロープ糖タンパク質D(gD)の結合は、ウイルス侵入メカニズムの一部であることが示された。この受容体の細胞質領域は、いくつかのTRAFファミリーメンバーと結合することが見いだされており、これが免疫応答を活性化するシグナル伝達経路を媒介しているかもしれない。
【0074】
配列番号:17は、TNFRSF14遺伝子の一例であり、その他にも、当技術分野において公知であり、その例には、表1に示したGenBankアクセッション番号下に記載したもの、および本明細書で定義したとおりのTNFRSF14遺伝子発現産物をコードする配列を含むが、これらに限定されるわけではない。また、配列番号:18のポリペプチドをコードする配列、およびデフォルト・パラメーター下で実行されるパーセント同一性配列分析によって決定すると配列番号:17などの例示的配列と少なくとも90%または少なくとも95%の相同性を有するものなどの生物学的に等価の配列もこの定義に含まれる。また、高ストリンジェンシー条件下でマイナス鎖にハイブリダイズする能力によって同定される生物学的に同等の遺伝子またはポリヌクレオチドもこの定義内にある。非ヒト遺伝子を使用することが望ましく、そのポリヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。たとえば、UniGene Cluster Hs.279899を参照されたい。ポリヌクレオチド断片は、当技術分野において公知の方法を使用して作製することができる。これらは、特にプローブまたはプライマーとして有用である。
【0075】
本明細書に使用される「TNFRSF14遺伝子発現産物、タンパク質、またはポリペプチド」という用語は、遺伝子発現系、たとえば細菌またはその他の原核細胞、酵母細胞、サル、ウシ、もしくはヒト細胞などの哺乳類細胞に関係なく、配列番号:18のアミノ酸配列、並びに上で同定されるTNFRSF14遺伝子から転写および翻訳されたアミノ酸配列を含む。本用語は、組織試料から単離された、単離された天然に存在するポリペプチド、並びに組換えで産生されたタンパク質およびポリペプチドを含む。また、本用語は、配列番号:18に対して少なくとも90%または少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列を有し、かつ本明細書に記載されているとおりの生物活性を有するポリペプチドを含む。相同的アミノ酸配列の例は、配列番号:18のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは保存的アミノ酸置換によって修飾されたその他のTNFRSF14遺伝子発現産物を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0076】
本明細書に使用される「TLR-2遺伝子」という用語は、本明細書に記載したとおりの生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする、隣接するポリヌクレオチド配列の少なくともORFをいう。前記LocusLinkは、この遺伝子によってコードされるタンパク質が病原体認識および先天性免疫の活性化において基本的役割を果たすToll様受容体(TLR)ファミリーメンバーであることを報告する。TLRは、ショウジョウバエからヒトまで高度に保存され、構造的および機能的な類似点を共有する。これらは、感染因子上に発現された病原体関連分子パターン(PAMP)を認識し、有効な免疫の発生のために必要なサイトカインの産生を媒介する。種々のTLRは、異なるパターンの発現を示す。この遺伝子は、末梢血白血球において最も豊富に発現され、NFκBを経たグラム陽性菌および酵母に対する宿主反応を媒介する。
【0077】
配列番号:19は、TLR-2遺伝子の一例であり、その他にも、当技術分野において公知であり、その例には、表1に示したGenBankアクセッション番号下に記載したもの、および本明細書で定義したとおりのTLR-2遺伝子発現産物をコードする配列を含むが、これらに限定されるわけではない。また、配列番号:20のポリペプチドをコードする配列、およびデフォルト・パラメーター下で実行されるパーセント同一性配列分析によって決定すると配列番号:19などの例示的配列と少なくとも90%または少なくとも95%の相同性を有するものなどの生物学的に等価の配列もこの定義に含まれる。また、高ストリンジェンシー条件下でマイナス鎖にハイブリダイズする能力によって同定される生物学的に同等の遺伝子またはポリヌクレオチドもこの定義内にある。非ヒト遺伝子を使用することが望ましく、そのポリヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。たとえば、UniGene Cluster Hs.439608を参照されたい。ポリヌクレオチド断片は、当技術分野において公知の方法を使用して作製することができる。これらは、特にプローブまたはプライマーとして有用である。
【0078】
本明細書に使用される「TLR-2発現産物、タンパク質、またはポリペプチド」という用語は、遺伝子発現系、たとえば細菌またはその他の原核細胞、酵母細胞、サル、ウシ、もしくはヒト細胞などの哺乳類細胞に関係なく、配列番号:20のアミノ酸配列、並びに上で同定されるTLR遺伝子から転写および翻訳されたアミノ酸配列を含む。本用語は、組織試料から単離された、単離された天然に存在するポリペプチド、並びに組換えで産生されたタンパク質およびポリペプチドを含む。また、本用語は、配列番号:20に対して少なくとも90%または少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列を有し、かつ本明細書に記載されているとおりの生物活性を有するポリペプチドを含む。相同的アミノ酸配列の例は、配列番号:20のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは保存的アミノ酸置換によって修飾されたその他のTLR-2遺伝子発現産物を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0079】
本明細書に使用される「DKFZ」という用語は、本明細書に記載したとおりの生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする、隣接するポリヌクレオチド配列の少なくともORFをいう。これは、ラット去勢誘導前立腺アポトーシス関連タンパク質-1と高い類似性をもつタンパク質をコードする。配列番号:21は、DKFZ遺伝子の一例であり、その他にも、当技術分野において公知であり、その例には、表1に示したGenBankアクセッション番号下に記載したもの、および本明細書で定義したとおりのDKFZ遺伝子発現産物をコードする配列を含むが、これらに限定されるわけではない。また、配列番号:22のポリペプチドをコードする配列、デフォルト・パラメーター下で実行されるパーセント同一性配列分析によって決定すると配列番号:21などの例示的配列と少なくとも90%または少なくとも95%の相同性を有するものなどの生物学的に等価の配列もこの定義に含まれる。また、高ストリンジェンシー条件下でマイナス鎖にハイブリダイズする能力によって同定される生物学的に同等の遺伝子またはポリヌクレオチドもこの定義内にある。非ヒト遺伝子を使用することが望ましく、そのポリヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。たとえば、UniGene Cluster Hs.105460を参照されたい。ポリヌクレオチド断片は、当技術分野において公知の方法を使用して作製することができる。これらは、特にプローブまたはプライマーとして有用である。
【0080】
本明細書に使用される「DKFZ遺伝子発現産物、タンパク質、またはポリペプチド」という用語は、遺伝子発現系、たとえば細菌またはその他の原核細胞、酵母細胞、サル、ウシ、もしくはヒト細胞などの哺乳類細胞に関係なく、配列番号:22のアミノ酸配列、並びに上で同定されるDKFZ遺伝子から転写および翻訳されたアミノ酸配列を含む。本用語は、組織試料から単離された、単離された天然に存在するポリペプチド、並びに組換えで産生されたタンパク質およびポリペプチドを含む。また、本用語は、配列番号:22に対して少なくとも90%または少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列を有し、かつ本明細書に記載されているとおりの生物活性を有するポリペプチドを含む。相同的アミノ酸配列の例は、配列番号:22のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは保存的アミノ酸置換によって修飾されたその他のDKFZ遺伝子発現産物を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0081】
本明細書に使用される「含む」という用語は、引用された要素を含む組成物および方法を意味することが企図されるが、他の要素を除外しない。「本質的にからなる」とは、組成物および方法を定義するために使用した場合、組み合わせに対して本質的な重要性を有する他の任意の要素を除外することを意味する。したがって、本明細書に定義したとおりの要素から本質的になる組成物は、単離および精製法に由来する微量混入物およびリン酸緩衝生理食塩液、保存剤等などの薬学的に許容される担体を除外しないと考えられる。「からなる」とは、他の成分の微量以上の要素を除外して、本発明の組成物を投与するための実質的な方法工程を含むことを意味する。これらの移行用語のそれぞれによって定義される態様は、本発明の範囲に含まれる。
【0082】
「単離された」とは、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはこれらの断片が天然において通常付随する、構成成分、細胞、およびその他から分離されることを意味する。本発明の一つの側面において、単離されたポリヌクレオチドは、その自然または天然の環境において、たとえば染色体上で通常結合している3’および5’配列から分離されている。当業者に明らかであるように、天然に存在しないポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはこれらの断片は、これを「単離」して天然に存在するその相対物と区別することを必要としない。さらに、「濃縮された」、「分離された」、または「希釈された」ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはこれらの断片は、容積あたりの分子の濃度または数が、その天然に存在する相対物より顕著に「濃縮されている」またはあまり「分離されていない」という点において、その天然に存在する相対物と識別することができる。その一次配列、またはたとえばそのグリコシル化パターンによって天然に存在する相対物とは異なるポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはこれらの断片は、これをその一次配列によって、またはグリコシル化パターンのようなもう一つの特徴によって天然に存在する相対物と区別できることから、単離型で存在する必要はない。したがって、天然に存在しないポリヌクレオチドは、単離された天然に存在するポリヌクレオチドとは異なる態様として提供される。細菌細胞において産生されたタンパク質は、本来産生される真核細胞から単離された天然に存在するタンパク質とは異なる態様として提供される。
【0083】
本明細書に使用される「遺伝子送達」「遺伝子移入」等は、導入のために使用される方法にかかわらず、宿主細胞に外因性ポリヌクレオチド(時に、「導入遺伝子」とも呼ばれる)を導入することを意味する用語である。このような方法には、ベクターを媒介した遺伝子移入(たとえば、ウイルス感染/トランスフェクション、または様々なタンパク質に基づくもしくは脂質に基づく遺伝子送達複合体による)と共に「裸の」ポリヌクレオチドの送達を促進する技術(エレクトロポレーション、「遺伝子銃」送達およびポリヌクレオチドを導入するために用いられる様々な他の技術)などの多様な周知技術が含まれる。導入されたポリヌクレオチドは、宿主細胞において安定または一過性に維持されてもよい。安定な維持は、典型的には導入されたポリヌクレオチドが、宿主細胞と適合性の複製開始点を含むか、または染色体外レプリコン(たとえば、プラスミド)または核もしくはミトコンドリア染色体のような宿主細胞のレプリコンに組み入れられることを必要とする。多くのベクターが哺乳類細胞への遺伝子の移入を媒介できることが、当技術分野において公知である。
【0084】
「遺伝子送達媒体」とは、宿主細胞に挿入されたポリヌクレオチドを運ぶことができる任意の分子として定義される。遺伝子送達媒体の例は、リポソーム、天然ポリマー、および合成ポリマーを含む生体適合性ポリマー;リポタンパク質;ポリペプチド;多糖類;リポ多糖類;人工ウイルスエンベロープ;組換え酵母細胞、金属粒子;並びに細菌、またはバキュロウイルス、アデノウイルス、およびレトロウイルスなどのウイルス、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、真菌ベクター、並びに多様な真核および原核宿主において発現させるために記載されており、かつ遺伝子治療のために、並びに簡単なタンパク質発現のために使用してもよい当技術分野で典型的に使用されるその他の組換え媒体である。
【0085】
「ウイルスベクター」は、インビボ、エキソビボ、もしくはインビトロのいずれかで宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む組換えで産生されたウイルスまたはウイルス粒子として定義される。ウイルスベクターの例には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アルファウイルスベクター等が含まれる。セムリキ森林熱ウイルスに基づくベクター、およびシンドビスウイルスに基づくベクターのようなアルファウイルスベクターも同様に、遺伝子治療および免疫治療に使用するために開発されている。SchlesingerおよびDubensky(1999) Curr. Opin. Biotechnol. 5: 434-439 および Ying et al. (1999) Nat. Med. 5 (7): 823-827を参照されたい。遺伝子移入がレトロウイルスベクターによって媒介される局面において、ベクター構築物は、レトロウイルスゲノムまたはその一部と、治療遺伝子とを含むポリヌクレオチドをいう。本明細書に使用される「レトロウイルスを媒介した遺伝子移入」または「レトロウイルス形質導入」は、同じ意味を有し、ウイルスが細胞内に入り、そのゲノムを宿主細胞ゲノムに組み込むことによって遺伝子または核酸配列が宿主細胞に安定に導入されるプロセスをいう。ウイルスは、その通常の感染機構によって宿主細胞に入ることができ、またはこれが異なる宿主細胞表面受容体もしくはリガンドに結合して細胞に入るように改変することができる。本明細書に使用される、レトロウイルスベクターは、ウイルスまたはウイルス様の侵入機構によって細胞に外因性核酸を導入することができるウイルス粒子をいう。
【0086】
レトロウイルスは、RNAの形で遺伝子情報を有するが;しかし、ウイルスが細胞に感染すると、RNAをDNA型に逆転写して、これが感染細胞のゲノムDNAに組み込まれる。組み込まれたDNA型をプロウイルスと呼ばれている。
【0087】
遺伝子移入がアデノウイルス(Ad)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)のようなDNAウイルスベクターによって媒介される局面において、ベクター構築物は、ウイルスゲノムまたはその一部と導入遺伝子とを含むポリヌクレオチドを意味する。アデノウイルス(Ads)は、比較的十分に特徴が調べられ、50血清型以上を含む均一なウイルスの群である。たとえば、国際公開公報第95/27071号を参照されたい。アデノウイルスは容易に増殖して宿主細胞ゲノムに組み入れられる必要がない。組換えアデノウイルス由来ベクター、特に野生型ウイルスの組換えおよび増殖能を低下させたベクターも同様に構築されている。国際公開公報第95/00655号および国際公開公報第95/11984号を参照されたい。野生型AAVは、宿主細胞ゲノムに組み入れられる高い感染性と特異性とを有する。Hermonat and Muzyczka (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6466-6470およびLebkowski et al. (1988) Mol. Cell. Biol. 8:3988-3996を参照されたい。
【0088】
プロモーターおよびポリヌクレオチドが機能的に連結することができるクローニング部位の両方を含むベクターは、当技術分野で周知である。このようなベクターは、インビトロまたはインビボでRNAを転写することができ、Stratagene(La Jolla, CA)およびPromega Biotech(Madison, WI)などの供与源から市販されている。発現および/またはインビトロ転写を最適にするために、余分のおそらく不適当なもう一つの翻訳開始コドン、または転写もしくは翻訳レベルのいずれかで発現を妨害もしくは減少させる可能性がある他の配列を除去するために、クローンの5’および/または3’非翻訳部分を除去、付加、または変化させる必要がある可能性がある。または、発現を増強するために、コンセンサスリボソーム結合部位を開始コドンのすぐ5’に挿入することができる。
【0089】
また、遺伝子送達媒体は、DNA/リポソーム複合体、標的化ウイルスタンパク質-DNA複合体を含むいくつかの非ウイルスベクターが含まれる。同様に、ターゲットされた抗体またはその断片も含むリポソームを本発明の方法に使用することができる。細胞への送達を増強するために、本発明の核酸またはタンパク質を細胞表面抗原、たとえばTCR、CD3、もしくはCD4に結合する抗体またはこれらの結合断片に抱合させることができる。
【0090】
「プローブ」は、ポリヌクレオチド操作の状況において使用されるときは、標的とハイブリダイズすることにより、関心対象の試料中に潜在的に存在する標的を検出するための試薬として提供されるオリゴヌクレオチドをいう。通常、プローブは、標識、またはハイブリダイゼーション反応の前もしくは後のいずれかにおいて標識を付着することができる手段を含む。適切な標識は、放射性同位元素、蛍光色素、化学発光化合物、色素、および酵素を含むタンパク質を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0091】
「プライマー」は、一般に、標的とハイブリダイズし、その後に標的に対して相補的なポリヌクレオチドの重合を促進することによって、関心対象の試料中に潜在的に存在する標的または「鋳型」と結合する、遊離の3’-OH基をもつ短いポリヌクレオチドである。「ポリメラーゼ連鎖反応法」(「PCR」)は、「上流」および「下流」プライマーからなる「プライマー対」または「プライマーのセット」と、DNAポリメラーゼ、典型的には熱的に安定なポリメラーゼ酵素などの重合触媒とを使用して、標的ポリヌクレオチドの複製コピーが作製される反応である。PCRのための方法は、当技術分野において周知であり、たとえば“PCR: A PRACTICAL APPROACH“(M. MacPherson et al., IRL Press at Oxford University Press (1991))に教示されている。PCRまたは遺伝子クローニングなどのポリヌクレオチドの複製コピーを産生する全てのプロセスをひとまとめにして本明細書において「複製」と称する。また、プライマーは、サザンまたはノーザンブロット解析などのハイブリダイゼーション反応のプローブとしても使用することができる。Sambrook et al.,前記。
【0092】
発現「データベース」は、一まとまりの配列を表し、次に一まとまりの生物学的参考資料を表す記憶データのセットを意味する。
【0093】
「cDNA」という用語は、逆転写酵素などの酵素でcDNA内に作製される細胞または生物体内に存在するmRNA分子である相補的なDNAをいう。「cDNAライブラリー」は、全てが酵素逆転写酵素でcDNA分子に変えられて、次いで「ベクター」(外来性DNAの添加後に複製し続けることができるその他のDNA分子)に挿入された、細胞内または生物体に存在するmRNA分子の全てのコレクションである。ライブラリーのための例示的なベクターは、バクテリオファージ(「ファージ」としても知られる)、細菌に感染するウイルス、たとえばλファージを含む。次いで、関心対象の特定のcDNA(およびしたがって、mRNA)についてライブラリーをプローブすることができる。
【0094】
本明細書に使用される「発現」は、それによってポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセス、および/またはそれによってその後にmRNAがペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に翻訳されるプロセスを意味する。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は、真核細胞宿主におけるmRNAのスプライシングを含んでいてもよい。遺伝子に適用される「差動的に発現される」とは、遺伝子から転写および/または翻訳されるmRNA、または遺伝子によってコードされるタンパク質産物の差動的産生をいう。差動的に発現された遺伝子は、正常もしくは対照細胞の発現レベルと比較して過剰発現されていても、または過小発現されていてもよい。一つの局面において、それは、対照試料で検出される発現レベルよりも2.5倍、好ましくは5倍、もしくは好ましくは10倍高いか、または低いことを差動的という。また、「差動的に発現される」という用語は、対照細胞において無変化の場合に発現されるか、または対照細胞において発現される場合に発現されない、細胞または組織内のヌクレオチド配列をいう。
【0095】
本明細書に使用される「固相支持体」または「固体支持体」は、交換可能に使用され、特定のタイプの支持体に限定されるわけではない。むしろ、多くの支持体を利用でき、当技術分野の当業者に公知である。固相支持体は、シリカゲル、樹脂、誘導体化プラスチックフィルム、ガラスビーズ、ワタ、プラスチックビーズ、アルミナゲル、マイクロアレイおよびチップを含む。本明細書に使用される「固相支持体」は、合成抗原提示マトリクス、細胞、およびリポソームを含む。適切な固相支持体は、所望の目的の用途および様々なプロトコルのための適切性に基づいて選択してもよい。たとえば、ペプチド合成のためには、固相支持体は、ポリスチレン(たとえば、 Bachem Inc., Peninsula Laboratories等から得られるPAM-樹脂)、ポリハイプ(登録商標)樹脂(Aminotech, Canadaから得られる)、ポリアミド樹脂(Peninsula Laboratoriesから得られる)、ポリスチレングリコールを接合したポリスチレン樹脂(テンタゲル(登録商標)、Rapp Polymere, Tubingen, Germany)、またはポリジメチルアクリルアミドゲル(Milligen/Biosearch, Californiaから得られる)などの樹脂を適用してもよい。
【0096】
また、ポリヌクレオチドは、高スループットスクリーニングアッセイ法に使用するための固体支持体に付着することができる。たとえば、PCT国際公開公報第97/10365号は、高密度オリゴヌクレオチド・チップの構築を開示する。また、米国特許第5,405,783号;第5,412,087号;および第5,445,934号も参照されたい。この方法を使用して、チップアレイとしても公知の、プローブを誘導体化されたガラス面上で合成する。光防護ヌクレオシド・ホスホラミダイトをガラス面に結合され、写真平板マスクを介した光分解によって選択的に脱保護し、第二の保護されたヌクレオシド・ホスホラミダイトと反応させる。所望のプローブが完了するまで、カップリング/脱保護プロセスを繰り返す。
【0097】
「ハイブリダイゼーション」は、1つまたは複数のポリヌクレオチドがヌクレオチド残基の塩基間の水素結合によって安定化される複合体を形成するように反応する反応である。水素結合は、ワトソン-クリックの塩基対形成、フーグスティーン(Hoogstein)結合によって、または任意の他の配列特異的様式で生じもよい。複合体は、二重鎖構造を形成する二つの鎖を含んでもよく、多重鎖複合体を形成する3つもしくはそれ以上の鎖、自己ハイブリダイズ鎖、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始、またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断などのより広範囲のプロセスにおける一段階を構成してもよい。
【0098】
ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」条件下で行うことができる。一般に、低ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーション反応は、約40℃にて、10×SSC中で、または同等のイオン強度/温度の溶液にて実施される。中程度ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーションは、典型的には約50℃にて6×SSC中で行われ、高ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーション反応は一般に、約60℃にて1×SSC中で行われる。
【0099】
ハイブリダイゼーションが、2つの一本鎖ポリヌクレオチド間の逆平行の配置で生じるときは、反応は、「アニーリング」と呼ばれ、これらのポリヌクレオチドは「相補的」と記載される。ハイブリダイゼーションが、第一のポリヌクレオチドの鎖の1つと第二との間で生じることができる場合、二本鎖ポリヌクレオチドは、もう一つのポリヌクレオチドに対して「相補的」または「相同的」であることができる。「相補性」または「相同性」(1つのポリヌクレオチドがもう一つと相補である程度)は、一般に認められる塩基対合則に従って互いに水素結合を形成することが予想される対向する鎖の塩基の比率に関して、定量化可能である。
【0100】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)は、もう一つの配列と「配列同一性」に関して特定の百分率(たとえば、80%、85%、90%、または95%)を有し、これは並置して二つの配列を比較する場合に塩基(またはアミノ酸)の百分率が同じであることを意味する。このアラインメントおよび%相同性または配列同一性は、たとえばCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel et al., eds., 1987) Supplement 30, section 7.7.18, Table 7.7.1に記載されるプログラムなどの当技術分野において公知のソフトウェアプログラムを使用して決定することができる。好ましくは、アラインメントのためにデフォルトパラメータを使用する。好ましいアラインメントプログラムは、デフォルトパラメータを用いるBLASTである。特に、好ましいプログラムは、以下のデフォルトパラメータを用いるBLASTNおよびBLASTPである:遺伝子コード = 標準;フィルター = なし;鎖 = 両方;カットオフ = 60;予測値 = 10;マトリクス(Matrix)= BLOSUM62;表示 = 50配列;選別 = ハイスコア;データベース = 非重複、GenBank + EMBL + DDBJ + PDB + GenBank CDS翻訳 + スイスプロテイン(SwissProtein) + SPアップデート + PIR。これらのプログラムの詳細は以下のインターネットアドレスで見ることができる:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLAST。
【0101】
過形成は、構造または機能における有意な変化を伴わずに、組織または器官の細胞数の増加を含む制御された細胞増殖の形態である。異形成は、完全に分化した細胞の1つの型が、別の型の分化細胞に置換する制御された細胞増殖の形態である。異形成は、上皮または結合組織細胞に生じ得る。異型の異形成は、やや無秩序な上皮異形成を含む。
【0102】
本明細書に使用される「新生細胞」、「新形成」、「腫瘍」、「腫瘍細胞」、「癌」、および「癌細胞」という用語(交換可能に使用される)は、比較的自発的増殖を示し、その結果、これらは細胞増殖の制御の有意な喪失(たとえば、調節解除された細胞分裂)によって特徴づけられる異常増殖表現型を示す細胞をいう。新生細胞は、悪性または良性であることができる。転移細胞または組織は、細胞が隣接する体内構造に侵入し、破壊することができることを意味する。
【0103】
腫瘍の増殖の「抑制」は、本明細書に記載の教育された抗原特異的免疫エフェクター細胞と接触しない場合の増殖と比較して、増殖が減少した状態を示す。腫瘍細胞の増殖は、腫瘍の大きさを測定すること、3H-チミジン取り込みアッセイ法を使用するか、または腫瘍細胞の計数によって腫瘍細胞が増殖するか否かを決定することを含むが、これらに限定されない、当技術分野において公知の任意の手段によって評価することができる。腫瘍細胞増殖の「抑制」は、以下の状態のいずれかまたは全てを意味する:腫瘍の増殖の遅れ、遅延、および停止、並びに腫瘍縮小。
【0104】
範囲を含む全ての数値名、たとえば、pH、温度、時間、濃度、および分子量は、(+)または(-)0.1の増分までの変更を加えた近似値である。常に明確に述べているのではないが、全ての数値名に「約」が先行することが理解される。また、常に明確に述べているのではないが、本明細書に記載されている試薬は、単に例示するだけであり、当技術分野に公知であるようにその同等物であることが理解される。
【0105】
「抗原」という用語は、当技術分野において周知であり、免疫原である物質を含む。また、本明細書に使用される本用語は、免疫学的無反応性またはアネルギーを誘導する物質を含む。
【0106】
「天然」、「自然」、または「野生型」抗原は、エピトープを含み、かつ自然生物学的起源から単離されたポリペプチド、タンパク質、または断片である。また、これは、抗原受容体と特異的に結合することができる。
【0107】
本明細書に使用される「抗体」は、完全抗体および任意のこれらの抗原結合断片または単鎖を含む。したがって、「抗体」という用語は、少なくとも一部の免疫グロブリン分子を含む任意のタンパク質またはペプチド含有分子を含む。このような例は、重鎖もしくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)またはこれらのリガンド結合部分、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、骨組み(FR)領域、またはこれらの任意の部分、または結合タンパク質の少なくとも1つの部分を含むが、これらに限定されるわけではなく、これらのいずれも、本発明の抗体に組み込むことができる。
【0108】
抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであることができ、任意の適切な生物源、たとえば、マウス、ラット、ヒツジ、およびイヌから単離することができる。さらなる供与源を下に同定してある。
【0109】
「抗体」という用語は、消化断片、特定された部分、これらの誘導体、並びに変異体を包含することがさらに企図され、抗体擬態を含むか、または抗体もしくはこれらの特定された断片もしくは部分の構造および/または機能を模倣する抗体の部分を含み、単鎖抗体およびこれらの断片を含む。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例は、Fab断片、VL、VH、CL、およびCHドメインからなる一価の断片;F(ab')2断片、ヒンジ領域にてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片;VHおよびCHドメインからなるFd断片;VHドメインからなる、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、dAb断片(Ward et al.(1989)Nature 341:544-546);並びに単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、これらは、組換え法を使用して、VLおよびVH領域が対になって一価の分子を形成する単一タンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として公知)として作製することを可能にする合成リンカーよって連結することができる。Bird et al. (1988) Science 242:423-426 およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad Sci. USA 85:5879-5883。また、単鎖抗体は、「抗体の断片」という用語の範囲内で包含されることが企図される。いずれの上記の抗体断片も、当業者に公知の従来技術を使用して得られ、断片は、無処置の抗体と同様に、結合特異性および中和活性がスクリーニングされる。
【0110】
「エピトープ」という用語は、抗体に対する特異的結合が可能なタンパク質決定因子を意味する。エピトープは、通常アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面グループ化からなり、通常特異的な三次元構造的特徴、並びに特異的電荷特性を有する。高次構造上と非高次構造上のエピトープは、後者ではなく前者のものに対する結合が変性溶媒の存在下において失われないという点で区別される。
【0111】
「抗体」変異体という用語は、マウス以外の種で産生される抗体または本発明の抗体のアイソタイプを含むことが企図される。また、「抗体変異体」という用語は、抗体または断片の直鎖状ポリペプチド配列に対して翻訳後修飾を含む抗体を含む。これは、完全ヒト抗体をさらに包含する。
【0112】
「抗体誘導体」という用語は、上記記載のとおりエピトープに結合し、かつ本発明の天然のモノクローナル抗体の修飾または誘導体である分子を包含することが企図される。誘導体は、たとえば二特異的、多特異的、異種特異的、三特異的、四特異的、多特異的抗体(diabodies)、キメラ、組換え型、およびヒト化を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0113】
「二特異的分子」という用語は、2つの異なる結合特異性を有する任意の薬剤、たとえば、タンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド複合体を含むことが企図される。「多特異的分子」または「異種特異的分子」という用語は、2つ以上の異なる結合特異性を有する任意の薬剤、たとえばタンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド複合体を含むことが企図される。
【0114】
「異種抗体」という用語は、共に連結された2つ以上の抗体、抗体結合断片(たとえば、Fab)、これらの誘導体、または抗原結合領域であって、そのうちの少なくとも2つが異なる特異性を有するものをいう。
【0115】
本明細書に使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが企図される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含んでいてもよい(たとえば、インビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボでの体細胞突然変異によって導入される突然変異)。しかし、本明細書に使用される「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列が、ヒト骨組み配列に移植された抗体を含むことは企図されない。したがって、本明細書に使用される「ヒト抗体」という用語は、タンパク質の実質的にあらゆる部分(たとえば、CDR、骨組み、CL、CHドメイン(たとえば、CH1、CH2、CH3)、ヒンジ(VL、VH))が、実質的にヒトにおいて非免疫原性である軽微な配列変化または変異のみをもつ抗体をいう。同様に、霊長類(サル、ヒヒ、チンパンジー、その他)、齧歯類(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスターなど)、およびその他の哺乳類を指定された抗体は、このような種、亜属、属、サブファミリ、ファミリー特異的抗体を指定する。さらに、キメラ抗体は、上記のものの任意の組み合わせを含む。このような変化または変異は、修飾されていない抗体と比較して、任意に、および好ましくは、ヒトもしくはその他の種における免疫原性を保持するか、または減少させる。したがって、ヒト抗体は、キメラ、またはヒト化抗体とは異なる。ヒト抗体は、機能的に再編成されたヒト免疫グロブリン(たとえば、重鎖および/または軽鎖)遺伝子を発現することができるヒト以外の動物または原核生物もしくは真核生物の細胞によって産生することができることが指摘されている。さらに、ヒト抗体が単鎖の抗体であるときは、これは、天然のヒト抗体には見られないリンカー・ペプチドを含むことができる。たとえば、Fvは、重鎖および軽鎖の可変領域の可変領域を接続する、2〜約8グリシンまたはその他のアミノ酸残基などのリンカー・ペプチドを含むことができる。このようなリンカー・ペプチドは、ヒト起源であるとみなされる。
【0116】
本明細書に使用されるヒト抗体は、抗体がたとえばヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを免疫することによって、またはヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって、ヒト免疫グロブリン配列を使用して系から得られる場合、特定の生殖系列配列に「由来する」。ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に「由来する」ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較することによって同定することができる。選択されたヒト抗体は、典型的には、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列が少なくとも90%同一であり、その他の種の生殖系列免疫グロブリン・アミノ酸配列(たとえば、マウス生殖系列配列)と比較したときに、ヒトと同様にヒト抗体を同定するアミノ酸残基を含む。一定の場合において、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列が少なくとも95%、またはさらに少なくとも96%、97%、98%、もしくは99%同一であってもよい。典型的には、特定のヒト生殖系列配列に由来するヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と10アミノ酸相違を超える相違を示さない。一定の場合において、ヒト抗体は生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列から5を超えない、またはさらに4つ、3つ、2つ、もしくは1つを超える相違を示さない。
【0117】
本明細書に使用される「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成の抗体分子の標品をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。
【0118】
「ヒト・モノクローナル抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する単一の結合特異性を示す抗体をいう。
【0119】
本明細書に使用される「組換えヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックか、またはトランスクロモソーマル(transchromosomal)である動物(たとえば、マウス)もしくはそこから調製したハイブリドーマから単離された抗体、抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、たとえばトランスフェクトーマ(transfectoma)から単離された抗体、組換えコンビナトリアル・ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、およびヒト免疫グロブリン遺伝子配列のその他のDNA配列に対するスプライシングを含む任意の他の手段によって調製され、発現され、作製され、または単離された抗体などの、組換え手段によって調製され、発現され、作製され、または単離された全てのヒト抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかし、一定の態様において、このような組換えヒト抗体をインビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列に対して動物トランスジェニックが使用されるときは、インビボ体細胞変異誘発)に供することができ、したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来し、並びに関連する一方で、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在していなくてもよい配列である。
【0120】
本明細書に使用される「アイソタイプ」は、重鎖定常域遺伝子によってコードされる抗体クラス(たとえば、IgMまたはIgG1)をいう。
【0121】
「組成物」は、活性薬剤と、アジュバントなどの不活性(たとえば、検出可能な薬剤または標識)もしくは活性な別の化合物または組成物との組み合わせを意味することが企図される。
【0122】
「薬学的組成物」は、組成物をインビトロ、インビボ、もしくはエキソビボで診断または治療的に使用するために適するようにする、活性物質と不活性または活性な担体との組み合わせを含むことが企図される。
【0123】
本明細書に使用される、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩液、水、油/水、または水/油乳剤などの乳剤、および様々な種類の湿潤剤などの、標準的な任意の薬学的担体を含む。また、組成物は、安定化剤および保存剤を含むことができる。担体、安定化剤、およびアジュバントの例として、Martin, REMINGTON’S PHARM. SCI., 15th Ed. (Mack Publ. Co., Easton (1975))を参照されたい。
【0124】
「有効な量」は、予防もしくは治療などの有益なまたは所望の結果を及ぼすために十分な量である。有効な量は、1つもしくは複数の投与、適用、または投薬量で投与することができる。
【0125】
「被検体」、「個体」、または「患者」は、本明細書において交換可能に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトをいう。哺乳類は、マウス、サル、ヒト、家畜、変種動物、およびペットを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0126】
「対照」は、比較目的のための実験に使用される代わりの被検体または試料である。対照は、「ポジティブ」または「ネガティブ」であることができる。たとえば、実験の目的が、癌の特定の型と遺伝子の発現レベルが変更されることの相関を決定することである場合、一般にポジティブ対照(このような変化を有し、かつその疾患の特徴的症候群を示す被検体、または被検体由来の試料)、およびネガティブ対照(その疾患の発現変化および臨床的症候群を欠いている被検体または被検体由来の試料)を使用することが好ましい。
【0127】
診断法
上記の如く、本発明は、たとえば悪性腫瘍、過形成、または異形成の形態の異常な細胞増殖によって特徴づけられる肺細胞の新生物状態の診断を助けるための種々の方法を提供する。本方法は、特に非小細胞肺癌細胞の診断を補助するために有用である。細胞の新生物状態は、一般に細胞の増殖が、通常の正常な増殖を制限することによって支配されないかどうかに注目することによって決定される。本発明の目的上、本用語は、また、腫瘍の形態でこの増殖が検出される前に生じ、かつこれらの表現型変化の原因である遺伝子型変異を含む。細胞の新生物状態と関連する表現型変化(インビボでの腫瘍化能に関連したインビトロの特徴のセット)は、より丸い細胞形態、よりゆるい基層付着、接触阻止の喪失、固定依存性の喪失、プラスミノーゲンアクティベーターなどのプロテアーゼの放出、増大された糖輸送、減少した血清要求、胎児抗原の発現などを含む。(Luria et al. (1978) GENERAL VIROLOGY, 3d edition, 436-446 (John Wiley & Sons, New York)を参照されたい)。
【0128】
したがって、一つの態様は、遺伝子の差動的発現が肺細胞の新生物状態を表す肺細胞を含むか、または含むことが疑われる試料から単離された差動的に発現された遺伝子の存在についてスクリーニングすることによって肺細胞の状態を診断する方法である。一つの局面において、遺伝子は、正常肺細胞と比較して、新生物肺細胞または肺腫瘍細胞においてより発現され、表1で同定したものから選択される。検出は、たとえば、遺伝子から転写されるmRNAの量、または遺伝子から転写されるmRNAの逆転写によって産生されたcDNAの量、または遺伝子によってコードされるポリペプチドもしくはタンパク質の量を検出することを含む、任意の適切な方法によることができる。これらの方法のそれぞれのためのプローブは、表1に提供してある。これらの方法は、試料に基づいて、または高スループット解析のために修飾することにより、試料に対して行うことができる。加えて、細胞試料から単離された定量的完全もしくは部分的転写物またはタンパク質配列を含むデータベースにより、転写物または発現された遺伝子産物の存在および量について検索し、並びに解析することができる。一つの局面において、データベースは、表1に示した配列の一つを少なくとも含む。
【0129】
例示目的のみのために、遺伝子発現は、表1で同定される少なくとも1つの遺伝子から転写されるmRNAのレベルで、試験系の遺伝子の発現量(もしあれば、たとえば変更されたもの)に注目することによって決定される。別の態様において、遺伝子によってコードされるポリペプチドまたはタンパク質のレベルの増強は、細胞の新生物状態の存在を表す。さらなる態様において、遺伝子によってコードされるポリペプチドまたはタンパク質のレベルの減少は、新生物状態を表す。本方法は、原発性肺腫瘍細胞の表現型特徴と相関されている遺伝子型を検出することによって、非小細胞肺癌などの肺癌の診断を補助するために使用することができる。したがって、腫瘍増殖の前にこの遺伝子型を検出することよって、癌に対する素因を予測すること、および/または早期診断および治療を提供することができる。
【0130】
本発明のために使用される細胞または組織試料は、体液、固体組織試料、そこに由来する組織培養もしくは細胞およびこれらの子孫、並びに任意のこれらの供与源から調製される切片もしくはスミア、または本明細書に記載されている遺伝子を有する肺細胞を含み得る任意のその他の試料を包含する。一つの態様において、試料は、被検体の肺組織から調製される細胞を含む。
【0131】
mRNAレベルでの変化をアッセイする際には、上述した試料に含まれる核酸が当技術分野において標準的な方法に従って最初に抽出される。たとえば、mRNAは、前記Sambrook et al.(1989)に記載されている手順に従って種々の溶菌酵素もしくは化学溶液を使用して単離するか、または製品によって提供される添付の説明書に従って核酸結合樹脂によって抽出することができる。次いで、抽出された核酸試料に含まれる関心対象のプロトオンコジーンのmRNAを、ハイブリダイゼーション(たとえば、ノーザンブロット解析)および/または当技術分野において広く公知の、または本明細書に例示される方法に基づく方法に従った増幅手順によって検出する。
【0132】
少なくとも10ヌクレオチドを有し、および表1で同定される少なくとも1つの遺伝子に対して配列相補性または相同性を示す核酸分子は、ハイブリッド形成プローブとして有用性を見いだされる。特異的ハイブリダイゼーションのためには、「完全にマッチした」プローブが必要でないことは、当技術分野に公知である。少数の塩基の置換、欠失、または挿入によって達成されるプローブ配列のわずかな変更は、ハイブリダイゼーション特異性に影響を及ぼさない。一般に、20%の塩基対ミスマッチ(至適に整列させたとき)でも、許容することができる。好ましくは、mRNAを検出するために有用なプローブは、表1で同定されるLocus Link番号を有する表1で同定された配列において同定される遺伝子またはポリヌクレオチドに含まれる相当するサイズの相同領域と少なくとも約80%同一である。一つの局面において、プローブは、相同領域の整列後に、対応する遺伝子配列と85%同一であるか、または90%の同一性を示す。さらなるプローブは、表1で提供されるLocus Link番号によって同定される遺伝子のための配列、または表1で同定されるLocus Link番号を有する以前に同定された配列に含まれる相当するサイズの相同領域に由来することができる。これらのプローブは、関心対象の遺伝子の差動的発現により生じる種々の新生物状態を検出する、予測する、診断する、またはモニターするための放射分析(たとえば、サザンおよびノーザンブロット解析)に使用することができる。断片の総サイズ、並びに相補的ひと配列のサイズは、使用目的または特定の核酸セグメントの適用に依存する。公知の配列に由来するより小さな断片は、一般に、相補領域の長さが、検出を望む相補的配列に従って約10〜約100ヌクレオチドの間、またはさらに全長などで変更されていてもよいハイブリダイゼーション態様での使用が見いだされる。
【0133】
一つの局面において、ハイブリッドの安定性および選択性を増大し、これにより特定のハイブリッド分子の特異性を改善するために、長さが約10ヌクレオチドよりも大きなひと配列にわたって相補配列を有するヌクレオチド・プローブが使用される。または、長さが約25よりも大きく、もしくは約50ヌクレオチドよりも大きい、または望まれる場合にはさらに長い遺伝子相補的ひと配列を有する核酸分子をデザインすることができる。たとえば、このような断片は、米国特許第4,603,102号に記載されているように、2つのプライミング・オリゴヌクレオチドと共にPCR(商標)技術などの核酸複製技術を適用することにより、または組換え産生のための組換えベクターに選択した配列を導入することより、化学的手段によって断片を直接合成することによって容易に調製され得る。一つの局面において、プローブは、長さが約50〜約75ヌクレオチドまたは約50〜約100ヌクレオチドである。
【0134】
ある態様において、ハイブリダイゼーションおよびしたがって相補配列を検出するために、標識などの適切な手段と組み合わせて、本明細書に記載したとおりの核酸配列を使用することが有利である。蛍光、放射性、酵素、またはアビジン/ビオチンなどの、検出可能なシグナルを与えることができるその他のリガンドを含む多種多様な適切な指示手段が当技術分野において公知である。放射性またはその他の環境の望ましくない試薬の代わりに、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、またはペルオキシダーゼなどの、蛍光標識または酵素タグを使用することができる。酵素タグの場合、相補核酸を含む試料との特異的ハイブリダイゼーションを同定するためのヒト眼的または分光光学的可視化手段を提供するために使用することができる比色指標基質が公知である。
【0135】
ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」条件下で行うことができる。関連する条件は、温度、イオン強度、インキュベーション時間、ホルムアミドなどの反応混合物中のさらなる溶質の存在、および洗浄手順を含む。高ストリンジェンシー条件は、より高温およびより低ナトリウムイオン濃度などの条件であり、安定なハイブリダイゼーション複合体を形成するためには、ハイブリダイズするエレメント間により高度な最小相補性が必要である。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを増大する条件は、広く公知であり、当技術分野において公表されている。たとえば、Sambrook et al.(1989)前記を参照されたい。
【0136】
また、本発明のヌクレオチド・プローブは、プライマーおよび一定の体組織において差動的に発現される遺伝子または遺伝子転写物の検出として使用することができる。加えて、上述した差動的に発現されたmRNAを検出するために有用なプライマーは、表1で同定されるLocus Link番号を有する以前に同定された配列に含まれる相当するサイズの相同領域と少なくとも約80%同一である。本発明の目的のためには、増幅は、合理的な忠実度で標的配列を複製することができるプライマー依存的ポリメラーゼを使用する任意の方法を意味する。増幅は、T7 DNAポリメラーゼ、大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼのクレノーフラグメント、および逆転写酵素などの天然のまたは組換えDNAポリメラーゼによって実施してもよい。
【0137】
公知の増幅方法には、PCR, MacPherson et al., PCR: A PRACTICAL APPROACH, (IRL Press at Oxford University Press (1991))がある。しかし、それぞれの適用反応のために使用されるPCR条件は、経験的に決定される。多くのパラメータが反応の成功に影響する。プライマー、鋳型、およびデオキシリボヌクレオチドのアニーリング温度および時間、伸張時間、Mg2+ ATP濃度、pH、および相対濃度は、これらのうちの一つである。
【0138】
増幅後、生じるDNA断片は、アガロースゲル電気泳動、続いて臭化エチジウム染色および紫外線照明で可視化することによって検出することができる。関心対象の差動的に発現された遺伝子の特異的増幅は、増幅されたDNA断片が予測されるサイズを有すること、予測された制限消化パターンを示すこと、および/または正確なクローン化DNA配列にハイブリダイズすることを証明することによって検証することができる。
【0139】
また、プローブは、当技術分野において公知の方法を使用して、高スループットスクリーニングアッセイ法に使用するための固体支持体に付着することができる。PCT国際公開公報第97/10365号および米国特許第5,405,783号;第5,412,087号、および第5,445,934号は、たとえば、本明細書に開示された配列の1つまたは複数を含むことができる高密度オリゴヌクレオチド・チップの構築を開示する。米国特許第5,405,783号;第5,412,087号、および第5,445,934号に開示された方法を使用して、本発明のプローブを誘導体化されたガラス面上で合成する。光保護されたヌクレオシドホスホラミダイトをガラス面に結合させ、光リソグラフィーでのマスクを介した光分解によって選択的に脱保護し、第二の保護されたヌクレオシド・ホスホラミダイトと反応させる。所望のプローブが完了するまで、カップリング/脱保護プロセスを繰り返す。
【0140】
また、遺伝子の発現レベルは、プローブで修飾されたチップに対する核酸試料の曝露を介して決定することができる。抽出された核酸は、好ましくは増幅工程の間に、たとえば蛍光タグで標識される。標識した試料のハイブリダイゼーションは、適切なストリンジェンシーレベルにて行う。プローブ-核酸ハイブリダイゼーションの程度は、共焦点顕微鏡などの検出装置を使用して定量的に測定する。米国特許第5,578,832号および第5,631,734号を参照されたい。得られた測定値を遺伝子発現レベルと直接相関させる。
【0141】
また、プローブおよび高密度オリゴヌクレオチド・プローブアレイは、表1で同定される遺伝子の発現をモニターする有効な手段を提供する。また、これらは、表1で同定される遺伝子の発現をアップレギュレートするか、またはダウンレギュレートする組成物をスクリーニングするためにも有用である。
【0142】
もう一つの態様において、本発明の方法は、薬物に対する細胞または被検体の曝露などの所定の刺激に応答して本発明のプローブに対して特異的にハイブリダイズする表1で同定される遺伝子の発現をモニターするために使用される。
【0143】
一つの態様において、ハイブリダイズされた核酸は、試料核酸に付着した1つまたは複数の標識を検出することによって検出される。標識は、当業者に公知の任意の多数の手段によって組み入れてもよい。しかし、一つの局面において、標識は、試料核酸の調製における増幅工程の間に同時に組み入れられる。したがって、たとえば、標識されたプライマーまたは標識されたヌクレオチドでのポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)では、標識された増幅産物を提供する。別の態様において、上記のとおり、標識されたヌクレオチド(たとえば、フルオレッセイン標識されたUTPおよび/またはCTP)を使用する転写増幅により、転写された核酸に標識を組み込む。
【0144】
または、標識は、本来の核酸試料(たとえば、mRNA、ポリA、mRNA、cDNA、その他)に、または増幅が完了後の増幅産物に、直接付加してもよい。核酸に標識を付着する手段は、当業者に公知であり、たとえば、ニックトランスレーションまたは核酸のキナーゼ処理(kinasing)およびその後の試料核酸を標識(たとえば、フルオロフォア)に連結する核酸リンカーの付着(ライゲーション)による末端標識化(たとえば、標識されたRNAで)を含む。
【0145】
本発明に使用するために適した検出可能な標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、または化学的手段によって検出可能な任意の組成物を含む。本発明に有用な標識は、標識されたストレプトアビジン抱合体での染色のためのビオチン、磁気ビーズ(たとえば、Dynabeads(商標))、蛍光色素(たとえば、フルオレッセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質など)、放射標識(たとえば、3H、l25I、35S、14C、または32P)、酵素(たとえば、西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、および一般にELISAに使用されるその他)、およびコロイド金または色ガラスまたはプラスチック(たとえば、ポリスチレン、ポリプロピレン、乳液、その他)ビーズなどの比色標識を含む。このような標識の使用を教示する特許は、米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号、および第4,366,241号を含む。
【0146】
このような標識を検出する手段は、当業者に公知である。したがって、たとえば、放射標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを使用して検出してもよく、蛍光マーカーは、放射された光を検出するための光センサーを使用して検出してもよい。酵素標識は、典型的には、酵素に基質を提供する工程および基質に対する酵素の作用によって産生される反応産物を検出する工程によって検出され、比色標識は、単に有色標識を視覚化することによって検出される。
【0147】
国際公開公報第97/10365号においてさらに詳細に記載されているように、標識は、ハイブリダイゼーションの前に、または後に標的(試料)核酸に付加してもよい。検出可能な標識は、ハイブリダイゼーションの前に標的(試料)核酸に直接付着されるか、または組み入れられる。対照的に、「間接的標識」は、ハイブリダイゼーションの後にハイブリッド二重鎖に連結される。間接的標識は、ハイブリダイゼーションの前に標的核酸に付着された結合部分に付着されることが多い。したがって、たとえば、標的核酸をハイブリダイゼーションの前にビオチン化してもよい。ハイブリダイゼーションの後、アビジン抱合されたフルオロフォアを、容易に検出される標識を提供するビオチンを有するハイブリッド二重鎖に結合させる。核酸の標識化および標識したハイブリダイズされた核酸の検出の方法の詳細な総説については、LABORATORY TECHNIQUES IN BIOCHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY, Vol. 24: Hybridization with Nucleic Acid Probes, P. Tijssen, ed. Elsevier, N. Y. (1993)を参照されたい。
【0148】
また、核酸試料は、当技術分野において公知の方法、たとえば国際公開公報第97/10365号に開示されている方法を使用して、試料の複雑さを減少させ、これによりバックグラウンド・シグナルを減少させ、かつ測定の感受性を改善するために、高密度プローブアレイに対するハイブリダイゼーションの前に修飾してもよい。
【0149】
チップ・アッセイ法による結果は、典型的にはコンピュータ・ソフトウェア・プログラムを使用して解析される。たとえば、欧州特許第0717 113 A2号および国際公開公報第95/20681号を参照されたい。ハイブリダイゼーション・データをプログラムに読み込んで、これにより、ターゲットされた遺伝子、すなわち表1で同定される遺伝の発現レベルを算出する。この図は、病気にかかった個体および健康な個体についての遺伝子発現レベルの既存のデータセットに対して比較する。得られたデータと病気にかかった個体のセットとの間の相関は、被検体患者における疾患の発症を示す。
【0150】
また、表1の一覧表に記載された遺伝子の配列(またはこれらの一部)の1つまたは複数を含む新生物肺組織の検出のために有用なデータベースも、本出願の範囲内である。
【0151】
これらのポリヌクレオチド配列は、肺癌細胞を同定する遺伝子の標準化された表現のためのデータ処理システムがコンパイルされるように、デジタル記憶媒体に貯蔵されている。データ処理システムは、最初に、新生物表現型または遺伝子型であることが疑われる細胞を選択し、次いで、細胞からポリヌクレオチドを単離することにより、2つの細胞間の遺伝子発現を解析するために有用である。次いで、単離されたポリヌクレオチドをシーケンスする。試料由来の配列を上記した相同性検索技術を使用して、データベースに存在する配列と比較する。一つの局面において、ポリヌクレオチドが上記記載のとおりの肺癌細胞から単離されたことのポジティブな指標である、試験配列と表1で同定される少なくとも1つの配列もしくはその相補物との間で90%を超えるものが選択され、または95%を超えるものが選択され、または97%以上の配列同一性のものが選択される。
【0152】
または、試料をデータベースに対して比較することができる。簡潔には、当技術分野において公知であり、およびたとえば前記Sambrook et al.(1989)に記載されている方法を使用して、複数のRNAを細胞または組織試料から単離する。任意に、遺伝子転写物をcDNAに変換することができる。遺伝子転写物のサンプリングを配列特異的解析に供し、定量化する。これらの遺伝子転写物配列存在量を、病気にかかった患者および健康な患者についての正常なデータセットを含む参照データベース配列存在量に対して比較する。患者は、本明細書において同定される転写物の過剰発現を含む患者のデータセットが最も密接に相関する疾患を有する。
【0153】
また、関心対象の遺伝子の差動的発現は、タンパク質産物を調べることによって決定することができる。タンパク質解析のために、当技術分野における種々の技術を利用できる。これらは、放射免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、「サンドイッチ」免疫アッセイ法、免疫放射線アッセイ法、インサイチュー免疫アッセイ法(たとえば、コロイド金、酵素、または放射性同位元素標識を使用する)、ウエスタンブロット分析法、免疫沈降アッセイ法、免疫蛍光アッセイ法、およびPAGE-SDS法を含むが、これらに限定されるわけではない。タンパク質レベルを決定する1つの手段は、(a)ポリペプチドを含む生体試料を提供する工程;および(b)関心対象の遺伝子の発現産物に反応性の抗体と試料中の成分との間で生じる任意の免疫特異性結合の量を測定する工程であって、免疫特異的結合の量が発現タンパク質のレベルを示す工程を含む。
【0154】
これらの遺伝子のタンパク質産物を特異的に認識して結合する抗体が、これらの免疫アッセイ法に必要であった。これらは、市販のベンダーから購入してもよく、または当技術分野において周知の方法を使用して作製し、およびスクリーニングしてもよい。HarlowおよびLane(1988)前記およびSambrook et al.(1989)前記を参照されたい。または、関心対象の遺伝子のタンパク質産物を特異的に認識して結合するポリクローナルまたはモノクローナル抗体は、公知の方法を使用して作製し、単離することができる。
【0155】
遺伝子の差動的発現によって特徴づけられる悪性腫瘍、過形成、または異形成を診断する際に、典型的には、被検体および適切な対照の比較解析を行う。好ましくは、診断試験には、たとえば少なくとも2.5倍のレベルで、関心対象の遺伝子の発現に予測される変化および関心対象の悪性腫瘍または異形成の臨床的特徴、を示す被検体に由来する対照試料(以下に「ポジティブ対照」)を含む。または、診断はまた、試料が、新生物状態の臨床的特徴を欠いており、かつ問題の遺伝子の発現レベルが正常範囲内にある、被検体に由来する対照試料(以下に「ネガティブ対照」)を含む。同定される変化に関して、被検体とポジティブ対照との間の順相関は、該疾患の存在または性質を示す。被検体とネガティブ対照との間の相関の欠如により、診断を確認する。好ましい態様において、本方法は、表1の遺伝子の差動的発現に基づいて、肺癌、好ましくは非小細胞肺癌を診断するために使用される。
【0156】
細胞試料からmRNAまたはタンパク質レベルを定量化するために、当技術分野において利用できる種々の方法があり、実際に、これらのレベルを定量化することができるいずれの方法も本発明によって包含される。たとえば、上述した遺伝子のmRNAレベルの決定は、一つの局面において、mRNAに対して相補的である少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブを使用するハイブリダイゼーションまたは定量的増幅によって、肺細胞から単離された試料中のmRNAの量を測定する工程を含んでいてもよい。上述した遺伝子産物の決定では、表1で同定される遺伝子の遺伝子産物に対して反応性の抗体間で生じる免疫特異的結合の量を測定する必要がある。免疫特異的結合、またはハイブリダイゼーションもしくは増幅手順の間に生じるシグナルを検出し、および定量化するためには、プローブまたは化学発光の放射能を検出するものを含む(しかし、これらに限定されない)デジタル・イメージ分析システムを使用することができる。
【0157】
スクリーニングアッセイ法
また、本発明は、細胞の新生物状態を逆転させるか、または上記した細胞の成長もしくは増殖を選択的に阻害するための、リード、薬物、治療的生物製剤、および方法を同定するためのスクリーニングを提供する。一つの局面において、本スクリーニングは、表1で同定される遺伝子の差動的発現によって特徴づけられる悪性腫瘍、過形成、もしくは異形成の治療のために有用であるリード化合物または生物学的薬剤を同定する。
【0158】
したがって、本方法をインビトロで実施するためには、最初に、適切な細胞培養または組織培養が提供される。細胞は、新生物肺細胞と関連する遺伝子を差動的に発現する、たとえば少なくとも1つの遺伝子が表1で同定される、培養細胞または遺伝子改変細胞であることができる。または、細胞は、組織生検由来であることができる。細胞は、密度依存的制約のない指数増殖を達成するための条件下(温度、増殖培地または培養培地、およびガス(CO2))および適切な量の時間で培養する。また、さらに別の細胞培養;対照として試験する薬剤を受けていないものを維持することが望ましい。
【0159】
当業者には明らかなとおり、本方法は、高スループット解析のために修飾することができ、適切な細胞をマイクロタイタープレートで培養してもよく、遺伝子型変異、表現型変化、および/または細胞死に注目することによって、いくつかの薬剤を同時にアッセイしてもよい。
【0160】
薬剤が、DNAまたはRNA核酸分子以外の組成物であるときは、適切な条件は、細胞培養に直接添加されるもの、または添加のために培地に添加されるものを含む。当業者には明らかなとおり、添加しなければならない「有効な」量は、経験的に決定することができる。
【0161】
本スクリーニングは、薬剤を、関心対象の遺伝子の差動的発現によって特徴づけられる試験細胞と接触させる工程、次いで該遺伝子発現のレベルについて細胞をアッセイする工程を含む。いくつかの局面において、アッセイ法の前に遺伝子発現レベルを決定することが必要であってもよい。これにより、細胞培養への薬剤の投与後に発現を比較するためのベースラインがもたらされる。もう一つの態様において、試験細胞は、関心対象の遺伝子を差動的に発現する樹立細胞系に由来する培養細胞である。遺伝子発現が、正常または非腫瘍状態の細胞に存在するレベルに戻される(減少させる、または増大する)か、または細胞が選択的に死滅するか、または成長率の減少を示す場合、薬剤は、治療剤の可能性がある。
【0162】
さらにもう一つの局面において、試験細胞または組織試料が、治療される被検体から単離され、1つまたは複数の潜在的薬剤を、その個々の患者のための最適の治療的なおよび/または治療の経過を決定するためにスクリーニングする。
【0163】
本発明の目的上、「薬剤」は、単一もしくは複合体の有機もしくは無機分子などの生物学的製剤もしくは化学物質、ペプチド、タンパク質、またはオリゴヌクレオチドを含む(しかし、これらに限定されるわけではない)ことが企図される。化合物の莫大なアレイ、たとえばオリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチドなどのオリゴマー、並びに種々のコア構造に基づく合成の有機化合物を合成することができ、これらも「薬剤」という用語に含まれる。加えて、種々の天然の供与源により、植物または動物抽出物などのスクリーニングするための化合物を提供することができる。常に明確に述べられるわけではないが、薬剤は、単独で、または本発明のスクリーニングによって同定される薬剤と同じもしくは異なる生物活性を有するもう一つの薬剤と組み合わせて使用されることが理解されるはずである。また、本薬剤および方法は、その他の療法と組み合わせられることも企図される。
【0164】
本明細書に使用される「細胞の新生物状態を逆転させる」という用語は、アポトーシス、壊死、または本明細書に記載したような細胞分裂、減少した腫瘍形成能、薬学的耐性の喪失、成熟、分化、もしくは新生物表現型の復帰を防げる任意の他の手段を含むことが企図される。上記の如く、新生物状態を生じる関心対象の遺伝子の差動的発現を有する肺細胞は、本方法によって最適に治療される。これらの細胞は、遺伝子の差動的発現を同定することができる当技術分野において公知の任意の方法によって同定することができる。
【0165】
薬剤が核酸であるときは、リン酸カルシウム沈殿、微量注入法、または電気穿孔法を含むが、これらに限定されるわけではない当技術分野において公知の方法により、これを細胞培養に添加することができる。または、もしくは加えて、核酸は、細胞に組み込むために発現または挿入ベクターに組み込むことができる。プロモーターおよびポリヌクレオチドを機能的に連結することができるクローニング部位の両方を含むベクターは、当技術分野において周知であり、および簡単に下に記載してある。
【0166】
ポリヌクレオチドは、当技術分野において周知の方法を使用して、ベクターゲノム内に挿入される。たとえば、挿入断片およびベクターDNAは、適切な状態下で制限酵素と接触させて、それぞれの分子に対して、互いに対になることができ、かつリガーゼで共に連結することができる相補末端を作製することができる。または、合成核酸リンカーを制限されたポリヌクレオチドの終端に結合することができる。これらの合成リンカーは、ベクターDNAの特定の制限部位に対応する核酸配列を含む。加えて、終止コドンおよび適切な制限部位を含むオリゴヌクレオチドは、たとえば、以下のいくつかまたは全部を含むベクターに挿入するために結合させることができる:哺乳動物細胞における安定または一過性トランスフェクタントの選択のためのネオマイシン遺伝子などの、選択可能なマーカー遺伝子;高レベルの転写のためのヒトCMV前初期遺伝子由来のエンハンサ/プロモーター配列;mRNA安定性のためのSV40由来の転写終結およびRNAプロセシング・シグナル;適当なエピソームの複製のためのSV40ポリオーマ複製開始点およびColE1;多用途マルチクローニングサイト;並びにセンスおよびアンチセンスRNAのインビトロでの転写のためのT7およびSP6 RNAプロモーター。その他の手段が当技術分野において周知であり、利用できる。
【0167】
本方法の目的、すなわち細胞溶解またはアポトーシスの誘導が、細胞分裂の減少、細胞の分化、または遺伝子過剰発現の減少についてアッセイすることによって達成されるかどうかを決定することができる。細胞の分化は、組織学的な方法によって、または未分化表現型と関連していてもよい、たとえば少なくとも1つの遺伝子の発現産物が表1から選択される、一定の細胞表面マーカーの存在もしくは喪失についてモニタリングすることによってモニターすることができる。
【0168】
また、薬剤と本明細書に記載したスクリーニングおよびインビトロ方法を行うために必要な説明書とを含むキットが主張される。
【0169】
被検体がラットまたはマウスなどの動物であるときは、本方法は、治療剤の臨床試験の前に、またはリード最適化のために使用することができる便利な動物モデル系を提供する。この系では、遺伝子発現が正常レベルに戻される場合、または関心対象の遺伝子の差動的発現を含む、細胞の存在に関連するか、もしくは相関される症候が寛解させられる場合、候補薬剤は、それぞれ病理学的細胞を有する未処置の動物と比較して、潜在的薬物である。また、健康で、かつ治療されていない細胞または動物の別の負の対照群を有することも有用であり得るし、比較のための基礎を提供する。
【0170】
治療法
本明細書に記載されている遺伝子によって発現されるタンパク質は、全て、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体などのリガンド、並びにこれらの受容体の細胞外部分と結合する小分子に結合することができる細胞外成分を有する。したがって、これらのリガンドは、これらの受容体を発現する細胞の増殖を阻害するか、または細胞溶解もしくは細胞死を誘導する治療剤として有用である。
【0171】
また、治療剤は、表1で同定される遺伝子を発現する細胞を特異的に認識し、かつ溶解する免疫エフェクター細胞を含む。被検体または患者は、当技術分野において公知の方法を使用して、1つまたは複数のエフェクター細胞を、被検体または患者から単離された腫瘍細胞に対してスクリーニングすることによって、これらの免疫エフェクター細胞の使用によって有利に治療されるかどうかを決定することができる。
【0172】
一つの態様において、治療剤は、肺癌を治療するのに有効な量で投与される。さらなる好ましい態様において、本発明の薬剤は、細胞肺癌を治療するのに有効な量で投与される。また、本発明の治療は、前新生物または非悪腫瘍状態から新生物または悪性主要状態への進行を予防するために使用することができる。
【0173】
種々の送達系、たとえばリポソーム内にカプセル化、微小粒子、マイクロカプセル、組換え細胞による発現、受容体依存性エンドサイトーシス(たとえば、Wu and Wu, (1987), J. Biol. Chem. 262: 4429-4432を参照されたい)、レトロウイルスまたはその他のベクターの一部としての治療的核酸の構築、その他が公知であり、本発明の治療剤を投与するために使用することができる。送達の方法は、動脈内、筋肉内、静脈内、鼻腔内、および経口経路を含むが、これらに限定されるわけではない。特定の態様において、治療を必要とする領域に局所的に本発明の薬学的組成物を投与することが望ましく;これは、たとえば、限定されるわけではないが、外科手術の間に局部的な注入によって、注射によって、またはカテーテルによって達成してもよい。
【0174】
本明細書においてこれらの企図された目的に関して有効と同定された薬剤は、表1の遺伝子の差動的発現に相関した疾患に感受性か、もしくは発病するリスクのある被検体または個体に投与することができる。薬剤が、マウス、ラット、またはヒト患者などの被検体に投与されるときは、薬剤を薬学的に許容される担体に添加することができ、被検体に全身性または局所的に投与することができる。有利に治療することができる患者を決定するためには、腫瘍試料を患者から取り出し、遺伝子の差動的発現について細胞をアッセイする。治療的な量は、経験的に決定することができ、治療される病態、治療される被検体、並びに薬剤の有効性および毒性により変化する。動物に送達するときは、本方法は、薬剤の有効性をさらに確認するために有用である。動物モデルの一例として、ヌードマウス(Balb/c NCR nu/nu female, Simonsen, Gilroy, CA)群には、それぞれ本明細書で定義したとおりの約105〜約109高増殖性癌または標的細胞を皮下に接種する。腫瘍が確立されるときに、薬剤を、たとえば腫瘍周辺に皮下注射によって投与する。腫瘍サイズの減少を決定するための腫瘍測定を週に2回ベニヤカリパス(venier calipers)を使用して二次元で行う。また、その他の動物モデルを適切なときに使用してもよい。
【0175】
インビボの投与は、治療の経過の全体にわたって、1用量、連続的、または断続的に遂行することができる。投与の最も有効な手段および投薬量を決定する方法は、当業者に周知であり、治療法のために使用される組成物、治療法の目的、治療される標的細胞、および治療される被検体により変化する。処理医師によって選択された服用レベルおよびパターンで、一回または複数回の投与を実施することもできる。薬剤を投与するための適切な投薬量製剤および方法は、下記に見いだすことができる。
【0176】
本発明の薬剤および組成物は、医薬の製造において、並びに活性成分の薬学的組成物などの従来の手順に従って投与することによって、ヒトおよびその他の動物を治療するために使用することができる。
【0177】
薬学的組成物は、経口的、鼻腔内、非経口的、または吸入療法によって投与することができ、錠剤、ロゼンジ、顆粒、カプセル、丸剤、アンプル、坐薬、またはエアロゾル形態の形をとってもよい。これらは、活性成分の水性もしくは非水性希釈剤中の懸濁液、溶液、およびエマルジョン、シロップ、顆粒、または粉末の形をまたとってもよい。本発明の薬剤に加えて、薬学的組成物は、その他の薬学的活性化合物または本発明の複数の化合物を含むこともできる。
【0178】
より具体的には、本明細書において活性成分とも称される本発明の薬剤は、経口、直腸、経鼻、局所的(経皮、エアロゾル、頬側、および舌下腺を含む)、膣、非経口的(parental)(皮下、筋肉内、静脈内、および皮内を含む)、および肺を含む任意の適切な経路による治療法のために投与してもよい。また、好ましい経路は、レシピエントの状態および年齢、並びに治療される疾患で異なることが認識される。
【0179】
理想的には、薬剤は、疾患部位で活性化合物のピーク濃度を達成するように投与されるべきである。これは、たとえば、任意に塩類溶液中の、薬剤の静脈内注射によって、または経口投与、たとえば活性成分を含む錠剤、カプセル、もしくはシロップとして達成してもよい。望ましい薬剤の血液濃度は、疾患組織内で活性成分の治療的な量を提供するために、連続注入によって維持してもよい。それぞれの個々の治療的化合物または薬物が単独で使用されるときに必要とされるよりも低いそれぞれの成分抗ウイルス薬の総投薬量を必要とする治療的組み合わせを提供し、これにより副作用を減少させるために、効果のある組み合わせの使用が想定される。
【0180】
薬剤を単独で投与することもできるが、上記記載のとおり、少なくとも1つの活性成分を、そのための1つまたは複数の薬学的に許容される担体および任意にその他の治療剤と共に含む薬学的製剤としてこれを提示することが好ましい。それぞれの担体は、製剤のその他の成分と適合性で、かつ患者に有害でないという意味において「許容され」なければならない。
【0181】
製剤は、経口、直腸、経鼻、局所的(経皮、頬側、および舌下腺を含む)、膣、非経口的(皮下、筋肉内、経静脈、および皮内を含む)、および肺の投与のために、適切なものを含む。製剤は、都合よくは、単位用量形態で提示してもよく、薬学の技術分野において周知の任意の方法によって調製してもよい。このような方法は、活性成分を1つまたは複数の付属の成分を構成する担体と結合させる工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体もしくは微粉固体担体、または両方と均一かつ本質的に結合させ、次いで必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0182】
経口投与のために適切な本発明の製剤は、それぞれが所定量の活性成分を含むカプセル、カシェ剤、または錠剤などの別々のユニットとして;粉末もしくは顆粒として;水性もしくは非水溶液体中の溶液もしくは懸濁液の状態として;または水中油型液状エマルジョンもしくは油中水型液状エマルジョンとして提示してもよい。また、活性成分は、大量瞬時投与、舐剤、またはペーストを呈していてもよい。
【0183】
錠剤は、任意に1つまたは複数の付属の成分と共に、圧縮または成形によって作製してもよい。圧縮錠剤は、任意に結合剤(たとえば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(たとえば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋されたポビドン、架橋されたカルボキシルメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤、または分散剤と混合された、粉末もしくは顆粒などの自由に流れる形態の活性成分を適切な機械で圧縮することによって調製してもよい。すりこみ錠剤は、不活性液状希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を適切な機械で成形することによって作製してもよい。錠剤は、任意にコーティングしても、または刻みめを入れてもよく、その中の活性成分の緩徐な放出または徐放性を提供するために、たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、所望の放出プロフィールを提供するように比率を変化させて処方してもよい。錠剤は、胃以外の腸部分における放出を提供するために、任意に腸溶コーティングを提供してもよい。
【0184】
口における局所的投与に適した製剤は、風味をつけた基材、通常ショ糖およびアカシアまたはトラガカンタ中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンなどの不活性基材、またはショ糖およびアカシア中に活性成分を含むパステル;並びに適切な液体担体中に活性成分を含む含嗽薬を含む。
【0185】
本発明による局所的投与のための薬学的組成物は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト(past)、ゲル、スプレー、エアロゾル、または油として処方してもよい。または、製剤は、活性成分と任意に1つもしくは複数の賦形剤または希釈剤とが含浸された包帯もしくは絆創膏などのパッチまたは包帯剤を含んでいてもよい。
【0186】
必要に応じて、クリーム基材の水相は、たとえば、少なくとも約30% w/wの多価アルコール、すなわちプロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、およびポリエチレングリコールなどの2つ以上のヒドロキシル基を有するアルコール並びにこれらの混合物を含んでいてもよい。局所製剤は、望ましくは皮膚もしくはその他の患部を介した薬剤の吸収または透過を増強する化合物を含んでいてもよい。このような経皮透過増強剤の例は、ジメチルスルホキシドおよび関連した類似体を含む。
【0187】
本発明のエマルジョンの油性相は、公知の様式の公知の成分から構成されていてもよい。この相は、単に乳化剤(別に、腎脈管としても公知)だけを含んでいてもよいが、これは、望ましくは脂肪もしくは油と、または脂肪および油の両方と、少なくとも1つの乳化剤の混合物を含む。好ましくは、親水性乳化剤は、安定剤として作用する親油性乳化剤と共に含まれる。また、油および脂肪を含むことが好ましい。合わせると、安定剤を伴うか、または伴わない乳化剤は、いわゆる乳化蝋を構成し、蝋は、油および/または脂肪と共に、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成する。
【0188】
本発明の製剤に使用するために適した腎脈管および乳化安定剤は、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、およびドデシル硫酸ナトリウムを含む。
【0189】
薬学的エマルジョン製剤に使用される可能性が高い大部分の油中での活性化合物の溶解度は非常に低いので、製剤のための適切な油または脂肪の選択は、所望の化粧品特質を達成することに基づく。したがって、クリームは、好ましくは、チューブまたはその他の容器から漏れを回避するために、適切な硬度をもつ油っぽくなく、染色されておらず、および水に溶ける製品であるべきである。ジ-イソアジアパート、イソセチルステアラート、ココナッツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、イソプロピルミリステート、デシルオレイナート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアラート、2-エチルヘキシルパルミタート、またはCrodamol CAPとして公知の分枝鎖エステルの配合物などの、直鎖状または分岐鎖の、一もしくは二塩基性アルキルエステルを使用してもよく、最後3つが好ましいエステルである。これらは、必要とされる特質に応じて単独でまたは共に使用してもよい。または、白い軟パラフィンおよび/または流動パラフィン、またはその他の鉱油などの高融点脂質を使用することもできる。
【0190】
また、眼に対する局所的投与のために適した製剤は、活性成分が適切な担体、特に薬剤のための水性溶媒に溶解または懸濁された点眼を含む。
【0191】
直腸投与のための製剤は、たとえば、カカオ脂またはサリチラート含む適切な塩基と共に坐薬として提示してもよい。
【0192】
膣の投与のために適した製剤は、当技術分野において適切であることが公知である担体などの薬剤に加えて含む、ペッサール、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡、またはスプレー製剤として提示してもよい。
【0193】
担体が固体である鼻噴投与のために適切な製剤は、たとえば、吹入剤が摂取される様式で、すなわち、鼻部の至近距離に保持された粉末の容器からの経鼻通過を介して迅速吸入法によって投与される、約20〜約500ミクロンの範囲の粒径を有する粗末を含む。担体が、たとえば、鼻内噴霧、点鼻液として、または噴霧器によるエアロゾル投与による投与のための液体である適切な製剤は、薬剤の水溶液または油溶液を含む。
【0194】
非経口投与のために適した製剤は、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、および企図されるレシピエントの血液と等張性の製剤を与える溶質を含んでいてもよい、水性および非水性の等張性無菌注射溶液;および懸濁剤、および糊料、並びに血液成分または1つもしくは複数の器官に化合物をターゲットするようにデザインされたリポソームまたはその他のミクロ粒子系を含んでいてもよい、水性および非水溶無菌懸濁液を含む。本製剤は、単位用量または多用量密封容器、たとえばアンプルおよびバイアル中に提示してもよく、使用直前に、無菌の液体担体、たとえば注射用水を添加することだけが必要な冷凍乾燥された(凍結乾燥された)状態で貯蔵されてもよい。即席注射溶液および懸濁液は、前述した種類の無菌の粉末、顆粒、および錠剤から調製してもよい。
【0195】
好ましいユニット投薬量製剤は、本明細書に上述したような、薬剤の1日用量もしくは単位、1日副用量、またはこれらの適切な画分を含むものである。
【0196】
特に前述の成分に加えて、本発明の製剤は、問題の製剤の型を考慮する技術において慣習的なその他の薬剤を含んでいてもよいことが理解されるべきであり、たとえば、経口投与のために適したものは、甘味料、シックナー、および香料などのさらなる薬剤を含んでいてもよい。また、本発明の薬剤、組成物、および方法をその他の適切な組成物および療法と組み合わせることも企図される。
【0197】
トランスジェニック動物
もう一つの局面において、表1の遺伝子は、トランスジェニック動物モデルを作製するために使用することができる。近年、遺伝学者は、発生中の胚の遺伝子を操作し、外来遺伝子をこれらの胚に導入することによって、トランスジェニック動物、たとえばマウスを作製することに成功した。一旦これらの遺伝子がレシピエント胚のゲノムに組み込まれれば、生じる胚または成体動物を解析して、遺伝子の機能を決定することができる。インビボでの公知の遺伝子の機能を理解するため、およびヒト疾患の動物モデルを作製するために、変異体動物が作製される。(Chisaka et al. (1992) 355:516-520; Joyner et al. (1992) in POSTIMPLANTATION DEVELOPMENT IN THE MOUSE (Chadwick and Marsh, eds., John Wiley & Sons, United Kingdom) pp:277-297; Dorin et al. (1992) Nature 359:211-215を参照されたい)。
【0198】
米国特許第5,464,764号および第5,487,992号は、関心対象の遺伝子が欠失または変異されてその機能が破壊されているトランスジェニック動物の一タイプを記載する。(また、米国特許第5,631,153号および第5,627,059号を参照されたい)。これらの「ノックアウト」動物は、相同組換え現象を利用することによって作製され、インビボにおいて特定の遺伝子配列の機能を研究するために使用することができる。本明細書に記載されているポリヌクレオチド配列は、肺癌の動物モデルを調製する際に有用である。
【0199】
抗体
また、関心対象の遺伝子の発現産物と特異的に複合体を形成することができる抗体が、本発明によって提供される。本発明の方法に有用な抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。これらは、キメラ、ヒト化されたか、または全くヒトのものである。抗体の機能的断片は、Fab、Fab’、Fab2、Fab’2、および単鎖可変領域を含むが、これらに限定されるわけではない。抗体は、細胞培養において、ファージにおいて、またはウシ、ウサギ、ヤギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ヒツジ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、類人猿、その他を含むが、これらに限定されない種々の動物において産生することができる。抗体は、所与の状態のセット下で、適切な抗原に対する結合を、無関係な抗原または抗原混合物に対する結合と比較することによって、結合特異性を試験することができる。抗体が、適切な抗原に対して、無関係な抗原または抗原混合物に対するよりも少なくとも2、5、7、および好ましくは10倍結合する場合、特異的であるとみなされる。
【0200】
本発明のモノクローナル抗体は、当技術分野において公知で、十分に文献に記載されている従来のハイブリドーマ技術を使用して作製することができる。たとえば、ハイブリドーマは、適切な不死化株化細胞を融合することによって産生される(たとえば、Sp2/0、Sp2/0-AG14、NSO、NS1、NS2、AE-1、L.5、>243、P3X63Ag8.653、Sp2 SA3、Sp2 MAI、Sp2 SS1、Sp2SA5、U397、MLA 144、ACT IV、MOLT4、DA-1、JURKAT、WEHI、K-562、COS、RAJI、NIH 3T3、HL-60、MLA 144、NAMAIWA、NEURO 2A、CHO、PerC.6、YB2/Oなど(しかし、これらに限定されない)の骨髄腫株化細胞)等、または異種骨髄腫、これらの融合産物、またはこれらに由来する任意の細胞もしくは融合細胞、または当技術分野において公知の任意のその他の適切な株化細胞(たとえばwww.atcc.org、www.lifetech.com.等を参照されたい)を、単離もしくはクローン化された脾臓、末梢血、リンパ、扁桃腺、またはその他の免疫性もしくはB細胞含有細胞、または内因性もしくは外因性核酸として、組換えもしくは内因性のウイルス、細菌、藻類、原核生物、両生類、昆虫、爬虫類、魚類、哺乳類、げっ歯類、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ヒツジ、霊長類、成熟核、ゲノムDNA、cDNA、rDNA、ミトコンドリアDNAもしくはRNA、葉緑体DNAもしくはRNA、hnRNA、mRNA、tRNA、一重、二重、または三重鎖ハイブリダイズされたもの等、またはこれらの任意の組み合わせとしてのいずれかで重鎖もしくは軽鎖定数または可変またはフレームワークまたはCDR配列を発現する任意のその他の細胞など(しかし、これらに限定されない)の抗体産生細胞と融合することによって産生される。また、抗体産生細胞は、末梢血、または好ましくは、関心対象の抗原で免疫されたヒトもしくはその他の適切な動物の脾臓もしくはリンパ節から得ることができる。また、他のいかなる適切な宿主細胞も、本発明の抗体、これらの特定された断片、または変異体をコードする異種または内在性の核酸を発現させるために使用することができる。融合細胞(ハイブリドーマ)または組換え細胞は、選択培養状態またはその他の適切な公知の方法を使用して単離して、限界希釈もしくは細胞選別、または他の公知の方法によってクローン化することができる。
【0201】
必要な特異性の抗体を産生または単離するその他の適切な方法は、当技術分野において公知の方法を使用して、ペプチドまたはタンパク質ライブラリー(たとえば、限定されるわけではないが、バクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNAなど、ディスプレイ・ライブラリー;たとえば、Cambridge Antibody Technologies (Cambridgeshire, UK), MorphoSys (Martinsreid/Planegg, Del.), Biovation (Aberdeen, Scotland, UK) BioInvent (Lund, Sweden)などの種々の市販のベンダーから入手可能)から組換え抗体を選択する方法を使用することができるが、これらに限定されるわけではない。米国特許第4,704,692号;第5,723,323号;第5,763,192号;第5,814,476号;第5,817,483号;第5,824,514号;第5,976,862号を参照されたい。代替法は、当技術分野において公知および/または本明細書に記載されているような、ヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物の免疫化に依存する(たとえば、SCIDマウス、 Nguyen et al. (1977) Microbiol. Immunol. 41: 901-907 (1997); Sandhu et al., (1996) Crit. Rev. Biotechnol. 16:95-118; Eren et al. (1998) Immunol. 93:154-161)。このような技術は、以下を含むが、これらに限定されるわけではない:リボソーム・ディスプレイ(Hanes et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:4937-4942; Hanes et al., (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:14130-14135);単一細胞抗体産生技術(たとえば、選択的リンパ球抗体法(「SLAM」)(米国特許第5,627,052号、Wen et al. (1987) J. Immunol. 17: 887-892; Babcook et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996) 93:7843-7848);ゲル・ミクロ小滴およびフローサイトメトリー(Powell et al. (1990) Biotechnol. 8:333-337; One Cell Systems, (Cambridge, Mass).; Gray et al. (1995) J. Imm. Meth. 182:155-163; Kenny et al. (1995) Bio/Technol. 13:787-790);B細胞選択(Steenbakkers et al. (1994) Molec. Biol. Reports 19:125-134 (1994)。
【0202】
また、本発明の抗体変異体は、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドを適切な宿主に送達する工程を使用して調製し、その乳にこのような抗体を産生するトランスジェニック動物またはヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジ等の哺乳類を提供することができる。これらの方法は、当技術分野において公知であり、たとえば、米国特許第5,827,690号;第5,849,992号;第4,873,316号;第5,849,992号;第5,994,616号;第5,565,362号;および第5,304,489号に記載されている。
【0203】
「抗体変異体」という用語は、抗体または断片の直鎖状ポリペプチド配列に対する翻訳後修飾を含む。たとえば、米国特許第6,602,684 B1号には、免疫グロブリンのFc領域と同等の領域を含み、Fc媒介細胞の毒性が増強されている完全抗体分子、抗体断片、または融合タンパク質、およびこうして作製された糖タンパク質を含む抗体の修飾されたグリコール型の産生のために方法が記載されている。
【0204】
また、このような抗体、植物部分の、もしくはそこから培養された細胞の特定された部分または変異体を産生するトランスジェニック植物および培養植物細胞(たとえば、タバコ、トウモロコシ、およびウキクサ(しかし、これらに限定されるわけではない))を提供するために、抗体変異体を本発明のポリヌクレオチドを送達することによって調製することができる。たとえば、Cramer et al. (1999) Curr. Top. Microbol. Immunol. 240:95-118およびその中の引例は、たとえば、誘導性プロモーターを使用する大量の組換えタンパク質を発現するトランスジェニック・タバコ葉の産生を記載する。トランスジェニック・トウモロコシは、市販の産生レベルにて、その他の組換え系で産生されたか、または天然の供与源から精製したものと同等の生物活性をもつ哺乳類タンパク質を発現するために使用されてきた。たとえば、Hood et al., Adv. Exp. Med. Biol. (1999) 464:127-147およびその中の引例を参照されたい。また、抗体変異体は、タバコ種子およびジャガイモ塊茎を含む、単鎖抗体(scFv’s)などの抗体断片を含むトランスジェニック植物種子から大量に産生された。たとえば、Conrad et al. (1998) Plant Mol. Biol. 38:101-109およびその中の引例を参照されたい。したがって、本発明の抗体は、公知の方法に従って、トランスジェニック植物を使用して産生することができる。
【0205】
抗体誘導体は、免疫原性を修飾するか、または結合、親和性、結合速度(on-rate)、解離速度(off-rate)、結合活性、特異性、半減期、もしくは任意のその他の適切な特徴を減少させ、増強し、または修飾するために、たとえば外来性配列を添加することによって産生することができる。一般に、非ヒトまたはヒトCDR配列の一部または全体は、維持されており、一方で、可変領域および定常領域の非ヒト配列は、ヒトまたはその他のアミノ酸で置換される。
【0206】
一般に、抗原結合への影響において、CDR残基が直接および最も実質的に関与する。本発明の抗体のヒト化または操作は、米国特許第5,723,323号;第5,976,862号;第5,824,514号;第5,817,483号;第5,814,476号;第5,763,192号;第5,723,323号;第5,766,886号;第5,714,352号;第6,204,023号;第6,180,370号;第5,693,762号;第5,530,101号;第5,585,089号;第5,225,539号、および第4,816,567号に記載されているものなど(しかし、これらに限定されるわけではない)の任意の公知の方法を使用して行うことができる。
【0207】
部分的から完全なヒト抗体を作製するための技術は、当技術分野において公知であり、このような技術のいずれを使用することもできる。一つの態様によれば、完全ヒト抗体配列は、ヒト重鎖および軽鎖抗体遺伝子を発現するように操作されたトランスジェニックマウスにおいて作製される。抗体の異なるクラスを産生することができるこのようなトランスジェニックマウスの複数株を作製した。所望の抗体を産生するトランスジェニックマウスに由来するB細胞を融合して、所望の抗体の持続的産生のためのハイブリドーマ株化細胞を作製することができる。(たとえば、Russel, N. D. et al. (2000) Infection and Immunity April 2000:1820-1826; Gallo, M. L. et al. (2000) European J. of Immun. 30:534-540; Green, L. L. (1999) J. of Immun. Methods 231:11-23; Yang, X-D et al. (1999A) J. of Leukocyte Biology 66:401-410; Yang, X-D (1999B) Cancer Research 59 (6):1236-1243; Jakobovits, A. (1998) Advanced Drug Delivery Reviews 31:33-42; Green, L. and Jakobovits, A. (1998) J. Exp. Med. 188 (3):483-495; Jakobovits, A. (1998) Exp. Opin. Invest. Drugs 7 (4):607-614; Tsuda, H. et al. (1997) Genomics 42:413-421; Sherman-Gold, R. (1997). Genetic Engineering News 17 (14); Mendez, M. et al. (1997) Nature Genetics 15:146-156; Jakobovits, A. (1996) WEIR’S HANDBOOK OF EXPERIMENTAL IMMUNOLOGY, THE INTEGRATED IMMUNE SYSTEM VOL. IV, 194.1-194. 7; Jakobovits, A. (1995) Current Opinion in Biotechnology 6:561-566; Mendez, M. et al. (1995) Genomics 26:294-307; Jakobovits, A. (1994) Current Biology 4 (8):761-763; Arbones, M. et al. (1994) Immunity 1 (4):247-260; Jakobovits, A. (1993) Nature 362 (6417):255-258; Jakobovits, A. et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA90 (6):2551-2555; Kucherlapati, et al.米国特許第6,075,181号を参照されたい)。
【0208】
また、ヒト・モノクローナル抗体は、不死化された細胞に融合された、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、たとえばトランスジェニックマウスから得られるB細胞を含むハイブリドーマによって産生することができる。
【0209】
これらの抗体は、キメラ抗体を作製するために修飾することができる。キメラ抗体は、抗体の重鎖および軽鎖の種々のドメインが、複数の種に由来するDNAによってコードされるものである。たとえば、米国特許第4,816,567号を参照されたい。
【0210】
また、「抗体誘導体」という用語は、2つの抗原結合部位をもつ小さな抗体断片であって、断片が同じポリペプチド鎖(VH VL)の軽鎖可変ドメイン(VL)につながった重鎖可変ドメイン(VH)を含む「ダイアボディー(diabodies)」を含む。たとえば、欧州特許第404,097号;国際公開公報第93/11161号;およびHollinger et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448を参照されたい。あまりに短すぎて同じ鎖の上の2つのドメイン間の対形成ができないリンカーを使用することにより、ドメインは、もう一つの鎖の相補的ドメインと強制的に対になり、2つの抗原結合部位を作製する。また、1つまたは複数のアミノ酸が親抗体の高頻度可変領域に挿入され、かつ抗原に対して親抗体の結合親和性よりも少なくとも約2倍強力な、標的抗原に対する結合親和性を有する抗体変異体を開示するChen et al.に対する米国特許第6,632,926号も参照されたい。
【0211】
「抗体誘導体」という用語は、「直鎖状抗体」をさらに含む。作製するための手順は、当技術分野において公知であり、Zapata et al. (1995) Protein Eng. 8 (10):1057-1062に記載されている。簡潔には、これらの抗体は、一対の抗原結合領域を形成する一対の直列型Fdセグメント(VH-CH 1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二特異性または単一特異性であることができる。
【0212】
本発明の抗体は、プロテインA精製、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含むが、これらに限定されるわけではない公知の方法によって、組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。また、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も、精製のために使用することができる。
【0213】
本発明の抗体は、天然の精製された産物、化学物質合成法の産物、並びにたとえば、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳動物細胞を含む真核生物宿主由来の、または代わりに上記のとおりの原核細胞由来の組換え技術によって産生される産物を含む。
【0214】
本発明のいくつかの局面において、抗体を検出可能な程度に、または治療的に標識することも有用である。これらの薬剤に対して抗体を抱合するための方法は、当技術分野において公知である。例示のみの目的であるが、抗体は、放射性原子、発色団、フルオロフォア、などの検出可能な部分で標識することができる。このような標識された抗体は、インビボ、または単離された試験試料での診断技法に使用することができる。また、抗体は、たとえば、化学療法剤または毒素などの医薬品に抱合することができる。これらは、サイトカインに、リガンドに、もう一つの抗体に連結することができる。抗腫瘍効果を達成するために抗体に結合させるために適した薬剤は、インターロイキン2(IL-2)および腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカイン;アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホナート、ヘマトポルフィリン、およびフタロシアニンを含む、光感作療法に使用するための光増感剤;ヨウ素-131(131I)、イットリウム90(90Y)、ビスマス-212(212Bi)、ビスマス-213(2l3Bi)、テクネチウム99m(99mTc)、レニウム-186(186Re)、およびレニウム-188(188Re)などの放射性核種;ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、メトトレキセート、ダウノマイシン、ネオカルチノスタチン、およびカルボプラチンなどの抗生物質;ジフテリア毒素、プソイドモナス外毒素A、ブドウ球菌腸毒素A、アブリン-A毒素、リシンA(脱グリコシルされたリシンAおよび天然のリシンA)、TGFアルファ毒素、チャイニーズ・コブラ(naja naja atra)由来の細胞毒、およびゲロニン(植物性毒素)などの、細菌、植物、並びにその他の毒素;レストリクトシン(アスペルギルス・レストリクタス(Aspergillus restrictus)によって産生されるリボソーム不活性化タンパク質)、サポリン(saporin)(サポナリア・オフィシナリス(Saponaria officinalis)由来のリボソーム不活性化タンパク質)、およびRNaseなどの、植物、細菌、並びに真菌由来のリボソーム不活性化タンパク質;チロシンキナーゼ阻害剤;ly207702(二フッ化プリンヌクレオシド);抗嚢胞性薬(たとえば、毒素、メトトレキセート、その他をコードするアンチセンスオリゴヌクレオチド、プラスミド)を含むリポソーム;並びにその他の抗体またはF(ab)などの抗体断片を含む。
【0215】
有機分子に共有結合性に連結される抗体を含むものの調製に関して、これらは、1つまたは複数の修飾薬との反応によるなどの適切な方法を使用して調製することができる。このようなものの例は、修飾基および活性基を含む。本明細書に使用される用語としての「修飾薬」は、活性基を含む適切な有機基(たとえば、親水性重合体、脂肪酸、脂肪酸エステル)をいう。これらの具体例は、前記に提供してある。「活性基」は、適切な状態下で、第二の化学基と反応することができ、これにより修飾薬と第二の化学基との間で共有結合を形成する化学的部分または官能基である。このようなものの例は、トシル化、メシレート、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)などの求電子性基である。チオールと反応することができる活性基は、たとえば、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロリル、ピリジルジスルフィド、5-チオール-2-ニトロ安息香酸チオール(TNB-チオール)などを含む。アルデヒド官能基は、アミンまたはヒドラジド含有分子に結合することができ、アジ化物基は、三価の亜リン酸基と反応してホスホロアミダートまたはホスホロイミド結合を形成することができる。活性基を分子に導入するための適切な方法は、当技術分野において公知である。たとえば、Hermanson, G. T., BIOCONJUGATE TECHNIQUES, Academic Press: San Diego, Calif. (1996)を参照されたい。活性基は、有機基(たとえば、親水性重合体、脂肪酸、脂肪酸エステル)に直接、またはリンカー部分、たとえば1つもしくは複数の炭素原子を酸素、窒素、または硫黄などのヘテロ原子によって置換することができる二価のC1〜C12基を介して結合することができる。適切なリンカー部分は、たとえば、テトラエチレングリコールを含む。リンカー部分を含む修飾薬は、たとえばモノ-Boc-アルキルジアミン(たとえば、モノ-Boc-エチレンジアミン、モノ-Boc-ジアミノヘキサン)を、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下において脂肪酸と反応させて、遊離アミンと脂肪酸カルボン酸塩との間でアミド結合を形成させることによって産生することができる。Boc保護基は、記載したとおりに、トリフルオロ酢酸(TFA)で処置して、もう一つのカルボン酸塩に結合することができる一級アミンに曝露することによって産物から除去することができ、または無水マレイン酸と反応させて、生じる産物を環化させて脂肪酸の活性化されたマレイミド誘導体を産生することができる。
【0216】
本発明の修飾された抗体は、ヒト抗体または抗原結合性断片を修飾薬と反応させることによって産生することができる。たとえば、有機部分をアミン反応性の修飾薬、たとえばPEGのNHSエステルを使用することによって、非部位特異的様式で抗体に結合させることができる。また、修飾されたヒト抗体または抗原結合性断片は、抗体または抗原結合断片のジスルフィド結合(たとえば、鎖内ジスルフィド結合)を還元させることによって調製することができる。次いで、還元された抗体または抗原結合性断片をチオール反応性の修飾薬と反応させて、本発明の修飾された抗体を産生することができる。本発明の抗体の特定部位に結合される有機部分を含む修飾されたヒト抗体および抗原結合性断片は、逆タンパク質分解(reverse proteolysis)などの適切な方法を使用して調製することができる。一般に、Hermanson, G. T., BIOCONJUGATE TECHNIQUES, Academic Press: San Diego, Calif. (1996)を参照されたい。
【0217】
また、本発明の抗体は、多くの異なる担体に結合することができる。したがって、本発明は、抗体ともう一つの物質(活性であるか、または不活性である)とを含む組成物も提供する。周知の担体の例は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾されたセルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、並びに磁鉄鉱を含む。担体の性質は、本発明の目的のためには、可溶性または不溶性であることができる。当業者であれば、モノクローナル抗体の結合のためのその他の適切な担体を知っており、またはこのようなルーチン試験を使用して確認することができる。
【0218】
抗体、これらの断片、または抗体を産生する株化細胞を含む組成物は、本発明に包含される。これらの組成物が薬学的に使用されるときは、これらは、薬学的に許容される担体と組み合わせられる。
【0219】
抗原提示細胞
もう一つの態様において、本発明は、MHC分子の状況において、本発明の化合物および組成物を送達する工程を含む免疫応答を誘導する方法を提供する。したがって、本発明のポリペプチドを、本明細書に記載されている方法を使用して抗原提示細胞にパルスすることができる。抗原提供細胞は、樹状細胞(DC)、単球/マクロファージ、Bリンパ球、または必要なMHC/同時刺激分子を発現するその他の細胞タイプを含むが、これらに限定されるわけではない。後述する方法では、主に最も有力な、好ましいAPCであるDCに焦点を合わせている。ポリペプチドまたはタンパク質を含むこれらの宿主細胞が、さらに提供される。
【0220】
MHC分子の状況において本発明のポリペプチドを提示する単離された宿主細胞は、教育された抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団を増殖し、単離するために、さらに有用である。免疫エフェクター細胞、たとえば細胞障害性Tリンパ球は、ナイーヴ免疫エフェクター細胞を、APCの表面上のMHC分子の状況においてポリペプチドを提示する抗原提供細胞と共に培養することによって産生される。本集団は、当技術分野において公知の方法、たとえば、FACS解析またはフィコール勾配を使用して精製することができる。また、免疫エフェクター細胞、並びにこれにより産生される集団を作製し、および培養する方法も、発明者の貢献および発明である。細胞と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物は、養子免疫治療に有用である。インビボでの投与前に、免疫エフェクター細胞を、これらが腫瘍細胞を溶解する能力についてインビトロでスクリーニングする。
【0221】
一つの態様において、免疫エフェクター細胞および/またはAPCは、遺伝子改変されている。標準的な遺伝子移入を使用して、同時刺激分子および/または刺激性サイトカインをコードする遺伝子を、免疫エフェクター細胞の増殖の前に、同時に、またはその後に挿入することができる。
【0222】
また、本発明は、ポリペプチドに免疫応答を誘導する条件下で被検体に対して上記したポリペプチドの有効な量を投与することを含む、被検体における免疫応答を誘導する方法を提供する。ポリペプチドは、製剤中に、またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして投与することができる。ポリヌクレオチドは、遺伝子送達媒体中に、または宿主細胞内に挿入することによって投与し、これを次にコードされるポリペプチドを組換えで転写して、翻訳し、プロセスすることができる。したがって、薬学的に許容される担体中の本発明のポリヌクレオチドを含む単離された宿主細胞は、適切かつ有効な量のアジュバント、サイトカイン、または有効なワクチン処方計画のための同時刺激分子と組み合わせることができる。一つの態様において、宿主細胞は、樹状細胞などのAPCである。宿主細胞は、サイトカインおよび/または同時刺激分子のいずれか、または両方の有効な量をコードするポリヌクレオチドを挿入することによって、さらに修飾することができる。
【0223】
本発明の方法は、被検体に対してサイトカインまたは同時刺激分子の有効な量を同時投与することによって、さらに修飾することができる。
【0224】
また、本発明は、任意の上述のタンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、抗体、およびこれらの断片と、許容される固体または液体担体とを含む組成物を提供する。組成物が薬学的に使用されるときは、これらは、診断的および治療的な使用のための「薬学的に許容される担体」と組み合わせられる。
【0225】
樹状細胞を含むAPCの単離、培養、および増殖
以下は、APCを単離するための2つの基本的アプローチの簡単な説明である。これらのアプローチは、(1)血液から骨髄前駆細胞(CD34+)を単離する工程、およびAPCに分化するためにこれらを刺激する工程;または(2)末梢血から事前にコミットされたAPCを収集する工程を含む。第一のアプローチでは、患者をGM-CSFなどのサイトカインで処置して、末梢血中に循環するCD34+幹細胞の数をブーストしなければならない。
【0226】
APCを単離するための第二のアプローチは、比較的多数の血液中にすでに循環している事前にコミットされたAPCを収集することである。ヒト末梢血からコミットされたAPCを単離するための以前の技術は、メトリザミド(metrizamide)勾配および粘着/非粘着工程(Freudenthal P. S. et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:7698-7702);パーコール勾配分離(Mehta-Damani et al. (1994) J. Immunol. 153:996-1003);および蛍光標示式細胞分取技術(Thomas R. et al. (1993) J. hnmunol. 151:6840-6852)などの物理的手順の組み合わせを含んでいた。
【0227】
多数の細胞を互いに分離するための1つの技術は、向流遠心溶出法(CCE)として公知である。この技術では、細胞を同時遠心分離、流速が常に増大されている緩衝液の洗浄の流れに供する。緩衝液の向流が常に増大することにより、主に細胞サイズに基づいた微小細胞分離を生じる。
【0228】
本発明の一つの局面において、APCは、マウス、サルもしくはヒトなどの哺乳類の白血球画分から単離することができる、事前にコミットされたか、または成熟した樹状細胞である(国際公開公報第96/23060号を参照されたい)。白血球画分は、哺乳類の末梢血由来であることができる。本方法は、以下の工程:(a)白血球分離などの当技術分野において公知の方法によって、哺乳類供与源から得られる白血球画分を提供する工程;(b)工程(a)の白血球画分を向流遠心溶出法によって4つ以上の細画分に分離する工程;(c)カルシウムイオノホア、GM-CSFおよびIL-13、またはGM-CSFおよびIL-4と細胞を接触させることによって、工程(b)からの1つまたは複数の画分の単球の樹状細胞への転換を刺激する工程、(d)工程(c)からの樹状細胞が濃縮された画分を同定する工程;並びに(e)工程(d)の濃縮された画分を収集する工程を含み、約4℃にて行われる。樹状細胞が濃縮された画分を同定するための一つの方法は、蛍光で活性化される細胞の選別による。白血球画分は、組換え(rh)rhIL-12、rhGM-CSF、またはrhIL-4などのその他のサイトカインの存在下において、カルシウムイオノホアで処置することができる。白血球画分の細胞は、緩衝液中で洗浄して、分離工程の前にCa++/Mg++のない培地に懸濁することができる。白血球画分は、白血球分離によって得ることができる。樹状細胞は、以下のマーカー:HLA-DR、HLA-DQ、またはB7.2の少なくとも1つが存在すること、および以下のマーカー:CD3、CD14、CD16,56,57、およびCD 19,20が同時に存在しないことによって同定することができる。これらの細胞表面マーカーに特異的なモノクローナル抗体は、市販されている。
【0229】
より具体的には、本方法は、白血球および白血球分離由来の血小板の濃縮された収集物を収集し、次いで向流遠心溶出法(CCE)によってさらに分画することが必要である(Abrahamsen T.G. et al. (1991) J. Clin. Apheresis. 6:48-53)。細胞試料は、特別な水簸回転子内に配置される。次いで、回転子を、たとえば3000rpmの一定の速度にて回転させる。一旦回転子が所望の速度に到達すると、加圧空気を使用して細胞の流速を制御する。水簸機内の細胞を同時遠心分離および流速が常に増大されている緩衝液の洗浄流に供する。これにより、主に、しかし専ら細胞サイズの相違に基づいた微小細胞分離が生じる。
【0230】
APCおよびより具体的にはDC収集物の品質管理および培養におけるこれらの良好な活性化の確認は、単球および樹状細胞亜集団、並びに混入が起こりうるTリンパ球をモニターする同時多色のFACS分析技術に依存する。DCが以下のマーカーを発現しないという事実に基づいている:CD3(T細胞);CD14(単球);CD16,56,57(NK/LAK細胞);CD19,20(B細胞)。同時に、DCは、これらが血液中を循環している(加えて、これらがLeu M7およびM9、単球および好中球によっても発現される骨髄球マーカーを発現する)ときに、大量のHLA-DR、有意なHLA-DQおよびB7.2を発現する(しかし、B7.1はわずかであるか、ない)。
【0231】
死細胞の解析のために第3の発色試薬、ヨウ化プロピジウム(PI)と組み合わせたときは、全ての細胞亜集団のポジティブな同定をすることができる(表2を参照されたい):
【0232】
(表2)新鮮な末梢細胞亜集団のFACS解析

【0233】
さらなるマーカーをさらなる解析のために置換することができる:
色#1:CD3単独、CD14単独、その他;Leu M7またはLeu M9;抗クラスI、その他。
色#2:HLA-DQ、B7.1、B7.2、CD25(IL2r)、ICAM、LFA-3、その他。
【0234】
収集時のFACS解析の目標は、DCが予想される画分に濃縮されていることを確認すること、好中球混入をモニターすること、および適切なマーカーが発現されることを確認することである。臨床適用のために適した、ヒト末梢血由来の濃縮されたDCのこの迅速大量収集物は、品質管理に関して、上記した分析的FACS技術に絶対に依存的である。必要であれば、成熟DCを「カクテル・ネガティブ」細胞を蛍光ソーティングすることにより、この時点で単球から直ちに分離することができる。下記に詳述したように、単球それ自体は、なおも培養においてDCまたは機能的なDC様細胞に分化することができるので、ルーチン的にDCを単球から分離する必要はないかもしれない。
【0235】
一旦収集したなら、DCリッチ/単球APC画分(通常150〜190)をプールし、将来の使用のために凍結保存し、または短期培養に直ちに置くことができる。
【0236】
または、その他には、樹状細胞をアップレギュレートし(活性化する)、および単球を活性化された樹状細胞表現型に変換するための方法が報告された。この方法は、単球を活性化された樹状細胞に変換するために、培地にカルシウムイオノホアを添加することを含む。カルシウムイオノホアA23187を、たとえば24〜48時間の培養期間の初めに添加することにより、プールされた「単球プラスDC」画分の一様な活性化および樹状細胞表現型の変換を生じ:特徴的には、活性化された集団が、一様にCD14(Leu M3)ネガティブになり、HLA-DR、HLA-DQ、ICAM-1、B7.1、およびB7.2をアップレギュレートする。さらにまた、この活性化された大部分の集団は、小数成分に対しても同様に機能し、容易に精製される。
【0237】
カルシウムイオノホアで達成される活性化/変換のために首尾よく増幅する(または、部分的に置換する)ために、サイトカインの特定の組み合わせが使用されてきた:これらのサイトカインは、精製されたか、または組換え(「rh」)rhGM-CSF、rhIL-2、およびrhIL-4を含むが、これらに限定されるわけではない。それぞれのサイトカインは、単独で与えられたときに、最適なアップレギュレーションには適していない。
【0238】
APCに対する抗原の提示
表1の遺伝子から発現されるポリペプチドは、抗原提示細胞に対して、タンパク質/ペプチドとして、またはタンパク質/ペプチドをコードするcDNAの形態で送達することができる。抗原提供細胞(APC)は、樹状細胞(DC)、単球/マクロファージ、Bリンパ球、または必要なMHC/同時刺激分子を発現するその他の細胞タイプからなることができる。後述する方法では、主に最も有力な、好ましいAPCであるDCに焦点を合わせている。
【0239】
パルスは、本発明の抗原タンパク質またはペプチドに対してAPCを曝露することによって、インビトロ/エキソビボで達成される。タンパク質またはペプチドを1〜10μmの濃度にて約3時間APCに添加する。パルスしたAPCは、その後、静脈内、皮下、鼻腔内、筋肉内、または腹腔内の送達経路を経て宿主に投与することができる。
【0240】
また、タンパク質/ペプチド抗原は、静脈内、皮下、鼻腔内、筋肉内、または腹腔内の送達経路を経てアジュバントでインビボに送達することができる。
【0241】
Paglia et al.(1996) J. Exp. Med. 183:317-322は、インビトロで全タンパク質とインキュベートされたAPCが、MHCクラスI制限されたCTLによって認識されたこと、およびこれらのAPCで動物を免疫化することにより、インビボで抗原特異的CTLの発生を生じることを示す。加えて、DCなどのAPCのサイトゾルにおける抗原の発現を生じさせるいくつかの異なる技術が記載されている。これらは、(1)腫瘍細胞から単離されたRNAのAPCへの導入、(2)抗原の内因性発現を誘導する組換えベクターによるAPCの感染、および(3)リポソームを使用したDCサイトゾルへの腫瘍抗原の導入を含む。(Boczkowski D. et al. (1996) J. Exp. Med. 184:465-472; Rouse et al. (1994) J. Virol. 68:5685-5689;および Nair et al. (1992) J. Exp. Med. 175:609-612を参照されたい)。
【0242】
フォスター(Foster)抗原提示細胞
フォスターAPCは、T2と称されるヒト株化細胞174xCEM.T2に由来し、これは、その抗原処理経路に突然変異を含み、細胞表面MHCクラスI分子と内因性ペプチドの会合を制限する(Zweerink et al. (1993) J. Immunol. 150:1763-1771)。これは、遺伝子TAP1、TAP2、LMP1、およびLMP2を包含するMHCクラスII領域における大きなホモ接合性欠失のためであり、MHCクラス1制限されたCD8+ CTLに対する抗原提示に必要とされる。実質的に、「空の」MHCクラスI分子だけが、これらの細胞の表面に提示される。培地に添加される外来性ペプチドは、これらのMHC分子と結合するが、ただし、ペプチドが対立遺伝子特異的結合モチーフを含むことを条件とする。これらのT2細胞は、本明細書において「フォスター」APCという。これらを本発明と組み合わせて使用して、抗原を提示させることができる。
【0243】
特異的組換えMHC対立遺伝子でT2細胞を形質導入することにより、MHC制限プロフィールのリダイレクションすることができる。アンカー残基は、内因性対立遺伝子に対する効率的な結合を防げるので、組換え対立遺伝子に合わせて調整されるライブラリーは、これらによって優先して提示される。
【0244】
MHC分子の高レベル発現により、APCがよりCTLに見えやすくなる。強力な転写プロモーター(たとえば、CMVプロモーター)を使用してT2細胞における関心対象のMHC対立遺伝子を発現すると、より反応性のAPCを生じる(細胞表面上の反応性MHC-ペプチド複合体がより高濃度であることによる可能性が高い)。
【0245】
免疫原性アッセイ法
本発明の治療剤の免疫原性は、下記に例示したものを含むが、これらに限定されない公知の方法によって決定することができる。一つの態様において、このような方法は、本発明の同等のポリペプチド・リガンドを対応する天然のリガンドと比較するために使用してもよい。たとえば、変更されたリガンドは、これが以下のアッセイ法のいずれか1つにおいて天然のリガンドの活性と好適に匹敵する場合に、「より活性である」とみなしてもよい。いくつかの目的のためには、すなわち、治療および/または診断目的のためには、当業者であれば、別の免疫原性リガンドよりも活性を示す免疫原性リガンドを選択するであろう。しかし、いくつかの適用については、天然のリガンドに相当する免疫原性リガンドを使用することが適している。他の状況では、より活性ではない免疫原性リガンドを利用することが望ましいかもしれない。このような活性のレベルは、免疫原性レベルとポジティブに相関することが示唆されている。
【0246】
1. 51Cr-放出溶解アッセイ法
抗原特異的T細胞によるペプチド・パルスされた51Cr標識した標的の溶解は、天然の、または変更されたリガンドのいずれかでパルスした標的細胞に対して比較することができる。機能的に増強されたリガンドでは、時間の関数として、より多くの標的の溶解を示す。溶解の速度論、並びに固定された時点(たとえば、4時間)での全体的標的溶解を使用してリガンド性能を評価してもよい。(Ware C.F. et al. (1983) J. Immunol. 131:1312)。
【0247】
2. サイトカイン放出アッセイ法
リガンド・パルスされた標的に接触することによりT細胞によって分泌されるサイトカインのタイプおよび量の解析は、機能的活性の基準となり得る。サイトカインは、サイトカイン産生の速度および総量を決定するためのELISAまたはELISPOTアッセイ法によって測定することができる。(Fujihashi K. et al. (1993) J. Immunol. Meth. 160:181; Tanguay S. and KillionJ.J. (1994) LymphokineCytokine Res. 13:259)。
【0248】
3. インビトロT細胞教育
正常ドナーまたは患者に由来するPBMCからリガンド反応性T細胞群を誘発する能力について、本発明のリガンドを対応する天然のリガンドと比較することができる。この系では、誘発されたT細胞を、溶解活性、サイトカイン放出、ポリクローン性、および天然のリガンドに対する交差反応性について試験することができる(Parkhurst M.R. et al. (1996) J. Immunol. 157:2539)。
【0249】
4. トランスジェニック動物モデル。
免疫原性は、HLAトランスジェニックマウスを本発明のリガンドまたは天然のリガンドのいずれかでワクチン接種する工程、並びに誘導された免疫応答の性質および大きさを決定する工程によってインビボで評価することができる。または、hu-PBL-SCIDマウスモデルにより、ヒトPBLの養子移入によってマウスにおけるヒト免疫系の再構成することができる。これらの動物を前述のようにリガンドでワクチン接種をして、免疫応答について解析してもよい。(Shirai M. et al. (1995) J. Immunol. 154:2733; Mosier D.E. et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2443)。
【0250】
5. 増殖
T細胞は、反応性リガンドに反応して増殖する。増殖は、たとえば3H-チミジン取り込みを測定することによって定量的にモニターすることができる。(Caruso A. et al. (1997) Cytometry 27:71)。
【0251】
6. 四量体染色
MHC四量体を個々のリガンドと共に充填して、これらが適切なエフェクターT細胞群と結合する相対的能力を試験することができる。(Altman J.D. et al. (1996) Science 274 (5284):94-96)。
【0252】
7. MHC安定化
T2細胞などの一定の株化細胞をHLA結合リガンドに曝露することにより、細胞表面上のMHC複合体の安定化を生じる。細胞表面上のMHC複合体の定量化は、安定化されるHLA対立遺伝子に対するリガンドの親和性と相関した。したがって、本技術により、リガンド・エピトープの相対的HLA親和性を決定することができる。(Stuber G. et al. (1995) Int. Immunol. 7:653)。
【0253】
8. MHC競合
リガンドが参照リガンドおよびその同族T細胞エフェクターの機能的活性で妨害する能力は、リガンドがどれほど十分にMHC結合に対して競合することができるかの基準である。阻害の相対的レベルの測定は、MHC親和性の指標となる。(Feltkamp M.C. et al. (1995) Immunol. Lett. 47:1)。
【0254】
9. 霊長動物モデル
最近記載されている非ヒト霊長類(チンパンジー)モデル系は、HLA制限されたリガンドのインビボでの免疫原性をモニターするために利用することができる。チンパンジーは、ヒトMHC分子と重なるMHCリガンド特異性を共有し、したがって、相対的なインビボでの免疫原性についてHLA制限されたリガンドを試験することができることが証明された。(Bertoni R. et al. (1998) J. Immunol. 161:4447)。
【0255】
10. TCRシグナル伝達イベントのモニタリング
いくつかの細胞内シグナル伝達イベント(たとえば、リン酸化)は、MHCリガンド複合体による良好なTCR結合と関連している。これらのイベントの定性的および定量的分析では、リガンドがTCR結合を介してエフェクター細胞を活性化する相対的能力と相関していた。(Salazar E. et al. (2000) Int. J. Cancer 85:829; Isakov N. et al. (1995) J. Exp. Med. 181:375)。
【0256】
免疫エフェクター細胞の増殖
本発明は、抗原特異的免疫エフェクター細胞の濃縮された集団の産生を刺激するために、これらのAPCを利用する。抗原特異的免疫エフェクター細胞は、APCを犠牲にして増殖され、培養の際に死滅する。ナイーヴ免疫エフェクター細胞がその他の細胞によって教育されるプロセスは、本質的にCoulie (1997) Molec. Med. Today 3:261-268に記載されている。
【0257】
上記のとおりに調製されたAPCをナイーヴ免疫エフェクター細胞と混合する。細胞は、サイトカイン、たとえばIL-2の存在下において培養してもよい。樹状細胞は、IL-12などの強力な免疫賦活性サイトカインを分泌するので、増殖の最初および連続したラウンドの間に追加のサイトカインを添加する必要がない可能性がある。いずれにしても、培養条件は、その結果、抗原特異的免疫エフェクター細胞がAPCよりも非常に高い割合で増大する(すなわち、増殖する)。さらに抗原特異的細胞の集団を増殖するために、複数のAPCおよび任意のサイトカインの注入を行うことができる。
【0258】
一つの態様において、免疫エフェクター細胞は、T細胞である。別の態様において、免疫エフェクター細胞は、たとえばIL-2、IL-11、またはIL-13をコードする導入遺伝子を形質導入することによって遺伝子改変することができる。インビトロで、エキソビボで、およびインビボで導入遺伝子を導入するための方法は、当技術分野において公知である。Sambrook et al.(1989)前記を参照されたい。
【0259】
APCは、関連したポリペプチドをコードするウイルスのベクターと共に形質導入することができる。最も一般的なウイルスベクターは、ワクシニアおよび鶏痘ウイルスなどの組換えポックスウイルスを含む(Bronte et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3183-3188; Kim et al. (1997) J. Immunother. 20:276-286)およびアデノウイルス例として (Arthur et al. (1997) J. Immunol. 159:1393-1403; Wan et al. (1997) Human Gene Therapy 8:1355-1363; Huang et al. (1995) J. Virol. 69:2257-2263)。また、レトロウイルスをヒトAPCの形質導入のために使用してもよい(Marin et al. (1996) J. Virol. 70:2957-2962)。
【0260】
インビトロで/エキソビボで、最小体積の無血清培地中で16〜24時間、500感染効率(MOI)のアデノウイルス(Ad)ベクターに対してヒトDCを曝露することにより、確実にDCの90〜100%に導入遺伝子発現が生じる。DCまたはその他のAPCの形質導入の効率は、発現される腫瘍抗原に対して特異的な蛍光抗体を使用して、免疫蛍光によって評価することができる(Kim et al. (1997) J.Immunother. 20:276-286)。または、抗体は、基質との反応によって有色産物を生じさせる酵素(たとえば、HRP)に抱合することができる。APCによって発現される抗原性ポリペプチドの実際の量は、ELISAによって評価することができる。
【0261】
形質導入されたAPCは、その後に、静脈内、皮下、鼻腔内、筋肉内、または腹腔内の送達経路を経て宿主に投与することができる。
【0262】
DC、またはその他のAPCのインビボでの形質導入は、静脈内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、または皮膚の送達を含む異なる経路を経たAd(または、その他のウイルスのベクター)の投与によって達成することができる。一つの態様において、本方法は、ほぼ1×1010〜1×1012 i.uの全量を使用して複数部位におけるAdベクターの皮膚送達である。インビボでの形質導入のレベルは、APCマーカーおよび発現されるTAAに対する抗体で同時染色によっておおよそ評価することができる。染色手順は、投与部位からの生検試料に対して、または流入領域リンパ節もしくはAPC(特定のDCにおいて)が遊走し得るその他の器官由来の細胞に対して実施することができる。(Condon et al. (1996) Nature Med. 2:1122-1128 および Wan et al. (1997) Hum. Gene Ther. 8:1355-1363)。注射の部位における、または形質導入されたAPCが遊走し得るその他の器官における量は、発現される抗原の組織ホモジネートに対するELISAによって評価することができる。
【0263】
ウイルス遺伝子送達は、より効率的ではあるが、DCは、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、またはカチオン脂質/プラスミドDNA複合体などの非ウイルスの遺伝子送達方法によってインビトロ/エキソビボで形質導入されることもできる(Arthur et al. (1997) Cancer Gene Ther. 4:17-25)。形質導入されるAPCは、その後に、静脈内、皮下、鼻腔内、筋肉内、または腹腔内の送達経路を経て宿主に投与することができる。
【0264】
DC、またはその他のAPCのインビボの形質導入は、場合によっては、静脈内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、または皮膚の投与経路を経て送達されるカチオン脂質/プラスミドDNA複合体の投与によって達成することができる。皮膚への裸のプラスミドDNAの遺伝子銃送達または注射によっても、DCの形質導入に至る(Condon et al. (1996) Nature Med. 2:1122-1128; Raz et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9519-9523)。また、プラスミドDNAの筋肉内送達を免疫化のために使用してもよい(Rosato et al. (1997) Hum. Gene Ther. 8:1451-1458.)。
【0265】
導入遺伝子発現の形質導入効率およびレベルは、ウイルスベクターについて上記した通りに評価することができる。
【0266】
養子免疫治療およびワクチン
また、本発明の抗原特異的免疫エフェクター細胞の増殖された集団は、養子免疫治療制度において、およびワクチンとしての使用が見いだされる。
【0267】
養子免疫治療方法は、一つの局面において、ナイーヴ免疫エフェクター細胞を上記した通りのAPCと共に培養することによって作製した教育された抗原特異的免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団を、被検体に対して投与する工程を含む。好ましくは、APCは、樹状細胞である。
【0268】
一つの態様において、本明細書に記載されている養子免疫治療方法は、自己由来である。この場合、APCは、単一の被検体から単離された親細胞を使用して作製される。また、増殖される集団には、その被検体から単離されたT細胞を使用する。最後に、抗原特異的細胞の増殖された集団を同じ患者に投与する。
【0269】
さらなる態様において、有効な量、APC、または免疫エフェクター細胞は、IL-2または同時刺激分子などの刺激性サイトカインの有効な量と共に投与される。
【0270】
これらの企図される目的について有効であると本明細書において同定された薬剤は、このような療法を必要とする被検体に投与することができる。治療剤の投与のための方法は、技術において公知であり、下に簡単に記載してある。
【0271】
本発明は、上述の態様と組み合わせて記載したが、前述の記述および以下の実施例は、本発明の範囲を例証するが、限定されないことが企図されることが理解される。本発明の範囲内のその他の局面、利点、および修飾は、本発明が属する当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に発現されている、表1で同定される群から選択される少なくとも1つの遺伝子を検出する段階を含む、肺細胞の新生物状態の診断を補助する方法であって、発現される量は、肺細胞の新生物状態を表す方法。
【請求項2】
発現される量が、正常細胞と比較して新生物状態でより高い、請求項1記載の方法。
【請求項3】
発現される量が、正常細胞と比較して新生細胞でより少ない、請求項1記載の方法。
【請求項4】
発現される遺伝子の量が、遺伝子から転写されるmRNAの量を検出することによって決定される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
発現される量が、遺伝子から転写されるmRNAの逆転写によって産生されるcDNAの量を検出することによって決定される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
発現される量が、遺伝子によってコードされるポリペプチドまたはタンパク質の量を検出することによって決定される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
肺癌が非小細胞肺癌である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
遺伝子発現産物またはこれらの断片を特異的に認識し、かつ結合するリガンドであって、該遺伝子発現産物が、表1で同定される群の少なくとも1つであるリガンド。
【請求項9】
リガンドが抗体またその断片である、請求項8記載のリガンド。
【請求項10】
抗体がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項9記載のリガンド。
【請求項11】
毒素、検出可能な標識、アジュバント、送達ベクター、および放射同位体標識からなる群より選択される薬剤をさらに含む、請求項10記載のリガンド。
【請求項12】
毒素をさらに含む、請求項10記載のリガンド。
【請求項13】
肺細胞を含む試料を、潜在的薬剤の有効な量と接触させる段階、および肺細胞の細胞溶解またはアポトーシスについてアッセイする段階を含む、表1で同定される群から選択される少なくとも1つの遺伝子の差動的発現によって特徴づけられる、肺細胞の細胞溶解またはアポトーシスを誘導するための潜在的治療剤のためのスクリーニング。
【請求項14】
肺細胞を請求項13記載の方法によって同定される薬剤と接触させる段階を含む、表1で同定される少なくとも1つの遺伝子の差動的発現によって特徴づけられる、肺細胞の細胞溶解またはアポトーシスを誘導するための方法。
【請求項15】
肺細胞を請求項13記載の方法によって同定される薬剤と接触させる段階を含む、表1で同定される少なくとも1つの遺伝子の差動的発現によって特徴づけられる、新生物肺細胞の増殖を阻害するための方法。
【請求項16】
薬剤が細胞障害性剤をさらに含む、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
表1で同定される少なくとも1つの遺伝子を発現する細胞を特異的に認識して、溶解する免疫エフェクター細胞の有効な量と細胞を接触させ、これにより新生物肺細胞の増殖を阻害する段階を含む、新生物肺細胞の増殖を阻害するための方法。

【公表番号】特表2007−518399(P2007−518399A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542803(P2006−542803)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/040576
【国際公開番号】WO2005/055808
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(505187264)ジェンザイム コーポレイション (9)
【Fターム(参考)】