説明

胃内容排出及び胃不全麻痺のモニタリング及び診断

本発明は、ヒトを含む動物における胃内容排出速度を測定するための方法および組成物に関する。本発明の方法は、遅延放出性製剤または食物ビヒクル中のマーカー剤の投与によって胃内容排出速度を測定し、マーカー剤の血液または血清レベルを経時的にモニターする。マーカー剤の血液または血清レベルは、胃内容排出速度を反映する。そのような薬剤の食物中への混入も、そのような薬剤の吸収を遅らせ、消化および胃内容排出の尺度として機能する。これらの方法は、胃腸管の運動促進活性を増強させることによるような胃内容排出を調節する薬物、漢方物質および他の化合物についてスクリーニングするのに使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、胃腸管機能をモニタリングするための方法および組成物に関する。さらに詳細には、本発明は、胃内容排出(gastric emptying)および胃不全麻痺(gastroparesis)をモニタリングするための方法および組成物に関する。
(背景技術)
消化器官即ち胃腸(IG)管の主たる機能は、身体に水、電解質および栄養素の均衡の取れた供給を与えることである。このことが達成されるためには、食物は、GI管に沿って適切な速度で移動して消化、吸収および分泌が生じなければならない。食物は、GI管を経て、一般に蠕動と称される過程における1群の平滑筋収縮によって介在される推進運動による良好に協調された形で通常輸送される。
胃不全麻痺または胃内容排出遅延は、胃の神経および筋肉に対する損傷が貧弱な消化および食物の胃から腸への排出遅れをもたらすときに生ずる。この症状は、糖尿病の一般的な合併症である。他の関連する症状としては、強皮症(リウマチ症状)、進行性筋ジストロフィー、アミロイド症、トリパノゾーマまたはエプスタイン-バールウイルスによる感染症、過去の胃手術、迷走神経切離術(即ち、迷走神経の手術切傷)、内臓神経障害、並びに抗コリン作用薬および抗うつ薬のような各種薬物の使用がある。胃不全麻痺症候群としては、腹部不快感、吐気、嘔吐、栄養失調、体重低下、脱水症、鼓脹、早期満腹感、逆流および食欲不振がある。胃不全麻痺患者は、食事をすると気分が悪くなるだけであるので、多くの場合食事しないことを選択する。真性糖尿病は米国人口の約8%に影響を与えており、患者の殆どが10年以上の症状を有した後に胃内容排出遅延を発症している。この疾病は、ネコおよびウマのような動物類にも影響を与え得る。
【0002】
胃不全麻痺の診断は、胃内容排出スキャン(GES)を実施することによって行う。(この検査は、Society for Nuclear Medicine Procedure Guideline for Gastric Emptying and Motilityに詳細に記載されている)。GESは、放射性化合物のテクネチウム-99m (0.2mCi〜0.4mCi)またはインジウム-111 (0.1mCi〜0.2mCi)をそれぞれの組成物としてまたは一緒に含有する食事を対象者に摂らせることによって実施する。その後、患者をガンマカメラの近くまたは下に90分〜120分に位置させる。ガンマカメラは、胃内の放射線量を経時的に測定する。大量の放射能が試験時間終了時に胃内に残存している場合には、胃の内容排出速度は遅く、胃不全麻痺を診断する。また、この検査は、胃内容排出速度および排出前の胃内容物の遅延時間を算定することにも使用されている。これらのパラメーターは、胃内容排出疾患を診断することにも使用される。
胃または小腸の閉塞は、胃不全麻痺と同じ症状を発症させ得る。従って、多くの場合、内視鏡検査またはX線検査を初期またはGES検査の後に実施して、遅い胃内容排出が排出経路の物理的閉塞の結果である可能性を排除している。即ち、胃不全麻痺の診断は、腫瘍または狭窄症のような胃内容排出遅延の閉塞性原因を排除した後に実施されている。前庭部-十二指腸検圧法(胃収縮の強度および適時性の測定)または胃筋電図(EKGのような胃の電気活量の測定)も実施し得る。GESが胃不全麻痺の診断を提供するという事実にもかかわらず、GESは、費用高で且つ時間消費性であるという点で不利である。さらに、GESは、対象者を放射能に曝し(器官に対する最大線量は0.11mGy〜2mGyの範囲にある)、放射性で有毒な廃棄物を発生させ、核医療技術者による検査の実施を必要とする。さらに、検査結果の解明には専門医を必要とする。
【0003】
“フラップジャック検査(flapjack test)”は、胃内容排出をモニターするのに使用するもう1つの検査である。この検査は、患者が食し且つ呼気検査を使用してモニターする[13C]1-酢酸ナトリウムラベル化“フラップジャック(パンケーキ)”を使用する。この検査は、ラベル化オクタン酸をオムレツを作る前に卵黄中に泡立てる[13C]1-オクタン酸呼気検査の延長である。この検査は、上記伝統的な検査を上回る利点を有し、例えば、小児に応用可能であり且つ診療室使用に適しているものの、実施するための炭素同位元素並びに同位元素濃度を測定するための装置を必要とし、従って費用高である。
胃内容排出についてのもう1つの検査は、STYROFOAMTMビーズのようなポリステレン(polysterene)ビーズのチューブ補給による複数の絶食ラットへの投与である。これらビーズの胃からの移動をモニターする。これらのラットは、種々の時間周期に亘って殺処分して胃および腸内のビーズ含有量を測定する。この検査は、費用高であり、動物の犠牲を必要とし、STYROFOAMTMビーズが胃運動性に対し有し得る効果を解明しないので望ましくない。
ラットにおける運動促進アッセイは、運動促進活性を有する化合物を同定するための良好に確立されたモデルである(例えば、Dropleman et al., J., Pharmacol. Methods, 4(3):227-30, 1980)。このモデルにおいては、試験食餌を、セルロースガムを冷蒸留水中にゆっくり添加することによって調製する。ビーフ固形ブイヨンを温水中に溶解し、その後、上記セルロース溶液中に混合し、次いで精製カゼイン、粉末粉砂糖、コーンスターチおよび粉末木炭を混合する。各成分をゆっくり添加し十分に混合して、暗灰色ないし黒色の均質ペーストを得る。その後、この食餌を1夜冷蔵し、その間に封入空気を脱離させる。アッセイ前に、この食餌を冷蔵機から取出し室温に温める。成獣ラットを24時間絶食させる。試験する朝に、各動物を体重測定し、各処理群、例えば、群毎に10匹の動物に無作為に振分ける。
各ラットは、ビヒクル、試験化合物または参照標準のメトクロプラミドのいずれかを腹腔内注射によって受ける。注射後0.5時間に、上記試験食餌を各ラットにシリンジで経口投与する。注射後1.5時間に、各ラットを二酸化炭素窒息により殺処分し、胃を、腹部切開し、注意深く固定し、幽門括約筋直下の食道を切断することによって取出す。如何なる内容物も損失しないように注意して、各々の胃を直ちに秤量する。その後、各胃を小弯に沿って切開し、水道水で洗浄し、静かに拭取り乾燥させて過剰の水分を除去し、再度秤量する。胃内に残存する試験食餌量は、胃全体重量と胃内容排出重量との差によって示される。残存する試験食餌量と平均試験食餌量との差は、1.5時間の注射後期間中に排出する試験食餌量を表す。
【0004】
もう1つの運動促進アッセイは、各種組織に縫合した歪みゲージトランスジューサを有するイヌを使用して胃または腸の環状筋肉層の収縮能をモニターする。運動促進薬を術後動物に投与し、胃運動の変化を上記歪みゲージを使用して測定する。
上述の運動促進試験は、明らかに時間消費性であり、試験動物の手術と犠牲を必要とし、実施するには費用高である。さらに、実験動物において測定した運動促進特性は、ヒトにおけるこれらの薬物作用と直接相関し得ない。即ち、通常の胃内容排出検査に置換わる、ヒトを含む動物における胃内容排出速度を測定する相対的に安価で非侵襲性で且つ再現性のある方法が求められている。
胃不全麻痺診断における難しさに加え、この疾患は、治療するのが最も難しい胃腸疾患の1つである。この症状は、内容物が胃から排出する速度の著しい低下を示す患者において発症する。また、胃内容排出遅延は、もう1つの管理の難しい胃腸機能障害である非潰瘍性消化不良にも関与する。胃不全麻痺および胃内容排出遅延の治療に現在使用されている僅かな薬物は、コリン作用薬のシサプリド(Propulsid)、エリスロマイシンおよびメトクロプロミド(Reglan)だけである。
これらの薬物は、これらの薬物を服用する者にとってある種の利点を提供するが、多くの欠点を有する。FDAは、重篤な場合によっては致死性の不整脈を発症させるという理由で、シサプリドを市場から排除した。経口エリスロマイシンは、胃不全麻痺の治療において有効であることが証明されていない。メトクロプロミドは、この薬物で治療した患者の50%までにおいて発症する嗜眠状態、悪夢、うつ症およびパーキンソン病のような多くの重篤な副作用を有する。ベタニコールのようなコリン作用薬は、心血管虚脱および心不整脈のような重篤な、場合によっては生命にかかわる副作用に関連している。若干の胃不全麻痺患者は、生命を保つためには腸供給用チューブを使用する栄養支援に頼らなければならない。このことは、患者の生活の質の著しい低下をもたらす。収縮を刺激する胃内への電極の埋め込みは、胃不全麻痺の治療として開発されている新たな実験的方法である。利用し得る治療の全てに対して難治性である患者においては、胃切除術(または胃の除去手術)が行われる。現在のところ、胃不全麻痺における治療法は存在しない。
【0005】
(発明の開示)
(発明が解決しようとする課題)
即ち、胃不全麻痺および/または他の胃内容排出疾患の診断において使用し得る方法および組成物を開発することが求められており、同時に、胃内容排出疾患治療用の新規な薬剤(運動促進薬)を同定することも求められている。限定するものではないが、胃内容排出遅延、糖尿性胃不全麻痺、非潰瘍性消化不良、食欲不振、うっ滞胆嚢、手術誘発性麻痺性イレウスおよび慢性便秘のようなそのような疾患は、すべて運動促進薬による治療からの恩恵を受け得る。さらに、運動促進薬は、近位小腸中への経腸栄養チューブの挿入中並びに小腸および大腸画像検査の実施時のような診断用および治療用器具の設置を助長し得る。
(課題を解決するための手段)
本発明は、一般に、胃腸管機能のモニタリングのための方法および組成物に関する。特定の実施態様においては、本発明は、哺乳類に、遅延放出性製剤中に配合された薬剤を含む製剤であって、胃腸管のpHが約6.0よりも低いときには当該薬剤の胃腸管への放出を阻止する製剤を投与し、そして、当該哺乳類の血液中で見出される当該薬剤の濃度上昇に要する時間量を測定することを特徴とする哺乳類における胃内容排出のモニタリング方法を提供する。好ましくは、上記哺乳類の血液中で見出される濃度上昇に要する時間量は、5分よりも長い。胃腸管中に放出される上記薬剤は、好ましくは、通常の食餌物質中には存在しない物質であり、それによって胃環境の他の成分から当該物質の検出を容易にする。
特定の実施態様においては、上記薬剤は、D-キシロース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-フラクトース、L-フコース、L-ラムノース、およびL-ソルボースからなる群から選ばれるD-糖である。また、上記薬剤は、アセトアミノフェン、アスピリン、カフェイン、セファロスポリン類、ベータ-ラクタム抗生剤類、シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、ニザジチン(nizaditine)、アルプラゾラム、ゲンタマイシン、アミカシン、バンコマイシン、ジクロフェナク、イブプロフェン、D-アミノ酸類、ベータカロテン、アスコルビン酸、二酸化イオウ、ビオチン、イノシトール、亜鉛、ビタミンB12、葉酸塩、硫酸アルミニウム、ユージノール、シトラール、バニリン、およびリンゴ酸からなる群から選ばれ得る。
上記薬剤の属性にかかわらず、上記薬剤は、好ましくは、pH感受性製剤中にカプセル化される。或る実施態様は、上記薬剤が非等方性であることを意図する。特定の実施態様においては、上記薬剤を試験食餌または試験飲料の1部として配合する。
【0006】
さらに、本発明は、哺乳類に、約6.0よりも低いpHでは胃腸管中に放出されない薬剤を含む製剤を投与し、そして、当該哺乳類の血液中で見出される当該薬剤の濃度上昇に要する投与後の時間量を測定し、当該哺乳類を、当該薬剤が血液流内で投与後120分で上昇しない場合には、胃内容排出疾患を有するものと診断することを特徴とする哺乳類における胃内容排出疾患の診断方法を意図する。
本発明のもう1つの局面は、ヒトに、約6.0よりも低いpHでは胃腸管中に放出されないD-キシロースを含む製剤を投与し、そして、当該ヒトの血液中で見出される当該D-キシロースの濃度上昇に要する投与後の時間量を測定し、当該ヒトを、当該薬剤が血液流内で投与後120分で上昇しない場合には、胃内容排出疾患を有するものと診断し;当該ヒトが胃または小腸の閉塞を有していないことを前以って判定しているか或いは後で判定することを特徴とするヒトにおける胃不全麻痺の診断方法に関する。
本発明の上記診断方法においては、投与するD-キシロースの総投与量は、好ましくは、約5グラム〜約25グラムである。
また、本発明においては、試験化合物を哺乳類に投与し;胃内容排出に対する当該試験化合物の効果を、約6.0よりも低いpHでは胃腸管内には放出されない薬剤を含む製剤を当該哺乳類に投与することによってモニターし;そして、当該試験化合物の存在および不存在における当該哺乳類の血液中に見出される当該薬剤の濃度上昇に要する投与後の時間量を測定し、胃内容排出速度を変化させる試験化合物を胃腸運動性のモジュレーターとして同定することを特徴とする、哺乳類における胃腸運動性を調節する化合物のスクリーニング方法も意図する。特定の実施態様においては、上記試験化合物によって、上記薬剤の投与から上記哺乳類の血液中での出現までの時間増大によって測定されるような胃腸運動性の上昇を意図する。或る実施態様においては、上記試験化合物は、上記薬剤の投与から上記記哺乳類の血液中での出現までの時間減少によって測定されるように、胃腸運動性を低下させる。
【0007】
また、本発明の範囲においては、本発明の上記スクリーニングアッセイに従って同定したモジュレーターも意図する。好ましくは、そのようなモジュレーターは、運動促進剤として同定する。
本発明は、さらに、約250mg〜1000mgのD-キシロースと製薬上許容し得る担体、希釈剤または賦形剤とを含む胃腸運動性の判定用製剤も包含する。特定の実施態様においては、そのような製剤を試験食として調製する。
また、本発明においては、遅延放出性製剤中に配合された第1マーカー剤(当該製剤は約6.0よりも低いpHでは当該第1マーカー剤の放出を阻止する)と、胃内容排出を判定するための当該製剤の使用についての使用説明書とを含む胃内容排出のモニタリング用キットも提供する。そのようなキットは、好ましくは、約250mg〜1000mgのD-キシロースと製薬上許容し得る担体、希釈剤または賦形剤とを含む製剤と、胃運動性を判定するアッセイを実施するための使用説明書とを含む。これらのキットは、採血装置をさらに含み得る。また、或いはさらに、上記キットは、上記マーカー剤の存在を検出するための組成物も含み得る。
或る実施態様においては、上記キットのいずれかまたは全てが、製剤中に配合された第2マーカー剤(当該製剤は約6.0よりも低いpHでは当該第2マーカー剤の放出を阻止する)をさらに含み得る。そのような第2マーカー剤は、上記第1マーカー剤と同じ遅延放出性製剤中に配合し得る。
或る実施態様においては、上記キットのいずれかまたは全てが、標準曲線を作成するのに使用する1連の濃度のマーカー剤を遅延放出性製剤中にさらに含み、当該製剤の各々が当該マーカー剤の約6.0よりも低いpHでの放出に対し抵抗性である。また、或る他の実施態様においては、上記キットのいずれかまたは全てが、上記製剤のpHを約6.0よりも低いpHに低下させる試薬をさらに含み得る。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、以下の詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施態様を示しているものの、本発明の精神および範囲内での種々の変更および修正は、当業者にとって以下の詳細な説明から明らかになるであろうから、単に例示としてのみ提示していることを理解すべきである。
【0008】
(発明を実施するための最良の形態)
GI管の正常運動像の欠陥は、慢性で、有痛性で且つ衰弱性の疾患の発症をもたらし得る。例えば、無力性または脆弱性の下部食道括約筋は、摂取食物の胃から食道への頻繁な逆流をもたらし得、食道炎、最終的には食道潰瘍に至り得る。運動促進剤(運動増強剤とも称する)は、(a) 下部食道括約筋の圧力を増大させ、それによって逆流を抑制し;(b) 食道蠕動力を増大させて食道から胃内への食物の撤去を容易にし;且つ(c) 胃内容排出を増大させ、それによって逆流に可能な量をさらに低減させるので、逆流性食道炎の治療において有用である。
即ち、本発明は、ヒトを含む動物における胃内容排出速度を判定するための安価で、非侵略性で且つ再現性のある方法を提供する。この方法は、放射性物質を使用しないで胃内容排出遅延を診断する、通常の胃内容排出検査の代替法である。さらにまた、この方法は、薬物および他の物質の運動促進特性を判定するのにも有用である。
上記の新規な方法は、一般に安全とみなされ且つ単純な血液検査を使用して検出できる商業的に入手可能な非レントゲン写真物質を投与することによってこれらの問題を克服する。さらに、本発明の方法および組成物は、胃不全麻痺および/または他の胃内容排出疾患の診断において、さらにまた、胃内容排出遅延、糖尿性胃不全麻痺、非潰瘍性消化不良、食欲不振、うっ滞胆嚢、手術誘発性麻痺性イレウスおよび慢性便秘のような疾患を含むそのような胃内容排出疾患(全て運動促進剤による治療からの恩恵を受け得る)の治療用の新たな運動促進剤を同定するのに使用し得る。本発明の方法および組成物は、近位小腸中への経腸栄養チューブの挿入中並びに小腸および大腸画像検査の実施時のような診断および治療用器具の設置を判断するのにも使用し得る。
【0009】
好ましい実施態様においては、通常の食事物質中には見出せない5炭糖であるD-キシロースを遅延放出性カプセル(EUDRAGIT-LRカプセルのような)中で患者に投与し、D-キシロースの血液値を数個の時間点に亘って測定する。EUDRAGIT-LRカプセル中のD-キシロースは、6以上のpHを必要とするカプセルが溶解したときのみ放出されるので、上記物質は、カプセルが胃から排出された後にしか血液流中に出現しない。D-キシロースまたは他の物質は、pH、カプセルサイズまたが腸分泌物による消化に依存性の放出特性を有する種々のカプセルを使用するこの方法において使用し得る。従って、血液または血清中にのD-キシロースまたは他の物質(とりわけ、放出後に急速吸収された物質)の測定値は、胃内容排出およびカプセル溶解の間接的な尺度である。その後、測定したD-キシロース血清値を使用して胃内容排出速度を評価し胃内容排出遅延を診断する。
上記検査の別の使用においては、薬物および他の治療用分子の運動促進特性を、この場合も放射性物質およびデータを評価する核専門家を必要とすることなく、ヒトにおいて判定し得る。この判定は、運動促進剤の投与前後のカプセル摂取による繰返し検査を実施することによって行う。これらの検査から得られた血液または血清曲線を使用して上記薬剤の胃内容排出に対する作用を評価し得る。
【0010】
用語“運動促進”とは、胃腸管内の蠕動、即ち、胃腸管を通る移動の増強を意味する。
用語“胃不全麻痺”とは、胃の運動異常により或いは糖尿病、全身性進行性硬化症、拒食症または筋強直性ジストロフィーのような疾病の合併症としてもたらされた胃の部分的または完全麻痺を意味する。
“酸性pH”とは、本発明においては、約6.0よりも低い任意のpHを意味する。
“pH感受性”製剤は、周囲環境のpHに対して感受性である製剤である。本発明の概念においては、pH感受性製剤は、約6.0よりも低いpHでは製剤中に含有させた活性成分の放出に対し抵抗性である製剤である。
本発明における“マーカー剤”は、胃腸管を通るその通路をモニターし得る任意の薬剤である。
本発明における“胃運動性モジュレーター”は、胃運動性を低下または上昇させるのいずれかによって胃運動性を変化させる任意の薬剤である。
本発明は、胃腸疾患の診断および治療のための方法および組成物を提供する。さらに詳細には、本発明は、動物に投与するマーカー/トレーサー剤の遅延放出性製剤を使用し、動物の血液流中のマーカーの存在を測定する。遅延放出性製剤は、該製剤が胃から排出されるまで胃腸管中にマーカー剤を放出しない製剤である。そのような製剤を得る1つの好ましい方法は、マーカー剤、例えば、動物の血液流中で通常は見出せないD-糖または他の薬剤を担体中に封入し約6.0よりも低いpHでは放出させないような遅延放出性製剤を調製することである。胃のpHは酸性であり約pH 6.0よりも低いので、マーカー剤は、製剤が胃から排出されるまで、放出されず動物の血液中に取込まれることはない。
【0011】
本発明は、口内、食道内および胃内ではマーカー剤の放出を許容しないが製剤が胃から小腸または胃腸管の他の胃以降の領域中に一旦通過するとマーカー剤の放出を可能にする任意の製剤の使用を意図する。本発明は、酸pHでは抵抗性であるがアルカリ性pHではマーカー剤を急速に放出するマトリックス中にマーカー剤を埋め込むことを意図する。また、マーカー剤は、粒子が非酸性条件でしか除去または溶解され得ないコーティーングによって被覆されている粒子形で存在させたマーカー剤である。本発明のいずれの実施態様においても、マーカー剤は、酸性pHに対し抵抗性である高分子剤によって被覆し得る。
血液流中に取込まれ得且つ血液流から検出可能であり、さらに約6.0以上のpH環境における放出に適合し得る任意の薬剤を、本発明におけるマーカー剤として使用し得る。そのような薬剤としては、限定するものではないが、油脂可溶性ビタミン類、例えば、ビタミンA、D、EおよびKのいずれか;ヒスタミン拮抗薬類、例えば、ラニチジン、シメチジンおよびこれらから誘導された薬剤;鎮痛剤類、例えば、アセトアミノフェン、アスピリン等がある。とりわけ好ましい実施態様においては、マーカー剤は、動物の食餌において本来見出されていない糖である。僅かに10種の単糖類が、高級真核生物体中のオリゴ糖群の複合糖質中で見出されている:D-グルコース、D-ガラクトース、D-マンノース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、シアル酸、グルクロン酸、イズロン酸、フコースおよびキシロース。これらの単糖類は全てD-配座を有するが、フコースおよびイズロン酸はL-配座を有する。D-キシロースは、哺乳類のような動物の食餌中に本来見出せず血液流中に通常存在しないので、本発明における好ましいマーカーである。しかしながら、非天然糖、例えば、L-配座の任意の糖も本発明におけるマーカーとして有用である。そのような糖類は、一般的なクロマトグラフィー検査を実施することによって哺乳類の血液中で容易に検出し得る(例えば、Handbook of Biochemistry and Molecular Biology: Lipids, Carbohydrates, Steriods, 3rd Edition, Ed. G. D. Fasman, CRC Press, Inc, 1975を参照されたい)。
【0012】
より一般的には、対象者の血液から好都合に検出し得る任意の薬剤をマーカーとして使用し得る。例えば、本発明においてマーカーとして使用し得る糖類としては、限定するものではないが、D-キシロース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-フラクトース、L-フコース、L-ラムノース、およびL-ソルボースがある。本発明において使用し得る製薬用マーカーとしては、限定するものではないが、アスピリン、アセトアミノフェン、セファロスポリン類(セファゾリン、セファクロール、セフォペラゾン等)、ペニシリン、または血清中で容易に吸収性で測定可能であり且つ胃運動性に影響を与えない任意の他の安全な薬物、例えば、シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、ニザジチン、アルプラゾラム、ゲンタマイシン、アミカシン、バンコマイシン、ジクロフェナクおよびイブプロフェンがある。本発明においてマーカーとして使用し得る他の化合物としては、限定するものではないが、D-アミノ酸類、ベータカロテン、アスコルビン酸、二酸化イオウ、ビオチン、イノシトール、亜鉛、ビタミンB12、葉酸塩、硫酸アルミニウム、ユージノール、シトラール、バニリンおよびリンゴ酸がある。
上記マーカー剤は、pH感受性製剤中に配合して、マーカー剤が約6.0よりも高いpHでのみしか放出しないように、即ち、マーカー剤は当該製剤が胃を通る過ぎるまでは放出しないようにする。例えば、マーカー剤は、pH感受性ミクロスフィア、例えば、ポリメタクリル酸とポリエチレングリコールとから製造したミクロスフィア中にカプセル化する。そのようなミクロスフィアの高分子成分によって形成された孔は、胃内で(即ち、低pHで)収縮し、それによってカプセル化された活性成分の放出を阻止する。ミクロスフィアが一旦小腸中に通ると、そこでは、pHは中性(即ち、約6.0以上)に向かう傾向にあり、ミクロスフィアの孔は膨張し、それによって封入されたマーカー剤を放出する。膨張/収縮現象は、錯化(complexation)と称される(Lowman and Peppas, Macromolecules, 30 (1997) 4959-4965)。マーカー剤は、一旦放出されると、血液流中に容易に吸収される。種々の摂取後時間間隔でのマーカー剤レベルのモニタリングは、個々人における胃内容排出速度の判定を可能にするであろう。
【0013】
pH感受性微粒子の調製は、当業者にとって公知である(Lowman et al., In: Tailored Polymeric Materials for Controlled Delivery Systems. I. McCullough and S. Shaloby, (Eds.), ACS, Washington, DC, ACS Synposium Series, 709, 1998, pp. 156-164, 1998)。例としての実施態様においては、マーカー剤を適切な溶媒、例えば、エタノールまたは各種濃度のエタノール溶液中に溶解し、その溶液のpHはアルカリ性である。乾燥コポリマー微粒子を所望マーカー剤の溶液中に分散させ、一定速度で1日攪拌する。このアルカリ性溶液は微粒子を膨潤させ、マーカー剤は微粒子の孔中に取込まれる。初期溶液中のマーカー剤対ポリマーの質量比は、例えば、1:1〜1:6で変動させ得る。マーカーの負荷後、溶液を1mm紙を使用して濾過し、等容量の酸液を添加してマーカー負荷粒子を収縮させる。その後、興味あるマーカーを含有するこれらのヒドロゲルを3日間真空乾燥させ、使用前に4℃で保存する。
別の実施態様においては、マーカー剤は、マーカー剤を酸性条件下では溶解に対し抵抗性である腸溶性コーティーングでコーティーングするようにして、調製し得る。好ましくは、上記コーティーングは、腸溶性コーティーングが小腸の中央部および末端部において溶解しやすいようなものである(参考として本明細書に引用する米国特許第5,795,882号参照)。
【0014】
本発明の診断局面においては、胃内容排出を、対象者(ヒトまたは他の動物)の血液流中のマーカー剤レベルを測定することによってモニターする。対象者は、好都合な食用形のマーカーを、例えば、既知量のマーカー物質を使用して製造したクッキー、フラップジャック、ドリンク、シリアルまたは他の食餌物質を摂取する。対象者は、マーカーを、例えば5〜10分の時間幅に亘って一般に摂取する。対象者の血液を、適切な時間間隔、例えば、5分毎に採血する。一定間隔での採血を容易にするためには、静脈内カテーテルまたは他の適切な容器を検査期間に亘って使用し得る。データを収集する期間は変動し得る。データは、少なくとも60分間収集する。さらに好ましくは、データを少なくとも120分間収集し、濃度対時間曲線を作成する。採集血液を、適切な容器、例えば、シュウ酸ナトリウムとフッ化ナトリウムを含有するバキュテイナーチューブ(Becton Dickinson Vacutainer Systems社、米国ニュージャージー州ラザフォード)中に入れる。胃不全麻痺の存在を立証するために或いは運動促進作用を実証するために必要なサンプル数は、2ほどの少数であり得る(Tougas et al., American Journal of Gastroenterology, Vol 95, No. 6, 2000、放射性核種を使用する)。2、3、4、5、6、7、8、9、10、15またはそれ以上のサンプルを採取して胃不全麻痺の存在を立証し得ることを意図する。
対象者の血液中のマーカー剤の存在の分析は、血液中のマーカー剤を特異的に検出する任意のアッセイを使用して判定する。マーカーの標準濃度対時間曲線を任意のそのようなアッセイにおいて作成し、初期に摂取した量と比較したときの血液中に出現したマーカー剤の量の測定を容易にし得る。そのような測定値を使用して、対象者の半減排出時間を測定し、胃不全麻痺または他の胃内容排出疾患の徴候を示していない健常個々人から得られた同様な測定値と比較することができる。そのような比較から、対象者が健常対照者と比較したときに低下した(または増大した)胃内容排出速度を有するかどうかを判定し得る。
【0015】
また、本発明は、胃内容排出を調節する(活量を増大または低下させる)化合物についてのスクリーニングにおける本発明の方法の使用も意図する。一般に、これらのアッセイは、初期では、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット等)を使用して試験し得るが、臨床段階では、上記化合物の胃内容排出作用を他の動物、例えば、ウマ、ヒツジ、ブタおよびヒトにおいて試験し得る。
胃不全麻痺の診断を簡素化する最近の努力は、胃腸病学分野における国際的グループの専門家によってなされた(Tougas等、2000年)。その研究において、胃内容排出スキャンの実施およびラベル投与後4時間での単一放射性核種カウントのチェックが全体的スキャンを実施したときに得られた胃不全麻痺の診断と丁度同じに有効であることが実証された。投与線量の10%以上が4時間後に存在した場合に、胃内容排出遅延が診断された。本発明の方法を使用して、同様な胃不全麻痺の診断を意図する。本発明のこの局面においては、D-キシロースまたは他の任意のマーカー剤を使用する診断試験は、試験化合物の投与前、投与時および投与後の単一時間点で採取したサンプルを使用する。この時間点は、医師によって選定された任意の時間点であり得、例えば、マーカー化合物投与後の10分、20分、30分、40分、50分、60分、75分、90分、105分、120分、135分、150分、180分、210分、240分、300分または360分であり得る。個々人の血清が選定された時間点で基礎値よりも多い量のマーカー化合物を含有する場合、胃不全麻痺が診断されるであろう。基礎値は、一般に、マーカー剤を投与しない場合のマーカー物質の標準値であろう。そのような基礎値は、マーカー剤を含有する組成物の投与前の選定時間点でのマーカー物質の量またはレベルを測定することによって判定し得る。また、基礎値は、一定の対象者集団における“平均”値であると判定したマーカー剤の値でもあり得る。基礎値よりも上のマーカー剤濃度は、初期に投与した総投与量の5%、投与した最初の投与量の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%であり得る。
【0016】
本発明のスクリーニング局面においては、胃内容排出のモジュレーターを、候補モジュレーターの存在および不存在下に本発明の方法を使用して胃内容排出をモニターし、結果を比較することによって同定する。意図するのは、このスクリーニング方法が、胃内容排出疾患の治療的介入を促進させ、増強させまたは増大させるという目的を果たすであろう化合物の一般的同定において有用であることを証明することである。そのような化合物は、限定するものではないが消化不良、胃不全麻痺、便秘および腸偽閉塞、並びに他の胃腸管障害のような異常胃内容排出像として発症する種々の疾患の治療において有用である。
本発明の或る局面においては、胃内容排出を調節する候補物質の能力を判定する方法は、下記の処置を一般に含む:
a) 試験化合物を哺乳類に投与すること;
b) 胃内容排出に対する当該試験化合物の効果を、約6.0よりも低いpHでは胃腸管内には放出されない薬剤を含む製剤を当該哺乳類に投与することによってモニターすること;
そして、c) 当該試験化合物の存在および不存在における当該哺乳類の血液中に見出される当該薬剤の濃度上昇に要する投与後の時間量を測定し、胃内容排出速度を変化させる試験化合物を胃腸運動性のモジュレーターとして同定すること。
候補物質を胃内容排出を刺激し得るものとして上記のアッセイにおいて同定するためには、胃内容排出速度を候補物質の投与前に測定または判定する。その後、候補物質を動物に投与し、胃内容排出速度を候補物質の存在下において測定する。胃内容排出速度を不存在下において観察された胃内容排出速度に比較して増大させる候補物質は、胃内容排出速度を刺激または増大させる能力を有する運動促進剤である候補物質を示唆し得る。逆に、候補物質は、胃内容排出速度を遅延させる物質としても同定し得る。そのような化合物は、下痢または速すぎる胃内容排出速度を示す疾患の治療または改善において有用であり得る。
【0017】
本明細書において使用するとき、用語“候補物質”とは、胃運動性を調節または改変し得る任意の分子を称する。特定の実施態様においては、候補物質分子は、胃不全麻痺を調節する分子である。候補物質は、たんぱく質またはそのフラグメント、小分子、或いは核酸分子でさえもあり得る。上記スクリーニングアッセイの使用による同定において最も有用な薬理学的化合物は、他の既知の胃内容排出モジュレーターに構造的に関連する化合物であり得る。この点、候補物質は、シサプリド(米国特許第5,955,477号参照)、ノルシサプリド(米国特許第6,353,005号および第6,362,202号参照)、エリスロマイシンA、B、CおよびDの大環状ラクタム誘導体(米国特許第5,554,605号、第5,538,961号、第5,523,418号および第5,523,401号参照)、および3-ヒドロキシ-ピペリジンメタノール誘導体(第6,096,761号参照)のような現存の運動促進剤に構造的に関連する物質であり得る(これらの米国特許は、その全体を参考として本明細書に引用し、本発明によって診断し得る疾患に関連する更なる背景情報を提供する)。
さらに、既に薬品市場に存在する承認薬も胃運動性に対する作用について試験することができる。そのような活性について以前には試験されていない潜在的な運動促進活性を有するある種の承認薬としては、ヨヒンビン、グアフェネシン、オルリスタット、プロスタグランジンアナログ類、ドネペジル、選択性溶解レセプター吸収剤類、ベンラファクシン、デキストロメトルファン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルトレキソンおよび当該技術において既知の他の薬物がある。試験すべき潜在的な漢方薬としては、キャッツクロー、デビルズクロー、唐辛子(cayenne)、ミント、生姜および当該技術において既知の他の漢方薬がある。
上記活性化合物は、天然産化合物のフラグメントまたは1部を含み得、或いはそうしないと不活性である既知の化合物の活性な組合せとしてのみ見出され得る。上記活性化合物は、天然産化合物のフラグメントまたは1部を含み得、或いはそうしないと不活性である既知の化合物の活性な組合せとして見出され得る。従って、本発明は、胃内容排出を刺激するまたは抑制する薬剤を同定するスクリーニングアッセイを提供する。動物、細菌、真菌、植物源(葉および樹皮のような)のような天然源から分離された化合物並びに海洋サンプルを潜在的に有用な薬物剤の存在について候補としてアッセイし得ることを提案する。
【0018】
スクリーニングする薬物剤は、化学組成物または人造化合物からも誘導または合成し得る。即ち、本発明によって同定される候補物質は、胃内容排出の既知の刺激剤または抑制剤から出発する合理的な薬物設計によって設計し得るポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子または任意の他の無機もしくは有機化学化合物であり得ることを理解されたい。
上記候補スクリーニングアッセイは、準備し実施するのは簡単である。即ち、候補物質についてのアッセイにおいては、試験化合物投与前の動物における胃内容排出速度を先ず測定する。その後、試験化合物を投与し、胃内容排出速度を再測定する。この仕様において、動物における胃内容排出を調節する候補物質の能力を評価し得る。試験化合物による動物の治療は、適切な形の化合物の動物への投与を含む。投与は、限定するものではないが、経口、経鼻、口内、直腸内、腟内または局所のような臨床または非臨床目的において使用し得る任意の経路によって行う。また、投与は、気管内点滴注入、気管支点滴注入、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内または静脈内注射にもより得る。
“有効量”は、動物の胃内容排出速度をその通常レベルと比較したときに再現可能に改変するのに有効な量である。有意の適切な活性変化を達成する化合物が好ましい。そのような化合物も既知の胃内容排出モジュレーターと比較し得る。
本出願において説明する胃内容排出検査を使用して観察されるような胃内容排出速度の有意な変化は、少なくとも約20%〜40%の活性の上昇または低下によって、最も好ましくは少なくとも約50%の変化によって示され、それより高い値も意図する。
【0019】
化学ライブラリー、天然産生物ライブラリー、およびランダムなまたは設計されたペプチド類、オリゴヌクレオチド類または有機分子からなる組合せライブラリーのような、胃内容排出に影響を与える小分子モジュレーターの同定において使用する多くの種々のライブラリーが存在する。化学ライブラリーは、既知化合物または天然産生物スクリーニングにより的中物または先導物として同定されたもしくは潜在的治療用ターゲットに対するスクリーニングからの化合物の構造的アナログ類からなる。天然産生物ライブラリーは、微生物、動物、植物または海洋生物体からの産生物の収集物であり、例えば、土壌、植物または海洋生物体からの培養液の発酵および抽出によるスクリーニングの混合物を創生するのに使用する。天然産生物ライブラリーは、ポリペプチド類、非リボソームペプチド類およびこれらの非天然産変異体を含む。再調査するには、Science 282:63-68 (1998)を参照されたい。組合せライブラリーは、大多数のペプチド類、オリゴヌクレオチド類または混合物としての有機化合物からなる。組合せライブラリーは、伝統的な自動合成法、PCRクローニング法または他の合成法によって調製するのに比較的簡単である。とりわけ興味あるのは、ペプチド、たんぱく質、ペプチド擬態物、多並行(multiparallel)合成収集物、組換えおよびポリペプチドライブラリーを含むライブラリーであろう。組合せライブラリーおよびそれから創生したライブラリーの再調査のためには、Myers, Curr. Opin. Biotechnol. 8: 701-707 (1997)を参照されたい。その後、上記の各種ライブラリーを使用して同定した候補モジュレーターは、運動促進または他の胃内容排出モジュレーターとしてのその活性について、例えば、合理的な薬物設計により最適化し得る。勿論、本発明のスクリーニング方法は、有効な候補が見出せ得ないという事実があったとしても、すべてがそれ自体有用であることを理解されたい。
【0020】
合理的な薬物設計の目的は、所望の効果を有することが知られている生物学的に活性な化合物の構造的アナログ類を調製することである。そのようなアナログ類を創生することにより、天然分子よりも活性であるかまたは安定であり、改変に対して異なる感受性を有し、或いは種々の他の分子の機能に影響を与え得る薬物を構築することが可能である。現存の運動促進剤が入手可能なため、本発明の方法を使用して、十分量の関連化合物を製造し試験することが可能である。
さらに、本発明は、変化型胃内容排出症状を発症している疾病症状の治療も意図する。さらにまた、本発明における上記した胃内容排出アッセイは、臨床試験における所定の治療の有効性をモニターするのに或いは個々の患者の治療のモニタリングにおいても使用し得る。疾病診断の基準を得るためには、対象者における通常のまたは標準の胃内容排出プロフィールを確立する。検査対象者のプロフィールは、健常対象者から得られたプロフィールと比較し得る。標準値と対象者値の偏差により、胃内容排出における異常の存在を確立する。
一旦胃内容排出における異常が確立されると、治療薬を投与し、治療プロフィールを発生させる。そのようなアッセイを一定の基準で繰返して、治療プロフィールにおける値が通常または標準像に向かって進展しているかまたは回復しているかどうかを評価し得る。継続的な治療プロフィールを使用して数日間または数ヶ月の期間に亘っての治療有効性を明らかにすることもできる。
【0021】
これら診断および治療の実施態様における使用のために、上記アッセイにおいて必要とする化合物の全てをキットの形で好都合に提供することができる。このキットは、マーカー化合物を使用するための使用説明書のセットと上述したような対象者における胃内容排出の判定方法を実施するための他の成分とを含む。使用説明書セットは、任意の適切なフォーマットで(例えば、紙上での印刷またはディスケット、CD-ROM上での電子フォーマットにおいて、またはウェブサイトへの参照または印刷公表物により)情報を提供して、使用者が、マーカー化合物の血清レベルを測定するための適切な試験標本を収集し、試験標本を加工し、マーカー化合物(1種以上)を使用してマーカー剤の投与後所定時間で対象者の血液流中に存在するマーカー化合物の量を測定し、そして、得られた結果を解明し、即ち、結果を使用者が対象者の胃内容排出のレベルおよび/または速度を判定するのを可能にする基準値と比較して胃不全麻痺の症状を発症しているかどうかを診断することを可能にする。
本発明のキットは、例えば、バキュテイナーチューブ(Becton Dickinson Vacutainer Systems社、米国ニュージャージー州ラザフォード)のような採血装置をさらに含み得る。さらに、上記キットは、試験標本中の所定のマーカー剤の濃度を検出し測定するのに必要な全ての試薬も含み得る。そのような検出試薬は、マーカー剤の存在の測定を可能にする任意の試薬であり得、所定のマーカー剤に対して特異性の抗体、マーカー剤を検出するための蛍光プローブまたは発色団、マーカー剤を検出するためのクロマトグラフィー媒体(例えば、マーカー剤を対象者から収集した試験標本から分子し得る薄層クロマトグラフィーストリップ)、およびマーカー剤の存在を検出するためのELISAタイプアッセイの成分を含み得る。
【0022】
臨床応用を意図する場合、マーカー剤および/または本発明によって同定した運動促進剤組成物を、製薬組成物として、即ち、生体内応用に適する形で調製することが望ましい。一般に、このためには、発熱物質並びにヒトまたは動物にとって有害であり得る他の不純物を本質的に含まない組成物を調製することが必要である。
一般に、適切な塩類と緩衝液を使用して組成物を安定にし且つ一旦マーカー剤が胃を通過すると取込みを可能にすることが望まれる。用語“製薬上または薬理学上許容し得る”とは、動物またはヒトに投与したときに有害な、アレルギー性のまたは他の不都合な反応を生じない分子存在物または組成物を称する。本明細書において使用するとき、“製薬上許容し得る担体”としては、任意および全ての溶媒類、分散媒、コーティーング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等がある。製薬上活性な物質用のそのような媒体および薬剤の使用は、当該技術において周知である。任意の通常の媒体または薬剤が本発明において使用する組成物と非適合性である場合を除いては、治療用組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性成分も上記組成物中に混入し得る。特定の実施態様においては、本発明の胃内容排出アッセイにおいて使用するマーカー剤を使用して試験食を調製し得ることも意図する。製剤がマーカー剤の放出を約6.0よりも低いpHにおいて許容しないようである限り、任意のそのような食餌を使用し得る。
上記マーカー剤および/または上記活性化合物は、それらの遊離塩基もしくは薬理学上許容し得る塩としてのおよび/またはヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適切に混合した水中での溶液としての投与用に調製し得る。分散液も、グリセリン、液体ポリエチレングリコール中、これらの混合物中、および油中で調製し得る。通常の保存および使用条件下においては、これらの製剤は、防腐剤を含有して微生物の増殖を阻止する。全ての場合、製剤は、好ましくは製造および保存条件下において無菌で且つ安定であり、好ましくは細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保存性である。
本明細書において使用するとき、“製薬上許容し得る担体”としては、任意および全ての溶媒類、分散媒、コーティーング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等がある。製薬上活性な物質用のそのような媒体および薬剤の使用は、当該技術において周知である。任意の通常の媒体または薬剤が活性成分と非適合性である場合を除いては、治療用組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性成分も上記組成物中に混入し得る。
【0023】
経口投与においては、本発明のアッセイにおいて使用するマーカー類は、賦形剤と混合し得る。また、活性成分は、ゲル、ペースト、粉末およびスラリーのような歯磨剤中にも分散させ得る。
本発明の組成物は、中性または塩形で調製し得る。製薬上許容し得る塩としては、例えば、塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等のような有機酸によって形成させたペプチド類の酸付加塩(たんぱく質の遊離アミノ基と形成させた)がある。また、遊離カルボキシル基から形成させた塩類も、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第2鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等のような有機塩基から誘導し得る。
本発明において説明したアッセイは、ヒト医薬および動物薬の分野において有用であり得る。即ち、治療する対象者は、哺乳類、好ましくはヒトであり得る。獣医目的においては、対象者としては、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマおよびヤギのような農場動物類;イヌおよびネコのようなコンパニオン動物類;外来および/または動物園動物類;マウス、ラット、ウサギ、モルモットおよびハムスターのような実験動物類;およびニワトリ、シチメンチョウ、アヒルおよびガチョウのような家禽類がある。
【0024】
本発明を実施するための例示としての実施態様を以下の実施例において説明する。
実施例1
遅延放出カプセル中のD-キシロースを使用することによる胃内容排出の判定
好ましい実施態様においては、胃内容排出を、遅延放出カプセル中のD-キシロースを使用することによって判定する。小腸中で容易に吸収される5炭糖であるD-キシロースを遅延放出性カプセル(EUDRAGIT-LRのような)中に内包させる。D-キシロースカプセルは、少なくとも50mg、少なくとも100mg、少なくとも150mg、少なくとも200mg、少なくとも250mg、少なくとも300mg、少なくとも350mg、少なくとも400mg、少なくとも450mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも750mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、少なくとも1グラムまたは1グラム以上のような種々の投与量を種々のカプセルサイズにおいて含有する。最適のカプセルサイズおよび化合物投与量は、予備試験の結果によって決定し、患者のような対象者の年齢、大小および体重によって変動し得る。患者は、1個以上のカプセルを水または他の液体ビヒクル(例えば、唾液)と一緒に服用する。D-キシロースがこの形で摂取される場合、カプセルは、約6.0よりも高いpHを有する腸管部分に達するまで無欠のままである。胃のpHは酸性(一般にpH 1〜3)であるので、カプセルは、胃の中では無欠のままである。pHが約6.0以上である小腸に入ると、カプセルの溶解が生じ、D-キシロースは放出され吸収される。即ち、D-キシロースの放出は、カプセルが胃から排出される後まで起らず、その血液流中への放出をカプセルが胃を通過する後まで制約する。一旦カプセルが溶解すると、D-キシロースは容易に吸収される。血液を患者からカプセル投与後の種々の時間で採取し、D-キシロースの存在について試験する。
【0025】
図1は、血清D-キシロース濃度の時間の関数としてのグラフを示す。1つの曲線は、水中に混合したD-キシロースを摂取した5名の健常ボランティアにおける平均データを示す。他の曲線は、6以上のpHでD-キシロースを放出するpH感受性カプセル(EUDRAGIT-LR)内に含有させたD-キシロースを摂取した1名の健常ボランティアから得られたデータである。胃は極めて低いpH(通常、3以下のpH)で酸を含有しているので、D-キシロースは、胃から排出された後の小腸に入ったときしか放出されない。D-キシロースは、通常、小腸内でしか吸収されず;胃内で吸収されることはない。カプセル摂取からのD-キシロース濃度曲線は、水中に混合したD-キシロースにおける曲線とはるかに異なっている。D-キシロースカプセル曲線は、血清中でのD-キシロース出現前の遅延(または時間差)を示している。さらに、曲線の初期吸収部分および末端部分の傾斜は、液体中D-キシロース曲線の傾斜よりも浅く、小腸中への入りの遅れに基づくD-キシロースも遅い吸収または取込みを実証している。
D-キシロース濃度対時間曲線において見られる遅延は、カプセルが胃内にある時間中ではD-キシロースが血液流中に入らないので生ずる。即ち、試験化合物(キシロース、薬物等)の取込み速度の低下として示されるこの遅れ即ち時間差期間は、胃内容排出時間の直接の反映である。この遅延時間および排出速度は、カプセル摂取後の血清D-キシロースレベルの測定によって判定する。これらのパラメーターは、容易に再現可能であり、健常個々人と胃内容排出遅延を有する個々人とでは大いに異なり得る。
【0026】
実施例2
遅延放出性カプセル中で小腸内で急速に吸収されるアセトアミノフェンまたは他の無毒性薬剤を使用することによる胃内容排出の判定
一般的に使用される鎮痛剤および下熱剤であるアセトアミノフェンは、経口摂取後に小腸から急速に吸収される。アセトアミノフェンは、小腸内で吸収される前に胃から排出されなければならない。この方法を使用して、アセトアミノフェンを遅延放出性カプセル(EUDRAGIT-LRのような)中に内包させる。種々の投与量およびカプセルサイズのアセトアミノフェンを、実施例1においてD-キシロースについて説明しているようにして使用し得る。適切な投与量およびカプセルサイズは、予備試験からのデータを使用して決定する。前述したように、アセトアミノフェンまたは任意の適切な無毒性物質(アスピリン、カフェイン等)をこの形で摂取させた場合、カプセルは、胃を無欠で通過し、小腸内で溶解する。カプセルが溶解すると、アセトアミノフェン、アスピリンまたは他の化合物は、その後、即ち、胃内容排出後のみ放出され吸収される。血液をこの場合も患者から標準の医療手順に従って採取し、アセトアミノフェン(または、アスピリン、カフェイン等)濃度について分析する。
アセトアミノフェン濃度対時間の曲線(または、他の摂取物質における濃度対時間曲線)において見られる遅延、並びにこれら物質の吸収速度の低下は、カプセルが胃内にある時間中はこれらの物質が血液流中に入ることの無能力を反映している。即ち、この遅れ即ち時間差期間並びに測定した薬物取込みの遅れは、胃内容排出時間の直接の反映である。この遅延時間および排出速度は、再現可能であり、健常個々人と胃内容排出遅延を有する個々人間とでは大いに異なる。
【0027】
実施例3
食物中へ混入させたD-キシロースまたは他の物質の使用
この方法は、D-キシロースまたは本明細書において説明したマーカー剤のような他のマーカー剤のブラウニー、パンケーキ、ケーキのような食物またはビヒクルとしての他の適切な食物中への混入を可能にする。これらの物質の摂取後に、種々の時間間隔において血清D-キシロースレベルを測定する。この配合物におけるD-キシロースは小腸に入るまで吸収されないので、D-キシロース濃度対時間曲線の結果は、当該食物物質の摂取に由来するD-キシロース取込みの遅れおよび胃内でのそのような摂取後のD-キシロースの放出を反映している。
図2は、水中D-キシロース摂取後とブラウニー中に混入させたD-キシロース摂取後を対比した血清D-キシロース濃度の時間曲線の関数としての曲線を示す。遅延放出性カプセルによるように、D-キシロースの取込みは著しく遅い。この遅れは、ブラウニー消化、ブラウニーからのD-キシロースの放出、胃内容排出および小腸からの放出D-キシロースの吸収の過程を反映している。このタイプの測定は、主として胃内で生ずる食物物質の消化並びに胃内容排出の生理学的評価を提供する。アセトアミノフェン、アスピリン、カフェイン等のような他の物質も同様な方法で測定する。
【0028】
実施例4
薬物の運動促進特性の判定
本発明は、安価で非侵略性であるアッセイを提供する。これらのアッセイは、毒性または放射性化合物への暴露をもたらさない。さらに、これらのアッセイは、薬物または他の物質摂取前後において同一個々人内で容易に再現し得る。上述した3つの実施例の1つを使用して、マーカー剤を、胃内容排出を調節するように投与する候補薬物(胃内容排出のモジュレーター、例えば、運動促進薬)の投与前(基礎値目的)および投与中または投与直後に、患者に投与する。血液をこの場合も種々の時間点で採取し、マーカー剤(D-キシロース、アセトアミノフェン、アスピリン、カフェイン等)の血清濃度について検査する。マーカー剤の基礎吸収速度を候補薬物を投与した後の吸収速度と比較する。候補モジュレーター/薬物の投与後の血清濃度:時間曲線における変化は、遅延時間の短縮のような変化およびこの状況下においての小腸による当該物質のより急速な取込みを示し得る。このことは、結果として、胃内容排出速度の調節用の薬物、漢方化合物および他の候補薬物物質をスクリーニングするための、さらに、そのような薬物、漢方化合物および他の候補薬物物質を、例えば、運動促進剤であると同定するための簡単で安全な非レントゲン写真検査を提供する。この方法で同定した薬剤は、さらに試験して通常の以前から存在する運動促進剤と比較して、それら薬剤の匹敵し得る治療価値を確認し得る。
【0029】
本明細書において説明し特許請求する全ての組成物および/または方法は、本開示に照らして、不必要な実験を行うことなく製造し実施し得る。本発明の組成物および方法を好ましい実施態様に関連して説明してきたが、本発明の組成物および方法に対し、また、本発明の方法の各工程においてまたは工程順序において、本発明の概念m精神および範囲から逸脱することなく変更を加え得ることは、当業者にとって明白である。さらに詳細には、化学的および生理学的双方に関連するある種の薬剤を、同一のまたは同様な結果を達成しながら本明細書において説明した薬剤と置換え得ることは明白である。当業者にとって明白なそのような同様な置換および修正は、すべて、特許請求の範囲によって定義したような本発明の精神、範囲および概念内に属するものとみなす。
本明細書全体に亘って引用した文献は、これらの文献が本明細書において説明した詳細を補足する典型的な手順的または他の詳細を提供する範囲で、全て参考として本明細書に合体させる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】血清D-キシロース濃度の時間の関数としてのグラフを示す。
【図2】水中D-キシロース摂取後とブラウニー中に混入させたD-キシロース摂取後を対比した血清D-キシロース曲線を時間曲線の関数としての曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 哺乳類に、遅延放出性製剤中に配合された薬剤を含む製剤であって、胃腸管のpHが約6.0よりも低いときには当該薬剤の胃腸管への放出を阻止する製剤を投与し、そして、b) 当該哺乳類の血液中で見出される当該薬剤の濃度上昇に要する時間量を測定することを特徴とする哺乳類における胃内容排出のモニタリング方法。
【請求項2】
前記哺乳類の血液中で見出される前記薬剤の濃度上昇に要する時間量が5分よりも長い、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤が、通常の食餌物質中には存在しない薬剤である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記薬剤が糖である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
糖が、D-キシロース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-フラクトース、L-フコース、L-ラムノース、およびL-ソルボースからなる群から選ばれる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤が、アセトアミノフェン、アスピリン、カフェイン、セファロスポリン類、ベータ-ラクタム抗生剤類、シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、ニザジチン、アルプラゾラム、ゲンタマイシン、アミカシン、バンコマイシン、ジクロフェナク、イブプロフェン、D-アミノ酸類、ベータカロテン、アスコルビン酸、二酸化イオウ、ビオチン、イノシトール、亜鉛、ビタミンB12、葉酸塩、硫酸アルミニウム、ユージノール、シトラール、バニリン、およびリンゴ酸からなる群から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤がpH感受性製剤中にカプセル化されている、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記薬剤が非等方性である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記薬剤が試験食中に配合されている、請求項1記載の方法。
【請求項10】
a) 哺乳類に、約6.0よりも低いpHでは胃腸管中に放出されない薬剤を含む製剤を投与し、そして、b) 当該哺乳類の血液中で見出される当該薬剤の濃度上昇に要する投与後の時間量を測定し、当該哺乳類を、当該薬剤が血液流内で投与後120分で上昇しない場合には、胃内容排出疾患を有するものと診断することを特徴とする哺乳類における胃内容排出疾患の診断方法。
【請求項11】
a) ヒトに、約6.0よりも低いpHでは胃腸管中に放出されないD-キシロースを含む製剤を投与し、そして、b) 当該ヒトの血液中で見出される当該D-キシロースの濃度上昇に要する投与後の時間量を測定し、当該ヒトを、当該薬剤が血液流内で投与後120分で上昇しない場合には、胃内容排出疾患を有するものと診断し;当該ヒトが胃または小腸の閉塞を有していないことを前以って判定しているか或いは後で判定することを特徴とするヒトにおける胃不全麻痺の診断方法。
【請求項12】
投与するD-キシロースの総投与量が約5グラム〜約25グラムである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
a) 試験化合物を哺乳類に投与し、b) 胃内容排出に対する当該試験化合物の効果を、約6.0よりも低いpHでは胃腸管内には放出されない薬剤を含む製剤を当該哺乳類に投与することによってモニターし、そして、c) 当該試験化合物の存在および不存在における当該哺乳類の血液中に見出される当該薬剤の濃度上昇に要する投与後の時間量を測定し、胃内容排出速度を変化させる試験化合物を胃腸運動性のモジュレーターとして同定することを特徴とする、哺乳類における胃腸運動性を調節する化合物のスクリーニング方法。
【請求項14】
前記試験化合物が、前記薬剤の投与から前記哺乳類の血液中での出現までの時間の増大によって測定されるように、胃腸運動性を上昇させる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記試験化合物が、前記薬剤の投与から前記哺乳類の血液中での出現までの時間減少によって測定されるように、胃腸運動性を低下させる、請求項13記載の方法。
【請求項16】
請求項13記載の方法に従って同定した胃腸運動性のモジュレーター。
【請求項17】
前記モジュレーターが運動促進剤である、請求項16記載のモジュレーター。
【請求項18】
約250mg〜1000mgのD-キシロースと製薬上許容し得る担体、希釈剤または賦形剤とを含む胃腸運動性の判定用製剤。
【請求項19】
前記製剤を試験食として調製する、請求項18記載の製剤。
【請求項20】
遅延放出性製剤中に配合された第1マーカー剤(当該製剤は約6.0よりも低いpHでは当該第1マーカー剤の放出を阻止する)と、胃内容排出を判定するための当該製剤の使用についての使用説明書とを含む胃内容排出のモニタリング用キット。
【請求項21】
前記キットが、遅延放出性製剤中に配合された第1マーカー剤(当該製剤は約6.0よりも低いpHでは当該第1マーカー剤の放出を阻止する)と、アッセイを実施するための使用説明書とを含む、請求項1記載の方法において使用するキット。
【請求項22】
請求項18記載の製剤と、胃運動性を判定するアッセイの実施についての使用説明書とを含むキット。
【請求項23】
採血装置をさらに含む、請求項20〜22のいずれか1項記載のキット。
【請求項24】
前記マーカー剤の存在を検出するための組成物をさらに含む、請求項20〜22のいずれか1項記載のキット。
【請求項25】
製剤中に配合された第2マーカー剤(当該製剤は約6.0よりも低いpHでは当該第2マーカー剤の放出を阻止する)をさらに含む、請求項20〜22のいずれか1項記載のキット。
【請求項26】
前記第2マーカー剤が前記第1マーカー剤と同じ遅延放出性製剤中に配合されている、請求項25記載のキット。
【請求項27】
標準曲線を作成するのに使用する1連の濃度のマーカー剤を遅延放出性製剤中にさらに含み、当該製剤の各々が当該マーカー剤の約6.0よりも低いpHでの放出に対し抵抗性である、請求項20〜22のいずれか1項記載のキット。
【請求項28】
前記製剤のpHを約6.0よりも低いpHに低下させる試薬をさらに含む、請求項27記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−510593(P2006−510593A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−536207(P2004−536207)
【出願日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/028689
【国際公開番号】WO2004/024192
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(503365763)ザ ユニヴァーシティ オヴ シカゴ (2)
【Fターム(参考)】