説明

能動タイプのエコペダル装置

【課題】推力を強化して、エコモードをより効果的に実現することができる能動タイプのエコペダル装置を提供する。
【解決手段】 外部から供給される電流が流れて磁場を発生させ、巻線方向を互いに反対方向に転換させるように互いに連結され、直列配列された一対のコイルと、
一対のコイルで形成された磁場と相互作用するN極及びS極を備え、コイルとの相互作用による電磁力で本推力を発生させると共に、一対のコイルの電流が互いに反対方向の時に発生する磁場との相互作用による電磁力により更に1つの斥力を発生させ、斥力を基本推力に加える一対のマグネットと、
第1マグネットと第2マグネットとの内側において、移動される移送子と、からなるボイスコイルモータを備えるアクチュエータを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動タイプのエコペダル装置に係り、より詳しくは、アクチュエータの効率を向上させ、費用の上昇要因を除去し、運転者のペダル感を低下させない、より効果的なエコモードが実現できる能動タイプのエコペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両の燃費を改善できる多様な方法の一つとして、無駄な加速ペダル操作を低減させる方式がある。
この方式が適用された一例として、走行条件に応じて運転者に加速ペダルの踏力を通常と異なって印加する作動モードを実施することにより、加速ペダルを踏んでいる運転者に通常と異なるペダル反力を感じさせ、加速ペダルの操作回数を減少させる方式がある(例えば特許文献1を参照)。
このような作動モードを、通常、エコモード(Eco Mode)といい、これを適用したペダルをエコペダルと称する。
【0003】
つまり、通常モード(Normal Mode)では、運転者が運転ペダルを踏圧した際に感じるペダル反力が、ばねの弾性変形による反力により提供されるのに対し、エコモードでは、車両の特定走行条件が満たされる時、ペダルを踏んだ運転者に別の動力で別の反力を提供する。
即ち、エコモードでは、運転者がばねを介したペダル反力とは異なったペダル反力を感じることにより、無駄な加速ペダルの操作回数を減少させ、燃費を改善する。
【0004】
運転者に別の反力を感じさせる方法の一例として、アクチュエータを適用した動力方式がある。
永久磁石DCブラシモータ(以下PMDCのモータと記す)をアクチュエータとして用いることにより、ウォームギヤとウォームホイールとを備えた減速器を介して変換されたモータ動力でエコモードを実施できる。
しかし、PMDCタイプのモータは、動力伝達時、モータとペダルとの間に減速器を設けなければならないという問題と、PMDCモータの比較的高い動力伝達損失率を有するという問題と、複雑な動力伝達経路による作動騷音問題と、がある。
【0005】
一方、アクチュエータにリニアタイプのモータを用いると、前記のようなPMDCタイプのモータの高い動力伝達損失率と、比較的大きな作動騷音問題と、を大きく改善することができる。リニアタイプのモータでは、磁場を用いて動力が伝達されるので、減速器による動力伝達損失がなく、減速器による作動騷音も全く生成されないからである。
【0006】
このように、PMDCタイプのモータに比べて、リニアタイプのモータは、作動の正確性の向上はもちろん、品質の向上も図ることができると同時に、騷音による品質満足度の低下もなくなる。
【0007】
前述したように、エコモードは、運転者が押圧するペダル踏力に対抗し、ペダルを押し返すペダル反力を提供する。このために、リニアタイプのモータは、電流の供給時に形成される電場を用いて固定子に対してリニア(linear)に移動する移送子がペダルを押し出すことにより、ペダルを踏んでいる運転者に別の反力を感じさせ、無駄に踏んでいる加速ペダルから足を離す機会を提供する。
【0008】
しかし、リニアタイプのモータには以下のような問題点がある。
リニアタイプのモータは、通常3相制御方式で制御で制御される。モータを3相制御方式で制御する場合は、モータ駆動のための3相ドライバチップと、モータの印加電流に対する過負荷を認知するための電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor)と、が必須となる。特にモータのストロークを検出するホール素子を備えたホールセンサ(Hall sensor)を必ず用いなければならない。
即ち、3相制御されるリニアタイプのモータを用いたエコペダルは、3相ドライバチップと、複数の電界効果トランジスタと、複数のホールセンサと、を更に備えられなければならず、費用の面で不利になるという問題点がある。
【0009】
特に、費用の面において、リニアタイプのモータを用いたエコペダルは、モータ制御のために必要な、高価な3相ドライバチップと、少なくとも6個適必要な電界効果トランジスタと、による費用増加は、不利さを更に増す要因になる。
これと共に、少なくとも3箇所にホールセンサが用いられることにより、エラー(Error)の危険性が高められるという不利な面も更に加わる。これは、電気的信号を発生するホールセンサの作動がやや不安定で、電気的故障(Fail)時にはモータの駆動が不可能であるからである。
【0010】
図8は、エコモードの実現時における、アクチュエータのタイプに応じたペダル感を示す踏力線図であり、(イ)は、アクチュエータがリニアタイプのモーターの場合である。即ち、図8(イ)は、エコモードの実現時における、アクチュエータのタイプに応じたコギングトルクによる運転者のペダル感を示す。
図8(イ)に示すように、リニアタイプのモータでは、ホールセンサを用いたストロークベースの電流制御、及び連続したN、S、N、S磁石の交差配列により1工程中の推力が作動位置により変化することにより、震えを含む弱い振動のような力であるコギングトルク(Cogging Torque)が相対的に高くなる。
【0011】
そのため、リニアタイプのモータを適用したエコペダルは、エコモードの実現時、ヒステリシス(Hysteresis)により反発踏力が形成される時に相対的に高いコギングトルクが全区間にわたって運転者のペダル感(Feeling)を低下させるため、不利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−143567
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の問題点に鑑みてなされた本発明は、推力を強化してエコモードをより効果的に実現することができる能動タイプのエコペダル装置を提供することを目的とする。
また本発明は、よりコンパクトな構成が可能で、費用が低減された能動タイプのエコペダル装置を提供することを目的とする。
更に、本発明は、エコモードの実現時に、全区間において運転者のペダル感が低下することなく、商品性も大きく向上させることができる能動タイプのエコペダル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の能動タイプのエコペダル装置は、外部から供給される電流が流れて磁場を発生させ、巻線方向を互いに反対方向に転換させるように互いに連結された中間部位を有し、直列配列された第1コイルと第2コイルとからなる一対のコイルと、
一対のコイルで形成された磁場と作用するN極及びS極を備え、磁場とN極及びS極との作用による電磁力で互いに異なる2つの基本推力Fa及びFbが同一方向に作られ、一対のコイルの電流の流れが互いに反対方向の時に発生する磁場とN極及びS極との作用による電磁力で同じ極性による更に1つの斥力Fcが作られ、基本推力Fa及びFbの和が大きくなるように1つの斥力Fcが基本推力Fa及びFbの和に加えられる一対のマグネットと、
一対のマグネットのうち、第1コイル側にN極を露出した第1マグネットと、第2コイル側にS極を露出した第2マグネットと、が直列配列され、第1マグネットと第2マグネットとの内側において移動される移送子と、からなるボイスコイルモータが備えられたアクチュエータを含むことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、一対のコイルがインシュレータで囲まれ、インシュレータが固定子で囲まれ、固定子がモータハウジングに収容され、移送子にはモータハウジングを貫通して外部に突出するプッシュ軸が連結されることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、一対のコイルに供給される電流の流れ方向が、アクチュエータの電流量を制御するコントローラにより制御されることを特徴とする。
また本発明は、移送子が、モータハウジングに固定された1以上のガイドピンにより移動が案内されることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、モータハウジングが、フロントハウジングとリヤハウジングとからなり、フロントハウジングとリヤハウジングとは、締結ボルトで結合されて互いに連結されることを特徴とする。
【0018】
また、上記の目的を達成するための本発明の能動タイプのエコペダル装置は、ヒンジ結合され、運転者に押圧されて操作され、押圧が解除されると弾性復元力の作用により初期位置に復帰するペダルと、
外部から電流が供給されて磁場を発生させる一対のコイルと、一対のコイルで発生された磁場と作用するN極及びS極を備え、磁場とN極及びS極の作用による電磁力で互いに異なる2つの基本推力Fa及びFbが同一方向に形成され、一対のコイルの電流の流れが互いに反対方向の時に発生される磁場とN極及びS極との作用による電磁力で、同じ極性による更に1つの斥力Fcが形成され、基本推力Fa及びFbの和が大ききなるように1つの斥力Fcが基本推力Fa及びFbの和に加えられる一対のマグネットと、からなるボイスコイルモータが備えられたアクチュエータと、
エコモードが実現されなければ、アクチュエータの予期せぬ移動を拘束するようにアクチュエータに弾性力を加えるホルダと、
を含んで構成されることを特徴とする。
【0019】
また本発明のアクチュエータは、モータハウジングに内蔵された固定子が、一対のコイルを内蔵したインシュレータを内蔵し、一対のコイルは、基本推力方向に直列配列された第1コイルと第2コイルとから構成され、第1コイルと第2コイルとは、巻線方向を互いに反対方向として互いに連結された中間部位を有し、一対のマグネットのうち、第1コイルの内側に位置する第1マグネットはN極が第1コイル側に露出し、第2コイルの内側に位置する第2マグネットはS極が第2コイル側に露出し、
第1マグネットと第2マグネットとの内側には、推力で移動され、移動によりペダルの押圧方向と反対方向にペダルを押し出すプッシュ軸が備えられた移送子が位置し、移送子の移動はガイドピンにより案内され、ガイドピンは、モータハウジングを貫通して固定された少なくとも1つ以上であることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、ペダルにはアジャスタが更に備えられ、アジャスタは、モータの動力を利用して運転者から遠くなるか近くに移動して運転者に対するペダルの間隔を調整し、モータには回転式駆動ケーブルが連結され、回転式駆動ケーブルは、モータの動力を利用してペダルと共にブレーキペダルの間隔を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ボイスコイルモータタイプのアクチュエータの、基本推力Fa及びFbに付加される斥力Fcを形成させ、供給電力対比してペダル1を押し出す推力を高めたことにより、より効率的なエコモードが実現できた。
【0022】
また、本発明は、単相制御方式でボイスコイルモータタイプのアクチュエータを制御することにより、エラーの危険性が高いホールセンサを削除して作動安定性を大きく強化すると共に、臨界効果トランジスタ(Field Effect Transistor)の数を減少させ、よりコンパクトな構成が可能で、相対的に割安な単相ドライバチップを使用することにより費用の低減に大きく寄与することができる効果がある。
【0023】
更に、本発明は、コアレスタイプ(Coreless type)のボイスコイルモータによるアクチュエータでコギングトルクを発生させないことにより、運転者のペダル感を低下させることなく、エコモードを実現することができ、商品性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】アクチュエータを備えた能動タイプのエコペダル装置の踏力線図であり、(イ)はアクチュエータがリニアタイプのモーターの場合であり、(ロ)はアクチュエータが本発明のボイスコイルモータの場合である。
【図2】本発明のアクチュエータの分解斜視図である。
【図3】本発明のボイスコイルモータの構成図である。
【図4】本発明のアクチュエータの組立状態を示し、(イ)は断面図であり、(ロ)は部分欠切斜視図である。
【図5】本発明のボイスコイルモータの電流供給時の作動原理を示す図である。
【図6】本発明のアクチュエータを拘束するためのホルダの構成図である。
【図7】エコモードが実現される時の、本発明の能動タイプのエコペダル装置においてペダル反力を加えるアクチュエータの動作を示す図である。
【図8】エコモードの実現時における、アクチュエータのタイプに応じたペダル感を示す踏力線図であり、(イ)は、アクチュエータがリニアタイプのモーターの場合であり、(ロ)は、アクチュエータがボイスコイルモータタイプのアクチュエータの場合である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、アクチュエータを備えた能動タイプのエコペダル装置の踏力線図であり、(イ)はアクチュエータがリニアタイプのモーターの場合であり、(ロ)はアクチュエータが本発明のボイスコイルモータの場合である。
図1に示すように、能動タイプのエコペダル装置は、運転者が踏むことのできるペダル板1aを備えたペダル1と、運転者とのペダル1の間隔を調整するアジャスタ7と、スイッチ操作で駆動されてアジャスタ7を動かすアジャスタモータ10と、コントローラの電流制御によるエコモードの実現時にペダル1を押し出す反力を加えるアクチュエータ20と、エコモードが実現されない時にアクチュエータ20の予期せぬ動きを拘束するホルダ50と、を有する。
【0026】
本実施形態のように、能動タイプのエコペダル装置に、ペダル1と共に、ペダルの運転者に対する位置移動が可能なアジャスタ7を備えた場合はペンダントタイプと呼ばれる。また、ペダル1とアジャスタ7との結合方式に応じて、ペンダントタイプを基本としてペンダント型オルガンタイプ、ボックス型オルガンタイプ、またはエコオルガンタイプに分類可能である。
【0027】
また、前記のように、アジャスタ7がペダル1を位置移動させる時に、アジャスタモータ10を用いた構造の場合、ペダル1の動きと連動するように回転式駆動ケーブル11が隣接するペダル(一例として、ブレーキペダル)側に連結されることにより、加速ペダルとブレーキペダルとが一体化されたモジュールを含んで構成される。
【0028】
一方、本実施形態に適用されたペダル1は、車体側に装着されたペダルハウジング2にヒンジ軸3を介在して結合され、運転者の押圧解除時にペダル1を元の位置に復帰させるためのリターン部材4を更に備える。
リターン部材4は、ペダル1の動きと連動するばねシート5と、ばねシート5を付勢支持しながら圧縮変形され、弾性復元力をペダル1側に加えるリターンばね6と、を含んで構成される。
【0029】
リターンばね6は、コイルばねタイプが適用される。
また、本実施形態の場合、アジャスタ7は、踏まれたペダル1の移動を干渉しない間隔を維持した状態で、ペダル1と共に前後方向にスライディング(Sliding)されることにより、運転者に対するペダル1の間隔調整が実施される。
このために、アジャスタ7は、ペダル1の裏側に位置してアジャスタモータ10により動くスライダ8と、スライダ8のスライディング動きを案内するガイドブロック9と、を含んで構成される。
【0030】
スライダ8の前後方向移動は、アジャスタモータ10の回転をウォームギヤとウォーム及びリードスクリューを用いて直線移動力に変換することにより実現できる。
一方、本実施形態のアクチュエータ20は、ボイスコイルモータタイプが適用される。ボイスコイルモータは、内側または外側に位置する永久磁石による磁場と、コイルに形作される磁気モーメントと、の相互作用によりコイル又は永久磁石が動くことにより推力を発生させる方式をである。
【0031】
しかし、本実施形態に適用されるボイスコイルモータは、推力方向に直列に配列された少なくとも2個の永久磁石と、2個のコイルと、による電磁場の作用により、基本的な推力に別の斥力が付加される相乗作用を利用することにより、供給電力対比の推力が大きく高まり、これよりエコモードをより安定かつ効率的に実現することができる。
【0032】
このために、アクチュエータ20は、モータハウジング21の内部に収容された固定子22と、推力方向に同一に配列された一対のコイル24と、これと共に電磁場を形成する一対のマグネット25と、を備えたボイスコイルモータと、プッシュ軸27がペダル1の部位を押し出すように推力を受けて移動する移送子26と、を含んで構成される。
【0033】
図2は、本発明のアクチュエータ20の分解斜視図を示す。図2に示すように、モータハウジング21は、締結ボルト31で互いに結合されるフロントハウジング21aと、リヤハウジング21bと、から構成され、フロントハウジング21aと、リヤハウジング21bと、の内部空間には、アクチュエータ20を構成するすべての部品が位置されて組立可能な構造が形成される。
【0034】
フロントハウジング21aとリヤハウジング21bとによって形成された内部空間の、リアハウジング側の最外側には固定子22が配置され、固定子22の内側にはインシュレータ23が配置され、インシュレータ23の内側にはコントローラの制御により電流が供給されるボイスコイルモータが配置され、ボイスコイルモータの内側にはボイスコイルモータから推力を受けて移動する移送子26が配置され、移送子26にはモータハウジング21を貫通してプッシュ軸27が連結される。
ここで、固定子22とインシュレータ23との間には、カバーリング36が更に備えられる。
【0035】
ボイスコイルモータは、2以上からなる一組のコイル24と、コイル24と同数となる一組のマグネット25と、を含んで構成される。
好ましくは、コイル24は、円形に巻かれた第1コイル24aと第2コイル24bとからなる1対のコイルから構成され、第1コイル24aと第2コイル24bとは、それぞれ異なる方向の電流を供給され、プッシュ軸27の軸方向に直列配列される。
【0036】
マグネット25は、永久磁石である中空のリングタイプの2個のマグネット、第1マグネット25aと第2マグネット25bを有する。
第1マグネット25aは、外側にN極が形成され、内側にS極が形成され、第1コイル24aの内側に配置される。第2マグネット25bは外側にS極が形成され、内側にN極が形成され、第2コイル24bの内側灰位置される。第1マグネット25aと第2マグネット25bはとプッシュ軸27の移動方向である推力方向に直列配列される。
【0037】
また、移送子26は、ボイスコイルモータから推力を受けて移動する時に、その移動を案内するガイドピン28に連結される。ガイドピン28は、移送子26を貫通してその両端がフロントハウジング21aとリヤハウジング21bとにそれぞれ固定される。
【0038】
ガイドピン28は、少なくとも1本以上から構成されるが、本実施形態では、角度が90度の間隔で4本を一組として構成されることにより、ボイスコイルモータから推力を受けて移動する移送子26の移動が安定化される。
ガイドピン28が貫通する移送子26の前側と後側の部位には、それぞれブッシュ32、33が備えられる。
【0039】
また、ガイドピン28がリヤハウジング21bに固定される部位にはブッシュ34が、フロントハウジング21aに固定される部位にはE−リング35が、それぞれ挿入されるが、これらは、アクチュエータ20に対する防水機能を強化するためである。
【0040】
図3は、本発明のボイスコイルモータの構成図である。図3に示すように、ボイスコイルモータは、プッシュ軸27を移動させる移送子26が内側に設けられた第1マグネット25a及び第2マグネット25bを有し、第1マグネット25a及び第2マグネット25bそれぞれに、第1コイル24a及び第2コイル24bそれぞれが巻回される。ここで、第1コイル24aと第2コイル24bとは相互に反対方向に巻回される。
【0041】
一例として、第1コイル24aが第1マグネット25aに反時計方向aに巻回されると、第2コイル24bは第2マグネット25bに時計方向bに巻回され、第1コイル24aと第2コイル24bとが互いに連結される中間部分には、卷回方向を方向転換するコイル捻り部24cが形成される。
【0042】
図4は、本発明のアクチュエータの組立状態を示し、(イ)は断面図であり、(ロ)は部分欠切斜視図である。
図4(イ)に示すようにアクチュエータ20が組立てられると、移送子26は、ガイドピン28に移動可能に結合され、動力源であるボイスコイルモータの内側空間に設置される。プッシュ軸27は、移送子26と共に移動するように一端を移送子26に固定され、他端はモータハウジング21を貫通し外部に突出した状態となる。
【0043】
そして、図4(ロ)に示すように、アクチュエータ20が組立てられると、動力源のボイスコイルモータは、モータハウジング21の内側空間にインシュレータ23を介して絶縁された状態で収容される。モータハウジング21は、フロントハウジング21aとリヤハウジング21bとからなり、締結ボルトで結合される。上記の構造にすることによって、アクチュエータ20は、組立時と分解時とに便利で効率的な作業性を提供する。
【0044】
本実施形態に係るボイスコイルモータタイプのアクチュエータ20は、単相制御方式でオン(On)オフ(Off)制御されることにより、比較的安価な単相ドライバチップが適用可能であり、モータの印加電流に対する過負荷を認知するための電界効果トランジスタも設置数を大きく減少させることができ、特にモータのストロークを検出するためのホールセンサを設置する必要がない。
【0045】
モータの制御にホールセンサを使用しないで済めば、電気的故障によるエラーの危険性を大きく低減させることができるため、本発明のボイスコイルモータタイプのアクチュエータ20は、従来のリニアタイプのモータに比べて作動安定性と信頼性とを大きく向上させることができる。
【0046】
図5は、本発明のボイスコイルモータの電流供給時の作動原理を示す図である。図5に示すように、本発明のボイスコイルモータは、コイル24に電流が供給されると、第1コイル24aが巻回された第1マグネット25aと、第2コイル24bが巻回された第2マグネット25bと、にはプッシュ軸27の同じ方向に移送子26を押し出す基本的な力である移動力Fa及びFbが生成される。
【0047】
このように配備された本実施形態では、前記のような基本的な移動力Fa及びFbに加えて、更に移送子26を押し出そうとする強い斥力Fcが生成される。これは、第1コイル24aと第2コイル24bとを流れる電流が反対方向に流れるボイスコイルモータの構造的特徴に起因する。
【0048】
即ち、外側にN極が形成され、内側にS極が形成された第1マグネット25aに巻かれた第1コイル24aに流れる電流は、第1マグネット25aの2マグネット25bと隔離する側の端部(図5の右側)から入って、第1マグネット25aの2マグネット25bと近接する側の端部(図5の左側)へ通り抜けるように配備される。
一方、外側にS極が形成され、内側にN極が形成された第2マグネット25bに巻かれた第2コイル24bに流れる電流は、第2マグネット25bの第1マグネット25aと隔離する側の端部(図5の左側)から入って第2マグネット25bの第1マグネット25aと近接する側の端部(図5の右側)へ通り抜けるように配備される。
【0049】
つまり、外側にN極が形成され、内側にS極が形成された第1マグネット25aに巻かれた第1コイル24aに流れる電流は、第1マグネット25aの2マグネット25bと隔離する側の端部(図5の右側)から入って第1マグネット25aの2マグネット25bと近接する側の端部(図5の左側)へ通り抜けて磁場を形成する。
一方、外側にS極が形成され、内側にN極が形成された第2マグネット25bに巻かれた第2コイル24bに流れる電流は、第2マグネット25bの第1マグネット25aと隔離する側の端部(図5の左側)から入って第2マグネット25bの第1マグネット25aと近接する側の端部(図5の右側)へ通り抜けて磁場を形成する。
【0050】
図3に示す、第1コイル24aと第2コイル24bとが相互に反対方向に巻回されたコイル24を備えるボイスコイルモータにおいては、電流は第1マグネット25aの2マグネット25bと対向する側の端部(図3の右側)から入って、卷回方向を方向転換するコイル捻り部24を介し、卷回方向をが反転されて第1マグネット25aと対向する側の端部(図3の左側)へ通り抜けるように配備される。
【0051】
前記のような電流の流れにより、第1コイル24aと第1マグネット25aとの間では、電流の入る部位にS極が形成され、電流の通り抜ける部位にN極が形成され、第2コイル24bと第2マグネット25bの間でも、電流の入る部位にS極が形成され、電流の通り抜ける部位にN極が形成される。
これにより、第1コイル24aと第2コイル24bとの向かい合う対向部位には同じN極による斥力Fcが形成され、形成された斥力Fcは、プッシュ軸27の移動方向に移送子26を押し出す力として作用する。
【0052】
そのため、移送子26は、同一方向を有する移動力Fa及びFbと斥力Fcとが合わされた推力(Fr=Fa+Fb+Fc)を受けて押される。このような推力Frで移送子26に固定されたプッシュ軸27が、図1に示すように、ペダル1側に押されることにより、運転者が踏んでいるペダル1に反力を加えるエコモードが実施される。
【0053】
通常、推力Frは、制御装置がボイスコイルモータに供給する電流の方向が逆転されることによりその移動方向が逆転される。制御装置が、第1コイル24aと第2コイル24bの電流の流れをそれぞれ制御することにより、第1コイル24aと第2コイル24bの電流の流れ方向を同一方向にすることができる。
本実施形態のように強化された推力Frを利用すると、供給電力対比の性能をより強化させたることができ、同一性能のエコペダルの作動をより効率的に実現することができる。
【0054】
図6は、本実施形態に係るアクチュエータの移動を拘束するためのホルダ50を示す。図5に示すように、ホルダ50は、ペダルハウジング2の内側空間でプッシュ軸27の移動経路に備えられたケース51と、ケース51の内側で弾性部材53により付勢され、プッシュ軸27の外周に沿って凹設された係止溝27aに挿入されるホルダピン52と、から構成される。
弾性部材53は、通常、コイルばねからなり、アクチュエータ20の作動時にプッシュ軸27を移動させる推力Frよりも弱い弾性力を提供する。
【0055】
図7は、エコモードが実現される時の、本発明の能動タイプのエコペダル装置においてペダル反力を加えるアクチュエータの動作を示す図である。
図7に示すように、アクチュエータ20は、制御装置で制御され、制御装置は、アクチュエータ20の作動時にボイスコイルモータに供給される電流量を制御する。通常、制御装置はエンジン制御装置(Engine Control Unit)が適用される。
【0056】
エンジン制御装置は、燃費を低下させるペダル1の頻繁な操作または急激な操作、あるいは車両の走行状態(車線離脱、危ない車間距離、危ない曲線走行など)に応じた信号を各種センサを介して受信することにより、エコモード実現のためのアクチュエータ20の作動の可否を判断する。
車両走行時に運転者がペダル1を踏むと、ペダル1は、ペダルハウジング2のヒンジ軸3を基準としてその下側部位は押圧(Pa)され、その上側部位はヒンジ軸3を中心として回転(Ma)されてアクチュエータ20側に押される。
【0057】
この状態でエコモードが実現されると、コントローラにより電流が供給されたボイスコイルモータに推力Frが発生する。この推力Frは、基本的な移動力Fa及びFbに強力な斥力Fcが加えられ、すべての力が推力Fr(=Fa+Fb+Fc)として合わされることにより、移送子26は、プッシュ軸27を介して、ペダル1に強い反力を提供する。
【0058】
このような作用は、前述したように、互いに反対方向に電流が流れる一対の第1コイル24a及び第2コイル24bと、互いに押し出す斥力を発生させる一対の第1マグネット25a及び第2マグネット25bと、からなるボイスコイルモータの構造的特性に起因する。
この時、ペダル1側に押されたプッシュ軸27は、ホルダピン52から抵抗を受けるが、ホルダピン52を押す弾性部材53の弾性加圧力に比べてプッシュ軸27をペダル1側に押し出す推力Frの方が強力であることにより、プッシュ軸27は移動に制限を受けなくなる。
【0059】
前記のように強い推力Frでプッシュ軸27がペダル1の部位を押すと、ペダル1はヒンジ軸3を中心として逆回転(Mb)することにより、ペダル1の上側部位はアクチュエータ20から遠くなり、ペダル1の下側部位が運転者に反力(Pb)を加える。
これにより、運転者は、ペダル1を踏んだ状態で、自分の意志とは関係なくペダル1から伝達される反力(Pb)を感じ、ペダル1の操作を止める。このような運転者の行動により無駄なペダル1の操作回数が大きく減少され、それによる燃費の低減が達成される。
【0060】
エコモードは、アクチュエータ20を介してペダル1に加える反力(Pb)の印加を断続的に行うことによって、運転者の認識率をより向上させることができる。このような機能は、通常、制御装置がアクチュエータ20に供給する電流の方向を逆転させることにより実現される。
即ち、アクチュエータ20に、プッシュ軸27がペダル1を押し出す方向に推力を発生させる電流の供給方向を正方向と定義し、ペダル1を引き戻す方向に推力を発生させる電流の供給方向を正方向とを負方向と定義する時、アクチュエータ20に供給する電流の方向を制御装置により正方向と負方向とに交互に繰り返すことにより容易に実現される。
【0061】
前記のような制御装置によるアクチュエータ20の制御は、本実施形態では、エコモードのほか、振動モードなどのより多様なモードが、単にコントローラの制御ロジックを利用して実現できることを意味する。
【0062】
特に、本実施形態のように、制御装置がボイスコイルモータタイプのアクチュエータ20を単相制御方式でオンオフ制御すると、アクチュエータ20を用いてエコモードやその他付加的な多様なモードを実現する時にも、制御装置のの制御ロジッグが極めて単純化されることにより、設計の効率性を大きく向上させることができる。
【0063】
一方、本実施形態のように、ボイスコイルモータタイプのアクチュエータを適用したエコペダル装置では、コギングトルクによる運転者のペダル感の低下がなく、運転者の満足度と商品性とを大きく向上させることができる。
【0064】
図8は、エコモードの実現時における、アクチュエータのタイプに応じたコギングトルクによる運転者のペダル感の差を示す踏力線図である。図8(イ)は、前述した従来のリニアタイプのモータが3相制御方式でエコモードを実現する時、ヒステリシス(Hysteresis)により反発踏力が形成された時に相対的に高いコギングトルクが全区間にわたって発生し、運転者のペダル感を低下させることを示す。
【0065】
図8(ロ)は、本実施形態のように、ボイスコイルモータタイプのアクチュエータ20が単相制御方式でエコモードを実現する時、ヒステリシスにより反発踏力が形成される時にもコギングトルクはほとんど発生しないことを示す。
図8に示すように、ボイスコイルモータタイプのアクチュエータ20では、エコモードが実現されてもコギングトルクがほとんどなく、全区間にわたって運転者のペダル感を大きく向上させることができる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る能動タイプのエコペダル装置に適用されたアクチュエータ20は、互いに反対方向に電流が流れる一対の第1コイル24a及び第2コイル24bと、第1コイル24a及び第2コイル24bに形成される電場と作用する一対の第1マグネット25及び第2マグネット25bと、から構成されたボイスコイルモータから構成される。
【0067】
アクチュエータ20は、電流が供給されるボイスコイルモータにおいて、基本推力Fa及びFbに付加される斥力Fcを形成してペダル1を押し出す推力Frを高めたことにより、エコモード実現の効率性を大きく向上させた。
またアクチュエータ20は、単相ドライバチップで単相制御されることにより、エラーの危険性が高いホールセンサを使用しないで済むので作動信頼性が向上し、これにより商品性も大きく向上させ、臨界効果トランジスタの数も減少させ、よりコンパクトに構成するのはもちろん、費用も大きく低減させることができた。
【0068】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1 ペダル
1a ペダル板
2 ペダルハウジング
3 ヒンジ軸
4 リターン部材
5 ばねシート
6 リターンばね
7 アジャスタ
8 スライダ
9 ガイドブロック
10 アジャスタモータ
11 駆動ケーブル
20 アクチュエータ
21 モータハウジング
21a フロントハウジング
21b リヤハウジング
22 固定子
23 インシュレータ
24 コイル
24a 第1コイル
24b 第2コイル
24c コイル捻り部
25 マグネット
25a 第1マグネット
25b 第2マグネット
26 移送子
27 プッシュ軸
27a 係止溝
28 ガイドピン
31 締結ボルト
32、33、34 ブッシュ
35 E−リング
36 カバーリング
50 ホルダ
51 ケース
52 ホルダピン
53 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給される電流が流れて磁場を発生させ、巻線方向を互いに反対方向に転換させるように互いに連結された中間部位を有し、直列配列された第1コイルと第2コイルとからなる一対のコイルと、
前記一対のコイルで形成された磁場と作用するN極及びS極を備え、前記磁場と前記N極及び前記S極との作用による電磁力で互いに異なる2つの基本推力Fa及びFbが同一方向に作られ、前記一対のコイルの電流の流れが互いに反対方向の時に発生する前記磁場と前記N極及び前記S極との作用による電磁力で同じ極性による更に1つの斥力Fcが作られ、前記基本推力Fa及びFbの和が大きくなるように前記1つの斥力Fcが前記基本推力Fa及びFbの和に加えられる一対のマグネットと、
前記一対のマグネットのうち、前記第1コイル側にN極を露出した第1マグネットと、前記第2コイル側にS極を露出した第2マグネットと、が直列配列され、前記第1マグネットと前記第2マグネットとの内側において移動される移送子と、からなるボイスコイルモータが備えられたアクチュエータを含むことを特徴とする能動タイプのエコペダル装置。
【請求項2】
前記一対のコイルはインシュレータで囲まれ、前記インシュレータは固定子で囲まれ、前記固定子はモータハウジングに収容され、前記移送子には前記モータハウジングを貫通して外部に突出するプッシュ軸が連結されることを特徴とする請求項1に記載の能動タイプのエコペダル装置。
【請求項3】
前記一対のコイルに供給される電流の流れ方向は、前記アクチュエータの電流量を制御するコントローラにより制御されることを特徴とする請求項1または2に記載の能動タイプのエコペダル装置。
【請求項4】
前記移送子は、前記モータハウジングに固定された1以上のガイドピンにより移動が案内されることを特徴とする請求項2に記載の能動タイプのエコペダル装置。
【請求項5】
前記モータハウジングは、フロントハウジングとリヤハウジングとからなり、前記フロントハウジングと前記リヤハウジングとは、締結ボルトで結合されて互いに連結されることを特徴とする請求項4に記載の能動タイプのエコペダル装置。
【請求項6】
ヒンジ結合され、運転者に押圧されて操作され、押圧が解除されると弾性復元力の作用により初期位置に復帰するペダルと、
外部から電流が供給されて磁場を発生させる一対のコイルと、前記一対のコイルで発生された磁場と作用するN極及びS極を備え、前記磁場と前記N極及び前記S極の作用による電磁力で互いに異なる2つの基本推力Fa及びFbが同一方向に形成され、前記一対のコイルの電流の流れが互いに反対方向の時に発生される磁場と前記N極及び前記S極との作用による電磁力で、同じ極性による更に1つの斥力Fcが形成され、前記基本推力Fa及びFbの和が大ききなるように前記1つの斥力Fcが前記基本推力Fa及びFbの和に加えられる一対のマグネットと、からなるボイスコイルモータが備えられたアクチュエータと、
エコモードが実現されなければ、前記アクチュエータの予期せぬ移動を拘束するように前記アクチュエータに弾性力を加えるホルダと、
を含んで構成されることを特徴とする能動タイプのエコペダル装置。
【請求項7】
前記アクチュエータは、
モータハウジングに内蔵された固定子が、前記一対のコイルを内蔵したインシュレータを内蔵し、
前記一対のコイルは、前記基本推力方向に直列配列された第1コイルと第2コイルとから構成され、
前記第1コイルと前記第2コイルとは、巻線方向を互いに反対方向として互いに連結された中間部位を有し、
前記一対のマグネットのうち、前記第1コイルの内側に位置する第1マグネットはN極が前記第1コイル側に露出し、前記第2コイルの内側に位置する第2マグネットはS極が前記第2コイル側に露出し、
前記第1マグネットと前記第2マグネットとの内側には、前記推力で移動され、移動により前記ペダルの押圧方向と反対方向に前記ペダルを押し出すプッシュ軸が備えられた移送子が位置し、
前記移送子の移動はガイドピンにより案内され、前記ガイドピンは、前記モータハウジングを貫通して固定された少なくとも1つ以上であることを特徴とする請求項6に記載の能動タイプのエコペダル装置。
【請求項8】
前記ペダルにはアジャスタが更に備えられ、前記アジャスタは、モータの動力を利用して運転者から遠くなるか近くに移動して運転者に対する前記ペダルの間隔を調整し、
前記モータには回転式駆動ケーブルが連結され、前記回転式駆動ケーブルは、前記モータの動力を利用して前記ペダルと共にブレーキペダルの間隔を調整することを特徴とする請求項6に記載の能動タイプのエコペダル装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−248196(P2012−248196A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−119887(P2012−119887)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(512137946)株式会社 ディーエイチ ホールディングス (2)
【Fターム(参考)】