説明

脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム及び反射板

【課題】優れた光反射性を有し、面光源内の輝度ばらつきを小さくし、しかも使用により経時的に黄変したり、光反射性が低下することがない反射フィルムであって、上記性能を損なうことなく、製品外観が良好で、延伸製膜時に破断を起こすことなく安定して生産することができる反射フィルムを提供する。
【解決手段】脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、脂肪族ポリエステル系樹脂、酸化チタン、該酸化チタンの平均粒径よりも大きい平均粒径を有する微粉状充填剤、および滑剤を含有する樹脂組成物Aから形成される。また、脂肪族ポリエステル系樹脂および酸化チタンを含有する樹脂組成物Bから形成されるB層の少なくとも一方の面に、前記樹脂組成物Aから形成されるA層を積層してなることができる。滑剤は、アクリル系滑剤、炭化水素系滑剤から選ばれた少なくとも1種からなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムに関し、特に、液晶表示装置、照明器具、照明看板等の反射シートに使用される反射フィルムに関するものである。また、前記反射フィルムを金属板もしくは樹脂板に被覆してなる、液晶表示装置、照明器具、照明看板等に使用される反射板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置用の反射板、投影用スクリーンや面状光源の部材、照明器具用反射板および照明看板用反射板等の分野で、反射フィルムが使用されている。例えば、液晶ディスプレイの反射板では装置の大画面化及び表示性能の高度化の要求から、少しでも多くの光を液晶に供給してバックライトユニットの性能を向上させるために、高い反射性能の反射フィルムが求められている。
【0003】
また、ノートブック型のコンピューターなどの表示装置として、薄型化が可能であり、しかも画像が見易いバックライト機構を有する液晶素子を用いた液晶表示装置が用いられている。このようなバックライト機構には、透光性の導光板の一端部に蛍光管のような線状光源を併設するエッジライト方式が多く用いられる。このようなエッジライト方式の場合には、導光板の一方の面を光拡散物質で部分的に被覆し、その面の全面をさらに反射材で被覆するようにして面光源を構成するものが多い。
上記のような反射材には、高い反射率の他に、面光源内の輝度ばらつきを小さくするために極力低い反射指向性が求められている。
【0004】
反射フィルムとしては、芳香族ポリエステル系樹脂に酸化チタンを添加して形成された白色シート(例えば特許文献1参照)が知られているが、要求されるような高い光反射性を有するものではなく、反射指向性が低いものでもなかった。また、フィルムを形成する芳香族ポリエステル系樹脂の分子鎖中に含まれる芳香環が紫外線を吸収するため、液晶表示装置等の光源から発せられる紫外線によってフィルムが劣化、黄変して、反射フィルムの光反射性が低下するという欠点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−138150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記問題点を解決するために反射フィルムの鋭意検討を重ねたところ、酸化チタンをはじめとする微粉状充填剤を多量に含有する反射フィルムを生産しようとすると、これらの微粉状充填剤が、押出機およびTダイ等口金内壁面に付着、凝集堆積し、この堆積物が間欠的に溶融樹脂組成物と共に押し出される「プレートアウト現象」や口金リップに付着、堆積する「メヤニ」が発生することがわかった。このプレートアウト現象による堆積物やメヤニは、フィルム製品表面のブツとなって製品外観を損ねたり、延伸製膜時に破断の起点となって破断トラブルを発生させることがある。
【0007】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決すべくなされたものであり、すなわち、本発明の目的は、優れた光反射性を有し、面光源内の輝度ばらつきを小さくし、しかも使用により経時的に黄変したり、光反射性が低下することがない反射フィルムであって、上記性能を損なうことなく、製品外観が良好で、延伸製膜時に破断を起こすことなく安定して生産することができる反射フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の反射フィルムは、脂肪族ポリエステル系樹脂、酸化チタン、該酸化チタンの平均粒径よりも大きい平均粒径を有する微粉状充填剤、および滑剤を含有する樹脂組成物Aから形成されることを特徴とする。
(2)また、脂肪族ポリエステル系樹脂および酸化チタンを含有する樹脂組成物Bから形成されるB層の少なくとも一方の面に、前記樹脂組成物Aから形成されるA層を積層してなることができる。
(3)ここで、前記滑剤は、アクリル系滑剤、炭化水素系滑剤から選ばれた少なくとも1種からなることが好ましい。
(4)前記滑剤の含有量は、前記樹脂組成物A中、0.05質量%以上、10質量%以下であることができる。
(5)また、前記酸化チタン中のバナジウム含有量は5ppm以下であることが好ましい。
(6)さらに、前記酸化チタンの表面が、シリカ、アルミナ、および、ジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種類の不活性無機酸化物で被覆されていることが好ましい。
(7)本発明において、前記A層における酸化チタンの含有量が、前記樹脂組成物A中、10質量%以上、59.5質量%以下であり、前記微粒状充填剤の含有量が、前記樹脂組成物A中、0.5質量%以上、50質量%以下であることができる。
(8)また、前記B層における酸化チタンの含有量が、前記樹脂組成物B中、10質量%以上、60質量%以下であることができる。
(9)ここで、前記微粉状充填剤は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、および、シリカからなる群から選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。
(10)さらに、前記シリカの表面がジメチルシリコーン、アルキル変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、シランカップリング剤、およびシラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類で被覆されていることが好ましい。
(11)また、前記脂肪族ポリエステル樹脂の屈折率は1.52未満であることが好ましい。
(12)さらに、前記脂肪族ポリエステル樹脂が乳酸系重合体であることが好ましい。
(13)本発明において、フィルム内部の空隙率が50%以下となるように空隙を有することができる。
(14)また、前記A層の空隙率がB層の空隙率よりも高いことが好ましい。
(15)さらに、前記樹脂組成物Aを溶融製膜したフィルム、または前記樹脂組成物Aおよび前記樹脂組成物Bを溶融製膜したフィルムを、少なくとも1軸方向に1.1倍以上延伸したフィルムであることができる。
(16)本発明の反射フィルムは、前記A層側から測定したときの光沢度が40%以下であることが好ましい。
(17)本発明の反射板は、上記いずれかの脂肪族ポリエステル系反射フィルムを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い光反射性を有すると共に、製品外観が良好で、延伸製膜時に破断を起こすことなく安定して生産することができる反射フィルムを得ることができる。また、本発明の反射フィルムを金属板もしくは樹脂板に被覆することにより、高い光反射性を有する、液晶表示装置、照明器具、照明看板等に使用される反射板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳しく説明する。なお、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0011】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、脂肪族ポリエステル系樹脂、酸化チタン、該酸化チタンの平均粒径よりも大きい平均粒径を有する微粉状充填剤、および滑剤を含有する樹脂組成物Aから形成される単層構成の反射フィルムであるか、または、脂肪族ポリエステル系樹脂および酸化チタンを含有する樹脂組成物Bから形成されるB層の少なくとも一方の面に、前記樹脂組成物Aから形成されるA層を積層してなる積層構成の反射フィルムであることができる。
【0012】
本発明においては、酸化チタンを用いる。酸化チタンは屈折率が高く、ベース樹脂との屈折率差を大きくできるため、より少ない充填量でフィルムに高い反射性能を付与することができ、また、薄肉でも高い反射性能のフィルムを得ることができる。
【0013】
本発明に用いられる酸化チタンとしては、例えば、アナタース型及びルチル型のような結晶形の酸化チタンが挙げられる。ベース樹脂との屈折率差を大きくするという観点からは、屈折率が2.7以上の酸化チタンであることが好ましく、例えば、ルチル型の結晶形の酸化チタンを用いることが好ましい。
【0014】
ここでフィルムに高い光反射性を付与するには、可視光に対する光吸収能が小さい酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンの光吸収能を小さくするには、該酸化チタンに含まれる着色元素の量を少なくすることが好ましく、特にバナジウムの含有量を5ppm以下とすることにより、高い光反射性を有する反射フィルムを得ることができる。
【0015】
本発明に用いる酸化チタンとしては、塩素法プロセスで製造されるものと硫酸法プロセスで製造されるものが挙げられる。そのうち、塩素法プロセスで製造される酸化チタンは、純度がより高く、例えば該酸化チタンに含まれるバナジウムの含有量を5ppm以下としやすいので、本反射フィルムに好適である。
【0016】
さらに、本発明に用いる酸化チタンは、該酸化チタンの表面をシリカ、アルミナ、およびジルコニアの中から選ばれた少なくとも1種類の不活性無機酸化物で被覆処理されていることが好ましい。フィルムの耐光性を高めるために、酸化チタンの光触媒活性を抑制する目的で、該酸化チタンの表面を不活性無機酸化物で被覆処理する。この不活性無機酸化物として、シリカ、アルミナ、およびジルコニアの中から選ばれた少なくとも1種類を用いると、酸化チタンの高い光反射性を損なうことがないので好ましい。さらに2種類を併用したものがより好ましく、中でもシリカを必須とする複数の不活性無機酸化物の組み合わせが特に好ましい。
【0017】
また、酸化チタンの樹脂への分散性を向上させるため、酸化チタンの表面をシロキサン化合物、シランカップリング剤等から選ばれた少なくとも1種類の無機化合物や、ポリオール、ポリエチレングリコールから選ばれた少なくとも1種類の有機化合物で表面処理することもできる。
【0018】
本発明に用いられる酸化チタンは、粒径が0.1μm以上、1μm以下であることが好ましく、0.2μm以上、0.5μm以下であることが更に好ましい。酸化チタンの粒径が0.1μm以上であれば、脂肪族ポリエステル系樹脂への分散性が良好であり、均質なフィルムを得ることができる。また、酸化チタンの粒径が1μm以下であれば、脂肪族ポリエステル系樹脂と酸化チタンとの界面が緻密に形成されるので、反射フィルムに高い光反射性を付与することができる。
【0019】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムに含まれる酸化チタンの含有量はについて説明する。フィルムの光反射性、機械的物性、生産性等を考慮すると、A層に含まれる酸化チタンの含有量は、A層を形成するための樹脂組成物A中、10質量%以上、59.5質量%以下であることが好ましく、20質量%以上、59質量%以下であることがさらに好ましい。また、A層およびB層からなる積層構成の場合には、B層に含まれる酸化チタンの含有量は、反射フィルムのB層を形成するための樹脂組成物B中、10質量%以上、60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上、55質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以上、50質量%以下であることが特に好ましい。酸化チタンの含有量が10質量%以上であれば、樹脂と微粉状充填剤との界面の面積を充分に確保することができて、フィルムに高い光反射性を付与することができる。また、A層の酸化チタンの含有量が59.5質量%以下、B層の酸化チタンの含有量が60質量%以下であれば、フィルムに必要な機械的性質を確保することができる。
【0020】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムのA層を形成する樹脂組成物Aには、酸化チタンよりも平均粒径の大きい微粉状充填剤が含まれる。このような微粒状充填剤の平均粒径は、酸化チタンの平均粒径の2倍以上であることが好ましい。本発明に用いられる微粒状充填剤としては、有機質微粉体、無機質微粉体等が挙げられる。
【0021】
有機質微粉体としては、木粉、パルプ粉等のセルロース系粉末や、ポリマービーズ、ポリマー中空粒子等から選ばれた少なくとも1種が用いられることが好ましい。
【0022】
無機質微粉体としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、ヒドロキシアパタイト、シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ガラス粉、アスベスト粉、ゼオライト、珪酸白土等から選ばれた少なくとも1種が用いられることが好ましい。得られるフィルムの光反射性を勘案すれば、フィルムを構成するベース樹脂との屈折率差が大きいものが好ましく、すなわち、無機質微粉体としては屈折率が大きいものが好ましい。具体的には、屈折率が1.6以上である炭酸カルシウム、硫酸バリウム、または酸化亜鉛や、シリカを用いることが好ましい。得られるフィルムの長期耐久性を勘案すると、酸やアルカリに対して安定な硫酸バリウムを用いることが特に好ましい。また、得られるフィルム外観を勘案すると、シリカを用いることが好ましく、このうち、表面がジメチルシリコーン、アルキル変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、シランカップリング剤、およびシラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類で被覆されたものは、樹脂への分散性がよく均質なフィルムが得られるので特に好ましい。これらの表面処理により、樹脂への分散性が向上し、反射フィルムの生産時に、「プレートアウト現象」や「メヤニ」を生じることがなく、製品外観を損ねたり、延伸製膜時に破断の起点となって破断トラブルを発生させることがなくなる。
【0023】
さらに、シリカ以外の上記微粉状充填剤についても、樹脂への分散性を向上させるために、微粉状充填剤の表面に、シリコン系化合物、多価アルコール系化合物、アミン系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル等で表面処理を施したものを使用することができる。
【0024】
本発明に用いられる前記微粉状充填剤としては、粒径が0.3μm以上、15μm以下であることが好ましく、より好ましくは粒径が0.5μm以上、10μm以下である。微粉状充填剤の粒径が0.3μm以上であれば、フィルムの粗表面化に伴い光散乱反射が生じて、得られるフィルムの反射指向性が小さくなり好ましい。また粒径が15μm以下であれば、脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との界面が緻密に形成されるので、反射フィルムに高い光反射性を付与することができる。
【0025】
本発明において、酸化チタンよりも平均粒径の大きい前記微粉状充填剤は、脂肪族ポリエステル系樹脂に分散配合されることが好ましい。また、この微粒状充填剤のA層における含有量は、フィルムの光反射性、機械的物性、生産性等を考慮すると、A層を形成するための樹脂組成物A中、0.5質量%以上、50質量%以下であることが好ましく、更に1質量%以上、40質量%以下であることが好ましい。微粉状充填剤の含有量が、樹脂組成物A中、0.5質量%以上であれば、得られるフィルムの反射指向性を低くするのに十分な粗表面化を起こすことができる。また、前記微粉状充填剤の含有量が50質量%以下であれば、フィルムに必要な機械的性質を確保することができる。
【0026】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムのA層を形成する樹脂組成物Aに配合される滑剤は、任意のものを用いることができるが、本発明の反射フィルムに好適に用いられる滑剤としては、樹脂組成物溶融体と押出機、Tダイ口金内壁面等の金属表面との間の摩擦を低下させる、いわゆる外部滑剤が好ましい。中でも、アクリル系滑剤、炭化水素系滑剤が好ましく、特にアクリル系滑剤がより好ましく、またこれらを組み合わせて用いても良い。これらの外部滑剤は、押出機、Tダイ口金内壁面等の金属表面に滑性膜を形成して、前記酸化チタンや微粉状充填剤が、押出機、Tダイ等口金内壁面や口金リップに、付着、堆積することを防止する。即ち、この堆積物が間欠的に溶融樹脂組成物と共に押し出される「プレートアウト現象」や口金リップに付着する「メヤニ」が解消され、表面にブツのない外観良好なフィルム製品が得られる。さらに、延伸製膜する際に、フィルム破断の起こらない安定した生産が可能である。
【0027】
アクリル系滑剤としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、クロロエチルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体,メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル単量体の単独重合体あるいは二種以上を組み合わせた共重合体が挙げられる。さらに、上記単量体とスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等芳香族ビニル化合物やアクリロニトリル、メタクリロニトリル等ビニルシアン化合物とを組み合わせて共重合させても良い。また、上記単量体と、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、アルキレングリコールジアクリレート等の多官能単量体を共重合させても良い。
【0028】
上記アクリル系滑剤の分子量は、重量平均分子量で5万以上、300万以下が好ましく、10万以上、100万以下がさらに好ましい。分子量が5万以上であれば、押出,製膜工程全般に亘って滑性が維持されて好ましい。また分子量が300万以下であれば、樹脂本来の物性を維持することができて好ましい。
【0029】
また、炭化水素系滑剤としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、天然ワックス、合成ワックス等、
およびこれらの混合品が挙げられる。
【0030】
これら滑剤の含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂、酸化チタン、該酸化チタンの平均粒径よりも大きい平均粒径を有する微粉状充填剤、および滑剤を含有する樹脂組成物A中、0.05質量%以上、10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上、5質量%以下であることがさらに好ましい。含有量が0.05質量%以上であれば、充分な上記添加効果が得られ好ましい。また含有量が10質量%以下であれば、樹脂本来の物性を維持することができて好ましい。
【0031】
また、内部滑剤作用を備えるいわゆる内部滑剤としては、脂肪酸系滑剤、アルコール系滑剤、脂肪族アマイド系滑剤、エステル系滑剤等を挙げることができる。本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、後述するように、内部に空隙を有していなくてもよいが、空隙を有する構成とする場合には、これらの内部滑剤は、反射率の向上が十分に得られない場合があるので留意が必要である。これは、これらの内部滑剤は、樹脂粒子間の摩擦低下、樹脂分子間相互作用の低下等により樹脂流動性を向上させるものであるため、フィルムを延伸した際に形成される空隙が少なくなるためと思われる。
【0032】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、反射率および低反射指向性の点からは、内部に、空隙率(空隙がフィルム中に占める割合)が50%以下となるように空隙を有することが好ましい。本発明においてはフィルム内部に効果的に分散状態で酸化チタンおよびそれよりも平均粒径の大きい微粉状充填剤を含むことによって、さらに優れた反射性能と低反射指向性とをフィルムに付与することが可能となる。
【0033】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムが、フィルム内に空隙を有する場合には、その空隙がフィルム中に占める割合(空隙率)が5%以上、50%以下の範囲内であることが好ましい。特に、反射率向上の点からは、空隙率は20%以上であることが更に好ましく、特に好ましくは30%以上である。空隙率が50%を超えると、フィルムの機械的強度が低下してフィルム製造中にフィルムが破断したり、使用時に耐熱性等の耐久性が不足することがある。例えば微粉状充填剤を添加して延伸することにより、フィルム中に空隙を形成することができる。
【0034】
なお、A層およびB層からなる積層構成の場合には、A層およびB層における空隙率は、それぞれ、50%以下であることが好ましく、5%以上、50%以下の範囲内であることが更に好ましい。また、A層における空隙率が、B層における空隙率よりも高いことが好ましい。これは、A層およびB層を積層してなる脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、A層の高空隙率化による光散乱反射性、すなわち、低反射指向性と、B層の低空隙率化による機械的強度を付与することができるので、面光源内の輝度のばらつき(いわゆる輝度ムラ)が小さく、かつ、機械的強度も良好なものが得られるからである。
【0035】
バナジウムの含有量が5ppm以下である酸化チタンを用いる場合には、フィルム内部に存在する空隙率が少ない場合においても高い光反射性を達成することが可能となり、内部に空隙を有していなくても高反射率を稼ぐことができる。これは、酸化チタンの屈折率が高く、隠蔽力が高いという特徴が、有効に発揮させるためと推察される。また、充填剤の使用量を少なくすることができるならば、延伸により形成される空隙の数も少なくなるので、高い反射性能を維持しつつフィルムの機械的性質を向上させることができる。さらに、充填剤の使用量が多くても、延伸量を少なくして空隙を少なくすることにより、同様に機械的性質を向上させることができる。これらはフィルムの寸法安定性の向上の点においても有利な点である。また、薄肉でも高い反射性能が確保されれば、例えば、ノート型パソコンや携帯電話等の小型、薄型の液晶ディスプレイ用の反射フィルム等として使用することができる。
【0036】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムのA層およびB層を構成するベース樹脂は、屈折率(n)が1.52未満であることが好ましく、本発明においては、屈折率(n)が1.52未満の脂肪族ポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。
【0037】
すなわち、酸化チタンを含有するB層、および、酸化チタンと所定の平均粒径の微粒状充填剤を含有するA層を有する脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、ベース樹脂と酸化チタン等との界面における屈折散乱を利用して光反射性を発現する。この屈折散乱効果は、ベース樹脂と酸化チタン等との屈折率の差が大きくなるに従って大きくなる。したがって、ベース樹脂としては、酸化チタン等との屈折率差が大きくなるように、屈折率の小さい樹脂を用いることが好ましく、芳香環を含み、屈折率が約1.55以上である芳香族ポリエステルよりも、屈折率が1.52未満である脂肪族ポリエステルを用いることが好ましく、脂肪族ポリエステルの中でも屈折率の小さい乳酸系重合体(屈折率が1.46未満)を用いることが好ましい。
【0038】
脂肪族ポリエステル系樹脂は、分子鎖中に芳香環を含まないので紫外線吸収を起こさない。したがって、紫外線に晒されて、あるいは、液晶表示装置等の光源から発せられる紫外線によっても、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムが劣化したり、黄変することがないので、フィルムの光反射性が低下することがない。
【0039】
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、化学合成されたもの、微生物により発酵合成されたもの、及び、これらの混合物を用いることができる。化学合成された脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ラクトンを開環重合して得られるポリε−カプロラクタム等、二塩基酸とジオールとを重合して得られるポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリテトラメチレンサクシネート、シクロヘキサンジカルボン酸/シクロヘキサンジメタノール縮合体等、ヒドロキシカルボン酸を重合して得られる乳酸系重合体、ポリグリコール等や、上記した脂肪族ポリエステルのエステル結合の一部、例えば50%以下がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合等に置き換えられた脂肪族ポリエステル等が挙げられる。また、微生物により発酵合成された脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ポリヒドロキシブチレート、ヒドロキシブチレートとヒドロキシバリレートとの共重合体等が挙げられる。
【0040】
本発明において、乳酸系重合体とは、D−乳酸またはL−乳酸の単独重合体またはそれらの共重合体をいい、具体的には、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、更にはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリ(DL−乳酸)があり、またこれらの混合体も含まれる。
【0041】
乳酸系重合体は、縮合重合法、開環重合法等の公知の方法で製造することが出来る。例えば、縮合重合法では、D−乳酸、L−乳酸、または、これらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有する乳酸系重合体を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合することにより任意の組成を有する乳酸系重合体を得ることができる。上記ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸の二量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を有する乳酸系重合体を得ることができる。
【0042】
本発明に用いられる乳酸系重合体は、D−乳酸とL−乳酸との構成比が、D−乳酸:L−乳酸=100:0〜85:15であるか、またはD−乳酸:L−乳酸=0:100〜15:85であることが好ましく、さらに好ましくは、D−乳酸:L−乳酸=99.5:0.5〜95:5、または、D−乳酸:L−乳酸=0.5:99.5〜5:95である。D−乳酸とL−乳酸との構成比が100:0もしくは0:100である乳酸系重合体は非常に高い結晶性を示し、融点が高く、耐熱性および機械的物性に優れる傾向がある。すなわち、フィルムを延伸したり熱処理したりする際に、樹脂が結晶化して耐熱性及び機械的物性が向上するので好ましい。一方、D−乳酸とL−乳酸とで構成された乳酸系重合体は、柔軟性が付与され、フィルムの成形安定性及び延伸安定性が向上するので好ましい。したがって、得られる反射フィルムの耐熱性と、成形安定性及び延伸安定性とのバランスを勘案すると、本発明に用いられる乳酸系重合体は、D−乳酸とL−乳酸との構成比が、D−乳酸:L−乳酸=99.5:0.5〜95:5、又は、D−乳酸:L−乳酸=0.5:99.5〜5:95であることが、より好ましい。
【0043】
本発明においては、D−乳酸とL−乳酸との共重合比が異なる乳酸系重合体をブレンドしてもよい。この場合には、複数の乳酸系重合体のD−乳酸とL−乳酸との共重合比を平均した値が上記範囲内に入るようにすればよい。D−乳酸とL−乳酸のホモポリマーと、共重合体とをブレンドすることにより、ブリードのし難さと耐熱性の発現とのバランスをとることができる。
【0044】
本発明に用いられる乳酸系重合体は高分子量であることが好ましく、例えば、重量平均分子量が5万以上であることが好ましく、6万以上、40万以下であることが更に好ましく、10万以上、30万以下であることが特に好ましい。乳酸系重合体の重量平均分子量が5万未満であると、得られたフィルムが機械的物性に劣る場合がある。
【0045】
ところで、近年、液晶ディスプレイはパソコン用ディスプレイの他、自動車用カーナビゲーションシステムや車載用小型テレビ等にも使用されるようになり、高温度、高湿度に耐えるものが必要となってきている。そのため、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムには、耐久性を付与する目的で、加水分解防止剤を添加することが好ましい。
【0046】
本発明に好ましく用いられる加水分解防止剤としては、カルボジイミド化合物等が挙げられる。カルボジイミド化合物としては、例えば、下記一般式の基本構造を有するものが好ましいものとして挙げられる。

―(N=C=N−R−)

式中、nは1以上の整数を示し、Rは有機系結合単位を示す。例えば、Rは脂肪族、脂環族、芳香族のいずれかであることができる。また、nは、通常、1〜50の間で適当な整数が選択される。
【0047】
具体的には、例えば、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等、および、これらの単量体が、カルボジイミド化合物として挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、単独で使用しても、あるいは、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0048】
本発明においては、フィルムを構成する脂肪族ポリエステル系樹脂100質量部に対してカルボジイミド化合物を0.1〜3.0質量部添加することが好ましい。カルボジイミド化合物の添加量が0.1質量部以上であれば、得られるフィルムに耐加水分解性の改良効果が十分に発現される。また、カルボジイミド化合物の添加量が3.0質量部以下であれば、得られるフィルムの着色が少なく、高い光反射性が得られる。
【0049】
また、例えば、夏場の炎天下に駐車中の車内では、自動車用カーナビゲーションシステム、車載用小型テレビ等は高温にさらされることになる。また、液晶表示装置が長時間使用されると光源ランプ周辺は高温にさらされることになる。したがって、カーナビゲーションシステム、液晶表示装置等の液晶ディスプレイに使用される反射フィルムには110℃程度の耐熱性が要求される。例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムが120℃の温度下で5分間放置されたときのフィルムの熱収縮率は10%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましい。フィルムの熱収縮率が10%より大きいと、高温で使用すると経時的に収縮を起こすことがあり、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムが鋼板等に積層されている場合には、フィルムのみが変形してしまうことがある。大きな収縮が生じたフィルムは、反射を促す表面が小さくなったり、フィルム内部の空隙が小さくなるので、反射率が低下する。
【0050】
熱収縮を防ぐためにはフィルムの結晶化を完全に進行させることが望ましい。脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、2軸延伸のみで完全に結晶化を進行させることは困難なので、本発明においては、延伸後、熱固定処理を行うことが好ましい。フィルムの結晶化を促進させることによって、フィルムに耐熱性を付与すると共に、耐加水分解性も向上させることができる。
【0051】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、白色顔料、蛍光増白剤、および、その他の添加剤を添加することができる。
【0052】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、該反射フィルムの裏面側に、すなわち、反射使用面とは反対側の面に、金属薄膜層、および保護層とをこの順に有する反射フィルムを形成することもできる。
【0053】
金属薄膜層は、金属を蒸着することにより形成することができ、例えば、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。蒸着金属材料としては、反射率が高い材料であれば特に制限されることなく使用することができるが、一般的には、銀、アルミニウム等が好ましく、これらの中では銀が特に好ましい。
【0054】
また、金属薄膜層は、金属の単層品や積層品、あるいは、金属酸化物の単層品や積層品でも、金属の単層品と金属酸化物の単層品との2層以上の積層体でもよい。金属薄膜層の厚みは、層を形成する材料や層形成法等によっても異なるが、通常は10nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、20nm〜200nmの範囲内であることがさらに好ましい。金属薄膜層の厚みが10nm以上であれば、充分な反射率が得られる。一方、金属薄膜層の厚みが300nm以下であれば、生産効率がよく好ましい。
【0055】
金属薄膜層は、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム上に金属蒸着によって形成してもよいが、予め、合成樹脂フィルム等からなる中間層に金属薄膜層を形成したフィルムを作製しておき、このフィルムを脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムと積層させてもよい。積層のしかたは、作製したフィルムの金属薄膜層と脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムとを、あるいは、作製したフィルムの中間層と脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムとを、単に重ね合わせることにより、または、重ね合わせて部分的もしくは全面的に接着させることにより積層することができる。接着方法としては、各種接着剤を用いて公知の方法により接着する方法、公知の熱接着法等を使用することができる。本発明においては、熱のかからない接着方法、または、210℃以下の温度で熱接着する方法等を採用することが、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム内の空隙が保持され、高い反射率が維持されるので好ましい。
【0056】
このような金属薄膜層を有する場合の層構成を例示すると、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム/(必要に応じて、アンカーコート層)/金属薄膜層/保護層の層構成、あるいは、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム/中間層/(必要に応じて、アンカーコート層)/金属薄膜層/保護層の層構成等が挙げられる。ただし、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは光が照射される側に配置される。また、これらの層の間に、さらに他の層を有していてもよいし、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム、金属薄膜層等がそれぞれ独立に複数から構成されていてもよい。
【0057】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、波長が550nmの光に対する表面の反射率が95%以上であることが好ましく、97%以上であることが更に好ましい。かかる反射率が95%以上であれば、良好な反射特性を示し、液晶ディスプレイ等の画面に充分な明るさを与えることができる。
【0058】
反射フィルムは紫外線に晒された後でも優れた反射率を保持することが好ましい。上述したように、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、ベース樹脂として分子鎖中に芳香環を含まない脂肪族ポリエステル系樹脂を用いるので、紫外線によって反射フィルムが劣化せず、優れた反射性を保持することができる。
【0059】
また、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、入射角,受光角を60°に合わせて測定した光沢度が40%以下であることが好ましく、35%以下であることが更に好ましい。かかる光沢度が40%以下であれば、良好な低反射指向性を示し、面光源内の輝度ばらつき(いわゆる「輝度ムラ」)を小さくすることができる。
【0060】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、埋め立て処分された場合には微生物による分解が可能で、廃棄に伴う種々の問題が生じない。脂肪族ポリエステル系樹脂は、土壌中で、エステル結合が加水分解されて分子量が1,000程度に低下し、引き続き土壌中の微生物等により生分解される。
【0061】
一方、芳香族ポリエステル系樹脂は分子内の結合安定性が高く、エステル結合部の加水分解が起こりにくい。したがって、芳香族ポリエステル系樹脂は、土壌中に埋められても分子量の低下は起こらず、微生物等による生分解も起こらない。その結果、長期にわたって土壌中に残存して、廃棄物埋め立て処理用地の短命化を促進したり、自然の景観や野生動植物の生活環境を損なう等の問題が生じる。
【0062】
以下に、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムの製造方法について一例を挙げて説明するが、下記製造法に何等限定されるものではない。
【0063】
まず、脂肪族ポリエステル系樹脂に、酸化チタン、それよりも平均粒径の大きい微粉状充填剤、滑剤、加水分解防止剤、その他の添加剤等を必要に応じて配合した脂肪族ポリエステル系樹脂組成物Aを作製する。また積層構成の場合には、脂肪族ポリエステル系樹脂に、酸化チタン、加水分解防止剤、その他の添加剤等を必要に応じて配合した脂肪族ポリエステル系樹脂組成物Bを作製する。具体的には、脂肪族ポリエステル系樹脂に酸化チタン等を加え、さらに加水分解防止剤等を必要に応じて加えて、リボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、バンバリーミキサー、1軸または2軸押出機等を用いて、樹脂の融点以上の温度(例えば乳酸系重合体の場合には170℃〜230℃)で混練することにより樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bを得ることができる。または、脂肪族ポリエステル系樹脂、酸化チタン等、さらに加水分解防止剤等を別々のフィーダー等により所定量を添加することにより樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bを得ることができる。あるいは、予め、酸化チタン、それよりも平均粒径の大きい微粉状充填剤、滑剤、加水分解防止剤等を脂肪族ポリエステル系樹脂に高濃度に配合した、いわゆるマスターバッチを作っておき、このマスターバッチと脂肪族ポリエステル系樹脂とを混合して所望の濃度の樹樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bとすることもできる。
【0064】
次に、このようにして得られた樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bを溶融し、フィルム状に形成する。例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂組成物を乾燥した後、押出機に(積層構成の場合には樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bはそれぞれの押出機に)供給し、樹脂の融点以上の温度に加熱して溶融する。あるいは、脂肪族ポリエステル系樹脂組成物を乾燥させずに押出機に供給しても良いが、乾燥させない場合には溶融押出する際に真空ベントを用いることが好ましい。押出温度等の条件は、分解によって分子量が低下すること等を考慮して設定されることが必要であるが、例えば、押出し温度は乳酸系重合体の場合であれば170℃〜230℃の範囲が好ましい。その後、溶融した脂肪族ポリエステル系樹脂組成物をTダイのスリット状の吐出口から押し出し、冷却ロールに密着固化させてキャストシートを形成する。
【0065】
本発明の反射フィルムは、前記樹脂組成物A、または前記樹脂組成物Aおよび前記樹脂組成物Bをを溶融製膜した後、少なくとも1軸方向に1.1倍以上延伸して得ることもできる。延伸することにより、フィルム内部に酸化チタンおよび微粉状充填剤を核とした空隙が形成されて、さらにフィルムの光反射性が高まり好ましい。これは新たに樹脂と空隙の界面、および空隙と酸化チタンおよび該微粉状充填剤との界面が形成され、界面で生じる屈折散乱の効果が増えるためと考えられる。
【0066】
また、本発明の反射フィルムのA層は、酸化チタンとともにそれよりも平均粒径の大きい微粉状充填剤を含有するので、A層の空隙率は、酸化チタンのみを等質量%含有するB層の空隙率よりも高くなる。即ち、反射フィルムの反射使用面の最外層に位置するA層に酸化チタンとそれよりも平均粒径の大きい微粉状充填剤を含有させることにより、フィルムに酸化チタン由来の高い反射性能を付与するとともに、微粉状充填剤由来の粗表面化および高空隙率化による光散乱反射性、つまり低反射指向性を付与することができる。
【0067】
本発明の反射フィルムは、面積倍率として5倍以上に延伸することが好ましく、7倍以上に延伸することが更に好ましい。面積倍率において5倍以上に延伸することにより5%以上の空隙率を実現することができ、7倍以上に延伸することにより20%以上の空隙率を実現することができ、7.5倍以上に延伸することにより、30%以上の空隙率も実現することができる。
【0068】
キャストシートを延伸する際の延伸温度は、樹脂のガラス転移温度(Tg)程度から(Tg+50℃)の範囲内の温度であることが好ましく、例えば乳酸系重合体の場合には50℃以上、90℃以下であることが好ましい。延伸温度がこの範囲であれば、延伸時にフィルムが破断することがなく、また延伸配向が高く、空隙率を大きくできるので、高い反射率を有するフィルムを得ることができる。
【0069】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂フィルムは、例えば、延伸倍率等を適宜選択して延伸することによって、フィルム内部に空隙が形成されるが、これは、延伸時に脂肪族ポリエステル系樹脂と酸化チタンおよび微粉状充填剤との延伸挙動が異なるからである。つまり脂肪族ポリエステル系樹脂に適した延伸温度で延伸を行えば、マトリックスとなる脂肪族ポリエステル系樹脂は延伸されるが、酸化チタンおよび微粉状充填剤はそのままの状態でとどまろうとするため、脂肪族ポリエステル系樹脂と酸化チタンおよび微粉状充填剤との界面が剥離して、空隙が形成される。
【0070】
本発明の反射フィルムは、さらには、2軸方向に延伸されていることが好ましい。2軸延伸することにより、空隙率は高くなり、フィルムの光反射性を高めることができるからである。また、フィルムを1軸延伸したのみでは、形成される空隙は一方向に伸びた繊維状形態にしかならないが、2軸延伸することによって、その空隙は縦横両方向に伸ばされたものとなり円盤状形態になる。すなわち、2軸延伸することによって、樹脂と酸化チタンおよび微粉状充填剤との界面の剥離面積が増大し、フィルムの白化が進行し、その結果、フィルムの光反射性を高めることができる。さらにまた、2軸延伸するとフィルムの収縮方向に異方性がなくなるので、反射フィルムに耐熱性を向上させることができ、また、フィルムの機械的強度を増加させることもできる。
【0071】
2軸延伸の延伸順序は特に制限されることはなく、例えば、同時2軸延伸でも逐次延伸でも構わない。延伸設備を用いて、溶融製膜した後、ロール延伸によってMDに延伸した後、テンター延伸によってTDに延伸しても良いし、チューブラー延伸等によって2軸延伸を行ってもよい。
【0072】
本発明においては、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムに耐熱性および寸法安定性を付与するために、延伸後に熱固定を行うことが好ましい。フィルムを熱固定するための処理温度は90〜160℃であることが好ましく、110〜140℃であることが更に好ましい。熱固定に要する処理時間は、好ましくは1秒〜5分である。また、延伸設備等については特に限定はないが、延伸後に熱固定処理を行うことができるテンター延伸を行うことが好ましい
【0073】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムの厚みは、特に限定されないが、通常は30μm〜500μmであり、実用面における取り扱い性を考慮すると50μm〜500μm程度の範囲内であることが好ましい。A層およびB層からなる積層構成の場合には、光が入射する反射使用面側の最外層に位置するA層の厚みは、通常5〜200μmであり、好ましくは10〜100μmであることが好ましい。かかる厚みの反射フィルムを用いれば、例えばノート型パソコンや携帯電話等の小型、薄型の液晶ディスプレイ等にも使用することができる。
【0074】
また、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムを用いて液晶ディスプレイ等に用いられる反射板を形成することができる。例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムを金属板もしくは樹脂板に被覆して反射板を形成することができる。この反射板は、液晶表示装置、照明器具、照明看板等に用いられる反射板として有用である。以下に、このような反射板の製造方法について一例を挙げて説明する。
【0075】
反射フィルムを金属板もしくは樹脂板に被覆する方法としては、接着剤を使用する方法、接着剤を使用せずに熱融着する方法、接着性シートを介して接着する方法、押出しコーティングする方法等があり、特に限定されるものではない。例えば、金属板もしくは樹脂板の反射フィルムを貼り合わせる側の面に、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系等の接着剤を塗布し、反射フィルムを貼り合わせることができる。この方法においては、リバースロールコーター、キスロールコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用し、反射フィルムを貼り合わせる金属板等の表面に乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度となるように接着剤を塗布する。次いで、赤外線ヒーター及び熱風加熱炉により塗布面の乾燥及び加熱を行い、板の表面を所定の温度に保持しつつ、直にロールラミネーターを用いて、反射フィルムを被覆、冷却することにより、反射板を得ることできる。この場合、金属板等の表面を210℃以下に保持すると、反射板の光反射性を高く維持できる。なお、金属板等の表面温度は、160℃以上であることが好ましい。
【実施例】
【0076】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、実施例に示す測定値および評価は以下に示すようにして行った。ここで、フィルムの引取り(流れ)方向をMD、その直交方向をTDと表示する。
【0077】
(測定および評価方法)
(1)屈折率
樹脂の屈折率は、JIS K−7142のA法に基づいて測定した。
【0078】
(2)酸化チタン中のバナジウム含有量(ppm)
酸化チタンを、マイクロウェーブ試料分解装置内でフッ化水素酸により分解し、得られた溶液について、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析を行った。
【0079】
(3)平均粒径
(A)平均粒径(シリカを除く)
(株)島津製作所製の型式「SS−100」の粉体比表面測定器(透過法)を用い、断面積2cm2、高さ1cmの試料筒に試料3gを充填して、500mm水柱で20ccの空気透過の時間より算出した。
(B)シリカの平均粒径
レーザー回折式粒度分布測定装置(「SALD−2000」、(株)島津製作所製)を用いて測定した。
【0080】
(4)空隙率(%)
延伸前のフィルムの密度(「未延伸フィルム密度」と表記する)と、延伸後のフィルムの密度(「延伸フィルム密度」と表記する)を測定し、下記式に代入してフィルムの空隙率を求めた。

空隙率(%)=
{(未延伸フィルム密度−延伸フィルム密度)/未延伸フィルム密度}×100
【0081】
(5)反射率(%)
分光光度計(「U―4000」、(株)日立製作所製)に積分球を取付け、波長550nmの光に対する反射率を測定した。
なお測定前に、アルミナ白板の反射率が100%になるように光度計を設定した。
【0082】
(6)光沢度
JIS Z−8741に準じて、入射角、受光角を60°に合わせて、フィルムの光沢度を測定した。測定には、「デジタル変角光沢計 UGV−5DP型」(スガ試験機社製)を使用した。
【0083】
(7)メヤニ・ブツ防止性
反射フィルム生産時に、口金リップ部のメヤニ付着状態とフィルム表面のブツ発生状態を観察して、下記評価基準に基づいてメヤニ、ブツ防止性の評価を行った。ただし、記号「◎」、「○」、および「△」は実用レベル以上である。
評価基準:
◎ 生産開始9時間後も、リップ部にメヤニはなく、フィルム表面にもブツがない。
○ 生産開始6時間後も、リップ部にメヤニはなく、フィルム表面にもブツがない。
△ 生産開始6時間後に、リップの一部にメヤニが見られるが、フィルム表面にはまだブツは見られない。
× 生産開始3時間後で、リップ部全幅に亘ってメヤニが見られ、フィルム表面に滴状のブツが見られる。
【0084】
(8)耐加水分解性
温度60℃、相対湿度95%RHに保持した恒温恒湿槽内で、フィルムを1000時間放置した後、フィルムを構成する脂肪族ポリエステル系樹脂の重量平均分子量を測定した。測定値を下記式に代入し、分子量保持率(%)を求め、下記評価基準に基づいて耐加水分解性の評価を行った。ただし、記号「○」および「△」は実用レベル以上である。

分子量保持率(%)=(放置後重量平均分子量/放置前重量平均分子量)×100

評価基準:
○ 分子量保持率が90%以上の場合
△ 分子量保持率が60%以上、90%未満の場合
× 分子量保持率が60%未満の場合
【0085】
(9)黄変防止性
サンシャインウェザーメーター試験器(水の間欠噴霧なし)内で、フィルムに紫外線を1,000時間照射する。その後、フィルムの表面を肉眼で観察し、視覚判断によりフィルム表面の色目が白色であるものを「白」、黄味がかかっているものを「黄」と表示した。
また、紫外線照射後のフィルムについても、上記(5)の測定方法にしたがって、反射率(%)を測定した。
【0086】
(10)反射板加工性
直角曲げ(R=0mm)、スクリュー密着曲げ、井型エリクセン(5mm)の3項目について、下記評価基準に基づいて評価を行った。
評価基準:
○ フィルム剥がれがない
× フィルム剥がれがある。
【0087】
(11)反射板反射率
上記(5)の測定方法にしたがって、反射率(%)を測定した。
【0088】
[実施例1]
(樹脂組成物Aの作製)
重量平均分子量20万の乳酸系重合体(NW4032D:カーギルダウポリマー社製/D体含有量1.5%)のペレット、平均粒径が0.25μmの酸化チタン(タイペークPF−740;石原産業社製)、平均粒径が0.7μmの硫酸バリウム(B−55;堺化学工業社製)および所定の滑剤を48.3質量%/37.5質量%/12.5質量%/1.7質量%の割合で混合して混合物を形成した。この混合物100質量部に対して、加水分解防止剤(ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド)を2.5質量部添加して混合した後、二軸押出機を用いてペレット化して、いわゆるマスターバッチを作製した。このマスターバッチと乳酸系重合体とを60質量%/40質量%の割合で混合し、樹脂組成物Aを作製した。その後、樹脂組成物Aを220℃に加熱された押出機に供給した。
(フィルムの作製)
押出機から、溶融状態の樹脂組成物Aを、Tダイを用いてシート状に押出し、冷却固化してフィルムを形成した。得られたフィルムを、温度65℃で、MDに2.5倍、TDに2.8倍の二軸に延伸した後、140℃で熱処理し、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、空隙率、光沢度、メヤニ・ブツ防止性、紫外線照射前の反射率と紫外線照射後の反射率、黄変防止性、耐加水分解性、反射板加工性、反射板反射率の測定および評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。
【0089】
[実施例2]
(B層用樹脂組成物Bの作製)
重量平均分子量20万の乳酸系重合体(NW4032D:カーギルダウポリマー社製/D体含有量1.5%)のペレットと平均粒径が0.25μmの酸化チタン(タイペークPF−740;石原産業社製)を50質量%/50質量%の割合で混合して混合物を形成した。この混合物100質量部に対して、加水分解防止剤(ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド)を2.5質量部添加して混合した後、二軸押出機を用いてペレット化して、いわゆるマスターバッチを作製した。このマスターバッチと乳酸系重合体とを60質量%/40質量%の割合で混合し、樹脂組成物Bを作製した。その後、樹脂組成物Bを220℃に加熱された押出機Bに供給した。
(A層用樹脂組成物Aの作製)
実施例1と同様に樹脂組成物Aを作製し、樹脂組成物Aを220℃に加熱された押出機Aに供給した。
(フィルムの作製)
押出機B及び押出機Aから、溶融状態の樹脂組成物B及び溶融状態の樹脂組成物Aのそれぞれを、Tダイを用いてA層/B層/A層の3層構成となるようにシート状に押出し、冷却固化してフィルムを形成した。得られたフィルムを、温度65℃で、MDに2.5倍、TDに2.8倍の二軸に延伸した後、140℃で熱処理し、厚さ250μm(B層:210μm,A層:20μm)の反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。
【0090】
[実施例3]
実施例2において、平均粒径が0.7μmの硫酸バリウム(B−55;堺化学工業社製)の替わりに、平均粒径が1.1μmの炭酸カルシウム(μ−パウダー3S;備北粉加工業社製)を用いた以外は、実施例2と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。
【0091】
[実施例4]
実施例2において、樹脂組成物Aを次のとおり作製した以外は、実施例2と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。
(A層用樹脂組成物Aの作製)
重量平均分子量20万の乳酸系重合体(NW4032D:カーギルダウポリマー社製/D体含有量1.5%)のペレット、平均粒径が0.25μmの酸化チタン(タイペークPF−740;石原産業社製)、平均粒径が4μmのシリカ(サイロホービック702;富士シリシア化学社製、アルキル変性シリコーンによる表面被覆処理あり)、および所定の滑剤を54.3質量%/37.5質量%/6.5質量%/1.7質量%の割合で混合して混合物を形成した。この混合物100質量部に対して、加水分解防止剤(ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド)を2.5質量部添加して混合した後、二軸押出機を用いてペレット化して、いわゆるマスターバッチを作製した。このマスターバッチと乳酸系重合体とを60質量%/40質量%の割合で混合し、樹脂組成物Aを作製した。
【0092】
[実施例5]
実施例4において、平均粒径が4μmのシリカ(サイロホービック702;富士シリシア化学社製)の替わりに、平均粒径が8μmのシリカ(サイロホービック4004;富士シリシア化学社製、アルキル変性シリコーンによる表面被覆処理あり)を用いた以外は、実施例2と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。
【0093】
[実施例6]
実施例2において、表1に示すとおり滑剤の種類を変更した以外は、実施例2と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。
【0094】
[実施例7]
実施例2において、表1に示すとおり滑剤の種類を変更した以外は、実施例2と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。
【0095】
[実施例8]
実施例2において、表1に示すとおり滑剤の種類を変更した以外は、実施例2と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。
【0096】
[比較例1]
実施例2のA層用およびB層用樹脂組成物の作製において、乳酸系重合体を用いる替わりにポリエチレンテレフタレートのペレットを用いて、さらに加水分解防止剤の添加量は0質量部とした。またA層用樹脂組成物Aの作製において、ポリエチレンテレフタレート、酸化チタン、硫酸バリウムおよび所定の滑剤を50質量%/50質量%/0質量%/0質量%の割合で混合した。さらにフィルムの製膜において、押出機の加熱温度を280℃、延伸温度を90℃とした以外は、実施例2と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。
【0097】
[比較例2]
実施例2において、樹脂組成物Aの替わりに、樹脂組成物Cを押出機Aに供給した以外は、実施例2と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。ここで、樹脂組成物Cの作製は次のとおりとした。
(樹脂組成物Cの作製)
乳酸系重合体、酸化チタン、硫酸バリウムおよび所定の滑剤を50質量%/50質量%/0質量%/0質量%の割合で混合して混合物を形成した。この混合物100質量部に対して、加水分解防止剤(ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド)を2.5質量部添加して混合した後、二軸押出機を用いてペレット化して、いわゆるマスターバッチを作製した。このマスターバッチと乳酸系重合体とを60質量%/40質量%の割合で混合し、樹脂組成物Cを作製した。
【0098】
[比較例3]
実施例1の樹脂組成物Aの作製において、乳酸系重合体、酸化チタン、硫酸バリウムおよび所定の滑剤を48.3質量%/37.5質量%/12.5質量%/1.7質量%の割合で混合する替わりに、50質量%/37.5質量%/12.5質量%/0質量%の割合で混合した以外は、実施例1と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。
【0099】
[比較例4]
実施例2のA層用樹脂組成物Aの作製において、乳酸系重合体、酸化チタン、硫酸バリウムおよび所定の滑剤を48.3質量%/37.5質量%/12.5質量%/1.7質量%の割合で混合する替わりに、50質量%/37.5質量%/12.5質量%/0質量%の割合で混合した以外は、実施例2と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。
【0100】
[実施例9]
次の手順で、実施例2で得られた反射フィルムを亜鉛メッキ鋼板(厚み0.45mm)に被覆して反射板を得た。反射フィルムを貼り合わせる鋼板表面に、市販されているポリエステル系接着剤を、乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度になるように塗布した。次いで赤外線ヒーターおよび熱風加熱炉により塗布面の乾燥および加熱を行い、鋼板の表面温度を180℃に保持しつつ、直ちにロールラミネーターを用いて、反射フィルムを被覆、冷却することにより、反射板を得た。得られた反射板について加工性、反射率の測定及び評価を行った。その結果を表4に示す。
【0101】
[実施例10]
実施例9において、鋼板の表面温度を180℃に保持する替わりに、220℃に保持した以外は、実施例9と同様にして、反射板を得た。得られた反射板について、実施例9と同様の測定および評価を行った。その結果を表4に示す。
【0102】
【表1】


酸化チタン種類
a:タイペークPF740;石原産業社製ルチル型結晶形酸化チタン

不活性無機酸化物種類
A:アルミナ
B:シリカ
C:ジルコニア
【0103】
【表2】


微粉状充填剤種類
α:B−55;堺化学工業社製硫酸バリウム
β:μ−パウダー3S;備北粉加工業社製炭酸カルシウム
γ:サイロホービック702;富士シリシア化学社製シリカ(アルキル変性シリコーンによる表面被覆処理あり)
δ:サイロホービック4004;富士シリシア化学社製シリカ(アルキル変性シリコーンによる表面被覆処理あり)

滑剤
ア:メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/ブチルメタクリレート共重合系滑剤
イ:メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/スチレン共重合系滑剤
ウ:ポリエチレンワックス系滑剤
エ:エステル(ステアリルステアレート)系滑剤
【0104】
【表3】

【0105】
【表4】

【0106】
表1〜表3から明らかなように、実施例1〜8の本発明の反射フィルムは、反射率が96.5%以上で、高い光反射性を有しているとともに、光沢度が40%以下で低反射指向性を有していることがわかった。また、メヤニ・ブツ防止性が良好で、外観の良い反射フィルムを安定して生産できることがわかった。さらに、紫外線照射試験後の当該フィルムの反射率は95%以上で、黄変防止性にも優れていた。なお、耐加水分解性において、実用レベル以上で優れた結果が得られることが分かった。また、実施例1〜7の反射フィルムと、実施例8の反射フィルムを比べると、メヤニ・ブツ防止性のみならず、反射率の点において、実施例1〜7の反射フィルムの方が性能が優れていることがわかった。この理由は、実施例1〜7で用いた、いわゆる外部滑剤の方が、実施例8で用いた、いわゆる内部滑剤に比べて、延伸の際の空隙形成の点で有利であるためと推測される。
【0107】
一方、比較例1の反射フィルムは、反射率が94%未満になってしまい、高い光反射性の維持という点で、実施例1〜8の反射フィルムに劣ることがわかった。また、比較例2の反射フィルムは、光沢度が40%を上回り、低反射指向性の付与という点で、実施例1〜8の反射フィルムに劣ることがわかった。さらに、比較例3、4の反射フィルムは、メヤニ・ブツ防止性が低く、外観および生産安定性の点で実施例1〜8の反射フィルムに劣ることがわかった。
【0108】
また、表4から明らかなように、実施例9の反射板は、加工に必要な密着力と高い光反射性が維持されていることがわかった。実施例9と実施例10を比べると、密着力はいずれも高いが、実施例9の反射板は、光反射性の維持という点でも、実施例10の反射板より優れていることがわかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステル系樹脂、酸化チタン、該酸化チタンの平均粒径よりも大きい平均粒径を有する微粉状充填剤、および滑剤を含有する樹脂組成物Aから形成されることを特徴とする脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項2】
脂肪族ポリエステル系樹脂および酸化チタンを含有する樹脂組成物Bから形成されるB層の少なくとも一方の面に、前記樹脂組成物Aから形成されるA層を積層してなることを特徴とする請求項1記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項3】
前記滑剤がアクリル系滑剤、炭化水素系滑剤から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1または2に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項4】
前記滑剤の含有量が、前記樹脂組成物A中、0.05質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項5】
前記酸化チタン中のバナジウム含有量が5ppm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系反射フィルム。
【請求項6】
前記酸化チタンの表面が、シリカ、アルミナ、および、ジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種類の不活性無機酸化物で被覆されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系反射フィルム。
【請求項7】
前記A層における酸化チタンの含有量が、前記樹脂組成物A中、10質量%以上、59.5質量%以下であり、前記微粒状充填剤の含有量が、前記樹脂組成物A中、0.5質量%以上、50質量%以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項8】
前記B層における酸化チタンの含有量が、前記樹脂組成物B中、10質量%以上、60質量%以下であることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項9】
前記微粉状充填剤が、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、および、シリカからなる群から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項10】
前記シリカの表面がジメチルシリコーン、アルキル変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、シランカップリング剤、およびシラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類で被覆されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項11】
前記脂肪族ポリエステル樹脂の屈折率が1.52未満であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系反射フィルム。
【請求項12】
前記脂肪族ポリエステル樹脂が乳酸系重合体であることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系反射フィルム。
【請求項13】
フィルム内部の空隙率が50%以下となるように空隙を有することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項記載の反射フィルム。
【請求項14】
前記A層の空隙率がB層の空隙率よりも高いことを特徴とする請求項2から13のいずれか1項記載の反射フィルム。
【請求項15】
前記樹脂組成物Aを溶融製膜したフィルム、または前記樹脂組成物Aおよび前記樹脂組成物Bを溶融製膜したフィルムを、少なくとも1軸方向に1.1倍以上延伸したフィルムであることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項記載の反射フィルム。
【請求項16】
前記A層側から測定したときの光沢度が40%以下であることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系反射フィルムを備えていることを特徴とする反射板。



【公開番号】特開2006−145568(P2006−145568A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331426(P2004−331426)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】