説明

脱塩装置からイオン性化学種を除去する方法

脱塩装置からイオン性化学種を除去する方法は、(a)脱塩装置と沈殿ユニットを含む閉鎖ループ内に洗浄液流を循環させ、この洗浄液流は少なくとも5cm/秒の線速度で脱塩装置を通って流れ、脱塩装置を通過後より多くの塩分を含むようになり、(b)沈殿ユニット内での沈殿により洗浄液流から硫酸カルシウムの一部分を除去して、約1.0〜約3.0の範囲の、脱塩装置に入る洗浄液流中の硫酸カルシウムの過飽和度を得ることを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、脱塩装置からイオン性化学種を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球の表面上の水の1%未満が家庭向け又は産業向けの用途に直接消費するのに適している。消費可能な天然水の水源が限られているため、海水又は塩分を含んだ水の脱イオン化が新鮮な水を生成するための1つの方法である。さらに、他の流体も使用前に脱イオン化されることがあり、例えば、乳清は多くのプラントにおいて脱イオン化技術を用いて脱灰される。
【0003】
現在利用可能な技術を使用した液体の脱イオン化では、通常、2種類の生成物流、すなわち、高めの濃度のイオンを有する廃棄物流と、低めの濃度のイオンを有するか又は場合によってはイオンを含まない回収(再生)流とが生成する。廃棄物流は通例廃棄物として廃棄され、回収流は消費用に貯蔵される。
【0004】
消費可能性が低い液体はある種の供給流から(廃棄物流として)廃棄するのが望ましいことが多い。しかし、現在利用可能な脱塩(脱イオン化)技術では、一定の供給流からより多く回収される消費可能な液体は、通常、極めて高い濃度のイオンを有する供給流に脱塩系を曝露することを意味する。
【0005】
高濃度のイオンは脱塩系内でスケーリング(スケール形成)を起こし得る。例えば、塩分を含んだ液体中のやや難溶性の塩、例えば硫酸カルシウム(CaSO4)は、脱塩系でスケールを形成する(沈殿又は結晶化など)ことがあり、脱塩系の性能に影響しかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第3338194号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
消費可能な液体の高い回収率を有し、脱塩系におけるやや難溶性の塩のスケーリングを回避する脱塩のための方法があれば望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載されている実施形態に従って、脱塩装置からイオン性化学種を除去する方法が提供され、この方法は、(a)脱塩装置と沈殿ユニットを含む閉鎖ループ内に洗浄液流を循環させ、この洗浄液流は少なくとも5cm/秒の線速度で脱塩装置を通って流れ、脱塩装置を通過後より多くの塩分を含むようになり、(b)沈殿ユニット内での沈殿により硫酸カルシウムの一部分を洗浄液流から除去して、約1.0〜約3.0の範囲の、脱塩装置に入る洗浄液流内の硫酸カルシウムの過飽和度を得ることを含んでいる。
【0009】
本明細書に記載されている実施形態に従って、スーパーキャパシタ脱塩装置から硫酸カルシウムを除去する方法が提供され、この方法は、(a)スーパーキャパシタ脱塩装置と沈殿ユニットを含む閉鎖ループ内に洗浄液流を循環させ、この洗浄液流は少なくとも5cm/秒の線速度でスーパーキャパシタ脱塩装置を通って流れ、スーパーキャパシタ脱塩装置の通過後より高い濃度の硫酸カルシウムを有し、(b)沈殿ユニット内で硫酸カルシウムの一部分を除去して、約1.0〜約2.0の範囲の、スーパーキャパシタ脱塩装置に入る洗浄液流内の硫酸カルシウムの過飽和度を得ることを含んでいる。
【0010】
本明細書に記載されている実施形態に従って、電気透析脱塩装置から硫酸カルシウムを除去する方法が提供され、この方法は、(a)電気透析脱塩装置と沈殿ユニットを含む閉鎖ループ内に洗浄液流を循環させ、この洗浄液流は少なくとも5cm/秒の線速度で電気透析脱塩装置を通って流れ、電気透析脱塩装置を通過後より高い濃度の硫酸カルシウムを有し、(b)沈殿ユニット内で硫酸カルシウムの一部分を除去して、約1.0〜約2.0の範囲の、電気透析脱塩装置に入る洗浄液流内の硫酸カルシウムの過飽和度を得ることを含んでいる。
【0011】
本発明の上記及びその他の特徴、局面、及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことでよりよく理解されるようになるであろう。添付の図面を通して、類似の数字は実質的に同じ部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、脱塩装置がスーパーキャパシタ脱塩装置である場合の概略的なフローチャートを示す。
【図2】図2は、脱塩装置が電気透析(ED)脱塩装置である場合の概略的なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態は液体の脱イオン化の分野に関する。本発明の実施形態は、1種以上の溶解したイオン性化合物、例えば硫酸カルシウムを含む塩分含有液体からイオン性化学種を除去する方法に関する。
【0014】
本明細書に記載されているイオン性化学種除去方法の実施形態は、液体からイオン性化学種が除去されるいかなる適用分野でも利用し得るが、例示の目的のみで水の精製(浄水)方法、例えば脱塩方法に関してイオン性化学種除去方法を記載する。
【0015】
本明細書及び特許請求の範囲を通じて使用される概略の言葉は、関連する基本的な機能に変化を生じることなく変化することが許容されるあらゆる量的な表示を修飾するために適用され得る。従って、「約」又は「実質的に」のような用語により修飾された値は明示された正確な値に限定されない。場合によって、概略の言葉はその値を測定するための機器の精度に対応し得る。
【0016】
本明細書に記載されている実施形態に従って、(a)脱塩装置と沈殿ユニットを含む閉鎖ループ内に洗浄液流を循環させ、この洗浄液流は少なくとも5cm/秒の線速度で脱塩装置を通って流れ、脱塩装置を通過後より多くの塩分を含むようになり、(b)沈殿ユニット内での沈殿により硫酸カルシウムの一部分を洗浄液流から除去して、約1.0〜約3.0の範囲の、脱塩装置に入る洗浄液流内の硫酸カルシウムの過飽和度を得ることを含む、イオン性化学種除去方法が提供される。
【0017】
本明細書に記載されている実施形態に従って、スーパーキャパシタ脱塩装置から硫酸カルシウムを除去する方法が提供され、この方法は、(a)スーパーキャパシタ脱塩装置と沈殿ユニットを含む閉鎖ループ内に洗浄液流を循環させ、この洗浄液流は少なくとも5cm/秒の線速度でスーパーキャパシタ脱塩装置を通って流れ、スーパーキャパシタ脱塩装置を通過後より高い濃度の硫酸カルシウムを有し、(b)沈殿ユニット内で硫酸カルシウムの一部分を除去して、約1.0〜約2.0の範囲の、スーパーキャパシタ脱塩装置に入る洗浄液流内の硫酸カルシウムの過飽和度を得ることを含んでいる。
【0018】
本明細書に記載されている実施形態に従って、電気透析脱塩装置から硫酸カルシウムを除去する方法が提供され、この方法は、(a)電気透析脱塩装置と沈殿ユニットを含む閉鎖ループ内に洗浄液流を循環させ、この洗浄液流は少なくとも5cm/秒の線速度で電気透析脱塩装置を通って流れ、電気透析脱塩装置を通過後より高い濃度の硫酸カルシウムを有し、(b)沈殿ユニット内で硫酸カルシウムの一部分を除去して、約1.0〜約2.0の範囲の、電気透析脱塩装置に入る洗浄液流内の硫酸カルシウムの過飽和度を得ることを含んでいる。
【0019】
本明細書に記載されているイオン性化学種除去方法のための脱塩装置は、硫酸カルシウムを含む液体を処理するために電気化学的脱塩で使用するのに適している限り、いかなる種類又は形状であってもよい。本発明の幾つかの局面によると、脱塩装置は、例えば、電気透析(ED)脱塩装置又はキャパシタ脱塩装置であり得る。
【0020】
代表的なEDスタックは、複数の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を含み、これらが2つの隣接する膜毎に1つのスペーサーを間に挟んで交互に配置されており、かつ2つの端末に2つの電極を含んでいる。これらのイオン交換膜とスペーサーは複数のED流路を形成している。
【0021】
EDスタックには、通例二組の流路、すなわち、流路内を流れる流れ、すなわちそれぞれ供給流と洗浄液流に応じてスタック内に交互に現れる希薄流路と濃厚流路がある。作動中、希薄流路内の供給流のイオンは部分的に隣接する濃厚流路に移行して、供給流をこの供給流より少ない塩分を含む回収流に変換する。対照的に、濃厚流路内の洗浄液流は、隣接する希薄流路から移行したイオンを含有し、より多くの塩分を含むようになる。電気透析逆転スタックを使用する場合には、EDスタックの電極の極性の逆転の際に、希薄流路及び濃厚流路並びにその中を流れる対応する流れも逆転し、従ってイオンの移行方向も逆転する。
【0022】
幾つかの実施形態において、脱塩装置はキャパシタ脱塩装置、例えば、スーパーキャパシタ脱塩セルのスタックを含むスーパーキャパシタ脱塩装置であり得る。スーパーキャパシタは、一般的なキャパシタと比較したとき相対的により高いエネルギー密度を有する電気化学キャパシタである。本明細書で使用する場合、スーパーキャパシタとは、ウルトラキャパシタのような他の高性能キャパシタを包含する。キャパシタは、一対の近接して配置された導体(「プレート」といわれる)間の電場内にエネルギーを貯蔵することができる電気ユニットである。キャパシタに電圧をかけると、各プレート上に等しい大きさで反対の極性の電荷が蓄積される。
【0023】
1つの代表的なスーパーキャパシタ脱塩セルは第1及び第2の電極とスペーサーとからなり、第1の電極は、第1の導電性材料からなっており、セルの充填モードの作動時にイオンを吸着し得、かつセルの放出モードの作動時にイオンを脱着し得、第2の電極は、第2の導電性材料からなっており、セルの充填モードの作動時にイオンを吸着し得、かつセルの放出モードの作動時にイオンを脱着し得、スペーサーは、第1と第2の電極の間に配置され、第1と第2の電極間を流れる液体のための流路を提供する。第1と第2の電極は、より良好な塩除去効率のために、電極の表面上でイオン交換膜又はイオン交換材料のコーティング層と共に使用され得る。
【0024】
充填モードの作動の際、供給流はスーパーキャパシタ脱塩装置内でイオンを失うことにより回収流に変換される。放出モードの作動の際、洗浄液流は、スーパーキャパシタ脱塩装置から脱着したイオンを担持し、より多くの塩分を含むようになる。
【0025】
本明細書で使用する場合、水回収率とは、回収流の平均の体積流量の、供給流の平均の体積流量に対する比を百分率として表したものである。本開示の目的から、水回収率は、単に、所与のサイクルにおける、脱塩された回収流の体積の、供給流の体積に対する比である。高回収率プロセスにおいて、回収流の平均流量は、供給流の平均流量の約70〜約99.5%である。さらに好ましくは、回収流の平均流量は、供給流の平均流量の約80〜約99、又は約90〜約99、又は約95〜約99%である。
【0026】
本発明の幾つかの局面に従って、供給流は、脱塩装置に入る前に懸濁したコロイド状粒子、有機体、又は有機物を除去する前処理プロセスを用いて前処理し得る。この前処理プロセスはカートリッジろ過、マルチメディアろ過(MMF)、精密ろ過(MF)、限外ろ過(UF)、又はこれらの任意の組合せのような粒子除去プロセスであり得る。また、前処理プロセスは、膜生物反応器(MBR)、化学的酸化ユニット、電気化学的酸化ユニット、又はその他供給流から有機物質を除去することができるあらゆる系を使用して供給流中に存在する有機物質を除去するのにも役立ち得る。石灰軟化、pH調節、脱炭酸、脱油などの他の前処理プロセスを使用してもよい。もちろん、この前処理プロセスは、供給流が粒子、有機体又は有機物質を殆ど又は全く含有しないときには省略してもよい。
【0027】
供給流は、他の溶解したイオン性化学種の中でも、やや難溶性の硫酸カルシウムを始めとする1種以上の溶解したイオン性無機塩を含む。洗浄液流が脱塩装置(電気透析又はスーパーキャパシタ)内を流れる間にやや難溶性の塩、例えば硫酸カルシウムが脱塩装置内でスケーリングを起こすのを回避するために、洗浄液流を、脱塩装置と沈殿ユニットを含む閉鎖ループ内に循環させる。本明細書を通じて使用する場合、スケーリングとは、塩又は溶質を含有する液体と接触する表面上に、他の場合には溶解している塩又は溶質の析出物及び/又は結晶が付着することをいう。本発明の方法は、やや難溶性の塩の析出が沈殿ユニットに限定されるように、脱塩装置内の洗浄液流の流速と、脱塩装置に入る洗浄液流内のやや難溶性の塩(硫酸カルシウム)の過飽和度に対する制御とのバランスのとれた組合せを提供する。
【0028】
本発明の幾つかの局面によると、脱塩装置内の洗浄液流の線速度は、少なくとも約5cm/秒、又は好ましくは約5cm/秒〜約100cm/秒、又はさらに好ましくは約5cm/秒〜約50cm/秒とし、沈殿ユニットに入る洗浄液流内の硫酸カルシウムの過飽和度は、約1.0〜約3.0、又は好ましくは約1.0〜約2.0、又はさらに好ましくは約1.0〜約1.5の範囲として、脱塩装置内での硫酸カルシウムのスケーリングを回避する。
【0029】
本明細書で使用する場合、線速度は、流体体積流量(体積/単位時間)を脱塩装置内の流路の断面積で割った値と定義される。
【0030】
過飽和度とは、本明細書で使用する場合、ある溶液中に存在するある溶質の濃度の、一定の温度、圧力、及び溶液中に存在するその他の化学種の濃度においてその溶質で飽和した溶液中のその溶質の濃度に対する比をいう。例えば、25℃で、脱イオン水に対するCaSO4の溶解度は約2052ppmである。4104ppmのCaSO4を含有する脱イオン水溶液は25℃で2.0の過飽和度を有する。5.13wt%のNaCl溶液の場合、25℃で、CaSO4の溶解度は約2981ppm CaSO4である。4104ppmのCaSO4を含有する5.13wt%のNaCl溶液は25℃で1.37の過飽和度を有する。溶液中のある塩の過飽和度が1に等しいとき溶液はその塩で飽和しており、過飽和度が1より大きいときは過飽和している。1より大きい過飽和度は、通常、その塩がその溶液から析出及び/又は結晶化する傾向があることを意味する。過飽和度が高くなればなるほど、析出/結晶化傾向が高くなる。
【0031】
スケーリング防止剤のような可溶化添加剤は、液体におけるイオン性化学種の析出/結晶化を低減し得る。ときには、スケーリング防止剤をある種の脱塩装置内で使用して、析出/結晶化を防止することによってより高い水回収率を達成することがある。例えば、スケーリング防止剤がない場合、洗浄液流内のCaSO4の最大の安全な過飽和度は通常条件下のEDスタックで約1.5である。一定量のスケーリング防止剤(例えば、10ppmのHypersperse MDC706、General Electric Company,New York,US)を洗浄液流に添加すると、作動過飽和度は2.4まで、さらにはそれ以上に増大し得る。
【0032】
本発明の幾つかの局面によると、結晶化/析出防止の代わりに、沈殿ユニット内における結晶化/析出の増強が望ましい。従って、本明細書に記載されている実施形態は、活性なスケーリング防止剤がないか又は少ない場合の作動に適用され、過飽和度及び線速度の実用的な限界は、スケーリング防止剤がないか、スケーリング防止剤の用量が低いか、又は本発明において関連する基本的な機能を変化させない失活したスケーリング防止剤を使用する場合に対応する。
【0033】
洗浄液流において、この液体は、液体中に飽和又は過飽和している塩、例えば硫酸カルシウムの他に、飽和していても過飽和していても、又は飽和若しくは過飽和していなくてもよい他の塩を含有していてもいなくてもよい。(スーパーキャパシタ又は電気透析反転)脱塩装置を出て行く洗浄液流中の硫酸カルシウムの過飽和度(又は濃度)は、(沈殿ユニットから)脱塩装置に入る洗浄液流中の硫酸カルシウムの過飽和度(又は濃度)より高い。この理由は、幾らかの硫酸カルシウム、並びに他のより溶け易いイオンが脱塩装置から洗浄液流中に移動するからである。
【0034】
硫酸カルシウムの過飽和度(濃度)は、沈殿ユニット内で硫酸カルシウムが固体として溶液から析出するとき、沈殿ユニット内で低下する。沈殿ユニット内の液体滞留時間を用いて、析出を制御し、固体の生成を沈殿ユニットに限定することができる。すなわち、沈殿ユニット内の洗浄液流の滞留時間が長いほど、沈殿ユニット内での析出/結晶化が多くなり、脱塩装置に入る洗浄液流の過飽和度(又は濃度)は低くなり、脱塩装置内でのスケーリングの可能性が低くなる。
【0035】
本明細書で使用する場合、沈殿ユニット内の洗浄液流の滞留時間とは、一塊りの洗浄液流が第2の作動モード中沈殿ユニットの内部に留まる平均の時間をいう。簡単にいうと、沈殿ユニット内の洗浄液流の滞留時間は、沈殿ユニット内の液体体積を、沈殿ユニットを通る洗浄液流の体積流量で割ったものである。
【0036】
通例、洗浄液流体は、洗浄液流体が沈殿ユニットに入るのと同じ体積流量で脱塩装置に入る。或いは、第2のポンプを利用し、沈殿ユニットを通った洗浄液流体を迂回させて脱塩装置の供給点に直接戻す場合、脱塩装置を通る体積流量は沈殿ユニットを通る体積流量より大きい。本発明の目的から、脱塩装置内の洗浄液流体の平均の滞留時間とは、脱塩装置内の流体体積を、脱塩装置を通る洗浄液流体の正味の体積流量で割ったものをいい、ここで正味の体積流量は沈殿ユニットから脱塩装置へ流れる液体の流量である。沈殿ユニット内の滞留時間は、沈殿ユニットを出る(そして脱塩装置に入る)洗浄液流内の硫酸カルシウムの過飽和度が約1.0〜約3.0、又は好ましくは約1.0〜約2.0、又はさらに好ましくは約1.0〜約1.5の範囲になるような範囲である。沈殿分離装置系の設計に応じて、所望の過飽和度を達成するのに必要とされる滞留時間は約3分〜約300分又は好ましくは約3分〜約60分の範囲であり得る。
【0037】
脱塩装置がスーパーキャパシタ脱塩装置である1つの実施形態において、脱塩装置の全ての流路は第1の期間中充填又は放出作動モードであって、それぞれ供給流又は洗浄液流を受け入れる。次いで、第2の期間中全ての流路は他のモードに切り替わって、それぞれ洗浄液流又は供給流を受け入れる。第1の期間は第2の期間より短くても長くても、又は等しくてもよい。
【0038】
脱塩装置(スーパーキャパシタ又は電気透析反転)の各流路内における交互の流れにより、その流路と洗浄液流内の飽和した/過飽和した液体との接触時間が低減するだけでなく、洗浄液流内の過飽和した液体との接触後供給流によるその流路の有効な「フラッシング」も得られるので、その流路内のスケーリングの危険が大きく低減する。供給流はまた、流路内の新たに形成された結晶に対する溶解能も提供する。
【0039】
コントローラーを適当なバルブ、センサー、スイッチなどとつないでこれらを制御することができ、こうして、脱塩装置がスーパーキャパシタである場合所定の基準に応答して作動モードを充填モードと放出モードとに可逆的に切り替えることができるか、又は脱塩装置が電気透析反転である場合は所定の基準に応答して電極極性を可逆的に切り替えることができる。かかる基準としては、経過時間、飽和度、伝導度、抵抗率などを挙げることができる。
【0040】
脱塩装置からの回収流は、さらに処理するべく、逆浸透プロセスのような別の種類の脱塩プロセスにより、又は同じ脱塩装置に戻して供給することにより、再度脱イオン化に付してもよい。
【0041】
沈殿ユニットは、ある形状の別個の容器でもよいし、又は洗浄液流の配管系の一体部品でもよく、また濃縮タンク又は沈殿分離装置であり得る。また、撹拌タンク、沈降タンク、及び浄化装置の以上又は任意の組合せからなり得る。
【0042】
本発明の幾つかの局面によると、ブローダウン又はパージ流(廃棄物流)が沈殿ユニットから除去される。このブローダウン又はパージ流(廃棄物流)の体積は、新鮮な供給流を沈殿ユニット中に導入することにより置き換えられる。廃棄物流の平均の体積流量は供給流の平均流量の約0.5〜約30、好ましくは約1〜約20、又は好ましくは約1〜約10、又はさらに好ましくは約1〜約5%である。
【0043】
廃棄物流の廃棄処分は、適用用途の条件に依存する頻度であり得る。1つの実施形態において、廃棄物流は、スーパーキャパシタ脱塩装置の1つの充填−放出サイクル又は電気透析脱塩装置の1つの電極極性サイクルの終了時に沈殿ユニットから廃棄処分される。別の実施形態において、廃棄物流は適当な流量で沈殿ユニットから連続的に廃棄処分される。この際、この廃棄処分による沈殿ユニット内の体積損失は実質的に等しい量の液体で補われ得る。このメイクアップ流は供給流と同じ起源でよい。このようにして、沈殿ユニット内の液体体積はサイクル間で実質的に一定の範囲内に保たれる。この廃棄物流の廃棄処分とその補充により、脱塩装置に入る洗浄液流内の硫酸カルシウムの過飽和度が実質的に一定で約1.0〜約3.0、又は好ましくは約1.0〜約2.0、又はさらに好ましくは約1.0〜約1.5の範囲になることと、極めて溶け易い塩(例えばNaCl)の濃度もサイクル間で一定の範囲内になることとがさらに確実になる。このため、硫酸カルシウム及びその他の塩の濃度がサイクル間で連続的に上昇しないように確保され、これにより脱塩装置がスケーリングから保護される。
【0044】
廃棄物流は、スラリーの形態であってもよいし、又は少なくとも1つの流れが固体の化学種を含有する2以上の別個の流れの形態であってもよい。廃棄物流は、硫酸カルシウムからなり得る固体を含んでいてもよい。廃棄物は高濃縮水又はスラリーを処理するのに適したあらゆる公知のプロセスで処理し得る。例えば、蒸発器、塩水濃縮機、噴霧乾燥機、晶析装置、蒸発池、又はこれらの任意の組合せのような熱処理デバイスを使用して廃棄物流を処理することができる。非常に高い水回収率が達成される場合、取り扱う必要がある廃棄物流は通常少なく、全体のプロセスは経済的に魅力のある液体放出ゼロのプロセスとして実施することができる。他の実施形態において、沈殿ユニットからの廃棄物流は直接表面水受器若しくは下水に廃棄するか、又は深い井戸に注入することができる。
【0045】
洗浄液流中のイオン性溶質の濃度は、通常、回収流中のイオン性溶質の濃度より数十〜数百倍高い。濃縮された洗浄液流と希薄な回収流との間の交差汚染を最小にすることが重要である。従って、過渡期中、脱塩装置の入口流は、この脱塩装置の出口流を洗浄液流から切り替えて回収流に戻す(出口スイッチ)前に、洗浄液流から切り替えて供給流に戻す(入口スイッチ)とよい。入口スイッチと出口スイッチとの間の適当な時間間隔は、通例脱塩装置内の供給流の流体滞留時間とほぼ同じであり、検討中の各装置に対して試験することによって決定し得る。コントローラーを用いて、これらの引き続く又は段階的な流れスイッチを制御することができる。
【0046】
スーパーキャパシタ脱塩装置の作動モードが充填作動モードから放出作動モードに移るとき、電池が完全に充電された作動モードから放電した作動モードになるときのエネルギー放出と同様なエネルギーの放出がある。幾つかの実施形態においては、変換器(図には示してない)のようなエネルギー回収デバイスを用いてこのエネルギーを使用するために取り出すのが望ましいことがある。すなわち、スーパーキャパシタ脱塩セルはエネルギー回収デバイスとも繋ぐことができる。
【0047】
幾つかの実施形態において、スーパーキャパシタ脱塩装置の第1の電極は各々が第1の導電性材料を含み得、第2の電極は各々が同一又は異なる第2の導電性材料を含み得る。本明細書で使用する場合、導電性材料という用語は、熱伝導率に関係なく導電性である材料をいう。幾つかの実施形態において、第1の導電性材料と第2の導電性材料は小さめの大きさと大きい表面積の粒子を有し得る。大きい表面積のため、かかる導電性材料は、セルの高い吸着容量、高いエネルギー密度及び高いキャパシタンスを生じ得る。
【0048】
さらに、第1の導電性材料と第2の導電性材料は高い気孔率を有し得る。各々の電極は比較的高いBrunauer−Emmet−Teller(BET)表面積を有し得る。各々の電極は比較的低い電気抵抗率(例えば、<200 Ohm・cm2)を有し得る。1つの実施形態において、第1及び第2の電極の表面上に追加の物質を付着させてもよく、かかる追加の物質としてはイオン交換材料、触媒、防汚剤、表面エネルギー改変剤などがある。
【0049】
さらに、第1の導電性材料と第2の導電性材料は有機又は無機材料を含み得る。加えて、導電性充填材も導電性材料と共に使用してもよい。また、適切な接着剤、硬化剤、又は触媒も導電性材料と共に使用し得る。
【0050】
例示した実施形態において、スーパーキャパシタ脱塩装置の第1及び第2の電極は互いに平行に配置されたプレートとして形作られてスタック状構造を形成しているが、他の実施形態において、第1及び第2の電極はいろいろな形状を有し得る。かかる他の形状として、襞のある入れ子状の鉢構造を挙げることができる。1つの実施形態において、第1及び第2の電極はロール状の配列で互いに同心円状に配置されていてもよい。
【0051】
スーパーキャパシタ又は電気透析脱塩装置に適切なスペーサーとしては電気絶縁性のポリマーがあり得る。適切な電気絶縁性のポリマーとしてオレフィン系の物質があり得る。適切なオレフィン系物質としては、ポリエチレン及びポリプロピレンを挙げることができ、これらはハロゲン化されていてもよい。他の適切な電気絶縁性のポリマーとして、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリアリーレンエーテル、及びナイロンを挙げることができる。さらに、スペーサーは約0.0010センチメートル〜約1センチメートルの範囲の厚さを有し得る。電気絶縁性のスペーサーは膜、メッシュ、マット、シート、フィルム、又は織物の形態であり得る。流体連通を可能にするために、電気絶縁性のスペーサーは多孔性、穴のあいたものであり得、又は主要な表面からもう1つの面まで延びる流体流路を有し得る。これら流体流路、気孔及び穴は5ミリメートル未満の平均直径を有し得、貫通して流れる液体の乱流を増大するように構成され得る。かかる増大した乱流は直近の電極の性能に正の影響を及ぼし得る。1つの実施形態において、同一平面にない重なる糸を有するメッシュが使用される。これらの面外の糸は貫通して流れる液体の乱流を増大し得る。
【0052】
さらに、スーパーキャパシタ脱塩装置の各セルは、第1及び第2の電極に連結された集電器を含み得る。これらの集電器は電子を伝導する。集電器材料及び作動パラメーターの選択はセルの電力消費及び寿命に影響し得る。例えば、電極の1つと対応する集電器との間の高い接触抵抗は高い電力消費を招き得る。ある種の実施形態において、セルの第1及び第2の電極の導電性材料は対応する集電器上に付着させ得る。かかる実施形態において、電極導電性材料は1種以上の付着技術により集電器表面上に付着させることができる。適切な付着技術としては、スパッタリング、溶射、スピン−コーティング、印刷、浸漬、又はその他のコーティングを挙げることができる。
【0053】
スーパーキャパシタ脱塩装置はさらに、その構造に対する機械的安定性を提供するために支持プレートを含み得る。適切な支持プレートとしては、金属又はプラスチックから選択される1種以上の材料があり得る。適切な金属には貴金属並びにステンレス鋼のような鉄基合金がある。適切なプラスチックとしては、アクリル、ウレタン、エポキシなどの熱硬化性材料、並びにポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)、及びポリオレフィンのような熱可塑性材料を挙げることができる。適切なポリオレフィンにはポリエチレン又はポリプロピレンが含まれ得る。
【0054】
電気透析脱塩装置のイオン交換膜及び電極は従来電気透析脱塩装置に使用されているあらゆる膜及び電極のいずれでもよく、当業者には公知である。
【実施例】
【0055】
本発明を実施する際の追加の指針を当業者に提供するために以下の実施例を挙げる。従って、これらの実施例は特許請求の範囲に定義されている本発明を限定するものではない。
【0056】
以下の実験において、表1に示す組成を有する合成供給水を試験用に実験室で作成した。この水の全溶解固体(Total Dissolved Solids)(TDS)は2012.9ppmで、そのTDSの約40%はカルシウムと硫酸イオンであった。
【0057】
【表1】

実施例1
図1は、実施例1の概略的なフローチャートを示す。脱塩装置は5セルのスーパーキャパシタ脱塩(SCD)スタックであった。セルの各電極の有効面積は400cm2であり、電極間のスペーサーの厚さは0.76mmであった。試験では500サイクルを行い、各サイクルは充填段階と放出段階を含んでいた。各充填段階は15分であり、各放出段階は30分であった。
【0058】
充填段階中、SCDスタックは1000mAの一定の電流で充填した。スタックの電圧は充填段階の開始時の約2Vから充填段階の終了時に約5Vまで上昇するのが観察された。表1に示した組成の合成供給水を供給流11内の供給水として使用し、ソレノイドバルブ6を閉じたままでソレノイドバルブ5を介してポンプ4aによりスーパーキャパシタ脱塩スタックの流路C内に送った。充填段階で、供給流11は少なくとも部分的に脱塩され、供給流11より少ない塩分を含む回収流12に変換された。回収流12はソレノイドバルブ8を閉じたままでソレノイドバルブ7を介して放出された。回収流12は、意図する用途の要件に応じて、直接消費するか、又は直接消費する前に別の処理段階に付すことができよう。
【0059】
内径150mm、高さ400mmを有するPlexiglass(商標)のシリンダーを沈殿ユニット3として使用し、500サイクルの試験の第1の放出段階の始動のために2000mlの合成供給水をシリンダーに入れた。放出段階では、沈殿ユニット3からの洗浄液流を、ソレノイドバルブ5を閉じたままでソレノイドバルブ6を介してポンプ4bにより流路C中に送った。放出段階中においては、充填段階でスーパーキャパシタ脱塩スタック1の電極上に吸収されたイオンが、洗浄液流中に放出された。流路Cからの出力洗浄液流は、ソレノイドバルブ7を閉じたままでソレノイドバルブ8を介して沈殿ユニット3を介して戻した。放出段階中、沈殿ユニット3とスーパーキャパシタ脱塩スタックの流路Cとに流体を循環させた。
【0060】
流量計9と圧力計10を用いて流れをモニターし制御した。SCDスタックの充填及び放出状態は予めプログラムされた電気機器(Land−20V−5A、Wuhan Jinnuo Electricic Co.,Ltd.,China)により制御した。同時に、バルブの切り替えを予めプログラムされたコントローラー(SG2−20HR−A、Taian Technology Wuxi CO.,Ltd.,China)によって制御した。SCDスタックの電気的状態と流れの切り替えを同期化した。
【0061】
沈殿ユニット3内の硫酸カルシウムの過飽和度をさらに低減し、沈殿ユニット3内の極めて溶け易い塩の濃度を一定の範囲内に維持するために、約155mlの流体(「廃水」)を、各放出段階の終了時に沈殿ユニット3からポンプ4b並びにソレノイドバルブ6及び7を介してポンプで送った。その後、供給流水11(155ml)を沈殿ユニット3に加えて沈殿ユニット3内の全流体体積を維持した。
【0062】
水の流量は充填及び放出段階の両方で500ml/minに制御したが、これは8.6cm/secの線速度に相当する。各サイクルでの回収水(本明細書では回収流12ともいう)の体積は500ml/分×15分=7500mlであり、供給流の体積は7500ml+155ml=7655mlであった。従って、この実験での水回収率は7500ml/7655ml×100%≒98%であった。
【0063】
SCDスタック1内での液体停滞量は約400cm2×0.076cm×5セル/スタック=152mlであり、沈殿シリンダー内の液体停滞量は2000mlであった。放出モードにおけるSCDスタック1内の水の滞留時間は約18秒であり、放出モードにおける沈殿シリンダー内の水の滞留時間は約240秒であった。
【0064】
スタック電圧及び電流プロフィールは500−サイクルの試験中非常に安定であることが判明した。析出物が生成し、この析出物は試験中シリンダー内に保ち、500サイクルの試験の後に除去した。沈殿シリンダーからSCDスタックに入る水中のCaSO4の過飽和度は第2の作動モード中1.36〜1.69の範囲であり、平均値は1.56であることが判明した。
【0065】
試験後、SCDスタックの5つのセルのいずれでもスケーリングは見られなかった。
【0066】
実施例2
この実験は実施例1と同様に行ったが、充填モードと放出モードの両方の間スタック内の流路を通る流体流量は1500ml/min、すなわち25.7cm/secの線速度に変えた。析出物質をシリンダー内に保ち、500−サイクルの試験が完了した後除去した。第2の作動モード中SCDスタックに入る洗浄液流中のCaSO4の過飽和度は1.24〜1.51の範囲であり、平均値は1.38であることが分かった。
【0067】
試験後、SCDスタックの5つのセルのいずれにもスケーリングは形成されていなかった。
【0068】
実施例3
実施例1及び2と同じ一般手順を使用して5つの5セルスタックを直列に作動させた。系を第1のモード(充填)で作動させながら、合成廃水を第1のスタックに供給し、回収流を最後のスタックから取り出した。系を第2のモード(放出)で作動させながら、最後のスタックからの流出物を沈殿ユニットに送り、沈殿ユニットからの液体を第1のスタックに供給した。ここで、両方の作動モードの間流量は500mL/minに保ったが、スタック内の流路を通る線速度は8.6cm/secであった。第2の作動モード中SCDスタックに入る洗浄液流中のCaSO4の過飽和度は1.7〜2.0の範囲であることが分かった。系を500サイクル作動させた後、スタックを分解したところ、25セルのうちのたった2つで少しだけのスケーリングが見られた。少しの機器修正によって、これらの条件でスケーリングの発生なくこの系を作動させることができると考えられる。
【0069】
比較例1
15セルのスタックを実施例1及び2と同様に作動させた。ここで、第1のモード(充填)と第2のモード(放出)の両方の間の流量は500mL/minに保って、スタック内の流路を通る線速度を2.8cm/secとした。第2の作動モード中SCDスタックに入る洗浄液流内のCaSO4の過飽和度は1.7〜2.0の範囲であることが分かった。この系を500サイクル作動させた後、スタックを分解したところ、SCDスタックの全てのセルで激しいスケーリングが見られた。
【0070】
実施例4
図2は、脱塩装置が5セルの電気透析(ED)脱塩スタックである実施例4の概略的なフローチャートを示す。EDスタックの有効な膜面積は400cm2であり、スペーサーの厚さは0.76mmである。希薄及び濃厚流路の両方の水の流量は500ml/minであり、8.6cm/secの線速度に対応する。1000mAの一定の電流を、EDスタックの両方の極性状態で使用する。実施例1及び2で使用したのと同じシリンダーをこの実験の沈殿ユニットとして使用する。
【0071】
第1の期間では、(場合により前処理した)供給流110を、ポンプ4Aにより、入口バルブ50の案内流路を介して第1の流路C1内に導入する。同時に、ポンプ4B、入口バルブ50及び出口バルブ70を介してシリンダー30と第2の流路C2を含む閉鎖ループ内に洗浄液流を循環させる。この期間では、第1の流路C1が希薄流路であり、この流路内のイオンは一部が隣接する第2の流路C2に移動する。第1の流路C1からの生成物(回収)流120は出口バルブ70の案内流路を通ってEDスタックから流出し、通常供給流110より低い塩分濃度を有する。第2の流路C2はここでは濃厚流路である。
【0072】
第1の期間の後の第2の期間では、EDスタックの電極極性を逆転させ、イオンは反対の方向に向かって第2の流路C2から第1の流路C1へ移動する。従って、第1の流路C1が濃厚流路となり、第2の流路C2が希薄流路となる。入口バルブ50と出口バルブ70も切り替えて、電極極性の反転に同期化させる。ここで供給流は第2の流路C2に戻され、供給流110より少ない塩分を含む生成物(回収)流120として流出する。一方、洗浄液流は第1の流路C1とシリンダー30を含む閉鎖ループ内を循環する。
【0073】
EDスタックの電極極性の逆転並びに入口及び出口バルブの切り替えは別個の又は一体型の外部コントローラー(図2図には示してない)により制御される。電気透析スタックの電極極性の逆転は15分であり、約5分〜約100分の範囲であり得る。流量計90及び圧力計100を使用して、流れをモニター/制御するのに役立たせることができる。
【0074】
各15−分の期間の終了時時に、650mlの水を沈殿ユニットから廃棄し、供給流からの別の650mlの水を同じ沈殿ユニットに加える。他の全てのパラメーターは実施例1及び2と同じに保つ。脱塩装置の濃厚流路と沈殿ユニットを含む閉鎖ループ内の洗浄液流の循環中、洗浄液流中の硫酸カルシウムの幾らかが沈殿ユニット内で析出物として除去される結果、EDスタックに入る洗浄液流中のCaSO4の過飽和度はEDスタック内でのスケーリングを回避するために1.05〜1.75の範囲に制御される。
【0075】
本明細書に記載されている実施形態は特許請求の範囲に記載の本発明の要素に対応する要素を有する組成、構造、系、及び方法の例である。本明細書の記載により、当業者は、特許請求の範囲に記載の本発明の要素に同様に対応する代わりの要素を有する実施形態を実施し使用することができよう。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲の文字通りの意味と異ならない組成、構造、系及び方法を包含し、さらに特許請求の範囲の文字通りの意味と実質的に差違のない他の構造、系及び方法を包含する。本明細書では幾つかの特徴と実施形態のみを例示し記載して来たが、多くの修正及び変化が当業者には自明であろう。特許請求の範囲はかかる修正と変化を全て包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱塩装置からイオン性化学種を除去する方法であって、
(a)脱塩装置及び沈殿ユニットを含む閉鎖ループ内に洗浄液流を循環させ、この洗浄液流は少なくとも5cm/秒の線速度で脱塩装置を通って流れ、脱塩装置を通過後より多くの塩分を含むようになり、
(b)沈殿ユニット内での沈殿により洗浄液流から硫酸カルシウムの一部分を除去して、約1.0〜約3.0の範囲の、脱塩装置に入る洗浄液流中の硫酸カルシウムの過飽和度を得る
ことを含んでなる方法。
【請求項2】
脱塩装置が放出モードで作動するスーパーキャパシタ脱塩装置である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、脱塩装置を、少なくとも周期的に、供給流が脱塩装置を通過後より少ない塩分を含むようになる充填モードで作動させる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
放出モードと充填モードとが交互にある、請求項3記載の方法。
【請求項5】
沈殿ユニット内で硫酸カルシウムの一部分を廃棄物流として除去する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
廃棄物流が、脱塩装置に送られる供給流の全体積の約0.5〜約30%に相当する体積を有する液体を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
廃棄物流が、脱塩装置に送られる供給流の全体積の約1〜約20%に相当する体積を有する液体を含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
廃棄物流が、脱塩装置に送られる供給流の全体積の約1〜約10%に相当する体積を有する液体を含む、請求項5記載の方法。
【請求項9】
廃棄物流が、脱塩装置に送られる供給流の全体積の約1〜約5%に相当する体積を有する液体を含む、請求項5記載の方法。
【請求項10】
廃棄物流が固体の硫酸カルシウムを含む、請求項5記載の方法。
【請求項11】
脱塩装置に入る洗浄液流中の硫酸カルシウムの過飽和度が約1.0〜約2.0の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
脱塩装置に入る洗浄液流中の硫酸カルシウムの過飽和度が約1.0〜約1.5の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
脱塩装置内の洗浄液流の線速度が約5cm/sec〜約100cm/secの範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
脱塩装置内の洗浄液流の線速度が約5cm/sec〜約50cm/secの範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
沈殿ユニット内の洗浄液流の滞留時間が約3分〜約300分の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
沈殿ユニット内の洗浄液流の滞留時間が約3分〜約60分の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
沈殿ユニットが撹拌タンク、沈降タンク、及び浄化装置の1以上からなる、請求項1記載の方法。
【請求項18】
脱塩装置が電気透析脱塩装置である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
スーパーキャパシタ脱塩装置から硫酸カルシウムを除去する方法であって、
(a)スーパーキャパシタ脱塩装置及び沈殿ユニットを含む閉鎖ループ内に洗浄液流を循環させ、この洗浄液流は少なくとも5cm/秒の線速度でスーパーキャパシタ脱塩装置を通って流れ、スーパーキャパシタ脱塩装置を通過後より高い濃度の硫酸カルシウムを有し、
(b)沈殿ユニットから硫酸カルシウムの一部分を除去して、約1.0〜約2.0の範囲の、スーパーキャパシタ脱塩装置に入る洗浄液流中の硫酸カルシウムの過飽和度を得る
ことを含んでなる方法。
【請求項20】
電気透析脱塩装置から硫酸カルシウムを除去する方法であって、
(a)電気透析脱塩装置及び沈殿ユニットを含む閉鎖ループ内に洗浄液流を循環させ、この洗浄液流は少なくとも5cm/秒の線速度で電気透析脱塩装置を通って流れ、電気透析脱塩装置を通過後より高い濃度の硫酸カルシウムを有し、
(b)沈殿ユニットから硫酸カルシウムの一部分を除去して、約1.0〜約2.0の範囲の、電気透析脱塩装置に入る洗浄液流中の硫酸カルシウムの過飽和度を得る
ことを含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−521290(P2012−521290A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502064(P2012−502064)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025139
【国際公開番号】WO2010/110983
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】