説明

脱臭機

【課題】室内空間や車内空間において温湿度環境に影響を受けることなく汚染物質除去に適した脱臭機を提供することを目的とする。
【解決手段】光触媒と吸着剤とをセラミックハニカム基材に担持した脱臭ロータ2と、光触媒を励起させるための冷陰極管3と、脱臭ロータ2の上流側に回転モータ4を設けた除湿ロータ5と、脱臭ロータに回転を伝える回転機構6と、除湿ロータ及び脱臭ロータの一部を加熱し、再生を行うヒータ7を備えた再生部8と、脱臭ロータと除湿ロータの間に配置された熱交換器9と、再生部と熱交換器を循環する再生風路10と、吸い込み口に設けられた温湿度センサ11と、熱交換器の下部に配置され、凝集した水を溜める貯水タンク12と、凝集した水を貯水タンクあるいは脱臭ロータへ導入する水路13と、脱臭ロータの下流に配置された送風機14を備えた脱臭機1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば,光触媒を利用した脱臭機に関し、特に室内空間や車内空間において温湿度環境に影響を受けることなく汚染物質除去に適した脱臭機に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒を利用した脱臭技術が従来から報告されている。光触媒は例えば二酸化チタンや酸化タングステン、酸化亜鉛のような半導体の金属酸化物が挙げられる。これらに紫外線を照射することで価電子帯の電子が励起されて伝導帯に遷移し、電子と正孔が生じる。これらが光触媒表面に移動することで空気中の汚染物質と反応するか、あるいは、空気中の酸素や水と反応し、スーパーオキサイドイオン(O2-)とヒドロキシラジカル(・OH)が発生し、これらが汚染物質と反応することで脱臭されるというものである。しかしながら、光触媒による脱臭は処理空気の湿度によって脱臭性能が大きく左右されることが知られており、特に高湿度域では脱臭性能が低下してしまうという問題があった。これに対して、光触媒によって脱臭処理を行う前に処理空気の湿度を下げることで、光触媒の脱臭効率を上げることが考えられ、例えば特許文献1、特許文献2のような脱臭方法が提案されている。
【0003】
すなわち、上記特許文献1に示される従来例にあっては、光触媒によって脱臭処理を行う前の汚染空気を加熱部で加熱処理することによって汚染空気の相対湿度を15%以下としてから、光触媒で脱臭処理を行うというものである。また、上記特許文献2に示される従来例にあっては、汚染空気の除湿処理前の相対湿度が60%以上、光触媒による空気浄化前の相対湿度が45%以下にするか、または汚染空気の除湿処理前の絶対湿度Aと光触媒による空気清浄前の絶対湿度Bの関係がA/B≧1.5とするというものである。
【特許文献1】特開2005−080726号公報
【特許文献2】特開2000−070671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示される従来例にあっては、加熱手段を備えているだけで、脱臭後の空気処理に対する対策がなされていない。つまり、加熱部で高温になった被処理空気はそのまま排出されることとなり、例えば野外に設置された脱臭処理設備等や、室内であっても高温の空気を排気ダクトなどを用いて屋外へ排出するような設備であれば問題なく使用できるが、閉鎖空間では室内の温度が過剰に上昇してしまうために、居住空間や車内空間などでは利用できないという課題があった。また、加熱手段のみで相対湿度を15%以下まで減湿することは、比較的低湿度域においては問題ないが、例えば雨天時などの高湿度域においては困難であり,光触媒の性能を十分に発揮できないという課題があった。また,たとえ減湿可能であったとしても過大な熱エネルギが必要であり,コスト面に課題があった。
【0005】
また、高湿条件では人間の鼻は特に臭いを不快に感じやすいことが一般的に知られている。つまり,上記従来例にあっては加熱部で一時的に相対湿度を下げるだけであり,冷やされた被処理空気は再び相対湿度が上昇し,結果的に室内空気は高湿となってしまうため,快適な室内環境を提供できないという課題があった。
【0006】
また、特許文献2に示される従来例にあっては、除湿手段として乾燥剤や除湿剤などの薬剤での処理や、除湿機などの装置による処理を行っているが、乾燥剤や除湿剤などの薬剤を用いた除湿手段は維持管理に多額の費用と人的労力が必要であるという課題があった。また、除湿機による除湿手段は冷却設備やコンプレッサーなど多額のコストを必要とするため、除湿するためだけの設備としてこれらを組み込むことはあまり現実的とはいえなかった。また,上記従来例においては,処理前後で湿度変化を望まない場合には適宜加湿することが文言上記されているが,特に手段は明記されておらず,低湿度環境での過乾燥に対する対策は不十分であった。
【0007】
本発明はこのような従来の課題を鑑みてなされたものであり、家庭用の除湿機などにも使われている除湿ロータによる除湿機構及びその再生機構を利用することで従来の課題を解決し、光触媒の脱臭能力を著しく向上させることができるに至った。すなわち本発明は、比較的低コストで、メンテナンスも容易であり、住居内や車内などの閉鎖された室内空間においても室温が過剰に上昇することを防止できる。また、高湿度環境においても脱臭性能を低下させることなく、様々な悪臭に対して優れた脱臭性能を満たし、且つ室内を適切な湿度に保つことで快適な室内環境を提供できる脱臭機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の脱臭機は、請求項1記載のとおり、光触媒および吸着剤を担持してなる円形状の脱臭ロータと、脱臭ロータの一部を照射する励起部と、前記脱臭ロータの上流側に配置され、回転機構を設けた除湿ロータと、除湿ロータの一部をヒータで加熱して再生する再生部と、前記脱臭フィルタと前記除湿ロータの間に配置された熱交換器と、再生部および熱交換器を循環して水の凝集を行う再生風路と、熱交換器の下部に配置され、凝集した水を溜める貯水タンクと、脱臭ロータの下流に配置された送風機と、送風機によって室内の被処理空気を取り込み、除湿ロータを通過後脱臭ロータによって脱臭した空気を室内に戻す処理風路を備えてなり、除湿ロータで除湿した被処理空気を熱交換器で温めることにより、被処理空気の相対湿度を常に低湿の状態にすることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2記載の脱臭機は、脱臭ロータが、除湿ロータの回転と連動して回転することを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3記載の脱臭機は、回転する脱臭ロータの一部を再生部のヒータで加熱することを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4記載の脱臭機は、熱交換器で凝集した水を加熱された脱臭ロータに滴下して気化させ、室内に放出することを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項5記載の脱臭機は、脱臭ロータに水を滴下する場所が、ヒータの前段部分であることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項6記載の脱臭機は、温湿度センサを備え、且つ熱交換器で除湿した水を脱臭ロータに滴下するための水路を備えてなり、再生風路内の相対湿度が高湿度のときは熱交換器で凝集した水を貯水タンクに溜め、低湿度のときは水路を通って脱臭ロータの滴下するように水路を制御することを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項7記載の脱臭機は、処理風路と、除湿ロータおよび脱臭ロータのヒータによって加熱される部分とが区画されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項8記載の脱臭機は、脱臭ロータが、除湿ロータに対して投影面が一部重なるように除湿ロータよりも下側に配置されることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項9記載の脱臭機は、貯水タンクに溜まった水を励起部で殺菌することを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項10記載の脱臭機は、励起部が殺菌灯であることを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項11記載の脱臭機は、脱臭ロータの基材がグラスファイバークロスであることを特徴とするものである。
【0019】
また、請求項12記載の脱臭機は、脱臭ロータの基材がセラミックハニカムであることを特徴とするものである。
【0020】
また、請求項13記載の脱臭機は、脱臭ロータに貴金属触媒を添加することを特徴とするものである。
【0021】
また、請求項14記載の脱臭機は、除湿ロータに脱臭剤を添加することを特徴とするものである。
【0022】
また、請求項15記載の脱臭機は、除湿ロータに触媒を添加することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、除湿ロータで予め除湿した被処理空気を熱交換器を利用して温めることで,高湿度雰囲気においても少ない熱エネルギで被処理空気の相対湿度を常に低湿の状態にすることができ,室内の過剰な温度上昇を抑制しながら光触媒の脱臭性能を最大限に発揮させることができる。また、室内が高湿度のときは除湿した水をタンク溜め、逆に低湿度のときは除湿した水を脱臭ロータを利用して再び気化させて過乾燥を抑制することで湿度環境に左右されることなく室内を快適な湿度に保つことができ,快適で清浄な室内環境を提供する脱臭機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の脱臭機は、光触媒および吸着剤を担持してなる円形状の脱臭ロータと、脱臭ロータの一部を照射する励起部と、前記脱臭ロータの上流側に配置され、回転機構を設けた除湿ロータと、除湿ロータの一部をヒータで加熱して再生する再生部と、前記脱臭フィルタと前記除湿ロータの間に配置された熱交換器と、再生部および熱交換器を循環して水の凝集を行う再生風路と、熱交換器の下部に配置され、凝集した水を溜める貯水タンクと、脱臭ロータの下流に配置された送風機と、送風機によって室内の被処理空気を取り込み、除湿ロータを通過後脱臭ロータによって脱臭した空気を室内に戻す処理風路を備えてなり、除湿ロータで除湿した被処理空気を熱交換器で温めることにより、被処理空気の相対湿度を常に低湿の状態にすることを特徴とするものである。
【0025】
まず、脱臭ロータについて説明すると、本発明による脱臭ロータは光触媒と吸着剤を任意の配合比率で混合したものを接着成分と一緒に基材表面に担持したものである。
【0026】
光触媒としては種々挙げられるが、構造安定性や安全性、有害物質分解除去能力から酸化チタンが最も適しており、本発明に係る光触媒としても有効である。
【0027】
吸着剤としては活性炭、ゼオライト、シリカゲル、セピオライトなどのメソ〜マイクロ孔を有した多孔質材料が挙げられる。酸化チタン自体には悪臭物質を吸着する性質はほとんどなく、悪臭を光触媒で分解するためには一旦吸着剤で悪臭物質を捕獲する必要がある。基材に酸化チタンと吸着剤の両方を担持する場合、双方を事前に混合してから基材に担持する方法が最も簡便であり、酸化チタンへの悪臭物質の接触効率を考えても均一に混和することが望ましいが、このとき酸化チタンが励起する400nm以下の紫外波長領域に吸収端を持つような吸着剤を混ぜると、吸着剤が紫外線を吸収してしまい、酸化チタンの励起効率が著しく低下してしまう恐れがある。400nm以下の紫外波長領域に吸収端を持たない吸着剤としてはゼオライトやシリカゲルなどが適しており、特にゼオライトを疎水化処理したハイシリカゼオライトは400nm付近にほとんど吸収波長を持たず、且つ疎水化処理することで悪臭物質を吸着する能力が向上するために光触媒と混合する吸着剤として好都合である。
【0028】
光触媒と吸着剤を担持する基材としては、セラミックハニカム、発泡セラミック、発泡ウレタン、ガラス、グラスファイバークロス、アルミハニカム、不織布、抄紙ハニカムなど様々なものが挙げられるが、耐UV性を有していることが望ましい。また、光触媒性能と担持強度が確保できる材質であることが望ましく、セラミックハニカムや発泡セラミックは基材自体が多孔質であるため担持強度を確保しやすく、且つ基材自体への悪臭物質の吸着も期待できることから基材に適している。また、グラスファイバーを幾本も束ねて一本の糸とし、それを織り込んだ生機と呼ばれるグラスファイバークロスは一本の糸が三次元構造を有しているために担持強度を確保しやすく、且つ素材がガラスであるためにUV透過性に優れ、これも基材に適している。
【0029】
光触媒を励起するための励起部としては例陰極管、ブラックライト、殺菌灯、LEDなどのUVランプが適しているが、光触媒を励起することができればいかなる手段を用いても効果になんら差異はない。
【0030】
次に除湿機構について説明する。本発明の請求項1記載の発明における除湿機構は、脱臭ロータの上流側に配置され、回転機構を設けた除湿ロータと、除湿ロータの一部をヒータで加熱して再生する再生部と、前記脱臭フィルタと前記除湿ロータの間に配置された熱交換器と、再生部および熱交換器を循環して水の凝集を行う再生風路と、熱交換器の下部に配置され、凝集した水を溜める貯水タンクからなる。
【0031】
除湿ロータはガラス繊維が混抄された基材紙をコルゲート加工したものをロール状に積層して基材を形成し、これに吸湿材(ゼオライト)を担持して焼成後、スライスカットしたものである。吸湿材として用いられるゼオライトは水の吸着エネルギーと気化エネルギーが近いため、吸放出性に優れ、除湿と再生を繰り返すことが可能である。また、除湿ロータは回転機構を有しており、別途設けたモータの回転と連動して一定速度で回転する。再生部にはヒータが除湿ロータと一定範囲の角度で近接するように配置されており、除湿ロータが回転することで、ヒータにより加熱された部分で吸湿した水分を放出し、再生される。
【0032】
熱交換器は二つの異なる風路にそれぞれ温度の異なる空気を流し、熱エネルギーのみを交換することで、低温の空気を加熱し、高温の空気を冷却するものである。このとき高温側の空気が高湿であれば、冷却することにより飽和蒸気圧が下がり、露点を下回ることで風路壁面に水分が結露し、空気中の絶対湿度を下げることができる。この熱交換器を脱臭ロータと除湿ロータの間に配置することで、まず除湿ロータを通過することによって低湿となった被処理空気が熱交換器を通過する際に、別の風路を流れる高温の空気と熱交換されることで加熱されて低湿、高温となり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。また、再生部と熱交換器は別途設けられた送風手段により循環風路を形成している。除湿ロータから放出した水分を含んだ高湿空気は、順次熱交換器で冷却されて結露し、熱交換器の下部に配置された貯水タンクに溜まる仕組みになっている。こうすることで、雨天時などの高湿度雰囲気においても除湿しながら脱臭し、快適な清浄空気を提供することができる。尚、脱臭ロータの径は、一定の脱臭能力を確保できる範囲であればいかなる大きさでもよいが、除湿ロータと脱臭ロータを同径にすることで風路を均一化し、コンパクト化できる。
【0033】
また、請求項2記載の脱臭機は、脱臭ロータが、除湿ロータの回転と連動して回転することを特徴とするものである。担持した光触媒をすべて有効に利用するためには、例えば紫外線ランプを励起部として用いる場合、光触媒に満遍なく紫外線を照射することが重要となる。しかし、脱臭ロータの全面に光照射するためには多数の紫外線ランプを配置しなくてはならず、しかも照射強度を均一化するために適切な配置を考慮しなくてはならない。こうすることで励起部を脱臭ロータの全面に配置する必要がなく、低コスト化することができる。また、ロータの中心を軸に回転させることで照射強度の均一化を計ることができ、光触媒による脱臭能力を効率よく発揮することができる。尚、除湿ロータと脱臭ロータの回転速度は均一である必要はなく、除湿ロータの回転を脱臭ロータに伝える回転機構部のギア比を変えるなどして回転速度を制御してもよい。また、別途臭いセンサを設けるなどして室内の臭い強度に合わせて回転速度を制御する機構を設けてもよい。
【0034】
また、請求項3記載の脱臭機は、回転する脱臭ロータの一部を再生部のヒータで加熱することを特徴とするものである。除湿ロータに近接して配置されたヒータは、除湿ロータと脱臭ロータの間に挟まれており、除湿ロータと脱臭ロータの間隔を狭めることにより、ヒータの熱を脱臭ロータにも伝えることができる。こうすることで脱臭ロータは回転しながら、その一部がヒータで加熱されるため、脱臭ロータ表面が常に高温状態に保つことができる。こうすることで、被処理空気が脱臭フィルタを通過する際により相対湿度を下げ、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。
【0035】
また、請求項4記載の脱臭機は、熱交換器で凝集した水を加熱された脱臭ロータに滴下して気化させ、室内に放出することを特徴とするものである。こうすることで、室内空間を過度に除湿することを抑制し、且つ気化熱によって廃熱温度を下げることで室内に快適な清浄空気を供給することができるという作用を有する。
【0036】
また、請求項5記載の脱臭機は、脱臭ロータに水を滴下する場所が、ヒータの前段部分であることを特徴とするものである。こうすることで回転する脱臭フィルタが、被処理空気を脱臭する処理風路に差し掛かる前に水分を全て放出し、脱臭性能が低下するのを抑制することができるという作用を有する。
【0037】
また、請求項6記載の脱臭機は、温湿度センサを備え、且つ熱交換器で除湿した水を脱臭ロータに滴下するための水路を備えてなり、再生風路内の相対湿度が高湿度のときは熱交換器で凝集した水を貯水タンクに溜め、低湿度のときは水路を通って脱臭ロータの滴下するように水路を制御することを特徴とするものである。
【0038】
水路は熱交換器から貯水タンクに通ずる部分から分岐させて設けられており、その先端は、回転する脱臭ロータがヒータで加熱される部分よりも手前の部分に滴下されるように配置されている。こうすることで滴下された水分は脱臭ロータが脱臭処理を行う前に全て放出され、脱臭性能が低下するのを抑制することができるという作用を有する。また、分岐された水路の導入口は温湿度センサの値によって自動開閉するように制御されており、室内が高湿度のときは除湿した水をタンクに溜め、逆に低湿度のときは除湿した水を再び気化させることで過度の乾燥を抑制し、室内の温湿度環境に合わせて調湿し、快適な室内空間を保つことができるという作用を有する。尚,制御する上で高湿度と低湿度の境界となる温湿度としては,例えば25℃のときは50%〜60%である。
【0039】
また、請求項7記載の脱臭機は、処理風路と、除湿ロータおよび脱臭ロータのヒータによって加熱される部分とが区画されていることを特徴とするものである。除湿ロータ及び脱臭ロータはその一部分が処理風路に面して配置されており、除湿能力と脱臭能力を確保するために、ロータ表面に対して半分程度の面積が処理風路に面するように配置されることが好ましい。一方、処理風路外で回転する部分はその一部がヒータによって加熱される部分であり、残りは自然冷却部あるいは水の滴下部として利用される。このとき、処理風路外で回転する部分は処理風路と壁面を隔てて区画されており、除湿ロータ及び脱臭ロータがヒータで過熱されることで発生する高湿度の空気が処理風路内に流入することを抑制する作用を有する。こうすることで、脱臭ロータを通過する被処理空気の湿度を低湿に保ち、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。
【0040】
また、請求項8記載の脱臭機は、脱臭ロータが、除湿ロータに対して投影面が一部重なるように除湿ロータよりも下側に配置されることを特徴とするものである。こうすることで、熱交換器で凝集した水を脱臭ロータへと導く水路を下向きにでき、別途搬送手段を用いなくとも凝集した水を脱臭ロータへ導入することができる。また、このような段違いの構造とすることで、除湿ロータ及び熱交換器の下側に生まれたスペースに貯水タンクを収納することができ、機体をコンパクト化できる。尚、脱臭ロータを除湿ロータに対して下方に配置する度合いとしては、投影面にヒータが収まるのであればいかなる配置でもよいが、風路構成や回転機構の簡易性を考慮すれば、除湿ロータの半径分だけ下方に配置することが好ましい。
【0041】
また、請求項9記載の脱臭機は、貯水タンクに溜まった水を励起部で殺菌することを特徴とするものである。こうすることで貯水タンクを清潔に保つことができ、手入れを簡便化することができるという作用を有する。尚、貯水タンクを殺菌する励起部は光触媒を励起するものとは別に設けてもよいが、請求項8記載のように脱臭ロータを下方にずらして配置することで、貯水タンクと光触媒の励起部とが近接する構造をとることができ、光触媒の励起と同時に貯水タンクの殺菌もできるという作用を有する。
【0042】
また、請求項10記載の脱臭機は、励起部が殺菌灯であることを特徴とするものである。こうすることで、光触媒を励起するだけでなく、貯水タンクに溜まった水を効率よく殺菌することができるとういう作用を有する。
【0043】
また、請求項11記載の脱臭機は、脱臭ロータの基材がグラスファイバークロスであることを特徴とするものである。グラスファイバークロスはグラスファイバーを幾本も束ねて一本の糸とし、それを織り込んで一枚のクロスに形成したものであり、これを円形にカットしたものに光触媒と脱臭剤を担持することで脱臭ロータを形成する。
【0044】
グラスファイバークロスは一本の糸が三次元構造を有しているために担持強度を確保しやすく、且つ素材がガラスであるために耐UV性に優れ、耐熱性にも優れている。こうすることで、脱臭ロータ表面が常に高温状態に保つことができ、被処理空気が脱臭フィルタを通過する際により低湿、高温になり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。
【0045】
また、請求項12記載の脱臭機は、脱臭ロータの基材がセラミックハニカムであることを特徴とするものである。円形状のセラミックハニカム基材は上記除湿ロータとおよそ同様の製造方法で形成することができるが、吸湿材の代わりに脱臭剤を担持してから焼成することで脱臭性能を持たせることができる。尚、脱臭剤を担持するときに同時に光触媒を混合したものを担持してもよいが、焼成過程で熱による光触媒の構造変化が懸念される場合は、焼成後に改めて光触媒を担持してもよい。
【0046】
またこのとき、光触媒のみを担持してもよいが、光触媒と脱臭剤を混合したものを担持するとより好ましい。セラミックハニカムは耐UV性に優れ、耐熱性にもすぐれている。こうすることで、脱臭フィルタ表面が常に高温状態に保つことができ、被処理空気が脱臭フィルタを通過する際により高温・低湿になり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。また、ハニカム形状にすることで被処理空気との接触面積が増え、脱臭効果が向上するという作用を有する。
【0047】
また、請求項13記載の脱臭機は、脱臭ロータに貴金属触媒を添加することを特徴とするものである。貴金属触媒としてはPtやPdなどが挙げられる。これらの触媒は常温でも脱臭効果を発揮することができるが、ヒータ部によって加熱することでより高い触媒活性を発揮し、優れた脱臭効果を得ることができる。こうすることで、光触媒による脱臭に加え、ヒータで加熱される部分においても高い脱臭能力を得ることができ、より脱臭性能の高い脱臭機を提供することができる。
【0048】
また、請求項14記載の脱臭機は、除湿ロータに脱臭剤を添加することを特徴とするものである。脱臭剤は活性炭、ゼオライト、シリカゲル、セピオライトなどの悪臭物質を物理的に吸着して脱臭する吸着剤や、悪臭物質と化学反応することで脱臭する化学吸着剤を添加することができ、あるいはその両方を添加してもよい。こうすることで、被処理空気が除湿ロータを通過する際に除湿するのと同時に脱臭することができ、より脱臭性能の高い脱臭機を提供することができる。
【0049】
また、請求項15記載の脱臭機は、除湿ロータに触媒を添加することを特徴とするものである。触媒はPtやPdなどの貴金属触媒や、MnO2やZnOなどの金属酸化物を添加することができる。これらの触媒は常温でも脱臭効果を発揮することができるが、ヒータ部によって加熱することでより高い触媒活性を発揮し、優れた脱臭効果を得ることができる。こうすることで、被処理空気が除湿ロータを通過する際に除湿するのと同時に脱臭することができ、より脱臭性能の高い脱臭機を提供することができる。
【0050】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
(実施の形態1)
本発明による脱臭機を図1に示す。図1に示すように、脱臭機1は光触媒と吸着剤とをセラミックハニカム基材に担持した脱臭ロータ2と、光触媒を励起させるための冷陰極管3と、脱臭ロータ2の上流側に回転モータ4を設けた除湿ロータ5と、脱臭ロータ2に回転を伝える回転機構6と、除湿ロータ5及び脱臭ロータ2の一部を加熱し、再生を行うヒータ7を備えた再生部8と、脱臭ロータ2と除湿ロータ5の間に配置された熱交換器9と、再生部8と熱交換器を循環する再生風路10と、吸い込み口に設けられた温湿度センサ11と、熱交換器の下部に配置され、凝集した水を溜める貯水タンク12と、凝集した水を貯水タンク12あるいは脱臭ロータ2へ導入する水路13と、脱臭ロータの下流に配置された送風機14と、送風機14によって室内の被処理空気15を取り込み、除湿ロータ5を通過後脱臭ロータ2によって脱臭した空気を室内に戻す処理風路16を備えてなり、吸い込み口17から導入した被処理空気15を除湿した後に脱臭ロータ2で脱臭し、吹き出し口18から清浄空気を供給する仕組みになっている。水路13としては、水を通水できればよく、例えば、通水管などがある。
【0052】
脱臭ロータ2は、微粉末の光触媒と吸着剤を任意の配合比率で混合したものに接着成分混ぜてスラリ状とし、それをセラミックハニカム基材表面に担持後、乾燥して形成したものであり、光触媒には酸化チタンを、脱臭剤にはハイシリカゼオライトを用いている。セラミックハニカムは耐UV性に優れ、耐熱性にもすぐれている。こうすることで、脱臭ロータ表面が常に高温状態に保つことができ、被処理空気15が脱臭ロータを通過する際により高温・低湿になり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。また、ハニカム形状にすることで被処理空気15との接触面積が増え、脱臭効果が向上するという作用を有する。尚、本実施の形態では、脱臭ロータ2の基材にセラミックハニカムを用いているが、グラスファイバークロスを円形に形成したものを複数枚重ねたものを用いてもよく、厚みのないグラスファイバークロスならば冷陰極管3をクロスで挟み込むことで照射効率を上げることができるという作用を有する。
【0053】
除湿ロータ5は、ガラス繊維が混抄された基材紙をコルゲート加工したものをロール状に積層して基材を形成し、これに吸湿材(ゼオライト)を担持して焼成後、スライスカットしたものである。また、除湿ロータ5は中心部に連結された回転モータ4により一定速度で回転するものであり、一回転する間に吸着部、再生部、冷却部を経て、再び吸着部に戻る仕組みになっている。吸着部は除湿ロータの円形部分の半分を占めており、吸着部を通過することで被処理空気の除湿を行う。次に再生部8ではヒータで加熱され、吸着部で吸着した水分を放出し、再生される。最後に冷却部では外気によって自然冷却され、再び吸着できるようになる。こうすることで除湿ロータ5は回転しながら吸放出を繰り返し、連続して被処理空気15の除湿を行うことができる。
【0054】
回転モータ4は、回転軸を介して回転機構6と繋がっており、除湿ロータ5の回転と連動して脱臭ロータ2が回転する仕組みになっている。また、冷陰極管3は脱臭ロータ2の処理風路16に面する部分を両面から照射するように複数本配置されており、光触媒を効率よく励起することができる。担持した光触媒をすべて有効に利用するためには、光触媒に満遍なく紫外線を照射することが重要となる。したがって、脱臭ロータ2の全面に冷陰極管3を多数配置する必要があり、しかも照射強度を均一化するために適切な配置を考慮しなくてはならない。そこで、脱臭ロータ2を回転させることにより、脱臭ロータ2の一部に冷陰極管3を配置するだけで脱臭ロータ2の全面に光照射することができる。また、ロータの中心を軸に回転させることで照射強度の均一化を計ることができ、光触媒による脱臭能力を効率よく発揮することができる。尚、励起部としてはブラックライト、殺菌灯、LEDなどのUVランプやプラズマによる励起など光触媒を励起することができればいかなる手段を用いてもよいが、冷陰極管は比較的低コストであり、耐久寿命も長いことから励起部として好ましい。尚、冷陰極管3の本数や配置は一定の脱臭性能を確保できるのであればいかなるようにしてもよいが、本実施の形態のように円の中心部から放射状に等間隔で配置することで、照射面積を均一化することができるという作用を有する。
【0055】
また、脱臭ロータ2の回転機構6としては、回転軸を脱臭ロータ2の中心部と直結して、回転モータ4の回転をそのまま脱臭ロータ2に伝える方式が簡便であるが、回転軸と脱臭ロータの中心部に歯車形状のギアを設ける方式にしてもよく、この場合、回転比の異なる複数のギアを設けることにより、除湿ロータ5と脱臭ロータ2の回転速度を変化させることが可能であり、別途臭いセンサを設けるなどして室内の臭い強度に合わせて回転速度を制御する機構を設けてもよい。
【0056】
脱臭ロータ2と除湿ロータ5は両者でヒータ7を挟み込むように配置されており、ヒータ7は除湿ロータ5の再生部8で除湿ロータ5を加熱して再生するのと同時に、脱臭ロータ2の一部を加熱する仕組みになっている。すなわち、脱臭ロータ2はロータの一部がヒータ7で加熱されながら回転するため、ロータ表面を常に高温状態に保つことができる。こうすることで、被処理空気15が脱臭ロータ2を通過する際により相対湿度が低くなり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。
【0057】
熱交換器9は除湿ロータ5と脱臭ロータ2の間に配置されており、二つの風路にそれぞれ温度の異なる空気を流し、熱エネルギのみを交換することで、低温の空気を加熱し、高温の空気を冷却するものである。このとき高温側の空気が高湿であれば、冷却により飽和蒸気圧が下がり、露点を下回ることで風路壁面に水分が結露し、空気中の絶対湿度を下げることができる。つまり、除湿ロータ5で除湿された被処理空気15と、ヒータ7で加熱された再生空気がそれぞれ壁面で隔てられた熱交換器9内で交差することにより、被処理空気15は加熱され、再生空気は冷却されて熱交換器9の壁面に水分が結露することで除湿される。こうすることで、被処理空気15は熱交換器9を通過する際に再生空気の熱エネルギを吸収して温められ,より相対湿度が低くなるため、光触媒によって効率よく脱臭できるという作用を有する。
【0058】
また、熱交換器9と再生部8は別途設けられた小型送風機(図示なし)によって循環する再生風路10を形成しており、除湿ロータ5で吸着した水を再生部8で加熱して放出させ、熱交換器9で冷却することで繰り返し除湿する仕組みになっている。さらに、吸い込み口17には温湿度センサ11が設けられており、温湿度の値によって熱交換器9で凝集した水を、貯水タンク12及び脱臭ロータ2へ導入する水路13の切り替えが行われるように制御されている。脱臭ロータ2へ導入する水路13は、熱交換器9から貯水タンク12に通ずる部分から分岐させて設けられており、その先端は、回転する脱臭ロータ2がヒータ7で加熱される部分よりも手前の部分に滴下されるように配置されている。こうすることで滴下された水分は脱臭ロータ2が脱臭処理を行う前に全て放出され、脱臭性能が低下するのを抑制することができるという作用を有する。
【0059】
つまり、室内が高湿度のときは除湿した水をタンクに溜め、逆に低湿度のときは除湿した水を再び気化させることで過度の乾燥を抑制し、室内の湿度環境に合わせて調湿し、快適な室内空間を保つことができるという作用を有する。尚、水路13内の水を脱臭ロータ2へ導入するための搬送手段としては、液送ポンプなどを別途設けてもよく、また、水路内に吸水材を充填することで、毛管現象による搬送手段を用いてもよい。また、本実施の形態における脱臭機1は、除湿ロータ5に触媒を担持してもよく、触媒はPtやPdなどの貴金属触媒や、MnO2やZnOなどの金属酸化物を添加することができる。これらの触媒は常温でも脱臭効果を発揮することができるが、ヒータ7によって加熱することでより高い触媒活性を発揮し、優れた脱臭効果を得ることができる。こうすることで、被処理空気15が除湿ロータ5を通過する際に除湿するのと同時に脱臭することができ、より脱臭性能の高い脱臭機を提供することができる。
【0060】
(実施の形態2)
実施の形態1と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。本発明による脱臭機の別の実施例を図2に示す。
【0061】
図2に示すように、脱臭機1は光触媒と吸着剤とをセラミックハニカム基材に担持した脱臭ロータ2と、光触媒を励起させるための殺菌灯19と、脱臭ロータ2の上流側に回転モータ4を設けた除湿ロータ5と、脱臭ロータに回転を伝える回転機構6と、除湿ロータ及び脱臭ロータの一部を加熱し、再生を行うヒータ7を備えた再生部8と、脱臭ロータと除湿ロータの間に配置された熱交換器9と、再生部と熱交換器を循環する再生風路10と、吸い込み口に設けられた温湿度センサ11と、熱交換器の下部に配置され、凝集した水を溜める貯水タンク12と、凝集した水を貯水タンクあるいは脱臭ロータへ導入する水路13と、脱臭ロータの下流に配置された送風機14と、送風機によって室内の被処理空気15を取り込み、除湿ロータ5を通過後脱臭ロータ2によって脱臭した空気を室内に戻す処理風路16を備えてなり、吸い込み口17から導入した被処理空気を除湿した後に脱臭ロータ2で脱臭し、吹き出し口18から清浄空気を供給する仕組みになっている。また、本実施の形態において、脱臭ロータ2及び殺菌灯19は除湿ロータ5に対してロータの半径分だけ下側に配置されており、両ロータの投影面が重なる部分にヒータ7が配置される構造になっている。
【0062】
脱臭ロータ2は、微粉末の光触媒と吸着剤を任意の配合比率で混合したものに接着成分混ぜてスラリ状とし、それをセラミックハニカム基材表面に担持後、乾燥して形成したものであり、光触媒には酸化チタンを、脱臭剤にはハイシリカゼオライトを用いている。セラミックハニカムは耐UV性に優れ、耐熱性にもすぐれている。こうすることで、脱臭ロータ表面が常に高温状態に保つことができ、被処理空気15が脱臭ロータ2を通過する際により高温・低湿になり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。
【0063】
また、ハニカム形状にすることで被処理空気15との接触面積が増え、脱臭効果が向上するという作用を有する。尚、本実施の形態では、脱臭ロータ2の基材にセラミックハニカムを用いているが、グラスファイバークロスを円形に形成したものを複数枚重ねたものを用いてもよく、厚みのないグラスファイバークロスならば殺菌灯19をクロスで挟み込むことで照射効率を上げることができるという作用を有する。
【0064】
除湿ロータ5は、ガラス繊維が混抄された基材紙をコルゲート加工したものをロール状に積層して基材を形成し、これに吸湿材(ゼオライト)を担持して焼成後、スライスカットしたものである。また、除湿ロータ5は中心部に連結された回転モータ4により一定速度で回転するものであり、一回転する間に吸着部、再生部、冷却部を経て、再び吸着部に戻る仕組みになっている。吸着部は除湿ロータ5の円形部分の半分を占めており、吸着部を通過することで被処理空気15の除湿を行う。次に再生部8ではヒータ7で加熱され、吸着部で吸着した水分を放出し、再生される。最後に冷却部では外気によって自然冷却され、再び吸着できるようになる。こうすることで除湿ロータ5は回転しながら吸放出を繰り返し、連続して被処理空気15の除湿を行うことができる。
【0065】
回転モータ4は、回転軸を介して回転機構6と繋がっており、除湿ロータ5の回転と連動して脱臭ロータ2が回転する仕組みになっている。また、殺菌灯19は脱臭ロータ2の処理風路16に面する部分を両面から照射するように複数本配置されており、光触媒を効率よく励起することができる。担持した光触媒をすべて有効に利用するためには、光触媒に満遍なく紫外線を照射することが重要となる。
【0066】
したがって、脱臭ロータ2の全面に殺菌灯19を多数配置する必要があり、しかも照射強度を均一化するために適切な配置を考慮しなくてはならない。そこで、脱臭ロータ2を回転させることにより、脱臭ロータ2の一部に殺菌灯19を配置するだけで脱臭ロータ2の全面に光照射することができる。また、ロータの中心を軸に回転させることで照射強度の均一化を計ることができ、光触媒による脱臭能力を効率よく発揮することができる。尚、殺菌灯19の本数や配置は一定の脱臭性能を確保できるのであればいかなるようにしてもよいが、本実施の形態のように円の中心部から放射状に等間隔で配置することで、照射面積を均一化することができるという作用を有する。
【0067】
また、本実施の形態における脱臭ロータ2の回転機構6としては、回転軸の先端に歯車形状のギアが設けられており、且つ脱臭ロータ2を保護するための外枠部分が歯車形状を成している。つまり、回転軸が回転することで脱臭ロータ2の外枠部分に回転が伝わる仕組みになっている。
【0068】
脱臭ロータ2と除湿ロータ5は両者の投影面が重なる部分でヒータ7を挟み込むように配置されており、ヒータ7は除湿ロータ5の再生部8で除湿ロータ5を加熱して再生するのと同時に、脱臭ロータ2の一部を加熱する仕組みになっている。すなわち、脱臭ロータ2はロータの一部がヒータで加熱されながら回転するため、ロータ表面を常に高温状態に保つことができる。こうすることで、被処理空気15が脱臭ロータ2を通過する際により相対湿度が低くなり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。
【0069】
熱交換器9は除湿ロータ5と脱臭ロータ2の間に配置されており、二つの風路にそれぞれ温度の異なる空気を流し、熱エネルギのみを交換することで、低温の空気を加熱し、高温の空気を冷却するものである。このとき高温側の空気が高湿であれば、冷却により飽和蒸気圧が下がり、露点を下回ることで風路壁面に水分が結露し、空気中の絶対湿度を下げることができる。つまり、除湿ロータ5で除湿された被処理空気15と、ヒータ7で加熱された再生空気がそれぞれ壁面で隔てられた熱交換器9内で交差することにより、被処理空気15は加熱され、再生空気は冷却されて熱交換器9の壁面に水分が結露することで除湿される。こうすることで、被処理空気15は熱交換器9を通過する際に再生空気の熱エネルギを吸収して温められ,より相対湿度が低くなるため、光触媒によって効率よく脱臭できるという作用を有する。
【0070】
また、熱交換器9と再生部8は別途設けられた小型送風機(図示なし)によって循環する再生風路10を形成しており、除湿ロータ5で吸着した水を再生部8で加熱して放出させ、熱交換器9で冷却することで繰り返し除湿する仕組みになっている。さらに、吸い込み口には温湿度センサ11が設けられており、温湿度の値によって熱交換器9で凝集した水を、貯水タンク及び脱臭ロータへ導入する水路13の切り替えが行われるように制御されている。脱臭ロータ2へ導入する水路13は、熱交換器9から貯水タンク12に通ずる部分から分岐させて設けられており、その先端は、回転する脱臭ロータがヒータで加熱される部分よりも手前の部分に滴下されるように配置されている。こうすることで滴下された水分は脱臭ロータ2が脱臭処理を行う前に全て放出され、脱臭性能が低下するのを抑制することができるという作用を有する。
【0071】
つまり、室内が高湿度のときは除湿した水をタンクに溜め、逆に低湿度のときは除湿した水を再び気化させることで過度の乾燥を抑制し、室内の湿度環境に合わせて調湿し、快適な室内空間を保つことができるという作用を有する。また、本実施の形態においては、脱臭ロータ2及び殺菌灯19が、除湿ロータ5に対して下側にずらして配置されているために、除湿ロータ5の下側に位置する貯水タンク12と殺菌灯19とが近接する構造をとることができ、光触媒の励起と同時に貯水タンク12の殺菌もできるという作用を有する。さらに熱交換器9で凝集した水を脱臭ロータ2へと導く水路13を下向きにでき、別途搬送手段を用いなくとも凝集した水を重力によって脱臭ロータ2へ導入することができるという作用を有する。
【0072】
また、本実施の形態における脱臭機1は、除湿ロータ5に触媒を担持してもよく、触媒はPtやPdなどの貴金属触媒や、MnO2やZnOなどの金属酸化物を添加することができる。これらの触媒は常温でも脱臭効果を発揮することができるが、ヒータによって加熱することでより高い触媒活性を発揮し、優れた脱臭効果を得ることができる。こうすることで、被処理空気15が除湿ロータ5を通過する際に除湿するのと同時に脱臭することができ、より脱臭性能の高い脱臭機を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の脱臭装置を用いることにより、比較的低コストで、メンテナンスも容易であり、住居内や車内などの閉鎖された室内空間においても室温が過剰に上昇することを防止できる。また、高湿度環境においても脱臭性能を低下させることなく、様々な悪臭に対して優れた脱臭性能を満たし、且つ室内を適切な湿度に保つことで快適な清浄空気を供給できる脱臭機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施の形態1の脱臭機の概略断面図
【図2】実施の形態2の脱臭機の概略断面図
【符号の説明】
【0075】
1 脱臭機
2 脱臭ロータ
3 冷陰極管
4 回転モータ
5 除湿ロータ
6 回転機構
7 ヒータ
8 再生部
9 熱交換器
10 再生風路
11 温湿度センサ
12 貯水タンク
13 水路
14 送風機
15 被処理空気
16 処理風路
17 吸い込み口
18 吹き出し口
19 殺菌灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒および吸着剤を担持してなる円形状の脱臭ロータと、脱臭ロータの一部を照射する励起部と、前記脱臭ロータの上流側に配置され、回転機構を設けた除湿ロータと、除湿ロータの一部をヒータで加熱して再生する再生部と、前記脱臭フィルタと前記除湿ロータの間に配置された熱交換器と、再生部および熱交換器を循環して水の凝集を行う再生風路と、熱交換器の下部に配置され、凝集した水を溜める貯水タンクと、脱臭ロータの下流に配置された送風機と、送風機によって室内の被処理空気を取り込み、除湿ロータを通過後脱臭ロータによって脱臭した空気を室内に戻す処理風路を備えてなり、除湿ロータで除湿した被処理空気を熱交換器で温めることにより、被処理空気の相対湿度を常に低湿の状態にすることを特徴とする脱臭機。
【請求項2】
脱臭ロータが、除湿ロータの回転と連動して回転することを特徴とする請求項1記載の脱臭機。
【請求項3】
回転する脱臭ロータの一部を再生部のヒータで加熱することを特徴とする請求2記載の脱臭機。
【請求項4】
熱交換器で凝集した水を、加熱された脱臭ロータに滴下して気化させ、室内に放出することを特徴とする請求項3または4記載の脱臭機。
【請求項5】
脱臭ロータに水を滴下する場所が、ヒータの前段部分であることを特徴とする請求項4記載の脱臭機。
【請求項6】
温湿度センサを備え、且つ熱交換器で凝集した水を脱臭ロータに滴下するための水路を備えてなり、再生風路内の相対湿度が高湿度の時は熱交換器で凝集した水を貯水タンクに溜め、低湿度の時は水路を通って脱臭ロータに滴下するように水路を制御することを特徴とする請求項4または5記載の脱臭機。
【請求項7】
処理風路と、除湿ロータおよび脱臭ロータのヒータによって加熱される部分とが区画されていることを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載の脱臭機。
【請求項8】
脱臭ロータが、除湿ロータに対して投影面が一部重なるように除湿ロータよりも下側に配置されることを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載の脱臭機。
【請求項9】
貯水タンクに溜まった水を励起部で殺菌することを特徴とする請求項1乃至8いずれか記載の脱臭機。
【請求項10】
励起部が殺菌灯であることを特徴とする請求項9記載の脱臭機。
【請求項11】
脱臭ロータの基材がグラスファイバークロスであることを特徴とする請求項1乃至10いずれか記載の脱臭機。
【請求項12】
脱臭ロータの基材がセラミックハニカムであることを特徴とする請求項1乃至10いずれか記載の脱臭機。
【請求項13】
脱臭ロータに貴金属触媒を添加することを特徴とする請求項1乃至12いずれか記載の脱臭機。
【請求項14】
除湿ロータに脱臭剤を添加することを特徴とする請求項1乃至13いずれか記載の脱臭機。
【請求項15】
除湿ロータに触媒を添加することを特徴とする請求項1乃至14いずれか記載の脱臭機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−237462(P2008−237462A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80947(P2007−80947)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】