説明

脳マラリアの治療のためのS1Pリアーゼ阻害剤

脳マラリアを治療、管理、及び/又は予防する方法及び組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 発明の分野
本願は脳マラリアを治療、管理及び/又は予防する方法、並びにそれに有用な組成物に関する。
【0002】
本願は、共に2008年10月31日付けで出願された米国仮特許出願第61/109,982号及び同第61/109,987号(それら全体が参照により本明細書中に援用される)の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
2. 背景
2.1. 脳マラリア
200万人を超える人々(その多くはアフリカの子供たちである)が、毎年マラリアで亡くなっている(非特許文献1)。この疾患の根絶は、「現在使用可能な抗マラリア薬に抵抗性のあるマラリア原虫(Plasmodium)(とりわけ最も多く、危険な原因種である熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum))の発生によって阻まれている」(非特許文献1)。
【0004】
熱帯熱マラリア原虫感染の最も重篤な合併症の一つは、熱帯熱マラリア原虫によるマラリアの症例の約7%で発現される脳マラリア(CM)である。CMは昏睡(ブランタイヤー昏睡尺度≦2、又はグラスゴー昏睡尺度≦8)、血液塗抹標本での熱帯熱マラリア原虫として現れ、他に知られる昏睡の原因はない(非特許文献2)。サハラ以南のアフリカでは、毎年およそ785000人の子供たちがCMに罹患しており、平均死亡率は18.6%である(非特許文献1の586頁、非特許文献2のe93頁)。最近の研究から、CMから生還した子供たちの4人に1人が長期の認識障害を患っていることが分かった(非特許文献2)。
【0005】
CMの病因は不確かであるが、簡単に説明すると、「脳毛細血管において寄生赤血球及び免疫細胞が内皮細胞へと付着し閉塞すること(sequestration)が、炎症過程及び他の神経毒性分子の放出を引き起こしている」(非特許文献1の584頁)。一部のCM症例は抗マラリア薬を用いて治療することが可能である(非特許文献1の586頁)。しかし、「強力な抗寄生虫治療にもかかわらず、その後に患者が死亡する回復不能な(irreversible)段階」がある(非特許文献1)。このため、多数の補助的治療が提案されており、その一部は有望視されているが、多くはそうではない。非特許文献1の586頁〜591頁を参照されたい。
2.2. S1P経路
スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)は、複数の器官系に対して強力な効果を有する生物活性分子である(非特許文献3)。この化合物は、5種の関連Gタンパク質共役受容体(S1P1〜S1P5;以前はそれぞれ内皮分化遺伝子(EDG)受容体−1、−5、−3、−6及び−8と称されていた)と低親和性で結合する(非特許文献4)。受容体サブタイプS1P1、S1P2及びS1P3は、心臓血管系において広く発現されている(非特許文献4の85頁〜86頁)。S1P1はリンパ球上で主要な受容体であり、二次リンパ器官からのリンパ球の放出(egress)を制御する(非特許文献4)。
【0006】
S1P受容体の数多くの作動薬が、移植片対宿主病(host-versus-graft disease)、関節リウマチ及び多発性硬化症(MS)を含む疾患における有力な治療薬として報告及び提案されている。特に、S1P1作動薬FTY720(フィンゴリモド)は広く研究されており、現在MSの治療に対する臨床試験中である(非特許文献4の95頁〜100頁)。
【0007】
S1P経路の他の部分に影響を与えることによって、同様に幾つかの疾患を治療することが可能であると考えられる。例えば、エタノールアミンリン酸及び長鎖アルデヒドへのS1Pの切断を触媒する酵素S1Pリアーゼの阻害剤は、関節リウマチモデルにおいて効果的であり、現在臨床試験中である(非特許文献5、非特許文献6)。特許文献1、特許文献2も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0208063号
【特許文献2】米国特許出願第12/038,872号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Golenser, J., et al., Int. J. Parasitology 36:583-593, 583 (2006)
【非特許文献2】John, C.C., et al., Pediatrics 122:e92-e99 (2008)
【非特許文献3】Saba, J.D. and Hla,T. Circ. Res. 94:724-734 (2004)
【非特許文献4】Brinkmann, V.,Pharmacol. & Therapeutics 115:84-105, 85 (2007)
【非特許文献5】Oravecz, T. et al.,"Sphingosine-1-Phosphate Lyase is a Potential Therapeutic Target in Autoimmune Diseases Including Rheumatoid Arthritis," Presentation 1833, American College of Rheumatology Scientific Meeting (San Francisco, October 28, 2008)
【非特許文献6】Pappas, C., et al., "LX2931: A Potential Small Molecule Treatment for Autoimmune Disorders," Presentation 351, American College of Rheumatology Scientific Meeting (San Francisco, October 26, 2008)
【発明の概要】
【0010】
3. 発明の概要
本発明は、治療的又は予防的に効果のある量のS1Pリアーゼ阻害剤を、それを必要とする患者に投与することを含む、脳マラリアを治療、管理及び/又は予防する方法を包含する。特定のS1Pリアーゼ阻害剤は式:
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、XはO又はNRであり、RはOR1A、NHOH、水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、RはOR2A、C(O)OR2A、水素、ハロゲン、ニトリル又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、RはOR3A、N(R3A、NHC(O)R3A、NHSO3A、又は水素であり、RはOR4A、OC(O)R4A、水素、ハロゲン、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、RはN(R5A、水素、ヒドロキシ、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、 アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、かつR1A、R2A、R3A、4A及びR5Aはそれぞれ独立して、水素又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルである)の化合物及びその薬学的に許容される塩である。
【0013】
幾つかの方法では、S1Pリアーゼ阻害剤は、1つ又は複数のさらなる活性薬剤と併用して投与される。
【0014】
本発明は、CMの治療、管理及び/又は予防に有用な医薬組成物も包含する。
4.
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の或る特定の態様は、以下の図面を参照して理解することができる。
【図1】下に示した実施例で説明される、脳マラリアモデルマウスのリンパ球に対するS1Pリアーゼ阻害剤の効果を示す図である。
【図2】下に示した実施例で説明される、脳マラリアモデルマウスの生存に対する、腹腔内投与及び経管にて投与したS1Pリアーゼ阻害剤の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
5. 詳細な説明
本発明は、脳マラリア(CM)の治療、管理及び/又は予防へのS1P受容体作動薬の使用に関する。本発明は、S1P経路を調節することによってCMが治療され得るという本出願人の発見に一部基づく。例えば、本出願人は、S1P受容体を作動させること及びS1Pリアーゼを阻害することの両方が、十分に確立した上記疾患のマウスモデルにおいてCMに対する防御を与え得ることを発見した。例えば、2008年10月31日付けで出願された米国仮特許出願第61/109,991号、2009年7月30日付けで出願された米国仮特許出願第61/229,970号、及び2009年10月31日付けで出願された米国仮特許出願第61/109,982号を参照されたい。
5.1. 定義
特に明示のない限り、「アルケニル」という用語は、炭素数が2〜20(例えば、2〜10又は2〜6)であり、かつ少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、直鎖、分岐鎖及び/又は環状の炭化水素を意味する。代表的なアルケニル部分としては、ビニル、アリル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブチレニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、2,3−ジメチル−2−ブテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、1−ヘプテニル、2−ヘプテニル、3−ヘプテニル、1−オクテニル、2−オクテニル、3−オクテニル、1−ノネニル、2−ノネニル、3−ノネニル、1−デセニル、2−デセニル及び3−デセニルが挙げられる。
【0017】
特に明示のない限り、「アルキル」という用語は、炭素数が1〜20(例えば、1〜10又は1〜4)である、直鎖、分岐鎖及び/又は環状(「シクロアルキル」)の炭化水素を意味する。炭素数1〜4のアルキル部分は「低級アルキル」と称される。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキル部分は、単環又は多環である可能性があり、例としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びアダマンチルが挙げられる。アルキル部分のさらなる例は、直鎖、分岐鎖及び/又は環状の部分を有する(例えば、1−エチル−4−メチル−シクロヘキシル)。「アルキル」という用語は、飽和炭化水素並びにアルケニル部分及びアルキニル部分を含む。
【0018】
特に明示のない限り、「アルキルアリール」又は「アルキル−アリール」という用語は、アリール部分と結合したアルキル部分を意味する。
【0019】
特に明示のない限り、「アルキルヘテロアリール」又は「アルキル−ヘテロアリール」という用語は、ヘテロアリール部分と結合したアルキル部分を意味する。
【0020】
特に明示のない限り、「アルキル複素環」又は「アルキル−複素環」という用語は、複素環部分と結合したアルキル部分を意味する。
【0021】
特に明示のない限り、「アルキニル」という用語は、炭素数が2〜20(例えば、2〜20又は2〜6)であり、かつ少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む、直鎖、分岐鎖又は環状の炭化水素を意味する。代表的なアルキニル部分としては、アセチレニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−メチル−1−ブチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、5−ヘキシニル、1−ヘプチニル、2−ヘプチニル、6−ヘプチニル、1−オクチニル、2−オクチニル、7−オクチニル、1−ノニニル、2−ノニニル、8−ノニニル、1−デシニル、2−デシニル及び9−デシニルが挙げられる。
【0022】
特に明示のない限り、「アルコキシ」という用語は、−O−アルキル基を意味する。アルコキシ基の例としては、−OCH、−OCHCH、−O(CHCH、−O(CHCH、−O(CHCH、−O(シクロペニル(cyclopenyl))及び−O(CHCHが挙げられる。
【0023】
特に明示のない限り、「アリール」という用語は、芳香環又は炭素原子及び水素原子から構成される芳香族若しくは部分芳香族の環系を意味する。アリール部分は、相互に結合又は縮合した複数の環を含んでもよい。アリール部分の例としては、アントラセニル、アズレニル、ビフェニル、フルオレニル、インダン、インデニル、ナフチル、フェナントレニル、フェニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン及びトリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
特に明示のない限り、「アリールアルキル」又は「アリール−アルキル」という用語は、アルキル部分と結合したアリール部分を意味する。
【0025】
特に明示のない限り、「ハロゲン」及び「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を包含する。
【0026】
特に明示のない限り、「ヘテロアルキル」という用語は、その炭素原子のうち少なくとも1つがヘテロ原子(例えば、N、O又はS)で置換されているアルキル部分(例えば、直鎖、分岐鎖又は環状)を指す。
【0027】
特に明示のない限り、「ヘテロアリール」という用語は、その炭素原子のうち少なくとも1つがヘテロ原子(例えば、N、O又はS)で置換されているアリール部分を意味する。例としては、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾキナゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フリル、イミダゾリル、インドリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、フタラジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、テトラゾリル、チアゾリル及びトリアジニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
特に明示のない限り、「ヘテロアリールアルキル」又は「ヘテロアリール−アルキル」という用語は、アルキル部分と結合したヘテロアリール部分を意味する。
【0029】
特に明示のない限り、「複素環」という用語は、炭素、水素及び少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、N、O又はS)から構成される、芳香族、部分芳香族又は非芳香族の単環状又は多環状の環又は環系を指す。複素環は、相互に縮合又は結合した複数(すなわち、2つ以上)の環を含んでもよい。複素環はヘテロアリールを含む。特定の複素環は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1個〜4個のヘテロ原子を含有する5員〜13員の複素環である。他の複素環は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1個〜4個のヘテロ原子を含有する5員〜10員の複素環である。複素環の例としては、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシニル、シンノリニル、フラニル、ヒダントイニル、モルホリニル、オキセタニル、オキシラニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル及びバレロラクタミルが挙げられる。
【0030】
特に明示のない限り、「複素環アルキル」又は「複素環−アルキル」という用語は、アルキル部分と結合した複素環部分を指す。
【0031】
特に明示のない限り、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、非芳香族の複素環を指す。
【0032】
特に明示のない限り、「ヘテロシクロアルキルアルキル」又は「ヘテロシクロアルキル−アルキル」という用語は、アルキル部分と結合したヘテロシクロアルキル部分を指す。
【0033】
特に明示のない限り、「管理する(manage)」、「管理すること(managing)」及び「管理(management)」という用語は、既に疾患又は障害を罹患している患者において、特定の疾患若しくは障害の再発を予防すること及び/又は疾患若しくは障害を罹患している患者が寛解を保つ時間を長期化することを包含する。これらの用語は、疾患若しくは障害の閾値、発症及び/又は継続期間を調節すること、又は患者の疾患若しくは障害に対する応答の仕方を変化させることを包含する。
【0034】
特に明示のない限り、「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容される非毒性の酸又は塩基(無機酸及び無機塩基並びに有機酸及び有機塩基を含む)から調製される塩を指す。好適な薬学的に許容される塩基付加塩としては、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛から生成される金属塩又はリジン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)及びプロカインから生成される有機塩が挙げられるが、これらに限定されない。好適な非毒性の酸としては、酢酸、アルギン酸、アントラニル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、フロ酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グリコール酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、硫酸、酒石酸及びp−トルエンスルホン酸等の無機酸及び有機酸が挙げられるが、これらに限定されない。特定の非毒性酸としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及びメタンスルホン酸が挙げられる。したがって、特定の塩の例としては、塩酸塩及びメシル酸塩が挙げられる。他のものも当該技術分野において既知である。例えば、「レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」(第18版、Mack Publishing, Easton PA: 1990)及び「レミントン:製薬の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」(第19版、Mack Publishing, Easton PA: 1995)を参照されたい。
【0035】
特に明示のない限り、「予防する(prevent)」、「予防すること(preventing)」及び「予防(prevention)」という用語は、患者が特定の疾患又は障害に罹患し始める前に起こる行為を意図するものであり、疾患又は障害の重症度を抑制又は軽減させる。すなわち、これらの用語は予防法を包含する。
【0036】
特に明示のない限り、化合物の「予防的有効量」は、疾患若しくは病態又は疾患若しくは病態に関連する1つ若しくは複数の症状を予防する、又はその再発を予防するのに十分な量である。化合物の予防的有効量は、単独又は他の薬剤との組合せで、疾患の予防において予防的利点を提供する治療剤の量を意味する。「予防的有効量」という用語は、予防法全体を改善する又は別の予防剤の予防効率を高める量を包含し得る。
【0037】
特に明示のない限り、「立体異性体混合物」という用語は、ラセミ混合物及び立体異性体的に豊富な混合物を包含する(例えば、R/S=30/70、35/65、40/60、45/55、55/45、60/40、65/35及び70/30)。
【0038】
特に明示のない限り、「立体異性体的に純粋である」という用語は、化合物の1つの立体異性体を含み、かつその化合物の他の立体異性体を実質的に含まない組成物を意味する。例えば、1つの立体中心を有する化合物の立体異性体的に純粋である組成物は、その化合物の反対の立体異性体を実質的に含まない。2つの立体中心を有する化合物の立体異性体的に純粋である組成物は、その化合物の他のジアステレオマーを実質的に含まない。典型的な立体異性体的に純粋である化合物は、約80重量%を超える化合物の1つの立体異性体と、約20重量%未満の化合物の他の立体異性体とを含むか、約90重量%を超える化合物の1つの立体異性体と、約10重量%未満の化合物の他の立体異性体とを含むか、約95重量%を超える化合物の1つの立体異性体と、約5重量%未満の化合物の他の立体異性体とを含むか、約97重量%を超える化合物の1つの立体異性体と、約3重量%未満の化合物の他の立体異性体とを含むか、又は約99重量%を超える化合物の1つの立体異性体と、約1重量%未満の化合物の他の立体異性体とを含む。
【0039】
特に明示のない限り、「置換された」という用語は、化学的な構造又は部分を記載するために使用する場合は、その構造又は部分の誘導体を指し、ここで、その水素原子の1つ又は複数は、アルコール、アルデヒド、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニル、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、t−ブチル)、アルキニル、アルキルカルボニルオキシ(−OC(O)アルキル)、アミド(−C(O)NH−アルキル−又は−アルキルNHC(O)アルキル)、アミジニル(−C(NH)NH−アルキル又は−C(NR)NH)、アミン(アルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ等の第1級、第2級及び第3級のアミン)、アロイル、アリール、アリールオキシ、アゾ、カルバモイル(−NHC(O)O−アルキル−又は−OC(O)NH−アルキル)、カルバミル(例えば、CONH及びCONH−アルキル、CONH−アリール及びCONH−アリールアルキル)、カルボニル、カルボキシル、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩化物、シアノ、エステル、エポキシド、エーテル(例えば、メトキシ、エトキシ)、グアニジノ、ハロ、ハロアルキル(例えば、−CCl、−CF、−C(CF)、ヘテロアルキル、ヘミアセタール、イミン(第1級及び第2級)、イソシアネート、イソチオシアネート、ケトン、ニトリル、ニトロ、酸素、ホスホジエステル、スルフィド、スルホンアミド(例えば、SONH)、スルホン、スルホニル(アルキルスルホニル、アリールスルホニル及びアリールアルキルスルホニルを含む)、スルホキシド、チオール(例えば、スルフヒドリル、チオエーテル)並びに尿素(−NHCONH−アルキル−)等(これらに限定されない)の化学的部分又は官能基で置換される。
【0040】
特に明示のない限り、化合物の「治療的有効量」は、疾患若しくは病態の治療若しくは管理において治療的利点を提供するか、又は疾患若しくは病態に関連した1つ若しくは複数の症状を遅延若しくは最小化するのに十分な量である。化合物の治療的有効量は、単独又は他の治療法との組合せで、疾患又は病態の治療又は管理において治療的利点を提供する、治療剤の量を意味する。「治療的有効量」という用語は、治療法全体を改善する、疾患若しくは病態の症状若しくは原因を軽減若しくは回避する、又は別の治療剤の治療効率を高める量を包含し得る。
【0041】
特に明示のない限り、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」及び「治療(treatment)」という用語は、患者が特定の疾患又は障害を患っている間に起こる行為を意図するものであり、疾患若しくは障害の重症度を軽減させるか又は疾患若しくは障害の進行を遅延若しくは減速させる。
【0042】
特に明示のない限り、「挙げられる(include)」という用語は、「挙げられるが、これらに限定されない」と同一の意味を有し、「挙げられる(includes)」という用語は、「挙げられるが、これらに限定されない」と同一の意味を有する。同様に、「等(such as)」という用語は、「等(これらに限定されない)」という用語と同一の意味を有する。
【0043】
特に明示のない限り、一連の名詞の直前にくる1つ又は複数の形容詞は、名詞のそれぞれを修飾するものと解釈される。例えば、「必要に応じて置換されたアルキル、アリール又はヘテロアリール」という語句は、「必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアリール又は必要に応じて置換されたヘテロアリール」と同一の意味を有する。
【0044】
より大きな化合物の一部を形成する化学的部分は、単一分子として存在する場合に一般的に与えられる名称又はその基に一般的に与えられる名称を用いて本明細書中に記載され得ることに留意すべきである。例えば、「ピリジン」及び「ピリジル」という用語には、他の化学的部分と結合した部分を記載するのに使用する場合に、同一の意味が与えられる。したがって、「XOH(式中、Xはピリジルである)」及び「XOH(式中、Xはピリジンである)」という2つの語句には同一の意味が与えられ、化合物である、ピリジン−2−オール、ピリジン−3−オール及びピリジン−4−オールを包含する。
【0045】
構造の立体化学又は構造の一部分が、例えば、太線又は破線で示されない場合、構造又は構造の一部分は、そのすべての立体異性体を包含すると解釈されるものとすることにも留意するべきである。さらに、図に示した原子価が満たされていない任意の原子は、原子価を満たすのに十分な水素原子と結合すると推測される。また、一本の破線と平行な一本の実線で描かれた化学結合は、原子価が許容される場合、単結合及び二重結合(例えば、芳香族)の両方を包含する。
【0046】
5.2 S1Pリアーゼ阻害剤
本発明の実施形態は、以下に記載される式I.A及び式II.Aの化合物を採用する。どちらの式の化合物もS1Pリアーゼを阻害することが示されている。例えば、米国特許出願公開第2007/0208063号、米国特許第7,598,280号を参照されたい。
【0047】
特定の化合物は、式I.A:
【0048】
【化2】

【0049】
(式中、XはO又はNRであり、RはOR1A、NHOH、水素又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、RはOR2A、C(O)OR2A、水素、ハロゲン、ニトリル又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、RはOR3A、N(R3A、NHC(O)R3A、NHSO3A又は水素であり、RはOR4A、OC(O)R4A、水素、ハロゲン又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、RはN(R5A、水素、ヒドロキシ又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、かつR1A、R2A、R3A、R4A及びR5Aはそれぞれ独立して、水素又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルである)の化合物及びその薬学的に許容される塩である。
【0050】
式I.Aの特定の化合物では、XがOであり、Rが炭素数1〜4のアルキル、フェニル、ベンジル又はフェニルエチルであり、Rが水素であり、かつR及びRの一方がヒドロキシルである場合に、R及びRの他方が炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル、1つの炭素につき最大1つのヒドロキシルを有する炭素数1〜6のポリヒドロキシアルキル、1つの炭素につき最大1つのアセチルを有する炭素数1〜6のポリアセチルアルキル、フェニル、ベンジル又はフェニルエチルではない。
【0051】
特定の実施形態では、化合物は、2−アセチル−4−テトラヒドロキシブチルイミダゾール、1−(4−(1,1,2,2,4−ペンタヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)エタノン、1−(2−アセチル−1H−イミダゾール−4−イル)ブタン−1,1,2,2−テトライルテトラアセテート又は1−(2−アセチル−1H−イミダゾール−4−イル)ブタン−1,1,2,2,4−ペンタイルペンタアセテートではない。
【0052】
特定の実施形態は、式I.B:
【0053】
【化3】

【0054】
(式中、XはO又はNRであり、RはOR1A、NHOH、水素又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、RはOR2A、C(O)OR2A、水素、ハロゲン、ニトリル又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、RはOR3A、N(R3A、NHC(O)R3A、NHSO3A又は水素であり、RはOR6A、OC(O)R6A、N(R6B、NHC(O)R6B、水素又はハロゲンであり、RはOR7A、OC(O)R7A、N(R7B、NHC(O)R7B、水素又はハロゲンであり、RはOR8A、OC(O)R8A、N(R8B、NHC(O)R8B、水素又はハロゲンであり、RはCHOR9A、CHOC(O)R9A、N(R9B、NHC(O)R9B、水素又はハロゲンであり、R1A、R2A、R3A、R6A、R7A、R8A及びR9Aはそれぞれ独立して、水素又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、かつR6B、R7B、R8B及びR9Bはそれぞれ独立して、水素又は1つ若しくは複数のヒドロキシ基若しくはハロゲン基で必要に応じて置換されたアルキルである)の化合物及びその薬学的に許容される塩を採用する。
【0055】
式I.Bの特定の化合物では、1)XがOであり、Rが炭素数1〜4のアルキル、フェニル、ベンジル又はフェニルエチルであり、かつRが水素である場合に、R、R、R及びRのうち少なくとも2つがヒドロキシル又はアセテートではなく、2)XがOであり、Rがメチルであり、Rが水素であり、R及びRの両方がヒドロキシルであり、かつR及びRの一方が水素である場合に、他方がNHC(O)R9Bではなく、3)XがOであり、RがOR1Aであり、R1Aが水素又は低級アルキルであり、かつRが水素である場合に、R、R、R及びRのうち少なくとも1つ(すべてではない)がヒドロキシル又はアセテートである。
【0056】
本発明の特定の化合物は、式I.B(a):
【0057】
【化4】

【0058】
のものである。
【0059】
他は、式I.C:
【0060】
【化5】

【0061】
(式中、Zは必要に応じて置換されたアルキルであり、RはOR1A、NHOH、水素又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、RはOR2A、C(O)OR2A、水素、ハロゲン、ニトリル又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、RはOR3A、N(R3A、NHC(O)R3A、NHSO3A又は水素であり、かつR1A、R2A及びR3Aはそれぞれ独立して、水素又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルである)のものである。
【0062】
本発明の別の実施形態は、式I.D:
【0063】
【化6】

【0064】
(式中、RはOR1A、NHOH、水素又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、RはOR3A、N(R3A、NHC(O)R3A、NHSO3A又は水素であり、RはOR6A、OC(O)R6A、N(R6B、NHC(O)R6B、水素又はハロゲンであり、RはOR7A、OC(O)R7A、N(R7B、NHC(O)R7B、水素又はハロゲンであり、RはOR8A、OC(O)R8A、N(R8B、NHC(O)R8B、水素又はハロゲンであり、RはCHOR9A、CHOC(O)R9A、N(R9B、NHC(O)R9B、水素又はハロゲンであり、かつR1A、R3A、R6A、R7A、R8A及びR9Aはそれぞれ独立して、水素又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルである)の化合物及びその薬学的に許容される塩を採用する。
【0065】
特定の化合物は、式I.D(a):
【0066】
【化7】

【0067】
のものである。
【0068】
以下に記載される部分を含有する、上述したそれぞれの式に関して、本発明の或る特定の実施形態では、以下のようになる:
幾つかでは、XはOである。他では、XはNRである。
【0069】
幾つかでは、Rは水素である。他では、Rは必要に応じて置換された低級アルキルである。他では、RはNHOHである。他では、RはOR1Aであり、かつR1Aは例えば、水素又は必要に応じて置換された低級アルキルである。
【0070】
幾つかでは、Rは水素である。他では、Rは水素ではない。他では、Rはニトリルである。他では、Rは必要に応じて置換された低級アルキルである。他では、RはOR2Aである。他では、RはC(O)OR2Aである。幾つかでは、R2Aは水素又は必要に応じて置換された低級アルキルである。
【0071】
幾つかでは、RはOR3Aである。他では、RはN(R3A又はNHC(O)R3Aである。他では、RはNHSO3Aである。幾つかでは、R3Aは水素又は必要に応じて置換された低級アルキルである。他では、R3Aは必要に応じて置換されたアリール又は複素環である。
【0072】
幾つかでは、RはOR4Aである。他では、Rはハロゲンである。
【0073】
幾つかでは、RはN(R5Aである。他では、Rは水素である。他では、Rはヒドロキシルである。他では、Rはヘテロアルキル(例えば、アルコキシ)である。他では、Rは必要に応じて置換されたアルキルである。他では、Rは必要に応じて置換されたアリールである。
【0074】
幾つかでは、R、R、R及びRの1つ又は複数はヒドロキシ又はハロゲンである。幾つかでは、R、R、R及びRのすべてはヒドロキシル又はアセテートである。
【0075】
幾つかでは、Zは1つ又は複数のヒドロキシル部分、アセテート部分又はハロゲン部分で必要に応じて置換されたアルキルである。
【0076】
本発明は、式II:
【0077】
【化8】

【0078】
(式中、Aは必要に応じて置換された複素環であり、RはOR1A、OC(O)R1A、C(O)OR1A、水素、ハロゲン、ニトリル、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、RはOR2A、OC(O)R2A、水素、ハロゲン、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、RはN(R3A、水素、ヒドロキシ、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、かつR1A、R2A、及びR3Aはそれぞれ独立して、水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルである)の化合物及びその薬学的に許容される塩も採用する。
【0079】
特定の化合物は、式II.A(a)又は式II.A(b):
【0080】
【化9】

【0081】
(式中、RはOR5A、OC(O)R5A、N(R5B、NHC(O)R5B、水素、又はハロゲンであり、RはOR6A、OC(O)R6A、N(R6B、NHC(O)R6B、水素、又はハロゲンであり、RはOR7A、OC(O)R7A、N(R7B、NHC(O)R7B、水素、又はハロゲンであり、RはCHOR8A、CHOC(O)R8A、N(R8B、NHC(O)R8B、水素、又はハロゲンであり、R1A、R5A、R6A、R7A、及びR8Aはそれぞれ独立して、水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、かつR5B、R6B、R7B、及びR8Bはそれぞれ独立して、水素、又は1つ又は複数のヒドロキシ基若しくはハロゲン基で必要に応じて置換されたアルキルである)のものである。
【0082】
本発明の一実施形態は、式II.B:
【0083】
【化10】

【0084】
(式中、XはCR、CHR、N、NR、O、又はSであり、YはCR、CHR、N、NR、O、又はSであり、ZはCR、CHR、N、NR、O、又はSであり、
はOR1A、C(O)OR1A、水素、ハロゲン、ニトリル、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、RはOR2A、OC(O)R2A、水素、ハロゲン、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、RはN(R3A、水素、ヒドロキシ、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、R1A、R2A、及びR3Aはそれぞれ独立して、水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、Rはそれぞれ独立して、OR4A、OC(O)R4A、水素、ハロゲン、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、Rはそれぞれ独立して、水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、かつR1A、R2A、R3A、及びR4Aはそれぞれ独立して、水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルである)の化合物及びその薬学的に許容される塩を採用する。
【0085】
特定の化合物は、式II.B(a)又は式II.B(b):
【0086】
【化11】

【0087】
(式中、RはOR5A、OC(O)R5A、N(R5B、NHC(O)R5B、水素、又はハロゲンであり、RはOR6A、OC(O)R6A、N(R6B、NHC(O)R6B、水素、又はハロゲンであり、RはOR7A、OC(O)R7A、N(R7B、NHC(O)R7B、水素、又はハロゲンであり、RはCHOR8A、CHOC(O)R8A、N(R8B、NHC(O)R8B、水素、又はハロゲンであり、R1A、R5A、R6A、R7A、及びR8Aはそれぞれ独立して、水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、かつR5B、R6B、R7B、及びR8Bはそれぞれ独立して、水素、又は1つ又は複数のヒドロキシ基若しくはハロゲン基で必要に応じて置換されたアルキルである)のものである。
【0088】
別の実施形態は、式II.C:
【0089】
【化12】

【0090】
(式中、XはCR、CHR、N、NR、O、又はSであり、YはCR、CHR、N、NR、O、又はSであり、ZはCR、CHR、N、NR、O、又はSであり、
はOR1A、C(O)OR1A、水素、ハロゲン、ニトリル、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、RはOR2A、OC(O)R2A、水素、ハロゲン、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、
はN(R3A、水素、ヒドロキシ、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、R1A、R2A、及びR3Aはそれぞれ独立して、水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、Rはそれぞれ独立して、OR4A、OC(O)R4A、水素、ハロゲン、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、Rはそれぞれ独立して、水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、かつR1A、R2A、R3A、及びR4Aはそれぞれ独立して、水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルである)の化合物及びその薬学的に許容される塩を包含する。
【0091】
特定の化合物は、式II.C(a)又は式II.C(b):
【0092】
【化13】

【0093】
(式中、RはOR5A、OC(O)R5A、N(R5B、NHC(O)R5B、水素、又はハロゲンであり、RはOR6A、OC(O)R6A、N(R6B、NHC(O)R6B、水素、又はハロゲンであり、RはOR7A、OC(O)R7A、N(R7B、NHC(O)R7B、水素、又はハロゲンであり、RはCHOR8A、CHOC(O)R8A、N(R8B、NHC(O)R8B、水素、又はハロゲンであり、R1A、R5A、R6A、R7A、及びR8Aはそれぞれ独立して、水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、へテロアルキル、複素環、アルキル複素環、若しくは複素環アルキルであり、かつR5B、R6B、R7B、及びR8Bはそれぞれ独立して、水素、又は1つ又は複数のヒドロキシ基若しくはハロゲン基で必要に応じて置換されたアルキルである)のものである。
【0094】
上記で開示される各種式(例えば式II.A、式II.B、及び式II.C)に関して、規定通りに、本発明の幾つかの化合物では、Aは必要に応じて置換された5員複素環である。例としては、必要に応じて置換されたジヒドロ−イミダゾール、ジヒドロ−イソオキサゾール、ジヒドロ−ピラゾール、ジヒドロ−チアゾール、ジオキソラン、ジチオラン、ジチオール、イミダゾール、イソオキサゾール、イソオキサゾリジン、オキサチオラン、及びピラゾールが挙げられる。一実施形態では、Aは必要に応じて置換されたフラン、チオフェン、又はピロールではない。
【0095】
幾つかの化合物では、Aは必要に応じて置換された6員複素環(例えばピリミジン)である。
【0096】
幾つかでは、XはCR又はCHRである。幾つかでは、XはN又はNRである。幾つかでは、XはO又はSである。
【0097】
幾つかでは、YはCR又はCHRである。幾つかでは、YはN又はNRである。幾つかでは、YはO又はSである。
【0098】
幾つかでは、ZはCR又はCHRである。幾つかでは、ZはN又はNRである。幾つかでは、ZはO又はSである。
【0099】
幾つかでは、XがNであり、かつYがOである。幾つかでは、XがNであり、かつYがNRである。幾つかでは、XがNであり、かつYがSである。幾つかでは、XがNであり、かつZがOである。幾つかでは、XがNであり、かつZがNRである。幾つかでは、XがNであり、かつZがSである。幾つかでは、XがNであり、YがNであり、かつZがNRである。
【0100】
幾つかでは、Rは水素である。幾つかでは、Rはニトリルである。幾つかでは、Rは必要に応じて置換された低級アルキルである。幾つかでは、RがOR1A又はC(O)OR1Aであり、R1Aが、例えば、水素又は必要に応じて置換された低級アルキルである。
【0101】
幾つかでは、RはOR2Aである。幾つかでは、RがOC(O)R2Aであり、R2Aが、例えば水素である。幾つかでは、Rはハロゲンである。
【0102】
幾つかでは、Rは必要に応じて置換されたアルキル(例えば、1つ又は複数のハロゲン又はOR3A部分(ここで、R3Aは、例えば水素又はアセテートである)で置換されたアルキル)である。幾つかでは、Rは水素である。幾つかでは、Rはヒドロキシルである。幾つかでは、Rは必要に応じて置換されたへテロアルキル(例えばアルコキシ)である。幾つかでは、Rは1つ又は複数のハロゲン、ヒドロキシル、又はアセテートで置換されたへテロアルキルである。
【0103】
幾つかでは、Rは水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、若しくはアルキルアリールである。
【0104】
幾つかでは、R、R、R、及びRはそれぞれ水素又はハロゲンである。幾つかでは、R、R、R、及びRの1つ又は複数がヒドロキシル又はアセテートである。幾つかでは、R、R、R、及びRのすべてがヒドロキシルである。
【0105】
幾つかでは、Rは水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、若しくはアルキルアリールである。
【0106】
本発明の化合物は、1つ又は複数の立体中心を含有してもよく、エナンチオマーのラセミ混合物又はジアステレオマーの混合物として存在してもよい。本発明は、かかる化合物の立体異性体的に純粋である形態及びそれらの形態の混合物を包含する。立体異性体は、不斉合成されるか、又はキラルカラム若しくはキラル分割剤等の標準的な技法を用いて不斉分割され得る。例えば、Jacques, J., et al.著「エナンチオマー、ラセミ化合物及び分割(Enantiomers, Racemates and Resolutions)」(Wiley Interscience, New York, 1981);Wilen, S. H., et al., Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel, E. L.著「炭素化合物の立体化学(Stereochemistry of Carbon Compounds)」(McGraw Hill, NY, 1962);及びWilen, S. H.著「分割剤及び光学分割に関する表(Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions)」、268頁(E.L. Eliel編、Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN, 1972)を参照されたい。
【0107】
本発明はさらに、本明細書中で開示される化合物の立体異性体混合物を包含する。また、混合物又は純粋若しくは実質的に純粋な形態のいずれかで、シス(Z)及びトランス(E)アルケン異性体並びにシン及びアンチオキシム異性体等、本明細書中で開示される化合物の立体配置異性体を包含する。
【0108】
本発明の化合物は、例えば米国特許出願公開第2007/0208063号、米国特許第7,598,280号で公開されたような、当該技術分野で既知の方法によって調製することができる。
5.3. さらなる活性薬剤
本発明の一部の実施形態では、S1Pリアーゼ阻害剤に添加して1つ又は複数の活性薬剤を使用する。かかるさらなる薬剤の例としては、抗マラリア薬(例えば、キニーネ、キニジン、並びにアルテムエーテル及びアーテスネート等のアルテミシニン誘導体)、浸透圧性利尿薬(例えば、マンニトール及び尿素)、抗痙攣薬(例えば、ジアゼパム、フェニトイン、フェノバルビタール及びフェノバルビトン)、解熱剤(例えば、パラセタモール)、抗酸化剤、並びに抗炎症薬(例えば、NSAIDS、ステロイド、シクロスポリン、サリドマイド、レブリミド、抗TNF抗体(例えば、インフリキシマブ、エタネルセプト)、及びペントキシフィリン)が挙げられる。他の例としては、カードラン硫酸、クルクミン及びLMP−420が挙げられる。
5.4. 使用方法
本発明は、患者に治療的又は予防的に有効な量のS1Pリアーゼ阻害剤を投与することを含む、CMを予防、管理及び治療する方法を包含する。薬物の量、投薬スケジュール及び投与経路は薬物及び患者によって変化し、当業者であれば容易に決定することができる。一部のCM患者においては薬物の経口投与は困難である場合があるため、好ましい投与経路としては静脈内及び筋肉内が挙げられる。
【0109】
本発明の一部の実施形態では、S1Pリアーゼ阻害剤を1つ又は複数のさらなる活性薬剤と併用して投与する。2種以上の薬物の投与は同時(例えば、同じ剤形又は別個の剤形でほぼ同時に患者に投与する)であってもよいが、その必要はない。
【0110】
CMを治療及び管理する方法は、昏睡(ブランタイヤー昏睡尺度≦2、又はグラスゴー昏睡尺度≦8)、血液塗抹標本での熱帯熱マラリア原虫を含むCMの1つ又は複数の症状を示し、他に知られる昏睡の原因はない患者に対して好適である。CMを予防する方法は、CMの危険性のある患者、例えば血液塗抹標本で熱帯熱マラリア原虫が見られ、必要に応じて重篤なマラリアの症状(例えば、重篤なマラリア貧血、呼吸困難、ショック、突発性出血、低血糖、反復発作、ヘモグロビン尿、低血糖、衰弱、意識障害、黄疸、高寄生虫血症(hyperparasitemia))を含む、マラリアの1つ又は複数のさらなる症状を示す患者に対して好適である。患者には成人及び小児(例えば、5歳〜12歳)が含まれる。
5.5. 医薬製剤
或る特定の医薬組成物は、患者への経口投与、粘膜(例えば、鼻、舌下、膣、口腔若しくは直腸)投与、非経口(例えば、皮下、静脈内、急速静注、筋肉内若しくは動脈内)投与又は経皮投与に好適な単一の単位剤形である。剤形の例としては、錠剤;カプレット;軟ゼラチンカプセル等のカプセル;カシェ剤;トローチ;ロゼンジ;分散液;坐剤;軟膏;パップ(湿布);ペースト;粉末;包帯剤;クリーム;硬膏;溶液;パッチ;エアロゾル(例えば、経鼻スプレー又は吸入剤);ゲル;懸濁液(例えば、水性若しくは非水性の液体懸濁液、水中油型乳濁液又は油中水型乳濁液)、溶液及びエリキシルを含む、患者への経口投与又は粘膜投与に好適な液体剤形;患者への非経口投与に好適な液体剤形;並びに患者への非経口投与に好適な液体剤形を提供するために再構成され得る滅菌固体(例えば、結晶性又は非結晶性の固体)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
剤形の組成及び種類は、その用途によって異なる。例えば、疾患の急性期治療で使用される剤形は、それが含む活性成分の1つ又は複数を、同一疾患の慢性期治療で使用される剤形よりも多量に含有し得る。同様に、非経口剤形は、それが含む活性成分の1つ又は複数を、同一疾患を治療するために使用される経口剤形よりも少量で含有し得る。本発明によって包含される特定の剤形が互いに異なる、これらの方法及び他の方法は、当業者にはすぐに分かるものである。例えば、「レミントンの薬学」、第18版(Mack Publishing、Easton PA: 1990)を参照されたい。
5.5.1. 経口剤形
経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、錠剤(例えば、チュアブル錠)、カプレット、カプセル及び液体(例えば、フレーバーシロップ)等(これらに限定されない)の別個の剤形として提供され得る。かかる剤形は、所定量の活性成分を含有し、当業者に既知の製薬法によって調製され得る。例えば、「レミントンの薬学」、第18版(Mack Publishing、Easton PA: 1990)を参照されたい。
【0112】
典型的な経口剤形は、従来の薬学的配合技法に従い、活性成分(複数可)を少なくとも1つの賦形剤と密に混合して組み合わせることによって調製する。賦形剤は、投与に望ましい製剤の形態に応じて広範な形態をとり得る。液体経口剤形が、CMを罹患している大抵の患者にとって好ましい。
5.5.2. 非経口剤形
非経口剤形は、皮下、静脈内(急速静注を含む)、筋肉内及び動脈内を含む(これらに限定されない)各種経路によって患者に投与され得る。典型的には異物に対する患者の自然防御を回避して投与されるため、非経口剤形は具体的には滅菌されているか又は患者に投与する前に滅菌可能である。非経口剤形の例としては、すぐに注射できる溶液、注射用の薬学的に許容されるビヒクルにすぐに溶解又は懸濁できる乾燥品、すぐに注射できる懸濁液及び乳濁液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
本発明の非経口剤形を提供するために使用することのできる好適なビヒクルは、当業者に既知である。例としては、注射用水USP;塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース/塩化ナトリウム注射液及び乳酸加リンゲル注射液等(これらに限定されない)の水性ビヒクル;エチルアルコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等(これらに限定されない)の水混和性ビヒクル;並びにトウモロコシ油、綿実油、ラッカセイ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル及び安息香酸ベンジル等(これらに限定されない)の非水性ビヒクルが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0114】
6. 実施例
本発明の態様は、以下の実施例から理解することができるが、これらは、本発明の範囲を限定するものではない。
6.1. (E/Z)−1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)−エタノンオキシムの合成
【0115】
【化14】

【0116】
1−[4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシ−ブチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−エタノン(THI、Halweg, K.M. and Buechi, G., J.Org.Chem. 50: 1134-1136(1985)に従い調製)(350mg、1.52mmol)を水(10ml)に懸濁させた。ヒドロキシルアミン塩酸塩(126.8mg、1.82mmol、1.2当量)及び酢酸ナトリウム(247.3mg、3.04mmol、2当量)を添加し、懸濁液を50℃で撹拌した。およそ4時間後に反応混合物が透明になった。撹拌を50℃で16時間継続した。LCMS分析から、生成物の形成及び出発物質の不存在が示唆された。反応混合物を室温に到達させ、細孔フィルタを通過させた。本溶液をそのまま用いて、生成物を分取HPLCを用いて精製した:AtlantisのHILICシリカカラム30mm×100mm;アセトニトリル中、2%〜21%の水(6分間);45ml/分;検出254nm。生成物画分を回収し、アセトニトリルを減圧下で蒸発させた。水溶液を凍結乾燥することにより、生成物を、およそ3:1のアンチ異性体:シン異性体の混合物、白色固体として得た:284mg(77%)。
【0117】
LCMS:Sunfire C−18カラム、4.6mm×50mm;水(0.1% TFA)中0%〜17% MeOH(0.1% TFA)(5分間);流量=3ml/分;検出220nm;保持時間:0.56分(シン異性体、246.0(M+1))及び0.69分(アンチ異性体、246.0(M+1))。H NMR(DO及びDCl)δ2.15及び2.22(シングレット、3H)、3.5〜3.72(m、4H)、4.76(br、OHプロトン及びHO)、4.95及び4.97(シングレット、1H)、7.17及び7.25(シングレット、1H)。13C NMR(DO及びDCl)δ10.80、16.76、63.06、64.59、64.75、70.86、72.75、72.85、117.22、117.64、135.32、138.39、141.35、144.12。
6.2. (E)−1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)−エタノンオキシムの合成
本化合物を、以下に示すように2段階で調製した。
【0118】
【化15】

【0119】
まず、THI(21.20mmol、4.88g)を入れたフラスコに、水(25ml)及び1N HCl水溶液(21.2ml、21.2mmol)を添加した。すべての固体が溶解した後、トリチルヒドロキシルアミン(25.44mmol、7.00g)のジオキサン(55ml)溶液を添加し、50℃で4時間、反応を維持した。終了時に、反応液を室温に冷却し、1N NaOH水溶液を添加して溶液をpH=7に調整した。次に、中和溶液を濃縮して塑性物質とし、これをシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィ[DCM中、10% MeOH/1% NHOH(5重量%水溶液)]によって精製することにより、トリチルエーテルを透明な塑性体として得た。ヘキサンで塑性物質を処理し、濃縮することにより、白色の発泡体を得た。これを、真空乾燥して、フレーク状固体とすることができた(10.00g、収率97%)。
【0120】
次に、激しく撹拌した、トリチルオキシムエーテル(4.8g、10mmol)の室温ジオキサン(90ml)溶液に、HClのジオキサン溶液(4M、60ml)を添加した。数分後、白色沈殿を観察し、合計30分間撹拌を継続してから、フリットガラスフィルタで濾過し、ケーキをジオキサン及びエーテルですすいだ。ケーキを水(200ml)中に再溶解し、5分間、超音波処理した後、0℃に冷却し、セライト(5g)処理し、フリットガラスフィルタで濾過した。水溶液を濃縮乾固した後、メタノール(30ml)/ジエチルエーテル(60ml)から単離することにより、E−オキシムを、分析的に純粋な白色粉末として得た(3.8g、収率80%)。
6.3. (E/Z)−1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)エタノンO−メチルオキシムの合成
【0121】
【化16】

【0122】
上記の通り、実施例6.3において、ヒドロキシルアミン塩酸塩の代わりにメトキシルアミン塩酸塩を使用することによって、標題化合物を調製した(収率74%)。生成物は白色のふわふわした固体であった。
【0123】
LCMS:Sunfire C−18カラム、4.6mm×50mm;水(0.1% TFA)中、0%〜17% MeOH(0.1% TFA)(5分間);流量=3ml/分;検出220nm;保持時間:1.59分(シン異性体、260.1(M+1))及び1.73分(アンチ異性体、260.1(M+1))。H NMR(DO)δ2.18及び2.22(シングレット、3H)、3.54〜3.60(m、1H)、3.66〜3.79(m、3H)、3.94及び3.95(シングレット、3H)、4.76(br、OHプロトン及びHO)、4.93及び4.97(シングレット、1H)、7.17及び7.25(シングレット、1H)。13C NMR(DO)δ11.55、17.56、62.32、62.38、62.99、63.07、67.09、71.54、73.86、119.09、138.64、139.79、142.95、144.98、148.97。
6.4. 1−(5−メチル−4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)エタノンの合成
表題の化合物を、以下に概説するプロセスを用いて7段階で調製した。
【0124】
【化17】

【0125】
4−メチルイミダゾール−1−ジメチルアミノスルホンアミド(2):4−メチルイミダゾール1(3.00g、36.54mmol)の室温トルエン(200ml)溶液に、トリエチルアミン(5.6ml、40.20mmol)及びN,N−ジメチルアミノスルファモイルクロライド(3.9ml、36.54mmol)を連続して添加した。容器を5℃の冷蔵庫で48時間保存した後、固体を反応液から濾別し、液体を濃縮することにより、4−メチルイミダゾール−1−ジメチルアミノスルホンアミドの位置異性体2及び2aの2.5:1混合物を得た。粗生成物を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィ(80%〜100%酢酸エチル:ヘキサン溶出液)で精製することにより、2:2aを5.5:1の位置異性体の混合物で得た(4.31g、収率62%):M+1=190.1。
【0126】
4−メチル−2−アセチルイミダゾール−1−ジメチルアミノスルホンアミド(3):イミダゾール2(1.99g、10.54mmol)の−78℃テトラヒドロフラン(70ml)溶液に、n−BuLiのヘキサン溶液(2.5M、11.60ml)をゆっくりと添加した。40分後、N−メトキシ−N−メチルアセトアミド(1.30g、12.65mmol)を冷却溶液に滴下した。反応液を室温に加温し、2時間維持した。終了時に、飽和NHCl水溶液(20ml)を添加して反応をクエンチした後、水(20ml)で希釈した。層を分離し、有機層を酢酸エチル(2×30ml)で洗浄した。合わせた有機層を飽和食塩水(brine)(20ml)で洗浄後、MgSOで乾燥し、濃縮した。粗生成物を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィ(60%〜80%酢酸エチル:ヘキサン溶出液)によって精製することにより、3を油として得た(1.85g、収率76%):M+1=232.1。
【0127】
4−メチル−2−(1−(トリイソプロピルシリルオキシ)ビニル)−1−ジメチルアミノスルホンアミド(4):イミダゾール3(1.65g、7.14mmol)のジクロロメタン(45ml)溶液に、トリエチルアミン(1.00ml、14.28mmol)及びトリイソプロピルシリルトリフルオロメタンスルホネート(2.12ml、7.86mmol)を連続して添加した。反応を室温で20時間維持した後、飽和NaHCO水溶液(20ml)を添加して反応をクエンチした。混合物を水(20ml)で希釈し、層を分離した。水層をジクロロメタン(2×20ml)で洗浄し、合わせた有機層を飽和食塩水溶液(20ml)で洗浄後、MgSOで乾燥し、濃縮した。得られた油を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィ(1%〜2%メタノール:ジクロロメタン溶出液)によって精製することにより、シリルエノールエーテル(4)を橙色の油として得た(2.26g、収率83%):M+1=388.2。
【0128】
ラクトール(5):イミダゾール4(2.26g、5.84mmol)の−78℃テトラヒドロフラン(40ml)溶液に、n−BuLiのヘキサン溶液(2.5M、3.27ml)をゆっくりと添加した。30分後、(−)−2,3−O−イソプロピリデン−D−エリスロノラクトン(1.66g、10.51mmol)のテトラヒドロフラン(10ml)溶液を−78℃溶液にゆっくりと添加した。反応を−78℃で2時間維持した後、0℃に加温してから飽和NHCl水溶液(20ml)を添加して反応をクエンチした。混合物を水(10ml)で希釈し、層を分離した。有機層を酢酸エチル(2×20ml)で洗浄し、合わせた有機層を飽和食塩水(20ml)で洗浄後、MgSOで乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲル(30%〜50%酢酸エチル:ヘキサン溶出液)で精製することにより、ラクトール5を白色の発泡体として得た(2.69g、収率85%):M+1=546.4。
【0129】
ジオール(6):ラクトール5(2.09g、3.83mmol)の0℃エタノール(70ml)溶液に、顆粒状NaBH(1.4g、38.32mmol)を数回に分けて添加した。2時間後、反応液を室温に30分間加温した後、濃縮した。残渣を水(40ml)及び酢酸エチル(40ml)中に再溶解した。二相混合物を10分間激しく撹拌した後、層を分離した。水層を酢酸エチル(2×40ml)で洗浄し、合わせた有機層を飽和食塩水(30ml)で洗浄した後、MgSOで乾燥し、濃縮した。粗発泡体をシリカでのフラッシュクロマトグラフィ(5%メタノール:ジクロロメタン溶出液)によって精製することにより、ジオール6(1.88g、収率90%)を、分離不可能なベンジル位のジアステレオマーの3:1混合物として得た:M+1=547.4。
【0130】
イミダゾール(7):フッ化セシウム(315mg、2.08mmol)を、イミダゾール6(567mg、1.04mmol)のエタノール(10ml)溶液に添加し、65℃に加温した。1時間後、反応液を室温に冷却し、飽和NHCl水溶液(1ml)で処理した後、濃縮した。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィ(5%メタノール:ジクロロメタン溶出液)によって精製することにより、イミダゾール7(380mg、収率94%)を白色の発泡体として得た:M+1=392.1。
【0131】
最終生成物(8):保護されたイミダゾール7(380mg、0.97mmol)をアセトン(6ml)に溶解し、水(6ml)及び濃HCl水溶液(3ml)で連続的に処理した。容器を40℃に45分間加温した後、室温に冷却し、濃縮した。粗物質を、以下の方法によって、非緩衝溶媒を使用する150mm×30mmのZorbax C−6カラムを使用する逆相分取クロマトグラフィによって精製した:1%アセトニトリル:水を定組成で5分間流した(T=1.52分)。凍結乾燥(lyophylization)後、化合物8を、ジメチルアミノスルファミン酸塩、無定形固体として得た:M+1=245.1;H NMR(400MHz、CDCl)主ピークδ5.04(d、1H)、3.62(comp.m、2H)、3.42(comp.m、2H)、2.62(s、6H)、2.43(s、3H)、2.21(s、3H);副ピークδ5.01(d、1H)、3.79(comp.m、2H)、3.55(comp.m、2H)、2.62(s、6H)、2.43(s、3H)、2.21(s、3H)。
6.5. (1R,2S,3R)−1−(2−(1−ヒドラゾノエチル)−1H−イミダゾール−4−イル)ブタン−1,2,3,4−テトラオールの合成
【0132】
【化18】

【0133】
1−[4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシ−ブチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−エタノン(THI、Halweg, K.M. and Buechi, G., J. Org. Chem. 50:1134-1136(1985)に従い調製)(148mg、0.64mmol)をメタノール(3ml)及び水(1ml)に懸濁させた。ヒドラジン水和物(35mg、0.7mmol、1.2当量)及び酢酸(1滴)を添加し、懸濁液を50℃で6時間撹拌した。LCMS分析から、生成物の形成及び出発物質の不存在が示唆された。反応混合物を室温に冷却し、テトラヒドロフランで希釈した。得られた白色沈殿を回収し、テトラヒドロフランで洗浄することにより、生成物を、およそ3:1のE:Z異性体の混合物、白色固体として得た:90mg(58%)。
【0134】
LCMS:Zorbax C−8カラム、4.6mm×150mm;水中10%〜90%(10mM酢酸アンモニウム)(6分間);流量=2ml/分;検出220nm;保持時間:0.576分(シン異性体、245.0(M+1))及び1.08分(アンチ異性体、245.0(M+1))。H NMR(DMSO−d6)δ2.5(シングレット、DMSO下で3H)、3.4〜3.7(m、4H)、4.3(m、2H)、4.6(m、2H)、4.8(m、1H)、4.9及び5.0(ダブレット、1H)、7.04及び7.21(シングレット、1H)。
6.6. N’−(1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)エチリデン)アセトヒドラジドの合成
【0135】
【化19】

【0136】
1−[4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシ−ブチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−エタノン(160mg、0.70mmol)をメタノール(3ml)及び水(1ml)に懸濁させた。酢酸ヒドラジド(56mg、0.75mmol、1.2当量)及び塩酸(1滴、12)を添加し、懸濁液を50℃で48時間撹拌した。LCMS分析から、生成物の形成及び出発物質の不存在が示唆された。反応混合物を室温に冷却し、テトラヒドロフランで希釈した。得られた白色沈殿を回収し、テトラヒドロフランで洗浄することにより、生成物を、およそ3:1のE:Z異性体の混合物、白色固体として得た:129mg(65%)。
【0137】
LCMS:Sunfire C−18カラム、4.6mm×50mm;水中2%〜20%(10mM酢酸アンモニウム)(2.5分間);流量=3.5ml/分;検出220nm;保持時間:0.53分(287.1(M+1))。H NMR(DMSO−d6)δ2.2(シングレット、3H)、2.5(シングレット、DMSO下で3H)、3.4〜3.7(m、4H)、4.3(br、2H)、4.6〜5.0(br、4H)、7.0(br、1H)、10.30及び10.37(シングレット、1H)。
6.7. (E)−4−メチル−N’−(1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)エチリデン)ベンゼンスルホノヒドラジドの合成
【0138】
【化20】

【0139】
1−[4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシ−ブチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−エタノン(153mg、0.67mmol)をメタノール(3ml)及び水(1ml)に懸濁させた。p−トルエンスルホン酸ヒドラジド(140mg、0.75mmol、1.2当量)及び塩酸(1滴、12)を添加し、懸濁液を50℃で24時間撹拌した。LCMS分析から、生成物の形成及び出発物質の不存在が示唆された。反応混合物を室温に冷却し、シリカゲル上に乾燥して載せた(dry-loaded)。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィ(SiO 10g、酢酸エチル:メタノール=4:1)により、生成物を、およそ85:15のE:Z異性体の混合物、白色固体として得た:142mg(53%)。
【0140】
LCMS:Sunfire C−18カラム、4.6mm×50mm;水中10%〜90%(10mM酢酸アンモニウム)(2.5分間);流量=3.5ml/分;検出220nm;保持時間:0.50分(399.2(M+1))及び0.66分(399.3(M+1))。H NMR(メタノール−d4)δ2.2(シングレット、3H)、2.41及び2.45(シングレット、3H)、3.6〜3.85(m、4H)、4.99及び5.05(シングレット、1H)、7.09(br s、1H)、7.39(d、2H、j=8Hz)、7.77及び7.87(d、2H、j=8Hz)。
6.8. N’−(1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)エチリデン)ベンゾヒドラジドの合成
【0141】
【化21】

【0142】
1−[4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシ−ブチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−エタノン(150mg、0.65mmol)をメタノール(3ml)及び水(1ml)に懸濁させた。安息香酸ヒドラジド(102mg、0.75mmol、1.2当量)及び塩酸(1滴、12N)を添加し、懸濁液を50℃で18時間撹拌した。LCMS分析から、生成物の形成及び出発物質の不存在が示唆された。均質な反応混合物を室温に冷却し、真空中で濃縮した。C−18逆相SPE(AlltechのHi−load C18 10g、水から20%メタノール/水へと勾配させる)により、生成物を、およそ1:1のE:Z異性体の混合物、無色固体として得た:193mg(85%)。
【0143】
LCMS:Sunfire C−18カラム、4.6mm×50mm;水中10%〜90%(10mM酢酸アンモニウム)(2.5分間);流量=3.5ml/分;検出220nm;保持時間:0.49分(349.2(M+1))。H NMR(メタノール−d4)δ2.2(シングレット、3H)、2.42及び2.45(シングレット、3H)、3.6〜3.85(m、4H)、5.11及び5.14(シングレット、1H)、7.30(br s、1H)、7.40〜7.7(m、4H)、7.80及び7.95(m、2H)、8.1(br s、1H)。
6.9. (E)−エチル2−(1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)エチリデン)ヒドラジンカルボキシレートの合成
【0144】
【化22】

【0145】
1−[4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシ−ブチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−エタノン(150mg、0.65mmol)をメタノール(3ml)及び水(1ml)に懸濁させた。カルバジン酸エチル(78mg、0.75mmol、1.2当量)及び塩酸(1滴、12)を添加し、懸濁液を50℃で18時間撹拌した。LCMS分析から、生成物の形成及び出発物質の不存在が示唆された。反応混合物を室温に冷却し、真空中で濃縮し、アセトンで希釈した。得られた白色沈殿を回収し、アセトンで洗浄することにより、生成物を、1つの明確な異性体、白色固体として得た:96mg(47%)。
【0146】
LCMS:Sunfire C−18カラム、4.6mm×50mm;水中2%〜20%(10mM酢酸アンモニウム)(2.5分間);流量=3.5ml/分;検出220nm;保持時間:0.25分(317.35(M+1))。H NMR(メタノール−d4)δ1.36(t、3H、j=8Hz)、2.28(s、3H)、2.42及び2.45(シングレット、3H)、3.60〜3.85(m、4H)、4.34(dd、2H、j=8Hz)、5.08(s、1H)、7.27(s、1H)。
6.10. (E)−N’−(1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)エチリデン)ニコチノヒドラジドの合成
【0147】
【化23】

【0148】
1−[4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシ−ブチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−エタノン(215mg、0.93mmol)をメタノール(3ml)及び水(1ml)に懸濁させた。ニコチン酸ヒドラジド(137mg、1.0mmol、1.1当量)及び塩酸(1滴、12)を添加し、懸濁液を50℃で48時間撹拌した。LCMS分析から、生成物の形成及び出発物質の不存在が示唆された。反応混合物を室温に冷却し、真空中で一部濃縮した。得られた白色沈殿を回収し、水で洗浄することにより、生成物を、1つの明確な異性体、白色固体として得た:311mg(95%)。
【0149】
LCMS:Sunfire C−18カラム、4.6mm×50mm;水中10%〜90%(10mM酢酸アンモニウム)(2.5分間);流量=3.5ml/分;検出220nm;保持時間:0.22分(350.27(M+1))。H NMR(DMSO−d)δ2.37(s、3H)、3.60〜3.85(m、4H)、4.40(m、2H)、4.71(m、1H)、5.01(m、2H)、5.16(m、1H)、7.25(br、1H)、7.64(br、1H)、8.35(br、1H)、8.80(br、1H)、9.14(br、1H)。
6.11. 3−クロロ−N’−(1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)エチリデン)ベンゾヒドラジドの合成
【0150】
【化24】

【0151】
1−[4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシ−ブチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−エタノン(194mg、0.84mmol)をエタノール(4ml)及び水(1ml)に懸濁させた。3−クロロ安息香酸ヒドラジド(170mg、1.0mmol、1.2当量)及び塩酸(1滴、12)を添加し、懸濁液を50℃で48時間撹拌した。LCMS分析から、生成物の形成及び出発物質の不存在が示唆された。反応混合物を室温に冷却し、真空中で一部濃縮した。得られた白色沈殿を回収し、エタノールで洗浄することにより、生成物を、約3:1のE:Z混合物、白色固体として得た:108mg(33%)。
【0152】
LCMS:Sunfire C−18カラム、4.6mm×50mm;水中10%〜90%(10mM酢酸アンモニウム)(2.5分間);流量=3.5ml/分;検出220nm;保持時間:0.63分(383.23(M+1))。H NMR(メタノール−d4)δ2.44(s、3H)、3.60〜3.90(m、4H)、5.12(s、1H)、7.29(s、1H)、7.65(m、2H)、8.04(m、2H)。
6.12. (E)−4−フルオロ−N’−(1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)エチリデン)ベンゾヒドラジドの合成
【0153】
【化25】

【0154】
1−[4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシ−ブチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−エタノン(172mg、0.74mmol)をエタノール(4ml)及び水(1ml)に懸濁させた。4−フルオロ安息香酸ヒドラジド(131mg、0.85mmol、1.1当量)及び塩酸(1滴、12)を添加し、懸濁液を55℃で48時間撹拌した。LCMS分析から、生成物の形成及び出発物質の不存在が示唆された。反応混合物を室温に冷却し、真空中で一部濃縮した。得られた白色沈殿を回収し、エタノールで洗浄することにより、生成物を、1つの明確な異性体、白色固体として得た:97mg(35%)。
【0155】
LCMS:Sunfire C−18カラム、4.6mm×50mm;水中10%〜90%(10mM酢酸アンモニウム)(2.5分間);流量=3.5ml/分;検出220nm;保持時間:0.55分(367.24(M+1))。H NMR(メタノール−d4、DCl 1滴)δ2.55(s、3H)、3.60〜3.90(m、4H)、5.22(s、1H)、7.30(m、2H)、7.54(s、1H)、8.08(m、2H)。
6.13. (E)−6−アミノ−N’−(1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)エチリデン)ニコチノヒドラジドの合成
【0156】
【化26】

【0157】
1−[4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシ−ブチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−エタノン(115mg、0.50mmol)をエタノール(4ml)及び水(1ml)に懸濁させた。置換ヒドラジド(91mg、0.6mmol、1.2当量)及び塩酸(1滴、12)を添加し、懸濁液を55℃で48時間撹拌した。LCMS分析から、生成物の形成及び出発物質の不存在が示唆された。反応混合物を室温に冷却し、真空中で一部濃縮した。得られた白色沈殿を回収し、エタノールで洗浄することにより、生成物を、1つの明確な異性体、白色固体として得た:136mg(75%)。
【0158】
LCMS:Sunfire C−18カラム、4.6mm×50mm;水中10%〜90%(10mM酢酸アンモニウム)(2.5分間);流量=3.5ml/分;検出220nm;保持時間:0.15分(365.32(M+1))。H NMR(メタノール−d4、DCl 1滴)δ2.58(s、3H)、3.60〜3.90(m、4H)、5.22(s、1H)、7.17(m、1H)、7.54(m、1H)、8.44(m、1H)、8.68(m、1H)。
6.14. (E)−N’−(1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)エチリデン)イソニコチノヒドラジドの合成
【0159】
【化27】

【0160】
1−[4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシ−ブチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−エタノン(168mg、0.73mmol)を、エタノール(4ml)及び水(1ml)に懸濁させた。イソニコチン酸ヒドラジド(110mg、0.80mmol、1.1当量)及び塩酸(1滴、12N)を添加し、懸濁液を55℃で24時間撹拌した。LCMS分析から、生成物の形成及び出発物質の不存在が示唆された。反応混合物を室温に冷却し、真空中で一部濃縮した。得られた白色沈殿を回収し、エタノールで洗浄することにより、生成物を、1つの明確な異性体、白色固体として得た:136mg(75%)。
【0161】
LCMS:Sunfire C−18カラム、4.6mm×50mm;水中10%〜90%(10mM酢酸アンモニウム)(2.5分間);流量=3.5ml/分;検出220nm;保持時間:0.15分(365.32(M+1))。H NMR(メタノール−d4、DCl 1滴)δ2.63(s、3H)、3.60〜3.90(m、4H)、5.12(s、1H)、7.58(s、1H)、8.63(d、2H、j=8Hz)、9.14(d、2H、j=8Hz)。
6.15. (E)−N’−(1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)エチリデン)ビフェニル−3−カルボヒドラジドの合成
【0162】
【化28】

【0163】
1−[4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシ−ブチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−エタノン(315mg、1.36mmol)及びビフェニル−3−カルボヒドラジド(360mg、1.81mmol)をDMSO(2ml)に懸濁させた。濃塩酸(2滴)を添加し、懸濁液を40℃で5時間撹拌した。LCMS分析から、生成物の形成及び出発物質の不存在が示唆された。反応混合物を室温に冷却し、メタノールで希釈し、逆相HPLC(10mM NHOAc/アセトニトリル)によって精製した。所望物を有する2つの画分(E異性体及びZ異性体)を別個に回収し、凍結乾燥した。画分1は白色固体95mg(16%)を与えた。画分2は白色固体82mg(14%)であった。
【0164】
画分1:分析用HPLC Zorbax C−8カラム、4.6mm×150mm;溶媒A=10mM酢酸アンモニウム;溶媒B=MeCN;5% B(0分)、5% B(1分)、90% B(3分)、終了(4分);流量=3ml/分;検出220nm;保持時間:2.9分(注:他の異性体を約5%含有する)。M+H=425.28。H NMR(DO 2滴を含むDMSO−d6)δ2.3(シングレット、3H)、3.3〜3.7(m、4H)、4.9(m、1H)、7.19(s、1H)、7.37(m、1H)、7.47(m、2H)、7.67(m、3H)、7.85〜7.92(m、2H)、8.15(s、1H)。同一の試料のHSQCにより、2.3(CH)のプロトンシグナルは20ppmの炭素シグナルと関連付けられた。
【0165】
画分2:分析用HPLC Zorbax C−8カラム、4.6mm×150mm;溶媒A=10mM酢酸アンモニウム;溶媒B=MeCN;5% B(0分)、5% B(1分)、90% B(3分)、終了(4分);流量=3ml/分;検出220nm;保持時間:2.963分(注:他の異性体を約6%含有する)。M+H=425.28。H NMR(DO 2滴を含むDMSO−d)δ2.4(シングレット、3H)、3.4〜3.6(m、4H)、4.77及び4.86(ブロードシングレット、合計=1H)、6.9及び7.1(ブロードシングレット、合計=1H)、7.40(m、1H)、7.50(m、2H)、7.61(m、1H)、7.73(m、2H)、7.87(m、2H)、8.10(s、1H)。同一の試料のHSQCにより、2.4(CH)のプロトンシグナルは13ppmの炭素シグナルと関連付けられた。
6.16. N−ヒドロキシ−4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−カルボキサミドの合成
【0166】
【化29】

【0167】
1−[4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシ−ブチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−エタノン(18g、78.3mmol)をジクロロエタン(160ml)及び2,2−ジメトキシプロパン(160ml)に懸濁させた。4−トルエンスルホン酸(3g)を添加し、混合物を70℃で18時間撹拌した。反応液をジクロロメタンで希釈し、水、5%炭酸水素塩、飽和食塩水で洗浄後、SiO上に乾燥して載せた。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル)によって精製することにより、1−(4−((4S,4’R,5R)−2,2,2’,2’−テトラメチル−4,4’−ビ(1,3−ジオキソラン)−5−イル)−1H−イミダゾール−2−イル)エタノンを無色の油として得た(18.8g、60.6mmol、77%;M+H計算値:311.4、実測値:311.3)。
上記で得られた生成物(20g、64.5mmol)をDMFに溶解した。KCO(12.5g、90.3mmol)、続けて臭化ベンジル(10.7ml、90.3mmol)を添加した。反応を50℃で18時間加熱した。LC/MS分析から、出発物質の残存が示唆された。追加量の臭化ベンジル(5ml、42mmol)を添加し、温度を60℃に上昇させた。3時間後、反応液を冷水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機抽出物を水、その後飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、シリカゲル上に載せた。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン中、20%〜40%酢酸エチル)により、1−(1−ベンジル−4−((4S,4’R,5R)−2,2,2’,2’−テトラメチル−4,4’−ビ(1,3−ジオキソラン)−5−イル)−1H−イミダゾール−2−イル)エタノンを得た(16.1g、62%)。
【0168】
得られた中間体(13g、32.5mmol)をジオキサン(120ml)に溶解し、市販の漂白剤(200ml、6% NaOCl)に溶解したNaOH(13.2g)で処理した。2時間激しく撹拌した後、反応液を酢酸エチルで抽出した。有機抽出物を飽和食塩水で洗浄した後、セライトで乾燥した。濾過及び蒸発により得られた固体を、さらに真空乾燥することにより、1−ベンジル−4−((4S,4’R,5R)−2,2,2’,2’−テトラメチル−4,4’−ビ(1,3−ジオキソラン)−5−イル)−1H−イミダゾール−2−カルボン酸を得た(13g、定量的収率、M+H計算値:403.2、実測値:403.2)。
【0169】
上記で得られた生成物(600mg、1.49mmol)、O−トリチルヒドロキシルアミン(820mg、2.98mmol)、EDAC(430mg、2.24mmol)及びHOBt(305mg、2.24mmol)を、DMF(8ml)及びトリエチルアミン(622μl、4.47mmol)と混合した。反応液を周囲温度で22時間撹拌し、濃縮した後、DCM/MeOHを用いてシリカ上に載せた。フラッシュクロマトグラフィ(MeOH/DCM)により、1−ベンジル−4−((4S,4’R,5R)−2,2,2’,2’−テトラメチル−4,4’−ビ(1,3−ジオキソラン)−5−イル)−N−(トリチルオキシ)−1H−イミダゾール−2−カルボキサミドを得た(480mg、0.73mmol、49%、M+H計算値:660.3、実測値:660.4)。
【0170】
上記で得られた生成物(480mg、0.73mmol)をエタノール(50ml)に溶解した。Pd(OH)(500mg、炭素上20%、湿潤)を添加し、反応液をH(65psi)下で18時間撹拌し、濾過した。エタノールを真空留去した。残渣をDCMに溶解し、フラッシュクロマトグラフィ(MeOH/DCM)によって精製することにより、N−ヒドロキシ−4−((4S,4’R,5R)−2,2,2’,2’−テトラメチル−4,4’−ビ(1,3−ジオキソラン)−5−イル)−1H−イミダゾール−2−カルボキサミドを得た(150mg、0.46mmol、63%、M+H計算値:328.1、実測値:328.3)。
【0171】
上記で得られた生成物(150mg、0.46mmol)を、アセトン(8ml)及び水(8ml)に溶解した。反応液を、ドライアイス/アセトン浴を用いて−15℃の内温に冷却した。内温が−10℃未満に保たれるような速度で濃HCl(3ml)を添加した。冷浴を取り外して、反応液を周囲温度で3時間、4℃で18時間、再度周囲温度で7時間撹拌した。アセトン及び幾らかの水の真空留去後、沈殿が生じた。ジオキサン(20ml)、続けてTHF(10ml)を添加した。固体を濾過によって単離し、THF/ジオキサンで洗浄し、真空乾燥することにより、N−ヒドロキシ−4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−カルボキサミドを塩酸塩として得た(98mg、0.40mmol、87%)。
【0172】
質量分析:M+H計算値:248.1、実測値:248.2。分析用HPLC:Luna Pheny−Hexyl、5um、4.6mm×50mm、定組成の10mM酢酸アンモニウム(アセトニトリルを1%含む)、流量=3ml/分、検出220nm、保持時間=0.245分。H NMR(DMSO−d6)δ3.37〜3.64(m、4H)、4.96(ブロードシングレット、1H)、7.47(s、1H)、11.9(ブロードシングレット、1H)。
6.17. (1R,2S,3R)−1−(2−(5−メチルイソオキサゾール−3−イル)−1H−イミダゾール−5−イル)ブタン−1,2,3,4−テトラオールの合成
【0173】
【化30】

【0174】
表題の化合物を、下記スキーム2に示す一般的方法Aにより調製した:
【0175】
【化31】

【0176】
ここで、aはDCE:(MeO)CMe(1:1)、p−TsOH、70℃であり、bはPhCONH、MeOH、1N HCl(1.0当量)であり、cは2N HCl/ジオキサンであり、dはn−BuLi(4.0当量)、THF、0℃、次にN−メチル−N−メトキシアセトアミド(5.0当量)であり、eは1N HCl:ジオキサン(1:1)である。
【0177】
具体的には、1(4.34g、18.87mmol)のジクロロメタン(30ml)スラリーに、2,2−ジメトキシプロパン(30ml)、続いてp−トルエンスルホン酸一水和物(900mg、4.72mmol)を添加した。スラリーを70℃に16時間加熱した後、室温に冷却し、過剰トリエチルアミン(1ml)で処理した。反応液を濃縮し、トルエンで共沸乾燥して、琥珀色固体を得た。これを精製せずに、すぐに続けて使用した。
【0178】
琥珀色固体をMeOH(100ml)中に溶解した後、N−トリチルヒドロキシルアミン(6.75g、24.53mmol)及び1N HCl(18.5ml、18.5mmol)で処理した。反応液は1時間後に透明となり、これを18時間室温に保った。終了時に、反応液を10N NaOH溶液でpH=7に中和し、次に減圧下で濃縮した。粗物質をシリカゲルでのクロマトグラフィ(32μm〜63μm、10% MeOH:CHCl、1% NHOH添加)によって精製することにより、保護生成物2(9.8g、収率91%、2工程)を白色発泡体として得た。
【0179】
4M無水ジオキサン(20ml)を、2(3.11g、5.48mmol)の無水ジオキサン(40ml)溶液に添加した。1時間後、反応液を真空下で濃縮し、次に無水DCM(60ml)中に再溶解し、過剰トリエチルアミン(5ml)で処理した後、再度濃縮した。粗生成物をシリカゲル上に加圧送液することにより(flashed over)(3%〜8% MeOH:CHCl、0.5%〜1.0% NHOH添加)、オキシム3(1.05g、収率59%)を白色発泡体として得た。
【0180】
3(500mg、1.54mmol)の−45℃THF(15ml)溶液に、n−BuLi(3.85ml、6.16mmol)の1.6Mヘキサン溶液を滴下した。10分後、N−メチル−N−メトキシアセトアミド(0.79ml、7.69mmol)を滴下し、反応液を室温に加温した。2時間後、NHCl(10ml)を添加することで反応をクエンチし、水(5ml)で希釈して固体を溶解させた。層を分離して、水層をEtO(2×20ml)で抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水(25ml)で洗浄した後、MgSOで乾燥して、真空下で濃縮した。得られた発泡体をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィ(60%〜90% EtOAc:ヘキサン)により精製することにより、白色発泡固体を得た。
【0181】
この中間体白色固体のジオキサン(5ml)溶液に、1N HCl(5ml)を添加した。反応液を80℃に2時間加熱した後、減圧下で濃縮乾固させた。得られたガラス状固体を水(8ml)から凍結乾燥することにより、4(224mg、収率48%、2工程)が白色のふわふわした粉末を得た。MS m/z C1115[M+H]=270;H NMR(400MHz、DO):δ7.54(s、1H)、6.7(s、1H)、5.2(s、1H)、3.83〜3.59(m、4H)、2.49(s、1H);13C NMR(100MHz、DO):δ174.3、150.0、136.6、135.0、118.1、101.0、73.1、71.0、65.0、63.2。
6.18. (1R,2S,3R)−1−(2−(5−エチルイソオキサゾール−3−イル)−1H−イミダゾール−5−イル)ブタン−1,2,3,4−テトラオールの合成
【0182】
【化32】

【0183】
この化合物を、中間体3をN−メチル−N−メトキシエチルアミドでアルキル化することにより、一般的方法Aで合成した。MS m/z C1217[M+H]=284;H NMR(400MHz、DO):δ7.24(s、1H)、6.54(s、1H)、4.95(s、1H)、3.84〜3.56(m、4H)、2.82〜2.77(m、2H)、1.25(t、J=6.0Hz、3H)。
6.19. (1R,2S,3R)−1−(2−(イソオキサゾール−3−イル)−1H−イミダゾール−5−イル)ブタン−1,2,3,4−テトラオールの合成
【0184】
【化33】

【0185】
この化合物を、下記スキーム3に示すように一般的方法Aを変更することにより調製した:
【0186】
【化34】

【0187】
ここで、aはn−BuLi(4.0当量)、THF、0℃、次にDMF(5.0当量)であり、bはTFAA、ピリジン、DCMであり、cは1N HCl:ジオキサン(1:1)、50℃である。
【0188】
具体的には、3(424mg、1.30mmol)の−45℃THF(15ml)溶液に、n−BuLi(2.1ml、5.25mmol)の2.5Mヘキサン溶液を滴下した。10分後、無水DMF(0.505ml、6.52mmol)を滴下し、反応液を室温に加温した。2時間後、NHCl(10ml)を添加することにより反応をクエンチし、水(5ml)で希釈して固体を溶解させた。層を分離して、水層をEtO(2×20ml)で洗浄した。合わせた有機層を飽和食塩水(25ml)で洗浄した後、MgSOで乾燥して、真空下で濃縮した。得られた発泡体をシリカゲル上に加圧送液することにより(3%〜6% MeOH:CHCl、0.5% NHOH添加)、ヘミアセタール5(220mg、収率47%)を白色発泡体として得た。
【0189】
5(130mg、0.37mmol)の0℃THF溶液に、ピリジン(120μl、1.48mmol)及びトリフルオロ酢酸無水物を順に添加した。反応液を室温に10分間加温した後、55℃に16時間加熱した。終了時に、反応液を真空下で濃縮し、次にシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィ(60%〜90% EtOAc:ヘキサン)によって精製することにより、ヘテロ二環式(heterobicycle)ビスケタール(60mg、収率47%)を白色発泡体として得た。これを最後に標準酸性条件を用いて脱保護し、実施例3の化合物を白色結晶性固体として得た。MS m/z C1013[M+H]=256;H NMR(400MHz、DO)δ8.87(s、1H)、7.55(s、1H)、7.05(s、1H)、5.21(s、1H)、3.75(m、3H)、3.63(m、2H)。
6.20. (1R,2S,3R)−1−(2−(イソオキサゾール−3−イル)−1H−イミダゾール−5−イル)ブタン−1,2,3,4−テトラオールの代替合成
表題の化合物を、下記スキーム4に示す、本明細書中で一般的方法Bと称される手法によっても調製した:
【0190】
【化35】

【0191】
ここで、aはMeOH中NaOMe(1.0当量)、室温、次にHCl水溶液である)。
【0192】
具体的には、ニトリル7(600mg、6.38mmol)の室温MeOH(10ml)溶液に、25%(w/v)MeONa(0.83ml、3.83mmol)を添加した。3時間後、フルクトサミンアセテート(1.53g、6.38mmol)を添加し、溶液を激しく攪拌しながら5時間室温に維持した。次に、別の25%(w/v)MeONa(0.66ml、3.19mmol)をこの濃厚スラリーに添加した。16時間後、反応液を濾過し、ケーキを冷MeOHで洗浄した。ケーキを次に1N HCl(20ml)で処理し、濾過した。この水溶液を真空下で一定重量に濃縮することで、表題の化合物(1.30g、収率66%)を白色粉末として得た。
6.21. (1R,2S,3R)−1−(2−(2−メチルチアゾール−4−イル)−1H−イミダゾール−4−イル)ブタン−1,2,3,4−テトラオールの合成
【0193】
【化36】

【0194】
表題の化合物を、2−メチルチアゾール−4−カルボニトリル(1.023g、8.25mmol)、メタノール中ナトリウムメトキシド(25wt%、1.07ml、4.95mmol)、メタノール(8.25ml)、及び化合物8(2.00g、8.26mmol)を用いて一般的方法Bにより調製した。2.5日後、さらなるメタノール中ナトリウムメトキシド(25wt%、0.891ml、4.125mmol)を添加した。24時間後、形成された固体を濾過により回収し、冷メタノールで洗浄して、表題の化合物(1.70g、5.96mmol、収率72%)を得た。MS m/z C1115S[M+H]=286;H NMR(400MHz、CDOD)δ2.81(s、3H)、3.67〜3.75(m、2H)、3.77〜3.88(m、2H)、5.21(s、1H)、7.47(s、1H)、8.35(s、1H)。
6.22.(1R,2S,3R)−1−(2−(1−ベンジル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)−1H−イミダゾール−4−イル)ブタン−1,2,3,4−テトラオール塩酸塩の合成
【0195】
【化37】

【0196】
表題の化合物を、以下の変更を添加した一般的方法Bにより調製した:1−ベンジル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボニトリル(2.10g、11.4mmol)をメタノール(12ml)中に溶解し、メタノール中ナトリウムメトキシド(25wt%、1.48ml、6.8mmol)で処理し、18時間攪拌し、8を添加して、反応液を18時間攪拌した。得られた固体を濾過により単離し、メタノールで洗浄し、真空中で乾燥して白色固体(3.20g、9.28mmol、収率81%)を得た。この固体をTHF(50ml)に懸濁し、氷浴中で冷却し、HCl(ジオキサン中4M、7.5ml、30mmol)を添加した。氷浴を取り外し、懸濁液を4時間攪拌した。固体を濾過により単離し、THFで洗浄し、真空中で乾燥して表題の化合物(3.50g、9.19mmol、収率99%)を白色(shite)固体として得た。MS m/z C1619[M+H]+=346;H NMR(400MHz、CDOD)δ2.81(s、3H)、3.67〜3.75(m、2H)、3.77〜3.88(m、2H)、5.21(s、1H)、7.47(s、1H)、8.35(s、1H)。
6.23. (1R,2S,3R)−1−(1H、1’H−2,2’−ビイミダゾール−5−イル)ブタン−1,2,3,4−テトラオールの合成
【0197】
【化38】

【0198】
表題の化合物を、以下の変更を加えた一般的方法Bにより調製した。1H−イミダゾール−2−カルボニトリル(0.39g、4.17mmol)のメタノール(4.8ml)溶液に、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(25wt%、0.54g、0.57ml、2.50mmol)を添加し、16時間攪拌し、10mlのMeOH中の化合物8(0.964g、4.17mmol)を添加した。形成された沈殿を濾過し、アセトン(15ml)で洗浄した。濾液を濃縮乾固させ、分取HPLC(10mM酢酸アンモニウム水溶液/アセトニトリル)により精製して、表題の化合物(0.0141g、0.0554mmol)を灰白色固体として得た。MS m/z C1014[M+H]=255;H NMR(400MHz、CDOD)δ3.56〜3.57(m、2H)、3.67〜3.74(m、2H)、4.90(s、1H)、7.04(s、1H)。
6.24. (1R,2S,3R)−1−(2−(5−メトキシ−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−1H−イミダゾール−5−イル)ブタン−1,2,3,4−テトラオールの合成
【0199】
【化39】

【0200】
HClの1M溶液(10ml)を、イミダゾール5(スキーム3、500mg、1.41mmol)の室温MeOH(10ml)溶液に添加した。反応液を50℃に8時間加熱し、室温に冷却し、濃縮乾固することにより、表題の化合物(430mg、収率100%)を1:1のジアステレオマー混合物の淡黄色粉末として得た。MS m/z C1117[M+H]=288;H NMR(400MHz、DO)δ7.06(s、1H)、5.71(d,J=7.2Hz)及び5.41(d,J=7.2Hz、1H)、4.72(s、1H)、3.2〜3.4(m、3H)、2.98〜2.80(m、2H)。
6.25. (1R,2S,3R)−1−(2−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−1H−イミダゾール−5−イル)ブタン−1,2,3,4−テトラオールの合成
【0201】
【化40】

【0202】
表題の化合物を、1−(5−((4S、4’R、5R)−2,2,2’、2’−テトラメチル−4、4’−ビ(1,3−ジオキソラン)−5−イル)−1H−イミダゾール−2−イル)エタノン(化合物9)から以下のように調製した。9(975mg、3.15mmol)のTHF(15ml)溶液を、ヘキサメチルジシラザンカリウム(0.5Mトルエン(15.72ml)溶液、7.86mmol)の−10℃THF(15ml)溶液にゆっくりと添加した。反応液を10分間−10℃に維持し、その後酢酸エチル(1.55ml、15.75mmol)を添加した。反応液を室温に1時間加温した後、30mlのNHCl(飽和水溶液)を添加することによりクエンチした。層を分離して、水層をEtOAc(2×30ml)で洗浄した。合わせた有機層を水(30ml)及び飽和食塩水(30ml)で洗浄した後、MgSOで乾燥し、濃縮した。得られた黄褐色の物質を、さらに精製することなく使用した。
【0203】
粗物質をEtOH(20ml)中に溶解し、1N HCl(5ml)で酸性化した。次に、攪拌した室温の溶液を過剰ヒドラジン一水和物(200μl)で処理した。終了時に、1N NaOHで反応液をpH=7に調整した後、約10mlの容量に濃縮した。DCM(30ml)を添加して、この水溶液から沈殿した固体を溶解させ、層を分離した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。粗生成物(crude)をシリカ上に加圧送液することにより(5%〜10% MeOH:DCM溶出液)、保護ピラゾール(204mg、収率19%)を透明発泡体として得た。
【0204】
1N HCl溶液(5ml)を、保護ヘテロビサイクル(heterobicycle)(180mg、0.52mmol)の室温溶液に添加し、反応液を50℃に加熱した。1.5時間後、反応液を室温に冷却し、次に濃縮乾固させた。発泡体を2mlのMeOH中に再溶解した後、3mlのEtOでトリチュレートし、0℃に冷却し、その後液体をデカントした。固体をEtO(2×2ml)で洗浄した後、高真空下で乾燥することにより、表題の化合物(130mg、収率70%)を白色粉末として得た。MS m/z C1616[M+H]=269;H NMR(400MHz、DO)δ7.28(s、1H)、6.52(s、1H)、5.07(d,J=0.9Hz、1H)、3.74〜3.54(m、4H)、2.22(s、1H);13C NMR(DO):δ142.8、139.1、136.3、134.1、116.0、104.0、72.6、70.6、64.4、62.7、9.6。
6.26. 脳マラリアモデル
図1及び図2は、10匹のメスのC56Bl/6マウスの3つの群を用いて行われた実験の結果を表す。3つの群すべてのマウスを、100万匹の寄生虫(マウスマラリア原虫(P. berghei ANKA))を含む500μlの媒体を腹腔内投与することで感染させた。第1群をコントロール群とした。前記S1Pリアーゼ阻害剤(E)−1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)−エタノンオキシムを、第2群のマウスに腹腔内投与し(100mg/kg)、第3群のマウスには経管にて投与した(100mg/kg)。薬物は毎日投与され、感染の前日に初めて投与した。
【0205】
薬物の最初の投与の24時間後、マウスから尾静脈血を採取し、フローサイトメトリー分析を使用して、CD3、CD4、CD8及びCD19に対する抗体を用いてB細胞及びT細胞のレベルを評価した。動物を毎日体重、ヘマトクリット値、及び寄生虫血症についてモニタリングし、1日2回生存についてモニタリングした。
【0206】
図1に示したように、両方の処理群のマウスは、非処理のコントロール群に比べて、CD8+T細胞の減少を示した。図2に示したように、両方の処理群のマウスは、コントロール群のマウスに比べて有意に長く生存した。
【0207】
上記で引用したすべての参考文献(例えば、出版物、特許及び特許出願)は、その全体が参照により本明細書中に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳マラリアの治療、管理、又は予防用の薬剤の製造のためのS1Pリアーゼ阻害剤の使用。
【請求項2】
前記薬剤が患者への局所投与又は経皮投与に好適である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記薬剤が患者への静脈内投与に好適である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記S1Pリアーゼ阻害剤が式:
【化1】

(式中、
は水素、アルキル、又はアリールであり、
はOR3A、NHC(O)R3A、NHSO3A又は水素であり、
3Aはそれぞれ独立して、水素、又はハロで必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、
はOR6A又はOC(O)R6Aであり、
はOR7A又はOC(O)R7Aであり、
はOR8A又はOC(O)R8Aであり、
は水素、CHOR9A、又はCHOC(O)R9Aであり、かつ、
6A、R7A、R8A及びR9Aはそれぞれ独立して、水素又は低級アルキルである)
の化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記化合物が式:
【化2】

(式中、
は低級アルキルであり、
は水素、OR3A、NHC(O)R3A、又はNHSO3Aであり、
は水素又はCHOHであり、かつ、
3Aはそれぞれ独立して、水素又は低級アルキルである)
のものである、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記化合物が(E)−1−(4−((1R,2S,3R)−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル)−1H−イミダゾール−2−イル)−エタノンオキシムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記S1Pリアーゼ阻害剤が式:
【化3】

(式中、
Aは必要に応じて置換された複素環であり、
はOR5A又はOC(O)R5Aであり、
はOR6A又はOC(O)R6Aであり、
はOR7A又はOC(O)R7Aであり、
は水素、CHOR8A、又はCHOC(O)R8Aであり、かつ
5A、R6A、R7A及びR8Aはそれぞれ独立して、水素又は低級アルキルである)
の化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記化合物が式:
【化4】

(式中、
XはN又はNRであり、
YはCR、N、NR、O、又はSであり、
ZはCR、CHR、N、NR、O、又はSであり、
は水素又は必要に応じて置換された低級アルキルであり、かつ、
は必要に応じて置換されたアルキルであり、
はそれぞれ独立して、OR4A、OC(O)R4A、水素、ハロゲン、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、
はそれぞれ独立して、水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、かつ
4Aはそれぞれ独立して、水素又は必要に応じて置換されたアルキルである)
のものである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記化合物が式:
【化5】

(式中、
XはN又はNRであり、
YはCR、N、NR、O、又はSであり、
ZはCR、CHR、N、NR、O、又はSであり、
は水素又は必要に応じて置換された低級アルキルであり、かつ、
は必要に応じて置換されたアルキルであり、
はそれぞれ独立して、OR4A、OC(O)R4A、水素、ハロゲン、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルであり、
はそれぞれ独立して、水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、複素環、アルキル複素環若しくは複素環アルキルである)
のものである、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記患者にさらなる活性薬剤を投与することをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記さらなる活性薬剤が抗マラリア薬である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記さらなる活性薬剤が浸透圧性利尿薬である、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
前記さらなる活性薬剤が抗痙攣薬である、請求項10に記載の使用。
【請求項14】
前記さらなる活性薬剤が解熱剤である、請求項10に記載の使用。
【請求項15】
前記さらなる活性薬剤が抗酸化剤である、請求項10に記載の使用。
【請求項16】
前記さらなる活性薬剤が抗炎症薬である、請求項10に記載の使用。
【請求項17】
S1Pリアーゼ阻害剤及び抗マラリア薬を含む医薬製剤。
【請求項18】
S1Pリアーゼ阻害剤及び抗マラリア薬を含む、単回医薬剤形。
【請求項19】
患者への経皮送達及び局所送達に好適である、請求項18に記載の剤形。
【請求項20】
パッチである、請求項19に記載の剤形。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−507547(P2012−507547A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534749(P2011−534749)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/062511
【国際公開番号】WO2010/051353
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(508192566)レクシコン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (38)
【Fターム(参考)】