説明

腐食に対して保護する金属の被覆のための組成物

本発明は、(i)硅素化合物をベースとするゾル、(ii)少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランおよび/または(iii)成分(i)および(ii)の少なくとも1種の反応生成物からなり、(ii)および(iii)からのアミノアルキル官能性シラン成分の量が、使用される個々のアミノアルキルアルコキシシランとして計算して、および(i)に記載されるゾルのSiO含量に対して全部で0.01〜15質量%である、腐食に対して保護するための金属を被覆する組成物および前記組成物の製造方法および使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腐食に対して保護する金属の被覆のためのシランをベースとする組成物、その製造および使用に関する。
【0002】
金属の耐腐食性組成物およびオルガノシランまたはSiOゾルをベースとする付着推進剤(これ以後プライマーと呼ぶ)は長い間知られており、分散した形で記載された。残念ながら公知の系はなお期待する点が残る。
【0003】
金属表面に耐腐食層を製造する一般的な方法はクロム酸塩処理、リン酸塩処理、被覆および陽極処理を含む。
【0004】
クロム酸塩処理の工業的重要性は現在毒性の問題および相当するクロム酸塩の再分類により低下し続けている(EU Directive 2000/53/EC)。従ってクロム酸塩処理の良好な腐食保護特性にもかかわらず、新しいクロム不含の系の開発が一般に多いに注目されている。
【0005】
鉄、鋼、亜鉛およびアルミニウムをリン酸塩処理する方法は長い間技術水準であった。被覆と組合せたリン酸塩処理は腐食に対する完全に許容される保護を生じるために十分であるが、2つの系は単独では所望の結果を生じない。
【0006】
アルミニウムまたはチタンのような金属上の電気分解により製造した保護酸化物被膜は腐食に対する十分な保護を生じるにもかかわらず、酸化物被膜の厚さが増加するとともに脆さを示し、製造に多くの量のエネルギーが必要である。
【0007】
現在の開発は金属表面上の完全な単層被膜を堆積する試みであるかまたはセリウムの反応被膜を用いて作業する[Galvanotechnik92(12)2001、3243]。
【0008】
クロム酸塩(VI)を回避する他のアプローチはクロム(III)を含有し、従って重金属を含まないことが考慮できない組成物である。
【0009】
環境に優しい腐食防止層はシランおよびシランベースゾル−ゲル縮合物を使用して得られる(米国特許第5200275号)。表面の被覆のために金属基材をまず脱脂し、清浄にする。清浄工程は有機溶剤での処理およびアルカリおよび酸洗浄作業を含んでいてよい[Metalloberflaeche,29(10)、1975、517]。水溶液または少なくとも水を含有する溶液中でシランを加水分解し、引き続き浸漬、噴霧および/またはスピンコーティングの適用により金属表面と接触する。空気中で室温または高温で硬化または縮合が行われる。一般に10〜100nmの被膜厚さが達成される(米国特許第5750197号)。
【0010】
ゾル−ゲル系(以下にゾルと呼ぶ)はしばしば適当なAl、Tiおよび/またはZrと組み合わせて加水分解可能な珪素化合物から酸性または塩基性触媒を使用して製造する。この目的のために、シランを溶剤中で一緒に加水分解し、溶剤は一般に化合物の加水b分解の間に形成されるアルコールである。被覆組成物をすでに記載された被覆法により金属基材に再び被覆することができる。被覆組成物を有利に1〜50μmの乾燥被膜厚さで、トップコート材料で最終被覆せずに被覆することが考えられる(ドイツ特許第19813709号)。
【0011】
欧州特許第1130066号はシラン組成物で予め処理し、引き続きポリアミド化合物を用いて押出被覆した腐食保護した金属表面を記載する。使用される水およびアルコールを含有する組成物は特に官能基を有するアルコキシシランQ、例えばアミノアルキルアルコキシシラン、およびアルコキシシランM、例えばアルキルアルコキシシラン、アルケニルアルコキシランおよびテトラアルコキシシランから出発する加水分解物、縮合物および/または共縮合物をベースとし、成分MおよびQの合計は0≦M/Q<20のモル比で存在する。
【0012】
本発明の課題は腐食に対して保護するための金属表面に被膜を製造するための他の組成物を提供することである。特別の関心はアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面を被覆により腐食に対して保護することであった。他の関心はきわめて有効であり、それにもかかわらず環境に優しい解決を見出すことであった。
【0013】
この課題は本発明により、詳しくは請求項により解決される。
【0014】
意想外にも、少量の親水性成分を添加することにより、疎水性ゾル被膜の形状を強化できることが見出された。疎水性成分のみから形成される被膜は細孔を示すが、少量の疎水性化合物、特にアミノシランの添加が低い細孔含量を有するかまたは細孔がないきわめて密着する被膜の製造を可能にする。親水性成分は被覆ゾルのSiO含量に対して15質量%以下のきわめて低い濃度でのみ被膜ゾルに適当に添加するが、それというのもそうでなければ被膜が水性媒体中で膨張し、腐食が起きるからである。
【0015】
本発明の思想の作用の形式は、かなり高い細孔含量を有する系において、被膜厚さの簡単な増加が電気容量抵抗を増加するが、多孔性は維持されるという事実から理解できる。
【0016】
本発明の組成物を使用して得られる腐食に対して金属を保護する被膜は一般にきわめて薄く、疎水性であり、遮断作用を有する透明な被膜である。これらの被膜は電解液のための特に有効な遮断被膜を形成し、金属、特にアルミニウムおよびアルミニウム合金を、腐食に対して有利に不活性に保護する。
【0017】
本発明の組成物を使用して得られる被膜はプライマーの用途にきわめて適しており、直接または相当する官能性シランで更に処理した後に、適当なトップコートおよび/または有色被覆材料で被覆することができる。少なくとも1個のシランの官能基は有利に被覆材料への化学的結合が行われるように選択すべきである。ウレタンまたはエポキシ被覆材料にはアミノシラン、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシランまたは3−グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシランが適当であり、および二重結合を含有するシラン、例えば3−メタクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシランまたはビニルトリアルコキシシランがラジカル硬化被覆系に適しており、これ以後アルコキシは有利にメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシまたは2−メトキシエトキシである。
【0018】
本発明の組成物を使用して得られる被膜を使用して、腐食試験において、特にアルミニウムの場合に、けがきの痕跡から出発して被覆材料の下にほとんどけがきの変形がないかまたは腐食の移動がないことが認められる。従ってきわめて薄いバリア被膜の形成により本発明の被膜は腐食に対して良好な不活性保護を生じる。この本発明による薄い耐腐食性層は粗い表面、例えば機械的に粉砕されたアルミニウムシートの驚くべき良好な被覆を生じる。従ってこの種の被膜はクロム酸処理だけでなく、一般に以下に述べるカソード電極被覆にも代用できる。
【0019】
本発明のゾル−ゲル被膜は同様に他のおよび/または別のシランベース被覆系、例えば水および汚れをはじくペルフルオロアルキルシラン被膜のための安定な支持体系として使用することができ、例えば特にトリデカフルオロ−1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、相当する組成物、縮合物または共縮合物、例えば欧州特許第0838467号、欧州特許第0846717号、欧州特許第0846716号、欧州特許第1033395号、欧州特許第1101787号に記載されるものを使用する。
【0020】
本発明の組成物および前記組成物を使用して得られる実質的に細孔のない被膜の利点は以下のとおりである。
1μm以下の被膜厚さにおいてもおよび他の被膜系がなくても金属表面上の腐食に対する顕著な保護
きわめて高い電気容量抵抗
かなり環境に優しい組成
クロム酸処理を避ける可能性
組成物の簡単で経済的な適用
機械的におよび化学的におよび特に塩と結合した湿度の影響下での有効な被膜
金属および塗料およびポリマー被膜のような他の被膜に対する特に良好な付着。
【0021】
従って本発明は、
(i)珪素化合物をベースとするゾル
(ii)少なくとも1個のアミノアルキル官能性アルコキシシランおよび/または
(iii)成分(i)および(ii)の少なくとも1個の反応生成物
からなり、(ii)および(iii)からのアミノアルキル官能性シラン成分の量が、特に使用されるアミノアルキルアルコキシシランとして計算しておよび(i)に記載のゾルのSiO含量に対して、全部で0.01〜15質量%である、腐食に対して保護するために金属を被覆する組成物を提供する。
【0022】
本発明の組成物中の(ii)および(iii)からのアミノアルキル官能性シラン成分の量は、特に使用されるアミノアルキルアルコキシシランとして計算しておよび(i)に記載のゾルのSiO含量に対して、有利に0.02〜10.0質量%、より有利に0.04〜4.0質量%、きわめて有利に0.06〜1.6質量%、特に0.08〜1.0質量%である。
【0023】
適当な本発明の組成物は、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ジ(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジ(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−[N′−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−[N′−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(t−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(t−ブチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロプルメチルジエトキシシラン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンおよびビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミンからなる群からの少なくとも1個のアミノアルキル官能性アルコキシシランを含む。
【0024】
本発明の組成物において、成分(i)の量はSiOとして計算して、組成物の全部の組成に関して、有利に0.25〜40質量%、より有利に5〜30質量%、きわめて有利に8〜25質量%、特に10〜15質量%であり、組成物のすべての成分は添加して100質量%になる。
【0025】
本発明の組成物は更に有利に水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メトキシプロパノール、ブチルグリコール、または前記溶剤/希釈剤の2種以上の混合物を含有する。従って本発明の組成物中の溶剤/希釈剤の量は1〜99質量%、有利に15〜80質量%、より有利に30〜50質量%であってもよく、量は本発明の組成物の全部の組成に関する。
【0026】
本発明の組成物は更に少なくとも1種の腐食防止剤を含有することができ、例はホウ酸塩、リンシリケートおよびジルコニウム錯体をベースとする無機腐食防止剤、または安息香酸アンモニウム、ベンゾチアゾリルチオコハク酸または天然に由来するが少ない脂肪酸のアンモニウム塩のような有機腐食防止剤である。本発明の組成物は適当な場合は腐食防止剤を0.05〜20質量%、有利に0.5〜10質量%、特に1〜5質量%含有し、量は本発明の組成物の全部の組成に関する。
【0027】
本発明の組成物は少なくとも1種の有機樹脂および/または少なくとも1種のポリマーを含有することができ、例はビスフェノールA、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのようなエポキシ樹脂、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、またはポリウレタンである。
【0028】
本発明の組成物は有利に樹脂、ポリマーまたは樹脂とポリマーの混合物を0.05〜20質量%、より有利に0.5〜10質量%、きわめて有利に1〜5質量%含有し、量は本発明の組成物の全部の組成に関する。
【0029】
本発明は更に被覆材料を腐食から保護するための本発明の組成物の製造方法に関し、前記方法は、
第1工程で少なくとも1個のアルコキシシランから一般的な方法でゾルを製造し、
第2工程で第1工程からのゾルに少なくとも1個のアミノアルキル官能性アルコキシシランを使用される個々のアミノアルキルアルコキシランとして計算して、使用されるゾルのSiO含量に関して0.01〜15質量%の量で添加し、場合により希釈剤および場合により水を更に添加する
ことからなる。
【0030】
第1工程で有利にテトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、およびオクタデシルトリエトキシシランからなる群からの少なくとも1種のアルコキシランまたは前記アルコキシシランの少なくとも2種の混合物を使用する。
【0031】
ゾルの製造のために、アルコキシシランを調節された加水分解で処理し、加水分解物を適当な場合は完全に混合して反応させ、ゾルを形成する。適当な場合は加水分解触媒、例えば有機酸または無機酸、例えば酢酸、クエン酸、またはリン酸、硫酸、または硝酸、または塩基、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアまたは有機アミン、例えばアルキルアミンの存在で反応を実施することができる。加水分解触媒はここで加水分解に使用される水との混合物の形で導入することができる。加水分解混合物または生じるゾルに希釈剤/溶剤を添加することも可能であり、前記希釈剤/溶剤は例えば使用されるアルコキシシランのアルコキシ基に相当するアルコールである。
【0032】
ゾルの製造は反応バッチを完全に混合して適当に行う。ゾルは有利に前記酸の1種の添加により1〜5のpH値に調節する。
【0033】
ゾルは、例えばメチルトリアルコキシシランおよび/またはテトラアルコキシシランから選択される少なくとも1種のアルコキシシラン、例えば50〜100質量部、酸、リン酸0.01〜5質量部、水5〜150質量部、場合によりアルコール、例えばエタノール10〜200質量部から取得することができ、加水分解および引き続く反応を適当な場合は攪拌して10〜80℃の温度で10分から5日までの時間にわたり実施する。
【0034】
本発明の方法においてアミノアルキルアルコキシシランを引き続き第1工程からのゾルに添加する。バッチを適当な場合は完全に混合する。
【0035】
第2工程で水を、第1工程からのゾル100質量部当たり0.001〜100質量部、より有利に1.0〜50質量部、きわめて有利に2.0〜10質量部の量で添加することが更に有利である。
【0036】
第2工程でメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メトキシプロパノール、およびブチルグリコールからなる群からの少なくとも1種の溶剤/希釈剤を第1工程からのゾル100質量部当たり0.001〜10000質量部、有利に50〜900質量部、より有利に100〜300質量部の量で添加することが可能である。
【0037】
本発明の方法は、場合により水性ゾルおよび/またはアルコール含有ゾルをアルコキシシランをベースとして製造し、アミノアルキルアルコキシシランを添加し、混合物を反応させることにより一般的に実施する。
【0038】
第2工程で得られる生成物混合物を適当な場合は付加的に10〜60℃、有利に20〜30℃の範囲の温度で1分〜24時間、有利に10〜60分にわたり完全に混合して反応させる。
【0039】
一般に透明から乳白色までのこの方法で得られる組成物は得られたままでまたは希釈した形で被覆金属表面を腐食から保護する組成物として、引き続き使用することができる。このために、被覆すべき金属表面を機械的に、例えば研磨により、または化学的にエッチングにより予め洗浄することができ、この後に本発明の組成物を、例えば浸漬、刷毛塗り、吹きつけまたはナイフ塗布により被覆することができる。こうして処理した金属表面を適当に熱により、有利に220℃まで、特に200℃までの温度で乾燥し、一般に金属に良好に付着する硬質で透明な被膜を生じる。
【0040】
従って本発明は同様にアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、亜鉛、亜鉛合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、電気めっき鉄シート、電気めっき鉄合金、錫、錫合金、銅、銅合金および銀、銀合金からなる群からの金属の腐食防止組成物としての本発明の組成物の使用に関する。
【0041】
本発明は更に本発明の組成物を場合により清浄にしたおよび/または予め処理した金属表面に被覆し、被覆した被膜を乾燥および/または硬化し、場合により1種以上の塗料および/またはポリマー層をこうして得られた被膜に被覆することによる本発明の組成物の使用に関する。
【0042】
本発明は付加的に本発明の組成物を場合により清浄にしたおよび/または予め処理した金属表面に被覆し、乾燥および/または硬化し、こうして製造した耐腐食性層に、有利にアミノシラン、グリシジルオキシアルキルシラン、アクリロイルシラン、ビニルシランまたはこれらの相当する混合物をベースとするシランベース付着促進剤を被覆し、被覆した付着促進剤(プライマー)を乾燥し、こうして得られた被膜に1種以上の塗料および/またはポリマー層、例えば着色塗料およびトップコート材料を被覆することによる、本発明の組成物の使用に関する。プライマーは有利に3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ジ(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジ(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−[N′−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−[N′−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、およびビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミンからなる群から選択され、この場合にアミノシランは適当に溶液に対して0.001〜10質量%のアミノシラン含量を有するアルコールおよび/または水性プライマー溶液として使用することができる。ポリウレタンまたはエポキシ塗料を使用する場合は、付加的にプライマーまたは付着促進剤として、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、または3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランを使用することが可能である。付加的にラジカル硬化塗料のために、使用される付着促進剤は有利に3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランまたはこれらの混合物であってもよい。
【0043】
本発明の組成物は特に自動車構造、機械工学、船舶建造物、航空機構造または家屋建造部品に有利に使用することができる。
【0044】
従って本発明は有利に金属被膜を腐食から保護する新規組成物に関する。本発明の組成物は特にアルミニウムおよびアルミニウム合金の腐食からの保護を可能にし、本発明により製造した耐腐食層は金属基材に対する直接的なすぐれた付着を有し、前記耐腐食層に対する、顕著な付着または他の特別な性質、例えば疎水性および親水性を有する付加的な層を被覆する他の可能性を有する。
【0045】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明の対象を限定しない。
【0046】
例1
1.1被覆組成物の製造
テトラエトキシシラン(DYNASIL(登録商標)A)120gおよびメチルトリエトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)MTES)300gを機械的攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗および温度計を有する4口フラスコに導入した。激しく攪拌しながら脱イオン水42gを5分間経過して滴下し、混合物をイソプロパノール138gで希釈した。リン酸を使用してpH値を3.5に調節した。開始時に曇っていた混合物を更に5時間攪拌した。これにより透明なゾルが得られた。
【0047】
濃縮したゾルを複数の部分に分け、それぞれの部分を表1に示されるようにN−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン(DYNASILAN(登録商標)1189)と混合し、イソプロパノールで希釈し、脱イオン水で活性化し、30分攪拌した。
【0048】
表1
被覆組成物1A〜1Eの組成
【0049】
【表1】

【0050】
1.2金属の洗浄
すべての金属シートを有機溶剤で脱脂し、薄い(10%)アルカリ洗浄溶液(CARELA(登録商標)SP、R.Spaene)中、70℃で10〜20秒間酸洗いし、引き続き脱イオン水で洗浄した。シートを更に薄い硝酸(0.0016モル/l)中で5分間酸洗いし、脱イオン水で洗浄し、乾燥した。
【0051】
1.3被覆剤の被覆
1.2により清浄にした試験シート(アルミニウム合金6016、AlMg0.4Si1.2)を活性化した被覆ゾルA〜Eおよび溶液Fに5分間浸漬した。シートを垂直に立て、過剰のゾルを落とした。室温での最初の短い乾燥の後に200℃で10分間硬化した。これにより厚さ1μm未満の透明な被膜を得た。その後シートを被覆溶液に応じて1A〜1Fに関して調べた。試験品1A(2)を被覆ゾルAで再び被覆した。
【0052】
1.4シートの試験
1.3により被覆したシート1A〜1Fを、閉じた腐食室中、50℃で酸化腐食溶液(DIN50905による脱イオン水中のNaClおよびHの溶液)中に保存した。腐食溶液を毎日交換した。被覆していないシートを比較試験品として腐食試験した。
【0053】
被覆したシートは表面の攻撃を示さなかったが、腐食溶液中で数日後に被覆していない比較試験品で激しい酸化が生じた。腐食溶液中で30日後に溶液Eで被覆した金属シートはわずかな表面腐食のみを示した。続いてバリア層を有する金属シートD,A,C,BおよびF、表1参照、により目の観察にもとづきなされた段階評価を行った。
【0054】
1.3により被覆したシートの被膜の特性を電気化学的インピーダンス分光法(EIS)[Mansfeld、F.Electrochemical Impedance Spectroscopy(EIS)as a New Tool for Investigation Methods of Corrosion Protection、Electrochimica Acta 35(10)、1533〜1544、1990]により更に調べた。シート上の被膜のインピーダンスを種々の交流周波数で測定した。図1は試料1Aのプロットを示す。低い最初の容量抵抗および位相角プロットの経過(点線)から被膜が多孔質であることが当業者に明らかである。溶液Aを2回被覆した試料1A(2)は増加した被膜厚さによる増加したインピーダンス値を示したが、多孔質被膜の位相角プロットの経過特性をなお示した。2日間塩水に保存後にこれらの試料のスペクトルに変化はなかった。
【0055】
親水性アミノシラン成分の添加はプロットの経過で顕著な変化を示した。図2はDYNASILAN(登録商標)1189(被覆ゾルをベースとする)1質量%で被覆した試料のプロットの経過を示す。増加した最初の容量抵抗および位相角プロットの経過(点線)からこれが、孔をほとんど有しないことにより密な被膜であることが当業者に明らかである。しかし水溶液にさらした場合に、この被膜が容量抵抗の減少を伴って膨張した。親水性アミノシランの選択された濃度が十分に低い場合に高い容積抵抗および低い膨張性に関して最適に調節することができた。
【0056】
例2
2.1被覆剤の被覆
未処理金属試験シート(アルミニウム合金6016、AgMg0.4Si1.2)および同じ合金の外面を研磨したアルミニウムシートを1.2に記載のように清浄にした。未処理アルミニウムシートを活性化被覆ゾルEに5分間浸漬したが、外面を研磨したアルミニウムシートは活性化被覆ゾルAに浸漬した。シートを垂直に立て、過剰のゾルを落とした。室温での短い最初の乾燥の後に200℃で10分間硬化した。付着を促進するために、シートを溶液F(プライマー)で2回被覆した。浸漬の時間および乾燥工程は第1被覆工程と同様であった。シラン系の全部の被膜厚さは1μm未満であった。良好な比較のために、シートを溶液Fのみで被覆し、200℃で10分間乾燥した。
【0057】
シラン被覆金属シートを二成分ポリウレタン塗料(Standox)で塗装し、60℃で60分間乾燥した。塗料層の厚さは約25μmであった。
【0058】
2.2金属シートの試験
塩水噴霧条件(CASS試験、DIN50021)に240時間暴露した後に、Eで被覆されたシートは0.09mm、Aで被覆され、研磨したシートは0.17mm、Fのみで被覆されたシートは0.41mmのけがきの変形を示した。CASS試験によりシラン処理されていない塗装した比較シートは2.65mmのけがきの変形を示した。同様に試験した黄色い、クロム酸処理し、塗装したアルミニウムシートは0.70mmのけがきの変形を示した。
【0059】
従って他の塗料で被覆された金属シートと比較してシートEはほとんど変形を示さず、試験下で最もよい結果を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】試料1AのEISスペクトルを示す図である。
【図2】DYNASYLAN1189、1質量%を被覆した試料のEISスペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)硅素化合物をベースとするゾル
(ii)少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランおよび/または
(iii)成分(i)および(ii)の少なくとも1種の反応生成物
からなり、(ii)および(iii)からのアミノアルキル官能性シラン成分の量が、使用される個々のアミノアルキルアルコキシシランとして計算して、および(i)に記載されるゾルのSiO含量に対して全部で0.01〜15質量%である、腐食に対して保護するための金属を被覆する組成物。
【請求項2】
使用される個々のアミノアルキルアルコキシシランとして計算して、および(i)に記載されるゾルのSiO含量に対して、(ii)および(iii)からのアミノアルキル官能性シラン成分0.02〜10.0質量%を含有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ジ(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジ(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−[N′−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−[N′−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、およびビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミンからなる群からの少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランを含有する請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
SiOとして計算しておよび組成物の全部の組成に対して、成分(i)0.25〜40質量%を含有する請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メトキシプロパノール、ブチルグリコール、または前記溶剤/希釈剤の2種以上の混合物を含有する請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の腐食防止剤を含有する請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の有機樹脂を含有する請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1種のポリマーを含有する請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の腐食に対して保護するために金属を被覆する本発明の組成物の製造方法において、
第1工程で一般的な方法で少なくとも1種のアルコキシシランからゾルを製造し、
第2工程で第1工程からのゾルに少なくとも1種のアミノアルキル官能性アルコキシシランを、使用される個々のアミノアルキルアルコキシシランとして計算して、および使用されるゾルのSiO含量に対して0.01〜15質量%の量で添加し、場合により更に希釈剤および場合により水を添加する
ことを特徴とする、腐食に対して保護するために金属を被覆する本発明の組成物の製造方法。
【請求項10】
第1工程からのゾル100質量部に対して水を0.001〜100質量部の量で使用する請求項9記載の方法。
【請求項11】
第2工程でメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メトキシプロパノール、およびブチルグリコールからなる群からの少なくとも1種の溶剤/希釈剤を、第1工程からのゾル100質量部に対して0.001〜10000質量部の量で使用する請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
第2工程で得られる生成物混合物を、付加的に10〜60℃の範囲の温度でおよび1分〜24時間にわたり完全に混合して反応させる請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物または請求項9から12までのいずれか1項記載の方法により得られる組成物の、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、亜鉛、亜鉛合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、電気めっき鉄シート、電気めっき鉄合金、錫、錫合金、銅。銅合金、銀および銀合金からなる群からの金属の耐腐食性組成物としての使用。
【請求項14】
組成物を場合により清浄にしたおよび/または予め処理した金属表面に被覆し、被覆したフィルムを乾燥および/または硬化させ、場合により1種以上の塗料および/またはポリマー層をこうして得られた被膜に被覆することからなる、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物または請求項9から12までのいずれか1項記載の方法により得られる組成物の使用または請求項13記載の使用。
【請求項15】
場合により清浄にしたおよび/または予め処理した金属表面に組成物を被覆し、乾燥および/または硬化させ、こうして製造した耐腐食層にシランベース付着促進剤を被覆し、被覆した付着促進剤を乾燥させ、こうして得られた被膜に1種以上の塗料および/またはポリマー層を被覆することによる、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物または請求項9から12までのいずれか1項記載の方法により得られる組成物の使用または請求項13または14記載の使用。
【請求項16】
場合により予め処理した金属表面に組成物を被覆し、乾燥および/または硬化させ、こうして製造したフィルムにフルオロアルキル官能性硅素化合物を被覆することによる、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物または請求項9から12までのいずれか1項記載の方法により得られる組成物の使用または請求項13から15までのいずれか1項記載の使用。
【請求項17】
自動車構造、機械工学、船舶建造物、航空機構造でのまたは家屋構造部品のための請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物または請求項9から12までのいずれか1項記載の方法により得られる組成物の使用または請求項13から16までのいずれか1項記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−525376(P2006−525376A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571514(P2004−571514)
【出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010654
【国際公開番号】WO2004/099465
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa AG
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】