説明

腐食感受性層に適合する接着剤

約5未満の酸価を有する接着剤を含む物品を提供する。接着剤は、ポリ尿素、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、付加硬化型シリコーン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。接着剤は、金属及び金属合金からなる群から選択される腐食感受性層と接触している。物品が約60℃及び相対湿度90%で約21日間コンディショニングされた際に、腐食感受性層は、その初期電気抵抗値から20%以下の変化を示す。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
接着剤は、光学ディスプレイに広い用途を見出している。このような用途としては、偏光子を液晶ディスプレイ(LCD)のモジュールに結合させること、及び様々な光学フィルムを携帯ハンドヘルドデバイス(MHH)のガラスレンズへ付着させることが挙げられるが、これらに限定されない。偏光子は、直接又は間接的に接着剤と接触してよい。
【0002】
近年、様々なディスプレイ用途において、タッチパネル機能の導入、及び組み合わせの傾向が強まっている。タッチパネルは、一般に酸化インジウムスズ層等の腐食感受性層を含み、ポリエチレンテレフタレートフィルムが被覆されるか、又はガラス上に被覆されている。多くの場合、これら被覆基材は、接着剤を使用してディスプレイモジュールに取り付けられている。いくつかのタッチパネル設計では、接着剤は、腐食感受性層と接触する。他のディスプレイ用途では、接着剤は蒸着ミラー表面又は電磁妨害遮蔽層等の腐食感受性層とも接触し得る。これらの層はまた、多くは導電性を有する金属及び金属合金に由来する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、金属又は金属合金等の腐食感受性層に適合する接着剤の必要性に対処する。即ち、接着剤は、それらの腐食感受性層と接触した後、かかる層の抵抗を最小限にのみ変化させる。この開示において、以下の定義が使用される。
腐食感受性層が有する電気抵抗を記載する際に使用される「変化」は一般に、コンディショニング前後における層の電気抵抗の絶対値の差異を意味する。
「酸価」は一般に、ポリマーの酸含有率を示し、一般にASTM D974に従った1グラムのポリマー中の酸を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(一般に、ミリグラムで)と定義される。
「付加硬化型シリコーン」は一般に、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のビニル末端オリゴマー/ポリマーと、水素化ケイ素を含有するPDMS等の水素化物含有オリゴマー/ポリマーとの、典型的には白金触媒の存在下での反応物を含む。
「接着剤」は一般に、粘性かつ弾性の成分を有する粘弾性材料を意味し、したがって、接着剤は、圧縮応力下で、あるレベルの弾力性を示すが、一般にばね様の材料ではなく、即ち、弾性固体ではない。
「腐食感受性層」は一般に、空気及び水分に対する暴露により酸化され易い層を意味し、電圧が印加されると電流を伝えることができる。
「キュア・イン・プレース接着剤」は一般に、所望の位置に供給され得る液体系を意味し、その位置で接着剤成分がほぼ自発的に互いに反応するか又はエネルギー源(熱又は放射線等)に暴露された際に反応する。
「熱活性化接着剤」は一般に、乾燥形態で室温において指圧により粘着性を実質的に全く有さないが、高温に対する暴露により粘着性を有し、基材表面全体を良くぬらし、室温に冷却後、様々な異なる表面に接着する接着剤を意味する。
任意の一般的な層又は基材を説明するのに使用される「微細構造」は一般に、層の主表面から突出する反復構造を含む構造を意味し、この構造は、尖端及び角錐を含むが、これらに限定されない様々な形態を有することができる。
「光学的に透明な」は一般に、下記の実施例部分に記載された方法で、25マイクロメートル厚の試料上で測定された際に約5%以下のヘイズを有する材料を意味し、
「感圧接着剤」は一般に、乾燥状態で室温において強力かつ永久的な粘着性を有し、様々な異なる表面に固く接着する接着剤を意味する。
【0004】
一態様において、本開示は、金属及び金属合金からなる群から選択される腐食感受性層と接触した、約5未満の酸価を有し、かつポリ尿素、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、付加硬化型シリコーン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される接着剤を含み、約60℃及び相対湿度90%で約21日間コンディショニングされた際に、腐食感受性層がその初期電気抵抗値から20%以下の変化を示す物品に関する。一実施形態において、接着剤及び腐食感受性層は、腐食感受性層、及び任意に接着剤が基材の第1の主表面と接触するように、基材の第1の主表面上に配置される。
【0005】
別の態様では、本開示は、(i)少なくともその一部上に腐食感受性層が配置された基材を提供する工程と、(ii)(a)第1の主表面及び第2の主表面を有する裏材と、(b)約5未満の酸価を有し、かつポリ尿素、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、付加硬化型シリコーン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される接着剤と、を含むテープを提供する工程と、(iii)このテープを接着剤が腐食感受性層と接触するように基材に積層する工程と、を含む、物品の製造方法に関する。本明細書に開示する腐食感受性層は、実質的に平らであり、即ち、腐食感受性層は、微細構造を含まない。別の実施形態では、テープが使用される場合、裏材、又は基材は、実質的に平らである。
【0006】
例示的な1つの用途において、本開示に記載する物品及び物品の製造方法は、非限定的に、液晶ディスプレイパネル、静電容量式タッチパネル、携帯電話、携帯用デバイス、及びラップトップコンピュータ等の電子デバイスに組み込むことができる。
【0007】
その他の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態及び特許請求の範囲により明らかとなるであろう。前述の課題を解決するための手段は、本開示の例示されたそれぞれの実施形態又は全ての実施を記載するものではない。以下の発明を実施するための形態には、特定の現時点での好ましい実施形態を、本明細書に開示された原則を使用して、より具体的に例示する。
【0008】
本発明は、図面を参照してより良く説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本開示による代表的物品の頂面図。
【図2】本開示による別の代表的物品の断面図。
【図3】本開示による物品の代表的製造方法の概略図。
【図4A】本開示による物品の別の代表的製造方法の概略図。
【図4B】本開示による物品の別の代表的製造方法の概略図。
【図5】本開示による別の代表的物品の断面図。
【図6】実施例1〜5及び対照試料に関するコンディショニングの様々な段階中の時間の関数としての抵抗の変化の関係を示す。
【0010】
これらの図は理想化されていて、尺度通りに示されておらず、説明のみを目的としたものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願において、全ての数字は用語「約」で修飾されているとみなす。終点による数字範囲の詳細説明には、その範囲内に含まれる全ての数が包含される(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5が包含される)。特に指示しない限り、本明細書で引用された全ての部は重量による。
【0012】
以下図を参照すると、図1は、電子デバイスに使用され得る物品1の平面図を示す。物品は、基材の第1の主表面上に配置された、格子の形態の複数の腐食感受性配線5を有する基材4を含む。コネクタパッド6は、腐食感受性配線のそれぞれの末端部に隣接して位置する。コネクタパッドに電流が適用された際、コネクタパッドは、腐食感受性配線と電気的に連絡する。本明細書に開示する接着剤は、典型的には腐食感受性層及び基材の第1の主表面に直接接触するように基材に適用されるであろう。
【0013】
図2は、接着剤18と、基材の第1の表面14a上に配置された腐食感受性層15を有する基材14との複数の交互層を有する、代表的な物品10の断面図を示す。コネクタパッド16は、基材の縁に隣接して位置する。コネクタパッドは、電流が層15を通過した際にパッドと腐食感受性層とが互いに電気的に連絡するように、腐食感受性層と連絡している。基材と接着剤との2組の交互層のみが示されているが、より多数の交互層の使用、又は1組の基材と接着剤の使用も本開示の範囲内に含まれる。
【0014】
図3は、物品の代表的製造プロセスの概略図を示す。プロセスは、第1の基材24を提供する工程を含み、基材の第1の表面24a上には不連続の腐食感受性層25が配置されている。コネクタパッド26は、図1のように、基材に隣接して位置する。テープのロール20は、裏材21上に被覆された接着剤28を有する。所望により、裏材は、テープのロールをほどくことができる剥離コーティングを含む。テープは、接着剤28が腐食感受性層と、第1の表面24aの露出部分、即ち、腐食感受性層で覆われていない部分とに接触するように第1の基材24の第1の表面24aに積層される。一実施形態において、裏材21は、第2の基材として機能し、物品の一部となる。別の実施形態では、裏材は、除去され、廃棄されてよく、第2の基材が、露出されている接着剤28の表面上に積層されてもよい。図3は、テープのロールの使用を示し、方法はまた、テープのカットシートを使用して実施することもできる。
【0015】
図4A及び図4Bは、本開示による物品の別の代表的製造プロセスの概略図を示す。プロセスは、第1の基材44a及び第2の基材44b(互いにほぼ平面配向性であってよい)により形成された空洞43を提供する工程を含む。腐食感受性層45は、第1及び第2の基材の少なくとも一方上に配置されている。電気コネクタパッド46は、2つの基材のうちの一方に隣接して位置し、腐食感受性層と連絡している。説明を目的として、腐食感受性層は、第2の基材44b上に配置されて示されている。マルチチャンバ注射器50のような供給機構は、第1のチャンバ50a及び第2のチャンバ50bを含み、接着剤の成分が別々に貯蔵されている。使用時、注射器内のプランジャーが押され、成分は、ミキサーが収容された接着剤組成物58を混合できる第3のチャンバ内で混合されるであろう。このようにして、成分は、成分の使用の準備が整うまで、安定な状態で貯蔵することができる。図4bでは、接着剤組成物58が混合されており、注射器から分配されて空洞を充填している。混合後、成分は、成分が重合し、最終的な接着剤を得るように十分な反応性を有し得る。任意に、オーブン又は赤外光源からの熱のようなエネルギー源60を使用して、接着剤組成物を硬化させてよい。この特定の方法は、接着剤組成物が液状でありながら、第1基材と第2基材との間、及び基材が粗い場所において、不均一な厚みにより良く適応できるという利点を有する。この方法は、第1及び第2の基材がガラス又は実質的に剛性の透明ポリマー材料である状況に特に適している。
【0016】
図5は、多層物品30の断面図を示す。物品は中央基材34を含み、基材34は、対向する第1及び第2の主表面、それぞれ34a及び34bを有する。第1及び第2の表面のそれぞれの上に、腐食感受性の導電性層35が位置する。図5は、2つの連続層35を示しているが、1つのみの層35を有することも本開示の範囲内に含まれ、また層は不連続であってもよい。任意に、電気コネクタパッド(図示せず)が基材に取り付けられ、パッドは、層35と連絡していてもよい。層35は、2つの接着剤層38で覆われている。また、所望であれば、接着剤層を保護ライナー39で覆ってもよい。
【0017】
接着剤
本開示での使用に適した接着剤は、中性又は塩基性の性質を有するものを含む。換言すれば、接着剤は、酸官能基を含まず、又は少量のみ含むことが好ましく、したがって接着剤は、約5未満の酸価を有する。接着剤中の酸含有率は、物品の寿命にわたって腐食感受性層の電気性能を感知できるほど妨げない。本開示での使用に適した接着剤は、感圧接着剤(PSA)、熱活性化接着剤(HAA)、又はキュア・イン・プレース接着剤(CIPA)であり得る。一実施形態において、接着剤は、任意に透明である。したがって、接着剤は、以下のうちの1つであってよい。光学的に透明なPSA若しくは光学的に不透明なPSA、光学的に透明なHAA若しくは光学的に不透明なHAA、又は光学的に透明なCIPA若しくは光学的に不透明なCIPA。
【0018】
例示的な接着剤としては、ポリ尿素、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、付加硬化型シリコーン及びそれらの組み合わせが挙げられる。接着剤は、約5未満、好ましくは3未満、より好ましくは1未満の酸価を有する。本明細書に開示されるポリマーは、一般にポリオール又はポリアミドから誘導され、ポリオール又はポリアミドが多官能性イソシアネートにより鎖延長され(ポリウレタン、ポリ尿素又はそれらの組み合わせを形成し)、又は多官能性エステルにより鎖延長され(ポリアミド、ポリエステル、又はそれらの組み合わせを形成す)る。ポリアミドは、環状アミド(ラクタム)から開環重合によっても誘導され得るが、他のセグメントの容易な導入のために鎖延長が好ましい。ポリエステルは、約5未満の酸価を満たすならば、ポリオールと多官能性酸塩化物からも誘導され得る。尿素、アミド、エステル、又はウレタン基は一般に、剛性の補強ポリマーセグメントを提供する。これらの基の間の強力な水素結合は、粘着強度を提供する。ある場合には、短鎖延長剤(典型的には低分子量ポリアミド又はポリオール)を使用して、追加の硬セグメントを提供してよい。任意に、ポリマーは、例えばシラン、アクリレート、メタクリレート、残基イソシアネート、エポキシ等の末端硬化性基又はストラクトペンダント硬化性基で終結されてよい。接着剤の熱活性化を促進し、又はそれらを本質的に粘着性とするためには、より低い弾性率及び/又はより低いTを有するポリオール及びポリアミドから誘導される軟セグメントが一般に好ましい。これらのポリアミド又はポリオールの例としては、アミノプロピル官能性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシプロピル官能性ポリジメチルシロキサン、ポリブタジエンジオール、ポリエチレンブチレンジオール、ポリエーテルジオール(ポリテトラヒドロフランジオール等)、ポリエーテルジアミン(Jeffamine(商標)等)、低Tポリエステル等が挙げられる。所望であれば、本発明の接着剤は、接着付与剤、及び硬化性基のための任意の触媒とともに調製されてよい。
【0019】
感圧接着剤は、室温で3×10パスカル以下の剪断弾性率を有し、約10℃以下のガラス転移温度(T)を有することが好ましい。熱活性化接着剤は、一般に、熱活性化の温度で5×10パスカル以下の剪断弾性率を有し、熱活性化温度よりも低いTを有する。3種の接着剤、PSA、HAA、及びCIPAの全部は、光学的に透明であろうとなかろうと一般に弾性及び粘性の両方の成分をそれらの弾性率に有し、即ち、材料の変形(歪み)が、適用された応力と直接比例せず、幾分かの粘性消散が存在する。接着剤は、溶剤系溶液重合を使用して、又はバルク重合を使用して製造できる。
【0020】
溶液重合においては、溶媒型接着剤、成分及び添加剤は、有機溶媒中で混合され、溶液から被覆され、次に乾燥される。接着剤の溶媒コーティングが所望される場合、反応は好適な溶媒(即ち、溶媒が重合反応を妨害しない)中で行われてよく、又は反応はバルクで行われてもよく、得られたポリマーは、コーティングに適した溶媒に溶解される。頻繁に変化するポリマー中の硬及び軟セグメントの相分離は、多くの場合、物理的に架橋されたネットワークを与える。このネットワークは、ポリマーとコーティングとに高い粘着強度を提供する。ある場合には、溶媒型接着剤は、乾燥プロセス中に更に架橋されることができ、又はある場合には乾燥工程後に架橋されることができる。このような架橋剤としては、溶媒被覆接着剤を製造する乾燥工程の間又はその後にて活性化される熱又はUV架橋剤が挙げられる。電子ビーム等の放射線により誘導される架橋もまた、用いることができる。加えて、本開示のポリマーは、1つ以上の硬化可能基も含むことができる。これらの硬化可能基の例としては、一般に水分により硬化されるシラン又は末端イソシアネート、任意に触媒又は開始剤の存在下で熱又は放射線により硬化され得るエポキシ及びアクリレートのようなエチレン性不飽和基が挙げられる。溶媒型接着剤は、任意の周知のコーティング技術によって、好適な可撓性裏材の材料上に被覆して、接着剤被覆シート材料を製造してよい。
【0021】
バルク重合では、接着剤成分を含むモノマープレミックスを静的ミキサー、押出成形機、又は機械的なミキサーを使用して混合して試薬が互いに親密に接触するのを促進する。任意に、ジラウリン酸ジブチルスズ等の触媒を混合物に添加してもよい。本明細書に記載されるバルク重合は、リジッド・ツウ・リジッド積層用途で使用する厚い(例えば、0.127〜1.016mm(0.005〜0.040インチ)接着剤フィルムの製造に十分に寄与する。例えば、このような厚い接着剤フィルムは、ガラス片へと積層したり、あるいは2枚のガラスをともに積層したりするために使用することができる。
【0022】
更なる別の方法では、接着剤の成分は、任意の添加剤(例えば、接着付与剤、熱安定剤、充填剤)、及び任意の架橋剤と混合される。モノマー又はモノマー混合物は、ギャップ充填用途にて、例えば、2枚のガラス基材などの2枚の基材の間の空間を充填することなどにおいて使用可能である。1つの用途において、注射器を使用して接着剤成分をギャップ内に供給し、熱放射により試薬を硬化させる。このような方法及び供給機構は、厚さが変化するギャップ、又は実質的に平らではない表面を有する基材の場所に、良好に適合する。
【0023】
可撓性裏材の材料は、テープ裏材、光学フィルム、剥離ライナー又は、任意の他の可撓性材料として従来より使用されている任意の材料であってよい。最終的な製品用途が接着剤の腐食感受性表面との接触を必要とするが、光学経路外の場合、裏材は、光学的に透明である必要はない。接着剤組成物に有用であり得るテープ裏材として使用される可撓性裏材の材料の典型例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、酢酸セルロース、及びエチルセルロースなどのプラスチックフィルム製のものが挙げられる。いくつかの可撓性裏材は、コーティングを有し得る。例えば、剥離ライナーは、シリコーンなどの低粘着性成分で被覆してよい。実例となるコーティング技術としては、ロールコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、ダイコーティング、印刷などが挙げられる。本明細書で記載される溶液処理は、転写テープとして使用するための、薄い、例えば25〜75マイクロメートル(0.001〜0.003インチ)の接着剤フィルムを製造するために十分に寄与する。得られたテープは、オーブン乾燥後に低揮発性残留物を有する。
【実施例】
【0024】
これらの実施例はあくまで説明を目的としたものであって、添付した特許請求の範囲の限定を目的とするものではない。実施例及び明細書の他の箇所における全ての部、パーセント、比等は、他に記載がない限りにおいて、重量あたりである。使用した溶媒及びその他の試薬は、特に記載のない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)より入手した。
【0025】
ヘイズ及び透過率試験
接着剤の25マイクロメートル厚試料を、25マイクロメートル厚のMelinex(登録商標)ポリエステルフィルム454(DuPont Company、Wilmington,DEから)へと、気泡がフィルムと接着剤層との間に捕捉されないような方法で積層させた。イソプロパノールで3回拭いた75mm×50mmの平らなマイクロスライド(Dow Corning、Midland,MIからのスライドガラス)は、ハンドローラーを使用して接着剤試料へと積層させ、接着剤とスライドガラスとの間に気泡が捕捉されないようにした。パーセント(%)透過率及びヘイズは、Model 9970 BYK Gardner TCS Plus分光光度計(BYK Gardner、Columbia,MDから)を使用して測定した。Melinex(登録商標)ポリエステルフィルム454及びスライドガラスを重ね合わせることで、バックグラウンド測定を行なった。次に分光光度計内にて、フィルム/接着剤/ガラス積層体上にて接着剤試料の%透過率及びヘイズを直接得た。
【0026】
実施例1〜6のそれぞれの接着剤は、90%超の光透過率及び5%未満のヘイズ値を有した。
【0027】
腐食感受性層のITO適合性試験
接着剤の酸化インジウムスズ(ITO)層である腐食感受性層との適合性試験を、以下のように行った。接着剤の試料は、0.0381ミリメートル(0.0015インチ)厚の下塗りしたポリエステル(PET)裏材へと移し、テープを形成した。次に、ITO層で被覆した主表面を有するPETフィルムへとテープを積層させて、接着剤が配線と直接接触して積層体を形成するようにした。コネクタパッドを横切ってメーターの導線を配置させたオーム計を使用し、ITO配線上にて、初期の表面抵抗を測定した。得られた積層体は、60℃に設定した相対湿度90%のオーブン内にてコンディショニングした。それぞれの試料の表面抵抗は、28日間にわたって定期的に、オーム計を使用して測定した。5個の表面抵抗測定値の平均を記録した。
【0028】
対照試料としては、周囲条件に暴露されたITO配線、即ち、接着剤がITO含有配線を有するPET基材上へ積層されていなかった、が挙げられる。
【0029】
他の腐食感受性表面との適合性試験
接着剤のニッケル又はアルミニウム蒸気金属化PETである腐食感受性材料との適合性試験を、以下のように行った。接着剤の試料は、0.0381ミリメートル(0.0015インチ)厚の下塗りしたポリエステル(PET)裏材へと移し、テープを形成した。次に、接着剤がニッケル又はアルミニウムと直接接触するように、テープを金属化PETフィルムに積層した。積層体の初期光透過率及びδ(E)を、Model 9970 BYK Gardner TCS Plus分光光度計(BYK Gardner、Columbia,MD)を使用して測定した。得られた積層体を、60℃に設定した相対湿度90%のオーブン内にてコンディショニングし、それぞれの試料に関する光透過率及びδ(E)を25日間にわたり定期的に測定した。δ(E)は、2色の間の距離を(数学的に)記載するのに使用される。これは(L〜L、(a1〜、及び(b〜b(式中、L、a、及びbは、色指数である)の合計の平方根として定義される。
【0030】
(実施例1)
反応器内に、600グラムのイソプロパノールに溶解した800グラムのJeffamine(登録商標)D−2000ポリエーテルアミン(Huntsman Corp.、Woodlands,Texasから)、800グラムのイソプロパノール、22.35グラムのDytek(登録商標)Aジアミン(DuPont、Wilmington,Delawareから)、及び151.36グラムのDesmodur(登録商標)Wモノマー脂環式ジイソシアネート(Bayer Material Science AG、Leverkusen,Germanyから)を入れた。得られた混合物を、メカニカルローラー上に室温で48時間、置いた。次いで、シリコーン処理したポリエステル剥離ライナー上に溶液を被覆し、70℃で10分間乾燥して、25マイクロメートル(0.001インチ)厚の最終的なポリアミド系感圧接着剤とした。
【0031】
(実施例2)
反応器内に、数平均分子量2,800を有する86グラムのヒドロキシル官能基含有ポリブタジエン(CAS番号69102−90−5、Aldrich、Milwaukee,Wisconsinから入手可能)を9.15グラムのイソホロンジイソシアネート(0.08等量)とともに入れた。得られた混合物を、乾燥窒素雰囲気下にて80℃で2時間反応させた。その後、5.3グラムのアミノプロピルトリメトキシシラン(0.21等量)を添加した。混合物を10分間攪拌した後、66.7グラムのトルエンを添加して、シラン末端ウレタンの60%固形分溶液を生成した。溶液をライナー上に被覆し、70℃で15分間乾燥して、48マイクロメートル(0.0019インチ)厚の最終的な感圧接着剤とした。末端トリメトキシシランの存在により、この乾燥ポリマーコーティングは、水分の存在下で硬化を継続して架橋ポリマーコーティングを得ることができる。水分硬化性は、ジラウリン酸ジブチルスズ等の触媒の存在下で加速され得る。
【0032】
(実施例3)
反応器内に、150グラムのPriplast(登録商標)3192、半結晶性ポリエステルポリオール(1020ヒドロキシル当量、0.147等量、Uniqema、New Castle,Delawareから)及び27.7グラムのイソホロンジイソシアネート(0.25等量)を入れた。得られた混合物を、乾燥窒素雰囲気下にて80℃で2時間反応させた。その後、22.3グラムのアミノプロピルトリメトキシシラン(0.10等量)を添加した。混合物を10分間攪拌した後、66.7グラムのトルエンを添加して、シラン末端ウレタンの75%固形分溶液を生成した。溶液をライナー上に被覆し、70℃で15分間乾燥して、38マイクロメートル(0.0015インチ)厚の最終的な感圧接着剤とした。実施例2の材料と同様、このポリマーも水分の存在下で架橋することができる。
【0033】
【表1】

【0034】
調製例A:シリコーンポリ尿素(SPU)エラストマーの合成
反応槽内に、十分な量の2−プロパノール中のモル比1:1:2のPDMSジアミン33,000、DYTEK A、及びH12MDIを入れて、試薬の20%固形分溶液を与えた。混合物を2時間撹拌して、シリコーンポリ尿素エラストマーを20%固形分にて与えた。
【0035】
調製例B
14K PDMSジアミンの試料(830.00グラム)を、機械的撹拌機、加熱マントル、窒素導入用チューブ(ストップコック付き)、及び排出管を装備した2リットルの3つ口樹脂フラスコ内に入れた。フラスコを窒素で15分間パージし、次に、激しく撹拌し、シュウ酸ジエチル(33.56グラム)を滴加した。この反応混合物をおよそ1時間、室温で攪拌し、次に、80℃にて75分間撹拌した。反応フラスコには、蒸留アダプタ及び蒸留レシーバを装着した。反応混合物を真空下(133パスカル、1トール)、120℃にて2時間加熱し、次に、130℃にて30分間、更なる留出物を集めることができなくなるまで加熱した。反応混合物を室温に冷却して、オキサミドエステル末端シリコーン生成物(即ち、シリコーンジアミンの両端がモノエチルオキサミドエステル基で終結している)を提供した。透明な流動性の液体ガスクロマトグラフィー分析は、検出可能量のシュウ酸ジエチルが残存していないことを示した。調製例Cのための、この前駆体のエステル当量を滴定により測定した(当量=8,272グラム/等量)。
【0036】
当量を決定するための滴定法
調製例Bのおよそ10グラムの前駆体化合物を瓶に添加した。およそ50グラムのTHF溶媒を添加した。混合物が均質になるまで、磁気攪拌棒を使用して内容物を混合した。前駆体の理論当量を計算し、次に本当量数の3〜4倍の範囲の量のN−ヘキシルアミンを添加した。反応混合物を最低4時間撹拌した。ブロモフェノールブルー(10〜20滴)を添加し、内容物が均質になるまで混合した。混合物を黄色の終点まで1.0N(又は0.1N)塩酸にて滴定した。前駆体の当量数は、試料に加えたN−ヘキシルアミンの当量数から、滴定中に加えた塩酸の当量数を差し引いたものに等しかった。当量(グラム/等量)は、前駆体の試料重量を前駆体の当量数で割ったものに等しかった。
【0037】
調製例C
調製例Bの前駆体(98.13グラム)及びエチレンジアミン(0.36グラム)を瓶内に量り取った。瓶を密閉し、内容物が粘稠過ぎて流れなくなるまで混合物を素早く撹拌した。ローラーミル上に瓶を周囲温度にて一晩置いた。固体生成物を収集した。
【0038】
(実施例4)
実施例4では、調製例Aからのシリコーンポリ尿素エラストマー(80部)と添加油(20部)とを、従来の溶媒手段を用いて、30重量%のIPA(120.00部)及び70重量%のトルエン(280.00部)からなる溶液ブレンド中の20%固形分にてブレンドすることによりシリコーンポリ尿素エラストマー接着剤を調製した。これらの試料を、溶媒混合物から下塗りしたPET上に溶媒混合物から被覆し、乾燥して25マイクロメートルの最終厚さとした。
【0039】
(実施例5)
調製例Cのコポリマー(18.50グラム)をTHF(45.60グラム)に溶解した。MQ樹脂(30.83グラム、60.0%固形分)をポリマー溶液に添加した。結果として得られた混合物を一晩周囲条件にて混合し、次に、PET上にナイフコーティングした。被覆されたフィルムを周囲温度で約15分間乾燥した後、130℃のオーブン内で10分間乾燥して25マイクロメートルの乾燥厚のコーティングを得た。
【0040】
図5は、上記に言及した試験方法に記載されている、実施例1〜5及び対照試料の接着剤の28日間にわたる適合性試験を示す。データが示すように、60℃及び相対湿度(RH)90%で28日間の暴露後、5つの試料全部が20%以下の抵抗の増加を示し、21日間の暴露における20%未満の電気抵抗変化である標的の範囲内に十分入っていた。対照試料は、本明細書に想定される製品デバイスでの使用において、実施例と比較して抵抗の最小の増加を示したが、接着剤が必要であろう。
【0041】
(実施例6)
実施例5の接着剤(25マイクロメートル)を、ポリオレフィン(ExxonMobil EXACT 8210)担体フィルム(3.18mm(125mil))の両面に積層して、ポリオレフィンコア及びシリコーン接着剤表面を有する接着剤転写テープを得た。
【0042】
表2及び3は、ニッケル及びアルミニウム蒸気金属化PETフィルムに対する実施例6の接着剤の適合性試験を示す。データは、類似した透過率及びδ(E)の増大で示されるように、接着剤による最小限の金属表面腐食を示す。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
(実施例7)
2つのシリコーン接着剤、Dow Corning 7657及びDow Corning 7658(70/30乾燥重量比)を、Dow Corning Syl−Off 7678架橋剤(0.16部)及びDow Corning Syl−Off 4000触媒と混合した。混合溶液を130℃のオーブン内にてフルオロシリコーンライナー上で約15分間乾燥して、36マイクロメートルの乾燥厚のコーティングを得た。次に、乾燥した接着剤をポリオレフィン(ExxonMobil EXACT 8210)担体フィルム(2.54mm(100mil))の両面に積層して、接着剤転写テープを得た。
【0046】
表4は、実施例7の接着剤がITO表面上に配置された際の表面抵抗変化を示す。データは、抵抗の小さい増加で示される、最小限のITO腐食を示す。
【0047】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属及び金属合金からなる群から選択される腐食感受性層と接触した、約5未満の酸価を有し、かつポリ尿素、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、付加硬化型シリコーン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される接着剤を含み、約60℃及び相対湿度90%で約21日間コンディショニングされた際に、腐食感受性層がその20%以下の初期電気抵抗値からの変化を示す物品。
【請求項2】
前記腐食感受性層が、基材の第1の主表面上に配置されている、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記接着剤及び基材の少なくとも一方が、光学的に透明である、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記基材が、ガラス及びポリマーフィルムからなる群から選択される、請求項2に記載の物品。
【請求項5】
前記腐食感受性層が、前記基材の前記第1の主表面の実質的に全部又は一部を覆う、請求項2に記載の物品。
【請求項6】
前記腐食感受性層が、前記基材の前記第1の主表面の一部を覆い、かつ規則的なパターンを有する、請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記腐食感受性層が、銅、銅合金、銀、銀合金、酸化インジウムスズ、ニッケル、アルミニウム及び酸化アンチモンスズからなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記腐食感受性層が、実質的に平らである、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
接着剤と、基材の上部に配置された腐食感受性層を有する基材との複数の交互層を含む、請求項2に記載の物品。
【請求項10】
前記基材の縁に隣接して配置され、かつ前記腐食感受性層と接続されたコネクタパッドを更に含む、請求項2に記載の物品。
【請求項11】
前記基材が、前記第1の主表面の反対側に第2の主表面を有し、それぞれの表面が、前記表面の少なくとも一部上に配置された腐食感受性層と、前記腐食感受性層上に配置された接着剤とを有する、請求項2に記載の物品。
【請求項12】
前記接着剤が、感圧接着剤、熱活性化接着剤、又はキュア・イン・プレース接着剤である、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記接着剤が、第1の主表面及び第2の主表面を有するフィルムであり、前記腐食感受性層が、前記接着剤フィルムの前記第1の主表面及び第2の主表面のそれぞれの上に配置されている、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
物品の製造方法であって、
その少なくとも一部上に配置された腐食感受性層を有する基材を提供する工程と、
(i)第1の主表面及び第2の主表面を有する裏材と、(ii)約5未満の酸価を有し、かつポリ尿素、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、付加硬化型シリコーン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される接着剤と、を含むテープを提供する工程と、
前記テープを前記接着剤が前記腐食感受性層と接触するように前記基材に積層する工程と、を含む、方法。
【請求項15】
前記接着剤及び前記基材の少なくとも一方が、光学的に透明である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記基材が、ガラス及びポリマーフィルムからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記腐食感受性層が覆う場合、規則的なパターンを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記腐食感受性層が、銅、銅合金、銀、銀合金、酸化インジウムスズ、ニッケル、アルミニウム及び酸化アンチモンスズからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
腐食感受性層が、実質的に平らである、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記基材の縁に隣接し、かつ前記腐食感受性層と接触して配置されるコネクタパッドを更に含む、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−530438(P2011−530438A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523075(P2011−523075)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/053337
【国際公開番号】WO2010/019528
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】