説明

膀胱機能不全治療のためのキニンアンタゴニスト

本発明は、膀胱機能不全の治療及び/又は予防のための薬剤の製造のためのキニン受容体アンタゴニストの使用に関するもので、キニン受容体はB1及びB2受容体を含む群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膀胱機能不全に伴う疾患パターンを治療及び/又は軽減するためのキニンアンタゴニストの使用法に関する。
【0002】
膀胱機能不全は、種々の疾患、好ましくは下部尿路の疾患に起因する。膀胱機能不全は、数百万の男女の生活の質に影響を及ぼしている。米国では推定1480万人の患者が、膀胱機能不全に由来する尿失禁に苦しんでいる。尿失禁の発生率は、患者の加齢とともに増加する。従って、加齢の医学、疫学及び社会的な側面の研究(MESA)は、60歳を越える無作為に選択された婦人の約35%が、尿失禁を有するとしている(Chaliha & Khullar, Urology. 2004 Mar;63 (3 Suppl 1):51-7)。
【0003】
膀胱機能不全は、以下の節に記載した数種の疾患から由来する可能性があるが、これらの疾患に限定されない。
【0004】
膀胱機能不全は、腫瘍性の疾患、好ましくは良性の前立腺肥大症によって引き起こされる可能性がある。BPHを有する男性の約45%において、排尿筋不安定が起こり、夜間に頻尿、尿意切迫を引き起こす(Knutson ら., Neurourol Urodyn. 2001;20(3):237-47)。しばしば前立腺は、男性の加齢に伴って肥大する。この状態を良性前立腺過形成(BPH)又は良性前立腺肥大と呼ばれる。前立腺が肥大するにつれて、周囲の組織の層が拡張するのを阻止し、腺が尿道を圧迫するようになる。膀胱壁は厚くなり、過敏となり、膀胱は、少量の尿が存在する時でも収縮を開始し、より高頻度の排尿を誘起する。最終的には、膀胱は弱くなり、それ自身を空にする能力を失う。尿は膀胱に留まる。尿道の狭小と、膀胱が部分的にしか空に出来ないことに由来する、BPHの過敏性及び閉塞性の症状は、BPH様尿意切迫、頻尿、夜間頻尿、尿失禁及び排尿の力及び流速の減少に関連した問題/症状を引き起こす。BPHの発生率は、寿命の延長に伴って増加する。2000年において米国では450万人がBPHのために医師にかかっている(National Kidney And Urologic Diseases Information Clearinghouse, NIH-Publ.-No. 04-3012, February 2004)。
【0005】
膀胱機能不全はまた、排尿筋不安定による可能性もある。排尿筋不安定は、膀胱充填の際の排尿筋の自発的なまた無抑制の収縮を特徴とし、それは膀胱内部の圧力が突然上昇することを意味する。排尿筋不安定の典型的な症状は、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫、切迫性尿失禁及び夜尿症である。排尿筋不安定の理由は、神経因性、不明(特発性排尿筋活動亢進)、筋原性又は膀胱出口の閉塞である可能性がある(Bulmer & Abrams, Urol Int. 2004;72(1):1-12)。脳卒中、パーキンソン病、多発性硬化症及び脊髄の病変のような中枢神経系の傷害又は機能不全は、膀胱の反射亢進に関連した膀胱機能不全を引き起こす可能性がある(神経原性排尿筋亢進、神経原性排尿筋不安定、Moore & Gray, Nurs Res. 2004 Nov-Dec;53(6 Suppl):S36-41)。「特発性排尿筋活動亢進」という用語は、患者が明白な神経性の異常を有せず、この現象を神経原性排尿筋亢進と区別する場合に用いる(Bulmer & Abrams, Urol Int. 2004;72(1):1-12)。しばしば、患者おける排尿筋不安定の原因は、多分単一の病理的な過程であるというよりは、多重要因によるものであろう。
【0006】
更に、膀胱機能不全は、傷害、外科手術及び解剖学的な異常に由来する膀胱閉塞、神経傷害、ホルモン失調症、糖尿病又は代謝疾患によって引き起こされる可能性もある(Moore & Gray, Nurs Res. 2004 Nov-Dec;53(6 Suppl):S36-41, Moghaddas ら., Menopause. 2005 May-Jun;12(3):318-24)。
【0007】
上に引用された病態の他に、証明された病態を有しない膀胱機能不全も観察され、それはまた下部尿路の特発性疾患と呼ばれる(Abrams P., Urology. 2003 Nov;62(5 Suppl 2):28-37; discussion 40-2)。種々の病態とは関係なく、膀胱機能不全のこれらの原因の多くの発生率は加齢とともに増加する(Yoshida rt al., Urology. 2004 Mar;63(3 Suppl 1):17-23)。
【0008】
現在、膀胱機能不全は、電気刺激、膀胱又は骨盤神経叢の訓練、外側括約筋切開又は排尿筋閉塞除去のような外科手術、食餌制限及び薬剤によって治療されている。市販又は開発中の、特に過活動膀胱の分野における薬剤は、コリン作動アンタゴニスト(cholinergic antagonist)、アドレナリンアンタゴニスト又はアゴニスト、バソプレッシンアゴニスト、ニューロキニンアンタゴニスト、カリウムチャンネル活性剤、鎮痛剤、NO供与剤、Ca2+調節剤、鎮痙剤、平滑筋調節剤、好ましくはボツリヌストキシン、5HT再取り込み阻害剤、プリン作動性受容体アンタゴニスト、PDE阻害剤、及び/あるいはVR1調節剤である。今日における主要な薬剤は、抗コリン剤である。しかしながら、患者の有意な割合はこれらの薬剤に反応しないか、又は部分的な症状の改善が得られるのみであるとされている。例えば、Yentreve(登録商標)(Duloxetin, Eli Lilly and Boehringer Ingelheim)で治療されている尿失禁を有する女性の36%は治療に反応しなかった。
【0009】
更に、多くの患者において、数種の重度の副作用が報告されている。広範に報告されているのは、口渇、目乾燥、膣乾燥、動悸、眠気、便秘、かすみ目及び尿貯留又は慢性的な治療における排尿後の残量尿量の増加である。副作用のパターンが減少している抗コリン剤の副集団は、抗ムスカリン化合物を含み、それらの幾つかはM及びM受容体サブタイプに特異的であるか又はM及び/又はMに選択的である。しかしながら、多くの副作用、特に口渇は、依然として多くの患者によって報告されている。
【0010】
膀胱機能不全の治療における先行技術の方法のこれらの限界に鑑み、非常に有効である膀胱機能不全の治療法を提供する必要がある。更に、副作用の少ない膀胱機能不全の治療法が必要である。また、患者の服薬遵守率の高い膀胱機能不全の治療法が必要である。これらの種々の必要性が、本発明の背景となる問題として、概括してここに引用する。
【0011】
本明細書において開示する手段及びそれらの使用は、これらの必要性の少なくとも一つに合致するために適している。
【0012】
本発明の背景をなす問題は、第一態様において膀胱機能不全の治療及び/又は予防のための薬剤の製造のためにキニン受容体アンタゴニストの使用によって解決される。ここでキニン受容体はB1及びB2受容体を含む群から選択される。
【0013】
一実施態様では、キニン受容体はB1受容体である。
【0014】
好ましい一実施態様では、キニン受容体アンタゴニストは好ましくはB1受容体アンタゴニストであって、以下を含む群から選択される:
【表4】


2−[1−(3,4−ジクロロ−ベンゼンスルホニル)−3−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノキサリン−2−イル]−N−{2−[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール2−イル)−フェニル]−エチル}−アセトアミド、
N−{2−[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−フェニル]−エチル}−2−[1−(ナフタリン−2−スルホニル)−3−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノキサリン−2−イル]−アセトアミド、
3−(3,4−ジクロロ−フェニル)−N−{1−[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−ベンジル]−2−オキソ−2−ピロリジン−1−イル−エチル}−3−(ナフタリン−2−スルホニルアミノ)−プロピオンアミド、
4’−(1−{3−[(2,2−ジフルオロ−シクロプロパンカルボニル)−アミノ]−4−メチル−ピリジン−2−イルアミノ}−エチル)−5−メチル−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、
N−(4−クロロ−2−{1−[3’−フルオロ−2’−(3−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イル]−エチルアミノ}−ピリジン−3−イル)−3,3,3−トリフルオロプロピオンアミド、
3−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−N−[2−[4−(2,6−ジメチル−ピペリジン−1−イルメチル)−フェニル]−1−(イソプロピル−メチル−カルバモイル)−エチル]−3−(6−メトキシ−ナフタリン−2−スルホニルアミノ)−プロピオンアミド、
{2−(2,2−ジフェニル−エチルアミノ)−5−[4−(4−イソプロピル−ピペラジン−1−カルボニル)−ピペリジン−1−スルホニル]−フェニル}−モルホリン−4−イル−メタノン、
{2−(2,2−ジフェニル−エチルアミノ)−5−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−カルボニル)−ピペリジン−1−スルホニル]−フェニル}−モルホリン−4−イル−メタノン、
4’−[({1−[(ピリミジン−5−カルボニル)−アミノ]−シクロプロパンカルボニル}−アミノ)−メチル]−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、
4’−[({1−[(5−トリフルオロメチル−ピリジン−3−カルボニル)−アミノ]−シクロプロパンカルボニル}−アミノ)−メチル]−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、
N−[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−ベンジル]−2−{2−[(4−メトキシ−2,6−ジメチル−ベンゼンスルホニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−N−メチル−アセトアミド、
3,3’−ジフルオロ−4’−{[5−(4−ピリジン−4−イル−ピペラジン−1−カルボニル)−ピリジン−2−イルアミノ]−メチル}−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、
3,3’−ジフルオロ−4’−{[5−(4−低級アルキル−メチル−ピペラジン−1−カルボニル)−ピリジン−2−イルアミノ]−メチル}−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、及び
N−[6−(tert−ブチルアミノ−メチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル]−2−[1−(3−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホニル)−ピペリジン−2−イル]−アセトアミド。
【0015】
一実施態様では、キニン受容体はB2受容体である。
【0016】
好ましい一実施態様では、キニン受容体アンタゴニストは好ましくはB2受容体アンタゴニストであって、以下を含む群から選択される:
MEN11270、
【表5】


4−{2−[({[3−(3−ブロモ−2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−8−イルオキシメチル)−2,4−ジクロロ−フェニル]−メチル−カルバモイル}−メチル)−カルバモイル]−ビニル}−N,N−ジメチル−ベンズアミド、
3−(6−アセチルアミノ−ピリジン−3−イル)−N−({[2,4−ジクロロ−3−(2−メチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−フェニル]−メチル−カルバモイル}−メチル)−アクリルアミド、
1−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニル]−ピロリジン−2−カルボン酸[3−(4−カルバムイミドイル−ベンゾイルアミノ)−プロピル]−アミド、
ブラジジド(Bradizide)、
4−(4−{1−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニル]ピロリジン−2−カルボニル}−ピペラジン−1−カルボニル)−ベンズアミジン、
2−[5−(4−シアノ−ベンゾイル)−1−メチル−1H−ピロール−2−イル]−N−[2,4−ジクロロ−3−(2−メチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−フェニル]−N−メチル−アセトアミド及び
[4−アミノ−5−(4−{4−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−ピラン−4−カルボニル}−ピペラジン−1−イル)−5−オキソ−ペンチル]−トリメチル−アンモニウム。
【0017】
一実施態様では、キニン受容体アンタゴニストは、好ましくはB2受容体アンタゴニストであって、式(I)のペプチドである。
Z−P−A−B−C−E−F−K−(D)Q−G−M−F’−I (I)
[式中:
Zは、a)水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルカノイル、(C−C)−アルコキシカルボニル、(C−C)−シクロアルキル、(C−C)−シクロアルカノイル又は(C−C)−アルキルスルホニルであって、
それぞれの場合、1、2又は3の水素原子は、場合により個々に及び互いに独立して1、2又は3の同一又は異なった基によって置換され、その基は、カルボキシル、NHR(1)、[(C−C)−アルキル]NR(1)又は[(C−C10)−アリール−(C−C)−アルキル]NR(1)(ここで、R(1)は水素又はウレタン保護基である)、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルキルアミノ、(C−C10)−アリール−(C−C)−アルキルアミノ、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、ハロゲン、ジ−(C−C)−アルキルアミノ、ジ−[(C−C10)−アリール−(C−C)]−アルキルアミノ、カルバモイル、フタルイミド、1,8−ナフタルイミド、スルファモイル、(C−C)アルコキシカルボニル、(C−C14)−アリール及び(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキルからなる群から選択され、
又はそれぞれの場合、1水素原子は、場合により一つの基によって置換され、その基は、(C−C)−シクロアルキル、(C−C)−アルキルスルホニル、(C−C)−アルキルスルフィニル、(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキルスルホニル、(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキルスルフィニル、(C−C14)−アリール、(C−C14)−アリールオキシ、(C−C13)−ヘテロアリール及び(C−C13)−ヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
及び1又は2の水素原子は、1又は2の同一又は異なった基によって置換され、その基は、カルボキシル、アミノ、(C−C)−アルキルアミノ、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、ハロゲン、ジ−(C−C)−アルキルアミノ、カルバモイル、スルファモイル、(C−C)−アルコキシカルボニル、(C−C14)−アリール及び(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキルからなる群から選択され;
)(C−C14)−アリール、(C−C15)−アロイル、(C−C14)−アリールスルホニル、(C−C13)−ヘテロアリール又は(C−C13)−ヘテロアロイルであり;あるいは
)カルバモイルであって、場合により(C−C)−アルキル、(C−C14)−アリール又は(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキルによって窒素上に置換されてもよく;
ここで、a)、a)及びa)で定義した基において、アリール、ヘテロアリール、アロイル、アリールスルホニル及びヘテロアロイル基は、場合により1、2、3又は4基によって個々に及び独立して置換されてもよく、それらの基は、カルボキシル、アミノ、ニトロ、(C−C)−アルキルアミノ、ヒドロキシル、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、(C−C14)−アリール、(C−C15)−アロイル、ハロゲン、シアノ、ジ−(C−C)−アルキルアミノ、カルバモイル、スルファモイル及び(C−C)−アルコキシカルボニルからなる群から選択され;
Pは式II
−NR(2)−(U)−CO− (II)
の共有結合又は基であり、式中、R(2)は水素、メチル又はウレタン保護基であり、
Uは(C−C)−シクロアルキリデン、(C−C14)−アリーリデン、(C−C13)−ヘテロアリーリデン、(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキリデンであって、それらは場合により個々に及び互いに独立して置換されてもよく、又は[CHR(3)]であってもよく、
nは1〜8のいずれかの整数、好ましくは1〜6のいずれかの整数であり、
いずれのR(3)も、独立して及び個々に、水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキル、(C−C14)−アリール、(C−C13)−ヘテロアリールを含む群から選択され、ここでR(3)が水素とは異なるという条件下で、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキル、(C−CI4)−アリール及び(C−C13)−ヘテロアリールは、場合により、アミノ、置換アミノ、アミジノ、置換アミジノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、グアニジノ、置換グアニジノ、ウレイド、置換ウレイド、メルカプト、メチルメルカプト、フェニル、4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、4−ニトロフェニル、4−メトキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、フタルイミド、1,8−ナフタルイミド、4−イミダゾリル、3−インドリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル又はシクロヘキシルによって一置換され、
あるいは
そこでR(2)及びR(3)は、それらを担う原子と共に、2〜15の炭素原子を有する単環、二環又は三環系を形成し;
AはPと定義され;
Bは側鎖が置換され得る、L又はDの立体配置の塩基性アミノ酸であり;
Cは式IIIa又はIIIb
G’−G’−Gly G’−NH−(CH)p−CO
(IIIa) (IIIb)
の化合物であって
式中、
pは、2から8のいずれかの整数であり、及び
いずれのG’も、独立して式IV
−NR(4)−CHR(5)−CO− (IV)
の基であり
式中、
R(4)及びR(5)は、それらを担う原子と共に、2〜15の炭素原子を有する単環、二環又は三環系を形成し;
Eは、中性、酸性又は塩基性の、脂肪族又は脂環脂肪族アミノ酸の基であり;
Fは、側鎖が置換され得る中性、酸性又は塩基性の、脂肪族又は芳香族アミノ酸の、互いに独立した基又は共有結合であり;
(D)QはD−Tic、D−Phe、D−Oic、D−Thi又はD−Nalであって、そのいずれもが場合により、ハロゲン、メチル又はメトキシで置換されており、又は下の式(V)
【化3】


の基であり
式中、
Xは、酸素、硫黄又は共有結合であり;
Rは、水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキル、(C−C14)−アリール、(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキルであって、それらの脂環系は、場合によりハロゲン、メチル又はメトキシにより置換され得;
Gは、上記のG’として定義されるか又は共有結合であり;
F’は、Fとして定義され、−NH−(CH−基であり、ここでq=2から8であり、又はGが直接結合で無い場合は、直接結合であり;
Iは、−OH、−NH又はNHCであり;
Kは、−NH−(CH−CO−基であって、ここでx=1〜4、又は共有結合であり、及び
Mは、Fと定義される]
又は生理的に許容し得るその塩である。
【0018】
好ましい一実施態様では、該ペプチドは式Iのペプチド又は生理的に許容し得るその塩であって、式中、
Zは、上記a)、a)及びa)の下で定義された通りであるが、好ましくは水素であり、
Pは、共有結合又は式II
−NR(2)−(U)−CO− (II)
の基であり、
式中、
UはCHR(3)であり、
R(3)は上に定義した通りであり、及び
R(2)は水素又はCHであり、
Aは共有結合である。
【0019】
好ましくは先の実施態様の一つの実施態様であるより好ましい実施態様において、
式中、
Zは、上記a)、a)及びa)の下で定義された通りであり、好ましくは水素であり、
Pは、共有結合又は式II
−NR(2)−(U)−CO− (II)
の基であり、
式中、
UはCHR(3)であり、及び
R(3)は個々に及び独立して、水素、(C1−C6)−アルキル、(C3−C8)−シクロアルキル、(C6−C14)−アリール、(C3−C13)−ヘテロアリールを含む群から選択され、ここでR(3)が水素とは異なるという条件下で、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキル、(C−CI4)−アリール及び(C−C13)−ヘテロアリールは、場合により、アミノ、置換アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、グアニジノ、置換グアニジノ、ウレイド、メルカプト、メチルメルカプト、フェニル、4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、4−ニトロフェニル、4−メトキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、フタルイミド、4−イミダゾリル、3−インドリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル又はシクロヘキシルによって一置換され、
あるいはそこでR(2)及びR(3)は、それらを担う原子と共に、2〜15の炭素原子を有する単環、二環又は三環系を形成し;
R(2)は水素又はCH3であり;
Aは、共有結合であり;
(D)QはD−Ticである。
【0020】
更により好ましい一実施態様では、該ペプチドは、以下に示すものであるか又は生理的に許容し得るその塩である。
【表6】

【0021】
特に好ましい一実施態様では、該ペプチドは、以下に示すものであるか又は生理的に許容し得るその塩である。
【表7】

【0022】
一実施態様では、膀胱機能不全は、頻尿、尿意切迫、排尿障害、尿失禁、遺尿症、膀胱機能の喪失及び夜間頻尿を含む群から選択される一以上の疾患パターンに関連している。
【0023】
好ましい一実施態様では、膀胱機能不全は頻尿と関連している。
【0024】
更に好ましい一実施態様では、膀胱機能不全は尿意切迫と関連している。
【0025】
より一層好ましい一実施態様では、膀胱機能不全は尿失禁と関連している。
【0026】
一実施態様では、膀胱機能不全は、神経原性、筋原性、腫瘍性、好ましくは良性前立腺過形成、炎症性、代謝性及び特発性疾患、前立腺肥大、ホルモン失調、手術又は傷害による膀胱閉塞、泌尿生殖路の解剖学的変化、多発性硬化症、パーキンソン病、脳卒中、糖尿病及び加齢を含む群から選択される一つ以上の疾患に関連及び/又は起因する。
【0027】
好ましい一実施態様では、膀胱機能不全は神経原性疾患に関連及び/又は起因する。
【0028】
更に好ましい一実施態様では、膀胱機能不全は筋原性及び/又は炎症性疾患に関連及び/又は起因する。
【0029】
更に一層好ましい一実施態様では、膀胱機能不全は、特発性疾患に関連及び/又は起因する。
【0030】
好ましい別の実施態様では、膀胱機能不全は、腫瘍性及び/又は代謝性疾患に相関及び/又は起因し、及び/又は糖尿病又は加齢と関連している。
【0031】
更に好ましい別の実施態様では、膀胱機能不全は、C−線維活性化及び/又は感作、好ましくは病的なC−線維活性化及び/又は感作に関連している。
【0032】
一実施態様では、膀胱機能不全及び関連及び/又は起因する疾患パターンは、コリン作動アンタゴニスト、アドレナリンアンタゴニスト、アドレナリンアゴニスト、バソプレッシンアゴニスト、ニューロキニンアンタゴニスト、カリウムチャンネル活性化剤、鎮痛剤、NO供与体、Ca2+調節剤、鎮痙剤、筋肉弛緩剤、好ましくはボツリヌストキシン、5HT再吸収阻害剤、プリン受容体アンタゴニスト、PDE阻害剤及びVR1調節剤を含む群から選択される化合物によっては、治療又は予防することができない。
【0033】
一実施態様では、薬剤はそれを必要とする患者に、治療有効量投与する。
【0034】
一実施態様では、薬剤は経口剤形で存在し、該経口剤形は、散剤、好ましくは分散可能な散剤、カプセル剤、錠剤、液剤及び懸濁液剤を含む群から選択される。
【0035】
一実施態様では、薬剤は非経口投与用である。
【0036】
一実施態様では、薬剤は局所及び/又は全身投与用である。
【0037】
一実施態様では、薬剤は静脈内投与、皮下投与、膀胱内投与、筋肉内投与、髄腔内投与、鼻内投与、直腸内投与、舌下投与、経尿道投与、膣内投与、膣周投与、腹腔内投与、経粘膜投与、経皮投与及び吸入を含む群から選択される経路によって患者に投与するためのものである。
【0038】
一実施態様では、薬剤は少なくとも一つの更なる医薬活性化合物を含む。
【0039】
好ましい一実施態様では、該更なる医薬活性化合物は、コリン作動アンタゴニスト、アドレナリンアンタゴニスト又はアゴニスト、バソプレッシンアゴニスト、ニューロキニンアンタゴニスト、カリウムチャンネル活性化剤、鎮痛剤、NO供与体、Ca2+調節剤、鎮痙剤、筋肉弛緩剤、好ましくはボツリヌストキシン、5HT再吸収阻害剤、プリン受容体アンタゴニスト、PDE阻害剤及びVR1調節剤を含む群から選択される。
【0040】
一実施態様では、該キニンアンタゴニスト及び/又は少なくとも一つの更なる医薬活性化合物は、医薬的に許容し得る塩、エステル、アミド、プロドラッグ又は医薬活性を有する溶媒和物として存在する。
【0041】
一実施態様では、該キニンアンタゴニストは代謝されて一つ以上の医薬活性分子となる。
【0042】
一実施態様では、薬剤は医薬的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤を含む。
【0043】
一実施態様では、薬剤は多数の個別化した用量及び/又は投与剤形を含む。
【0044】
一実施態様では、薬剤は動物における膀胱機能不全の治療及び/又は予防に用いる。
【0045】
本発明において、本発明者らがキニン受容体アンタゴニストを膀胱機能不全の治療のために用いることができることを発見したのは驚くべきことである。この驚くべき発見は、キニン受容体が恒常的にC線維上に発現されており(Steranka ら., Proc Natl Acad Sci U S A. 1988 May;85(9):3245-9)、それが次に膀胱機能不全と関連した、又は膀胱機能不全を伴った種々の機構に関与している、という事実によって説明することができる。
【0046】
膀胱機能不全に広い意味で関与している、基本的に2つのキニン受容体、すなわちキニンB1受容体及びキニンB2受容体が存在する。両者の受容体が関与していることから、両者の受容体のアンタゴニストを膀胱機能不全の治療のために用いることができる。キニンB1受容体は、特にLeeb-Lundbergら., Pharmacol Rev. 2005 Mar;57(1):27-77に記載されている。キニンB2受容体は、特にLeeb-Lundbergら., Pharmacol Rev. 2005 Mar;57(1):27-77に記載されている。
【0047】
「キニンアンタゴニスト」という用語は、好ましくはその通常の意味で用いられ、キニン受容体に結合し、拮抗する化合物を言う。特に明記しない限り、「キニンアンタゴニスト」という用語は、B1受容体アンタゴニスト及びB2受容体アンタゴニスト、特に本明細書で更に開示したように、それらの塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び他の誘導体を含むことを意図している。更に加えて、それらの塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び他の誘導体のいずれも、薬理的活性を有するばかりでなく医薬活性を有することを理解される。
【0048】
キニンアンタゴニストは、例えば適切なアッセイにおいて、特徴づけることができる。該アッセイは当業者には知られており、特にWieczorek ら., Biochem Pharmacol. 1997 Jul 15;54(2):283-91に記載されている。
【0049】
例えば、本明細書に記述する機能的カルシウムフラックスアッセイにおいて、B2受容体の活性化がホスホリパーゼCの活性化及びその後のイノシトールリン酸の放出を開始させる。これが、第二のメッセンジャーであるカルシウムの、小胞体内の貯留から細胞の細胞質ゾルへの放出を開始させる。細胞質ゾルのカルシウムイオンは、細胞質ゾルのカルシウム色素(例えばFura−2)に結合しその蛍光性質を変える。そのようにして細胞の蛍光性質は、細胞質ゾルのカルシウム濃度に直接的に相応する。それ故、前保温を行い、細胞をカルシウム色素で充填した後、B2キニン受容体を活性化させる事によって開始された細胞内カルシウム濃度における変化は、例えば蛍光分光分析装置及び計測器のような適切なデバイスによって、時間を追って観察できる。このような型のアッセイにおいて、キニン受容体アンタゴニストとともに保温することによる、アゴニストによって誘導される受容体活性化の阻害は、細胞質ゾル内のカルシウム濃度におけるアゴニスト誘導による増加を回避するか、又は低下させる。
【0050】
本発明と関連して、以下の用語は、特に明記しない限り好ましくは次のような意味を有する。
【0051】
「下部尿路」は、腎臓を除く全ての尿系のパーツを意味することを意図している。
【0052】
「膀胱機能不全」は、膀胱が関与するいかなる病的状態をも意味することを意図している。
【0053】
本明細書で用いる「疾患パターン」という用語は、膀胱機能不全と関連する症状又は病理的状況、として定義される。疾患パターンは単一症状又は病理的状況ならびに異なった症状又は病理的状況の組み合わせを含む。膀胱機能不全と関連する疾患パターンは、頻尿、尿意切迫、排尿障害、尿失禁、遺尿症、膀胱機能の喪失及び夜間頻尿を含んでもよく、その内の幾つかは、「過活動性膀胱」としてまとめることができるが、これらに限定されない。
【0054】
「尿意切迫」とは、急性の排尿切迫感で、排尿を遅らせることに全く成功しないか、あるいは少しだけ成功することがある。膀胱内に実際の尿の体積に殆ど関係無く、患者は切迫した尿意を感じる。
【0055】
排尿を遅らせることの多少の成功と相関しているならば、患者は、「頻尿」と呼ばれる疾患パターンを患っており、それは排尿頻度が、患者が欲するよりも多いことを意味する。日中に通常人が排尿すると予想される回数における個人間の変異がかなりあることから、「排尿頻度が、患者が欲するよりも多いこと」は更に、患者の過去のベースラインよりも大きな一日あたりの回数と定義される。「過去のベースライン」は、正常な又は欲する期間の一日当たりの患者の排尿回数の中央値として更に定義される。
【0056】
もし尿意切迫が、排尿遅延の不成功と相関している場合、患者は「尿失禁」を患っている。
【0057】
「切迫失禁」又は「切迫尿失禁」という用語は、排尿する急性の強い欲求を伴った、不随意性の尿の排出に対して用いることを意図している。「ストレス失禁」又は「ストレス尿失禁」という用語は、人が、咳、くしゃみ、笑う、運動、重い物を持ち上げる又は膀胱に圧を加えるいずれかのことを行う時に尿が漏れる、医学的状態に対して用いることを意図している。
【0058】
「排尿障害」において、患者は、悪化した排尿を伴った、排尿する強い欲求を感じる。尿失禁は、欲しない尿漏れが、社会的及び衛生的な関連した問題を作る状態を意味する(国際尿失禁学会の定義)。
【0059】
「遺尿症」という用語は4歳より上の幼児による排尿調節の欠如に由来する、欲しない排尿を言う。
【0060】
「機能喪失」とは、多くは重度の神経病変又は疾患に起因する、患者による膀胱調節の完全な喪失である。
【0061】
「夜間頻尿」は夜間、尿生産が増えることを言い、患者が欲するよりも多くの排尿のための覚醒時間をもたらす。
【0062】
疾患パターンとして、2002年国際尿失禁学会基準化において定義された「過活動性膀胱」は、いくつかの症状を含み、通常切迫尿失禁を伴い又は伴わず、多くの場合頻尿及び夜間頻尿を伴っている。過活動性膀胱の除外診断のための重要な点は、感染又は他の証明された病態が存在しないことである(Abrams等、国際尿失禁学会、基準サブコミティーからの報告, Urology, 61: 37, 2003)。
【0063】
原則として、膀胱機能不全のいかなる形態であっても、本明細書に開示のキニンアンタゴニストを用いて治療できるということを、当業者ならば認識するであろう。本明細書の他の場所で記載される膀胱機能不全の種々の形態を別にして、膀胱機能不全の特定の形態は、前立腺炎、プロスタディニア及び膀胱炎、好ましくは間質性膀胱炎である。
【0064】
本発明に従って用いることができるキニンアンタゴニストの特に好ましい群はB1受容体アンタゴニストである。
【0065】
より好ましいB1受容体アンタゴニストは以下のものである。
H−Ac−Lys−Arg−Pro−Pro−Gly−Phe−Ser−D−Nal−Ile−OH(R715)、
Ac−Lys−Arg−Pro−Pro−Gly−N−MePhe−Ser−D−Nal−Ile−OH(R892)、及び
AcLys−Lys−Arg−Pro−Pro−Gly−NMePhe−Ser−D−Nal−Ile−OH(R914) Gobeil, F., Jr.; Charland, S.; Filteau, C.; Perron, S. I.; Neugebauer, W.; Regoli, D. Hypertension 1999, 33, 823-9に記載;
AcOrn−Arg−Oic−Pro−Gly−NMePhe−Ser−D−Nal−Phe−OH(R954),Gabra, B. H.; Sirois, P. Peptides 2003, 24, 1131-9に記載;
H−Lys−Lys−Arg−Pro−Hyp−Gly−Igl−Ser−D−Igl−Oic−OH(B9858)及び
H−Lys−Lys−Arg−Pro−Hyp−Gly−Cpg−Ser−D−Tic−Cpg−OH(B9958)Stewart, J. M.; Gera, L.; Hanson, W.; Zuzack, J. S.; Burkard, M.; McCullough, R.; Whalley, E. T. Immunopharmacology 1996, 33, 51-60に記載;
【化4】


2−[1−(3,4−ジクロロ−ベンゼンスルホニル)−3−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノキサリン−2−イル]−N−{2−[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−フェニル]−エチル}−アセトアミド、
【化5】


N−{2−[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−フェニル]−エチル}−2−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−3−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノキサリン−2−イル]−アセトアミド、
【化6】


3−(3,4−ジクロロ−フェニル)−N−{1−[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−ベンジル]−2−オキソ−2−ピロリジン−1−イル−エチル}−3−(ナフタレン−2−スルホニルアミノ)−プロピオンアミド、
【化7】


4’−(1−{3−[(2,2−ジフルオロ−シクロプロパンカルボニル)−アミノ]−4−メチル−ピリジン−2−イルアミノ}−エチル)−5−メチル−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、
【化8】


N−(4−クロロ−2−{1−[3’−フルオロ−2’−(3−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イル]−エチルアミノ}−ピリジン−3−イル)−3,3,3−トリフルオロ−プロピオンアミド、
Hess, J. F.; Ransom, R. W.; Zeng, Z.; Chang, R. S.; Hey, P. J.; Warren, L.; Harrell, C. M.; Murphy, K. L.; Chen, T. B.; Miller, P. J.; Lis, E.; Reiss, D.; Gibson, R. E.; Markowitz, M. K.; DiPardo, R. M.; Su, D. S.; Bock, M. G.; Gould, R. J.; Pettibone, D. J. J. Pharmacol. Exp. Ther. 2004, 310, 488-97に記載;
【化9】


3−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−N−[2−[4−(2,6−ジメチル−ピペリジン−1−イルメチル)−フェニル]−1−(イソプロピル−メチル−カルバモイル)−エチル]−3−(6−メトキシ−ナフタレン−2−スルホニルアミノ)−プロピオンアミド、Gougat, J.; Ferrari, B.; Sarran, L.; Planchenault, C.; Poncelet, M.; Maruani, J.; Alonso, R.; Cudennec, A.; Croci, T.; Guagnini, F.; Urban-Szabo, K.; Martinolle, J. P.; Soubrie, P.; Finance, O.; Le Fur, G. J. Pharmacol. Exp. Ther. 2004, 309, 661-9に記載;及び
【化10】


{2−(2,2−ジフェニル−エチルアミノ)−5−[4−(4−イソプロピル−ピペラジン−1−カルボニル)−ピペリジン−1−スルホニル]−フェニル}−モルホリン−4−イル−メタノン、
【化11】


{2−(2,2−ジフェニル−エチルアミノ)−5−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−カルボニル)−ピペリジン−1−スルホニル]−フェニル}−モルホリン−4−イル−メタノン、
Ritchie, T. J.; Dziadulewicz, E. K.; Culshaw, A. J.; Muller, W.; Burgess, G. M.; Bloomfield, G. C.; Drake, G. S.; Dunstan, A. R.; Beattie, D.; Hughes, G. A.; Ganju, P.; McIntyre, P.; Bevan, S. J.; Davis, C.; Yaqoob, M. J. Med. Chem. 2004, 47, 4642-4に記載、
【化12】


4’−[({1−[(ピリミジン−5−カルボニル)−アミノ]−シクロプロパンカルボニル}−アミノ)−メチル]−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、
【化13】


4’−[({1−[(5−トリフルオロメチル−ピリジン−3−カルボニル)−アミノ]−シクロプロパンカルボニル}−アミノ)−メチル]−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、
Wood, M. R.; Schirripa, K. M.; Kim, J. J.; Wan, B. L.; Murphy, K. L.; Ransom, R. W.; Chang, R. S.; Tang, C.; Prueksaritanont, T.; Detwiler, T. J.; Hettrick, L. A.; Landis, E. R.; Leonard, Y. M.; Krueger, J. A.; Lewis, S. D.; Pettibone, D. J.; Freidinger, R. M.; Bock, M. G. J. Med. Chem. 2006, 49, 1231-4に記載;
【化14】


N−[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−ベンジル]−2−{2−[(4−メトキシ−2,6−ジメチル−ベンゼンスルホニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−N−メチル−アセトアミド、
Porreca, F.; Vanderah, T. W.; Guo, W.; Barth, M.; Dodey, P.; Peyrou, V.; Luccarini, J. M.; Junien, J. L.; Pruneau, D. J. Pharmacol. Exp. Ther. 2006に記載;
【化15】


3,3’−ジフルオロ−4’−{[5−(4−ピリジン−4−イル−ピペラジン−1−カルボニル)−ピリジン−2−イルアミノ]−メチル}−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、
【化16】


3,3’−ジフルオロ−4’−{[5−(4−低級アルキル−メチル−ピペラジン−1−カルボニル)−ピリジン−2−イルアミノ]−メチル}−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、
Kuduk, S. D.; Di Marco, C. N.; Chang, R. K.; Wood, M. R.; Kim, J. J.; Schirripa, K. M.; Murphy, K. L.; Ransom, R. W.; Tang, C.; Torrent, M.; Ha, S.; Prueksaritanont, T.; Pettibone, D. J.; Bock, M. G. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2006, 16, 2791-2795に記載;及び
【化17】


N−[6−(tert−ブチルアミノ−メチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル]−2−[1−(3−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホニル)−ピペリジン−2−イル]−アセトアミド、
Fotsch, C.; Biddlecome, G.; Biswas, K.; Chen, J. J.; D'Amico, D. C.; Groneberg, R. D.; Han, N. B.; Hsieh, F. Y.; Kamassah, A.; Kumar, G.; Lester-Zeiner, D.; Liu, Q.; Mareska, D. A.; Riahi, B. B.; Wang, Y. J.; Yang, K.; Zhan, J.; Zhu, J.; Johnson, E.; Ng, G.; Askew, B. C. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2006, 16, 2071-5に記載。
【0066】
上記の化合物のあるものはB1受容体アンタゴニスト及びB2受容体アンタゴニストとして分類されるが、B1受容体アンタゴニストはB2受容体アンタゴニストとしても有効である可能性があり、B2受容体アンタゴニストはB1受容体アンタゴニストとしても有効である可能性があることを、当業者であれば認識するであろう。B1受容体アンタゴニストのB2受容体アンタゴニスト活性は、そのB1受容体アンタゴニスト活性よりも有意にはあまり明確でないことが、好ましい。またB2受容体アンタゴニストのB1受容体アンタゴニスト活性は、そのB2受容体アンタゴニスト活性よりも有意にはあまり明確でないことが、好ましい。活性における差は50から500以上の比率であることが一層好ましく、更に500を超える比率であることが好ましい。
【0067】
本発明に従って使用する、キニンアンタゴニストの特に好ましい群はB2受容体アンタゴニストである。
【0068】
もっと好ましいB2受容体アンタゴニストは次のようなものである。
【化18】


Meini, S.; Quartara, L.; Rizzi, A.; Patacchini, R.; Cucchi, P.; Giolitti, A.; Calo, G.; Regoli, D.; Criscuoli, M.; Maggi, C. A. J. Pharmacol. Exp. Ther. 1999, 289, 1250-6に記載;
H−D−Arg−Arg−Pro−Hyp−Gly−Igl−Ser−D−F5F−Igl−Arg−OH(B−10056)、及び
H−Arg−Arg−Pro−Hyp−Gly−Igl−Ser−D−Igl−Oic−Arg−OH(B−9430)、Stewart, J. M.; Gera, L.; York, E. J.; Chan, D. C.; Bunn, P. Immunopharmacology 1999, 43, 155-61に記載;
[H−D−Arg−Arg−Pro−Hyp−Gly−Phe−Cys−D−Phe−Leu−Arg−OH]BSH、ここで、BSH=ビススクシンイミドヘキサン(CP-0127Bradycor)、byHeitsch, H. Curr. Med. Chem. 2002, 9, 913-28に記載、
【化19】


4−{2−[({[3−(3−ブロモ−2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−8−イルオキシメチル)−2,4−ジクロロ−フェニル]−メチル−カルバモイル}−メチル)−カルバモイル]−ビニル}−N,N−ジメチル−ベンズアミドであるFR167344、
【化20】


3−(6−アセチルアミノ−ピリジン−3−イル)−N−({[2,4−ジクロロ−3−(2−メチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−フェニル]−メチル−カルバモイル}−メチル)−アクリルアミドであるFR173657又はFK3657、
【化21】


1−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニル]−ピロリジン−2−カルボン酸[3−(4−カルバムイミドイル−ベンゾイルアミノ)−プロピル]−アミド、であるLF−160687又はアナチバント(Anatibant)、
【化22】


ブラジジド(Bradizide)、
【化23】


4−(4−{1−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニル]−ピロリジン−2−カルボニル}−ピペラジン−1−カルボニル)−ベンズアミジンであるLF−160335、Pruneau, D.; Luccarini, J. M.; Fouchet, C.; Defrene, E.; Franck, R. M.; Loillier, B.; Duclos, H.; Robert, C.; Cremers, B.; Belichard, P.; Paquet, J. L. Br. J. Pharmacol. 1998, 125, 365-72に記載;
【化24】


2−[5−(4−シアノ−ベンゾイル)−1−メチル−1H−ピロール−2−イル]−N−[2,4−ジクロロ−3−(2−メチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−フェニル]−N−メチル−アセトアミド、R., C. In Medicinal Chemistry - 28th National Symposium (Part II) - Overnight Report; IDdb meeting Report: San Diego, 2002に記載;及び
【化25】


[4−アミノ−5−(4−{4−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−ピラン−4−カルボニル}−ピペラジン−1−イル)−5−オキソ−ペンチル]−トリメチル−アンモニウム、
Cucchi, P.; Meini, S.; Bressan, A.; Catalani, C.; Bellucci, F.; Santicioli, P.; Lecci, A.; Faiella, A.; Rotondaro, L.; Giuliani, S.; Giolitti, A.; Quartara, L.; Maggi, C. A. Eur. J. Pharmacol. 2005, 528, 7-16に記載。
【0069】
特に好ましいB2受容体アンタゴニストは、イカチバント(Icatibant)及びその医薬活性を有する誘導体である。イカチバント及びその誘導体は、特にUS0564833Aにも記載してある。
【0070】
多くの科学的出版物において、イカチバント(Hoe140又はJE049とも呼ばれている。Lembeck ら., Br J Pharmacol. 1991 Feb;102(2):297-304)はB2サブタイプのキニン受容体の高度に有効なアンタゴニストであることを示している。イカチバントは、モルモット回腸調製物においてブラジキニンの結合を、1.07nMのIC50で阻害する(Hock ら., Br J Pharmacol. 1991 Mar;102(3):769-73)。ラット子宮の分離した器官調製物では、イカチバントは、ブラジキニンに誘導された収縮を、4.9nMのIC50値で阻害し(Hock ら., Br J Pharmacol. 1991 Mar;102(3):769-73)、またヒト臍帯静脈については8.4のpKβ値で阻害した(Quartara ら., Eur J Med Chem. 2000 Nov;35(11):1001-10)。更に、イカチバントは、モルモットB2受容体によってトリガーされた、ヒトINT407細胞におけるBK−仲介イノシトールリン酸生成を効率よく阻害した(Robert ら., Br J Pharmacol. 2002 Jan;135(2):462-8)。
【0071】
本発明に従ったキニンアンタゴニストの使用は、また他の医薬活性を有する薬剤又は化合物の投与を含んでもよいことを、当業者ならば認識するであろう。該他の医薬活性を有する薬剤は、好ましくは、コリン作動アンタゴニスト、アドレナリンアンタゴニスト又はアドレナリンアゴニスト、バソプレッシンアゴニスト、ニューロキニンアンタゴニスト、カリウムチャンネル活性剤、鎮痛剤、NO供与剤、Ca2+調節剤、鎮痙剤、筋肉弛緩剤、好ましくはボツリヌストキシン、5HT再取り込み阻害剤、プリン作動性受容体アンタゴニスト、PDE阻害剤、及びVR1調節剤を含む群から選択する。
【0072】
本発明で好ましく用いる「コリン作動アンタゴニスト」という用語は、任意のアセチルコリン受容体アンタゴニストをも言い、ニコチン性の及び/又はムスカリン性のアセチルコリン受容体のアンタゴニストを含む。本明細書で用いる「ニコチン性アセチルコリン受容体のアンタゴニスト」と言う用語は、任意のニコチン性アセチルコリン受容体のアンタゴニストをも意図している。本明細書で用いる「ムスカリン性の受容体のアンタゴニスト」は、任意のムスカリン性のアセチルコリン受容体のアンタゴニストをも意図している。特に明記しない場合は、「コリン作動アンタゴニスト」、「ニコチン性アセチルコリン受容体のアンタゴニスト」及び「ムスカリン性受容体のアンタゴニスト」は、更に本明細書に開示するように、コリン作動アンタゴニスト、ニコチン性アセチルコリン受容体のアンタゴニスト及びムスカリン性受容体のアンタゴニスト、ならびにそれらの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び他の誘導体を含むことを意図している。また更に、それらのいかなる塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は他の誘導体も、医薬的に許容することができ、薬理的活性を有すると理解される。
【0073】
アセチルコリンは、全ての動物の神経系における化学的神経伝達物質である。「コリン性神経伝達」は、アセチルコリンが関与している神経伝達を言い、歩行運動、消化、心拍数、「闘争」又は「逃走」反応及び学習及び記憶に亘る多岐機能の調節に関係するとされている(Salvaterra (February 2000) Acetylcholine. In Encyclopedia of Life Sciences. London: Nature Publishing Group, http:/www.els.net)。アセチルコリン受容体は、それらと優先的に相互作用する植物アルカロイドに基づいて、以下の2つの一般的なカテゴリー:1)ニコチン性(ニコチン結合);又は2)ムスカリン性(ムスカリン結合)、に分類される(例えば、Salvaterra, Acetylcholine、既出参照)。
【0074】
アセチルコリン受容体の2つの一般的カテゴリーは、その薬理的及び電気生理学的性質における相違に基づいて、更にサブクラスに分けてもよい。例えばニコチン性受容体は、以下のサブクラス:1)筋肉ニコチン性アセチルコリン受容体;2)蛇毒αブンガロトキシンに結合しない神経ニコチン性アセチルコリン受容体;および3)蛇毒αブンガロトキシンに結合する神経ニコチン性アセチルコリン受容体、を同定するために用いた種々のサブユニットから構成されている(Dani ら. (July 1999)神経におけるニコチン性アセチルコリン受容体(Nicotinic Acetylcholine Receptors in Neurons. In Encyclopedia of Life Sciences. London: Nature Publishing Group, http:/www.els.net; Lindstrom (October 2001)ニコチン性アセチルコリン受容体(Nicotinic Acetylcholine Receptors)In Encyclopedia of Life Sciences. London: Nature Publishing Group, http:/www.els.net)。対照的に、ムスカリン性受容体は、M−Mと標識される5のサブクラスに分類され、優先的に特異的なGタンパク質と結合する(M、M及びMはGと;M及びMはG/Gと)(Nathanson (July 1999)ムスカリン性アセチルコリン受容体(Muscarinic Acetylcholine Receptors. In Encyclopedia of Life Sciences. London: Nature Publishing Group, http:/www.els.net)。一般的にムスカリン性受容体は膀胱機能に関係してきた(例えば、Appell (2002) Cleve. Clin. J. Med. 69: 761-9; Diouf ら. (2002) Bioorg. Med. Chem. Lett. 12: 2535-9; Crandall (2001) J. Womens Health Gend. Based Med. 10: 735-43; Chapple (2000) Urology 55: 33-46を参照)。
【0075】
したがって、本発明に用いる薬剤には、任意の抗コリン剤、特に抗ムスカリン剤も含まれる。本発明の方法において特に有用であるのは、4−ジエチルアミノ−2−ブチニルフェニルシクロヘキシルグリコレートとしても知られている、オキシブチニンであって、次の構造
【化26】


を有する。
【0076】
Ditropan(登録商標)(塩酸オキシブチニン)は上記の化合物のd、lラセミ体の混合物で、平滑筋に鎮痙効果を発揮し平滑筋に対するアセチルコリンのムスカリン性活性を阻害することが知られている。オキシブチニンの代謝物及び異性体もまた、本発明に従って有用である活性を有することを示した。例としてはこれらに限定されないが、N−デスエチル−オキシブチニン及びS−オキシブチニンが挙げられる(例えばU.S.特許番号5,736,577及び5,532,278を参照)。
【0077】
抗ムスカリン剤として同定され、本発明において有用である更なる化合物としては、必ずしも限定されないが、以下のものが挙げられる:
a.ダリフェナシン(Daryon(登録商標))又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
b.ソリフェナシン又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
c.YM−905(コハク酸ソリフェナシン)又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
d.ソリフェナシン・モノ塩酸塩又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
e.トルテロジン(Detrol(登録商標))又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
f.プロピベリン(Detrunorm(登録商標))又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
g.臭化プロパンセリン(Pro−Banthine(登録商標))又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
h.硫酸ヒヨスチアミン(Levsin(登録商標))、Cystospaz(登録商標))又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
i.塩酸ジシクロミン(Bentyl(登録商標))又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
j.塩酸フラボキセート(Urispas(登録商標))又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
k.d,l(ラセミ体)4−ジエチルアミノ−2−ブチニルフェニルシクロヘキシルグリコレート、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
l.(R)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロパンアミンL−水素タルトラート又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
m.(+)−(1S,3’R)−キヌクリジン−3’−イル−1−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボン酸モノスクシナート又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
n.アルファ(+)−4−(ジメチルアミノ)−3−メチル−1,2−ジフェニル−2−ブタノールプロピオナート又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
o.1−メチル−4−ピペリジルジフェニルプロポキシアセタート又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
p.3α−ヒドロキシスピロ[1αH,5αH−ノルトロパン−8,1’−ピロリジニウムベンジラート又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
q.Diouf ら. (2002) Bioorg. Med. Chem. Lett. 12: 2535-9に開示の4アミノ−ピペリジン含有化合物;
r.ピレンジピン又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
s.メトクトラミン又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
t.4−ジフェニルアセトキシ−N−メチルピペリジンメチオダイド;
u.トロピカミド又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
v.(2R)−N−[1−(6−アミノピリジン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]−2−[(1R)−3,3−ジフルオロシクロペンチル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトアミド又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
w.PNU−200577((R)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルフェニル)−3−フェニルプロパンアミン)又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
x.KRP−197(4−(2−メチルイミダゾリル)−2,2−ジフェニルブチラミド)又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
y.フェソテロジン又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;及び
z.SPM 7605(フェソテロジンの活性代謝物)、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体。
【0078】
抗ムスカリン活性を有し、それ故本発明において有用であろう、更なる化合物は、Nilvebrant (2002) Pharmacol. Toxicol. 90: 260-7の記述どおり、ムスカリン受容体結合特異性研究によって、又はModiri ら. (2002) Urology 59: 963-8の記述どおり、膀胱内圧測定法によって同定又は決定することができる。
【0079】
本発明に従って用いることができる更なる種類の化合物は、アドレナリンアンタゴニスト又は作動剤である。本明細書で好ましくは用いる「アドレナリンアンタゴニスト又はアゴニスト」と言う用語は、その通常の意味で用い、アドレナリン受容体に結合し、及び拮抗するか又は作動する化合物を言う。特に明記しない場合は、「アドレナリンアンタゴニスト又はアゴニスト」は、本明細書で更に開示のアドレナリンアンタゴニスト又はアゴニスト、ならびにそれらの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体を含むことを意図している。また更に、当然のことながら、それらのいかなる塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は他の誘導体も、医薬的に許容することができ、薬理的活性を有する。
【0080】
アドレナリン受容体は、2つの主要なカテコールアミンホルモン及び神経伝達物質:ノルアドレナリン及びアドレナリン、のための細胞表面受容体である(Malbon ら. (February 2000) Adrenergic Receptors. In Encyclopedia of Life Sciences. London: Nature Publishing Group, http:/www.els.net)。アドレナリン受容体は、血圧調節、心筋及び平滑筋の収縮性、肺機能、代謝及び中枢神経活性を含む重要な生理的過程に関係しているとされている(例えばMalbon ら., Adrenergic Receptors、既出を参照)。アドレナリン受容体の2つの種類、α及びβが同定され、それらは更に三つの主要なファミリー(α1、α2及びβ)に分類され、それぞれは、異なったアゴニストに対するそれらの結合特性、及び分子クローニング技術に基づいて、少なくとも三つのサブタイプを有する(α1A、B,及びD;α2A、B及びC;そしてβ1、β2及びβ3)(例えばMalbon ら., Adrenergic Receptors、同上参照)。β3アドレナリン受容体は排尿筋で発現されていること、及び排尿筋はβ3アゴニストによって弛緩すること(Takeda, M. ら. (1999) J. Pharmacol. Exp. Ther. 288: 1367-1373)、及び一般的にβ3アドレナリン受容体は膀胱機能に関係していることは明らかであった(例えばTakeda ら. (2002) Neuourol. Urodyn. 21: 558-65; Takeda ら. (2000) J. Pharmacol. Exp. Ther. 293: 939-45を参照)。
【0081】
本発明で有用な他の薬剤には、任意のP3アドレナリンアゴニストが含まれる。β3アドレナリンアゴニストと同定し、本発明において有用である化合物には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:
a.U.S.特許番号6,069,176,PCT国際公開WO97/15549に開示の、Mitsubishi Pharma Corp.から入手できる、TT−138及びフェニルエタノールアミン化合物、又はそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
b.U.S.特許番号6,495,546と6,391,915に開示の、Fujisawa Pharmaceutical Co.から入手できる、FR−149174及びプロパノールアミン誘導体、又はそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
c.Kissei Pharmaceutical Co.から入手できる、KUC−7483、又はそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
d.Tanaka ら. (2003) J. Med. Chem. 46: 105-12に開示の、2−2−クロロ−4−(2−((1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチルアミノ)−エチル)フェノキシ酢酸のような4’−ヒドロキシノルエフェドリン誘導体、又はそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
e.特公昭63−26744及び欧州特許公表第23385号に開示の、BRL35135((R*R*)−(.+−.)−[4−[2−[2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]プロピル]フェノキシ]酢酸メチルエステル臭化水素塩のような2−アミノ−1−フェニルエタノール化合物、及び特開平1−6615及び欧州特許公開第255415号に開示の、SR58611A((RS)−N−(7−エトキシカルボニルメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフチ−2−イル)−2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエタンアミン塩酸塩、又はそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
f.Iizuka ら. (1998) J. Smooth Muscle Res. 34: 139-49に開示の、GS 332((2R)−[3−[3−[2−(3クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]シクロヘキシル]フェノキシ]酢酸ナトリウム)、又はそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
g.Tsujii ら. (1998) Physiol. Behav. 63: 723-8に開示の、GlaxoSmithKlineから入手できる、BRL−37,344(4−[−[(2−ヒドロキシ−(3−クロロフェニル)エチル)−アミノ]プロピル]フェノキシ酢酸)、又はそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
h.Takahashi ら. (1992) Jpn Circ. J. 56: 936-42に開示の、GlaxoSmithKlineから入手できるBRL−26830A、又はそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
i.Tavernier ら. (1992) J. Pharmacol. Exp. Ther. 263: 1083-90に開示の、Ciba−Geigyから入手できる、CGP 12177(4−[3−t−ブチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンズイミダゾール−2−オン)(β3アドレナリン受容体に対してアゴニストとして働くと報告された、β1/β2アドレナリンアンタゴニスト)、又はそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
j.Berlan ら. (1994) J. Pharmacol. Exp. Ther. 268: 1444-51に開示の、CL 316243(R,R−5−[2−[[2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル]アミノ]プロピル]−1,3−ベンゾジオキソール−2,2−ジカルボン酸)、又はそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
k.米国特許出願第20030018061号に開示の、β3アドレナリンアゴニスト活性を有する化合物、又はそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
l.Howe (1993) Drugs Future 18: 529に開示されAstraZeneca/ICI Labsから入手できる、ICI 215,001 HCl((S)−4−[2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアミノエトキシ]フェノキシ酢酸ヒドロクロリド)、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
m.Howe (1993) Drugs Future 18: 529に開示の、AstraZeneca/ICI Labsから入手できる、ZD 7114塩酸塩(ICI D7114;(S)−4−[2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアミノエトキシ]−N−(2−メトキシエチル)フェノキシアセトアミド塩酸塩)、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
n.Blin ら. (1994) Mol. Pharmacol. 44: 1094に開示の、ピンドロール(Pindolol)(1−(1H−インドール−4−イルオキシ)−3−[(1−メチルエチル)アミノ]−2−プロパノール)、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
o.Walter ら. (1984) Naunyn-Schmied.Arch.Pharmacol. 327: 159 and Kalkman (1989) Eur. J. Pharmacol. 173: 121に開示の、(S)−(−)−ピンドロール((S)−1−(1H−インドール−4−イルオキシ)−3−[(1−メチルエチル)アミノ]−2−プロパノール)、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
p.Manara ら. (1995) Pharmacol. Comm. 6: 253 and Manara ら. (1996) Br. J. Pharmacol. 117: 435によって開示され、Sanofi−Midyから入手できる、SR 59230A塩酸塩(1−(2−エチルフェノキシ)−3−[[(1S)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]アミノ]−(2S)−2−プロパノールヒドロクロリド)、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
q.Gauthier ら. (1999) J. Pharmacol. Exp. Ther. 290: 687-693に開示の、Sanofi Researchから入手できる、SR 58611(N[2s)−カルブ−エトキシメトキシ−1,2,3,4−テトラ−ヒドロナフサ]−(2r)−2−ヒドロキシ−2(3−クロロフェニル)エタミンヒドロクロリド;そして
r.Yamanouchi Pharmaceutical Co.から入手できるYM178、又はそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体。
【0082】
β3アドレナリンアゴニスト活性を有し、それ故本発明において有用である更なる化合物の同定については、Zilberfarb ら. (1997) J. Cell Sci. 110: 801-807; Takeda ら. (1999) J. Pharmacol. Exp. Ther. 288: 1367-1373; and Gauthier ら. (1999) J. Pharmacol. Exp. Ther. 290: 687-693の記述どおり、放射性リガンド結合アッセイ及び/又は収縮研究を実施することにより測定できる。
【0083】
本発明に従って使用できる更なる種類の化合物は、「バソプレッシンアゴニスト」である。「バソプレッシンアゴニスト」と言う用語は、好ましくは通常の意味で用い、バソプレッシン受容体に結合し活性化する化合物を言う。特に明記しない限り、「バソプレッシンアゴニスト」と言う用語は、バソプレッシン受容体アゴニスト、ならびにその酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及びその他の誘導体を含むことを意図する。また更に、当然のことながら、それらのいかなる塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は他の誘導体も、医薬的に許容することができ、薬理的活性を有する。
【0084】
本発明に従って使用できる更なる種類の化合物は、ニューロキニンアンタゴニストである。「ニューロキニンアンタゴニスト」と言う用語は、好ましくは通常の意味で、ニューロキニン受容体に結合し、拮抗する化合物を言う。特に明記しない限り、「ニューロキニンアンタゴニスト」と言う用語は、本明細書に更に開示のニューロキニン受容体アンタゴニスト、ならびにその酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び他の誘導体を含むことを意図している。また更に、当然のことながら、それらのいかなる塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は他の誘導体も、医薬的に許容することができ、薬理的活性を有する。
【0085】
タキキニン類(TKs)は、サブスタンスP、ニューロキニンA(NKA)及びニューロキニンB(NKB)を含む構造的に関連したペプチドのファミリーである。末梢では神経細胞がTKsの主要な源である。TKsの重要な一般的な効果は神経細胞の刺激であるが、他の効果としては、内皮細胞依存性血管拡張、血漿タンパク血管外遊出、マスト細胞動員及び炎症細胞の脱顆粒及び刺激が挙げられる(Maggi, C. A. (1991) Gen. Pharmacol., 22: 1-24参照)。一般的にタキキニン受容体は、膀胱機能に関連しているとされている(Kamo ら. (2000) Eur. J. Pharmacol. 401: 235-40 及び Omhura ら. (1997) Urol. Int. 59: 221-5参照)。
【0086】
サブスタンスPは、NKと呼ばれるニューロキニン受容体のサブタイプを活性化させる。サブスタンスPは、感覚神経末端に存在する11残基ペプチドである。サブスタンスPは、C線維活性化の後、末梢において炎症及び疼痛を起こす、血管拡張、血漿タンパク遊出及びマスト細胞の脱顆粒を含む、多重の活性を有していることが知られている(Levine, J. D. ら. (1993) J. Neurosci. 13: 2273)。
【0087】
ニューロキニンAは、サブスタンスPと感覚神経細胞に共存するペプチドであり、また炎症と疼痛も促進する。ニューロキニンAは、NKと呼ばれる特異的なニューロキニン受容体を活性化する(Edmonds-Alt, S., ら. (1992) Life Sci. 50: PL101)。尿路では、TKsは強力な収縮因子であって、ヒト膀胱ならびにヒト尿道及び尿管におけるNK受容体を通じてのみ作用する(Maggi, C. A. (1991) Gen. Pharmacol., 22: 1-24)。
【0088】
本発明において有用な薬剤には、従って任意のニューロキニン受容体アンタゴニスト剤が含まれる。好ましくはNK受容体に作用し、本発明で使用する、適切なニューロキニンアンタゴニストには、以下が含まれるが、それらに限定されない:1−イミノ−2−(2−メトキシ−フェニル)−エチル)−7,7−ジフェニル−4−ペルヒドロイソインドロン(3aR,7aR)(“RP 67580”);2S,3S−シス−3−(2−メトキシベンジル−アミノ)−2−ベンズヒドリルキヌクリジン(“CP 96,345”);及び(aR,9R)−7−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]−8,9,10,11−テトラヒドロ−9−メチル−5−(4−メチルフェニル)−7H−[1,4]ジアゾシノ[2,1−g][1,7]ナフチリジン−6,13−ジオン)(“TAK−637”)。好ましくはNK受容体に作用する、本発明で使用する、適切なニューロキニンアンタゴニストとしては、以下が含まれるが、それらに限定されない:(S)−N−メチル−N−4−(4−アセチルアミノ−4−フェニルピペリジノ)−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチルベンズアミド(“SR 48968”);Met−Asp−Trp−Phe−Dap−Leu(“MEN 10,627”);及びcyc(Gln−Trp−Phe−Gly−Leu−Met)(“L 659,877”)。本発明で使用する、適切なニューロキニン受容体アンタゴニストには、また上記の薬剤のいずれかの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び他の誘導体も含まれる。ニューロキニン受容体アンタゴニスト活性を有し、それ故本発明において有用である更なる化合物は、Hopkins ら. (1991) Biochem. Biophys. Res. Comm. 180: 1110-1117; and Aharony ら. (1994) Mol. Pharmacol. 45: 9-19の記述どおり、結合アッセイ試験を行うことにより同定することができる。
【0089】
本発明に従って使用できる更なる種類の化合物は、カリウムチャンネル活性化剤である。“カリウムチャンネル活性化剤”と言う用語は、好ましくは通常の意味で用いられ、カリウムチャンネルと結合し、作動させる化合物を言う。特に指定しない限りは“カリウムチャンネル活性化剤”と言う用語は、カリウムチャンネル活性化剤ならびに酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び他の誘導体をも含むことを意図している。また更に、当然のことながら、いかなる酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び他の誘導体も医薬的に受容でき、薬理的活性を有する。
【0090】
本発明に従って使用できる更なる種類の化合物は、NO供与体である。“NO供与体”と言う用語は、好ましくは通常の意味で用いられ、患者に投与した場合、遊離一酸化窒素を放出する化合物を言う。特に指定しない限りは、“NO供与体”と言う用語は、本明細書で開示されたような一酸化窒素供与剤、ならびに酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び他の誘導体を含むことを意図している。更に、当然のことながら、いかなる酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び他の誘導体も医薬的に受容でき、薬理的活性を有する。
【0091】
一酸化窒素供与体は、特にその抗痙攣活性のために本発明に含まれる。一酸化窒素(NO)は血管拡張及び正常血管緊張調節を含む多くの生理過程の分子メディエイターとして、重要な役割を演ずる。NOの活性が、内因性の局部血管拡張機構に関与しているとされる。NOは知られている内では最も小さな生物活性を有する分子であり、生理的過程の非常に広い範囲で作用するメディエイターである(Nathan (1994) Cell 78: 915-918; Thomas (1997) Neurosurg. Focus 3: Article 3)。NOはまた、アンギオテンシンIIの少なくとも10倍の血管収縮力価を有する、知られているもっとも強力な哺乳動物血管収縮剤であるエンドテリン−1、の既知の生理的なアンタゴニストである(Yanagisawa ら. (1988) Nature 332: 411-415; Kasuya ら. (1993) J. Neurosurg. 79: 892-898; Kobayashi ら., (1991) Neurosurgery 28: 673-679)。NOの生物学的半減期は、極端に短い(Morris ら. (1994) Am. J. Physiol. 266: E829-E839; Nathan (1994) Cell 78: 915-918)。NOは、内皮細胞由来の弛緩因子(EDRF)の生物学的効果の全部を占めており、血管拡張効果を有するcGMP依存性プロテインキナーゼの活性を介して作用すると考えられている非常に強力な血管拡張剤である(Henry ら. (1993) FASEB J. 7: 1124-1134; Nathan (1992) FASEB J. 6: 3051-3064; Palmer ら., (1987) Nature 327: 524-526; Snyder ら. (1992) Scientific American 266: 68-77)。
【0092】
内皮細胞内では、NO合成酵素(NOS)として知られている酵素が、L−アルギニンのNOへの変換を触媒し、NOは、拡散可能な第二のメッセンジャーとして作用し、隣接する平滑筋細胞における反応を仲介する。NOは、収縮を阻害し基底冠状動脈の緊張度を調節する基底状態下で、血管内皮細胞により不断に形成され放出され、また種々のアゴニスト(例えばアセチルコリンのような)や他の内皮細胞依存性血管拡張因子に反応して内皮細胞内に製造される。従って、NOS活性の制御及びその結果としてのNOのレベルが、血管の緊張度を調節する重要な分子標的である(Muramatsu ら. (1994) Coron. Artery Dis. 5: 815-820)。
【0093】
ここまで、本発明において有用な薬剤は、従っていずれの一酸化窒素供与剤をも含む。本発明の実行のために適切な一酸化窒素供与剤は、それらに限定されないが、以下のものを含む:
a.ニトログリセリン、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
b.ニトロプルシド、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
c.FK409(NOR−3)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
d.FR144420(NOR−4)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
e.3−モルホリノシドノンイミン、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
f.リンシドミンクロロハイドレート(「SIN−1」)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
g.S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン(「SNAP」)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
h.AZD3582(CINOD鉛化合物、NicOx S.A.から入手できる)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
i.NCX4016(NicOx S.A.から入手できる)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
j.NCX701(NicOx S.A.から入手できる)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
k.NCX1022(NicOx S.A.から入手できる)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
l.HCT1026(NicOx S.A.から入手できる)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
m.NCX1015(NicOx S.A.から入手できる)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
n.NCX950(NicOx S.A.から入手できる)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
o.NCX1000(NicOx S.A.から入手できる)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
p.NCX1020(NicOx S.A.から入手できる)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
q.AZD4717(NicOx S.A.から入手できる)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
r.NCX1510/NCX1512(NicOx S.A.から入手できる)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
s.NCX2216(NicOx S.A.から入手できる)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
t.NCX4040(NicOx S.A.から入手できる)、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
u.米国特許第5,155,137号に開示の一酸化窒素供与体、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
v.米国特許第5,366,997号に開示の一酸化窒素供与体、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
w.米国特許第5,405,919号に開示の一酸化窒素供与体、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
x.米国特許第5,650,442号に開示の一酸化窒素供与体、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
y.米国特許第5,700,830号に開示の一酸化窒素供与体、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
z.米国特許第5,632,981号に開示の一酸化窒素供与体、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
aa.米国特許第6,290,981号に開示の一酸化窒素供与体、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
bb.米国特許第5,691,423号に開示の一酸化窒素供与体、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
cc.米国特許第5,721,365号に開示の一酸化窒素供与体、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
dd.米国特許第5,714,511号に開示の一酸化窒素供与体、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
ee.米国特許第6,511,911号に開示の一酸化窒素供与体、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
ff.米国特許第5,814,666号に開示の一酸化窒素供与体。
【0094】
一酸化窒素供与活性を有し、それ故本発明において有用である更なる化合物は、米国特許第6,451,337及び6,358,536ならびにMoon (2002) IBJU Int. 89: 942-9 及び Fathian-Sabet ら. (2001) J. Urol. 165: 1724-9に記載の、放出像及び/又は誘導血管痙攣試験によって同定することができる。
【0095】
本発明に従って用いることができるさらなる種類の化合物は、カルシウム調節剤である。本明細書において好ましく使用する、“カルシウム調節剤”又は“Ca2+調節剤”と言う用語は、カルシウムチャンネルの開、閉、閉塞、機能発現の上方制御、機能発現の下方制御又は脱感作のような生理的効果を生成するために、Klugbauer ら. (1999) J. Neurosci. 19: 684-691において開示するように、カルシウムチャンネルのサブユニットのサブタイプを含むカルシウムチャンネルと、結合事象を含む相互作用を行うことができる剤を言う。特に明記しない限りは“カルシウム調節剤”と言う用語は、本明細書で更に開示するように、カルシウムチャンネルと相互作用するGABAアナログ(例えば、ガバペンチン及びプレガバリン)、ガバペンチンの融合二環又は三環アミノ酸アナログ、アミノ酸化合物及び他の化合物、ならびにそれらの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び他の誘導体を含むことを意図している。更に、当然のことながら、いかなる塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び他の誘導体も医薬的に受容でき、薬理的活性を有する。
【0096】
ガンマーアミノ酪酸(GABA)アナログは、GABAから由来した又は基づく化合物である。GABAアナログは、容易に得ることができるか又は当業者には既知の方法を用いて容易に合成される。代表的なGABAアナログとしては、ガバペンチン及びプレガバリンが挙げられる。
【0097】
ガバペンチン(ニューロンチン又は1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸)は、幾つかのカルシウムチャンネルサブユニットに高い結合親和性を有する抗痙攣剤であり、次のような構造によって表される:
【化27】

【0098】
ガバペンチンは次の式の一連の化合物のひとつである。
【化28】


[式中、Rは水素又は低級アルキル基であり、nは4、5又は6である]
ガバペンチンは、本来は痙攣を治療するGABA−模倣化合物として開発されたが、ガバペンチンは直接のGABA様作用を有せず、GABAの取り込みや代謝を阻止しない(総説としては、Rose ら. (2002) Analgesia 57:451-462を参照)。しかしながら、他の抗痙攣剤に不応である患者における部分的な発作の予防に関しては、ガバペンチンが、有効な治療法であることを発見した(Chadwick (1991) Gabapentin, In Pedley T A, Meldrum B S (eds.), Recent Advances in Epilepsy, Churchill Livingstone, New York, pp. 211-222)。ガバペンチン及び関連した薬剤、プレガバリンは、カルシウムチャンネルのαδサブユニットと相互作用しているかもしれない(Gee ら. (1996) J. Biol. Chem. 271: 5768-5776)。
【0099】
既知の抗痙攣効果に加えて、ガバペンチンは、ホルマリン及びカラギーナンによって誘導される痛覚の緊張期を遮断し、機械的痛覚過敏及び機械的/熱的異痛の、神経疾患性の疼痛モデルにおける阻害効果を発揮することを示した(Rose ら. (2002) Analgesia 57: 451-462)。二重盲検、プラセボコントロール試験は、ガバペンチンが、糖尿病性末梢神経疾患、ヘルペス後神経痛及び神経疾患性疼痛に関連した痛みの症状に対する有効な治療であることを示唆した(例えばBackonja ら. (1998) JAMA 280:1831-1836; Mellegers ら. (2001) Clin. J. Pain 17:284-95を参照)。
【0100】
プレガバリン、(S)−(3−アミノメチル)−5−メチルヘキサノン酸又は(S)−イソブチルGABAは、抗痙攣剤としての使用が探求された別のGABAアナログである(Bryans ら. (1998) J. Med. Chem. 41:1838-1845)。
【0101】
本発明において有用である代表的なGABAアナログ及びガバペンチンの融合した二環又は三環アミノ酸アナログとしては以下のものが挙げられる:
1.ガバペンチン、又はその塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は誘導体;
2.プレガバリン、又はその塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は誘導体;
3.米国特許第4,024,175号に記載した次の構造によるGABAアナログ、又はその塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は誘導体;
【化29】


[式中、Rは水素又は低級アルキル基及びnは4、5又は6である];
4.米国特許第5,563,175号に記載した次の構造によるGABAアナログ、又はその塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は誘導体;
【化30】


[式中、Rは1から6の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、フェニル基又は3から6の炭素原子を有するシクロアルキル基であり;Rは水素又はメチル基であり;Rは水素、メチル基又はカルボキシル基である];
5.米国特許第6,316,638号に記載した次の構造による置換アミノ酸、又はその塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は誘導体;
【化31】


[式中、RからR10は、それぞれ独立して、水素、1から6の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、ベンジル基又はフェニル基から選択され;mは0から3までの整数であり;nは1から2までの整数であり;oは0から3までの整数であり;pは1から2までの整数であり;qは0から2までの整数であり;rは1から2までの整数であり;sは1から3までの整数であり;tは0から2までの整数であり;及びuは0から1までの整数である];
6.PCT国際公開WO93/23383号に開示のGABAアナログ、又はその塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は誘導体;
7.Bryans ら. (1998) J. Med. Chem. 41:1838-1845に開示のGABAアナログ、又はその塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は誘導体;
8.Bryans ら. (1999) Med. Res. Rev. 19:149-177に開示のGABAアナログ、又はその塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は誘導体;
9.米国特許出願第20020111338号に記載した次の構造によるアミノ酸化合物、又はその塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は誘導体;
【化32】


[式中、R及びRは、独立して水素又はヒドロキシ基であり;Xは、ヒドロキシ基及びQ−G−からなる群から選択され[式中、Gは−O−、−C(O)O−又は−NH−であり;Qは最初の部分Dを含み、更に1から3のアミノ酸を含む直鎖オリゴペプチドから由来する基であって、前記基は生理的条件下で前記アミノ酸化合物から切断されることができ;DはGABAアナログの部分である];
Zは次の(i)及び(ii)からなる群から選択される:
(i)生理的なpHで負に荷電した部分を含む置換されたアルキル基であって、その部分は−COOH、−SOH、−SOH、−P(O)(OR16)(OH)、−OP(O)(OR16)(OH)、−OSOH、等からなる群から選択され、ここでR16は、アルキル、置換されたアルキル、アリール及び置換されたアリールからなる群から選択される;及び
(ii)式−M−QX1の基であって、Mは−CHOC(O)−及び−CHCHC(O)−からなる群から選択され、QX1は最初の部分D’を含み、更に1から3のアミノ酸を含む直鎖オリゴペプチドから由来する基であって、前記基は生理的条件下で切断されることができ;D’はGABAアナログの部分であり;又はそれの医薬的に許容される塩であり;ただしXがヒドロキシ基である場合は、Zは式−M−QX1の基である];
10.PCT国際公開WO99/08670号に開示の環状アミノ酸化合物、又はその塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は誘導体;
11.PCT国際公開第99/21824号に開示の、次の構造の環状アミノ酸、又はその塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は誘導体、
【化33】


[式中、Rは水素又は低級アルキル基であり;RからR14はそれぞれ独立して、水素、1から6の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、フェニル基、ベンジル基、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、アミノ基、アミノメチル基、トリフルオロメチル基、−COH、−CO15、−CHCOH、−CHCO15、−OR15[ここでR15は1から6の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、フェニル基又はベンジル基である]から選択され、またRからRは同時に水素であることはない];
12.米国特許出願第60/160,725号に開示の、次の構造による二環アミノ酸であって、[3H]ガバペンチン及びブタ脳組織由来のαδサブユニットを用いた、放射性リガンド結合アッセイにおいて測定すると高い活性を有するとして開示のものを含み、又はその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は誘導体、
【化34】


[式中、nは2から6までのいずれかの整数である];
13.英国特許出願第GB2,374,595号に開示の次の構造による二環アミノ酸アナログ、及びその酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体、
【化35】








[式中、R及びRはそれぞれ独立して、水素、1から6の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、フェニル基、ベンジル基、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、アミノ基、アミノメチル基、トリフルオロメチル基、−COH、−CO15、−CHCOH、−CHCO15、−OR15[ここでR15は1から6の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、フェニル基又はベンジル基である]から選択され、またRからRは同時に水素であることはない]。
【0102】
本発明において有用である他の薬剤としては、カルシウムチャンネルのαδサブユニットと結合する任意の化合物も挙げられる。カルシウムチャンネルのαδサブユニットに対する結合親和性を示し、そのため本発明において有用であるGABAアナログとしては、次のものが挙げられるが、それらに限定されない:cis−(1S,3R)−(1−(アミノメチル)−3−メチルシクロヘキサン)酢酸、cis−(1R,3S)−(1−(アミノメチル)−3−メチルシクロヘキサン)酢酸、1α,3α,5α−(1−アミノメチル)−(3,5−ジメチルシクロヘキサン)酢酸、(9−(アミノメチル)ビシクロ[3.3.1]ノン−9−イル)酢酸及び(7−(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−7−イル)酢酸(Bryans ら. (1998) J. Med. Chem. 41:1838-1845; Bryaris ら. (1999) Med. Res. Rev. 19:149-177)。カルシウムチャンネルの調節剤として同定した他の化合物としては、これらに限定されないが、米国特許第6,316,638号、米国特許第6,492,375号、米国特許第6,294,533号、米国特許第6,011,035号、米国特許第6,387,897号、米国特許第6,310,059号、米国特許第6,294,533号、米国特許第6,267,945号、PCT国際公開WO01/49670号、PCT国際公開WO01/46166号、及びPCT国際公開WO01/45709号に記載したものが挙げられる。これらの化合物のどれがカルシウムチャンネルのαδサブユニットに対する結合親和性を有するかは、Gee等によって記載した(Gee ら. (1996) J. Biol. Chem. 271:5768-5776)αδ結合親和性試験を行うことによって決定できる。カルシウムチャンネルのαδサブユニットに対する結合親和性を示す、他のGABAアナログを含む、より更なる化合物も、Gee等によって記載した(Gee ら. (1996) J. Biol. Chem. 271:5768-5776)αδ結合親和性試験を行うことによって決定できる。
【0103】
更にその上、GABAのアナログ及びガバペンチンの環状アミノ酸アナログを含む組成物及び製剤で、かつ本発明で有用であるものとしては、PCT国際公開WO99/08670号、米国特許第6,342,529号に開示の組成物、米国特許出願第20020119197号及び米国特許第5,955,103号に開示の放出制御製剤、PCT国際公開WO02/28411号、PCT国際公開WO02/28881号、PCT国際公開WO02/28883号、PCT国際公開WO02/32376号、PCT国際公開WO02/42414号、米国特許出願第20020107208号、米国特許出願第20020151529号及び米国特許出願第20020098999号に開示の徐放性化合物及び製剤が挙げられる。
【0104】
本発明に従って用いることができる更なる種類の化合物は、鎮痙剤である。「鎮痙剤」という用語は(「抗痙攣剤」としても知られている)、好ましくは通常の意味で用い、筋肉の痙攣、特に平滑筋の痙攣を軽減し又は予防する化合物を言う。特に明記しない限り、「鎮痙剤」は、本明細書で開示される鎮痙剤、ならびにその酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び他の誘導体を含むことを意図する。また更に、当然のことながら、それらのいかなる塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は他の誘導体も、医薬的に許容することができ、薬理的活性を有する。
【0105】
鎮痙剤は筋肉の、特に平滑筋の痙攣を軽減し又は予防する化合物である。一般的に、鎮痙剤は膀胱疾患の治療に有効であるとされてきた(例えばTakeda ら. (2000) J. Pharmacol. Exp. Ther. 293: 939-45を参照)。
【0106】
本発明において有用である他の薬剤としては、いずれの鎮痙剤をも包含する。鎮痙剤として同定され、本発明において有用である化合物としては、それらに限定されないが次のものが挙げられる:
a.米国特許第5,897,875号に開示のα−α−ジフェニル酢酸−4−(N−メチル−ピペリジル)エステル、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
b.米国特許第5,783,416号に開示の、グリコシル化されたヒト及びブタの鎮痙ポリペプチド及びその変異体、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
c.米国特許第4,965,259号に開示の、ジオキサゾシン誘導体、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
d.米国特許第4,608,377号に開示の4級 6,11−ジヒドロ−ジベンゾ−[b,e]−チエピン−11−N−アルキルノルスコピンエーテル、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
e.米国特許第4,594,190号に開示の、ジベンゾ[1.4]ジアゼピノン、ピリド[1.4]ベンゾジアゼピノン、ピリド[1,5]ベンゾジアゼピノンの4級塩、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
f.米国特許第4,558,054号に開示のEndo−8,8−ジアルキル−8−アゾニアビシクロ(3.2.1)オクタン−6,7−エキソ−エポキシ−3−アルキル−カルボン酸塩、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
g.米国特許第4,370,317号に開示の膵臓鎮痙ポリペプチド、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
h.米国特許第4,203,983号に開示のトリアジノン、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
i.米国特許第4,185,124に開示の2−(4−ビフェニルイル)−N−(2−ジエチルアミノアルキル)プロピオンアミド、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
j.米国特許第4,166,852に開示のピペラジノ−ピリミジン、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
k.米国特許第4,163,060に開示のアラルキルアミノカルボン酸、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
l.米国特許第4,034,103に開示のアラルキルアミノスルフォン、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;
m.米国特許第6,207,852に開示の、平滑筋鎮痙剤、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体;そして
n.パパベリン、又はそれの酸、塩、鏡像異性体、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体。
【0107】
鎮痙活性を有し、それ故本発明において有用である更なる化合物は、米国特許第6,207,852;Noronha-Blob ら. (1991) J. Pharmacol. Exp. Ther.256: 562-567; 及び/又は Kachur ら. (1988) J. Pharmacol. Exp. Ther. 247: 867-872に記載した、膀胱片収縮試験を行うことにより、同定することができる。
【0108】
本発明に従って用いることができる、更なる種類の化合物は、平滑筋調節剤である。「平滑筋調節剤」という用語は、本明細書では好ましくは、平滑筋の収縮を阻害又は阻止するいかなる化合物をも言い、これらに限定されないが、抗ムスカリン剤、β3アドレナリンアゴニスト、鎮痙剤、ニューロキニン受容体アンタゴニスト、ブラジキニン受容体アンタゴニスト及び一酸化窒素供与体が挙げられる。平滑筋調節剤は、「直接作用」(筋肉作用性としても知られている)又は「間接作用」(神経作用性としても知られている)であってもよい。「直接作用平滑筋調節剤」とは、平滑筋内の収縮機構を阻害又は阻止することによって作用する平滑筋調節剤であって、これに限定されないが、アクチンとミオシンの間の相互作用の修飾が挙げられる。「間接作用平滑筋調節剤」は、平滑筋の収縮をもたらす神経伝達を阻害又は阻止することによって作用する、平滑筋調節剤で、これに限定されないが、平滑筋に末端を有する運動神経のアクソン末端におけるアセチルコリン放出のシナプス前促進の阻止が挙げられる。
【0109】
本発明に従って用いることができる、更なる種類の化合物は、5HT再取り込み阻害剤である。本明細書で好ましく用いる「5HT再取り込み阻害剤」と言う用語は、好ましくは、5HT2C及び5HT受容体サブタイプを標的にすることにより、5−HT(5−ヒドロキシトリプタミン、セロトニン)受容体機能を阻害することができるいかなる化合物をも言う。特に明記しない限り、「5HT再取り込み阻害剤」は5HT再取り込み阻害剤、ならびにそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体を含むことを意図する。また更に、当然のことながら、それらのいかなる塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は他の誘導体も、医薬的に許容することができ、薬理的活性を有する。
【0110】
本発明に従って用いることができる、更なる種類の化合物は、プリン受容体アンタゴニストである。「プリン受容体アンタゴニスト」と言う用語は、好ましくはその通常の意味で用いられ、プリン受容体に結合し、拮抗する化合物を言う。特に明記しない限り、「プリン受容体アンタゴニスト」と言う用語は、プリン受容体アンタゴニスト剤、ならびにそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体を含むことを意図する。また更に、当然のことながら、それらのいかなる塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は他の誘導体も、医薬的に許容することができ、薬理的活性を有する。
【0111】
本発明に従って用いることができる、更なる種類の化合物は、PDE阻害剤である。「PDE阻害剤」と言う用語は、好ましくはその通常の意味で用いられ、ホスホジエステラーゼ(PDEs)に結合し、拮抗する化合物を言う。特に明記しない限り、「PDE阻害剤」と言う用語は、PDE阻害剤、ならびにそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体を含むことを意図する。また更に、当然のことながら、それらのいかなる塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は他の誘導体も、医薬的に許容することができ、薬理的活性を有する。
【0112】
本発明に従って用いることができる、更なる種類の化合物は、VR1調節剤である。「VR1調節剤」と言う用語は、好ましくはその通常の意味で用いられ、バニロイド受容体1(VR1、一過性受容体電位バニロイド−1、TRPV−1)に結合し、活性を調節する化合物を言う。VR1調節剤の例は、VR1アゴニスト(カプサイシン及びレジニフェラトキシン[RTX]、Lopez-Rodriguez ら., Mini Rev Med Chem. 2003 Nov;3(7):729-48)である。最初の神経興奮期の後、VR1アゴニストは、神経(例えば感覚C線維)において脱感作状態を引き起こすことができるが、その状態で神経末端は刺激に対して無反応で、神経伝達物質は放出されず、その結果長期に亘る鎮痛を導く。VR1アンタゴニスト(例えば、カプサゼピン(Valenzano & Sun, Curr Med Chem. 2004 Dec;11(24):3185-202))はVR1受容体の活性化を阻止する。特に明記しない限り、「VR1調節剤」と言う用語は、VR1調節剤、ならびにそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体を含むことを意図する。また更に、当然のことながら、それらのいかなる塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は他の誘導体も、医薬的に許容することができ、薬理的活性を有する。
【0113】
本発明に従って用いることができる、更なる種類の化合物は、鎮痛剤である。「鎮痛剤」と言う用語は、好ましくはその通常の意味で用い、第一の目的が疼痛の軽減であるいかなる化合物又は薬剤をも言う。鎮痛剤の主要な種類の例としては、これらに限定されないが、非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)であって、COX−2阻害剤、オピオイド、抗鬱剤及び鎮痙剤を含む。特に明記しない限り、「鎮痛剤」と言う用語は、鎮痛剤、ならびにそれの酸、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物及び誘導体を含むことを意図する。また更に、当然のことながら、それらのいかなる塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物又は他の誘導体も、医薬的に許容することができ、薬理的活性を有する。
【0114】
本明細書において、以下の用語のそれぞれを、独立して又は他の用語と結合して、好ましくは次のように定義する(そうでないと明記する場合を除いて):
【0115】
「アルキル」と言う用語は、1から14の炭素原子を含む飽和脂肪族基、又は2から12の炭素原子を含み、少なくとも一つの二重結合及び三重結合をそれぞれ含む、モノ又はポリ不飽和脂肪族炭化水素基である。「アルキル」は分岐及び非分岐アルキル基の両方を言う。好ましいアルキル基は、1から8炭素原子を含む直鎖アルキル基である。より好ましいアルキル基は、1から6の炭素原子を含む直鎖アルキル基及び3から6の炭素原子を含む分岐アルキル基である。「アルク」又は「アルキル」接頭辞を用いたいかなる複合語も、上記の「アルキル」の定義によるアナログを言うことを理解するべきである。例えば、「アルコキシ」、「アルキルチオ」は、酸素又は硫黄原子を介して第二の基に結合したアルキル基を言う。「アルカノイル」は、カルボニル基(C=O)に結合したアルキル基を言う。「置換アルキル」は、さらに一つ以上の置換基を有する直鎖又は分岐アルキル基を言う。一置換はまたモノ−置換を意味し、より多くの置換はポリ−置換を意味する。「置換アルキル」と言う接頭辞を用いたいかなる複合語も、上記の「置換アルキル」の定義によるアナログを言うことを理解されたい。例えば、「置換アルキルアリール」のような用語は、アリール基に結合した、置換されたアルキル基を言う。
【0116】
本明細書で用いる「低級アルキル」と言う用語は、好ましくは、ここに開示のいずれかのアルキルであって、前記アルキルは1から6までの、好ましくは1から5までの、更に好ましくは1から4までの炭素原子を含む。
【0117】
「シクロアルキル」と言う用語は、上記の定義によるアルキル基の環状のアナログを言い、場合により不飽和及び/あるいは置換されてもよい。好ましいシクロアルキル基は、飽和シクロアルキル基であり、特に3から8炭素原子を含み、更に好ましくは3から6の炭素原子を含む。「置換シクロアルキル」は、一つ以上の置換基を更に有するシクロアルキル基を言う。「モノ−不飽和シクロアルキル」は、一つの二重結合又は一つの三重結合を含むシクロアルキルを言う。「ポリ−不飽和シクロアルキル」は、少なくとも2つの二重結合又は2つの三重結合を含むシクロアルキル、又は少なくとも一つの二重結合及び一つの三重結合の組み合わせを含むシクロアルキルを言う。
【0118】
「アルケニル」と言う用語は、少なくとも一つの炭素―炭素二重結合を有し、直鎖、分岐及び環状を含む、不飽和炭化水素基を言う。好ましいアルケニル基は、1から12の炭素を有している。より好ましいアルケニル基は、1から6の炭素を有している。「置換アルケニル基」は、一つ以上の置換基を更に含むアルケニル基を言う。
【0119】
「シクロアルケニル」と言う用語は、上記のように定義されたアルケニル基の環状アナログを言い、場合により置換されてもよい。好ましいシクロアルケニル基は4から8の炭素原子を含む。「置換シクロアルケニル」は、一つ以上の置換基を更に含むシクロアルケニル基を言う。「モノ−不飽和シクロアルケニル」は、一つの二重結合を含むシクロアルケニルを言う。「ポリ−不飽和シクロアルケニル」は、少なくとも2つの二重結合を含むシクロアルケニルを言う。
【0120】
「アルキニル」と言う用語は、少なくとも一つの炭素―炭素三重結合を有し、直鎖、分岐及び環状を含む、不飽和炭化水素基を言う。好ましいアルキニル基は、1から12の炭素を有している。より好ましいアルキニル基は、1から6の炭素を有している。「置換アルキニル基」は、一つ以上の置換基を更に含むアルキニル基を言う。
【0121】
「アリール」と言う用語は、6から14の範囲の炭素原子を有する芳香族基を言い、「置換アリール」は、一つ以上の置換基を更に含むアリール基を言う。接頭辞「アリ」又は「アリール」を用いたいかなる複合語も、アリールの上記の定義によるアナログを言う。例えば、「アリールオキシ」のような用語は、酸素を介して第二の基に結合したアリール基を言う。
【0122】
上に定義した「アルキル」、「シクロアルキル」及び「アリール」のそれぞれは、それらのハロゲン化アナログを含むと理解すべきであって、前記ハロゲン化アナログは、1又は数個のハロゲン原子を含んでもよい。従ってハロゲン化アナログは、次に定義するいずれかのハロゲン基を含む。
【0123】
「ハロ」と言う用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含む群から選択される、ハロゲン基を言う。好ましいハロ基はフッ素、塩素及び臭素である。
【0124】
「ヘテロアリール」と言う用語は、安定した5から8員、好ましくは5から6員の単環、又は8から11員の二環芳香族複素環を言う。各複素環は、炭素原子及び窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される、1から4のヘテロ原子からなる。複素環は、環のいかなる原子によっても結合してよく、その結果安定構造が形成される。本明細書で用いる好ましいヘテロアリール基としては、例えば、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズオキサゾリル、プリニル、キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル及びフェノキサジニルが挙げられる。「置換ヘテロアリール」は一つ以上の置換基を更に含むヘテロアリール基を言う。
【0125】
「ヘテロシクリル」と言う用語は、安定した5から8員、好ましくは5から6員の単環、又は8から11員の二環複素環基であって、飽和又は非飽和かつ非―芳香族であるものを言う。各複素環は、炭素原子及び窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される、1から4のヘテロ原子からなる。複素環は、環のいかなる原子によっても結合してよく、その結果安定構造が形成されるのが好ましい。本明細書で用いる好ましい複素環基としては、例えば、ピロリニル、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、チオピラニル、ピペラジニル、インドリニル、アゼチジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロフラニル、ヘキサヒドロピリミジニル、ヘキサヒドロピリダジニル、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イルアミン、ジヒドロ−オキサゾリル、1,2−チアジナニル−1,1−ジオキシド、1,2,6−チアジアジナニル−1,1−ジオキシド、イソチアゾリジニル−1,1−ジオキシド及びイミダゾリジニル−2,4−ジオンが挙げられる。「モノ−不飽和ヘテロシクリル」は、一つの二重結合又は一つの三重結合を含むヘテロシクリルを言う。「ポリ−不飽和ヘテロシクリル」は、少なくとも2つの二重結合又は2つの三重結合もしくは少なくとも一つの二重結合と一つの三重結合の組み合わせを含むヘテロシクリルを言う。
【0126】
「置換ヘテロシクリル」は、一つ以上の置換基を更に含むヘテロシクリルを言う。
【0127】
「ヘテロシクリル」、「ヘテロアリール」及び「アリール」と言う用語は、別の部分と連結した場合、特に明記しない場合は、上記と同じ意味を持つこととする。例えば、「アロイル」は、カルボニル基と結合したフェニル又はナフチルを言う。
【0128】
それぞれアリール又はヘテロアリールは、特に明記しない場合は、それの部分的又は完全水素化された誘導体を含む。例えば、キノリニルは、デカヒドロキノリニル及びテトラヒドロキノリニルを含んでもよく、ナフチルは、テトラヒドロナフチルのようなその水素化誘導体を含んでもよい。
【0129】
上記及び本明細書全体を通じて、「窒素」又は「N」及び「硫黄」又は「S」は、ニトロン、Nーオキシドのような窒素の全ての酸化型、及びスルホキシド、スルホンのような硫黄の酸化型、ならびに塩酸塩又はTFA塩のような全ての塩基性窒素の4級化された型を含む。
【0130】
本明細書では、範囲の限界を規定する言葉、例えば「1から5まで」は1から5までのいずれかの整数、すなわち1、2、3、4及び5を意味する。言葉を変えれば、2つの整数によって規定されたいかなる範囲も、前記限度を規定する全ての整数及び、前記範囲に含まれるいずれの整数をも含むことを明瞭に意味している。
【0131】
本明細書では、「置換」と言う用語は、置換される基又は化合物の一つ以上の水素原子が、異なった原子、原子団、分子又は分子の部分によって置換していることを意味する。該原子、原子団、分子又は分子の部分は本明細書では置換基と呼ばれる。
【0132】
本明細書では「共有結合」と言う用語は、単、二重又は三重結合を意味し、好ましくは単結合を意味する。
【0133】
種々の実施態様では、本発明に従って用いるキニンアンタゴニストが、特に第二の医薬活性を有する薬剤と組み合わせた場合、薬剤製品又は薬剤処方中に存在することが好ましいことを、当業者であれば理解するであろう。これに関連して、該医薬活性を有する剤の2つ以上の組み合わせの場合、それらは単一の製剤中に存在してもよく、又は異なった製剤中に存在してもよい。後者の場合、第一の医薬活性を有する薬剤を含む製剤は、第二の又は全ての更なる医薬活性を有する薬剤を含む製剤と併用することが好ましいことを示す示唆又は指示が包装挿入書に存在することが好ましい。このような又はこれらのいかなる製剤も、医薬品に存在するか又は医薬品を形成してもよい。医薬活性を有する薬剤を別にして、該製剤又は医薬品は、好ましくは、少なくとも一つの医薬的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含む。
【0134】
本発明の更なる一態様では、本発明は本明細書において定義し記述された膀胱機能不全に罹患している患者の治療方法に関する。そのような方法、ならびに薬剤組成又は処方は、本明細書に記載したいずれかのキニン受容体アンタゴニスト、又は該キニン受容体アンタゴニストを含むいずれかの組み合わせの有効な又は治療有効量の投与を含む。好ましくは、患者は、本明細書に記載したいずれかの疾患に罹患しているか、後の時点で該疾患を発症又は罹患する危険がある生物である。
【0135】
薬剤又は薬理的活性物の「有効」量又は「治療有効量」は、好ましくは無毒であるが、欲する効果、すなわち上に説明したような膀胱機能不全に関連した症状の軽減、を提供する薬剤又は薬理的活性物質の十分な量を意味する。薬剤又は薬理的活性物質の有効量は、投与経路、選択された化合物及び薬剤又は薬理的活性物質を投与する種、ならびに薬剤又は薬理的活性物質を投与する個々の年齢、体重及び性に依存して変化すると認識されている。投与後の薬剤又は薬理的活性物質の血漿レベルに影響する代謝、生物学的利用率及び他の因子を考慮に入れて、異なった投与経路に関して、本明細書に開示の単位用量の範囲内で、当業者ならば適切な有効量を決定することもまた認識されている。
【0136】
担当医師ならば、毒性、器官の疾患等により、投与を終了、停止又は調整する方法及び時期を承知していることに留意されたい。逆に、担当医師ならば、臨床応答が十分でない場合(毒性を防ぎつつ)治療を高い濃度に調整することを承知しているであろう。標的である疾患の管理における投与用量の大きさは、治療される状態の重度、投与経路等に従って変わるであろう。例えば状態の重症度は、標準的な予後評価方法によって部分的に評価される。更に、用量及び多分投与頻度もまた、個々の患者の年齢、体重及び応答に従って変化するであろう。通常、用量は、約1−1000mg/kg体重の範囲であろう。幼児には、約1mgから約50mgの投与が好ましく、成人には25mgから約1000mg投与が好ましいであろう。
【0137】
例えば、酢酸によって誘導された膀胱刺激のラットモデルにおいて、1mg/kg(イカチバント、静脈注射)の用量は、酢酸によって誘導された排尿筋不安定性を逆行させることができる。これに鑑み、ヒトへの応用のための相当する用量及び投与法は、本発明に包含される。この特定の投与方法とは別に、動物研究の結果、特に本明細書に開示の結果に基づき、ヒトへの応用のための、本明細書に記載した種々の膀胱機能不全に対する適切な用量及び投与計画を決定することは、当業者の技術の範囲であろう。
【0138】
本明細書に記載され、本発明に従って用いる、キニン受容体アンタゴニスト又は該キニン受容体アンタゴニストを含むいかなる組み合わせ剤も、好ましくは医薬的に許容される又は薬理的活性を有する形で存在し又は用いることも理解されるであろう。しかしながらキニン受容体アンタゴニスト及び/又はそれと関連して用いるいかなる医薬活性を有する剤もプロドラッグとして存在することは、本発明の範囲内である。
【0139】
「医薬的に許容し得る担体」又は「医薬的に許容し得る酸付加塩」と言う叙述におけるような「医薬的に許容し得る」は、生物学的に又はそれ以外でも、望ましくないことはない材料を意味し、すなわちその材料は、望ましくない生物学的影響も引き起こさず、又はその材料を包含する組成物の他の成分のいずれにも有害な様式で相互作用せず、患者に投与される薬学的組成物に組み込んでもよいことを意味する。例えば「薬理的活性」誘導体又は代謝物におけるような「薬理的活性」(又は単に「活性」)とは、親化合物と同じタイプの薬理的活性を有する誘導体又は代謝物を言う。「医薬的に許容し得る」と言う用語が、活性薬剤の誘導体(例えば塩又はアナログ)に言及するために用いられる場合、化合物はまた薬理的活性を有する、すなわち膀胱機能不全を治療及び/又は軽減するのに有効である、と理解されたい。
【0140】
「生理的に許容できる塩」と言う用語は、好ましくは、望ましい効果を達成するために投与された用量において実質的に毒性は無く、個別に有意な薬理的活性を有しない、医薬的に許容できる塩を意味することを意図している。この用語の範囲に含まれる塩としては、臭化水素、塩化水素、硫酸、リン酸、硝酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、酪酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、α−ケトグルタル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、アントラニル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、エチレンスルホン酸、ハロベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、スルファニル酸等の塩が挙げられる。
【0141】
治療する特定の症状に依存して、該薬剤は全身あるいは局所用に製剤し、投与してもよい。製剤及び投与技術は、"Remington's Pharmaceutical Sciences”, 1990, 18th ed., Mack Publishing Co., Easton, PAに見ることができる。本発明による化合物の投与法は、これらに限定されないが、幾つかを挙げてみると、経口、膀胱内、非経口、皮下、筋肉内、皮内、静脈内、動脈内、経皮的、髄腔内、経粘膜、頬部、舌部、舌下、鼻内、直腸、尿道、膣又は吸入がある。
【0142】
「経口」と言う用語は、好ましくは通常の意味で、口を通じての薬剤の送達及び胃と消化管を通じて摂取すると言う意味で用いる。「膀胱内」と言う用語は、好ましくは通常の意味で、膀胱内へ直接薬剤を送達すると言う意味で用いる。「非経口」と言う用語は、好ましくは消化管又は消化経路を最初に通さずに、薬剤を直接血流へ送達することを意味する。非経口投与は、好ましくは皮膚の下へ薬剤を投与して送達することを言う「皮下」投与であってもよい。非経口薬剤送達の別の形態は、好ましくは筋肉組織への投与による薬剤送達を言う「筋肉内」投与である。非経口薬剤送達の別の形態は、好ましくは皮膚内への投与による薬剤送達を言う「皮内」投与である。非経口薬剤送達の更なる形態は、好ましくは静脈内への投与による薬剤送達を言う「静脈内」投与である。非経口薬剤送達の更なる形態は、好ましくは動脈内への投与による薬剤送達を言う「動脈内」投与である。非経口薬剤送達の別の形態は、好ましくは薬剤を、皮膚を経て血流への投与による薬剤送達を言う「経皮的」投与である。非経口薬剤送達の別の形態は、好ましくは薬剤を直接髄腔(脊髄の周りに液体が流れる場所)へ投与する薬剤送達を言う「髄腔内」投与である。非経口薬剤送達の更に別の形態は、好ましくは薬剤が粘膜組織を通過して、患者の血流中へ入るように、患者の粘膜表面へ投与による薬剤送達を言う「経粘膜」投与である。経粘膜薬剤送達は、好ましくは薬剤が患者の頬部の粘膜組織を通じて、患者の血流に薬剤を送達する、「頬部」又は「経頬部」投与による薬剤送達を言ってもよい。本明細書における経粘膜薬剤送達の別の形態は、「舌部」薬剤送達であって、好ましくは患者の舌の粘膜を通じて患者の血流に薬剤を送達することを言う。本明細書における経粘膜薬剤送達の別の形態は、「舌下」薬剤送達であって、好ましくは患者の舌下部の粘膜を通じて患者の血流に薬剤を送達することを言う。経粘膜薬剤送達の別の形態は、「鼻」又は「鼻内」送達であって、患者の鼻粘膜を通じて血流中に薬剤を送達することを言う。本明細書における経粘膜薬剤送達の更なる形態は、「直腸」又は「経直腸」薬剤送達であって、好ましくは患者の直腸粘膜を通じて患者の血流に薬剤を送達することを言う。経粘膜薬剤送達の別の形態は、「尿道」又は「経尿道」送達であって、好ましくは薬剤が尿道壁に接触し通過するように、薬剤を尿道内に送達することを言う。経粘膜薬剤送達の更なる形態は、「膣」又は「経膣」送達であって、好ましくは患者の膣粘膜を通じて血流に薬剤を送達することを言う。非経口薬剤送達の別の形態は「膣周囲」への送達であって、好ましくは膣陰唇組織を通じて血流へ薬剤を送達することを言う。
【0143】
「吸入」と言う用語は、好ましくは通常の意味で、エアロゾル化した薬剤を、吸入時に鼻又は口を通過してまた肺の壁を通して送達することを意味する。
【0144】
本明細書に記載するキニンアンタゴニストの特に好ましい投与法は、局所又は全身投与法である。全身投与の種々な形態の内、静脈注射が特に有用である。
【0145】
本発明はまた獣医学に用いてもよいことは、当業者ならば認識するであろう。正確な用量は、治療する疾患に依存し、また既知の技術を用いて当業者ならば確定できるであろう。本発明の目的のための「患者」、すなわち本明細書で定義する化合物又は医薬組成物が、本発明に従って投与する対象は、それ故動物もまた含まれる。従って、本発明の化合物、医薬組成物及び方法は、獣医学への応用に適用できるし又は関連しており、獣医学への応用は、診断、診断手順及び方法、ならびにステージング手順及び方法を含む。例えば、獣医学への応用としては、それらに限定されないが、イヌ、ウシ、ネコ、ブタ、ヤギ、ウマ及びヒツジ、ならびに以下のような他の家畜動物:イグアナ、カメ及びヘビのような爬虫類;フィンチ及びオウム類メンバーのような鳥;ウサギのようなウサギ目;ラット、マウス、モルモットのようなげっ歯類;サル;ハムスター;両生類;魚類;節足動ものが挙げられる。動物園の動物のような高価な非家畜動物も治療することができる。好ましい実施態様では患者は哺乳動物であり、最も好ましい実施態様では患者はヒトである。
【0146】
本明細書と添付の実施例で用いているように、単数形[a]、[an]及び[the]は、特に明記する場合を除いて、複数指示対象を含む。従って、例えば「アゴニスト」又は「薬理的活性物質」は単数の活性を有する剤ならびに2つ以上の異なった活性を有する剤の組み合わせを含む。
【0147】
本明細書において用いるアミノ酸の略語はEur. J. Biochem 138, 9 (1984)に記載してあるペプチド化学では通例の3文字コードに相当する。使用された他の略語を以下に記す。
【0148】
Aeg N−(2−アミノエチル)グリシン
Cpg シクロペンチルグリシル
Fmoc 9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
Nal 2−ナフチルアラニル
Oic シス,エンド−オクタヒドロインドール−2−カルボニル
Thi 2−チエニルアラニル
Tic 1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−イルカルボニル
Hyp トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン
D−HypE(トランスプロピル) トランス−4−プロピルオキシ−D−プロリン
Arg(Tos) 2−アミノ−5−(N−トシル)グアニジノペンタン酸
Tos又はtosyl 4−トルエンスルホニル
Aoc シス,エンド−2−アザビシクロ[3.3.0]オクタン−3−S
−カルボニル
Aeg(Fmoc) N−(2−(Fmoc)アミノエチル)グリシン
Ac アセチル
Orn オルニチン
Igl アルファ−(2−インダニル)グリシン
F5F ペンタフルオロフェニルアラニン
Ala アラニン
Cys システイン
Asp アスパラギン酸
Glu グルタミン酸
Phe フェニルアラニン
Gly グリシン
His ヒスチジン
Ile イソロイシン
Lys リジン
Leu ロイシン
Met メチオニン
Asn アスパラギン
Pro プロリン
Gln グルタミン
Arg アルギニン
Ser セリン
Thr スレオニン
Val バリン
Trp トリプトファン
Tyr チロシン
【0149】
実施例1:酢酸による膀胱炎症のラットモデルに及ぼすイカチバントの影響
目的及び論理的根拠
本研究の目的は、過敏性膀胱の通常用いるモデルである、酢酸による膀胱炎症のラットモデルでの膀胱機能を改善するイカチバントの能力を判断することであった(OAB, Shinozaki ら., Biomed Res. 2005 Feb;26(1):29-33; Mitsui ら., J Neurophysiol. 2001 Nov;86(5):2276-84; Yu & de Groat, Brain Res. 1998 Oct 5;807(1-2):11-8; Oki ら., Journal of Urology. 173(4):1395-1399, April 2005, Atala, A., Journal of Urology. 170(5):1701-1702, November 2003)。特に、現在の研究は、イカチバントを代表的なB2キニン受容体アンタゴニストとして用い、膀胱容量、収縮間間隔(排尿頻度)及び排尿圧に及ぼすその影響を明らかにした。
【0150】
材料及び方法
250から300gまでの5匹のメスウイスターラットからなる群をウレタン1.2g/kg腹腔内注射、5ml/kgで麻酔して用いた。3方コックを通じて、ポリエチレンカテーテル(PE50)を食塩水又は酢酸注入のために膀胱に埋め込み、3方コックには膀胱圧(mmHg)を測定するために圧力変換器を接続した。37℃の食塩水を、一定速度で膀胱内圧測定グラフが安定するまで膀胱に注入した。その後、膀胱への0.2%酢酸の滴下注入を開始した。酢酸注入の開始後の最初の排尿サイクルの5分後に、イカチバント(1mg/kg)、担体(1mg/kg)ならびに正の対照(アスピリン、10mg/kg)を静脈内に(IV)PE−10カテーテルを介して大腿静脈に注入した。処置開始後1時間の間、以下のパラメータを連続して測定した:収縮間間隔(ICI、分、2つの排尿サイクルの間の時間と定義される)、閾圧力(mmHg)、膀胱容量(ml)、排尿量(ml)及び排尿圧(mmHg)。排尿量は、ラットの下に置かれた秤によって測定した排泄尿の重さから得た。
【0151】
データ分析
対応スチューデント検定を、試験物質又は担体処置の前後の時間の比較のために適用した。試験物質群と担体コントロール群の間の有意差は、Dunnettの検定を用いた。P<0.05で差は有意であるとした。
【0152】
結果及び結論
担体と正の対照(アスピリン)を比較した場合、酢酸注入の開始後の異なった時点における収縮間間隔(ICI)に及ぼすイカチバントの影響を図1に示す。イカチバント処置群における収縮間間隔は、担体群と比較して用量依存的に増加する。
【0153】
担体と正の対照(アスピリン)を比較した場合、酢酸注入の開始後の異なった時点における膀胱容量に及ぼすイカチバントの影響を図2に示す。イカチバント処置群における膀胱容量は、担体群と比較して用量依存的に増加する。
【0154】
担体と正の対照(アスピリン)を比較した場合、酢酸注入の開始後の異なった時点における排尿圧に及ぼすイカチバントの影響を図3に示す。排尿圧における減少は見られず、イカチバント処置は、抗コリン剤と比較して尿貯留症候群を発症する危険性がないことを示している。
【0155】
要旨
イカチバントは、低用量の1mg/kgにおいて、排尿圧を変化させることなく、2つの排尿収縮の間の間隔及び膀胱容量をほとんど2倍にすることができた。これらの発見は、ヒトの患者における過活動性膀胱(OAB)に伴う、排尿筋の不安定に対するキニンB2受容体アンタゴニストの有効性を強く示している。
【0156】
実施例2:酢酸による膀胱炎症のラットモデルに及ぼすB1R及びB2Rキニン受容体アンタゴニストならびにオキシブチニン及びC−線維麻痺剤カプサイシンの影響
目的及び論理的根拠
本研究の目的は、下部尿路疾患におけるキニン受容体アンタゴニストの有効性に関するわれわれの論理的根拠を更に証明することであった。それ故、酢酸による膀胱炎症のラットモデル(実施例1の引用を参照)の通常用いるモデルで膀胱機能を改善するイカチバント及びR−715(B1Rアンタゴニスト)の能力を判断した。更にOAB標準治療用オキシブチニンを、このモデルにおける有効性について試験し、またこのモデルにおける病的なC−線維の活性化が膀胱不全の主たるトリガーであることを証明するために、カプサイシン(C−線維麻痺剤)を試験した。更にイカチバントによる前処置(酢酸の適用前に)の効果を試験して、このモデルにおけるB2Rアンタゴニストの新たに発見された作用様式が、この分子の既知の抗炎症能力とは無関係であることを証明した。特に、最新の研究では、膀胱の容量と収縮間隔におよぼす上記の薬剤(B2R及びB1Rアンタゴニストのそれぞれの例として、イカチバント及びR−715(Allogho ら., Can J Physiol Pharmacol. 1995 Dec;73(12):1759-64)を含めて)の影響を明らかにした。
【0157】
材料及び方法
250から300gまでの5匹のメスウイスターラットからなる群をウレタン1.2g/kg腹腔内注射、5ml/kgで麻酔して用いた。3方コックを通じて、ポリエチレンカテーテル(PE50)を食塩水又は酢酸注入のために膀胱に埋め込み、3方コックには膀胱圧(mmHg)を測定するために圧力変換器を接続した。37℃の食塩水を、一定速度で膀胱内圧測定グラフが安定するまで60分間、膀胱に注入した。その後、膀胱へ0.2%酢酸を注入した。膀胱内酢酸注入の開始後の最初の排尿サイクルの5分後に、試験物質又は担体(5mg/kg)を静脈内に(i.v.)PE−10カテーテルを介して大腿静脈に注入した;一つの処置群において、酢酸イカチバントを酢酸の30分前にi.v.投与した;2つの処置群では、担体又は酢酸イカチバントでの実験の4日前にC−繊維求心路を切断するために、動物をカプサイシン25mg/kg、皮下(s.c.)で処理し、2回目の投薬(最初の投薬の12時間後)を50mg/kg,s.c.で行った。以下のパラメータをベースラインの間及び投薬後1時間連続して測定した:膀胱容量(μl)、収縮間間隔(ICI、分、2つの排尿サイクル間の時間)、排尿圧(mmHg)、排尿量(ml、ラットの下に置かれた秤によって測定した排泄尿の重さから得た)及び血圧(mmHg)。
【0158】
【表8】

【0159】
データ分析
対応スチューデント検定を、試験物質又は担体処置の前(ベースライン)と後の時間の比較のために適用した。試験物質群と担体コントロール群の間の有意差は、Dunnettの検定又は対応のないスチューデントt検定を用いた。P<0.05レベルで差が有意であるとした。
【0160】
結果及び結論
酢酸注入の開始後の異なった時点における収縮間間隔(ICI)に及ぼす異なった薬剤を用いての処置の効果を図1に示す。酢酸の適用は、ICIの強い減少をもたらす。担体群とは対照的に、3つの異なったイカチバント濃度(0.2mg/kg、1mg/kg及び5mg/kg)及び正の対照であるアスピリンでの処置後、ICIは増加する。イカチバントに関しては、用量依存性は見られず、最大効果が、用いられたイカチバントの最低用量(0.2mg/kg)で既に到達していた。OABに対する標準的な治療剤であるオキシブチニンは、もしあったとしても、ICIについては極僅かな正の効果を示すのみである。イカチバントによる前処理(膀胱内への酢酸滴下の30分前)は、酢酸滴下直後のICI減少を強力に阻害する。この結果は、このモデルでは、新規に発見したその作用機序は、主としてB2Rアンタゴニストの抗−炎症性によるものでは無いことを証明している。なぜなら酢酸滴下直後に炎症反応は予想されないが、この時点においてもイカチバントはやはり有効であるからである。B1RアンタゴニストR−715もまた、試験期間中に有効になったが、ICIにおよぼす正の効果はイカチバントに比較して遅延している。このことは、文献に記載の(Leeb-Lundberg ら., Pharmacol Rev. 2005 Mar;57(1): 27-77)B2R活性化によるB1R発現の誘導及び他のトリガーとよく一致する。カプサイシンによる前処理はC−線維の機能的脱感作を引き起こし、酢酸によって誘発されたICI−減少を阻害することになる。この発見は、このモデルにおける膀胱の機能不全は、主として病的なC−線維の活性化によって引き起こることを証明している。イカチバントによる前処理が膀胱機能を同様に非常に改善させ、またイカチバント又はB1Rアンタゴニストによる治療が同様に有効になるので、これは、我々が新規に発見した、膀胱機能不全疾患におけるキニンアンタゴニストの作用機序を証明するものである。
【0161】
酢酸注入の開始後の異なった時点における膀胱容量に及ぼす異なった薬剤を用いての処置効果を図2に示す。酢酸の適用は、膀胱容量の強い減少をもたらす。イカチバント(0.2mg/kg、1mg/kg及び5mg/kg)、B1RアンタゴニストR−715及び正の対照であるアスピリンでの処置は、処置の開始後41〜60分でベースラインに達するまで増加する。OABに対する標準治療薬、オキシブチニンは、有意な効果を示さない。イカチバント又はカプサイシンによる前処理(酢酸滴下の30分前)は、酢酸による膀胱容量の減少を完全に阻害する。この結果は、我々が新規に発見したキニン受容体アンタゴニスト(特にB2Rアンタゴニストにおいて)作用機序を証明するものである。
【0162】
酢酸注入の開始後の異なった時点における排尿圧に及ぼす異なった薬剤を用いた場合の処置効果を図3に示す。排尿圧における有意な減少は無く、幾つかの抗コリン剤について議論されたような、キニンアンタゴニストについての尿貯留の発症の危険性が無いことを示している。
【0163】
要旨
酢酸による膀胱機能不全後、キニンアンタゴニストイカチバント(B2Rアンタゴニスト)及びR−715(B1Rアンタゴニスト)は、排尿圧の変化なしに、2つの排尿収縮の間の間隔を2倍にすることができ、膀胱容量を3倍にすることができた。キニンアンタゴニストでの処置後41〜60分において、両方のキニンアンタゴニストについて基本レベル(酢酸滴下の前)に到達した。B2Rの活性化後にB1Rが誘導される必要性により説明することができる、B1RアンタゴニストR−715への反応の多少の遅延のために、イカチバントはより有効であった。このモデルにおける膀胱機能不全は、主として病的なC−線維の活性化に関連していると言うことは、カプサイシンで前処理することにより証明することができた。イカチバントによる前処理は、酢酸による膀胱機能不全を完全に阻害した。このことは(酢酸滴下後に適用されたとしても有効である、キニン受容体アンタゴニストの効果とともに)、ヒトの患者における膀胱機能不全、特に過活動性膀胱(OAB)関連した排尿筋不安定性におけるキニン受容体アンタゴニストの、我々が新規に発見した作用機序の正しさを証明している。
【0164】
本明細書、請求項、配列表及び/又は図に開示した本発明の特色は、別々であっても、それらの組み合わせであっても、発明の種々の形態において本発明を実施するための材料であろう。
【図面の簡単な説明】
【0165】
本発明を更に、以下の図、実施例及び配列表によって図示するが、これらから更なる特徴、実施態様及び利点が得られるかも知れない:
ここで
【図1】図1は、担体と正の対照(アスピリン)との比較において、酢酸注入の開始の後の異なった時点における収縮間間隔(ICI)に及ぼすイカチバントの用量依存効果を示す図である。ここで群のそれぞれにおいて(ベースライン、処理前0−5分、6−20分、21−40分及び41−60分)種々の試験化合物を表すカラムの順番は、以下の如くである(左から右へ):担体(0.9% NaCl 5ml/kg)、アスピリン10mg/kg、オキシブチニン1mg/kg、イカチバント0.2mg/kg、イカチバント1mg/kg、イカチバント5mg/kg、イカチバント1mg/kg、R715 1mg/kg、担体、イカチバント1mg/kg;
【図2】図2は、担体と正の対照(アスピリン)との比較において、酢酸注入の開始の後の異なった時点における膀胱容量に及ぼすイカチバントの用量依存効果を示す図である。ここで群のそれぞれにおいて(ベースライン、処理前0−5分、6−20分、21−40分及び41−60分)種々の試験化合物を表すカラムの順番は、以下の如くである(左から右へ):担体(0.9%NaCl 5ml/kg)、アスピリン10mg/kg、オキシブチニン1mg/kg、イカチバント0.2mg/kg、イカチバント1mg/kg、イカチバント5mg/kg、イカチバント1mg/kg、R715 1mg/kg、担体、イカチバント1mg/kg;
【図3】図3は、担体と正の対照(アスピリン)との比較において、酢酸注入の開始の後の異なった時点における排尿圧に及ぼすイカチバントの用量依存効果を示す図である。ここで群のそれぞれにおいて(ベースライン、処理前0−5分、6−20分、21−40分及び41−60分)種々の試験化合物を表すカラムの順番は、以下の如くである(左から右へ):担体(0.9%NaCl 5ml/kg)、アスピリン10mg/kg、オキシブチニン1mg/kg、イカチバント0.2mg/kg、イカチバント1mg/kg、イカチバント5mg/kg、イカチバント1mg/kg、R715 1mg/kg、担体、イカチバント1mg/kg。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キニン受容体が、B1及びB2受容体を含む群から選択される、膀胱機能不全の治療及び/又は予防のための薬剤の製造のためのキニン受容体アンタゴニストの使用。
【請求項2】
前記キニン受容体がB1受容体である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記キニン受容体アンタゴニストが、以下:
【表1】


2−[1−(3,4−ジクロロ−ベンゼンスルホニル)−3−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノキサリン−2−イル]−N−{2−[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−フェニル]−エチル}−アセトアミド、
N−{2−[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−フェニル]−エチル}−2−[1−(ナフタリン−2−スルホニル)−3−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノキサリン−2−イル]−アセトアミド、
3−(3,4−ジクロロ−フェニル)−N−{1−[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−ベンジル]−2−オキソ−2−ピロリジン−1−イル−エチル}−3−(ナフタリン−2−スルホニルアミノ)−プロピオンアミド、
4’−(1−{3−[(2,2−ジフルオロ−シクロプロパンカルボニル)−アミノ]−4−メチル−ピリジン−2−イルアミノ}−エチル)−5−メチル−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、
N−(4−クロロ−2−{1−[3’−フルオロ−2’−(3−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イル]−エチルアミノ}−ピリジン−3−イル)−3,3,3−トリフルオロプロピオンアミド、
3−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−N−[2−[4−(2,6−ジメチル−ピペリジン−1−イルメチル)−フェニル]−1−(イソプロピル−メチル−カルバモイル)−エチル]−3−(6−メトキシ−ナフタリン−2−スルホニルアミノ)−プロピオンアミド、
{2−(2,2−ジフェニル−エチルアミノ)−5−[4−(4−イソプロピル−ピペラジン−1−カルボニル)−ピペリジン−1−スルホニル]−フェニル}−モルホリン−4−イル−メタノン、
{2−(2,2−ジフェニル−エチルアミノ)−5−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−カルボニル)−ピペリジン−1−スルホニル]−フェニル}−モルホリン−4−イル−メタノン、
4’−[({1−[(ピリミジン−5−カルボニル)−アミノ]−シクロプロパンカルボニル}−アミノ)−メチル]−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、
4’−[({1−[(5−トリフルオロメチル−ピリジン−3−カルボニル)−アミノ]−シクロプロパンカルボニル}−アミノ)−メチル]−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、
N−[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−ベンジル]−2−{2−[(4−メトキシ−2,6−ジメチル−ベンゼンスルホニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−N−メチル−アセトアミド、
3,3’−ジフルオロ−4’−{[5−(4−ピリジン−4−イル−ピペラジン−1−カルボニル)−ピリジン−2−イルアミノ]−メチル}−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、
3,3’−ジフルオロ−4’−{[5−(4−低級アルキル−メチル−ピペラジン−1−カルボニル)−ピリジン−2−イルアミノ]−メチル}−ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル、及び
N−[6−(tert−ブチルアミノ−メチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル]−2−[1−(3−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホニル)−ピペリジン−2−イル]−アセトアミド
を含む群より選択される、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記キニン受容体がB2受容体である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記キニン受容体アンタゴニストが以下:
MEN11270、
【表2】


4−{2−[({[3−(3−ブロモ−2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−8−イルオキシメチル)−2,4−ジクロロ−フェニル]−メチル−カルバモイル}−メチル)−カルバモイル]−ビニル}−N,N−ジメチル−ベンズアミド、
3−(6−アセチルアミノ−ピリジン−3−イル)−N−({[2,4−ジクロロ−3−(2−メチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−フェニル]−メチル−カルバモイル}−メチル)−アクリルアミド、
1−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニル]−ピロリジン−2−カルボン酸[3−(4−カルバムイミドイル−ベンゾイルアミノ)−プロピル]−アミド、
ブラジジド(Bradizide)、
4−(4−{1−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニル]−ピロリジン−2−カルボニル}−ピペラジン−1−カルボニル)−ベンズアミジン、及び
2−[5−(4−シアノ−ベンゾイル)−1−メチル−1H−ピロール−2−イル]−N−[2,4−ジクロロ−3−(2−メチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−フェニル]−N−メチル−アセトアミド及び
[4−アミノ−5−(4−{4−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−ピラン−4−カルボニル}−ピペラジン−1−イル)−5−オキソ−ペンチル]−トリメチル−アンモニウム
を含む群から選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記キニン受容体アンタゴニストが、式(I):
【化1】


(式中:
Zは、a)水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルカノイル、(C−C)−アルコキシカルボニル、(C−C)−シクロアルキル、(C−C)−シクロアルカノイル又は(C−C)−アルキルスルホニルであって、
それぞれの場合、1、2又は3の水素原子はそれぞれ、場合により個々に及び互いに独立して1、2又は3の同一又は異なった基によって置換され、その基は、カルボキシル、NHR(1)、[(C−C)−アルキル]NR(1)又は[(C−C10)−アリール−(C−C)−アルキル]NR(1)(ここで、R(1)は水素又はウレタン保護基である)、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルキルアミノ、(C−C10)−アリール−(C−C)−アルキルアミノ、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、ハロゲン、ジ−(C−C)−アルキルアミノ、ジ−[(C−C10)−アリール−(C−C)]−アルキルアミノ、カルバモイル、フタルイミド、1,8−ナフタルイミド、スルファモイル、(C−C)アルコキシカルボニル、(C−C14)−アリール及び(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキルからなる群から選択され、
又はそれぞれの場合、1水素原子はそれぞれ、場合により一つの基によって置換され、その基は、(C−C)−シクロアルキル、(C−C)−アルキルスルホニル、(C−C)−アルキルスルフィニル、(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキルスルホニル、(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキルスルフィニル、(C−C14)−アリール、(C−C14)−アリールオキシ、(C−C13)−ヘテロアリール及び(C−C13)−ヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
及び1又は2の水素原子は、1又は2の同一又は異なった基によって置換され、その基は、カルボキシル、アミノ、(C−C)−アルキルアミノ、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、ハロゲン、ジ−(C−C)−アルキルアミノ、カルバモイル、スルファモイル、(C−C)−アルコキシカルボニル、(C−C14)−アリール及び(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキルからなる群から選択され;
)(C−C14)−アリール、(C−C15)−アロイル、(C−C14)−アリールスルホニル、(C−C13)−ヘテロアリール又は(C−C13)−ヘテロアロイルであり;あるいは
)カルバモイルであって、場合により(C−C)−アルキル、(C−C14)−アリール又は(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキルによって窒素上に置換されてもよく;
ここで、a)、a)及びa)で定義した基において、アリール、ヘテロアリール、アロイル、アリールスルホニル及びヘテロアロイル基は、場合により1、2、3又は4基によって個々に及び独立して置換されてもよく、それらの基は、カルボキシル、アミノ、ニトロ、(C−C)−アルキルアミノ、ヒドロキシル、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、(C−C14)−アリール、(C−C15)−アロイル、ハロゲン、シアノ、ジ−(C−C)−アルキルアミノ、カルバモイル、スルファモイル及び(C−C)−アルコキシカルボニルからなる群から選択され;
Pは、共有結合又は式II
−NR(2)−(U)−CO− (II)
の基であり、
式中、R(2)は水素、メチル又はウレタン保護基であり、
Uは、(C−C)−シクロアルキリデン、(C−C14)−アリーリデン、(C−C13)−ヘテロアリーリデン、(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキリデンであって、それらは場合により個々に及び互いに独立して置換されてもよく、又は[CHR(3)]nであってもよく、
ここでnは1〜8のいずれかの整数、好ましくは1〜6のいずれかの整数であり、
いずれのR(3)も、個々に及び独立して水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキル、(C−C14)−アリール、(C−C13)−ヘテロアリールを含む群から選択され、ここでR(3)が水素とは異なるという条件下で、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキル、(C−CI4)−アリール及び(C−C13)−ヘテロアリールは、場合により、アミノ、置換アミノ、アミジノ、置換アミジノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、グアニジノ、置換グアニジノ、ウレイド、置換ウレイド、メルカプト、メチルメルカプト、フェニル、4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、4−ニトロフェニル、4−メトキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、フタルイミド、1,8−ナフタルイミド、4−イミダゾリル、3−インドリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル又はシクロヘキシルによって一置換され、
あるいは
そこでR(2)及びR(3)は、それらを担う原子と共に、2〜15の炭素原子を有する単環、二環又は三環系を形成し;
Aは、Pと定義され;
Bは、側鎖が置換され得る、L又はDの立体配置の塩基性アミノ酸であり;
Cは、式IIIa又はIIIb
G’−G’−Gly G’−NH−(CH−CO
(IIIa) (IIIb)
の化合物であって
式中、
pは、2から8のいずれかの整数であり、及び
いずれのG’も、独立して式IV
−NR(4)−CHR(5)−CO− (IV)
の基であり、
式中、
R(4)及びR(5)は、それらを担う原子と共に、2〜15の炭素原子を有する単環、二環又は三環系を形成し;
Eは、中性、酸性又は塩基性の、脂肪族又は脂環脂肪族アミノ酸の基であり;
Fは、側鎖が置換され得る中性、酸性又は塩基性の、脂肪族又は芳香族アミノ酸の、互いに単独な基又は共有結合であり;
(D)Qは、D−Tic、D−Phe、D−Oic、D−Thi又はD−Nalであって、そのいずれもが場合により、ハロゲン、メチル又はメトキシで置換されており、又は下の式(V)
【化2】


の基であり、
式中、
Xは、酸素、硫黄又は共有結合であり;
Rは、水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキル、(C−C14)−アリール、(C−C14)−アリール−(C−C)−アルキルであって、それらの脂環系は、場合によりハロゲン、メチル又はメトキシにより置換され得;
Gは、上記のG’として定義されるか又は共有結合であり;
F’は、Fとして定義され、−NH−(CH−基であり、ここでq=2から8であり、又はGが直接結合で無い場合は、直接結合であり;
Iは、−OH、NH又はNHCであり;
Kは、−NH−(CH−CO−基であって、ここでx=1−4、又は共有結合であり、そして
Mは、Fと定義される)
のペプチド、又は生理的に許容し得るその塩である、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
前記ペプチドが式(I)のペプチド、又は生理的に許容し得るその塩である、請求項6に記載の使用であって
式中、
Zは、上記a)、a)及びa)の下で定義された通りであるが、好ましくは水素であり、
Pは、共有結合又は式II
−NR(2)−(U)−CO− (II)
の基であり;
式中、
UはCHR(3)であり;
R(3)は上に定義した通りであり;及び
R(2)は水素又はCHであり;
Aは共有結合である、
使用。
【請求項8】
請求項6又は7、好ましくは請求項7に記載の使用であって、
式中、
Zは、上記a)、a)及びa)の下で定義された通りであり、好ましくは水素であり、
Pは、共有結合又は式II
−NR(2)−(U)−CO− (II)
の基であり、
式中、
UはCHR(3)であり、及び
R(3)は個々に及び独立して、水素、(C1−C6)−アルキル、(C3−C8)−シクロアルキル、(C6−C14)−アリール、(C3−C13)−ヘテロアリールを含む群から選択され、ここでR(3)が水素とは異なるという条件下で、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキル、(C−CI4)−アリール及び(C−C13)−ヘテロアリールは、場合により、アミノ、置換アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、グアニジノ、置換グアニジノ、ウレイド、メルカプト、メチルメルカプト、フェニル、4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、4−ニトロフェニル、4−メトキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、フタルイミド、4−イミダゾリル、3−インドリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル又はシクロヘキシルによって一置換され、
あるいはそこでR(2)及びR(3)は、それらを担う原子と共に、2〜15の炭素原子を有する単環、二環又は三環系を形成し;
R(2)は水素又はCH3であり;
Aは、共有結合であり;
(D)QはD−Ticである、
使用。
【請求項9】
前記ペプチドが、
【表3】


又は生理的に許容し得るその塩である、請求項6〜8のいずれか、好ましくは請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記ペプチドが、
H−D−Arg−Arg−Pro−Hyp−Gly−Thi−Ser−D−Tic−Oic−Arg−OH(配列番号10)又は
パラ−グアニドベンゾイル−Arg−Pro−Hyp−Gly−Thi−Ser−D−Tic−Oic−Arg−OH(配列番号11);
好ましくは
H−D−Arg−Arg−Pro−Hyp−Gly−Thi−Ser−D−Tic−Oic−Arg−OH(HOE 140)(配列番号10)、
又はその生理的に許容し得る塩である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記膀胱機能不全が、頻尿、尿意切迫、排尿障害、尿失禁、遺尿症、膀胱機能の喪失及び夜間頻尿を含む群から選択される一つ以上の疾患パターンに関連している、請求項1から10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記膀胱機能不全が頻尿と関連している、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記膀胱機能不全が尿意切迫と関連している、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記膀胱機能不全が尿失禁と関連している、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
前記膀胱機能不全が、神経性、筋原性、腫瘍性、好ましくは良性前立腺過形成、炎症性、代謝性及び特発性疾患、前立腺肥大、ホルモン失調、手術又は傷害による膀胱閉塞、泌尿生殖路の解剖学的変化、多発性硬化症、パーキンソン病、脳卒中、糖尿病及び加齢を含む群から選択される一つ以上の疾患に関連及び/又は起因する、請求項1から14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
前記膀胱機能不全が、神経性の疾患に関連及び/又は起因する、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記膀胱機能不全が、筋原性及び/又は炎症性の疾患に関連及び/又は起因する、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
前記膀胱機能不全が、特発性の疾患に関連及び/又は起因する、請求項15に記載の使用。
【請求項19】
前記膀胱機能不全が、腫瘍性及び/又は代謝性の疾患に関連及び/又は起因し、及び/又は糖尿病又は加齢に関連する、請求項15に記載の使用。
【請求項20】
前記膀胱機能不全が、C−線維活性化及び/又は感作、好ましくは病的なC−線維活性化及び/又は感作に関連する、請求項1から19のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
前記膀胱機能不全及び関連及び/又は起因する疾患パターンは、コリン作動アンタゴニスト、アドレナリンアンタゴニスト、アドレナリンアゴニスト、バソプレッシンアゴニスト、ニューロキニンアンタゴニスト、カリウムチャンネル活性化剤、鎮痛剤、NO供与体、Ca2+調節剤、鎮痙剤、筋肉弛緩剤、好ましくはボツリヌストキシン、5HT再吸収阻害剤、プリン受容体アンタゴニスト、PDE阻害剤及びVR1調節剤を含む群から選択される化合物によって治療又は予防できない、請求項1から20のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
前記薬剤を、それを必要とする患者に治療有効量投与する、請求項1から21のいずれかに記載の使用。
【請求項23】
前記薬剤は、経口剤形で存在し、該経口剤形は、散剤、好ましくは分散可能な散剤、カプセル剤、錠剤、液剤、及び懸濁液剤を含む群から選択される、請求項1から22のいずれかに記載の使用。
【請求項24】
前記薬剤は、非経口投与用である、請求項1から22のいずれかに記載の使用。
【請求項25】
前記薬剤は、局所及び/又は全身投与用である、請求項1から22のいずれかに記載の使用。
【請求項26】
前記薬剤を、静脈内投与、皮下投与、膀胱内投与、筋肉内投与、髄腔内投与、鼻内投与、直腸内投与、舌下投与、経尿道投与、膣内投与、膣周投与、腹腔内投与、経粘膜投与、経皮投与及び吸入を含む群から選択される経路によって患者に投与する、請求項1から22のいずれかに記載の使用。
【請求項27】
前記薬剤が、少なくとも一つの更なる医薬活性化合物を含む、請求項1から26のいずれかに記載の使用。
【請求項28】
前記更なる医薬活性化合物が、コリン作動アンタゴニスト、アドレナリンアンタゴニスト又はアゴニスト、バソプレッシンアゴニスト、ニューロキニンアンタゴニスト、カリウムチャンネル活性化剤、鎮痛剤、NO供与体、Ca2+調節剤、鎮痙剤、筋肉弛緩剤、好ましくはボツリヌストキシン、5HT再吸収阻害剤、プリン受容体アンタゴニスト、PDE阻害剤及びVR1調節剤を含む群から選択される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記キニンアンタゴニスト及び/又は少なくとも一つの更なる医薬活性化合物が、医薬的に許容し得る塩、エステル、アミド、プロドラッグ又は医薬活性を有する溶媒和物として存在する、請求項1から28のいずれかに記載の使用。
【請求項30】
前記キニンアンタゴニストが、代謝されて一つ以上の医薬活性分子となる、請求項1から29のいずれかに記載の使用。
【請求項31】
前記薬剤が、医薬的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤を含む、請求項1から30のいずれかに記載の使用。
【請求項32】
前記薬剤が、多数の個別化した用量及び/又は投与剤形を含む、請求項1から31のいずれかに記載の使用。
【請求項33】
前記薬剤を、動物における膀胱機能不全の治療及び/又は予防に用いる、請求項1から32のいずれかに記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−500362(P2009−500362A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519850(P2008−519850)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006504
【国際公開番号】WO2007/003411
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(505100942)イエリニ・アクチェンゲゼルシャフト (10)
【氏名又は名称原語表記】JERINI AG
【Fターム(参考)】