説明

膨張性充填挿入物および膨張性充填挿入物の製造方法

中空空間または空洞(2)を充填または封止するための、キャリアが存在しない膨張性充填挿入物(10)を提供する。挿入物は、ポリマーおよび/またはポリマー前駆体ならびに在性発泡剤を含有するポリマーマトリックスを、異形押出成形または射出成形することによって製造されてよい、自立連続構造体(11)を含んで成る。膨張性充填挿入物は、例えば、自立連続構造体と一体化してよい取付要素(12)を用いて、車両ピラー(1)の内側面に固定され、その後ポリマーマトリックスは加熱によって活性化し膨張する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリマーマトリックスで形成された膨張性充填挿入物、膨張性充填挿入物を製造する方法、および車両の中空構造部材のような空洞を充填または封止する膨張性充填挿入物の使用に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
発明の背景
発泡性材料は、一般的にキャリアによって支えられており、現在、車両のピラーのような中空要素または空洞を充填および/または封止するために用いられている。そのような材料は、電着または焼付け塗装工程において、車体に約120℃〜約210‐220℃の外部熱を加えた場合、発泡して膨張し、それによって遮音性、絶縁性および制振性を提供し、走行中のロードノイズおよび風切音の伝達を遮ることによって、車内の静寂性を向上させる。更に、発泡性材料は、中空要素の構造的な補強を提供することによって、車両空洞に強度または堅牢性を付与するために通常用いられる。
【0003】
一般的に、膨張性(発泡性とも呼ばれる)材料は、外部熱によって発泡および膨張させられるまで、中空要素の空洞内の所定の箇所に支持され、固定される。膨張性材料の支持/固定は一般的に必要であり、なぜならさもなければ膨張性材料は、膨張性材料の活性化前または活性化中に、空洞内の所望の位置から移動させられやすいからである。その結果、固定されていない膨張性材料は、必ずしもまたは再現性をもって、許容限界まで空洞を遮蔽または封止しない可能性がある。
【0004】
外部加熱がなされて、所望の空間または空洞が充填または封止されるまで、発泡性材料を適切な場所に保持するために、保持治具(キャリアまたは支持体としても知られる)が開発されてきた。これらのキャリアは、発泡性材料とは非常に異なる特性を有する金属または耐熱性硬質合成樹脂のような材料で作られる。そのようなキャリアの使用には、発泡性材料の活性化前および/または後、発泡性材料がキャリアに強く接着しない可能性があるという問題が存在する。従って、発泡性/発泡済の材料はキャリアから分離する可能性があり、それによって、均一で耐性を有する空洞の充填または封止は阻害される。更に、キャリアおよび発泡性材料から成るパーツの組立または製造はかなり複雑になる可能性があり、従って、要素に合わせて異なる材料を用いるために、高価になる可能性がある。
【0005】
発泡性材料がキャリアから分離することを防ぐために、より堅固に発泡性材料をキャリアに取り付ける、複数の側で発泡性材料を保持するキャリアのような方策が開発されてきた。キャリアの保持タックを発泡性材料の保持穴に挿入して、発泡性材料をキャリアに固定するようにする別の方策も開発されてきた。しかしながら、これらの方法は、パーツの数を増やし、製造プロセスをより複雑にすることが必要となり、要素のコストおよび重量を増加させた。更に、保持ピースまたは保持タックが存在しない場合には、発泡性材料はキャリアから離れる可能性があり、発泡および膨張方向は適切にコントロールされず、空洞は適切に充填または封止されない可能性がある。
【0006】
国際公開第WO 01/054936A1号は、膨張温度まで加熱した場合に膨張する自立体の形態の強化パーツを説明している。この自立体は、相互からある距離を隔てて配置されたリブの第1および第2グループを含んでいる。熱活性化の間、熱風は距離を隔てて配置されたリブの間を流れることができ、強化材料のより多くの表面積は熱に晒され、これは膨張を向上させるようになることを意味する。自立体を膨張温度まで加熱した場合、該リブはそれぞれ膨張し、他のリブと接する。
【0007】
米国特許公開第2005/0249916号は、構造体の中空空間または空洞を充填するもう1つの挿入物が、プレス、カレンダーロールのような連続モールド工程を用いて、またはシートを押し出すことによって連続的に形成されるシートとして製造される発泡性シートであることを説明している。次にシートをストリップ状に加工し、ストリップの端を重ね合わせて、接着デバイスを用いて一体に保持する。これらの発泡性または膨張性材料は、充分に加熱された場合、均一に膨張して中空空間または空洞を充填することができる。しかしながら、しばしば比較的限定された小さな空間にシートを挿入できるように、シートを折り畳まなければならないため、そのようなシートの厚さには実用限界がある。特に発泡性材料が比較的低い発泡温度を有する場合、または空洞が不規則な形状または尖った隅部を有する場合、このことは、空洞を完全に封止または充填するために充分な量の発泡性材料を空洞に導入させることを困難にする。
【0008】
欧州特許第383 498号は、車両空洞に挿入されて後に発泡する、支持体が存在しない発泡性成形パーツを説明している。成形パーツを押出成形によって製造することができ、その断面は充填する空洞の断面に適応する。
【0009】
車両のピラーのような多くの中空要素は、2つまたはそれより多くの側方金属シートの組み合わせによって構成され、その空洞の横断面形状は、側方シートが接合している隅部を有する。これらの隅部はしばしば狭く複雑であり、空洞中心部における発泡性材料のシンプルな発泡および膨張または発泡性材料の一方向への膨張では、空洞全体または隅部を適切に充填させることができない。
【0010】
従って、自動車のピラーなどのような中空要素または空洞における使用に適応し、容易に設計およびコントロールすることができ、製造が安価で、上記で説明したような先行技術の構造の1つまたはそれより多くの問題を解決する熱膨張性部材に対して、当該技術分野にはまだニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の簡単な要約
本発明は、キャリアまたは支持要素を用いることなく、中空空間または空洞(例えば、車両ピラー)を充填または封止する膨張性充填挿入物を提供する。本発明の1つの態様では、挿入物は、内部空間、および空洞の断面形状に実質的に平行であるが、空洞の内側面に(非活性化状態においては)接しない外側面を有する自立連続構造体を含んで成る。自立連続構造体は、少なくとも1種のポリマーまたはポリマー前駆体、および少なくとも1種の潜発泡剤を含んで成るポリマーマトリックスから製造される。空洞の少なくとも1つの内側面に挿入物を固定するために、少なくとも1つのスペーサーおよび/または1つの取付要素が自立連続構造体から突出し、好ましくはそれと一体化している。膨張性充填挿入物は、自立連続構造体の内部空間に延在する1つまたはそれより多くの突出部を有することができ、更なるポリマーマトリックスを提供して、空洞の十分な封止または充填を確保する。挿入物はまた、自立連続構造体の外周から鋭角を有する空洞の隅部の方へ延在する1つまたはそれより多くの突出部を有してもよく、それによって、そのような隅部を完全に封止または充填することを助長する。本発明の膨張性充填挿入物は、キャリアまたは保持治具が存在しなくても、空洞の十分な封鎖または封止を達成することに関して、驚くほど有効である。同時に、そのような挿入物は、製造が比較的容易かつ安価である。
【0012】
更にもう1つの要旨では、ポリマーマトリックスを異形押出して押出ストランドにし、特別な態様では、自立連続構造体の所望の寸法に対応した断面形状を有する押出閉チューブにして、次に押出ストランドまたはチューブを所望の厚さに切断する、膨張性充填挿入物の製造方法を提供する。別の態様では、射出成形を利用して、ポリマーマトリックスを自立連続構造体を所望の形状に形成してもよい。これらおよび他の要旨を提供して、先に説明した問題の少なくとも幾つかを解決し、また、先に説明したニーズの少なくとも幾つかを満たす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
当業者は、下記の明細書、添付の請求項、および添付図の参照によって、本発明の多くの利点をより良く理解できるであろう。
【0014】
図1は、空洞を含んでいる車両ピラーを示す。
【0015】
図2は、図1の車両ピラーの空洞に挿入するために構成された、本発明に基づく膨張性充填挿入物を示す。
【0016】
図3は、図1の車両ピラーの空洞に適切に取り付けられている、図2の膨張性充填挿入物を示す。
【0017】
図4は、取付要素がポリマーマトリックスの材料とは異なる材料で作成されており、自立連続構造体は取付要素の柱状部の周囲に成形されている、本発明に基づく膨張性充填挿入物を示す。
【0018】
図5は、狭く不規則な隅部を有するピラー内に配置されている、本発明に基づく膨張性充填挿入物を示し、挿入物は狭く不規則な隅部に向かって延在する突出部を有している。
【0019】
図6は、自立連続構造体の内部空間に突出する突出部を有している、本発明に基づく膨張性充填挿入物を示す。
【0020】
図7は、本発明に基づく膨張性充填挿入物を製造するために用いることができる、射出成形モールドを示す。
【0021】
図8は、主本体部1a、およびアンダーカットラッチフック3aを含む取付要素2aを有して成る、本発明に基づく成形パーツ(=膨張性充填挿入物)のもう1つの態様を示す。成形パーツを長手軸の方向、即ち、2つの平行な画定面に垂直な方向で眺めている。主本体部およびスペーサーは詰まった状態であり、同じ反応性材料で作られている。
【0022】
図9は図8と同様であるが、取付要素2aは、長手軸に平行に延在して2つの平行な画定面で開口する空洞4aを含む。
【0023】
図10は、取付要素2aの中へ延在する内部空洞4aを含んでいる、図8に対応する成形パーツを示す。成形パーツは反応性材料で作られ、長手軸に垂直な異なる方向で眺めた場合、異なる厚さを有する壁5aを含んで成る。
【0024】
図11は、スペーサー6a、内側空洞4a、反応性材料で作られた壁5a(スペーサー6aもそれで作られている)、および粘着物質で作られたストリップ7aを有して成る、本発明に基づく成形パーツを示す。図8〜図10に示すように、成形パーツを長手軸に沿って、即ち、2つの平行な画定面に垂直に眺めている。
【0025】
図12は、主本体部1a、およびアンダーカットラッチフック3aを含む取付要素2aを有して成る、図8に対応する成形パーツの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のある実施態様の詳細な説明
本発明は、中空空間または空洞を充填または封止する膨張性充填挿入物を提供する。更に、本発明は、車両ピラーの中空空間または空洞を充填または封止する膨張性充填挿入物を提供する。本発明はまた、異形押出成形(プロファイル成形(profile molding)とも呼ばれる)または射出成形によって膨張性充填挿入物を製造する方法も提供する。
【0027】
本発明の1つの態様では、例えば、自動車などの車両のピラーの空洞または中空要素のような空洞を、充填および/または封止するために用いられる、膨張性充填挿入物を提供する。膨張性充填挿入物は、内部空間を有する自立連続構造体を含んで成り、構造体は、a)少なくとも1種のポリマーおよび/またはポリマー前駆体、ならびにb)少なくとも1種の潜発泡剤を含有するポリマーマトリックスから成る。
【0028】
連続構造体は、単一の連続的なピースとして作られる構造体であり、場合により内部空間(即ち、開口であり、ある態様では、自立連続構造体によって規定される平面に垂直な方向から観察した場合、膨張性充填挿入物の面積全体の少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%に相当する)を有する。この場合、連続構造体は、内側面(内部空間に面する)および外側面(挿入物を配置する中空構成部材の内側面に面する)を有し、自立性である(即ち、本発明の1つの態様では、膨張性充填挿入物は取付要素以外、ポリマーマトリックスに取り付けられる別個のキャリア、保持治具または他の支持体を含まない)。構造体の外側面は、充填すべき空洞の断面形状に対応して、一般的に従うまたは平行する形状を有する。1つの態様では、連続構造体は弾性を有する。弾性によって、連続構造体は(室温、例えば15〜30℃で)、捻るまたは締め付けるような外力に晒された場合、破壊または割れることなく、少なくともある程度まで一時的に撓む、変形する、または歪むことができるが、そのような外力から開放された場合、本来の形状に戻ることを意味する。この特性は、車両ピラーなどのような構造部材の空洞内で、膨張性充填挿入物を取扱うことおよび配置することを容易にする。連続構造体が寸法的に安定であり、自立するように、連続構造体を充分に硬質なポリマーマトリックスで作ることが好ましい。
【0029】
本発明のある態様では、自立連続構造体はリングの形態である。断面(即ち、自立連続構造体によって規定される平面に垂直な平面の断面)におけるリングの寸法および形状は、特に臨界的であるとは考えられていないが、ポリマーマトリックスに含まれる潜発泡剤が加熱によって活性化した場合、挿入物を配置する空洞を完全または基本的に完全に封止するように、充分なポリマーマトリックスが提供されるように、一般的に選択されるべきである。更に、断面のリングの寸法および形状は、連続構造体が自立するように選択されるべきである(1またはそれより多くの領域が極端に薄い連続構造体は、中空構造部材の空洞内で取り扱う、または所定のように配置する場合、所望の形状を十分に維持することができないことがある)。断面において、リングは例えば、円、楕円、正方形、長方形、多角形、三角形、十字、“U”、“V”、“D”、“T”、“X”、“C”などの形状であってよく、または不規則な形状であってよい。一般的には、リングの平均厚さ(自立連続構造体によって規定される平面に垂直な方向から観察した場合)は、自立連続構造体の平均の全体としての半径(average overall radius)の50%より小さい、あるいは40%より小さい、あるいは30%より小さい、あるいは更に20%より小さい。
【0030】
膨張性充填挿入物を、連続構造体の外側面から突き出る、好ましくはそれと一体化する取付要素によって、例えば、車両ピラーの中空空間または空洞に取り付けてよい。本明細書で用いる場合、“一体化”は、取付要素は連続構造体の一部であり、膨張性充填挿入物の連続構造体に損傷を与えることなく、そこから取り外す、または分離することができないことを意味する。しかしながら、もう1つの態様では、取付要素は連続構造体と一体ではなく、それに損傷を与えることなく、連続構造体から取り外すことができる。以下で更に説明する更にもう1つの態様では、膨張性充填挿入物を、粘着物質のピースによって内側空洞壁に固定する。
【0031】
本発明の1つの態様では、膨張性充填挿入物をポリマーマトリックスから全て形成する。例えば、ポリマーマトリックスを(例えば、完成した、即ち、自立連続構造体およびそれと一体化した取付要素を含んでいる、膨張性充填挿入物の所望の形状を有するモールドを用い、射出成形することによって)成形して、挿入物を提供してよい。そのような態様では、取付要素は、挿入物の一体化部分であり(即ち、それはポリマーマトリックスから形成されており)、摩擦または圧力によって、挿入物を構造部材の空洞内で所定のように保持するのに役立つ脚部などの形状をとってよい(例えば、脚部は充分な弾性を有し、取付要素を挿入する間、それらをわずかに移動することができ、次に解放された場合、空洞壁に向かって所定のように戻る)。別の態様では、取付要素は、係合性突出部などの形状であってよく、空洞壁の開口部を通って挿入されることができるが、(例えば、突出部のフックまたはリッジを、開口部付近で構造部材壁の外側面と係合させることによって)その開口部を通って引き出されることに抵抗するように設計され、従って、膨張性充填挿入物を所定のように固定する。1つの有利な態様では、取付要素はポリマーマトリックスから成り、加熱によって活性化した場合、取付要素は膨張して、挿入されている空洞壁の開口部を充填および封止することを助ける。
【0032】
本発明のもう1つの態様では、膨張性充填挿入物の主本体部は、ポリマーマトリックスから作られるが、1つ/複数の取付要素は、金属または非膨張耐熱プラスチックまたはゴムのような異なる材料からできている。例えば、取付要素は、空洞壁の開口部を通って挿入され得るが、開口部から引き出されることには抗するプラスチック圧縮性プラグなどと同様の、自立連続構造体の中へ延在するピン、柱状部、脚部、フランジなどを含んでよい。
【0033】
膨張性材料を支持するキャリアを構造部材の空洞の内部壁に固定することができる、当業者が知る任意の手段を、本発明の膨張性充填挿入物の取付要素として用いるために適応してもよく、特定の構造を選択することが特に重要な意味を持つとは考えられない。例えば、取付要素は、構造部材の開口部に固定受容部を構成する、2つまたはより多くの弾性的に撓むことができるかえし部を含んでよい。各かえし部は、保持ピースを有するシャンク(shank)を含んでよく、保持部材はフックを形成するように、シャンクに対してある角度で突出している。小さな力を加えて、かえし部を一緒に相互に向かって可逆的に曲げて、そのような取付要素を壁の開口部に挿入する。かえし部が開口部を通り抜けた後、それらは互いに離れてそれらの通常の配置に戻る。このことは、保持ピースが、開口部周囲で構造部材壁の外側面と係合することを可能にして、その結果、取付要素が開口部から容易に引き出されることを防ぎ、膨張性充填挿入物を空洞内に固定させる。挿入物が容易に移動することを防ぐように、このように挿入物を取り付けることが非常に望まれている。なぜなら、さもなければ、ポリマーマトリックスを加熱および活性化させる前の車両組立の間に、構造部材が通常遭遇する操作は、膨張性充填挿入物をもはや空洞内の所望の場所に適切に配置させないようにするからである。別の態様では、取付要素は、柱状部および一対の弾性を有する保持脚部材から成ってよく、各々が柱状部の各側面から鋭角で分岐し、柱状部の先端部から自立連続構造体に向かって延在する。脚部材をピラーまたは他の中空構造部材の内部壁にある開口部へ挿入する場合、脚部材をはじめに押し付け、完全に挿入した場合、開口部を超えて外へ延在し、その結果、脚部材がピラーまたは他の中空構造部材の外側面に係合する。この目的のために他の種類の取付要素を用いてもよく、例えば、複数の角度をなすフランジを有する長尺部を有する“クリスマスツリー”型の留め具(一般的に弾性プラスチックで作られる)を含む。膨張性充填挿入物は1つの取付要素、または同じ種類もしくは異なる種類の複数の取付要素を有してよい。
【0034】
一般的に、取付要素は、自立連続構造体から半径方向に突出し、一般的に自立連続構造体の面に平行または自立連続構造体の平面に存在してよい。例えば、取付要素は自立連続構造体の外側面から突出してよい。
【0035】
膨張性充填挿入物を構造部材の壁に取り付ける場合、例えば、取付要素の少なくとも一部を、取付要素の該部分と実質的に合致する寸法を有する壁の開口部に挿入する。開口部の形状は、特に臨界的ではなく、取付要素を受容することができ、膨張性充填挿入物を所望の状態で保持するように取付要素と相互作用することができるならば、例えば、正方形、円形、矩形、多角形、楕円形または不規則な形状であってよい。一般的に、自立連続構造体によって規定される面が、車両ピラーまたは他の中空構造部材の長手軸に実質的に垂直になるように、膨張性充填挿入物を空洞内に配置する。
【0036】
本発明のある態様では、ポリマーマトリックスの一部を、構造部材壁の開口部付近に位置させて、ポリマーマトリックスが活性化した場合、ポリマーマトリックスは膨張して、開口部を完全に塞ぐ。例えば、取付要素は、開口部に対して配置されたポリマーマトリックス部の一部分を通って、膨張性充填挿入物から外へ延在してよく、活性化した場合、ポリマーマトリックスは開口部を通り抜けて延在してよく、取り付け部材を少なくとも部分的に包み込むことができ、それによって、膨張性充填挿入物を空洞内に確実に、永久的に固定させることを助ける。
【0037】
取付要素を耐熱性で場合によって非膨張性の材料(例えば、金属またはポリアミドのようなエンジニアリング熱可塑性プラスチック)で作ることができ、取付要素の一部を自立連続構造体の中に成形し、取付要素を自立連続構造体に対して所定のように保持するようにする。別の態様では、取付要素はポリマーマトリックスと同じ組成を有することができ、膨張性充填挿入物を作る場合、ポリマーマトリックスから形成され得る。膨張性充填挿入物を、取付要素を用いて車両空洞内に取り付けた後、充分な時間加熱することによって活性化させ、ポリマーマトリックスを発泡および膨張させて、その結果、中に空間または孔を残さないように空洞を遮蔽または封止する。
【0038】
本発明の膨張性充填挿入物に用いるポリマーマトリックスを、当該分野で既知のいずれの材料から選択してもよく、それらは1種またはそれより多くのポリマーおよび/またはポリマー前駆体ならびに1種またはそれより多くの潜発泡剤を含有し、それから作られる連続構造体が自立できるほどに、周囲温度で充分な寸法的安定性を有する。ポリマーマトリックス(または少なくともその外側面)が、周囲温度で実質的に非粘着性であるが、高温で軟化または溶融させることができることも、非常に望まれており、更に、異形押出成形、射出成形などによって、好ましくは潜発泡剤を活性化させることはなく所望の構造に成形または形成することができる。本発明の望ましい態様では、ポリマーマトリックスは弾性を有する。潜発泡剤を、外部加熱(例えば約120℃〜約220℃の温度、これは車体の上塗りコーティングを焼付けする場合、自動車の車体が一般的に遭遇する温度範囲である)を約10分〜約150分間加えることによって、ポリマーマトリックスが発泡および膨張する特性を提供するように選択する。ポリマーは、熱可塑性ポリマー、ゴム(架橋可能または硬化可能なエラストマーを含むエラストマー)、および/または熱可塑性エラストマーであってよい。適当な熱可塑性ポリマーには、例えば、エチレン−ビニルアセテート共重合体、エチレンおよびアルキル(メタ)アクリレートの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルが含まれる。適当なゴムおよび熱可塑性エラストマーには、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM)、ポリブタジエン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレンブロック共重合体、ニトリルゴム、塩素化ポリエチレンゴムなどが含まれる。ポリマー前駆体、即ち加熱した場合、硬化、架橋および/もしくは鎖延長できることを特徴とするモノマーまたはオリゴマーであるプレポリマー、樹脂などを含む材料あるいは物質を、それら単体で使っても、1種またはそれより多くのポリマーと組み合わせて使ってもよい。適当なポリマー前駆体の例には、限定するわけではないが、エポキシ樹脂、ポリウレタンプレポリマーなどが含まれる。従って、ポリマーマトリックスは熱可塑性、熱硬化性、または特に望ましい態様において、熱可塑性および熱硬化性の両方を有してよい(即ち、適度な高温で成形またはモールドさせることができるが、より高温では硬化または架橋させることもできる)。
【0039】
ポリマーマトリックス中に存在する1種または複数の潜発泡剤は、高温まで加熱した場合、ポリマーマトリックスを膨張または発泡させる。潜発泡剤は当該分野で知られたいずれの既知の発泡剤でよく、例えば加熱した場合、分解することによってガスを発散する“化学的発泡剤”および/または“物理的発泡剤”、即ち加熱した場合、体積が膨張する中空状の気泡を膨張させるもの(膨張性ミクロスフィアとも呼ばれる)である。異なる発泡剤の組み合わせを用いてよく、例えば、より低い活性化温度(例えば約100℃)を有する発泡剤を、より高い活性化温度(例えば約180℃)を有する発泡剤と一緒に用いてよい。
【0040】
“化学的発泡剤”と考えられる潜発泡剤の例には、限定するわけではないが、アゾ、ヒドラジド、ニトロソおよびカルバジド物質、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、変性または非変性アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジ−ニトロソ−ペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホン酸ヒドラジド)(OBSH)、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、カルシウムアジド、4,4’−ジフェニルジスルホニルアジド、ジフェニル−スルホン−3,3’−ジスルホヒドラジド、ベンゼン−1,3−ジスルホヒドラジド、トリヒドラジノトリアジン、p−トルエンスルホニルヒドラジドおよびp−トルエンスルホニルセミカルバジドが含まれ得る。
【0041】
“化学的発泡剤”を、亜鉛物質(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジトルエンスルホン酸亜鉛)、酸化マグネシウム、(変性)尿素化合物などのような添加活性剤または促進剤と組み合わせて用いることができる。様々の酸/(重)炭酸塩混合物を、潜発泡剤として用いてもよい。
【0042】
“物理的発泡剤”と考えられる潜発泡剤の例には、限定するわけではないが、発泡性中空ミクロスフィアが含まれ、中空ミクロスフィアは、ポリ塩化ビニリデン共重合体またはアクリロニトリル/(メタ)アクリレート共重合体をベースとし、かつ封入された揮発性物質(例えば、軽質炭化水素またはハロゲン化炭化水素など)を含有する。市販の適当な膨張性中空ミクロスフィアは、例えば、Pierce&Stevens(現在はHenkel Corporationの一部)から “Dualite”(商標)で入手することができる。
【0043】
発泡剤を活性化させるために有効な温度まで加熱した場合、ポリマーマトリックスが所望の体積膨張するように、潜発泡剤の量を選択する。潜発泡剤の量は一般的に、ポリマーマトリックス全体の約5重量パーセント〜約20重量パーセントである。
【0044】
ポリマーマトリックスに用いられる1種または複数の発泡剤の量および種類ならびに他のファクター(例えば、発泡促進剤/活性剤の存在、1種または複数のポリマー/ポリマー前駆体の特性)に応じて、加熱した場合、ポリマーマトリックスの初期体積と比べて、ポリマーマトリックスを体積比で少なくとも約500パーセント、または少なくとも約1000パーセント、または少なくとも約1500パーセント、または少なくとも約2000パーセント膨張するように配合することができる。
【0045】
更に、当該分野で既知の添加剤(例えば、架橋剤、硬化剤など)を、ポリマーマトリックスに添加してよく、ポリマーまたはポリマー前駆体の硬化および/または架橋を促進させる。そのような架橋剤および硬化剤を、ポリマーマトリックスに用いるポリマーまたはポリマー前駆体の1種類または複数の種類に基づき選択する。本発明の好ましい態様では、架橋剤および/または硬化剤は潜在性である。即ち、周囲温度にて、安定/非反応性であるが、ポリマーマトリックスを高温まで加熱した場合、活性化する。そのような態様では、ポリマーマトリックスは、そのような加熱の結果として、膨張および架橋/硬化の両方がなされる。用いる1種または複数の架橋剤/硬化剤の種類は、一般的にポリマーマトリックス(特にポリマーおよびポリマー前駆体)の他の成分と相溶性となるように選択する。
【0046】
当該分野で既知の添加剤、例えば、安定剤、強化剤、充填材、軟化剤、可塑剤、ワックス、劣化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、防かび剤、粘着付与剤、ワックスおよび/または難燃剤などを、ポリマーマトリックスに加えてもよい。
【0047】
適当なワックスには、約45℃〜約70℃の融点を有するパラフィン系ワックス、約60℃〜約95℃の融点を有するマイクロクリスタリンワックス、約100℃〜約115℃の融点を有するフィッシャー・トロプシュ法で合成したワックス、および約85℃〜約140℃の融点を有するポリエチレンワックスが含まれる。
【0048】
当該分野で既知の任意の酸化防止剤および安定剤を、ポリマーマトリックスに添加することができ、例えば、立体障害フェノールおよび/またはチオエーテルおよび/または立体障害芳香族アミンのようなものである。
【0049】
当該分野で既知の任意の充填材を、ポリマーマトリックスに存在してよく、例えば、タルク、炭酸カルシウム、クレイ、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、ガラス繊維、ポリマー繊維、硫酸バリウム、雲母、カーボンブラック、炭酸マグネシウムカルシウム、バライトおよびケイ酸塩の充填材、ケイ酸アルミニウムカリウム、メタケイ酸カルシウム、軽石ならびに有機充填材のようなものである。充填材の量は、例えば、ポリマーマトリックスの約1重量パーセント〜約20重量パーセントであってよい。
【0050】
本発明の自立連続構造体を製造する場合に使用するために用いることができる配合は、例えば、種々の特許および特許出願公開、例えば、米国特許出願公開第2005−0096401号、米国特許第6830799号、同第6281260号、米国特許出願公開第2004−0221953号、米国特許第5266133号、同第5373027号、同第7084210号、同第5160465号、同第5212208号、同第6573309号、米国特許出願公開第2004−0266898号、米国特許第6150428号、同第5708042号、同第5631304号、同第5160465号、米国特許出願公開第2004−0266899号、同第2006−0188726号および米国特許第5385951号に記載される配合を含み、これらを引用することによって明細書に組み込まれる。
【0051】
本発明のポリマーマトリックス成分として有用な他の適当な材料には、例えば、Henkel Corporationおよびその関連会社によって販売されている、ある種のTEREPHON、TEROCOREおよびORB NVのような市販製品が含まれる。
【0052】
図1は、内部に空洞(2)を有する車両ピラー(1)の断面を図示する。車両ピラー(1)は、取付箇所(22)および(23)にて、金属ボルト、溶接、または接着剤などのような固定手段を用いて、外側ピラー部(20)に取り付けられる内側ピラー部(24)から成る。内側ピラー部(24)は、膨張性充填挿入物(10)の取付要素(12)を挿入する開口部(15)を含む。内側ピラー部(24)および外側ピラー部(20)を、例えば金属シート材料から、当該技術分野において周知の形成方法を用いて製造することができる。
【0053】
図2は、図1に示す車両ピラー(1)の空洞(2)に配置するように構成された、本発明に基づく膨張性充填挿入物(10)を示しており、その設置は、内側ピラー部(24)および外側ピラー部(20)を組み立てて車両ピラー(1)を形成する前に実施するのが好都合であり得ると理解されよう。挿入物(10)は、自立連続構造体(11)を含んで成り、自立連続構造体は、充填/封止する空洞(2)の形状および寸法に対応するが、自立連続構造体の外側面と空洞(2)の内側面との間に、好ましくは実質的に均一である、図3に図示するような隙間(13)を与える、所定の形状および寸法を有する。膨張性充填挿入物(10)の取付要素(12)は、柱状部(14)およびフレキシブルクリップ部(16)を含んで成るアタッチメントクリップであり、クリップ部(16)は、内側ピラー部(24)の開口部(15)の中へまたは開口部を通って挿入される。取付要素(12)の柱状部(14)は、内側ピラー部(24)の開口部(15)より大きいショルダー(18)を有し、それが内側ピラー部(24)の内側面を押圧して、クリップ部(16)と共に、挿入物(10)を所定の場所に取り付けるようにする。クリップ部(16)は、相互に向かって弾性的に変形することができる2つのかえし部(barb)(4)および(5)を有してよく、クリップ部(16)を開口部(15)に挿入するのを助長する。各かえし部(4、5)には、膨張性充填挿入物(10)を空洞(2)内の所望の位置および向きに取り付けることを更に助けるノッチ(または切り欠き部)(6、7)を含むことができる。本発明の1つの態様における取付要素(12)は、自立連続構造体(11)と同じポリマーマトリックスと一体であり、かつ、それから構成され、その結果、膨張性充填挿入物(10)の製造は容易になり、ポリマーマトリックスが活性化する場合、生成する発泡体によって開口部(15)を確実に充填することを助ける。図2および図3に示す取付要素(12)は、膨張性充填挿入物(10)が所定の状態で保持されることを可能にし、ショルダー部(18)は、(アタッチメントの箇所を除き)自立連続構造体(11)の外側面が空洞の内側面と接して充填/封止されることを防ぎ、それによって、自立連続構造体(11)とピラー(1)の内壁周囲との間に隙間(13)が形成される。この隙間(13)は、膨張性充填挿入物を挿入した後に、洗浄剤、前処理剤、化成処理剤、下塗剤、塗料などのような液体を空洞に導入し、空洞の内側面の基本的に全体と接触させて、その後、除去することを可能にする。別の態様では、挿入物(10)を、内側ピラー部(24)とほぼ同様に、取付要素(12)で外側ピラー部(20)に取り付けることができ、および/または内側ピラー部(24)および外側ピラー部(20)の両方に取り付けてよい。必要に応じて、車両ピラーの壁の複数の開口部と組み合わせて、複数の取付要素を用いてよい。
【0054】
図3に図示する車両ピラー(1)および膨張性充填挿入物(10)のアッセンブリを、充分な時間、外部加熱(例えば、約120℃〜約210℃の温度)に晒し、自立連続構造体(11)を形成するポリマーマトリックスを発泡させて、車両ピラー(1)の空洞(2)を封止する。特に、自立連続構造体(11)の外側面とピラーの内側面との間の隙間(13)ならびに最初の膨張性充填挿入物(10)の内部空間(9)は、ポリマーマトリックスから生じる発泡体で充填されるようになる。内側ピラー部(24)の開口部(15)もまた、膨張したポリマーマトリックスによって封鎖および封止される。
【0055】
1つの態様では、取付要素(12)を、自立連続構造体と同じ材料にすることができ、その一体部分として作ることができ、あるいはそれを金属もしくはポリアミドまたは他のエンジニアリング熱可塑性プラスチック材料のような異なる耐熱性材料で作ることができる。図4は、ポリマーマトリックスの材料とは異なる材料で作られた取付要素(12)を有する膨張性充填挿入物(10)を示す。自立連続構造体(11)を構成するポリマーマトリックスを、(例えば、オーバーモールド成形を用いて)取付要素(12)の柱状部(14)の周囲で加工することができ、それによって、取付要素(12)を自立連続構造体(11)と一体化させる。自立連続構造体(11)を通って延在する柱状部(14)の断面よりも幅の広いフランジ(21)が、自立連続構造体(11)の内側に存在し、それによって、取付要素(12)を自立連続構造体(11)に固定する。図4に示す膨張性充填挿入物(10)の自立連続構造体(11)は、矩形断面形状を有するリングの形態である。取付要素(12)は、一対の弾性保持脚部材(17、19)を含み、それぞれが柱状部(14)の各側面から鋭角で分岐し、柱状部(14)の先端から自立連続構造体(11)に向かって延在する。
【0056】
図5は、狭い不規則隅部(26、28)を有する組み立てられた車両ピラー(1)内にある、本発明の1つの態様に関する膨張性充填挿入物(10)を示す。図5に示すように、自立連続構造体(11)の外側面は、ピラー(1)の狭い不規則隅部(26、28)に向かって延在する突出部(14、16)を含み、従って、ポリマーマトリックスが加熱によって一旦活性化すると、空洞の内部と同様に、隅部(26、28)を封止することができる。本発明に関する狭い不規則隅部は、鋭角を有する任意の隅部である。
【0057】
図6は、膨張性充填挿入物(10)が、自立連続構造体の内部空間(9)に突出する突出部(18)を有する、本発明の1つの態様を示す。膨張性充填挿入物(10)が加熱により活性化し、ポリマーマトリックスを発泡および膨張させた場合、突出部(18)は空洞を完全に封止することを助ける。
【0058】
本発明のある態様では、射出成形または(時には異形押出成形または異形押出とも呼ばれる)押出成形のような成形技術によって形成できるポリマーマトリックスを選択する。1つの態様では、ポリマーマトリックスを軟化または溶融させるために充分に高い温度まで加熱し、それを押し出すことができる状態にして、しかしながら潜発泡剤および存在し得る任意の潜硬化剤が、早期に活性化することを避けるように、充分に低い温度にて、ポリマーマトリックスを押出機を介して押し出す。同様に、射出成形法を用いる場合、潜発泡剤の活性化によってポリマーマトリックスが膨張する温度を避けながら、ポリマーマトリックスをモールドに射出することができるように、ポリマーマトリックスを充分に加熱する。所望の形状に成形した後、ポリマーマトリックスを冷却し、再び固化させる。
【0059】
図7は、本発明に基づく膨張性充填挿入物を製造するために用いることができる、射出成形モールドを示す。モールドは上部取付板(30)、型枠またはモールドブロック(32)および下部取付板(34)を含んで成り、それぞれ金属または他の耐熱材料から作ることができる。モールド部分を、例えば、ボルトまたはピン(46)および穴(48)によって整列した状態で組み立てて保持してよい。注入器(50)を用いて、溶融または軟化した状態のポリマーマトリックスを上板(30)の開口部(42)を介して中央部を占める型枠(32)に供給する。開口部(42)は、型枠またはモールドブロック(32)の空所(44)と整列している。型枠(32)は、所望の形状、構造および寸法の自立連続構造体を提供するように構成されている。例えば、型枠(32)は、自立連続構造体の所望の輪郭に対応する主チャネル(36)および取付要素の所望の寸法に対応し、主チャネルに接続する側方チャネル(38)を含んでよい。従って、型枠に導入される溶融または軟化したポリマーマトリックスは、(自立連続構造体の内部空間に突出する突出部を提供する)空隙(44)、主チャネル(36)、および側方チャネル(38)を占める。別の態様では、取付要素を膨張性充填挿入物内に組み入れるために、オーバーモールドを用いてよい。即ち、取付要素を、ポリマーマトリックスとは異なるポリアミドのような耐熱性材料を射出成形することによって、別個に作製してよい。取付要素を側方チャネル(38)の中に配置し、その後、ポリマーマトリックスを取付要素の上にオーバーモールドする。
【0060】
本発明の膨張性充填挿入物を、異形押出成形法によって製造できる。押出機は、溶融または軟化状態のポリマーマトリックスをダイアッセンブリを介して押し出す。内部空間を有する膨張性充填挿入物を所望する場合、ダイアッセンブリは端板が留め具で固定される部材を含む。所望の断面形状を有するプロファイルプレート(profile plate)を、該部材と端板との間に配置する。プロファイルプレートの開口部の形状は、押し出されるポリマーマトリックスの閉チューブの断面を規定する。押し出されるポリマーマトリックスを所望の中空形状に成形するために、例えば、環状出口断面を有するダイを用いてよい。中空チューブ、パイプおよび他のそのような形状の押出成形の当該技術分野において知られている任意の技術および装置を、本発明で用いるために適用してよい。例えば、ダイアッセンブリはセンターフィード(center−fed)マンドレル支持ダイ(時には、スパイダー式支持マンドレルダイまたは支持リングダイとも呼ばれる)を有して成ってよく、溶融ポリマーマトリックスをマンドレル支持体の領域にて分割して別々のストリームとする。溶融ポリマーマトリックスは、クモ型脚部の周囲を流れる。マンドレルがチューブ状多孔体スクリーンパックによって保持されるスクリーンパックダイ(ブレーカープレートダイとも呼ばれる)を用いてもよい。用いることができる更にもう1種類のダイアッセンブリは、サイドフィード(side−fed)マンドレルダイ(クロスヘッドダイとも呼ばれる)である。サイドフィードマンドレルダイを用いる場合、溶融ポリマーマトリックスは、マニホールドを経由してマンドレルの周囲を通過する。スパイラル状のマンドレルダイが多条ねじ状にマンドレルの周囲に巻き付く、スパイラルマンドレルダイを用いてもよい。冷却付帯設備を押出機械に接続して用いてよく、ポリマーマトリックスの熱い押出閉チューブが凝固して所望の形状を保持するまで、その温度を下げる。押出閉チューブを所望の長さ/太さに切断してよく、膨張性充填挿入物に有用な自立連続構造体を提供する。一般的に言えば、押出閉チューブを、熱いナイフ、のこぎりまたは他のそのような器具などのような任意の適当な方法を用いて、押出閉チューブの長手軸に実質的に垂直な方向で切断してよい。更に、種々の直径または断面形状のチューブを作るために、プロファイルプレートを変更してよい。本発明の1つの態様では、例えば、断面形状は、取付要素の所望の断面形状を有する、1つまたはそれより多くの突出部を含み、押出閉チューブを切断した場合、自立連続構造体と一体化した1つまたはそれより多くの取付要素を提供するようにし、それによって、取付要素を別個に形成して、次に自立連続構造体に取り付ける、または別の成形工程において、ポリマーマトリックスとは異なる材料から形成する、といった別の組立または成形工程が不要になる。中空チューブに代わるものとして、膨張性材料の多数のストランドを異形押出し、その後、所望のピラー充填材挿入物に切断してよい。
【0061】
本発明の他の態様を、下記のように説明することができる。これらの態様では、“成形パーツ”なる用語を、これまでに本明細書で用いた“膨張性充填挿入物”なる用語と同義で用いる。
【0062】
従って更なる態様において、本発明は、120〜220℃の範囲の温度で少なくとも20%膨張する反応性架橋材料で作られた主本体部を有する成形パーツに関し、該主本体部は、少なくとも1つの取付要素および/または少なくとも1つのスペーサーを含んで成り、これらは、それぞれ1つもしくは複数の取付要素または1つもしくは複数のスペーサーを含む成形パーツ全体が2つの平行で平坦な面によって画定されるように規定される前面(front side)および後面(back side)を有し、各取付要素または各スペーサーの前面は平行な面の一方に位置し、後面は平行な面の他方に位置している。
【0063】
本明細書において“主本体部”は、膨張後、発泡した材料で充填される空洞の補強および/または絶縁をもたらす成形パーツの一部として理解される。取付要素またはスペーサーは、主本体部に含まれない。なぜなら、本明細書でこれまでに説明したように、それらを非発泡性材料で作ることができるからである。後者の場合、それらは補強および/または絶縁に寄与しない。
【0064】
本発明のこの態様に基づいて、すべての取付要素および/またはスペーサーを含んで成る成形パーツ全体は、2つの平行で平坦な面によって画定されることが提供される。しかしながら、製造上の理由から、2つの面の平行度には僅かなズレが存在してよい。しかしながら、2つの面は多くて10°、好ましくは多くて5°の角度を相互に対して形成する程度で、少なくともほぼ平行に位置することが意図される。従って、これら2つの(ほぼ)平行な面は、成形パーツの主本体部だけでなく、存在するすべての取付要素および/またはスペーサーを画定する。従って、取付要素および/またはスペーサーの構造は、成形パーツの主本体部の構造から独立していない。その代わりに、取付要素および/またはスペーサーは、主本体部の2つの平行な画定面と同じ面にそれぞれ位置する2つの平行な面がそれらを画定するように、形成される。言い換えると、2つの平行な画定面に平行な方向で眺めた場合、スペーサーおよび/または取付要素を含む成形パーツ全体は、2つの平行な画定面に対して突出部も窪み部も有しない。
【0065】
2つの平行な面に垂直に延在する方向を、本明細書では、以下長手方向と呼び、対応する軸を長手軸と呼ぶ。これは、成形体が前記の長手軸方向に有するエクステンションとは無関係である。
【0066】
長手軸に対して垂直に位置する2つの画定面以外のすべての面が長手軸に平行であるという制限のもと、長手軸に垂直な方向では、成形パーツを任意の形状の面で画定ことができる。この場合も、製造上の理由から、平行度の僅かなズレが起きてよいが、これらのズレは10°以下、好ましくは5°以下である。別の態様では、取付要素および/またはスペーサーを含む本発明に基づく成形パーツは、2つの平行な画定面を実質的に含み、他の画定面はすべて任意の形状であってよいが、前記の平行な面に実質的に垂直である(最大のズレは10°、好ましくは5°)であると説明することができる。これは、2つの前記の平行な面以外の画定面が、長手軸の方向に平坦に延在する、即ち、その方向に凹凸が存在しないということを更に含む。このことはまた、2つの前記の平行な面以外の画定面上に位置し、長手軸の方向に延在する、任意の線が直線であるという言い方によって表現することができる。2つの前記の平行な面に垂直に延在する画定面によって形成されるすべての縁部が、長手軸に平行な直線として対応して延在する。
【0067】
70℃より低い温度で、本発明に基づく成形パーツは固体で自立性である。即ち、その形状は、自重の影響によって変化しない。成形パーツは、反応性材料が隣接している支持要素を有さない。しかしながら、繊維、布帛またはネットから選択される補強要素を、反応性材料に組み込むことができる。このような補強要素を、例えば、ガラス、プラスチック、金属、ロックウールまたは炭素繊維で作ることができる。製造上の理由から、布帛またはネットが成形体の長手軸に対してほぼ平行に位置するように、それらを成形部に組み込む。繊維は、長手軸に対して斜めに存在してもよいが、長手軸方向の向きが明らかに好ましい。
【0068】
2つの平行な画定面を平面視すると(即ち、長手軸の方向で眺めると)、成形パーツの主本体部は一般的に不規則な断面を示すが、それは断面が絶縁または補強すべき要素の空洞の断面に適応するということに起因する。例えば円、楕円、正三角形、または例えば正方形、五角形もしくは六角形のような多角形などの幾何学的に規則的な断面が理論的には可能であるが、概して実際には起こらない。従って、成形パーツは、一般的に長手軸に垂直な様々な方向で異なるエクステンションを有する。この文脈では、長手軸に垂直に位置し、成形体の最大のエクステンション方向を指す軸を規定することができる。本明細書では、以下この軸を水平軸と呼び、対応する方向を水平方向と呼ぶ。長手軸および水平軸の両方に垂直に延びる軸を、垂直軸と呼ぶ。垂直軸に平行な方向を垂直方向と呼ぶ。定義により、未膨張成形パーツは、水平方向よりも垂直方向への延在が少ない。長手軸方向で眺めた場合、成形本体パーツは、水平方向または垂直方向よりも厚くまたは薄くてよい。特に、成形パーツは長手方向において比較的平坦な円盤形状であってよい。例えば、成形パーツは、長手軸方向の厚さの少なくとも3倍の水平方向の幅であってよい。
【0069】
しかしながら、互いに垂直である2つの最大エクステンション方向が存在するため、水平方向を垂直方向から区別できない幾何学的に限定されるケースもあり得る。しかしながら、この幾何学的に限定されるケースは、実際にはほとんど起こらない。図8は、長手軸方向で眺めた、本発明の1つの態様に基づく成形パーツ1aの態様を示す。従って、観察者は、2つの平行な画定面の一方の上から垂直に見ている。この例示する態様では、成形パーツは、本体部1a、およびアンダーカットラッチフック3aを含んで成る取付要素2aで構成される。上記で規定した水平および垂直軸を破線で表し、それぞれ文字hおよびvで印している。この態様において、取付要素2aが垂直軸と平行に位置することは偶然である。実際には、取付要素2aが本体部の平行な画定面と一致する2つの平行な面によって画定され、他の画定面が前記の面に垂直に位置するという条件のもと、取付要素2aはいずれの任意な方向の向きであってもよく、また、いずれの任意な箇所で本体部に取り付けることができる。
【0070】
図8に示すように、長手方向に平行に延在する成形パーツの画定面が、水平または垂直軸に対して、非常にわずかだけ平行に、またはまったく平行ではなく延在するように、成形パーツを構成することができる。成形パーツを、水平または垂直軸に対して自由に傾けることができ、図8に示すように、くさび型に先細らせることができる。くさび型の形態に先細る成形体の領域は、補強または絶縁すべき空洞の対応して尖った隅部へ延在することができ、熱膨張(“発泡”)の後、前記の隅部を特に十分に充填することができる。
【0071】
本明細書でこれまでに説明し、下記でいくらか更に詳細に説明するように、対応する形状のダイを介して反応性材料を押し出すことによってストランドを作り、ほぼ平行な切断面を生み出すように、押出方向に垂直に前記のストランドを切断することによって、本発明に基づく充填材挿入物または成形パーツを、特に好ましい方法で製造することができる。この押出操作は、反応性材料の鎖状分子に、成形体の長手軸方向で統計的に好ましい向きを与える。このようにして形成された鎖状分子を充填した結果として、本発明の1つの態様に基づく成形パーツは、70〜100℃の範囲の温度まで加熱した場合、水平方向および垂直方向で10%以下しか収縮しない。この収縮は、各ケースについて、20℃から70−100℃まで加熱する前に、対応する方向におけるエクステンションに基づき、好ましくは5%より少なく、特に3%より少ない。結果として、成形体は、より高い温度においても発泡および架橋が始まる前に、加熱時に非常に幾何学的に安定なままであるので、この挙動は望ましい。
【0072】
押出方向における鎖状分子の好ましい向きの同じメカニズムによって、対応する方向の材料の厚さに関して各ケースにおいて考慮すると、120〜220℃まで加熱した場合、垂直方向の膨張が長手軸方向の膨張よりも大きくなるように、本発明に基づく成形パーツを膨張させる。これは、水平方向と比較した垂直方向の膨張にも当て嵌まり、本発明に基づく成形パーツは、120〜220℃まで加熱した場合、この場合も対応する方向の材料の厚さに関して各ケースを考慮すると、垂直方向の膨張が水平方向の膨張よりも大きくなるように膨張する。
【0073】
長手軸に垂直な方向における相対的に大きく膨張することが特に望ましく、なぜなら、長手軸に垂直な方向における膨張は、補強または絶縁すべき空洞の壁に向かう方向で伸張するからである。
【0074】
成形パーツは、非膨張状態において、空洞断面を完全には充填しないような寸法を有する。動かないようにするために成形パーツが空洞壁と接触しなければならない部位を除き、成形パーツの外側面と空洞の内側画定壁との間に約1〜約10mm幅の流路(flow gap)が保持される。成形パーツが膨張しない限り、処理流体および被覆液体は、この流路を介して自由に流れることができる。熱膨張が起きた結果としてのみ成形部の体積は、相対するいずれの場所においても成形パーツが空洞の内側壁に適当に当接するように増加し、このようにして、空洞を完全に封止または空洞壁を強化する。この膨張は、120〜220℃の範囲の温度まで10〜150分の範囲の時間、加熱することによって生じる。実際には、この加熱工程は第1塗料層の焼付けと対応する。従って、塗料焼付け炉の熱を、成形パーツを膨張および硬化するために用いることができる。
【0075】
図8に示すように、取付要素またはスペンサーを含む成形パーツ全体を密な状態にすることができ、即ち、肉眼で検知可能な内部空間(“空洞”)が見えない。しかしながら、主本体部ならびに/または取付要素および/もしくはスペーサーは、内部空洞を含むこともでき、材料の節約を可能とする。このことは、本明細書の中で先に一般的に説明してきた。この1つの態様を図9に示す。ここでは、主本体部は密な状態(即ち、空洞を含まない)であり、取付要素2aは内部空洞4aを含む。従って、本発明のこの態様では、少なくとも1つの取付要素または少なくとも1つのスペーサーは、平行な面の一方から他方へ長手軸に平行に延在する空洞を含んでおり、前記の平行な面で開口する。前記の空洞の画定面は、スペーサーまたは取付要素の外側面に平行に延在してよい。しかしながら、空洞は、取付要素またはスペーサーの外部輪郭とは無関係な形状を有することもできる。この態様を、図9において実施例によって示す。
【0076】
更なる態様では、主本体部自体が、平行な面の一方から他方へ、長手軸に平行に延在し、前記の平行な面に開口する、内部空間または1つの空洞または幾つかの空洞を含むことができる。この態様を図10において実施例によって示し、主本体部は、取付要素2aの中にまで延在する空洞4aを含む。しかしながら、空洞は主本体部に限ってよく、取付要素またはスペーサーの中へ延在しなくてもよい。この場合、取付要素および/またはスペーサーは密な状態であり、主本体部は空洞を含む。
【0077】
この態様において、反応性材料は、空洞4aの画定面によって内部的に、および成形体の外部画定面によって外部的に画定される壁5aの範囲に限られる。この壁は、長手軸に垂直な全ての方向において、同じ厚さであってよい。この場合、壁5aの内部および外部画定面は、平行に延在する。しかしながら、図10は、空洞壁5aが長手軸に垂直な異なる方向で異なる厚さを有する一般的な態様を表す。その場合、壁5aの空洞側画定面は、成形体の外部画定面に平行に延在しない。この態様は、反応性材料の量を、補強または絶縁すべき要素の空洞の断面にわたって異なるように分配できるという利点がある。図10の特定の実施例では、例えば、特に大量の反応性材料が、くさび形の形態に先細る領域付近に位置する。このことは、先端に向けて細くなる補強または絶縁すべき要素の空洞の領域を、完全に充填するのに十分な発泡性の反応性材料を使用できるようにする。図10は、実施例として、主本体部が単一の空洞4aだけを含む態様を表す。しかしながら、本明細書では示さない更なる態様では、仕切りによって前記の空洞を複数の空洞に分割することができ、すべてが成形体の長手軸に平行に延在する。
【0078】
本発明の他の態様では、前記の空洞が主部または取付要素もしくはスペーサーに存在するかどうかにかかわらず、成形体の長手軸に平行に延在する1つまたは複数の空洞は、いずれの断面を示してもよい。断面は、全体的に不規則であってもよい。しかしながら、円形、楕円形、角形(例えば、矩形、三角形、台形など)、またはX字形、U字形、V字形、D字形(例えば、おおよそ図10のようなもの)、および他の空洞断面も可能である。
【0079】
取付要素(ここでは、“取付要素”を上記で規定して説明したように理解する)もしくは複数の取付要素(すべての取付要素を含む)、または1つのスペーサーもしくは複数のスペーサー(すべてのスペーサーを含む)を、主本体部と同じ膨張性材料で作ることができる。このことは図8〜10で表すものに対応し、主本体部の材料は組成的な境界を有さず、取付要素の材料に遷移する。この場合、取付要素および/またはスペーサーが、主本体部の発泡およびその意味における架橋に関与する。このことは、取付要素の場合、取付要素が挿入される、要素の空洞の壁の開口部が、取付要素の発泡によって効果的に絶縁されるという利点がある。
【0080】
1つの取付要素もしくは幾つかの取付要素(すべての取付要素を含む)、または1つのスペーサーもしくは幾つかのスペーサー(すべてのスペーサーを含む)を、非発泡性材料で作ることもできる。その場合、それらは、主本体部を膨張温度まで加熱した場合、その形状を保持する。しかしながら、本体部が膨張した場合、取付要素またはスペーサーとの結合が失われないように、取付要素またはスペーサーの本体部側端部は、主本体部の材料の中に入り込む必要がある。この態様では、取付要素またはスペーサーを、例えば、ポリアミドで作ることができる。
【0081】
好ましい態様では、本発明に基づく成形パーツの発泡性材料は、10℃〜約40℃の範囲の温度の非発泡状態で粘着性を有さない。成形パーツは相互にまたは包装材料に付着しない状態であるため、このことは、成形パーツの運搬および取り扱いを容易にする。しかしながら、成形パーツの表面の一部は、前記の範囲の温度で粘着性を有するように提供されてもよく、補強または絶縁すべき空洞の内部壁に、成形パーツを前記の粘着面部分によって接着固定することができる。その場合、クリップのような機械的な取付要素は必要ない。従って、この態様は非粘着成形パーツが、平行な面の一方から他方へ延在する少なくとも1つの外側面を含み、前記の外側面の少なくとも選択領域において、10〜40℃で粘着性を有する材料によって覆われることを特徴としており、この選択領域は、2つの平行な面によって2つの側で画定される。この態様を、図11で模式的に示す。この図は、密なスペーサー6a、内部空洞4a、反応性膨張性材料で作られた壁5a、および10〜40℃で粘着性を有する材料のストリップ7aを有して成る成形パーツを示す。この場合も、成形パーツを長手軸に平行に眺めている。従って、観察者は粘着材料のストリップ7aの端面を見ている。
【0082】
発泡性材料の可能な組成物(少なくとも1種のポリマーまたはポリマー前駆体、および少なくとも1種の潜発泡剤を含む)を、本明細書で先に説明した。これらは、本発明のすべての態様に当て嵌まる。例えば、発泡性材料は少なくとも下記の成分を含んでよい。
a)120〜220℃の範囲の温度で、それ自体または材料の他の成分と架橋する樹脂(本明細書で先に樹脂またはバインダーとして呼んでいたので、本明細書では以後“バインダー”とも呼び、“ポリマーまたはポリマー前駆体”に対応する)
b)120〜220℃の範囲の温度で反応し、体積の増加またはガスの発生を伴い、その結果、材料の体積を少なくとも20%増加させる発泡剤
【0083】
本明細書の全ての態様で用いることができる膨張性材料の可能な組成物(発泡材を含む)を、本明細書で先に説明してきた。今回も本発明の全ての態様で用いることができる、幾つかの別の態様および/または更なる詳細を以下に説明する。
【0084】
例えば、国際公開第WO 00/52086号または国際公開第WO 2003/054069号、および国際公開第WO 2004/065485号に開示されているような、エポキシ樹脂および固化剤を基礎とする反応性膨張性材料用の別のバインダー系(“樹脂”)を、以下に説明する。
【0085】
1分子あたり少なくとも2つの1,2−エポキシ基を含む多くのポリエポキシドが、エポキシ樹脂として適する。これらポリエポキシドのエポキシ当量は、150〜50,000、好ましくは170〜5000であってよい。ポリエポキシは基本的には、飽和、不飽和、環状または非環状、脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環のポリエポキシド材料であることができる。適当なポリエポキシドの例には、アルカリの存在下で、エピクロルヒドリンまたはエピブロモヒドリンをポリフェノールと反応させることによって製造するポリグリシジルエーテルが含まれる。これに適当なポリフェノールは、例えば、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA(ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン)、ビスフェノールF(ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、(ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン)、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、1,5−ヒドロキシナフタレンである。ポリグリシジルエーテルの基礎として適当な更なるポリフェノールは、ノボラック樹脂型のフェノールおよびホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドの既知の縮合生成物である。
【0086】
更なるポリエポキシドは、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステルであって、例えば、グリシドールまたはエピクロロヒドリンと、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸またはダイマー脂肪酸のような脂肪族または芳香族ポリカルボン酸との反応物である。
【0087】
更なるエポキシは、オレフィン系不飽和脂環式材料または天然油および脂肪のエポキシ化物から誘導される。
【0088】
ビスフェノールAまたはビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの反応から誘導されるエポキシ樹脂は殊更特に好ましく、ビスフェノールAを基礎とし、充分に小さい分子量を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。室温で液状のエポキシ樹脂は、一般的に150〜約480のエポキシ当量を有し、182〜350のエポキシ当量範囲が特に好ましい。
【0089】
可撓性付与効果を有するエポキシ樹脂、例えば、カルボキシル−末端ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(CTBN)の付加物(それ自体が周知のもの)およびビスフェノールA由来のジグリシジルエーテルを基礎とする液状エポキシ樹脂などを、可撓性付与剤として用いることができる。具体例は、B.F.GoodrichのHycar CTBN 1300×8、1300×13、1300×15と液状エポキシ樹脂との反応生成物である。アミノ−末端ポリアルキレングリコール(Jeffamines)と過剰の液状ポリエポキシドとの反応生成物を用いることもできる。原理的には、メルカプト官能性プレポリマーまたは液状チオコールポリマーと過剰のポリエポキシドとの反応生成物を、可撓性付与エポキシ樹脂として、本発明に基づき用いることもできる。しかしながら、殊更特に好ましくは、ポリマー脂肪酸、特にダイマー脂肪酸と、エピクロロヒドリン、グリシドールまたは特にビスフェノールAのジクリシジルエーテル(DGBA)との反応生成物である。また、可撓性付与剤として適するのは、アクリロニトリルとブタジエンおよび/またはイソプレンおよび任意で(メタ)アクリル酸との共重合体であり、アクリロニトリルの含有量が10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%、および(メタ)アクリル酸含有量が0.0〜1重量%、好ましくは0.0〜0.1重量%である。前記の可撓性付与剤の混合物を用いることもできる。
【0090】
押出工程に所望の粘性を確立するために、反応性材料は反応性希釈剤を含むことができる。本発明の目的に合う反応性希釈剤は、エポキシ基を含み、脂肪族または芳香族構造を有する、低粘度物質(グリシジルエーテルまたはグリシジルエステル)である。これらの反応性希釈剤は、一方では、軟化点より高温でバインダー系の粘度を下げる役割を果たし、他方では、それらが射出成形におけるゲル化前処理をコントロールする。本発明に基づき用いられる反応性希釈剤の典型的な例は、C6〜C14のモノアルコールまたはアルキルフェノールのモノ、ジまたはトリグリシジルエーテルであり、同様に、カシューシェルオイルのモノグリシジルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよびシクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ならびにC6〜C24のカルボン酸のグリシジルエーテル、またはそれらの混合物である。
【0091】
本発明に基づく固化可能成形体は単一成分で実施され、高温で固化させるため、それらは更に潜固化剤および/または付随的に1種またはそれより多くの促進剤を含む。
【0092】
エポキシ樹脂バインダー系に用いることができる、熱で活性化される固化剤または潜固化剤は、グアニジン、置換グアニジン、置換尿素、メラミン樹脂、グアナミン誘導体、環状第3アミン、芳香族アミン、および/またはそれらの混合物である。固化反応において、固化剤を化学量論的に含むことができるが、それらは触媒活性であってもよい。置換グアニジンの例は、メチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、メチルイソビグアニジン、ジメチルイソビグアニジン、テトラメチルイソビグアニジン、ヘキサメチルイソビグアニジン、ヘプタメチルイソビグアニジン、および殊更特にはシアノグアニジン(ジシアンジアミド)である。列挙できる適当なグアナミン誘導体の代表例は、アルキル化ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、またはメトシキメチル/エトシキメチルベンゾグアナミンである。単一成分の熱硬化性材料の選択基準は、当然ながら、室温での樹脂系におけるこれらの物質の低い溶解性であり、固体で細かく粉砕された固化剤がここでは好ましく、ジシアンジアミドが特に適する。これは、成分に対する良好な保存安定性を確保する。
【0093】
前記の固化剤に加えてまたは代えて、触媒活性な置換尿素を用いることができる。これらは、特に、p−クロロフェニル−N,N−ジメチル尿素(モニュロン)、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(フェヌロン)、または3,4−ジクロロフェニル−N,N−ジメチル尿素(ジウロン)である。原理的には、触媒活性な第三アクリルアミンまたはアルキルアミン、例えばベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノ)フェノール、ピペリジンまたはピペリジン誘導体などを用いることもできるが、これらはしばしばバインダー系において高過ぎる溶解性を有し、この場合、単一成分系に対する充分な保存安定性は得られない。更に、触媒活性促進剤として、様々な(好ましくは固体)イミダゾール誘導体を用いることができる。列挙できる代表例は、2−エチル−2メチルイミダゾール、N−ブチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、およびN−C1−から−C12−アルキルイミダゾールまたはn−アリールイミダゾール、トリアジン誘導体およびイミダゾール/トリアジン物質(例えば、C11−Z−アジン)である。いわゆる促進化ジシアンジアミドの形態であり、細かく粉砕した形態の固化剤および促進剤の組み合わせを用いることもできる。これは、時には、触媒活性促進剤をエポキシ固化系に別個に添加する必要をなくす。
【0094】
特に反応性系に対して、アミンとエポキシ樹脂との付加物を基礎とする、細かく粉砕した粉末状の固化促進剤を用いることもでき、これらの付加物は、第3アミノ基およびエポキシ基を含む。これらの潜粉末状促進剤を、前記の潜固化剤および/または促進剤と組み合わせて用いることができる。
【0095】
反応および熱膨張性材料は、少なくとも1種の微粒子熱可塑性ポリマー粉末を追加的に含むことができる。これらの熱可塑性ポリマー粉末を、原則として複数の微粒子ポリマー粉末から選択することができ、列挙できる例は、ビニルアセテート単独重合体、ビニルアセテート共重合体、エチレン−ビニルアセテート共重合体、塩化ビニル単独重合体(PVC)、または塩化ビニルとビニルアセテートおよび/または(メタ)アクリレートとの共重合体、スチレン単独重合体または共重合体、(メタ)アクリレート単独重合体または共重合体、またはポリビニルブチラールである。特に好ましい熱可塑性ポリマーは、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、またはイミダゾール基のような官能基を含み、コア/シェル構造を有しており、これらのポリマーのシェルは、室温で可塑剤または反応性希釈剤に対して僅かな膨潤挙動を示す。反応性材料を押し出す間のゲル化前反応において、これらのコア/シェルポリマーは非常に急速に膨らみ、押し出された材料を冷却した後、直ちに膨張性バインダー層上に非粘着面をもたらす。これらのポリマー粉末は、1mmより小さい、好ましくは350μmより小さい、殊更特に好ましくは100μmより小さい平均粒子サイズを有することが意図される。
【0096】
一般的に反応性材料は、例えば、様々な粉砕または沈殿したチョーク、カーボンブラック、炭酸カルシウムマグネシウム、バライト、および特にケイ酸アルミニウムマグネシウムカルシウム型のケイ酸塩充填材(例えば、珪灰石)、クロライトのような、既知の充填材を更に含む。
【0097】
特に軽量な構造体を製造するために、熱膨張可能で熱硬化可能である成形体を用いる場合、それらは好ましくは、前記の“標準的な”充填材に加えて、いわゆる軽量充填材であって、例えば中空鋼球体のような金属中空球体、中空ガラス球体、フライアッシュ(フィライト)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂もしくはポリエステル系の中空プラスチック球体、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリレート共重合体および特にポリ塩化ビニリデン、同様に塩化ビニリデンとアクリロニトリルおよび/または(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体で作られた壁材を有する膨張中空ミクロスフィア、中空セラミック球体、または例えばカシューナッツ、ココナッツもしくはビーナッツの殻など粉砕したナッツの殻、同様にコルク粉もしくはコークス粉末のような天然由来の有機軽量充填材の群から選択される。中空ミクロスフィアを基礎とするこれらの軽量充填材が特に好ましく、それらは硬化した成形体のマトリックスにおいて、成形体に高水準の圧縮強度を確保する。
【0098】
それぞれのポリマーマトリックスとは無関係に用いることができる適当な潜発泡剤は先に本明細書で説明した。
【0099】
更なる要旨において、本発明は、先に説明した特徴および特性を有する成形パーツを含んで成り、成形パーツは、ダイを介して膨張性材料のストランドを押し出し、材料のストランドを切断することによって製造されることを特徴としており、ストランドを切断する時に、上述の平行な面が形成される。このように製造される本発明に基づく成形パーツは、シンプルおよび迅速な製造方法のため、射出成形法によって製造される他の対応する成形パーツよりも、コスト的に有効である。
【0100】
本発明は、上記で説明した特徴および特性を有する成形パーツを製造する方法に更に関し、予備混合した膨張性材料を、室温より高い温度でストランドに好ましくは押し出し、切断面として上述の平行な面を生成するようにストランドを切断する。ダイを介して押し出される間、膨張性材料の温度は、好ましくは約70〜約110℃の範囲である。膨張性材料を、1〜15m/分の範囲の速度で押し出すことができる。
【0101】
押し出す間の的確な手順は、全てのスペーサーおよび取付要素が、成形パーツの主本体部と同じ反応性材料で作られるかどうか、またはそれらがもう1種の非膨張性材料で作られるかどうかに因る。前者の場合、反応膨張性材料はダイを介して押し出され、その開口部は、その材料でできた押出ストランドの一部が、取付要素および/またはスペーサーの断面を示すような形状にされる。本発明に基づき、このストランドを切断して成形パーツにした場合、押し出された材料の一部が、取付要素またはスペーサーの形状をそれぞれ有する。
【0102】
しかしながら、押し出し、次に押出ストランドを切断することによって製造するものが、少なくとも1つのスペーサーまたは1つの取付要素が反応性材料以外の材料で作られた成形パーツである場合、前記の場合と同じダイを用いることができるが、非膨張性材料が、結果的にスペーサーまたは結果的に取付要素を形成するダイ開口部の部分を介して押されるように、スペーサーまたは取付要素の非膨張性材料を、成形体の主本体部の膨張性材料と同時に押し出されなければならない。同時に、スペーサーまたは成形体の非膨張性材料が、主本体部の膨張性材料中に充分に入り込み、2つの材料の間に強固な機械的結合を保証するように、留意する必要がある。
【0103】
本発明に基づく成形パーツが、繊維、布帛、またはネットから選択される、先に説明した補強要素を含むことが望ましい場合、以下のように進めることが好ましい:膨張性材料を上述のように押し出してストランドにし、繊維、布帛、またはネットから選択した補強要素を切断する前に前記のストランドの中に押し込み;次に切断面として平行な面が生成するようにストランドを切断する。補強要素を押出ストランドの中に押し込むために、例えばローラーを用いることができる。
【0104】
10〜40℃において、面の選択領域が粘着性を有する材料で被覆される成形パーツを、本発明に基づく成形パーツの更なる態様として先に説明した。前記の選択領域は、2つの平行な面によって2つの側で画定される。これらの特徴を有する成形体の製造方法は、粘着材料のストリップを押出ストランドの外側面に形成するように、粘着材料を反応性材料と同時に押し出すように進めることが好ましい。平行な切断面を生成するような形態で、このストランドを切断する場合、それに応じて具体化された成形体が得られる。
【0105】
しかしながら、それに対する別の態様では、反応性材料だけを(該当する場合、スペーサーおよび/または取付要素の材料と共に)押し出してストランドにすることができ、ストランドに押し出した後、切断する前に、粘着材料のストリップをストランドの上に付ける。これを、ローラーを用いた一種の積層プロセスによって実施できる。
【0106】
本発明は更に、中空要素を補強、絶縁、制振(ダンピング)および/または封止する方法を包含し、本発明に基づく成形パーツまたは膨張性充填挿入物を、中空要素が完成する前に中空要素の内側壁に固定し、中空要素を閉鎖して、120〜220℃の範囲の温度まで好ましくは10〜150分の範囲の時間加熱する。
【0107】
例えば、客室を囲むフレームなど、車両構造体の長尺中空要素の一般的な製造プロセスはこの方法を用いる。これら中空要素は、通常、金属からの2つの対応する形状のハーフシェルを製造し、これらのハーフシェル同士を互いに接合させて、中空フレーム構造体またはその一部を生産することによって製造される。この種の中空要素または中空支持体は、例えば、車体のA、BまたはCピラーであり、それらは屋根構造体、または屋根のフレーム、枠、およびホイールハウジングまたはエンジン支持体の部分を支持する。既存技術においては、この種の中空要素において、いわゆる“ピラー充填材”または“バッフル”を用いることはよくあることだが、一方のハーフシェルを他方のハーフシェルに接合して中空要素を構成する前に、後に空洞の内側壁となる該一方のハーフシェルの表面上に、本発明に基づく成形パーツを、取付要素または粘着面部によって付けることができる。成形パーツを、(長手軸に垂直に観察した)その断面が空洞の断面形状に対応するように形成することが好ましい。しかしながら、成形パーツは発泡前、中空パーツの内側壁と1ヶ所のみまたは数ヶ所にて接触するような寸法を有する。これらの箇所を除き、成形パーツの長手軸に平行に位置する画定面と中空パーツの内側壁との間に、約1〜約10mm、好ましくは約2〜約4mmの幅を有する流路が残る。この流路は、基本車両ボディを処理する様々な処理液が、空洞壁の内側のあらゆる部分を確実に塗布されることを確保する。流路は、成形体が熱膨張した場合のみ閉鎖され、その結果、補強、絶縁、制振および/または中空構成部材の封止というそれ自体の目的を果たす。成形パーツのスペーサーは、成形体が発泡する前にこの流路を信頼性を持って形成し、発泡するまで維持することを保証できる。
【0108】
最後に、更なる要旨において、本発明は、膨張および硬化の後、上記に記載した充填材挿入物または成形パーツを含む中空フレーム構造体を有して成る車両に関する。
【0109】
本明細書において説明した、本発明の膨張性充填挿入物(または“成形パーツ”)は、自動車フレーム内の任意の場所で使用できる。例えば、その場所には、限定するわけではないが、ピラー(A、B、CおよびDピラーを含む)、レール、ピラーからドアまでの領域、屋根からピラーまでの領域、中間ピラー領域、ルーフレール、フロントガラスまたは他の窓のフレーム、デッキリッド、ハッチ、屋根部分の可動式天井、他の車両のベルトライン部分、モーター(エンジン)レール、下部の敷居、ロッカーパネルレール、サポートビーム、クロスメンバ、下部レールなどを含む。一般的に膨張性充填挿入物は、長手軸を有する中空構造部材内に配置され、自立連続構造体によって規定される面は、中空構造要素の長手軸に実質的に垂直である。
【0110】
本発明の膨張性充填挿入物を、自動車ピラーのような車両の中空空間または空洞における使用について説明したが、膨張性充填挿入物は、中空空間または空洞を封止または充填することが望まれる任意の他の用途(特に、少なくとも1つの組立工程の間に、対象物品が加熱工程に晒される用途)においても、利点があることを理解できる。例えば、膨張性充填挿入物を、限定するわけではないが、飛行機、家庭用器具、家具、建物、壁および仕切り、ならびに海洋用途(ボート)を含む、車両以外の中空構造部材を有する製品において用いることができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側面を有している空洞を充填するための膨張性充填挿入物であって、該挿入物は、空洞の内側形状に実質的に平行するが、空洞の内側面から離間して配置される外側面を有する自立連続構造体、および挿入物を空洞の内側面に取り付けるために自立連続構造体から突出するスペーサーおよび/または取付要素を有して成り、該自立連続構造体は、少なくとも1種のポリマーまたはポリマー前駆体および少なくとも1種の潜発泡剤を含んで成るポリマーマトリックスから形成されている膨張性充填挿入物。
【請求項2】
前記の挿入物が内部空間を有している、請求項1に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項3】
少なくとも1種のポリマーまたはポリマー前駆体および少なくとも1種の潜発泡剤を含んで成る該ポリマーマトリックスを含む反応性架橋材料で形成された主本体部を有し、主本体部は120〜220℃の範囲の温度で少なくとも20%膨張でき、該主本体部は、前側および後側をそれぞれが有する、少なくとも1つの取付要素および/または少なくとも1つのスペーサーを含んで成り、これらの側は、1つの取付要素もしくは複数の取付要素または1つのスペーサーもしくは複数のスペーサーを含めた膨張性充填挿入物全体が2つの平行で平坦な面によって策定される意味において規定され、各取付要素または各スペーサーの前側は平行な面の一方に位置し、後側は平行な面の他方に位置する、請求項1または請求項2に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項4】
繊維、布帛またはネットから選択される補強要素が反応性材料に組み込まれている、請求項3に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項5】
非膨張状態において、平行な面に垂直な長手軸に垂直な第1方向において、長手軸に垂直かつ第1方向に垂直な第2方向より、延在する膨張性充填挿入物であって、第1方向は最も長いエクステンションの方向であって、水平方向とし、一方、長手軸および水平方向それぞれに垂直な第2方向を垂直方向とする、請求項3および4の一方または双方に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項6】
水平方向の幅は長手軸方向の厚さの少なくも3倍である、請求項5に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項7】
70〜100℃の範囲の温度に加熱する場合、水平方向および垂直方向に10%以下しか収縮しない、請求項5および6の一方または双方に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項8】
120〜220℃に加熱する場合、垂直方向の膨張が長手軸方向の膨張より相対的に大きいように膨張する、請求項5〜7の1つまたはそれより多くの請求項に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項9】
120〜220℃に加熱する場合、垂直方向の膨張が水平方向の膨張より相対的に大きいように膨張する、請求項5〜8の1つまたはそれより多くの請求項に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項10】
少なくとも1つの取付要素または少なくとも1つのスペーサーは、平行な面の一方から他方へ長手軸に平行に延在して該面で開口する空洞を含んで成る、請求項1〜9の1つまたはそれより多くの請求項に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項11】
主本体部は、平行な面の一方から他方へ長手軸に平行に延在して該面で開口する、1つの空洞または複数の空洞を含んで成る、請求項3〜10の1つまたはそれより多くの請求項に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項12】
空洞と外側面との間の壁の厚さは、長手軸に垂直な異なる方向において異なる、請求項10および11の一方または双方に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項13】
1つの取付要素もしくは幾つかの取付要素、または1つのスペーサーもしくは幾つかのスペーサーは、主本体部と同じ膨張性材料で作られている、請求項1〜12の1つまたはそれより多くの請求項に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項14】
1つの取付要素もしくは幾つかの取付要素、または1つのスペーサーもしくは幾つかのスペーサーは、膨張性材料で作られていない、請求項1〜13の1つまたはそれより多くの請求項に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項15】
外側面が円錐状に先細り、平行な面に垂直に延在するアンダーカットラッチフックを有する少なくとも1つの取付要素を含んで成る、請求項1〜14の1つまたはそれより多くの請求項に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項16】
膨張性材料は、10〜40℃の範囲の温度で粘着性を有さない、請求項1〜15の1つまたはそれより多くの請求項に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項17】
平行な面の一方から他方へ延在する少なくとも1つの外側面を有して成る膨張性充填挿入物であって、該外側面の少なくとも選択された領域は、10〜40℃で接着性を有する材料によって被覆され、この選択領域は2つの平行な面によって2つの側で画定される、請求項16に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項18】
膨張性材料は少なくとも下記の成分を含有する、請求項1〜17の1つまたはそれより多くの請求項に記載の膨張性充填挿入物:
a)120〜220℃の範囲の温度で、それ自体または材料の他の成分と架橋する樹脂;
b)120〜220℃の範囲の温度で反応して、体積の増加またはガスの発生を伴い、その結果、材料の体積を少なくとも20%増加させる発泡剤。
【請求項19】
膨張性材料は、成分a)としてエポキシ樹脂および硬化剤を含有する、請求項18に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項20】
ダイを介して膨張性材料のストランドを押し出し、その材料のストランドを切断することによって製造され、前記の平行な面がストランドを切断する際に形成される、請求項1〜19の1つまたはそれより多くの請求項に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項21】
ダイを介して膨張性材料を押し出してストランドにし、切断面として前記の平行な面を形成するようにストランドを切断する、請求項1〜13および15〜20の1つまたはそれより多くの請求項に記載の膨張性充填挿入物の製造方法。
【請求項22】
主本体部の膨張性材料および少なくとも1つの取付要素またはスペーサーの非膨張性材料を、ダイを介して同時に押し出してストランドにし、前記の平行な面が切断面として形成されるようにストランドを切断する、請求項14〜20の1つまたはそれより多くの請求項に記載の膨張性充填挿入物の製造方法。
【請求項23】
膨張性材料を押し出してストランドにした後で、ストランドを切断する前に、繊維、布帛またはネットから選択される補強要素をストランドの中に押し込み、次に前記の平行な面が切断面として形成されるようにストランドを切断する、請求項4に記載の膨張性充填挿入物を製造するための、請求項21および22の一方または双方に記載の方法。
【請求項24】
ダイを介して押し出す際、膨張性材料は70〜110℃の範囲の温度を有する、請求項21〜23の1つまたはそれより多くの請求項に記載の方法。
【請求項25】
粘着材料のストリップをストランドの外側面に形成するように、粘着材料を材料と同時に押し出す、請求項17に記載の膨張性充填挿入物を製造するための、請求項21〜24の1つまたはそれより多くの請求項に記載の方法。
【請求項26】
材料を押し出してストランドにした後、ストランドを切断する前に、粘着材料のストリップをストランドの上に付ける、請求項17に記載の膨張性充填挿入物を製造するための、請求項21〜24の1つまたはそれより多くの請求項に記載の方法。
【請求項27】
膨張性材料を1〜15m/分の範囲の速度で押し出す、請求項21〜26の1つまたはそれより多くの請求項に記載の方法。
【請求項28】
該自立連続構造体は弾性を有する、請求項1または請求項2に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項29】
該自立連続構造体の周囲の該空洞と該外側面との間に1〜10mmの実質的に均一な隙間を形成するように、該自立連続構造体の該外側面が寸法を有する、請求項1または請求項2に記載の膨張性充填挿入物。
【請求項30】
該自立連続構造体はリングである、請求項2の膨張性充填挿入物。
【請求項31】
該ポリマーマトリックスは、熱可塑性物質、ゴム、硬化性樹脂およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1種のポリマーまたはポリマー前駆体を含んで成る、請求項1または請求項2の膨張性充填挿入物。
【請求項32】
潜発泡剤を、化学的発泡剤、物理的発泡剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択する、請求項1または請求項2の膨張性充填挿入物。
【請求項33】
熱活性化の後、ポリマーマトリックスは少なくとも約1000パーセント膨張する、請求項1または請求項2の膨張性充填挿入物。
【請求項34】
該ポリマーマトリックスは、少なくとも1種の熱可塑性物質および少なくとも1種の化学的発泡剤を含んで成る、請求項1または請求項2の膨張性充填挿入物。
【請求項35】
少なくとも1つの鋭角を含む断面形状を有し、内側面を有する空洞を充填するための膨張性充填挿入物であって、前記の挿入物は、内部空間、および空洞の断面形状に実質的に平行であるが空洞の内側面に接しない外側面を有する自立連続構造体を含んで成り、自立連続構造体の外側面は、空洞の少なくとも1つの鋭角に向かって延在する少なくとも1つの突出部を有して成り、取付要素は、挿入物を空洞の内側面に付けるために自立連続構造体から突出し、該ポリマーマトリックスは、少なくとも1種のポリマーまたはポリマー前駆体、および少なくとも1種の潜発泡剤を含んで成る、請求項1または請求項2の膨張性充填挿入物。
【請求項36】
該挿入物は、自立連続構造体の内部空間に延在する、ポリマーマトリックスでできた突出部を更に含んで成る、請求項35の膨張性充填挿入物。
【請求項37】
前記の方法は、ポリマーマトリックスをモールドへ射出成形することを含む、請求項1または請求項2に記載の膨張性充填挿入物の製造方法。
【請求項38】
内側面を有する空洞を充填または封止するための方法であって、請求項1に記載の膨張性充填挿入物を該内側面に取り付けること、および前記の膨張性充填挿入物を、該少なくとも1種の潜発泡剤を活性化させるために有効な温度まで加熱することを含む方法。
【請求項39】
膨張および固化後、請求項1〜20の1つまたはそれより多くの請求項に記載の成形パーツを含有する中空フレーム構造体を有する車両。

【公表番号】特表2010−510921(P2010−510921A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537649(P2009−537649)
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062746
【国際公開番号】WO2008/065049
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】