説明

膨張機

【課題】膨張比を増大させて冷媒の膨張時の動力回収効率を向上させることができる膨張機を提供すること。
【解決手段】蒸発器(21)、圧縮機(22)、凝縮器(23)とともに冷媒回路(10)を構成し、シリンダ31と、シリンダ31の中空部において回転軸32a回りに回転するロータ32と、各ベーン溝33aにロータ32の径外方向に沿って進退移動可能に収納され、かつ先端部がシリンダ31の内壁面に摺接することでシリンダ31とロータ32とで形成される作動空間36を区画して複数の作動室37を画成するベーン33とを備え、吸入ポート31aを通じて凝縮器で凝縮した冷媒を作動室37に吸入し作動室37の容積を変化させることによって冷媒を膨張させ、吐出ポート35aを通じて冷媒を吐出する膨張機30において、作動室37が最大容積となるときの該作動室37を画成するシリンダ31の肉厚を小さくしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張機に関し、より詳細には、供給された冷媒を蒸発させる蒸発器と、この蒸発器で蒸発した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、この圧縮機で圧縮された冷媒を導入して凝縮させる凝縮器とともに冷媒を循環させる冷媒回路を構成する膨張機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、供給された冷媒を蒸発させる蒸発器と、この蒸発器で蒸発した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、この圧縮機で圧縮された冷媒を導入して凝縮させる凝縮器とともに冷媒を循環させる冷媒回路を構成する膨張機として、シリンダと、ロータと、ベーンとを備えたものが知られている。
【0003】
シリンダは、円筒状の形態を成し、上端及び下端がカバー部材で閉塞された中空部を有している。このシリンダの内壁面は、その横断面形状が円弧状を成している。ロータは、中実円筒状の形態を成し、シリンダの中空部において該シリンダの中心軸と平行となる回転軸回りに回転可能に配設されている。このロータは、自身の外壁面の一部が該シリンダの内壁面の一部に摺接する態様で回転軸回りに回転するものである。ベーンは、ロータの外壁面に開口する態様で回転軸を中心として放射状に形成された各ベーン溝に収納されており、ロータの径外方向に沿って進退移動可能となるものである。これらベーンは、先端部がシリンダの内壁面に摺接することでシリンダとロータとで形成される作動空間を区画して複数の作動室を画成するものである。
【0004】
このような構成を有する膨張機では、吸入ポートを通じて凝縮器で凝縮した冷媒を作動室に吸入し、ロータの回転に応じて該作動室の容積を変化させることによって冷媒を膨張させ、吐出ポートを通じて冷媒を吐出して蒸発器に送出している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3154518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1に提案されている膨張機では、シリンダの内壁面の横断面形状が円弧状を成しており、しかもロータが円筒状を成していることからその外壁面の横断面形状も円弧状を成している。そのため、作動室が最大容積となる場合の容積量を十分に確保できず、この結果、吸入ポートを通じて冷媒を吸入して該吸入ポートとの連通が遮断された直後の作動室がロータの回転に伴って最大容積となるまでの容積の増大比で示される膨張比が十分に大きいものとならず、冷媒の膨張時の動力回収効率を十分に高いものとすることができなかった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、膨張比を増大させて冷媒の膨張時の動力回収効率を向上させることができる膨張機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る膨張機は、供給された冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を導入して凝縮させる凝縮器とともに冷媒を循環させる冷媒回路を構成し、両端がカバー部材で閉塞された中空部を有する筒状のシリンダと、前記シリンダの中空部において該シリンダの中心軸と平行となる回転軸回りに、自身の外壁面の一部が該シリンダの内壁面の一部に摺接する態様で回転する中実円筒状のロータと、前記ロータの外壁面に開口する態様で前記回転軸を中心として放射状に形成された各ベーン溝に該ロータの径外方向に沿って進退移動可能に収納され、かつ先端部が前記シリンダの内壁面に摺接することで該シリンダと前記ロータとで形成される作動空間を区画して複数の作動室を画成するベーンとを備え、吸入ポートを通じて前記凝縮器で凝縮した冷媒を作動室に吸入し、前記ロータの回転に応じて該作動室の容積を変化させることによって冷媒を膨張させ、吐出ポートを通じて冷媒を吐出して前記蒸発器に送出する膨張機において、前記作動室が最大容積となるときの該作動室を画成するシリンダの肉厚を小さくしたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る膨張機は、上述した請求項1において、前記シリンダは、少なくとも最大容積となる作動室を画成する部分の内壁面の横断面形状が楕円弧状を成すことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る膨張機は、上述した請求項1又は請求項2において、前記ロータの回転軸は、前記圧縮機の駆動軸と連結してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作動室が最大容積となるときの該作動室を画成するシリンダの肉厚を小さくしたので、吸入ポートを通じて冷媒を吸入して該吸入ポートとの連通が遮断された直後の作動室がロータの回転に伴って最大容積となるまでの容積の増大比で示される膨張比を十分に大きいものとすることができ、この膨張比の増大により回収仕事を大きくすることができるので、冷媒の膨張時の動力回収効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である膨張機が適用された冷媒回路装置を概念的に示す概念図である。
【図2】図2は、図1に示した冷媒回路を構成する膨張機を示す説明図である。
【図3】図3は、図2に示した膨張機構のA−A線断面図である。
【図4】図4は、図2に示した膨張機構のA−A線断面図である。
【図5】図5は、本実施の形態である膨張機の作動室容積と作動室圧力との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、従来例である膨張機の作動室容積と作動室圧力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る膨張機の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態である膨張機が適用された冷媒回路装置を概念的に示す概念図である。ここで例示する冷媒回路装置は、例えば缶入り飲料やペットボトル入り飲料等を販売する自動販売機に適用されるもので、内部に冷媒(例えばR134a等)を封入した冷媒回路10を有している。かかる冷媒回路10は、主経路20と加熱経路40とを備えて構成してある。
【0015】
主経路20は、蒸発器21、圧縮機22、凝縮器23及び膨張機30を冷媒管路24にて順次接続して構成してある。
【0016】
蒸発器21は、複数(図示の例では3つ)設けてあり、それぞれが自動販売機の各商品収容庫1に配設してある。それぞれの蒸発器21には、各入口に分配器28によって3つに分岐された冷媒管路24が連通する態様で接続してある。これら蒸発器21は、通過する冷媒を蒸発させて対象となる商品収容庫1(右庫1a、中庫1b、左庫1c)の内部空気を冷却するものである。以下においては、右庫1a(右側の商品収容庫1)に配設された蒸発器21を右蒸発器21a、中庫1b(中央の商品収容庫1)に配設さえた蒸発器21を中蒸発器21b、左庫1c(左側の商品収容庫1)に配設された蒸発器21を左蒸発器21cとも称しながら説明する。
【0017】
各蒸発器21の入口に連通する態様で接続された冷媒管路24には、その途中に低圧電磁弁251,252,253が設けてある。低圧電磁弁251,252,253は、開閉可能な弁体であり、図示せぬ制御手段から開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0018】
また、各蒸発器21には、各出口に連通する態様で冷媒管路24が接続してあり、これら冷媒管路24は、第1合流点P1で合流し、圧縮機22の吸引口に連通する態様で該圧縮機22に接続してある。
【0019】
圧縮機22は、吸引口を通じて冷媒を吸引し、吸引した冷媒を圧縮して高温高圧の状態にして吐出口より吐出するものである。凝縮器23は、通過する冷媒を凝縮させるものである。より詳細に説明すると、圧縮機22で圧縮され、かつ吐出口から吐出されて冷媒管路24を通じて送出された冷媒を周囲空気と熱交換させて凝縮させるものである。この凝縮器23と圧縮機22とを接続する冷媒管路24には、三方弁26が設けてある。かかる三方弁26については後述する。
【0020】
膨張機30は、図2及び図3に示すように、シリンダ31、ロータ32及びベーン33を備えて構成してある。
【0021】
シリンダ31は、円筒状の形態を成し、その上端部に上カバー部材34及び下端部に下カバー部材35が取り付けられることで上端及び下端が閉塞された中空部を有している。上カバー部材34には、シリンダ31の吸入ポート31aに連通する吸入部34aが配設してある。かかる吸入部34aは、凝縮器23の出口に連通する態様で接続された冷媒管路24が接続してあり、凝縮器23で凝縮した冷媒を吸入するものである。この吸入部34aに接続された冷媒管路24は、圧縮機22の吸引口に連通する態様で接続された冷媒管路24との間で互いの冷媒管路24を通過する冷媒どうしが熱交換可能な内部熱交換器27を構成している。下カバー部材35には、吐出ポート35aが形成してあるとともに、かかる吐出ポート35aに連通する吐出部(図示せず)が配設してある。かかる吐出部には、分配器28に接続される冷媒管路24が接続してある。
【0022】
ロータ32は、中実円筒状の形態を成し、シリンダ31の中空部に回転可能に配設してある。このロータ32は、回転軸32aがシリンダ31の中心軸と平行となる個所に、すなわち回転軸32aがシリンダ31の中心軸から離隔した個所にあり、その回転軸32a回りに回転するものである。かかるロータ32は、外壁面の一部がシリンダ31の内壁面の一部に摺接する態様で回転することで、シリンダ31との間に作動空間36を形成している。ここでロータ32の回転軸32aは、上カバー部材34及び下カバー部材35を貫通する態様で設けてあり、軸受32bにより支持されている。この回転軸32aは、圧縮機22の図示せぬ駆動軸と連結してある。
【0023】
ベーン33は、ロータ32の外壁面に開口する態様で回転軸32aを中心として放射状に形成された各ベーン溝33aにそれぞれ収納してある。これらベーン33は、図示せぬ付勢手段によりロータ32の径外方向に向けて付勢されており、その径外方向に沿って進退移動可能となるものである。かかるベーン33は、先端部がシリンダ31の内壁面に摺接することで作動空間36を区画して複数の作動室37を画成するものである。
【0024】
このような膨張機30は、吸入ポート31aを通じて凝縮器23で凝縮した冷媒を作動室37に吸入し、ロータ32の回転に応じて該作動室37の容積を変化させることによって冷媒を膨張させ、吐出ポート35aを通じて冷媒を吐出して分配器28(蒸発器21)に送出するものである。
【0025】
そして、上記膨張機30では、シリンダ31の中心軸を基準としてその中心軸より回転軸32a側の内壁面の横断面形状を円弧状に形成し、かつ該中心軸より回転軸32aと反対側の内壁面の横断面形状を楕円弧状に形成してある。つまり、作動室37が最大容積となるときの該作動室37を画成するシリンダ31の肉厚を小さくしてある。
【0026】
加熱経路40は、庫内熱交換器41及び庫外熱交換器42を冷媒配管43で順次接続して構成してある。庫内熱交換器41は、左庫1cの内部において左蒸発器21cに隣接する態様で配設してある。この庫内熱交換器41の入口側には、上記三方弁26に接続された冷媒配管43が接続してある。
【0027】
ここで三方弁26は、圧縮機22で圧縮した冷媒を凝縮器23に送出する第1送出状態と、圧縮機22で圧縮した冷媒を庫内熱交換器41に送出する第2送出状態との間で択一的に切り換え可能なバルブ手段である。かかる三方弁26の切換動作は、制御手段から与えられる指令に応じて行われる。
【0028】
このような庫内熱交換器41は、冷媒配管43を通じて圧縮機22で圧縮された冷媒が供給された場合、該冷媒を凝縮させることで左庫1cの内部空気を加熱するものである。
【0029】
庫外熱交換器42は、凝縮器23に隣接する態様で配設してある。この庫外熱交換器42の入口側には、庫内熱交換器41の出口側に接続された冷媒配管43が接続してある。つまり、庫内熱交換器41で凝縮した冷媒が冷媒配管43を通じて供給される。この庫外熱交換器42は、庫内熱交換器41から供給された冷媒と周囲空気との間で熱交換を行わせて、該冷媒を放熱させるものである。
【0030】
また、庫外熱交換器42の出口側には、主経路20における凝縮器23の出口側に接続された冷媒管路24に合流する態様で接続された冷媒配管43が接続してある。
【0031】
尚、図中の符号H、F1及びF2は、それぞれヒータ、庫内送風ファン及び庫外送風ファンである。ヒータHは、中庫1bに配設してあり、駆動して通電状態となることにより中庫1bの内部空気を加熱する加熱手段である。庫内送風ファンF1は、各商品収容庫1に配設してあり、駆動することにより蒸発器21等の周囲を通過した空気を商品収容庫1の内部で循環させるものである。庫外送風ファンF2は、凝縮器23の近傍に配設してあり、駆動することにより凝縮器23(若しくは庫外熱交換器42)の周囲に外気を通過させるものである。
【0032】
以上のような構成を有する冷媒回路装置は、次のようにして商品収容庫1に収容された商品を冷却、あるいは加熱する。
【0033】
まず、CCC運転(すべての商品収容庫1の内部空気を冷却する運転)を行う場合について説明する。この場合、制御手段は三方弁26を第1送出状態にさせ、低圧電磁弁251,252,253に対して開指令を与える。
【0034】
これにより圧縮機22で圧縮された冷媒は、第1送出状態にある三方弁26を通過して凝縮器23に至る。凝縮器23に至った冷媒は、該凝縮器23を通過中に、周囲空気(外気)に放熱して凝縮する。凝縮器23で凝縮した冷媒は、内部熱交換器27を通過した後、膨張機30に至る。
【0035】
膨張機30では、吸入部34aを通過した冷媒が吸入ポート31aより作動室37の内部に流入する(図3参照)。この際、ロータ32は回転軸32a回りを回転しているため、作動室37も回転軸32a回りに移動し、その後に吸入ポート31aとの連通が遮断される。そして、作動室37の容積は徐々に増大し、図4に示すように最大容積となる。このような作動室37の容積変化により冷媒を膨張させる。その後、ロータ32の回転に伴って回転軸32a回りに移動する作動室37は、吐出ポート35aに連通し、かかる吐出ポート35aを通じて膨張した冷媒を吐出させる。吐出ポート35aを通じて吐出された冷媒は、吐出部を介して冷媒管路24を通過した後、分配器28を介して右蒸発器21a、中蒸発器21b及び左蒸発器21cに至る。
【0036】
各蒸発器21に至った冷媒は、各蒸発器21で蒸発して商品収容庫1の内部空気から熱を奪い、該内部空気を冷却する。冷却された内部空気は、各庫内送風ファンF1の駆動により内部を循環し、これにより各商品収容庫1に収容された商品は、循環する内部空気に冷却される。各蒸発器21で蒸発した冷媒は、第1合流点P1で合流して圧縮機22に吸引され、圧縮機22に圧縮されて上述した循環を繰り返す。
【0037】
次に、HCC運転(左庫1cの内部空気を加熱し、右庫1a及び中庫1bの内部空気を冷却する運転)を行う場合について説明する。この場合、制御手段は、三方弁26を第2送出状態にさせ、低圧電磁弁253に対して閉指令を与え、低圧電磁弁251,252に対して開指令を与える。
【0038】
これにより圧縮機22で圧縮された冷媒は、第2送出状態である三方弁26を通過して庫内熱交換器41に至る。庫内熱交換器41に至った冷媒は、該庫内熱交換器41を通過中に、左庫1cの内部空気と熱交換し、該内部空気に放熱して凝縮する。これにより左庫1cの内部空気を加熱する。加熱された内部空気は、庫内送風ファンF1の駆動により、左庫1cの内部を循環し、これにより左庫1cに収容された商品は、循環する内部空気に加熱される。
【0039】
庫内熱交換器41で凝縮した冷媒は、庫外熱交換器42に至り、該庫外熱交換器42で周囲空気に放熱した後、冷媒配管43を通過して主経路20に戻る。主経路20に戻った冷媒は、内部熱交換器27を通過した後、膨張機30に至る。
【0040】
膨張機30では、吸入部34aを通過した冷媒が吸入ポート31aより作動室37の内部に流入する(図3参照)。この際、ロータ32は回転軸32a回りを回転しているため、作動室37も回転軸32a回りに移動し、その後に吸入ポート31aとの連通が遮断される。そして、作動室37の容積は徐々に増大し、図4に示すように最大容積となる。このような作動室37の容積変化により冷媒を膨張させる。その後、ロータ32の回転に伴って回転軸32a回りに移動する作動室37は、吐出ポート35aに連通し、かかる吐出ポート35aを通じて膨張した冷媒を吐出させる。吐出ポート35aを通じて吐出された冷媒は、吐出部を介して冷媒管路24を通過した後、分配器28を介して右蒸発器21a及び中蒸発器21bに至る。
【0041】
右蒸発器21a及び中蒸発器21bに至った冷媒は、右蒸発器21a及び中蒸発器21bで蒸発して右庫1a及び中庫1bの内部空気から熱を奪い、該内部空気を冷却する。冷却された内部空気は、各庫内送風ファンF1の駆動により内部を循環し、これにより右庫1a及び中庫1bに収容された商品は、循環する内部空気に冷却される。右蒸発器21a及び中蒸発器21bで蒸発した冷媒は、第1合流点P1で合流して圧縮機22に吸引され、圧縮機22に圧縮されて上述した循環を繰り返す。
【0042】
以上説明したように本発明の実施の形態である膨張機30では、最大容積となる作動室37を画成する部分の内壁面の横断面形状が楕円弧状を成すようシリンダ31の肉厚を小さくしてあるので、吸入ポート31aを通じて冷媒を吸入して該吸入ポート31aとの連通が遮断された直後の作動室37がロータ32の回転に伴って最大容積となるまでの容積の増大比で示される膨張比を十分に大きいものとすることができる。このように膨張比を大きくすることができることで、図5に示すように、作動室容積と作動室圧力との関係を示すグラフにおいて、吸入ポート31aを通じて冷媒を吸入する吸入工程、作動室37の容積を増大させることで冷媒を膨張させる膨張工程、吐出ポート35aを通じて冷媒を吐出する吐出工程の各線で囲まれる面積(abcd)で示される回収仕事を、図6に示す面積(abcc′d)で示される回収仕事よりも大きくすることができる。ここで、図6は、シリンダの内壁面の横断面形状が円弧状を成した従来例での作動室容積と作動室圧力との関係を示すグラフである。
【0043】
このように本実施の形態である膨張機30によれば、シリンダ31の内壁面の一部の横断面形状を楕円弧にするという簡単な方法で膨張比を増大させることができ、この膨張比の増大により回収仕事を大きくすることができるので、冷媒の膨張時の動力回収効率を向上させることができる。
【0044】
以上説明したような本実施の形態である膨張機30では、シリンダ31の肉厚を小さくする一例として対象部位の横断面形状を楕円弧状に形成していたが、本発明では作動室37の膨張比を大きくすることができるのであれば、シリンダ31の対象部位の横断面形状は楕円弧状に限定されないことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る膨張機は、例えば缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を販売する自動販売機に適用される冷媒回路装置に有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 商品収容庫
1a 右庫
1b 中庫
1c 左庫
10 冷媒回路
20 主経路
21 蒸発器
22 圧縮機
23 凝縮器
24 冷媒管路
26 三方弁
28 分配器
30 膨張機
31 シリンダ
31a 吸入ポート
32 ロータ
32a 回転軸
33 ベーン
33a ベーン溝
34 上カバー部材
35 下カバー部材
35a 吐出ポート
36 作動空間
37 作動室
40 加熱経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を導入して凝縮させる凝縮器とともに冷媒を循環させる冷媒回路を構成し、
両端がカバー部材で閉塞された中空部を有する筒状のシリンダと、
前記シリンダの中空部において該シリンダの中心軸と平行となる回転軸回りに、自身の外壁面の一部が該シリンダの内壁面の一部に摺接する態様で回転する中実円筒状のロータと、
前記ロータの外壁面に開口する態様で前記回転軸を中心として放射状に形成された各ベーン溝に該ロータの径外方向に沿って進退移動可能に収納され、かつ先端部が前記シリンダの内壁面に摺接することで該シリンダと前記ロータとで形成される作動空間を区画して複数の作動室を画成するベーンと
を備え、吸入ポートを通じて前記凝縮器で凝縮した冷媒を作動室に吸入し、前記ロータの回転に応じて該作動室の容積を変化させることによって冷媒を膨張させ、吐出ポートを通じて冷媒を吐出して前記蒸発器に送出する膨張機において、
前記作動室が最大容積となるときの該作動室を画成するシリンダの肉厚を小さくしたことを特徴とする膨張機。
【請求項2】
前記シリンダは、少なくとも最大容積となる作動室を画成する部分の内壁面の横断面形状が楕円弧状を成すことを特徴とする請求項1に記載の膨張機。
【請求項3】
前記ロータの回転軸は、前記圧縮機の駆動軸と連結してあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の膨張機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219675(P2012−219675A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84724(P2011−84724)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】