説明

臨床検査装置、臨床検査方法、臨床検査プログラムおよび記録媒体

【課題】マルチアレルゲン検査などの臨床検査において検査実施期間の短縮を図ること。
【解決手段】臨床検査装置100は、マルチ項目検査部103と、特定項目抽出部104と、特定項目検査部105とを備える。マルチ項目検査部103は、検体に対して複数のアレルゲンの混合物を用いたマルチ項目のアレルギー検査を行う。特定項目抽出部104は、マルチ項目検査部103によって行われたマルチ項目のアレルギー検査の結果に基づいて、複数のアレルゲンの混合物に含まれる特定のアレルゲンを抽出して、当該特定のアレルゲンを用いた特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報を生成する。特定項目検査部105は、特定項目抽出部104によって生成された特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報に基づいて、検体に対して特定のアレルゲンを用いた特定項目のアレルギー検査を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院や臨床検査機関などで使用される臨床検査装置、臨床検査方法、臨床検査プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
患者のアレルギーを特定するアレルギー検査には、患者の症状や患者に対する問診などから疑わしいアレルゲンの特定が困難な場合に行われる検査として、マルチアレルゲン検査がある。マルチアレルゲン検査はまず、皮膚炎や鼻炎、喘息などの原因として比較的確率の高いアレルゲンを5種類または6種類混合した混合物を検査項目としたマルチ項目の検査を行う。そして、このマルチ項目の検査にて陽性となった場合に、アレルゲンの混合物に含まれるそれぞれのアレルゲン(シングルアレルゲン)を検査項目とした特異的IgE項目の検査を改めて行う。
【0003】
従来、上記したマルチアレルゲン検査を含む臨床検査の実施において、病院などの臨床検査実施機関では、臨床検査の高効率化や、処理能力向上や、コスト削減などを図ることを目的として、検査体である血液(以下、検体と略す)を検査する検体検査装置や、検査に関するデータを制御する臨床検査情報処理装置などから構成される臨床検査装置が用いられている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−90375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、臨床検査の結果の判断など一部の処理は検査技師などの手作業によって行っていたため、臨床検査情報処理装置などのコンピュータが行う処理に比べて、はるかに多くの時間を要する。そのため、検査の準備から、最終的な結果を判断するまでに1時間以上の時間を要することが問題となっている。
【0006】
そのうえ、上述した従来技術では、検査技師などは、一人の患者について検査を行っている期間中は、次の患者の検体の検査を行うことができない。そのため、患者数が多い大規模な病院などにおいては、複数の大量の患者の臨床検査を行うために多くの時間と労力を要していた。
【0007】
上述したこれらの従来技術での問題は、マルチアレルゲン検査においても同様であり、マルチアレルゲン検査では特に、最初にマルチ項目の検査を行ってから、検査結果を判断するまでに1時間以上の時間を要することから、次に行う特異的IgE項目の検査を当日中に行うことは困難である。そのため、患者はマルチ項目の検査を行った後に、一度帰宅し、後日改めて臨床検査実施機関を訪れ、もう一度採血を行い、特異的IgE項目の検査を受けなければならず、患者に対して時間的、費用的、肉体的、精神的に大きな負担がかかってしまうことが問題となっている。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、マルチアレルゲン検査などの異なる検査が段階的に行われる臨床検査における、検査期間の短縮、患者の負担軽減を図ることができる臨床検査装置、臨床検査方法、臨床検査プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる臨床検査装置は、検体に対して複数のアレルゲンの混合物を用いたマルチ項目のアレルギー検査を行うマルチ項目検査手段と、前記マルチ項目検査手段によって行われた前記マルチ項目のアレルギー検査の結果に基づいて、前記複数のアレルゲンの混合物に含まれる特定のアレルゲンを抽出して、当該特定のアレルゲンを用いた特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報を生成する特定項目抽出手段と、前記特定項目抽出手段によって生成された前記特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報に基づいて、前記検体に対して前記特定のアレルゲンを用いた前記特定項目のアレルギー検査を行う特定項目検査手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明にかかる臨床検査装置は、請求項1に記載の発明において、前記マルチ項目のアレルギー検査を行う際の検査項目の情報と、前記マルチ項目のアレルギー検査の検査項目に関連する前記特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報とを保持する検査項目情報保持手段を備え、前記特定項目抽出手段は、前記検査項目情報保持手段によって保持されている前記マルチ項目のアレルギー検査の検査項目の情報のなかから該当するマルチ項目のアレルギー検査に用いる検査項目の情報を選択し、前記マルチ項目検査手段によって行われた前記マルチ項目のアレルギー検査の結果に対応する前記特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報をさらに選択することにより、特定のアレルゲンを抽出することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明にかかる臨床検査装置は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記特定項目検査手段によって行われた前記特定項目のアレルギー検査の結果に基づいて、マルチアレルゲン検査の結果の判断を行う結果判断手段と、前記結果判断手段によって判断された前記マルチアレルゲン検査の結果に基づいて、前記マルチアレルゲン検査の結果を出力する結果出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明にかかる臨床検査装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の発明において、前記マルチ項目検査手段は、前記マルチ項目のアレルギー検査に用いる前記検体を、前記特定項目検査手段へ搬送する検体搬送手段を備え、前記特定項目検査手段は、前記検体搬送手段によって搬送された前記マルチ項目のアレルギー検査に用いる前記検体を用いて前記特定項目のアレルギー検査を行うことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5の発明にかかる臨床検査装置は、請求項1〜請求項4のいずれか一つに記載の発明において、前記マルチ項目検査手段による前記マルチ項目のアレルギー検査と、前記特定項目検査手段による前記特定項目のアレルギー検査は、同一の検体検査部を用いて行われ、前記マルチ項目検査手段によって行われる前記マルチ項目のアレルギー検査と、前記特定項目検査手段によって行われる前記特定項目のアレルギー検査とはそれぞれ、前記検体検査部を時間的に異なるタイミングで検査することを特徴とする。
【0014】
また、請求項6の発明にかかる臨床検査方法は、検体に対して複数のアレルゲンの混合物を用いたマルチ項目のアレルギー検査を行うマルチ項目検査工程と、前記マルチ項目検査工程によって行われた前記マルチ項目のアレルギー検査の結果に基づいて、前記複数のアレルゲンの混合物に含まれる、特定のアレルゲンを抽出して、当該特定のアレルゲンを用いた特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報を生成する特定項目抽出工程と、前記特定項目抽出工程によって生成された前記特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報に基づいて、前記検体に対して前記特定のアレルゲンを用いた前記特定項目のアレルギー検査を行う特定項目検査工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、請求項7の発明にかかる臨床検査プログラムは、請求項6に記載の臨床検査方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0016】
また、請求項8の発明にかかる記録媒体は、請求項7に記載の臨床検査プログラムを記録したコンピュータに読み取り可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、マルチ項目のアレルギー検査の結果に基づいて、複数のアレルゲンの混合物に含まれる特定のアレルゲンを抽出して、当該特定のアレルゲンを用いた特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報を生成し、特定のアレルゲンを用いた特定項目のアレルギー検査を行うので、患者に対して1回採血するだけで、短時間で効率的にアレルギー検査を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる臨床検査装置、臨床検査方法、臨床検査プログラムおよび記録媒体の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
(実施の形態1)
(臨床検査装置100の機能的構成)
まず、実施の形態1にかかる臨床検査装置100の機能的構成について説明する。図1は、実施の形態1にかかる臨床検査装置の機能的構成を示すブロック図である。臨床検査装置100は依頼取得部101と、検査データ処理部102と、結果出力部107と、検体搬送制御部108とによって構成される。
【0020】
依頼取得部101は、検査技師などによって依頼された検査実施依頼情報を取得する。検査実施依頼情報の取得方法としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどを用いて検査技師などが入力し検査実施依頼情報を取得する方式、バーコードを読み取ることにより検査実施依頼情報を取得する方式、などがある。
【0021】
検査データ処理部102は、マルチ項目検査部103と、特定項目抽出部104と、特定項目検査部105と、結果判断部106とによって構成されている。検査データ処理部102は、依頼取得部101によって取得された検査実施依頼情報に基づいて、臨床検査の実施に関する各機能(マルチ項目検査部103〜結果判断部106)のデータの制御を行う。
【0022】
マルチ項目検査部103は、依頼取得部101により取得した検査実施依頼情報に基づいて、複数のアレルゲンの混合物を用いたマルチ項目の検査を行う。
【0023】
特定項目抽出部104は、マルチ項目検査部103によって行われたマルチ項目の検査の結果に基づいて、マルチ項目の検査で用いた複数のアレルゲンの混合物に含まれる特定のアレルゲンを抽出して、特異的IgE項目の検査の検査項目情報を生成する。
【0024】
特定項目検査部105は、特定項目抽出部104により生成された特異的IgE項目の
検査の検査項目情報に基づいて、特定のアレルゲンを用いた特異的IgE項目の検査を行う。
【0025】
結果判断部106は、マルチ項目検査部103によって行われたマルチ項目の検査の結果および特定項目検査部105によって行われた特異的IgE項目の検査に基づいて、臨床検査の最終的な結果の判断を行う。臨床検査の最終的な検査の判断として、例えば、陽性、陰性などがある。
【0026】
結果出力部107は、結果判断部106によって判断された、臨床検査の最終的な検査の結果に基づいて、臨床検査の最終的な結果を検査技師や医師などが確認できるよう出力する。臨床検査の最終的な結果の出力方法として、例えば、ディスプレイにより出力する方法、プリンタを介して紙により出力する方法、などがある。
【0027】
検体搬送制御部108は、検体受入部109と、検体保持部110と、検体搬送部111とによって構成される。検体搬送制御部108は、依頼取得部101によって取得された検査実施依頼情報などに基づいて、検体の搬送に関する各機能(検体受入部109〜検体搬送部111)の制御を行う。
【0028】
検体受入部109は、臨床検査装置100の外部から検体を取得する。検体の取得方法は、例えば、検査技師などによる架設(設置)や、搬入装置などを用いた機械的な搬入により受け入れる方法などがある。
【0029】
検体保持部110は、検体搬送制御部108によって制御され、検体受入部109により取得した検体を保持する。また、検体保持部110は複数の患者の検体を保持することができる。なお、検体を保持する期間として、例えば、一定の期間保持する、検体ごとに検査が完了するまで保持する、検体保持部110が保持している全ての検体の検査が完了するまで保持するなどがある。
【0030】
検体搬送部111は、検体搬送制御部108によって制御され、検体の検査を行うために検体保持部110から検体を搬出し、検体検査装置500(図2を参照)へ検体を搬入する。また、検体検査装置500から検査が完了した検体を搬出し、検体保持部110へ検体を搬入する。さらに、検体搬送部111は、検体搬送制御部108の制御により、複数の患者の検体を連続して、検体保持部110と検体検査装置500との間を搬送することができる。
【0031】
(臨床検査装置100のハードウェア構成)
次に、実施の形態1にかかる臨床検査装置100のハードウェア構成について説明する。図2は、実施の形態1にかかる臨床検査装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図2において、臨床検査装置100は、臨床検査情報処理装置200と、検体検査装置500とによって構成されている。臨床検査情報処理装置200は、CPU201と、ROM202と、RAM203と、HDD(ハードディスクドライブ)204と、HD(ハードディスク)205と、FDD(フレキシブルディスクドライブ)206と、着脱可能な記録媒体の一例としてのFD(フレキシブルディスク)207と、ディスプレイ208と、I/F(インターフェース)209と、キーボード210と、マウス211と、スキャナ212と、プリンタ213と、を備えている。また、各構成部はバス214によってそれぞれ接続されている。
【0032】
ここで、CPU201は、臨床検査情報処理装置200の全体の制御を司る。ROM202は、ブートプログラムなどのプログラムを記憶している。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。HDD204は、CPU201の制御にしたがってHD205に対するデータのリード/ライトを制御する。HD205は、HDD204の制御で書き込まれたデータを記憶する。
【0033】
FDD206は、CPU201の制御にしたがってFD207に対するデータのリード/ライトを制御する。FD207は、FDD206の制御で書き込まれたデータを記憶したり、FD207に記憶されたデータを臨床検査情報処理装置200に読み取らせたりする。
【0034】
また、着脱可能な記録媒体として、FD207のほか、CD−ROM(CD−R、CD−RW)、MO、DVD(Digital Versatile Disk)、メモリーカードなどであってもよい。ディスプレイ208は、カーソル、アイコンあるいはツールボックスをはじめ、文書、画像、機能情報などのデータを表示する。このディスプレイ208は、例えば、CRT、TFT液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどを採用することができる。
【0035】
I/F209は、通信回線を通じてインターネット220などのネットワークに接続され、このネットワークを介して他の装置に接続される。そして、I/F209は、ネットワークと内部のインターフェースを司り、外部装置からのデータの入出力を制御する。I/F209には、例えばモデムやLANアダプタなどを採用することができる。
【0036】
キーボード210は、文字、数字、各種指示などの入力のためのキーを備え、データの入力を行う。また、タッチパネル式の入力パッドやテンキーなどであってもよい。マウス211は、カーソルの移動や範囲選択、あるいはウィンドウの移動やサイズの変更などを行う。ポインティングデバイスとして同様に機能を備えるものであれば、トラックボールやジョイスティックなどであってもよい。
【0037】
スキャナ212は、画像を光学的に読み取り、臨床検査情報処理装置200内に画像データを取り込む。なお、スキャナ212は、OCR機能を持たせてもよい。また、プリンタ213は、画像データや文書データを印刷する。プリンタ213には、例えば、レーザプリンタやインクジェットプリンタを採用することができる。
【0038】
検体検査装置500は、通信回線を通じてインターネット220などのネットワークに接続され、このネットワークを介して他の装置に接続される。検体検査装置500は、検体の検査を行い、臨床検査情報処理装置200内に検体の検査結果を取り込む。検体検査装置500は、マルチ項目の検査と、特異的IgE項目の検査のいずれかを行うことができる。
【0039】
なお、実施の形態1にかかる臨床検査装置100の機能的構成は、例えば、依頼取得部101はキーボード210や、マウス211や、スキャナ212が、検査データ処理部102と、特定項目抽出部104と、結果判断部106は、CPU201や、ROM202や、RAM203や、HDD204が、マルチ項目検査部103と、特定項目検査部105と、検体搬送制御部108と、検体受入部109と、検体保持部110と、検体搬送部111は、検体検査装置500が、結果出力部107はディスプレイ208やプリンタ213が、それぞれその機能を実現する。
【0040】
(臨床検査装置100の処理の手順)
次に、実施の形態1にかかる臨床検査装置100の処理の手順について説明する。図3は、実施の形態1にかかる臨床検査装置の処理の手順を示すフローチャートである。まず、依頼取得部101により、検査実施依頼情報を取得する(ステップS301)。
【0041】
依頼取得部101による検査実施依頼情報の取得方法としては、例えば、検査技師などがキーボード210、マウス211、タッチパネル(図示省略)を用いて入力した検査実施依頼情報を取得する方式、あらかじめ検査実施依頼情報が格納されているバーコードを読み取ることにより検査実施依頼情報を取得する方式、などがある。また、検査実施依頼情報には、例えば、検体を一意に識別するための情報(以下、検体IDと略す)や、検査項目(マルチアレルゲン検査の検査項目であるシングルアレルゲンの一例については、図4−1を用いて、マルチアレルゲン検査の検査項目であるマルチアレルゲンの一例については、図4−2を用いて後述する)、患者に関する情報(氏名、年齢、性別、血液型など)などがある。取得した検査実施依頼情報は、例えば、臨床検査情報処理装置200の、HD205などに格納される。
【0042】
次に、検体受入部109により、検体を取得する(ステップS302)。取得した検体は、検体保持部110に保持される。ここで、検体は、検体容器に注入された状態で保持される。また、検体容器には、検体IDが含まれているバーコードなどのラベルが貼付されている。さらに、検体受入部109による検体の取得は、複数の患者の検体を同時に取得することもできる。なお、検体検査装置500における検体の保持状態を含む、検体検査装置の構成概要については、図5を用いて後述する。
【0043】
次に、マルチ項目検査部103により、ステップS302にて取得した検体のサンプリングを行う(ステップS303)。
【0044】
次に、マルチ項目検査部103により、ステップS303にてサンプリングされた検体を用いてマルチ項目の検査を行う(ステップS304)。ここで、マルチ項目検査部103により、行われるマルチ項目の検査は、ステップS301で依頼取得部101により取得した検査実施依頼情報に基づいて行われる。なお、ステップS304における検体の検査方法および手順の一例については、図6を用いて後述する。
【0045】
次に、結果判断部106により、ステップS304でマルチ項目検査部103により行われたマルチ項目の検査の結果に基づいて、マルチ項目の検査の結果が陽性か否かを判断する(ステップS305)。なお、マルチ項目および特異的IgE項目の検査の結果の判定基準の値の一例については、図8を用いて後述する。
【0046】
ステップS305で、マルチ項目の検査の結果が陽性と判断した場合は(ステップS305:Yes)、特定項目抽出部104により、特異的IgE項目の検査の検査項目を抽出する(ステップS306)。ここで、特異的IgE項目の検査の検査項目は、ステップS304でマルチ項目検査部103により行われたマルチ項目の検査の結果に基づいて、抽出される。マルチ項目の検査の結果に基づいた特異的IgE項目の検査の検査項目の値の一例については、図7を用いて後述する。
【0047】
次に、特定項目検査部105により、ステップS302にて取得した検体のサンプリングを行う(ステップS307)。
【0048】
次に、特定項目検査部105により、ステップS307にてサンプリングされた検体を用いて特異的IgE項目の検査を行う(ステップS308)。ここで、特定項目検査部105により、行われる特異的IgE項目の検査は、ステップS306で特定項目抽出部104により抽出された特異的IgE項目の検査の検査項目に基づいて行われる。なお、ステップS308における特異的IgE項目の検査の検体の検査方法についての説明も、ステップS304で説明したマルチ項目の検査の場合と同様に、図6を用いて後述する。
【0049】
次に、結果判断部106により、特異的IgE項目の検査の結果を判定する(ステップS309)。そして、結果判断部106により、臨床検査の最終的な検査結果の判定が行われる。臨床検査の最終的な検査結果の判定は、ステップS308で特定項目検査部105により行われた特異的IgE項目の検査の結果と、ステップS304でマルチ項目検査部103により行われたマルチ項目の検査の結果とに基づいて、行われる。なお、ステップS309におけるマルチ項目および特異的IgE項目の検査の結果の判定基準の値の一例については、ステップS305で説明したマルチ項目の検査の場合と同様に、図8を用いて後述する。
【0050】
次に、結果出力部107により、ステップS309で結果判断部106により判断された臨床検査の最終的な検査結果に基づいて、臨床検査の最終的な検査結果情報を出力し(ステップS310)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0051】
ステップS305で、マルチ項目の検査の結果が陽性ではないと判断した場合は(ステップS305:No)、結果出力部107により、臨床検査の最終的な検査結果情報を出力し(ステップS310)、本フローチャートによる処理を終了する。ここで、臨床検査の最終的な検査結果情報は、ステップS304でマルチ項目検査部103により行われたマルチ項目の検査結果に基づいて、出力される。
【0052】
ステップS310において、臨床検査の最終的な検査結果情報の出力方法として、例えば、ディスプレイ208により出力する方法、プリンタ213を介して紙により出力する方法、などがある。なお、具体的な臨床検査の最終的な結果の出力の一例については、図9を用いて後述する。
【0053】
図4−1は、マルチアレルゲン検査の検査項目であるシングルアレルゲンの一例を示す図である。図4−2は、マルチアレルゲン検査の検査項目であるマルチアレルゲンの一例を示す図である。図4−1には、シングルアレルゲン一覧400が含まれる。図4−2には、マルチアレルゲン一覧410が含まれる。シングルアレルゲン一覧400にはアレルゲン分類401aおよび401bとアレルゲンの種類402aおよび402bが保持されている。マルチアレルゲン一覧410にはマルチアレルゲンの種類411と、含まれるアレルゲンの種類412が保持されている。
【0054】
マルチアレルゲン検査においては、まず、マルチアレルゲン一覧410におけるマルチアレルゲンの種類411に示されている6種類のマルチアレルゲン項目の中から、問診や症状などから疑わしいマルチアレルゲンを一つもしくは複数もしくは全部を選択し、選択したマルチアレルゲンを用いた検査を行う。そして、マルチアレルゲンを用いた検査において陽性となった場合、含まれるアレルゲンの種類412に示されている、それぞれのシングルアレルゲンを用いた検査を行う。以上のように、マルチアレルゲン検査は、段階的に検査を行うことで、アレルゲンを特定することができる。
【0055】
例えば、マルチアレルゲン検査において、最初に行われるマルチ項目の検査に、マルチアレルゲンの種類411の中の「イネ科・マルチ」を検査項目として用い、このマルチ項目の検査の結果が陽性となった場合、次に行われる特異的IgE項目の検査に、含まれるアレルゲンの種類412の中の「ハルガヤ」と、「ギョウジシバ」と、「カモガヤ」と、「オオアワガエリ」と、「アシ」のそれぞれを検査項目として用いることが示されている。
【0056】
図5は、検体検査装置の構成概要を示す平面図である。まず、検体検査装置500の構成について説明する。図5において、検体検査装置500は、サンプルテーブル510と、第一反応テーブル511と、第二反応テーブル512と、第一試薬テーブル513と、第二試薬テーブル514と、第一サンプリングプローブ521(図示省略)と、第二サンプリングプローブ522(図示省略)と、第三サンプリングプローブ523(図示省略)と、第四サンプリングプローブ524(図示省略)と、第一撹拌装置531(図示省略)と、レーザ照射装置541(図示省略)との各装置によって構成されている。これら各構成装置の作動は以降説明も含め、全て制御装置(図示省略)によって制御される。
【0057】
サンプルテーブル510は、円形のテーブルであり、制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により、テーブルの中心を軸にして、所定の角度ずつコマ送り状に回転する。サンプルテーブル510は、検体が注入されている検体容器501を円環状に複数保持する。サンプルテーブル510は、テーブルが回転することにより検体容器501を所定の位置へ搬送する。サンプルテーブル510は、前記構成により、複数の患者の検体容器501を同時に保持することができ、連続して検体容器501を所定の位置へ搬送することができる。
【0058】
第一反応テーブル511は、円形のテーブルであり、制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により、テーブルの中心を軸にして、所定の角度ずつコマ送り状に回転する。第一反応テーブル511は、第一反応容器502を円環状に複数保持する。第一反応テーブル511は、テーブルが回転することにより第一反応容器502を所定の位置へ搬送する。第一反応テーブル511は、前記構成により、複数の第一反応容器502を同時に保持することができ、連続して第一反応容器502を所定の位置へ搬送することができる。
【0059】
第二反応テーブル512は、円形のテーブルであり、制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により、テーブルの中心を軸にして、所定の角度ずつコマ送り状に回転する。第二反応テーブル512は、第二反応容器503を円環状に複数保持する。第二反応テーブル512は、テーブルが回転することにより第二反応容器503を所定の位置へ搬送する。第二反応テーブル512は、前記構成により、複数の第二反応容器503を同時に保持することができ、連続して第二反応容器503を所定の位置へ搬送することができる。
【0060】
第一試薬テーブル513は、円形のテーブルであり、制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により、テーブルの中心を軸にして、所定の角度ずつコマ送り状に回転する。第一試薬テーブル513は、第一試薬(ビオチン化アレルゲン)が注入された第一試薬容器504を円環状に複数保持する。第一試薬テーブル513は、テーブルが回転することにより第一試薬容器504を所定の位置へ搬送する。第一試薬テーブル513は、前記構成により、複数のそれぞれ異なる第一試薬が注入された第一試薬容器504を、保持することができる。そして、保持している複数の第一試薬容器504の中から検査毎に適当なものを選択し、搬送することができる。
【0061】
第二試薬テーブル514は、円形のテーブルであり、制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により、テーブルの中心を軸にして、所定の角度ずつコマ送り状に回転する。第二試薬テーブル514は、第二試薬(HRP標識抗ヒトIgE抗体)が注入された第二試薬容器505を円環状に複数保持する。第二試薬テーブル514は、テーブルが回転することにより第二試薬容器505を所定の位置へ搬送する。第二試薬テーブル514は、前記構成により、第二試薬(HRP標識抗ヒトIgE抗体)が注入された第二試薬容器505を複数保持することができる。そして、保持している複数の第二試薬容器505の中から検査毎に適当なものを選択し、搬送することができる。
【0062】
第一サンプリングプローブ521は、アーム521aと、ノズル521bと、アーム駆動軸521cとによって構成されている。アーム521aは、アーム駆動軸521cが制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により回転することにより、アーム駆動軸521cを軸として、所定の角度回転する。また、アーム521aの先端下部には、ノズル521bが装着されている。ノズル521bは制御装置によって制御されるポンプ(図示省略)などの駆動により、ノズル521bの先端から検体を吸入して、ノズル521bの先端から吸入した検体をノズル521bの先端から吐出することができる。
【0063】
第二サンプリングプローブ522は、アーム522aと、ノズル522bと、アーム駆動軸522cとによって構成されている。アーム522aは、アーム駆動軸522cが制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により回転することにより、アーム駆動軸522cを軸として、所定の角度回転する。また、アーム522aの先端下部には、ノズル522bが装着されている。ノズル522bは制御装置によって制御されるポンプ(図示省略)などの駆動により、ノズル522bの先端から第一試薬を吸入して、ノズル522bの先端から吸入した第一試薬をノズル522bの先端から吐出することができる。
【0064】
第三サンプリングプローブ523は、アーム523aと、ノズル523bと、アーム駆動軸523cとによって構成されている。アーム523aは、アーム駆動軸523cが制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により回転することにより、アーム駆動軸523cを軸として、所定の角度回転する。また、アーム523aの先端下部には、ノズル523bが装着されている。ノズル523bは制御装置によって制御されるポンプ(図示省略)などの駆動により、ノズル523bの先端から反応液を吸入して、ノズル523bの先端から吸入した反応液をノズル523bの先端から吐出することができる。
【0065】
第四サンプリングプローブ524は、アーム524aと、ノズル524bと、アーム駆動軸524cとによって構成されている。アーム524aは、アーム駆動軸524cが制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により回転することにより、アーム駆動軸524cを軸として、所定の角度回転する。また、アーム524aの先端下部には、ノズル524bが装着されている。ノズル524bは制御装置によって制御されるポンプ(図示省略)などの駆動により、ノズル524bの先端から第二試薬を吸入して、ノズル524bの先端から吸入した第二試薬をノズル524bの先端から吐出することができる。
【0066】
第一撹拌装置531は、アーム531aと、エアノズル531bとによって構成されている。アーム531aの先端下部には、エアノズル531bが装着されている。第一撹拌装置531は、制御装置によって制御されるポンプ(図示省略)などの駆動により、エアをエアノズル531bの下部に位置する第一反応容器502内の反応液に向けて吐出し、第一反応容器502内の反応液を撹拌することができる。
【0067】
レーザ照射装置541は、レーザ照射装置541aと、レーザ照射部541bとによって構成されている。レーザ照射装置541aの先端下部には、レーザ照射部541bが装着されている。レーザ照射装置541は、レーザ照射部541bからレーザを下部に位置する第二反応容器503内の反応液などに向けて照射し、レーザの反射率を測定することができる。
【0068】
なお、実施の形態1にかかる臨床検査装置100の機能のうち、検体検査装置500によって実現されるものとして、検体受入部109と、検体保持部110と、検体搬送部111のいずれも、サンプルテーブル510がその機能を実現する。
【0069】
次に、検体検査装置500の動作について説明する。まず検体容器501はサンプルテーブル510上のP1に位置する。
【0070】
次に、サンプルテーブル510が回転することにより、検体容器501はサンプルテーブル510上の第一サンプリングプローブ521による吸入が可能な位置P2へ搬送される。
【0071】
次に、第一サンプリングプローブ521が、ノズル521bがサンプルテーブル510上のP2に位置する検体容器501の真上に位置するまで回転する。そして、ノズル521bが検体容器501内の検体へ挿入され、ノズル521bは検体を所定量吸入する。続いて、第一サンプリングプローブ521が、ノズル521bが第一反応テーブル511上のP3に位置する第一反応容器502の真上に位置するまで回転する。そしてノズル521bは検体容器501から吸入した検体を第一反応容器502内へ吐出する。
【0072】
次に、第一反応テーブル511が回転することにより、第一反応容器502は第一反応テーブル511上の第二サンプリングプローブ522による第一試薬の吐出が可能な位置P4へ搬送される。
【0073】
次に、第二サンプリングプローブ522が、ノズル522bが第一試薬テーブル513上のP5に位置する第一試薬容器504の真上に位置するまで回転する。そして、ノズル522bが第一試薬容器504内の第一試薬へ挿入され、ノズル522bは第一試薬を所定量吸入する。続いて、第二サンプリングプローブ522が、ノズル522bが第一反応テーブル511上のP4に位置する第一反応容器502の真上に位置するまで回転する。そしてノズル522bは第一試薬容器504から吸入した第一試薬を第一反応容器502内へ吐出する。このとき、第一反応容器502内では検体と第一試薬とにより反応液が生成される。
【0074】
次に、第一反応テーブル511が回転することにより、第一反応容器502は第一反応テーブル511上の第一撹拌装置531による反応液の撹拌が可能な位置P6へ搬送される。
【0075】
次に、第一反応テーブル511上のP6に位置する第一反応容器502の真上に固定されている、第一撹拌装置531のエアノズル531bから、第一反応容器502内の反応液に向けてエアが吐出されることにより、反応液が撹拌される。
【0076】
次に、第一反応テーブル511が回転することにより、第一反応容器502は第一反応テーブル511上の第三サンプリングプローブ523による反応液の吸入が可能な位置P7へ搬送される。
【0077】
次に、第三サンプリングプローブ523が、ノズル523bが第一反応テーブル511上のP7に位置する第一反応容器502の真上に位置するまで回転する。そして、ノズル523bが第一反応容器502内の反応液へ挿入され、ノズル523bは反応液を所定量吸入する。続いて、第三サンプリングプローブ523が、ノズル523bが第二反応テーブル512上のP8に位置する第二反応容器503の真上に位置するまで回転する。そしてノズル523bは第一反応容器502から吸入した反応液を第二反応容器503内へ吐出する。このとき、第二反応容器503内にはあらかじめビオチン結合タンパク質が担持されたフィルタと吸水材が組み込まれたうえ、ブロック液が注入されており、このビオチン結合タンパク質と、反応液中のビオチン化アレルゲンとが反応することにより特異的IgE抗体複合体がフィルタ上に担持される。
【0078】
次に、第二反応テーブル512が回転することにより、第二反応容器503は第二反応テーブル512上の第四サンプリングプローブ524による第二試薬の吐出が可能な位置P9へ搬送される。
【0079】
次に、第四サンプリングプローブ524が、ノズル524bが第二試薬テーブル514上のP10に位置する第二試薬容器505の真上に位置するまで回転する。そして、ノズル524bが第二試薬容器505内の第二試薬へ挿入され、ノズル524bは第二試薬を所定量吸入する。続いて、第四サンプリングプローブ524が、ノズル524bが第二反応テーブル512上のP9に位置する第二反応容器503の真上に位置するまで回転する。そしてノズル524bは第二試薬容器505から吸入した第二試薬を第二反応容器503内へ吐出する。このとき、第二反応容器503内では特異的IgE抗体複合体と第二試薬とにより免疫複合体が生成される。
【0080】
次に、第二反応テーブル512が回転することにより、第二反応容器503が、第二反応テーブル512上の、洗浄剤分注装置による洗浄剤の分注が可能な位置へ搬送される。そして、洗浄剤分注装置によって、洗浄剤が第二反応容器503へ吐出される。
【0081】
次に、第二反応テーブル512が回転することにより、第二反応容器503が、第二反応テーブル512上の、発色基質液分注装置による発色基質液の分注が可能な位置へ搬送される。そして、発色基質液分注装置によって、発色基質液が第二反応容器503へ吐出される。
【0082】
次に、第二反応テーブル512が回転することにより、免疫複合体などが注入された第二反応容器503が、第二反応テーブル512上のレーザ照射装置541によるレーザの照射が可能な位置P11へ搬送される。
【0083】
そして、第二反応テーブル512上のP11に位置する第二反応容器503上に固定されている、レーザ照射装置541により、レーザが第二反応容器503内のフィルタなどに照射され、レーザの反射率が測定される。
【0084】
以上が、一度の検体の検査における検体検査装置500の動作手順であるが、検体検査装置500では、以上説明した手順の動作が繰り返し行われることで、同一の検体に対する一度目の検査(マルチ項目の検査)および二度目の検査(特異的IgE項目の検査)が行われる。この同一の検体に対する二度の検査が行われる場合でも、一度目に行った検査に用いた検体は、検体容器501とともに、サンプルテーブル510上に保持されており、二度目の検査にも用いられるため、あらためて患者に対して採血を行って、検体を検体検査装置500へ取り込む必要はない。
【0085】
さらに、検体検査装置500では、同一の検体に対する三度目以降の検査が行われる場合(例えば、一度目の検査および二度目の検査で検査の結果の判断が不可能だった場合など)でも、一度目の検査および二度目の検査の検査に用いた検体は、検体容器501とともに、サンプルテーブル510上に保持されており、三度目以降の検査にも用いられるため、あらためて患者に対して採血を行って、検体を検体検査装置500へ取り込む必要はない。
【0086】
また、検体検査装置500は、第一試薬テーブル513上に、検査項目ごとに異なる第一試薬(ビオチン化アレルゲン)を複数種類保持することができるため、検体検査装置500では、第一試薬(ビオチン化アレルゲン)の種類を順次変更し、以上説明した手順の動作を繰り返し行うことで、同一の検体に対して検査項目が異なる検査を連続して行うことができる。
【0087】
また、検体検査装置500は、サンプルテーブル510上に複数の患者の検体を同時に保持することができるため、検体検査装置500では、検査する検体を順次変更し、以上説明した手順の動作を繰り返し行うことで、複数の患者の検体を連続して検査することができる。このように複数の患者の検体を連続して検査する場合においても、検体が注入されている検体容器501には検体IDを含むバーコードが貼付されているため、検体を取り違えることなく、検体毎に異なった検査項目の検査を行うことができる。
【0088】
図6は、検体検査装置500で行われる検体の検査の、検体の検査方法および手順の一例を示す図である。図6において検体の検査方法および手順600は、処理610と、処理620と、処理630と、処理640と、処理650と、処理660とによって構成されている。まず、処理610において、第一反応容器611に検体612とビオチン化アレルゲン613を注入することにより、反応液614内で特異的IgE抗体複合体615が形成される。ここで、ビオチン化アレルゲン613は、マルチ項目の「食物マルチ」の検査用、特異的IgE項目の「卵白」の検査用、特異的IgE項目の「牛乳」の検査用などのように検査項目ごとに異なる種類のものを用いる。
【0089】
次に、処理620において、ビオチン結合タンパク質が担持されたフィルタ624と吸水材622が組み込まれた第二反応容器621にブロック液623を注入し、さらに特異的IgE抗体複合体615が含まれた反応液614を注入する。その結果、特異的IgE抗体複合体615が、ビオチン結合タンパク質が担持されたフィルタ624に捕捉される。
【0090】
次に、処理630において、第二反応容器621へHRP標識抗ヒトIgE抗体631を注入することにより、特異的IgE抗体複合体615と、HRP標識抗ヒトIgE抗体631とによって、免疫複合体632が形成される。
【0091】
次に、処理640において、第二反応容器621へ洗浄剤641を注入することにより、未反応の不要なアレルゲンなどが除去される。
【0092】
次に、処理650において、第二反応容器621へ発色基質液651を注入することにより、発色基質液651が、フィルタ624に捕捉された免疫複合体632に含まれる酵素と反応し、発色する。
【0093】
次に、処理660において、第二反応容器621内のフィルタ624にレーザ661を照射することにより、フィルタ624からの反射率に基づいてIgE抗体濃度が測定される。
【0094】
マルチアレルゲン検査では、以上の手順を用いて、最初にマルチ項目の検査を行う。そして、マルチ項目の検査と同じように、以上の手順を用いて、特異的IgE項目の検査を行うことにより、検体のアレルゲンを特定することができる。なお、従来では一度の検体の検査に1時間程度の時間を要していたが、検査で用いられる試薬や検体検査装置の進歩もあり、現在では10〜15分程度となっている。
【0095】
図7は、マルチ項目の検査の結果に基づいた特異的IgE項目の検査の検査項目の値の一例を示す図である。表700は、マルチ項目の検査の検査項目701と、特異的IgE項目の検査の検査項目702とを保持している。この表700は、例えば、臨床検査情報処理装置200のHD205上に格納されており、特定項目抽出部104により利用される。例えば、マルチ項目の検査の検査項目701が「食物マルチ」の場合、特異的IgE項目の検査の検査項目702は「ランパク」と、「ミルク」と、「コムギ」と、「ピーナッツ」と、「ダイズ」とが選択されることが示されている。
【0096】
図8は、マルチ項目および特異的IgE項目の検査の結果の判定基準の値の一例を示す図である。表800は、IgE抗体濃度801と、判定802とを保持している。この表800は、例えば、臨床検査情報処理装置200のHD205上に格納されており、結果判断部106により利用される。
【0097】
例えば、IgE抗体濃度801が「0.34(UA/ml)以下」の場合、結果判断部106は「陰性」と判断することが示されている。また、IgE抗体濃度801が「0.35(UA/ml)以上0.69(UA/ml)以下」の場合、結果判断部106は「軽度陽性」と判断することが示されている。そして、IgE抗体濃度801が「3.50(UA/ml)以上17.49(UA/ml)以下」の場合、結果判断部106は「中等度陽性」と判断することが示されている。
【0098】
図9は、臨床検査の最終的な結果の出力の一例を示す図である。図9では、マルチアレルゲン検査の結果の一覧を臨床検査情報処理装置200のディスプレイ208(図2参照)に表示している一例を示している。臨床検査の最終的な結果の出力は、例えば、臨床検査情報処理装置200とネットワークを介して接続されたPC(パーソナル・コンピュータ)のディスプレイに表示してもよい。
【0099】
図9において、画面901には患者の個人に関する情報の例として、患者ID904と、氏名905と、年齢906と、性別907とを表示していることを示している。また、検査に関する情報の例として検査日903と、状態908と、結果909と、項目910を表示していることを示している。またボタンとして、詳細画面を表示するボタン911とプリントアウトボタン912と検索画面を表示するボタン913とトップメニュー画面を表示するボタン914とを表示し、ユーザによる選択ができることを示している。
【0100】
例えば、患者ID904が「1234M」の患者の場合、氏名905は「ヤマダ タロウ」であり、検査の進行状況を示す、状態908は「完了」であり、検査の結果を示す、結果909は「陽性」であり、項目910は「卵白」であることを示している。
【0101】
例えば、検査結果の詳細や患者の個人に関する情報の詳細を知りたい場合は、詳細画面へボタン911を押下することで、検査結果の詳細や患者の個人に関する情報の詳細画面を表示することができる。また、画面901に表示されているそれぞれの情報ごとにソートすることができる。例えば、検査結果が「陽性」である検査の結果情報から優先して表示することができる。
【0102】
以上のように最終的な結果を出力することで、検査技師もしくは医師などの技量によらず、一貫した検査結果の判断ができ、判断ミスを未然に防ぐことができる。また、検査技師もしくは医師など検査結果として知りたい必要な情報のみを表示することができるため、情報の氾濫による、検査技師もしくは医師などの作業効率の低下や混乱を防止することができる。さらに、検査実施中および検査実施直後に臨床検査装置を扱える場所にいなくとも、例えば、後日まとめて複数の検査結果を確認することなどができるため、検査技師もしくは医師などは、臨床検査に関する作業の時間的な拘束を受けることなく、時間を有効に利用することができる。
【0103】
実施の形態1にかかる臨床検査装置100において、マルチ項目検査部103は、ステップS304で複数の異なったマルチ項目の検査を同時に並列して行うこともできる。例えば、どのマルチ項目の検査を行えばよいのか全く見当もつかない場合は、全てのマルチ項目の検査を同時に並列して行うことで、検査の実施時間は一つのマルチ項目の検査を行った場合と変わらずに、全てのマルチ項目の検査を行い、検査の結果を生成することができる。
【0104】
また、実施の形態1にかかる臨床検査装置100において、特定項目検査部105は、ステップS308で複数の異なった特異的IgE項目の検査を同時に並列して行うこともできる。複数の異なった項目の検査が必須となる特異的IgE項目の検査でも、複数の異なった特異的IgE項目の検査を同時に並列して行うことで、検査の実施時間は一つの特異的IgE項目の検査を行った場合と変わらずに、全ての特異的IgE項目の検査を行い、検査の結果を生成することができる。
【0105】
また、実施の形態1にかかる臨床検査装置100は、以上説明したステップS301〜ステップS310の手順による臨床検査を連続して行うことができる。従来は検査技師などの手作業により一人の患者の検体の検査の結果を判断するまで、次の患者の検体の検査を開始することができなかったが、臨床検査装置100は複数の患者の検体を、検査技師などの検査の結果の判断を待たずに、連続して検査することができる。
【0106】
このように、実施の形態1にかかる臨床検査装置100によれば、マルチ項目のアレルギー検査の結果に基づいて、複数のアレルゲンの混合物に含まれる特定のアレルゲンを抽出して、当該特定のアレルゲンを用いた特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報を生成し、特定のアレルゲンを用いた特定項目のアレルギー検査を行うので、約30分という短時間で効率的に行うことができる。そのうえ、マルチ項目の検査に用いた検体を特異的IgE項目の検査を行うまで保持し、特異的IgE項目の検査に用いることで、患者の臨床検査機関への来訪および患者への採血を一度で済ますことができ、患者の負担を軽減することができる。
【0107】
さらに、実施の形態1にかかる臨床検査装置100によれば、マルチアレルゲン検査において、検体保持部110により複数の患者の検体を保持することができ、また、検体搬送部111により、複数の患者の検体を連続して検体検査装置500に搬送することができ、さらに、検査データ処理部102により、複数の患者の検体のデータを連続して処理することができる。この結果、患者数が多い大規模な病院などにおいても、複数の患者のマルチアレルゲン検査を連続して短時間で行うことができる。
【0108】
(実施の形態2)
(臨床検査装置100のハードウェア構成)
次に、実施の形態2にかかる臨床検査装置100のハードウェア構成について説明する。実施の形態2にかかる、臨床検査装置100の機能的構成は、前述した実施の形態1にかかる臨床検査装置100と同一の構成のため、説明を省略する。図10は、実施の形態2にかかる臨床検査装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図10において、臨床検査装置100は、実施の形態1によって説明した臨床検査装置100と同一の構成に加えて、検体搬送装置1100を備えている。
【0109】
検体搬送装置1100は、通信回線を通じてインターネット220などのネットワークに接続され、このネットワークを介して他の装置に接続される。検体搬送装置1100は、大量の患者の検体を保持することができる。検体搬送装置1100は、保持している大量の患者の検体を連続して、検体検査装置500へ検体を搬送することができる。
【0110】
なお、実施の形態2にかかる臨床検査装置100の機能的構成は、例えば、依頼取得部101はキーボード210や、マウス211や、スキャナ212が、検査データ処理部102と、特定項目抽出部104と、結果判断部106は、CPU201や、ROM202や、RAM203や、HDD204が、マルチ項目検査部103と、特定項目検査部105と、検体搬送制御部108は、検体検査装置500が、検体受入部109と、検体保持部110と、検体搬送部111は、検体搬送装置1100が、結果出力部107はディスプレイ208やプリンタ213が、それぞれその機能を実現する。
【0111】
(臨床検査装置100の処理の手順)
次に、実施の形態2にかかる臨床検査装置100の処理の手順について説明する。実施の形態2の臨床検査装置100の構成は、実施の形態1の臨床検査装置100の構成に加え、検体搬送装置1100が備えられている。実施の形態2にかかる臨床検査装置100の処理の手順は、実施の形態1(図3参照)と同じである。そして、実施の形態1の図5にて前述した検体検査装置500に代えて、検体検査装置500と検体搬送装置1100とを用いている。
【0112】
図11は、検体検査装置および検体搬送装置の構成概要を示す平面図である。まず、検体搬送装置1100の構成について説明する。図11において、検体搬送装置1100は、検体搬送コンベヤ1110と、検体投入機1120と、二次検査用バッファ1130と、検体回収機1140とによって構成されている。これら各構成装置の作動は以降の説明も含め、全て制御装置(図示省略)によって制御される。
【0113】
検体搬送コンベヤ1110は、直線状のコンベヤと曲線状のコンベヤの組み合わせによる環状のコンベヤであり、制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により、一定の方向へ進行する。検体搬送コンベヤ1110が一定方向に進行することにより、検体搬送コンベヤ1110上の検体が注入されている検体容器1101を前記各構成装置により利用可能な所定の位置へ搬送する。
【0114】
検体投入機1120は、検体投入ラック1121と検体投入クレーン1122(図示省略)とによって構成される。検体投入ラック1121は、検体が注入されている検体容器1101を網目状に複数保持する。検体投入クレーン1122は、前後移動レールa1122aと、前後移動レールb1122bと、左右移動レール1122cと、アーム1122dとによって構成されている。前後移動レールa1122aと、前後移動レールb1122bは、検体投入ラック1121の左右に平行して固定配置される。左右移動レール1122cは、前後移動レールa1122aと、前後移動レールb1122bとの間に垂直に配置され、左右移動レール1122cの両端は、前後移動レールa1122aと、前後移動レールb1122bとに前後移動可能なように配置される。アーム1122dは、左右移動レール1122cの下部に左右移動可能なように配置され、図示しないが、昇降可能であり、検体投入ラック1121上に配置された検体容器1101を吊持することができる。検体投入機1120は、上記構成により、検体投入ラック1121に配置された複数の検体容器1101を順次検体搬送コンベヤ1110上に搬送する。
【0115】
二次検査用バッファ1130は、二次検査用検体搬送コンベヤ1131によって構成されている。二次検査用検体搬送コンベヤ1131は、直線状のコンベヤと曲線状のコンベヤの組み合わせによる環状のコンベヤであり、制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により、一定の方向へ進行する。二次検査用検体搬送コンベヤ1131は、検体搬送コンベヤ1110と接続されており、コンベヤが一定方向に進行することにより、コンベヤ上の検体容器1101を検体搬送コンベヤ1110上の所定の位置へ搬送する。二次検査用バッファ1130は、上記構成により、検体検査装置500により一度検査が行われた検体を保持し、検体搬送コンベヤ1110と組み合わせて使用することにより、二度目以降の検査を行うために、検体を検体検査装置500へ搬送することができる。
【0116】
検体回収機1140は、検体回収ラック1141と検体回収クレーン1142(図示省略)とによって構成される。検体回収ラック1141は、検体が注入されているかもしくは空の検体容器1101を網目状に複数保持する。検体回収クレーン1142は、前後移動レールa1142aと、前後移動レールb1142bと、左右移動レール1142cと、アーム1142dとによって構成されている。前後移動レールa1142aと、前後移動レールb1142bは、検体回収ラック1141の左右に平行して固定配置される。左右移動レール1142cは、前後移動レールa1142aと、前後移動レールb1142bとの間に垂直に配置され、左右移動レール1142cの両端は、前後移動レールa1142aと、前後移動レールb1142bとに前後移動可能なように配置される。アーム1142dは、左右移動レール1142cの下部に左右移動可能なように配置され、図示しないが、昇降可能であり、検体容器1101を検体回収ラック1141上に配置するために吊持することができる。検体回収機1140は、上記構成により、検体検査装置500による検査が完了し、検体搬送コンベヤ1110上の所定の位置に搬送された検体容器1101を検体回収ラック1141へ順次配置する。
【0117】
次に、検体検査装置500の構成について説明する。図11において、検体検査装置500は、第一反応テーブル511と、第二反応テーブル512と、第一試薬テーブル513と、第二試薬テーブル514と、第一サンプリングプローブ521(図示省略)と、第二サンプリングプローブ522(図示省略)と、第三サンプリングプローブ523(図示省略)と、第四サンプリングプローブ524(図示省略)と、第一撹拌装置531(図示省略)と、レーザ照射装置541(図示省略)との各装置によって構成されている。これら各構成装置の作動は以降の説明も含め、全て制御装置(図示省略)によって制御される。
【0118】
第一反応テーブル511は、円形のテーブルであり、制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により、テーブルの中心を軸にして、所定の角度ずつコマ送り状に回転する。第一反応テーブル511は、第一反応容器502を円環状に複数保持する。第一反応テーブル511は、テーブルが回転することにより第一反応容器502を所定の位置へ搬送する。第一反応テーブル511は、前記構成により、複数の第一反応容器502を同時に保持することができ、連続して第一反応容器502を所定の位置へ搬送することができる。
【0119】
第二反応テーブル512は、円形のテーブルであり、制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により、テーブルの中心を軸にして、所定の角度ずつコマ送り状に回転する。第二反応テーブル512は、第二反応容器503を円環状に複数保持する。第二反応テーブル512は、テーブルが回転することにより第二反応容器503を所定の位置へ搬送する。第二反応テーブル512は、テーブルが回転することにより第二反応容器503を所定の位置へ搬送する。第二反応テーブル512は、前記構成により、複数の第二反応容器503を同時に保持することができ、連続して第二反応容器503を所定の位置へ搬送することができる。
【0120】
第一試薬テーブル513は、円形のテーブルであり、制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により、テーブルの中心を軸にして、所定の角度ずつコマ送り状に回転する。第一試薬テーブル513は、第一試薬(ビオチン化アレルゲン)が注入された第一試薬容器504を円環状に複数保持する。第一試薬テーブル513は、テーブルが回転することにより第一試薬容器504を所定の位置へ搬送する。第一試薬テーブル513は、前記構成により、複数のそれぞれ異なる第一試薬が注入された第一試薬容器504を、保持することができる。そして、保持している複数の第一試薬容器504の中から検査毎に適当なものを選択し、搬送することができる。
【0121】
第二試薬テーブル514は、円形のテーブルであり、制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により、テーブルの中心を軸にして、所定の角度ずつコマ送り状に回転する。第二試薬テーブル514は、第二試薬(HRP標識抗ヒトIgE抗体)が注入された第二試薬容器505を円環状に複数保持する。第二試薬テーブル514は、テーブルが回転することにより第二試薬容器505を所定の位置へ搬送する。第二試薬テーブル514は、前記構成により、第二試薬(HRP標識抗ヒトIgE抗体)が注入された第二試薬容器505を複数保持することができる。そして、保持している複数の第二試薬容器505の中から検査毎に適当なものを選択し、搬送することができる。
【0122】
第一サンプリングプローブ521は、アーム521aと、ノズル521bと、アーム駆動軸521cとによって構成されている。アーム521aは、アーム駆動軸521cが制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により回転することにより、アーム駆動軸521cを軸として、所定の角度回転する。また、アーム521aの先端下部には、ノズル521bが装着されている。ノズル521bは制御装置によって制御されるポンプ(図示省略)などの駆動により、ノズル521bの先端から検体を吸入して、ノズル521bの先端から吸入した検体をノズル521bの先端から吐出することができる。
【0123】
第二サンプリングプローブ522は、アーム522aと、ノズル522bと、アーム駆動軸522cとによって構成されている。アーム522aは、アーム駆動軸522cが制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により回転することにより、アーム駆動軸522cを軸として、所定の角度回転する。また、アーム522aの先端下部には、ノズル522bが装着されている。ノズル522bは制御装置によって制御されるポンプ(図示省略)などの駆動により、ノズル522bの先端から第一試薬を吸入して、ノズル522bの先端から吸入した第一試薬をノズル522bの先端から吐出することができる。
【0124】
第三サンプリングプローブ523は、アーム523aと、ノズル523bと、アーム駆動軸523cとによって構成されている。アーム523aは、アーム駆動軸523cが制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により回転することにより、アーム駆動軸523cを軸として、所定の角度回転する。また、アーム523aの先端下部には、ノズル523bが装着されている。ノズル523bは制御装置によって制御されるポンプ(図示省略)などの駆動により、ノズル523bの先端から反応液を吸入して、ノズル523bの先端から吸入した反応液をノズル523bの先端から吐出することができる。
【0125】
第四サンプリングプローブ524は、アーム524aと、ノズル524bと、アーム駆動軸524cとによって構成されている。アーム524aは、アーム駆動軸524cが制御装置によって制御されるモーター(図示省略)などの駆動により回転することにより、アーム駆動軸524cを軸として、所定の角度回転する。また、アーム524aの先端下部には、ノズル524bが装着されている。ノズル524bは制御装置によって制御されるポンプ(図示省略)などの駆動により、ノズル524bの先端から第二試薬を吸入して、ノズル524bの先端から吸入した第二試薬をノズル524bの先端から吐出することができる。
【0126】
第一撹拌装置531は、アーム531aと、エアノズル531bとによって構成されている。アーム531aの先端下部には、エアノズル531bが装着されている。第一撹拌装置531は、制御装置によって制御されるポンプ(図示省略)などの駆動により、エアをエアノズル531bの下部に位置する第一反応容器502内の反応液に向けて吐出し、第一反応容器502内の反応液を撹拌することができる。
【0127】
レーザ照射装置541は、レーザ照射装置541aと、レーザ照射部541bとによって構成されている。レーザ照射装置541aの先端下部には、レーザ照射部541bが装着されている。レーザ照射装置541は、レーザ照射部541bからレーザを下部に位置する第二反応容器503内の反応液などに向けて照射し、レーザの反射率を測定することができる。
【0128】
なお、実施の形態2にかかる臨床検査装置100の機能のうち、検体検査装置500および検体搬送装置1100によって実現されるものとして、検体受入部109は、検体投入機1120が、検体保持部110は、二次検査用バッファ1130が、検体搬送部111は、検体搬送コンベヤ1110がそれぞれその機能を実現する。
【0129】
次に、検体検査装置500および検体搬送装置1100の動作について説明する。まず検体容器1101は検体投入ラック1121上のP111に位置する。なお、検体容器1101は、検体投入クレーン1122による吊持が可能な位置であれば、検体投入ラック1121上のどの位置に位置していてもよい。
【0130】
次に、検体投入クレーン1122より、検体投入クレーン1122のアーム1122dが、P111上に位置する検体容器1101の真上の位置まで前後左右に移動する。そして、アーム1122dが降下し、検体容器1101を吊持する。さらに、検体投入クレーン1122より、検体投入クレーン1122のアーム1122dが、検体搬送コンベヤ1110の位置P112上まで前後左右に移動する。そのうえ、アーム1122dが降下し、検体容器1101を開放することで、検体搬送コンベヤ1110の位置P112上に検体容器1101を配置する。
【0131】
次に、検体搬送コンベヤ1110のコンベヤが進行することにより、検体搬送コンベヤ1110の位置P112上に配置されている検体容器1101を検体搬送コンベヤ1110の位置P113まで搬送する。
【0132】
次に、検体検査装置500の第一サンプリングプローブ521が、ノズル521bが検体搬送コンベヤ1110上のP113に位置する検体容器1101の真上に位置するまで回転する。そして、ノズル521bが検体容器1101内の検体へ挿入され、ノズル521bは検体を所定量吸入する。続いて、第一サンプリングプローブ521が、ノズル521bが第一反応テーブル511上のP3に位置する第一反応容器502の真上に位置するまで回転する。そしてノズル521bは検体容器1101内から吸入した検体を第一反応容器502内へ吐出する。
【0133】
次に、第一反応テーブル511が回転することにより、第一反応容器502は第一反応テーブル511上の第二サンプリングプローブ522による第一試薬の吐出が可能な位置P4へ搬送される。
【0134】
次に、第二サンプリングプローブ522が、ノズル522bが第一試薬テーブル513上のP5に位置する第一試薬容器504の真上に位置するまで回転する。そして、ノズル522bが第一試薬容器504内の第一試薬へ挿入され、ノズル522bは第一試薬を所定量吸入する。続いて、第二サンプリングプローブ522が、ノズル522bが第一反応テーブル511上のP4に位置する第一反応容器502の真上に位置するまで回転する。そしてノズル522bは第一試薬容器504から吸入した第一試薬を第一反応容器502内へ吐出する。このとき、第一反応容器502内では検体と第一試薬とにより反応液が生成される。
【0135】
次に、第一反応テーブル511が回転することにより、第一反応容器502は第一反応テーブル511上の第一撹拌装置531による反応液の撹拌が可能な位置P6へ搬送される。
【0136】
次に、第一反応テーブル511上のP6に位置する第一反応容器502の真上に固定されている、第一撹拌装置531のエアノズル531bから、第一反応容器502内の反応液に向けてエアが吐出されることにより、反応液が撹拌される。
【0137】
次に、第一反応テーブル511が回転することにより、第一反応容器502は第一反応テーブル511上の第三サンプリングプローブ523による反応液の吸入が可能な位置P7へ搬送される。
【0138】
次に、第三サンプリングプローブ523が、ノズル523bが第一反応テーブル511上のP7に位置する第一反応容器502の真上に位置するまで回転する。そして、ノズル523bが第一反応容器502内の反応液へ挿入され、ノズル523bは反応液を所定量吸入する。続いて、第三サンプリングプローブ523が、ノズル523bが第二反応テーブル512上のP8に位置する第二反応容器503の真上に位置するまで回転する。そしてノズル523bは第一反応容器502から吸入した反応液を第二反応容器503内へ吐出する。このとき、第二反応容器503内にはあらかじめビオチン結合タンパク質が担持されたフィルタと吸水材が組み込まれたうえ、ブロック液が注入されており、このビオチン結合タンパク質と、反応液中のビオチン化アレルゲンとが反応することにより特異的IgE抗体複合体がフィルタ上に担持される。
【0139】
次に、第二反応テーブル512が回転することにより、第二反応容器503は第二反応テーブル512上の第四サンプリングプローブ524による第二試薬の吐出が可能な位置P9へ搬送される。
【0140】
次に、第四サンプリングプローブ524が、ノズル524bが第二試薬テーブル514上のP10に位置する第二試薬容器505の真上に位置するまで回転する。そして、ノズル524bが第二試薬容器505内の第二試薬へ挿入され、ノズル524bは第二試薬を所定量吸入する。続いて、第四サンプリングプローブ524が、ノズル524bが第二反応テーブル512上のP9に位置する第二反応容器503の真上に位置するまで回転する。そしてノズル524bは第二試薬容器505から吸入した第二試薬を第二反応容器503内へ吐出する。このとき、第二反応容器503内では特異的IgE抗体複合体と第二試薬とにより免疫複合体が生成される。
【0141】
次に、第二反応テーブル512が回転することにより、第二反応容器503が、第二反応テーブル512上の、洗浄剤分注装置による洗浄剤の分注が可能な位置へ搬送される。そして、洗浄剤分注装置によって、洗浄剤が第二反応容器503へ吐出される。
【0142】
次に、第二反応テーブル512が回転することにより、第二反応容器503が、第二反応テーブル512上の、発色基質液分注装置による発色基質液の分注が可能な位置へ搬送される。そして、発色基質液分注装置によって、発色基質液が第二反応容器503へ吐出される。
【0143】
次に、第二反応テーブル512が回転することにより、免疫複合体などが注入された第二反応容器503が、第二反応テーブル512上のレーザ照射装置541によるレーザの照射が可能な位置P11へ搬送される。
【0144】
そして、第二反応テーブル512上のP11に位置する第二反応容器503上に固定されている、レーザ照射装置541により、レーザが第二反応容器503内のフィルタなどに照射され、レーザの反射率が測定される。
【0145】
次に、検体搬送コンベヤ1110上の位置P113に配置されている検体容器1101は、検体検査装置500の第一サンプリングプローブ521によって検体の吸入が行われた後に、検体搬送コンベヤ1110のコンベヤが進行することにより、二次検査用バッファ1130へ搬送される。そして、検体搬送コンベヤ1110のコンベヤに接続されている二次検査用検体搬送コンベヤ1131のコンベヤが進行することにより、検体容器1101は、二次検査用検体搬送コンベヤ1131上の位置P114まで搬送される。
【0146】
次に、二次検査用検体搬送コンベヤ1131上の位置P114まで搬送された、検体容器1101は、二度目の検査に用いられるまで、二次検査用検体搬送コンベヤ1131上に保持される。二度目の検査が行われるとき、検体容器1101は、二次検査用検体搬送コンベヤ1131のコンベヤが進行することにより、検体搬送コンベヤ1110へ搬送される。そして、検体搬送コンベヤ1110のコンベヤが進行することにより、検体搬送コンベヤ1110の位置P113へ搬送される。そして、二度目の検査を行うため、ふたたび、検体検査装置500の第一サンプリングプローブ521によって検体の吸入が行われる。
【0147】
次に、検体搬送コンベヤ1110上の位置P113に配置されている検体容器1101は、検体検査装置500の第一サンプリングプローブ521によって、二度目の検査のための検体の吸入が行われた後に、検体搬送コンベヤ1110のコンベヤが進行することにより、検体搬送コンベヤ1110上の位置P115へ搬送される。
【0148】
次に、検体回収クレーン1142より、検体回収クレーン1142のアーム1142dが、検体搬送コンベヤ1110上の位置P115上に位置する検体容器1101の真上の位置まで前後左右に移動する。そして、アーム1142dが降下し、検体容器1101を吊持する。さらに、検体回収クレーン1142により、検体回収クレーン1142のアーム1142dが、検体回収ラック1141上の位置P116上まで前後左右に移動する。そのうえ、アーム1142dが降下し、検体容器1101を開放することで、検体回収ラック1141上の位置P116に検体容器1101を配置する。
【0149】
以上が、マルチアレルゲン検査における検体検査装置500および検体搬送装置1100の動作手順である。検体検査装置500および検体搬送装置1100では、以上説明した手順により、同一の検体に対する一度目の検査(マルチ項目の検査)および二度目の検査(特異的IgE項目の検査)が行われる。この同一の検体に対する二度の検査が行われる場合でも、一度目の検査に用いた検体は、検体容器1101とともに、二次検査用バッファ1130に保持されており、二度目の検査にも用いられるため、あらためて患者に対して採血を行って、検体を検体搬送装置1100へ取り込む必要はない。
【0150】
さらに、検体検査装置500および検体搬送装置1100では、同一の検体に対する三度目以降の検査が行われる場合(例えば、一度目の検査および二度目の検査で検査の結果の判断が不可能だった場合など)でも、一度目の検査および二度目の検査に用いた検体は、検体容器1101とともに、二次検査用バッファ1130に保持されており、三度目以降の検査にも用いられるため、あらためて患者に対して採血を行って、検体を検体搬送装置1100へ取り込む必要はない。
【0151】
また、検体検査装置500は、第一試薬テーブル513上に、検査項目ごとに異なる第一試薬(ビオチン化アレルゲン)を複数種類保持することができるため、検体検査装置500および検体搬送装置1100では、第一試薬(ビオチン化アレルゲン)の種類を順次変更し、以上説明した手順の動作を繰り返し行うことで、同一の検体に対して検査項目が異なる検査を連続して行うことができる。
【0152】
また、検体搬送装置1100は、検体投入ラック1121上に大量の患者の検体を同時に保持することができるため、検体検査装置500および検体搬送装置1100では、検査する検体を順次変更し、以上説明した手順の動作を繰り返し行うことで、大量の患者の検体を連続して検査することができる。このように大量の患者の検体を連続して検査する場合においても、検体が注入されている検体容器1101には検体IDを含むバーコードが貼付されているため、検体を取り違えることなく、検体毎に異なった検査項目の検査を行うことができる。
【0153】
以上、説明したように、実施の形態2にかかる臨床検査装置100によれば、検体搬送装置1100は、実施の形態1における検体検査装置500が保持可能な患者の検体の数(例えば、30本)より、さらに大量(例えば、300本)の患者の検体を検体投入ラック1121上に同時に保持することができる。そのため、検体検査装置500および検体搬送装置1100では、検査する検体を順次変更し、以上説明した手順の動作を繰り返し行うことで、大量の患者の検体を連続して検査することができる。
【0154】
なお、以上説明した臨床検査方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0155】
以上のように、本発明にかかる臨床検査装置、臨床検査方法、臨床検査プログラムおよび記録媒体は、病院や臨床検査機関などで行われる臨床検査に有用であり、特に、異なる検査を行う、マルチアレルゲン検査などの臨床検査に適している。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】実施の形態1にかかる臨床検査装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる臨床検査装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1にかかる臨床検査装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【図4−1】マルチアレルゲン検査の検査項目であるシングルアレルゲンの一例を示す図である。
【図4−2】マルチアレルゲン検査の検査項目であるマルチアレルゲンの一例を示す図である。
【図5】検体検査装置の構成概要を示す平面図である。
【図6】検体の検査方法および手順の一例を示す図である。
【図7】マルチ項目の検査の結果に基づいた特異的IgE項目の検査の検査項目の値の一例を示す図である。
【図8】マルチ項目および特異的IgE項目の検査の結果の判定基準の値の一例を示す図である。
【図9】臨床検査の最終的な結果の出力の一例を示す図である。
【図10】実施の形態2にかかる臨床検査装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図11】検体検査装置および検体搬送装置の構成概要を示す平面図である。
【符号の説明】
【0157】
100 臨床検査装置
101 依頼取得部
102 検査データ処理部
103 マルチ項目検査部
104 特定項目抽出部
105 特定項目検査部
106 結果判断部
107 結果出力部
108 検体搬送制御部
109 検体受入部
110 検体保持部
111 検体搬送部
200 臨床検査情報処理装置
500 検体検査装置
1100 検体搬送装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体に対して複数のアレルゲンの混合物を用いたマルチ項目のアレルギー検査を行うマルチ項目検査手段と、
前記マルチ項目検査手段によって行われた前記マルチ項目のアレルギー検査の結果に基づいて、前記複数のアレルゲンの混合物に含まれる特定のアレルゲンを抽出して、当該特定のアレルゲンを用いた特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報を生成する特定項目抽出手段と、
前記特定項目抽出手段によって生成された前記特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報に基づいて、前記検体に対して前記特定のアレルゲンを用いた前記特定項目のアレルギー検査を行う特定項目検査手段と、
を備えたことを特徴とする臨床検査装置。
【請求項2】
前記マルチ項目のアレルギー検査を行う際の検査項目の情報と、前記マルチ項目のアレルギー検査の検査項目に関連する前記特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報とを保持する検査項目情報保持手段を備え、
前記特定項目抽出手段は、前記検査項目情報保持手段によって保持されている前記マルチ項目のアレルギー検査の検査項目の情報のなかから該当するマルチ項目のアレルギー検査に用いる検査項目の情報を選択し、前記マルチ項目検査手段によって行われた前記マルチ項目のアレルギー検査の結果に対応する前記特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報をさらに選択することにより、特定のアレルゲンを抽出することを特徴とする請求項1に記載の臨床検査装置。
【請求項3】
前記特定項目検査手段によって行われた前記特定項目のアレルギー検査の結果に基づいて、マルチアレルゲン検査の結果の判断を行う結果判断手段と、
前記結果判断手段によって判断された前記マルチアレルゲン検査の結果に基づいて、前記マルチアレルゲン検査の結果を出力する結果出力手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の臨床検査装置。
【請求項4】
前記マルチ項目検査手段は、前記マルチ項目のアレルギー検査に用いる前記検体を、前記特定項目検査手段へ搬送する検体搬送手段を備え、
前記特定項目検査手段は、前記検体搬送手段によって搬送された前記マルチ項目のアレルギー検査に用いる前記検体を用いて前記特定項目のアレルギー検査を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の臨床検査装置。
【請求項5】
前記マルチ項目検査手段による前記マルチ項目のアレルギー検査と、前記特定項目検査手段による前記特定項目のアレルギー検査は、同一の検体検査部を用いて行われ、
前記マルチ項目検査手段によって行われる前記マルチ項目のアレルギー検査と、前記特定項目検査手段によって行われる前記特定項目のアレルギー検査とはそれぞれ、前記検体検査部を時間的に異なるタイミングで検査することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一つに記載の臨床検査装置。
【請求項6】
検体に対して複数のアレルゲンの混合物を用いたマルチ項目のアレルギー検査を行うマルチ項目検査工程と、
前記マルチ項目検査工程によって行われた前記マルチ項目のアレルギー検査の結果に基づいて、前記複数のアレルゲンの混合物に含まれる、特定のアレルゲンを抽出して、当該特定のアレルゲンを用いた特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報を生成する特定項目抽出工程と、
前記特定項目抽出工程によって生成された前記特定項目のアレルギー検査の検査項目の情報に基づいて、前記検体に対して前記特定のアレルゲンを用いた前記特定項目のアレルギー検査を行う特定項目検査工程と、
を含むことを特徴とする臨床検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載の臨床検査方法をコンピュータに実行させることを特徴とする臨床検査プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の臨床検査プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータに読み取り可能な記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−57321(P2007−57321A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241228(P2005−241228)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(591258484)株式会社エイアンドティー (23)
【Fターム(参考)】