説明

自動二輪車の配線装置

【課題】部品点数を増加させることなく、U字形状のメインフレーム片を有するメインフレームに配線を保持できる自動二輪車の配線装置を提供する。
【解決手段】車体フレームFRを形成する左右一対のメインフレーム片50Lが、車体の幅方向内側に開口した横断面U字形に形成され、メインフレーム片50Lの内面にほぼ水平に延びるフレーム補強用の細長いリブ90Lが一体形成され、リブ90Lに配線を保持するクランプ92Aが係止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ハーネスやブレーキホースのような配線を保持する自動二輪車の配線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メインフレームを形成する左右一対のメインフレーム片の断面がそれぞれ、内側に開口したU字形状をなし、その開口部が互いに対向している構造を有する自動二輪車では、U字形のフレーム片の内部に電装品やこれに接続される配線などが配置されている。このような配線を保持する方法として、フレーム片に設けたボスにボルトを用いてケーブル把持用のクランプを固定する方法や、フレーム片に溶接されたブラケットを介して固定する方法などがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−82886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の方法では、ボスにボルトを用いてクランプを取り付けていたり、ブラケットをメインフレームに溶接により固着したりしているので、作業が複雑化するうえに、部品点数の増加および製造工程の増加を招き、その結果、製造コストも増加する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、部品点数を増加させることなく、U字形状のメインフレーム片を有するメインフレームに配線を保持できる自動二輪車の配線装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る自動二輪車の配線装置は、車体フレームを形成する左右一対のフレーム片が、車体の幅方向内側に開口した横断面U字形に形成され、前記フレーム片の内面に突起が一体形成され、前記突起に配線を保持するクランプが係止されている。ここで、配線には、自動二輪車に搭載される電装品のハーネス、およびブレーキ、クラッチなどの油圧系のホースを含む。
【0007】
この構成によれば、例えば、ハーネスやブレーキホースのような配線をU字形のフレーム内に収納してスペースの有効利用を図ることができる。さらに、フレーム片の内面に一体形成された突起に係止したクランプで、この配線が保持されているから、ボルトやブラケットが不要になるので、部品点数を増加させることなくメインフレームに配線が保持され、その結果、製造工程が少なくて済み、製造コストも抑えられる。
【0008】
本発明において、フレーム補強用の細長いリブに前記クランプを係止し、このリブにおける前記クランプが係止される被係止部の近傍に、この被係止部の位置を示す目印を設けるのが好ましい。リブは、U字形のフレームの強度を確保するために通常設けられる部分であるから、このリブを被係止部として利用することで、部品点数の増加が抑制され、組立工数が少なくて済む。さらに、リブに目印が設けられているから、クランプを係止させる被係止部の位置を認識しやすくなるので、組み立て性が一層向上する。
【0009】
また、前記クランプは水平方向に対して0〜45°傾斜して延びるリブに係止されていることが好ましい。この構成によれば、クランプがリブに、上下方向に対して45°以下の方向、つまり上下方向に近い方向に沿って挟持されるように係止される。自動二輪車の走行中に車体に生じる振動は上下方向のものが多いので、このようにクランプをリブに係止する力が上下方向に対して45°以下の方向に作用することで、クランプがリブから外れ難くなる。
【0010】
さらに、前記フレーム片は型成形品であり、前記目印は成形型の押出しピンの当接面に近似した円形の平坦面からなることが好ましい。この構成によれば、フレーム片、リブおよび目印を型成形により容易に形成することができる。
【0011】
また、前記目印は、前記被係止部に対して前記リブが延びる長手方向に隣接して設けられており、前記リブよりも大きい幅を有することが好ましい。この構成によれば、リブに係止されたクランプがリブに沿ってずれても、目印に当接することで、リブの長手方向に沿ってそれ以上移動するのが規制される。
【0012】
本発明において、前記配線は少なくとも2つの前記クランプにより同一のフレーム片に保持されていることが好ましい。この構成によれば、2つのクランプを左右別体の2つのフレーム片に別々に係止させる場合に比べて、クランプ間の相対位置の精度が向上するので、クランプによる配線の保持が容易となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動二輪車の配線装置によれば、例えば、ハーネスやブレーキホースのような配線をU字形のフレーム内に収納してスペースの有効利用を図り、さらに、フレーム片の内面に一体形成された突起に係止したクランプで配線が保持されるので、部品点数を増加させることなくメインフレームに配線が保持され、その結果、製造工程が少なくて済み、製造コストも抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動二輪車の配線装置を搭載した自動二輪車の側面図である。
【図2】同自動二輪車のメインフレームを示す平面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】同メインフレームの左側のフレーム片を内側から見た側面図である。
【図5】同フレーム片に係止されるクランプの斜視図である。
【図6】同クランプでハーネスを係止した状態を示す横断面図である。
【図7】同メインフレームの右側のフレーム片を内側から見た側面図である。
【図8】同フレーム片に変形例のクランプでのホースを係止した状態を示す横断面図である。
【図9】同フレーム片に係止されるクランプのさらに別の変形例を示す拡大図である。
【図10】同自動二輪車の左側のリヤフレームを内側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る自動二輪車の配線装置を備えた自動二輪車の側面図である。自動二輪車は、車体フレームFRの前半部を構成するメインフレーム1の前端のヘッドブロック4にフロントフォーク2が支持され、このフロントフォーク2の下端部に前輪3が支持され、上端部にハンドル8が取り付けられている。メインフレーム1は後ろ下がりに傾斜した後端部にスイングアームブラケット9が形成され、このスイングアームブラケット9にスイングアーム10の前端部がピボット軸11を介して揺動自在に支持されている。このスイングアーム10の後端部に後輪12が支持されている。メインフレーム1の後部に連結されたリヤフレーム13が車体フレームFRの後半部を構成している。
【0016】
車体フレームFRを形成するメインフレーム1とリヤフレーム13とは、ボルトのような締結部材52で連結されている。リヤフレーム13は、リヤフレーム・フロント54とリヤフレーム・リヤ56とからなり、これらはボルトのような締結部材58で連結されている。リヤフレーム・フロント54の下部にはリヤステップブラケット14が支持されている。メインフレーム1とスイングアーム10との間にはリヤサスペンション15が配置されている。メインフレーム1の中央部の下方位置にはエンジンEが前傾姿勢で搭載されており、このエンジンEによりチェーン20を介して後輪12を駆動する。
【0017】
メインフレーム1の上部に燃料タンク21が配置され、燃料タンク21とハンドル8の間にイグニッションスイッチ22が配置されている。左側のハンドルグリップ8aのグリップ近傍のスイッチボックス23にグリップスイッチ24が配置されている。また、車体前部に、ヘッドブロック4の前方を覆う樹脂製のフロントカウル26が装着され、フロントカウル26にヘッドランプユニット28が装着されている。メインフレーム1の前部には、サイドカウル16が支持され、サイドカウル16の後方には、エンジンEとメインフレームとの隙間を塞ぐプロテクタ18が支持されている。リヤフレーム13の上部には、操縦者用シート30および同乗車用シート32が装着され、リヤフレーム13の両側方はリヤカバー62で覆われている。操縦者用シート30の下方の右側に、エンジンコントロールユニットECUが、その左側にバッテリ34が搭載されている。
【0018】
車体前部に配置されたイグニッションスイッチ22、グリップスイッチ24およびヘッドランプユニット28のハーネス36(図4)が、車体後方へ延びてエンジンコントロールユニットECUおよびバッテリ34に接続されている。左側のハンドルグリップ8aにはクラッチレバー35が取り付けられ、このクラッチレバー35とエンジンEの後部のクラッチ(図示せず)とがクラッチホース(図示せず)とにより接続されている。右側のハンドルグリップ8bにはブレーキレバー(図示せず)が取り付けられ、このブレーキレバーと前輪ディスクブレーキのブレーキキャリパ38Aとがブレーキホース40により接続されている。車体右側のブレーキペダル(図示せず)と、マスタシリンダ(図示せず)と、後輪ディスクブレーキのブレーキキャリパ38Bとが後輪ブレーキホース(図示しない)により接続されている。
【0019】
図2に示すように、メインフレーム1は左右一対のメインフレーム片50L,50Rを有しており、メインフレーム片50L,50Rの前端部間にヘッドブロック4が溶接により固着されている。各メインフレーム片50L,50Rは型成形品で、例えばアルミニウム製である。
【0020】
図3に示すように、メインフレーム片50L,50Rは、車体の幅方向内側に開口した横断面U字形に形成されている。具体的には、車体の側面の一部を形成する側壁53L,53Rと、側壁53L,53Rの長手方向に延びる上下縁部から車体の幅方向内側へ向かって進出する上壁51L,51Rおよび下壁55L,55Rとを有している。図2の各メインフレーム片50L,50Rの前後方向の中央部に車幅方向に延びるアッパークロスバー64が、後端部に車幅方向に延びるロワクロスバー66が、それぞれ第2溶接部70L、70Rおよび第3溶接部72L、72Rで溶接により固着されている。これらメインフレーム片50L,50R、アッパーバークロス64およびロアバークロス66により、メインフレーム1が形成されている。アッパークロスバー64には、リヤサスペンション15(図1)の前端部を支持するブラケット65が固着されている。
【0021】
図4は左側のメインフレーム片50Lの側面図である。メインフレーム片50Lは、第2溶接部70Lの近傍から前方斜め下方へ突出し、先端にエンジンマウント用のボスを有する第1エンジン取付部73Lが形成された突片74Lと、第1エンジン取付部73Lの下方後方に形成された第2エンジン取付部76Lと、第3溶接部72Lの下方に形成された第3エンジン取付部78Lとを有している。メインフレーム片50Lの長手方向中央部、具体的には、第2エンジン取付部76Lの後方に、リヤフレーム・フロント片54Lを連結する締結部材52(図1)が挿通される貫通孔を有するリヤフレーム取付部80L,80Lが形成されている。
【0022】
メインフレーム1の後端部のスイングアームブラケット9には、ピボット軸11(図1)が挿通される挿通孔82Lが形成されている。さらに、第1エンジン取付部73Lの上部には、下方に突出してプロテクタ18(図1)を支持する2つのプロテクタ取付片86が設けられ、第1溶接部68Lとプロテクタ取付片86との間には、下方に突出してサイドカウリング16(図1)を支持するカウリング取付片88Lが設けられている。カウリング取付片88Lの前側にはブラケット取付片89Lが設けられており、このブラケット取付片89Lに図1に示したエンジンマウント用のブラケット19の一端部が取り付けられ、このブラケット19の他端部に第4エンジン取付部91Lが形成されている。各エンジン取付部73L,76L,78L,91Lはボルトのような締結部材57によりメインフレーム1に支持されている。
【0023】
図4の各溶接部68L,70L,72L、第1〜3エンジン取付部73L,76L,78L、挿通孔82Lおよび各取付片86,88L,89Lを繋ぐように、フレーム補強用の細長い突起であるリブ90LがU字形のメインフレーム片50Lの内面に一体形成されている。リブ90Lはこれら溶接部、ボス部等を繋ぐ位置以外にも設けられている。
【0024】
メインフレーム片50Lの前部、具体的には、前側のプロテクタ取付片86の上方に、メインフレーム1の長手方向に延びるようにリブ90Lが形成され、このリブ90Lの一部分に、ハーネス36を保持するクランプ92Aが係止されている。リブ90Lは水平方向Hから約40°の傾斜角θで直線状に延びている。このハーネス36は、図1に示すイグニッションスイッチ22、グリップスイッチ24、ヘッドランプユニット28と、エンジンコントロールユニットECUおよびバッテリ34とを接続する配線である。
【0025】
図4のリブ90Lにおけるクランプ92Aが係止される被係止部の前方近傍に、この被係止部の位置を示す円形の平坦面からなる目印94が一体形成されている。目印94は前記被係止部に対してリブ90Lが延びる長手方向に隣接して設けられ、その幅W、すなわち直径はリブ90Lの幅W1よりも大きく設定されている。また、リブ90Lのうち被係止部に対して目印94と反対側部分は、被係止部に対して交差する方向に延びている。これによって、クランプ92Aのずれを防ぐことができる。
【0026】
クランプ92Aは、例えば樹脂のような弾性のある部材からなり、図5に示すように、被係止部をほぼ上下方向から係止する挟持部92Aaと、挟持部92Aaに一体形成され挿通孔を備えたバンド保持部92Abと、結束バンド92Acとを有している。図6に示すように、挟持部92Aaをリブ90Lに係止し、フック部92Abに挿通された結束バンド92Acでハーネス36を締め付けることで、別途ブラケットやボルト、ナット等の締結部材を用いることなく、ハーネス36がメインフレーム片50L、つまり車体に保持される。挟持部92Aaは、リブ90Lとの接触部に金属製の抜止め部材92Adを有している。
【0027】
図7は右側のメインフレーム片50Rの側面図である。メインフレーム片50Rも、図3の左側メインフレーム片50Lと同様に、エンジンEを支持する第1および第2エンジン取付部73R,76R、リヤフレーム取付部80R,80R、カウリング取付片88R、ブラケット取付片89Lおよび挿通孔82Rが設けられている。メインフレーム片50Rの内面にも補強用のリブ90Rが一体形成されている。
【0028】
メインフレーム片50Rの前部、具体的には、カウリング取付片88Rの上方に、メインフレーム1の長手方向に延びるようにリブ90Rが形成され、メインフレーム片50Rの中央部、具体的には、第1溶接部68Rとフロントボス部80Rとの間に前記長手方向に延びるようにリブ93Rが形成されている。これらリブ90R,93Rに2本の前輪ブレーキホース40を保持するクランプ92Bが係止されている。この2本のブレーキホース40は、ブレーキレバーからマスタシリンダ(図示せず)へ向かうホースとマスタシリンダからブレーキキャリパ38Aへ向かうホースである。これらリブ90R,93Rの一部分におけるクランプ92Bが係止される被係止部の近傍にも、この被係止部の位置を示す目印94が一体形成されている。また、リブ90R,93Rのうち被係止部に対して目印94と反対側部分は、被係止部に対して交差する方向に延びている。これによって、クランプ92Bのずれを防ぐことができる。
【0029】
クランプ92Bも、樹脂のような弾性のある部材からなり、図8に示すように、挟持部92Baと、挟持部92Baに一体形成された配線保持部92Bbとを有している。前記挟持部92Baをリブ90R、93Rに係止し、配線保持部92Bbに前輪ブレーキホース40を挟持することで、別途ブラケットやボルト、ナット等の締結部材を用いることなく、前輪ブレーキホース40がメインフレーム片50R、つまり車体に保持される。挟持部92Baは、リブ90R、93Rとの接触部に金属製の抜止め部材92Bcを有している。また、前輪ブレーキホース40が、単体のメインフレーム片50Rの2箇所で保持されているので、クランプ92B間の相対位置の精度が向上し、クランプ92Bによる前輪ブレーキホース40の保持が容易となる。
【0030】
図7に戻って、メインフレーム片50Rの中央部の第1溶接部68Rの後方にリブ95Rが形成され、このリブ95Rにハーネス36を保持するクランプ92Cが係止されている。リブ95Rにおけるクランプ92Cが係止される被係止部の近傍にも、目印94が一体形成されている。
【0031】
クランプ92Cも、樹脂のような弾性のある部材からなり、図9に示すように、挟持部92Caと、挟持部92Caに一体形成された配線保持部92Cbとを有している。前記挟持部92Caをリブ95Rに係止し、配線保持部92Cbにハーネス36を挟持することで、別途ブラケットやボルト、ナット等の締結部材を用いることなく、ハーネス36がメインフレーム片50R、つまり車体に保持される。挟持部92Caは、リブ95Rとの接触部に金属製の抜止め部材92Ccを有している。
【0032】
図3から分かるとおり、図1のリヤフレーム・フロント54は左右一対の金属製のリヤフレーム・フロント片54L,54Rからなる。図10は、リヤフレーム・フロント54の代表として左側のリヤフレーム・フロント片54Lを示す側面図である。リヤフレーム・フロント片54Lも、成形型によって成形され、車体の側面の一部を形成する平坦な側壁98と側壁98の外周縁に沿って形成されて車体の幅方向内側に向かって進出する外周壁100とを有し、横断面U字形の形状をしている。側壁98の内面には、車体の幅方向内側に向かって突出するフレーム補強用のリブ102が一体形成されている。
【0033】
リヤフレーム・フロント片54Lは、前端部にメインフレーム片50Lと連結する締結部材52(図1)が挿通される貫通孔を有したボス部からなるフロント連結部104,104が形成され、後端部にリヤフレーム・リヤ56と連結する締結部材58が挿通される貫通孔を有したボス部からなるリヤ連結部106,106が形成されている。さらに、中央下部には、リヤステップブラケット14(図1)が取り付けられるリヤブラケット支持部108,108が一体形成されている。
【0034】
リヤフレーム・フロント片54Lの中央部、具体的には、フロント連結部104の後方でリヤブラケット支持部108の上方に、前後方向に沿って水平に延びるリブ102が形成され、このリブ102にハーネス36を保持するクランプ92Aが係止されている。このハーネス36は、図3の左側のメインフレーム片50Lに係止されたクランプ92Aに保持された配線である。図10のリブ102におけるクランプ92Aが係止される被係止部の近傍にも、目印94が一体形成されている。このクランプ92Aの構造は、図5および6に示したクランプ92Aと同様である。
【0035】
メインフレーム片50L,50R(図4、図7)およびリヤフレーム・フロント片54L,54R(図2)はそれぞれ、側壁53L,53R,98と直交する方向に2分割される成形型によって成形される。これによって、車体の幅方向に開口したU字形横断面を有する形状に形成され、同時に補強用のリブ90,90L,90R(図4、図7),102(図2)も形成される。さらに、目印94を成形型の押出しピンの当接面に近似した円形の平坦面としているので、目印94も同時に形成することができる。本実施形態では、目印94は、リブ90,90L,90R,102のうち被係止部の片側のみに形成されているが、両側に設けてもよい。両側に設けることで、クランプのずれを一層防止できる。
【0036】
上記構成において、図4のハーネス36や図7の前輪ブレーキホース40のような配線が横断面U字形のメインフレーム片50L,50Rおよびリヤフレーム54L,54R内に収納されるので、スペースを有効に活用できる。さらに、各フレーム片50L,50R,54L,54Rの内面に一体形成されたリブ90L,90R,102に係止したクランプ92A,92B,92Cで、配線36,40が保持されているから、部品点数を増加させることなく各フレーム片50L,50R,54L,54Rに配線36,40が保持され、その結果、製造工程が少なくて済み、製造コストも抑えられる。
【0037】
また、補強用に通常設けられるリブ90L,90R,102にクランプ92A,92B,92Cを係止しているので、別途ブラケットが不要となり、部品点数の増加が抑制され、組立工数が少なくて済む。さらに、このリブ90L,90R,102におけるクランプ92A,92B,92Cが係止される被係止部の近傍に、被係止部の位置を示す目印94が設けられているから、クランプ92A,92B,92Cを係止させる被係止部の位置を認識しやすくなるので、組み立て性が一層向上する。これら、リブ90L,90R,102および目印94は、型成形により容易に形成することができる。
【0038】
さらに、クランプ92A,92B,92Cは、水平方向に対して45°以下の方向に沿って延びたリブ90L,90R,93R,95R,102に上下方向に挟持されるように係止されているから、クランプ92A,92B,92Cをリブ90L,90R,93R,95R,102に係止する力が、上下方向に対して45°以下の方向、つまり上下方向に近い方向に作用するので、自動二輪車の走行中に車体に生じる上下方向の振動に起因してクランプ92A,92B,92Cがリブ90L,90R,93R,95R,102から外れるのを防ぐことができる。ただし、水平方向H(図4)に対して45°を越えて傾斜するリブにクランプ92A,92B,92Cを係止させてもよい。
【0039】
また、目印94の幅Wがリブ90L,90R,93R,95R,102の幅W1よりも大きく設定されているので、リブ90L,90R,93R,95R,102に係止されるクランプ92A,92B,92Cがリブ90L,90R,93R,95R,102に沿ってずれても、目印94に当接することで、リブ90L,90R,93R,95R,102の長手方向に沿ってそれ以上移動するのが規制される。
【0040】
さらに、図7の前輪ブレーキホース40が、単体のメインフレーム片50Rの2箇所で保持されているので、クランプ92B間の相対位置の精度が向上し、クランプ92Bによる前輪ブレーキホース40の保持が容易となる。
【0041】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、本実施形態では、左側メインフレーム片50Lにハーネス36を保持し、右側メインフレーム片50Rに前輪ブレーキホース40が保持されているが、右側にハーネス36、左側にブレーキホース40を保持してもよい。また、図4,6、7で示したクランプ92A,92B,92Cは、本実施形態に限定されず、必要に応じて使い分けることが可能で、これら以外の公知のクランプを利用することもできる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1 メインフレーム
36 ハーネス(配線)
40 前輪ブレーキホース(配線)
50L,50R メインフレーム片
54L,54R リヤフレーム・フロント片
90L,90R、93R,95R,102 リブ(突起)
92A、92B、92C クランプ
94 目印
FR 車体フレーム
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームを形成する左右一対のフレーム片が、車体の幅方向内側に開口した横断面U字形に形成され、
前記フレーム片の内面に突起が一体形成され、
前記突起に配線を保持するクランプが係止されている自動二輪車の配線装置。
【請求項2】
請求項1において、前記突起はフレーム補強用の細長いリブであり、このリブにおける前記クランプが係止される被係止部の近傍に、この被係止部の位置を示す目印が設けられている自動二輪車の配線装置。
【請求項3】
請求項2において、水平方向に対して0〜45°傾斜して延びる前記リブに前記クランプが係止されている自動二輪車の配線装置。
【請求項4】
請求項2または3において、前記フレーム片は型成形品であり、前記目印は成形型の押出しピンの当接面に近似した円形の平坦面からなる自動二輪車の配線装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項において、前記目印は、前記被係止部に対して前記リブが延びる長手方向に隣接して設けられており、前記リブよりも大きい幅を有する自動二輪車の配線装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項について、前記配線は少なくとも2つの前記クランプにより単一の前記フレーム片に保持されている自動二輪車の配線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−73655(P2011−73655A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230270(P2009−230270)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】