説明

自動原稿搬送装置、及びこれを備えた画像形成装置

【課題】 本発明は、駆動装置の設置スペースを小さくすることが可能であって、駆動モータ等の部品点数を少なくして簡素な構成とすることができるとともに動作音を減らし静音化も図ることができる自動原稿搬送装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】原稿の第一面読み取り後、第2面を読み取るために搬送路を切換える分岐ガイドと、分岐ガイドにより搬送路を切換えた後、前記原稿を前記搬送手段に再度送るためのスイッチバックローラ対を有するスイッチバック手段を備え、前記分岐ガイドの搬送路の切換と前記スイッチバックローラ対のニップの開閉が一つの駆動手段で行われることから、駆動手段の設置スペースを小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を自動的に読み取り位置に搬送する自動原稿搬送装置と、この自動原稿搬送装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複合機、スキャナー、ファクシミリ等に使用される自動原稿搬送装置は、原稿の両面を読み取るために原稿の表裏を反転できる形式のものがよく知られている。近年、画像形成装置の小型化が進み、画像形成装置の画像形成部だけでなく、自動原稿搬送装置についても小型化が求められている。
【0003】
このような自動原稿搬送装置の従来技術の例を図13に示す。この自動原稿搬送装置は、原稿(D)の搬送方向(矢印a方向)に沿って順に、原稿積載トレイ(101)、ピックアップローラ(102)、給紙ローラ(103)、搬送ドラム(104)及びこれに当接して配置される読み取り前ローラ(105)と読み取り後ローラ(106)、分岐部材(107)、反転下ローラ(108)、排出上ローラ(109)、反転ガイド(110)及び排出トレイ(111)を備えている。また、読み取り前ローラ(105)及び読み取り後ローラ(106)の間であって、搬送ドラム(104)の下方には原稿読取位置(R)が配置されている。ここで説明の便宜上、原稿積載トレイ(101)上に載置した原稿の上面をA面とし、下面をB面とする。
【0004】
原稿のA面のみの読み取り時は、原稿積載トレイ(101)からピックアップローラ(102)により供給された原稿(D)のA面が原稿読取位置(R)で読み取られる。分岐部材(107)は、後端部を軸に揺動可能に支持されているが、原稿(D)のA面のみの読み取り時には、図に示されている実線の位置にあり、原稿(D)は排出トレイ(111)に排出される。
【0005】
原稿の両面(A面及びB面)の読取り時は、原稿積載トレイ(101)から搬送された原稿(D)のA面が原稿読取位置(R)で読取られた後、原稿(D)は、分岐部材(107)が図に示されている点線の位置にあることにより、反転下ローラ(108)、排出上ローラ(109)及び反転ガイド(110)により表裏反転し、原稿読取位置(R)に搬送されB面が読み取られる。原稿(D)は、さらに同様の操作により再度表裏反転して、排出トレイ(111)に排出される(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1では、自動原稿搬送装置を上記構成とすることにより、自動原稿搬送装置に使用するための搬送ローラ等の部材を減らしてきたが、分岐部材(107)、反転下ローラ(108)の駆動装置を別々に有していることからそれぞれの駆動装置を設置するためのスペースを必要とするという問題を有していた。また、駆動装置として安価なソレノイド等を使用した場合には、駆動装置の駆動音が大きくなることから、消音対策が必要となり、その結果として部品点数が増加し、組立工数が増えることとなり、結局製造コストのアップにつながるといった問題も有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−352434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は上記問題を解決するために、駆動装置の設置スペースを小さくすることが可能であって、駆動モータ等の部品点数を少なくして簡素な構成とすることができるとともに動作音を減らし静音化も図ることができる自動原稿搬送装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明は以下の構成からなる。
請求項1に係る発明は、原稿積載トレイから原稿を給紙する原稿給紙手段と、給紙された前記原稿を原稿読み取り位置に搬送する搬送手段と、読取後の前記原稿を排出トレイに排出する排出手段と、前記原稿の第1面読み取り後、第2面を読み取るために搬送路を切換える分岐ガイドと、前記分岐ガイドにより搬送路を切換えた後、前記原稿を前記搬送手段に再度送るためのスイッチバックローラ対を有するスイッチバック手段を備え、前記分岐ガイドによる搬送路の切換と前記スイッチバックローラ対のニップの開閉が一つの駆動手段で行われることを特徴とする自動原稿搬送装置に関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記駆動手段は、前記駆動手段に駆動力を与える駆動装置と、前記駆動装置に固定された駆動部材と、前記駆動装置の駆動力を前記駆動部材を介して前記分岐ガイドとスイッチバックローラ対に伝える駆動伝達機構を備え、前記駆動装置が、一つのモータからなることを特徴とする請求項1に記載の自動原稿搬送装置に関する。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記駆動伝達機構は、前記駆動部材から駆動力を伝達する従動部材と、前記従動部材から伝達される駆動力を前記分岐ガイドの搬送路の切換動作及びスイッチバックローラ対のニップの開閉動作に変換する動作伝達機構からなり、前記動作伝達機構が前記分岐ガイドの搬送路の切換と前記スイッチバックローラ対のニップの開閉動作をカムで制御することを特徴とする請求項2に記載の自動原稿搬送装置に関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記動作伝達機構が前記カムの停止位置制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の自動原稿搬送装置に関する。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の自動原稿搬送装置を備えることを特徴とする画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、原稿積載トレイから原稿を給紙させる原稿給紙手段と、給紙された前記原稿を原稿読み取り位置に搬送する搬送手段と、読取後の前記原稿を排出トレイに排出する排出手段と、原稿の第一面読み取り後、第2面を読み取るために搬送路を切換える分岐ガイドと、分岐ガイドにより搬送路を切換えた後、前記原稿を前記搬送手段に再度送るためのスイッチバックローラ対を有するスイッチバック手段を備え、前記分岐ガイドの搬送路の切換と前記スイッチバックローラ対のニップの開閉が一つの駆動手段で行われることから、駆動手段の設置スペースを小さくすることができる。また、モータ等の部品点数及び組立工数を減らすことができるため製造コストも下げることができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、駆動手段は、駆動手段に駆動力を与える駆動装置と、前記駆動装置に固定された駆動部材と、前記駆動装置の駆動力を前記駆動部材を介して分岐ガイドとスイッチバックローラ対に伝える駆動伝達機構を備え、駆動装置が、一つのモータからなることから、簡易な構成で分岐ガイドの搬送路の切換とスイッチバックローラ対のニップの開閉を行うことができる。従って、駆動手段の設置スペースを小さくすることができ、製造コストも下げることができる。さらに、使用する駆動手段として一つのモータしか使用しないことから、駆動手段としてソレノイド等を使用する場合と比較して原稿搬送装置の静音化を図ることができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、駆動伝達機構は、駆動部材から駆動力を伝達する従動部材と、前記従動部材から伝達される駆動力を分岐ガイドの搬送路の切換動作及びスイッチバックローラ対のニップの開閉動作に変換する動作伝達機構からなり、前記動作伝達機構が前記分岐ガイドの搬送路の切換と前記スイッチバックローラ対のニップの開閉動作の制御をカムで行うことができることから、自動原稿搬送装置の構成をさらに簡易な構成とすることができる。従って、組立工数を減らすことができるため製造コストもさらに下げることができる。また、分岐ガイドによる搬送路の切換とスイッチバックローラ対のニップの開閉の制御を確実に行うことができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、動作伝達機構がカムの停止位置制御手段をさらに備えることから、両面印刷時の原稿の自動搬送を確実に行うことができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の自動原稿搬送装置を備えることを特徴とする画像形成装置であるため、自動原稿搬送装置のモータ等の駆動手段を減らすことができることから小型化を図ることができる。従って、組立工数や部材点数を減らすことができるとともに画像形成装置の騒音の低減及び省電力を図ることができる自動原稿搬送装置を備えた画像形成装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る自動原稿搬送装置の縦断面図である。
【図2】本発明に係る自動原稿搬送装置の駆動手段を説明する斜視図である。
【図3】本発明に係る自動原稿搬送装置の駆動手段を説明する側面図である。
【図4】本発明に係る自動原稿搬送装置の駆動手段を説明する拡大斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る自動原稿搬送装置の片面搬送時の断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る自動原稿搬送装置の両面搬送時の断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る自動原稿搬送装置のカム、分岐ガイド及びスイッチバックローラ対の第1作動状態図である。
【図8】本発明の実施形態に係る自動原稿搬送装置のカム、分岐ガイド及びスイッチバックローラ対の第2作動状態図である。
【図9】本発明の実施形態に係る自動原稿搬送装置のカム、分岐ガイド及びスイッチバックローラ対の第3作動状態図である。
【図10】本発明の実施形態に係る自動原稿搬送装置のカム、分岐ガイド及びスイッチバックローラ対の第4作動状態図である。
【図11】本発明の実施形態に係る自動原稿搬送装置のカム、分岐ガイド及びスイッチバックローラ対の第5作動状態図である。
【図12】本発明の実施形態に係る自動原稿搬送装置のカム、分岐ガイド及びスイッチバックローラ対の第6作動状態図である。
【図13】従来の自動原稿搬送装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る自動原稿搬送装置及びこれを備えた画像形成装置について、図面に基づき詳述する。
図1は本発明の一実施形態に係る自動原稿搬送装置の縦断面図である。尚、以下の説明では、図面の左側を自動原稿搬送装置の先端部とし、図面の右側を後端部とする。
【0021】
図1で示されるように、自動原稿搬送装置(1)は、原稿が載置される原稿積載トレイ(2)と、原稿積載トレイ(2)に積載された原稿を1枚ずつ供給する原稿給紙手段(3)と、原稿給紙手段(3)により給紙された原稿を原稿読取位置(R)に搬送する搬送手段(4)と、原稿読取位置(R)で読取後の原稿を排出する排出手段(5)と、原稿の搬送路を切換える分岐ガイド(6)と、分岐ガイド(6)により切換えられた搬送路に導入された原稿を表裏スイッチバックさせ、再度搬送手段(4)に搬送するスイッチバック手段(7)と、排出された原稿を受ける原稿排出トレイ(8)を備えている。
【0022】
原稿積載トレイ(2)は、自動原稿搬送装置(1)の後端部側上方に設けられている。原稿積載トレイ(2)は、略平面状に形成され、自動原稿搬送装置(1)の先端部に向かって緩やかに下向きに傾斜することにより、原稿給紙手段(3)への原稿の供給を容易化している。
原稿積載トレイ(2)上に載置された原稿は、その先端が分離壁(9)に当接し、原稿供給時に分離壁(9)を乗り越えることにより、1枚ずつ原稿給紙手段(3)に供給される。ここで原稿積載トレイ(2)に載置される原稿は、表面となる第1面が上方を、また裏面となる第2面が下方を向くように載置されるものとする。
【0023】
原稿積載トレイ(2)の先端近傍には、原稿の有無を検知するためのセンサとして機能するセットスイッチ(10)が配されている。セットスイッチ(10)は、原稿積載トレイ(2)の上方に揺動できるように支持されている。このセットスイッチ(10)は、原稿積載トレイ(2)上に原稿が存在すると、その先端が原稿の上に軽く乗り、退避位置を取る(図示せず)。一方、原稿積載トレイ(2)に原稿がなくなった場合には、セットスイッチ(10)の先端は、原稿積載トレイ(2)に穿設されている孔(図示せず)に入り込んで図1中の2重線の位置から1重線(L)で示される動作位置に下降する。これにより、例えばセットスイッチ(10)の先端が光センサの光路を遮断することにより原稿が無くなったことを検知する。
【0024】
原稿給紙手段(3)は、セットスイッチ(10)に近接して配設されたピックアップローラ(11)と、その搬送方向下流側に配置された給紙ローラ(12)と分離ローラ(13)とを備えている。ピックアップローラ(11)は、駆動装置(図示せず)に連結されており、駆動装置により時計回りに回転駆動させることにより、原稿積載トレイ(2)に載置された原稿の第1面に当接する方向に移動(下降)する。
【0025】
給紙ローラ(12)は、分離ローラ(13)の上方から分離ローラ(13)に当接するように配置されている。給紙ローラ(12)は、駆動装置(図示せず)に連結されており、それにより時計回りに回転駆動し、ピックアップローラ(11)から受け渡された原稿を分離ローラ(13)により1枚ずつ下流側に供給する。分離ローラ(13)は、トルクリミッター(図示せず)と連結しており、取り出された原稿が1枚の場合は回転して搬送部に供給し、2枚以上の場合は、回転を停止して重ね送りを防ぐ。
【0026】
搬送手段(4)は、原稿搬送ローラ対(14)、(15)及びタイミングスイッチ(16)を備えている。タイミングスイッチ(16)は、原稿の先端が当接することにより、反時計回りに回動して退避位置に退避し、原稿が通過し終えるまで退避位置に保持される。次いで、原稿が通過し終えると、図1に示される位置に復帰する。タイミングスイッチ(16)は、例えば光学センサ(17)と連関するように配置され、タイミングスイッチ(16)が退避位置に配されるときに光学センサ(17)の光路を開放するように構成されている。自動原稿搬送装置(1)は、光学センサ(17)の光路が開放することにより原稿の先端がタイミングスイッチ(16)に到達したことを検知し、光学センサ(17)の光路が遮断されることにより原稿がタイミングスイッチ(16)を通過したことを検知することができる。タイミングスイッチ(16)による原稿の検知情報は、各ローラや分岐部材等の動作タイミングに利用される。
一対の原稿搬送ローラ(15)の下流側には原稿読取部(18)が設けられ、原稿情報が読取られる。
【0027】
排出手段(5)は、読取後ローラ(19)及び排出ローラ(20)を備えている。読取後ローラ(19)の下流側には、分岐ガイド(6)が配設されている。分岐ガイド(6)は、後部の揺動中心(6a)を基準として揺動可能に支持され、さらに付勢手段(図示せず)により排出手段(5)と反対の方向(上方)に付勢されている。これにより、分岐ガイド(6)は、後部の揺動中心(6a)を基準として、その先端部を上下動させる。
【0028】
分岐ガイド(6)の後方(図1の右側)には、スイッチバック手段(7)が配置されている。スイッチバック手段(7)は、スイッチバック上ローラ(21)と、スイッチバック下ローラ(22)と、リフト板(23)とを備えている。スイッチバック下ローラ(22)には、駆動手段(図示せず)が接続されており、時計回り、反時計回りのいずれにも回転駆動可能である。リフト板(23)は、その先端部の揺動中心(23a)を基準として揺動可能に支持されており、その後端部にはスイッチバック上ローラ(21)が配置されている。スイッチバック上ローラ(21)は、スイッチバック下ローラ(22)の上方に当接するように配され、リフト板(23)の揺動によりスイッチバック下ローラ(22)と接離可能である。リフト板(23)は、スイッチバック上ローラ(21)とスイッチバック下ローラ(22)が当接する方向に付勢する付勢手段であるバネ(24)を備えている。これによりスイッチバック上ローラ(21)とスイッチバック下ローラ(22)のニップの開閉が可能となる。
【0029】
本発明に係る自動原稿搬送装置(1)では、分岐ガイド(6)の搬送路の切換と、スイッチバック手段(7)のスイッチバック上ローラ(21)とスイッチバック下ローラ(22)のニップの開閉を一つの駆動手段で行う。
駆動手段は、駆動装置と、駆動部材と、駆動伝達機構とからなり、駆動伝達機構は、従動部材と、分岐ガイド(6)による搬送路の切換とスイッチバックローラ対(21、22)のニップの開閉動作を行う動作伝達機構とからなる。
以下に駆動手段の一実施形態を詳述する。
【0030】
図2は本発明に係る自動原稿搬送装置(1)の駆動手段を説明する斜視図であり、図3は本発明に係る自動原稿搬送装置(1)の駆動手段を説明する側面図であり、図4は本発明に係る自動原稿搬送装置(1)の駆動手段を説明する拡大斜視図である。
【0031】
駆動手段(25)は、図2及び図3に示されるように、駆動手段(25)に駆動力を与える駆動装置(26)と、駆動装置(25)に固定された駆動部材として用いられる駆動ギア(28)と、駆動装置(26)の駆動力を駆動ギア(28)を介して分岐ガイド(6)とスイッチバックローラ対(21、22)に伝える駆動伝達機構(27)により構成されている。
【0032】
駆動伝達機構(27)は、駆動ギア(28)から駆動力を伝達する従動部材として用いられる従動ギア(29)(30)(31)と、従動ギア(29)(30)(31)から伝達される駆動力を分岐ガイド(6)の搬送路の切換動作とスイッチバックローラ対(21、22)のニップの開閉動作に変換する動作伝達機構(32)とから構成されている。
【0033】
動作伝達機構(32)は、従動ギア(29)(30)(31)から伝達される駆動力を、分岐ガイド(6)の搬送路の切換動作とスイッチバックローラ対(21、22)のニップの開閉動作に変換するカム(33)と、カム(33)の停止位置(ホームポジション)を検知する位置検知センサ(34)と、カム(33)により変換された動作をスイッチバックローラ(21)に伝える作動リンク(35)から構成されている。
【0034】
従動ギア(31)は、原稿の幅方向に略水平に延びる支軸(31a)に回動自在に取り付けられる。この従動ギア(31)は、従動ギア(29)、(30)を介して駆動ギア(28)に噛合され、駆動装置(26)の駆動力が従動ギア(31)に伝達される。
本実施形態の場合、駆動装置(26)は一つのモータからなる。これにより、駆動手段の設置スペースを小さくすることができる。
【0035】
カム(33)は、回転軸である支軸(31a)の背面側の端部に固定されている。これによりカム(33)は、従動ギア(31)の回転に従って、支軸の軸方向に対して垂直面内で回転する。
カム(33)は、図4に示されるように、支軸(31a)の長さ方向に沿って並設された2つの部分からなり、第1の周面(33a)を有する第1部分と第2の周面(33b)を有する第2部分とで構成されている。図4に示されるようにカム(33)の第1部分の第1の周面(33a)は、作動リンク(35)の下面と当接しており、第2部分の第2の周面(33b)は、分岐ガイド(6)の垂直上方に配されるガイド軸(36)に当接している。
【0036】
作動リンク(35)の一端部は、原稿の幅方向に略水平に延びる支軸(35a)の一端部に固定され、支軸(35a)の他端部はリフト板(23)の揺動中心(23a)に固定されている。作動リンク(35)は、カム(33)の第1の周面(33a)の上方に当接するように配される。これにより作動リンク(35)は、カム(33)の回動に従って揺動し、その動作が支軸(35a)を介してスイッチバック手段(7)のリフト板(23)に伝達される。従ってリフト板(23)に配されたスイッチバック上ローラ(21)が揺動中心(23a)を軸に上下動することとなり、スイッチバック上ローラ(21)とスイッチバック下ローラ(22)のニップの開閉が行われる。
【0037】
分岐ガイド(6)は、カム(33)の第2の周面(33b)と当接することにより、カム(33)の動きに従ってその後部に配された揺動中心(6a)を基準として揺動する。分岐ガイド(6)の揺動中心(6a)から分岐ガイド(6)の垂直上方にガイド軸(36)が設けられている。ガイド軸(36)の上方端部には水平に延設された凸部(36a)が備えられている。この凸部(36a)が、カム(33)の第2の周面(33b)と互いに常時当接する。これにより分岐ガイド(6)は、カム(33)の回動に従ってその先端部を原稿の搬送方向に対して上下動させ、原稿の搬送方向を切換える。
【0038】
位置検知センサ(34)は、カム(33)のホームポジションを特定するためのものであり、光センサであるフォトインタラプタで構成されている。位置検知センサ(34)は、対向する発光部と受光部とを備え、これらの間に隙間が設けられている。この位置検知センサ(34)は、発光部から出射した光を受光部で受取ることにより識別するものであることから、この光が遮蔽されることにより発光部と受光部の間に他の部材が存在することを検知する。
【0039】
従動ギア(31)は、その外周の一部から突出する遮蔽板(37)を備えており、この遮蔽板(37)が位置検知センサ(34)に設けられた隙間に入るように配置されている。すなわち、従動ギア(31)とカム(33)は連動していることから、従動ギア(31)の遮蔽板(37)の位置が位置検知センサ(34)により検知されることにより、カム(33)の位置も特定することができる。通常は、従動ギア(31)の遮蔽板(37)が位置検知センサ(34)の隙間に存在する場合が、カム(33)のホームポジションとなる。
上述した構成を取ることにより、分岐ガイド(6)の搬送路の切換と、スイッチバック上ローラ(21)とスイッチバック下ローラ(22)のニップの開閉を一つの駆動手段で行うことができる。
本実施形態では、駆動部材及び従動部材として駆動ギア及び従動ギアを用いたが、駆動部材及び従動部材はこれに限定されない。例えば、駆動部材を駆動プーリー、従動部材を従動プーリーとし、両プーリーにベルトを懸架して駆動力を伝達するように構成してもよい。
【0040】
上述の自動原稿搬送装置(1)の動作を図面に基づき説明する。
図5は本発明の実施形態に係る自動原稿搬送装置の片面搬送時の内部断面図であり、図6は本発明の実施形態に係る自動原稿搬送装置の両面搬送時の内部断面図である。以下の説明では、便宜上図5に示される分岐ガイド(6)の位置がホームポジションとする。尚、図中の矢印は、原稿の搬送方向を示している。
【0041】
原稿の片面(第1面)のみを読み取る際の原稿の搬送経路を図5に基づいて以下に詳述する。
原稿を原稿積載トレイ(2)に載置するとセットスイッチ(10)が上方に退避して原稿搬送の準備が完了する。原稿の読み取りは第1面のみであることから、カム(33)は、ホームポジションから駆動しない。
自動原稿搬送装置(1)は、操作パネルから入力される開始信号を受信すると、ピックアップローラ(11)が時計回りに回転する。次いで、ピックアップローラ(11)は、原稿積載トレイ(2)に載置された原稿と当接する位置まで下降して最上位の原稿を原稿搬送路(38)へと供給する。ピックアップローラ(11)から供給された原稿は、分離ローラ(13)により1枚ずつ原稿搬送路(38)へと供給される。
【0042】
供給された原稿は、その先端部がタイミングスイッチ(16)を通過することにより原稿の通過が検知され、その情報が各ローラや分岐ガイド等の動作タイミングに利用される。
原稿は、搬送ローラにより原稿読取部(18)へと搬送され、読取後ローラ(19)及び排出ローラ(20)が時計回りに回転することにより原稿排出トレイ(8)に排出される。
【0043】
原稿の両面(第1面及び第2面)の読取り時の自動原稿搬送装置内での原稿の搬送経路を図6に基づいて以下に詳述する。
原稿を原稿積載トレイ(2)に載置するとセットスイッチ(10)が上方に退避して原稿搬送の準備が完了する。
【0044】
自動原稿搬送装置(1)は、操作パネルから入力される開始信号を受信すると、ピックアップローラ(11)が時計回りに回転する。次いで、ピックアップローラ(11)は、原稿積載トレイ(2)に載置された原稿と当接する位置まで下降して最上位の原稿を原稿搬送路(38)へと供給する。ピックアップローラ(11)から供給された原稿は、分離ローラ(13)により1枚ずつ原稿搬送路(38)へと供給される。
【0045】
供給された原稿は、その先端部がタイミングスイッチ(16)を通過することにより原稿の通過が検知され、駆動装置(26)が駆動を開始する。これによりカム(33)は、回動を開始し、分岐ガイド(6)が、カム(33)の回動に従って、図6に示される位置に配置される。原稿は、原稿搬送路(38)を経て原稿読取部(18)で第1面が読み取られた後、原稿読取後ローラ(19)によりスイッチバック搬送路(39)に送られる。搬送された原稿は、スイッチバック下ローラ(22)が時計回りに回転することにより、スイッチバック搬送路(39)に搬送されて、表裏反転される。反転後、スイッチバック下ローラ(22)を反時計回りに逆回転することにより原稿は再度原稿搬送路(38)に送られる。このときの分岐ガイド(6)の位置は、ホームポジションに戻っている。これにより原稿がスイッチバック搬送路(39)から原稿排出路(40)に逆送されることを防ぐことができる。尚、この原稿の表裏反転のタイミングは、タイミングスイッチ(16)により検知された原稿先端の通過時間を基準に計測される。
【0046】
原稿は、再度タイミングスイッチ(16)により検知された後、その第2面が原稿読取部(18)で読取られる。分岐ガイド(6)は、図6に示される位置に再度配置され、原稿はスイッチバック搬送路(39)に搬送され、原稿の表裏反転がなされる。反転後、原稿は搬送路に送られるが、原稿読取部(18)で読取が行われることはない。次いで分岐ガイド(6)の位置がホームポジションに設定される。これにより原稿は、読取後ローラ(19)及び排出ローラ(20)により原稿排出トレイ(8)上に排出される。この原稿の空搬送は、原稿の表裏を揃えるために行われる。
【0047】
原稿の両面読取時のカムの回転動作と分岐ガイド、スイッチバックローラのニップの開閉動作状態に関しては図7から図12を参照しながら、原稿の搬送経路に関しては図5及び図6を参照しながら詳述する。
図7は自動原稿搬送装置(1)の動作開始から原稿の第1面の読取時までのカム(33)の状態及びスイッチバックローラ対(21、22)のニップの開閉状態を示した図であり、図8は原稿の第1面の読取からスイッチバック搬送路(39)への搬送までのカム(33)の状態及びスイッチバックローラ対(21、22)のニップの開閉状態を示した図であり、図9は原稿がスイッチバック搬送路(39)から原稿搬送路(38)に搬送される際のカム(33)の状態及びスイッチバックローラ対(21、22)のニップの開閉状態を示した図であり、図10は原稿の第2面の読取からスイッチバック搬送路(39)への搬送までのカム(33)の状態及びスイッチバックローラ対(21、22)のニップの開閉状態を示した図であり、図11は原稿がスイッチバック搬送路(39)から原稿搬送路(38)に搬送される際のカム(33)の状態及びスイッチバックローラ対(21、22)のニップの開閉状態を示した図であり、図12は原稿がスイッチバック搬送路(39)から原稿搬送路(38)に搬送される際のカム(33)の状態及びスイッチバックローラのニップの開閉状態を示した図である。
ここで、カム(33)及び分岐ガイド(6)について、図7に示される位置にあるときの図面左側を先端部とし、図面右側を後端部とし、図面上方を上部とし、図面下方を下部とする。また、以下の説明では、図7に示されるカム(33)、スイッチバック上ローラ(21)及び分岐ガイド(6)の位置が夫々のホームポジションとする。
【0048】
上述したようにカム(33)の第1の周面(33a)は、作動リンク(35)と当接しており、第2の周面(33b)は、分岐ガイド(6)のガイド軸(36)の凸部(36a)に常時当接している。従って、分岐ガイド(6)はカム(33)の回動に従って動作し、作動リンク(35)に接続しているスイッチバック上ローラ(21)もカム(33)の回動に従って動作を行う。ここで、カム(33)が回動する方向は、図7の矢印で示されるように時計回り方向である。
【0049】
ここで図7に示されるように、自動原稿搬送装置(1)の動作開始から原稿の第1面の読取までは、カム(33)は動作していない。従って、分岐ガイド(6)及びスイッチバック上ローラ(21)はホームポジションにあり、スイッチバック上ローラ(21)とスイッチバック下ローラ(22)のニップは閉じた状態である。
【0050】
図8は、原稿の第1面の読取からスイッチバック搬送路(39)への原稿の搬送までのカム(33)の動作を示している。カム(33)の第2の周面(33b)先端部が分岐ガイド(6)のガイド軸(36)の凸部(36a)を先端方向に押す。これにより、分岐ガイド(6)は揺動中心(6a)を基準として回動し、分岐ガイド(6)の先端部が下方に押し下げられる。これにより、図6に示されるように原稿排出トレイ(8)への原稿搬送路(38)が分岐ガイド(6)により閉鎖され、原稿は、スイッチバック搬送路(39)へと供給される。この場合において、スイッチバック上ローラ(21)とスイッチバック下ローラ(22)のニップは閉じた状態であることから、スイッチバック下ローラ(22)が時計回り方向に回転することにより原稿のスイッチバック搬送路(39)への搬送が完了する。
【0051】
原稿がスイッチバック搬送路(39)から原稿搬送路(38)に搬送されるときには、図9に示されるようにカム(33)は時計回りに回動し、カム(33)の第2面の周面(33b)先端部と後端部の間の下部のくぼみに分岐ガイドのガイド軸(36)の凸部(36a)が当接することになる。従って、分岐ガイド(6)は、ホームポジションに戻る。これにより、図5に示される状態になり、原稿はスイッチバック搬送路(39)から原稿排出路(40)に逆送することが防がれるとともに確実に原稿搬送路(38)に搬送される。
【0052】
原稿が原稿搬送路に搬送され、その先端が一対の搬送ローラ(14)のニップに到達するときには、図10に示されるようにカム(33)はさらに回動し、カム(33)の第1の周面(33a)の先端部が作動リンク(35)と当接する。作動リンク(35)は、スイッチバック手段(7)のリフト板(23)の揺動中心(23a)と支軸(35a)を介して接続されている。従ってリフト板(23)は、先端部の揺動中心(23a)を基準として上方に押し上げられる。これにより、スイッチバック上ローラ(21)とスイッチバック下ローラ(22)が離間する。また、カム(33)の第2の周面(33b)後端部が分岐ガイド(6)のガイド軸(36)の凸部(36a)を押し、分岐ガイド(6)は揺動中心(6a)を基準として先端部が下方に押し下げられる。これにより原稿は、第2面を読取られた後、スイッチバック搬送路(39)に供給される。
尚、用紙の先端と後端の搬送方向がそれぞれ逆方向となる時間があるためニップを開放する必要がある。これは、用紙長さが一定以上の場合、第二面読取時に、用紙の先端部分は、スイッチバック搬送路(39)に到達しているが、用紙の後端部分は、未だスイッチバック搬送路(39)に残っていることがある。この場合、用紙の先端部分は、スイッチバックローラ−対(21、22)の右方向に搬送させる必要があるが、用紙の後端部は、スイッチバックローラ対(21、22)の左方向、つまり原稿搬送路方向(38)に搬送させる必要がある。従って、用紙の先端と後端とで搬送方向が逆方向となり、スイッチバックローラ対(21、22)で用紙を搬送させることができなくなるため、ニップを開放する必要がある。
【0053】
原稿がスイッチバック搬送路(39)に到達するときには、図11に示されるようにカム(33)はさらに回動し、カム(33)の第1の周面(33a)の下部が作動リンク(35)に当接する。これにより、スイッチバック手段(7)のリフト板(23)は、その先端部の揺動中心(23a)を基準としてバネ(24)の力により押し下げられ、リフト板(23)の後端部に設けられているスイッチバック上ローラ(21)がスイッチバック下ローラ(22)と当接する。この際には、カム(33)の第2の周面(33b)後端部は未だ分岐ガイド(6)のガイド軸(36)の凸部(36a)と当接していることから、分岐ガイド(6)の先端部が下方に押し下げられた状態となっている。
【0054】
原稿がスイッチバック搬送路(39)から原稿搬送路(38)に再度搬送されるときには、図12に示されるようにカム(33)は時計回りに回動し、カム(33)の第2の周面(33b)の上部のくぼみに分岐ガイドのガイド軸(36)の凸部(36a)が当接することになる。従って、分岐ガイド(6)は、ホームポジションに戻る。これにより、原稿はスイッチバック搬送路(39)から原稿排出路(40)に逆送されることが防がれるとともに確実に原稿搬送路(38)に搬送される。
【0055】
次いで、原稿は原稿搬送路(38)から原稿読取部(18)を経て、読取後ローラ(19)及び排出ローラ(20)により原稿排出トレイ(8)上に排出される。このときカム(33)は1回転し、カム(33)及び分岐ガイド(6)は、図7に示されるホームポジションに戻る。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る自動原稿搬送装置及びこれを備えた画像形成装置は、様々なコピー機、プリンター、FAXに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1・・・自動原稿搬送装置
2・・・原稿積載トレイ
3・・・原稿給紙手段
4・・・搬送手段
5・・・排出手段
6・・・分岐ガイド
7・・・スイッチバック手段
21・・スイッチバック上ローラ
22・・スイッチバック下ローラ
23・・リフト板
33・・カム
33a・第1の周面
33b・第2の周面
35・・作動リンク
35a・支軸
36・・ガイド軸
36a・凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿積載トレイから原稿を給紙する原稿給紙手段と、
給紙された前記原稿を原稿読み取り位置に搬送する搬送手段と、
読取後の前記原稿を排出トレイに排出する排出手段と、
前記原稿の第1面読み取り後、第2面を読み取るために搬送路を切換える分岐ガイドと、
前記分岐ガイドにより搬送路を切換えた後、前記原稿を前記搬送手段に再度送るためのスイッチバックローラ対を有するスイッチバック手段を備え、
前記分岐ガイドによる搬送路の切換と前記スイッチバックローラ対のニップの開閉が一つの駆動手段で行われることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記駆動手段に駆動力を与える駆動装置と、前記駆動装置に固定された駆動部材と、前記駆動装置の駆動力を前記駆動部材を介して前記分岐ガイドとスイッチバックローラ対に伝える駆動伝達機構を備え、
前記駆動装置が、一つのモータからなることを特徴とする請求項1に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項3】
前記駆動伝達機構は、前記駆動部材から駆動力を伝達する従動部材と、前記従動部材から伝達される駆動力を前記分岐ガイドの搬送路の切換動作及びスイッチバックローラ対のニップの開閉動作に変換する動作伝達機構からなり、
前記動作伝達機構が前記分岐ガイドの搬送路の切換と前記スイッチバックローラ対のニップの開閉動作をカムで制御することを特徴とする請求項2に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項4】
前記動作伝達機構が前記カムの停止位置制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の自動原稿搬送装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−148562(P2011−148562A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9464(P2010−9464)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】