説明

自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置

【課題】 リニアソレノイド弁が故障した場合に電動ポンプを用いて低速レンジで発進することができる自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置を提供する。
【解決手段】 電動ポンプ41が接続する第1切換弁46は、リニアソレノイド弁20の接続ポート21aと接続する。第1切換弁46は、電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力により接続ポート21aと電動ポンプ41との連通またはオイルパン17との連通に切り換える。車両が低速で前進可能な低速レンジであって、かつエンジンが運転中であって、かつリ低速レンジのクラッチ30に作動油を出力する出力ポート21bと接続ポート21aとを連通したままニアソレノイド弁20が故障した場合、電動ポンプ41を駆動して第1切換弁46を切り換えて電動ポンプ41と接続ポート21aとを連通する。これにより、クラッチ30のピストン室36の内圧はクラッチ30の係合が可能な高圧を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関が発生する出力を車両の運転状況に応じて調整し車両の駆動輪に伝達する自動変速機が知られている。自動変速機では、クラッチやブレーキなど複数の摩擦要素を選択的に係合又は開放することでエンジンの出力を調整する変速が行われる。自動変速機は、複数の摩擦要素に作動流体を供給するスプール弁とスプール弁に接続する通路の切換を行う切換弁とを備える。切換弁は、複数の外部から供給される作動流体に対して選択的に経路を切り換え、スプール弁に接続する摩擦要素にかかる作動流体の供給元を切り換える。特許文献1には、切換弁の故障によりスプール弁に作動流体を供給し続けた場合、スプール弁をオフすることでクラッチに作用している油圧をドレンできる自動変速機用油圧制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−175038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の自動変速機用油圧制御装置では、スプール弁が故障した場合、スプール弁が摩擦要素に低圧の作動流体しか供給できなくなり、車両の低速レンジでの発進ができない。
【0005】
本発明の目的は、スプール弁が故障した場合にアイドルストップ用の電気式ポンプを用いて低速レンジで発進することができる自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明によると、自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置が備えるスプール弁は、複数の摩擦要素のうち発進に寄与する摩擦要素に作動流体を供給する。機械式ポンプおよび電気式ポンプは、スプール弁に加圧された作動流体を供給する。第1切換弁はスプール弁と電気式ポンプとの間に設けられ、電気式ポンプが吐出する作動流体をスプール弁に供給する一方、スプール弁内に滞留する作動流体を排出する。
スプール弁はスリーブとスリーブに嵌入されるスプールとから構成されている。スリーブは、機械式ポンプからの作動流体を供給する供給ポート、外部へ作動流体を排出または電気式ポンプからの作動流体を供給する接続ポート、および複数の摩擦要素のうち発進に寄与する摩擦要素へ作動流体を出力する出力ポートを有する。スリーブに嵌入するスプールは、スリーブに対して往復移動可能に収容され、スリーブの軸方向での変位によって出力ポートと供給ポートとの連通または出力ポートと接続ポートとの連通を選択的に切り換える。機械式ポンプは、内燃機関によって機械的に駆動される。一方、電気式ポンプは、内燃機関の運転又は停止に関わらず電気的に駆動する。第1切換弁は、スプール弁の接続ポートと電気式ポンプの吐出ポートとの連通または接続ポートと作動流体を貯留する貯留槽との連通を選択的に切り換える切換作動を電気式ポンプの吐出ポートの圧力によっておこなう。
請求項2に記載の発明によると、車両が前進可能な前進用レンジであって、かつ内燃機関が運転中であって、かつスプール弁が出力ポートと接続ポートとを連通する場合、電気式ポンプを駆動する。
【0007】
スプール弁は、機械式ポンプが吐出する作動流体を供給ポートから内部に導入し、出力ポートを経由して複数の摩擦要素のうち発進に寄与する摩擦要素へ作動流体を出力する。このとき、摩擦要素を係合または開放するため、スプール弁は摩擦要素へ供給する作動流体の圧力を次のように調整する。高圧の作動流体を供給する場合、スプール弁の供給ポートと出力ポートとを連通する。これにより、機械式ポンプが吐出する高圧の作動流体が摩擦要素の液圧室に供給され、摩擦要素が係合する。一方、低圧の作動流体を供給する場合、スプール弁の出力ポートと接続ポートとを連通する。これにより、摩擦要素の液圧室に滞留する作動流体は、スプール弁の接続ポートを経由して排出され、摩擦要素は開放する。車両の低速レンジでの前進を実現するには発進に寄与する摩擦要素を係合するため、スプール弁の供給ポートと出力ポートとを連通する。しかし、スプール弁が出力ポートと接続ポートとが連通した状態で故障した場合、摩擦要素には低圧の作動流体しか供給されなくなる。このとき、電気式ポンプを駆動することで電気式ポンプが吐出する作動流体の圧力により第1切換弁はスプール弁の接続ポートと電気式ポンプの吐出ポートとを連通する切換作動をする。摩擦要素には、接続ポートから出力ポートを経由して電気式ポンプが吐出する高圧の作動流体が供給される。これにより、スプール弁が故障の場合でも、発進に寄与する摩擦要素に高圧の作動流体を供給することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明によると、自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置は、前進用のレンジであって、かつ内燃機関が停止する場合、スプール弁は出力ポートと接続ポートとを連通し、かつ電気式ポンプは駆動する。
前進用のレンジであって、かつ内燃機関が停止する、すなわちアイドリングストップをしている場合、内燃機関によって機械的に駆動される機械式ポンプは停止する。このとき、スプール弁では出力ポートと接続ポートとを連通し、電気式ポンプを駆動する。これにより、電気式ポンプの吐出ポートと摩擦要素の液圧室とは連通するため、電気式ポンプが吐出する作動流体を摩擦要素の液圧室に供給することができる。したがって、車両がアイドリングストップをしている場合、発進に寄与する摩擦要素に高圧の作動流体を供給することができる。
【0009】
請求項4に記載の発明によると、自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置の電気式ポンプは逆転駆動が可能であって、逆転駆動により作動流体の吸入と吐出とを逆転することができるポンプである。スプール弁の接続ポートと電気式ポンプの吐出ポートとを連通したままとなり、かつ接続ポートと吐出ポートとを連通する連通路内を低圧にする場合、電気式ポンプは逆転駆動して連通路内の作動流体を吸引する。
第1切換弁は、電気式ポンプが吐出する作動流体の圧力がかかることによりスプール弁の接続ポートと電気式ポンプの吐出ポートとを連通する切換作動をする。しかし、第1切換弁が故障によりスプール弁の接続ポートと電気式ポンプの吐出ポートとを連通したままとなった場合、スプール弁の出力ポートと接続ポートとが連通しても作動流体が排出されないため、摩擦要素に低圧の作動流体が供給できない。このとき、逆転駆動が可能な電気式ポンプにより、スプール弁の接続ポートと電気式ポンプの吐出ポートとを連通する連通路に滞留する作動流体を吸引する。これにより、スプール弁内部の圧力を調整して前進に寄与する摩擦要素が開放するために必要な圧力にすることができる。したがって、第1切換弁が故障した場合に作動流体を排出し、摩擦要素を開放するために必要な圧力の作動流体を供給することができる。また、作動流体を吸引することにより、第1切換弁の故障の原因となる異物の詰まりを除去することができる。
【0010】
請求項5に記載の発明によると、第1切換弁は、スプール弁の接続ポートと電気式ポンプとを連通する連通路に一端を接続し、作動流体を貯留する貯留槽に接続可能な他端を有する作動流体排出通路を備える。作動流体排出通路にはオリフィスを設ける。
第1切換弁は、電気式ポンプが吐出する作動流体の圧力がかかることによりスプール弁の接続ポートと電気式ポンプの吐出ポートとを連通する切換作動をする。しかし、第1切換弁が故障によりスプール弁の接続ポートと電気式ポンプの吐出ポートとを連通したままとなった場合、スプール弁の出力ポートと接続ポートとが連通しても作動流体が排出されないため、摩擦要素に低圧の作動流体が供給できない。このとき、一端を連通路に接続する作動流体排出通路により、連通路内に滞留する作動流体を貯留槽に排出する。また、作動流体排出通路は、作動流体排出通路を通る作動流体の量を制御するオリフィスを備えている。これにより、電気式ポンプにより高圧の作動流体を摩擦要素に供給する場合、作動流体排出通路から排出される作動流体の量は少ないため、電気式ポンプの駆動に影響を及ぼさない。これにより、スプール弁内部の圧力を調整して前進に寄与する摩擦要素が開放するために必要な圧力にすることができる。したがって、第1切換弁が故障した場合に作動流体を排出し、摩擦要素を開放するために必要な圧力の作動流体を供給することができる。
【0011】
請求項6に記載の発明によると、自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置が備えるスプール弁は、車両の変速を行う複数の摩擦要素に作動流体を供給する。機械式ポンプおよび電気式ポンプは、スプール弁に加圧された作動流体を供給する。スプール弁と電気式ポンプとの間に設けられている第1切換弁は、電気式ポンプが吐出する作動流体をスプール弁に供給する一方、スプール弁内に滞留する作動流体を排出する。機械式ポンプと第1切換弁との間に設けられている第2切換弁は、機械式ポンプが吐出する圧力によって第1切換弁を電動ポンプと接続ポートとが遮断される方向へ切り換わる様に作動流体を供給する。
スプール弁はスリーブとスリーブに嵌入されるスプールとから構成されている。スリーブは、機械式ポンプからの作動流体を供給する供給ポート、外部へ作動流体を排出または電気式ポンプからの作動流体を供給する接続ポート、および複数の摩擦要素のうち発進に寄与する摩擦要素へ作動流体を出力する出力ポートを有する。スリーブに嵌入するスプールは、スリーブに対して往復移動可能に収容され、スリーブの軸方向での変位によって出力ポートと供給ポートとの連通または出力ポートと接続ポートとの連通を選択的に切り換える。機械式ポンプは、内燃機関によって機械的に駆動される。一方、電気式ポンプは、内燃機関の運転又は停止に関わらず電気的に駆動する。第1切換弁は、スプール弁の接続ポートと電気式ポンプの吐出ポートとの連通または接続ポートと作動流体を貯留する貯留槽との連通を選択的に切り換える第1切換作動を電気式ポンプの吐出ポートの圧力によっておこなう。第2切換弁は、第1切換弁に形成される蓄圧室に接続する接続通路と機械式ポンプとの連通または接続通路と貯留槽との連通を選択的に切り換える第2切換作動をする。
請求項7に記載の発明によると、車両が前進可能な前進用レンジであって、かつ内燃機関が運転中であって、かつスプール弁が出力ポートと接続ポートとを連通する場合、電気式ポンプを駆動する。
【0012】
第1切換弁は、電気式ポンプが第1切換弁へ作動流体を吐出することによりスプール弁の接続ポートと電気式ポンプとが連通する。これにより、電気式ポンプが吐出する作動流体を摩擦要素に供給する。しかし、スプール弁の接続ポートと電気式ポンプの吐出ポートとを連通したまま電気式ポンプの故障により電気式ポンプが駆動する場合、摩擦要素に低圧の作動流体を供給することができない。このとき、第1切換弁の蓄圧室に接続する接続通路と機械式ポンプとを第2切換弁により接続することで、接続通路に機械式ポンプが吐出する作動流体が流れる。第1切換弁は接続通路に流入する機械式ポンプが吐出する作動油の圧力によって第1切換作動をして、スプール弁の接続ポートと貯留槽とを接続する。これにより、スプール弁内の作動流体を貯留槽に排出する。したがって、スプール弁および電気式ポンプの両方が故障している場合でも、スプール弁内の作動流体を排出し、摩擦要素に低圧の作動流体を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置を用いた車両の模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置の構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置の構成図であり、図2とは別の作動状態を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置におけるシフトレンジと自動変速機のクラッチおよびブレーキとの組み合わせパターン表である。
【図5】本発明の第1実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置におけるリニアソレノイド弁の状態と電動ポンプへの指令との関係を示す表である。
【図6】本発明の第1実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置における電動ポンプの状態とリニアソレノイド弁への指令との関係を示す表である。
【図7】本発明の第1実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置における第1切換弁が故障したときの影響を示す表である。
【図8】本発明の第1実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置における第1切換弁が故障したときの影響を示す表であり、図6とは別の故障状態を示す表である。
【図9】本発明の第2実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置の構成図である。
【図10】本発明の第2実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置の構成図であり、図9とは別の作動状態を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置における切換弁が故障したときの影響を示す表である。
【図12】本発明の第3実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置の構成図である。
【図13】本発明の第3実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置の構成図であり、図12とは別の作動状態を示す図である。
【図14】本発明の第3実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置におけるリニアソレノイド弁の状態と電動ポンプへの指令との関係を示す表である。
【図15】本発明の第3実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置における電動ポンプの状態とリニアソレノイド弁への指令との関係を示す表である。
【図16】本発明の第3実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置における第2切換弁が故障したときの影響を示す表である。
【図17】本発明の第3実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置における第2切換弁が故障したときの影響を示す表であり、図16とは別の故障状態を示す表である。
【図18】本発明の第4実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置を図1から図8に示す。
図1は、自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置を含む自動変速機2が車両に搭載された状態を示す。自動変速機2はシフトレバー11により入力される運転者が選択したシフトレンジからエンジン1で発生した出力を調整し、この調整された出力を車両の駆動輪3に伝達する。
【0015】
自動変速機2が備える自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置は、機械式ポンプ部10、電動ポンプ部40およびリニアソレノイド弁20を備えており、クラッチ30を制御する。図2は、第1切換弁46がリニアソレノイド弁20の接続ポート21aと貯留槽17とを連通している状態を示す図であり、図3は、第1切換弁46がリニアソレノイド弁20と電動ポンプ41の吐出ポート41aを連通している状態を示す図である。リニアソレノイド弁20は、特許請求の範囲に記載の「スプール弁」に相当する。
【0016】
クラッチ30は、自動変速機2の摩擦要素として機能する。自動変速機2は3種類のクラッチと2種類のブレーキを備えている。図4に示すように自動変速機2は、これらのうち複数のクラッチとブレーキとの組み合わせから所定の変速レンジを実現する。例えば、変速レンジを低速での前進が可能な第1前進レンジD1にする場合、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とをそれぞれ係合することで実現するという具合である。本発明の第1実施形態のクラッチ30は、第1前進レンジD1から第4前進レンジD4までの低速レンジで使用する第1クラッチC1である。クラッチ30は、特許請求の範囲に記載の「前進に寄与する摩擦要素」に相当する。
【0017】
クラッチ30は、自動変速機の内部に設けられ、多板クラッチを構成している。クラッチ30は、軸方向に重なり合う複数のクラッチディスク31,32を有している。これらクラッチディスク31,32によって係合状態が作られる。
【0018】
クラッチ30では、軸部33が円筒状の基部34を挿通するようにして組み付けられている。この基部34には、径方向外側へ拡がる円板状の底部34aが設けられており、底部34aに連続する外郭部分である外郭部34bの内側に、クラッチディスク31,32が配置されている。また、基部34には、円板状のクラッチピストン35が軸方向に往復移動可能に支持されている。ここで、クラッチピストン35と上記底部34aとの間に、ピストン室36が形成される。
【0019】
基部34の底部34aとは反対側の端部には、円板状の係止部34cが形成されている。この係止部34cは、ちょうどクラッチディスク31,32の径方向内側に位置している。そして、係止部34cとクラッチピストン35との間には、クラッチバネ37が設けられている。これにより、クラッチピストン35は、底部34a側へ付勢される。
【0020】
ピストン室36には、軸部33に形成された油路33aを介して、作動油が供給される。これにより、ピストン室36の油圧が上昇し、クラッチバネ37の付勢力に打ち勝つと、クラッチピストン35は、底部34aから離間する方向へ移動する。クラッチピストン35が、クラッチディスク31に当接しクラッチディスク31を押圧すると、クラッチディスク31,32の係合状態が作られる。
【0021】
リニアソレノイド弁20は、図2および図3に示すようにスリーブ21、スプール23、および電磁力発生部22を備えている。スリーブ21には、電磁力発生部22側から、接続ポート21a、出力ポート21b、供給ポート21c、および自己調圧ポート21dが形成されている。
【0022】
接続ポート21aには、後述する電動ポンプ部40と接続する第1接続管48が接続されている。第1接続管48は、第1切換弁46を経由して「貯留槽」としてのオイルパン17へ作動油を排出する。また、電動ポンプ41が吐出する作動油が第1接続管48を通過してリニアソレノイド弁20の内部に入る。詳細は後述する。
出力ポート21bには、クラッチ30に接続する出力管29が接続されている。出力管29は、クラッチ30の軸部33に形成された油路33aに接続されている。これにより、作動油は出力管29から油路33aを経由し、ピストン室36へ供給される。また、出力管29の途中には、分岐管291が分岐するように形成されている。分岐管291は、自己調圧ポート21dに接続されている。
供給ポート21cには、供給管18が接続されている。供給管18は、マニュアルバルブ13からリニアソレノイド弁20へ作動油を供給する配管である。
【0023】
スリーブ21には、軸方向に往復移動可能なスプール23が収容されている。スプール23は、軸方向の変位によって接続ポート21a、出力ポート21b、および供給ポート21cのうちの所定のポートを連通する。
【0024】
具体的には、スプール23が電磁力発生部22から離間する方向(以下「高圧設定」という)へ変位すると、供給ポート21cと出力ポート21bとが連通する。また、電磁力発生部22へ近接する方向(以下「低圧設定」という)へ変位すると、出力ポート21bと接続ポート21aとが連通する。なお、その中間位置には、供給ポート21cおよび接続ポート21aがともに出力ポート21bに連通しないオーバーラップ領域が存在する。
【0025】
スプール23の先端側には戻しバネ231が設けられており、この戻しバネ231によって、スプール23は、低圧設定へ付勢される。また、出力ポート21bからの作動油が分岐管291を介して自己調圧ポート21dへ供給され、出力ポート21bからの作動油の圧力によって、スプール23は、低圧設定へ付勢される。
【0026】
電磁力発生部22は、コイル24、可動部25、固定部26及び、コネクタ27等で構成されている。可動部25は、円筒状の固定部26の内側に、軸方向に移動可能に支持されている。また、コイル24は、固定部26の周囲に配置されている。また、コネクタ27を介して、リニアソレノイド弁TCU28が電気的に接続される。
【0027】
リニアソレノイド弁TCU28は、マイクロコンピュータ及び駆動回路等から構成されている。リニアソレノイド弁TCU28からは、指令信号に基づく駆動電流が出力される。この駆動電流によってコイル24が通電されると、可動部25に対して高圧設定への電磁吸引力が作用する。これにより、可動部25は、スプール23を高圧設定へ付勢する。
リニアソレノイド弁TCU28を構成するマイクロコンピュータは、種々の制御プログラムを実行することにより、目標油圧値を指令値とする指令信号を算出する。駆動回路は、算出された指令信号に基づき、電磁力発生部22を駆動するための駆動電流を出力する。
【0028】
機械式ポンプ部10は、シフトレバー11、スプール12、マニュアルバルブ13、機械式ポンプ15などを備えている。機械式ポンプ部10は、リニアソレノイド弁20の供給ポート21cに作動油を供給する。
【0029】
シフトレバー11は、運転者がシフトレンジを選択する時に使用する。シフトレバー11とマニュアルバルブ13に挿入しているマニュアルバルブスプール14とは接続しており、シフトレバー11で選択されたシフトレンジに応じてマニュアルバルブスプール14は移動する。
【0030】
マニュアルバルブスリーブ14は略有底の管状を成しており、スプール12はマニュアルバルブスリーブ14の一端にある開口よりマニュアルバルブ13の内部に挿入され、マニュアルバルブスリーブ14の内壁と摺動する。マニュアルバルブスリーブ14には、有底側から順にDレンジ圧ポート14a、ライン圧ポート14b、およびRレンジ圧ポート14cが形成されている。Dレンジ圧ポート14aとリニアソレノイド弁20の供給ポート21cとは供給管18により接続しており、マニュアルバルブ13の内部に滞留する作動油はリニアソレノイド弁20へ送る。ライン圧ポート14bは、後述する機械式ポンプ15と接続しており、機械式ポンプ15が吐出する作動油はライン圧ポート14bを通ってマニュアルバルブ13の内部に入る。Rレンジ圧ポート14cは、クラッチ30とは異なる他のクラッチに作動油を送るリニアソレノイド弁20とは異なる他のリニアソレノイド弁と接続する。運転者がシフトレバー11によりRレンジを選択した場合、マニュアルバルブ13の内部に滞留する作動油を他の当該リニアソレノイド弁へ送る。
【0031】
機械式ポンプ15は、オイルパン17に貯留されている作動油を汲み上げ、マニュアルバルブ13へ吐出する。機械式ポンプ15は車両のエンジンと連動して駆動する。このため、機械式ポンプ15はアイドリングストップ時などエンジンが運転を停止している場合、駆動しない。機械式ポンプ15には、マニュアルバルブ13に吐出する作動油の圧力を調整するための圧力調整器16が備えられている。
【0032】
電動ポンプ部40は、電動ポンプ41、第1切換弁46などを備えている。電動ポンプ部40は、リニアソレノイド弁20の接続ポート21aと接続している。電動ポンプ部40は、接続ポート21aから排出される作動油を第1切換弁46を経由してオイルパン17に排出するとともに、電動ポンプ41が吐出する作動油を第1切換弁46を経由して接続ポート21aからリニアソレノイド弁20の内部に送る。
【0033】
第1切換弁46は、電動ポンプ41とリニアソレノイド弁20とを接続する位置にある。第1切換弁46は、第1出力ポート46a、第1供給ポート46b、第1接続ポート46c、および第1排出ポート46dを備えている。このうち、第1出力ポート46aと第1供給ポート46bとは第1切換弁46の内部で連通している。また、第1接続ポート46cと第1排出ポート46dとは第1切換弁46の内部で連通している。第1切換弁46は、図2の左右方向に移動可能に設置されている。図3は図2の第1切換弁46の位置から左方向に移動したときの状態を示している。第1切換弁46の左側側壁には付勢手段として第1バネ47が当接している。第1バネ47は第1切換弁46を図3の右方向に付勢している。
【0034】
電動ポンプ41は、電気モータ42により圧送方向を逆転することができるギアポンプである。電気モータ42は電気モータ42に駆動電流を出力する電動ポンプTCU42aと接続している。電動ポンプTCU42aは、マイクロコンピュータ及び駆動回路等から構成されている。電動ポンプTCU42aは、指令信号に基づいて前述した駆動電流を電気モータ42に出力する。
【0035】
電動ポンプ41は、オイルパン17に貯留する作動油を吸い込み、吐出ポート41aより吐出する。吐出ポート41aには第1供給管44の一端が接続されている。第1供給管44の他端は第1切換弁46の第1供給ポート46bに接続可能となっている。第1供給管44の途中には、第1切換通路43が接続している。第1切換通路43の第1供給管44と接続する一端とは異なる他端は第1切換弁46に形成されている第1蓄圧室46gに接続している。第1蓄圧室46gは第1切換通路43が吐出する作動油が流入する。第1切換通路43の第1切換弁46と接続している端部は、第1切換弁46が図2の左右方向に移動するのに合わせて他端を第1切換弁46に接続した状態を維持する。電動ポンプ41が駆動する場合、電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力が第1蓄圧室46gにかかることにより第1切換弁46に図2の左方向に付勢力を与える。このとき、当該付勢力が第1バネ47の右方向への付勢力より大きい場合、第1切換弁46は左方向に移動し、図3に示す位置になる。このとき、第1供給管44の他端と第1切換弁46の第1供給ポート46bとは接続する。これにより、電動ポンプ41が吐出する作動油は、第1切換弁46を経由して、接続ポート21aからリニアソレノイド弁20の内部に入る。
【0036】
第1供給管44はリリーフ弁45を備えており、第1供給管44の内圧が所定の圧力以上となった場合、リリーフ弁45が開き第1供給管44の内圧を開放する。
【0037】
(作用)
次に、第1実施形態での自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置の作用について図5から図9に基づいて説明する。
最初に図5に示すリニアソレノイド弁20の状態に応じた電動ポンプ41への指令内容、およびそのときに確保されるクラッチ30のピストン室36内の圧力であるクラッチ圧を説明する。
【0038】
図5aに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のうちいずれか一つを選択しており、かつエンジンは運転しており、かつリニアソレノイド弁20が正常に作動して高圧設定となっている場合、電動ポンプ41には「駆動しない」とする指令を入力する。このとき、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20を経由してクラッチ30のピストン室36に伝わり、クラッチ圧は高圧となる。
【0039】
図5bに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のうちいずれか一つを選択しており、かつエンジンは運転しているが、リニアソレノイド弁20が故障により低圧設定となっている場合、電動ポンプ41には「駆動する」とする指令を入力する。このとき、第1蓄圧室46gに電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力がかかることにより、図2に示すように第1切換弁20は左方向に切換作動する。これにより、電動ポンプ41とリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとは第1切換弁46を介して連通する。このとき、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20を経由してクラッチ30のピストン室36に伝わり、クラッチ圧は高圧となる。
【0040】
図5cに示すように、高速での前進が可能な第5前進レンジD5または第6前進レンジD6を選択しており、かつエンジンは運転しており、かつリニアソレノイド弁20が正常に作動して低圧設定となっている場合、電動ポンプ41には「駆動しない」とする指令を入力する。このとき、リニアソレノイド弁20内部の作動油の圧力の一部は接続ポート21aから第1切換弁46を経由してオイルパン17に流出するため、クラッチ圧は低圧となる。
【0041】
図5dに示すように、高速での前進が可能な第5前進レンジD5または第6前進レンジD6を選択しており、かつエンジンは運転しているが、リニアソレノイド弁20が故障により高圧設定となっている場合、電動ポンプ41には「駆動しない」とする指令を入力する。このとき、クラッチ圧は高圧となるため、低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のいずれか一つに変速段を変更することで停車状態からの低速レンジでの発進が可能となる。
【0042】
図5eに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1を選択しており、かつエンジンが停止している、すなわちアイドリングストップであり、かつリニアソレノイド弁20が正常に作動して低圧設定となっている場合、電動ポンプ41には「駆動する」とする指令を入力する。エンジンが停止している状態では機械式ポンプ15は停止しており、クラッチ30に機械式ポンプ15からの作動油の圧力をかからない。そこで、電動ポンプ41が駆動することでリニアソレノイド弁20に作動油の圧力がかかり、クラッチ圧は高圧となる。
【0043】
図5fに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1を選択しており、かつエンジンが停止しているが、リニアソレノイド弁20が高圧設定となっている場合、電動ポンプ41には「駆動しない」とする指令を入力する。このとき、車両はアイドリングストップを中止しエンジンを始動する。これにより、機械式ポンプ15は駆動し、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20を経由してクラッチ30のピストン室36に伝わり、クラッチ圧は高圧となる。
【0044】
図5gおよびhに示すように車両の変速レンジがニュートラルレンジN、またはパーキングレンジPである場合、機械式ポンプ15とリニアソレノイド弁20とは連通していない。このとき、リニアソレノイド弁20が低圧設定であるか高圧設定であるかにかかわらず、電動ポンプ41には「駆動しない」とする指令を入力する。これにより、リニアソレノイド弁20には機械式ポンプ15および電動ポンプ41からの作動油の圧力はかからないため、クラッチ圧は低圧となる。
【0045】
図5iおよびjに示すように、車両の後進が可能な後進レンジRである場合、機械式ポンプ15とクラッチ30とは連通していない。このとき、リニアソレノイド弁20が低圧設定であるか高圧設定であるかにかかわらず、電動ポンプ41には「駆動しない」とする指令を入力する。これにより、ソレノイド弁20には機械式ポンプ15および電動ポンプ41からの作動油の圧力はかからないため、クラッチ圧は低圧となる。
【0046】
次に、図6に示す電動ポンプ41の状態の応じたリニアソレノイド弁20への指令内容およびそのときに確保されるクラッチ圧を説明する。
図6aに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のうちいずれか一つを選択しており、かつエンジンは運転しており、かつ電動ポンプ41が正常な状態であって駆動していない場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定に移動する」とする指令を入力する。これにより、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20を経由してクラッチ30のピストン室36に伝わり、クラッチ圧は高圧となる。
【0047】
図6bに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のうちいずれか一つを選択しており、かつエンジンは運転しているが、電動ポンプ41が故障して駆動している場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定または低圧設定のいずれかに移動する」とする指令を入力する。このとき、スプール23が高圧設定に移動する場合には機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が、またスプール23が低圧設定に移動する場合には電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力がクラッチ30のピストン室36に伝わり、クラッチ圧は高圧となる。
【0048】
図6cに示すように、高速での前進が可能な第5前進レンジD5または第6前進レンジD6を選択しており、かつエンジンが運転しており、かつ電動ポンプ41が正常な状態であって駆動していない場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を低圧設定に移動する」とする指令を入力する。これにより、リニアソレノイド弁20内部の作動油の一部が接続ポート21aから第1切換弁46を経由してオイルパン17に流出するため、クラッチ圧は低圧となる。
【0049】
図6dに示すように、高速での前進が可能な第5前進レンジD5または第6前進レンジD6を選択しており、かつエンジンは運転しているが、電動ポンプ41が故障して駆動している場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定または低圧設定のいずれかに移動する」とする指令を入力する。このとき、クラッチ圧は高圧となるため、低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のいずれか一つに変速段を変更することで停車状態からの低速レンジでの発進が可能となる。
【0050】
図6eに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1を選択しており、かつエンジンが停止している、すなわちアイドリングストップであり、かつ電動ポンプ41が正常であって駆動している状態の場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を低圧設定に移動する」とする指令を入力する。これにより、電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20の接続ポート21aを経由してクラッチ30のピストン室36にかかるため、クラッチ圧は高圧となる。
【0051】
図6fに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1を選択しており、かつエンジンが停止しているが、電動ポンプ41が故障して駆動していない場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定に移動する」とする指令を入力する。このとき、車両はアイドリングストップを中止しエンジンを始動する。これにより、機械式ポンプ15は駆動し、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20を経由してクラッチ30のピストン室36に伝わり、クラッチ圧は高圧となる。
【0052】
図6gに示すようにニュートラルレンジN、またはパーキングレンジPである場合、機械式ポンプ15とリニアソレノイド弁20とは連通していない。このとき、電動ポンプ41が正常であって駆動していない場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定または低圧設定のいずれかに移動する」とする指令を入力する。これにより、リニアソレノイド弁20には機械式ポンプ15および電動ポンプ41からの作動油の圧力はかからないため、クラッチ圧は低圧となる。
【0053】
図6hに示すように、ニュートラルレンジN、またはパーキングレンジPである場合、機械式ポンプ15とリニアソレノイド弁20とは連通していない。しかし、電動ポンプ41が故障により駆動している場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定に移動する」とする指令を入力する。これにより、リニアソレノイド弁20には機械式ポンプ15および電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力はかからないため、クラッチ圧は低圧となる。
【0054】
図6iに示すように、車両の後進が可能な後進レンジRである場合、機械式ポンプ15とリニアソレノイド弁20とは連通していない。このとき、電動ポンプ41が正常であって駆動していない場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定または低圧設定のいずれかに移動する」とする指令を入力する。リニアソレノイド弁20には機械式ポンプ15は連通しておらず、また電動ポンプ41は駆動していないので、リニアソレノイド弁20には作動油の圧力がかからない。これにより、クラッチ圧は低圧となる。
【0055】
図6jに示すように、車両の後進が可能な後進レンジRである場合、機械式ポンプ15とリニアソレノイド弁20とは連通していない。しかし、電動ポンプ41が故障により駆動している場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定に移動する」とする指令を入力する。これにより、駆動している電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力はクラッチ30にはかからないため、クラッチ圧は低圧となる。
【0056】
次に第1切換弁46が故障した場合の影響について図7および図8に基づいて説明する。
図7には、図2に示すように第1切換弁46の第1接続ポート46cとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとが連通したままで第1切換弁46が故障した場合の影響を示す。
【0057】
図7aに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のうちいずれか一つを選択しており、かつエンジンは運転している場合、リニアソレノイド弁20は高圧設定となっており、電動ポンプ41は駆動していない。このとき、クラッチ圧はクラッチ30を係合するために必要とする高圧となるため第1切換弁46の故障の影響はない。
【0058】
図7bに示すように、高速での前進が可能な第5前進レンジD5または第6前進レンジD6を選択しており、かつエンジンは運転している場合、リニアソレノイド弁20は低圧設定となっており、電動ポンプ41は駆動していない。このとき、クラッチ圧はクラッチ30を開放するために必要とする低圧となるため第1切換弁46の故障の影響はない。
【0059】
図7cに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1を選択しており、かつエンジンが停止している、すなわちアイドリングストップである場合、リニアソレノイド弁20は低圧設定となっており、電動ポンプ41は駆動している。このとき、第1接続ポート46cとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとが連通したままで第1切換弁46が故障しているため、電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力はリニアソレノイド弁20に伝わらない。これにより、クラッチ圧はクラッチ30を係合するために必要とする高圧にはならず、低圧となる。このとき、車両はアイドリングストップを中止し、エンジンを始動するとともにリニアソレノイド弁20を高圧設定とする。これにより、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20にかかるため、クラッチ圧は高圧となる。
【0060】
図7dに示すように、ニュートラルレンジN、またはパーキングレンジPである場合、リニアソレノイド弁20は低圧設定となっており、電動ポンプ41は駆動していない。このとき、クラッチ圧はクラッチ30を開放するために必要とする低圧となるため第1切換弁46の故障の影響はない。
【0061】
図7eに示すように、車両の後進が可能な後進レンジRである場合、リニアソレノイド弁20は低圧設定となっており、電動ポンプ41は駆動していない。このとき、クラッチ圧はクラッチ30を開放するために必要とする低圧となるため第1切換弁46の故障の影響はない。
【0062】
図8には、図3に示すように第1切換弁46の第1出力ポート46aとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとが連通したままで第1切換弁46が故障した場合の影響を示す。
【0063】
図8aに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のうちいずれか一つを選択しており、かつエンジンは運転している場合、リニアソレノイド弁20は高圧設定となっており、電動ポンプ41は駆動していない。このとき、クラッチ圧は第1切換弁46の状態とは関係なくクラッチ30を係合するために必要とする高圧となるため第1切換弁46の故障の影響はない。
【0064】
図8bに示すように、高速での前進が可能な第5前進レンジD5または第6前進レンジD6を選択しており、かつエンジンは運転している場合、リニアソレノイド弁20は低圧設定となっており、電動ポンプ41は駆動していない。このとき、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力はリニアソレノイド弁20にかかっており、かつ第1出力ポート46aと接続ポート21aとが連通したままで第1切換弁46が故障しているため、第1出力ポート46aとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとを連通する連通路46hは高圧となる。これにより、クラッチ圧は高圧となるため、クラッチ30を開放できない。このとき、変速段を低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のうちいずれか一つに変更し、低速での前進を可能にする。
【0065】
図8cに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1を選択しており、かつエンジンが停止している、すなわちアイドリングストップである場合、リニアソレノイド弁20は低圧設定となっており、電動ポンプ41は駆動している。このとき、電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力がクラッチ30に作用し、クラッチ圧はクラッチ30を係合するために必要な高圧となるため第1切換弁46の故障の影響はない。
【0066】
図8dに示すように、ニュートラルレンジN、またはパーキングレンジPである場合、リニアソレノイド弁20のスプール23は低圧設定に移動しており、電動ポンプ41は駆動していない。このとき、機械式ポンプ15からの作動油の圧力はリニアソレノイド弁20にかかっていないが、第1出力ポート46aと接続ポート21aとが連通したままで第1切換弁46が故障しているため、第1出力ポート46aとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとを連通する連通路46hはクラッチ30を開放できない程度の圧力となる。このとき、圧送方向を逆転可能な電動ポンプ41を駆動し、連通路46h内の作動油を吸引することで内圧を下げ、クラッチ圧はクラッチ30を開放するために必要な低圧となる。
【0067】
図8eに示すように、車両の後進が可能な後進レンジRである場合、リニアソレノイド弁20のスプール23は低圧設定に移動しており、電動ポンプ41は駆動していない。このとき、機械式ポンプ15からの作動油の圧力はリニアソレノイド弁20にかかっていないが、第1出力ポート46aとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとが連通したままで第1切換弁46が故障しているため、第1出力ポート46aとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとを連通する連通路46hはクラッチ30を開放できない程度の圧力となる。このとき、圧送方向を逆転可能な電動ポンプ41を駆動し、連通路46h内の作動油を吸引することで内圧を下げ、クラッチ圧はクラッチ30を開放するために必要な低圧となる。
【0068】
(効果)
次に第1実施形態の自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置の効果について説明する。
(1)第1切換弁46は、リニアソレノイド弁20の状態に応じてリニアソレノイド弁20の接続ポート21aの接続経路を切り換える。リニアソレノイド弁20が故障により低圧設定となっている場合、電動ポンプ41には「駆動する」とする指令を入力する。電動ポンプ41が駆動することにより、第1切換弁46に設けられている第1蓄圧室46gには電動ポンプ41からの作動油の圧力が作用し、第1切換弁46は図3に示すように左方向に移動する。このとき、電動ポンプ41とリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとは第1切換弁46を介して連通する。これにより、電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20を経由してクラッチ30のピストン室36に伝わり、クラッチ圧は高圧となる。これにより、リニアソレノイド弁20が故障の場合でも、クラッチ30に高圧の作動油を供給することができる。
【0069】
(2)低速での前進が可能な第1前進レンジD1を選択しており、かつエンジンが停止している、すなわちアイドリングストップであり、かつリニアソレノイド弁20が正常に作動して低圧設定に移動している場合、電動ポンプ41には「駆動する」とする指令を入力する。電動ポンプ41が駆動することで前述したように第1切換弁46は図3に示すように左方向に移動する。このとき、電動ポンプ41とリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとは第1切換弁46を介して連通する。これにより、電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20を経由してクラッチ30のピストン室36に伝わり、クラッチ圧は高圧となる。したがって、アイドリングストップ中に発進に寄与するクラッチ30に高圧の作動油を供給することができる。
【0070】
(3)エンジンは運転しており、かつリニアソレノイド弁20のスプール23は低圧設定に移動しており、電動ポンプ41は駆動していない場合、接続ポート21aと第1接続ポート46cとが連通したまま第1切換弁46が故障すると、第1切換弁46の連通路46hからは作動流体が排出されないため、高圧となる。このとき、作動流体の圧送方向が逆転可能な電動ポンプ41により連通路46hから作動油を吸引する。これにより、リニアソレノイド弁20内の圧力を調整し低圧にすることができる。したがって、第1切換弁46が故障した場合でも作動流体を排出し、クラッチ30に低圧の作動油を供給することができる。
【0071】
(4)第1切換弁46がリニアソレノイド弁20の接続ポート21aと第1切換弁46の第1接続ポート46cとが連通したまま故障した場合、前述したように電動ポンプ41が連通路46hから作動油を吸引する。このとき、第1切換弁46の故障の原因となる異物の詰まりを連通路46hから除去することができる。
【0072】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態を図9から図11に基づいて説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、第1切換弁にオリフィスを有する作動流体排出通路を設ける。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0073】
第2実施形態では、図9示すように第1切換弁46の第1出力ポート46aと第1供給ポート46bとを連通する連通路46hに一端を接続する作動油排出通路46eを設ける。作動油排出通路46eの他端は、図10に示すように第1切換弁46が左方向に移動すると、オイルパン17に接続する。作動油排出通路46eの途中にはオリフィス46fが備えられている。オリフィス46fは作動油排出通路46eを通過する作動油の量を制限する。作動油排出通路46eは、特許請求の範囲に記載の「作動流体排出通路」に相当する。
【0074】
(作用)
続いて、第2実施形態での自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置の作用について図11に基づいて説明する。
図11には、図10に示すように第1切換弁46の第1出力ポート46aとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとが連通したままで第1切換弁46が故障した場合の影響を示す。
【0075】
図11bに示すように、高速での前進が可能な第5前進レンジD5または第6前進レンジD6を選択しており、かつエンジンは運転している場合、リニアソレノイド弁20は低圧設定となっており、電動ポンプ41は駆動していない。このとき、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力はリニアソレノイド弁20にかかっており、かつ第1出力ポート46aとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとが連通したままで第1切換弁46が故障しているため、第1出力ポート46aと接続ポート21aとを連通する連通路46hは高圧となる。これにより、クラッチ圧は高圧となるため、クラッチ30を開放できない。このとき、変速段を低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のうちいずれか一つに変更し、低速での前進を可能にする。
【0076】
図11dに示すように、ニュートラルレンジN、またはパーキングレンジPである場合、リニアソレノイド弁20は低圧設定となっており、電動ポンプ41は駆動していない。このとき、機械式ポンプ15からの作動油の圧力はリニアソレノイド弁20にかかっていないが、第1出力ポート46aとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとが連通したままで第1切換弁46が故障しているため、第1出力ポート46aとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとを連通する連通路46hはクラッチ30を開放できない程度の圧力となる。このとき、連通路46hに停留している作動油は、作動油排出通路46eを経由してオイルパン17に排出される。これにより、連通路46hの内圧は低下し、連通しているクラッチ30のピストン室36の内圧は低下するため、クラッチ圧はクラッチ30を開放するために必要な低圧となる。
【0077】
図11eに示すように、車両の後進が可能な後進レンジRである場合、リニアソレノイド弁20は低圧設定に移動しており、電動ポンプ41は駆動していない。このとき、機械式ポンプ15からの作動油の圧力はリニアソレノイド弁20にかかっていないが、第1出力ポート46aとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとが連通したままで第1切換弁46が故障しているため、第1出力ポート46aと接続ポート21aとを連通する連通路46hはクラッチ30を開放できない程度の圧力となる。このとき、連通路46hに滞留している作動油は、作動油排出通路46eを経由してオイルパン17に排出される。これにより連通路46hの内圧は低下し、連通しているクラッチ30のピストン室36の内圧は低下するため、クラッチ圧はクラッチ30を開放するために必要な低圧となる。
【0078】
(効果)
接続ポート21aと電動ポンプ41とを連通する第1切換弁46の連通路46hにオリフィス46fを有する作動油排出通路46eを備えている。リニアソレノイド弁20が低圧設定であって、かつ電動ポンプ41が駆動していない場合、第1切換弁46が故障により接続ポート21aと電動ポンプ41とを連通すると、連通路46h内には作動油が停留する。このとき、連通路46hに接続する作動油排出通路46eから停留する作動油を徐々に排出する。一方、電動ポンプ41が駆動し、作動油をリニアソレノイド弁に20に吐出する場合、作動油排出通路46eに備えているオリフィス46fにより排出される作動油の量が制限されているので電動ポンプ41による作動油の圧送には影響がない。したがって、第1実施形態の効果(1)〜(4)に加えて、第1切換弁46が故障した場合でも作動油を排出し、クラッチ30に低圧の作動流体を供給することができる。
【0079】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態を図12から図17に基づいて説明する。第3実施形態は、第1実施形態に対して、第2切換弁を備える。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0080】
第3実施形態では、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力と第2バネ57の付勢力によって図11の左右方向に移動可能な第2切換弁56を有している。第2切換弁56には付勢手段として第2バネ57が第2切換弁57の右側側壁に当接している。第2バネ57が第2切換弁56を図12の左方向に付勢することで、第2切換弁56は図13に比べて左方向に移動する。また、第2切換弁56の第2バネ57が当接している側と反対側の外壁には第3蓄圧室56eが形成されている。第3蓄圧室56eは、供給管18の途中に一端を接続している第2切換通路53が接続している。第2切換通路53の他端部は第2切換弁56が図12の右方向に移動するとき、他端を接続した状態を維持する。これにより、第2切換弁56は、第2バネ57により図12に示すように左方向に付勢される一方、第3蓄圧室56eに機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がかかるとき、図13に示すように第2切換弁バネ57の付勢力に抗して第2切換弁56を右方向に移動する。
【0081】
第2切換弁56は、第2出力ポート56a、第2供給ポート56b、第2接続ポート56c、および第1排出ポート56dを備えている。このうち、第2出力ポート56aと第2供給ポート56bとは第2切換弁56の内部で連通している。また、第2接続ポート56cと第2排出ポート56dとは第2切換弁46の内部で連通している。
第2出力ポート56aは、第2接続管58の一端と接続可能に形成されている。第2接続管58の他端は、第1切換弁46の第1蓄圧室46gとは反対側に設けられている第2蓄圧室46iに接続している。第2供給ポート56bは第2供給管54により機械式ポンプ15と接続している。第2接続ポート56cは第2接続管58と接続可能に形成されている。第2排出ポート56dはオイルパン17と接続可能に形成されている。
【0082】
第2切換弁56が図12に示すように左方向に移動すると、第2接続管58と第2出力ポート56aとは連通する。このとき、機械式ポンプ15に接続している第2供給管54と第2供給ポート56bとは連通する。これにより、機械式ポンプ15が吐出する作動油は第2切換弁56を通って、第2接続管58に流入する。第2接続管58に流入した作動油は機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力を保持しており、第1切換弁46の第2蓄圧室46iに吐出圧力がかかる。これにより、第1切換弁46は図12に示すように右方向に付勢される。また、第2切換弁56が図12に示すように右方向に移動すると、第2接続管58と第2接続ポート56cとは連通し、第1排出ポート56dはオイルパン17に連通する。これにより、第2接続管58内の作動流体は排出されるため内部圧力は低くなり、第1切換弁46は第1バネ47の付勢力と第1切換通路43内の作動流体の圧力との大小関係によって切換作動する。
【0083】
(作用)
次に、本実施形態での自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置の作用について図14〜図17に基づいて説明する。
最初に図14に示すリニアソレノイド弁20の状態に応じた電動ポンプ41への指令内容およびそのときに確保されるクラッチ圧を説明する。
【0084】
図14aに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のうちいずれか一つを選択しており、かつエンジンは運転しており、かつリニアソレノイド弁20が正常に作動して高圧設定となっている場合、電動ポンプ41には「駆動しない」とする指令を入力する。また、第2切換弁56では機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が第3蓄圧室56eにかかるため、第2切換弁56は図13に示すように右方向に移動し、第2接続管58の内圧を下げる。したがって、第2切換弁56によって第1切換弁46は切り換わらない。このとき、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20を経由してクラッチ30のピストン室36に伝わり、クラッチ圧は高圧となる。
【0085】
図14bに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のうちいずれか一つを選択しており、かつエンジンは運転しているが、リニアソレノイド弁20が故障により低圧設定となっている場合、電動ポンプ41には「駆動する」とする指令を入力する。このとき、第1蓄圧室46gに電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力がかかることにより、第1切換弁20は左方向に移動する。また、第2切換弁56では機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が第3蓄圧室56eにかかるため、第2切換弁56は図13に示すように右方向に移動し、第2接続管58の内圧を下げる。したがって、第2切換弁56によって第1切換弁46は切り換わらない。これにより、電動ポンプ41とリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとは第1切換弁46を介して連通する。このとき、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20を経由してクラッチ30のピストン室36に伝わり、クラッチ圧は高圧となる。
【0086】
図14cに示すように、高速での前進が可能な第5前進レンジD5または第6前進レンジD6を選択しており、かつエンジンは運転しており、かつリニアソレノイド弁20が正常に作動して低圧設定となっている場合、電動ポンプ41には「駆動しない」とする指令を入力する。また、第2切換弁56では機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が第3蓄圧室56eにかかるため、第2切換弁56は図13に示すように右方向に移動し、第2接続管58の内圧を下げる。したがって、第2切換弁56によって第1切換弁46は切り換わらない。このとき、リニアソレノイド弁20内の作動油の一部は接続ポート21aから第1切換弁46を経由してオイルパン17に流出するため、クラッチ圧は低圧となる。
【0087】
図14dに示すように、高速での前進が可能な第5前進レンジD5または第6前進レンジD6を選択しており、かつエンジンは運転しているが、リニアソレノイド弁20が故障により高圧設定となっている場合、電動ポンプ41には「駆動しない」とする指令を入力する。また、第2切換弁56では機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が第3蓄圧室56eにかかるため、第2切換弁56は図13に示すように右方向に移動し、第2接続管58の内圧を下げる。したがって、第2切換弁56によって第1切換弁46は切り換わらない。このとき、クラッチ圧は高圧となるため、低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のいずれか一つに変速段を変更することで停車状態からの低速レンジでの発進が可能となる。
【0088】
図14eに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1を選択しており、かつエンジンが停止している、すなわちアイドリングストップであり、かつリニアソレノイド弁20が正常に作動して低圧設定となっている場合、電動ポンプ41には「駆動する」とする指令を入力する。このとき、第2切換弁56は図12に示すように左方向に移動するが、機械式ポンプ15がエンジンの停止により停止しているので第2接続管58に作動油の圧力はかからない。したがって、第2切換弁56によって第1切換弁46は切り換わらない。また、機械式ポンプ15は停止していることからクラッチ30に作動油の圧力はかからない。したがって、電動ポンプ41が駆動することでリニアソレノイド弁20に作動油の圧力がかかり、クラッチ圧は高圧とする。
【0089】
図14fに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1を選択しており、かつエンジンが停止しているが、リニアソレノイド弁20が高圧設定となっている場合、電動ポンプ41には「駆動しない」とする指令を入力する。また、第2切換弁56は図12に示すように左方向に移動するが、機械式ポンプ15がエンジンの停止により停止しているので第2接続管58に作動油の圧力はかからない。したがって、第2切換弁56によって第1切換弁46は切り換わらない。このとき、車両は実行中のアイドリングストップを中止しエンジンを始動する。これにより、機械式ポンプ15は駆動し、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20を経由してクラッチ30のピストン室36に伝わり、クラッチ圧は高圧となる。
【0090】
図14gおよびhに示すように車両の変速レンジがニュートラルレンジN、またはパーキングレンジPである場合、機械式ポンプ15とリニアソレノイド弁20とは連通していない。また、第2切換弁56ではマニュアルバルブ13のスリーブ12の位置により機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が第3蓄圧室56eにかからない。第2切換弁56は図12に示すように左方向に移動し、第2接続管58に機械式ポンプ15が吐出する作動油が流入する。第2接続管58に接続する第2蓄圧室46iには機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がかかる。これにより、第2切換弁56によって第1切換弁46は右方向に移動する。このとき、リニアソレノイド弁20が低圧設定にあるか高圧設定にあるかにかかわらず、電動ポンプ41には「駆動しない」とする指令を入力する。これにより、リニアソレノイド弁20には機械式ポンプ15および電動ポンプ41からの作動油の圧力はかからないため、クラッチ圧は低圧となる。また、電動ポンプ41が故障により駆動した場合、接続ポート21aと第1接続ポート46aと接続していないので、電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力は,リニアソレノイド弁20にかからない。したがって、クラッチ圧は低圧となる。
【0091】
図14iおよびjに示すように、車両の後進が可能な後進レンジRである場合、機械式ポンプ15とクラッチ30とは連通していない。また、第2切換弁56ではマニュアルバルブ13のスリーブ12の位置により機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が第3蓄圧室56eにかからない。第2切換弁56は図12に示すように左方向に移動し、第2接続管58に機械式ポンプ15が吐出する作動油が流入する。第2接続管58に接続する第2蓄圧室46iには機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がかかる。これにより、第2切換弁56によって第1切換弁46は右方向に移動する。このとき、リニアソレノイド弁20が低圧設定にあるか高圧設定にあるかにかかわらず、電動ポンプ41には「駆動しない」とする指令を入力する。これにより、ソレノイド弁20には機械式ポンプ15および電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力はかからないため、クラッチ圧は低圧となる。また、電動ポンプ41が故障により駆動した場合、接続ポート21aと第1接続ポート46aと接続していないので、電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力は,リニアソレノイド弁20にかからない。したがって、クラッチ圧は低圧となる。
【0092】
次に、図15に示す電動ポンプ41の状態の応じたリニアソレノイド弁20への指令内容およびそのときに確保されるクラッチ圧を説明する。
図15aに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のうちいずれか一つを選択しており、かつエンジンは運転しており、かつ電動ポンプ41が正常な状態であって駆動していない場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定に移動する」とする指令を入力する。また、第2切換弁56では機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が第3蓄圧室56eにかかるため、第2切換弁56は図13に示すように右方向に移動し、第2接続管58の内圧を下げる。したがって、第2切換弁56によって第1切換弁46は切り換わらない。このとき、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20を経由してクラッチ30のピストン室36に伝わり、クラッチ圧は高圧となる。
【0093】
図15bに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のうちいずれか一つを選択しており、かつエンジンは運転しているが、電動ポンプ41が故障して駆動している場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定または低圧設定のいずれかに移動する」とする指令を入力する。また、第2切換弁56では機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が第3蓄圧室56eにかかるため、第2切換弁56は図13に示すように右方向に移動し、第2接続管58の内圧を下げる。したがって、第2切換弁56によって第1切換弁46は切り換わらない。これにより、電動ポンプ41とリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとは第1切換弁46を介して連通する。このとき、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20を経由してクラッチ30のピストン室36に伝わり、クラッチ圧は高圧となる。
【0094】
図15cに示すように、高速での前進が可能な第5前進レンジD5または第6前進レンジD6を選択しており、かつエンジンが運転しており、かつ電動ポンプ41が正常な状態であって駆動していない場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を低圧設定に移動する」とする指令を入力する。また、第2切換弁56では機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が第3蓄圧室56eにかかるため、第2切換弁56は図13に示すように右方向に移動し、第2接続管58の内圧を下げる。したがって、第2切換弁56によって第1切換弁46は切り換わらない。このとき、リニアソレノイド弁20内部の作動油の一部は接続ポート21aから第1切換弁46を経由してオイルパン17に流出するため、クラッチ圧は低圧となる。
【0095】
図15dに示すように、高速での前進が可能な第5前進レンジD5または第6前進レンジD6を選択しており、かつエンジンは運転しているが、電動ポンプ41が故障して駆動している場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定または低圧設定のいずれかに移動する」とする指令を入力する。また、第2切換弁56では機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が第3蓄圧室56eにかかるため、第2切換弁56は図13に示すように右方向に移動し、第2接続管58の内圧を下げる。したがって、第2切換弁56によって第1切換弁46は切り換わらない。このとき、クラッチ圧は高圧となるため、低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のいずれか一つに変速段を変更することで停車状態からの低速レンジでの発進が可能となる。
【0096】
図15eに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1を選択しており、かつエンジンが停止している、すなわちアイドリングストップであり、かつ電動ポンプ41が正常であって駆動している場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を低圧設定に移動する」とする指令を入力する。また、第2切換弁56は図12に示すように左方向に移動するが、機械式ポンプ15がエンジンの停止により停止しているので第2接続管58に作動油の圧力はかからない。したがって、第2切換弁56によって第1切換弁46は切り換わらない。また、機械式ポンプ15は停止していることからクラッチ30に作動油の圧力はかからない。したがって、電動ポンプ41が駆動することでリニアソレノイド弁20に作動油の圧力がかかり、クラッチ圧は高圧とする。
【0097】
図15fに示すように、低速での前進が可能な第1前進レンジD1を選択しており、かつエンジンが停止しているが、電動ポンプ41が故障して駆動していない場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定または低圧設定のいずれかに移動する」とする指令を入力する。また、第2切換弁56は図12に示すように左方向に移動するが、機械式ポンプ15がエンジンの停止により停止しているので第2接続管58に作動油の圧力はかからない。したがって、第2切換弁56によって第1切換弁46は切り換わらない。このとき、車両は実行中のアイドリングストップを中止しエンジンを始動する。これにより、機械式ポンプ15は駆動し、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がリニアソレノイド弁20を経由してクラッチ30のピストン室36に伝わり、クラッチ圧は高圧となる。
【0098】
図15gに示すようにニュートラルレンジN、またはパーキングレンジPである場合、機械式ポンプ15とリニアソレノイド弁20とは連通していない。このとき、電動ポンプ41が正常であって駆動していない場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定または低圧設定のいずれかに移動する」とする指令を入力する。また、第2切換弁56では機械式ポンプ15から吐出圧力は第3蓄圧室56eにかからないため、第2切換弁56は図11に示すように左方向に移動する。機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が第2接続管58を経由して第2蓄圧室46iにかかる。したがって、第1切換弁46は、図12に示すように右方向に移動する。これにより、リニアソレノイド弁20内に停留する作動油をオイルパン17に排出する。また、リニアソレノイド弁20には機械式ポンプ15は連通していないため、リニアソレノイド弁20には作動油の圧力がかからない。これにより、クラッチ圧は低圧となる。
【0099】
図15hに示すように、ニュートラルレンジN、またはパーキングレンジPである場合、機械式ポンプ15とリニアソレノイド弁20とは連通していない。しかし、電動ポンプ41が故障により駆動している場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定または低圧設定のいずれかに移動する」とする指令を入力する。第2切換弁56では機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力は第3蓄圧室56eにかからないため、第2切換弁56は図12に示すように左方向に移動する。これにより、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が第2接続管58を経由して第2蓄圧室46iにかかる。したがって、第1切換弁46は、図11に示すように右方向に移動する。これにより、リニアソレノイド弁20内に停留する作動油をオイルパン17に排出する。また、リニアソレノイド弁20には機械式ポンプ15は連通していないため、リニアソレノイド弁20には作動油の圧力がかからない。これにより、クラッチ圧は低圧となる。
【0100】
図15iに示すように、車両の後進が可能な後進レンジRである場合、機械式ポンプ15とリニアソレノイド弁20とは連通していない。このとき、電動ポンプ41が正常であって駆動していない場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定または低圧設定のいずれかに移動する」とする指令を入力する。第2切換弁56では機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力は第3蓄圧室56eにかからないため、第2切換弁56は図11に示すように左方向に移動する。これにより、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が第2接続管58を経由して第2蓄圧室46iにかかる。したがって、第1切換弁46は、図12に示すように右方向に移動する。これにより、リニアソレノイド弁20内に停留する作動油をオイルパン17に排出する。また、リニアソレノイド弁20には機械式ポンプ15は連通していないため、リニアソレノイド弁20には作動油の圧力がかからない。これにより、クラッチ圧は低圧となる。
【0101】
図15jに示すように、車両の後進が可能な後進レンジRである場合、機械式ポンプ15とリニアソレノイド弁20とは連通していない。しかし、電動ポンプ41が故障により駆動している場合、リニアソレノイド弁20には「スプール23を高圧設定に移動する」とする指令を入力する。第2切換弁56では機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力は第3蓄圧室56eにかからないため、第2切換弁56は図11に示すように左方向に移動する。これにより、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力が第2接続管58を経由して第2蓄圧室46iにかかる。したがって、第1切換弁46は、図12に示すように右方向に移動する。これにより、リニアソレノイド弁20内に停留する作動油をオイルパン17に排出する。また、リニアソレノイド弁20には機械式ポンプ15は連通していないため、リニアソレノイド弁20には作動油の圧力がかからない。これにより、クラッチ圧は低圧となる。
【0102】
次に第2切換弁56が故障した場合の影響を第1切換弁46の状態にあわせて図16および図17に基づいて説明する。
【0103】
図16には、図13に示すように第2接続ポート56cと第2接続管58とが連通したままで第2切換弁56が故障した場合の影響を示す。図16(A)は、第1切換弁46が正常に作動している場合、図16(B)は第1切換弁46が第1接続ポート46cとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとを連通したまま故障した場合、図16(C)は第1切換弁46が第1出力ポート46aとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとを連通したまま故障した場合、を示す。
【0104】
図16では、第2切換弁56は第2接続ポート56cと第2接続管58とが連通している。これにより、第2切換弁56に接続する第1切換弁46の第2蓄圧室46iに機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力はかからない。したがって、第2切換弁56によって第1切換弁46が切り換わらない。すなわち、第2接続ポート56cと第2接続管58とが連通している状態では、第2切換弁56の故障の影響は第1実施形態で説明した図7および図8と同じになる。
【0105】
図17には、図12に示すように第2出力ポート56aと第2接続管58とが連通したままで第2切換弁56が故障した場合の故障の影響を示す。図17(A)は、第1切換弁46が正常に作動している場合、図17(B)は第1切換弁46が第1接続ポート46cとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとを連通したまま故障した場合、図17(C)は第1切換弁46が第1出力ポート46aとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとを連通したまま故障した場合、を示す。
【0106】
図17では、第2切換弁56は、第2出力ポート56aと第2接続管58とが連通している。この状態で機械式ポンプ15を駆動すると、第2切換弁56を経由して第2蓄圧室46iに機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力がかかる。これにより、第1切換弁46は図12の右方向に移動する。第1切換弁46が右方向に移動すると、リニアソレノイド弁20の接続ポート21aと第1接続ポート46cとを接続する。したがって、リニアソレノイド弁20の内部に停留する作動油は接続ポート21aを通ってオイルパン17に排出される。
【0107】
図17(B)cで電動ポンプ41が駆動した場合、電動ポンプ41と接続ポート21aとは接続していないため、リニアソレノイド弁20の内部と連通しているクラッチ30のピストン室36は低圧となる。このとき、アイドリングストップを中止しエンジンを始動することでクラッチ圧を高圧にする。
【0108】
図17(C)bでは、リニアソレノイド弁20は低圧設定となっており、電動ポンプ41は駆動しない。このとき、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力はリニアソレノイド弁20にかかっており、かつリニアソレノイド弁20の内部から作動油を排出しないのでクラッチ圧は高圧となる。これにより、クラッチ30を開放できない。このとき、変速段を低速での前進が可能な第1前進レンジD1から第4前進レンジD4のうちいずれか一つに変更し、低速での前進を可能にする。
【0109】
図17(C)dおよびeでは、リニアソレノイド弁20のスプール23は低圧設定となっており、電動ポンプ41は駆動しない。このとき、機械式ポンプ15からの作動油の圧力はリニアソレノイド弁20にかかっていないが、第1出力ポート46aと接続ポート21aとが連通したままで第1切換弁46が故障しているため、第1出力ポート46aとリニアソレノイド弁20の接続ポート21aとを連通する連通路46hはクラッチ30を開放できない程度の圧力となる。このとき、圧送方向を逆転可能な電動ポンプ41を駆動し、連通路46h内の作動油を吸引することで内圧を下げ、クラッチ圧はクラッチ30を開放するために必要な低圧となる。
【0110】
(効果)
第3実施形態では、機械式ポンプ15が吐出する作動油の圧力により切換作動する第2切換弁56を備えている。機械式ポンプ15と第1切換弁46の第2蓄圧室46iとを連通する場合、第2切換弁56が吐出する作動油の圧力により第1切換弁46は電動ポンプ41が吐出する作動油の圧力に抗して図12の右方向に移動する。これにより、ニュートラルレンジN、またはパーキングレンジP、または後進レンジRであり、かつ電動ポンプ41が故障により駆動している場合、リニアソレノイド弁20のスプール23の位置に関わらず、クラッチ圧を低圧にすることができる。したがって、第1実施形態の効果(1)から(4)に加えて、リニアソレノイド弁20および電動ポンプ41が同時に故障した場合でも、リニアソレノイド弁20内の作動油を排出し、クラッチ30に低圧の作動油を供給することができる。
【0111】
(第4実施形態)
次に本発明の第4実施形態を図18に基づいて説明する。第4実施形態は、第3実施形態に対して第1切換弁オリフィスを有する作動流体排出通路を設ける。なお、第3実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0112】
第4実施形態では、第1切換弁46の第1出力ポート46aと第1供給ポート46bとを連通する連通路46hに一端を接続する作動油排出通路46eを設ける。作動油排出通路46eの他端は、第1切換弁46が左方向に移動すると、第1供給管44に接続する。作動油排出通路46eの途中にはオリフィス46fが備えられている。オリフィス46fは作動油排出通路46eを通過する作動油の量を制限する。作動油排出通路46eは、特許請求の範囲に記載の「作動流体排出通路」に相当する。
【0113】
第1切換弁46が故障により接続ポート21aと第1出力ポート46aとが接続したまま故障されている場合、リニアソレノイド弁20内の圧力を調整することができない。第4実施形態では、接続ポート21aと第1出力ポート46aとを連通する連通路46hに一端を接続する作動油排出通路46eにより、連通路46hに滞留する作動油を徐々に排出する。一方、電動ポンプ41が駆動し、作動油をリニアソレノイド弁に20に吐出する場合、作動油排出通路46eに備えているオリフィス46fにより排出される作動油の量が制限されているので電動ポンプ41による作動油の圧送には影響がない。したがって、第1実施形態の効果(1)〜(4)に加えて、第1切換弁46が故障した場合でも作動油を排出し、クラッチ30に低圧の作動流体を供給することができる。
【0114】
(その他の実施形態)
(ア)上述の実施形態では、第1切換弁に接続する電動ポンプの種類をギアポンプとした。しかし、電動ポンプの種類はこれに限定されなくてもよい。電気モータ駆動容積ポンプ、ソレノイド駆動ポンプ、圧電駆動ポンプなどでもよい。
【0115】
(イ)上述の実施形態では、作動流体の圧力を制御するスプール弁をリニアソレノイド弁とした。しかし、スプール弁はこれに限定されなくてもよい。
【0116】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0117】
15 ・・・機械式ポンプ、
17 ・・・オイルパン(貯留槽)、
21a ・・・接続ポート、
21b ・・・出力ポート、
21c ・・・供給ポート、
20 ・・・リニアソレノイド弁(スプール弁)、
21 ・・・スリーブ、
23 ・・・スプール、
28 ・・・リニアソレノイド弁TCU(スプール弁駆動制御手段)、
30 ・・・クラッチ(発進に寄与する摩擦要素)、
41 ・・・電動ポンプ(電気式ポンプ)、
42a ・・・電動ポンプTCU(電気式ポンプ制御手段)、
46 ・・・第1切換弁、
46e ・・・作動油排出通路(作動流体排出通路)、
46f ・・・オリフィス、
46h ・・・連通路、
46i ・・・第2蓄圧室(蓄圧室)、
56 ・・・第2切換弁、
58 ・・・第2接続管(接続通路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の摩擦要素の係合および開放を制御することにより変速を行う自動変速機と停車時に内燃機関を停止するアイドルストップ装置とを装備する車両に用いる自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置であって、
前記内燃機関によって機械的に駆動される機械式ポンプと、
前記内燃機関の運転または停止に関わらず電気的に駆動される電気式ポンプと、
前記電気式ポンプの駆動を制御する電気式ポンプ駆動制御手段と、
前記機械式ポンプからの作動流体を供給する供給ポート、外部へ作動流体を排出または前記電気式ポンプからの作動流体を供給する接続ポート、および前記複数の摩擦要素のうち発進に寄与する摩擦要素へ作動流体を出力する出力ポートを有するスリーブと、前記スリーブの内部に嵌入して往復移動可能に設けられ、前記スリーブでの軸方向の変位によって前記出力ポートと前記供給ポートとの連通または前記出力ポートと前記接続ポートとの連通を選択的に切り換えるスプールとを設けるスプール弁と、
前記スリーブに対する前記スプールの駆動を制御するスプール弁駆動制御手段と、
前記スプール弁の前記接続ポートと前記電気式ポンプとの連通または前記接続ポートと作動流体を貯留する貯留槽との連通を選択的に切り換える切換作動をする第1切換弁と、
を備え、
前記電気式ポンプが吐出する作動流体の圧力によって前記第1切換弁は前記切換作動をすることを特徴とする自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置において、
前記車両が前進可能な前進用レンジであって、かつ前記内燃機関が運転中であって、かつ前記スプール弁が前記出力ポートと前記接続ポートとを連通する場合、前記電気式ポンプを駆動することを特徴とする自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置において、
前記前進用レンジであって、かつ前記内燃機関が停止する場合、前記スプール弁は前記出力ポートと前記接続ポートとを連通し、前記電気式ポンプを駆動することを特徴とする自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置において、
前記電気式ポンプは作動流体の吸入と吐出とを逆転することができるポンプであって、
前記第1切換弁が前記スプール弁の前記接続ポートと前記電気式ポンプとを連通したままとなり、かつ前記接続ポートと前記電気式ポンプとを連通する連通路を低圧にする場合、前記電気式ポンプは前記連通路の作動流体を吸引することを特徴とする自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置において、
前記第1切換弁は、前記連通路に一端を接続し、他端を前記貯留槽に接続可能な作動流体排出通路を備え、前記作動流体排出通路にオリフィスを設けることを特徴とする自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置。
【請求項6】
複数の摩擦要素の係合および開放を制御することにより変速を行う自動変速機と停車時に内燃機関を停止するアイドルストップ装置とを装備する車両に用いる自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置であって、
前記内燃機関によって機械的に駆動される機械式ポンプと、
前記内燃機関の運転または停止に関わらず電気的に駆動される電気式ポンプと、
前記電気式ポンプの駆動を制御する電気式ポンプ駆動制御手段と、
前記機械式ポンプからの作動流体を供給する供給ポート、外部へ作動流体を排出または前記電気式ポンプからの作動流体を供給する接続ポート、および前記複数の摩擦要素のうち発進に寄与する摩擦要素へ作動流体を出力する出力ポートを有するスリーブと、前記スリーブの内部に嵌入して往復移動可能に設けられ、前記スリーブでの軸方向の変位によって前記出力ポートと前記供給ポートとの連通または前記出力ポートと前記接続ポートとの連通を選択的に切り換えるスプールとを設けるスプール弁と、
前記スリーブに対する前記スプールの駆動を制御するスプール弁駆動制御手段と、
前記スプール弁の前記接続ポートと前記電気式ポンプとの連通または前記接続ポートと作動流体を貯留する貯留槽との連通を選択的に切り換える第1切換作動をする第1切換弁と、
前記第1切換弁に形成される蓄圧室と接続する接続通路と前記機械式ポンプとの連通または前記接続通路と前記貯留槽との連通を選択的に切り換える第2切換作動をする第2切換弁と、
を備え、
前記第2切換弁は、前記機械式ポンプの作動流体の圧力によって前記第2切換作動をし、
前記第1切換弁は、前記接続通路内の作動流体の圧力と前記電気式ポンプの作動流体の圧力とによって前記第1切換動作をすることを特徴とする自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置において、
前記車両が前進可能な前進用レンジであって、かつ前記内燃機関が運転中であって、かつ前記スプール弁が前記出力ポートと前記接続ポートとを連通する場合、前記電気式ポンプを駆動することを特徴とする自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置において、
前記前進用レンジであって、かつ前記内燃機関が停止する場合、前記スプール弁は前記出力ポートと前記接続ポートとを連通し、前記電気式ポンプを駆動することを特徴とする自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか一項に記載の自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置において、
前記電気式ポンプは作動流体の吸入と吐出とを逆転することができるポンプであって、
前記第1切換弁が前記スプール弁の前記接続ポートと前記電気式ポンプとを連通したままとなり、かつ前記接続ポートと前記電気式ポンプとを連通する連通路を低圧にする場合、前記電気式ポンプは前記連通路の作動流体を吸引することを特徴とする自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか一項に記載の自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置において、
前記第1切換弁は、前記連通路に一端を接続し、他端を前記貯留槽に接続可能な作動流体排出通路を備え、前記作動流体排出通路にオリフィスを設けることを特徴とする自動変速機用アイドルストップ油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−145160(P2012−145160A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3334(P2011−3334)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】