説明

自動変速機

【課題】コントロールシャフトに引きずり力が加わるのを防止することにより、シフトレバーの操作感の悪化を防止できる自動変速機を提供する。
【解決手段】ケーシング2にシャフト挿通穴2bを形成し、該挿通穴2b内にシフトレバーが連結されたコントロールシャフト32を回動可能に挿入するとともに、変速モード切り換え機構3に連結し、該コントロールシャフト32の上記ケーシング2の外壁面から外方に突出する突出部(上端部)32bにインナロータ42を共に回動するように係合させるとともに、ハウジング41を上記ケーシング2の外壁面に締結部材(ボルト)48により締結固定する場合に、上記ハウジング41に、上記挿通穴2b(大径部2c)の周縁部に嵌合する差し込み部41gを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトレバーのレンジ位置を検出するニュートラルスタートスイッチを備えた自動変速機に関し、詳細にはニュートラルスタートスイッチの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に搭載される自動変速機では、シフトレバーの操作によって選択的に切り換えられたレンジ位置を検出し、PあるいはN位置ではスタータ始動させるとともに、該検出されたレンジ位置を運転席のメータ機器に表示するためのニュートラルスタートスイッチを備えている。
【0003】
この種のニュートラルスタートスイッチは、ハウジング内に各レンジに対応した接点を有する基板を配置するとともに、インナロータをコントロールシャフトに取り付け、該インナロータが上記何れかの接点に電気的に当接可能とした構造を有している。
【0004】
一方、上記ニュートラルスタートスイッチの組立て作業では、コントロールシャフトにインナロータを共に回動するように装着するとともに、両者を治具によりニュートラル位置に位置決めし、この状態でハウジンクを変速機ケースにボルト締め固定するのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−67010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の自動変速機では、ハウジングを変速機ケースにボルトにより締め付ける際に、ハウジングがボルトの締め付け方向に引きずられた状態で固定されるおそれがある。このため、上記引きずり力によりインナロータを介してコントロールシャフトが変速機ケースに押圧され、該コントロールシャフトの摺動抵抗が大きくなる。その結果、シフトレバーの操作感が悪化するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の状況に鑑みてなされたもので、コントロールシャフトに引きずり力が加わるのを防止することにより、シフトレバーの操作感の悪化を防止できる自動変速機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、自動変速機構及び該自動変速機構をシフトレバーの操作によって選択されたレンジ位置に対応した変速モードに切り換える変速モード切り換え機構が収納されたケーシングと、ハウジング内に上記レンジ位置を検出するインナロータが回動可能に収納されたニュートラルスタートスイッチとを備えた自動変速機において、上記ケーシングにシャフト挿通穴を形成し、該挿通穴内に上記シフトレバーが連結されたコントロールシャフトを回動可能に挿入するとともに、上記変速モード切り換え機構に連結し、該コントロールシャフトの上記ケーシングの外壁面から外方に突出する突出部に上記インナロータを共に回動するように係合させるとともに、上記ハウジングを上記ケーシングの外壁面に締結部材により締結固定し、上記ハウジングに、上記挿通穴の周縁部に嵌合する差し込み部を形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る自動変速機によれば、ニュートラルスタートスイッチのハウジングにケーシングの挿通穴の周縁部に嵌合する差し込み部を形成したので、ハウジングの差し込み部を挿通穴内に差し込んだ状態で、該ハウジングをケーシングに締結固定することにより、締結時の引きずり力はハウジングの差し込み部を介してケーシングが負担することとなり、引きずり力がコントロールシャフトに加わるのを防止できる。その結果、シフトレバーの操作感の悪化を防止できる。
【0009】
また上記ハウジングの差し込み部が、挿通穴内にダストが侵入するのを防止するシール機能を有するとともに、インナロータの中心を挿通穴の中心に一致させる芯出し機能を有することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1ないし図5は、本発明の一実施形態による自動変速機を説明するための図であり、図1は自動変速機の側面図、図2は自動変速機の平面図、図3はニュートラルスタートスイッチの平面図、図4はニュートラルスタートスイッチの取付け状態の図、図5はニュートラルスタートスイッチの断面図である。
【0012】
図において、1は自動車のエンジンに一体的に結合される自動変速機を示している。この自動変速機1は、ケーシング2内に、主としてベルト式無段変速機構6と、該無段変速機構6をシフトレバー(不図示)の操作によって選択されたP(パーキング)−R(リバース)−N(ニュートラル)−D(ドライブモード)−S(スポーツモード)−B(ブレーキモード)の何れかのレンジ位置に対応した変速モードに切り換える変速モード切り換え機構3とを収容した構造を有している。
【0013】
上記自動変速機1は、上記シフトレバーのレンジ位置を検出し、PあるいはN位置ではキー操作によるスタータ(不図示)始動を可能にするとともに、該検出されたレンジ位置を運転席に配設されたメータ装置(不図示)に表示するニュートラルスタートスイッチ5を備えている。
【0014】
また上記ケーシング2内には、エンジン回転力がトルクコンバータ(不図示)を介して伝達される入力軸4と、該入力軸4に装着された前後進の切り換え動作を行なう遊星ギヤ機構(不図示)と、上記入力軸4の回転が遊星ギヤ機構を介して伝達される上記ベルト式無段変速機構6と、該ベルト式無段変速機構6の回転が差動歯車機構(不図示)を介して伝達される左,右の出力軸8とが収容されている。この左,右の出力軸8に車軸を介して車輪が連結されている。
【0015】
上記Vベルト式無段変速機構6は、上記入力軸4に同軸をなすよう配置されたプライマリ軸13に設けられたプライマリシーブ10と、該プライマリシーブ10と平行に配置されたセカンダリ軸16に設けられたセカンダリシーブ11と、該セカンダリプーリ11とプライマリプート10とに巻回されたVベルト12とを備えている。
【0016】
上記変速モード切り換え機構3は、ケーシング2内の底部に配置され、上記変速モードに対応した油圧経路を有するバルブボディ22と、該バルブボディ22内に進退可能に挿入され、何れかの油圧経路に切り換えるマニュアルバルブ30とを有している。なお、aは作動油の油面を示している。
【0017】
上記ケーシング2の上壁部2aにはシャフト挿通穴2bが形成されている。この挿通穴2bには、上下方向に延びるコントロールシャフト32が挿入されており、該コントロールシャフト32の下端部32aは上記変速モード切り換え機構3に連結されている。詳細には、コントロールシャフト32の下端部32aには、該コントロールシャフト32の回動を上記マニュアルバルブ30の軸方向移動に変換するレバー34が連結されている。ここで、33は、コントロールシャフト32をシフトレバーのシフト位置に対応したレンジ位置に保持するディテントプレートである。また、40は、コントロールシャフト32がPレンジ位置に回動すると、セカンダリ軸16のパーキングギヤ(不図示)に噛合して車輪をロックするパーキングポールである。
【0018】
上記コントロールシャフト32の上端部32bは、上記上壁部2aから上方に突出しており、該上端部32bにはアーム35がナット35aにより締結固定されている。該アーム35に上記シフトレバーがコントロールケーブル(不図示)を介して連結されている。
【0019】
上記挿通穴2bの開口部には、該挿通穴2bより大径の大径部2cが段付き状に形成されている。この大径部2c内には該大径部2cとコントロールシャフト32との間をシールするオイルシール38が配置されている。
【0020】
上記ニュートラルスタートスイッチ5は、大略扇形状のハウジング41内にインナロータ42を回動可能に収容した概略構造を有している。
【0021】
上記ハウジング41は、箱状のハウジング部41aの上側開口を蓋部41bで気密に閉塞した構造となっている。該ハウジング部41a及び蓋部41bの基部にはそれぞれ同軸をなすよう孔41e,41eが形成されている。
【0022】
上記インナロータ42は、上記各孔41eを上下に挿通するように配置された円筒状の軸部42aと、該軸部42aからハウジング41内に延びる検出部42bとを有している。上記ハウジング41の各孔41e内には上記軸部42aとの間をシールするシール部材44,44が配置されている。
【0023】
上記ハウジング部41aの底面には、上記各レンジP〜Bに対応した複数の接点45aを有する基板45が配置固定されている。一方、上記インナロータ42の検出部42bには、上記何れかの接点45aに電気的に当接する接点46が配置されており、該接点46はばね部材47により上記接点45aに当接するよう付勢されている。また上記ハウジング部41aには、各接点45aを外部に導出するコネクタ部41dが形成されており、該コネクタ部41dはハーネス(不図示)により上述のスタータおよびメータ装置に接続されている。
【0024】
上記コントロールシャフト32の上端部32bは、上記インナロータ42の軸部42a内を貫通しており、該インナロータ42と共に回動するよう該軸部42aに係合している。具体的には、図3に示すように、上端部32bに長円状の係合片部32b′を形成し、上記軸部42aに同じく長円状の係合スリット部42a′を形成し、該係合スリット部42a′に係合片部32b′に係合させた構造となっている。
【0025】
上記ハウジング部41aには、一対の取付けフランジ部41c,41cが突出形成されており、該各取付けフランジ部41cには長孔状のボルト孔41i,41iが形成されている。上記ハウジング41は、ボルト(締結部材)48,48を上記ボルト孔41iからケーシング2の上壁部2aに形成されたねじ孔2e,2e内にねじ込むことにより該ケーシング2に締結固定されている。
【0026】
そして上記ハウジング部41aの底面には、上記シャフト挿通孔2bの大径部2cの周縁部に嵌合する差し込み部41gが一体形成されている。この差し込み部41gは、上記ハウジング部41aの孔41eの開口縁に沿って環状に延びており、該差し込み部41gの下端は上記オイルシール38に当接又は近接している。
【0027】
上記ニュートラルスタートスイッチ5を取付けるには、コントロールシャフト32を治具等によりニュートラル位置に位置決めし、該コントロールシャフト32にハウジング41をインナロータ42がニュートラル位置に一致するように上方から挿着するとともに、該ハウジング41の差し込み部41gを挿通孔2bの大径部2c内に差し込む。この状態でボルト48をケーシング2に締め付けることにより固定する。
【0028】
この場合、上記ボルト48の締め付け力によりハウジング41が締め付け方向に引きずられた状態で固定され、コントロールシャフト32の摺動抵抗が大きくなるという懸念がある。
【0029】
本実施形態では、ハウジング部41aの底面に、ケーシング2に形成された挿通穴2bの大径部2cの周縁部に嵌合する差し込み部41gを形成したので、該差し込み部41gを大径部2c内に差し込んだ状態で、各ボルト48によりハウジング41をケーシング2に締結固定することにより、上記引きずり力はハウジング41の差し込み部41gを介してケーシング2が負担することとなり、引きずり力がコントロールシャフト32に加わるのを防止できる。その結果、シフトレバーの操作感の悪化を防止できる。
【0030】
また上記ハウジング41の差し込み部41gが、挿通穴2b内にダストが侵入するのを防止するシールとして機能するとともに、インナロータ42の中心を挿通穴2bの中心に一致させる芯出し機能を有することとなる。
【0031】
なお、上記実施形態では、自動変速機構として、ベルト式無段変速機構を例にとって説明したが、本発明は、多板クラッチ式自動変速機構にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態による自動変速機の側面図である。
【図2】上記自動変速機の平面図である。
【図3】上記自動変速機のニュートラルスタートスイッチの平面図である。
【図4】上記ニュートラルスタートスイッチの取付け状態の図である。
【図5】上記ニュートラルスタートスイッチの断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 自動変速機
2 ケーシング
2b シャフト挿通孔
3 変速モード切り換え機構
5 ニュートラルスタートスイッチ
6 ベルト式無段変速機構(自動変速機構)
32 コントロールシャフト
32b 上端部(突出部)
41 ハウジング
41g 差し込み部
42 インナロータ
48 ボルト(締結部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機構及び該自動変速機構をシフトレバーの操作によって選択されたレンジ位置に対応した変速モードに切り換える変速モード切り換え機構が収納されたケーシングと、ハウジング内に上記レンジ位置を検出するインナロータが回動可能に収納されたニュートラルスタートスイッチとを備えた自動変速機において、
上記ケーシングにシャフト挿通穴を形成し、該挿通穴内に上記シフトレバーが連結されたコントロールシャフトを回動可能に挿入するとともに、上記変速モード切り換え機構に連結し、
該コントロールシャフトの上記ケーシングの外壁面から外方に突出する突出部に上記インナロータを共に回動するように係合させるとともに、上記ハウジングを上記ケーシングの外壁面に締結部材により締結固定し、
上記ハウジングに、上記挿通穴の周縁部に嵌合する差し込み部を形成したことを特徴とする自動変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−255630(P2007−255630A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82540(P2006−82540)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】