自動変速装置の制御装置
【課題】 入力軸がインターロックし、出力軸がニュートラルとなる故障が発生したとしても確実に検知可能な自動変速機の制御装置を提供すること。
【解決手段】 検出された車速が所定値以上、第1及び第2回転数検出手段により検出された回転数が共に所定値以下、かつ、前記第1減速度検出手段により検出された前記第1回転要素以外の回転要素の減速度が所定値以上であり、前記第2減速度検出手段により検出された前記第2出力回転要素の減速度が所定値未満のときは、第1遊星歯車列においてインターロックが発生し、第2遊星歯車列がニュートラルとなる故障と判定する故障判定手段を設けた。
【解決手段】 検出された車速が所定値以上、第1及び第2回転数検出手段により検出された回転数が共に所定値以下、かつ、前記第1減速度検出手段により検出された前記第1回転要素以外の回転要素の減速度が所定値以上であり、前記第2減速度検出手段により検出された前記第2出力回転要素の減速度が所定値未満のときは、第1遊星歯車列においてインターロックが発生し、第2遊星歯車列がニュートラルとなる故障と判定する故障判定手段を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速装置に関し、特に締結要素の締結故障を検知する制御に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機の故障を検知する制御として、特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報には、アップシフト中にタービン回転数が車速センサから算出された所定回転数を越えたときに、締結要素により動力が伝達されていないニュートラルと判定し故障を検知している。また、特許文献2に記載の技術には、エンジン回転数が吹き上がらず、出力軸の加速度が所定値以上低下したときに、不要な締結要素の締結によりインターロックが発生したと判断している。また、特許文献3では、実ギヤ比が現在の変速段におけるギヤ比に基づいて設定された正常範囲内にないときは、故障と判定して変速を禁止している。
【特許文献1】特開2004−60824号公報。
【特許文献2】特開平5−296323号公報。
【特許文献3】特開平10−73159号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年は変速機の多段化が進み、クラッチ、ブレーキといった摩擦要素の数も変速段数に応じて増加している。このため、摩擦要素が1つ故障しただけで、上記のようなニュートラルやインターロックといった故障とは異なる故障、具体的には、入力軸がインターロックしているにも係わらず、出力軸がニュートラルとなる故障が発生することが判明した。このため、従来のような故障検知制御はいずれもギヤ比(=入力回転/出力回転)が大きくなるものであるため、上記特許文献1や特許文献2の方法では検知自体困難である。ちなみに、入力軸インターロックで出力軸ニュートラルの場合、ギヤ比は小さくなる。
【0004】
また、特許文献3のように現変速段と実ギヤ比とのずれから故障判定した場合、何らかの故障が発生したことは判定できるものの、どのような故障なのかを特定することは考慮されていないため、全ての故障を考慮してそれらの故障全てにおいて安全となるようなフェールセーフ制御を行わざるを得ず、その結果、フェール時に選択できる変速段などが限られてしまい、故障時に走行性能が大幅に悪化するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、入力軸がインターロックし、出力軸がニュートラルとなる故障が発生したとしても確実に検知可能な自動変速機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の自動変速機の制御装置では、動力源からの動力が入力される入力軸と、前記入力軸と連結された第1入力回転要素と、第1出力回転要素と、第1回転要素と、第2回転要素と、を有する第1遊星歯車列と、前記第1出力回転要素と連結された第2入力回転要素と、ワンウェイクラッチにより選択的に停止される第3回転要素と、共線図上で前記第2入力回転要素とワンウェイクラッチとの間に配置された第2出力回転要素と、を有する第2遊星歯車列と、前記第2出力回転要素に連結され、駆動輪側に変速された前記動力を出力する出力軸と、前記第1回転要素を選択的に停止可能な第1ブレーキと、正常時には前記第1ブレーキと同時締結せず、前記第2回転要素を選択的に停止可能な第2ブレーキ、又は前記第1遊星歯車列内の2つの回転要素間に設けられたクラッチと、走行状態に基づいて指令変速段を決定し、前記第1ブレーキ、前記第2ブレーキ又は前記クラッチ、及び他の締結要素の締結・解放制御則を実行して前記指令変速段を達成する変速制御手段と、を備えた自動変速機の制御装置において、車速を検出する車速検出手段と、前記第1遊星歯車列の各回転要素のうち、少なくとも前記第1回転要素以外の回転要素の回転数を検出する回転数検出手段と、前記回転数検出手段により検出された回転数に基づいて、前記第1回転要素以外の回転要素の減速度を算出する第1減速度検出手段と、前記第2出力回転要素の減速度を検出する第2減速度検出手段と、検出された車速が所定値以上、前記回転数検出手段により検出された回転数が所定値以下、かつ、前記第1減速度検出手段により検出された前記第1回転要素以外の回転要素の減速度が所定値以上であり、前記第2減速度検出手段により検出された前記第2出力回転要素の減速度が所定値未満のときは、前記第1遊星歯車列においてインターロックが発生し、前記第2遊星歯車列がニュートラルとなる故障と判定する故障判定手段とを設けた。
【発明の効果】
【0007】
よって、本願発明の自動変速機の制御装置にあっては、入力軸インターロック、出力軸ニュートラルとなる故障を確実に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の自動変速機の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は実施例1のFR型の前進7速後退1速を達成する自動変速機の構成を表すスケルトン図及び自動変速機の制御構成を表す全体システム図である。実施例1の自動変速機は、エンジンEg(特許請求の範囲に記載の動力源に相当)に対し、ロックアップクラッチLUCが装着されたトルクコンバータTCを介して接続されている。エンジンEgから出力された回転は、トルクコンバータTCのポンプインペラ及びオイルポンプOPを回転駆動する。このポンプインペラの回転により攪拌されたオイルはステータを介してタービンランナに伝達され、入力軸Input(特許請求の範囲に記載の第1入力回転要素に相当)を駆動する。
【0010】
また、エンジンEgの駆動状態を制御するエンジンコントローラ(ECU)10と、自動変速機の変速状態等を制御する自動変速機コントローラ(ATCU)20と、ATCU20の出力信号に基づいて各締結要素の油圧制御を実行するコントロールバルブユニットCVUが設けられている。ATCU20及びコントロールバルブユニットCVUが変速制御手段に相当する。尚、ECU10とATCU20とは、CAN通信線等を介して接続され、相互にセンサ情報や制御情報を通信により共有している。
【0011】
ECU10には、運転者のアクセルペダル操作量を検出するAPOセンサ1と、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ2が接続されている。ECU10は、エンジン回転数やアクセルペダル操作量に基づいて燃料噴射量やスロットル開度を制御し、エンジン出力回転数及びエンジントルクを制御する。
【0012】
ATCU20には、後述する第1キャリヤPC1の回転数を検出する第1タービン回転数センサ3と、第1リングギヤR1の回転数を検出する第2タービン回転数センサ4と、出力軸Output(特許請求の範囲に記載の第2出力回転要素に相当)の回転数を検出する出力軸回転数センサ5と、運転者のシフトレバー操作状態を検出するインヒビタスイッチ6が接続されており、シフトレバーはP,R,N,Dの他にエンジンブレーキが作用するエンジンブレーキレンジ位置とエンジンブレーキが作用しない通常前進走行レンジ位置とを備える。
【0013】
ATCU20内では、入力軸Inputの回転数を演算する回転数算出部と共に、正常時には車速Vspとアクセルペダル開度APOに基づいて、後述する前進7速段の変速マップから最適な指令変速段を選択し、コントロールバルブユニットCVUに指令変速段を達成する制御指令を出力する変速制御部が設けられている。尚、回転数算出部の構成については後述する。
【0014】
(自動変速機の構成について)
次に、自動変速機の構成について説明する。入力軸Input側から軸方向出力軸Output側に向けて、第1遊星ギヤセットGS1(第1遊星ギヤG1,第2遊星ギヤG2:特許請求の範囲に記載の第1遊星歯車列に相当),第2遊星ギヤセットGS2(第3遊星ギヤG3及び第4遊星ギヤG4:特許請求の範囲に記載の第2遊星歯車列に相当)の順に配置されている。また、摩擦締結要素として複数のクラッチC1,C2,C3及びブレーキB1,B2,B3,B4が配置されている。また、複数のワンウェイクラッチF1,F2が配置されている。
【0015】
第1遊星ギヤG1は、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、両ギヤS1,R1に噛み合う第1ピニオンP1を支持する第1キャリヤPC1(特許請求の範囲に記載の第1回転要素に相当)と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。
【0016】
第2遊星ギヤG2は、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、両ギヤS2,R2に噛み合う第2ピニオンP2を支持する第2キャリヤPC2と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。
【0017】
第3遊星ギヤG3は、第3サンギヤS3と、第3リングギヤR3と、両ギヤS3,R3に噛み合う第3ピニオンP3を支持する第3キャリヤPC3と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。
【0018】
第4遊星ギヤG4は、第4サンギヤS4(特許請求の範囲に記載の第3回転要素に相当)と、第4リングギヤR4と、両ギヤS4,R4に噛み合う第4ピニオンP4を支持する第4キャリヤPC4と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。
【0019】
入力軸Inputは、第2リングギヤR2に連結され、エンジンEgからの回転駆動力を、トルクコンバータTC等を介して入力する。
【0020】
出力軸Outputは、第3キャリヤPC3に連結され、出力回転駆動力を図外のファイナルギヤ等を介して駆動輪に伝達する。
【0021】
第1連結メンバM1(特許請求の範囲に記載の第1出力回転要素,第2入力回転要素に相当)は、第1リングギヤR1と第2キャリヤPC2と第4リングギヤR4とを一体的に連結するメンバである。
【0022】
第2連結メンバM2は、第3リングギヤR3と第4キャリヤPC4とを一体的に連結するメンバである。
【0023】
第3連結メンバM3(特許請求の範囲に記載の第2回転要素に相当)は、第1サンギヤS1と第2サンギヤS2とを一体的に連結するメンバである。
【0024】
第1遊星ギヤセットGS1は、第1遊星ギヤG1と第2遊星ギヤG2とを、第1連結メンバM1と第3連結メンバM3により連結して構成し、4つの回転要素から構成している。また、第2遊星ギヤセットGS2は、第3遊星ギヤG3と第4遊星ギヤG4とを、第2連結メンバM2により連結して5つの回転要素から構成している。
【0025】
第1遊星ギヤセットGS1は、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力されるトルク入力経路を有する。第1遊星ギヤセットGS1に入力されたトルクは、第1連結メンバM1から第2遊星ギヤセットGS2に出力される。
【0026】
第2遊星ギヤセットGS2は、入力軸Inputから第2連結メンバM2に入力されるトルク入力経路と、第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に入力されるトルク入力経路を有する。第2遊星ギヤセットGS2に入力されたトルクは、第3キャリヤPC3から出力軸Outputに出力される。
【0027】
尚、H&LRクラッチC3が解放され、第3サンギヤS3よりも第4サンギヤS4の回転数が大きい時は、第3サンギヤS3と第4サンギヤS4は独立した回転数を発生する。よって、第3遊星ギヤG3と第4遊星ギヤG4が第2連結メンバM2を介して接続された構成となり、それぞれの遊星ギヤが独立したギヤ比を達成する。
【0028】
インプットクラッチC1は、入力軸Inputと第2連結メンバM2とを選択的に断接するクラッチである。
【0029】
ダイレクトクラッチC2は、第4サンギヤS4と第4キャリヤPC4とを選択的に断接するクラッチである。
【0030】
H&LRクラッチC3は、第3サンギヤS3と第4サンギヤS4とを選択的に断接するクラッチである。尚、第3サンギヤS3と第4サンギヤの間には、第2ワンウェイクラッチF2(特許請求の範囲に記載のワンウェイクラッチに相当)が配置されている。
【0031】
フロントブレーキB1(特許請求の範囲に記載の第1ブレーキに相当)は、第1キャリヤPC1の回転を選択的に停止させるブレーキである。また、第1ワンウェイクラッチF1は、フロントブレーキB1と並列に配置されている。
【0032】
ローブレーキB2は、第3サンギヤS3の回転を選択的に停止させるブレーキである。
【0033】
2346ブレーキB3(特許請求の範囲に記載の第2ブレーキに相当)は、第3連結メンバM3(第1サンギヤS1及び第2サンギヤS2)の回転を選択的に停止させるブレーキである。
【0034】
リバースブレーキB4は、第4キャリヤPC4の回転を選択的に停止させるブレーキである。
【0035】
(タービン回転数演算について)
入力軸Inputは第2リングギヤR2に連結され、更に第1遊星ギヤG1と第2遊星ギヤG2は2つの回転要素が連結された第1遊星ギヤセットGS1を構成していることに着目し、ATCU20内に設けられた回転数算出部において、2つのタービン回転数センサ3,4を用いて入力軸Inputの回転数を計算により検出している。
【0036】
具体的には、第1キャリヤPC1の回転数をN(PC1),第2キャリヤPC2の回転数をN(PC2),第2リングギヤR2の回転数をN(R2)とし、図9の共線図に示すように、第2リングギヤR2と第2キャリヤPC2(第1リングギヤR1)のギヤ比を1とし、第1リングギヤR1(第2キャリヤPC2)と第1キャリヤPC1のギヤ比をβとすると、下記式、
N(R2)=(1+1/β)N(PC2)−(1/β)・N(PC1)
により算出される。
【0037】
第1タービン回転数センサ3は第2キャリヤPC2の回転数を検出し、第2タービン回転数センサ4は第1キャリヤPC1に連結されたタービンセンサ用メンバとしてのセンサ用部材63の回転数を検出する。これにより、第2リングギヤR2(入力軸Input)の回転数(以下、タービン回転数と記載する)を上記式に基づいて計算により検出する(特許請求の範囲に記載の回転数検出手段に相当)。
【0038】
(コントロールバルブユニットの構成について)
図2はコントロールバルブユニットCVUの油圧回路を表す回路図である。以下、回路構成について説明する。実施例1の油圧回路には、エンジンにより駆動された油圧源としてのオイルポンプOPと、運転者のシフトレバー操作と連動して、ライン圧PLを供給する油路を切り換えるマニュアルバルブMVと、ライン圧を所定の一定圧に減圧するパイロットバルブPVが設けられている。
【0039】
また、ローブレーキB2の締結圧を調圧する第1調圧弁CV1と、インプットクラッチC1の締結圧を調圧する第2調圧弁CV2と、フロントブレーキB1の締結圧を調圧する第3調圧弁CV3と、H&LRクラッチC3の締結圧を調圧する第4調圧弁CV4と、2346ブレーキB3の締結圧を調圧する第5調圧弁CV5と、ダイレクトクラッチC2の締結圧を調圧する第6調圧弁CV6が設けられている。
【0040】
また、ローブレーキB2とインプットクラッチC1の供給油路をどちらか一方のみ連通する状態に切り換える第1切換弁SV1と、ダイレクトクラッチC2に対しDレンジ圧とRレンジ圧の供給油路をどちらか一方のみ連通する状態に切り換える第2切換弁SV2と、リバースブレーキB4に対して供給する油圧を第6調圧弁CV6からの供給油圧とRレンジ圧からの供給油圧との間で切り換える第3切換弁SV3と、第6調圧弁CV6から出力された油圧を油路123と油路122との間で切り換える第4切換弁SV4が設けられている。
【0041】
また、自動変速機コントロールユニット20からの制御信号に基づいて、第1調圧弁CV1に対し調圧信号を出力する第1ソレノイドバルブSOL1と、第2調圧弁CV2に対し調圧信号を出力する第2ソレノイドバルブSOL2と、第3調圧弁CV3に対し調圧信号を出力する第3ソレノイドバルブSOL3と、第4調圧弁CV4に対し調圧信号を出力する第4ソレノイドバルブSOL4と、第5調圧弁CV5に対し調圧信号を出力する第5ソレノイドバルブSOL5と、第6調圧弁CV6に対し調圧信号を出力する第6ソレノイドバルブSOL6と、第1切換弁SV1及び第3切換弁SV3に対し切り換え信号を出力する第7ソレノイドバルブSOL7が設けられている。
【0042】
上記各ソレノイドバルブSOL2,SOL5,SOL6は三つのポートを有する三方比例電磁弁であり、第1のポートは後述するパイロット圧が導入され、第2のポートはドレーン油路に接続され、第3のポートはそれぞれ調圧弁もしくは切換弁の受圧部に接続されている。また、上記各ソレノイドバルブSOL1,SOL3,SOL4は2つのポートを有する二方比例電磁弁、ソレノイドバルブSOL7は三つのポートを備える三方オンオフ電磁弁である。
【0043】
また、第1ソレノイドバルブSOL1と第3ソレノイドバルブSOL3と第7ソレノイドバルブSOL7はノーマルクローズタイプ(非通電時に閉じた状態)とされている。一方、第2ソレノイドバルブSOL2と第4ソレノイドバルブSOL4と第5ソレノイドバルブSOL5と第6ソレノイドバルブSOL6はノーマルオープンタイプ(非通電時に開いた状態)とされている。
【0044】
(油路構成について)
エンジンにより駆動されるオイルポンプOPの吐出圧は、ライン圧に調圧された後、油路101及び油路102に供給される。油路101には、運転者のシフトレバー操作に連動して作動するマニュアルバルブMVと接続された油路101aと、フロントブレーキB1の締結圧の元圧を供給する油路101bと、H&LRクラッチC3の締結圧の元圧を供給する油路101cが接続されている。
【0045】
マニュアルバルブMVには、油路105と、後退走行時に選択されるRレンジ圧を供給する油路106が接続され、シフトレバー操作に応じて油路105と油路106を切り換える。
【0046】
油路105には、ローブレーキB2の締結圧の元圧を供給する油路105aと、インプットクラッチC1の締結圧の元圧を供給する油路105bと、2346ブレーキB3の締結圧の元圧を供給する油路105cと、ダイレクトクラッチC2の締結圧の元圧を供給する油路105dと、後述する第2切換弁SV2の切り換え圧を供給する油路105eが接続されている。
【0047】
油路106には、第2切換弁SV2の切り換え圧を供給する油路106aと、ダイレクトクラッチC2の締結圧の元圧を供給する油路106bと、リバースブレーキB4の締結圧を供給する油路106cが接続されている。
【0048】
油路102には、パイロットバルブPVを介してパイロット圧を供給する油路103が接続されている。油路103には、第1ソレノイドバルブSOL1にパイロット圧を供給する油路103aと、第2ソレノイドバルブSOL2にパイロット圧を供給する油路103bと、第3ソレノイドバルブSOL3にパイロット圧を供給する油路103cと、第4ソレノイドバルブSOL4にパイロット圧を供給する油路103dと、第5ソレノイドバルブSOL5にパイロット圧を供給する油路103eと、第6ソレノイドバルブSOL6にパイロット圧を供給する油路103fと、第7ソレノイドバルブSOL7にパイロット圧を供給する油路103gとが設けられている。
【0049】
図3は実施例1の調圧弁の構成を表す概略図である。第1調圧弁CV1には、油路105aが接続される第1ポートa1と、ドレーン回路に接続された第2ポートa2と、第1切換弁SV1と接続される油路115aが接続される第3ポートa3と、第1ソレノイドバルブSOL1の信号圧が供給される第4ポートa4と、この信号圧の対向圧として油路115aからフィードバックされれた油路が接続された第5ポートa5と、第4ポートに供給される油圧に対向して作用するスプリングa6が設けられている。
【0050】
図3中、第1切換弁SV1が上方に移動すると油路105aと油路115aが連通され、一方、下方に移動すると油路115aとドレーンとが連通される。同様に、第2調圧弁CV2〜第6調圧弁CV6には、第1ポートa1〜第5ポートa5及びスプリングa6と同じ構成が設けられているため説明を省略する。
【0051】
図4は実施例1の第1切換弁SV1の構成を表す概略図である。第1切換弁SV1には、油路115aと接続された第1ポートb1と、ドレーン回路に接続された第2ポートb2と、油路115bに接続された第3ポートb3と、ドレーン回路に接続された第4ポートb4と、ローブレーキB2へ油圧を供給する油路150aと接続された第5ポートb5と、インプットクラッチC1へ油圧を供給する油路150bと接続された第6ポートb6と、第7ソレノイドバルブSOL7の信号圧を供給する油路140bと接続された第7ポートb7と、第7ポートb7に供給される油圧に対向して作用するスプリングb8が設けられている。
【0052】
図4中、第1切換弁SV1が左方に移動すると油路115aと油路150aが連通されると共に油路150bとドレーンとが連通される。一方、左方に移動すると油路150aとドレーンが連通されると共に油路115bと油路150bとが連通される。
【0053】
図5は実施例1の第2切換弁SV2の構成を表す概略図である。第2切換弁SV2には、Dレンジ圧を供給する油路105dと接続された第1ポートc1と、Rレンジ圧を供給する油路106dと接続された第2ポートc2と、第6調圧弁CV6へ油圧を供給する油路120と接続された第3ポートc3と、Dレンジ圧を供給する油路105eと接続された第4ポートc4と、第4ポートc4の対向圧としてRレンジ圧を供給する油路106aと接続された第5ポートc5と、第4ポートc4に供給される油圧に対向して作用するスプリングc6が設けられている。
【0054】
図5中、第2切換弁SV2が右方に移動すると油路106bと油路120が連通され、一方、左方に移動すると油路105dと油路120が連通される。
【0055】
図6は実施例1の第3切換弁SV3の構成を表す概略図である。第3切換弁SV3には、第4切換弁SV4からの油圧を供給する油路122と接続された第1ポートd1と、Rレンジ圧を供給する油路106cと接続された第2ポートd2と、リバースブレーキB4に油圧を供給する油路130と接続された第3ポートd3と、第7ソレノイドバルブSOL7の信号圧を供給する油路140aと接続された第4ポートd4と、第4ポートd4に供給される油圧に対向して作用するスプリングd5が設けられている。
【0056】
図6中、第3切換弁SV3が右方に移動すると油路106cと油路130が連通され、一方、左方に移動すると油路122と油路130とが連通される。
【0057】
図7は実施例1の第4切換弁SV4の構成を表す概略図である。第4切換弁SV4には、第6調圧弁CV6からの油圧を供給する油路121と接続された第1ポートe1と、ドレーン回路に接続された第2ポートe2及び第3ポートe3と、Rレンジ圧が供給される第4ポートe4と、Dレンジ圧が供給される第5ポートe5と、第4ポートe4に対向して作用するスプリングe6と、油路122と接続された第7ポートe7と、油路123と接続された第8ポートe8が設けられている。
【0058】
図7中、第4切換弁SV4が右方に移動すると油路121と油路123が連通されると共に油路122とドレーン回路が連通され、一方、左方に移動すると油路121と油路122が連通されると共に油路123とドレーン回路が連通される。
【0059】
前記各クラッチC1,C2,C3及び各ブレーキB1,B2,B3,B4には、正常時において図7の締結作動表に示すように、前進7速後退1速の各変速段にて締結圧(○印)や解放圧(無印)が供給される。
【0060】
次に、作用を説明する。
[変速作用]
図8は実施例1の自動変速機用歯車変速装置での前進7速後退1速の締結作動表を示す図、図9は実施例1の自動変速機用歯車変速装置における前進7速後退1速の各変速段でのメンバの回転停止状態を示す共線図を示す図、図10は各変速段におけるソレノイドバルブSOL1〜SOL7の作動表を表す図である。
【0061】
〈1速〉
1速は、エンジンブレーキ作用時(エンジンブレーキレンジ位置選択中)とエンジンブレーキ非作用時(通常前進走行レンジ位置選択中)とで異なる締結要素が作用する。エンジンブレーキ作用時は、図8の(○)に示すように、フロントブレーキB1とローブレーキB2とH&LRクラッチC3との締結により得られる。尚、フロントブレーキB1に並列に設けられた第1ワンウェイクラッチF1と、H&LRクラッチC3と並列に設けられた第2ワンウェイクラッチF2もトルク伝達に関与する。エンジンブレーキ非作用時は、フロントブレーキB1とH&LRクラッチC3は解放され、ローブレーキB2のみが締結され、第1ワンウェイクラッチF1と第2ワンウェイクラッチF2によりトルク伝達される。
【0062】
この1速では、フロントブレーキB1が締結(エンジンブレーキ非作動時は第1ワンウェイクラッチF1により締結)されているため、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力された回転は、第1遊星ギヤセットGS1により減速される。この減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、ローブレーキB2及びH&LRクラッチC3が締結(エンジンブレーキ非作動時はローブレーキB2及び第2ワンウェイクラッチF2により締結)されているため、第4リングギヤR4に入力された回転は、第2遊星ギヤセットにより減速され、第3キャリヤPC3から出力される。
【0063】
すなわち、1速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転を減速するフロントブレーキB1の締結点と、第1遊星ギヤセットGS1からの減速回転を減速するローブレーキB2の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速して出力軸Outputから出力する。
【0064】
この1速でのトルクフローは、フロントブレーキB1(もしくは第1ワンウェイクラッチF1),ローブレーキB2,H&LRクラッチC3(もしくは第2ワンウェイクラッチF2),第1連結メンバM1,第2連結メンバM2,第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第1遊星ギヤセットGS1と第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
【0065】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、第1〜第3ソレノイドバルブSOL1〜SOL3及び第6及び第7ソレノイドバルブSOL6,SOL7をオンとし、それ以外をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。
【0066】
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオンとしているため、第1切換弁SV1は図2中左方に移動し、第1調圧弁CV1とローブレーキB2を連通し、インプットクラッチC1をドレンと接続する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通されるため第6調圧弁CV6にはDレンジ圧が作用する。第6調圧弁CV6は図2中下方に移動しているため、ダイレクトクラッチC2や第4切換弁SV4にDレンジ圧が供給されることはない。
【0067】
尚、第4切換弁SV4はDレンジ圧の作用により図2中右方に移動し、油路121と油路123とを連通した状態であるが締結作用には関係ない。また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されているため図2中左方に移動し、第1ポートd1と第3ポートd3が連通されているものの油路122には油圧が供給されていないため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
【0068】
〈2速〉
2速は、エンジンブレーキ作用時(エンジンブレーキレンジ位置選択中)とエンジンブレーキ非作用時(通常前進走行レンジ位置選択中)とで異なる締結要素が締結する。エンジンブレーキ作用時は、図8の(○)に示すように、ローブレーキB2と2346ブレーキB3とH&LRクラッチC3との締結により得られる。尚、H&LRクラッチC3と並列に設けられた第2ワンウェイクラッチF2もトルク伝達に関与する。エンジンブレーキ非作動時は、H&LRクラッチC3は解放され、ローブレーキB2と2346ブレーキB3が締結され、第2ワンウエイクラッチF2によりトルク伝達される。
【0069】
この2速では、2346ブレーキB3が締結されているため、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力された回転は、第2遊星ギヤG2のみにより減速される。この減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、ローブレーキB2及びH&LRクラッチC3が締結(エンジンブレーキ非作動時は第2ワンウェイクラッチF2により締結)されているため、第4リングギヤR4に入力された回転は、第2遊星ギヤセットにより減速され、第3キャリヤPC3から出力される。
【0070】
すなわち、2速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転を減速する2346ブレーキB3の締結点と、第2遊星ギヤG2からの減速回転を減速するローブレーキB2の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速して出力ギヤOutputから出力する。
【0071】
この2速でのトルクフローは、2346ブレーキB3,ローブレーキB2,H&LRクラッチC3(もしくは第2ワンウェイクラッチF2),第1連結メンバM1,第2連結メンバM2,第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第2遊星ギヤG2と第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
【0072】
尚、1速から2速へのアップシフト時は、フロントブレーキB1を早めに解放し、2346ブレーキB3の締結を開始することで、2346ブレーキB3の締結容量が確保された時点で第1ワンウェイクラッチF1が解放される。よって、変速タイミングの精度の向上を図ることができるものである。
【0073】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、第1,第2,第5〜第7ソレノイドバルブSOL1,SOL2,SOL5,SOL6,SOL7をオンとし、それ以外をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。
【0074】
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオンとしているため、このとき第1切換弁SV1は図2中左方に移動し、第1調圧弁CV1とローブレーキB2を連通し、インプットクラッチC1をドレンと接続する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通されるものの、第6調圧弁CV6は図2中下方に移動しているため、ダイレクトクラッチC2や第3切換弁SV3に油圧が供給されることはない。
【0075】
また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されているため図2中左方に移動し、第1ポートd1と第3ポートd3が連通されているものの油路122には油圧が供給されていないため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
【0076】
〈3速〉
3速は、図8に示すように、2346ブレーキB3とローブレーキB2とダイレクトクラッチC2との締結により得られる。
【0077】
この3速では、2346ブレーキB3が締結されているため、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力された回転は、第2遊星ギヤG2により減速される。この減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、ダイレクトクラッチC2が締結されているため、第4遊星ギヤG4は一体となって回転する。また、ローブレーキB2が締結されているため、第4リングギヤR4と一体に回転する第4キャリヤPC4から第2連結メンバM2を介して第3リングギヤR3に入力された回転は、第3遊星ギヤG3により減速され、第3キャリヤPC3から出力される。このように第4遊星ギヤG4はトルク伝達に関与するが減速作用には関与しない。
【0078】
すなわち、3速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転を減速する2346ブレーキB3の締結点と、第2遊星ギヤG2からの減速回転を減速するローブレーキB2の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速して出力ギヤOutputから出力する。
【0079】
この3速でのトルクフローは、2346ブレーキB3,ローブレーキB2,ダイレクトクラッチC2,第1連結メンバM1,第2連結メンバM2,第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第2遊星ギヤG2と第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
【0080】
尚、2速から3速へのアップシフト時は、H&LRクラッチC3を早めに解放し、ダイレクトクラッチC2の締結を開始することで、ダイレクトクラッチC2の締結容量が確保された時点で第2ワンウェイクラッチF2が解放される。よって、変速タイミングの精度の向上を図ることができるものである。
【0081】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、第1,第2,第4,5及び第7ソレノイドバルブSOL1,SOL2,SOL4,SOL5,SOL7をオンとし、それ以外をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。
【0082】
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオンとしているため、このとき第1切換弁SV1は図2中左方に移動し、第1調圧弁CV1とローブレーキB2を連通し、インプットクラッチC1をドレンと接続する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通される。第6調圧弁CV6は図2中上方に移動しているため、第4切換弁SV4に調圧された油圧が供給される。
【0083】
第4切換弁SV4にはDレンジ圧が作用しているため、油路121と油路123が連通される。油路122はドレン回路と連通されているため、ダイレクトクラッチC2に油圧が供給され、一方、第3切換弁SV3に油圧が供給されることはない。また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されているため図2中左方に移動し、第1ポートd1と第3ポートd3が連通されているものの油路122には油圧が供給されていないため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
【0084】
〈4速〉
4速は、図8に示すように、2346ブレーキB3とダイレクトクラッチC2とH&LRクラッチC3との締結により得られる。
【0085】
この4速では、2346ブレーキB3が締結されているため、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力された回転は、第2遊星ギヤG2のみにより減速される。この減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、ダイレクトクラッチC2及びH&LRクラッチC3が締結されているため、第2遊星ギヤセットGS2は一体で回転する。よって、第4リングギヤR4に入力された回転は、そのまま第3キャリヤPC3から出力される。
【0086】
すなわち、4速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転を減速する2346ブレーキB3の締結点と、第2遊星ギヤG2からの減速回転をそのまま出力するダイレクトクラッチC2及びH&LRクラッチC3の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速して出力ギヤOutputから出力する。
【0087】
この4速でのトルクフローは、2346ブレーキB3,ダイレクトクラッチC2,H&LRクラッチC3,第1連結メンバM1,第2連結メンバM2,第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第2遊星ギヤG2と第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
【0088】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、第2及び第5ソレノイドバルブSOL2,SOL5をオンとし、それ以外をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。
【0089】
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオフとしているため、このとき第1切換弁SV1は図2中左方に移動し、ローブレーキB2をドレン回路と連通し、第2調圧弁CV2とインプットクラッチC1を連通する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通される。第6調圧弁CV6は図2中上方に移動しているため、第4切換弁SV4に調圧された油圧が供給される。
【0090】
第4切換弁SV4にはDレンジ圧が作用しているため、油路121と油路123が連通される。油路122はドレン回路と連通されているため、ダイレクトクラッチC2に油圧が供給され、一方、第3切換弁SV3に油圧が供給されることはない。また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されていないため図2中右方に移動し、第2ポートd2と第3ポートd3が連通されているものの油路106cにはRレンジ圧が供給されていない(マニュアルバルブMVで遮断されている)ため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
【0091】
〈5速〉
5速は、図8に示すように、インプットクラッチC1とダイレクトクラッチC2とH&LRクラッチC3との締結により得られる。
【0092】
この5速では、インプットクラッチC1が締結されているため、入力軸Inputの回転は第2連結メンバM2に入力される。また、ダイレクトクラッチC2及びH&LRクラッチC3が締結されているため、第3遊星ギヤG3は一体で回転する。よって、入力軸Inputの回転は、そのまま第3キャリヤPC3から出力される。
【0093】
すなわち、5速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転をそのまま出力するインプットクラッチC1,ダイレクトクラッチC2及びH&LRクラッチC3の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転をそのまま出力ギヤOutputから出力する。
【0094】
この5速でのトルクフローは、インプットクラッチC1,ダイレクトクラッチC2,H&LRクラッチC3,第2連結メンバM2にトルクが作用する。つまり、第3遊星ギヤG3のみがトルク伝達に関与する。
【0095】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、全てのソレノイドバルブSOL1〜SOL7をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。
【0096】
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオフとしているため、このとき第1切換弁SV1は図2中右方に移動し、ローブレーキB2をドレン回路と連通し、第2調圧弁CV2とインプットクラッチC1を連通する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通される。第6調圧弁CV6は図2中上方に移動しているため、第4切換弁SV4に調圧された油圧が供給される。
【0097】
第4切換弁SV4にはDレンジ圧が作用しているため、油路121と油路123が連通され、油路122はドレン回路と連通されているため、ダイレクトクラッチC2に油圧が供給され、一方、第3切換弁SV3に油圧が供給されることはない。また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されていないため図2中右方に移動し、油路106c(第2ポートd2)と油路130(第3ポートd3)が連通されているものの油路106cにはRレンジ圧が供給されていない(マニュアルバルブMVで遮断されている)ため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
【0098】
〈6速〉
6速は、図8に示すように、インプットクラッチC1とH&LRクラッチC3と2346ブレーキB3の締結により得られる。
【0099】
この6速では、インプットクラッチC1が締結されているため、入力軸Inputの回転は第2リングギヤに入力されると共に、第2連結メンバM2に入力される。また、2346ブレーキB3が締結されているため、第2遊星ギヤG2により減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、H&LRクラッチC3が締結されているため、第2遊星ギヤセットGS2は、第4リングギヤR4の回転と、第2連結メンバM4の回転によって規定される回転を第3キャリヤPC3から出力する。
【0100】
すなわち、6速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転を第2遊星ギヤG2により減速する2346ブレーキB3,エンジンの出力回転をそのまま第2連結メンバM2に伝達するインプットクラッチC1,第2遊星ギヤセットGS2を構成するH&LRクラッチC3の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を増速して出力ギヤOutputから出力する。
【0101】
この6速でのトルクフローは、インプットクラッチC1,H&LRクラッチC3,2346ブレーキB3,第1連結メンバM1,第2連結メンバM2,第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第2遊星ギヤG2及び第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
【0102】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、第5及び第6ソレノイドバルブSOL5,SOL6をオンとし、他のソレノイドバルブSOL1,SOL2,SOL3,SOL4,SOL7をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。
【0103】
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオフとしているため、このとき第1切換弁SV1は図2中左方に移動し、ローブレーキB2をドレン回路と連通し、第2調圧弁CV2とインプットクラッチC1を連通する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通される。第6調圧弁CV6は図2中上方に移動しているため、第4切換弁SV4に調圧された油圧が供給される。
【0104】
第4切換弁SV4にはDレンジ圧が作用しているため、油路121と油路123が連通され、油路122はドレン回路と連通されているため、ダイレクトクラッチC2に油圧が供給され、一方、第3切換弁SV3に油圧が供給されることはない。また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されていないため図2中右方に移動し、油路106c(第2ポートd2)と油路130(第3ポートd3)が連通されているものの油路106cにはRレンジ圧が供給されていない(マニュアルバルブMVで遮断されている)ため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
【0105】
〈7速〉
7速は、図8に示すように、インプットクラッチC1とH&LRクラッチC3とフロントブレーキB1(第1ワンウェイクラッチF1)の締結により得られる。
【0106】
この7速では、インプットクラッチC1が締結されているため、入力軸Inputの回転は第2リングギヤに入力されると共に、第2連結メンバM2に入力される。また、フロントブレーキB1が締結されているため、第1遊星ギヤセットGS1により減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、H&LRクラッチC3が締結されているため、第2遊星ギヤセットGS2は、第4リングギヤR4の回転と、第2連結メンバM4の回転によって規定される回転を第3キャリヤPC3から出力する。
【0107】
すなわち、7速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転を第1遊星ギヤセットGS1により減速するフロントブレーキB1,エンジンの出力回転をそのまま第2連結メンバM2に伝達するインプットクラッチC1,第2遊星ギヤセットGS2を構成するH&LRクラッチC3の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を増速して出力ギヤOutputから出力する。
【0108】
この7速でのトルクフローは、インプットクラッチC1,H&LRクラッチC3,フロントブレーキB1,第1連結メンバM1,第2連結メンバM2,第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第1遊星ギヤセットGS1及び第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
【0109】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、第3及び第6ソレノイドバルブSOL3,SOL6をオンとし、他のソレノイドバルブSOL1,SOL2,SOL4,SOL5,SOL7をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。
【0110】
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオフとしているため、このとき第1切換弁SV1は図2中右方に移動し、ローブレーキB2をドレン回路と連通し、第2調圧弁CV2とインプットクラッチC1を連通する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通される。第6調圧弁CV6は図2中上方に移動しているため、第4切換弁SV4に調圧された油圧が供給される。
【0111】
第4切換弁SV4にはDレンジ圧が作用しているため、油路121と油路123が連通され、油路122はドレン回路と連通されているため、ダイレクトクラッチC2に油圧が供給され、一方、第3切換弁SV3に油圧が供給されることはない。また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されていないため図2中右方に移動し、油路106c(第2ポートd2)と油路130(第3ポートd3)が連通されているものの油路106cにはRレンジ圧が供給されていない(マニュアルバルブMVで遮断されている)ため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
【0112】
〈後退速〉
後退速は、図8に示すように、H&LRクラッチC3とフロントブレーキB1とリバースブレーキB4の締結により得られる。
【0113】
この後退速では、フロントブレーキB1が締結されているため、第1遊星ギヤセットGS1により減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、H&LRクラッチC3が締結され、リバースブレーキB4が締結されているため、第2遊星ギヤセットGS2は、第4リングギヤR4の回転と、第2連結メンバM2の固定によって規定される回転を第3キャリヤPC3から出力する。
【0114】
すなわち、後退速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転を第1遊星ギヤセットGS1により減速するフロントブレーキB1,第2連結メンバM2の回転を固定するリバースブレーキB4,第2遊星ギヤセットGS2を構成するH&LRクラッチC3の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を逆向きに減速して出力ギヤOutputから出力する。
【0115】
この後退速でのトルクフローは、H&LRクラッチC3,フロントブレーキB1,リバースブレーキB4,第1連結メンバM1,第2連結メンバM2,第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第1遊星ギヤセットGS1及び第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
【0116】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、第2,第3及び第6ソレノイドバルブSOL2,SOL3,SOL6をオンとし、他のソレノイドバルブSOL1,SOL4,SOL5,SOL7をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。尚、第7ソレノイドSOL7についてはRレンジ切り換え初期はオンとし、締結完了後にオフとする。
【0117】
リバースブレーキB4には、第3切換弁SV3を介してRレンジ圧が供給される。Rレンジには、専用の調圧弁を持っていないため、締結初期には、ダイレクトクラッチC2に使用していた第6調圧弁CV6を用いてリバースブレーキB4の締結圧を調圧する。まず、マニュアルバルブMVによりRレンジ圧に切り換えられると、第2切換弁SV2は図2中右方に移動し、第6調圧弁CV6にRレンジ圧が供給される。また、第4切換弁SV4は図2中左方に移動し、油路121と油路122とを連通する。これにより、第6調圧弁CV6により調圧された油圧が油路122に導入される。
【0118】
この状態で第7ソレノイドバルブSOL7をオンとすると、第3切換弁SV3は図2中左方に移動し、油路122と油路130を連通する。よって、第7ソレノイドバルブSOL7がオンの間は第6調圧弁CV6により調圧された油圧によってリバースブレーキB4の締結圧を制御する。締結が完了すると、第7ソレノイドバルブSOL7をオフとする。すると、第3切換弁SV3が図2中右方に移動し、油路106cと油路130が連通されるため、Rレンジ圧がそのまま導入され、締結状態を維持する。
【0119】
このように、第3切換弁SV3及び第4切換弁SV4を設けたことで、1つの調圧弁で2つの締結要素の締結圧を制御することを可能としている。
【0120】
(第1切換弁の作用について)
次に、上記作用に基づいて、第1切換弁SV1の作用について説明する。第1切換弁SV1はローブレーキB2とインプットクラッチC1とが確実に同時締結しないために設けられた切換弁である。例えば、第1ソレノイドバルブSOL1と第2ソレノイドバルブSOL2が故障し、同時に締結圧を発生した場合であっても、第1切換弁SV1がどちらか一方に付勢されなければ締結要素に対して締結圧を供給することはない。よって、確実にインターロック状態を防止するものである。
【0121】
また、ローブレーキB2とインプットクラッチC1は、図8の締結表及び図10のソレノイド作動表に示すように、1速から3速まではローブレーキB2が締結し、それ以外はローブレーキB2が締結することはない。一方、5速から7速まではインプットクラッチC1が締結し、それ以外はインプットクラッチC1が締結することはない。このことは、4速においてローブレーキB2もインプットクラッチC1も締結しないことを表す。
【0122】
第1切換弁SV1のようなインターロック状態防止バルブを構成する場合、仮にある変速段でローブレーキB2が締結、インプットクラッチC1が解放という状態であり、ある変速段から1段アップシフトによってローブレーキB2が解放、インプットクラッチC1が締結となると、掛けかえ制御中にローブレーキB2の解放圧制御を行うと共に、インプットクラッチC1の締結圧制御を行うこととなる。すると、第1切換弁SV1の切り換えタイミングをどのタイミングにすることがベストなのかを特定するのが非常に困難である。また、両締結要素に同時に締結容量を持たせてイナーシャフェーズを進行させるような制御が不可能となる。
【0123】
これに対し、第1切換弁SV1を切り換える際、4速という両締結要素が関与しない変速段が存在するため、4速走行時に第7ソレノイドバルブSOL7をオフすることで、変速制御に影響を与えることなく確実にインターロック状態を防止している。
【0124】
(入力軸インターロック状態、かつ、出力軸ニュートラル状態について)
次に、実施例1において入力軸がインターロック状態であり、かつ、出力軸がニュートラル状態となる場合について説明する。図11はエンジンブレーキレンジ位置選択中の1速走行時に2346ブレーキB3に締結故障が発生した場合の共線図の変化を表す図である。
【0125】
尚、図11中、第1遊星ギヤセットGS1を表す剛体レバーをL1とし、第2遊星ギヤセットGS2を表す剛体レバーをL2とし、第3遊星ギヤG3の剛体レバーをL23とし、第4遊星ギヤG4の剛体レバーをL24として定義する。ここで、剛体レバーとは、遊星歯車の各回転要素(サンギヤ、キャリヤ、リングギヤ)の回転速度比を直線で表したものであり、トルクの入出力に関しても同時に表現可能としている。図11中、太線矢印はトルクの入出力方向を表す。また、実線は正常時、太い点線は故障時を表している。
【0126】
また、実施例1の「締結故障」とは、解放指令を出力しているにもかかわらず、締結状態のままとなる故障、言い換えると完全解放にならない状態の故障を表し、「解放故障」とは、締結指令を出力しているにもかかわらず、解放したままとなる故障、言い換えると完全締結にならない状態の故障を表す。また、ソレノイドなどの断線、短絡といった電気的故障により発生する故障は電流値などを測定すれば検知可能であるため、特に故障を実際の現象から検知する必要がないため含まない。よって、例えば、油圧回路内でコンタミ等の影響によりバルブが引っ掛かる状態、所謂バルブスティック等により発生する故障を表すものとする。バルブスティック等は実際に自動変速機内で発生する現象から論理的に推定する以外に検知できないからである。
【0127】
エンジンブレーキレンジ位置選択中の1速走行時は、フロントブレーキB1が締結し、H&LRクラッチC3が締結し、ローブレーキB2が締結した状態である。このとき、入力軸Inputに図11中上向きのトルクが作用すると、フロントブレーキB1において上向きのトルクが作用し、第1リングギヤR1及び第2キャリヤPC2には下向きのトルクが作用する。そして、第1遊星ギヤセットGS1から出力された下向きのトルクは、第2遊星ギヤセットGS2の第4リングギヤR4に上向きのトルクとして入力される。第2遊星ギヤセットGS2では、ローブレーキB2において上向きのトルクが作用し、出力軸Outputから下向きのトルクが出力される。
【0128】
この状態で、2346ブレーキB3に締結故障が発生すると、剛体レバーL1には、第1及び第2サンギヤS1,S2の回転数を0に引き上げる力が作用する。ただし、フロントブレーキB1が締結しているため、この締結点を中心に回転し、第1遊星ギヤセットGS1の全ての回転要素の回転数を0に引き下げることとなる(入力軸インターロック状態)。
【0129】
すると、第1連結メンバM1を介して接続された第2遊星ギヤセットGS2の第4リングギヤR4の回転数も引き下げられる。このとき、第4遊星ギヤG4は、ローブレーキB2に固定された第3サンギヤS3に対して第2ワンウェイクラッチF2を介して接続されているのみであるため、第4キャリヤPC4を中心に剛体レバーL24は回転することとなる。
【0130】
一方、第2遊星ギヤセットGS2を構成する第3遊星ギヤG3は、ローブレーキB2と出力軸Outputにより回転数が規定されているものの、第4遊星ギヤG4の第4キャリヤPC4から第3リングギヤR3への反力を得られず、ニュートラル状態となる(出力軸ニュートラル状態)。
【0131】
よって、運転者がアクセルペダルを踏み込んでも入力軸インターロック状態によってエンジン回転数が上昇しにくくなる一方、車速(出力軸回転)は通常のインターロック状態と異なり、急減速など発生せずに、惰性走行状態となる。
【0132】
図12は2速走行時にフロントブレーキB1に締結故障が発生した場合の共線図の変化を表す図である。
【0133】
2速走行時は、2346ブレーキB3が締結し、H&LRクラッチC3が締結し、ローブレーキB2が締結した状態である。このとき、入力軸Inputに図12中上向きのトルクが作用すると、2346ブレーキB3において上向きのトルクが作用し、第1リングギヤR1及び第2キャリヤPC2には下向きのトルクが作用する。そして、第1遊星ギヤセットGS1から出力された下向きのトルクは、第2遊星ギヤセットGS2の第4リングギヤR4に上向きのトルクとして入力される。第2遊星ギヤセットGS2では、ローブレーキB2において上向きのトルクが作用し、出力軸Outputから下向きのトルクが出力される。
【0134】
この状態で、フロントブレーキB1に締結故障が発生すると、剛体レバーL1には、第1キャリヤPC1の回転数を0に引き下げる力が作用する。ただし、2346ブレーキB3が締結しているため、この締結点を中心に回転し、第1遊星ギヤセットGS1の全ての回転要素の回転数を0に引き下げることとなる(入力軸インターロック状態)。
【0135】
すると、第1連結メンバM1を介して接続された第2遊星ギヤセットGS2の第4リングギヤR4の回転数も引き下げられる。このとき、第4遊星ギヤG4は、ローブレーキB2に固定された第3サンギヤS3に対して第2ワンウェイクラッチF2を介して接続されているのみであり、第4キャリヤPC4を中心に剛体レバーL24は回転することとなる。
【0136】
一方、第2遊星ギヤセットGS2を構成する第3遊星ギヤG3は、ローブレーキB2と出力軸Outputにより回転数が規定されているものの、第4遊星ギヤG4の第4キャリヤPC4から第3リングギヤR3への反力を得られず、ニュートラル状態となる(出力軸ニュートラル)。
【0137】
図13は入力軸インターロック・出力軸ニュートラル故障を検知する処理を表すフローチャートである。尚、この処理はATCU20において予め設定された制御周期毎に実行されているものとする。
【0138】
ステップ101では、タイマtを0にリセットする。
ステップ102では、出力軸回転数に相当する車速Vspが走行状態を表す設定値より大きいかどうかを判断し、設定値より大きいときはステップ103へ進み、それ以外のときはステップ101へ戻りタイマをリセットする。このように車速Vspが設定値より大きいかどうかを判断したのは、車両停車時では、出力軸Outputが回転していないため、ニュートラルかどうかが判断できないからである。
【0139】
ステップ103では、第1タービン回転数センサ3及び第2タービン回転数センサ4の両方が設定値より小さいかどうかを判断し、小さいときはステップ104へ進み、それ以外のときはステップ101へ戻りタイマをリセットする。第1タービン回転数センサ3及び第2タービン回転数センサ4は共に第1遊星ギヤセットGS1の回転数を検出している。上記所定値は、入力軸Inputにインターロックが発生すると、これら両回転数センサの回転数は小さくなるため、車両停止時以外はインターロックが発生していなければとらない回転数に設定されており、これら両回転数センサの検出値がこの設定値未満かどうかを判断することで、入力軸インターロックが発生しているかどうかを判断する。
【0140】
ステップ104では、第1タービン回転数センサ3及び第2タービン回転数センサ4の両方の検出値から、第1遊星ギヤセットGS1の第1減速度を算出し(特許請求の範囲に記載の第1減速度検出手段に相当)、この減速度が所定値以上か否かを判定するとともに、車速センサの検出値から算出した車速の第2減速度(特許請求の範囲に記載の第2減速度検出手段に相当)が第2設定値より小さいかどうかを判断し、第1遊星ギヤセットGS1の第1減速度が第1設定値以上であり、かつ、車速センサの検出値から算出した第2減速度が第2設定値未満のときはステップ105へ進み、それ以外のときはステップ101へ戻りタイマをリセットする。例えば、ある車速で駆動力を出力して走行している際、入力軸インターロックが発生すると、第1遊星ギヤセットGS1の回転要素の加速度は急激に低下(大きな減速度が発生)するため、第1減速度が第1設定値より大きいかどうかを判断するとともに、運転者がアクセルペダルを踏み込んでも入力軸インターロック状態によって車速(出力軸回転数)は通常のインターロック状態と異なり、急減速など発生せず、惰性走行状態となって加速度が低下する(減速度が小さい)ため、車速にあっては第2減速度が第2設定値未満かどうかを判断する。
【0141】
ステップ105では、タイマtのカウントアップを実行する。
【0142】
ステップ106では、タイマtのカウント値が設定値よりも大きいかどうかを判断し、大きいときはステップ107へ進み、それ以外のときはステップ102へ戻り、ステップ102以降を繰り返す。タイマtのカウント値が設定値よりも大きいときは、継続的に上記条件を満たす状態が発生しているためフェールと判断する。一方、ノイズ等の影響により一時的に条件を満たすような場合を排除している。
【0143】
ステップ107では、入力軸インターロック・出力軸ニュートラル故障と判定する。
【0144】
次に、上記制御処理の作用について説明する。具体的な例として、1速走行時に2346ブレーキB3が締結故障した場合について説明する。1速により車速Vspで走行している状態で2346ブレーキB3が締結故障すると、入力軸Inputがインターロックとなり、タービン回転数を一気に押し下げる。
【0145】
すると、第1タービン回転数センサ3及び第2タービン回転数センサ4の両方の回転数が一気に減少する。出力軸Outputには入力軸Inputから駆動力が出力されなくなると共に、出力軸Outputはニュートラルとなるため、車速が減速する。この状態がタイマtの設定値を超えると、入力軸インターロック・出力軸ニュートラルが発生したと検知する。
【0146】
尚、この故障時には、故障モードにあったフェールセーフ制御を実行するように構成してもよい。これにより、走行性の悪化を最小限に低減することができる。
【実施例2】
【0147】
次に実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。
【0148】
図14は入力軸インターロック・出力軸ニュートラル故障を検知する処理を表すフローチャートである。尚、この処理はATCU20において予め設定された制御周期毎に実行されているものとする。
【0149】
ステップ201では、タイマtを0にリセットする。
【0150】
ステップ202では、アクセルペダル操作量APOが設定値より大きいかどうか、かつ、出力軸回転数に相当する車速Vspが走行状態を表す設定値より大きいかどうかを判断し、条件を満たしたときはステップ203へ進み、それ以外のときはステップ201へ戻りタイマをリセットする。
【0151】
このようにアクセルペダル操作量APOが設定値より大きいかどうかを判断したのは、アクセルペダル操作量APOが大きいときにはエンジンEgの出力が大きくなり、インターロックが発生していなければ入力軸Inputの回転数が上昇することを表すからである。また、車速Vspが設定値より大きいかどうかを判断したのは、車両停車時では、出力軸Outputが回転していないため、ニュートラルかどうかが判断できないからである。
【0152】
ステップ203では、入力軸Inputの回転数を出力軸Outputの回転数で除した実ギヤ比がギヤ比異常判定域かどうかを判断し、ギヤ比異常判定域にあるときはステップ204へ進み、それ以外のときはステップ201へ戻りタイマをリセットする。
【0153】
ギヤ比異常判定域とは、指令変速段に対応するギヤ比から大きく外れた領域を表す。具体的には、入力軸Inputの回転数がインターロックにより0に近い小さな値であって、出力軸Outputの回転数がニュートラルにより回転した場合にギヤ比が非常に小さな値となり、この非常に小さなギヤ比がギヤ比異常判定域に属する。
【0154】
ステップ204では、タービン回転数が設定値より小さいかどうかを判断し、設定値よりも小さいときはステップ205へ進み、それ以外のときはステップ201へ戻りタイマをリセットする。
【0155】
すなわち、ステップ202においてアクセルペダル操作量APOが設定値よりも大きいと判断されているにも係わらず、タービン回転数が設定値よりも小さいときとは、入力軸Inputの回転数がインターロックにより固定されていると考えられるからである。尚、アクセルペダル操作量APOが大きい場合、エンジンEgの出力が上昇するものの、タービン回転数が固定されていると、トルクコンバータTC内でストールトルクが溜まるのみとなる。
【0156】
ステップ205では、タイマtのカウントアップを実行する。
【0157】
ステップ206では、タイマtのカウント値が設定値よりも大きいかどうかを判断し、大きいときはステップ207へ進み、それ以外のときはステップ202へ戻り、ステップ202以降を繰り返す。タイマtのカウント値が設定値よりも大きいときは、継続的に上記条件を満たす状態が発生しているためフェールと判断する。一方、ノイズ等の影響により一時的に条件を満たすような場合を排除している。
【0158】
ステップ207では、入力軸インターロック・出力軸ニュートラル故障と判定する。
【0159】
次に、上記制御処理の作用について説明する。具体的な例として、1速走行時に2346ブレーキB3が締結故障した場合について説明する。1速により車速Vspで走行している状態で2346ブレーキB3が締結故障すると、入力軸Inputがインターロックとなり、タービン回転数を一気に押し下げる。
【0160】
すなわち、アクセルペダル操作量APOが設定値よりも大きいにもかかわらず、タービン回転数が設定値よりも小さいため、入力軸にインターロックが発生していると検知できる。また、この状態でギヤ比がギヤ比異常判定域に存在する場合、出力軸Outputには入力軸Inputから駆動力が出力されなくなると共に、出力軸Outputはニュートラルとなる。この状態がタイマtの設定値を超えると、入力軸インターロック・出力軸ニュートラルが発生したと検知する。
【0161】
尚、この故障時には、故障モードにあったフェールセーフ制御を実行するように構成してもよい。これにより、走行性の悪化を最小限に低減することができる。
【実施例3】
【0162】
次に、実施例3について説明する。基本的な構成は実施例1,2と同じであるため異なる点についてのみ説明する。実施例1,2では、入力軸インターロック・出力軸ニュートラルと判定した。これに対し、実施例3では、この判定が成された後、どちらのブレーキに締結故障が発生したかを判断する点が異なる。
【0163】
図15は実施例3の故障特定処理を表すフローチャートである。
ステップ301では、故障を検知した際の指令変速段が1速かどうかを判断し、1速のときはステップ302へ進み、それ以外のときはステップ303に進む。
【0164】
ステップ302では、2346ブレーキB3に締結故障が発生したと判断する。
【0165】
ステップ303では、フロントブレーキB1に締結故障が発生したと判断する。
【0166】
すなわち、図11,12において説明したように、1速時に2346ブレーキB3が締結故障すると、入力軸インターロック・出力軸ニュートラルの状態が発生する。また、2速時にフロントブレーキB1が締結故障すると、入力軸インターロック・出力軸ニュートラルの状態が発生する。よって、故障検知時の指令変速段を確認することで、締結故障が発生した締結要素を特定することができる。
【0167】
この特定によって、例えばフェールセーフ制御を実行する際、締結故障した締結要素を締結させたままの状態で適宜変速させることで、走行性を最低限確保するといった変速制御を達成することができる。
【0168】
(他の実施例)
以上、各実施例に基づいて説明したが、本願発明は下記に示す構成を満たした変速機であれば適宜適用可能である。下記に各構成について分節して説明する。
【0169】
構成(a)
動力源と連結された第1入力回転要素と、第1出力回転要素と、第1ブレーキにより選択的に停止される第1回転要素と、第2ブレーキにより選択的に停止される第2回転要素とを有する第1遊星歯車列。
【0170】
この構成は、第1入力回転要素がインターロックする前提を表すものであり、2つのブレーキが同時に締結した場合にインターロックが引き起こされる。ある変速段において1つのブレーキが締結しているときには、他のブレーキの締結故障によりインターロックが発生する。また、ある変速段において両方のブレーキが解放していたとしても、2つのブレーキが締結故障した場合はインターロックが発生する。
【0171】
構成(b)
前記第1出力回転要素と連結された第2入力回転要素と、ワンウェイクラッチにより選択的に停止される第3回転要素と、共線図上で前記第2入力回転要素とワンウェイクラッチとの間に配置された第2出力回転要素と、を有する第2遊星歯車列。
【0172】
この構成は、構成(a)においてインターロックが発生し、第1出力回転要素の回転数が0に伴い第2入力回転要素の回転数も0となった場合であっても、図11,12の剛体レバーL24の回転において説明したように、第3回転要素はワンウェイクラッチにより係止されることなく第2出力回転要素がニュートラル状態となる前提を表すものである。
【0173】
上記構成(a),(b)に示す前提を有する自動変速機では、第1もしくは第2ブレーキの締結故障により入力軸インターロック・出力軸ニュートラルという特殊な故障が発生するため、本願発明を適用することで、早期に特殊な故障を検知することができる。
【0174】
また、実施例1の場合、タービン回転数を直接検知できない構成であるため、2つの回転数センサを設け、この2つのセンサ値からタービン回転数である入力軸の回転数を算出しているが、直接検出できる場合には、直接入力軸の回転数を検知し、その検出された値に基づいて制御しても良い。
【0175】
また、実施例1の場合、第2減速度検出手段として、車速から減速度を算出しているが、第2減速度算出手段は、車両自体の減速度を検出できるものであれば良く、加速度センサ等を備えた車両であれば、車速センサの検出値に代えて、加速度センサからの検出値に基づいて判断しても良いし、アンチロックブレーキシステム等の車輪速データを用いて制御しても良い。
【0176】
また、実施例1,2では、アクセルペダル操作量APOを検出する例を示したが、エンジンEgに設けられた電子制御スロットル等からスロットル開度TVOを検出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】実施例1のFR型の前進7速後退1速を達成する自動変速機の構成を表すスケルトン図である。
【図2】実施例1のコントロールバルブユニットの油圧回路を表す回路図である。
【図3】実施例1の調圧弁の構成を表す概略図である。
【図4】実施例1の第1切換弁の構成を表す概略図である。
【図5】実施例1の第2切換弁の構成を表す概略図である。
【図6】実施例1の第3切換弁の構成を表す概略図である。
【図7】実施例1の第4切換弁の構成を表す概略図である。
【図8】実施例1の自動変速機での前進7速後退1速の締結作動表を示す図である。
【図9】実施例1の自動変速機における前進7速後退1速の各変速段でのメンバの回転停止状態を示す共線図である。
【図10】実施例1の各変速段におけるソレノイドバルブSOL1〜SOL7の作動表を表す図である。
【図11】実施例1の1速走行時に2346ブレーキに締結故障が発生した場合の共線図の変化を表す図である。
【図12】実施例1の2速走行時にフロントブレーキに締結故障が発生した場合の共線図の変化を表す図である。
【図13】実施例1の入力軸インターロック・出力軸ニュートラル故障を検知する処理を表すフローチャートである。
【図14】実施例2の入力軸インターロック・出力軸ニュートラル故障を検知する処理を表すフローチャートである。
【図15】実施例3の故障特定処理を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0178】
GS1 第1遊星ギヤセット
GS2 第2遊星ギヤセット
G1 第1遊星ギヤ
G2 第2遊星ギヤ
G3 第3遊星ギヤ
G4 第4遊星ギヤ
M1 第1連結メンバ
M2 第2連結メンバ
M3 第3連結メンバ
C1 インプットクラッチ
C2 ダイレクトクラッチ
C3 H&LRクラッチ
B1 フロントブレーキ
B2 ローブレーキ
B3 2346ブレーキ
B4 リバースブレーキ
F1 第1ワンウェイクラッチ
F2 第2ワンウェイクラッチ
Input 入力軸
Output 出力軸
1 アクセルペダル操作量センサ
2 エンジン回転数センサ
3 第1タービン回転数センサ
4 第2タービン回転数センサ
5 出力軸回転数センサ
6 インヒビタスイッチ
CVU コントロールバルブユニット
Eg エンジン
OP オイルポンプ
PV パイロットバルブ
CV1-CV6 調圧弁
SOL1-SOL7 ソレノイドバルブ
SV1-SV4 切換弁
TC トルクコンバータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速装置に関し、特に締結要素の締結故障を検知する制御に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機の故障を検知する制御として、特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報には、アップシフト中にタービン回転数が車速センサから算出された所定回転数を越えたときに、締結要素により動力が伝達されていないニュートラルと判定し故障を検知している。また、特許文献2に記載の技術には、エンジン回転数が吹き上がらず、出力軸の加速度が所定値以上低下したときに、不要な締結要素の締結によりインターロックが発生したと判断している。また、特許文献3では、実ギヤ比が現在の変速段におけるギヤ比に基づいて設定された正常範囲内にないときは、故障と判定して変速を禁止している。
【特許文献1】特開2004−60824号公報。
【特許文献2】特開平5−296323号公報。
【特許文献3】特開平10−73159号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年は変速機の多段化が進み、クラッチ、ブレーキといった摩擦要素の数も変速段数に応じて増加している。このため、摩擦要素が1つ故障しただけで、上記のようなニュートラルやインターロックといった故障とは異なる故障、具体的には、入力軸がインターロックしているにも係わらず、出力軸がニュートラルとなる故障が発生することが判明した。このため、従来のような故障検知制御はいずれもギヤ比(=入力回転/出力回転)が大きくなるものであるため、上記特許文献1や特許文献2の方法では検知自体困難である。ちなみに、入力軸インターロックで出力軸ニュートラルの場合、ギヤ比は小さくなる。
【0004】
また、特許文献3のように現変速段と実ギヤ比とのずれから故障判定した場合、何らかの故障が発生したことは判定できるものの、どのような故障なのかを特定することは考慮されていないため、全ての故障を考慮してそれらの故障全てにおいて安全となるようなフェールセーフ制御を行わざるを得ず、その結果、フェール時に選択できる変速段などが限られてしまい、故障時に走行性能が大幅に悪化するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、入力軸がインターロックし、出力軸がニュートラルとなる故障が発生したとしても確実に検知可能な自動変速機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の自動変速機の制御装置では、動力源からの動力が入力される入力軸と、前記入力軸と連結された第1入力回転要素と、第1出力回転要素と、第1回転要素と、第2回転要素と、を有する第1遊星歯車列と、前記第1出力回転要素と連結された第2入力回転要素と、ワンウェイクラッチにより選択的に停止される第3回転要素と、共線図上で前記第2入力回転要素とワンウェイクラッチとの間に配置された第2出力回転要素と、を有する第2遊星歯車列と、前記第2出力回転要素に連結され、駆動輪側に変速された前記動力を出力する出力軸と、前記第1回転要素を選択的に停止可能な第1ブレーキと、正常時には前記第1ブレーキと同時締結せず、前記第2回転要素を選択的に停止可能な第2ブレーキ、又は前記第1遊星歯車列内の2つの回転要素間に設けられたクラッチと、走行状態に基づいて指令変速段を決定し、前記第1ブレーキ、前記第2ブレーキ又は前記クラッチ、及び他の締結要素の締結・解放制御則を実行して前記指令変速段を達成する変速制御手段と、を備えた自動変速機の制御装置において、車速を検出する車速検出手段と、前記第1遊星歯車列の各回転要素のうち、少なくとも前記第1回転要素以外の回転要素の回転数を検出する回転数検出手段と、前記回転数検出手段により検出された回転数に基づいて、前記第1回転要素以外の回転要素の減速度を算出する第1減速度検出手段と、前記第2出力回転要素の減速度を検出する第2減速度検出手段と、検出された車速が所定値以上、前記回転数検出手段により検出された回転数が所定値以下、かつ、前記第1減速度検出手段により検出された前記第1回転要素以外の回転要素の減速度が所定値以上であり、前記第2減速度検出手段により検出された前記第2出力回転要素の減速度が所定値未満のときは、前記第1遊星歯車列においてインターロックが発生し、前記第2遊星歯車列がニュートラルとなる故障と判定する故障判定手段とを設けた。
【発明の効果】
【0007】
よって、本願発明の自動変速機の制御装置にあっては、入力軸インターロック、出力軸ニュートラルとなる故障を確実に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の自動変速機の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は実施例1のFR型の前進7速後退1速を達成する自動変速機の構成を表すスケルトン図及び自動変速機の制御構成を表す全体システム図である。実施例1の自動変速機は、エンジンEg(特許請求の範囲に記載の動力源に相当)に対し、ロックアップクラッチLUCが装着されたトルクコンバータTCを介して接続されている。エンジンEgから出力された回転は、トルクコンバータTCのポンプインペラ及びオイルポンプOPを回転駆動する。このポンプインペラの回転により攪拌されたオイルはステータを介してタービンランナに伝達され、入力軸Input(特許請求の範囲に記載の第1入力回転要素に相当)を駆動する。
【0010】
また、エンジンEgの駆動状態を制御するエンジンコントローラ(ECU)10と、自動変速機の変速状態等を制御する自動変速機コントローラ(ATCU)20と、ATCU20の出力信号に基づいて各締結要素の油圧制御を実行するコントロールバルブユニットCVUが設けられている。ATCU20及びコントロールバルブユニットCVUが変速制御手段に相当する。尚、ECU10とATCU20とは、CAN通信線等を介して接続され、相互にセンサ情報や制御情報を通信により共有している。
【0011】
ECU10には、運転者のアクセルペダル操作量を検出するAPOセンサ1と、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ2が接続されている。ECU10は、エンジン回転数やアクセルペダル操作量に基づいて燃料噴射量やスロットル開度を制御し、エンジン出力回転数及びエンジントルクを制御する。
【0012】
ATCU20には、後述する第1キャリヤPC1の回転数を検出する第1タービン回転数センサ3と、第1リングギヤR1の回転数を検出する第2タービン回転数センサ4と、出力軸Output(特許請求の範囲に記載の第2出力回転要素に相当)の回転数を検出する出力軸回転数センサ5と、運転者のシフトレバー操作状態を検出するインヒビタスイッチ6が接続されており、シフトレバーはP,R,N,Dの他にエンジンブレーキが作用するエンジンブレーキレンジ位置とエンジンブレーキが作用しない通常前進走行レンジ位置とを備える。
【0013】
ATCU20内では、入力軸Inputの回転数を演算する回転数算出部と共に、正常時には車速Vspとアクセルペダル開度APOに基づいて、後述する前進7速段の変速マップから最適な指令変速段を選択し、コントロールバルブユニットCVUに指令変速段を達成する制御指令を出力する変速制御部が設けられている。尚、回転数算出部の構成については後述する。
【0014】
(自動変速機の構成について)
次に、自動変速機の構成について説明する。入力軸Input側から軸方向出力軸Output側に向けて、第1遊星ギヤセットGS1(第1遊星ギヤG1,第2遊星ギヤG2:特許請求の範囲に記載の第1遊星歯車列に相当),第2遊星ギヤセットGS2(第3遊星ギヤG3及び第4遊星ギヤG4:特許請求の範囲に記載の第2遊星歯車列に相当)の順に配置されている。また、摩擦締結要素として複数のクラッチC1,C2,C3及びブレーキB1,B2,B3,B4が配置されている。また、複数のワンウェイクラッチF1,F2が配置されている。
【0015】
第1遊星ギヤG1は、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、両ギヤS1,R1に噛み合う第1ピニオンP1を支持する第1キャリヤPC1(特許請求の範囲に記載の第1回転要素に相当)と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。
【0016】
第2遊星ギヤG2は、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、両ギヤS2,R2に噛み合う第2ピニオンP2を支持する第2キャリヤPC2と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。
【0017】
第3遊星ギヤG3は、第3サンギヤS3と、第3リングギヤR3と、両ギヤS3,R3に噛み合う第3ピニオンP3を支持する第3キャリヤPC3と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。
【0018】
第4遊星ギヤG4は、第4サンギヤS4(特許請求の範囲に記載の第3回転要素に相当)と、第4リングギヤR4と、両ギヤS4,R4に噛み合う第4ピニオンP4を支持する第4キャリヤPC4と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。
【0019】
入力軸Inputは、第2リングギヤR2に連結され、エンジンEgからの回転駆動力を、トルクコンバータTC等を介して入力する。
【0020】
出力軸Outputは、第3キャリヤPC3に連結され、出力回転駆動力を図外のファイナルギヤ等を介して駆動輪に伝達する。
【0021】
第1連結メンバM1(特許請求の範囲に記載の第1出力回転要素,第2入力回転要素に相当)は、第1リングギヤR1と第2キャリヤPC2と第4リングギヤR4とを一体的に連結するメンバである。
【0022】
第2連結メンバM2は、第3リングギヤR3と第4キャリヤPC4とを一体的に連結するメンバである。
【0023】
第3連結メンバM3(特許請求の範囲に記載の第2回転要素に相当)は、第1サンギヤS1と第2サンギヤS2とを一体的に連結するメンバである。
【0024】
第1遊星ギヤセットGS1は、第1遊星ギヤG1と第2遊星ギヤG2とを、第1連結メンバM1と第3連結メンバM3により連結して構成し、4つの回転要素から構成している。また、第2遊星ギヤセットGS2は、第3遊星ギヤG3と第4遊星ギヤG4とを、第2連結メンバM2により連結して5つの回転要素から構成している。
【0025】
第1遊星ギヤセットGS1は、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力されるトルク入力経路を有する。第1遊星ギヤセットGS1に入力されたトルクは、第1連結メンバM1から第2遊星ギヤセットGS2に出力される。
【0026】
第2遊星ギヤセットGS2は、入力軸Inputから第2連結メンバM2に入力されるトルク入力経路と、第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に入力されるトルク入力経路を有する。第2遊星ギヤセットGS2に入力されたトルクは、第3キャリヤPC3から出力軸Outputに出力される。
【0027】
尚、H&LRクラッチC3が解放され、第3サンギヤS3よりも第4サンギヤS4の回転数が大きい時は、第3サンギヤS3と第4サンギヤS4は独立した回転数を発生する。よって、第3遊星ギヤG3と第4遊星ギヤG4が第2連結メンバM2を介して接続された構成となり、それぞれの遊星ギヤが独立したギヤ比を達成する。
【0028】
インプットクラッチC1は、入力軸Inputと第2連結メンバM2とを選択的に断接するクラッチである。
【0029】
ダイレクトクラッチC2は、第4サンギヤS4と第4キャリヤPC4とを選択的に断接するクラッチである。
【0030】
H&LRクラッチC3は、第3サンギヤS3と第4サンギヤS4とを選択的に断接するクラッチである。尚、第3サンギヤS3と第4サンギヤの間には、第2ワンウェイクラッチF2(特許請求の範囲に記載のワンウェイクラッチに相当)が配置されている。
【0031】
フロントブレーキB1(特許請求の範囲に記載の第1ブレーキに相当)は、第1キャリヤPC1の回転を選択的に停止させるブレーキである。また、第1ワンウェイクラッチF1は、フロントブレーキB1と並列に配置されている。
【0032】
ローブレーキB2は、第3サンギヤS3の回転を選択的に停止させるブレーキである。
【0033】
2346ブレーキB3(特許請求の範囲に記載の第2ブレーキに相当)は、第3連結メンバM3(第1サンギヤS1及び第2サンギヤS2)の回転を選択的に停止させるブレーキである。
【0034】
リバースブレーキB4は、第4キャリヤPC4の回転を選択的に停止させるブレーキである。
【0035】
(タービン回転数演算について)
入力軸Inputは第2リングギヤR2に連結され、更に第1遊星ギヤG1と第2遊星ギヤG2は2つの回転要素が連結された第1遊星ギヤセットGS1を構成していることに着目し、ATCU20内に設けられた回転数算出部において、2つのタービン回転数センサ3,4を用いて入力軸Inputの回転数を計算により検出している。
【0036】
具体的には、第1キャリヤPC1の回転数をN(PC1),第2キャリヤPC2の回転数をN(PC2),第2リングギヤR2の回転数をN(R2)とし、図9の共線図に示すように、第2リングギヤR2と第2キャリヤPC2(第1リングギヤR1)のギヤ比を1とし、第1リングギヤR1(第2キャリヤPC2)と第1キャリヤPC1のギヤ比をβとすると、下記式、
N(R2)=(1+1/β)N(PC2)−(1/β)・N(PC1)
により算出される。
【0037】
第1タービン回転数センサ3は第2キャリヤPC2の回転数を検出し、第2タービン回転数センサ4は第1キャリヤPC1に連結されたタービンセンサ用メンバとしてのセンサ用部材63の回転数を検出する。これにより、第2リングギヤR2(入力軸Input)の回転数(以下、タービン回転数と記載する)を上記式に基づいて計算により検出する(特許請求の範囲に記載の回転数検出手段に相当)。
【0038】
(コントロールバルブユニットの構成について)
図2はコントロールバルブユニットCVUの油圧回路を表す回路図である。以下、回路構成について説明する。実施例1の油圧回路には、エンジンにより駆動された油圧源としてのオイルポンプOPと、運転者のシフトレバー操作と連動して、ライン圧PLを供給する油路を切り換えるマニュアルバルブMVと、ライン圧を所定の一定圧に減圧するパイロットバルブPVが設けられている。
【0039】
また、ローブレーキB2の締結圧を調圧する第1調圧弁CV1と、インプットクラッチC1の締結圧を調圧する第2調圧弁CV2と、フロントブレーキB1の締結圧を調圧する第3調圧弁CV3と、H&LRクラッチC3の締結圧を調圧する第4調圧弁CV4と、2346ブレーキB3の締結圧を調圧する第5調圧弁CV5と、ダイレクトクラッチC2の締結圧を調圧する第6調圧弁CV6が設けられている。
【0040】
また、ローブレーキB2とインプットクラッチC1の供給油路をどちらか一方のみ連通する状態に切り換える第1切換弁SV1と、ダイレクトクラッチC2に対しDレンジ圧とRレンジ圧の供給油路をどちらか一方のみ連通する状態に切り換える第2切換弁SV2と、リバースブレーキB4に対して供給する油圧を第6調圧弁CV6からの供給油圧とRレンジ圧からの供給油圧との間で切り換える第3切換弁SV3と、第6調圧弁CV6から出力された油圧を油路123と油路122との間で切り換える第4切換弁SV4が設けられている。
【0041】
また、自動変速機コントロールユニット20からの制御信号に基づいて、第1調圧弁CV1に対し調圧信号を出力する第1ソレノイドバルブSOL1と、第2調圧弁CV2に対し調圧信号を出力する第2ソレノイドバルブSOL2と、第3調圧弁CV3に対し調圧信号を出力する第3ソレノイドバルブSOL3と、第4調圧弁CV4に対し調圧信号を出力する第4ソレノイドバルブSOL4と、第5調圧弁CV5に対し調圧信号を出力する第5ソレノイドバルブSOL5と、第6調圧弁CV6に対し調圧信号を出力する第6ソレノイドバルブSOL6と、第1切換弁SV1及び第3切換弁SV3に対し切り換え信号を出力する第7ソレノイドバルブSOL7が設けられている。
【0042】
上記各ソレノイドバルブSOL2,SOL5,SOL6は三つのポートを有する三方比例電磁弁であり、第1のポートは後述するパイロット圧が導入され、第2のポートはドレーン油路に接続され、第3のポートはそれぞれ調圧弁もしくは切換弁の受圧部に接続されている。また、上記各ソレノイドバルブSOL1,SOL3,SOL4は2つのポートを有する二方比例電磁弁、ソレノイドバルブSOL7は三つのポートを備える三方オンオフ電磁弁である。
【0043】
また、第1ソレノイドバルブSOL1と第3ソレノイドバルブSOL3と第7ソレノイドバルブSOL7はノーマルクローズタイプ(非通電時に閉じた状態)とされている。一方、第2ソレノイドバルブSOL2と第4ソレノイドバルブSOL4と第5ソレノイドバルブSOL5と第6ソレノイドバルブSOL6はノーマルオープンタイプ(非通電時に開いた状態)とされている。
【0044】
(油路構成について)
エンジンにより駆動されるオイルポンプOPの吐出圧は、ライン圧に調圧された後、油路101及び油路102に供給される。油路101には、運転者のシフトレバー操作に連動して作動するマニュアルバルブMVと接続された油路101aと、フロントブレーキB1の締結圧の元圧を供給する油路101bと、H&LRクラッチC3の締結圧の元圧を供給する油路101cが接続されている。
【0045】
マニュアルバルブMVには、油路105と、後退走行時に選択されるRレンジ圧を供給する油路106が接続され、シフトレバー操作に応じて油路105と油路106を切り換える。
【0046】
油路105には、ローブレーキB2の締結圧の元圧を供給する油路105aと、インプットクラッチC1の締結圧の元圧を供給する油路105bと、2346ブレーキB3の締結圧の元圧を供給する油路105cと、ダイレクトクラッチC2の締結圧の元圧を供給する油路105dと、後述する第2切換弁SV2の切り換え圧を供給する油路105eが接続されている。
【0047】
油路106には、第2切換弁SV2の切り換え圧を供給する油路106aと、ダイレクトクラッチC2の締結圧の元圧を供給する油路106bと、リバースブレーキB4の締結圧を供給する油路106cが接続されている。
【0048】
油路102には、パイロットバルブPVを介してパイロット圧を供給する油路103が接続されている。油路103には、第1ソレノイドバルブSOL1にパイロット圧を供給する油路103aと、第2ソレノイドバルブSOL2にパイロット圧を供給する油路103bと、第3ソレノイドバルブSOL3にパイロット圧を供給する油路103cと、第4ソレノイドバルブSOL4にパイロット圧を供給する油路103dと、第5ソレノイドバルブSOL5にパイロット圧を供給する油路103eと、第6ソレノイドバルブSOL6にパイロット圧を供給する油路103fと、第7ソレノイドバルブSOL7にパイロット圧を供給する油路103gとが設けられている。
【0049】
図3は実施例1の調圧弁の構成を表す概略図である。第1調圧弁CV1には、油路105aが接続される第1ポートa1と、ドレーン回路に接続された第2ポートa2と、第1切換弁SV1と接続される油路115aが接続される第3ポートa3と、第1ソレノイドバルブSOL1の信号圧が供給される第4ポートa4と、この信号圧の対向圧として油路115aからフィードバックされれた油路が接続された第5ポートa5と、第4ポートに供給される油圧に対向して作用するスプリングa6が設けられている。
【0050】
図3中、第1切換弁SV1が上方に移動すると油路105aと油路115aが連通され、一方、下方に移動すると油路115aとドレーンとが連通される。同様に、第2調圧弁CV2〜第6調圧弁CV6には、第1ポートa1〜第5ポートa5及びスプリングa6と同じ構成が設けられているため説明を省略する。
【0051】
図4は実施例1の第1切換弁SV1の構成を表す概略図である。第1切換弁SV1には、油路115aと接続された第1ポートb1と、ドレーン回路に接続された第2ポートb2と、油路115bに接続された第3ポートb3と、ドレーン回路に接続された第4ポートb4と、ローブレーキB2へ油圧を供給する油路150aと接続された第5ポートb5と、インプットクラッチC1へ油圧を供給する油路150bと接続された第6ポートb6と、第7ソレノイドバルブSOL7の信号圧を供給する油路140bと接続された第7ポートb7と、第7ポートb7に供給される油圧に対向して作用するスプリングb8が設けられている。
【0052】
図4中、第1切換弁SV1が左方に移動すると油路115aと油路150aが連通されると共に油路150bとドレーンとが連通される。一方、左方に移動すると油路150aとドレーンが連通されると共に油路115bと油路150bとが連通される。
【0053】
図5は実施例1の第2切換弁SV2の構成を表す概略図である。第2切換弁SV2には、Dレンジ圧を供給する油路105dと接続された第1ポートc1と、Rレンジ圧を供給する油路106dと接続された第2ポートc2と、第6調圧弁CV6へ油圧を供給する油路120と接続された第3ポートc3と、Dレンジ圧を供給する油路105eと接続された第4ポートc4と、第4ポートc4の対向圧としてRレンジ圧を供給する油路106aと接続された第5ポートc5と、第4ポートc4に供給される油圧に対向して作用するスプリングc6が設けられている。
【0054】
図5中、第2切換弁SV2が右方に移動すると油路106bと油路120が連通され、一方、左方に移動すると油路105dと油路120が連通される。
【0055】
図6は実施例1の第3切換弁SV3の構成を表す概略図である。第3切換弁SV3には、第4切換弁SV4からの油圧を供給する油路122と接続された第1ポートd1と、Rレンジ圧を供給する油路106cと接続された第2ポートd2と、リバースブレーキB4に油圧を供給する油路130と接続された第3ポートd3と、第7ソレノイドバルブSOL7の信号圧を供給する油路140aと接続された第4ポートd4と、第4ポートd4に供給される油圧に対向して作用するスプリングd5が設けられている。
【0056】
図6中、第3切換弁SV3が右方に移動すると油路106cと油路130が連通され、一方、左方に移動すると油路122と油路130とが連通される。
【0057】
図7は実施例1の第4切換弁SV4の構成を表す概略図である。第4切換弁SV4には、第6調圧弁CV6からの油圧を供給する油路121と接続された第1ポートe1と、ドレーン回路に接続された第2ポートe2及び第3ポートe3と、Rレンジ圧が供給される第4ポートe4と、Dレンジ圧が供給される第5ポートe5と、第4ポートe4に対向して作用するスプリングe6と、油路122と接続された第7ポートe7と、油路123と接続された第8ポートe8が設けられている。
【0058】
図7中、第4切換弁SV4が右方に移動すると油路121と油路123が連通されると共に油路122とドレーン回路が連通され、一方、左方に移動すると油路121と油路122が連通されると共に油路123とドレーン回路が連通される。
【0059】
前記各クラッチC1,C2,C3及び各ブレーキB1,B2,B3,B4には、正常時において図7の締結作動表に示すように、前進7速後退1速の各変速段にて締結圧(○印)や解放圧(無印)が供給される。
【0060】
次に、作用を説明する。
[変速作用]
図8は実施例1の自動変速機用歯車変速装置での前進7速後退1速の締結作動表を示す図、図9は実施例1の自動変速機用歯車変速装置における前進7速後退1速の各変速段でのメンバの回転停止状態を示す共線図を示す図、図10は各変速段におけるソレノイドバルブSOL1〜SOL7の作動表を表す図である。
【0061】
〈1速〉
1速は、エンジンブレーキ作用時(エンジンブレーキレンジ位置選択中)とエンジンブレーキ非作用時(通常前進走行レンジ位置選択中)とで異なる締結要素が作用する。エンジンブレーキ作用時は、図8の(○)に示すように、フロントブレーキB1とローブレーキB2とH&LRクラッチC3との締結により得られる。尚、フロントブレーキB1に並列に設けられた第1ワンウェイクラッチF1と、H&LRクラッチC3と並列に設けられた第2ワンウェイクラッチF2もトルク伝達に関与する。エンジンブレーキ非作用時は、フロントブレーキB1とH&LRクラッチC3は解放され、ローブレーキB2のみが締結され、第1ワンウェイクラッチF1と第2ワンウェイクラッチF2によりトルク伝達される。
【0062】
この1速では、フロントブレーキB1が締結(エンジンブレーキ非作動時は第1ワンウェイクラッチF1により締結)されているため、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力された回転は、第1遊星ギヤセットGS1により減速される。この減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、ローブレーキB2及びH&LRクラッチC3が締結(エンジンブレーキ非作動時はローブレーキB2及び第2ワンウェイクラッチF2により締結)されているため、第4リングギヤR4に入力された回転は、第2遊星ギヤセットにより減速され、第3キャリヤPC3から出力される。
【0063】
すなわち、1速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転を減速するフロントブレーキB1の締結点と、第1遊星ギヤセットGS1からの減速回転を減速するローブレーキB2の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速して出力軸Outputから出力する。
【0064】
この1速でのトルクフローは、フロントブレーキB1(もしくは第1ワンウェイクラッチF1),ローブレーキB2,H&LRクラッチC3(もしくは第2ワンウェイクラッチF2),第1連結メンバM1,第2連結メンバM2,第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第1遊星ギヤセットGS1と第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
【0065】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、第1〜第3ソレノイドバルブSOL1〜SOL3及び第6及び第7ソレノイドバルブSOL6,SOL7をオンとし、それ以外をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。
【0066】
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオンとしているため、第1切換弁SV1は図2中左方に移動し、第1調圧弁CV1とローブレーキB2を連通し、インプットクラッチC1をドレンと接続する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通されるため第6調圧弁CV6にはDレンジ圧が作用する。第6調圧弁CV6は図2中下方に移動しているため、ダイレクトクラッチC2や第4切換弁SV4にDレンジ圧が供給されることはない。
【0067】
尚、第4切換弁SV4はDレンジ圧の作用により図2中右方に移動し、油路121と油路123とを連通した状態であるが締結作用には関係ない。また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されているため図2中左方に移動し、第1ポートd1と第3ポートd3が連通されているものの油路122には油圧が供給されていないため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
【0068】
〈2速〉
2速は、エンジンブレーキ作用時(エンジンブレーキレンジ位置選択中)とエンジンブレーキ非作用時(通常前進走行レンジ位置選択中)とで異なる締結要素が締結する。エンジンブレーキ作用時は、図8の(○)に示すように、ローブレーキB2と2346ブレーキB3とH&LRクラッチC3との締結により得られる。尚、H&LRクラッチC3と並列に設けられた第2ワンウェイクラッチF2もトルク伝達に関与する。エンジンブレーキ非作動時は、H&LRクラッチC3は解放され、ローブレーキB2と2346ブレーキB3が締結され、第2ワンウエイクラッチF2によりトルク伝達される。
【0069】
この2速では、2346ブレーキB3が締結されているため、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力された回転は、第2遊星ギヤG2のみにより減速される。この減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、ローブレーキB2及びH&LRクラッチC3が締結(エンジンブレーキ非作動時は第2ワンウェイクラッチF2により締結)されているため、第4リングギヤR4に入力された回転は、第2遊星ギヤセットにより減速され、第3キャリヤPC3から出力される。
【0070】
すなわち、2速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転を減速する2346ブレーキB3の締結点と、第2遊星ギヤG2からの減速回転を減速するローブレーキB2の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速して出力ギヤOutputから出力する。
【0071】
この2速でのトルクフローは、2346ブレーキB3,ローブレーキB2,H&LRクラッチC3(もしくは第2ワンウェイクラッチF2),第1連結メンバM1,第2連結メンバM2,第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第2遊星ギヤG2と第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
【0072】
尚、1速から2速へのアップシフト時は、フロントブレーキB1を早めに解放し、2346ブレーキB3の締結を開始することで、2346ブレーキB3の締結容量が確保された時点で第1ワンウェイクラッチF1が解放される。よって、変速タイミングの精度の向上を図ることができるものである。
【0073】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、第1,第2,第5〜第7ソレノイドバルブSOL1,SOL2,SOL5,SOL6,SOL7をオンとし、それ以外をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。
【0074】
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオンとしているため、このとき第1切換弁SV1は図2中左方に移動し、第1調圧弁CV1とローブレーキB2を連通し、インプットクラッチC1をドレンと接続する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通されるものの、第6調圧弁CV6は図2中下方に移動しているため、ダイレクトクラッチC2や第3切換弁SV3に油圧が供給されることはない。
【0075】
また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されているため図2中左方に移動し、第1ポートd1と第3ポートd3が連通されているものの油路122には油圧が供給されていないため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
【0076】
〈3速〉
3速は、図8に示すように、2346ブレーキB3とローブレーキB2とダイレクトクラッチC2との締結により得られる。
【0077】
この3速では、2346ブレーキB3が締結されているため、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力された回転は、第2遊星ギヤG2により減速される。この減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、ダイレクトクラッチC2が締結されているため、第4遊星ギヤG4は一体となって回転する。また、ローブレーキB2が締結されているため、第4リングギヤR4と一体に回転する第4キャリヤPC4から第2連結メンバM2を介して第3リングギヤR3に入力された回転は、第3遊星ギヤG3により減速され、第3キャリヤPC3から出力される。このように第4遊星ギヤG4はトルク伝達に関与するが減速作用には関与しない。
【0078】
すなわち、3速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転を減速する2346ブレーキB3の締結点と、第2遊星ギヤG2からの減速回転を減速するローブレーキB2の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速して出力ギヤOutputから出力する。
【0079】
この3速でのトルクフローは、2346ブレーキB3,ローブレーキB2,ダイレクトクラッチC2,第1連結メンバM1,第2連結メンバM2,第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第2遊星ギヤG2と第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
【0080】
尚、2速から3速へのアップシフト時は、H&LRクラッチC3を早めに解放し、ダイレクトクラッチC2の締結を開始することで、ダイレクトクラッチC2の締結容量が確保された時点で第2ワンウェイクラッチF2が解放される。よって、変速タイミングの精度の向上を図ることができるものである。
【0081】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、第1,第2,第4,5及び第7ソレノイドバルブSOL1,SOL2,SOL4,SOL5,SOL7をオンとし、それ以外をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。
【0082】
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオンとしているため、このとき第1切換弁SV1は図2中左方に移動し、第1調圧弁CV1とローブレーキB2を連通し、インプットクラッチC1をドレンと接続する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通される。第6調圧弁CV6は図2中上方に移動しているため、第4切換弁SV4に調圧された油圧が供給される。
【0083】
第4切換弁SV4にはDレンジ圧が作用しているため、油路121と油路123が連通される。油路122はドレン回路と連通されているため、ダイレクトクラッチC2に油圧が供給され、一方、第3切換弁SV3に油圧が供給されることはない。また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されているため図2中左方に移動し、第1ポートd1と第3ポートd3が連通されているものの油路122には油圧が供給されていないため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
【0084】
〈4速〉
4速は、図8に示すように、2346ブレーキB3とダイレクトクラッチC2とH&LRクラッチC3との締結により得られる。
【0085】
この4速では、2346ブレーキB3が締結されているため、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力された回転は、第2遊星ギヤG2のみにより減速される。この減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、ダイレクトクラッチC2及びH&LRクラッチC3が締結されているため、第2遊星ギヤセットGS2は一体で回転する。よって、第4リングギヤR4に入力された回転は、そのまま第3キャリヤPC3から出力される。
【0086】
すなわち、4速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転を減速する2346ブレーキB3の締結点と、第2遊星ギヤG2からの減速回転をそのまま出力するダイレクトクラッチC2及びH&LRクラッチC3の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速して出力ギヤOutputから出力する。
【0087】
この4速でのトルクフローは、2346ブレーキB3,ダイレクトクラッチC2,H&LRクラッチC3,第1連結メンバM1,第2連結メンバM2,第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第2遊星ギヤG2と第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
【0088】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、第2及び第5ソレノイドバルブSOL2,SOL5をオンとし、それ以外をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。
【0089】
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオフとしているため、このとき第1切換弁SV1は図2中左方に移動し、ローブレーキB2をドレン回路と連通し、第2調圧弁CV2とインプットクラッチC1を連通する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通される。第6調圧弁CV6は図2中上方に移動しているため、第4切換弁SV4に調圧された油圧が供給される。
【0090】
第4切換弁SV4にはDレンジ圧が作用しているため、油路121と油路123が連通される。油路122はドレン回路と連通されているため、ダイレクトクラッチC2に油圧が供給され、一方、第3切換弁SV3に油圧が供給されることはない。また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されていないため図2中右方に移動し、第2ポートd2と第3ポートd3が連通されているものの油路106cにはRレンジ圧が供給されていない(マニュアルバルブMVで遮断されている)ため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
【0091】
〈5速〉
5速は、図8に示すように、インプットクラッチC1とダイレクトクラッチC2とH&LRクラッチC3との締結により得られる。
【0092】
この5速では、インプットクラッチC1が締結されているため、入力軸Inputの回転は第2連結メンバM2に入力される。また、ダイレクトクラッチC2及びH&LRクラッチC3が締結されているため、第3遊星ギヤG3は一体で回転する。よって、入力軸Inputの回転は、そのまま第3キャリヤPC3から出力される。
【0093】
すなわち、5速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転をそのまま出力するインプットクラッチC1,ダイレクトクラッチC2及びH&LRクラッチC3の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転をそのまま出力ギヤOutputから出力する。
【0094】
この5速でのトルクフローは、インプットクラッチC1,ダイレクトクラッチC2,H&LRクラッチC3,第2連結メンバM2にトルクが作用する。つまり、第3遊星ギヤG3のみがトルク伝達に関与する。
【0095】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、全てのソレノイドバルブSOL1〜SOL7をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。
【0096】
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオフとしているため、このとき第1切換弁SV1は図2中右方に移動し、ローブレーキB2をドレン回路と連通し、第2調圧弁CV2とインプットクラッチC1を連通する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通される。第6調圧弁CV6は図2中上方に移動しているため、第4切換弁SV4に調圧された油圧が供給される。
【0097】
第4切換弁SV4にはDレンジ圧が作用しているため、油路121と油路123が連通され、油路122はドレン回路と連通されているため、ダイレクトクラッチC2に油圧が供給され、一方、第3切換弁SV3に油圧が供給されることはない。また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されていないため図2中右方に移動し、油路106c(第2ポートd2)と油路130(第3ポートd3)が連通されているものの油路106cにはRレンジ圧が供給されていない(マニュアルバルブMVで遮断されている)ため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
【0098】
〈6速〉
6速は、図8に示すように、インプットクラッチC1とH&LRクラッチC3と2346ブレーキB3の締結により得られる。
【0099】
この6速では、インプットクラッチC1が締結されているため、入力軸Inputの回転は第2リングギヤに入力されると共に、第2連結メンバM2に入力される。また、2346ブレーキB3が締結されているため、第2遊星ギヤG2により減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、H&LRクラッチC3が締結されているため、第2遊星ギヤセットGS2は、第4リングギヤR4の回転と、第2連結メンバM4の回転によって規定される回転を第3キャリヤPC3から出力する。
【0100】
すなわち、6速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転を第2遊星ギヤG2により減速する2346ブレーキB3,エンジンの出力回転をそのまま第2連結メンバM2に伝達するインプットクラッチC1,第2遊星ギヤセットGS2を構成するH&LRクラッチC3の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を増速して出力ギヤOutputから出力する。
【0101】
この6速でのトルクフローは、インプットクラッチC1,H&LRクラッチC3,2346ブレーキB3,第1連結メンバM1,第2連結メンバM2,第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第2遊星ギヤG2及び第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
【0102】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、第5及び第6ソレノイドバルブSOL5,SOL6をオンとし、他のソレノイドバルブSOL1,SOL2,SOL3,SOL4,SOL7をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。
【0103】
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオフとしているため、このとき第1切換弁SV1は図2中左方に移動し、ローブレーキB2をドレン回路と連通し、第2調圧弁CV2とインプットクラッチC1を連通する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通される。第6調圧弁CV6は図2中上方に移動しているため、第4切換弁SV4に調圧された油圧が供給される。
【0104】
第4切換弁SV4にはDレンジ圧が作用しているため、油路121と油路123が連通され、油路122はドレン回路と連通されているため、ダイレクトクラッチC2に油圧が供給され、一方、第3切換弁SV3に油圧が供給されることはない。また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されていないため図2中右方に移動し、油路106c(第2ポートd2)と油路130(第3ポートd3)が連通されているものの油路106cにはRレンジ圧が供給されていない(マニュアルバルブMVで遮断されている)ため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
【0105】
〈7速〉
7速は、図8に示すように、インプットクラッチC1とH&LRクラッチC3とフロントブレーキB1(第1ワンウェイクラッチF1)の締結により得られる。
【0106】
この7速では、インプットクラッチC1が締結されているため、入力軸Inputの回転は第2リングギヤに入力されると共に、第2連結メンバM2に入力される。また、フロントブレーキB1が締結されているため、第1遊星ギヤセットGS1により減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、H&LRクラッチC3が締結されているため、第2遊星ギヤセットGS2は、第4リングギヤR4の回転と、第2連結メンバM4の回転によって規定される回転を第3キャリヤPC3から出力する。
【0107】
すなわち、7速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転を第1遊星ギヤセットGS1により減速するフロントブレーキB1,エンジンの出力回転をそのまま第2連結メンバM2に伝達するインプットクラッチC1,第2遊星ギヤセットGS2を構成するH&LRクラッチC3の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を増速して出力ギヤOutputから出力する。
【0108】
この7速でのトルクフローは、インプットクラッチC1,H&LRクラッチC3,フロントブレーキB1,第1連結メンバM1,第2連結メンバM2,第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第1遊星ギヤセットGS1及び第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
【0109】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、第3及び第6ソレノイドバルブSOL3,SOL6をオンとし、他のソレノイドバルブSOL1,SOL2,SOL4,SOL5,SOL7をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。
【0110】
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオフとしているため、このとき第1切換弁SV1は図2中右方に移動し、ローブレーキB2をドレン回路と連通し、第2調圧弁CV2とインプットクラッチC1を連通する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通される。第6調圧弁CV6は図2中上方に移動しているため、第4切換弁SV4に調圧された油圧が供給される。
【0111】
第4切換弁SV4にはDレンジ圧が作用しているため、油路121と油路123が連通され、油路122はドレン回路と連通されているため、ダイレクトクラッチC2に油圧が供給され、一方、第3切換弁SV3に油圧が供給されることはない。また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されていないため図2中右方に移動し、油路106c(第2ポートd2)と油路130(第3ポートd3)が連通されているものの油路106cにはRレンジ圧が供給されていない(マニュアルバルブMVで遮断されている)ため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
【0112】
〈後退速〉
後退速は、図8に示すように、H&LRクラッチC3とフロントブレーキB1とリバースブレーキB4の締結により得られる。
【0113】
この後退速では、フロントブレーキB1が締結されているため、第1遊星ギヤセットGS1により減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、H&LRクラッチC3が締結され、リバースブレーキB4が締結されているため、第2遊星ギヤセットGS2は、第4リングギヤR4の回転と、第2連結メンバM2の固定によって規定される回転を第3キャリヤPC3から出力する。
【0114】
すなわち、後退速は、図9の共線図に示すように、エンジンの出力回転を第1遊星ギヤセットGS1により減速するフロントブレーキB1,第2連結メンバM2の回転を固定するリバースブレーキB4,第2遊星ギヤセットGS2を構成するH&LRクラッチC3の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を逆向きに減速して出力ギヤOutputから出力する。
【0115】
この後退速でのトルクフローは、H&LRクラッチC3,フロントブレーキB1,リバースブレーキB4,第1連結メンバM1,第2連結メンバM2,第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第1遊星ギヤセットGS1及び第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
【0116】
このとき、図10のソレノイドバルブ作動表に示すように、第2,第3及び第6ソレノイドバルブSOL2,SOL3,SOL6をオンとし、他のソレノイドバルブSOL1,SOL4,SOL5,SOL7をオフとすることで、所望の締結要素に締結圧が供給される。尚、第7ソレノイドSOL7についてはRレンジ切り換え初期はオンとし、締結完了後にオフとする。
【0117】
リバースブレーキB4には、第3切換弁SV3を介してRレンジ圧が供給される。Rレンジには、専用の調圧弁を持っていないため、締結初期には、ダイレクトクラッチC2に使用していた第6調圧弁CV6を用いてリバースブレーキB4の締結圧を調圧する。まず、マニュアルバルブMVによりRレンジ圧に切り換えられると、第2切換弁SV2は図2中右方に移動し、第6調圧弁CV6にRレンジ圧が供給される。また、第4切換弁SV4は図2中左方に移動し、油路121と油路122とを連通する。これにより、第6調圧弁CV6により調圧された油圧が油路122に導入される。
【0118】
この状態で第7ソレノイドバルブSOL7をオンとすると、第3切換弁SV3は図2中左方に移動し、油路122と油路130を連通する。よって、第7ソレノイドバルブSOL7がオンの間は第6調圧弁CV6により調圧された油圧によってリバースブレーキB4の締結圧を制御する。締結が完了すると、第7ソレノイドバルブSOL7をオフとする。すると、第3切換弁SV3が図2中右方に移動し、油路106cと油路130が連通されるため、Rレンジ圧がそのまま導入され、締結状態を維持する。
【0119】
このように、第3切換弁SV3及び第4切換弁SV4を設けたことで、1つの調圧弁で2つの締結要素の締結圧を制御することを可能としている。
【0120】
(第1切換弁の作用について)
次に、上記作用に基づいて、第1切換弁SV1の作用について説明する。第1切換弁SV1はローブレーキB2とインプットクラッチC1とが確実に同時締結しないために設けられた切換弁である。例えば、第1ソレノイドバルブSOL1と第2ソレノイドバルブSOL2が故障し、同時に締結圧を発生した場合であっても、第1切換弁SV1がどちらか一方に付勢されなければ締結要素に対して締結圧を供給することはない。よって、確実にインターロック状態を防止するものである。
【0121】
また、ローブレーキB2とインプットクラッチC1は、図8の締結表及び図10のソレノイド作動表に示すように、1速から3速まではローブレーキB2が締結し、それ以外はローブレーキB2が締結することはない。一方、5速から7速まではインプットクラッチC1が締結し、それ以外はインプットクラッチC1が締結することはない。このことは、4速においてローブレーキB2もインプットクラッチC1も締結しないことを表す。
【0122】
第1切換弁SV1のようなインターロック状態防止バルブを構成する場合、仮にある変速段でローブレーキB2が締結、インプットクラッチC1が解放という状態であり、ある変速段から1段アップシフトによってローブレーキB2が解放、インプットクラッチC1が締結となると、掛けかえ制御中にローブレーキB2の解放圧制御を行うと共に、インプットクラッチC1の締結圧制御を行うこととなる。すると、第1切換弁SV1の切り換えタイミングをどのタイミングにすることがベストなのかを特定するのが非常に困難である。また、両締結要素に同時に締結容量を持たせてイナーシャフェーズを進行させるような制御が不可能となる。
【0123】
これに対し、第1切換弁SV1を切り換える際、4速という両締結要素が関与しない変速段が存在するため、4速走行時に第7ソレノイドバルブSOL7をオフすることで、変速制御に影響を与えることなく確実にインターロック状態を防止している。
【0124】
(入力軸インターロック状態、かつ、出力軸ニュートラル状態について)
次に、実施例1において入力軸がインターロック状態であり、かつ、出力軸がニュートラル状態となる場合について説明する。図11はエンジンブレーキレンジ位置選択中の1速走行時に2346ブレーキB3に締結故障が発生した場合の共線図の変化を表す図である。
【0125】
尚、図11中、第1遊星ギヤセットGS1を表す剛体レバーをL1とし、第2遊星ギヤセットGS2を表す剛体レバーをL2とし、第3遊星ギヤG3の剛体レバーをL23とし、第4遊星ギヤG4の剛体レバーをL24として定義する。ここで、剛体レバーとは、遊星歯車の各回転要素(サンギヤ、キャリヤ、リングギヤ)の回転速度比を直線で表したものであり、トルクの入出力に関しても同時に表現可能としている。図11中、太線矢印はトルクの入出力方向を表す。また、実線は正常時、太い点線は故障時を表している。
【0126】
また、実施例1の「締結故障」とは、解放指令を出力しているにもかかわらず、締結状態のままとなる故障、言い換えると完全解放にならない状態の故障を表し、「解放故障」とは、締結指令を出力しているにもかかわらず、解放したままとなる故障、言い換えると完全締結にならない状態の故障を表す。また、ソレノイドなどの断線、短絡といった電気的故障により発生する故障は電流値などを測定すれば検知可能であるため、特に故障を実際の現象から検知する必要がないため含まない。よって、例えば、油圧回路内でコンタミ等の影響によりバルブが引っ掛かる状態、所謂バルブスティック等により発生する故障を表すものとする。バルブスティック等は実際に自動変速機内で発生する現象から論理的に推定する以外に検知できないからである。
【0127】
エンジンブレーキレンジ位置選択中の1速走行時は、フロントブレーキB1が締結し、H&LRクラッチC3が締結し、ローブレーキB2が締結した状態である。このとき、入力軸Inputに図11中上向きのトルクが作用すると、フロントブレーキB1において上向きのトルクが作用し、第1リングギヤR1及び第2キャリヤPC2には下向きのトルクが作用する。そして、第1遊星ギヤセットGS1から出力された下向きのトルクは、第2遊星ギヤセットGS2の第4リングギヤR4に上向きのトルクとして入力される。第2遊星ギヤセットGS2では、ローブレーキB2において上向きのトルクが作用し、出力軸Outputから下向きのトルクが出力される。
【0128】
この状態で、2346ブレーキB3に締結故障が発生すると、剛体レバーL1には、第1及び第2サンギヤS1,S2の回転数を0に引き上げる力が作用する。ただし、フロントブレーキB1が締結しているため、この締結点を中心に回転し、第1遊星ギヤセットGS1の全ての回転要素の回転数を0に引き下げることとなる(入力軸インターロック状態)。
【0129】
すると、第1連結メンバM1を介して接続された第2遊星ギヤセットGS2の第4リングギヤR4の回転数も引き下げられる。このとき、第4遊星ギヤG4は、ローブレーキB2に固定された第3サンギヤS3に対して第2ワンウェイクラッチF2を介して接続されているのみであるため、第4キャリヤPC4を中心に剛体レバーL24は回転することとなる。
【0130】
一方、第2遊星ギヤセットGS2を構成する第3遊星ギヤG3は、ローブレーキB2と出力軸Outputにより回転数が規定されているものの、第4遊星ギヤG4の第4キャリヤPC4から第3リングギヤR3への反力を得られず、ニュートラル状態となる(出力軸ニュートラル状態)。
【0131】
よって、運転者がアクセルペダルを踏み込んでも入力軸インターロック状態によってエンジン回転数が上昇しにくくなる一方、車速(出力軸回転)は通常のインターロック状態と異なり、急減速など発生せずに、惰性走行状態となる。
【0132】
図12は2速走行時にフロントブレーキB1に締結故障が発生した場合の共線図の変化を表す図である。
【0133】
2速走行時は、2346ブレーキB3が締結し、H&LRクラッチC3が締結し、ローブレーキB2が締結した状態である。このとき、入力軸Inputに図12中上向きのトルクが作用すると、2346ブレーキB3において上向きのトルクが作用し、第1リングギヤR1及び第2キャリヤPC2には下向きのトルクが作用する。そして、第1遊星ギヤセットGS1から出力された下向きのトルクは、第2遊星ギヤセットGS2の第4リングギヤR4に上向きのトルクとして入力される。第2遊星ギヤセットGS2では、ローブレーキB2において上向きのトルクが作用し、出力軸Outputから下向きのトルクが出力される。
【0134】
この状態で、フロントブレーキB1に締結故障が発生すると、剛体レバーL1には、第1キャリヤPC1の回転数を0に引き下げる力が作用する。ただし、2346ブレーキB3が締結しているため、この締結点を中心に回転し、第1遊星ギヤセットGS1の全ての回転要素の回転数を0に引き下げることとなる(入力軸インターロック状態)。
【0135】
すると、第1連結メンバM1を介して接続された第2遊星ギヤセットGS2の第4リングギヤR4の回転数も引き下げられる。このとき、第4遊星ギヤG4は、ローブレーキB2に固定された第3サンギヤS3に対して第2ワンウェイクラッチF2を介して接続されているのみであり、第4キャリヤPC4を中心に剛体レバーL24は回転することとなる。
【0136】
一方、第2遊星ギヤセットGS2を構成する第3遊星ギヤG3は、ローブレーキB2と出力軸Outputにより回転数が規定されているものの、第4遊星ギヤG4の第4キャリヤPC4から第3リングギヤR3への反力を得られず、ニュートラル状態となる(出力軸ニュートラル)。
【0137】
図13は入力軸インターロック・出力軸ニュートラル故障を検知する処理を表すフローチャートである。尚、この処理はATCU20において予め設定された制御周期毎に実行されているものとする。
【0138】
ステップ101では、タイマtを0にリセットする。
ステップ102では、出力軸回転数に相当する車速Vspが走行状態を表す設定値より大きいかどうかを判断し、設定値より大きいときはステップ103へ進み、それ以外のときはステップ101へ戻りタイマをリセットする。このように車速Vspが設定値より大きいかどうかを判断したのは、車両停車時では、出力軸Outputが回転していないため、ニュートラルかどうかが判断できないからである。
【0139】
ステップ103では、第1タービン回転数センサ3及び第2タービン回転数センサ4の両方が設定値より小さいかどうかを判断し、小さいときはステップ104へ進み、それ以外のときはステップ101へ戻りタイマをリセットする。第1タービン回転数センサ3及び第2タービン回転数センサ4は共に第1遊星ギヤセットGS1の回転数を検出している。上記所定値は、入力軸Inputにインターロックが発生すると、これら両回転数センサの回転数は小さくなるため、車両停止時以外はインターロックが発生していなければとらない回転数に設定されており、これら両回転数センサの検出値がこの設定値未満かどうかを判断することで、入力軸インターロックが発生しているかどうかを判断する。
【0140】
ステップ104では、第1タービン回転数センサ3及び第2タービン回転数センサ4の両方の検出値から、第1遊星ギヤセットGS1の第1減速度を算出し(特許請求の範囲に記載の第1減速度検出手段に相当)、この減速度が所定値以上か否かを判定するとともに、車速センサの検出値から算出した車速の第2減速度(特許請求の範囲に記載の第2減速度検出手段に相当)が第2設定値より小さいかどうかを判断し、第1遊星ギヤセットGS1の第1減速度が第1設定値以上であり、かつ、車速センサの検出値から算出した第2減速度が第2設定値未満のときはステップ105へ進み、それ以外のときはステップ101へ戻りタイマをリセットする。例えば、ある車速で駆動力を出力して走行している際、入力軸インターロックが発生すると、第1遊星ギヤセットGS1の回転要素の加速度は急激に低下(大きな減速度が発生)するため、第1減速度が第1設定値より大きいかどうかを判断するとともに、運転者がアクセルペダルを踏み込んでも入力軸インターロック状態によって車速(出力軸回転数)は通常のインターロック状態と異なり、急減速など発生せず、惰性走行状態となって加速度が低下する(減速度が小さい)ため、車速にあっては第2減速度が第2設定値未満かどうかを判断する。
【0141】
ステップ105では、タイマtのカウントアップを実行する。
【0142】
ステップ106では、タイマtのカウント値が設定値よりも大きいかどうかを判断し、大きいときはステップ107へ進み、それ以外のときはステップ102へ戻り、ステップ102以降を繰り返す。タイマtのカウント値が設定値よりも大きいときは、継続的に上記条件を満たす状態が発生しているためフェールと判断する。一方、ノイズ等の影響により一時的に条件を満たすような場合を排除している。
【0143】
ステップ107では、入力軸インターロック・出力軸ニュートラル故障と判定する。
【0144】
次に、上記制御処理の作用について説明する。具体的な例として、1速走行時に2346ブレーキB3が締結故障した場合について説明する。1速により車速Vspで走行している状態で2346ブレーキB3が締結故障すると、入力軸Inputがインターロックとなり、タービン回転数を一気に押し下げる。
【0145】
すると、第1タービン回転数センサ3及び第2タービン回転数センサ4の両方の回転数が一気に減少する。出力軸Outputには入力軸Inputから駆動力が出力されなくなると共に、出力軸Outputはニュートラルとなるため、車速が減速する。この状態がタイマtの設定値を超えると、入力軸インターロック・出力軸ニュートラルが発生したと検知する。
【0146】
尚、この故障時には、故障モードにあったフェールセーフ制御を実行するように構成してもよい。これにより、走行性の悪化を最小限に低減することができる。
【実施例2】
【0147】
次に実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。
【0148】
図14は入力軸インターロック・出力軸ニュートラル故障を検知する処理を表すフローチャートである。尚、この処理はATCU20において予め設定された制御周期毎に実行されているものとする。
【0149】
ステップ201では、タイマtを0にリセットする。
【0150】
ステップ202では、アクセルペダル操作量APOが設定値より大きいかどうか、かつ、出力軸回転数に相当する車速Vspが走行状態を表す設定値より大きいかどうかを判断し、条件を満たしたときはステップ203へ進み、それ以外のときはステップ201へ戻りタイマをリセットする。
【0151】
このようにアクセルペダル操作量APOが設定値より大きいかどうかを判断したのは、アクセルペダル操作量APOが大きいときにはエンジンEgの出力が大きくなり、インターロックが発生していなければ入力軸Inputの回転数が上昇することを表すからである。また、車速Vspが設定値より大きいかどうかを判断したのは、車両停車時では、出力軸Outputが回転していないため、ニュートラルかどうかが判断できないからである。
【0152】
ステップ203では、入力軸Inputの回転数を出力軸Outputの回転数で除した実ギヤ比がギヤ比異常判定域かどうかを判断し、ギヤ比異常判定域にあるときはステップ204へ進み、それ以外のときはステップ201へ戻りタイマをリセットする。
【0153】
ギヤ比異常判定域とは、指令変速段に対応するギヤ比から大きく外れた領域を表す。具体的には、入力軸Inputの回転数がインターロックにより0に近い小さな値であって、出力軸Outputの回転数がニュートラルにより回転した場合にギヤ比が非常に小さな値となり、この非常に小さなギヤ比がギヤ比異常判定域に属する。
【0154】
ステップ204では、タービン回転数が設定値より小さいかどうかを判断し、設定値よりも小さいときはステップ205へ進み、それ以外のときはステップ201へ戻りタイマをリセットする。
【0155】
すなわち、ステップ202においてアクセルペダル操作量APOが設定値よりも大きいと判断されているにも係わらず、タービン回転数が設定値よりも小さいときとは、入力軸Inputの回転数がインターロックにより固定されていると考えられるからである。尚、アクセルペダル操作量APOが大きい場合、エンジンEgの出力が上昇するものの、タービン回転数が固定されていると、トルクコンバータTC内でストールトルクが溜まるのみとなる。
【0156】
ステップ205では、タイマtのカウントアップを実行する。
【0157】
ステップ206では、タイマtのカウント値が設定値よりも大きいかどうかを判断し、大きいときはステップ207へ進み、それ以外のときはステップ202へ戻り、ステップ202以降を繰り返す。タイマtのカウント値が設定値よりも大きいときは、継続的に上記条件を満たす状態が発生しているためフェールと判断する。一方、ノイズ等の影響により一時的に条件を満たすような場合を排除している。
【0158】
ステップ207では、入力軸インターロック・出力軸ニュートラル故障と判定する。
【0159】
次に、上記制御処理の作用について説明する。具体的な例として、1速走行時に2346ブレーキB3が締結故障した場合について説明する。1速により車速Vspで走行している状態で2346ブレーキB3が締結故障すると、入力軸Inputがインターロックとなり、タービン回転数を一気に押し下げる。
【0160】
すなわち、アクセルペダル操作量APOが設定値よりも大きいにもかかわらず、タービン回転数が設定値よりも小さいため、入力軸にインターロックが発生していると検知できる。また、この状態でギヤ比がギヤ比異常判定域に存在する場合、出力軸Outputには入力軸Inputから駆動力が出力されなくなると共に、出力軸Outputはニュートラルとなる。この状態がタイマtの設定値を超えると、入力軸インターロック・出力軸ニュートラルが発生したと検知する。
【0161】
尚、この故障時には、故障モードにあったフェールセーフ制御を実行するように構成してもよい。これにより、走行性の悪化を最小限に低減することができる。
【実施例3】
【0162】
次に、実施例3について説明する。基本的な構成は実施例1,2と同じであるため異なる点についてのみ説明する。実施例1,2では、入力軸インターロック・出力軸ニュートラルと判定した。これに対し、実施例3では、この判定が成された後、どちらのブレーキに締結故障が発生したかを判断する点が異なる。
【0163】
図15は実施例3の故障特定処理を表すフローチャートである。
ステップ301では、故障を検知した際の指令変速段が1速かどうかを判断し、1速のときはステップ302へ進み、それ以外のときはステップ303に進む。
【0164】
ステップ302では、2346ブレーキB3に締結故障が発生したと判断する。
【0165】
ステップ303では、フロントブレーキB1に締結故障が発生したと判断する。
【0166】
すなわち、図11,12において説明したように、1速時に2346ブレーキB3が締結故障すると、入力軸インターロック・出力軸ニュートラルの状態が発生する。また、2速時にフロントブレーキB1が締結故障すると、入力軸インターロック・出力軸ニュートラルの状態が発生する。よって、故障検知時の指令変速段を確認することで、締結故障が発生した締結要素を特定することができる。
【0167】
この特定によって、例えばフェールセーフ制御を実行する際、締結故障した締結要素を締結させたままの状態で適宜変速させることで、走行性を最低限確保するといった変速制御を達成することができる。
【0168】
(他の実施例)
以上、各実施例に基づいて説明したが、本願発明は下記に示す構成を満たした変速機であれば適宜適用可能である。下記に各構成について分節して説明する。
【0169】
構成(a)
動力源と連結された第1入力回転要素と、第1出力回転要素と、第1ブレーキにより選択的に停止される第1回転要素と、第2ブレーキにより選択的に停止される第2回転要素とを有する第1遊星歯車列。
【0170】
この構成は、第1入力回転要素がインターロックする前提を表すものであり、2つのブレーキが同時に締結した場合にインターロックが引き起こされる。ある変速段において1つのブレーキが締結しているときには、他のブレーキの締結故障によりインターロックが発生する。また、ある変速段において両方のブレーキが解放していたとしても、2つのブレーキが締結故障した場合はインターロックが発生する。
【0171】
構成(b)
前記第1出力回転要素と連結された第2入力回転要素と、ワンウェイクラッチにより選択的に停止される第3回転要素と、共線図上で前記第2入力回転要素とワンウェイクラッチとの間に配置された第2出力回転要素と、を有する第2遊星歯車列。
【0172】
この構成は、構成(a)においてインターロックが発生し、第1出力回転要素の回転数が0に伴い第2入力回転要素の回転数も0となった場合であっても、図11,12の剛体レバーL24の回転において説明したように、第3回転要素はワンウェイクラッチにより係止されることなく第2出力回転要素がニュートラル状態となる前提を表すものである。
【0173】
上記構成(a),(b)に示す前提を有する自動変速機では、第1もしくは第2ブレーキの締結故障により入力軸インターロック・出力軸ニュートラルという特殊な故障が発生するため、本願発明を適用することで、早期に特殊な故障を検知することができる。
【0174】
また、実施例1の場合、タービン回転数を直接検知できない構成であるため、2つの回転数センサを設け、この2つのセンサ値からタービン回転数である入力軸の回転数を算出しているが、直接検出できる場合には、直接入力軸の回転数を検知し、その検出された値に基づいて制御しても良い。
【0175】
また、実施例1の場合、第2減速度検出手段として、車速から減速度を算出しているが、第2減速度算出手段は、車両自体の減速度を検出できるものであれば良く、加速度センサ等を備えた車両であれば、車速センサの検出値に代えて、加速度センサからの検出値に基づいて判断しても良いし、アンチロックブレーキシステム等の車輪速データを用いて制御しても良い。
【0176】
また、実施例1,2では、アクセルペダル操作量APOを検出する例を示したが、エンジンEgに設けられた電子制御スロットル等からスロットル開度TVOを検出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】実施例1のFR型の前進7速後退1速を達成する自動変速機の構成を表すスケルトン図である。
【図2】実施例1のコントロールバルブユニットの油圧回路を表す回路図である。
【図3】実施例1の調圧弁の構成を表す概略図である。
【図4】実施例1の第1切換弁の構成を表す概略図である。
【図5】実施例1の第2切換弁の構成を表す概略図である。
【図6】実施例1の第3切換弁の構成を表す概略図である。
【図7】実施例1の第4切換弁の構成を表す概略図である。
【図8】実施例1の自動変速機での前進7速後退1速の締結作動表を示す図である。
【図9】実施例1の自動変速機における前進7速後退1速の各変速段でのメンバの回転停止状態を示す共線図である。
【図10】実施例1の各変速段におけるソレノイドバルブSOL1〜SOL7の作動表を表す図である。
【図11】実施例1の1速走行時に2346ブレーキに締結故障が発生した場合の共線図の変化を表す図である。
【図12】実施例1の2速走行時にフロントブレーキに締結故障が発生した場合の共線図の変化を表す図である。
【図13】実施例1の入力軸インターロック・出力軸ニュートラル故障を検知する処理を表すフローチャートである。
【図14】実施例2の入力軸インターロック・出力軸ニュートラル故障を検知する処理を表すフローチャートである。
【図15】実施例3の故障特定処理を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0178】
GS1 第1遊星ギヤセット
GS2 第2遊星ギヤセット
G1 第1遊星ギヤ
G2 第2遊星ギヤ
G3 第3遊星ギヤ
G4 第4遊星ギヤ
M1 第1連結メンバ
M2 第2連結メンバ
M3 第3連結メンバ
C1 インプットクラッチ
C2 ダイレクトクラッチ
C3 H&LRクラッチ
B1 フロントブレーキ
B2 ローブレーキ
B3 2346ブレーキ
B4 リバースブレーキ
F1 第1ワンウェイクラッチ
F2 第2ワンウェイクラッチ
Input 入力軸
Output 出力軸
1 アクセルペダル操作量センサ
2 エンジン回転数センサ
3 第1タービン回転数センサ
4 第2タービン回転数センサ
5 出力軸回転数センサ
6 インヒビタスイッチ
CVU コントロールバルブユニット
Eg エンジン
OP オイルポンプ
PV パイロットバルブ
CV1-CV6 調圧弁
SOL1-SOL7 ソレノイドバルブ
SV1-SV4 切換弁
TC トルクコンバータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源からの動力が入力される入力軸と、
前記入力軸と連結された第1入力回転要素と、第1出力回転要素と、第1回転要素と、第2回転要素と、を有する第1遊星歯車列と、
前記第1出力回転要素と連結された第2入力回転要素と、ワンウェイクラッチにより選択的に停止される第3回転要素と、共線図上で前記第2入力回転要素とワンウェイクラッチとの間に配置された第2出力回転要素と、を有する第2遊星歯車列と、
前記第2出力回転要素に連結され、駆動輪側に変速された前記動力を出力する出力軸と、
前記第1回転要素を選択的に停止可能な第1ブレーキと、
正常時には前記第1ブレーキと同時締結せず、前記第2回転要素を選択的に停止可能な第2ブレーキ、又は前記第1遊星歯車列内の2つの回転要素間に設けられたクラッチと、
走行状態に基づいて指令変速段を決定し、前記第1ブレーキ、前記第2ブレーキ又は前記クラッチ、及び他の締結要素の締結・解放制御則を実行して前記指令変速段を達成する変速制御手段と、
を備えた自動変速機の制御装置において、
車速を検出する車速検出手段と、
前記第1遊星歯車列の各回転要素のうち、少なくとも前記第1回転要素以外の回転要素の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記回転数検出手段により検出された回転数に基づいて、前記第1回転要素以外の回転要素の減速度を算出する第1減速度検出手段と、
前記第2出力回転要素の減速度を検出する第2減速度検出手段と、
検出された車速が所定値以上、前記回転数検出手段により検出された回転数が所定値以下、かつ、前記第1減速度検出手段により検出された前記第1回転要素以外の回転要素の減速度が所定値以上であり、前記第2減速度検出手段により検出された前記第2出力回転要素の減速度が所定値未満のときは、前記第1遊星歯車列においてインターロックが発生し、前記第2遊星歯車列がニュートラルとなる故障と判定する故障判定手段と、
を設けたことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項2】
動力源からの動力が入力される入力軸と、
前記入力軸と連結された第1入力回転要素と、第1出力回転要素と、第1回転要素と、第2回転要素と、を有する第1遊星歯車列と、
前記第1出力回転要素と連結された第2入力回転要素と、ワンウェイクラッチにより選択的に停止される第3回転要素と、共線図上で前記第2入力回転要素とワンウェイクラッチとの間に配置された第2出力回転要素と、を有する第2遊星歯車列と、
前記第2出力回転要素に連結され、駆動輪側に変速された前記動力を出力する出力軸と、
前記第1回転要素を選択的に停止可能な第1ブレーキと、
正常時には前記第1ブレーキと同時締結せず、前記第2回転要素を選択的に停止可能な第2ブレーキ、又は前記第1遊星歯車列内の2つの回転要素間に設けられたクラッチと、
走行状態に基づいて指令変速段を決定し、前記第1ブレーキ、前記第2ブレーキ又は前記クラッチ、及び他の締結要素の締結・解放制御則を実行して前記指令変速段を達成する変速制御手段と、
を備えた自動変速機の制御装置において、
車速を検出する車速検出手段と、
前記第1入力要素の回転数を前記第2出力要素の回転数で除した実ギヤ比を検出する実ギヤ比検出手段と、
アクセルペダル操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、
検出された車速が所定値以上、前記指令変速段のギヤ比に対して検出された実ギヤ比が小、かつ、検出されたアクセルペダル操作量に対する前記第1入力回転要素の回転数が所定値以下のときは、前記第1遊星歯車列においてインターロックが発生し、前記第2遊星歯車列がニュートラルとなる故障と判定する故障判定手段と、
を設けたことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動変速機の制御装置において、
前記故障判定手段により故障と判定されたときは、前記指令変速段に基づいて前記2つのブレーキのうち、どちらのブレーキが締結故障したかを特定する故障特定手段と、
を設けたことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項1】
動力源からの動力が入力される入力軸と、
前記入力軸と連結された第1入力回転要素と、第1出力回転要素と、第1回転要素と、第2回転要素と、を有する第1遊星歯車列と、
前記第1出力回転要素と連結された第2入力回転要素と、ワンウェイクラッチにより選択的に停止される第3回転要素と、共線図上で前記第2入力回転要素とワンウェイクラッチとの間に配置された第2出力回転要素と、を有する第2遊星歯車列と、
前記第2出力回転要素に連結され、駆動輪側に変速された前記動力を出力する出力軸と、
前記第1回転要素を選択的に停止可能な第1ブレーキと、
正常時には前記第1ブレーキと同時締結せず、前記第2回転要素を選択的に停止可能な第2ブレーキ、又は前記第1遊星歯車列内の2つの回転要素間に設けられたクラッチと、
走行状態に基づいて指令変速段を決定し、前記第1ブレーキ、前記第2ブレーキ又は前記クラッチ、及び他の締結要素の締結・解放制御則を実行して前記指令変速段を達成する変速制御手段と、
を備えた自動変速機の制御装置において、
車速を検出する車速検出手段と、
前記第1遊星歯車列の各回転要素のうち、少なくとも前記第1回転要素以外の回転要素の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記回転数検出手段により検出された回転数に基づいて、前記第1回転要素以外の回転要素の減速度を算出する第1減速度検出手段と、
前記第2出力回転要素の減速度を検出する第2減速度検出手段と、
検出された車速が所定値以上、前記回転数検出手段により検出された回転数が所定値以下、かつ、前記第1減速度検出手段により検出された前記第1回転要素以外の回転要素の減速度が所定値以上であり、前記第2減速度検出手段により検出された前記第2出力回転要素の減速度が所定値未満のときは、前記第1遊星歯車列においてインターロックが発生し、前記第2遊星歯車列がニュートラルとなる故障と判定する故障判定手段と、
を設けたことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項2】
動力源からの動力が入力される入力軸と、
前記入力軸と連結された第1入力回転要素と、第1出力回転要素と、第1回転要素と、第2回転要素と、を有する第1遊星歯車列と、
前記第1出力回転要素と連結された第2入力回転要素と、ワンウェイクラッチにより選択的に停止される第3回転要素と、共線図上で前記第2入力回転要素とワンウェイクラッチとの間に配置された第2出力回転要素と、を有する第2遊星歯車列と、
前記第2出力回転要素に連結され、駆動輪側に変速された前記動力を出力する出力軸と、
前記第1回転要素を選択的に停止可能な第1ブレーキと、
正常時には前記第1ブレーキと同時締結せず、前記第2回転要素を選択的に停止可能な第2ブレーキ、又は前記第1遊星歯車列内の2つの回転要素間に設けられたクラッチと、
走行状態に基づいて指令変速段を決定し、前記第1ブレーキ、前記第2ブレーキ又は前記クラッチ、及び他の締結要素の締結・解放制御則を実行して前記指令変速段を達成する変速制御手段と、
を備えた自動変速機の制御装置において、
車速を検出する車速検出手段と、
前記第1入力要素の回転数を前記第2出力要素の回転数で除した実ギヤ比を検出する実ギヤ比検出手段と、
アクセルペダル操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、
検出された車速が所定値以上、前記指令変速段のギヤ比に対して検出された実ギヤ比が小、かつ、検出されたアクセルペダル操作量に対する前記第1入力回転要素の回転数が所定値以下のときは、前記第1遊星歯車列においてインターロックが発生し、前記第2遊星歯車列がニュートラルとなる故障と判定する故障判定手段と、
を設けたことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動変速機の制御装置において、
前記故障判定手段により故障と判定されたときは、前記指令変速段に基づいて前記2つのブレーキのうち、どちらのブレーキが締結故障したかを特定する故障特定手段と、
を設けたことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−255543(P2007−255543A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79860(P2006−79860)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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