説明

自動機械の制御装置

【課題】稼働率の低下を抑えること。
【解決手段】サーボ制御部17が、サーボモータ21の回転を制御し、異常検出部18が、サーボ制御部17への電源供給遮断状態(すなわち、サーボ制御部17によるサーボモータ21の制御が非制御の状態)において、エンコーダ23によって検出されたサーボモータ21の回転位置(エンコーダ値)を取得するとともに、取得したエンコーダ値に基づいてブレーキ22の異常を検出するように制御装置1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生産現場等では、モータを備えた自動機械が多用されている。かかる自動機械のモータには、非稼動時(非動作時)等においてモータの駆動電源が遮断された場合に、自動機械の部位が重力や外力によって位置ずれを起こすことを防ぐために、たとえば無励磁作動式電磁ブレーキ等のブレーキが設けられる場合がある。
【0003】
なお、無励磁作動式電磁ブレーキは、電源ON時に電磁力によってブレーキ保持が解除され、電源OFF時にはバネ等の機械的作用でブレーキがかかる仕組みを持ったブレーキである。
【0004】
ところが、この種のブレーキは、たとえば経年変化やブレーキパッドの摩耗あるいは油脂(グリース等)の混入等によって保持トルクが低下してスリップを起こす場合がある。かかる場合には、自動機械の部位が位置ずれを起こしてしまうこととなる。
【0005】
このようなスリップの発生は、スリップ量が多い場合や部位移動の速度が速い場合には作業者によって発見され易く、即座に対処されることも多い。しかしながら、スリップ量が少ない場合や部位移動の速度が遅い場合のように作業者の目視による異常発見が困難なケースもある。特に、作業者が不在となる夜間や休暇中の場合、上記のようなブレーキの異常を発見することは困難である。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、自動機械の制御電源を遮断した時のモータ位置を記憶しておき、制御電源投入時のモータ位置と比較して、その差が基準を超えている場合にスリップが発生したと判定する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−39190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術は、駆動電源遮断中における自動機械の部位の位置ずれを電源投入直後に検出して提示するものであり、電源投入後において作業者に対してブレーキ異常復旧を促すことができる。
【0009】
しかし、生産現場等においては、所定の操業開始時刻が到来し電源が投入されたならば、直ちに稼動が開始されることが望まれている。これは、稼動開始の遅れが稼働率低下に繋がるためである。このため、特許文献1に記載の技術には、ブレーキ異常が検出された場合の稼働率低下を抑えるという点で更なる改善の余地がある。
【0010】
開示の技術は、従来の技術を改善するものであり、稼働率の低下を抑えることができる自動機械の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の開示する自動機械の制御装置は、モータ、前記モータへの電源供給遮断時に前記モータの回転を保持するブレーキおよび前記モータの回転位置を検出する位置検出部を備える自動機械を制御する制御装置であって、前記モータの回転を制御するモータ制御部と、前記モータ制御部による制御が非制御の状態において、前記位置検出部によって検出された前記モータの回転位置を取得するとともに、取得した前記回転位置に基づいて前記ブレーキの異常を検出する異常検出処理を行う異常検出部とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本願の開示する自動機械の制御装置の一つの態様によれば、稼働率の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1実施形態に係る自動機械および制御装置の構成例を示す図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る制御装置および自動機械の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、表示器の構成例を示す図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る異常検出部の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、駆動電源の遮断から表示器がオンされるまでのタイミングチャートの一例を示す図である。
【図6】図6は、第1実施形態に係る異常検出部が実行する異常検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、第2実施形態に係る異常検出部の構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、第2実施形態に係る制御装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本願の開示する自動機械の制御装置のいくつかの実施の形態について詳細に説明する。ただし、これらの例示によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る自動機械および制御装置の構成例について図1を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る自動機械および制御装置の構成例を示す図である。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態に係る上位コントローラは、通信ネットワークを介して自動機械2と接続される。通信ネットワークとしては、有線LAN(Local Area Network)や、無線LANといった一般的なネットワークを用いることができる。
【0017】
制御装置1は、自動機械2の駆動制御および異常検出等を行う。また、制御装置1は、自動機械2が備えるサーボモータのブレーキ異常を検出した場合に、かかるブレーキ異常の発生を作業者へ報知するための表示器11を備える。
【0018】
自動機械2は、たとえば各関節軸にサーボモータを備える多軸ロボットであり、制御装置1からの指示に従ってワークWに対して所定の作業を行う。たとえば、自動機械2は、制御装置1からの指示に従って各軸のサーボモータを個別に任意の角度だけ回転させることで、先端に設けられたエンドエフェクタ(ハンドや溶接機器等)を任意の位置へ移動させ、かかるエンドエフェクタを用いて把持や溶接といった作業を行う。
【0019】
各サーボモータには、駆動電源遮断時における自動機械2の部位の位置ずれを防止するためのブレーキが設けられる。かかるブレーキとしては、たとえば、無励磁作動式電磁ブレーキを用いることができる。
【0020】
なお、ここでは、モータを備える自動機械の一例として単腕型の産業用ロボットを用いて説明するが、自動機械2は、これに限定されるものではない。
【0021】
制御装置1には、操作装置3も接続されている。操作装置3は、自動機械2を制御またはモニタするための操作部と表示部とを有し、作業者の操作に応じて自動機械2の電源投入、非常停止、稼動開始・停止といった指令を制御装置1へ送信する。なお、操作装置3は、自動機械2がロボットである場合には、たとえばペンダントに相当する。
【0022】
また、制御装置1には、LAN等の通信ネットワークを介して上位コントローラも接続されており、かかる上位コントローラからの指令に基づいて自動機械2の駆動制御を行うこともできる。制御装置1は、上位コントローラに対して自動機械2の運転状態等を通知することもできる。かかる上位コントローラとしては、たとえばPC(Personal Computer)やPLC(Programmable Logic Controller)等を用いることができる。
【0023】
ここで、当日のワークWに対する作業が終了して電源遮断を行う場合、作業者は、まず、操作装置3の非常停止ボタンを押下するなどして自動機械2の駆動電源を遮断する。かかる操作によって駆動電源が遮断されると、各サーボモータのブレーキが作動し、自動機械2の移動部位が保持されることとなる。
【0024】
つづいて、制御装置1は、操作装置3への操作あるいは上位コントローラからの指示に従って「監視モード」へ移行する。ここで、「監視モード」とは、自動機械2の駆動電源遮断状態における各サーボモータの回転位置を監視し、これにより各サーボモータのブレーキ異常を検出するモードである。なお、監視モード中は、制御装置1の特定の処理部にだけ電源が供給された状態(あるいは低消費電力状態)となるが、かかる点については、後述する。
【0025】
監視モード中において、たとえばブレーキがスリップを起こして自動機械2の部位が所定量以上移動すると、サーボモータの回転位置が変化する。制御装置1は、かかるサーボモータの回転位置の変化に基づいてブレーキの異常を検出する。
【0026】
そして、制御装置1は、ブレーキの異常を検出すると、表示器11を点灯させる。作業者は、かかる表示器11の点灯を確認することで、サーボモータのブレーキに異常が発生したことを認識することができる。
【0027】
このように、第1実施形態に係る制御装置1は、駆動電源が遮断された状態にあっても、自動機械2の部位の移動が発生した時点で表示器11を点灯させることができる。すなわち、作業者に対して自動機械2の稼動前にブレーキ異常を報知することができる。したがって、異常回復の処置を操業開始時刻に先立って促すことができ、稼動開始の遅れを最小限とし、稼働率の低下を抑えることができる。
【0028】
以下では、制御装置1および自動機械2の構成や監視モード中の動作等について具体的に説明する。図2は、第1実施形態に係る制御装置1および自動機械2の構成を示すブロック図である。
【0029】
図2に示すように、制御装置1は、表示器11と、コンバータ12と、アンプ13と、DC(Direct Current)電源14と、継電器15a〜15dと、モーション制御部16と、サーボ制御部17と、異常検出部18とを備える。また、モーション制御部16は、プロセッサ16aを備え、サーボ制御部17は、演算部17aと、インタフェース17bとを備える。また、自動機械2は、サーボモータ21と、ブレーキ22と、エンコーダ23とを備える。
【0030】
なお、図2では、説明をわかり易くする観点から1軸制御の場合の例について示すが、自動機械2が複数軸を有する場合には、サーボモータ21、ブレーキ22、エンコーダ23、アンプ13およびサーボ制御部17が軸数分設けられることとなる。
【0031】
まず、自動機械2の構成について説明する。サーボモータ21は、自動機械2を駆動させるモータであり、各軸に対応して設けられる。かかるサーボモータ21は、制御装置1から供給される駆動電源によって駆動する。
【0032】
ブレーキ22は、サーボモータ21への電源供給遮断時にサーボモータ21の回転を保持するブレーキであり、各サーボモータ21に組み合わされ又は内蔵されている。なお、ここでは、ブレーキ22が、無励磁作動式電磁ブレーキであるものとするが、これに限定されるものではなく、電源供給遮断時にサーボモータ21の回転を保持することができれば、他のタイプのブレーキであってもよい。
【0033】
エンコーダ23は、サーボモータ21の回転位置を検出する位置検出部であり、各サーボモータ21に対応して設けられる。かかるエンコーダ23によって検出されたサーボモータ21の回転位置(エンコーダ値)は、サーボ制御部17および異常検出部18へ出力される。
【0034】
なお、第1実施形態では、エンコーダ23が絶対値エンコーダであるものとするが、これに限ったものではなく、エンコーダ23は、インクリメンタルエンコーダであってもよい。また、エンコーダ23に代えて、レゾルバ等を用いてもよい。
【0035】
つづいて、制御装置1の構成について説明する。表示器11は、たとえば、LED(Light Emitting Diode)等の表示灯を備える表示器であり、モーション制御部16からのセット信号に従って表示灯を点灯させる。かかる表示器11は、キープリレーを用いて構成されるが、かかる点については、後述する。
【0036】
コンバータ12は、AC(Alternating Current)主電源4から供給される交流電力を用いてサーボモータ21の駆動電力を生成する装置である。コンバータ12によって生成された駆動電力は、アンプ13へ入力される。アンプ13は、サーボ制御部17からの指令に従ってPWM制御を行い、サーボモータ21に対して駆動電力を供給する処理部である。
【0037】
DC電源14は、AC主電源4から供給される交流電力から直流電力を生成する。DC電源14によって生成された直流電力は、表示器11、モーション制御部16、サーボ制御部17、異常検出部18および自動機械2のブレーキ22等へ供給される。
【0038】
継電器15aは、DC電源14の電源スイッチであり、DC電源14に対するAC主電源4からの交流電力の供給および遮断を切り替える。なお、継電器15aは、通常業務期間の稼動時においては常時オンされた状態となっており、たとえば稼動が長期的に休止される場合あるいは点検等の保守作業が行われる場合にオフされる。
【0039】
継電器15bは、コンバータ12の電源スイッチであり、コンバータ12に対するAC主電源4からの交流電力の供給および遮断を切り替える。かかる継電器15bは、稼動終了時の駆動電源遮断時にオフされることとなる。
【0040】
継電器15cは、ブレーキ22の電源スイッチであり、ブレーキ22に対するDC電源14からの直流電力の供給および遮断を切り替える。かかる継電器15cは、継電器15bと同様、稼動終了時の駆動電源遮断時にオフされることとなる。
【0041】
なお、ブレーキ22は、継電器15cがオフされることによって、すなわち、ブレーキ22への電源供給が遮断されることによって作動してサーボモータ21の回転を保持することとなる。
【0042】
継電器15dは、サーボ制御部17等の電源スイッチであり、サーボ制御部17等に対するDC電源14からの直流電力の供給および遮断を切り替える。
【0043】
なお、継電器15dは、稼動終了時の駆動電源遮断後において監視モードへ移行する場合にオフされることとなる。したがって、監視モード中においては、モーション制御部16や異常検出部18といった一部の処理部にのみ電源が供給された状態となる。
【0044】
モーション制御部16は、操作装置3あるいは上位コントローラからの指令に基づいてサーボモータ21の制御に必要な指令データを生成してサーボ制御部17へ出力する処理部である。なお、かかる指令データは、プロセッサ16aを用いて生成される。
【0045】
また、モーション制御部16のプロセッサ16aは、操作装置3あるいは上位コントローラから監視モードへの移行指令を受け取った場合に異常検出部18の異常検出処理を開始させる処理を行ったり、異常検出部18によってブレーキ22の異常が検出された場合に表示器11を点灯させる処理を行ったりする。かかるモーション制御部16は、「異常対応処理部」の一例である。
【0046】
サーボ制御部17は、演算部17aが、モーション制御部16から受け取った指令データと、インタフェース17b経由でエンコーダ23から取得したエンコーダ値(サーボモータ21の回転位置フィードバックデータ)とに基づいてサーボモータ21の制御に必要な演算処理を行い、PWM信号を生成する。生成されたPWM信号は、アンプ13へ出力される。なお、アンプ13では、かかるPWM信号に従ってPWM制御が行われることとなる。かかるサーボ制御部17は、「モータ制御部」の一例である。
【0047】
異常検出部18は、監視モード中において、エンコーダ23から取得したエンコーダ値に基づいてブレーキ22の異常を検出する処理部である。かかる異常検出部18の具体的な構成については、図4を用いて後述する。
【0048】
ここで、制御装置1が実行する各種動作について図2を用いて説明する。
(稼動開始時における電源投入時の動作)
継電器15aがオンされると、AC主電源4からの交流電力がDC電源14へ供給され、各回路の初期化が行われる。つづいて、モーション制御部16は、図示しない制御信号に従って継電器15dをオンする。これにより、DC電源14からの直流電力がサーボ制御部17等へ供給される。サーボ制御部17は、DC電源14から直流電力が供給されると初期化を行い、その後、通常稼動の準備を行う。
【0049】
なお、この段階において、継電器15bおよび継電器15cは、オフされた状態となっている。
【0050】
(通常稼動時の動作)
つづいて、制御装置1は、操作装置3あるいは上位コントローラから「運転準備指令」を受けると、継電器15bをオンして、AC主電源4からの交流電力をコンバータ12へ供給させる。これにより、サーボモータ21へ電力が供給され、トルクが発生することとなる。
【0051】
また、制御装置1は、継電器15cをオンする。これにより、DC電源14からの直流電力がブレーキ22へ供給されるため、ブレーキ22によってサーボモータ21の回転が保持された状態が解除される。そして、制御装置1は、操作装置3あるいは上位コントローラから「運転指令」を受けると、自動機械2の動作を開始させる。
【0052】
(稼動終了時における駆動電源遮断時の動作)
つづいて、制御装置1は、操作装置3あるいは上位コントローラから「駆動電源遮断指令」または「非常停止指令」を受けると、継電器15cをオフしてブレーキ22への電力供給を遮断する。これにより、ブレーキ22がサーボモータ21の回転を規制して位置を保持した状態となる。また、制御装置1は、継電器15bをオフしてコンバータ12への電力供給を遮断する。
【0053】
(監視モード中の動作)
つづいて、制御装置1は、操作装置3あるいは上位コントローラから「監視モード移行指令」を受けると、継電器15dをオフする。これにより、サーボ制御部17等への電力供給が遮断された状態(言い換えれば、サーボ制御部17によるサーボモータ21の制御が非制御の状態)となる。
【0054】
このように、監視モードは、モーション制御部16および異常検出部18を含む一部の処理部にのみ電力が供給された低消費電力状態で実行される。したがって、たとえば稼動終了時から次の稼動開始時まで監視モードを継続させたとしても、消費電力を抑えることができる。
【0055】
また、モーション制御部16のプロセッサ16aは、監視モードへ移行すると、異常検出部18に対して監視移行信号を出力した後、自らを通常稼動状態からスリープモードへ移行する。ここで、スリープモードとは、通常稼動状態よりも少ない消費電力で稼動するモードである。
【0056】
異常検出部18は、モーション制御部16のプロセッサ16aから監視移行信号を受けると、エンコーダ23からのエンコーダ値に基づいてブレーキ22の異常を検出する異常検出処理を開始する。なお、異常検出処理の詳細については、異常検出部18の具体的な構成と併せて図4を用いて説明する。
【0057】
異常検出部18は、ブレーキ22の異常を検出すると、プロセッサ16aに対して割り込み信号を出力する。そして、プロセッサ16aは、異常検出部18から割り込み信号を受けると、スリープモードから通常稼動状態へ復帰したうえで、異常対応処理を実行する。
【0058】
具体的には、プロセッサ16aは、異常が発生した軸(サーボモータ21)に関する情報である異常状態情報を異常検出部18から取得し、図示しない不揮発性メモリに記憶する。また、プロセッサ16aは、表示器11に対してセット信号を出力することで、表示器11を点灯させる。
【0059】
これにより、作業者は、かかる表示器11の点灯を確認することで、ブレーキ22に異常が発生したことを認識することができる。
【0060】
なお、作業者は、表示器11の点灯を確認すると、制御装置1を通常稼動状態(たとえば「運転準備指令」を受ける前の状態)へ復帰させたうえで、操作装置3等を操作して異常状態情報を図示しない表示部へ表示させる。このように、異常状態情報を所定の記憶部へ記憶しておき、異常検出部18およびモーション制御部16を含む全ての処理部に対して電源が供給された後に、記憶部へ記憶された異常状態情報を所定の表示部へ表示させる。このようにすれば、ブレーキ異常が検出された時点で異常状態情報を表示させる場合と比較して表示部の消費電力を抑えることができる。
【0061】
プロセッサ16aは、異常対応処理を終えると、通常稼動状態から再度スリープモードへ移行する。
【0062】
このように、異常検出部18からの割り込み信号を受けるまでの間、プロセッサ16aをスリープモードにしておくこととしたため、監視モード中のプロセッサ16aの消費電力を抑えることができる。また、異常対応処理の実行後にプロセッサ16aを再度スリープモードへ移行させることとしたため、監視モード中のプロセッサ16aの消費電力をより確実に抑えることができる。また、異常対応処理の実行後にプロセッサ16aを再度スリープモードへ移行させることで、他のブレーキ22について監視を継続させることができるため、複数のブレーキ異常が異なるタイミングで発生した場合であっても、これら複数のブレーキ異常を確実に検出することができる。
【0063】
ここで、表示器11の構成について図3を用いて説明する。図3は、表示器11の構成例を示す図である。図3に示すように、表示器11は、たとえばキープリレーを用いて構成することができる。具体的には、表示器11は、キープリレー11aと、表示灯11bとを備える。
【0064】
プロセッサ16aからセット信号が出力されると、キープリレー11aがオンされて表示灯11bが点灯する。キープリレー11aは、プロセッサ16aからリセット信号が出力されるまでオン状態を維持するため、プロセッサ16aが再度スリープモードへ移行してセット信号が出力されなくなったとしても、表示灯11bは点灯したままとなる。
【0065】
(監視モードからの復帰時の動作)
つづいて、制御装置1は、操作装置3あるいは上位コントローラから「監視モード復帰指令」を受けると、プロセッサ16aに対して割り込み信号が入力され、プロセッサ16aが通常稼動状態へ復帰する。
【0066】
通常稼動状態へ復帰したプロセッサ16aは、監視解除信号を異常検出部18に対して出力し、異常検出部18の動作を停止させる。また、プロセッサ16aは、継電器15dをオンし、DC電源14からの直流電力をサーボ制御部17等に供給させる。サーボ制御部17等は、初期化後、通常稼動の準備を行う。
【0067】
その後、制御装置1は、操作装置3あるいは上位コントローラからの「運転準備指令」に従って継電器15bおよび継電器15cをオンするとともに、「運転指令」に従って自動機械2の動作を開始させることとなる。
【0068】
次に、異常検出部18の構成について図4を用いて説明する。図4は、第1実施形態に係る異常検出部18の構成を示すブロック図である。
【0069】
図4に示すように、異常検出部18は、ラッチ回路181と、タイマ182と、監視回路183と、OR回路184とを備える。また、監視回路183は、インタフェース183aと、第1レジスタ183bと、第2レジスタ183cと、第3レジスタ183dと、偏差回路183eと、比較器183fとを備える。
【0070】
なお、図4では、説明をわかり易くする観点から、異常検出部18が1つの監視回路183を備える場合の例について示すが、自動機械2が複数軸を有する場合には、監視回路183が軸数分設けられることとなる。各監視回路183からの出力は、OR回路184へ入力される。
【0071】
ラッチ回路181は、プロセッサ16aから入力された監視移行信号を保持し、タイマ182および監視回路183へ出力する回路である。タイマ182は、エンコーダ値の取り込み周期を決定するためのタイマであり、一定時間ごとにインタフェース183aに対して信号を出力する。
【0072】
監視回路183は、異常検知処理を実行する回路である。インタフェース183aは、たとえばサーボ制御部17のインタフェース17bと同様のインタフェースである。かかるインタフェース183aは、タイマ182から信号が入力された場合に(すなわち、一定時間ごとに)、エンコーダ23から入力されたエンコーダ値を第1レジスタ183bおよび第2レジスタ183cへ出力する。
【0073】
なお、エンコーダ値の取り込み周期は、消費電力の低減を考慮して、サーボ制御部17におけるエンコーダ値の取り込み周期よりも長く設定してもよい。たとえば、インタフェース183aによるエンコーダ値の取り込み周期は、1分周期としてもよい。かかる場合、タイマ182は、1分ごとにインタフェース183aに対して信号を出力することとなる。
【0074】
第1レジスタ183bは、監視モード開始時におけるエンコーダ値を基準エンコーダ値として保持する記憶装置である。具体的には、第1レジスタ183bは、監視移行信号が入力された場合に、ラッチ回路181から出力する信号の立ち上がり(L→H)でインタフェース183aから入力されているエンコーダ値を保持する。また、第1レジスタ183bは、保持した基準エンコーダ値を偏差回路183eへ出力する。
【0075】
第2レジスタ183cは、インタフェース183aから一定周期で出力されるエンコーダ値を順次保持する記憶装置である。すなわち、第2レジスタ183cは、インタフェース183aから出力されるエンコーダ値を保持するとともに、あらたなエンコーダ値が出力された場合には、現在保持しているエンコーダ値をあらたなエンコーダ値へ更新する。
【0076】
第3レジスタ183dは、所定の閾値を保持する記憶装置である。かかる閾値は、モーション制御部16のプロセッサ16aによってあらかじめ設定される値である。
【0077】
偏差回路183eは、第1レジスタ183bから入力される基準エンコーダ値と第2レジスタ183cから入力されるエンコーダ値との差の絶対値を演算する回路である。かかる偏差回路183eの演算結果は、比較器183fへ出力される。
【0078】
比較器183fは、偏差回路183eから入力される演算結果と第3レジスタ183dから入力される閾値とを比較し、演算結果が閾値を超えた場合に、割り込み信号をOR回路184へ出力する。
【0079】
OR回路184は、いずれかの監視回路183から割り込み信号が入力された場合に、モーション制御部16に対して割り込み信号を出力する。
【0080】
ここで、異常検出部18の動作について説明する。異常検出部18は、モーション制御部16のプロセッサ16aから監視移行信号が入力されると、異常検出処理を開始する。
【0081】
異常検出処理を開始すると、異常検出部18は、第1レジスタ183bに基準エンコーダ値を格納する。また、異常検出部18は、一定周期(たとえば、1分周期)で取得したエンコーダ値を第2レジスタ183cに順次格納する。
【0082】
つづいて、異常検出部18では、偏差回路183eが、第1レジスタ183bの基準エンコーダ値と第2レジスタ183cのエンコーダ値との差の絶対値を演算し、比較器183fが、かかる演算結果と第3レジスタ183dの閾値とを比較する。
【0083】
ここで、たとえば自動機械2の部位が重力や外力による位置ずれを起こした場合、サーボモータ21の回転位置が変化するため、偏差回路183eの演算結果が閾値を超えることとなる。かかる場合、異常検出部18は、ブレーキ22に異常が発生したと判定し、比較器183fからOR回路184経由で割り込み信号をモーション制御部16へ出力する。
【0084】
また、異常検出部18は、プロセッサ16aから監視解除信号が入力された場合には、異常検出処理を停止する。
【0085】
次に、駆動電源の遮断から表示器11がオンされるまでの各処理部の動作タイミングについて図5を用いて説明する。図5は、駆動電源の遮断から表示器11がオンされるまでのタイミングチャートの一例を示す図である。
【0086】
図5に示すように、制御装置1は、操作装置3あるいは上位コントローラから駆動電源遮断指令または非常停止指令を受けると、継電器15cをオフしてブレーキ22への電力供給を遮断する(図5の(1)参照)。これにより、ブレーキ22がサーボモータ21の回転を保持した状態となる。また、制御装置1は、継電器15bをオフしてコンバータ12への電力供給を遮断する(図5の(2)参照)。
【0087】
つづいて、制御装置1は、操作装置3あるいは上位コントローラから監視モード移行指令を受けると、継電器15dをオフする(図5の(3)参照)。これにより、サーボ制御部17等への電力供給が遮断された状態となる。このように、監視モードは、サーボ制御部17等の不要な処理部への電源供給が遮断された状態で実行される。
【0088】
つづいて、モーション制御部16のプロセッサ16aは、異常検出部18に対して監視移行信号を出力する(図5の(4)参照)。異常検出部18では、かかる監視移行信号が入力されると、ラッチ回路181が、ラッチ回路出力(H)を出力し続ける(図5の(5)参照)。これにより、異常検出部18では、異常検出処理が開始される。
【0089】
また、プロセッサ16aは、異常検出部18に対して監視移行信号を出力すると、自らを通常稼動状態からスリープモードへ移行する(図5の(6)参照)。これにより、監視モード中のプロセッサ16aの消費電力を抑えることができる。
【0090】
ここで、異常検出部18によってブレーキ22の異常が検出されたとする。かかる場合、異常検出部18は、プロセッサ16aに対して割り込み信号を出力する(図5の(7)参照)。そして、プロセッサ16aは、割り込み信号を受信すると、スリープモードから通常稼動状態へ復帰する(図5の(8)参照)。
【0091】
また、プロセッサ16aは、監視解除信号を異常検出部18へ出力する(図5の(9)参照)。これにより、ラッチ回路181は、ラッチ回路出力(H)に代えてラッチ回路出力(L)を出力するようになる(図5の(10)参照)。
【0092】
通常稼動状態へ復帰したプロセッサ16aは、表示器11に対してセット信号を出力し、表示器11を点灯させる(図5の(11)参照)。なお、プロセッサ16aは、異常が発生した軸(サーボモータ21)に関する情報である異常状態情報を異常検出部18から取得し、図示しない不揮発性メモリに記憶する処理も併せて行う。
【0093】
プロセッサ16aは、異常対応処理を終えると、異常検出部18に対して監視移行信号を再度出力する(図5の(12)参照)。これにより、ラッチ回路181は、ラッチ回路出力(L)に代えてラッチ回路出力(H)を出力するようになる(図5の(13)参照)。そして、プロセッサ16aは、通常稼動状態から再度スリープモードへ移行する(図5の(14)参照)。
【0094】
なお、ここでは、タイマ182によって既定されるエンコーダ値の取り込み周期が一定であるものとするが、これに限ったものではない。たとえば、偏差回路183eの演算結果に応じてエンコーダ値の取り込み周期を変更してもよい。
【0095】
また、第3レジスタ183dに保持された所定の閾値をエンコーダ値の取り込み周期(すなわち、タイマ182の設定値)に応じて変更してもよい。具体的には、エンコーダ値の取り込み周期が短くなるほど閾値の値を小さくする。このようにすれば、ブレーキ22の異常が検出される可能性が高くなるほど閾値が小さくなるため、ブレーキ22の異常をさらに早く検出することができる。
【0096】
次に、第1実施形態に係る異常検出部18の具体的動作について図6を用いて説明する。図6は、第1実施形態に係る異常検出部18が実行する異常検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0097】
図6に示すように、異常検出部18は、プロセッサ16aから監視移行信号を受信したか否かを判定し(ステップS101)、監視移行信号を受信したと判定した場合には(ステップS101,Yes)、処理をステップS102へ移行する。なお、異常検出部18は、監視移行信号を受信していない場合には(ステップS101,No)、ステップS101の判定処理を繰り返す。
【0098】
つづいて、異常検出部18は、エンコーダ値を第1レジスタ183bへ格納するとともに(ステップS102)、第2レジスタ183cへ格納する(ステップS103)。なお、第1レジスタ183bへ格納されたエンコーダ値が基準エンコーダ値となる。
【0099】
つづいて、異常検出部18は、第1レジスタ183bへ格納された基準エンコーダ値(A)と第2レジスタ183cへ格納されたエンコーダ値(B)との差の絶対値が閾値を超えたか否かを判定し(ステップS104)、閾値を超えた場合には(ステップS104,Yes)、プロセッサ16aに対して割り込み信号を出力する(ステップS105)。また、異常検出部18は、ステップS105の処理を終えると、処理をステップS103へ移行する。
【0100】
一方、第1レジスタ183bへ格納された基準エンコーダ値(A)と第2レジスタ183cへ格納されたエンコーダ値(B)との差の絶対値が閾値を超えていない場合(ステップS104,No)、異常検出部18は、プロセッサ16aから監視解除信号を受信したか否かを判定する(ステップS106)。
【0101】
かかる処理において監視解除信号を受信していない場合には(ステップS106,No)、異常検出部18は、処理をステップS103へ移行する。そして、監視解除信号を受信したと判定した場合には(ステップS106,Yes)、異常検出部18は、異常検出処理を終了する。
【0102】
上述してきたように第1実施形態では、異常検出部18が、サーボ制御部17への電源供給遮断状態(すなわち、サーボ制御部17によるサーボモータ21の制御が非制御の状態)において、エンコーダ23によって検出されたサーボモータ21の回転位置(エンコーダ値)を取得するとともに、取得したエンコーダ値に基づいてブレーキ22の異常を検出することとした。
【0103】
これにより、自動機械2の稼動終了の状態から次の稼動開始時までの間に発生したブレーキ22の異常を稼動開始前に検出することができる。したがって、作業者は、ブレーキ22の異常回復の処置を操業開始時刻に先立って行うことができるため、稼動開始の遅れを最小限とし、稼働率の低下を抑えることができる。
【0104】
また、第1実施形態では、監視モードを、異常検出部18およびプロセッサ16aを含む一部の処理部に電源が供給された低消費電力状態で実行することとしたため、監視モード中の消費電力を抑えることができる。
【0105】
[第2実施形態]
ところで、異常検出部の構成は、図4に示した構成に限ったものではない。そこで、第2実施形態では、異常検出部の他の構成について説明する。図7は、第2実施形態に係る異常検出部の構成を示すブロック図である。なお、以下では、自動機械2が7軸ロボットであるものとする。
【0106】
図7に示すように、第2実施形態に係る異常検出部18’は、セレクタ185と、インタフェース186と、プロセッサ187とを備える。
【0107】
セレクタ185は、各サーボモータ21に対応して設けられたエンコーダ23からそれぞれ出力される複数のエンコーダ値のうち1つを選択してインタフェース186へ出力する。エンコーダ値の選択は、プロセッサ187からのセレクト信号に従って行われる。
【0108】
たとえば、第1軸から第7軸にそれぞれ対応するエンコーダ値a〜gがセレクタ185へ入力される場合、セレクタ185は、プロセッサ187からのセレクト信号に従ってエンコーダ値a〜gを選択してインタフェース186へ出力する。
【0109】
インタフェース186は、第1実施形態に係る異常検出部18が備えるインタフェース183aと同様のインタフェースであり、セレクタ185から入力されたエンコーダ値をプロセッサ187へ出力する。
【0110】
プロセッサ187は、第1実施形態に係る異常検出部18と同様の処理を行う処理装置であり、セレクタ185から出力されたエンコーダ値に基づいて異常検出処理を実行する。
【0111】
プロセッサ187は、第1実施形態に係る異常検出部18の第1レジスタ183b、第2レジスタ183cおよび第3レジスタ183dによってそれぞれ保持されるデータと同様のデータを軸数分(たとえば7軸分)RAM(Random Access Memory)等の記憶部に格納する。なお、ここでは、プロセッサ187は、たとえばRAMやROM(Read Only Memory)等を内蔵した汎用CPU(Central Processing Unit)であるものとするが、これに限ったものではなく、RAMやROMを内蔵しないCPUを用いてもよい。
【0112】
また、プロセッサ187は、セレクタ185に対してセレクト信号を出力することで、セレクタ185からプロセッサ187へ入力されるエンコーダ値の切り替えを行う。そして、プロセッサ187は、セレクト信号によってエンコーダ値の切り替えを行うごとに、第1実施形態に係る異常検出部18と同様の異常検出処理を実行する。
【0113】
このように構成すれば、サーボモータ21の数にかかわらずインタフェース186の数は1つだけでよくなるため、異常検出部の回路の複雑化を防ぐことができる。また、部品点数が少なくなるため、部品実装面積の増大を防ぎ、並びに故障率およびコストを低減することができる。
【0114】
次に、第2実施形態に係る異常検出部18’の具体的動作について図8を用いて説明する。図8は、第2実施形態に係る異常検出部18’が実行する異常検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0115】
図8に示すように、異常検出部18’は、プロセッサ187から監視移行信号を受信したか否かを判定し(ステップS201)、監視移行信号を受信したと判定した場合には(ステップS201,Yes)、処理をステップS202へ移行する。なお、異常検出部18’は、監視移行信号を受信していない場合には(ステップS201,No)、ステップS201の判定処理を繰り返す。
【0116】
つづいて、異常検出部18’は、セレクタ信号を出力することによって各軸に対応するエンコーダ値a〜gを順次取得し、各軸に対応する基準エンコーダ値(A)としてプロセッサ187のRAMに格納する(ステップS202)。
【0117】
また、異常検出部18’は、セレクタ信号によって選択された1つの軸について、エンコーダ値を取得してプロセッサ187のRAMへ格納し(ステップS203)、ステップS202においてRAMへ格納した基準エンコーダ値(A)との差の絶対値が閾値を超えたか否かを判定する(ステップS204)。
【0118】
そして、かかる絶対値が閾値を超えたと判定した場合には(ステップS204,Yes)、モーション制御部16のプロセッサ16aに対して割り込み信号を出力する(ステップS205)。なお、異常検出部18’は、ブレーキ22の異常を検出した場合には、異常が検出された軸を示す軸番号をプロセッサ187のRAMに格納する。これにより、モーション制御部16のプロセッサ16aは、どの軸で異常が発生したかを取得することができる。
【0119】
ステップS205の処理を終えたとき、あるいは、ステップS202においてRAMへ格納した基準エンコーダ値とステップS203においてRAMへ格納したエンコーダ値との差の絶対値が閾値を超えていない場合(ステップS204,No)、異常検出部18’は、セレクタ信号を出力してステップS203〜S205の処理を軸数分繰り返す。
【0120】
つづいて、異常検出部18’は、プロセッサ187から監視解除信号を受信したか否かを判定し(ステップS206)、監視解除信号を受信していない場合には(ステップS206,No)、処理をステップS203へ移行する。そして、監視解除信号を受信したと判定した場合には(ステップS206,Yes)、異常検出部18’は、異常検出処理を終了する。
【0121】
なお、上述してきた各実施形態では、モーション制御部16のプロセッサ16aが、表示器11を点灯させる処理を異常対応処理として実行する場合の例について説明したが、プロセッサ16aが実行する異常対応処理は、これに限ったものではない。
【0122】
たとえば、上述してきた各実施形態では、サーボモータ21がブレーキ22を備える場合の例について説明したが、これに限ったものではなく、ブレーキを備えないタイプのサーボモータを用いてもよい。かかる場合には、ブレーキ22と同様の無励磁作動式電磁ブレーキをサーボモータ21と別体で設ければよい。
【0123】
また、プロセッサ16aは、所定のスピーカから警報音を出力する処理を異常対応処理として実行してもよい。また、プロセッサ16aは、上位コントローラ経由で作業者が所持する携帯端末装置等に対してブレーキ異常を通知する処理を異常対応処理として実行してもよい。このように、作業者が所持する携帯端末等に対してブレーキ異常を通知することで、作業者に対してブレーキ異常をより迅速に報知することができる。
【0124】
また、プロセッサ16aは、異常検出のパターンに応じて異常対応処理の内容を異ならせることとしてもよい。たとえば、プロセッサ16aは、ブレーキ異常の検出回数に応じて異常対応処理を異ならせてもよい。すなわち、プロセッサ16aは、たとえばブレーキ異常が1回検出された場合に表示器11を点灯させ、2回検出された場合に所定のスピーカから警報音を出力し、3回検出された場合には上位コントローラ経由で作業者が所持する携帯端末装置等に対してブレーキ異常を通知するようにしてもよい。
【0125】
さらに、プロセッサ16aは、異常検出のパターンからブレーキ異常の種別を推定し、推定されたブレーキ異常の回復に要する時間に応じて異常対応処理の内容を異ならせてもよい。たとえば、検出されたブレーキ異常が、異常回復に多くの時間を要するものであれば、上位コントローラ経由で作業者が所持する携帯端末装置等に対してブレーキ異常を通知するなどして、作業者に対してブレーキ異常をいち早く報知することとしてもよい。これにより、稼動開始の遅れをより確実に抑えることができる。
【0126】
また、推定したブレーキ異常の回復に要する時間に応じてブレーキ異常の報知タイミングを決定してもよい。たとえば、推定したブレーキ異常の回復に要する時間がt時間である場合には、操業開始時刻としてあらかじめ設定された時刻から逆算してαt時間(αは所定の乗数)前にブレーキ異常の報知を行ってもよい。
【0127】
なお、異常検出のパターンとは、たとえば、異常検出の回数やサーボモータ21の回転位置のずれ量あるいはこれらの組合せである。サーボモータ21の回転位置のずれ量は、たとえば異常検出部18の偏差回路183eから取得することができる。また、プロセッサ16aは、異常検出のパターンと異常対応処理の内容とを対応付けた情報(たとえばテーブル)をROM等にあらかじめ記憶しておき、かかる情報を用いて異常検出のパターンに対応する異常対応処理の内容を選択して実行すればよい。
【0128】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施の形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0129】
W ワーク
1 制御装置
11 表示器
11a キープリレー
11b 表示灯
12 コンバータ
13 アンプ
14 DC電源
15a〜15d 継電器
16 モーション制御部
16a プロセッサ
17 サーボ制御部
17a 演算部
17b インタフェース
18 異常検出部
181 ラッチ回路
182 タイマ
183 監視回路
183a インタフェース
183b 第1レジスタ
183c 第2レジスタ
183d 第3レジスタ
183e 偏差回路
183f 比較器
184 OR回路
18’ 異常検出部
185 セレクタ
186 インタフェース
187 プロセッサ
2 自動機械
21 サーボモータ
22 ブレーキ
23 エンコーダ
3 操作装置
4 AC主電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ、前記モータへの電源供給遮断時に前記モータの回転を保持するブレーキおよび前記モータの回転位置を検出する位置検出部を備える自動機械を制御する制御装置であって、
前記モータの回転を制御するモータ制御部と、
前記モータ制御部による制御が非制御の状態において、前記位置検出部によって検出された前記モータの回転位置を取得するとともに、取得した前記回転位置に基づいて前記ブレーキの異常を検出する異常検出処理を行う異常検出部と
を備えることを特徴とする自動機械の制御装置。
【請求項2】
前記異常検出処理は、
前記異常検出部を含む一部の処理部に対して電源が供給された低消費電力状態で実行されることを特徴とする請求項1に記載の自動機械の制御装置。
【請求項3】
前記異常検出部によって前記ブレーキの異常が検出された場合に、所定の異常対応処理を実行する異常対応処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の自動機械の制御装置。
【請求項4】
前記異常対応処理部は、
通常状態よりも消費電力の少ないスリープモードへ移行し、前記異常検出部が前記ブレーキの異常を検出した場合に、前記スリープモードから復帰したうえで前記異常対応処理を実行することを特徴とする請求項3に記載の自動機械の制御装置。
【請求項5】
前記異常対応処理部は、
前記異常対応処理を実行した後、再度前記スリープモードへ移行することを特徴とする請求項4に記載の自動機械の制御装置。
【請求項6】
前記異常対応処理部は、
前記ブレーキの異常が検出されたモータに関する情報を所定の記憶部へ記憶する処理を前記異常対応処理として実行し、前記異常検出部および前記異常対応処理部を含む一部の処理部に対して電源が供給された低消費電力状態から当該低消費電力状態よりも多くの処理部に対して電源が供給された状態となった後に、前記記憶部へ記憶された前記モータに関する情報を所定の表示部へ表示させることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一つに記載の自動機械の制御装置。
【請求項7】
前記異常対応処理部は、
所定の表示灯を点灯させる処理を前記異常対応処理として実行することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一つに記載の自動機械の制御装置。
【請求項8】
前記異常検出部は、
前記モータの電源が遮断された時点における前記モータの回転位置を保持する第1レジスタと、
前記モータの電源が遮断された後、周期的に取得される前記モータの回転位置を順次保持する第2レジスタと、
所定の閾値を保持する第3レジスタと、
前記第1レジスタによって保持された前記モータの回転位置と前記第2レジスタによって保持された前記モータの回転位置との差を出力する偏差回路と、
前記偏差回路からの出力と前記第3レジスタによって保持された前記所定の閾値とを比較し、前記偏差回路からの出力が前記所定の閾値を超えた場合に、前記ブレーキの異常を示す異常発生信号を出力する比較器と
を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の自動機械の制御装置。
【請求項9】
前記異常検出部は、
複数系統から入力される前記モータの回転位置のうち1つを選択して出力するセレクタと、
前記セレクタから出力された前記モータの回転位置に基づいて前記異常検出処理を実行するプロセッサと
を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の自動機械の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−213844(P2012−213844A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82001(P2011−82001)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】