説明

自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法

【課題】自動調芯嵌合クラッチにおける軸ズレ量の検知を簡単な構成で、運転中に正確に行うことができる、自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法を提供することが課題である。
【解決手段】自動調芯嵌合クラッチを介し、第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸とを結合させて被駆動体に駆動力を伝達するようにした駆動力伝達機構において、第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸のそれぞれにおける軸位置変動量を非接触センサで計測し、自動調芯嵌合クラッチによる前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸の結合時におけるそれぞれの回転軸の軸位置変動量測定結果により、前記第1の駆動源の回転軸に対する第2の駆動源の回転軸の相対的軸ズレ量を検知するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法に係り、特に、例えばSSSクラッチ(Synchro Self Shifting)と呼ばれるヘリカルスプライン嵌合構造を有した自動調芯嵌合クラッチを介し、第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸とを結合させ、被駆動体に駆動力を伝達するようにした駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高効率でNOxなどの有害物質の排出量を減少させ、且つ、一日の消費電力量の変化に柔軟に対応させるため、例えば本願出願人の出願になる特許文献1に紹介されているように、発電機にガスタービンと蒸気タービンとを必要に応じて接続、切断できるよう、この特許文献1や非特許文献1に一例の構造と動作が紹介されている、SSS(Synchro Self Shifting)クラッチと呼ばれるヘリカルスプライン嵌合構造を用いた自動調芯嵌合クラッチ(以下SSSクラッチと略称する)を介し、一本の軸で直結した一軸コンバインドプラントが用いられるようになっている。
【0003】
このような一軸コンバインドプラントでは、例えば起動時に、蒸気タービンはガスタービンが動くことによって生成される蒸気によって駆動されるため、先に蒸気タービンを休ませたままガスタービンを動かし、蒸気が生成されたら蒸気タービンを動かして、定格回転数に達した時点で前記したSSSクラッチにより駆動軸を結合するようにしたり、夜間、電力需要が小さくなるときは蒸気タービンを停止させ、日中の電力需要が大きくなったときに稼動させてSSSクラッチで発電機に接続する、というようなことができる。
【0004】
しかしながら、このような構成の一軸コンバインドプラントにおいては、経年変化や地震などによりプラントを設置した地盤に変動が生じ、ガスタービン側の軸の中心と蒸気タービン側の軸の中心との間にズレが生じる場合がある。また、前記したように起動時には先にガスタービンを起動させ、その後に蒸気タービンを起動させるが、ガスタービンが長時間定格回転数で回転することで、SSSクラッチのガスタービン側の軸受支持台が高温の軸受排油温度によって伸び、それに対してSSSクラッチの蒸気タービン側の軸受支持台は蒸気タービンの状態に応じて伸び率が異なるため、ガスタービン側の軸の中心と蒸気タービン側の軸の中心との間にズレが生じる。また、ガスタービン側の軸と蒸気タービン側の軸の浮き上がり量の差や傾きの差なども発生する。
【0005】
こういったことにより、発電機とガスタービン及び蒸気タービンとをSSSクラッチを嵌合して結合させるとき、ガスタービン側の軸の中心と蒸気タービン側の軸の中心との間のズレ量が所定の規定値よりも大きな値となると、ガスタービン及び発電機と蒸気タービンとが共に定格回転数付近で回転した状態でSSSクラッチが嵌合されるため、クラッチに過大な応力がかかり、結果的にクラッチを破損する恐れがある。
【0006】
そこで定期的な軸ズレ量の測定が必要になるが、運転期間中の軸ズレ量の把握は困難であり、運転を休止しして該当部周辺を分解し、例えば発電機のロータを手回しさせてダイヤルゲージ等を用い、軸ズレ量の計測作業を実施することが必要であった。しかしながらこのような計測作業は該当部周辺の分解と軸ズレ量の計測作業に時間がかかり、それだけコストを必要とする。
【0007】
そのため本願出願人は、例えば特許文献2において、SSSクラッチ両側の駆動軸軸受けを支持する軸受け支持台の温度による伸び量を求めるための温度センサ、軸の上側定点と下側定点のギャップを測定して軸の傾きを算出するギャップ計測センサ、軸受けの周方向の複数点に設けられて軸心のズレ量を求めるギャップ計測センサ、などを設置し、SSSクラッチが結合するときの軸ズレ量を運転中に推測するようにした、軸ズレ測定装置及び軸ズレ測定方法及びこの軸ズレ測定装置を使用した一軸コンバインドプラント及びこの一軸コンバインドプラントの起動方法を提案した。
【0008】
【特許文献1】特開2003−013709号公報
【特許文献2】特開2005−106738号公報
【非特許文献1】http://www.mod.go.jp/msdf/educ/2mss/html_gas/reference/163_1kyu04_s1.htm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献1に示された一軸コンバインドプラントは、SSSクラッチが正常に嵌合したかどうかを検出するためのもので軸ズレの検出については言及が無く、また特許文献2に示された軸ズレ測定方法は、それぞれ複数の温度センサやギャップ計測センサが必要で費用がかかると共に、これらのセンサの測定結果に基づいてズレ量を演算により求める間接計測であり、データの換算によって演算誤差が生じることがある。
【0010】
そのため本発明においては、自動調芯嵌合クラッチにおける軸ズレ量の検知を簡単な構成で、運転中に直接、正確に行うことができる、自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明になる自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法は、
自動調芯嵌合クラッチを介し、第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸とを結合させて被駆動体に駆動力を伝達するようにした駆動力伝達機構における、前記第1の駆動源の回転軸に対する第2の駆動源の回転軸の軸ズレ量検知方法であって、
前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸の軸位置変動量を、それぞれの回転軸に相対して設けた非接触センサで計測し、前記自動調芯嵌合クラッチによる前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸の結合時におけるそれぞれの回転軸の軸位置変動量測定結果により、前記第1の駆動源の回転軸に対する第2の駆動源の回転軸の相対的軸ズレ量を検知することを特徴とする。
【0012】
このように第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸のそれぞれに非接触センサを設け、自動調芯嵌合クラッチの嵌合時の、両非接触センサの軸位置変動量測定結果で第1の駆動源の回転軸に対する第2の駆動源の回転軸の相対的軸ズレ量を検知することで、自動調芯嵌合クラッチは、第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸に多少の軸ズレがあっても両者を嵌合させることで両軸芯を略一致させるから、嵌合時の第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸の移動量を見れば軸ズレ量を正確に把握することができ、簡単な構成で、しかも運転中に直接、行うことができる、自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法を提供することができる。
【0013】
そして、前記非接触センサによる前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸の軸位置変動量の計測は、前記非接触センサによる軸位置変動量計測結果の積分値を用いることで、例えば自動調芯嵌合クラッチにおける第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸におけるそれぞれの継ぎ手部分が、鋳物で作成されて鋳肌に凹凸があり、軸ズレ量を正確に計れない場合も、計測結果を積分して平均値を求めることで正確な軸位置変動量を求めることができる。
【0014】
また、前記第1の駆動源の回転軸に対する第2の駆動源の回転軸の相対的軸ズレ量が、予め定めた軸ズレ量を超えたとき、軸位置調整を促す警告を外部に発するようにすることで、軸ズレによってクラッチに過大な応力がかかることでクラッチを破損させてしまう前に、軸ズレ量を適正な値に補正することが可能となる。
【0015】
さらに、前記被駆動体は発電機であり、前記自動調芯嵌合クラッチによる前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸の結合を、前記発電機出力の変化により検出することで、例えば蒸気タービンとガスタービンによって発電機を駆動し、前記したように電力需要に応じて蒸気タービンの駆動力を利用したり停止させる場合、需要が増加したときに蒸気タービンの駆動力を用いると発電機出力が増加するから、その増加によって第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸が結合したことを検出することで、特別な嵌合検知手段を用いずに正確に嵌合を検知することができる。またクラッチの調芯は、伝達トルクの力によって行われるため、トルクの増加、すなわち発電機出力の増加により正確に嵌合、調芯の確立を検知できる。
【0016】
そして、前記非接触センサは、前記第1の駆動源の筐体と第2の駆動源の筐体とは異なる定点に前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸とから所定距離を置いて設置し、前記非接触センサを構成するセンサヘッドに高周波電流を流して前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸表面に流れる渦電流の変化から軸ズレ量を検知する、渦電流式ギャップセンサを用いることで、渦電流式ギャップセンサは被測定物が金属である必要があることと、測定距離を短くする必要があるが、高分解能、高精度であり、ほこり、水、油などの耐環境製に優れているから、発電機の回転軸などの軸ズレ量測定には最適である。
【0017】
同様に、前記非接触センサは、前記第1の駆動源の筐体と第2の駆動源の筐体とは異なる定点に前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸とから所定距離を置いて設置し、前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸にレーザ光をそれぞれ当てて、反射光をCCD(Charge Coupled Device)を用いた受光素子で受け、三角測距方式で軸ズレ量を検知するCCDレーザ変位センサを用いることで、CCDレーザ変位センサは測定面が小さいが、離れたところでも高精度に軸ズレを計測でき、発電機の回転軸などの軸ズレ量測定には最適である。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明は、自動調芯嵌合クラッチにおける第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸の相対的な軸ズレ量を、自動調芯嵌合クラッチにおける嵌合時のそれぞれの回転軸の移動量で計測することで、或る程度軸ズレがあっても自動調芯嵌合クラッチは嵌合時に両軸は調芯されるから、その移動量は互いの軸ズレ量そのものであり、非常に簡単な方法で、しかも運転中に直接、正確に軸ズレ量を測定することができる。従って、従来装置のように複数のセンサを設けて演算により求める、というコストがかかる上に直接計測でないために誤差が生じる方法に比較し、コスト的に、精度的に優れた自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明になる自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法を実施するための、駆動力伝達機構の一例概略と軸ズレ量を検知するための近接センサの配置状態を示したブロック図であり、図2は経年変化などによる軸ズレ量の一例を示したグラフで、(A)は軸ズレ量の調整直後の状態を示し、(B)は一例として数年後の状態、(C)は同じく5年以上経過した状態の場合である。また、図3は、本発明になる自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法を実施する、一軸コンバインドプラントとしての発電設備の構成を示すブロック図である。
【0021】
最初に図3を用い、本発明になる自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法を実施する、一軸コンバインドプラントの構成を示すブロック図について説明する。図中、10は、前記した特許文献1や非特許文献1に一例の構造と動作が紹介されている、SSS(Synchro Self Shifting)クラッチと呼ばれるヘリカルスプライン嵌合構造を用いた自動調芯嵌合クラッチ(以下SSSクラッチと略称する)で、例えば第1の駆動源たるガスタービンGT33の軸11と第2の駆動源たる蒸気タービンST35の軸12とを結合又は切り離しを行う。31は外気を圧縮する圧縮機、31aは圧縮機31の第1段静翼であると共に圧縮機31に供給される空気の流量を調整する入口案内翼(IGV)、32は圧縮機31からの圧縮空気により燃料を燃焼させて燃焼ガスを供給する燃焼器、32bは燃焼器32に供給する燃料の流量を調整する燃料制御弁、33は燃焼器32から供給される燃焼ガスにより回転するガスタービンGT、34はガスタービンGT33からの排ガスにより蒸気を発生する排ガスボイラ(HRSG)、35は排ガスボイラHRSG34からの蒸気により回転する蒸気タービン、35bは排ガスボイラHRSG34で発生された蒸気の蒸気タービンST35への供給量を制御する蒸気加減弁、36はガスタービンGT33及び蒸気タービンST35とによって回転して発電する被駆動源たる発電機、37は蒸気タービンST35から排出される蒸気を回収するとともに回収した蒸気を排ガスボイラHRSG34に供給する復水器、38は排ガスボイラHRSG34から排出されるガスタービンGT33からの排ガスを排出する煙突、39は各ブロックの動作制御を行う制御装置である。
【0022】
この一軸コンバインドプラントとしての発電設備においては、外気を圧縮する圧縮機31の第1段静翼であると共に、圧縮機31に供給される空気の流量を調整する入口案内翼(IGV)31aで流量を調整された外気が圧縮され、その圧縮空気により燃料が燃焼される燃焼器32により供給される燃焼ガスで、ガスタービンGT33が回転してそのガスタービンGT33からの排ガスにより蒸気を発生する、排ガスボイラ(HRSG)34からの蒸気で蒸気タービンST35が回転する。そしてそれらガスタービンGT33、蒸気タービンST35の回転は、それぞれの軸11、12の結合又は切り離しを行うSSSクラッチ10を介し、発電機36に伝えられて発電が行われる。なお、蒸気タービンST35から排出される蒸気は復水器37で回収されて排ガスボイラ(HRSG)34に供給され、排ガスボイラ(HRSG)34から排出されるガスタービン3からの排ガスは、煙突38から排出される。
【0023】
そしてこのうち、燃焼器2に供給する燃料の流量は制御装置39からの制御信号により動作する燃料制御弁32bで調整され、また、排ガスボイラ(HRSG)34で発生された蒸気の蒸気タービンST35への供給量は、同じく制御装置39からの制御信号により動作する蒸気加減弁35bで、さらに前記した圧縮機31の第1段静翼であるとともに圧縮機31に供給される空気の流量を調整する入口案内翼(IGV)31aも、同様に制御装置39からの制御信号によりその開度が制御されて、圧縮機31に供給される空気の流量がそれぞれ調整され、ガスタービンGT33、蒸気タービンST35の回転速度がそれぞれ制御される。なお、この図3に示した一軸コンバインドプラントの場合は、一例として、圧縮機31及び発電機36の軸はガスタービンGT33と同一の軸11とした場合を示している。
【0024】
このような構成の一軸コンバインドプラントは、SSSクラッチ10によって軸11及び軸12が嵌合されるまで、蒸気タービンST35が切り離された状態であり、ガスタービンGT33の軸11によって回転する圧縮機31及び及び発電機36とは別に、蒸気タービンST35の軸12が回転する。そして、ガスタービンGT33と蒸気タービンST35の回転速度が略等しくなると、SSSクラッチ10が自動的に嵌合する。このように、SSSクラッチ10によって軸11及び軸12が結合されると、同一軸となる軸11及び軸12によって、圧縮機31及びガスタービンGT33及び蒸気タービンST35及び発電機36が同一軸で回転する。このように動作するとき、圧縮機31によって圧縮された空気が燃焼器32に与えられて燃料が燃焼されると、燃焼器32からの燃焼ガスによってガスタービンGT33が回転するとともに、排ガスボイラHRSG34でガスタービンGT33からの排ガスによって生成された蒸気が、蒸気タービンST35に供給されて蒸気タービンST35が回転する。
【0025】
なお、以下の説明では、本発明を図3に示した一軸コンバインド発電プラントの場合を例に説明してゆくが、本発明は、第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸とを結合させて被駆動体に駆動力を伝達するようにした駆動力伝達機構であれば、図3に示した一軸コンバインド発電プラントだけでなく、どのようなプラントや駆動力伝達機構にも利用できることはあきらかである。
【0026】
図1は、本発明になるSSSクラッチ10を用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法を実施するための、駆動力伝達機構の一例概略と軸ズレ量を検知するための近接センサ19、20の配置状態を示したブロック図である。図中、10は前記した特許文献1や非特許文献1に一例の構造と動作が紹介されているSSSクラッチであり、11と12は前記した例えば第1の駆動源たるガスタービンGT33や第2の駆動源たる蒸気タービンST35等の軸で、これらの軸11と12とは、SSSクラッチ10によって被駆動体たる例えば発電機36に接続されている。
【0027】
13、14は例えば第1の駆動源たるガスタービンGT33や第2の駆動源たる蒸気タービンST35等の軸とSSSクラッチ10とをつなぐためのフランジ、15、17はそれぞれの軸の軸受、16、18は軸受15、17の支持台、19、20はSSSクラッチ10における軸の軸ズレを検出するための非接触センサたる近接センサで、この近接センサ19、20は、例えば第1の駆動源たるガスタービンGT33や第2の駆動源たる蒸気タービンST35等の筐体とは異なる定点に、SSSクラッチ10における軸から所定距離を置いて設置してある。なお、第1の駆動源たるガスタービンGT33や第2の駆動源たる蒸気タービンST35等の軸11、12は、フランジ13、14によってSSSクラッチ10の軸と接続され、SSSクラッチ10の軸とは異なるが、実質的にフランジ13、14によってSSSクラッチ10の軸と接続されて同一動作をするため、以下の説明では、ガスタービンGT33の軸11、蒸気タービンST35の軸12と表現した場合、フランジ13、14によって接続されたSSSクラッチ10の軸も含むものとする。
【0028】
前記した近接センサとしては、例えばこのセンサを構成するセンサヘッドに高周波電流を流し、前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸表面に流れる渦電流の変化から軸ズレ量を検知する渦電流式ギャップセンサ、第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸とから所定距離を置いて設置し、前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸にレーザ光をそれぞれ当てて、反射光をCCD(Charge Coupled Device)を用いた受光素子で受け、三角測距方式で軸ズレ量を検知するCCDレーザ変位センサなどを用いることで、渦電流式ギャップセンサは被測定物が金属である必要があることと、測定距離を短くする必要があるが、高分解能、高精度で、ほこり、水、油などの耐環境製に優れており、また、CCDレーザ変位センサは測定面が小さいが、離れたところでも高精度に軸ズレを計測でき、発電機の回転軸などの軸ズレ量測定には最適である。
【0029】
このように構成した本発明になるSSSクラッチ10を用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法では、第1の駆動源たるガスタービンGT33の回転軸11と、第2の駆動源たる蒸気タービンST35の回転軸12の軸位置変動量を、それぞれの回転軸11、12に相対して設けた非接触センサたる近接センサ19、20で計測し、SSSクラッチ10による回転軸11と回転軸12の結合(嵌合)時における、それぞれの回転軸の軸位置変動量測定結果により、第1の駆動源たるガスタービンGT33の回転軸11に対する第2の駆動源たる蒸気タービンST35の回転軸12の相対的軸ズレ量を検知するものである。
【0030】
すなわちSSSクラッチ10は、嵌合させる軸11、12の中心間のズレ量が所定の規定値よりも大きな値となると、ガスタービンGT33及び発電機36と蒸気タービンST35とが共に定格回転数付近で回転した状態でSSSクラッチ10が嵌合されることになるため、SSSクラッチ10に過大な応力がかかり、結果的にクラッチを破損する恐れがあるが、正常な嵌合状態では軸11、12の中心間のズレ量はほぼなくなると考えられる。
【0031】
そのため、嵌合前に軸11、12の中心間にズレがあっても、嵌合した瞬間には軸11、12の中心間のズレ量はほぼなくなるから、その嵌合前と後における軸11、12のそれぞれの移動量を求め、その移動量を加算することで、第1の駆動源たるガスタービンGT33の回転軸11に対する第2の駆動源たる蒸気タービンST35の回転軸12の相対的軸ズレ量がわかるわけである。
【0032】
図2は、この第1の駆動源たるガスタービンGT33の回転軸11と、第2の駆動源たる蒸気タービンST35の回転軸12の、経年変化による軸ズレ量の一例を示したもので、(A)は軸ズレ量の調整をした直後の状態を示し、(B)は一例として数年後の状態を、(C)は同じく5年以上経過した状態を、それぞれ模擬的に示したものである。この各グラフにおいて縦軸は計測距離を、横軸はSSSクラッチ10の嵌合前後の時刻をそれぞれ表していて、時刻tで嵌合が行われた場合であり、21乃至26は、それぞれ第1の駆動源たるガスタービンGT33の回転軸11と、第2の駆動源たる蒸気タービンST35の回転軸12の軸ズレ量、すなわち図1に19、20で示した近接センサで計測したそれぞれの軸の軸ズレ測定量を表している。
【0033】
これらのグラフから分かるように、第1の駆動源たるガスタービンGT33の回転軸11と、第2の駆動源たる蒸気タービンST35の回転軸12は、(A)の軸ズレ量の調整をした直後の状態でも、多少存在する軸ズレによって21、22で示したようなブレが存在する。しかし時刻tで嵌合する際には回転軸11に対する回転軸12の軸ズレ量調整がされ、前記したように時刻tで嵌合するとそのズレ量はほぼなくなる。
【0034】
そして(B)の数年経過した状態では、経年変化によって23、24で示したようにズレ量は大きくなるが、回転軸11に対する回転軸12の軸ズレ量が一定以下であれば嵌合は正常に行われる。しかし、(C)に示したように、例えば5年以上経過した状態では経年変化によってズレ量がさらに大きくなる。そのため、この(C)の状態では、軸ズレ量の調整が必要であるが、以上説明してきた(A)、(B)、(C)のグラフにおける軸ズレ量は、前記した方法により、次のようにして検出する。
【0035】
例えば(C)に示したように、回転軸11の測定量を25、回転軸12の測定量を26として、嵌合の際の25で示した測定量の移動量をδ1、26で示した測定量の移動量をδ2とすると、時刻tで嵌合した瞬間、前記したように嵌合によってその軸ズレ量はほぼなくなるため、小さくなった軸ズレ量、即ち時刻tで嵌合する直前の軸の位置と嵌合した瞬間に小さくなった軸の位置のそれぞれの軸の移動量(δ1+δ2)が、第1の駆動源たるガスタービンGT33の回転軸11の、第2の駆動源たる蒸気タービンST35の回転軸12に対する軸ズレ量となるわけである。
【0036】
そのため、この(δ1+δ2)が予め定めた所定の点検基準値(既定値)、例えばRよりも大きな値となったら、前記図3に示した制御装置39でそれを検知し、例えば制御装置39に接続された図示していない表示装置に表示したり、合成音声による警告、特定警告音の発生などの手段により、調芯が必要なことを外部に知らせることで、前記したようにガスタービンGT33及び発電機36と蒸気タービンST35とが共に定格回転数付近で回転した状態でSSSクラッチ10が嵌合されることで、SSSクラッチ10に過大な応力がかかって結果的にSSSクラッチ10を破損する、といったことが未然に防止できるわけである。
【0037】
なお、近接センサ19、20による第1の駆動源たるガスタービンGT33の回転軸11と、第2の駆動源たる蒸気タービンST35の回転軸12の軸位置変動量の計測は、前記したように渦電流式ギャップセンサ、CCDレーザ変位センサなどの近接センサ19、20で行うわけであるが、回転軸が鋳物で形成されていた場合、鋳肌は凹凸があり、正確な軸ズレ量の計測が困難な場合がある。そのため、例えばこれら近接センサ19、20による計測結果を回転角度毎に積分し、平均値を用いることで、こういった場合も正確な軸位置変動量を求めることができるから、前記した制御装置39にそういった回路を組み込むことが好ましい。
【0038】
また、SSSクラッチ10の嵌合の瞬間の検知は、例えば近接センサ19、20による軸位置変動量の計測結果が所定以上であった場合に嵌合したとしても良いが、クラッチの調芯は伝達トルクの力によっておこなわれるため、前記図3のように被駆動源として発電機36が用いられている場合、起動時にガスタービンGT33のみで発電機36を駆動していたところに蒸気タービンST35を加えたり停止させたりした場合、発電機36の出力が増加したり減少したりするから、その増加または減少によって第1の駆動源の回転軸11と第2の駆動源の回転軸12とが結合、切断したとすれば、特別な嵌合検知手段を用いずに正確に嵌合、及び調芯の完了を検知することも可能である。
【0039】
以上種々述べてきたように本発明によれば、第1の駆動源の回転軸11と第2の駆動源の回転軸12のそれぞれに非接触センサ19、20を設け、SSSクラッチ10による嵌合時、両非接触センサ19、20の軸位置変動量測定結果で第1の駆動源の回転軸11に対する第2の駆動源の回転軸12の相対的軸ズレ量を検知することで、SSSクラッチ10は、第1の駆動源の回転軸11と第2の駆動源の回転軸12に多少の軸ズレがあっても両者を嵌合させることで両軸芯を略一致させるから、嵌合時の第1の駆動源の回転軸11と第2の駆動源の回転軸12の移動量を見ることで軸ズレ量を正確に把握することができ、簡単な構成で、しかも運転中に直接、行うことができる、自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、簡単な構成で、しかも運転中にSSSクラッチを用いた駆動力伝達機構の軸ズレ量を計測できるから、こういったSSSクラッチを用いた駆動力伝達機構の軸ズレによるSSSクラッチの破損を未然に防ぐことのできる駆動力、伝達機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明になる自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法を実施するための、駆動力伝達機構の一例概略と軸ズレ量を検知するための近接センサの配置状態を示したブロック図である。
【図2】経年変化による軸ズレ量の一例を示したグラフで、(A)は調整直後、(B)は数年後、(C)は5年以上、それぞれ経過した場合である。
【図3】一軸コンバインドプラントの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0042】
10 自動調芯嵌合クラッチ(SSSクラッチ)
11 軸
12 軸
13、14 フランジ
15 軸受
16 軸受支持台
17 軸受
18 軸受支持台
19、20 近接センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動調芯嵌合クラッチを介し、第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸とを結合させて被駆動体に駆動力を伝達するようにした駆動力伝達機構における、前記第1の駆動源の回転軸に対する第2の駆動源の回転軸の軸ズレ量検知方法であって、
前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸のそれぞれにおける軸位置変動量をそれぞれの回転軸に相対して設けた非接触センサで計測し、前記自動調芯嵌合クラッチによる前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸の結合時におけるそれぞれの回転軸の軸位置変動量測定結果により、前記第1の駆動源の回転軸に対する第2の駆動源の回転軸の相対的軸ズレ量を検知することを特徴とする、自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法。
【請求項2】
前記非接触センサによる前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸の軸位置変動量の計測は、前記非接触センサによる軸位置変動量計測結果の積分値を用いることを特徴とする請求項1に記載した自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法。
【請求項3】
前記第1の駆動源の回転軸に対する第2の駆動源の回転軸の相対的軸ズレ量が、予め定めた軸ズレ量を超えたとき、軸位置調整を促す警告を外部に発することを特徴とする請求項1または2に記載した自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法。
【請求項4】
前記被駆動体は発電機であり、前記自動調芯嵌合クラッチによる前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸の結合を、前記発電機出力の変化により検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載した自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法。
【請求項5】
前記非接触センサは、前記第1の駆動源の筐体と第2の駆動源の筐体とは異なる定点に前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸とから所定距離を置いて設置し、前記非接触センサを構成するセンサヘッドに高周波電流を流して前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸表面に流れる渦電流の変化から軸ズレ量を検知する、渦電流式ギャップセンサを用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載した自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法。
【請求項6】
前記非接触センサは、前記第1の駆動源の筐体と第2の駆動源の筐体とは異なる定点に前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸とから所定距離を置いて設置し、前記第1の駆動源の回転軸と第2の駆動源の回転軸にレーザ光をそれぞれ当てて、反射光をCCD(Charge Coupled Device)を用いた受光素子で受け、三角測距方式で軸ズレ量を検知するCCDレーザ変位センサを用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載した自動調芯嵌合クラッチを用いた駆動力伝達機構における軸ズレ量検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−244050(P2009−244050A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90139(P2008−90139)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】