説明

自動走行台車

【課題】駆動装置に過負荷が加わることを避け得る自動走行台車を提供する。
【解決手段】制御装置2からの走行信号に基づいて第一車輪5aを回転させる第一トルクを制御する第一駆動装置1aと、第一駆動装置1aからの同調信号に基づいて第二車輪5bを回転させる第二トルクを制御する第二駆動装置1bを有する自動走行台車1であって、制御装置2は、第二駆動装置1bの異常時に受信する第二切離し信号に基づいて、第二駆動装置1bを制御して第二トルクをゼロとしかつ走行信号に含まれる速度設定値を変更して第一駆動装置1aを制御して第一トルクを調整する。制御装置2は、第一駆動装置1aの異常時に受信する第一切離し信号に基づいて、第一駆動装置1aを制御して第一トルクをゼロとしかつ速度設定値を変更しかつ第二駆動装置1bを同調信号に替えて前記設定値を含む走行信号に基づいて制御して第二トルクを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行して荷物を搬送し得る自動走行台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動走行台車は、例えば制御装置と、制御装置から受信した走行信号に基づいて第一車輪を回転させる第一トルクを制御するマスター用駆動装置と、マスター用駆動装置から受信した同調信号に基づいて第二車輪を回転させる第二トルクを制御するスレーブ用駆動装置を有する(特許文献1参照)。制御装置は、スレーブ用駆動装置が異常の場合に、マスター用駆動装置によって台車を駆動させ続ける。マスター用駆動装置が異常の場合には、スレーブ用駆動装置をマスター用駆動装置に切換えてマスターとし、スレーブ用駆動装置によって台車を駆動させ続ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−11672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし複数の駆動装置を有する台車を一つの駆動装置によって駆動させる場合、一つの駆動装置に大きな負荷が加わり、該駆動装置が破損するおそれがある。そこでマスターとスレーブの関係にある二つの駆動装置を有する台車において、一つの駆動装置に異常が生じて他の駆動装置で駆動させる際に、他の駆動装置において過負荷が加わることを避け得る自動走行台車が従来求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える自動走行台車であることを特徴とする。一つの特徴によると本発明の自動走行台車は、制御装置と、制御装置から受信した走行信号に基づいて第一車輪を回転させる第一トルクを制御する第一駆動装置と、第一駆動装置から受信した同調信号に基づいて第二車輪を回転させる第二トルクを制御する第二駆動装置を有する。制御装置は、第二駆動装置の異常時にまたは第二駆動装置を強制的に停止する際に受信する第二切離し信号に基づいて、第二駆動装置を制御して第二トルクをゼロとしかつ台車が減速して駆動するように走行信号に含まれる設定値を変更して第一駆動装置を制御して第一トルクを調整する。制御装置は、第一駆動装置の異常時にまたは第一駆動装置を強制的に停止する際に受信する第一切離し信号に基づいて、第一駆動装置を制御して第一トルクをゼロとしかつ台車が減速して駆動するように設定値を変更しかつ第二駆動装置を同調信号に替えて前記設定値を含む走行信号に基づいて制御して第二トルクを調整する。
【0006】
したがって台車は、マスターとスレーブの関係にある第一駆動装置と第二駆動装置を有する。第一駆動装置が異常等の場合は、第二駆動装置によって台車が駆動し、第二駆動装置が異常等の場合は、第一駆動装置によって台車が駆動し得る。そのため台車の停止時間を短縮することができる。しかも制御装置は、台車が減速するように設定値を変更して第一駆動装置または第二駆動装置を制御する。そのため第一駆動装置または第二駆動装置に過負荷が加わることを避け得る。かくして過負荷による第一駆動装置または第二駆動装置の故障が減少する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】無人搬送システムの模式図である。
【図2】第一スイッチが操作された際の無人搬送システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一つの実施の形態を図1,2にしたがって説明する。図1に示すように無人搬送システム10は、路面に設置される走行レール12と、走行レール12を自動走行する複数の台車1と、複数の台車1を遠隔操作する遠隔操作装置11を有する。
【0009】
台車1は、図1に示すように荷物を搬送するための車両であって、制御装置2と第一駆動装置1aと第二駆動装置1bを有する。第一駆動装置1aは、制御装置2から受信した走行信号に基づいて第一トルクを出力する。第一トルクによって第一車輪5aが回転する。第一車輪5aは、例えば台車本体の前部に設けられる。第二駆動装置1bは、第一駆動装置1aから受信した同調信号に基づいて第二トルクを出力する。第二トルクによって第二車輪5bが回転する。第二車輪5bは、例えば台車本体の後部に設けられる。
【0010】
第一駆動装置1aは、図1に示すようにマスター装置3aと第一モータ4aを有する。マスター装置3aは、例えばインバータであって、ベクトル制御によって第一モータ4aに所定の電力および電流を供給する。マスター装置3aは、制御装置2から速度設定値等が含まれる走行信号を受信する。マスター装置3aは、速度設定値等からインバータパラメータを決定して、該パラメータに基づく電力および電流を第一モータ4aに供給する。第一モータ4aは、マスター装置3aから供給される電力および電流によって第一トルクを出力する。
【0011】
第二駆動装置1bは、図1に示すようにスレーブ装置3bと第二モータ4bを有する。スレーブ装置3bは、同調用経路9によってマスター装置3aと接続される。スレーブ装置3bは、例えばインバータであって、ベクトル制御によって第二モータ4bに所定の電力および電流を供給する。スレーブ装置3bは、マスター装置3aから第一トルクの情報等を含む同調信号を受信する。
【0012】
スレーブ装置3bは、同調信号に含まれる情報等からインバータパラメータを決定して、該パラメータに基づく電力および電流を第二モータ4bに供給する。第二モータ4bは、スレーブ装置3bから供給される電力および電流によって第二トルクを出力する。したがってスレーブ装置3bは、マスター装置3aと同調して第二車輪5bを回転させ得る。その結果、第一トルクと第二トルクのトルク差が小さくなり、トルク差によって生じ得る走行時のエネルギ損失が軽減され得る。
【0013】
マスター装置3aは、第一駆動装置1aの状態情報を含む第一状態情報信号を制御装置2に送信する。制御装置2は、第一状態情報信号に基づいて第一駆動装置1aが異常である否かを判断する異常判断回路2cを有する。例えば異常判断回路2cは、第一状態情報信号に含まれる情報から、マスター装置3aの出力電流または内部温度が所定範囲内か否か、第一モータ4aの出力トルクまたは内部温度が所定範囲内か否か等を判断し、その結果に基づいてマスター装置3aまたは第一モータ4aの異常の有無を判断する。
【0014】
スレーブ装置3bは、第二駆動装置1bの状態情報を含む第二状態情報信号を制御装置2に送信する。制御装置2の異常判断回路2cは、第二状態情報信号に基づいて第二駆動装置1bが異常であるか否かを判断する。例えば異常判断回路2cは、第一状態情報信号に含まれる情報から、スレーブ装置3bの出力電流または内部温度が所定範囲内か否か、第二モータ4bの出力トルクまたは内部温度が所定範囲内か否か等を判断し、その結果に基づいてスレーブ装置3bまたは第二モータ4bの異常の有無を判断する。
【0015】
マスター装置3aと第一モータ4aの間には、図1に示すようにこれらを切断可能に接続する第一スイッチ6aが設けられる。第一スイッチ6aは、例えば電磁接触器である。第一スイッチ6aは、制御装置2によって制御されて、マスター装置3aと第一モータ4aを遮断して第一トルクをゼロにし得る。スレーブ装置3bと第二モータ4bの間には、これらを切断可能に接続する第二スイッチ6bが設けられる。第二スイッチ6bは、例えば電磁接触器である。第二スイッチ6bは、制御装置2によって制御されて、スレーブ装置3bと第二モータ4bを遮断して第二トルクをゼロにし得る。
【0016】
制御装置2には、図1,2に示すように第一強制切離しスイッチ7aと第二強制切離しスイッチ7bが接続される。第一強制切離しスイッチ7aと第二強制切離しスイッチ7bは、台車本体に設けられる。第一強制切離しスイッチ7aが使用者によって操作されると、図2に示すように第一強制切離しスイッチ7aが制御装置2へ第一切離し信号を発信する。制御装置2は、第一切離し信号に基づいて第一スイッチ6aを制御して、マスター装置3aと第一モータ4aを遮断する。
【0017】
第二強制切離しスイッチ7bが使用者によって操作されると、第二強制切離しスイッチ7bが制御装置2へ第二切離し信号を発信する。制御装置2は、第二切離し信号に基づいて第二スイッチ6bを制御して、スレーブ装置3bと第二モータ4bを遮断する。
【0018】
台車1は、図1に示すように第一車輪5aを制動する第一ブレーキ装置8aと、第二車輪5bを制動する第二ブレーキ装置8bを有する。第一ブレーキ装置8aと第二ブレーキ装置8bは、制御装置2によって制御されて制動力を車輪5a,5bに付与する。第一ブレーキ装置8aと第二ブレーキ装置8bは、第一駆動装置1aまたは第二駆動装置1bが異常の場合に自動的に車輪5a,5bに制動力を付与するように制御装置2等によって制御される。
【0019】
制御装置2は、図1に示すように発信回路2aと受信回路2bを有する。発信回路2aは、台車1の情報を含む台車情報信号を無線で遠隔操作装置11に送信する。台車情報信号には、台車1の位置、異常判断回路2cにより判断された第一駆動装置1aの異常の有無、第二駆動装置1bの異常の有無などの情報が含まれる。受信回路2bは、遠隔操作装置11から無線で発信された信号を受信する。
【0020】
遠隔操作装置11は、図1に示すように発信回路11aと受信回路11bを有する。発信回路11aは、台車1の受信回路2bに無線で信号を発信する。受信回路11bは、台車1の発信回路2aから無線で発信された信号を受信する。
【0021】
遠隔操作装置11は、図1に示すように表示部11cと入力部11dとルート検索回路11eを有する。入力部11dは、表示部11cを兼ねるタッチパネル等であって、作業者によって台車1の台数、台車1の目的地などの情報が入力される。ルート検索回路11eは、入力部11dから入力された情報等に基づいて台車1の好適な走行ルートを検索する。走行ルートを含む走行信号は、発信回路11aから台車1に発信される。台車1の制御装置2は、走行信号に基づいて台車1が所定の速度等で駆動するように第一駆動装置1a等を制御する。
【0022】
表示部11cは、制御装置2から発信された台車情報信号に基づいて所定の情報を表示する。例えば、台車1の位置、第一駆動装置1aの異常の有無、第二駆動装置1bの異常の有無等を表示する。使用者は、表示部11cに表示された情報に基づいて入力部11dに所定の情報を入力し得る。例えば、第一駆動装置1aの異常または第二駆動装置1bの異常を表示部11cの表示から認識した作業者が、該状態における台車1を継続して駆動させたいと判断した場合に、入力部11dに切離し情報を入力し得る。入力された切離し情報に基づいて入力部11dが第一切離し信号または第二切離し信号を送信する。切離し信号は、発信回路11aによって無線で台車1に送信される。
【0023】
第一切離し信号が制御装置2に受信されると、制御装置2は、第一スイッチ6aを制御してマスター装置3aと第一モータ4aを遮断する。これにより第一トルクがゼロになる。次に制御装置2は、ブレーキ解除回路2dによってブレーキ装置8a,8bを制御して、ブレーキ装置8a,8bの制動力を解除する。次に制御装置2は、スレーブ装置3bをマスターとして制御する。すなわち制御装置2は、スレーブ装置3bがマスター装置3aからの同調信号に替えて制御装置2から送信される走行信号に基づいて制御されるようにスレーブ装置3bを制御する。
【0024】
次に制御装置2は、第一切離し信号に基づいて台車1の速度設定値を自動で変更し、かつスレーブ装置3bのインバータパラメータを自動で変更する。これにより第二駆動装置1bは、モータ一つ分の能力に合うように制御装置2によって制御され、台車1の速度と加速度が小さくなる。また制御装置2は、第一強制切離しスイッチ7aから発信された第一切離し信号を受信した際にも、同様に第一駆動装置1aと第二駆動装置1bを制御する。これにより台車1は、第二駆動装置1bによって駆動される。
【0025】
制御装置2が遠隔操作装置11から第二切離し信号を受信した場合は、制御装置2が第二スイッチ6bを制御してスレーブ装置3bと第二モータ4bを遮断する。これにより第二トルクがゼロになる。次に制御装置2は、ブレーキ解除回路2dによってブレーキ装置8a,8bを制御して、ブレーキ装置8a,8bの制動力を解除する。
【0026】
次に制御装置2は、第二切離し信号に基づいて台車1の速度設定値を自動で変更し、かつマスター装置3aのインバータパラメータを自動で変更する。これにより第一駆動装置1aは、モータ一つ分の能力に合うように制御装置2によって制御され、台車1の速度と加速度が小さくなる。また制御装置2は、第二強制切離しスイッチ7bから発信された第二切離し信号を受信した際にも、同様に第一駆動装置1aと第二駆動装置1bを制御する。これにより台車1は、第一駆動装置1aによって駆動される。
【0027】
遠隔操作装置11のルート検索回路11eは、第一切離し信号または第二切離し信号に基づいて減速する台車1の速度を考慮して複数の台車1の走行ルートを再検索する。例えばルート検索回路11eは、入力部11dに入力された第一切離し信号または第二切離し信号、あるいは台車1から送信された情報信号から台車1の一つが減速されると判断して、各台車1の走行ルートを再検索する。再検索された走行ルートの情報は、各台車1に送信されて、各台車1は、該走行ルートの情報に基づいて駆動する。
【0028】
以上のように自動走行台車1は、図1に示すように制御装置2と、制御装置2から受信した走行信号に基づいて第一車輪5aを回転させる第一トルクを制御する第一駆動装置1aと、第一駆動装置1aから受信した同調信号に基づいて第二車輪5bを回転させる第二トルクを制御する第二駆動装置1bを有する。制御装置2は、第二駆動装置1bの異常時にまたは第二駆動装置1bを強制的に停止する際に受信する第二切離し信号に基づいて、第二駆動装置1bを制御して第二トルクをゼロとしかつ台車1が減速して駆動するように走行信号に含まれる設定値を変更して第一駆動装置1aを制御して第一トルクを調整する。制御装置2は、第一駆動装置1aの異常時にまたは第一駆動装置1aを強制的に停止する際に受信する第一切離し信号に基づいて、第一駆動装置1aを制御して第一トルクをゼロとしかつ台車が減速して駆動するように設定値を変更しかつ第二駆動装置1bを同調信号に替えて前記設定値を含む走行信号に基づいて制御して第二トルクを調整する。
【0029】
したがって台車1は、マスターとスレーブの関係にある第一駆動装置1aと第二駆動装置1bを有する。第一駆動装置1aが異常等の場合は、第二駆動装置1bによって台車1が駆動し、第二駆動装置1bが異常等の場合は、第一駆動装置1aによって台車1が駆動し得る。そのため台車1の停止時間を短縮することができる。しかも制御装置2は、台車1が減速するように設定値を変更して第一駆動装置1aまたは第二駆動装置1bを制御する。そのため第一駆動装置1aまたは第二駆動装置1bに過負荷が加わることを避け得る。かくして過負荷による第一駆動装置1aまたは第二駆動装置1bの故障が減少する。
【0030】
第一駆動装置1aは、図1に示すように制御装置2から走行信号を受信するマスター装置3aと、マスター装置3aから供給された電力によって第一トルクを出力する第一モータ4aと、マスター装置3aと第一モータ4aとを切断可能に接続しかつ制御装置2によって制御されてマスター装置3aと第一モータ4aとを遮断し得る第一スイッチ6aを有する。第二駆動装置1bは、マスター装置3aから同調信号を受信するスレーブ装置3bと、スレーブ装置3bから供給された電力によって第二トルクを出力する第二モータ4bと、スレーブ装置3bと第二モータ4bとを切断可能に接続しかつ制御装置2によって制御されてスレーブ装置3bと第二モータ4bとを遮断し得る第二スイッチ6bを有する。したがって制御装置2は、第一スイッチ6aによって第一トルクをゼロにし、第二スイッチ6bによって第二トルクをゼロにすることができる。
【0031】
台車1は、図1に示すように台車本体に設けられかつ使用者によって操作されることで第一切離し信号を発信する第一強制切離しスイッチ7aと、台車本体に設けられかつ使用者によって操作されることで第二切離し信号を発信する第二強制切離しスイッチ7bを有する。したがって使用者は、第一強制切離しスイッチ7aまたは第二強制切離しスイッチ7bを操作することで、台車1を駆動停止させることなく、第一駆動装置1aまたは第二駆動装置1bを意図的に停止させることができる。例えば駆動装置1a,1bの出力に余裕がある場合、台車1全体の消費電力を軽減させたい場合、駆動装置1a,1bの磨耗劣化を遅延させたい場合等において台車1を駆動停止させることなく、駆動装置1a,1bを意図的に停止させることができる。
【0032】
台車1および無人搬送システム10は、図1に示すように制御装置2との間で信号を無線で発信しかつ受信する遠隔操作装置11を有する。遠隔操作装置11は、制御装置2から第一駆動装置1aの異常情報と第二駆動装置1bの異常情報を含む台車情報信号を受信する受信回路11bと、台車情報信号に基づいて第一駆動装置1aの異常または第二駆動装置1bの異常を表示する表示部11cと、表示部11cの表示にしたがって作業者によって操作されて第一切離し信号または第二切離し信号を送信する入力部11dと、入力部11dから送信された第一切離し信号または第二切離し信号を制御装置2に無線で発信する発信回路11aを有する。
【0033】
したがって作業者は、表示部11cの表示によって駆動装置1a,1bの異常を認識することができる。該状態において作業者が台車1を継続して駆動させたいと判断した場合、作業者が入力部11dを操作し、これにより遠隔操作装置11が台車1に第一切離し信号または第二切離し信号を発信する。かくして台車1は、使用者の意思に基づいて継続して駆動され得る。
【0034】
遠隔操作装置11は、図1に示すように複数の台車1の各走行ルートを検索するルート検索回路11eと、走行ルートの情報を含む走行信号を台車1のそれぞれに発信する発信回路11aを有する。ルート検索回路11eは、制御装置2によって減速して駆動する台車1の速度を考慮して複数の台車1の走行ルートを再検索する。したがって駆動装置1a,1bの異常等によって減速した台車1によって他の台車1が目的地に到達することが遅れることを軽減することができる。
【0035】
台車1は、図1に示すように第一駆動装置1aまたは第二駆動装置1bが異常の場合に自動的に台車1の少なくとも一つの車輪に制動力を付与するブレーキ装置8a,8bを有する。制御装置2は、第一切離し信号または第二切離し信号を受信した場合に制動力を解除するようにブレーキ装置8a,8bを制御するブレーキ解除回路2dを有する。
【0036】
したがって駆動装置1a,1bの異常時に台車1が不本意に移動することがブレーキ装置8a,8bによって抑制され得る。例えば台車1が傾斜した走行路に位置する際に、駆動装置1a,1bが異常になって台車1が不本意に移動することがブレーキ装置8a,8bによって抑制され得る。一方、制御装置2が第一切離し信号または第二切離し信号を受信した場合は、制御装置2によってブレーキ装置8a,8bの制動力が解除される。そのため台車1を継続して駆動させることができる。
【0037】
(他の実施の形態)
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。例えば他の形態において遠隔操作装置11は、制御装置2から第一駆動装置1aの異常情報と第二駆動装置1bの異常情報を含む台車情報信号を受信する受信回路11bと、台車情報信号に基づいて第一駆動装置1aの異常または第二駆動装置1bの異常を表示する表示部11cと、台車情報信号に基づいて第一駆動装置1aの異常の際に自動的に第一切離し信号を制御装置に発信しかつ台車情報信号に基づいて第二駆動装置1bの異常の際に自動的に第二切離し信号を制御装置2に発信する発信回路11aを有しても良い。これにより作業者は、遠隔操作装置11の表示部11cによって駆動装置1a,1bの異常を認識することができる。該状態において台車1は、遠隔操作装置11からの信号に基づいて継続して駆動され得る。
【0038】
他の形態において台車1は、第一駆動装置1aに同調して各第二車輪を回転させる第二トルクを制御する複数の第二駆動装置1bを有していても良い。他の形態において台車1は、走行トルクを発生させない従動輪または補助輪を有していても良い。
【0039】
他の形態において台車1は、路面に設けられた磁気テープ等を検知するセンサを有し、磁気テープ等に沿って走行しても良い。他の形態において台車1は、上下に延出するレールを有し、レールに沿って昇降しても良い。他の形態において台車1は、大型自動搬送車、自動倉庫等に用いられても良い。
【0040】
他の形態において台車1は、第一強制切離しスイッチ7aと第二強制切離しスイッチ7bを有していなくても良い。他の形態において台車1は、遠隔操作装置11を有していなくても良い。他の形態において制御装置2の異常判断回路2cは、第一駆動装置1aに異常が有ると判断した際に自動的に受信回路2bに第一切離し信号を発信し、第二駆動装置1bに異常が有ると判断した際に自動的に受信回路2bに第二切離し信号を発信しても良い。
【0041】
他の形態においてマスター装置3aとスレーブ装置3bは、磁束ベクトル制御によってモータ4a,4bを制御しても良い。他の形態においてマスター装置3aとスレーブ装置3bは、サーボアンプであっても良い。
【0042】
他の形態において制御装置2は、第一切離し信号を受信した際にマスター装置3aへ供給する電源を遮断し、第二切離し信号を受信した際にスレーブ装置3bへ供給する電源を遮断しても良い。他の形態において台車1は、複数の車輪と、複数の車輪の内の少なくとも一つを制動し得るブレーキ装置を有していても良い。
【符号の説明】
【0043】
1…台車
1a…第一駆動装置
1b…第二駆動装置
2…制御装置
2a…発信回路
2b…受信回路
2c…異常判断回路
2d…ブレーキ解除回路
3a…マスター装置
3b…スレーブ装置
4a…第一モータ
4b…第二モータ
5a…第一車輪
5b…第二車輪
6a…第一スイッチ
6b…第二スイッチ
7a…第一強制切離しスイッチ
7b…第二強制切離しスイッチ
8a…第一ブレーキ
8b…第二ブレーキ
9…同調用経路
10…無人搬送システム
11…遠隔操作装置
11a…発信回路
11b…受信回路
11c…表示部
11d…入力部
11e…ルート検索回路
12…走行レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と、前記制御装置から受信した走行信号に基づいて第一車輪を回転させる第一トルクを制御する第一駆動装置と、前記第一駆動装置から受信した同調信号に基づいて第二車輪を回転させる第二トルクを制御する第二駆動装置を有する自動走行台車であって、
前記制御装置は、前記第二駆動装置の異常時にまたは前記第二駆動装置を強制的に停止する際に受信する第二切離し信号に基づいて、前記第二駆動装置を制御して前記第二トルクをゼロとしかつ前記台車が減速して駆動するように前記走行信号に含まれる設定値を変更して前記第一駆動装置を制御して前記第一トルクを調整し、
同制御装置は、前記第一駆動装置の異常時にまたは前記第一駆動装置を強制的に停止する際に受信する第一切離し信号に基づいて、前記第一駆動装置を制御して前記第一トルクをゼロとしかつ前記台車が減速して駆動するように前記設定値を変更しかつ前記第二駆動装置を前記同調信号に替えて前記設定値を含む前記走行信号に基づいて制御して前記第二トルクを調整する自動走行台車。
【請求項2】
請求項1に記載の自動走行台車であって、
前記第一駆動装置は、前記制御装置から前記走行信号を受信するマスター装置と、前記マスター装置から供給された電力によって前記第一トルクを出力する第一モータと、前記マスター装置と前記第一モータとを切断可能に接続しかつ前記制御装置によって制御されて前記マスター装置と前記第一モータとを遮断し得る第一スイッチを有し、
前記第二駆動装置は、前記マスター装置から前記同調信号を受信するスレーブ装置と、前記スレーブ装置から供給された電力によって前記第二トルクを出力する第二モータと、前記スレーブ装置と前記第二モータとを切断可能に接続しかつ前記制御装置によって制御されて前記スレーブ装置と前記第二モータとを遮断し得る第二スイッチを有する自動走行台車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動走行台車であって、
台車本体に設けられかつ使用者によって操作されることで前記第一切離し信号を発信する第一強制切離しスイッチと、前記台車本体に設けられかつ使用者によって操作されることで前記第二切離し信号を発信する第二強制切離しスイッチを有する自動走行台車。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の自動走行台車であって、
前記制御装置との間で信号を無線で発信しかつ受信する遠隔操作装置を有し、
前記遠隔操作装置は、前記制御装置から前記第一駆動装置の異常情報と前記第二駆動装置の異常情報を含む台車情報信号を受信する受信回路と、前記台車情報信号に基づいて前記第一駆動装置の異常または前記第二駆動装置の異常を表示する表示部と、前記表示部の表示にしたがって作業者によって操作されて前記第一切離し信号または前記第二切離し信号を送信する入力部と、前記入力部から送信された前記第一切離し信号または前記第二切離し信号を前記制御装置に無線で発信する発信回路を有する自動走行台車。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の自動走行台車であって、
前記制御装置との間で信号を無線で発信しかつ受信する遠隔操作装置を有し、
前記遠隔操作装置は、前記制御装置から前記第一駆動装置の異常情報と前記第二駆動装置の異常情報を含む台車情報信号を受信する受信回路と、前記台車情報信号に基づいて前記第一駆動装置の異常または前記第二駆動装置の異常を表示する表示部と、前記台車情報信号に基づいて前記第一駆動装置の異常の際に自動的に前記第一切離し信号を前記制御装置に発信しかつ前記台車情報信号に基づいて前記第二駆動装置の異常の際に自動的に前記第二切離し信号を前記制御装置に発信する発信回路を有する自動走行台車。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の自動走行台車であって、
前記制御装置との間で信号を無線で発信しかつ受信する遠隔操作装置を有し、
前記遠隔操作装置は、複数の台車の各走行ルートを検索するルート検索回路と、前記走行ルートの情報を含む前記走行信号を前記台車のそれぞれに発信する発信回路を有し、
前記ルート検索回路は、前記制御装置によって減速して駆動する前記台車の速度を考慮して前記複数の台車の走行ルートを再検索する自動走行台車。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の自動走行台車であって、
前記第一駆動装置または前記第二駆動装置が異常の場合に自動的に前記台車の少なくとも一つの車輪に制動力を付与するブレーキ装置を有し、
前記制御装置は、前記第一切離し信号または前記第二切離し信号を受信した場合に前記制動力を解除するように前記ブレーキ装置を制御するブレーキ解除回路を有する自動走行台車。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−244666(P2011−244666A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117073(P2010−117073)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】