説明

自動車のサスペンション支持構造

【課題】設計自由度が高く、軽量で剛性の高い自動車のサスペンション支持構造の提供。
【解決手段】この自動車のサスペンション支持構造では、ショックアブソーバ5の上端部を支える支持板部6が、上方に球面状に膨らむ膨出部8とカウルトップパネル4に連なる連結板部9を備え、膨出部8に突出部10を形成し、この突出部10に取付穴11を形成しており、取付穴11にショックアブソーバ5の上端部を取り付ける。膨出部8はショックアブソーバ5の車輪からの力を受ける点5Bを半径の中心とした球面状に膨らんだ形状とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のフロントサスペンションのショックアブソーバを支える自動車のサスペンション支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車のフロントサスペンションでは、図7に示すサスペンション支持構造が知られている。このものでは、サスペンション20を構成するショックアブソーバ21の上端部を固定するために、車体に固定された支持板部22が設けられており、支持板部22の下方にコイルスプリングの上端部を支持する支持金具23が配設されている。支持金具23と支持板部22は3箇所のボルト24で固定されている。その他にも特許文献1に示すものが知られている。
【特許文献1】実開平4−124350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の図7に示すものでは支持板部22の3箇所の部分をボルト24の締結で固定しているので、支持板部22の形状の自由度が無いのみならず、取付のために3箇所の穴を開けるので、剛性確保のためにサスペンションを取り付ける板厚を厚くしたり、材質を変更しなければならず、コストが増大するという問題があった。
【0004】
また、支持板部22におけるショックアブソーバの取付穴が1箇所のものでは、上下方向の強度及び剛性の確保のために、取付穴の周囲にビードを設けているが、取付板4の剛性が十分でない。そこで、支持板部22の板厚を増大すると、質量増大やコストアップが生じる問題がある。また、支持板部22の周囲等に補強部材を追加しても、質量増大やコストアップになるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、質量増大やコストアップを生じさせずに、サスペンションのショックアブソーバの支持板部の形状を自由に形成することができ、しかも、剛性を確保できるサスペンション支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の自動車のサスペンション支持構造は、車体に取り付けられてサスペンションのショックアブソーバ上端部を支える支持板部に、前記ショックアブソーバの上端部を一点で支持する取付穴を設けると共に、該取付穴の周囲に前記ショックアブソーバを中心として上方に凸となる膨出部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる自動車のサスペンション支持構造によれば、ショックアブソーバの上端部を支持する支持板部がショックアブソーバ部上端部を一点で支持し、その取付穴の周りが取付穴を中心として球面状に膨らんでいるので、ショックアブソーバから受ける荷重を膨出した部分の広い面で支えることが出来、支持板部の剛性が向上する。このため、支持板部の形状を自由に形成でき、部品重量の軽減化や製造コストの低廉化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態にかかる自動車のサスペンション支持構造を図面に基づいて説明する。図6はこの実施の形態にかかるサスペンション支持構造を適用した自動車のエンジンルーム側の構造を示す。自動車1のエンジンルーム2の左右側壁部分にはストラットハウジング3がそれぞれ形成されており、ストラットハウジング3の車体後部側の部位はワイパー駆動用モーター機構等を格納するカウルトップパネル4に連なっている。ストラットハウジング3の上部にはサスペンションの図2に示すショックアブソーバ5の上端部を支持する支持板部6が固定されている。支持板部6の左右の縁部はエンジンルーム2の側壁部7に固定されている。
【0009】
支持板部6は、図1に示すように、ストラットハウジング3の外周側部上端部に固定される膨出部8と、カウルトップパネル4側に突出してカウルトップパネル4にも固定される連結板部9とを有する。膨出部8と連結板部9の周りには固定枠部6Sが形成されている。この固定枠部6Sはストラットハウジング3の上端部に固定される。膨出部8は、上方に凸となる略球面体の一部を形成するように膨らんでおり、膨出部8が形成する球面体の中心部は、ショックアブソーバ5の中心線5A上であって車輪からの入力軸上の入力点5Bに設定されている。これにより、膨出部が効率的に車輪からの入力を受けることができる。
【0010】
連結板部9も同様に上方に凸となるように突出しており、図2、図3に示すように、アーチ型断面形状を有する。連結板部9は、膨出部8と連なっており、カウルトップパネル4に連なって固定される。
【0011】
膨出部8には、更に上方に円錐台状に突出する突出部10を備えている。突出部10の上部には、ショックアブソーバ5の上端部を通す円形の取付穴11が形成されている。取付穴11の中心にショックアブソーバ5の中心線5Aが位置する。突出部10と膨出部8の境界部分8Aと、取付穴11は、平面的にショックアブソーバ5を中心として同心円を形成するように構成されており、突出部10もまた小さな球面体の一部を形成している。
【0012】
突出部10の裏面にはサポートゴム12が設置される。図2の13はサスペンションのコイルスプリングであり、コイルスプリング13の上端部は支持金具14に支えられ、支持金具14にはショックアブソーバ5の上部を固定する固定金具15が固定されている。固定金具15と突出部10の間にはサポートゴム12が配備されている。ショックアブソーバ5の上端部は固定用の支持金具16に通されており、支持金具16の上にナット17が締結されている。ショックアブソーバ5の上部の軸回りには筒状のスペーサ18が通されており、ナット17とスペーサ18とで、固定金具15及び支持金具16を固定している。支持金具16は膨出部8の上部に突設された突出部10の取付穴11の開口縁部に接触している。
【0013】
膨出部8と連結板部9との間には、図5に示すように、段差が設けられている。境界部分8Aと膨出部8と連結板部9との間は傾斜面9Aとされている(図4(a)参照)。また、図4(b)に示すように、この傾斜面9Aが鉛直線となす角度Bと、連結板部9が水平面となす角度Cは、膨出部8の境界部分8Aのラインが前述の入力点5Bを中心とする同心円状に近づくように設定され、傾斜部分9Aがなだらかに膨出部8と連結板部9とを連続させている。
【0014】
なお、図3の支持板部6’は図1のIII−III線に沿ったアーチ型断面形状を有するものであり、図3の支持板部6’は図1の支持板部6に相当し、図3のサポートゴム12’は図2のサポートゴム12に相当し、支持金具16’は図12の支持金具16に相当し、ナット17’は図2のナット17に相当する。図3に示す支持金具6’においても、支持金具6’は膨出部8と連結板部9並びに固定枠部6Sを有し、膨出部8と連結板部9との間には、図5と同様に、段差が設けられ、膨出部8と連結板部9との間はなだらかに傾斜している。
【0015】
以上説明したように、この実施の形態のサスペンション支持構造では、ショックアブソーバ5の上端部を支える支持板部6が、上方に球面状に膨らむ膨出部8とカウルトップパネル4に連なる連結板部9を備えており、また、膨出部8に突出部10を形成し、この突出部10に取付穴11を形成し、更に、この取付穴11にショックアブソーバ5の上端部を取り付けている。膨出部8はショックアブソーバ5の車輪からの力を受ける点5Bを半径の中心とした球面状に膨らんだ形状とされている。
【0016】
このように、支持板部6が球面状に膨らんでいるので、車輪の上下動によりショックアブソーバ5に作用する上方に突き上げる荷重を突出部10及び膨出部8の広い面で支えることが出来、支持板部6の剛性が向上する。この剛性アップは従来の構造と比べて7割以上である。
【0017】
特に、上述の実施の形態では、ショックアブソーバ5を突き上げる力は突出部10と膨出部8の二段構成の球面体で構成されているので、膨出部8の剛性が一層向上しているのみならず、連結板部9の上方に凸となる弓状の弧を描くアーチ型の断面形状を有するので、路面からの荷重を受ける剛性が向上する。このように、支持板部6の剛性が全体として向上しているため、支持板部6の形状を自由に形成できるのみならず、部品重量の軽減化や製造コストの低廉化を図ることができる。
【0018】
なお、上記の実施の形態は本発明の一例に過ぎず、本発明の主要構成要素を備えるものであれば、本発明に含まれるものであり、上述の最良の形態に示されるもに限定されないのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の最良の実施の形態にかかる支持板部の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる支持板部を用いたサスペンションの上部構造を示す断面図である。
【図3】図2と異なる支持板部の断面図であり、図1の例のIII−III線に相当する断面図である。
【図4】(a)は図1の支持板部の平面図であり、(b)は(a)図のB−B線断面図である。
【図5】図4の支持板部の側面側から見た斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかるサスペンション構造を用いた自動車のエンジンルームの斜視図である。
【図7】従来のサスペンション構造の斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 自動車
2 エンジンルーム
3 ストラットハウジング
4 カウルトップパネル
5 ショックアブソーバ
6 支持板部
7 エンジンルームの側壁部
8 膨出部
9 連結板部
10 突出部
11 取付穴
12 サポートゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられてサスペンションのショックアブソーバ上端部を支える支持板部に、前記ショックアブソーバの上端部を一点で支持する取付穴を設けると共に、該取付穴の周囲に上方に凸となる膨出部を設けたことを特徴とする自動車のサスペンション支持構造。
【請求項2】
前記膨出部は前記ショックアブソーバの中心線上にある車輪からの入力軸上の入力点を中心とする球面の一部で形成される事を特徴とする請求項1記載の自動車のサスペンション支持構造。
【請求項3】
前記サスペンション取付板部は、前記車体のカウルトップ部に固定される連結板部を備えていることを特徴とする請求項1、2何れか記載の自動車のサスペンション支持構造。
【請求項4】
前記連結板部と前記取付板部とが上方に凸となるアーチ型断面部で連なっており、前記膨出部と前記連結板部との間に、前記膨出部が上に位置し、前記連結板部が下に位置するように、傾斜しており、前記アーチ型断面部と前記膨出部との境界部分が突起のないなだらかな斜面で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか記載の自動車のサスペンション支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−161186(P2007−161186A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363048(P2005−363048)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】