説明

自動車のシェル構造用の安全装置

本発明は、ホイールアーチから外側のシェル構造に沿って運転方向(F)に延びる長手方向側面部材(5)と、進行方向に対してホイールアーチ(4)の前方に配置され、かつクロスメンバ(12)及びエネルギー吸収部材を備えるバンパー構造(7)と、を含む自動車のシェル構造の安全装置に関するものである。本発明の目的は、自動車のシェル構造用の安全装置を提供することにあり、これにより乗客の安全性が高まる。前記目的は、前記エネルギー吸収部材がクロスメンバ(12)とホイールアーチ(4)との間に延在するように、クロスメンバ(12)上にホイールアーチ(4)の高さに配置することで達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の、自動車のシェル構造用の安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のシェル構造用の一般的な形式の安全装置は、例えば、特許文献1で知られている。自動車のシェル構造用の公知の安全装置は、自動車の長手方向に延びる長手方向部材、及び、またバンパー構造に含まれるクロスメンバを有している。自動車の衝突の際に衝突エネルギーを吸収することを目的として、変形要素がクロスメンバと長手方向部材との間に配置されている。
【0003】
さらに、特許文献2から自動車のシェル構造が知られており、この特許では、既存の中空空間は、例えば、洗浄液容器などの部品をエンジン室から配置することに使われるものである。このような中空空間はエンジン室の隔壁、及び、前記隔壁に本質的に平行に延びるフェンダーの外側金属板とによって垂直方向に形成されている。水平方向には、この中空空間は、スプラッシュガードと、また、バンパー構造の延長部とによって制限されている。洗浄液用容器は中空空間に配置されている。
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第198 12 701 A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0 067 407 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、自動車の乗客の安全性を高める自動車のシェル構造用の安全装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する自動車のシェル構造用の安全装置を用いて本発明により達成される。
【0007】
本発明は、バンパー構造のクロスメンバに配置され、特に、クロスメンバとホイールアーチとの間に延びるエネルギー吸収部材により特徴づけられる。エネルギー吸収部材は、ホイールアーチの境界を少なくとも部分的に定めると考えられる。エネルギー吸収部材の本発明による構造は、自動車用シェル構造内に付加的な力の伝達経路を開き、この経路はクロスメンバからエネルギー吸収部材を介して車輪に延び、また、車輪の後方に伸びる長手方向側面部材に、車輪前方から延びる。付加的な力の伝達経路を開くことは広範囲な利点を有する。衝突の際には、エネルギー吸収部材は初期の段階で車輪を押し付ける。この結果、車輪は長手向側面部材に、より早く押し付けられる。これにより、衝突の際に車輪が内側に回転することが回避され、したがって、より大きなエネルギー吸収に寄与することになる。
【0008】
自動車が障害物に衝突する際には、自動車は突然減速し、これにより、移動している自動車のエネルギーは突然に散逸される。もし自動車が剛体でなかったならば、自動車の減速、及び、それに伴うエネルギーの散逸は瞬時に起きるのではなく、ある期間を経て起きる。もし自動車の減速を時間に対してプロットしたならば、いわゆる減速もしくは加速特性曲線(自動車の負の加速)が得られる。この減速特性曲線は自動車の構造に依存するものであり、また、自動車の前面の領域を考えた場合には、そこに配置されているパワートレインに依存するものである。それゆえ、どの自動車も独自の減速特性曲線を有している。自動車の乗客が受ける力に関しては、もし減速ができるだけ早く起こり、一定の大きさで継続するならば、それは特に好ましいことである。このようにすれば、減速のピーク、言い換えれば、自動車の乗客が強い力を受けることになる、非常に短時間での大きな減速が避けられる。
【0009】
もし衝突に対する抵抗を与えない中空空間が自動車に装備されていれば減速値は小さくなる。このことはエネルギーがこのような中空空間では散逸されないという事実に基づいている。もし、例えば、そのような中空空間が自動車の前方領域にあるエンジンの前方に配置されているならば、衝突の後の自動車の主要な減速は、エンジンの前側の中空空間が圧縮され、クロスメンバ、エンジン、およびシェル構造のブロック形成が生じた時にはじめて起きる。このことは、ほとんどのエネルギーが、より短い経路を経て、非常に短時間に最後でのみ散逸される結果となり、これにより、減速がピークに達し、かくして自動車の乗客に強い力が加わることになる。中空空間が圧縮されている間に、かくして、エネルギーの吸収には利用されない時間が経過する。
【0010】
中空空間を満たすエネルギー吸収部材の本発明による構造、さらに車輪と長手向側面部材とを力の伝達経路に早期に取り込むことによって、初期の段階で、力は散逸され、またエネルギーは変換されることが可能となる。この結果、減速特性曲線はより早期に上昇し、それによってエネルギーの散逸過程での力のピークを回避することができる。この結果、ダッシュボードの侵入が効果的に防止される。これに加えて、いわゆる外側の力の伝達経路を生成することは、自動車の前端部におけるエネルギーが、選択される力の伝達経路が中心を介する経路のみではないので、すなわち、内部長手方向部材とドライブトレインを介するので、より均一に散逸され得るということを意味する。
【0011】
エネルギー吸収部材は少なくとも部分的に中空となるように設計することも考えられる。これは、例えば、流体を収容する容器として役立ち得るという利点を有している。
【0012】
また、エネルギー吸収部材は所定の力を超えたときにエネルギーを吸収するように設計することも考えられる。エネルギーの吸収は、一般的に、対応する部品の変形をもたらす。ここで記載されたエネルギー吸収部材の形状は、エネルギーを、エネルギー吸収部材を経て、所定の力に達するまで伝達することを可能にするものであり、これにより、エネルギーはエネルギー吸収部材の後方に配置される車輪を長手方向側面部材に対して押すことに使われることができる。エネルギー吸収に伴う変形は車輪が長手方向部材に達した時に初めて起き得る。
【0013】
エネルギー吸収部材を洗浄液などの作動物質の容器として設計することも考えられる。このことは、エネルギー吸収部材が、エネルギー吸収と受入れ作動媒体という二つの機能を同時に果たすという点で有利であり、その結果、自動車の前橋部においてかなりの収納空間を省くことができる。いくつかの機能を一つの部品に統合することはまた製造コストの面からも有利である。
【0014】
作動媒体の容器はエネルギー吸収として役立つ付加的な構造を有し得る。この付加的な構造は容器の内部もしくは外側に配置することができる。容器の内部に配置することは収納空間の面から有利である。
【0015】
本発明は、図面に図示される例示的な実施形態を用いて以下に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
自動車のシェル構造における前端部の左側は立体的に図1にて図示される。シェル構造に加えて、外側覆いの一部、すなわちフロントフード1及びフェンダー2が図示されている。ホイールアーチ4の中に配置されるフロント車輪3も図示されている。
【0017】
長手方向側面部材5は、進行方向(矢印F)から分かるように、ホイールアーチ4の後方から続いている。長手方向側面部材はホイールアーチ4から外側のシェル構造に沿って自動車の長手方向に延びている。長手方向中央部材6も、車輪の後方に延びており、図示されてはいない車輪軸の上方に見ることができる。自動車の前端部からはじまる長手方向中央部材6も、同様に自動車の長手方向に延びている。バンパー構造7は長手方向中央部材6の前方に面する端部に設けられており、このバンパー構造は図2を参照して更に詳細に記載される。
【0018】
容器8はバンパー構造7上に配置される。容器8はバンパー構造7とフロント車輪3との間に延びるように配置される。この容器はフロント車輪3からある距離をもって配置されており、この結果、ハンドル操作の際にフロント車輪が行う運動がそこなわれることはない。
【0019】
図1による前端部の半分は図2では下側から図示される。ホイールアーチ4の中に配置されるフロント車輪3も本図に見る事ができる。長手方向側面部材5はホイールアーチ4の後方につながる。長手方向中央部材6も同様にホイールアーチ4と隣り合って、長手方向に延びており、統合部材9は長手方向中央部材上に配置されている。統合部材はホイールサスペンション11を支持している。
【0020】
バンパー構造7は進行方向(矢印F)から分かるように、長手方向中央部材6の前面端部に配置されている。このバンパー構造は、クロスメンバ12、及び、より詳細には図示されていないクラッシュボックス13を有している。また、このクラッシュボックスを介してクロスメンバは長手方向中央部材に接続されている。容器8は従来の固定方法を介してクロスメンバ12に固定されている。容器8を自動車のシェル構造の他の適切な部材に固定することも考えられる。
【0021】
容器8は図3に図示される。容器は、図示されていない固定部材を受け入れるために、孔15が空いた二つの突起部14を有している。開口部16も装着されており、この開口部により容器8に収納されるべき流体は充填されるか除去されることができる。この容器の外部構造体にはリブ17が設けられており、これによりこの容器の変形挙動を決定することができる。容器8は衝突の場合には異なった挙動を示し、そしてこれに相応して、設けられているリブ17の長さと幅及び/又はリブ17の数に依存したエネルギーを吸収することができる。
【0022】
以下の本文にて、自動車の衝突の際に自動車に伝わる衝突力Aがどのようにして自動車のシェル構造に伝わるかを記載する。衝突力Aは、前方の衝突の際に、初期にバンパー構造7のクロスメンバ12に伝えられる。最初の力の伝達経路は、それゆえ、クラッシュボックス13を介して長手方向中央部材6へと延びている。更なる外力の伝達経路はバンパー構造7のクロスメンバ12から容器8へと延びている。容器8は、バンパー構造7によって、最初はフロント車輪3に接触するまで後方に押される。容器8は非常に堅く設計されているので、次の段階はフロント車輪3の長手方向側面部材への変形である。外力の伝達経路が閉じられた瞬間に、容器8の変形が対応するエネルギーの吸収を伴って生じる。
【0023】
一方、付加的な横方向の力の伝達経路は意図された方法でエネルギーを吸収する。さらに、前側車輪は、早期に長手方向側面部材に押し付けられ、この結果、第一に、前側車輪が内側に回転する可能性がかなり低減され、第二に、付加的な力の伝達経路が早期に閉じられ、この経路を介してエネルギーは散逸され得る。エネルギーの早期の散逸は力のピークの減少に貢献するので、衝突エネルギーの早期の散逸には、特に、減速特性曲線に好ましい効果をもたらす。この減少は自動車の乗客が受ける力に好ましい効果をもたらす。自動車の前端部におけるエネルギーの早期でかつ付加的な散逸は、ダッシュボードの侵入を低減するという利点をさらに有している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】自動車のシェル構造の前端部の横からの三次元的な図を示す。
【図2】図1による自動車のシェル構造の半分の下からの図を示す。
【図3】本発明による容器の三次元的な図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のシェル構造用の安全装置であって、
ホイールアーチ(4)から外側のシェル構造に沿って進行方向(F)に延びる長手方向側面部材(5)と、
前記ホイールアーチ(4)の前記進行方向(F)の前方に配置され、クロスメンバ(12)とエネルギー吸収部材を有するバンパー構造(7)とを有し、
前記エネルギー吸収部材は、前記クロスメンバ(12)と前記ホイールアーチ(4)との間に延在するように、前記バンパー構造(7)の前記クロスメンバ(12)上に前記ホイールアーチ(4)の高さに配置されることを特徴とする自動車のシェル構造用の安全装置。
【請求項2】
前記エネルギー吸収部材が少なくとも部分的に中空となるように形成されることを特徴とする、請求項1に記載の安全装置。
【請求項3】
前記エネルギー吸収部材は所定の力を超えたときにエネルギーを吸収するように設計されることを特徴とする、請求項1あるいは2に記載の安全装置。
【請求項4】
前記エネルギー吸収部材は作動媒体用の容器(8)として設計されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項5】
前記容器(8)はエネルギー吸収用の付加的な構造を有することを特徴とする、請求項4に記載の安全装置。
【請求項6】
前記付加的な構造は前記容器(8)に一体化されることを特徴とする、請求項5に記載の安全装置。
【請求項7】
前記付加的な構造は、前記容器(8)の外側に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−500651(P2007−500651A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529699(P2006−529699)
【出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004299
【国際公開番号】WO2004/106146
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】