説明

自動車のシール部材

【課題】フェンダパネルの変形を妨げることのないシール部材を提供する。
【解決手段】シール部材1は、シール板11と、シール板11の周囲に設けたスポンジ部12とを備え、シール板11は、上縁部が、従来のシール部材におけるシール板より低い位置、詳細には、少なくともフェンダパネル2のストローク範囲より下方、好ましくはフードパネル5のストローク範囲及びフェンダパネル2とフェンダエプロンアッパメンバ4との連結部24より下方に位置するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフェンダパネルの内側に配設されるシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の自動車のフェンダ周辺の構造を示す斜視図である。自動車のフェンダ周辺の構造は、特許文献1から3に詳説されている。自動車のフェンダパネル2は、下部においてフェンダエプロン3に固定され、上部周辺の連結部24においてフェンダエプロンアッパメンバ4に固定されている。フェンダパネル2の内面とフェンダエプロン3とフェンダエプロンアッパメンバ4との間には、車両前後方向に長い空間Sが存在する。この空間Sには、熱や騒音を遮断するためにシール部材101が配設される。
【0003】
図4は図1のB−B断面を示す。従来のシール部材101は、フェンダパネル2の内側に、フェンダパネル2に対し垂直に配設され、フェンダパネル2の内面とフェンダエプロン3とフェンダエプロンアッパメンバ4とに密着することで、空間Sを車両前後方向に仕切っている。シール部材101は、シール板111と、このシール板111の周囲に設けられたスポンジ部112とを備えている。
【0004】
シール板111は樹脂製の板部材であり、スポンジ部112に比べると剛性が高い。フェンダパネル2の内面とフェンダエプロン3の上面とフェンダエプロンアッパメンバ4の外面とのなす断面形状に沿って、この断面形状より一定厚み分だけ内側にオフセットした外縁形状を有する。シール板111は、車両内側方向に突出した固定部111aを備えている。固定部111aは、一対のツメ部111bを備え、フェンダエプロンアッパメンバ4に穿設された固定孔41に固定部111aが嵌合し、ツメ部111bにより抜けることを防ぐことができる。
【0005】
スポンジ部112はスポンジ状の弾性部材であり、シール板111の外縁の周囲に一定の厚みで設けられ、シール板111と各板金部材との隙間を充填する。このスポンジ部112が弾性変形することにより、各板金部材の形状バラツキに対応すると共にシール効果を高めることができる。そのため、スポンジ部材112の厚みは、各板金部材の形状バラツキに対応することができる程度であり、シール板111の周縁のどの位置においても一定である。
【特許文献1】特開2008−105548号公報
【特許文献2】特開2007−326454号公報
【特許文献3】特開2007−106366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フェンダパネル2やフードパネル5には、衝突時、上方からの衝撃に対して下方へ変形し、落下物への衝撃を吸収するため、一定の変形範囲、いわゆるストローク範囲が設けられている。また、このストローク範囲を確保するため、特許文献1から3に開示されているように、様々な工夫がなされている。しかしながら、上記シール板は、上下方向に対して平行に設けられているため、上下方向への反力を生じて、フェンダパネルの変形を妨げてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、フェンダパネルの変形を妨げることのないシール部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のシール部材は、シール板と、このシール板とフェンダパネル内面との間に配設されたスポンジ部とを備え、シール板の上縁が、フェンダパネルのストローク範囲より下方に位置する。
【0009】
上記構成において、シール板の上縁は、フェンダパネルと車体との連結部よりも下に位置し、さらにフードパネルのストローク範囲より下方に位置することが望ましい。
【0010】
スポンジ部材は、少なくとも一部がシール板の上縁よりも上に介在する上部スポンジ部材と、他の部分に介在する下部スポンジ部材とを含むことが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシール部材によれば、シール板の上縁がフェンダパネルのストローク範囲より下方に位置するから、フェンダパネルのストローク、すなわち変形を妨げることがない。
【0012】
シール板の上縁が、フェンダパネルと車体との連結部よりも下に位置し、さらにフードパネルのストローク範囲より下方に位置する場合には、さらに変形範囲を広く確保することができる。
【0013】
スポンジ部材を、少なくとも一部がシール板の上縁よりも上に介在する上部スポンジ部材と、他の部分に介在する下部スポンジ部材とで構成し、それぞれのスポンジ部材の硬度を変えることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態の自動車のフェンダ周辺の構造を示す斜視図である。従来の構造と同様の部材には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
図2は図1のA−A断面である。シール部材1は、衝撃を吸収して歩行者を保護すると共に、熱や騒音を遮断するために、フェンダパネル2の内側において、フェンダパネル2に対し垂直、すなわち車両前後方向に対し垂直に配設され、フェンダパネル2の内面とフェンダエプロン3とフェンダエプロンアッパメンバ4とに密着することで、これらの板金部材により画成される空間Sを車両前後方向に仕切っている。シール部材1は、シール板11と、このシール板11の周囲に設けられたスポンジ部12とを備えている。
【0016】
シール板11は、樹脂製の板部材であり、スポンジ部12に比べると剛性が高い。シール板11は、上縁部を除き、フェンダパネル2内面とフェンダエプロン3上面とフェンダエプロンアッパメンバ4の外面とのなす断面形状に沿って、この断面形状より一定厚み分だけ内側にオフセットした外縁形状を有する。
【0017】
図2に示すように、落下物によりフェンダパネル2及びフードパネル5に対し矢印Cで示す荷重が入力されると、フェンダパネル2及びフードパネル5は、二点鎖線で示すフェンダパネル2s及びフードパネル5sのように変形する。この変形の際にフェンダパネル2及びフードパネル5が通過する範囲を変形範囲もしくはストローク範囲といい、フェンダパネル2及びフードパネル5のストローク範囲の下端はおよそフェンダパネル2とフェンダエプロンアッパメンバ4との連結部24ほどの高さである。
【0018】
シール板11は、上縁部が、従来のシール部材におけるシール板より低い位置、詳細には、少なくともフェンダパネル2のストローク範囲より下方、好ましくはフードパネル5のストローク範囲及びフェンダパネル2とフェンダエプロンアッパメンバ4との連結部24より下方に位置する。このように構成されることにより、フェンダパネル2が2sの位置まで変形し、フードパネル5が5sの位置まで変形した場合にも、シール板11がこれらの変形を妨げることがない。また、フェンダパネル2及びフードパネル5は、多くの場合同時に、フェンダパネル2とフェンダエプロンアッパメンバ4との連結部24ほどの高さまで下方変形するところ、シール板11の上縁がフードパネル5のストローク範囲及びフェンダパネル2とフェンダエプロンアッパメンバ4との連結部24より下方に位置することで、これらの変形を妨げることもない。
【0019】
シール板11は、従来のシール部材同様、車両内側方向に突出した固定部11aを備えている。固定部11aは、一対のツメ部11bを備え、フェンダエプロンアッパメンバ4に穿設された固定孔41に固定部11aが嵌合し、ツメ部11bにより抜けることを防ぐことができる。
【0020】
スポンジ部12は、スポンジ状の弾性もしくは可撓性部材であり、少なくとも一部がシール板11の上縁よりも上に介在する上部スポンジ部材12aと、他の部分に介在する下部スポンジ部材12bとを含む。
【0021】
下部スポンジ部材12bは、シール板11の上部を除く外縁の周囲に一定の厚みで設けられ、シール板11と各板金部材との隙間を充填する。このスポンジ部112が弾性変形することにより、各板金部材の形状バラツキに対応すると共にシール効果を高めることができる。そのため、スポンジ部材12bの厚みは、各板金部材の形状バラツキに対応することができる程度であり、どの位置においても一定である。
【0022】
上部スポンジ部材12aは、少なくとも一部がシール板11の上縁よりも上に介在する。シール板11の上縁が従来のシール板の上縁より低く設定されたことに伴い、従来に比べシール板11の上縁とフードパネルとの間隔が大きくなるから、上部スポンジ部材12aは、この間隔に合わせた大きさ及び形状に形成される。上部スポンジ部材12aは、フェンダパネル2が2sで示す位置まで変形した場合にも、容易に弾性変形するため、この変形を妨げることがない。また、上部スポンジ部材12aと下部スポンジ部材12bとが別々に形成されることにより、それぞれのスポンジ部材の硬度を変えることも可能であり、より容易に弾性変形するようにできることに加え、下部スポンジ部材12bには厚みが一定の汎用のものを利用することができるから、コストを削減することができる。
【0023】
以上のように構成することにより、シール板11,上部スポンジ部材12a及び下部スポンジ部材12bは、フェンダパネル2やフードパネル5の変形を妨げることなく、ストローク範囲を十分に確保することができるから、効果的に落下物への衝撃を吸収することができる。さらに、板金部材のバラツキに対応しつつ、空間Sをシールすることが可能になる。
【0024】
以上説明したように、本発明のシール部材は、シール板とこのシール板とフェンダパネル内面との間に配設されたスポンジ部とを備え、シール板の上縁がフェンダパネルのストローク範囲より下方に位置するものであり、その主旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施することができる。例えば、各部材の素材は適宜のものを利用できるし、上部スポンジ部材と下部スポンジ部材とは別体でなく一体のスポンジ部材として形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態の自動車のフェンダ周辺の構造を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面を示す図である。
【図3】従来の自動車のフェンダ周辺の構造を示す斜視図である。
【図4】図1のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 シール部材
2 フェンダパネル
3 フェンダエプロン
4 フェンダエプロンアッパメンバ
5 フードパネル
11 シール板
11a 固定部
11b ツメ部
12 スポンジ部
12a 上部スポンジ部材
12b 下部スポンジ部材
24 連結部
41 固定孔
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフェンダパネルの内側に配設されるシール部材であって、
シール板と、このシール板と上記フェンダパネル内面との間に配設されたスポンジ部とを備え、
上記シール板の上縁は、上記フェンダパネルのストローク範囲より下方に位置する、シール部材。
【請求項2】
前記シール板の上縁は、前記フェンダパネルと車体との連結部よりも下に位置する、請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記シール板の上縁は、フードパネルのストローク範囲より下方に位置する、請求項1または2に記載のシール部材。
【請求項4】
前記スポンジ部材は、少なくとも一部が前記シール板の上縁よりも上に介在する上部スポンジ部材と、他の部分に介在する下部スポンジ部材とを含む、請求項1から3のいずれかに記載のシール部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−89622(P2010−89622A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261156(P2008−261156)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】