自動車のバッテリを保護するための安全装置
バッテリ(4)を有する自動車(1)における安全装置が開示される。安全装置は、電気自動車、または、いわゆるハイブリッド自動車に特に適するように、自動車(1)が事故に巻き込まれる場合にバッテリ(4)を破損から保護するべく設計される。安全装置は、略硬質な壁部材(9)とシート材料の柔軟層(17)とを備える膨張式ユニット(8)を組み込み、前記壁部材および前記柔軟層は、前記壁部材と前記柔軟層との間に可膨張チャンバ(27)を形成するように互いに固定される。例えばガス発生器等による前記チャンバ(27)の膨張が前記柔軟層(17)を前記バッテリ(4)へ向けて付勢するのに有効であるように、壁部材(9)がバッテリ(4)から離間されて装着されるとともに、柔軟層(17)が壁部材(9)とバッテリ(4)との間に介挿される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用の安全装置に関する。特に、本発明は、例えば電気自動車、または、いわゆるハイブリッド自動車などのバッテリを有する自動車のための安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関により動力が与えられる自動車の環境影響に対する懸案事項が増加していることを考慮すると、現在、環境に有害と考えられる、ガスの形態を成す汚染を生み出す量がより少ないいわゆる「よりクリーンな」自動車を提供することへの関心および重要性が高まっている。したがって、少なくともそれらの動作期間中に電気的に動力が与えられる自動車を提供することが益々一般的になってきている。例えば、充電式バッテリからその動力を引き出す大型電気モータにより駆動される電気自動車を提供することが提案されてきた。
【0003】
また、一般に効率的で「クリーンな」小型の内燃機関と電気モータとを組み合わせる、いわゆる「ハイブリッド」自動車を提供することも提案されてきた。このタイプのハイブリッド自動車は、可能なときあるいは都合が良いときにはいつでも電気モータによって駆動されるように構成されるが、例えば瞬間性能要求が単にモータの性能限界を超えるため、あるいはモータがその動力を引き出すバッテリが不十分な充電を含むことから、モータにより与えられる推進力が瞬間性能要求を満たすのに不十分であるときには内燃機関によって駆動される。そのような構成では、モータは、一般に、燃焼機関が作動しているときにエンジンに接続されるオルタネータから充電するようになっている大容量充電式バッテリからその電力を引き出す。しかしながら、モータがその電力を電気化学バッテリ自体からではなく一連の高容量キャパシタから引き出す電気駆動装置を提供することも提案されてきた。したがって、この特許明細書中で使用される用語「バッテリ」とは、電気化学バッテリ、キャパシタ、スーパーキャパシタ等を含むがこれらに限定されない任意の適した電気エネルギー蓄積装置のことである。
【0004】
したがって、言うまでもなく、前述した一般的なタイプの電気的に動力が与えられる自動車、および、いわゆるハイブリッド自動車は、推進モータにとって十分な電力を与えるために比較的大きなバッテリを必要とする。そのため、そのようなバッテリは、一般に、非常に高い電圧(一般に約300V)となるように且つかなりの量の電気エネルギー(一般に2から10kWh)を蓄積するように構成されており、したがって、特に自動車が衝突に巻き込まれている場合にあるいは内部短絡がバッテリ内で起こっている場合に重大な電気的障害を示す。また、電気自動車またはハイブリッド自動車で用いるのに適するタイプのバッテリは、現在、自動車の全体のコストにかなり寄与する。例えば、そのような自動車のバッテリユニットが自動車の全コストの10から30%を占めることは珍しくない。したがって、自動車が事故に巻き込まれる場合にバッテリユニットを破損しないように保護し、それにより、自動車の安価な修理を手助けすることが望ましい。
【0005】
電気自動車またはハイブリッド自動車の比較的大きなバッテリを、その大きなサイズを最も容易に収容でき且つ自動車の重心全体に悪影響を及ぼさないようにその質量が比較的低く維持される自動車のフロアパンの領域に位置させることは一般的である。また、多くのそのようなバッテリは比較的大きいため、それらのバッテリは、しばしば、自動車の幅のかなりの部分を占める可能性がある。このことは、衝突中に、外部物体との衝突が、バッテリ収納部への侵入とバッテリの局所的な貫入性破損とをもたらす場合があり、それにより、爆発、火災、または、感電死のかなりの危険をもたらす可能性があることを意味する。
【0006】
したがって、これらのリスクに対処する安全装置の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、バッテリを有する自動車用の改良された安全装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書中に記載される発明は、推進モータに給電するために大容量バッテリを有する自動車で用いるのに特に適するが、内燃機関を始動させるために比較的小容量のバッテリが設けられる自動車でも使用できることに留意すべきである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、自動車が事故に巻き込まれる場合に自動車のバッテリを破損しないように保護するための安全装置であって、略硬質な壁部材とシート材料の柔軟層とを備える膨張式ユニットを組み込み、前記壁部材および前記柔軟層が、前記壁部材と前記柔軟層との間に可膨張チャンバを形成するように互いに固定され、前記チャンバの膨張が前記柔軟層を前記バッテリへ向けて付勢するのに有効であるように、壁部材がバッテリから離間されて装着されるとともに、柔軟層が壁部材とバッテリとの間にほぼ介挿される、安全装置が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、バッテリを有する自動車の安全装置であって、略硬質な壁部材とシート材料の柔軟層とを備える膨張式ユニットを組み込み、前記壁部材および前記柔軟層が、前記壁部材と前記柔軟層との間に可膨張チャンバを形成するように互いに固定され、前記チャンバの膨張が前記柔軟層を前記バッテリへ向けて付勢するのに有効であるように、壁部材がバッテリから離間されて装着されるとともに、柔軟層が壁部材とバッテリとの間にほぼ介挿される、安全装置が提供される。
【0011】
前記壁部材は、自動車の構造部品に装着されるのが好ましい。
【0012】
前記壁部材は、バッテリにほぼ隣接する自動車のサイドシルに装着されるのが都合良い。
【0013】
壁部材は金属から形成されるのが好ましい。好ましい構成では、壁部材が金属プレートから形成される。
【0014】
壁部材は塑性変形できるのが有益である。
【0015】
安全装置は、前記バッテリへ向かう前記壁部材の動きが全くない場合には、前記チャンバの膨張時に柔軟層とバッテリとの間に隙間が形成されるように構成されるのが好ましい。
【0016】
前記隙間は5mm以下であるのが有益である。
【0017】
安全装置は、柔軟部材がバッテリの少なくとも一部と衝突するようにバッテリへ向かう前記壁部材の変形または動きが前記隙間を閉じるのに有効であるように構成されるのが都合良い。
【0018】
柔軟層は織布材料から形成されるのが好ましい。
【0019】
安全装置が一対の前記膨張式ユニットを備え、これらのユニットがバッテリの両側に配置されるのが有益である。
【0020】
安全装置が2対の前記膨張式ユニットを備え、一方の対のユニットが自動車のそれぞれの側部に沿って配置され、他方の対のユニットがバッテリの前後にそれぞれ配置されるのが都合良い。
【0021】
一方の対の前記各ユニットは、他方の対の2つのユニット間に接続されるのが好ましい。
【0022】
安全装置は、バッテリをほぼ取り囲むようにバッテリの周囲に配列を成して配置される複数の前記膨張式ユニットを備えるのが有益である。
【0023】
自動車は、前記バッテリから推進力を引き出すように構成される電気自動車またはハイブリッド自動車であることが好ましい。
【0024】
安全装置は、衝突センサからの作動信号の受信時に前記ユニットまたは前記各ユニットを膨張させるように構成されるガス発生器などの少なくとも1つのインフレータを備えることが好ましい。
【0025】
ここで、本発明を更に容易に理解できるように、また、本発明の更なる特徴が分かるように、添付図面を参照して本発明の実施形態を一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】他の自動車と衝突する電気自動車またはハイブリッド自動車を示す概略図である。
【図2】自動車のバッテリに隣接する自動車構造のシル領域を示す横断面図である。
【図3】図2の横断面図にほぼ対応する図であるが、本発明の一実施形態に係る安全装置を示す図である。
【図4】安全装置の壁部材を示す斜視図である。
【図5】シート材料の柔軟層を示す斜視図である。
【図6】互いに固定される図4の壁部材と図5の柔軟層とを示す垂直断面図である。
【図7】自動車のシルに装着されて柔軟層が取り付けられる壁部材の端部領域の拡大斜視図である。
【図8】図7に示される装置の端部に沿う垂直断面図である。
【図9】バッテリに隣接する安全装置の作動を示す概略垂直断面図である。
【図10】衝突による変形後の安全装置を示す概略水平断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る安全装置を示す概略斜視図である。
【図12】バッテリと組み合わせた図11の安全装置の一部を示す概略水平断面図である
【図13】図12の概略水平断面図にほぼ対応する図であるが、作動状態の安全装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで、図1を更に詳しく参照すると、他の自動車2と斜め側方から衝突する電気自動車またはハイブリッド自動車1が示されている。特に、他の自動車2は、3で一般的に示されるように、衝突が自動車1の下側領域で生じるように電気自動車またはハイブリッド自動車1と衝突して示されているのが分かる。
【0028】
電気自動車またはハイブリッド自動車1は、自動車1のフロア領域に装着される、好ましくは図2に更に明確に示されるように自動車の内部フロア5の真下に装着される比較的大きな推進力のあるバッテリ4を組み込む。当業者であれば分かるように、自動車1のシャーシ構造は、一般に、一対のサイドシル6(そのうちの一方だけが図2に示されている)を備えるように構成され、それぞれのサイドシル6は、自動車のそれぞれの側に沿って延びるとともに、自動車のシャーシの構造部品に相当している。図2に示されるように、バッテリ4は、一般に、2つの離間されたサイドシル6間に位置されるとともに、そのサイズに起因して、比較的小さな隙間7のみによってサイドシルから離間される。したがって、言うまでもなく、図1に概略的に示されるタイプの側方衝突の場合、サイドシル6は、衝突する自動車2との衝撃によってへこみあるいはさもなければ変形する場合があり、そのため、自動車バッテリ4へ向けて移動し、場合によりバッテリ4と接触する場合がある。バッテリ4のハウジング内へのシル構造6の侵入は、先に既に説明した理由により極めて危険となり得る。
【0029】
したがって、次に図3を考慮すると、自動車シャーシの側部構造領域が示されており、図1に示されるタイプの側方衝突などの衝突の場合に自動車バッテリ4に対して高い保護レベルを与えるために、自動車1には本発明に係る安全装置が設けられている。特に、安全装置は、その一般的な位置が図3に破線で概略的に示される膨張式ユニット8を組み込む。膨張式ユニット8は、以下に更に詳しく説明される態様でバッテリ4のための高い保護レベルを与えるために、差し迫ったあるいは実際の衝突状況の検出時に膨張するように構成される。
【0030】
膨張式ユニット8はかなり硬質の壁部材9を備え、その好ましい形態が図4に概略的に示される。図示の壁部材9は、略長尺で長方形の形態を成しており、一対の比較的短い端縁10と、比較的長い上縁11と、上縁11とほぼ等しい長さの比較的長い下縁12とを有する。壁部材9は、比較的厚い金属プレートから形成されるのが好ましい。例えば、いわゆる高速度鋼(HSS)または超高強度鋼(UHSS)などの鋼板から壁部材を形成できると想定される。あるいは、壁部材をアルミニウムプレートから形成することができ、または、実際には、他の都合の良い合金から壁部材を形成できる。金属プレートが変形中に局所的に座屈することなく典型的な衝突負荷に耐えるのに十分な厚さを有することが提案される。単なる一例として、UHSSプレートから形成される壁部材9を有する構成では、壁部材が約0.8mmの厚さを有してもよいと考えられる。
【0031】
上下縁11,12の中央領域に沿って、それぞれの長尺チャネル13が設けられる。チャネル13は、両端が開放しており、例えば壁部材を形成するシートメタルを曲げるあるいは折り曲げることにより壁部材9の金属プレートと一体に形成されるのが好ましい。しかしながら、特に例えば壁部材がアルミニウムまたはアルミニウム合金から形成される場合には、チャネルを押出し成形によって一体に形成できることは言うまでもない。
【0032】
図4に示されるように、各チャネル13は長尺な内側凹部14を形成し、各凹部14は、その両端が開放するが、壁部材のそれぞれの縁11,12にほぼ隣接して形成される狭い長尺スロット15に沿っても開放している。
【0033】
壁部材9は、該壁部材の両端において、端縁10とチャネル13の端部との間に、一対の略平坦な端部領域16を形成する。
【0034】
それ自体知られるタイプのガス発生器の形態を成すことが好ましいインフレータGが壁部材9に装着される。図4に示される特定の構成では、インフレータが2つのチャネル13間の略中央位置に装着される。しかしながら、本発明の変形では、インフレータGを別の位置に取り付けることができることは言うまでもない。
【0035】
図5は、最も好ましくは織布(コーティングされあるいはコーティングされない)または他の都合の良い繊維材料などのシート材料から形成される柔軟層17を示している。柔軟層17は、形態が略長尺であり、壁部材9の全長にほぼ相当する長さLを有するが、端縁10により規定される壁部材9の高さよりもかなり大きい幅Wを有する。柔軟層17のそれぞれの長い側縁18には長尺スリーブ19が設けられ、該長尺スリーブ19内にはそれぞれの長尺固定ロッド20が設けられる。各固定ロッド20は、壁部材9に設けられるチャネル13にほぼ等しいあるいはチャネル13よりも僅かに短い長さを有する。図5では、各ロッド20がそれぞれのスリーブ内の略中央位置に位置されるように固定ロッド20がそれぞれのスリーブ19内に挿入されて示される。
【0036】
柔軟層17は、固定ロッド9が凹部14内に受け入れられるように各固定ロッド20を壁部材9のそれぞれのチャネル13内に摺動可能に挿入することによって、その関連する固定ロッド20と共に壁部材9に固定される。したがって、図6に示されるように、固定ロッド20にほぼ隣接する柔軟層17の縁領域21がそれぞれのスロット15内に受けられ、それにより、柔軟層17の主要部が、例えば2つのチャネル13間に形成される空間内に収容されて受けられ得るコンパクトなパッケージ22の状態へと丸められるあるいはさもなければパッケージングされることによって集められてもよい。
【0037】
言うまでもなく、図6に概略的に示して前述した態様で固定ロッド20をそれぞれのチャネル13内に挿入した後、柔軟部材17の端部領域は、緩んでおり、壁部材9に接続されない。したがって、柔軟部材17の端部領域は、それぞれのクランププレート23(そのうちの1つだけが図7に示される)を介して、壁部材9の平坦な端部領域16に対して強固にクランプされる。各クランププレート23は、例えばクランププレート23を貫通して形成されるそれぞれの装着開口25に挿通される複数の固定リベット24(図8に最も明確に示される)などの都合の良い固定装置を介して、壁部材9のそれぞれの端部領域16に固定される。リベット24は、壁部材9の端部領域16とクランププレート23との間に捕捉される柔軟層17の織布を突き抜ける。
【0038】
前述した態様で膨張式ユニット8を製造した後、ユニット8は、図6および図7に示されるように自動車のサイドシル6に装着されてもよい。しかしながら、図8に示されるように、クランププレート23を壁部材の端部領域16に固定するために使用されるリベット24または他の都合の良い固定具が、膨張式ユニット8を自動車のサイドシル6に装着するために使用されてもよいと考えられる。例えば、図8に示されるように、リベット24は、壁部材の端部領域16を貫通し続けた後に、サイドシル6に形成されるそれぞれの装着開口26を貫通して延びてもよい。
【0039】
言うまでもなく、柔軟部材17が前述した態様で壁部材9に固定されると、可膨張チャンバ27が壁部材9と柔軟層17との間に形成される。
【0040】
図9は、自動車バッテリ4から離間される自動車のサイドシル6に対して所定位置に装着される膨張式ユニット8を示している。図9は、安全装置の作動後の膨張式ユニット8を実際に示しており、この場合、ガス発生器Gは、可膨張チャンバ27内に多量の膨張ガスを発生させるために衝突センサから作動信号を受けて作動されている。図示のように、膨張式ユニット8は、柔軟層17が壁部材9とバッテリ4との間にほぼ介挿されるように所定位置に装着されているため、可膨張チャンバ7の膨張は、最初にパッケージングされたパッケージ22が膨張中に展開するにつれて柔軟部材17をバッテリ4へ向けて付勢するのに効果的である。
【0041】
また、図9に示されるように、可膨張チャンバ27内の圧力が増大するにつれて、スリーブ19にほぼ隣接して延びる柔軟層17の側縁領域21、したがって固定ロッド20も、長尺スロット15を通じて引張られ、それにより、固定ロッド20がスロット15に強固に当て付けられ、したがって、スロットがほぼ気密態様で効果的にシールされる。
【0042】
図9は、作動直後、したがって膨張式ユニット8の膨張直後の本発明の安全装置を示している。自動車のサイドシル6の任意の動きあるいは変形の前に示されるこの状態では、柔軟層17が小さい隙間28分だけ自動車バッテリ4から離間されるのが好ましい。隙間は5mm以下程度であることが好ましい。
【0043】
前述した態様での膨張式要素8の膨張は、バッテリ4と自動車の構造的なサイドシル6との間に、バッテリ4にほぼ隣接するガスの加圧クッションをもたらす。図10は、自動車1を巻き込む側方衝突中の後半段階における状況を水平断面で示している。この状態では、衝突している自動車2が自動車の側部構造体6にかなりの変形を引き起こしている。壁部材9は、金属プレートから形成されていることからかなり硬質であるとはいえ、側方衝突で生じ得る力などの激しい力に晒されると、塑性変形しやすい。このように、壁部材9が変形でき、それにより、事故状況から生じるかなりの割合のエネルギーが吸収されて、座屈されたシル6が自動車バッテリ4へと入り込むことが防止される。結果として生じる壁部材9の変形は、柔軟層17とバッテリ4との間の初期隙間28を閉じる役目を果たし、そのため、柔軟層17は、バッテリ4の側部領域に衝突し、それにより、バッテリの形状に適合する。したがって、チャンバ27の膨張により形成される膨張クッションは、衝突により生じる力を膨張式ユニット8内でより均一に分配する役目を果たす。
【0044】
ここで、次に図11から図13を考慮すると、4つの膨張式ユニット8を備える本発明の別の実施形態が示されており、それぞれの膨張式ユニットは前述した形態とほぼ同様の形態を有する。この構成において、膨張式ユニット8は、上から見たときにバッテリをほぼ取り囲むように中央バッテリ4の周囲に略正方形配列で配置される。特に、図示のように、装置は2対の膨張式ユニットを効果的に備えており、一方の対のユニット8は、自動車のそれぞれの側部に沿って、したがってバッテリのそれぞれの側部に隣接して配置され、一方、他方の対のユニット8は、バッテリの前後にそれぞれ配置される。特に、それぞれの膨張式ユニット8は、その端部領域16のうちの一方が90°にわたって曲げられて隣り合うユニットの隣接する平坦な端部領域16にクランプ態様で固定されるように構成されるのが分かる。このようにして、1つのユニット8の曲げられた端部領域16は、図3から図10に関連して前述した実施形態のクランププレート23に効果的に取って代わることができ、したがって、隣り合うユニット8の柔軟層17の端部領域を所定位置にクランプ固定する役目を効果的に果たす。
【0045】
図12は、前述した態様で互いに接続される2つの隣り合う膨張式ユニットを示しており、各膨張式ユニットは膨張前の非作動状態で示されている。逆に、図13は、作動後の配置を示しており、そのため、膨張状態のそれぞれのユニットを示しており、それにより、ユニットの柔軟層17が自動車バッテリ4の方へ付勢されている。
【0046】
以上、本発明の特定の実施形態に関連して本発明を説明してきたが、特許請求の範囲に記載される発明の範囲から逸脱することなく様々な修正または変更を成すことができることは言うまでもない。例えば、ガス発生器Gが壁部材9に取り付けられてもよい燃焼コード等を備えることができると考えられる。
【0047】
この明細書および特許請求の範囲で使用される用語「備える」および「備えている」並びにその変形は、特定の特徴、ステップ、または、整数が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップ、または、整数の存在を排除するように解釈されるべきではない。
【0048】
それらの特定の形態で表され、あるいは、開示された機能を果たすための手段に関して表され、あるいは、開示された結果を得るための方法またはプロセスで表される、先の説明または以下の特許請求の範囲または添付図面に開示される特徴は、必要に応じて、別個に、あるいは、そのような特徴の任意の組み合わせで、本発明をその様々な形態で実現するために利用されてもよい。
【0049】
本発明を前述した典型的な実施形態と併せて説明してきたが、この開示が与えられると、多くの等価な修正および変形は当業者に明らかである。したがって、前述した本発明の典型的な実施形態は例示的で非限定的であると見なされる。前述した実施形態に対する様々な変更は、本発明の思想および範囲から逸脱することなく成すことができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用の安全装置に関する。特に、本発明は、例えば電気自動車、または、いわゆるハイブリッド自動車などのバッテリを有する自動車のための安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関により動力が与えられる自動車の環境影響に対する懸案事項が増加していることを考慮すると、現在、環境に有害と考えられる、ガスの形態を成す汚染を生み出す量がより少ないいわゆる「よりクリーンな」自動車を提供することへの関心および重要性が高まっている。したがって、少なくともそれらの動作期間中に電気的に動力が与えられる自動車を提供することが益々一般的になってきている。例えば、充電式バッテリからその動力を引き出す大型電気モータにより駆動される電気自動車を提供することが提案されてきた。
【0003】
また、一般に効率的で「クリーンな」小型の内燃機関と電気モータとを組み合わせる、いわゆる「ハイブリッド」自動車を提供することも提案されてきた。このタイプのハイブリッド自動車は、可能なときあるいは都合が良いときにはいつでも電気モータによって駆動されるように構成されるが、例えば瞬間性能要求が単にモータの性能限界を超えるため、あるいはモータがその動力を引き出すバッテリが不十分な充電を含むことから、モータにより与えられる推進力が瞬間性能要求を満たすのに不十分であるときには内燃機関によって駆動される。そのような構成では、モータは、一般に、燃焼機関が作動しているときにエンジンに接続されるオルタネータから充電するようになっている大容量充電式バッテリからその電力を引き出す。しかしながら、モータがその電力を電気化学バッテリ自体からではなく一連の高容量キャパシタから引き出す電気駆動装置を提供することも提案されてきた。したがって、この特許明細書中で使用される用語「バッテリ」とは、電気化学バッテリ、キャパシタ、スーパーキャパシタ等を含むがこれらに限定されない任意の適した電気エネルギー蓄積装置のことである。
【0004】
したがって、言うまでもなく、前述した一般的なタイプの電気的に動力が与えられる自動車、および、いわゆるハイブリッド自動車は、推進モータにとって十分な電力を与えるために比較的大きなバッテリを必要とする。そのため、そのようなバッテリは、一般に、非常に高い電圧(一般に約300V)となるように且つかなりの量の電気エネルギー(一般に2から10kWh)を蓄積するように構成されており、したがって、特に自動車が衝突に巻き込まれている場合にあるいは内部短絡がバッテリ内で起こっている場合に重大な電気的障害を示す。また、電気自動車またはハイブリッド自動車で用いるのに適するタイプのバッテリは、現在、自動車の全体のコストにかなり寄与する。例えば、そのような自動車のバッテリユニットが自動車の全コストの10から30%を占めることは珍しくない。したがって、自動車が事故に巻き込まれる場合にバッテリユニットを破損しないように保護し、それにより、自動車の安価な修理を手助けすることが望ましい。
【0005】
電気自動車またはハイブリッド自動車の比較的大きなバッテリを、その大きなサイズを最も容易に収容でき且つ自動車の重心全体に悪影響を及ぼさないようにその質量が比較的低く維持される自動車のフロアパンの領域に位置させることは一般的である。また、多くのそのようなバッテリは比較的大きいため、それらのバッテリは、しばしば、自動車の幅のかなりの部分を占める可能性がある。このことは、衝突中に、外部物体との衝突が、バッテリ収納部への侵入とバッテリの局所的な貫入性破損とをもたらす場合があり、それにより、爆発、火災、または、感電死のかなりの危険をもたらす可能性があることを意味する。
【0006】
したがって、これらのリスクに対処する安全装置の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、バッテリを有する自動車用の改良された安全装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書中に記載される発明は、推進モータに給電するために大容量バッテリを有する自動車で用いるのに特に適するが、内燃機関を始動させるために比較的小容量のバッテリが設けられる自動車でも使用できることに留意すべきである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、自動車が事故に巻き込まれる場合に自動車のバッテリを破損しないように保護するための安全装置であって、略硬質な壁部材とシート材料の柔軟層とを備える膨張式ユニットを組み込み、前記壁部材および前記柔軟層が、前記壁部材と前記柔軟層との間に可膨張チャンバを形成するように互いに固定され、前記チャンバの膨張が前記柔軟層を前記バッテリへ向けて付勢するのに有効であるように、壁部材がバッテリから離間されて装着されるとともに、柔軟層が壁部材とバッテリとの間にほぼ介挿される、安全装置が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、バッテリを有する自動車の安全装置であって、略硬質な壁部材とシート材料の柔軟層とを備える膨張式ユニットを組み込み、前記壁部材および前記柔軟層が、前記壁部材と前記柔軟層との間に可膨張チャンバを形成するように互いに固定され、前記チャンバの膨張が前記柔軟層を前記バッテリへ向けて付勢するのに有効であるように、壁部材がバッテリから離間されて装着されるとともに、柔軟層が壁部材とバッテリとの間にほぼ介挿される、安全装置が提供される。
【0011】
前記壁部材は、自動車の構造部品に装着されるのが好ましい。
【0012】
前記壁部材は、バッテリにほぼ隣接する自動車のサイドシルに装着されるのが都合良い。
【0013】
壁部材は金属から形成されるのが好ましい。好ましい構成では、壁部材が金属プレートから形成される。
【0014】
壁部材は塑性変形できるのが有益である。
【0015】
安全装置は、前記バッテリへ向かう前記壁部材の動きが全くない場合には、前記チャンバの膨張時に柔軟層とバッテリとの間に隙間が形成されるように構成されるのが好ましい。
【0016】
前記隙間は5mm以下であるのが有益である。
【0017】
安全装置は、柔軟部材がバッテリの少なくとも一部と衝突するようにバッテリへ向かう前記壁部材の変形または動きが前記隙間を閉じるのに有効であるように構成されるのが都合良い。
【0018】
柔軟層は織布材料から形成されるのが好ましい。
【0019】
安全装置が一対の前記膨張式ユニットを備え、これらのユニットがバッテリの両側に配置されるのが有益である。
【0020】
安全装置が2対の前記膨張式ユニットを備え、一方の対のユニットが自動車のそれぞれの側部に沿って配置され、他方の対のユニットがバッテリの前後にそれぞれ配置されるのが都合良い。
【0021】
一方の対の前記各ユニットは、他方の対の2つのユニット間に接続されるのが好ましい。
【0022】
安全装置は、バッテリをほぼ取り囲むようにバッテリの周囲に配列を成して配置される複数の前記膨張式ユニットを備えるのが有益である。
【0023】
自動車は、前記バッテリから推進力を引き出すように構成される電気自動車またはハイブリッド自動車であることが好ましい。
【0024】
安全装置は、衝突センサからの作動信号の受信時に前記ユニットまたは前記各ユニットを膨張させるように構成されるガス発生器などの少なくとも1つのインフレータを備えることが好ましい。
【0025】
ここで、本発明を更に容易に理解できるように、また、本発明の更なる特徴が分かるように、添付図面を参照して本発明の実施形態を一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】他の自動車と衝突する電気自動車またはハイブリッド自動車を示す概略図である。
【図2】自動車のバッテリに隣接する自動車構造のシル領域を示す横断面図である。
【図3】図2の横断面図にほぼ対応する図であるが、本発明の一実施形態に係る安全装置を示す図である。
【図4】安全装置の壁部材を示す斜視図である。
【図5】シート材料の柔軟層を示す斜視図である。
【図6】互いに固定される図4の壁部材と図5の柔軟層とを示す垂直断面図である。
【図7】自動車のシルに装着されて柔軟層が取り付けられる壁部材の端部領域の拡大斜視図である。
【図8】図7に示される装置の端部に沿う垂直断面図である。
【図9】バッテリに隣接する安全装置の作動を示す概略垂直断面図である。
【図10】衝突による変形後の安全装置を示す概略水平断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る安全装置を示す概略斜視図である。
【図12】バッテリと組み合わせた図11の安全装置の一部を示す概略水平断面図である
【図13】図12の概略水平断面図にほぼ対応する図であるが、作動状態の安全装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで、図1を更に詳しく参照すると、他の自動車2と斜め側方から衝突する電気自動車またはハイブリッド自動車1が示されている。特に、他の自動車2は、3で一般的に示されるように、衝突が自動車1の下側領域で生じるように電気自動車またはハイブリッド自動車1と衝突して示されているのが分かる。
【0028】
電気自動車またはハイブリッド自動車1は、自動車1のフロア領域に装着される、好ましくは図2に更に明確に示されるように自動車の内部フロア5の真下に装着される比較的大きな推進力のあるバッテリ4を組み込む。当業者であれば分かるように、自動車1のシャーシ構造は、一般に、一対のサイドシル6(そのうちの一方だけが図2に示されている)を備えるように構成され、それぞれのサイドシル6は、自動車のそれぞれの側に沿って延びるとともに、自動車のシャーシの構造部品に相当している。図2に示されるように、バッテリ4は、一般に、2つの離間されたサイドシル6間に位置されるとともに、そのサイズに起因して、比較的小さな隙間7のみによってサイドシルから離間される。したがって、言うまでもなく、図1に概略的に示されるタイプの側方衝突の場合、サイドシル6は、衝突する自動車2との衝撃によってへこみあるいはさもなければ変形する場合があり、そのため、自動車バッテリ4へ向けて移動し、場合によりバッテリ4と接触する場合がある。バッテリ4のハウジング内へのシル構造6の侵入は、先に既に説明した理由により極めて危険となり得る。
【0029】
したがって、次に図3を考慮すると、自動車シャーシの側部構造領域が示されており、図1に示されるタイプの側方衝突などの衝突の場合に自動車バッテリ4に対して高い保護レベルを与えるために、自動車1には本発明に係る安全装置が設けられている。特に、安全装置は、その一般的な位置が図3に破線で概略的に示される膨張式ユニット8を組み込む。膨張式ユニット8は、以下に更に詳しく説明される態様でバッテリ4のための高い保護レベルを与えるために、差し迫ったあるいは実際の衝突状況の検出時に膨張するように構成される。
【0030】
膨張式ユニット8はかなり硬質の壁部材9を備え、その好ましい形態が図4に概略的に示される。図示の壁部材9は、略長尺で長方形の形態を成しており、一対の比較的短い端縁10と、比較的長い上縁11と、上縁11とほぼ等しい長さの比較的長い下縁12とを有する。壁部材9は、比較的厚い金属プレートから形成されるのが好ましい。例えば、いわゆる高速度鋼(HSS)または超高強度鋼(UHSS)などの鋼板から壁部材を形成できると想定される。あるいは、壁部材をアルミニウムプレートから形成することができ、または、実際には、他の都合の良い合金から壁部材を形成できる。金属プレートが変形中に局所的に座屈することなく典型的な衝突負荷に耐えるのに十分な厚さを有することが提案される。単なる一例として、UHSSプレートから形成される壁部材9を有する構成では、壁部材が約0.8mmの厚さを有してもよいと考えられる。
【0031】
上下縁11,12の中央領域に沿って、それぞれの長尺チャネル13が設けられる。チャネル13は、両端が開放しており、例えば壁部材を形成するシートメタルを曲げるあるいは折り曲げることにより壁部材9の金属プレートと一体に形成されるのが好ましい。しかしながら、特に例えば壁部材がアルミニウムまたはアルミニウム合金から形成される場合には、チャネルを押出し成形によって一体に形成できることは言うまでもない。
【0032】
図4に示されるように、各チャネル13は長尺な内側凹部14を形成し、各凹部14は、その両端が開放するが、壁部材のそれぞれの縁11,12にほぼ隣接して形成される狭い長尺スロット15に沿っても開放している。
【0033】
壁部材9は、該壁部材の両端において、端縁10とチャネル13の端部との間に、一対の略平坦な端部領域16を形成する。
【0034】
それ自体知られるタイプのガス発生器の形態を成すことが好ましいインフレータGが壁部材9に装着される。図4に示される特定の構成では、インフレータが2つのチャネル13間の略中央位置に装着される。しかしながら、本発明の変形では、インフレータGを別の位置に取り付けることができることは言うまでもない。
【0035】
図5は、最も好ましくは織布(コーティングされあるいはコーティングされない)または他の都合の良い繊維材料などのシート材料から形成される柔軟層17を示している。柔軟層17は、形態が略長尺であり、壁部材9の全長にほぼ相当する長さLを有するが、端縁10により規定される壁部材9の高さよりもかなり大きい幅Wを有する。柔軟層17のそれぞれの長い側縁18には長尺スリーブ19が設けられ、該長尺スリーブ19内にはそれぞれの長尺固定ロッド20が設けられる。各固定ロッド20は、壁部材9に設けられるチャネル13にほぼ等しいあるいはチャネル13よりも僅かに短い長さを有する。図5では、各ロッド20がそれぞれのスリーブ内の略中央位置に位置されるように固定ロッド20がそれぞれのスリーブ19内に挿入されて示される。
【0036】
柔軟層17は、固定ロッド9が凹部14内に受け入れられるように各固定ロッド20を壁部材9のそれぞれのチャネル13内に摺動可能に挿入することによって、その関連する固定ロッド20と共に壁部材9に固定される。したがって、図6に示されるように、固定ロッド20にほぼ隣接する柔軟層17の縁領域21がそれぞれのスロット15内に受けられ、それにより、柔軟層17の主要部が、例えば2つのチャネル13間に形成される空間内に収容されて受けられ得るコンパクトなパッケージ22の状態へと丸められるあるいはさもなければパッケージングされることによって集められてもよい。
【0037】
言うまでもなく、図6に概略的に示して前述した態様で固定ロッド20をそれぞれのチャネル13内に挿入した後、柔軟部材17の端部領域は、緩んでおり、壁部材9に接続されない。したがって、柔軟部材17の端部領域は、それぞれのクランププレート23(そのうちの1つだけが図7に示される)を介して、壁部材9の平坦な端部領域16に対して強固にクランプされる。各クランププレート23は、例えばクランププレート23を貫通して形成されるそれぞれの装着開口25に挿通される複数の固定リベット24(図8に最も明確に示される)などの都合の良い固定装置を介して、壁部材9のそれぞれの端部領域16に固定される。リベット24は、壁部材9の端部領域16とクランププレート23との間に捕捉される柔軟層17の織布を突き抜ける。
【0038】
前述した態様で膨張式ユニット8を製造した後、ユニット8は、図6および図7に示されるように自動車のサイドシル6に装着されてもよい。しかしながら、図8に示されるように、クランププレート23を壁部材の端部領域16に固定するために使用されるリベット24または他の都合の良い固定具が、膨張式ユニット8を自動車のサイドシル6に装着するために使用されてもよいと考えられる。例えば、図8に示されるように、リベット24は、壁部材の端部領域16を貫通し続けた後に、サイドシル6に形成されるそれぞれの装着開口26を貫通して延びてもよい。
【0039】
言うまでもなく、柔軟部材17が前述した態様で壁部材9に固定されると、可膨張チャンバ27が壁部材9と柔軟層17との間に形成される。
【0040】
図9は、自動車バッテリ4から離間される自動車のサイドシル6に対して所定位置に装着される膨張式ユニット8を示している。図9は、安全装置の作動後の膨張式ユニット8を実際に示しており、この場合、ガス発生器Gは、可膨張チャンバ27内に多量の膨張ガスを発生させるために衝突センサから作動信号を受けて作動されている。図示のように、膨張式ユニット8は、柔軟層17が壁部材9とバッテリ4との間にほぼ介挿されるように所定位置に装着されているため、可膨張チャンバ7の膨張は、最初にパッケージングされたパッケージ22が膨張中に展開するにつれて柔軟部材17をバッテリ4へ向けて付勢するのに効果的である。
【0041】
また、図9に示されるように、可膨張チャンバ27内の圧力が増大するにつれて、スリーブ19にほぼ隣接して延びる柔軟層17の側縁領域21、したがって固定ロッド20も、長尺スロット15を通じて引張られ、それにより、固定ロッド20がスロット15に強固に当て付けられ、したがって、スロットがほぼ気密態様で効果的にシールされる。
【0042】
図9は、作動直後、したがって膨張式ユニット8の膨張直後の本発明の安全装置を示している。自動車のサイドシル6の任意の動きあるいは変形の前に示されるこの状態では、柔軟層17が小さい隙間28分だけ自動車バッテリ4から離間されるのが好ましい。隙間は5mm以下程度であることが好ましい。
【0043】
前述した態様での膨張式要素8の膨張は、バッテリ4と自動車の構造的なサイドシル6との間に、バッテリ4にほぼ隣接するガスの加圧クッションをもたらす。図10は、自動車1を巻き込む側方衝突中の後半段階における状況を水平断面で示している。この状態では、衝突している自動車2が自動車の側部構造体6にかなりの変形を引き起こしている。壁部材9は、金属プレートから形成されていることからかなり硬質であるとはいえ、側方衝突で生じ得る力などの激しい力に晒されると、塑性変形しやすい。このように、壁部材9が変形でき、それにより、事故状況から生じるかなりの割合のエネルギーが吸収されて、座屈されたシル6が自動車バッテリ4へと入り込むことが防止される。結果として生じる壁部材9の変形は、柔軟層17とバッテリ4との間の初期隙間28を閉じる役目を果たし、そのため、柔軟層17は、バッテリ4の側部領域に衝突し、それにより、バッテリの形状に適合する。したがって、チャンバ27の膨張により形成される膨張クッションは、衝突により生じる力を膨張式ユニット8内でより均一に分配する役目を果たす。
【0044】
ここで、次に図11から図13を考慮すると、4つの膨張式ユニット8を備える本発明の別の実施形態が示されており、それぞれの膨張式ユニットは前述した形態とほぼ同様の形態を有する。この構成において、膨張式ユニット8は、上から見たときにバッテリをほぼ取り囲むように中央バッテリ4の周囲に略正方形配列で配置される。特に、図示のように、装置は2対の膨張式ユニットを効果的に備えており、一方の対のユニット8は、自動車のそれぞれの側部に沿って、したがってバッテリのそれぞれの側部に隣接して配置され、一方、他方の対のユニット8は、バッテリの前後にそれぞれ配置される。特に、それぞれの膨張式ユニット8は、その端部領域16のうちの一方が90°にわたって曲げられて隣り合うユニットの隣接する平坦な端部領域16にクランプ態様で固定されるように構成されるのが分かる。このようにして、1つのユニット8の曲げられた端部領域16は、図3から図10に関連して前述した実施形態のクランププレート23に効果的に取って代わることができ、したがって、隣り合うユニット8の柔軟層17の端部領域を所定位置にクランプ固定する役目を効果的に果たす。
【0045】
図12は、前述した態様で互いに接続される2つの隣り合う膨張式ユニットを示しており、各膨張式ユニットは膨張前の非作動状態で示されている。逆に、図13は、作動後の配置を示しており、そのため、膨張状態のそれぞれのユニットを示しており、それにより、ユニットの柔軟層17が自動車バッテリ4の方へ付勢されている。
【0046】
以上、本発明の特定の実施形態に関連して本発明を説明してきたが、特許請求の範囲に記載される発明の範囲から逸脱することなく様々な修正または変更を成すことができることは言うまでもない。例えば、ガス発生器Gが壁部材9に取り付けられてもよい燃焼コード等を備えることができると考えられる。
【0047】
この明細書および特許請求の範囲で使用される用語「備える」および「備えている」並びにその変形は、特定の特徴、ステップ、または、整数が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップ、または、整数の存在を排除するように解釈されるべきではない。
【0048】
それらの特定の形態で表され、あるいは、開示された機能を果たすための手段に関して表され、あるいは、開示された結果を得るための方法またはプロセスで表される、先の説明または以下の特許請求の範囲または添付図面に開示される特徴は、必要に応じて、別個に、あるいは、そのような特徴の任意の組み合わせで、本発明をその様々な形態で実現するために利用されてもよい。
【0049】
本発明を前述した典型的な実施形態と併せて説明してきたが、この開示が与えられると、多くの等価な修正および変形は当業者に明らかである。したがって、前述した本発明の典型的な実施形態は例示的で非限定的であると見なされる。前述した実施形態に対する様々な変更は、本発明の思想および範囲から逸脱することなく成すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)が事故に巻き込まれた場合に自動車(1)のバッテリ(4)を破損しないように保護するための安全装置であって、略硬質な壁部材(9)とシート材料の柔軟層(17)とを備える膨張式ユニット(8)を組み込み、前記壁部材および前記柔軟層が、前記壁部材(9)と前記柔軟層(17)との間に可膨張チャンバ(27)を形成するように互いに固定され、壁部材(9)がバッテリ(4)から離間されて装着されるとともに、柔軟層(17)が壁部材(9)とバッテリ(4)との間に実質的に介挿され、前記チャンバ(27)の膨張によって前記柔軟層(17)が前記バッテリ(4)へ向けて動かされる、安全装置。
【請求項2】
前記壁部材(9)が自動車(1)の構造部品(6)に装着される、請求項1に記載の安全装置。
【請求項3】
前記壁部材(9)がバッテリ(4)にほぼ隣接する自動車(1)のサイドシル(6)に装着される、請求項2に記載の安全装置。
【請求項4】
壁部材(9)が金属から形成される、請求項1から請求項3のいずれかに記載の安全装置。
【請求項5】
壁部材(9)が金属プレートから形成される、請求項4に記載の安全装置。
【請求項6】
壁部材(9)が塑性変形できる、請求項1から請求項5のいずれかに記載の安全装置。
【請求項7】
前記バッテリ(4)へ向かう前記壁部材(9)の動きが全くない場合には、前記チャンバ(27)の膨張時に柔軟層(17)とバッテリ(4)との間に隙間(28)が形成されるように構成される、請求項1から請求項6のいずれかに記載の安全装置。
【請求項8】
前記隙間(28)が5mm以下である、請求項7に記載の安全装置。
【請求項9】
柔軟部材(17)がバッテリ(4)の少なくとも一部と衝突するようにバッテリ(4)へ向かう前記壁部材(9)の変形または動きが前記隙間(28)を閉じるのに有効であるように構成される、請求項7または請求項8に記載の安全装置。
【請求項10】
柔軟層(17)が織布材料から形成される、請求項1から請求項9のいずれかに記載の安全装置。
【請求項11】
一対の前記膨張式ユニット(8)を備え、これらのユニット(8)がバッテリ(4)の両側に配置される、請求項1から請求項10のいずれかに記載の安全装置。
【請求項12】
2対の前記膨張式ユニット(8)を備え、一方の対のユニット(8)が自動車(1)のそれぞれの側部に沿って配置され、他方の対のユニットがバッテリ(4)の前後にそれぞれ配置される、請求項11に記載の安全装置。
【請求項13】
一方の対の前記各ユニット(8)が他方の対の2つのユニット(8)間に接続される、請求項12に記載の安全装置。
【請求項14】
バッテリ(4)をほぼ取り囲むようにバッテリ(4)の周囲に配列を成して配置される複数の前記膨張式ユニット(8)を備える、請求項1から請求項13のいずれかに記載の安全装置。
【請求項15】
自動車(1)は、前記バッテリ(4)から推進力を引き出すように構成される電気自動車またはハイブリッド自動車である、請求項1から請求項14のいずれかに記載の安全装置。
【請求項1】
自動車(1)が事故に巻き込まれた場合に自動車(1)のバッテリ(4)を破損しないように保護するための安全装置であって、略硬質な壁部材(9)とシート材料の柔軟層(17)とを備える膨張式ユニット(8)を組み込み、前記壁部材および前記柔軟層が、前記壁部材(9)と前記柔軟層(17)との間に可膨張チャンバ(27)を形成するように互いに固定され、壁部材(9)がバッテリ(4)から離間されて装着されるとともに、柔軟層(17)が壁部材(9)とバッテリ(4)との間に実質的に介挿され、前記チャンバ(27)の膨張によって前記柔軟層(17)が前記バッテリ(4)へ向けて動かされる、安全装置。
【請求項2】
前記壁部材(9)が自動車(1)の構造部品(6)に装着される、請求項1に記載の安全装置。
【請求項3】
前記壁部材(9)がバッテリ(4)にほぼ隣接する自動車(1)のサイドシル(6)に装着される、請求項2に記載の安全装置。
【請求項4】
壁部材(9)が金属から形成される、請求項1から請求項3のいずれかに記載の安全装置。
【請求項5】
壁部材(9)が金属プレートから形成される、請求項4に記載の安全装置。
【請求項6】
壁部材(9)が塑性変形できる、請求項1から請求項5のいずれかに記載の安全装置。
【請求項7】
前記バッテリ(4)へ向かう前記壁部材(9)の動きが全くない場合には、前記チャンバ(27)の膨張時に柔軟層(17)とバッテリ(4)との間に隙間(28)が形成されるように構成される、請求項1から請求項6のいずれかに記載の安全装置。
【請求項8】
前記隙間(28)が5mm以下である、請求項7に記載の安全装置。
【請求項9】
柔軟部材(17)がバッテリ(4)の少なくとも一部と衝突するようにバッテリ(4)へ向かう前記壁部材(9)の変形または動きが前記隙間(28)を閉じるのに有効であるように構成される、請求項7または請求項8に記載の安全装置。
【請求項10】
柔軟層(17)が織布材料から形成される、請求項1から請求項9のいずれかに記載の安全装置。
【請求項11】
一対の前記膨張式ユニット(8)を備え、これらのユニット(8)がバッテリ(4)の両側に配置される、請求項1から請求項10のいずれかに記載の安全装置。
【請求項12】
2対の前記膨張式ユニット(8)を備え、一方の対のユニット(8)が自動車(1)のそれぞれの側部に沿って配置され、他方の対のユニットがバッテリ(4)の前後にそれぞれ配置される、請求項11に記載の安全装置。
【請求項13】
一方の対の前記各ユニット(8)が他方の対の2つのユニット(8)間に接続される、請求項12に記載の安全装置。
【請求項14】
バッテリ(4)をほぼ取り囲むようにバッテリ(4)の周囲に配列を成して配置される複数の前記膨張式ユニット(8)を備える、請求項1から請求項13のいずれかに記載の安全装置。
【請求項15】
自動車(1)は、前記バッテリ(4)から推進力を引き出すように構成される電気自動車またはハイブリッド自動車である、請求項1から請求項14のいずれかに記載の安全装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2013−511126(P2013−511126A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538788(P2012−538788)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051113
【国際公開番号】WO2011/059374
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(510136301)オートリブ ディベロップメント エービー (46)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051113
【国際公開番号】WO2011/059374
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(510136301)オートリブ ディベロップメント エービー (46)
【Fターム(参考)】
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