説明

自動車のブレーキシステムをコントロールするための方法

1つの電気回生ブレーキ、特に1つの発電機(4)と、ブレーキ媒体(B)を介して少なくとも1つのブレーキ圧発生手段によって駆動される多数の油圧摩擦ブレーキ(2)とを備え、ブレーキシステムの減速全体が、摩擦ブレーキ(2)と電気回生ブレーキとの減速割合から成る、自動車のブレーキシステム(1)のための方法では、できるだけ高いブレーキの快適さが可能にされるべきである。このため、本発明によれば、電気回生ブレーキによるブレーキングの際に、ブレーキ媒体(B)をアキュムレータ(12)内へと排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のためのブレーキシステムをコントロールするための、特に多数の摩擦ブレーキと1つの電気回生ブレーキとを有する回生ブレーキシステムをコントロールするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車において回生ブレーキシステムの目的は、ブレーキングの際に調達されるエネルギーの少なくとも一部を車両内に蓄積し、車両を駆動するために再使用することにある。これにより、車両のエネルギー消費量を全体的に低下させ、効率を向上させ、これにより運転をより経済的にすることができる。このため、回生ブレーキシステムを有する自動車は、通常、ブレーキアクチュエータとも呼ばれる種々の様式のブレーキを備える。
【0003】
この場合、通常、普通の自動車から知られているような油圧摩擦ブレーキと、電気回生ブレーキとが使用される。摩擦ブレーキのためのブレーキ圧は、通常の摩擦ブレーキにおけるように、ブレーキ圧発生手段もしくはブレーキペダル運動を介して調達される。電気回生ブレーキは、通常、発電機として形成されており、この発電機を介して、ブレーキ出力全体の少なくとも一部が調達される。得られた電気エネルギーは、例えばオンボードバッテリのような蓄積媒体に蓄積もしくは還元され、自動車を駆動するために適当な駆動機構を介して再使用される。
【0004】
回生ブレーキシステムは、いわゆるシリアルの回生コンセプトとして構成することができ、このコンセプトの場合、発電機によって調達されるブレーキトルクの割合は、できるだけ高くなっている。これに対し、パラレルの回生コンセプト又はいわゆるエンジンブレーキトルクに基づく回生コンセプトも知られており、このコンセプトの場合、ブレーキトルクは、予め設定された割合でブレーキアクチュエータに分割される。更に、これら両ブレーキコンセプトのミックスコンセプトも知られている。全てのシステムに対し、少なくとも調達すべきブレーキトルクの若干の領域において複数のブレーキアクチュエータにより同時にブレーキングが行なわれ、減速全体が、各ブレーキアクチュエータの減速割合から成ることが共通している。
【0005】
基本的に、シリアルの回生ブレーキシステムの場合、いわゆる「x−by−wire」ブレーキシステムが知られている。「x−by−wire」ブレーキシステムの場合、一般的に摩擦ブレーキの割合と発電機の割合へのブレーキエネルギーの分割が行なわれ、この分割は、規定ブレーキトルク、バッテリの充電状態、運転領域、及び発電機の他の特別な特性に依存している。従って、「x−by−wire」ブレーキシステムの場合、ブレーキ圧は、ブレーキエネルギーの分割のために、ブレーキペダルの油圧の影響に依存せずに調達される。
【0006】
これに対して摩擦ブレーキだけを備える通常のブレーキシステムの場合、ブレーキ圧は、ブレーキペダルの位置に依存して構成される。この場合、補助エネルギーを有する又は補助エネルギーを有していないブレーキペダルの位置を介して、摩擦ブレーキによって収容される圧力媒体の圧力が構成される。即ち、ペダルの位置は、自動車のブレーキ特性に対応する。例外は、エレクトリックスタビリティプログラム(ESP)のような電子安全システムの使用とすることができ、このシステムは、ブレーキペダルの位置に依存せずに独立してブレーキ圧を構成するための装置を有することができる。
【0007】
この通常のブレーキ特性と比べ、「x−by−wire」ブレーキシステムのブレーキ特性の場合は、ブレーキペダルの位置が自動車のブレーキ特性と対応しないことが欠点である。従って、例えば、ブレーキの加速を高めている間にブレーキペダルの位置を一定に保ってしまい、これは、運転者にとっては非常に異常なブレーキフィールである。従って、このブレーキシステム特性は、非常に悪いブレーキの快適さを意味する。更に、運転者が、ブレーキ工程の間の異常な、もしくは自動車のブレーキ特性から逸脱するブレーキフィールによって、ブレーキペダルの位置をしばしば変更させられることが可能であり、これは、異常なブレーキフィール以外に、例えばブレーキングの際の運転者の操舵による車両の安全性も低下させてしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の基本にある課題は、高いブレーキの快適さをブレーキシステムによって達成することができるように、1つの電気回生ブレーキ、特に1つの発電機と、多数の摩擦ブレーキとを備えるブレーキシステムをコントロールするための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明によれば、上で説明したブレーキシステムの電気回生ブレーキによるブレーキングの際に、ブレーキ媒体がアキュムレータ内へと排出されることによって解決される。
【0010】
本発明は、電気回生ブレーキもしくは発電機のブレーキトルクが、ブレーキ工程の間に値を変えて使用可能であるという考察から出発する。これは、特に、発電機のような電気回生ブレーキが、その特有の特性によって限定される作動領域を備えることにある。従って、この作動領域は、例えば一定の速度領域及び最大ブレーキトルクに制限される。従って、シリアルの回生ブレーキシステムを実現するために高効率の電気回生ブレーキを利用することができるようにするため、この電気回生ブレーキは、常に油圧摩擦ブレーキと平行に使用することができるのではなく、この電気回生ブレーキに適したその領域でのみ使用することができる。
【0011】
しかしながら、電気回生ブレーキのこのような作動領域の場合、摩擦ブレーキのブレーキ媒体の圧力消費バランスに回避可能な不具合が生じる。何故なら、摩擦ブレーキによる純粋な通常のブレーキングと比べて、得られる加速の減速を考慮した場合、電気回生ブレーキは、ブレーキ媒体の圧力を低下させないか、もしくは運転の際に何ら圧力容積を要求しないので、ブレーキ圧発生手段によって調達された少ないブレーキ圧が、摩擦ブレーキによって低下させられるからである。従って、本発明は、更に、快適なブレーキ特性を得るために、摩擦ブレーキを有する通常のブレーキシステムのブレーキ特性が、電気回生ブレーキのブレーキトルク割合のためにシミュレートされなければならないという考察から出発する。従って、付加的な摩擦ブレーキのブレーキングをシミュレートするために、電気回生ブレーキによるブレーキングの際に、ブレーキ媒体がアクチュエータ内へと排出される。このように、ブレーキ媒体の圧力もしくは圧力容積は低下させられ、これが、更にまたブレーキ圧発生手段に逆作用する。ブレーキ圧発生手段として、補助力を制御することができるブレーキペダルが使用された場合、このブレーキペダルは、電気回生ブレーキによるブレーキングの際に、排出されるブレーキ媒体に応じて沈み込み、これにより、以前支配していたブレーキ圧が生じ、これにより快適なブレーキフィールが生じる。
【0012】
この場合、摩擦ブレーキの場合に生じる相応のブレーキ特性を正確にシミュレートするために、電気回生ブレーキによって調達されるブレーキトルクが、油圧摩擦ブレーキによって単独で調達することができる場合には、有利に、摩擦ブレーキによって低減されるブレーキ媒体の圧力容積が正確に排出される。
【0013】
ブレーキ要求の正確な決定のために、有効に、規定ブレーキトルクは、ブレーキシステムのブレーキペダルを介して決定される。
【0014】
このため、ブレーキペダルは、好ましくはペダルストロークセンサと、ブレーキ圧発生手段もしくはブレーキペダルに通じる油圧ライン内に位置決めされている圧力センサを備える。この場合、圧力センサとペダルストロークセンサとは、高い運転の安全性のために有利に重複させて構成することができる。ストロークセンサによって行なわれるブレーキペダルの位置の決定と、圧力センサを介して得られる、加えられるブレーキペダル圧力とから、規定ブレーキトルクは決定することができる。
【0015】
ブレーキ工程の間にブレーキシステムをコントロールするために、ブレーキ工程は、有利に電子コントロールユニットを介して多数の時間段階に分割され、これら時間段階は、摩擦ブレーキと電気回生ブレーキとのブレーキトルクの分割によって異なる。この場合、電気回生ブレーキが選択された作動領域だけで使用することができるという事実が考慮される。加えて、運転の際に経過を変更することができる電気回生ブレーキの効率を変更する場合、複数の時間的コントロール段階に分割することによって、電気回生ブレーキのブレーキトルク割合を増加又は減少させることができる。従って、段階の分割によって、電気回生ブレーキのブレーキ割合が高いブレーキングは実現することができる。
【0016】
これら段階で、ブレーキ特性に応じたブレーキフィールのためにブレーキ媒体の圧力を調整するために、有効に、コントロールユニットを介したブレーキ工程の間に、摩擦ブレーキの規定ブレーキ圧を調整する第1のコントロールプロセスが実施され、ブレーキシステムによって予め設定されるブレーキ圧発生手段のための力/ストローク−減速曲線を調整するために、ブレーキ圧発生手段に逆作用するブレーキ媒体の圧力を調整する第2のコントロールプロセスが実施される。この場合、考察は、摩擦ブレーキのブレーキトルクの変化が、ブレーキ媒体の圧力の変化を生じさせるので、先ず、摩擦ブレーキの規定ブレーキトルクが調整されるべきであるということである。引き続き、ブレーキ圧発生手段のためのブレーキ媒体の相応の圧力を調整すべきであり、この圧力は、減速特性に応じた圧力とブレーキ媒体の適切な圧力容積とを得るために、好ましくは予め設定される力/ストローク−減速曲線に調整される。これは、得られる圧力と得られる圧力容積とが摩擦ブレーキの規定ブレーキ圧を望まれない変化に導き、目論見通りに同時に、ブレーキ特性を表すブレーキ媒体の圧力もしくは圧力容積が得られ、これが、ブレーキ圧発生手段もしくはブレーキペダルに逆作用するという要求下で行なわれる。
【0017】
ブレーキシステムにおけるこのコントロールプロセスを調整するために、コントロールプロセスによって生じる、基礎にあるブレーキシステムに対する要求は、好ましくはコントロールユニットを介して調整され、ブレーキシステムの状態に応じて、両段階の一方が調整される。
【0018】
ブレーキシステムの段階を調整するために、ブレーキシステムは、既に説明した構成要素以外に、有利に、ブレーキシステムの構成要素を互いに接続する電気制御可能な油圧弁と油圧ラインとを有する油圧ユニットを備える。
【0019】
ブレーキ媒体の圧力を調整する際にブレーキ媒体をできるだけ簡単に油圧弁を介してアキュムレータ内へと排出するために、アキュムレータは、ブレーキシステムの油圧システムと比べて有効に低圧のアキュムレータとして設定されている。ブレーキ媒体をアキュムレータ内へと排出することができるようにするため、圧力差に基づいて、油圧弁が開放されなければならないに過ぎない。
【0020】
摩擦ブレーキの規定ブレーキトルクを変更するため、ブレーキトルクをブレーキ圧発生手段もしくはブレーキペダルを介さずに変更することが、快適なブレーキ特性の目標において必要となり得る。このような要求は、ブレーキ減速要求が一定である場合にブレーキトルクが電気回生ブレーキによって摩擦ブレーキに移される場合に有り得る。従って、油圧ユニットは、好ましくは摩擦ブレーキのためにブレーキ媒体を介して油圧ブレーキ圧を発生させることができる補助エネルギーを有する別のブレーキ圧発生手段を備える。
【0021】
この場合、ブレーキ媒体の圧力を、これにより規定の減速を変更しないために、アキュムレータは、有利に出力側で別のブレーキ圧発生手段と接続されている。摩擦ブレーキに電気回生ブレーキのブレーキトルクを再配分する場合、このために必要なブレーキ媒体の圧力容積は、別のブレーキ圧発生手段を介してアキュムレータから摩擦ブレーキのブレーキ媒体圧力回路もしくは相応の油圧ラインへと送られる。この場合は、即ち、圧力容積だけが変化し、ブレーキ媒体の圧力は変化しない。これにより、第1のブレーキ圧発生手段への影響は、防止される。別のブレーキ圧発生手段を介して、アキュムレータは、ブレーキングの後、アキュムレータの出力側の配設によって同様に再び排出することができる。
【0022】
ブレーキ圧発生手段によって圧力発生プロセスを行なうことができるようにするため、有効に、一方のブレーキ圧発生手段が、補助力で運転されるマスタブレーキシリンダ、特にタンデムマスタシリンダであり、別のブレーキ圧発生手段が、電気制御可能な油圧ポンプ、特にギヤポンプである。
【0023】
ブレーキ行程のため、特に実施すべきコントロールプロセスのために、摩擦ブレーキのブレーキ媒体のブレーキ圧を検出することができるようにするために、摩擦ブレーキに通じる多数の油圧ライン内に、ブレーキ媒体の圧力を測定するための圧力センサが位置決めされている。ブレーキ媒体の圧力の検出を介して、前記のプロセスは、電子制御ユニットを介して計算及び調整することができる。
【0024】
このため、好ましくは、圧力コントロールが油圧弁を介して行なうことができるように、電気制御可能な油圧弁は制御することができる。
【0025】
本発明により得られる利点は、特に非常に快適なブレーキ特性を有する純粋にシリアルの回生ブレーキシステムを提供する可能性にある。最適な場合には、ブレーキ特性は、摩擦ブレーキによる通常のブレーキシステムのブレーキ特性に相当するので、運転者は、最適な場合には、何ら相違に気付かない。ブレーキペダルに逆作用する適当なブレーキ圧を調整することによって、電気回生ブレーキもしくは発電機の高いブレーキトルクは保証することができるので、ブレーキングの際に比較的多くのエネルギーが取り戻され、これにより、自動車の効率が向上する。
【0026】
本発明によって得られる更なる利点は、説明したブレーキシステム及び方法において、ABS及びESPのような電子安全性プログラムを実現させることである。加えて、このシステムによって、いわゆるOHB−V機能を実施することができる。この場合、ブレーキブースタもしくはブレーキ圧発生手段を介して調達される不十分な圧力は、別のブレーキ圧発生手段によって増幅される。
【0027】
付加的に、摩擦ブレーキのブレーキ圧が左右の間で移されることによって、ブレーキペダルに影響を与えることなく横方向の電子ブレーキ配分を実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1〜7を基にして実施例を説明する。
【0029】
全ての図において、同じ部分は、同じ符号を備えている。
【0030】
図2には、自動車のためのブレーキシステム1の原理回路図が図示されている。ブレーキシステム1は、4つの摩擦ブレーキ2以外に、電気エネルギーを発生させるための発電機4も備える回生ブレーキシステム1である。ブレーキシステム1は、純粋にシリアルのブレーキシステム1として設定されており、その際、自動車の高い経済性を達成するために、できるだけ高いブレーキトルクが、発電機4を介して調達されるべきである。
【0031】
これを詳細に説明するために、図1にはブレーキ工程が図示されており、その際、曲線1は、ブレーキペダル6を介して自動車の運転者によって入力される減速要求を、曲線2は、摩擦ブレーキ2のブレーキ媒体の圧力を、時間に依存して図示する。この場合、自動車の一定の初期速度が基本にある。この場合、ブレーキ工程は、5つの段階に分割されている。段階1で、ブレーキペダル6は、強く踏み込まれる。この場合、ブレーキペダル6が未だ完全に操作されない場合に、先ず全ブレーキトルクが発電機4によって調達される。段階2への移行部で、発電機4がブレーキトルクを完全に出すことができる領域を脱するので、段階2では、摩擦ブレーキ2のブレーキトルクの割合は、最終値にまで上昇する。段階3では、自動車の速度は、発電機4が高い効率で作動を開始する領域に下げられるので、摩擦ブレーキ2のブレーキ割合は、0にまで下がる。段階4では、発電機4の最適な作動領域を再び脱するので、摩擦ブレーキ2の割合が再び上昇する。段階5では、ブレーキペダル6が運転者によって放され、摩擦ブレーキ2と発電機4のブレーキトルクは0に下がる。ブレーキ工程のこれらの段階は、電子コントロールユニット28を介して調整され、この電子コントロールユニットは、特に発電機4のブレーキトルクも調整する。
【0032】
摩擦ブレーキ2のためのメインブレーキトルクを調達するために、ブレーキシステム1は、ブレーキブースタを備えており、このブレーキブースタは、補助力を有するタンデムマスタシリンダ8として設定されている。この場合、タンデムマスタシリンダ8によって調達されるブレーキ圧は、油圧ライン10を介してブレーキ媒体Bを摩擦ブレーキ2に転送される。
【0033】
ブレーキシステム1の高い経済性以外に、別の設定の目標は、できるだけ快適なブレーキフィールをブレーキペダル6を介して運転者のために実現することである。このため、発電機4を運転する際には、ブレーキ媒体がアキュムレータ12内に排出することができる。
【0034】
このため相応にブレーキシステム1をコントロールするために、電子コントロールユニット28は、ブレーキシステム1と、特にブレーキシステム1の油圧システムとが、ブレーキ工程の段階に応じてコントロールユニット28により相応の電子制御可能な油圧弁を介して調整することができるように設定されている。それにより、弁14及び16は、無通電で、即ち電気による制御なしで、開放しているのか、閉鎖しているのかが指示されている。SO弁14は、無通電で開放しており、SG弁16は、無通電で閉鎖している。EU弁18は、電子切換弁に相当する。
【0035】
コントロール工程は、ブレーキペダル6の相応の位置と圧力を得るために、摩擦ブレーキ2の規定ブレーキトルクを調整する第1のコントロールプロセスと、ブレーキシステム1によって予め設定されたブレーキ媒体Bのための力/ストローク−減速曲線を調整するために使用される第2のコントロールプロセスとを備える。
【0036】
この場合、入力値及び制御値として、摩擦ブレーキ2の規定ブレーキトルクとブレーキ媒体圧力とが使用される。図2から認めることができるように、先ずブレーキペダル6に位置決めされているストロークセンサ24と、タンデムマスタシリンダ8に通じる油圧ライン10に存在する圧力センサ26とを介して、規定ブレーキトルクが電子コントロールユニット28を介して決定される。摩擦ブレーキ2のブレーキ媒体の圧力は、一方の摩擦ブレーキの油圧ライン内に位置決めされている1つの圧力センサ26を介して得られる。
【0037】
図2から認めることができるように、ブレーキシステム1は、2つのアキュムレータ12と、各摩擦ブレーキ2のために多数の油圧構成要素とを備える。以下で、一方の摩擦ブレーキ2だけにおける上述のブレーキ工程のためのブレーキシステム1のコントロールの経過を説明する。他方の摩擦ブレーキ2のシステムの構成要素は、相応に機能する。この場合、油圧ユニット内のブレーキ媒体Bの変化は、線によって特徴付けられている。
【0038】
ブレーキ工程の段階1では、電子コントロールユニット28を介して、SG弁16が完全に開放され、SO弁14がコントロールされて開放されるので、ブレーキ媒体Bは、摩擦ブレーキ2の油圧ライン10からアキュムレータ12内へと排出される。これを保証するために、アキュムレータ12は、油圧ライン10と比べて低圧のアキュムレータとして構成されている。ブレーキ媒体Bの排出によって、摩擦ブレーキの運転がシミュレートされる。ブレーキペダル6は、排出された圧力容積に応じて沈み込むので、快適な、もしくは走行特性に応じたブレーキフィールが生じる。
【0039】
図3に図示されている段階2において、摩擦ブレーキ2のブレーキトルクを高めるために、ブレーキ媒体Bは、アキュムレータ12から摩擦ブレーキ12の油圧ライン10内に圧送される。このため、モータポンプユニット22が使用され、このモータポンプユニットは、アキュムレータ12の出力側に位置決めされており、コントロールユニットを介して電気制御可能なギヤポンプとして設定されている。摩擦ブレーキ2の相応のブレーキ圧の調整は、SO弁14を介して行なわれる。タンデムマスタシリンダ8内の圧力と、従って加えられているブレーキペダル6の圧力とは、EU弁18によって調整される。図3の線から分かるように、圧力が重複している。余分なブレーキ媒体Bは、SG弁16によってコントロールされてアキュムレータ12内に排出される。
【0040】
段階3は、図4に図示されている。摩擦ブレーキ2のブレーキトルクを軽減するために、SG弁16を介してブレーキ媒体Bがアキュムレータ12内に排出される。この場合、ASR弁20及びSO弁14を適当にコントロールすることによって、タンデムマスタシリンダ8内の圧力が一定に保たれるので、ブレーキトルクの再配分は、ブレーキペダル6に逆作用しない。
【0041】
図5に図示されているブレーキ工程の段階4では、そこでブレーキトルクを高めるために、ブレーキ媒体Bは、アキュムレータ12からモータポンプユニット22によってSO弁14を介して逆に摩擦ブレーキ2の油圧ライン10へと圧送される。この場合、タンデムマスタシリンダ8内のブレーキ媒体の圧力は、SO弁14によって一定に保たれ、余分なブレーキ媒体Bは、SG弁16を介してアキュムレータ12内に排出される。
【0042】
図6に図示されている段階5では、摩擦ブレーキ2の圧力は、SG弁16を介して、即ちブレーキ媒体Bのアキュムレータ12内への排出を介して下げられる。この場合、タンデムマスタシリンダ8内の圧力は、モータポンプユニット22及びASR弁20によって、ペダルストローク及び力/ストローク−減速特性曲線を介して運転者によって決定される圧力に調整される。SO弁14は、タンデムマスタシリンダ8内の圧力よりも高い動圧を調整するので、その場合には、ブレーキペダル6は、その当初の位置に押し戻される。
【0043】
ブレーキペダルの運動を明らかにするために、図7では、線3で、ブレーキペダル6のペダルストロークに依存したペダル力の原理的変化が図示されている。これに対し、同様に、ペダルストロークに依存した減速の原理的変化が線4で図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】1〜5の段階に分割されているブレーキ工程におけるブレーキ要求とホイールブレーキ圧を示す。
【図2】段階1におけるブレーキシステム(1)を示す。
【図3】段階2におけるブレーキシステム(1)を示す。
【図4】段階3におけるブレーキシステム(1)を示す。
【図5】段階4におけるブレーキシステム(1)を示す。
【図6】段階5におけるブレーキシステム(1)を示す。
【図7】ペダル特性曲線を図示するグラフを示す。
【符号の説明】
【0045】
1 ブレーキシステム
2 摩擦ブレーキ
4 発電機
6 ブレーキペダル
8 タンデムマスタシリンダ
10 油圧ライン
12 アキュムレータ
14 SO弁
16 SG弁
18 EU弁
20 ASR弁
22 モータポンプユニット
24 ストロークセンサ
26 圧力センサ
28 コントロールユニット
B ブレーキ媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの電気回生ブレーキ、特に1つの発電機(4)と、ブレーキ媒体(B)を介して少なくとも1つのブレーキ圧発生手段によって駆動される多数の油圧摩擦ブレーキ(2)とを備え、ブレーキシステムの減速全体が、摩擦ブレーキ(2)と電気回生ブレーキとの減速割合から成る、自動車のブレーキシステム(1)のための方法において、
電気回生ブレーキによるブレーキングの際に、ブレーキ媒体(B)がアキュムレータ(12)内へと排出されることを特徴とする方法。
【請求項2】
電気回生ブレーキによって調達されるブレーキトルクが、油圧摩擦ブレーキ(2)によって単独で調達することができる場合には、摩擦ブレーキ(2)によって低減されるブレーキ媒体(B)の圧力容積が正確に排出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
規定ブレーキトルクが、ブレーキシステム(1)のブレーキペダル(6)を介して決定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ブレーキ工程が、電子コントロールユニット(28)を介して多数の時間段階に分割され、これら時間段階が、摩擦ブレーキ(2)と電気回生ブレーキとのブレーキトルクの分割によって異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
コントロールユニット(28)を介したブレーキ工程の間に、摩擦ブレーキ(2)の規定ブレーキ圧を調整する第1のコントロールプロセスが実施され、ブレーキシステム(1)によって予め設定されるブレーキ圧発生手段のための力/ストローク−減速曲線を調整するために、ブレーキ圧発生手段に逆作用するブレーキ媒体(B)の圧力を調整する第2のコントロールプロセスが実施されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
コントロールプロセスによって生じる、基礎にあるブレーキシステム(1)に対する要求が、コントロールユニット(28)を介して調整され、ブレーキシステム(1)の状態に応じて、請求項5に記載の段階が調整されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
ブレーキシステム(1)の摩擦ブレーキ(2)のためにブレーキ媒体(B)を介して油圧ブレーキ圧を発生させるための、ブレーキペダル(6)と接続されている、補助エネルギーを有する又は補助エネルギーを有していないブレーキ圧発生手段と、自動車の運動エネルギーから電気エネルギーを発生させるための電子制御可能な発電機(4)と、電子コントロールユニット(28)と、電気制御可能な油圧弁を有する油圧ユニットと、多数のアキュムレータ(12)と、油圧弁(14,16,18,20)とブレーキ圧発生手段と摩擦ブレーキ(2)とアキュムレータ(12)間の接続を行なう油圧ライン(10)とを備える、特に請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法を実施するための自動車のブレーキシステム(1)において、
ブレーキ圧発生手段によって調達されたブレーキ媒体容積のアキュムレータ(12)内への排出を行なうことができるように、ブレーキシステム(1)が設定されていることを特徴とするブレーキシステム。
【請求項8】
ブレーキシステム(1)が、電子コントロールユニット(12)を介してコントロール可能であることを特徴とする請求項7に記載のブレーキシステム(1)。
【請求項9】
ブレーキシステム(1)のアキュムレータ(12)が、ブレーキシステム(1)の油圧システムと比べて低圧のアキュムレータとして設定されていることを特徴とする請求項7又は8に記載のブレーキシステム(1)。
【請求項10】
油圧ユニットが、摩擦ブレーキ(2)のためにブレーキ媒体(B)を介して油圧ブレーキ圧を発生させるための、補助エネルギーを有する別のブレーキ圧発生手段を備えることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載のブレーキシステム(1)。
【請求項11】
ブレーキシステム(1)のアキュムレータ(12)が、出力側で別のブレーキ圧発生手段と接続されていることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1つに記載のブレーキシステム(1)。
【請求項12】
ブレーキシステム(1)の一方のブレーキ圧発生手段が、補助力で運転されるマスタブレーキシリンダ、特にタンデムマスタシリンダであり、別のブレーキ圧発生手段が、電気制御可能な油圧ポンプ、特にギヤポンプであることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1つに記載のブレーキシステム(1)。
【請求項13】
摩擦ブレーキ(2)に通じる多数の油圧ライン(10)内に、ブレーキ媒体(B)の圧力を測定するための圧力センサ(26)が位置決めされていることを特徴とする請求項7〜12のいずれか1つに記載のブレーキシステム(1)。
【請求項14】
圧力コントロールが油圧弁(14,16,18,20)を介して行なうことができるように、電気コントロール可能な油圧弁(14,16,18,20)が制御することができることを特徴とする請求項7〜13のいずれか1つに記載のブレーキシステム(1)。
【請求項15】
ブレーキシステム(1)のブレーキペダル(6)が、多数のストロークセンサ(24)を備えることを特徴とする請求項7〜14のいずれか1つに記載のブレーキシステム(1)。
【請求項16】
ブレーキシステム(1)が、ブレーキ媒体(B)の圧力を測定するための多数の圧力センサ(26)を備え、圧力センサ(26)が、ブレーキ圧発生手段に通じる油圧ライン(10)内に位置決めされていることを特徴とする請求項7〜15のいずれか1つに記載のブレーキシステム(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−500104(P2007−500104A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530171(P2006−530171)
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050641
【国際公開番号】WO2004/101308
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(399023800)コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト (162)
【Fターム(参考)】