説明

自動車の前部構造

【課題】シールプレートとシュラウドとの組付け性を向上させつつ、バンパビーム直後の隙間を防止でき、シール性の向上を図る自動車の前部構造を提供する。
【解決手段】バンパフェース18の後方で左右のフロントサイドフレーム間を橋渡すように車幅方向に延びるバンパビーム26と、サイド部10S、アッパ部、ロア部10Lから構成され、バンパビーム26の後方に配設されるシュラウド10と、シュラウド10のサイド部10Sから前方に延びてサイド部10Sとバンパフェース18との間の空間を車幅方向に仕切ると共に、バンパビーム26より上方または下方の少なくとも何れか一方に設けられるシールプレート30と、シールプレート30と連続してシュラウド10のサイド部10Sとバンパビーム26との間を左右に仕切るように形成され、かつ、シュラウド10のサイド部10Sをバンパビーム26に取付ける取付け部材26Cと、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バンパビームの後方に配設されるシュラウドと、該シュラウドのサイド部とバンパフェースとの間を左右に仕切るシールプレートと、を備えたような自動車の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンルーム内の左右両側部を車両の前後方向に延びるフロントサイドフレーム(車体フレーム)を設け、これら左右一対のフロントサイドフレーム間を橋渡すように車幅方向に延びるバンパビームを設けて、このバンパビームの後方には、ラジエータを保持するラジエータ保持部を備えたシュラウドを配設し、このシュラウドのサイド部を、その側部の車体に取付けるように構成した自動車の前部構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
上述のシュラウドには熱交換器としてエンジン冷却水(またはクーラント)を走行風で空冷するラジエータが保持される関係上、走行風を適切にラジエータに導入したいという要求があるが、シュラウドの側部に隙間があると、エンジンルーム内の熱気が該隙間を介して吹き返し、ラジエータの前側に回り込んで、この熱気がラジエータに不所望に供給され、ラジエータの熱交換性能が低下する問題点があった。
【0004】
そこで、このような問題点を解消するために、特許文献2に開示されているように、シュラウドのサイド部にシールプレートを設け、エンジンルーム内の熱気が吹き返し、ラジエータの前側に回り込むのを防止すべく構成した自動車の前部構造が既に発明されている。
【0005】
上述のシールプレートは、シュラウドのサイド部とバンパフェースとの間を左右に仕切るものであって、バンパビームに対応する部分には凹部が形成されていて、この凹部の上下においてはシュラウドのサイド部とバンパフェースとの間を仕切るような膨出形状に構成されている。
【0006】
ところで、実際の車両は、車体にバンパレインを組付けた状態で、防錆塗装などを施す関係上、シュラウドを配置する以前にクラッシュカン、バンパビームを含むバンパレインが既に車体に取付けられており、エンジンの搭載後に上記シュラウドおよびシールプレートが組込まれることになる。
【0007】
そこで、シュラウドとシールプレートとを予めサブアッシした構造を考えると、このシールプレートを備えたシュラウドを上方からバンパビーム後部とエンジン前部との間に差込めばよいが、バンパビームとエンジンとの間には、シールプレートを含むシュラウドを上方から差込むのに必要なスペースが存在しないため、組付け不可能となる。
【0008】
また、シュラウドとシールプレートとを予めサブアッシすることなく、シュラウドのみを一旦、バンパビーム後部とエンジン前部との間に上方から差込んだ後に、シールプレートをバンパビーム後部とシュラウドのサイド部の前側との間に配設する場合、このシールプレートはバンパビームと対応する位置の凹部よりも上下の両部が膨出した形状に構成されている関係上、該シールプレートをバンパビームとシュラウドとの間に差込んだ後に、横方向に移動させて組付ける必要がある等、その組付け性が極めて悪い問題点があり、この組付け性を改善しようとすると、バンパビーム直後と、シールプレートとの間に組付け性向上のための隙間が必要となり、この隙間によりシール性が劣化する問題点がある。
【特許文献1】特開2002−240744号公報
【特許文献2】特開2005−153612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、シールプレートをバンパビームより上方または下方の少なくとも何れか一方に設けると共に、シュラウドのサイド部が、シールプレートと連続してシュラウドのサイド部とバンパビームとの間を左右に仕切るように形成された取付け部材によりバンパビームに取付けられるように構成することで、シールプレートとシュラウドとの組付け性を向上させつつ、バンパビーム直後の隙間を防止することができ、シール性の向上を図ることができる自動車の前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による自動車の前部構造は、バンパフェースの後方で左右のフロントサイドフレーム間を橋渡すように車幅方向に延びるバンパビームと、サイド部、アッパ部、ロア部から構成され、バンパビームの後方に配設されるシュラウドと、シュラウドのサイド部から前方に延びて該サイド部とバンパフェースとの間の空間を車幅方向に仕切ると共に、バンパビームより上方または下方の少なくとも何れか一方に設けられるシールプレートと、上記シールプレートと連続してシュラウドのサイド部とバンパビームとの間を左右に仕切るように形成され、かつ、シュラウドのサイド部をバンパビームに取付ける取付け部材と、を備えたものである。
上記構成によれば、シュラウドのサイド部が、シールプレートと連続してシュラウドのサイド部とバンパビームとの間を左右に仕切るように形成された取付け部材にてバンパビームに取付けられるように構成したものである。すなわち、上記取付け部材によりシールプレートと連続するように、シュラウドのサイド部とバンパビームとの間を左右に仕切るものである。
このため、シールプレートとシュラウドとの組付け性を向上させつつ、バンパビーム直後に隙間が形成されるのを防止することができ、シール性(気流しゃ断性能)の向上を図ることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記シールプレートは、バンパビームより上方のシールプレート上部と、バンパビームより下方のシールプレート下部とから構成され、上記取付け部材はシールプレート上下両部と連続的になるように形成されたものである。
上記構成によれば、シールプレート上部およびシールプレート下部を備えたシールプレートと、取付け部材との両者により、バンパビーム部分を挟んでシュラウドのサイド部の上方から下方にかけてシュラウドのサイド部全体のシール性向上を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記シールプレート上部とシールプレート下部とはバンパビームの前方で上下一体的になるように連結されたものである。
上記構成によれば、シールプレート上部とシールプレート下部とを、バンパビームの前方で一体化したので、このシールプレートをバンパビーム前方から組付けることができ、これにより組付け性の大幅な向上を図ることができるうえ、シールプレートをその自由端側で上下連結させたので、シールプレートそれ自体の剛性向上を図ることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記シュラウドのサイド部を取付け部材に取付ける上下幅は、バンパビームの上下幅より広い間隔で取付けられており、取付け部材とシールプレートとを側面視でラップさせたものである。
上記構成によれば、シュラウドのサイド部を取付け部材に取付ける上下幅を広い間隔と成し、この広い間隔で両者を取付けることにより、シュラウドの支持剛性向上を図ることができる。また、取付け部材とシールプレートとを側面視でラップさせたので、このラップ構造により、取付け部材とシールプレートとの間のシール性向上を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記バンパビームは前方が開放する凹状部材と、凹状部材の前方の開放部を閉塞させる平板部材と、から構成され、上記取付け部材は凹状部材の上壁および下壁まで延出された延出部を備えたものである。
上記構成によれば、シールプレートの組付け性を向上させつつ、延出部でバンパビームとの隙間をほぼ完全に埋めることができ、シール性悪化を防止することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記凹状部材には上壁前端から上方に延びるフランジ部が形成されており、上記シールプレート上部には、バンパビームの平板部材後方でバンパビーム上壁面側に向けて下がる段下げ部が形成されたものである。
上記構成によれば、段下げ部にてバンパビームとの隙間をさらに埋めることができ、シール性の向上を図ることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記シールプレートと取付け部材とが互いに車幅方向でオフセットされており、シールプレートおよび取付け部材がシュラウドのサイド部に連結されるものである。
上記構成によれば、シールプレートと取付け部材との両者が車幅方向にオフセットすることにより、良好な組付け作業性を確保することができると共に、両者のオフセット構造により、シールプレートの形状の自由度の向上を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記取付け部材は、側面視でシールプレートとラップするように形成されたものである。
上記構成によれば、ラップ構造により、取付け部材とシールプレートとの間のシール性向上を図ることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記バンパビームは、後方が開放する凹状部材と、該凹状部材の開放部を閉塞する平板部材とから構成され、上記取付け部材は平板部材に一体形成されて後方に突出する突出部にて構成されたものである。
上記構成によれば、取付け部材を平板部材に一体形成したので、部品点数および組付け工数の低減を図りつつ、シール性の向上とシュラウド取付けとの両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、シールプレートをバンパビームより上方または下方の少なくとも何れか一方に設けると共に、シュラウドのサイド部が、シールプレートと連続してシュラウドのサイド部とバンパビームとの間を左右に仕切るように形成された取付け部材によりバンパビームに取付けられるように構成したので、シールプレートとシュラウドとの組付け性を向上させつつ、バンパビーム直後の隙間を防止することができ、シール性の向上を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
シールプレートとシュラウドとの組付け性を向上させつつ、バンパビーム直後の隙間を防止して、シール性の向上を図るという目的を、バンパフェースの後方で左右のフロントサイドフレーム間を橋渡すように車幅方向に延びるバンパビームと、サイド部、アッパ部、ロア部から構成され、バンパビームの後方に配設されるシュラウドと、シュラウドのサイド部から前方に延びて該サイド部とバンパフェースとの間の空間を車幅方向に仕切ると共に、バンパビームより上方または下方の少なくとも何れか一方に設けられるシールプレートと、上記シールプレートと連続してシュラウドのサイド部とバンパビームとの間を左右に仕切るように形成され、かつ、シュラウドのサイド部をバンパビームに取付ける取付け部材と、を備えるという構成にて実現した。
【実施例】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
(実施例1)
図面は自動車の前部構造を示し、図1において、エンジンルームEの左右両側を車両の前後方向に延びる車体フレームとしてのフロントサイドフレーム1,1を設けている。このフロントサイドフレーム1は図2にも示すように、フロントサイドフレームインナ2とフロントサイドフレームアウタ3とを接合して、車両の前後方向に延びる閉断面4を備えた車体剛性部材である。
【0022】
一方、図示しないヒンジピラーから車両前方へ突出する左右一対のエプロンレインフォースメント5,5を設けている。
このエプロンレインフォースメント5は、エプロンレインフォースメントアッパ6とエプロンレインフォースメントロアとを接合して、車両の前後方向に延びる閉断面を備えた車体剛性部材である。
【0023】
そして、車外側の上部がエプロンレインフォースメント5に、また車内側の下部がフロントサイドフレーム1にそれぞれ接合固定された左右のエプロンパネル7,7を設け、このエプロンパネル7には、ホイールアーチ部8と、サスタワー部9とを一体または一体的に形成している。
【0024】
さらに、図1に仮想線で示すように、左右のフロントサイドフレーム1,1の前部相互間には、シュラウド10(いわゆるラジエータシュラウド)を配置している。このシュラウド10は左右のサイド部10S,10Sと、アッパ部10Uと、ロア部10Lとを正面視で方形枠状に組合わせた合成樹脂製のリブ構造体によって形成されたもので、このシュラウド10により熱交換器としてのラジエータを保持すべく構成している。
【0025】
図2は図1のA−A線矢視断面図、すなわち、シュラウド10の車体への締結部で断面した縦断面図であって、図1、図2に示すように、フロントサイドフレーム1の前部には、その内端に沿って板状のブラケット11を立設し、この板状のブラケット11の上部と、上述のエプロンレインフォースメント5の前部との間には、シュラウドサイドメンバ12を張架している。ここで、上述の板状のブラケット11はその断面構造をコ字状、またはハット状に形成することで、該ブラケット11それ自体の剛性向上を図るように構成している。
【0026】
上述のシュラウドサイドメンバ12は、門形断面形状に構成されて、該シュラウドサイドメンバ12それ自体の剛性を確保すべく形成されると共に、このシュラウドサイドメンバ12の前部は板状のブラケット11の上部に溶接固定され、また、シュラウドサイドメンバ12の後部はエプロンレインフォースメント5の前部に溶接固定されている。
【0027】
一方、上述のシュラウド10におけるアッパ部10Uには、図2に示すように車両方向外方へ突出する取付け片10aを一体形成し、この取付け片10aをボルト13、ナット14等の締結部材を用いて、シュラウドサイドメンバ12の前部上面に取付けている。
【0028】
すなわち、上述のシュラウド10は、その上部がシュラウドサイドメンバ12上面に取付けられると共に、フロントサイドフレーム1の内端に沿って立設された板状のブラケット11を介してフロントサイドフレーム1に支持されたものであって、上述のシュラウドサイドメンバ12および板状のブラケット11はヘッドランプ15と干渉しないように設けられている。
【0029】
図3は車両の要部正面図であって、上述のエンジンルームEの上方はボンネット16で覆われ、車体側部はフェンダパネル17で覆われ、後述するバンパレインフォースメント28(図6参照)の前部にはバンパフェース18が設けられている。さらに、バンパフェース18の車幅方向中央に形成された開口部19と、フロントグリル20の開口部との両者から、シュラウド10で保持されるラジエータ(熱交換器)に走行風が供給されるように構成している。
【0030】
図4は図1の要部正面図、図5は図4からエネルギ吸収部材としてのEA部材21(但しEAはエネルギ・アブゾーバの略)を取り除いた状態で示す斜視図、図6は図4のB−B線矢視断面図、図7は図4のC−C線矢視断面図であって、図6に示すように、車体剛性部材としてのフロントサイドフレーム1の前端部にフランジ22を設ける一方、クラッシュカン23の後端部にもフランジ24を設け、これら両フランジ22,24を、図4、図5に示すように、ボルト、ナット等の締結部材25で締結固定している。
【0031】
また、図1、図6、図7に示すように、バンパフェース18の後方で、フロントサイドフレーム1,1前部のクラッシュカン23,23相互間を橋渡すように車幅方向に延びるバンパビーム26を設け、左右のクラッシュカン23,23と対応するバンパビーム26の前部にはプリクラッシュカン27を溶接固定して、上述の各要素23,26,27、すなわち、クラッシュカン23とバンパビーム26とプリクラッシュカン27とでバンパレインフォースメント28を構成している。
【0032】
この実施例1では、図8に示すように、上述のバンパビーム26は、後方が開放するコ字状部材26A(バンパビーム本体)と、このコ字状部材26Aの開放部を閉塞する平板部材26B(クロージングプレート)とから構成している。
【0033】
ここで、サイド部10S、アッパ部10U、ロア部10Lから構成された上述のシュラウド10は、図4〜図7に示すように、バンパビーム26の後方に配設されるものである。さらに詳しくは、このシュラウド10はバンパビーム26の後方とエンジン(図示せず)の前方との間に配設されるものである。
【0034】
図5、図7に示すように、シュラウド10のサイド部10Sとバンパフェース18との間を左右(車幅方向)に仕切る合成樹脂製のシールプレート30,30を、上記各サイドプレート部10S,10Sの前部に対応して左右一対設けている。
【0035】
上述のシールプレート30は図9〜図12に示すように構成されている。図9は右側のシールプレート30の正面図、図10は右側のシールプレート30の側面図、図11は右側のシールプレート30を車幅方向内方かつ後方から見た状態で示す斜視図、図12は右側のシールプレート30を車幅方向外方かつ前方から見た状態で示す斜視図である。なお、左側のシールプレート30は右側のシールプレート30と略左右対称に形成されている。
【0036】
図9〜図12に示すように、このシールプレート30は、バンパビーム26より上方のシールプレート上部30aと、バンパビーム26より下方のシールプレート下部30bとから構成され、これらのシールプレート上部30aとシールプレート下部30bとをバンパビーム26の前方で上下一体的になるように連結する連結部30cを備えている。
【0037】
また、上述のシールプレート上部30aには、前方が開放するコ字状断面構造の取付け部30dを一体形成し、シールプレート下部30bには、前方および側方が開放するコ字状部30eを設け、このコ字状部30eの背面30fに係止フック30gを一体形成している。
さらに、該シールプレート30の必要箇所には、補強用のリブ30h,30i,30j,30m,30nがそれぞれ設けられている。
【0038】
そして、シールプレート上部30aの取付け部30dを、図7に示すように、取付け金具31と、シュラウド10のサイド部10Sに予めインサート形成されたナット32(インサート金具)とを用いて、該サイド部10Sに前方から取付けると共に、シールプレート下部30bの係止フック30gをシュラウド10のサイド部10Sにおける係止孔に前方から取付けている。左右一対のシールプレート30,30がシュラウド10に取付けられた状態を図4に正面図で示すように、一対のシールプレート下部30b,30bはその上方部が車幅方向外方に、その下方部が車幅方向内方に位置するようにスラット状に形成されていて、開口部19からの走行風を可及的多くラジエータに導入するように構成している。
【0039】
しかも、図7に示すように、バンパビーム26の平板部材26Bには、該平板部材26Bに一体形成されて後方に突出する取付け部材としての突出部26cを設け、この突出部26cによりシュラウド10のサイド部10Sをバンパビーム26に取付けている。
【0040】
すなわち、図7に示すように、シュラウド10のサイド部10Sに予めインサート形成されたナット33(インサート金具)に対してボルト34を前方から締付けることで、該サイド部10Sをバンパビーム26に取付けたものである。
【0041】
図13は図7の要部を車両後方から見た状態で示す斜視図、図14はバンパビーム26における平板部材26Bのみを示す平面図であって、上述の突出部26Cは図14にも示すように、バンパビーム26の平板部材26Bに一体形成されて後方に突出すると共に、図13に示すように、シュラウド10のサイド部10Sを突出部26Cに取付ける上下幅は、バンパビーム26の上下幅より広い間隔で取付けられるように構成している。
【0042】
つまり、ボルト34の締付け作業性を考慮して、突出部26Cの上下に形成された取付面26d,26dにおける取付け孔26e,26eの上下幅は、バンパビーム26の上下幅よりも大に設定されている。また上述の取付面26d,26dを突出部26Cよりもさらに後方に突出することで、シュラウド10に若干の成形誤差があったとしても、適切な締結構造が得られるように構成している。
【0043】
そして、図7に示すように、取付け部材としての突出部26Cで、シールプレート30と連続してシュラウド10のサイド部10Sとバンパビーム26との間を左右(車幅方向)に仕切るように形成すると共に、この突出部26Cがシールプレートの上下両部30a,30bと上下方向に連続的になるように形成したものである。
【0044】
ここで、車体に対するシュラウド10およびシールプレート30の組付けについて説明すると、左右一対のフロントサイドフレーム1,1間には、予めバンパレインフォースメント28が組付けられると共に、エンジンルームEにはエンジンが搭載されている。
【0045】
このような状態下の車体に対して、まず、バンパビーム26の後方と、エンジン前方との組付けスペースに対して、シュラウド10を上方から差込み、シュラウド10のアッパ部10Uの取付け片10aを、図2に示すように、ボルト13、ナット14等の締結部材を用いて、シュラウドサイドメンバ12の前部上面に取付ける。
【0046】
次に、シュラウド10のサイド部10Sを、前方からナット33に締付けるボルト34を用いて、突出部26Cに取付ける。この場合、突出部26Cの上下幅は、バンパビーム26の上下幅よりも大きいので、組付け性の向上を図ることができる(図7参照)。
【0047】
次に、図7に示すように、シュラウド10に対してシールプレート30を車両前方(バンパビーム26の前方)から組付けるが、シュラウド上部30aは取付け金具31とナット32とにより、シュラウド10のサイド部10S前面に固定され、シュラウド下部30bは係止フック30gとシュラウド10のサイド部10S側の係止孔とにより、該サイド部10S前面に固定され、この状態下において、シールプレート10の上下両部30a,30bと突出部26Cとが上下方向に連続し、良好なシール性を確保する。
【0048】
次に、シールプレート30の連結部30cを含むバンパビーム26の前部にEA部材21が配設されるものである。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0049】
このように図1〜図14で示した実施例の自動車の前部構造は、バンパフェース18の後方で左右のフロントサイドフレーム1,1間を橋渡すように車幅方向に延びるバンパビーム26と、サイド部10S、アッパ部10U、ロア部10Lから構成され、バンパビーム26の後方に配設されるシュラウド10と、シュラウド10のサイド部10Sから前方に延びて該サイド部10Sとバンパフェース18との間の空間を車幅方向に仕切ると共に、バンパビーム26より上方または下方の少なくとも何れか一方(この実施例では上下の双方)に設けられるシールプレート30と、上記シールプレート30と連続してシュラウド10のサイド部10Sとバンパビーム26との間を左右に仕切るように形成され、かつ、シュラウド10のサイド部10Sをバンパビーム26に取付ける取付け部材(突出部26C参照)と、を備えたものである。
この構成によれば、シュラウド10のサイド部10Sが、シールプレート30と連続してシュラウド10のサイド部10Sとバンパビーム26との間を左右に仕切るように形成された取付け部材(突出部26C参照)にてバンパビーム26に取付けられるように構成したものである。すなわち、上記取付け部材(突出部26C参照)によりシールプレート30と連続するように、シュラウド10のサイド部10Sとバンパビーム26との間を左右に仕切るものである。
このため、シールプレート30とシュラウド10との組付け性を向上させつつ、バンパビーム26直後に隙間が形成されるのを防止することができ、シール性の向上を図ることができる。また、上記シールプレート30によりバンパフェース18とシュラウド10のサイド部10Sとの間を適切に仕切ることができる。
【0050】
さらに、上記シールプレート30は、バンパビーム26より上方のシールプレート上部30aと、バンパビーム26より下方のシールプレート下部30bとから構成され、上記取付け部材(突出部26c参照)はシールプレート上下両部30a,30bと連続的になるように形成されたものである。
この構成によれば、シールプレート上部30aおよびシールプレート下部30bを備えたシールプレート30と、取付け部材(突出部26C参照)との両者により、バンパビーム26部分を挟んでシュラウド10のサイド部10Sの上方から下方にかけてシュラウド10のサイド部10S全体のシール性向上を図ることができる。
【0051】
しかも、上記シールプレート上部30aとシールプレート下部30bとはバンパビーム26の前方で上下一体的になるように連結されたものである。
この構成によれば、シールプレート上部30aとシールプレート下部30bとを、バンパビーム26の前方で一体化したので、このシールプレート30をバンパビーム26前方から組付けることができ、これにより組付け性の大幅な向上を図ることができるうえ、シールプレート30をその自由端側(前側)で上下連結させたので、シールプレート30それ自体の剛性向上を図ることができる。
【0052】
また、上記バンパビーム26は、後方が開放する凹状部材としてのコ字状部材26Aと、該コ字状部材26Aの開放部を閉塞する平板部材26Bとから構成され、上記取付け部材は平板部材26Bに一体形成されて後方に突出する突出部26Cにて構成されたものである。
この構成によれば、取付け部材(突出部26C参照)を平板部材26Bに一体形成したので、部品点数および組付け工数の低減を図りつつ、シール性の向上とシュラウド取付けとの両立を図ることができる。
【0053】
(実施例2)
図15は自動車の前部構造の他の実施例を示す斜視図、図16は図15の構造を車幅方向内方から見た状態で示す側面図であって、この実施例においては、バンパフェース18(前図参照)の後方で左右のフロントサイドフレーム1,1間を橋渡すように車幅方向に延びるバンパビーム26は、図16に示すように、前方が開放するハット形状部材26X(バンパビーム本体)と、このハット形状部材26Xの前方の開放部を閉塞させる平板部材26Y(クロージングプレート)と、から構成されている。
【0054】
また、この実施例においては、バンパビーム26とは別部材から成る取付け部材40を設けている。
この取付け部材40は、シールプレート上部30aおよびシールプレート下部30bと連続して、シュラウド10のサイド部10とバンパビーム26との間を左右(車幅方向)に仕切る仕切り部40cと、この仕切り部40cからハット形状部材26Xの上壁26aおよび下壁26bまで延出された延出部40a,40bと、仕切り部40cの前部に折曲げ形成された接合片40dと、上側の延出部40aの下部に折曲げ形成された接合片40eと、下側の延出部40bの上部に折曲げ形成された接合片40fと、仕切り部40cの後部に折曲げ形成された取付け片40gとを備えている。
【0055】
上述の各接合片40d,40e,40fはバンパビーム26のハット形状部材26Xのそれぞれの外面に溶接手段により接合固定されている。また、取付け片40gおよび仕切り部40cは、バンパビーム26の上下幅よりも広い間隔に形成されており、該取付け片40gの上下に形成されたボルト挿通孔40h,40hに挿通するボルト41,41を用いて、シュラウド10のサイド部10Sを取付け部材40に取付けている。
【0056】
つまり、シュラウド10のサイド部10Sを取付け部材40に取付ける上下幅は、バンパビーム26の上下幅より広い間隔で取付けられたものであって、この取付け状態下において取付け部材40がシールプレート上下両部30a,30bと連続的になるように形成したものである。
【0057】
一方、シールプレート30は先の実施例1と同様に、シールプレート上部30aとシールプレート下部30bとがバンパビーム26の前方で上下一体的になるように連結する連結部30cを備えており、この実施例においても、シールプレート上部30aに一体形成された取付け部30pが取付け金具31を用いてシュラウド10のサイド部10Sに固定され、シールプレート下部30bは係止フック30gを用いてシュラウド10のサイド部10Sに固定されている。
【0058】
さらに、図15に示すように、シールプレート30と取付け部材40とは車幅方向にオフセットされていて、シールプレート30および取付け部材40がシュラウド10のサイド部10Sに連結されるものである。
【0059】
このように、図15、図16で示した実施例においては、上記シュラウド10のサイド部10Sを取付け部材40に取付ける上下幅は、バンパビーム26の上下幅より広い間隔で取付けられたものである。
この構成によれば、シュラウド10のサイド部10Sを取付け部材40に取付ける上下幅を広い間隔と成し、この広い間隔で両者10S,40を取付けることにより、シュラウド10の支持剛性向上を図ることができる。
【0060】
また、上記バンパビーム26は前方が開放する凹状部材としてのハット形状部材26Xと、ハット形状部材26Xの前方の開放部を閉塞させる平板部材26Yと、から構成され、上記取付け部材40はハット形状部材26Xの上壁26aおよび下壁26bまで延出された延出部40a,40bを備えたものである。
この構成によれば、シールプレート30の組付け性を向上させつつ、延出部40a,40bでバンパビーム26との隙間をほぼ完全に埋めることができ、シール性悪化を防止することができる。
【0061】
さらに、上記凹状部材には上壁前端から上方に延びるフランジ部が形成されており(ハット形状部材26X参照)、上記シールプレート30と取付け部材40とは車幅方向にオフセットされ、シールプレート30および取付け部材40がシュラウド10のサイド部10Sに連結されるものである。
この構成によれば、シールプレート30と取付け部材40との両者が車幅方向にオフセットすることにより、良好な組付け作業性を確保することができると共に、両者のオフセット構造により、シールプレート30の形状の自由度の向上を図ることができる。
【0062】
なお、図15、図16で示した実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例1とほぼ同様であるから、図15、図16において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0063】
図17、図18は自動車の前部構造のさらに他の実施例を示し、この図17、図18で示す構造は、図15、図16で示した構造に加えて、シールプレート上部30aには、バンパビーム26の平板部材26Yより後方においてハット形状部材26Xの上壁26aの上面側に向けて下がる段下げ部30R(下方への延長部)が形成されたものである。
【0064】
このように構成すると、上述の段下げ部30Rにてバンパビーム26との隙間をさらに埋めることができ、シール性の向上を図ることができる。
【0065】
また、シールプレート下部30bに、バンパビーム26の平板部材26Yより後方においてハット形状部材26Xの下壁26bの下面側に向けて立上がる上方への延長部(図示せず)を一体形成し、バンパビーム26との隙間をさらに埋めるように構成してもよい。
【0066】
この図17、図18で示した実施例においても、その他の構成、作用、効果は図15、図16で示した実施例とほぼ同様であるから、図17、図18において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0067】
図19は自動車の前部構造のさらに他の実施例を示し、この図19で示す構造は、図17、図18で示した構造に加えて、取付け部材40の上下の各延出部40a,40bの上下幅を図18の上下幅に対して大に形成し、取付け部材40の上下の各延出部40a,40bが側面から見てシールプレート上部30a、シールプレート下部30bと完全にオーバラップするように構成したものである。
【0068】
すなわち、図19に示す実施例においては、取付け部材40が、側面視でシールプレート30とラップするように形成されたものであり、この構成によれば斯るラップ構造により、取付け部材40とシールプレート30との間のシール性向上を図ることができる。なお、取付け部材40の延出部40a,40bの上下幅を大と成して、オーバラップさせる構造に代えて、シールプレート上部30aにバンパビーム26の平板部材26Yより後方においてハット形状部材26Xの上壁26aに向けて下がる段下げ部30R(下方への延長部)を形成し、この段下げ部30Rの下げ量を大きくする、または/および、ハット形状部材26Xの下壁26bに向けて立上がる上方への延長部(図示せず)を形成し、この延長部の立上がり量を大きくすることで、側面視においてシールプレート30と取付け部材40とがラップするように構成してもよい。
【0069】
なお、図19に示す実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図19において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0070】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の取付け部材は、実施例1の突出部26C、実施例2の取付け部材40に対応し、
凹状部材は、コ字状部材26Aまたはハット形状部材26Xに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】自動車の前部構造を示す斜視図
【図2】図1のA−A線矢視断面図
【図3】車両の要部正面図
【図4】図1の要部正面図
【図5】エネルギ吸収部材を取除いた状態で示す図4の斜視図
【図6】図4のB−B線矢視断面図
【図7】図4のC−C線矢視断面図
【図8】バンパビームの拡大断面図
【図9】シールプレートの正面図
【図10】シールプレートの側面図
【図11】車幅方向内方かつ後方から見た状態で示すシールプレートの斜視図
【図12】車幅方向外方かつ前方から見た状態で示すシールプレートの斜視図
【図13】自動車の前部構造を車両後方から見た状態で示す斜視図
【図14】平板部材のみの平面図
【図15】自動車の前部構造の他の実施例を示す斜視図
【図16】図15の内方側面図
【図17】自動車の前部構造のさらに他の実施例を示す斜視図
【図18】図17の内方側面図
【図19】自動車の前部構造のさらに他の実施例を示す側面図
【符号の説明】
【0072】
1…フロントサイドフレーム
10…シュラウド
10L…ロア部
10S…サイド部
10U…アッパ部
18…バンパフェース
26…バンパビーム
26A…コ字状部材(凹状部材)
26B…平板部材
26C…突出部(取付け部材)
26X…ハット形状部材(凹状部材)
26Y…平板部材
30…シールプレート
30a…シールプレート上部
30b…シールプレート下部
30R…段下げ部
40…取付け部材
40a,40b…延出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前部構造であって、
バンパフェースの後方で左右のフロントサイドフレーム間を橋渡すように車幅方向に延びるバンパビームと、
サイド部、アッパ部、ロア部から構成され、上記バンパビームの後方に配設されるシュラウドと、
該シュラウドのサイド部から前方に延びて該サイド部と上記バンパフェースとの間の空間を車幅方向に仕切ると共に、上記バンパビームより上方または下方の少なくとも何れか一方に設けられるシールプレートと、
上記シールプレートと連続して上記シュラウドのサイド部と上記バンパビームとの間を左右に仕切るように形成され、かつ、
上記シュラウドのサイド部を上記バンパビームに取付ける取付け部材と、を備えたことを特徴とする
自動車の前部構造。
【請求項2】
上記シールプレートは、上記バンパビームより上方のシールプレート上部と、上記バンパビームより下方のシールプレート下部とから構成され、
上記取付け部材は上記シールプレート上下両部と連続的になるように形成されたことを特徴とする
請求項1記載の自動車の前部構造。
【請求項3】
上記シールプレート上部と上記シールプレート下部とは上記バンパビームの前方で上下一体的になるように連結されたことを特徴とする
請求項2記載の自動車の前部構造。
【請求項4】
上記シュラウドのサイド部を上記取付け部材に取付ける上下幅は、上記バンパビームの上下幅より広い間隔で取付けられており、上記取付け部材と上記シールプレートとを側面視でラップさせたことを特徴とする
請求項1〜3の自動車の前部構造。
【請求項5】
上記バンパビームは前方が開放する凹状部材と、
該凹状部材の前方の開放部を閉塞させる平板部材と、から構成され、
上記取付け部材は上記凹状部材の上壁および下壁まで延出された延出部を備えたことを特徴とする
請求項3記載の自動車の前部構造。
【請求項6】
上記凹状部材には上壁前端から上方に延びるフランジ部が形成されており、上記シールプレート上部には、上記バンパビームの平板部材後方で該バンパビーム上壁面側に向けて下がる段下げ部が形成されたことを特徴とする
請求項5記載の自動車の前部構造。
【請求項7】
上記シールプレートと上記取付け部材とが互いに車幅方向でオフセットされており、
上記シールプレートおよび上記取付け部材が上記シュラウドのサイド部に連結されることを特徴とする
請求項5または6記載の自動車の前部構造。
【請求項8】
上記取付け部材は、側面視で上記シールプレートとラップするように形成されたことを特徴とする
請求項5〜7の何れか1に記載の自動車の前部構造。
【請求項9】
上記バンパビームは、後方が開放する凹状部材と、該凹状部材の開放部を閉塞する平板部材とから構成され、
上記取付け部材は該平板部材に一体形成されて後方に突出する突出部にて構成されたことを特徴とする
請求項1〜4の何れか1に記載の自動車の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−126912(P2008−126912A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316525(P2006−316525)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】