説明

自動車の前部構造

【課題】走行風を後方に通過させる通気孔が形成されたフロントグリルと、該フロントグリルの後方に配設され、エンジンへの吸気を導く吸気口が形成されたシュラウドパネル上辺部とを有する自動車の前部構造において、フロントグリルの通気孔を通過した雨や雪がシュラウドパネルの吸気口に進入するのを防止可能な構造を提供する。
【解決手段】前記フロントグリル3の通気孔3aを、車両正面視で前記シュラウドパネル上辺部4aの吸気口11bに重ならないように車幅方向にオフセットして形成すると共に、前記シュラウドパネル上辺部4aにおける、前記吸気口11bに前記通気孔3a側で隣接する部位に、該シュラウドパネル上辺部4aの前方側と後方のエンジンルーム6側とを連通させる連通部30を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前部構造に関し、車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前部には、走行風を後方に通過させる通気孔が形成されたフロントグリルと、該フロントグリルの後方に配設され、エンジンへの吸気を導く吸気口が形成されたシュラウドパネル上辺部とが設けられる場合があるが、例えば、フロントグリルの通気孔とシュラウドパネル上辺部の吸気口とを車両正面視で重なるような位置に設けると、フロントグリルの通気孔を通過した雨や雪が前記吸気口にそのまま進入することとなって好ましくない。そこで、例えば、特許文献1に開示されているように、フロントグリルの通気孔をシュラウドアッパの吸気口よりも低い位置にオフセットさせて設けることが考えられる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−1337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フロントグリルの通気孔の位置は、デザイン上の要求等からシュラウドアッパの吸気口よりも低い位置に設けることができない場合がある。また、低い位置に設けたとしても、フロントグリルの通気孔を通過した雨や雪が走行風に乗って吸気口にまで回り込んで進入することがある。特に、雪の場合は、吸気口に進入すると、堆積して吸気を阻害する虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、フロントグリルの通気孔を通過した雨や雪がシュラウドパネルの吸気口に進入するのを防止可能な構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0007】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、走行風を後方に通過させる通気孔が形成されたフロントグリルと、該フロントグリルの後方に配設され、エンジンへの吸気を導く吸気口が形成されたシュラウドパネル上辺部とを有する自動車の前部構造であって、前記フロントグリルの通気孔は、車両正面視で前記シュラウドパネル上辺部の吸気口に重ならないように車幅方向にオフセットして形成されていると共に、前記シュラウドパネル上辺部における、前記吸気口に前記通気孔側で隣接する部位に、該シュラウドパネル上辺部の前方側と後方のエンジンルーム側とを連通させる連通部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の自動車の前部構造において、前記シュラウドパネル上辺部の吸気口は、車幅方向中央から車幅方向外側にオフセットして形成されていると共に、前記フロントグリルの通気孔は、前記シュラウドパネル上辺部の吸気口に対して車幅方向中央側に形成されており、前記連通部は、車幅方向中央と前記吸気口との間における吸気口寄りの一部の部位にのみ形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の自動車の前部構造において、前記フロントグリルは、車幅方向中央から車幅方向外側に向かうにつれて縦幅が小さくなるように構成されており、前記シュラウドパネル上辺部の吸気口は、車幅方向外側の端部の直後方に設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれかに記載の自動車の前部構造において、前記シュラウドパネル上辺部は、該アッパの前方側と後方のエンジンルーム側とを仕切る前壁及び後壁を有していると共に、前記前壁及び後壁のそれぞれに、前記連通部を構成する開口部が形成されており、かつ、これらの開口部が車両正面視でオフセットして形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項4に記載の自動車の前部構造において、前記後壁の開口部は前壁の開口部よりも高い位置に形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項4または請求項5に記載の自動車の前部構造において、前記シュラウドパネル上辺部は、樹脂製で、その上縁部における車幅方向で前記吸気口に隣接する部位に、下方に凹む凹部が形成された本体部材と、該凹部を車両正面視で覆う前壁及び後壁を有し、該前壁及び後壁に前記連通部を構成する開口部がそれぞれ形成されたカバー部材とで構成されていることを特徴とする。ここで、開口部には切欠を含む。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項1から請求項6のいずれかに記載の自動車の前部構造において、前記連通部には下壁が存在しており、該下壁には、連通部に溜まった水及び雪を下方に落とす排出孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
次に、本発明の効果について説明する。
【0015】
まず、請求項1に記載の発明によれば、フロントグリルの通気孔は、車両正面視でシュラウドパネル上辺部の吸気口に重ならないように車幅方向にオフセットして形成されているので、該通気孔を通過した雨や雪の多くはその直後方でシュラウドパネル上辺部における吸気口以外の部分に衝突して落下することとなり、吸気口に到達するのが抑制されることとなる。
【0016】
しかも、前記シュラウドパネル上辺部における、前記吸気口に前記通気孔側で隣接する部位に、シュラウドパネル上辺部の前方側と後方のエンジンルーム側とを連通させる連通部が形成されているから、フロントグリルの通気孔を通過した雨や雪のうち走行風に乗ってシュラウドパネル上辺部に衝突することなく吸気口側へ車幅方向に流れてきたものは、吸気口に達する前に、動圧によりその上流側に隣接して設けられた連通部を介してエンジンルームに流れ込むこととなる。したがって、フロントグリルの通気孔を通過した雨や雪が、吸気口から進入するのが良好に防止されることとなる。特に、雪の場合に、雪が吸気口や吸気通路に堆積するのが抑制され、良好な吸気が確保されることとなる。
【0017】
また、本発明によれば、この連通部を介してエンジンルーム内の熱気を外部に排出させることができ、エンジンルーム内の温度上昇が抑制されることとなる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記シュラウドパネル上辺部の吸気口を車幅方向中央から車幅方向外側にオフセットして形成すると共に、前記フロントグリルの通気孔を前記シュラウドパネル上辺部の吸気口に対して車幅方向中央側に形成する場合に、前記シュラウドパネル上辺部の連通部を、車幅方向中央と前記吸気口との間における吸気口寄りの一部の部位にのみ形成したから、連通部の開口面積が不必要に大きくなることがなく、その結果、連通部を設けることによるシュラウドアッパの剛性低下が抑制されることとなる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明によれば、フロントグリルに形成する通気孔の面積を可能な限り大きくすることができる。すなわち、請求項2に記載の構成においては、フロントグリルの後方に吸気口を設ける場合、該フロントグリルには吸気口の直前方の部分を除いて通気孔を形成することとなるが、これは、フロントグリルの通気孔の面積を制限することでもある。そこで、本発明においては、フロントグリルが車幅方向中央から車幅方向外側に向かうにつれて縦幅が小さくなるように構成される場合には、前記シュラウドパネル上辺部の吸気口をフロントグリルの車幅方向外側の端部の直後方に設けるようにしたものであり、これによれば、フロントグリルにおける通気孔の形成が制限される部分の面積を可能な限り小さくすることができる。換言すれば通気孔の面積を可能な限り大きくすることができる。
【0020】
ところで、シュラウドパネル上辺部に連通部を設けると、走行風が連通部を通過するときに笛吹き音等の通過音が発生する虞があるが、請求項4に記載の発明によれば、前記シュラウドパネル上辺部は、該上辺部の前方側と後方のエンジンルーム側とを仕切る前壁及び後壁を有していると共に、前記前壁及び後壁のそれぞれに、前記連通部を構成する開口部が形成されており、かつ、これらの開口b部が車両正面視でオフセットして形成されているから、連通部が曲がった形状となる。したがって、連通部を通過する走行風の流速が低下することとなり、通過音の発生が抑制されることとなる。
【0021】
ここで、このように連通部を設けると、停車時等に連通部を介してエンジンルーム内の熱気がシュラウドパネル上辺部の前方側へ吹き返し、この吹き返した熱気が吸気口からエンジンに吸入される虞があるが、請求項5に記載の発明のように、前記後壁の開口部が前壁の開口部よりも高い位置に形成されていると、エンジンルーム内の熱気は後壁の開口部を通過したとしても上昇しようとする性質によりその前方下方にある前壁の開口部は通過しにくくなる。つまり、エンジンルーム内の熱気が連通部を介してシュラウドパネル上辺部の前方側まで吹き返しにくくなり、その結果、エンジンルーム内の熱気が吸気口から吸入されるのが防止されることとなる。
【0022】
また、請求項6に記載の発明によれば、樹脂製シュラウドパネル上辺部の成形性を成立させつつ、連通口を形成することができる。すなわち、上辺部に前壁及び後壁を有するシュラウドパネル上辺部を樹脂で一体成形するのは型抜き等の点から困難な場合があるが、本発明においては、前記シュラウドパネル上辺部は、その上縁部における車幅方向で前記吸気口に隣接する部位に、下方に凹む凹部が形成された本体部材と、該凹部を車両正面視で覆う前壁及び後壁を有し、該前壁及び後壁に前記連通部を構成する開口部がそれぞれ形成されたカバー部材とで構成されているから、独立して成形することができ、成形が容易になる。
【0023】
また、請求項7に記載の発明によれば、前記連通部には下壁が存在しており、該下壁には、連通部に溜まった水及び雪を下方に落とす排出孔が形成されているから、連通部内に溜まった水及び雪を外部に排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係る自動車の前部構造について説明する。
【0025】
図1、図2に示すように、本発明の実施の形態に係る自動車1の前端部には、フロントバンパフェース2と、フロントグリル3とが配設されている。図3にも示すように、これらの部材2,3の後方(以後、前方、後方というときは車両の前後方向をいう)には四角い枠状のシュラウドパネル4が配設されている。該シュラウドパネル4にはラジエータ5が取り付けられ、その後方の空間はエンジン(図示せず)が配設されるエンジンルーム6とされている。
【0026】
エンジンルーム6を開閉するボンネットフード7の前端部近傍部下面には、車幅方向に延びるボンネットシール8が取り付けられており、該ボンネットシール8により、ボンネットフード7の閉状態において該フード7の下面とシュラウドパネル4の上辺部4aの上面との間に生じる隙間がシールされるようになっている。
【0027】
フロントバンパフェース2には、ラジエータ5のほぼ直前方となる位置において、エンジンルーム6内に走行風を導入するための通気孔2aが形成されている。
【0028】
フロントグリル3は、シュラウドパネル4の上辺部4aの前方に位置し、車幅方向中央から車幅方向外側に向かうにつれて縦幅が小さくなるような形状とされている。また、走行風を後方に通過させる複数のハニカム状開口でなる通気孔3aが形成されている。
【0029】
シュラウドパネル4は樹脂製で、該パネル4の枠状の本体を構成する本体部材11と、後述するカバー部材12とを有している。なお、シュウラドパネル4の上辺部4aは、本体部材11の上辺部11aとカバー部材12とで構成される。
【0030】
本体部材11の上辺部11aには、車両正面視で車幅方向中央から車幅方向外側にオフセットした位置において、エンジンの吸気ダクトの入口が接続される吸気口11bが形成されている。
【0031】
また、本体部材11の上辺部11aの上縁部には、前記吸気口11bと車幅方向ほぼ中央との間の領域において、下方に凹む凹部11cが形成されており、該凹部11cには、車両正面視で該凹部11cを埋める形状のカバー部材12が取り付けられている。
【0032】
カバー部材12は、図4に示すように、後側ほど高くなる前壁12aと、該前壁12aの上端から後方にほぼ水平に延びる上壁12bと、該上壁12bの後端から垂下する後壁12cとを有している。上壁12bの上面は、本体部材11の上辺部11aの上壁11dのうち凹部11cを除く部分の上面に滑らかに連なるように形成されている。
【0033】
図2〜図4に示すように、シュラウドパネル4の本体部材11の上辺部11aの前面側には、フロントグリル3の通気孔3aの後方空間と、フロントバンパフェース2の通気孔2aの後方空間とを上下に仕切るシールプレート21及びシール材22が配設されている。
【0034】
シールプレート21は、図2からわかるように、横幅(車幅方向幅)が、シュラウドパネル4の本体部材11の上辺部11aよりも若干小さい程度とされており、該上辺部11aの前壁11fに近接して設けられた第1縦壁21aと、該第1縦壁21aの下端からフロントバンパフェース2近傍まで前方にほぼ水平に延びる横壁21bと、該横壁21bの先端から下方に延びる第2縦壁21cとを有している。
【0035】
シール材22は、図2からわかるように、シールプレート21の第2縦壁21cに沿って車幅方向に延設されている共に、図3からわかるように、その前後長が、第2縦壁21cとフロントバンパフェース2内面との間の前後の隙間よりも若干小さい程度の長さとされ、この隙間をほぼ埋めている。また、シール材22は、前後振動等によりフロントバンパフェース2に当接しても、該フェース2に損傷を与えないようにウレタン等の弾性材で形成されている。
【0036】
このようなシールプレート21及びシール材22によれば、例えば停車中等で走行風が得られないような状態のときに、図3、図4に矢印αで示すようにラエジータ5から前方に放出された熱気が、これらの部材21,22に遮られてフロントグリル3の通気孔3aの後方空間に回りこむのが防止されることとなる。つまり、ラジエータ5で発生した熱気がシュラウドパネル4の吸気口11bに進入するのが防止されることとなる。
【0037】
ここで、シュラウドパネル4の上辺部4aの吸気口11bは、図1、図2からわかるように、フロントグリル3の車幅方向一端部の直後方位置となるように設けられている。また、フロントグリル3の複数のハニカム状開口部のうち、吸気口11bの直前方及びその近傍に位置するもの(ハッチングを施している部分)の底部は塞がれて、それ以外のもののみが貫通しており、結果として、通気孔3aは、枠部3bの内側における吸気口11bの直前方となる部分及びエンブレム部3cを除いて形成されている。換言すれば、フロントグリル3の通気孔3aは、車両正面視で前記シュラウドパネル4の上辺部11の吸気口11bに重ならないように車幅方向中央側にオフセットして形成されている。これは、フロントグリル3の通気孔3aの直後方に吸気口11bが存在していると、通気孔3aを通過した雪や雨等が勢いよくそのまま吸気口11bに入り込むので、これを防止するためである。
【0038】
また、図2〜図4からわかるように、シールプレート21の第1縦壁21aのうち、吸気口11bの前方に位置する部分の上端の高さは、他の部分よりも高く、フロントグリルの通気孔3aの枠部3bの後端よりもわずかに低い程度とされている。これは、フロントグリル3aの通気開口面積を大きくするため吸気口11bに隣接する部分前方のフロントグリル3にも通気孔3aを形成させる一方で、走行風の勢いに乗ったまま雨や雪が流れ込むのを抑制させるためである。他の部分においては、上端高さが抑えられているので、その後方に走行風を積極的に導入することができる。
【0039】
また、シュラウドパネル4の上辺部4aを構成するカバー部材12には、通気孔3aの前記一端部側の直後方で、本体部材11の吸気口11bの車幅方向内側(通気孔3a側)で隣接する位置において、シュラウドパネル4の上辺部4aの前方側と後方のエンジンルーム6側とを連通させる連通部30が形成されている。
【0040】
この連通部30の入口は、図4、図5に示すように、カバー部材12の前壁12aの下部に形成された切欠部12dにより構成され、出口は後壁12cの上部に形成された開口部12eにより構成されている。切欠部12d及び開口部12eは、車幅方向中央と吸気口11bとの間における吸気口11b寄りの一部の部位にのみ形成されており、切欠部12dの車幅方向内側の一部はフロントグリル3の通気孔3aと車両正面視で重なっている。なお、切欠部12dの右側部分は、シールプレート21の第1縦壁部21aによって遮蔽されているが、これは、フロントグリル3の通気孔3aを吸気口11bに対してオフセットさせたのと同様に、通気孔3aにおける吸気口11b側の端部近傍を通過した雪や雨等が勢いよくそのまま吸気口11bに入り込むのを防止するためである。また、切欠部12dは、開口部12eより低い位置となるように形成されている。
【0041】
また、図4、図5に示すように、連通部30の下壁を構成する本体部材11の凹部11c部分の上壁11dには、上下に貫通する貫通孔11eが形成されている。この貫通孔11eは、シュラウドパネル4の本体部材11の成形型の位置決め突起に対応して形成されたものであるが、取付後においては連通部30内にまで雪や雨が進入したときの水抜き孔として機能する。
【0042】
次に、本発明の効果について説明する。
【0043】
まず、フロントグリル3の通気孔3aは、車両正面視でシュラウドパネル4の上辺部4aの吸気口11bに重ならないように車幅方向にオフセットして形成されている、すなわち、吸気口11bの直前方には通気孔3aが存在せず塞がれているので、降雨時や降雪時に雨や雪が吸気口11bの直前方から該吸気口11bに勢いよく進入するのが防止されることとなる。
【0044】
しかも、本実施の形態においては、前述のように、シュラウドパネル4の上辺部4aにおける、吸気口11bに通気孔3a側で隣接する部位に、シュラウドパネル4の上辺部4aの前方側と後方のエンジンルーム6側とを連通させる連通部30が形成されているので、以下のような作用・効果が得られる。
【0045】
すなわち、フロントグリル3の通気孔3aを通過した走行風のうち連通部30の直前方部分を通過したものは、図4に矢印βで示すように、シールプレート31の第1縦面部21aの上端とフロントグリル3の上側の枠部3bの後端との間の隙間を通って勢いよく後方へ流れ、直後方の連通部30を通ってシュラウドパネル4の上辺部4aのエンジンルーム6側に流れ込むこととなる。その場合に、走行風に雨や雪が含まれている場合には、その雨や雪の多くはシールプレート31の第1縦面部21aに衝突して落下することとなり、吸気口11bに到達するのが抑制される。
【0046】
他方、フロントグリル3の通気孔3aを通過した走行風に雨や雪が含まれる場合に、図3に矢印γで示すように、連通部30の直前方以外の部分(車幅方向中央側)を通過した雨や雪の多くは、その直後方でシュラウドパネル4の上辺部4aの前壁に衝突して落下するが、走行風に乗ったまま衝突することなく前壁に沿って吸気口11b側へ車幅方向に流れるものもある。しかし、本実施の形態においては、前述のように吸気口11bの車幅方向中央側に(上流側に)該吸気口11bに隣接して連通部30が設けられているから、このように車幅方向に流れた雨や雪は、前述の図4に矢印βで示す、通気孔3aにおける連通部30の直前方部分を通って後方に流れる走行風の動圧により、図4に矢印δで示すように吸気口11bに達する前に連通部30内に進入し、そのままエンジンルーム6に流れ込むこととなる。
【0047】
したがって、本実施の形態によれば、フロントグリル3の通気孔3aを通過した雨や雪が、吸気口11bに進入するのが効果的に防止されることとなる。特に、雪の場合に、雪が吸気口11bや吸気通路に堆積するのが抑制され、良好な吸気が確保されることとなる。
【0048】
また、シュラウドパネル4の上辺部4aの吸気口11bを車幅方向中央から車幅方向外側にオフセットして形成すると共に、フロントグリル3の通気孔3aをシュラウドパネル4の上辺部4aの吸気口11bに対して車幅方向中央側に形成する場合に、シュラウドパネル4の上辺部4aの連通部30を、車幅方向中央と吸気口11bとの間における吸気口11b寄りの一部の部位にのみ形成したから、連通部30の開口面積が不必要に大きくなることがなく、その結果、連通部30を設けることによるシュラウドアッパ4の剛性低下が抑制されることとなる。
【0049】
また、本実施の形態においては、フロントグリル3が車幅方向中央から車幅方向外側に向かうにつれて縦幅が小さくなるように構成されているので、シュラウドパネル4の上辺部4aの吸気口11bをフロントグリル3の車幅方向外側の端部の直後方に設けるようにしたものであるが、これによれば、フロントグリル3における通気孔3aの形成が制限される部分の面積を可能な限り小さくすることができる。換言すれば通気孔3aの面積を可能な限り大きくすることができる。
【0050】
ところで、シュラウドアッパ4の上辺部4aに連通部30を設けると、走行風が連通部30を通過するときに笛吹き音等の通過音が発生する虞があるが、本実施の形態においては、シュラウドパネル4の上辺部4aは、該上辺部4aの前方側と後方のエンジンルーム6側とを仕切る前壁12a及び後壁12cを設けると共に、前記前壁12c及び後壁12cのそれぞれに、連通部30を構成する切欠部12d,開口部12eを形成し、かつ、切欠部12d,開口部12eを車両正面視で上下にオフセットして形成したから、連通部30が曲がった形状となる。したがって、連通部30を通過する走行風の流速が低下することとなり、通過音の発生が抑制されることとなる。
【0051】
ここで、このように連通部30を設けると、停車時等に連通部30を介してエンジンルーム6内の熱気がシュラウドパネル4の上辺部4aの前方側へ吹き返し、この吹き返した熱気が吸気口11bからエンジンに吸入される虞があるが、本実施の形態においては、後壁12cの開口部12eが前壁12aの開口部12dよりも高い位置に形成されているから、エンジンルーム6内の熱気は後壁12cの開口部12eを通過したとしても上昇しようとする性質によりその前方下方にある前壁12aの開口部12dを通過しにくくなる。つまり、エンジンルーム6内の熱気が連通部30を介してシュラウドパネル4の上辺部4aの前方側まで吹き返しにくくなり、その結果、エンジンルーム6内の熱気が吸気口11bから吸入されるのが防止されることとなる。
【0052】
なお、この吹き返しが問題とならない場合は、後壁12cの開口部12eと前壁12aの開口部12dとが同高さでもよく、この場合、連通部30を介してエンジンルーム6内の熱気が外部に排出されることとなり、エンジンルーム6内の温度上昇が抑制されることとなる。
【0053】
また、上辺部4aに前壁(前壁12aに相当するもの)及び後壁(前壁12cに相当するもの)を有するシュラウドパネル4を樹脂で一体成形するのは型抜き等の点から困難であるが、本実施の形態においては、シュラウドパネル4の上辺部4aは、その上縁部における車幅方向で吸気口11bに隣接する部位に下方に凹む凹部11cが形成された本体部材11と、該凹部11cを車両正面視で覆う前壁12a及び後壁12cを有し、該前壁12a及び後壁12cに連通部30を構成する開口部12d,12eがそれぞれ形成されたカバー部材12とで構成されているから、独立して成形することができ、成形が容易になる。
【0054】
また、連通部30の下壁を構成する本体部材11の上壁11dには、連通部30に溜まった水及び雪を下方に落とす排出孔11eが形成されているから、連通部30内に溜まった水及び雪を外部に排出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、走行風を後方に通過させる通気孔が形成されたフロントグリルと、該フロントグリルの後方に配設され、エンジンへの吸気を導く吸気口が形成されたシュラウドパネル上辺部とを有する自動車の前部構造に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る自動車の前部構造の正面図である。
【図2】図1においてフロントバンパフェース及びグリルを透視した図である(ラジエータは省略している)。
【図3】図1(図2)のA−A断面図である。
【図4】図1(図2)のB−B断面図である。
【図5】図4のC−C断面図である(ボンネットフード及びボンネットシールは省略している)。
【符号の説明】
【0057】
1 自動車
2 フロントバンパフェース
3 フロントグリル
3a 吸気孔
4 シュラウドパネル
4a 上辺部
11 本体部材
11a 上辺部
11b 吸気口
11c 凹部
11d 上壁(連通部の下壁)
11e 貫通孔(排出孔)
12 カバー部材
12a 前壁
12c 後壁
12d 切欠部(前壁の開口部)
11e 開口部(後壁の開口部)
30 連通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行風を後方に通過させる通気孔が形成されたフロントグリルと、該フロントグリルの後方に配設され、エンジンへの吸気を導く吸気口が形成されたシュラウドパネル上辺部とを有する自動車の前部構造であって、
前記フロントグリルの通気孔は、車両正面視で前記シュラウドパネル上辺部の吸気口に重ならないように車幅方向にオフセットして形成されていると共に、
前記シュラウドパネル上辺部における、前記吸気口に前記通気孔側で隣接する部位に、該シュラウドパネル上辺部の前方側と後方のエンジンルーム側とを連通させる連通部が形成されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の自動車の前部構造において、
前記シュラウドパネル上辺部の吸気口は、車幅方向中央から車幅方向外側にオフセットして形成されていると共に、
前記フロントグリルの通気孔は、前記シュラウドパネル上辺部の吸気口に対して車幅方向中央側に形成されており、
前記連通部は、車幅方向中央と前記吸気口との間における吸気口寄りの一部の部位にのみ形成されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項3】
前記請求項2に記載の自動車の前部構造において、
前記フロントグリルは、車幅方向中央から車幅方向外側に向かうにつれて縦幅が小さくなるように構成されており、
前記シュラウドパネル上辺部の吸気口は、車幅方向外側の端部の直後方に設けられていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれかに記載の自動車の前部構造において、
前記シュラウドパネル上辺部は、該上辺部の前方側と後方のエンジンルーム側とを仕切る前壁及び後壁を有していると共に、
前記前壁及び後壁のそれぞれに、前記連通部を構成する開口部が形成されており、
かつ、これらの開口部が車両正面視でオフセットして形成されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項5】
前記請求項4に記載の自動車の前部構造において、
前記後壁の開口部は前壁の開口部よりも高い位置に形成されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項6】
前記請求項4または請求項5に記載の自動車の前部構造において、
前記シュラウドパネル上辺部は、樹脂製で、その上縁部における車幅方向で前記吸気口に隣接する部位に、下方に凹む凹部が形成された本体部材と、該凹部を車両正面視で覆う前壁及び後壁を有し、該前壁及び後壁に前記連通部を構成する開口部がそれぞれ形成されたカバー部材とで構成されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項7】
前記請求項1から請求項6のいずれかに記載の自動車の前部構造において、
前記連通部には下壁が存在しており、該下壁には、連通部に溜まった水及び雪を下方に落とす排出孔が形成されていることを特徴とする自動車の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−230436(P2008−230436A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73862(P2007−73862)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】