説明

自動車の車体側部構造

【課題】 補強部材の大型化や重量化を来たすことなくセンターピラー部の強度を充分に確保することができると共に、車体側部に過大な衝撃力が加わった時にこの過大な衝撃力に対してセンターピラー部の下部箇所を起点とする衝撃エネルギー吸収のための理想的変形を誘発することができるような自動車の車体側部構造を提供する。
【解決手段】 サイドボディ3に、ピラー部1及びサイドシル部5にかけて補強する第1の補強部材(例えば、サイドシルストレングスエクステンション20)を内装し、第1の補強部材20の下端部をサイドシル部補強用のリンフォースメント(例えば、サイドシルストレングス21)に結合し、かつ、第1の補強部材20の上端部をドアヒンジリンフォースメント8に結合すると共に、第1の補強部材20とドアヒンジリンフォースメント8とが互いに重なり合うラップ部分Lに第2の補強部材(例えば、パッチ22)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体側部構造に関し、特に、自動車のセンターピラー下部の車体構造する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のセンターピラー下部の車体構造としては、剛性の向上及び部品の歩留まりの向上を図る観点から、特開2000−247258号に開示されているような構造が提案されている。図9は、この種の技術による従来構造を示している。図9に示すように、従来構造におけるサイドシルストレングスエクステンション100(ピラー部及びサイドシル部にかけて補強する補強部材)は、サイドシルストレングス101とドアヒンジリンフォースメント102とを互いに連結するように配置され、さらにその上端部100aがピラーインナパネル103まで延設されて結合されている。かくして、ドアヒンジリンフォースメント102とピラーインナパネル103とをサイドシルストレングスエクステンション100を介して繋ぐことにより、ピラーインナパネル103とピラーアウタパネル104とから成るセンターピラー部105の強度向上が図られている。なお、図9において、106はドアヒンジ取付部である。
【0003】
一方、自動車のセンターピラー下部の車体構造に関しては、センターピラー部がベルトライン付近で折れ曲がるのを防止し得るような構造が従来より数多く提案されている(例えば、特開2002−347655号、特開平9−254729号参照)。この種の構造の一例としては、センターピラー部1の下部箇所α(図1参照)に強度的変化点を設け、車体側部に過大な衝撃力が加わった時にこの過大な衝撃力に対してセンターピラー部1の下部箇所α(図1参照)を起点とする理想的変形を誘発することにより、衝撃エネルギーを吸収して、センターピラー部1がベルトラインβ(図1参照)付近で折れ曲がることを防止し、車室内部へのセンターピラー部1の入り込みを抑えるようにしている。
【特許文献1】特開2000−247258号公報
【特許文献2】特開2002−347655号公報
【特許文献3】特開平9−254729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2000−247258号に開示されている車体構造にあっては、ドアヒンジリンフォースメント102とピラーインナパネル103とを互いに繋ぐことによりセンターピラー部1の強度向上を図ることができるという利点がある反面、サイドシルストレングスエクステンション100が大型化してしまい、重量増を招くという問題点がある。
【0005】
また、特開2000−247258号に記載の車体構造にあっては、次のような問題点がある。すなわち、車体側部に過大な衝撃力が加わった時にセンターピラー部1の下部箇所αが起点となるような理想的変形を誘発するために、ドアヒンジリンフォースメント102を高張力鋼板などの高強度の材料にて構成し、かつ、サイドシルストレングスエクステンション100を比較的低強度の材料にて構成する場合には、ドアヒンジリンフォースメント102とサイドシルストレングスエクステンション100の強度差が大きければ大きいほど、サイドシルストレングスエクステンション100の変形を誘発し易いこととなる。しかしながら、このようにすると、ドアヒンジリンフォースメント102の下側のトリムラインγ(図9参照)付近に応力が集中して、サイドシルストレングスエクステンション100がこのトリムラインγを起点に破断してしまうおそれがある。従って、ドアヒンジリンフォースメント102とサイドシルストレングスエクステンション100との間に大きな強度差をつけにくく、理想的変形を誘発するのが困難であるという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、補強部材の大型化や重量化を来たすことなくセンターピラー部の強度を充分に確保することができると共に、車体側部に過大な衝撃力が加わった時にこの過大な衝撃力に対してセンターピラー部の下部箇所を起点とする衝撃エネルギー吸収のための理想的変形を誘発することができるような自動車の車体側部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明では、サイドボディアウタパネルとサイドボディインナパネルとでサイドボディを構成し、前記サイドボディのピラー部及びサイドシル部にピラー部補強用及びサイドシル部補強用のリンフォースメントを内装した自動車の車体側部構造において、前記サイドボディに、ピラー部及びサイドシル部にかけて補強する第1の補強部材を内装し、前記第1の補強部材の下端部をサイドシル部補強用のリンフォースメントに結合し、かつ、前記第1の補強部材の上端部をドアヒンジリンフォースメントに結合すると共に、前記第1の補強部材と前記ドアヒンジリンフォースメントとが互いに重なり合うラップ部分に第2の補強部材を設けるようにしている。
また、本発明では、前記第2の補強部材を前記ラップ部分の少なくとも一部にかかるように配置すると共に、前記第2の補強部材の下端側のトリムラインを前記ドアヒンジリンフォースメントの下端側のトリムラインよりも下側に配置するようにしている。
また、本発明では、前記第1の補強部材の上端側のトリムラインを前記ドアヒンジリンフォースメントに設けられたドアヒンジ取付部の直下位置に配置するようにしている。
また、本発明では、前記第2の補強部材と前記ドアヒンジリンフォースメントとの間に前記第1の補強部材を挟み込んだ状態で配置し、前記ドアヒンジリンフォースメント,前記第1の補強部材,及び前記第2の補強部材の3部材を一緒に結合するようにしている。
また、本発明では、前記第2の補強部材を、前記サイドシル部において前記サイドボディインナパネルと前記サイドボディアウタパネルとの間に内装されるサイドシルストレングスコンポーネントの一部として予め部組みするようにしている。
また、本発明では、サイドボディインナパネルとサイドボディアウタパネルとでサイドボディを構成し、前記サイドボディのピラー部及びサイドシル部にピラー部補強用及びサイドシル部補強用のリンフォースメントを内装した自動車の車体側部構造において、前記ピラー部を補強するドアヒンジリンフォースメントの下端部をサイドシル部補強用のリンフォースメントに結合し、前記ドアヒンジリンフォースメントの内側に第1の補強部材を設けて、前記第1の補強部材の下端部を前記ドアヒンジリンフォースメントに設けられたドアヒンジ取付部の直下位置にまで延設すると共に、前記第1の補強部材の下端の少なくとも一部をラップする第2の補強部材を設けるようにしている。
また、本発明では、前記第2の補強部材を前記ラップ部分の少なくとも一部にかかるように配置すると共に、前記第2の補強部材の下端側のトリムラインを前記第1の補強部材の下端側のトリムラインよりも下側に配置するようにしている。
また、本発明では、前記第1の補強部材と前記第2の補強部材との間に前記ドアヒンジリンフォースメントを挟み込んだ状態で配置し、前記第1の補強部材,前記ドアヒンジリンフォースメント,及び前記第2の補強部材の3部材を一緒に結合するようにしている。
また、本発明では、前記第2の補強部材は、前記ドアヒンジリンフォースメントの一部として予め部組みされる部材であるようにしている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、サイドボディに、ピラー部及びサイドシル部にかけて補強する第1の補強部材を内装し、第1の補強部材の下端部をサイドシル部補強用のリンフォースメントに結合し、かつ、第1の補強部材の上端部をドアヒンジリンフォースメントに結合すると共に、第1の補強部材とドアヒンジリンフォースメントとが互いに重なり合うラップ部分に第2の補強部材を設けるようにしたものであるから、ドアヒンジリンフォースメントとピラーインナパネルとを第1の補強部材(例えば、サイドシルストレングスエクステンション)により繋ぐような構成を採用していないため、第1の補強部材を従来の場合よりも小型の部品にすることができて軽量化を図ることができると共に、第1の補強部材とドアヒンジリンフォースメントとの結合部を第2の補強部材により補強することができる。従って、ドアヒンジリンフォースメントの下端側のトリムライン付近に応力が集中して、第1の補強部材がこのトリムラインを起点に破断してしまうおそれが少ないので、ドアヒンジリンフォースメントを第1の補強部材に対してより大きな強度差をつけて強くすることができる。このため、車体側部に過大な衝撃力が加わった時に、第1の補強部材が適宜に変形されて衝撃エネルギーを吸収することができるような理想的な変形を誘発することが容易となる。
【0009】
また、請求項2に記載の本発明は、第2の補強部材をラップ部分の少なくとも一部にかかるように配置すると共に、第2の補強部材の下端側のトリムラインをドアヒンジリンフォースメントの下端側のトリムラインよりも下側に配置するようにしたものであるから、第2の補強部材の少なくとも一部でドアヒンジリンフォースメントの下端側のトリムラインを上下に跨ぐように第2の補強部材が配置されるので、上述のラップ部分を第2の補強部材にて効果的に補強することができ、ドアヒンジリンフォースメントの下端側のトリムライン付近への応力集中に伴うドアヒンジリンフォースメントの前記トリムラインを起点とする破断を防止することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の本発明は、第1の補強部材の上端側のトリムラインをドアヒンジリンフォースメントに設けられたドアヒンジ取付部の直下位置に配置するようにしたものであるから、ドアヒンジリンフォースメントの直上にあるドアヒンジ取付部を効果的に補強することができる。
【0011】
また、請求項4に記載の本発明は、第2の補強部材とドアヒンジリンフォースメントとの間に第1の補強部材を挟み込み、ドアヒンジリンフォースメント,第1の補強部材,及び第2の補強部材の3部材を一緒に結合するようにしたものであるから、ドアヒンジリンフォースメントを第1の補強部材に対して、より大きな強度差をつけて高強度にした場合でも、車体側部に過大な衝撃力が加わった時に、強度が相対的に低い第1の補強部材が3部材の結合部の周りで破断するのを防止することができる。
【0012】
また、請求項5に記載の本発明は、第2の補強部材を、サイドシル部においてサイドボディインナパネルとサイドボディアウタパネルとの間に内装されるサイドシルストレングスコンポーネントの一部として予め部組みするようにしたものであるから、サイドシルストレングスコンポーネントを構成部材とするサイドインナコンポーネントの製造に際して、余分な部品点数の増加を招くことがなく、組み付けの簡易化を図ることができる。
【0013】
また、請求項6に記載の本発明は、ピラー部を補強するドアヒンジリンフォースメントの下端部をサイドシル部補強用のリンフォースメントに結合し、ドアヒンジリンフォースメントの内側に第1の補強部材を設けて、第1の補強部材の下端部をドアヒンジリンフォースメントに設けられたドアヒンジ取付部の直下位置にまで延設すると共に、第1の補強部材の下端の少なくとも一部をラップする第2の補強部材を設けるようにしたものであるから、ドアヒンジリンフォースメントとピラーインナパネルとを第1の補強部材により繋ぐような構成を採用していないため、第1の補強部材を従来の場合よりも小型の部品にすることができて軽量化を図ることができると共に、第1の補強部材とドアヒンジリンフォースメントとの結合部を第2の補強部材により補強することができる。従って、第1の補強部材(例えば、ピラーアッパリンフォースメント)の下端側のトリムライン付近に応力が集中して、ドアヒンジリンフォースメントがこのトリムラインを起点に破断してしまうおそれが少ないので、第1の補強部材をドアヒンジリンフォースメントに対して、より大きな強度差をつけて強くすることができる。そのため、車体側部に過大な衝撃力が加わった時に、第1の補強部材が適宜に変形されて衝撃エネルギーを吸収することができるような理想的な変形を誘発することが容易となる。
【0014】
また、請求項7に記載の本発明は、第2の補強部材をラップ部分の少なくとも一部にかかるように配置すると共に、第2の補強部材の下端側のトリムラインを第1の補強部材の下端側のトリムラインよりも下側に配置するようにしたものであるから、第2の補強部材の少なくとも一部で第1の補強部材の下端側のトリムラインを上下に跨ぐように第2の補強部材が配置されるので、車体側部に過大な衝撃力が加わった時に、第1の補強部材の下端側のトリムライン付近に応力が集中して、ドアヒンジリンフォースメントがこのトリムラインを起点に破断してしまうおそれが少ないことから、第1の補強部材をドアヒンジリンフォースメントに対して、より大きな強度差をつけて強くすることができる。このため、車体側部に過大な衝撃力が加わった際の衝撃エネルギーを効果的に吸収することができるような理想的な変形を誘発することが容易となる。
【0015】
また、請求項8に記載の本発明は、第1の補強部材と第2の補強部材との間にドアヒンジリンフォースメントを挟み込んだ状態で配置し、第1の補強部材,ドアヒンジリンフォースメント,及び第2の補強部材の3部材を一緒に結合するようにしたものであるから、第1の補強部材をドアヒンジリンフォースメントに対して、より大きな強度差をつけて高強度にした場合でも、車体側部に過大な衝撃力が加わった時に、強度が相対的に低いドアヒンジリンフォースメントが3部材の結合部の周りで破断するのを防止することができる。
【0016】
また、請求項9に記載の本発明は、第2の補強部材をドアヒンジリンフォースメントの一部として予め部組みするようにしたものであるから、余分な部品点数の増加を招くことがなく、組み付けの簡易化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る自動車の車体側部構造について図1〜図8を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る車体側部構造を有する自動車2を示している。この自動車2のサイドボディ3は、室外側に設けられるサイドボディアウタパネル4と、車室側に設けられるサイドボディインナパネル4’(図3参照)とを結合することにより構成されており、図1に示すように、サイドボディ3の中央部分を構成するセンターピラー部1並びにサイドボディ3の下端部分を構成するサイドシル部5を備えている。そして、センターピラー部1の前後箇所にフロントサイドドア6及びリアサイドドア7が配設されている。なお、図1において、αはセンターピラー部1の下部箇所であり、βはセンターピラー部1に対応する位置におけるフロントサイドドア6及びリアサイドドア7のベルトライン(ウエストライン)である。
【0019】
図2,図3及び図4は、センターピラー部1の下部箇所αの構造を拡大して示している。なお、これらの図においては、上述のフロントサイドドア6及びリアサイドドア7,ピラートリム,カーペット類は、説明を簡単にするために図示を省略している。図2〜図4に示すように、センターピラー部1の下部箇所αは、車体の外側面を構成するサイドボディアウタパネル4と、ドアヒンジリンフォースメント8及びサイドシルストレングスコンポーネント9から成るサイドインナコンポーネント10と、フロアパネル11及びサイドシルインナパネル12から成るフロアコンポーネント13とで構成されている。かくして、上述の下端箇所αには、サイドインナコンポーネント10がピラー部補強用及びサイドシル部補強用のリンフォースメント(補強部材)としてサイドボディインナパネル4’とサイドボディアウタパネル4との間に内装されている。そして、リアサイドドア7の回動中心となるリアドアヒンジ14に設けられた一対のネジ部15を、サイドボディアウタパネル4に形成された挿入孔16及びドアヒンジリンフォースメント8に形成された挿入孔17に車体外側から順次に挿入配置して、これらのネジ部15にナット18をそれぞれ締め込むことによって、リアドアヒンジ14が、ドアヒンジリンフォースメント8の所定の高さ位置のドアヒンジ取付部19に取付けられるようになっている。
【0020】
ここで、上述のサイドインナコンポーネント10の構成をさらに具体的に述べると、次の通りである。すなわち、サイドインナコンポーネント10は、図5に示すように、ドアヒンジリンフォースメント8及びサイドシルストレングスコンポーネント9とから成り、ドアヒンジリンフォースメント8の下端縁部8aと、サイドシルストレングスコンポーネント9を構成するサイドドシルストレングスエクステンション20(第1の補強部材)の上端縁部20aとが、互いにラップ部分Lをもって重ね合わされた状態で結合され、この状態の下でスポット溶接W(図3参照)などにて結合されている。なお、サイドシルストレングスコンポーネント9は、図3及び図6に示すように、サイドシルストレングス21(サイドシル部補強用のリンフォースメント)と、第1の補強部材であるサイドドシルストレングスエクステンション20と、第2の補強部材としての断面ハット形状のパッチ22とにより構成されており、サイドドシルストレングスエクステンション20は、その下端側の一部分20bがサイドシルストレングス21の一部21aに結合されてスポット溶接などにより結合されている。また、パッチ22は、サイドシルストレングスエクステンション20の上端縁20aに接合され、サイドドシルストレングスエクステンション20は、パッチ22とドアヒンジリンフォースメント8の下端縁部8aとの間に挟持された状態で後述の如くスポット溶接Wにて3者一体に結合されてサイドインナコンポーネント10に予め部組されている。
【0021】
また、図3に示すように、パッチ22は、ドアヒンジリンフォースメント8とサイドドシルストレングスエクステンション20とが互いに重なり合うラップ部分Lの少なくとも一部にかかるように配置され、パッチ22の下端側のトリムラインMが、ドアヒンジリンフォースメント8の下端側のトリムラインNよりも下側に配置されている。一方、サイドドシルストレングスエクステンション20の上端側のトリムラインSは、ドアヒンジリンフォースメント8のリアドアヒンジ取付部19のすぐ下側の位置(直下位置)に配置されている。これにより、ドアヒンジリンフォースメント8の直上にあるドアヒンジ取付部19を効果的に補強することができる。また、上述のラップ部分Lにおいては、パッチ22とドアヒンジリンフォースメント8との間にサイドドシルストレングスエクステンション20が挟まるように配置され、スポット溶接Wなどにより、パッチ22とサイドドシルストレングスエクステンション20とドアヒンジリンフォースメント8との3部材が一緒に結合されている。さらに、パッチ22は、ドアヒンジリンフォースメント8とサイドシルストレングスコンポーネント9(サイドドシルストレングスエクステンション20)とのラップ部分Lの付近にのみ配置すればよいことから、比較的小型の部品であり、サイドシルストレングスコンポーネント9の一部として予め部組されている。
【0022】
このような構成の車体側部構造によれば、サイドドシルストレングスエクステンション20の上端側のトリムラインSが、リアドアヒンジ取付部19のすぐ下側にあることから、サイドドシルストレングスエクステンション20を従来よりも小型化して軽量のものにすることができる。また、第2の補強部材としてのパッチ22は、ドアヒンジリンフォースメント8とサイドシルストレングスコンポーネント9とのラップ部分Lの少なくとも一部にかかるように配置され、ドアヒンジリンフォースメント8の下端側のトリムラインNよりも少なくとも一部が下側にくるような下端側のトリムラインMを持っており、ドアヒンジリンフォースメント8の下端側のトリムラインNを少なくとも一部で上下に跨ぐように配置されていることから、ドアヒンジリンフォースメント8の下端側のトリムラインN付近に応力が集中して、サイドドシルストレングスエクステンション20がこのトリムラインNを起点に破断してしまうおそれが少ない。従って、ドアヒンジリンフォースメント8を第1の補強部材であるサイドドシルストレングスエクステンション20に対して、より大きな強度差をつけて強くすることができる。このため、車体側部の過大な衝撃が加わった時に、サイドドシルストレングスエクステンション20に加わる衝撃エネルギーを吸収することができるような理想的な変形を誘発することが容易となり、ひいてはセンターピラー部1のベルトラインβ付近での変形(折れ曲がり)を防止することができ、車室内部へのセンターピラー部1の入り込みを抑えることができる。
【0023】
また、パッチ22とドアヒンジリンフォースメント8の間にサイドドシルストレングスエクステンション20が挟み込まれた状態で配置されて、パッチ22,サイドドシルストレングスエクステンション20,及びドアヒンジリンフォースメント8の3部材が一緒に結合されているため、ドアヒンジリンフォースメント8をサイドドシルストレングスエクステンション20に対して、より大きな強度差をつけて高強度にした場合でも、車体側部に過大な衝撃力が加わった時に、強度の比較的低いサイドドシルストレングスエクステンション20がスポット溶接Wなどによる結合部の周りで破断するのを防止することができる。さらに、パッチ22をサイドシルストレングスコンポーネント9の一部として予め部組みするようにしているので、サイドインナコンポーネント10を製造する際に、余分な部品点数の増加を招くことがなく、組み付けの簡易化を図ることができる。
【0024】
また、図7及び図8は、本発明の別の実施形態に係る車体側部構造を示している。なお、図7及び図8において、図1〜図6と同様の部分には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
サイドインナコンポーネント10は、図7及び図8に示すように、サイドドシルストレングス21に直接結合されるドアヒンジリンフォースメント8と、このドアヒンジリンフォースメント8の内面に結合される断面ハット形状のピラーアッパリンフォースメント23(第1の補強部材)と、サイドシルストレングス21と、パッチ22(第2の補強部材)とから構成されている。
【0026】
上述のパッチ22は、ピラーアッパリンフォースメント23の下端縁部23aと少なくとも一部がラップ部分Lをもって重ね合わせられて配置され、少なくとも一部はピラーアッパリンフォースメント23の下端側のトリムラインTよりも下側にくるようにパッチ22の下端側のトリムラインMがピラーアッパリンフォース23の下端側のトリムラインTより下側に配置されている(図8参照)。
【0027】
さらに、ラップ部分Lにおいては、パッチ22とピラーアッパリンフォースメント23との間にドアヒンジリンフォースメント8が挟み込まれるように配置され、スポット溶接W(図8参照)などにより、パッチ22とドアヒンジリンフォースメント8とピラーアッパリンフォースメント23の3部材が一緒に結合されている。さらに、パッチ22は、ピラーアッパリンフォース23とドアヒンジリンフォースメント8とのラップ部分Lの付近にのみ配置すればよく、比較的小型の部品のため、ドアヒンジリンフォースメント8の一部として予め部組みされている。
【0028】
このような構成の車体側部構造によれば、パッチ22は、その少なくとも一部がピラーアッパリンフォースメント23の下端縁部23aに対してラップ部分Lをもって重なり合うように配置され、パッチ22の少なくとも一部がピラーアッパリンフォースメント23の下端側のトリムラインTよりも下側にくるように配置されており、ピラーアッパリンフォースメント23の下端側のトリムラインTをパッチ22の少なくとも一部で上下に跨ぐように配置されているので、車体側部に過大な衝撃力が加わった時にはピラーアッパリンフォースメント23のトリムラインT付近に応力が集中して、ドアヒンジリンフォースメント8がこのトリムラインTを起点に破断してしまうおそれが少ない。従って、ピラーアッパリンフォースメント23をドアヒンジリンフォースメント8の下部部分に対して、より大きな強度差をつけて強くすることができる。このため、車体側部に過大な衝撃力が加わった時に、ドアヒンジリンフォースメント8に加わる衝突のエネルギーを吸収することができるような理想的な変形を誘発することが容易となり、センターピラー部1のベルトラインβ付近の変形(折れ曲がり)を防止することができ、車室内部へのセンターピラー部1の入り込みを抑えることができる。
【0029】
また、パッチ22とピラーアッパリンフォースメント23との間にドアヒンジリンフォースメント8を挟み込んだ状態で配置して、スポット溶接Wなどにより、パッチ22とドアヒンジリンフォースメント8とピラーアッパリンフォースメント23との3部材を一緒に結合するようにしているため、ピラーアッパリンフォースメント23をドアヒンジリンフォースメント8の下部部分に対して、より大きな強度差をつけて強くした場合でも、強度の比較的低いドアヒンジリンフォースメント8が、車体側部に過大な衝撃力が加わった時にスポット溶接Wなどによる結合部の周りで破断することを防止することができる。さらに、パッチ22は、ドアヒンジリンフォースメント8の一部として予め部組みしてあるため、余分な部品点数の増加を招くことがなく、組み付けの簡易化を図ることができる。
【0030】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の実施形態では断面ハット形状のパッチ(第2の補強部材)22を用いるようにているが、パッチ22の形状などは適宜に変更可能である。また、本発明は、センターピラー部1に限らず。フロントピラー部やリアピラー部などにも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る車体側部構造を備えた自動車の斜視図である。
【図2】図1の自動車のセンターピラー部の下部箇所を拡大して示す斜視図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】センターピラー部の下部を構成するサイドインナコンポーネントの分解斜視図である。
【図5】センターピラー部の下部を構成するサイドシルストレングスコンポーネント及びドアヒンジリンフォースメントを示す分解斜視図である。
【図6】上述のサイドシルストレングスコンポーネントの分解斜視図である。
【図7】本発明の別の実施形態に係る車体側部構造を示すものであって、サイドインナコンポーネント6の斜視図である。
【図8】図7におけるB−B線断面図である。
【図9】従来における自動車の側部車体構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 センターピラー部
2 自動車
3 サイドボディ
4 サイドボディアウタパネル
4’ サイドボディインナパネル
5 サイドシル部
8 ドアヒンジリンフォースメント
9 サイドシルストレングスコンポーネント
10 サイドインナコンポーネント
19 ドアヒンジ取付部
20 サイドシルストレングスエクステンション(第1の補強部材)
21 サイドシルストレングス
22 パッチ(第2の補強部材)
23 ピラーアッパリンフォースメント
α 下部箇所
β ベルトライン
M,N,S,T トリムライン








【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドボディアウタパネルとサイドボディインナパネルとでサイドボディを構成し、前記サイドボディのピラー部及びサイドシル部にピラー部補強用及びサイドシル部補強用のリンフォースメントを内装した自動車の車体側部構造において、前記サイドボディに、ピラー部及びサイドシル部にかけて補強する第1の補強部材を内装し、前記第1の補強部材の下端部をサイドシル部補強用のリンフォースメントに結合し、かつ、前記第1の補強部材の上端部をドアヒンジリンフォースメントに結合すると共に、前記第1の補強部材と前記ドアヒンジリンフォースメントとが互いに重なり合うラップ部分に第2の補強部材を設けたことを特徴とする自動車の車体側部構造。
【請求項2】
前記第2の補強部材を前記ラップ部分の少なくとも一部にかかるように配置すると共に、前記第2の補強部材の下端側のトリムラインを前記ドアヒンジリンフォースメントの下端側のトリムラインよりも下側に配置したことを特徴とする請求項1に記載の自動車の車体側部構造。
【請求項3】
前記第1の補強部材の上端側のトリムラインを前記ドアヒンジリンフォースメントに設けられたドアヒンジ取付部の直下位置に配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車の車体側部構造。
【請求項4】
前記第2の補強部材と前記ドアヒンジリンフォースメントとの間に前記第1の補強部材を挟み込み、前記ドアヒンジリンフォースメント,前記第1の補強部材,及び前記第2の補強部材の3部材を一緒に結合したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の自動車の車体側部構造。
【請求項5】
前記第2の補強部材を、前記サイドシル部において前記サイドボディインナパネルと前記サイドボディアウタパネルとの間に内装されるサイドシルストレングスコンポーネントの一部として予め部組みするようにしたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の自動車の車体側部構造。
【請求項6】
サイドボディインナパネルとサイドボディアウタパネルとでサイドボディを構成し、前記サイドボディのピラー部及びサイドシル部にピラー部補強用及びサイドシル部補強用のリンフォースメントを内装した自動車の車体側部構造において、前記ピラー部を補強するドアヒンジリンフォースメントの下端部をサイドシル部補強用のリンフォースメントに結合し、前記ドアヒンジリンフォースメントの内側に第1の補強部材を設けて、前記第1の補強部材の下端部を前記ドアヒンジリンフォースメントに設けられたドアヒンジ取付部の直下位置にまで延設すると共に、前記第1の補強部材の下端の少なくとも一部をラップする第2の補強部材を設けたことを特徴とする自動車の車体側部構造。
【請求項7】
前記第2の補強部材を前記ラップ部分の少なくとも一部にかかるように配置すると共に、前記第2の補強部材の下端側のトリムラインを前記第1の補強部材の下端側のトリムラインよりも下側に配置したことを特徴とする請求項6に記載の自動車の車体側部構造。
【請求項8】
前記第1の補強部材と前記第2の補強部材との間に前記ドアヒンジリンフォースメントを挟み込んだ状態で配置し、前記第1の補強部材,前記ドアヒンジリンフォースメント,及び前記第2の補強部材の3部材を一緒に結合したことを特徴とする請求項6又は7に記載の自動車の車体側部構造。
【請求項9】
前記第2の補強部材を前記ドアヒンジリンフォースメントの一部として予め部組みするようにしたことを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の自動車の車体側部構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−44525(P2006−44525A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230291(P2004−230291)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】