説明

自動車内装材の取付構造

【課題】使い勝手の良い自動車内装材の取付構造の提供。
【解決手段】自動車内装材Gの裏面にボス部Bを突設して、該ボス部をクリップCを介して車体P側に穿設された取付孔Hに係止することにより、自動車内装材を車体に取り付ける自動車内装材の取付構造において、上記クリップは、U字状本体1を備え、該U字状本体を画成する一方の側壁2Aは、上記ボス部の一面と近接して対向し、同他方の側壁2Bは、ボス部の他面と離間して対向すると共に、―方の側壁の内面にボス部に開設された係合孔9に係合する係合爪4Aを形成し、他方の側壁の内面に同ボス部の係合孔と対向する係合爪4Bを形成し、且つ、該他方の側壁の外面に上記取付孔の孔縁に係止する傾斜肩5を形成することにより、U字状本体に対するボス部の差し込みを容易となすと同時に、ボス部からのクリップの抜け外れを有効に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、樹脂ガーニッシュなどの自動車内装材を車体に取り付ける取付構造に開するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種取付構造は、具体的には図示しないが、自動車内装材の裏面にボス部を一体に突設して、該ボス部をクリップを介して車体側に穿設された取付孔に係止することにより、自動車内装材を車体に取り付けようとするもので、これに供されるクリップは、合成樹脂の一体成形品で、U字状本体を備え、該U字状本体を画成する一方の側壁をストレート形状に成形して、その内面途中に上記ボス部に開設された係合孔に係合する係合爪を形成し、同他方の側壁を該一方の側壁から若干開き気味に成形して、その外面途中に上記車体の取付孔の孔縁に係止する傾斜肩を形成する一方、U字状本体の内側に上記ー方の側壁と共働してボス部を両側から挾持する挾持片を平行に立設して、該挾持片の一方の側壁と対向する内面先端にボス部の係合孔に係合する係合爪を同様に形成する構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、実際に、自動車内装材を車体に取り付ける場合には、まず、クリップのU字状本体を画成するー方の側壁と上記挾持片の間に自動車内装材のボス部を差し込むと、当該一方の側壁と挾持片に形成されている各係合爪がボス部の係合孔に両側から係合するので、この状態を得て、そのまま、クリップを車体側に穿設されている取付孔内に挿入すると
、特に、U字状本体を画成する開き気味の他方の側壁が内側に僥みながら取付孔を通過して、外方に突出する自身の傾斜肩を取付孔の孔縁に弾性的に係止するので、これにより、自動車内装材が車体側に取り付けられることとなる。
【特許文献1】意匠登録第1067403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、従来の取付構造の下では、自動車内装材を車体側にワンタッチで取り付けられる利点を有するものではあるが、反面、クリップのU字状本体を画成する一方の側壁と挾持片の間にボス部を差し込む場合には、近接して対峙する各係合爪を外側に押し広げながら強制的に差し込まなければならないので、作業に大きな力が要求される恐れがあった。
【0005】
又、U字状本体の内側に立設された係合爪付の挾持片は独立して僥める関係で、自動車内装材のボス部を引っ張って、車体から取り外す場合には、比較的小さな力で、当該挾持片を他方の側壁方向へ大きく撓ませることができるので、この係合爪がボス部の係合孔から容易に外れて、クリップを車体の取付孔に残したまま、ボス部のみが取付孔から引き抜かれる恐れがあった。この為、再取り付けに際しては、取付孔から残留したクリップを取り外して、再度、ボス部に装着し直さなければならないので、作業が煩雑となることも否定できない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、斯かる従来の取付構造が抱える課題を有効に解決するために開発されたもので、請求項1記載の発明は、自動車内装材の裏面にボス部を突設して、該ボス部をクリップを介して車体側に穿設された取付孔に係止することにより、自動車内装材を車体に取り付ける自動車内装材の取付構造において、上記クリップは、U字状本体を備え、該U字状本体を画成する一方の側壁は、上記ボス部の一面と近接して対向し、同他方の側壁は、ボス部の他面と離間して対向すると共に、一方の側壁の内面にボス郎に開設された係合孔に係合する係合爪を形成し、他方の側壁の内面に同ボス部の係合孔と対向する係合爪を形成し、且つ、該他方の側壁の外面に上記取付孔の孔縁に係止する傾斜肩を形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1を前提として、U字状本体を画成する一方の側壁に形成される係合爪と、同他方の側壁に形成される係合爪とは、その形成位置が水平方向にずれていることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2を前提として、U字状本体を画成する一方の側壁に形成される係合が、同他方の側壁に形成される係合爪よりも下位に存在することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3を前提として、ボス部に開設される係合孔の下側内面は、一方の側壁に形成される係合爪方向に向かって上がり傾斜していることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4を前提として、U字状本体を画成する他方の側壁の内面下部に、ボス部の他面と対向する膨出壁部を形成する一方、一方の側壁に成される係合爪の突出高さが、他方の側壁に形成される係合爪の突出高さよりも小さいことを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、自動車内装材の裏面にボス部を突設して、該ボス部をクリップを介して車体側に穿設された取付孔に係止することにより、自動車内装材を車体に取り付ける自動車内装材の取付構造において、上記クリップは、U字状本体を備え、該U字状本体を画成する一方の側壁は、上記ボス部の一面と近接して対向し、同他方の側壁は、ボス部の他面と離間して対向すると共に、―方の側壁の内面にボス部に開設された係合孔に係合する係合爪を形成し、他方の側壁の内面に同ボス部の係合孔と対向する係合爪を形成し、且つ、該他方の側壁の外面に上記取付孔の孔縁に係止する傾斜肩を形成し、更にU字状本体を画成する他方の側壁の内面の、前記係合爪及び前記傾斜肩よりも下方位置に前記ボス部の他面に近接する突起を形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項6を前提として、U字状本体を画成する一方の側壁に形成される係合爪と、同他方の側壁に形成される係合爪とは、その形成位置が水平方向にずれていることを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項6又は請求項7を前提として、U字状本体を画成する一方の側壁に形成される係合爪が、同他方の側壁に形成される係合爪よりも下位に存在することを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の発明は、請求項6乃至請求項8を前提として、ボス部に開設される係合孔の下側内面は、一方の側壁に形成される係合爪方向に向かって上がり傾斜していることを特徴とする。
【0015】
請求項10記載の発明は、請求項6乃至請求項9を前提として、U字状本体を画成する他方の側壁の内面下部に、ボス部の他面と対向する膨出壁部を形成する一方、一方の側壁に形成される係合爪の突出高さが、他方の側壁に形成される係合爪め突出高さよりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
依って、請求項1記載の発明にあっては、U字状本体を画成する一方の側壁は、ボス部に対して近接して対向しているが、同他方の側壁は、ボス部に対して離間して対向しているので、自動車内装材のボス部をクリップのU字状本体内に差し込む場合には、他方の側壁に形成されている係合爪が殆ど機能しなくなるので、従来と比較すると、差し込み作業に大きな力が要求されることがなくなる。
【0017】
又、上記ボス部に装着されたクリップを車体の取付孔に押入すると、今度は、他方の側壁が内方へ撓んで、自身の傾斜肩を取付孔の孔縁に係止するので、これにより、自動車内装材が車体に取り付けられることとなるが、斯かる状態において、自動車内装材のボス部を引っ張って車体から取り外そうとすると、他方の側壁に形成されている傾斜肩が取付孔の孔縁を滑って、他方の側壁が内方へ大きく撓むこととなるので、この時には、当該他方の側壁に形成されている係合爪がボス部の係合孔内に深く入り込みながら係合して、クリップがボス部から抜け外れるのを確実に防止できる。
【0018】
一方、請求項6の発明にあっては、上記請求項1の発明の効果に加えて、以下の効果がもたらされる。すなわち、クリップを車体の取付孔に挿入する際において、その初期挿入時には、U字状本体のU字状をなした屈曲部である下端部近傍を中心にして、U字状本体を画成する他方の側壁が回動するため、他方の側壁の回動中心と取付孔に接触する作用点との距離を大きくとれ、挿入抵抗を小さくすることができる。
【0019】
そして、クリップが取付孔にある程度挿入されて、他方の側壁の内面に形成された突起がボス部の他面に当接すると、この突起が他方の側壁の回動中心となるため、突起が形成されていない場合と比べて、回動中心が他方の側壁の上方へ移動するようになるので、回動中心と取付孔に接触する作用点との距離が短くなり挿入抵抗が増大するが、最後まで押し込んで傾斜肩が取付孔の裏面側に係合するまでの距離は既に短くなっているので、それほど抵抗なく、押し込むことができると共に、押し込み完了時のクリック感を高めることができる。更に、押し込みが完了して傾斜肩が取付孔の裏面側に係合した状態では、上記突起によって抜け止め力を高めることができる。
【0020】
請求項2及び請求項7記載の発明にあっては、一方の側壁に形成される係合爪と他方の側壁に形成される係合爪とが水平方向にずれているので、各係合爪の突出高さを可能な限り大きくできる結果、ボス部の係合孔から外れ難くなる。
【0021】
請求項3及び請求項8記載の発明にあっては、ボス部に対して近接して対向する一方の側壁に形成される係合爪が、ボス部に対して離間して対向する他方の側壁に形成される係合爪よりも下位に存在しているので、ボス部とクリップの装着位置がバラツキなく定まり、装着精度が向上する。又、ボス部に装着されたクリップを車体の取付孔に挿入する時に、他方の側壁が内方へ撓んで、その係合爪がボス部の係合孔内に入り込む際には、当該係合爪が上位に存在しているので、係合孔の孔縁と擦れることがなくなり、押入力が小さくて済む。
【0022】
請求項4及び請求項9記載の発明にあっては、ボス部に開設される係合孔の下側内面が一方の側壁に形成される係合爪方向に向かって上がり傾斜しているので、常に係合孔に係合することとなる一方の側壁の係合爪が、エッジを成して、当該上がり傾斜する斜面に引っ掛かって、係合孔としっかりと係合する。
【0023】
請求項5及び請求項10記載の発明にあっては、クリップのU字状本体内にボス部を差し込む時には、一方の側壁と他方の側壁とが外方へ自由に撓んで軽く差し込まれて行くが、ボス部の先端が他方の側壁の膨出壁部に接して更に奥まで差し込まれていくと、ボス部は一方の側壁と膨出塗部とで弾性的に挾持されて、その姿勢が規制されるので、これ以降は、他方の側壁自体はボス部面と離間して、その係合爪はあまり関与せず、一方の側壁がその係合爪の突出高さ分だけ撓む。しかし、この場合には、一方の側壁に形成されている係合爪が他方の側壁に形成されている係合爪よりも突出高さが小さいので、差し込み力は小さくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、クリップのU字状本体を画成する一方の側壁に対しては、自動車内装材のボス部の一面と近接して対面させ、同他方の側壁に対しては、ボス部の他面と離間して対向させると共に、一方の側壁の内面にボス部に開設された係合孔に係合する係合爪を形成し、他方の側壁の内面に同ボス部の係合孔と対向する係合爪を形成し、且つ、他方の側壁の外面に車体の取付孔の孔縁に係止する傾斜肩を形成することにより、U字状本体に対するボス部の差し込みを容易となすと同時に、ボス布からのクリップの抜け外れを有効に防止せんとするものである。
【実施例】
【0025】
以下、図1〜8を用いて、本発明の好適な実施例に基づいて詳述すれば、該実施例に係る取付構造も、従来と同様に、図1に示す如く、樹脂ガーニッシュなどの自動車内装材Gの裏面にボス部Bを一体に突設して、該ボス部BをクリップCを介して車体パネルP側に穿殷された取付孔Hに係止させることにより、該自動車内装材Gを車体パネルPに取り付けることを目的として開発されたものであるが、特徴とするところは、以下の構成を採用した点にある。
【0026】
そこで、まず、クリップCから説明すると、当該クリップCは、合成樹脂の一体成形品で、図2・図3にも示す如く、U字状本体1を備え、該U字状本体1を画成する一方の側壁2Aに関しては、上記ボス部Bの一面とストレート形状をもって近接して対向させるものとし、その上端縁には略円形状の拡大部3を形成すると共に、その内面上部に後述するボス部Bに開設された係合孔9に係合する係合爪4Aを内方へ突出する状態に形成する構成となっている。
【0027】
又、U字状本体1を画成する他方の側壁2Bに関しては、ボス部Bの他面と開き気味の形状をもって離間して対向させるものとし、その上端縁には同じく略円形状の拡大部3を形成する一方、その内面上部に上記ボス部Bに開設された係合孔9と対向する係合爪4Bを内方へ突出する状態に形成すると共に、外面上部に車体パネルPの取付孔Hの孔縁に係止する傾斜肩5を外方へ突出する状態に形成し、且つ、内面下部にボス部Bの他面と近接して対向する膨出壁部6を一定の範囲に亘り形成し、更に、当該膨出壁部6の下位から底部にかけて誤装着防止用の傾斜壁7を突設する構成となっている。
【0028】
尚、ここで、上記した一方の側壁2Aに形成される係合爪4Aと他方の側壁2Bに形成される係合爪4Bとの関係は、図示する如く、水平方向では、その各自の形成位置が左右にずれており、上下方向では、一方の側壁2Aに形成されている係合爪4Aが、他方の側壁2Bに形成される係合爪4Bよりも下位に存在し、突出高さでは、一方の側壁2Aに形成されている係合爪4Aが、他方の側壁2Bに形成される係合爪4Bよりも小さくなるように設定されている。従って、本実施例にあって、特に、形成位置が左右にずれていることは、両係合爪4A・4Bが重なることがないので、各係合爪4A・4Bの突出高さを可能な限り大きくすることが可能となる。
【0029】
又、自動車内装材Gのボス部Bは、板状を呈して、図4にも示す如く、その両側縁に他面側方向にのみ伸びる巾広なガイド壁8を有するもので、該各ガイド壁8の聞にクリップCを装着するものであるが、上記した両係合爪4A・4Bと対応する個所に左右にずれた各係合爪4A・4Bを係合できる係合孔9を開設すると共に、下端縁に上記した誤装着防止用の傾斜壁7と相似するテーパー面部10を形成する構成となっている。尚、上記係合孔9の下側内面に対しては、図示する如く、一方の側壁2Aに形成される係合爪4A方向に向かって上がり傾斜する斜面11を積極的に付与するものとする。
【0030】
依って、斯かる構成の取付構造の下で、実際に、自動車内装材Gを車体パネルPに取り付ける場合には、まず、上記した傾斜壁7とテーパー面部10とを方向的に一致させながら、クリップCのU字状本体1内に自動車内装材Gの裏面に突設されたボス部Bを差し込むこととなるが、この場合には、U字状本体1を画成する一方の側壁2Aは、ボス部Bに対して近接して対向するが、他方の側壁2Bは、ボス部Bに対して離間して対向することとなって、この他方の側壁2Bに形成されている係合爪4Bが殆ど機能することがないので、最初は、図5に示す如く、一方の側壁2Aと他方の側壁2Bとが外方へ自由に撓んで軽く差し込まれて行くが、ボス部Bの先端が他方の側壁2Bの膨出壁部6に接して更に奥まで差し込まれていくと、ボス部Bは一方の側壁2Aと膨出壁部6とで弾性的に挾持されて、その姿勢が規制されるので、これ以降は、一方の側壁2Aをその係合爪4Aの突出高さ分だけ撓ませながら、ボス部Bが差し込まれて行く。
【0031】
そして、ボス部BがU字状本体1の内部に完全に差し込まれると、図6に示す如く、ボス部Bの係合孔9の下側斜面11に一方の側壁2Aに形成された係合爪4Aが強固に係合するので、これにより、クリップC自体がボス部Bに安定した状態をもって装着されることとなるが、他方の側壁2Bに形成された係合爪4Bは、その先端を係合孔9内に若干臨ましめるだけで、一方の側壁2Aに形成された係合爪4Aのように、係合孔9とは完全に係合してはいない。
【0032】
従って、本実施例にあっては、ボス部Bに対するクリップCの装着力は、一方の側壁2Aに形成される係合爪4Aの突出高さが大きい程大きくなる訳であるが、既述した如く、当該一方の側壁2Aに形成されている係合爪4Aが、他方の側壁2Bに形成されている係合爪4Bよりも突出高さが小さく設定されているので、この分だけ、差し込み力は小さくて済む。又、ボス部Bに対して近接して対向する一方の側壁2Aに形成される係合爪4Aが、ボス部Bに対して離間して対向する他方の側壁2Bに形成される係合爪4Bよりも下位に存在しているので、これにより、ボス部BとクリップCの装着位置がバラツキなく定まり、装着精度が向上することともなる。
【0033】
そこで、後は、斯かる状態のまま、クリップCを車体パネルPの取付孔Hに挿入すれば、図7に示す如く、U字状本体1を画成する他方の側壁2Bが内方へ撓みながら通過して、その傾斜肩5を取付孔Hの孔縁に弾性的に係止するので、これにより、自動車内装材Gが車体パネルP側にワンタッチで取り付けられることとなる。尚、この場合は、他方の側壁2Bが内方に撓んだ分、その係合爪4Bも、若干ではあるが、係合孔9に対する係入量が多くなる。
【0034】
又、ボス部Bに装着されたクリップCを車体パネルPの取付孔Hに挿入する時に、他方の側壁2Bが内方に撓んで、その係合爪4Bがボス部Bの係合孔9内に入り込む際には、当該係合爪4Bが上位に存在し、且つ、係合孔9の下側斜面11は係合爪4B方向に向かっては下り傾斜となっているので、係合爪4Bが係合孔9の孔縁と擦れることがなくなり、これによっても、クリップCの挿入力が小さくて済む。
【0035】
逆に、係合孔9の下側斜面11が一方の側壁2Aに形成される係合爪4A方向に向かって上がり傾斜しているので、常に係合孔9に係合することとなる当該係合爪4Aが、エッジを成して、その下側斜面11に引っ掛かって、係合孔9にしっかりと係合する。従って、この場合には、一方の側壁2Aに形成される係合爪4Aの下面も、上記下側斜面11と相似するデーパー形状を付与することが好ましい。
【0036】
そして、この自動車内装材Gの車体パネルPに対する取り付け状態を解除するために、自動車内装材Gのボス部Bを引っ張って、車体パネルPから取り外す場合には、ボス部Bを車体パネルPの取付孔Hから引き抜こうとすると、図8に示す如く、他方の側壁2Bに形成されている傾斜肩5が取付孔Hの孔縁を滑って、他方の側壁2Bが内方へ大きく撓むこととなるが、この時には、当該他方の側壁2Bに形成されている係合爪4Bがボス部Bの係合孔9内に深く入り込みながら係合するので、クリップCがボス部Bから抜け外れるのを確実に防止できる。
【0037】
従って、本実施例の下では、クリップCがボス部Bに装着されたまま、車体パネルPの取付孔Hから引き抜かれるので、従来のように、再取り付けに際しては、取付孔Hから残留したクリップCを取り外して、再度、ボス部Bに装着し直す必要がなくなり、作業性の向上が大いに期待できることとなる。
【0038】
図9〜12には、本発明の他の実施例が示されている。なお、図1〜8に示す実施例と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略することにする。
【0039】
この自動車内装材の取付構造においては、クリップの形状が前記実施例と相違する。すなわち、この取付構造に用いられるクリップC’には、U字状本体1を画成する他方の側壁2Bの内面であって、同他方の側壁2Bに形成された係合爪4B及び傾斜肩5よりも下方位置に、自動車内装材Gの裏面から突設したボス部Bの他面(他方の側壁2Bに近接する面)に近接する突起12が形成されている。また、図9に示すように、この突起12は、他方の側壁2Bの幅全体に亘って形成されている。
【0040】
なお、このクリップC’の他方の側壁2Bの外面に形成された傾斜肩5の下端から、車体パネルPの取付孔Hへの挿入方向に沿って平坦面5aが形成されており、他方の側壁2Bをなるべく薄くして撓みやすくしている(図11参照)。
【0041】
そして、上記クリップC’は、図10に示すように、ボス部Bに装着された後、車体パネルPの取付孔Hへ挿入されることとなる。
【0042】
すなわち、クリップC’を取付孔Hへ挿入していき、他方の側壁2Bの外面一箇所が、取付孔Hの上方の孔縁に接触し始めると、その部分を作用点Aとして取付孔H内周に押圧されて、他方の側壁2Bが内側へ撓み始める。この初期挿入時において、他方の側壁2Bは、膨出壁部6の上方に位置する回動中心点O1を中心として回動するようになる。このとき、回動中心点O1と作用点Aとの距離L1は前記実施例とほぼ変わらず、比較的大きく確保することができるので、挿入抵抗を小さくすることができる。
【0043】
そして、図11に示すように、クリップC’が取付孔Hにある程度挿入されて、他方の側壁2Bの内面に形成された突起12がボス部Bの他面に当接すると、他方の側壁2Bの回動中心が上方に移動し、今度は突起12を回動中心(回動中心点O2とする)として、他方の側壁2Bが回動するようになる。このとき、取付孔Hからの押圧力の作用点Aは、他方の側壁2Bに形成された傾斜肩5の側端面5aの一部分となっているが、この場合の作用点Aと回動中心点O2との距離L2は、作用点Aと回動中心点O1との距離L1よりも短くなる。そのため、クリップC’の取付孔Hへの挿入抵抗が増大するが、クリップC’を最後まで押し込んで、傾斜肩5が取付孔の裏面側の孔縁に係合するまでの距離は既に短くなっているので、それほど抵抗なく、押し込むことができ、挿入作業性を低下させることがない。また、挿入抵抗の増大によって、クリップC’の押し込み完了時のクリック感を高めることができ、挿入作業の確実性を向上させる。
【0044】
こうして、クリップC’の取付孔Hへの押し込みが完了すると、図12に示すように、傾斜肩5が取付孔Hの裏面側の孔縁に係合して、自動車内装材Gが車体パネルPに取付けられることとなる。この状態で、ボス部Bが引っ張られて、クリップC’から抜け外れようとしても、突起12がボスBの他面に当接して、他方の側壁2Bを内側へ撓みにくくするので、クリップC’の抜け止め力が高められて、その抜け外れを効果的に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る自動車内装材の取付構造は、U字状本体に対するボス部の差し込みを容易とすると同時に、ボス部からのクリップの抜け外れを有効に防止できるので、自動車の樹脂ガーニッシュなどを車体に取り付ける場合には、頗る好都合なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例に係る取付構造を示す要部分解斜視図である。
【図2】(A)は実施例に供されるクリップを示す正面図、(B)は同平面図である。
【図3】(A)は図2(B)のA−A線断面図、(B)は図2(B)のB−B線断面図である。
【図4】(A)は実施例に供されるボス部を示す要部正面図、(B)は図4(A)のC−C線断面図である。
【図5】クリップのU字状本体の内部に自動車内装材のボス部を差し込む途中の状態を示す要部断面図である。
【図6】クリップのU字状本体の内部に自動車内装材のボス部を完全に差し込んだ状態を示す要部断面図である。
【図7】自動車内装材を車体パネルに取り付けた状態を示す要部断面図である。
【図8】自動車内装材を車体パネルから取り外す状態を示す要部断面図である。
【図9】本発明の他の実施例に係るクリップを示す斜視図である。
【図10】同クリップを車体パネルの取付孔に挿入し始めた状態を示す要部断面図である。
【図11】同クリップが車体パネルの取付孔にある程度挿入された状態を示す要部断面図である。
【図12】同クリップが車体パネルの取付孔に完全に挿入された状態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0047】
G 自動車内装材
B ボス部
C,C’ クリップ
P 車体パネル(車体)
H 取付孔
1 U字状本体
2A ー方の側壁
2B 他方の側壁
3 拡大部
4A 係合爪
4B 係合爪
5 傾斜肩
6 膨出壁部
7 傾斜壁
8 ガイド壁
9 係合孔
10 テーパー面部
11 下側斜面
12 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車内装材の裏面にボス部を突設して、該ボス部をクリップを介して車体側に穿設された取付孔に係止することにより、自動車内装材を車体に取り付ける自動車内装材の取付構造において、上記クリップは、U字状本体を備え、
該U字状本体を画成する一方の側壁は、上記ボス部の一面と近接して対向し、同他方の側壁は、ボス部の他面と離間して対向すると共に、
―方の側壁の内面にボス部に開設された係合孔に係合する係合爪を形成し、
他方の側壁の内面に同ボス部の係合孔と対向する係合爪を形成し、且つ、
該他方の側壁の外面に上記取付孔の孔縁に係止する傾斜肩を形成したことを特徴とする自動車内装材の取付構造。
【請求項2】
U字状本体を画成する一方の側壁に形成される係合爪と、同他方の側壁に形成される係合爪とは、その形成位置が水平方向にずれていることを特徴とする請求項1記載の自動車内装材の取付構造。
【請求項3】
U字状本体を画成する一方の側壁に形成される係合爪が、同他方の側壁に形成される係合爪よりも下位に存在することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車内装材の取付構造。
【請求項4】
ボス部に開設される係合孔の下側内面は、一方の側壁に形成される係合爪方向に向かって上がり傾斜していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動車内装材の取付構造。
【請求項5】
U字状本体を画成する他方の側壁の内面下部に、ボス部の他面と対向する膨出壁部を形成する一方、一方の側壁に形成される係合爪の突出高さが、他方の側壁に形成される係合爪め突出高さよりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自動車内装材の取付構造。
【請求項6】
自動車内装材の裏面にボス部を突設して、該ボス部をクリップを介して車体側に穿設された取付孔に係止することにより、自動車内装材を車体に取り付ける自動車内装材の取付構造において、上記クリップは、U字状本体を備え、
該U字状本体を画成する一方の側壁は、上記ボス部の一面と近接して対向し、同他方の側壁は、ボス部の他面と離間して対向すると共に、
―方の側壁の内面にボス部に開設された係合孔に係合する係合爪を形成し、
他方の側壁の内面に同ボス部の係合孔と対向する係合爪を形成し、且つ、
該他方の側壁の外面に上記取付孔の孔縁に係止する傾斜肩を形成し、
更にU字状本体を画成する他方の側壁の内面の、前記係合爪及び前記傾斜肩よりも下方位置に前記ボス部の他面に近接する突起を形成したことを特徴とする自動車内装材の取付構造。
【請求項7】
U字状本体を画成する一方の側壁に形成される係合爪と、同他方の側壁に形成される係合爪とは、その形成位置が水平方向にずれていることを特徴とする請求項6記載の自動車内装材の取付構造。
【請求項8】
U字状本体を画成する一方の側壁に形成される係合爪が、同他方の側壁に形成される係合爪よりも下位に存在することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の自動車内装材の取付構造。
【請求項9】
ボス部に開設される係合孔の下側内面は、一方の側壁に形成される係合爪方向に向かって上がり傾斜していることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の自動車内装材の取付構造。
【請求項10】
U字状本体を画成する他方の側壁の内面下部に、ボス部の他面と対向する膨出壁部を形成する一方、一方の側壁に形成される係合爪の突出高さが、他方の側壁に形成される係合爪め突出高さよりも小さいことを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の自動車内装材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−151371(P2006−151371A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303288(P2005−303288)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】