説明

自動車用インストルメント・パネル

【課題】必要な時にドライバーが運転席で行う作業を補助し、不要な時には格納される機能を持つ自動車用インストルメント・パネルを提供する。
【解決手段】インストルメント・パネル(5)が、その中央部に枢動可能に接続されるユーティリティ・トレイ(20)を持つ。ユーティリティ・トレイ(20)には、展開位置にあるときに上方を向く第一凹部(26)と、飲料容器を保持するための少なくとも一つの開口(23、24)とが設けられる。インストルメント・パネル(5)の上面部にある凹部(13)の深さが、ユーティリティ・トレイ(20)が格納位置にあるときでも飲料用器がユーティリティ・トレイ(20)によって支持されることを許容すべく、ユーティリティ・トレイ(20)が格納位置にあるときに、開口(23、24)の中に置かれた飲料容器が、開口(23、24)がインストルメント・パネル(5)の凹部(13)の表面に接触するまでの短い距離だけ下方に伸びることが出来るよう設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に関連し、具体的には自動車用インストルメント・パネルに関連する。
【背景技術】
【0002】
バンや貨物自動車のような商用車のドライバーが、彼らの労働時間の大部分を彼らの車の運転室の中で費やし、そして、毎日、受領証の準備や配達記録の作成、そして飲食などの数多くの作業をしなければならないことは知られている。したがって、ドライバーがこれらの作業をするのを補助可能で且つ、使用する必要がないときには格納されうる、コンパクトな手段を提供することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、必要な時にドライバーが運転席で行う作業を補助し、不要な時には格納される機能を持つ、改良された自動車用インストルメント・パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一の観点によれば、ユーティリティ・トレイを含む自動車用インストルメント・パネルが提供され、そのユーティリティ・トレイは、ユーティリティ・トレイが展開位置にあるときに上方に向く第一の凹部と、飲み物の容器を置くための少なくとも一つの開口部とを有する。さらに、ユーティリティ・トレイは、格納位置から、ユーティリティ・トレイの少なくとも一部がインストルメント・パネルの前面部から外側に延びる展開位置へ回転するのを許容するように、インストルメント・パネルに対して枢動可能に接続されている。そして、ユーティリティ・トレイは、格納位置にあるとき、インストルメント・パネルの上面部の凹部内に支えられ、該凹部の深さは、ユーティリティ・トレイが格納位置にあるときであっても飲料用器がユーティリティ・トレイによって支持されることを許容すべく、ユーティリティ・トレイが格納位置にあるときに、開口内に置かれた飲料容器が開口からインストルメント・パネルの凹部の表面に接触するまでの短い距離だけ下方に伸びることができるように設定されている。
【0005】
これは、ユーティリティ・トレイの開口(複数の場合もあり)より小径の飲料容器が格納位置にあるユーティリティ・トレイを使うことによって安定して運ばれることを可能とすると共に、開口を完全に通り抜けないような大きな容器が展開位置にあるユーティリティ・トレイによって安定して運ばれることを可能とし、その結果、サイズが大きく異なる容器を運ぶことを可能にするという利点を有する。加えて、缶のような平行な側面を持った容器が、ユーティリティ・トレイが格納位置にあるときに支持され得る。
【0006】
それぞれの開口は、開口の径が、ユーティリティ・トレイが展開位置にあるときに最上部となる第一の端部から第二の端部に向かって小さくなるように先細にされ得る。
【0007】
この場合において、飲料容器は先細にされたコップであり得る。
【0008】
上記開口は、ユーティリティ・トレイが展開位置にあるときに、該開口内に置かれた飲み物容器がインストルメント・パネルの前面部に接触することなく該開口から下方に延びるようにユーティリティ・トレイの中に配置され得る。
【0009】
第一の凹部は、筆記用テーブルとして使用するための平坦面を規定し得、第一の凹部の中に、筆記用具を置くための第二の凹部が形成される。
【0010】
ユーティリティ・トレイは、共通の軸の上に配設された二つのピン部材によってインストルメント・パネルに枢動可能に接続され、各ピン部材は、インストルメント・パネル内に形成された夫々の開口に係合し得る。
【0011】
ユーティリティ・トレイが格納位置にあるとき、ユーティリティ・トレイはインストルメント・パネルの前面部内に完全に収まり且つ、ユーティリティ・トレイの上面部が、周囲のインストルメント・パネルの上面部と協働して実質的に連続する面をつくる。
【0012】
これは、車両衝突の場合に車両乗員に接触する突出端部を無くすという利点を持つ。
【0013】
ユーティリティ・トレイは、そのインストルメント・パネルが取り付けられた自動車のドライバーと助手席の乗員の両方が利用しやすいように、インストルメント・パネルの実質的に中央に配設され得る。
【0014】
本発明の第二の観点によれば、本発明の第一の観点に従ったインストルメント・パネルを持つ自動車が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図を参照すると、自動車用のダッシュボード或いはインストルメント・パネル5が示される。インストルメント・パネル5は、自動車のフロントガラス或いはウインドシールド8の下端と境を接する後端部14を規定する横方向延設部6を持つ。多数の通気口7が、霜取りのために空気を換気装置(不図示)からウインドシールド8上に向かって通過することを可能にするべく、インストルメント・パネル5の横方向延設面6に形成されている。
【0016】
この例において、二つのストレージ・ボックス・カバー9、10が、横方向延設部6及びインストルメント・パネル5の上面部と並んで配設される。
【0017】
インストルメント・パネル5は、そのインストルメント・パネル5が取り付けられた自動車の運転者或いは乗員に対して顔の高さの換気を提供するために換気装置に接続された二つの通気口11を備える前面部15を有する。音響機器制御パネル12もまた、インストルメント・パネル5の前面部15に取り付けられる。
【0018】
凹部13が、インストルメント・パネル5の上面部に形成され、その凹部13の中にユーティリティ・トレイ20が回動自在に取り付けられる。ユーティリティ・トレイ20は、ユーティリティ・トレイ20が図1に示すように格納位置にあるときに、インストルメント・パネル5の前面部15に面する第一端部21とウインドシールド8に面する第二端部22とを有する。
【0019】
二つの開口23、24が第二端部22の方に形成されており、各開口23、24は、清涼飲料(ソフトドリンク)を販売するために使用されるタイプの先細りしたコップのような飲料容器に対応する大きさ及び形に設定される。
【0020】
各開口23、24は、ユーティリティ・トレイ20が図2及び3に示すような展開位置にあるときに最も高い位置となる第一端部から、ユーティリティ・トレイが図1に示すように格納されるときに最も高い位置にある第二端部に向かって開口23、24の径が小さくなるように先細になっている。
【0021】
各開口23、24の先細になった形は、コップの心出しを必要とされるときに補助することによって先細になっているコップが夫々の開口23、24の中に簡単に挿入されるのを可能とするだけでなく、コップが挿入された後では、コップがガタガタする音や望ましくない動きを低減すべく、コップの外面をしっかり捉えることを可能にする。理想的には、各開口のテーパーの角度が、開口23、24が対応し且つ支持しようとする先細のコップのテーパーの角度と同じになるのが良い。テーパー角度が正確に一致することは重要ではないが、コップが開口23、24をそのまま通過することを防止するためにコップの最大直径が開口23、24の最小直径よりも小さいことは重要であり、そして、開口23、24の最小直径は、コップが安定して支持されるのを確かなものとするため、開口23、24によってコップが捉まれる前に、コップの大部分が開口を通過することを可能とする大きさにされる必要がある。一般的に、コップが一杯のとき、その中に含まれる飲料の重心が開口23、24と同じ高さ或いは下にあることを確かなものとするために、コップの全長の略40%が、開口23、24を通って突き出ることが求められる。
【0022】
ユーティリティ・トレイ20は、共通の軸(図3中に線X-Xで示す)上に配設された二つのピン部材28、29によって、インストルメント・パネル5に枢動可能に接続される。各ピン部材28、29は、インストルメント・パネル5に形成された夫々の開口(図では隠れている)に係合する。球状の先端部を持つラッチ・ピン31が、ユーティリティ・トレイ20に形成されたディテント30との係合のため、横方向延設面6に固定される。
【0023】
図1を参照すると判るように、ユーティリティ・トレイ20は、ユーティリティ・トレイ20が格納位置にあるときに周囲のインストルメント・パネル5の上面部(この例においては、二つのストレージ・ボックス・カバー9、10及び、横方向延設面6)と協働して、実質的に連続する面をつくる上面部25を有する。
【0024】
ユーティリティ・トレイ20が格納位置にあるとき、開口23、24の小径側の端部が上方を向くが、凹部13の存在によって、缶やボトルのような他の飲料容器を開口23、24の中に保持することが可能となる。すなわち、開口23、24の一つに置かれた飲料容器は、ユーティリティ・トレイ20が格納位置にあるにもかかわらず、ユーティリティ・トレイ20によって支持されることを許容するべく、夫々の開口23、24から下方に向かって、インストルメント・パネル5の凹部13の表面に接触するまでの短い距離だけ延びることが出来る。しかしながら、この場合に提供される飲料容器の配置は、ユーティリティ・トレイ20が展開位置にありそして、先細になっているコップが開口23、24の中に置かれるときよりは効果的ではない。
【0025】
ユーティリティ・トレイ20が展開位置にあるとき、二つの開口23、24の上方を向いた大径端部だけでなく、ユーティリティ・トレイ20の下面の凹部26、27もまた、上方を向く。
【0026】
第一凹部26は、ユーティリティ・トレイ20の下面の大部分を占め、そして、その上において書類仕事を行ったり、食べ物を一時的に置くことの出来る平坦面を提供する。
【0027】
第二凹部27は、第一凹部26の中に形成され、そして、ペンや鉛筆のような筆記用具を一時的に置くことを意図している。図示されていないが、第二凹部27は、ペンや鉛筆をいつでも使用出来るように保持するためのクリップを含み得る。すなわち、第一凹部26は書き物テーブルとして使用されるのに適した平面を規定し、そして第二凹部27はペンや鉛筆のような筆記用具を置くために使用され得る。
【0028】
ユーティリティ・トレイ20は、ユーティリティ・トレイ20が格納位置にあるときにインストルメント・パネル5の前面部15から外方に延出する部分がないように構成され、それにより、自動車の衝突の間に乗員の身体が当たるような突出端部が一切形成されない。
【0029】
一方、第一端部21に対するピン28、29の位置が、ユーティリティ・トレイ20が展開位置にあるときに開口23、24の一方に置かれたコップがインストルメント・パネル5の前面部15に接触することなく各開口23、24から下方に延びることを確かなものとする。この配置は、インストルメント・パネル5の前面部15が、二つの開口23、24に対してコップを出し入れするのに干渉しないことを確かなものとするので重要である。加えて、ユーティリティ・トレイ20がインストルメント・パネル5の前面部15から外側に延びているので、開口23、24に置かれたコップは、コップの持ち主により近づけて置かれることになるであろう。
【0030】
好ましくは、図示されているように、そのインストルメント・パネルが取り付けられている自動車のドライバー及び助手席の乗員の両方が利用しやすいように、ユーティリティ・トレイ20はインストルメント・パネル5の実質的に中央の位置に配設される。
【0031】
ユーティリティ・トレイ20の下方にある凹部13に備えられる空間が、必要に応じて、書類のようなものを置くための付加的な保管場所として使用され得ることは理解できるであろう。
【0032】
ユーティリティ・トレイ20の操作は以下の通りである。格納位置から、ユーザーがユーティリティ・トレイ20の第二端部22を掴み、そして、それを上方に持上げ、それから、ユーティリティ・トレイ20を軸X-X回りに、そこにおいてトレイが凹部13内に形成された二つの台部の上に止まる展開位置に到達するまで回転させるべく、前方に引っ張る。
【0033】
先細になった開口を二つ使用することが、紅茶やコーヒーのようなソフトドリンクを販売するのによく使用される紙コップのような先細になったコップを支持するための、コスト効率の良い手段を提供するが、本発明が先細になった開口を使用することに限定されず、缶やボトルのような先細になっていない形態の飲料容器を支持するのを許容するための或る種の代替保持手段が、各開口に備えられ得ることが理解出来るであろう。
【0034】
本発明はとりわけ商用車での使用に関連するが、乗用車、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)及びMPV(多目的車)のような他の形態の自動車に適用しても効果を奏することは理解出来るであろう。
【0035】
本発明を一つ以上の実施形態に関連する例を用いて記述してきたが、本発明が記述されている実施形態に限定されず、そして記述されている実施形態に対する修正や代替実施形態が本発明の範囲から逸脱することなく構成され得ることが当業者によって理解出来るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に従った自動車のインストルメント・パネルの中央部の斜視図であり、ユーティリティ・トレイが格納位置にあるのを示す。
【図2】図1に示すインストルメント・パネルの中央部の側面斜視図であり、ユーティリティ・トレイが展開位置にあるのを示す。
【図3】インストルメント・パネルの中央部の平面図であり、ユーティリティ・トレイが展開位置にあるのを示す。
【符号の説明】
【0037】
5 インストルメント・パネル
6 横方向延設部
9 ストレージ・ボックス・カバー
10 ストレージ・ボックス・カバー
13 凹部
15 前面部
20 ユーティリティ・トレイ
21 第一端部
22 第二端部
26 第一凹部
27 第二凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用インストルメント・パネル(5)において、
上記インストルメント・パネル(5)は、該インストルメント・パネル(5)の前面部(15)の内側に格納される格納位置と少なくとも一部が上記インストルメント・パネル(5)の前面部(15)から外側に延びる展開位置とを選択的に取り得るように上記インストルメント・パネル(5)に枢動可能に接続されたユーティリティ・トレイ(20)を含み、
上記ユーティリティ・トレイ(20)は、
上記展開位置にあるときに上方を向く第一凹部(26)と、飲料容器を保持するための少なくとも一つの開口(23、24)とをその中に含み且つ、上記格納位置にあるときに、上記インストルメント・パネル(5)の上面部の凹部(13)内に支えられるように配設されており、
上記インストルメント・パネル(5)の上面部にある凹部(13)の深さは、該ユーティリティ・トレイ(20)が上記格納位置にあるときでも飲料用器が該ユーティリティ・トレイ(20)によって支持されることを許容すべく、該ユーティリティ・トレイ(20)が該格納位置にあるときに上記開口(23、24)の中に置かれた飲料容器が該開口(23、24)から該凹部(13)の表面に接触するまでの短い距離だけ下方に伸びることができるように設定されている自動車用インストルメント・パネル。
【請求項2】
上記ユーティリティ・トレイ(20)には上記開口(23、24)が複数設けられ、
それぞれの開口(23、24)は、上記ユーティリティ・トレイ(20)が上記展開位置にあるときに最上部となる第一端部から、上記展開位置にあるときに最下部となる第二端部に向かって開口(23、24)の径が減少するように先細に構成されている請求項1に記載の自動車用インストルメント・パネル。
【請求項3】
上記複数の開口(23,24)の少なくとも一つは、上記ユーティリティ・トレイ(20)が上記展開位置にあるときに、上記開口(23、24)内に置かれた如何なる飲料容器も、上記インストルメント・パネル(5)の前面(15)に接触することなく、該開口(23、24)から下方に延びるような位置に配設されている請求項2に記載の自動車用インストルメント・パネル。
【請求項4】
上記第一凹部(26)は、筆記用テーブルとしての使用に適した平坦面を規定し、
上記第一凹部(26)内には、筆記用具を置くための第二凹部(27)が形成された請求項1乃至3のいずれか一つに記載の自動車用インストルメント・パネル。
【請求項5】
上記ユーティリティ・トレイ(20)は、共通の軸上に配設された二つのピン部材(28、29)によって上記インストルメント・パネル(5)に枢動可能に接続され、
上記ピン部材(28、29)はそれぞれ、上記インストルメント・パネル(5)に形成された対応する開口と係合する請求項1乃至4のいずれか一つに記載の自動車用インストルメント・パネル。
【請求項6】
上記ユーティリティ・トレイ(20)が上記格納位置にあるとき、
該ユーティリティ・トレイ(20)は、上記インストルメント・パネル(5)の前面部(15)内に完全に収まり且つ、上記ユーティリティ・トレイ(20)の上面部は、周囲のインストルメント・パネルの上面部と協働して実質的に連続する面をつくる請求項1乃至5のいずれか一つに記載の自動車用インストルメント・パネル。
【請求項7】
上記ユーティリティ・トレイ(20)は、上記インストルメント・パネル(5)が取り付けられた自動車のドライバーと助手席の乗員の両方が利用しやすいように該インストルメント・パネル(5)の実質的に中央に配設される請求項1乃至6のいずれか一つに記載の自動車用インストルメント・パネル。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つに記載のインストルメント・パネルを備えた自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−204037(P2007−204037A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17672(P2007−17672)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(503136222)フォード グローバル テクノロジーズ、リミテッド ライアビリティ カンパニー (236)
【Fターム(参考)】