説明

自動選別装置及び資材の製造方法

【課題】 粉状若しくは粒状の選別対象物の中における特定元素の含有レベルの偏りをなくし、選別対象物に対する計測箇所での特定元素の含有レベルの計測結果と選別対象物の全体の特定元素の含有レベルとの乖離をなくすことができ、選別対象物を適切に選別することができる。
【解決手段】 粉状若しくは粒状の選別対象物Sを貯留するホッパー2と、ホッパー2に貯留された選別対象物Sを混合するスクリュー式攪拌機3と、スクリュー式攪拌機3で混合された選別対象物Sを搬送するベルトコンベア4と、ベルトコンベア4で搬送された選別対象物SにX線を照射し、前記照射によって発生する蛍光X線を計測する蛍光X線計測部6と、蛍光X線計測部6の計測結果から選別対象物Sに含まれる特定元素の含有レベルを判定する判定部7と、判定部7の判定結果に応じてベルトコンベア4の選別対象物Sを選別する選別部9とを備える自動選別装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原材料、製品、廃棄物などの選別対象物の選別に係り、特定元素の含有レベルに応じて選別対象物を選別する自動選別装置及び資材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の安定供給や廃棄物の発生量増加に伴う最終処分場の残存容量の減少が問題化している。そのため、原材料の効率的利用や廃棄物のリサイクル推進により、資源の消費抑制、環境への負荷低減を図ることが求められている。
しかし、原材料の効率的利用や廃棄物のリサイクル推進を適切に行うに当たっては、原材料や廃棄物等の中に含有されている特定元素が特に問題となる。現在、原材料や廃棄物中に含まれる特定元素成分に対しては規制が設けられ、この規制値をクリアしたものを使用することが求められており、さらに、適切な処理が施され、十分な品質管理がなされた製品を出荷することが要求されている。
例えば、セメント製造分野においては、リサイクルを推進させるために、焼却灰や汚染土壌などの各種廃棄物がセメント原料として混合されており、そのため、予めこれら各種廃棄物中の特定元素の含有レベルを計測し、混合に適した安全なものを選別して使用することが求められている。
【0003】
原材料や廃棄物を適切に選別する装置としては、例えば、特許文献1に開示されている、選別の対象となる廃回路基板を常に一定速度で移動させながら、蛍光X線分析により特定元素の含有の有無を検知し、その検知結果に応じて廃棄物を選別する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−310952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、選別対象物が粉状若しくは粒状である場合、粉状若しくは粒状の選別対象物の中で特定元素の含有レベルに偏りが生じてしまうことがある。このような状態で選別対象物に対して或る計測箇所で特定元素の含有レベルを計測した場合に、その計測結果が選別対象物の全体の特定元素の含有レベルと乖離してしまうことがあり、そのため選別対象物の特定元素の含有レベルの判定精度にばらつきが生じ、その結果選別対象物が適切に選別されなくなるという問題が起こり得る。
【0006】
本発明は、上記問題を解消するために提案するものであって、粉状若しくは粒状の選別対象物の中における特定元素の含有レベルの偏りをなくし、選別対象物における計測箇所での特定元素の含有レベルの計測結果と選別対象物全体の特定元素の含有レベルとの乖離をなくすことにより、特定元素の含有レベルの判定が精度良く安定して行われ、選別対象物を適切に選別することができる自動選別装置及び資材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動選別装置は、粉状若しくは粒状の選別対象物を貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留された前記選別対象物を混合する混合部と、前記混合部で混合された前記選別対象物を搬送する搬送部と、前記搬送部で搬送された前記選別対象物にX線を照射し、前記照射によって発生する蛍光X線を計測する蛍光X線計測部と、前記蛍光X線計測部の計測結果から前記選別対象物に含まれる特定元素の含有レベルを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に応じて前記搬送部の前記選別対象物を選別する選別部と、を備えることを特徴とする。
前記構成では、蛍光X線計測を行う前に選別対象物を混合することにより、粉状若しくは粒状の選別対象物内に存在する特定元素含有レベルの偏りをなくすことができる。従って、選別対象物を計測した箇所での特定元素の含有レベルと選別対象物全体の特定元素の含有レベルは、その計測結果において乖離することはなく、よって選別対象物を適切に選別することができる。
【0008】
また、本発明の自動選別装置は、前記混合部を、スクリュー式攪拌機、若しくは水平羽回転式攪拌機、若しくは横型2軸式攪拌機とすることを特徴とする。
前記構成では、粉状若しくは粒状の選別対象物を確実に平均化するように混合することが可能であり、確実に選別対象物の中における特定元素の含有レベルの偏りをなくすことができる。
【0009】
また、本発明の自動選別装置は、前記搬送部による搬送経路における前記貯留部と前記蛍光X線計測部による計測箇所との間の箇所に、前記搬送部で搬送される前記選別対象物の表面を平滑にする平滑化部を備えることを特徴とする。
前記構成では、選別対象物の表面を平滑にし、蛍光X線の計測誤差や特定元素の含有レベルの判定誤差を低減することができる。
【0010】
また、本発明の自動選別装置は、前記平滑化部を、前記選別対象物の表面を押圧しながら転動して平滑化するローラー、若しくは前記選別対象物の表面に生じた凸部を削り均して平滑化するスクレーパー、若しくは前記選別対象物の表面を押圧して平滑化する転圧機の転圧板、の少なくとも一つ以上とすることを特徴とする。
前記構成では、選別対象物の表面を確実に平滑にし、蛍光X線の計測誤差や特定元素の含有レベルの判定誤差を低減することができる。
【0011】
また、本発明の自動選別装置は、前記貯留部に前記選別対象物を貯留する前に前記粉状若しくは粒状の選別対象物を分級する分級部を備え、前記分級部により前記選別対象物から所定粒径以下の選別対象物を分級して前記貯留部に貯留することを特徴とする。
前記構成では、選別対象物に粒径の大きなものが混在している場合等に、蛍光X線の計測前に選別対象物を所定粒径に揃えることにより、より高精度な蛍光X線の計測結果、特定元素の含有レベルの判定結果を得ることができ、また、混合前に選別対象物を所定粒径に揃えることにより、混合で選別対象物をより均一化し、選別対象物の中における特定元素の含有レベルの偏りをより確実になくすことができる。前記所定粒径は例えば1mm以下とすると好適であり、また、前記分級部には適宜のものを用いることが可能であるが、例えば振動篩とすると好適である。
【0012】
また、本発明の資材の製造方法は、粉状若しくは粒状の選別対象物を貯留する工程と、前記貯留した選別対象物を混合する工程と、前記混合した選別対象物を搬送する工程と、前記搬送した選別対象物にX線を照射し、前記照射によって発生する蛍光X線を計測する工程と、前記蛍光X線計測部の計測結果から前記選別対象物に含まれる特定元素の含有レベルを判定する工程と、前記判定部の判定結果により前記特定元素の含有レベルが所定基準を充足する場合に、前記搬送部の前記選別対象物を資材として取得する工程と、を備えることを特徴とする。
前記構成では、蛍光X線計測の前における選別対象物の混合により、粉状若しくは粒状の選別対象物の中における特定元素の含有レベルの偏りをなくすことができる。従って、選別対象物における計測箇所での特定元素の含有レベルと選別対象物全体での特定元素の含有レベルとの乖離をなくし、選別対象物を適切に選別することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動選別装置あるいは資材の製造方法は、粉状若しくは粒状の選別対象物中において特定元素の含有レベルの偏りをなくすことにより、選別対象物の計測箇所における特定元素の含有レベルと選別対象物全体の特定元素の含有レベルとの乖離をなくすことができ、選別対象物を適切に選別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の自動選別装置を示す側面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態の自動選別装置]
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態の自動選別装置を示す側面説明図である。
【0016】
本実施形態の自動選別装置は、原材料、製品、廃棄物などの粉状若しくは粒状の選別対象物Sを選別するものであって、図1に示すように、特定元素を含む選別対象物Sが投入される分級部に相当する振動篩1と、貯留部に相当するホッパー2と、ホッパー2内に設けられている混合部に相当するスクリュー式攪拌機3と、搬送部に相当するベルトコンベア4と、平滑化部に相当するローラー5と、蛍光X線計測部6と、CPU等の演算処理部及び所定制御プログラム等を記憶するハードディスクやメモリ等の記憶部で構成されている。さらに、該装置は、蛍光X線計測部6の計測結果から選別対象物Sの特定元素の含有濃度等の含有レベルを判定する判定部7と、CPU等の演算処理部及び所定制御プログラム等を記憶するハードディスクやメモリ等の記憶部で構成され、後述する制御等を行う制御部8と、ベルトコンベア4による搬送経路で蛍光X線計測部6の下流側に設けられ、判定部7の判定結果に応じて選別対象物Sを選別する選別部9とを備える。
【0017】
なお、本発明における特定元素とは、X線照射によって蛍光X線を発生する元素であり、例えば鉛、水銀、カドミウム等の重金属、金、銀、銅、白金等の有価金属、ニッケル、コバルト、マンガン等の鉱石成分などが挙げられる。また、特定元素の含有レベルは、量、率あるいは独自に設定されるレベルによるものなど適宜である。また、後述する各部の動作は、判定部7または制御部8またはこれらを包括した概念である制御手段により、必要に応じて適宜制御することが可能である。
【0018】
振動篩1は、ホッパー2に選別対象物Sを貯留する前に、特定元素を含む選別対象物Sから所定粒径を超える粗粒Sr分を分離除去し、所定粒径以下の選別対象物S(細粒Sm)に分級するものである。振動篩1は、複数並設されるバー1aをホッパー2上で支持したものであり、篩となるバー1a・1a間の間隔を調整することにより、選別対象物S中の粒径1mm超など所定粒径を超える粗粒Sr分をホッパー2に落下しないようにバー1a上に留め、粒径1mm以下など所定粒径以下の選別対象物S(細粒Sm)のみをホッパー2に投入可能になっている。さらに、本実施形態における振動篩1は図に省略したバイブロモーターを備えており、前記バイブロモーターで振動篩1に振動を加え、所定粒径以下の選別対象物Sがバー1a・1a間を通過するのを容易化できる構成になっている。また、バー1a上に留められる粗粒Sr分を排出する際には、バー1aを傾斜して支持することにより、粗粒Sr分に対応した処理を行う工程への搬送経路へ排出するようになっている。
【0019】
ホッパー2は、振動篩1で粗粒Sr分が除去され、振動篩1を通過して投入される所定粒径以下の選別対象物S(細粒Sm)を一時貯留し、ホッパー2の下部に設置された回転軸の周囲に螺旋状のスクリュー羽根を有するスクリュー式攪拌機3により選別対象物S(細粒Sm)を混合攪拌し、その後に所定粒径以下の選別対象物S(細粒Sm)の所定量を安定してベルトコンベア4に供給する。また、ベルトコンベア4は、ホッパー2から所定量ずつ排出される選別対象物S(細粒Sm)を所定量ずつ搬送し、設定される一定速度で選別対象物S(細粒Sm)を搬送する。
【0020】
ローラー5は、選別対象物Sの搬送経路におけるホッパー2と蛍光X線計測部6の計測箇所との間の箇所、即ち蛍光X線計測部6の上流側に設けられ、ベルトコンベア4で搬送される選別対象物Sの表面近傍領域を押圧しながら回転し、選別対象物Sの表面を平滑にすると共に、選別対象物Sの少なくとも上層の密度あるいは充填度を高められるようになっている。ローラー5は、選別対象物Sの含水状態や性状等に応じて、十分な平滑さ、充填度を得ると共に、ベルトコンベア4上で過度に押圧されて付着することを防止する必要があるため、図に省略した昇降機構で昇降し、選別対象物Sに加える圧力を増加あるいは減少可能になっている。
【0021】
ローラー5の支持部には光電センサー等のセンサー5aが設置されており、また、ローラー5の支持部には光電センサー等のセンサー5aが設置されており、センサー5aでローラー5の直下あるいはその近傍位置における選別対象物Sまでの距離を計測し、その計測距離を制御部8に出力する。制御部8は、その記憶部に制御プログラムと、選別対象物Sが無い場合の距離と、ベルトコンベア4の速度と対応して設定されている搬送時間とを記憶しており、その演算処理部は前記制御プログラムに従い、センサー5aから入力される計測距離と選別対象物Sが無い場合の距離を対比して、前記計測距離が選別対象物Sが無い場合の距離を超えている場合に、前記設定されている搬送時間だけベルトコンベア4の搬送を継続して停止し、センサー5aで検知した選別対象物Sの部分を蛍光X線計測部6の直下あるいはその近傍に位置させるようにベルトコンベア4を制御し、さらに、後述する蛍光X線計測部6のセンサー6bが作動するように制御する。
【0022】
なお、前記搬送時間で制御する構成に代え、例えばローラー5にローラー5の回転数を検知するセンサーを設け、前記計測距離が選別対象物Sが無い場合の距離を超えた場合に、前記距離を超えた時点から前記センサーでローラー5の回転数を計測し、前記回転数を制御部8に出力し、制御部8は記憶している設定回転数と前記計測回転数とを対比し、前記計測回転数が前記設定回転数に到達した時点でベルトコンベア4の搬送を停止し、前記センサー5aで検知した選別対象物Sの部分を蛍光X線計測部6の直下あるいはその近傍に位置させるようにベルトコンベア4を制御する構成とすることも可能である。
【0023】
蛍光X線計測部6は、ベルトコンベア4上でローラー5により層調整された選別対象物S(細粒Sm)の表面に計測窓6aを当接し、内部のX線照射部から計測窓6aを介してX線を照射し、前記X線照射によって発生する蛍光X線を計測窓6aを介して内部の蛍光X線計測部で取得して蛍光X線を計測するものである。蛍光X線計測部6は、エアシリンダあるいは油圧シリンダ等の駆動部6cによって昇降し、必要に応じて水平方向に動く等の構成であり、蛍光X線計測時に下降して選別対象物Sの表面に計測窓6aを当接し、また、蛍光X線計測終了後に上昇して前記当接状態から計測窓6aを選別対象物Sから離間し、復帰するように動作する。
【0024】
より詳細には、蛍光X線計測部6には光電センサー等のセンサー6bが設置されており、センサー6bで蛍光X線計測部6の計測窓6aの直下あるいはその近傍位置における選別対象物Sまでの距離を計測し、その計測距離を制御部8に出力する。
制御部8は、その記憶部に制御プログラムを記憶し、その演算処理部は前記制御プログラムに従い、センサー6bから入力される計測距離だけ蛍光X線計測部6を下降させ、計測窓6aを選別対象物Sの表面に当接し、蛍光X線計測部6を作動させる。蛍光X線計測部6は前記作動指令に従い、計測窓6aから選別対象物SにX線を照射し、蛍光X線を計測窓6aから取得して蛍光X線の計測値を取得し、蛍光X線の計測値を判定部7に出力する。そして、前記蛍光X線の計測の完了に伴い、制御部8は蛍光X線計測部6を上昇させ、元の位置に復帰させると共に、ベルトコンベア4を作動させ、選別対象物S(細粒Sm)をベルトコンベア4の搬送方向の端部まで搬送する。
【0025】
清浄化部61は、蛍光X線計測部6の計測窓6aと選別対象物Sの表面との接触により計測窓6aに付着した選別対象物Sを除去し、計測窓6aを清浄化するものである。制御部8の演算処理部は記憶部に記憶する制御プログラムに従い、清浄化部61を作動させ、所定の清浄化動作を完了した後に停止するようになっている。清浄化部61は、例えば噴射口から圧縮空気を噴射して計測窓6aに付着した選別対象物Sを除去するエア噴射部、吸引口から減圧吸引して計測窓6aに付着した選別対象物Sを除去する吸引部、若しくは噴射口から水を噴射して計測窓6aに付着した選別対象物Sを除去する水噴射部、若しくは計測窓6aに付着した選別対象物Sにマイナスの静電気を帯びさせてプラスの電極で集塵する電気集塵部、若しくは計測窓6aをワイパー、ブラシ等で掃き取って計測窓6aに付着した選別対象物Sを除去する掃取部、若しくは計測窓6aを布、スポンジ等で拭い取って計測窓6aに付着した選別対象物Sを除去する払拭部、若しくはこれらの適宜の組み合わせ等とすることが可能である。
前記清浄化部61により、計測窓6aを常に清潔に保ち、長期且つ正確に蛍光X線の計測や特定元素の含有レベルの判定を行うことができる。なお、清浄化部61による選別対象物Sの除去は、計測窓6aが選別対象物Sの表面から離れ、蛍光X線計測部6が元の位置に復帰する前の適宜の位置で行うことが可能である。
【0026】
判定部7は、蛍光X線計測部6から入力される計測値を解析し、選別対象物Sの特定元素の含有レベルを判定するものである。判定部7は、その記憶部に制御プログラムと、蛍光X線の計測値に対応する特定元素の含有レベルのテーブルと、規制値等に対応する特定元素の含有レベルの閾値とを記憶し、その演算処理部は前記制御プログラムに従い、蛍光X線計測部6から入力される計測値に対応する特定元素の含有レベルを前記テーブルから認識し、前記認識した含有レベルを前記閾値と対比し、前記閾値未満の場合に再利用等の経路にするように選別部9を制御し、前記閾値超の場合には廃棄あるいは浄化処理等の経路にするように選別部9を制御する。
また、判定部7は、その記憶部に制御プログラムと、特定元素の含有レベルに対応し且つ規制値等に対応する閾値とを記憶し、その演算処理部が前記制御プログラムに従い、蛍光X線計測部6から入力される計測値と前記閾値とを対比し、特定元素の含有レベルの判定結果として前記対比結果を取得し、前記閾値未満の場合に再利用等の経路にするように選別部9を制御し、前記閾値超の場合には廃棄あるいは浄化処理等の経路にするように選別部9を制御してもよい。なお、判定部7と制御部8は異なるハードウェアで構成しても、同一のハードウェアで構成してもよい。
【0027】
選別部9は、判定部7の制御に応じて選別対象物Sを選別し、判定部7の判定結果に応じて選別対象物Sの仕分経路を切り換えて選別対象物Sを選別するものであり、本実施形態の選別部9は横軸を中心に傾動し、傾斜角度が可変なガイド板としている。前記ガイド板は、ベルトコンベア4から排出される選別対象物Sと接触し、判定部7の制御に応じて傾斜角度が変更されて、前記排出される選別対象物Sの落下方向を変化させ、ベルトコンベアで各々構成される仕分経路10または11に選別対象物Sを仕分ける。なお、仕分経路は、異なる方向に選別対象物Sを搬送可能なのものであれば適宜であり、前記2つのベルトコンベアの他、正逆転ベルトコンベア、あるいは2つ若しくは複数の移動式コンテナ等とすることが可能である。
【0028】
上記自動選別装置で選別対象物Sを選別する際には、先ず、振動篩1に粉状若しくは粒状の選別対象物Sを投入し、振動篩1が選別対象物Sから所定粒径を超える粗粒Sr分を分離除去して、所定粒径以下の選別対象物S(細粒Sm)に分級する。分級された選別対象物Sはホッパー2内に貯留されると共に、スクリュー式攪拌機3で混合攪拌され、その後、ベルトコンベア4に載置される。選別対象物Sはベルトコンベア4で搬送されると共に、ローラー5で押圧されて平滑化され、選別対象物Sは蛍光X線計測部6の直下あるいはその近傍に配置される。
【0029】
そして、蛍光X線計測部6が下降して選別対象物S(細粒Sm)の表面に計測窓6aを当接し、計測窓6aを介してX線を照射し、前記X線照射によって発生する蛍光X線を計測窓6aを介して取得して蛍光X線を計測する。蛍光X線計測部6は、蛍光X線計測終了後に上昇して前記当接状態から計測窓6aを選別対象物Sから離間すると共に、計測窓6aが清浄化部61で清浄化される。
また、蛍光X線の計測結果は判定部7に入力され、判定部7は、前記計測結果から選別対象物Sに含まれる特定元素の含有レベルを判定し、特定元素の含有レベルが所定基準を充足する場合には再利用等の経路にするように選別部9を制御し、充足しない場合には廃棄あるいは浄化処理等の経路にするように選別部9を制御する。再利用等の経路に仕分された選別対象物Sは資材として用いられる。
【0030】
本実施形態の自動選別装置は、選別対象物S(細粒Sm)を蛍光X線計測前にスクリュー式攪拌機3で混合することにより、粉状若しくは粒状の選別対象物Sの中における特定元素の含有レベルの偏りを確実になくすことができる。従って、選別対象物Sに対する計測箇所での特定元素の含有レベルの計測結果と選別対象物Sの全体の特定元素の含有レベルとの乖離をなくし、選別対象物Sを適切に選別することができる。
また、ローラー5により、選別対象物Sの表面を平滑にし、蛍光X線の計測誤差や特定元素の含有レベルの判定誤差をより低減することができる。また、選別対象物Sの混合攪拌前に行われる振動篩1での篩い分けにより、選別対象物Sを所定粒径以下の細粒Smを揃えて均一化できると共に、選別対象物Sの中における特定元素の含有レベルの偏りをより確実になくすことができ、より高精度な蛍光X線の計測結果、特定元素の含有レベルの判定結果を得ることが可能となる。
【0031】
[実施形態の変形例等]
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、あるいはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、あるいはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含み、下記の変形例等も包含する。
【0032】
例えば上記実施形態では、ホッパー2に設ける混合部としてスクリュー式攪拌機3を採用する構成としたが、本発明における混合部はこれに限定されず、例えば回転軸に水平方向で混合羽根を有した水平羽回転式攪拌機、あるいは2本の羽付きシャフトが各々回転することで混合する横型2軸式攪拌機を用いてもよく、これらの攪拌機によっても粉状若しくは粒状の選別対象物Sを確実に混合攪拌して平均化することができ、確実に選別対象物Sの中における特定元素の含有レベルの偏りをなくすことができる。
【0033】
また、本発明における平滑化部には、上記実施形態の選別対象物Sの表面を押圧しながら転動して平滑化するローラー5以外にも、選別対象物Sの表面を平滑化できる適宜のものを採用することが可能であり、例えば選別対象物Sの表面に生じた凸部を削り均して平滑化するスクレーパー、若しくは選別対象物Sの表面を押圧して平滑化する転圧機の転圧板等、あるいはこれらの適宜の組み合わせとすることが可能である。
さらに、スクレーパーとローラー、あるいはスクレーパーと転圧板を組み合わせて設ける場合、スクレーパーをベルトコンベア4による搬送経路の上流側に、ローラーあるいは転圧板を搬送経路の下流側に設け、スクレーパーで選別対象物Sの表面をある程度平滑にし、その後にローラーあるいは転圧板で選別対象物の表面をより高い平滑度で平滑にして順次平滑度を高めるようにすると、より均一に平滑にし、より高精度の計測結果が得られて好適である。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
図1の自動選別装置により、粉状の選別対象物Sである飛灰に含まれる特定元素の含有レベルを同じ計測箇所で、あるいは計測箇所を変えて複数回繰返し判定し、その結果に基づいて蛍光X線の計測精度を算出し程度を評価する実験を行った。飛灰内の特定元素の含有レベルを精度良く判定して飛灰を連続的に選別することができれば、飛灰中から鉛、亜鉛、銅などの有価金属を効率的に回収することが可能となり、リサイクルの推進に貢献することができる。
上記実験においては、先ず飛灰を振動篩1で分級してホッパー2内に供給し、ホッパー2内でスクリュー式攪拌機3にて攪拌して、ベルトコンベア4上に載置して搬送した。そして、搬送しながらローラー5にて填圧後、蛍光X線計測部6の計測窓6aの直下まで搬送し、計測窓6aを飛灰に密接させた状態で蛍光X線によるの計測を実施した。計測対象の特定元素は、鉛、亜鉛及び銅とした。蛍光X線による計測は、同一箇所において計測窓6aを密接させたまま10秒計測した。計測終了後、エア噴射部による清浄化部61で計測窓6aを洗浄した後、飛灰を所定距離搬送し、再度前記と同様の計測を行った。前記操作を計10箇所の飛灰について実施し、各箇所で計測した各対象元素の含有レベルからそれぞれについて精度を算出し、評価した。なお、精度は2σで算出した。その結果、飛灰内に含有された計測対象の各元素は、±10%程度の精度で計測ができることを確認した。
【0035】
[実施例2]
図1の自動選別装置により、鉛、亜鉛及び銅の含有レベルの異なる飛灰AからEの選別試験を実施した。なお、選別条件は、飛灰中の前記鉛、亜鉛及び銅のうち、その含有レベルが一元素でも閾値を下回っていたら低含有レベルとして、三元素全てが閾値を上回ったら高含有レベルとして分別するものとし、飛灰A、Cは低含有レベルの飛灰、飛灰B、D、Eは高含有レベルの飛灰として用意した。
振動篩1を介してホッパー2に100kgの飛灰Aを投入し、ホッパー2内でスクリュー式攪拌機3で攪拌して、ベルトコンベア4上に飛灰Aを載置した。そして、ベルトコンベア4にて搬送しながらローラー5にて填圧後、蛍光X線計測部6の計測窓6aの直下まで搬送し、停止後、計測窓6aを飛灰Aに密着した状態で蛍光X線計測を実施した。蛍光X線計測は、10秒で計測した。計測終了後は、エア噴射部の清浄化部61にて計測窓6aを洗浄し、100kgの飛灰Aに対して蛍光X線計測が10点行えるように飛灰Aを所定距離搬送し、前記同様に蛍光X線計測を行った。前記と同様の操作を飛灰BからEについても実施した。その結果、飛灰A、C全てが選別部9により低含有レベル側へ排出され、飛灰B、D、E全てが選別部9により高含有レベル側へ排出されることが確認できた。従って、図1の自動選別装置によって、飛灰中の鉛、亜鉛及び銅などの有価金属の含有レベルを確実に捉えることができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、原材料、製品、廃棄物などを特定元素の含有レベルに応じて選別する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…振動篩 2…ホッパー 3…スクリュー式攪拌機 4、10、11…ベルトコンベア 5…ローラー 5a…センサー 6…蛍光X線計測部 6a…計測窓 6b…センサー 6c…駆動部 61…清浄化部 7…判定部 8…制御部 9…選別部 10、11…仕分経路 S…選別対象物 Sr…粗粒 Sm…細粒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状若しくは粒状の選別対象物を貯留する貯留部と、
前記貯留部に貯留された前記選別対象物を混合する混合部と、
前記混合部で混合された前記選別対象物を搬送する搬送部と、
前記搬送部で搬送された前記選別対象物にX線を照射し、前記照射によって発生する蛍光X線を計測する蛍光X線計測部と、
前記蛍光X線計測部の計測結果から前記選別対象物に含まれる特定元素の含有レベルを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて前記搬送部の前記選別対象物を選別する選別部と、
を備えることを特徴とする自動選別装置。
【請求項2】
前記混合部を、スクリュー式攪拌機、若しくは水平羽回転式攪拌機、若しくは横型2軸式攪拌機とすることを特徴とする請求項1記載の自動選別装置。
【請求項3】
前記搬送部による搬送経路における前記貯留部と前記蛍光X線計測部による計測箇所との間の箇所に、前記搬送部で搬送される前記選別対象物の表面を平滑にする平滑化部を備えることを特徴とする請求項1または2記載の自動選別装置。
【請求項4】
前記平滑化部を、
前記選別対象物の表面を押圧しながら転動して平滑化するローラー、
若しくは前記選別対象物の表面に生じた凸部を削り均して平滑化するスクレーパー、
若しくは前記選別対象物の表面を押圧して平滑化する転圧機の転圧板、
の少なくとも一つ以上とすることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の自動選別装置。
【請求項5】
前記貯留部に前記選別対象物を貯留する前に前記粉状若しくは粒状の選別対象物を分級する分級部を備え、
前記分級部により前記選別対象物から所定粒径以下の選別対象物を分級して前記貯留部に貯留することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の自動選別装置。
【請求項6】
粉状若しくは粒状の選別対象物を貯留する工程と、
前記貯留した選別対象物を混合する工程と、
前記混合した選別対象物を搬送する工程と、
前記搬送した選別対象物にX線を照射し、前記照射によって発生する蛍光X線を計測する工程と、
前記蛍光X線計測部の計測結果から前記選別対象物に含まれる特定元素の含有レベルを判定する工程と、
前記判定部の判定結果により前記特定元素の含有レベルが所定基準を充足する場合に、前記搬送部の前記選別対象物を資材として取得する工程と、
を備えることを特徴とする資材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−5429(P2011−5429A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151836(P2009−151836)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】