説明

自吸式固液分離装置

【目的】自吸式液体ポンプとして特別の構成(特別の材料・特別の構造)を有するものを必要とすることなく、該ポンプの磨耗を防止することができ、低コストで固液の浄化を行うことができる自吸式固液分離装置を提供する。
【構成】自吸式液体ポンプに接続され、液体に含まれるスラッジをサイクロン分離する自吸式固液分離装置において、
装置本体が、
ポンプの上流側であるポンプの吸引系に接続され、
外側に配設された第1サイクロン機構と、該第1サイクロン機構に連通され、該第1サイクロン機構の旋回軸と同軸上で且つ内側に配設された第2サイクロン機構と、を有する内外二重構成であり、
液体を外部から導入し第1サイクロン分離を行い、
第1サイクロン分離された液体を第2サイクロン分離を行う構成であり、
第1サイクロン機構と第2サイクロン機構の下方には、サイクロン分離されるスラッジを回収する分離槽が配設される構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自吸式固液分離装置に関し、詳しくは液体サイクロンの遠心力によってスラッジ等の異物を分離する自吸式固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スラッジ、固形屑、粉塵、塵埃等の異物が混入している被処理流体液である固液の浄化装置として、固液をポンプによってサイクロン筒内に送液し、このサイクロン筒内で生じさせる旋回流によって固液内のスラッジ等をサイクロン分離する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。尚、本明細書においてスラッジとは、スラッジのみならず該スラッジを含んだフロック状の流動懸濁液であるスラリーも含めて言うものとする。
【0003】
サイクロン分離による浄化装置は、バグフィルターやカートリッジフィルターを用いた分離技術に比して高い分離性能を有するものであるが、ポンプの吐出系に接続することで動作するものであったため、スラッジによるポンプ構成の磨耗損傷という問題を抱えている。即ち、サイクロン分離による浄化装置は、固液分離が目的であるためにポンプの磨耗については全く考慮されていなかった。
【0004】
このポンプ構成の磨耗損傷という問題に対しては、ポンプ本体の構造及び材料を工夫し、スラッジ液に対して強いポンプ、即ち、ポンプ本体を耐摩耗性材料を使用するとともに、異物が通過しやすいポンプ構造とするというポンプ側での対処がこれまで行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−061897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した対処手段、即ち、ポンプ本体を耐摩耗性材料で製作した場合には耐摩耗性材料の使用によるコスト高になるという問題点があり、また、異物が通過しやすい構造とした場合にはポンプ構造に制約が大きいという問題点があった。
【0007】
そこで本発明は、サイクロン機構に接続する自吸式液体ポンプとして特別の構成(特別の材料・特別の構造)を有するものを必要とすることなく、該ポンプの磨耗を防止することができ、低コストで固液の浄化を行うことができる自吸式固液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題は下記構成によって達成される。
【0009】
1.自吸式液体ポンプを有するポンプ部と、該ポンプ部の自吸式液体ポンプの吸引力によって外部からサイクロン筒内に導入した液体に旋回流を生じさせることで該液体に含まれるスラッジをサイクロン分離する分離部と、を有して構成される自吸式固液分離装置において、
前記ポンプ部の上流側である前記自吸式液体ポンプの吸引系に前記分離部が直接又は間接的に接続される構成であり、
前記分離部が、
外側に配設された第1サイクロン筒を有して成る第1サイクロン機構と、該第1サイクロン機構に連通され、該第1サイクロン機構の旋回軸と同軸上で且つ前記第1サイクロン筒の内側に配設されることで前記第1サイクロン筒よりも小径の第2サイクロン筒を有して成る第2サイクロン機構と、を有する内外二重構成であり、
前記第1サイクロン機構は、前記液体を外部から第1サイクロン筒内に導入し、該第1サイクロン筒の内周壁に沿って旋回させることで第1サイクロン分離を行う構成であり、
前記第2サイクロン機構は、前記第1サイクロン機構によって第1サイクロン分離された液体を第2サイクロン筒内に導入して該第2サイクロン筒の内周壁に沿って旋回させることで第2サイクロン分離を行う構成であり、
前記第1サイクロン機構と第2サイクロン機構の下方には、該第1サイクロン機構及び/又は第2サイクロン機構によってサイクロン分離されるスラッジを貯留するスラッジ貯留槽が配設される構成であり、
前記貯留槽が、前記第1サイクロン機構の下方に配設されて該第1サイクロン機構によってサイクロン分離されるスラッジを貯留する第1スラッジ貯留槽と、前記第2サイクロン機構の下方に配設されて該第2サイクロン機構によってサイクロン分離されるスラッジを貯留すると共に前記第2サイクロン筒の下方を密閉可能な第2スラッジ貯留槽と、を有して成る2槽構成であること、
を特徴とする自吸式固液分離装置。
【0010】
2.前記第2スラッジ貯留槽が前記第1スラッジ貯留槽の上方に配設されると共に、該第2スラッジ貯留槽の底部が開放可能であり、該底部の開放によって該第2スラッジ貯留槽内のスラッジを前記第1スラッジ貯留槽内に落下させる構成であることを特徴とする上記1に記載の自吸式固液分離装置。
【0011】
3.前記第2スラッジ貯留槽の底部には、前記ポンプ部の自吸式液体ポンプの吸引力及び/又は浮力によって該底部を開閉するフロート弁が配設されており、前記自吸式液体ポンプ停止時である分離処理停止時に前記フロート弁上に貯留するスラッジの重量が前記自吸式液体ポンプ停止によって低下する吸引力と前記フロート弁の浮力との和より大となった時に前記フロート弁による前記底部の閉塞が開放される構成であることを特徴とする上記2に記載の自吸式固液分離装置。
【0012】
4.前記第2スラッジ貯留槽の底部には、前記ポンプ部の自吸式液体ポンプの吸引力及び/又は浮力によって該底部を開閉するフロート弁が配設されており、前記自吸式液体ポンプ停止時及び/又は空気取込時に装置本体内の固液の液面が前記底部の位置より低下した際に前記フロート弁による前記底部の閉塞が開放される構成であることを特徴とする上記2に記載の自吸式固液分離装置。
【0013】
5.前記第1サイクロン機構の上部と前記第2サイクロン機構の上部とを連通するエア抜き孔が設けられていることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の自吸式固液分離装置。
【0014】
6.前記分離部には、第1スラッジ貯留槽内に貯留するスラッジ量を検知する検知手段が設けられており、
該検知手段が、
前記第1スラッジ貯留槽内に延伸可能に接続して該第1スラッジ貯留槽内の上部の液体を取り出す取出管と、
該取出管に接続され、内部を通る液体の状態を目視可能な透明部分を有する確認部と、
該確認部と前記第1サイクロン機構又は前記第2サイクロン機構とを接続して、前記第1スラッジ貯留槽から取り出した液体を前記第1サイクロン機構内又は第2サイクロン機構内に戻す戻し管と、
を有する構成であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の自吸式固液分離装置。
【0015】
7.前記検知手段の液体経路上のいずれかの部位に、該検知手段内への通液を制御する開閉弁が設けられる構成であることを特徴とする上記6に記載の自吸式固液分離装置。
【0016】
8.前記検知手段の確認部と前記ポンプ部の自吸式液体ポンプとを接続する排出管を有し、
前記検知手段の確認部を通る液体にスラッジが確認された際に、分離部の外部からの固液の導入を停止すると共に該分離部内に吸気し、該分離部内であって且つ前記第1スラッジ貯留槽に貯留するスラッジの上面より上方に有る液体を前記検知手段及び排出管を介して前記自吸式液体ポンプによって排出することで、前記第1スラッジ貯留槽内のスラッジを廃棄できる状態とすることが可能となる構成であることを特徴とする上記6又は7に記載の自吸式固液分離装置。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に示す発明によれば、サイクロン機構に接続する自吸式液体ポンプとして特別の構成(特別の材料・特別の構造)を有するものを必要とすることなく、該ポンプの磨耗を防止することができ、低コストで固液の浄化を行うことができる自吸式固液分離装置を提供することができる。
【0018】
特に、2段階のサイクロン機構の外側に位置する第1サイクロン機構による第1サイクロン分離では旋回径が大きく旋回流が遅いため比重や粒子の大きなスラッジの分離が可能であり、内側の位置する第2サイクロン機構による第2サイクロン分離では旋回径が小さく旋回流が速いため比重や粒子の小さなスラッジの分離が可能であり、この2段階のサイクロン機構によって固液からスラッジをサイクロン分離する分離部を自吸式液体ポンプを有するポンプ部の上流側に接続する構成により、ポンプ部の自吸式液体ポンプ内へのスラッジの浸入を著しく抑制することができる。従って、スラッジによる自吸式液体ポンプの磨耗損傷を著しく抑制することができる。
【0019】
請求項2に示す発明によれば、2つのサイクロン機構の夫々で独立して分離したスラッジを1つの貯留槽(第1スラッジ貯留槽)にまとめることができるので効率的に廃棄することができる。特に、第1サイクロン機構の内側という装置本体からの取出しが困難な位置にある第2スラッジ貯留槽に貯留したスラッジの廃棄が容易となる。
【0020】
請求項3に示す発明によれば、2つのサイクロン機構の夫々で独立して分離したスラッジを1つの貯留槽(第1スラッジ貯留槽)にまとめることができるので効率的に廃棄することができる。特に、第1サイクロン機構の内側という取出しが困難な位置にある第2スラッジ貯留槽に貯留したスラッジを、自吸式液体ポンプを停止するだけで該第2スラッジ貯留槽内のスラッジを第1スラッジ貯留槽内に落下させることが可能となる。
【0021】
請求項4に示す発明によれば、2つのサイクロン機構の夫々で独立して分離したスラッジを1つの貯留槽(第1スラッジ貯留槽)にまとめることができるので効率的に廃棄することができる。特に、第1サイクロン機構の内側という取出しが困難な位置にある第2スラッジ貯留槽に貯留したスラッジを、自吸式液体ポンプを停止するだけ及び/又は分離部内に空気を取り込ませるだけで該第2スラッジ貯留槽内のスラッジを第1スラッジ貯留槽内に落下させることが可能となる。
【0022】
請求項5に示す発明によれば、外部の空気が固液の導入と共に第1サイクロン機構内に浸入してしまった場合、浸入した空気が第1サイクロン筒の上部に次第に溜まり、この溜まった空気量が多くなるとサイクロン分離が機能しなくなる虞があるが、第1サイクロン機構の上部と第2サイクロン機構の上部とを連通するエア抜き孔によって、第1サイクロン機構内に浸入した空気は該エア抜き孔を通って第2サイクロン筒の上部に進んだ後、該第2サイクロン筒の上部から自吸式液体ポンプに吸引されて外部に速やかに排出することができる。従って、外部の空気が分離部内に入り込んでしまった場合であってもサイクロン分離の効率が低下することを防止することができる。
【0023】
請求項6に示す発明によれば、第1スラッジ貯留槽がスラッジ貯留量が規定量に達したか否かが装置外部から目視で容易に確認することができる。
【0024】
請求項7に示す発明によれば、第1スラッジ貯留槽のスラッジ量の検知確認作業が検知手段への通液を制御する弁を開くだけで行うことができる。
【0025】
請求項8に示す発明によれば、分離部内であって且つ第1スラッジ貯留槽内のスラッジの上面よりも上方にある液体を排出することができるので、第1スラッジ貯留槽には液体の残存量が少ないスラッジが残ることになり、効率的なスラッジの廃棄が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る自吸式固液分離装置の第1実施例を示す部分断面図
【図2】図1に示す自吸式固液分離装置に自吸式液体ポンプを接続した状態を示す平面図
【図3】図2の左側面図
【図4】第1サイクロン機構内に浸入した空気の排出状態を説明する要部断面説明図
【図5】第2スラッジ貯留槽の底部の開放構成の一例を示す概略説明図
【図6】第2スラッジ貯留槽の底部の開放構成の他の例を示す概略説明図
【図7】本発明に係る自吸式固液分離装置の第2実施例を示す部分断面図
【図8】図7に示す自吸式固液分離装置の液体排出時の状態を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、添付の図面に従って本発明を詳細に説明する。
【0028】
先ず、図1〜図6に基づき本発明の第1実施例から説明する。
【0029】
本発明に係る自吸式固液分離装置(以下、単に装置ということもある。)は、自吸式液体ポンプ21を有するポンプ部2と、該ポンプ部2の自吸式液体ポンプ21の吸引力によって外部からサイクロン筒内に導入した液体に旋回流を生じさせることで該液体に含まれるスラッジをサイクロン分離する分離部1と、を主構成とする。
【0030】
本第1実施例では、図1〜図3に示すように、分離部1とポンプ2は台車3上に載置されることで移動可能なコンパクト構成となっている。
【0031】
図1〜図3に示すように、本発明の装置は、ポンプ部2の上流側である前記自吸式液体ポンプ21の吸引系に前記分離部1が直接又は間接的に接続される構成である。
【0032】
分離部1は、外側に配設された第1サイクロン筒11を有して成る第1サイクロン機構と、該第1サイクロン機構に連通され、該第1サイクロン機構の旋回軸と同軸上で且つ前記第1サイクロン筒11の内側に配設されることで前記第1サイクロン筒11よりも小径の第2サイクロン筒12を有して成る第2サイクロン機構と、を有する内外二重構成である。
【0033】
尚、図1中に示す矢符は、実線+実線の両脇に破線の矢符がスラッジ分離前の固液の流れ、実線+実線の両脇に点線の矢符が比重や粒子の大きなスラッジが分離除去された固液の流れ、実線の矢符が比重や粒子の小さなスラッジが分離除去された液体の流れ、破線の矢符が比重や粒子の大きなスラッジの流れ、点線の矢符が比重や粒子の小さなスラッジの流れ、を各々示す。
【0034】
先ず、第1サイクロン機構は、スラッジを含む液体(固液)を装置の外部から配管13を介して第1サイクロン筒11内に導入する。導入された液体は、第1サイクロン筒11の内周壁11Aに沿って旋回させることで第1サイクロン分離が行われ、液体中の比重や粒子の大きなスラッジはこの段階で分離処理される。
【0035】
第1サイクロン筒11内における旋回流による第1サイクロン分離によって分離されたスラッジは、該第1サイクロン筒11の下方に配設された第1スラッジ貯留槽14内に落下して貯留することになる。
【0036】
第1サイクロン機構の第1サイクロン筒11内で第1サイクロン分離が済んだ液体は、次に、第2サイクロン機構の第2サイクロン筒12内に導入される。導入された液体は。第2サイクロン筒12の内周壁12Aに沿って旋回させることで第2サイクロン分離が行われ、前記第1サイクロン分離では分離できなかった比重や粒子のより小さなスラッジが液体から分離処理される。
【0037】
第2サイクロン筒12内における旋回流による第2サイクロン分離によって分離されたスラッジは、該第2サイクロン筒12の下方に配設された第2スラッジ貯留槽15内に落下して貯留することになる。第2スラッジ貯留槽15は、スラッジを貯留すると共に前記第2サイクロン筒12の下方を密閉可能に構成するものである。
【0038】
また、第1サイクロン機構の上部と前記第2サイクロン機構の上部とは、図4に示すようにエア抜き孔16が設けられて連通する構成となっていることが好ましい。これは、装置外の空気が固液の導入と共に第1サイクロン機構内に浸入してしまった場合、浸入した空気が第1サイクロン筒11の上部に次第に溜まり、この溜まった空気量が多くなるとサイクロン分離が機能しなくなる虞があるが、エア抜き孔16によって第1サイクロン機構の上部と第2サイクロン機構の上部とを連通することによって、第1サイクロン機構内に浸入した空気は該エア抜き孔16を通って第2サイクロン筒12の上部に進んだ後、該第2サイクロン筒12の上部から自吸式液体ポンプ21に吸引されて外部に速やかに排出されることになる。従って、外部の空気が分離部1内に入り込んでしまった場合であってもサイクロン分離の効率低下を防止することができる。尚、図4では、浸入した空気の流れを長破線で示している。
【0039】
分離部1の第1サイクロン機構と第2サイクロン機構による2段階のサイクロン分離によって液体に含まれるスラッジの大部分が分離処理された後、分離処理済みの液体は第2サイクロン機構の上方から分離部1の下流側に配管22を介して接続されたポンプ部2に送液される。装置への液体の導入、分離部1におけるサイクロン分離は勿論のこと、分離部1からポンプ部2への導入という各送液は、ポンプ部2の自吸式液体ポンプ21に吸引されることで行われる。該自吸式液体ポンプ21に吸引された液体は、ポンプ部2を通過した後、系外又は元の液槽に送液されることで1回の処理が終了する。尚、図中に示す符号23は、自吸式液体ポンプ21を駆動するためのモータである。
【0040】
本発明の分離部1に採用されるサイクロン機構は、接続した自吸式液体ポンプ21の吸液力によって装置内に液体が導入されて分離処理された後に装置本体外に導出されるサイクロン機構自体に駆動部を有していない構成のものであり、固液分離を行う公知公用のサイクロン機構の内、第1サイクロン機構と第2サイクロン機構とを有する2段階分離を行う所謂ダブルサイクロン機構であり、且つ、上記したようにサイクロン分離の際の旋回軸が同軸上で且つ旋回径の異なる内外二重に配設された内外二重構成の態様を採るものである。尚、第1サイクロン筒11(及びその内壁部)の形状としては、本実施例に示すように下方が窄まったすり鉢状(逆円錐形状)としてもよいが、後述する第2実施例(図7及び図8参照)の第1サイクロン筒11(及びその内壁部)のように上方から下方が略同径の円筒状としてもよい。尚また、第2サイクロン筒12についても同様に円筒状とすることもできる。
【0041】
本発明が採用する内外二重構成のサイクロン機構によれば、2つのサイクロン機構を並列に接続した態様のものや上下2段階に接続した態様のものに比してコンパクトな構成とすることが可能である。
【0042】
サイクロン分離したスラッジを貯留するスラッジ貯留槽は、本実施例に示すように、第1サイクロン筒11の下方に第1サイクロン分離によって分離落下するスラッジを貯留する第1スラッジ貯留槽14を配設し、第2サイクロン12の下方に第2サイクロン分離によって分離落下するスラッジを貯留する第2スラッジ貯留槽15を配設する2槽構成となっている。
【0043】
更に本実施例に示すように、第2スラッジ貯留槽15が第1スラッジ貯留槽14の上方に配設されると共に、該第2スラッジ貯留槽15の底部が開放可能であり、該底部の開放によって該第2スラッジ貯留槽15内のスラッジを前記第1スラッジ貯留槽14に落下させることが可能な構成であることが好ましい。
【0044】
第2スラッジ貯留槽15の底部を開閉する具体的構成としては、該底部を開閉可能な弁の如き部材を配設することであり、図1〜図3に示す本実施例では図5に示すように上下動によって閉塞{図5(A)参照}/開放{図5(B)参照}可能な構成のフロート弁17を採用している。本構成によれば、フロート弁17が下がることで第2スラッジ貯留槽15の底部が開放されると、第2スラッジ貯留槽15内に堆積していたスラッジはスラッジ排出孔15Aを通って排出されて落下し、下方に配設されている第1スラッジ貯留槽14に貯留する。本構成の場合、フロート弁17の上面を図5に示すように円錐形とすることでスラッジ排出孔15Aからスラッジを円滑に排出することができる。
【0045】
また、該フロート弁17は、図5に示す上下動による開閉構成に限らず、図6に示すように枢軸16Aを支点に閉塞{図6(A)参照}/開放{図6(B)参照}可能な構成とすることもできる。本構成によれば、フロート弁17が枢軸17Aを支点に下方に回動することで第2スラッジ貯留槽15の底部が開放されると、第2スラッジ貯留槽15内に堆積していたスラッジは下方に落下し、下方に排出されている第1スラッジ貯留槽14に貯留される。
【0046】
図5及び図6において、符号18は第2スラッジ貯留槽15の底部をフロート弁17によって閉塞した際に、底部を密閉して第2サイクロン筒12内の負圧を維持するためのシール部であり、該シール18による密閉によって第2サイクロン機構による第2サイクロン分離の効率低下を防止することができる。該シール部18は、合成又は天然ゴムやシリコンの如き弾性材料から形成されることが好ましい。
【0047】
第2スラッジ貯留槽15底部は、ポンプ部2の自吸式液体ポンプ21運転時は、第2サイクロン機構内が負圧となっているために前記フロート弁17によって前記底部は密閉状態に閉塞されているが、例えば、下記(1)又は(2)に示す構成の場合に閉塞が解かれて開放することになる。
【0048】
(1)第2スラッジ貯留槽15の底部には、自吸式液体ポンプ21の吸引力及び/又は浮力によって該底部を開閉するフロート弁17が配設されており、前記自吸式液体ポンプ21停止時である分離処理停止時に前記フロート弁17上に貯留するスラッジの重量が前記自吸式液体ポンプ21停止によって低下する吸引力と前記フロート弁17の浮力との和より大となった時に前記フロート弁17による前記底部の閉塞が開放される構成。
即ち、自吸式液体ポンプ21運転中は第2サイクロン機構内は負圧状態となっているためにフロート弁17上に貯留しているスラッジの重量が該フロート弁17の浮力よりも大であっても該フロート弁17による閉塞は維持されるが、自吸式液体ポンプ21停止によって第2サイクロン機構内が負圧状態ではなくなるとフロート弁17はスラッジの重量によって下がる(沈む)ことになり、前記底部を開放することになる。
【0049】
(2)第2スラッジ貯留槽15の底部には、自吸式液体ポンプ21の吸引力及び/又は浮力によって該底部を開閉するフロート弁17が配設されており、前記自吸式液体ポンプ21停止時及び/又は空気吸込時に装置内の固液の液面が前記フロート弁17の位置より低下した際に前記フロート弁17による前記底部の閉塞が開放される構成。
即ち、自吸式液体ポンプ21運転中は第2サイクロン機構内は負圧状態となっているためにフロート弁17上に貯留しているスラッジの重量が該フロート弁17の浮力よりも大であっても該フロート弁17による閉塞は維持されるが、自吸式液体ポンプ21が停止した場合や運転中であっても装置内に空気を取り込むことによって第2サイクロン機構内が負圧状態でなくなると共に装置内の液面が前記底部の位置より下がることでフロート弁17は下がる(沈む)ことになり、前記底部を開放することになる。
【0050】
尚、第2スラッジ貯留槽15の底部の開閉構成は上記した実施例に限らず、分離処理時は常時閉塞状態に固定し、分離処理停止時に分離部1の外部から第2スラッジ貯留槽15にアクセスして前記底部を機械的手段によって開放することでスラッジを廃棄する構成としてもよいし、或いは第2スラッジ貯留槽15自体を取外し可能な構成として該第2スラッジ貯留槽15を分離部1の外部に取出した後に内部のスラッジを廃棄する構成としてもよい。
【0051】
第1スラッジ貯留槽14内には、分離するスラッジの性状に応じてバグフィルター19を配設することができる。即ち、スラッジが粘性の低いものである場合には、バグフィルター19によって貯留したスラッジの脱水・固形化が容易となるので廃棄効率が高くなる。逆に、スラッジが粘性の高いものである場合には、フィルター目詰まりが生じやすくなるのでバグフィルター19は不要である。
【0052】
本発明のポンプ部2に採用される自吸式液体ポンプ21としては、自吸式構成の液体ポンプであればよく、適用する固液分離の処理量に応じた送液性能を有するものを特別の制限無く用いることができる。
【0053】
次に、図7及び図8に基づき本発明の第2実施例について説明する。
【0054】
本第2実施例は、図7及び図8に示すように、前述したコンパクト構成の第1実施例とは異なり大量の固液の分離処理を行う場合に好適な構成、即ち、第1スラッジ貯留槽14を大型構成とした態様となっており、該第1スラッジ貯留槽14が貯留するスラッジ量が満杯になったか否かを検知することができ、満杯になった場合にはスラッジ廃棄状態とすることが可能な態様となっている。
【0055】
尚、本題2実施例において、分離部1において作用するサイクロン分離処理、ポンプ部2において作用する吸液処理については前述した第1実施例と基本的に同様であるためサイクロン分離処理についての説明は省略する。尚また、ポンプ部2については図示を省略する。
【0056】
以下、第1スラッジ貯留槽14に貯留するスラッジの検知構成、及びスラッジが満杯になった際の廃棄構成について説明する。
【0057】
本発明の装置の分離部1には、第1スラッジ貯留槽14内に貯留するスラッジ量を検知する検知手段4が設けられており、該検知手段4によってスラッジ量の検知が行われる。
【0058】
検知手段4は、
前記第1スラッジ貯留槽14内に延伸可能に接続して該第1スラッジ貯留槽14内の上部の液体を取り出す取出管41と、
該取出管41に接続され、内部を通る液体の状態を目視可能な透明部分を有する確認部42と、
該確認部42と前記第1サイクロン機構又は前記第2サイクロン機構(本第2実施例では第2サイクロン機構の第2サイクロン筒12)とを接続して、前記第1スラッジ貯留槽14から取り出した液体を前記第1サイクロン機構内又は第2サイクロン機構内(本第実施例では第2サイクロン筒12内)に戻す戻し管43と、
を有する構成である。
また、検知手段4の確認部42と前記ポンプ部2の自吸式液体ポンプ21とは排出管44によって接続されている。
更に、分離部1内に吸気する際に用いられる開閉可能な空気弁19が設けられている。
【0059】
第1スラッジ貯留槽14内のスラッジ量の検知を行うには、先ず、図7に示すように開閉弁43Aを「開」とすることで戻し管43を通液が可能な状態とする。この操作により、第1スラッジ貯留槽14内の上部の液体、即ち、貯留するスラッジの上面より上方に位置する液体が取出管41から吸引取出しされ、確認部42を通り、戻し管43を通って、第2サイクロン筒12内に戻され、第2サイクロン分離される、即ち、元のサイクロン分離の処理系に戻されることになる。この検知手段4を通る液体は、確認部42の透明部分を通る際に装置の外部から液体の状態、即ち、液体にスラッジが含まれているか否かを目視で容易に判断することが可能である。
【0060】
確認部42を通過する液体にスラッジが含まれていない場合は、第1スラッジ貯留槽14に貯留するスラッジの上面は未だ取出管41の位置まで溜まっていない状態であることを示す。従って、サイクロン分離処理を続けることができる。尚、サイクロン分離を続ける場合、開閉弁43Aは「開」状態のままでもよいし、次の検知を行うまでは「閉」状態としてもよい。尚また、開閉弁43Aは、戻し管43の経路上に設けられる構成に限定されず、検知手段4の液体経路上のいずれかの部位に設けられていればよい。
【0061】
第1スラッジ貯留槽14に貯留するスラッジの量が更に増え、該スラッジの上面が取出管41の位置(図7の一点鎖線で示す位置)まで溜まると、取出管41から液体と共にスラッジも吸引取出しされるため、確認部42を通過する液体にスラッジが含まれていることを目視確認することができる。
【0062】
確認部42にてスラッジを目視確認したら、速やかにサイクロン分離処理を停止する。サイクロン分離処理の停止は、ポンプ部2の自吸式液体ポンプ21の運転を停止してもよいが、好ましくは該自吸式液体ポンプ21は運転したままの状態でサイクロン分離処理を停止することである。
【0063】
サイクロン分離処理の停止は、図8に示すように、
配管13の開閉弁13Aを「閉」状態とすることで固液の装置内への導入を停止、
空気弁19を「開」状態として外部の空気を装置内に吸気、
配管22の開閉弁22Aを「閉」状態としてサイクロン分離された液体のポンプ部2への送液を停止、
検知手段4の戻し管43の開閉弁43Aを「閉」状態として検知手段からのサイクロン機構への液体の戻しを停止、
排出管44の開閉弁44Aを「開」状態として検知手段4の取出管41及び確認部42並びに排出管44を介して分離部1内の液体をポンプ部2の自吸式液体ポンプ21によって装置外へ排出、
という工程を経ることで行われる。
【0064】
尚、上記工程に際しては、満杯となったスラッジの吸引を防止するため取出管41の取出口部分がスラッジ上面から離れるように該取出管41を図7に示す位置から図8に示す位置まで上昇させることが好ましい。
【0065】
上記工程によれば、サイクロン分離処理を停止するだけでなく、分離部1内であって且つ第1スラッジ貯留槽14に貯留するスラッジの上面より上方に有る液体を装置外へ排出することができる。この液体の排出によって、第1スラッジ貯留槽14には液体の残存量が少ないスラッジが残ることになり、効率的なスラッジの廃棄が可能となる。
【0066】
第1スラッジ貯留槽14内のスラッジの廃棄は、該第1スラッジ貯留槽14を分離部1から取り外すことによって行われる。
【0067】
第1スラッジ貯留槽14内に貯留したスラッジは、上記したような工程によって定期的に廃棄する以外に、該第1スラッジ貯留槽14の底部を円錐コーン型に構成し、該円錐コーン型の最下部に2軸スクリューを接続することで、該2軸スクリューの作動によって貯留したスラッジを前記第1スラッジ貯留槽14の外部へ搬送して廃棄する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0068】
1 分離部
11 第1サイクロン筒
12 第2サイクロン筒
13 配管
13A 開閉弁
14 第1スラッジ貯留槽
14A バグフィルター
15 第2スラッジ貯留槽
15A スラッジ排出孔
16 エア抜き孔
17 フロート弁
17A 枢軸
18 シール部
19 空気弁
2 ポンプ部
21 自吸式液体ポンプ
22 配管
22A 開閉弁
23 モータ
3 台車
4 検知手段
41 取出管
42 確認部
43 戻し管
43A 開閉弁
44 排出管
44A 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自吸式液体ポンプを有するポンプ部と、該ポンプ部の自吸式液体ポンプの吸引力によって外部からサイクロン筒内に導入した液体に旋回流を生じさせることで該液体に含まれるスラッジをサイクロン分離する分離部と、を有して構成される自吸式固液分離装置において、
前記ポンプ部の上流側である前記自吸式液体ポンプの吸引系に前記分離部が直接又は間接的に接続される構成であり、
前記分離部が、
外側に配設された第1サイクロン筒を有して成る第1サイクロン機構と、該第1サイクロン機構に連通され、該第1サイクロン機構の旋回軸と同軸上で且つ前記第1サイクロン筒の内側に配設されることで前記第1サイクロン筒よりも小径の第2サイクロン筒を有して成る第2サイクロン機構と、を有する内外二重構成であり、
前記第1サイクロン機構は、前記液体を外部から第1サイクロン筒内に導入し、該第1サイクロン筒の内周壁に沿って旋回させることで第1サイクロン分離を行う構成であり、
前記第2サイクロン機構は、前記第1サイクロン機構によって第1サイクロン分離された液体を第2サイクロン筒内に導入して該第2サイクロン筒の内周壁に沿って旋回させることで第2サイクロン分離を行う構成であり、
前記第1サイクロン機構と第2サイクロン機構の下方には、該第1サイクロン機構及び/又は第2サイクロン機構によってサイクロン分離されるスラッジを貯留するスラッジ貯留槽が配設される構成であり、
前記貯留槽が、前記第1サイクロン機構の下方に配設されて該第1サイクロン機構によってサイクロン分離されるスラッジを貯留する第1スラッジ貯留槽と、前記第2サイクロン機構の下方に配設されて該第2サイクロン機構によってサイクロン分離されるスラッジを貯留すると共に前記第2サイクロン筒の下方を密閉可能な第2スラッジ貯留槽と、を有して成る2槽構成であること、
を特徴とする自吸式固液分離装置。
【請求項2】
前記第2スラッジ貯留槽が前記第1スラッジ貯留槽の上方に配設されると共に、該第2スラッジ貯留槽の底部が開放可能であり、該底部の開放によって該第2スラッジ貯留槽内のスラッジを前記第1スラッジ貯留槽内に落下させる構成であることを特徴とする請求項1に記載の自吸式固液分離装置。
【請求項3】
前記第2スラッジ貯留槽の底部には、前記ポンプ部の自吸式液体ポンプの吸引力及び/又は浮力によって該底部を開閉するフロート弁が配設されており、前記自吸式液体ポンプ停止時である分離処理停止時に前記フロート弁上に貯留するスラッジの重量が前記自吸式液体ポンプ停止によって低下する吸引力と前記フロート弁の浮力との和より大となった時に前記フロート弁による前記底部の閉塞が開放される構成であることを特徴とする請求項2に記載の自吸式固液分離装置。
【請求項4】
前記第2スラッジ貯留槽の底部には、前記ポンプ部の自吸式液体ポンプの吸引力及び/又は浮力によって該底部を開閉するフロート弁が配設されており、前記自吸式液体ポンプ停止時及び/又は空気取込時に装置本体内の固液の液面が前記底部の位置より低下した際に前記フロート弁による前記底部の閉塞が開放される構成であることを特徴とする請求項2に記載の自吸式固液分離装置。
【請求項5】
前記第1サイクロン機構の上部と前記第2サイクロン機構の上部とを連通するエア抜き孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自吸式固液分離装置。
【請求項6】
前記分離部には、第1スラッジ貯留槽内に貯留するスラッジ量を検知する検知手段が設けられており、
該検知手段が、
前記第1スラッジ貯留槽内に延伸可能に接続して該第1スラッジ貯留槽内の上部の液体を取り出す取出管と、
該取出管に接続され、内部を通る液体の状態を目視可能な透明部分を有する確認部と、
該確認部と前記第1サイクロン機構又は前記第2サイクロン機構とを接続して、前記第1スラッジ貯留槽から取り出した液体を前記第1サイクロン機構内又は第2サイクロン機構内に戻す戻し管と、
を有する構成であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の自吸式固液分離装置。
【請求項7】
前記検知手段の液体経路上のいずれかの部位に、該検知手段内への通液を制御する開閉弁が設けられる構成であることを特徴とする請求項6に記載の自吸式固液分離装置。
【請求項8】
前記検知手段の確認部と前記ポンプ部の自吸式液体ポンプとを接続する排出管を有し、
前記検知手段の確認部を通る液体にスラッジが確認された際に、分離部の外部からの固液の導入を停止すると共に該分離部内に吸気し、該分離部内であって且つ前記第1スラッジ貯留槽に貯留するスラッジの上面より上方に有る液体を前記検知手段及び排出管を介して前記自吸式液体ポンプによって排出することで、前記第1スラッジ貯留槽内のスラッジを廃棄できる状態とすることが可能となる構成であることを特徴とする請求項6又は7に記載の自吸式固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−161363(P2011−161363A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26493(P2010−26493)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【特許番号】特許第4621802号(P4621802)
【特許公報発行日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(391001044)株式会社ワールドケミカル (7)
【Fターム(参考)】