説明

自己免疫疾患を治療する方法

自己免疫疾患を患う患者を処置する方法が開示される。本出願の方法は、初めに、たとえば抗‐胸腺細胞抗体を投与することにより、哺乳動物の循環するリンパ球を枯渇させること、次に再構築の経過中に、治療的有効量の潜在型TGF‐βおよび/または制御性T細胞の増殖を促進する別の因子を哺乳動物に投与することを含む。ある側面では、開示されたプロセスが結果として腎臓機能および生存率を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔0001〕本出願は2006年4月12日に出願された米国仮出願番号60/744,713に対する優先権を主張し、それをそのまま参照として本明細書に援用する。
【0002】
〔0002〕本発明は自己免疫疾患を治療する方法に関する。本発明の方法は、潜在型TGF‐βまたは制御性T細胞を刺激する他の因子(agent、作用物質)の、単独の、または、たとえば抗‐胸腺細胞グロブリン(ATG)のようなリンパ球枯渇因子と組み合わせた使用を含む。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
〔0003〕自己抗原および/または自己反応性T細胞に対する抗体の産生は多くの自己免疫疾患の特徴である。自己抗体および自己反応性T細胞は(たとえば、ループス腎炎でのような)重篤な組織損傷または(たとえば、免疫性血小板減少紫斑病でのような)血液成分の損失を引き起こしうる。
【0004】
〔0004〕典型的には、自己免疫疾患は、たとえばシクロホスファミド、メトトレキサート、アザチオプリン、およびシクロスポリンのような非特異的免疫抑制剤により治療され、それらは免疫細胞が臓器および組織を冒すことを妨げる。しかし、免疫抑制剤はしばしば重大な副作用(たとえば、毒性、望まない免疫系の抑制など)を伴う。
【0005】
〔0005〕腫瘍増殖因子(TGF‐β)はその免疫抑制作用のために、多発性硬化症および移植片対宿主病を含む、ある種の自己免疫疾患にとっての可能性のある治療薬として提案されてきた。Flanders et al.,Clin.Med.Res.,1:13−20(2003)。それはまた、in vitroでサプレッサーT細胞の生成を誘発するために有用であると報告されている(米国特許第6,759,035号を参照されたい)。しかし、TGF‐βは免疫抑制特性を有する以外に、多能性サイトカインであり、細胞外マトリックス生産および他の生物学的プロセスに関与する。TGF‐βに関する総説としては、たとえばCytokine Reference,Oppenheim et al.編,Academic Press,San Diego,CA,2001を参照されたい。TGF‐βの過剰な、または持続的な発現は器官線維症において役割を果たす(Kapanci et al.,Am.J.Resp.Crit.Care Med.,152:2163−2169(1995);George et al.,Prot.Natl.Acad.Sci.,96:2719−2724(1999);Kuwahara et al.,Circulation,106:130−135(2002))が、活性なTGF‐βの全身投与は容認できない毒性に関連している。とりわけ、慢性進行性多発性硬化症の第I/II相治験において、活性なTGF‐β2の全身投与は、糸球体濾過速度の減少によって立証されるように、結果として容認できない腎毒性を生じた。Calabresi et al.,Neurology,51:289−292(1998)。この結果は活性なTGF‐βの全身投与を含む、治療のそれ以上の臨床的発展を妨げている。従って、付随する毒性を招くことなく、TGF‐βの免疫抑制能力を選択的に利用する挑戦が依然として続けられている。その上、望ましくない副作用を起こさずに、自己反応性免疫の抑制を可能にする、自己免疫疾患の治療方法を開発する必要性が依然として残っている。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
〔0006〕本発明は部分的に、活性なTGF‐βの全身毒性を回避するために潜在型TGF‐βが使用され得るという発見および証明に基づく。潜在型TGF‐βの活性化は、蛋白質分解、活性酸素種への暴露、ならびにトロンボスポンジンおよび他の蛋白質との相互作用を含む、いくつかの機序を通してin vivoで出現しうる潜在型結合ペプチド(LAP)の除去を必要とする。Murphy−Ullrich et al.,Cytokine Growth Factor Rev.,11:59−69(2000)。ルーパス患者の腎臓でのように、自己免疫性炎症の部分においてそのような異常が起こる可能性があることは理論化されているが、本発明の目的のためには当てにされていない。炎症および組織傷害の部分において潜在型TGF‐βの活性化が起こるため、潜在型TGF‐βの使用が全身TGF‐βに伴う毒性を回避する可能性がある。従って、ある態様では、本発明の方法は哺乳動物への不活性なTGF‐β(たとえば潜在型TGF‐β)の全身投与を含み、その結果TGF‐βの活性化および/または作用は炎症および組織傷害の部位に限定される。
【0007】
〔0007〕本発明はさらに、部分的に、全身性エリテマトーデスのマウスモデルにおいて、抗‐胸腺細胞グロブリン(ATG)によるリンパ球の枯渇、続く潜在型TGF‐βの投与が腎臓機能を改善すること、および生存率を高めることにおいて有効であるという発見および証明に基づく。従って、本発明のある態様では、宿主リンパ球は潜在型TGF‐βの投与前に枯渇し、潜在型TGF‐β投与の治療的に望ましい効果が得られる。
【0008】
〔0008〕TGF‐βの治療効果は、部分的に制御性T細胞の増殖に対するTGF‐βの刺激効果に起因することがさらに理論化されているが、本発明の目的のためには当てにされていない。従って、本発明のある態様では、制御性T細胞の増殖を促進する別の因子が、潜在型TGF‐βのかわりに、またはそれに加えて投与されてもよい。
【0009】
〔0009〕本発明は自己免疫疾患、たとえば全身性エリテマトーデス(SLE)、リウマチ性関節炎(RA)を患う哺乳動物(たとえばヒト)を治療するための方法を提供する。ある態様では、治療は疾患の進行を遅らせるか、症状を改善させる。本発明はさらに、たとえば、SLE、グッドパスチャー症候群、ウェゲナー症候群、およびベルガー病のような、腎臓機能を損なう自己免疫疾患を患う哺乳動物において腎臓機能を保持するか、または改善する方法を提供する。
【0010】
〔0010〕いっそう特定の態様では、本発明の方法は以下のステップを含む:
(a)哺乳動物において循環するリンパ球を枯渇させること、
(b)リンパ球に再構築を開始させること(“再構築相”)、および
(c)再構築相中に、治療的有効量の潜在型TGF‐βおよび/または制御性T細胞の増殖を促進する別の因子を哺乳動物に投与すること。
【0011】
〔0011〕ある態様では、リンパ球の枯渇は抗‐胸腺細胞抗体(たとえば、Thymoglobulin(登録商標)、Atgam(登録商標)、Fresenius(登録商標)、およびTecelac(登録商標))またはT細胞に発現された抗原に対して特異的な別の抗体を投与することによって成し遂げられる。
【0012】
〔0012〕ひとたび循環するリンパ球が実質的に枯渇してしまえば、それらは再構築を開始する(“再構築相”)ことが可能になる。再構築中、完全な再構築が起こる前に、治療的有効量の1種以上の以下の因子が哺乳動物に投与される:(1)潜在型TGF‐β(たとえば、TGF‐β1〜TGF‐β3のいずれか1種の潜在型)および/または(2)制御性T細胞の増殖を促進する1種以上の他の因子(たとえばIL−10、IL−10とIL−4、IL−10とIFN−α、ビタミンD3とデキサメタゾン、ビタミンD3とミコフェノール酸モフェチル、およびラパマイシン)
〔0013〕ある態様では、腎臓機能が自己免疫疾患のために損なわれる場合、たとえば、全身血圧、蛋白尿、アルブミン尿、糸球体濾過速度、および/または腎血流量における変化によって示されるように、治療方法が結果として哺乳動物の腎臓機能を改善する(たとえばその損失の進行を遅らせる)。
【0013】
〔0014〕前述の概要および以下の詳細な説明は、主張したように代表的で説明的なだけであって、本発明を制限するものではない。
発明の詳細な説明
〔0025〕本発明は自己免疫疾患を患う哺乳動物の治療の方法を提供する。特定の態様では、そのような方法は、腎臓機能を損なう自己免疫疾患を患う哺乳動物において腎臓機能を改善する方法を含む。ある態様では、本発明の方法は哺乳動物への潜在型TGF‐βの全身投与を含み、ここでTGF‐βの活性化および/または作用は炎症および組織傷害の部位に限定される。
【0014】
〔0026〕ある態様では、本発明の方法は以下のステップを含む:
(a)哺乳動物の循環するリンパ球を枯渇させること、
(b)リンパ球に再構築を開始させること、および
(c)(b)の再構築相中に、治療的有効量の潜在型TGF‐βおよび/または制御性T細胞の増殖を促進する別の因子を哺乳動物に投与すること。
【0015】
リンパ球枯渇
〔0027〕循環するリンパ球の枯渇は哺乳動物にリンパ球枯渇剤を投与すること、さもなければ哺乳動物のリンパ様細胞(たとえば、リンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、および/または樹状細胞など)の実質的な画分が消失することになる条件に哺乳動物を曝すことにより成し遂げることができる。枯渇されることになるリンパ球は、Tリンパ球(T細胞)および/またはTおよびBリンパ球であってもよい。枯渇相において、T細胞数は少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上減らされ、そして場合によりBリンパ球(B細胞)数は少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上減らされる。好ましい態様では、枯渇したリンパ球は主にT細胞であり、このことは枯渇したT細胞の割合が枯渇したB細胞の割合より大きい(たとえば、1.2−、1.5−、2−、5−、10倍またはそれ以上)ことを意味する。
【0016】
〔0028〕リンパ球枯渇のレベルは、たとえば末梢血リンパ球(PBL)の量を測定することにより容易に評価することができる。リンパ球数は慣用の臨床研究所技術(たとえば、フローサイトメトリー)を使用して測定することができる。ヒトにおける正常なPBLレベルの参照値は表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
〔0029〕ある態様では、リンパ球枯渇剤は、抗‐リンパ球抗体、たとえば抗‐T細胞抗体、たとえば、Thymoglobulin(登録商標)、Atgam(登録商標)、Fresenius(登録商標)、およびTecelac(登録商標)のような抗‐胸腺細胞グロブリン(ATG)である。ATGは胸腺細胞に対して産生されるポリクローナル抗体である。現在市場で取引されるATG製品はある種(たとえばヒト)から別の種(たとえば、ウサギまたはウマ)に胸腺細胞を注射することによって産生される。ATGはリンパ球表面抗原CD2、CD3、CD4、CD8、CD11a、CD18、CD25、HLA DR、およびHLAクラスIのような細胞表面蛋白質に結合する(Bourdage et al.,Transplantation,59:1194−1200(1995))。ATGは主にT細胞枯渇の結果として免疫抑制を誘発すると考えられていて(たとえば、Bonnefoy−Bernard et al.,Transplantation,51:669−673(1991)を参照されたい)、以前は臓器移植の際に拒絶のリスクを軽減するために移植患者の前処理に使用されていた。
【0019】
〔0030〕ATGの他に、リンパ球枯渇剤は、1種以上の特異的なリンパ球表面抗原に対して産生されるモノクローナルもしくはポリクローナル抗体、たとえば、抗‐CD52抗体(たとえば、Campath(登録商標))抗‐CD3抗体(たとえば、OKT3(登録商標))、抗−CD4抗体(OKT(登録商標))、抗−CD25(IL−2R)抗体(たとえば、ダクリズマブ)、抗−CD5抗体、抗−CD7抗体、抗−TCR抗体、抗−CD2(たとえば、Siplizumab(登録商標))、または先に特定した他のリンパ球表面抗原のいずれかに対する抗体などから構成されるか、またはそれを含む。
【0020】
〔0031〕ある態様では、リンパ球枯渇剤はコルチコステロイドである。
〔0032〕ある態様では、リンパ球を枯渇させることになる条件はガンマ線放射への暴露である。
【0021】
〔0033〕リンパ球を枯渇させるためのいずれか適切な因子および/または条件の組み合わせも使用することができる。
再構築相
〔0034〕枯渇相に続いて、哺乳動物のリンパ球は、リンパ球枯渇剤を取り除くか、またはリンパ球を消失させることになる条件を緩和することにより、再構築を開始することができる。
【0022】
〔0035〕ある場合には、ステップ(c)の因子(すなわち、TGF‐βまたは特に制御性T細胞を刺激する別の因子)が補充相の開始時に速やかに哺乳動物に投与されうるが、別の場合には因子は再構築が一部始まった後で投与される。ステップ(c)の因子が哺乳動物に投与される前に、リンパ球は枯渇前のレベルに比較して50%、40%、30%、20%、10%、5%、またはそれより低いレベルまで再構築することを許されてもよい。
【0023】
〔0036〕ヒトでは、リンパ球は枯渇剤に依存して、異なる速度で枯渇前のレベルに再構築する。たとえば、ATGでは完全な再構築に2〜4時間掛かってもよいが、Campath(登録商標)による治療後は、再構築に数年間かかってもよい。従って、ある態様では、リンパ球枯渇相の終了時からステップ(c)因子の投与までに掛かる時間は、たとえば0、1、2、3、4、5、6日;1、2、3、4または5週間、またはそれより長い。
【0024】
TGF‐β
〔0037〕ある態様では、本発明の方法は投与後に活性化される不活性なTGF‐βの投与を含む。ある態様では、不活性なTGF‐βは潜在型TGF‐βの形状で投与される。別の態様では、不活性なTGF‐βはTGF‐βをコードするDNAの形状で投与され、それが誘導によって活性なTGF‐β1を発現する。
【0025】
〔0038〕TGF‐βは生物学的に活性なTGF‐βがそのプロドメイン(“潜在型結合ペプチド”、LAP)と非競合的に結合している、いわゆる“低分子潜在型複合体”(100kDa)と、付加的に潜在型TGF‐β結合蛋白質(LTBP)を含む、いわゆる“高分子潜在型複合体”(220kDa)のいずれかで自然に分泌される。潜在型は活性な、すなわち成熟したTGF‐βが複合体から遊離されるまでTGF‐β受容体に結合することは不可能である。潜在型および活性化プロセスについてのより詳細な総説としては、たとえばCytokine Reference,Oppenheim et al.編,Academic Press,San Diego,CA,2001,pp.724−725を参照されたい。本明細書で使用する“潜在型TGF‐β”という用語は、LAPと(競合的に、または非競合的に)、そして場合により、付加的にLTBPと(競合的に、または非競合的に)結合したTGF‐βを表す。従って、該用語は低分子および高分子潜在型TGF‐β複合体を表す。所望する位置および期間で活性化されうる不活性なTGF‐βの他の形状もまた本発明の方法において有用であろう。TGF‐βには3種の既知の哺乳動物イソ型(TGF‐β1〜TGF‐β3)があり、それらのすべてはお互いの間で相同(60〜80%同一性)である。3種の哺乳動物イソ型の蛋白質受託番号の部分的なリストは表2に提供し;ヒトTGF‐βのアラインメントは図1に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
TGF‐βならびにTGF‐β受容体の構造的および機能的側面は公知である。たとえば、Cytokine Reference,Oppenheim et al.編,Academic Press,San Diego,CA,2001を参照されたい。従って、1種以上のTGF‐β受容体(TGF‐βRI、TGF‐βRII、またはTGF‐βRIII)に結合する能力を保持する、工学的に操作されたTGF‐βの不活性化された形状は、本発明の方法にも有用であろう。そのような工学的に操作されたTGF‐βの不活性化された形状は自然に存在するTGF‐βの部分的な、または変異したアミノ酸配列だけを含んでいてもよい。たとえば、工学的に操作されたTGF‐βの不活性化された形状は、保存的置換が行われ、および/または非必須アミノ酸が欠失した生来の配列を含んでいてもよい。たとえば、それらはSEQ ID NO:nの112アミノ酸C末端部分の全長にわたる、SEQ ID NO:nのこのC末端部分に少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である配列を含んでいてもよく、ここでn=1、2または3である。
【0028】
制御性T細胞増殖を促進する因子
〔0039〕ある態様では、本発明の方法は制御性T細胞増殖(expansion)を促進する因子の投与を含む。制御性T細胞(TregまたはサプレッサーT細胞としても公知)は接触‐依存的または接触‐非依存的(たとえば、サイトカイン産生)機序を介して他のリンパ様細胞の増殖および/または機能を阻止することが可能な細胞である。γδT細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、CD8T細胞、CD4T細胞およびダブルネガティブCD4CD8T細胞を含む、いくつかの型の制御性T細胞が記載されている。たとえば、Bach et al.,Immunol.,3:189−98(2003)を参照されたい。いわゆる“自然に存在する”制御性T細胞はCD4C25であり、フォークヘッドファミリー転写因子FOXP3(forkhead box p3)を発現する。FOXP3‐発現CD4C25に加え、少数集団のCD8FOXP3‐発現細胞も制御性T細胞である。CD4Tregはさらに、Tr1細胞およびT−ヘルパー3(Th3)細胞のような、インターロイキン‐10(IL−10)およびTGF‐βを分泌する、誘導型制御性T細胞に分割することができる。CD4CD25制御性T細胞の付加的な表面マーカーには、CD45RB、CD38、GITR、表面TGF−β、CTLA4、CD103、CD134およびCD62Lが挙げられる。種々の型の制御性T細胞についての詳細な総説としては、たとえば、Wing et al.,Scand.J.Immunol.,62(1):1(2005);Jonuleit et al.,J.Immunol.,171:6323−6327(2003);Horwitz et al.,J.Leukocyte Biol.,74:471−478(2003)を参照されたい。
【0029】
〔0040〕従って、ある態様では、刺激されている制御性T細胞は1種以上の以下の群を含む:(1)IL−10を発現する制御性T細胞;(2)TGF‐βを発現する制御性T細胞(Tr1細胞およびTh3細胞を含む);(3)CD4CD25細胞(付加的なマーカーCD45RB、CD38、GITR、表面TGF−β、CTLA−4、CD103、CD134および/またはCD62Lを有する細胞を含む);(4)FOXP3−発現T細胞(CD8細胞およびCD4細胞を含む);(5)γδT細胞;(6)NKT細胞;および(7)ダブルネガティブCD4CD8T細胞。
【0030】
〔0041〕直接免疫抑制活性に加えて、TGF‐βはまた制御性T細胞を刺激することが可能であってもよい。Gorelik and Flavell,Nature Reviews Immunology,2:46−53(2002);Chen et al.,J.Exp.Med.,198:1875−1886(2003);Marie et al.,J.Exp.Med.,7:1061−1067(2005);Huber et al.,J.Immunol.,173:6526−6531(2004)。
【0031】
〔0042〕制御性T細胞の増殖を促進するTGF‐β以外の因子の例としては以下のものが挙げられる:(1)IL−10;(2)IL−10およびIL−4;(3)IL−10およびIFN−a;(4)ビタミンD3およびデキサメタゾン;(5)ビタミンD3 ミコフェノール酸モフェチル;および(6)ラパマイシン(たとえば、Barrat et al.,J.Exp.Med.,195:603−616(2002);Jonuleit et al.,J.Immunol.,171:6323−6327(2003);Gregori et al.,J Immunol.,167:1945−1953(2001);Battaglia et al.,Blood,105:4743−4748(2005)を参照されたい)。
【0032】
〔0043〕ある態様では、因子の欠如とは反対に、その存在における、たとえば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、またはそれ以上の制御性T細胞増殖の増加は制御性T細胞増殖を促進する因子の能力を表すと見なされている。TGF‐βおよび他の因子は、常法を使用して制御性T細胞増殖を促進する能力についてアッセイされうる。より頻繁に使用されるin vitroアッセイのいくつかの例としては以下のものが挙げられる:
〔0044〕(1)フローサイトメトリー解析、ここではCD4、CD25、および/またはFOXP3、および/またはCD62L、および/またはGITR、および/またはCTLA4、および/または表面TGF−β、および/またはD103、および/またはCD134の共発現が制御性T細胞表現型の指標として使用される(たとえば、上記のJonuleitを参照されたい);
〔0045〕(2)たとえば、Chen et al.,J.Exp.Med.,198:1875−1886(2003)に記載のような、共培養システムにおけるT細胞増殖の阻止。(このアッセイでは、制御性T細胞は反応性T細胞に添加され、共培養は抗‐CD3または同種異系リンパ球により刺激される。制御性T細胞の存在下では、反応性T細胞はこれらの刺激に反応して増殖することが不可能になる。増殖の程度は典型的にはトリチウム化されたチミジン取込によって測定される);および
〔0046〕(3)たとえば、Barrat,上記、およびJonuleit、上記、に記載のような、サイトカインプロファイリング。(このアッセイでは、培養した制御性T細胞由来の上清は、制御性T細胞によって生産されることが公知の、たとえばIL−10およびTGF‐βのような免疫抑制性サイトカインの存在について分析される。
【0033】
用途
〔0047〕本発明の方法を使用して、たとえば全身性エリテマトーデス(SLE)および自己免疫リウマチ性関節炎(RA)のような自己免疫疾患を有する哺乳動物を治療することができる。哺乳動物の例としてはヒトまたは他の霊長類(たとえば、チンパンジー)、齧歯類(たとえば、マウス、ラット、またはモルモット)、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、およびブタが挙げられる。疾患を患う対象によっては、治療により疾患の進行を阻止し、および/または症状を改善することが期待される。
【0034】
〔0048〕付加的な自己免疫疾患の例としては、インスリン‐依存的糖尿病(IDDM;I型糖尿病)、炎症性大腸炎(IBD)、移植片対宿主病(GVHD)、セリアック病、自己免疫甲状腺病、シェーグレン症候群、自己免疫性胃炎、自己免疫性肝炎、皮膚自己免疫疾患、自己免疫性拡張型心筋症、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症(MG)、血管炎(たとえば、高安動脈炎およびウェゲナー肉芽腫症)、筋肉の自己免疫疾患、精巣の自己免疫疾患、自己免疫性卵巣疾患、自己免疫性ブドウ膜炎、グラーブ病、乾癬、強直性脊椎炎、アジソン病、橋本甲状腺疾患、突発性血小板減少性紫斑病、および尋常性白斑が挙げられる。
【0035】
〔0049〕本発明の方法は自己免疫の進行を遅らせ、少なくとも一部の症状を改善し、および/または生存率を高めることが期待されている。たとえば、本発明の方法が結果として自己抗体、自己抗体を産生するB細胞、および/または自己反応性T細胞のレベルを減少させてもよい。これらのパラメータのいずれかの減少は、たとえば、治療前のレベルに比較して少なくとも10%、20%、30%、50%、70%またはそれ以上でありうる。
【0036】
〔0050〕本発明はさらに、腎臓機能を損なう自己免疫疾患を患う哺乳動物の腎臓機能を保持するか、または改善する方法を提供する。腎臓機能を損なう可能性がある自己免疫疾患の例としては、SLE(たとえば、ループス腎炎)、グッドパスチャー症候群、ウェゲナー肉芽腫症(ウェゲナー症候群)、ベルガー病(IgA腎症)、およびIgM腎症が挙げられる。そのような疾患に苦しむ患者によっては、たとえば全身血圧、蛋白尿、アルブミン尿、糸球体濾過速度、および/または腎血流量の変化によって示されるような、治療による腎臓機能の改善(たとえば、腎臓機能の損失の進行を遅らせる、機能を保持する、または改善する)が期待される。
【0037】
〔0051〕“腎臓機能”という用語は、その生理的機能、たとえば圧濾過、選択的再吸収、尿細管分泌、および/または全身血圧調節を行う腎臓の能力を表す。腎臓機能を評価する方法は当該技術分野で公知であり、以下のものが挙げられるがそれらに限定されない:全身および糸球体毛細管血圧、蛋白尿、アルブミン尿、顕微鏡的および肉眼的血尿、血清クレアチニンレベル(たとえば、ヒトの腎臓機能を推定する1つの式は、2.0mg/dlのクレアチニンレベルを50%、そして4.0mg/dlを25%の正常腎臓機能とみなす)、糸球体濾過速度(GFR)の減少(たとえば、クレアチニンクリアランスの速度によって表される、またはイヌリンアッセイを使用)、および尿細管傷害の程度。
【0038】
〔0052〕腎臓機能および関連する疾患状態の詳細な総説としては、The Kidney:Physiology and Pathophysiology,Seldin et al.編,3版,Lippincott,Williams&Wilkins Publishers,2000を参照されたい。通常、0.15g未満の蛋白質が24時間で尿に排泄される。ほとんどすべての型の腎臓疾患は尿に軽度(1日に500mgまで)から中等度(1日4gまで)の蛋白質漏出を引き起こす。尿中の正常なアルブミン濃度は1.0mg/dl未満である。一般に、30〜300mg/dlの尿中アルブミンはミクロアルブミン尿と見なされ、300mg/dlより多いものはマクロアルブミン尿と見なされる。血清クレアチニンの正常値は男性の場合0.6〜1.5mg/dl、女性の場合0.6〜1.1mg/dlである。クレアチニンレベル、腎臓機能、および腎臓疾患のステージ間の関係は表3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
〔0053〕従って、本発明の方法は低下した、または減少した腎臓の余力、腎機能不全、腎不全、または末期腎臓疾患を伴う自己免疫疾患を有する患者において有用であってもよい。たとえば、本発明の方法は、ミクロアルブミン尿、マクロアルブミン尿、および/または24時間につき1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10gまたはそれを越える蛋白尿レベル、および/または約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、7.0、8.0、9.0、10mg/dlまたはそれ以上の血清クレアチニンレベルを有する患者に使用されてもよい。
【0041】
〔0054〕ある態様では、本発明の方法は対照被験者に比較して、尿中に分泌される蛋白質(蛋白尿)の量、尿中に分泌されるアルブミン(アルブミン尿)の量、および/または患者の血清クレアチニンレベルを少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれより多く減少させる。別の態様では、本発明の方法は対照被験者に比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれより多く腎臓機能の損失の進行を遅らせる。腎臓機能を評価するための限定的でない説明的な方法は本明細書、およびたとえばWO01/66140に記載される。
【0042】
投与方法
〔0055〕本発明の方法では、“投与”はいずれか特定の送達システムに限定されず、そして限定することなく、非経口的(皮下、静脈内、骨髄内、関節内、筋肉内、または腹腔内注射を含む)、直腸内、局所、経皮、または経口(たとえば、カプセル、懸濁液、または錠剤で)を含んでいてもよい。個体への投与は、単回用量または反復投与で、そして多様な生理学的に受容可能な塩型のいずれかで、および/または医薬組成物の一部としての受容可能な医薬キャリアおよび/または添加物と共に行われてもよい。生理的に受容可能な塩型および標準医薬製剤技術および賦形剤は当業者に公知である(たとえば、Physicians’Desk Reference(PDR(登録商標))2005,59版,Medical Economics Company,2004;およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy,Gennado et al.編,21版,Lippincott,Williams&Wilkins,2005を参照されたい)。
【0043】
〔0056〕潜在型TGF‐βはまた、たとえばKitani et al.,J.Exp.Med.,192(1):41−52 (2000)に記載のように、遺伝子治療によって(すなわち、適切なベクター中のTGF‐βをコードするDNAを投与することによって)投与されうる。
【0044】
〔0057〕Tregを促進する因子で、リンパ球枯渇剤である潜在型TGF‐βの適切な有効量は、治療する医師によって選択され、およそ0.01μg/kgから25mg/kgまで、0.1μg/kgから10mg/kgまで、1μg/kgから1mg/kgまで、10μg/kgから1mg/kgまで、10μg/kgから100μg/kgまで、100μg/kgから1mg/kgまで、および500μg/kgから5mg/kgまでに及ぶことになる。その上、実施例において、またはPDR(登録商標)2005および後の版において示された特定の投与量を使用して、所望する投与量に到達してもよい。たとえば、米国において現在認可されているサイモグロブリン(登録商標)の使用としては、臓器移植(2〜14日間で1mg/kgから2.5mg/kgまで)および再生不良性貧血(5日間で2.5mg/kgから3.5mg/kgまで)が挙げられる。
【0045】
〔0058〕ある動物で達成された有効投与量は、当該技術分野で公知の変換因子を使用して、ヒトを含む別の動物における使用のために変換されてもよい。たとえば、等価な表面積投与量因子に関してはFreireich et al.,Cancer Chemother.Reports,50(4):219−244(1966)および表4を参照されたい。自己免疫疾患モデルおよび適切な方法は、たとえば、Cohen et al.(編)Autoimmune Disease Models,Academic Press,2005に見いだすことができる。
【0046】
【表4】

【0047】
〔0059〕以下の実施例は説明のために提供され、限定することを意図しない。
【実施例】
【0048】
活性化されたTGF‐β1の効能評価
〔0060〕組換えヒト潜在型TGF‐β1はCHO細胞(Genzyme,Framingham,MA)において生産された。潜在型TGF‐β1からのLAPの分裂は酸性化によって達成された。LAP−TGF−β1はアッセイ液(DMEMプラス非必須アミノ酸、L−グルタミン、pen−strep、および10% FBS)で200ng/mLに希釈した。希釈した試料500マイクロリットルは1N HClを100μL添加することにより活性化し、室温で20分間インキュベーションした。その後、試料は100μLの1.2N NaOH/0.5M HEPESで中和した。
【0049】
〔0061〕活性化したTGF‐β1試料は、A549 Cell Potency Assayを使用して分析し、活性はヒト組換えTGF‐β2(Genzyme,Framingham,MA)対照に比較して評価した。A549 Potency Assayはヒト肺上皮細胞系統、A549によるTGF‐β1‐誘発IL−11遊離に基づき、そしてWang et al.,Am.J.Physiol.,276:L175−L185(1999)に記載される。TGF‐β1に反応したA549からのIL−11遊離は、ELISA手順(R&D Systems,Minneapolis,MN)を使用して測定した。
【0050】
マウスルーパスモデル
〔0062〕動物および試薬− 雌MRL/lprマウスはJackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から得て、5〜6週齢で受け入れた。ATGはBalb/cマウス胸腺細胞でウサギを免疫化することにより生成された。ウサギは0日目に5x10の新鮮な胸腺細胞の皮下注射により免疫され、14日目に5x10の新鮮な胸腺細胞を静脈内にブースター注射された。20、22、および25日目に集めた血清をプールし、IgG画分はクロマトグラフィーおよび、硫酸ナトリウム沈殿により分離した。投薬をうけていない(naive)ウサギ由来のIgGの市販調製物(Sigma,St.Louis,MO)を陰性対照として使用した。組換えヒト潜在型TGF‐β1はCHO細胞(Genzyme,Framingham,MA)中で生産された。シクロホスファミドはVWR Scientific Products(West Chester,PA)から購入した。
【0051】
〔0063〕治療(treatment、処置)− 動物は蛋白尿、アルブミン尿、および2本鎖DNA(dsDNA)に対するIgG抗体の力価について3週間毎にモニターした(以下を参照されたい)。治療的処置は動物がdsDNAに対する抗体を産生し始めた、および/または12〜13週齢で蛋白尿が高まった時に開始した。500μg(〜25mg/kg)の2回の腹腔内(i.p.)注射からなるATGまたは対照ウサギIgGによる処置は、3日間離して(0日目と3日目)行われた。潜在型TGF‐β1はマウス毎に4μgのi.p.注射を毎日、12日間として14日目から25日目まで与えられた。潜在型TGF‐β1の4μgの用量は、分子の活性な(成熟、非LAP‐結合)部分の1μg(〜0.05mg/kg)に相当する。シクロホスファミドは陽性対照として使用され、12〜13週齢から24〜25週齢における試験の終了まで、100mg/kgの用量で毎週、i.p.送達された。処置群は対照ウサギIgG、対照ウサギIgG+潜在型TGF‐β1、ATG、ATG+潜在型TGF‐β1、またはシクロホスファミドからなり、1群につき、動物は10匹であった。
【0052】
〔0064〕蛋白尿およびアルブミン尿− 個々のマウスの尿中の蛋白質レベルは、総蛋白質濃度を測定するためにデザインされた比色法を使用して測定した。尿中のアルブミンレベルは定量的ELISAアッセイにより評価した。
【0053】
〔0065〕24時間尿回収は、マウスを別個の代謝ケージに入れることによって3週間毎に実施した。蛋白尿は、Sigma(St.Louis,MO)のMicroprotein−PR(登録商標)キットを使用して測定した。手短に述べると、尿はピロガロールレッド‐モリブデン酸塩複合体を含む試験溶液に添加した。混合物は37℃で10分間、インキュベーションし、蛋白質の塩基性アミノ基に試薬を結合させ、600nMに吸光度をシフトさせた。600nMでの光学濃度(O.D.)の増加は蛋白質濃度に直接比例し、参照標準を使用して、以下の式に従って試験試料の蛋白質濃度が測定された:
【0054】
【化1】

【0055】
〔0066〕尿中アルブミンレベルは取扱説明書に従って、間接的競合的ELISAキット(Exocell Inc,Philadelphia,PAのAlbuwell M)を使用して評価した。手短に述べると、尿試料の系列2倍希釈物はマウスアルブミンでコーティングされたELISAプレートのデュプリケートウェルに添加された。次にウサギ抗‐マウスアルブミン抗体がウェルに添加され、試料中のアルブミンとウェルに結合したアルブミンへの抗体の結合を競合させた。この後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)‐結合抗‐ウサギイムノグロブリンとHRP基質を添加し、ウェルに結合したウサギ‐抗‐マウスアルブミン抗体の量を検出した。450nmでのO.D.は尿試料中のアルブミン量の対数に逆比例した。尿試料中のアルブミン濃度は、既知のマウスアルブミン濃度で得られた標準曲線から導かれた。
【0056】
〔0067〕抗‐dsDNA ELISA− 個々のマウスから得られた血清試料中のdsDNAに対するIgG抗体の力価はELISAによって測定した。
〔0068〕個々のマウスから得られた血清試料は3週間毎に回収した。dsDNAに対する抗体の力価はELISAにより評価した。マウス2本鎖DNA(The Jackson Laboratory)は、S1ヌクレアーゼ(Invitrogen,Carlsbad,CA)により消化して1本鎖DNAをすべて除去し、その後それを使用して96ウェルELISAプレートのウェルを一晩、4℃でコーティング(1μg/ml dsDNAをウェルにつき100μl)した。プレートは水中0.01%の硫酸プロタミンで前処理(150μl/ウェル、室温で90分間)し、DNAの接着を促進させた。コーティング後、プレートは2.5%BSAブロッキングバッファーで1時間、37℃でインキュベーションした。プレートを洗浄し、HRP‐結合ヤギ抗‐マウスIgG(Pierce,Rockford,IL)を添加し、dsDNAに結合した抗体を検出した(37℃、1時間)。洗浄後、HRP基質を30分間、室温で添加し、2波長プレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)で、参照波長650nMを使用して、比色法で測定した生成物のO.D.を490nMで読み取った。抗体力価は、0.1より大きいか、またはそれに等しいO.D.を与える血清の希釈の逆数として定義した。正常マウス血清は陰性対照(力価<200、試験された最も低い希釈)として使用し、老齢のMRL/lprルーパスマウスの血清は陽性対照(力価6400〜25600)として使用した。
【0057】
〔0069〕組織構造− 腎臓は予定した致死時に、または安楽死を必要とする瀕死の動物由来の試験の経過中に、組織学的解析のために回収した。腎臓は縦方向に薄く切り、バッファーで中和したホルマリンで固定した。約5μmの切片はヘマトキシリン&エオジン(H&E)および過ヨウ素酸‐Schiff(PAS)染色により染色した。スライドは、表5Aおよび5Bに記載のスコアリングシステムに従って、糸球体形態、間質の炎症、および蛋白円柱に対して病理学者によりスコアが付けられた。
【0058】
【表5A】

【0059】
【表5B】

【0060】
〔0070〕統計− 統計学的解析はTurkeyの多重比較検定を使用して行い、処置群間に有意差が存在するかどうかを確認した。0.05以下に等しいか、それ未満のP値は統計的に有意であると見なされた。
【0061】
〔0071〕蛋白尿およびアルブミン尿− ATGまたは潜在型TGF‐β1だけ(対照Ig+TGFβ1)による処置は大部分蛋白尿の発症を阻止することができなかった(図2)が、試験の終わりまでには、これらの単一因子処置群では対照Igにより処置したマウスに比較して、重篤な蛋白尿(>500mg/dl/日)の発生率はわずかに低下した(それぞれ、60〜67%対90%)(図3)。対照的に、ATGと潜在型TGF‐β1の組み合わせによる処置は蛋白尿の発生率(30%対90%)と重症度を著しく阻止し、これらの2種の因子間の相乗作用を示唆した(図2および3)。
【0062】
〔0072〕ATGと潜在型TGF‐β1の組み合わせにより処置されたマウス尿中の総蛋白質レベルにおいて観察された減少は、また尿アルブミンレベルの測定値に反映された(図4および5)。ELISA定量は、アルブミン尿の発生率および重症度が、陰性対照Ig群または単一因子処置群(ATG、対照Ig+TGFβ1)のいずれかと比較して、組み合わせ処置により処置したマウスにおいてかなり低下することを示した。
【0063】
〔0073〕dsDNAに対する抗体‐陰性対照群(正常ウサギIg)ならびに潜在型TGF‐β1+対照IgおよびATG処置群のマウスの大部分は、同じような反応速度で、次第にIgG抗体力価を上昇させ始めた。対照的に、ATGと潜在型TGF‐β1の組み合わせにより処置された群の抗‐dsDNA力価の上昇はかなり遅延した(図6)。糸球体における免疫複合体(DNA‐抗−DNA複合体)の沈着はルーパスに特有の炎症および腎臓病理において重要な役割を果たすと考えられている。しかし、試験終了時の抗体力価と蛋白尿の程度間の相関関係が低かったため、組み合わせ処置群のdsDNAに対する抗体産生における明白な阻止は、腎臓機能の保存を十分に説明することができなかった。
【0064】
〔0074〕生存率− ATGおよび/または潜在型TGF‐β1を使用した投与は十分に耐容され、明白な有害事象は全く生じなかった。潜在型TGF‐β1+対照Ig群の1匹の動物以外は、すべての死亡は非常に高レベルの蛋白尿に関連し、おそらく腎不全に起因した。処置群のすべては、陰性対照ウサギIg‐処置群に比較した場合、生存率の全体的な改善を示した(図7)。最も高度な生存率(100%)はシクロホスファミドおよびATG/潜在型TGF‐β1組み合わせ処置群に見られ、次にATG(90%)そして潜在型TGF‐β1+対照Ig(70%)処置群の順であった。陰性対照群は試験の終わりまでには生存率は40%にすぎなかった。
【0065】
〔0075〕組織構造− 組織学的解析の結果は表6に提示される。ATGと潜在型TGF‐β1で処置されたマウスは、対照マウス、またはATGだけもしくは潜在型TGF‐β1と対照Igのいずれかを投与されたマウスに比較して、糸球体腎炎の程度が低かった。これらの組織学的所見は、組み合わせ‐処置動物における蛋白尿/アルブミン尿の減少および生存率改善という臨床所見と相関した。
【0066】
〔0076〕対照ウサギIgGだけで処置した群に比較して、ATG、潜在型TGF‐β1+対照IgおよびATGと潜在型TGF‐β1の組み合わせで処置した群では、炎症スコアのごくわずかの減少が認められた。
【0067】
【表6】

【0068】
〔0077〕MRL/MPJ−Tnfrs6lprマウスを用いて、先に記載の同じ治療計画に続いて反復試験が実施された。この場合、試験は(初めの試験の24週と対比して)40週齢まで延長され、ATG+潜在型TGF‐β1による一過性処置の効果の持続性が評価された。結果は長期生存の利点を示した。対照ウサギIgを投与されたマウスにおける30%生存率、およびATGで処置された群における10%生存率に比較して、ATGと潜在型TGF‐β1で処置されたマウスでは90%生存率が観察された。これは、100%生存率を提供したシクロホスファミドにひけをとらないが、ATG+潜在型TGF‐β1による処置は、長期の週毎の注射を必要とするシクロホスファミドとは対照的に、1回の一時的コースであった(図8)。
【0069】
〔0078〕同様の試験が、自然発症ルーパスの別のモデルである、NZB/NZWF1マウスにおいて行われた。同じ治療計画が使用され、これらの条件下では、疾患の経過または重症度に対して、ATGと潜在型TGF‐β1、またはいずれかの因子単独による処置に統計的に有意な効果は見られなかった。2つのモデル間の疾患の特徴および反応速度論における差のために、治療計画はNZB/NZWF1系統に対して最適化される必要があると考えられる。
【0070】
〔0079〕ATG+TGF‐β1の活性の基礎をなす作用機序を検討するために、MRL/lprルーパスマウスの脾細胞はATG+/−TGF‐β1と共にin vitroで培養し、回収した細胞はFACSによりTregの存在について分析した。活性な疾患を有する10匹のMRL/lprルーパスマウス(〜25週齢)のプールされた脾細胞は100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび2mMグルタミンを補足した、血清フリーAIM−V培地(Gibco,Grand Island,NY)中に再懸濁した。細胞は以下の6種の異なる条件下で2ml細胞/ウェルを含む24ウェルプレートで培養した:1)細胞だけ、2)ATG(100μg/ml)+活性なTGF−β1(10ng/ml;Genzyme)、3)ATGだけ(100μg/ml)、4)対照ウサギIgG(100μg/ml)+活性なTGF−β1(10ng/ml)、5)対照ウサギIgGだけ(100μg/ml)、および6)活性なTGF−β1だけ(10ng/ml)。活性なTGF‐β1を使用して、通常はin vivoで起こることになる活性化プロセスを模倣した。細胞は5日間、37℃および5%COでインキュベーションした。それぞれの培養条件に由来する細胞をプールし、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、計数し、そしてFACS解析のために染色した。試料毎に全部で5x10細胞をラット抗‐マウスCD4−Alexa 488(Cat.No.557667;BD Pharmingen,San Diego,CA)およびラット抗‐マウスCD25−PerCp−Cy5.5(Cat.No.551071;BD Pharmingen)で染色した。FOXP3の細胞内検出の場合、表面CD4/CD25について染色された細胞は、一晩透過化処理し、eBioscience(San Diego,CA)FOXP3染色キット(Cat.No.72−5775)を使用して、取り扱い説明書に従って染色した。処置毎に取得した6,000個のリンパ球はFACS Caliburシステム(Becton Dickinson,San Diego,CA)により染色を分析した。結果は、それぞれの培養条件下で回収したそれぞれの表現型の細胞の絶対数(FACSによる陽性細胞の割合x培養物から回収した細胞の総数)として表される。
【0071】
〔0080〕図9に示すように、回収したCD4CD25T細胞の数は、ATG+TGF‐β1を含む培養物中で最も多かった。制御性T細胞は典型的には、CD4CD25表現型を発現するが、活性化されたT細胞もこの表現型を示すことができる。付加的なFOXP3染色はTreg表現型の別の証拠を提供し、得られた結果は、ATG+TGF‐β1による処置が最も多い数のCD4CD25FOXP3Tregを生産したことを確証した。ATGだけによる処置はまた、この集団(細胞だけに比較して)におけるわずかな増加を導くように見え、そしてその増加はTGF‐β1の添加により高められた。これらの結果は、ATG+/−TGF‐β1による処置がTregの増殖を促進し、そしてそのような細胞が自己免疫の条件下で治療的利点を提供してもよいという仮説を支持する。
【0072】
関節炎のマウスモデル
〔0081〕ATG+/−TGF‐β1の効果はコラーゲン誘発関節炎マウスモデルにおいて試験された。疾患を誘発するために、DBA/1マウス(Jackson Laboratory)は、0日目に、尾の基部を全容量100μlの完全フロイントアジュバント中のウシII型コラーゲン(Cat.No.2002−2,Chondrex)で免疫化した。不完全フロイントアジュバント中のコラーゲンによるブースター免疫化は22日目に行われた。2回の500μg(〜25mg/kg)の腹腔内注射から構成される、ATGまたは対照ウサギIgGによる処置は、3日間離して(23日目と26日目)送達された。潜在型TGF‐β1は、マウスごとに10日間毎日4μgのi.p.注射として28から37日目まで投与された。潜在型TGF‐β1の4μgの用量は、分子の活性な(成熟、非LAP結合)部分の1μg(〜0.05mg/kg)用量に相当した。処置群は、(1)対照ウサギIgG、(2)対照ウサギIgG+潜在型TGF‐β1、(3)ATG、および(4)ATG+潜在型TGF‐β1を含み、1群の動物は10匹であった。21日目から始めて、1週間に2〜3回個々のマウスが検査され、疾患の臨床徴候が採点された。関節炎スコアは表7に定義する。
【0073】
【表7】

【0074】
〔0082〕ATGだけの処置は結果として疾患スコアを減少させ、潜在型TGF‐β1の添加は試験した条件下では付加的な利点を提供するようには見えなかった。結果は表8に示す。
【0075】
【表8】

【0076】
〔0083〕コラーゲン誘発関節炎は短期間動物モデルであり、処置はルーパスモデルの月単位に対して、週単位のタイムスケールで行われる。この短いタイムスケールは、ルーパスモデルで観察された、ATGと一緒にTGF‐β1を投与することによって添加される利点を観察するには十分でない可能性がある。したがって、異なる投与計画、または付加的な動物モデルの別の試験がATGと潜在型TGF‐βの組み合わせ投与の利点を示すであろう。
【0077】
ぶどう膜炎のマウスモデル
〔0084〕ATG+/−TGF‐β1の効果はぶどう膜炎のマウスモデルにおいて試験した。疾患を誘発するために、B10.RIIIマウス(Jackson Laboratory)(カスタム合成,New England Peptide)は0日目に、完全フロイントアジュバント中のヒト光受容体間レチノイド結合蛋白質の161〜180アミノ酸(IRBP161−180)100μgを2カ所(肩甲骨の間と骨盤領域)に皮下注射することにより、免疫化した。個々のマウスに対して10日目から始める眼底検査が行われ、疾患スコアが割り当てられた。試験を行うために、Mydriacyl(登録商標)1%(Cat.No.1120,JA Webster)を1〜2滴使用することによりマウスの瞳孔を開き、約5分間、暗室で休ませた。マウスは手で押さえ、両眼の網膜は78ジオプトリーレンズを持つ間接検眼鏡を使用して観察した。表9に記載のように、0〜5までの連続スコアリングシステムを使用して、眼の炎症を採点した。
【0078】
【表9】

【0079】
〔0085〕ATGまたは対照ウサギIgGによる処置は、疾患開始(スコア1)時に始められ、4日間離して(10日目と14日目)送達される2回の500μg(〜25mg/kg)のi.p.注射からなる。潜在型TGF‐β1はマウス毎に13日間毎日の、4μgのi.p.注射として15〜27日目まで投与された。潜在型TGF‐β1の4μgの用量は、分子の活性な(成熟、非LAP結合)部分の1μg(〜0.05mg/kg)の用量に相当する。処置群は、(1)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)対照(2)対照ウサギIgG、(3)対照ウサギIgG+潜在型TGF‐β1、(4)ATG、および(5)ATG+潜在型TGF‐β1を含み、1群の動物は6匹であった。
【0080】
ATGだけの処置は結果として疾患スコアを減少させ、潜在型TGF‐β1の添加は試験した条件下では付加的な利点を提供するようには見えなかった。結果は表10に示す。
【0081】
【表10】

【0082】
〔0086〕ぶどう膜モデルは短期間動物モデルであり、処置はルーパスモデルの月単位に対して、週単位のタイムスケールで行われる。この短いタイムスケールは、ルーパスモデルで観察された、ATGと一緒にTGF‐β1を投与することによって添加される利点を観察するには十分でない可能性がある。したがって、異なる投与計画、または付加的な動物モデルの試験がATGと潜在型TGF‐βの組み合わせ投与の利点を示してもよい。
【0083】
〔0087〕すべての刊行物、特許、特許出願、および本開示に引用された生物学的結果はそのまま参照として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】〔0015〕ヒトTGF‐β1(SEQ ID NO:1)、TGF‐β2(SEQ ID NO:2)およびTGF‐β3(SEQ ID NO:3)の前駆体のアミノ酸配列のアラインメントを示す。TGF‐β2は‘長い’オルタナティブにスプライシングされた形状で示され、そこでは28アミノ酸の挿入が残基119で始まるプレ‐プロドメインに見いだされる。矢印は蛋白質分解によるプロセッシング部位を示し、シグナルペプチドおよび成熟C−末端TGF‐β1フラグメントが解裂される。はTGF‐β1およびTGF‐β3の潜在型結合ペプチド(LAP)蛋白質に見いだされるRGDインテグリン認識部位を表す。+は2つのモノマーLAP蛋白質間のジスルフィド結合に含まれるシステイン残基を表す。#は単独ジスルフィド結合TGF‐βモノマーの形成に関与するシステイン残基を表す。
【図2】〔0016〕腎臓機能に対するATG/潜在型TGF‐β1組み合わせ処置の効果を示す。MRL/MPJ−Tnfrs6lprマウス(SLEのマウスモデル)は、ATG500μgを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)100μl中の潜在型TGF‐β1 4μgと共に、またはTGF‐β1なしに、3日間離して2回腹腔内注射(i.p.)した。潜在型TGF‐β1の4μgは分子の活性(成熟、非LAP結合)部分の1μg(〜0.05mg/kg)用量に相当する。処置に含まれる場合、潜在型TGF‐β1は2回目のATG注射後、11日目から始めて、12日間毎日投与された。陰性対照として、SLEマウスは、500μgの正常ウサギイムノグロブリン(Ig)i.p.を2回、3日間放して処置された。付加的な処置群は、正常ウサギイムノグロブリンと先に投与された潜在型TGF‐β1を投与された。陽性対照として、SLEマウスは毎週200μl生理食塩水中のシクロホスファミド100mg/kgi.p.で処置された。蛋白尿はATGだけ、対照Ig+TGF‐β1、または対照Igだけのいずれかで処置されたSLEマウスに比較して、潜在型TGF‐β1とATGで処置されたSLEマウスにおいて有意に低下していた。組み合わせ処置群の平均総尿中蛋白質は、ルーパスの現行の治療薬であるシクロホスファミドによって達成されたレベルに匹敵した。
【図3】〔0017〕重篤な腎臓疾患の発症に対する組み合わせ処置の効果を示す。マウスは先の図2に記載のように処置された。ATGだけ、対照Ig+TGF‐β1、または対照Igだけのいずれかで処置されたSLEマウスに比較して、ATGと潜在型TGF‐β1を一緒に処置されたSLEマウスは、重篤な蛋白尿(>500mg/dl/日)発生の減少を示した。
【図4】〔0018〕腎臓機能に対する組み合わせ処置の効果を示す。マウスは先の図2に記載のように処置された。ATGだけ、対照Ig+TGF‐β1、または対照Igだけのいずれかで処置されたSLEマウスに比較して、ATGと潜在型TGF‐β1の組み合わせで処置されたSLEマウスでは平均尿中アルブミンレベルが減少した。ATGと潜在型TGF‐β1の組み合わせ処置によりシクロホスファミド処置によって成し遂げられたものに近い平均尿中アルブミンレベルになった。
【図5】〔0019〕重篤な腎臓疾患の発症に対する組み合わせ処置の効果を示す。マウスは先の図2に記載のように処置された。重篤なアルブミン尿(>10mg/dl/日)を有するSLEマウスの割合は、ATGだけ、対照Ig+TGF‐β1、または対照Igだけのいずれかと比較して、組み合わせ処置群において減少した。
【図6】〔0020〕図6A〜6Eは、自己抗体の発生に対する組み合わせ処置の効果を示す。矢印は処置の開始を示す。マウスは先の図2に記載のように、そして図6A〜6Eに従って処置された。全体的に見て、ATGと潜在型TGF‐β1で処置されたSLEマウスはATGだけ、対照Ig+TGF‐β1、または対照Igだけのいずれかで処置されたSLEマウスに比較して、IgG抗‐dsDNA抗体力価上昇の顕著な遅延を示した。
【図7】〔0021〕SLEマウスの生存に対する組み合わせ処置の効果を示す。マウスは先の図2に記載のように処置された。ATGだけ、対照Ig+TGF‐β1、または対照Igだけのいずれかで処置されたSLEマウスより、ATGと潜在型TGF‐β1で処置されたSLEマウスは有意に長く生き延びた。
【図8】〔0022〕先の図2に記載のように処置されたMRL/MPJ−Tnfrs6lprマウスによる反復試験で得られた生存率データを示す。この例では、試験は40週齢まで延長(初めの試験の24週に対して)され、ATGと潜在型TGF‐β1による一過性処置の効果の持続性を評価した。実際、生存の利点は持続し、ATGと潜在型TGF‐β1で処置されたマウスの生存率は、陽性対照であるシクロホスファミドで得られたものに匹敵した(それぞれ、90%対100%)
【図9】〔0023〕図9Aは、種々の処置に曝された脾細胞培養物中のCD4CD25細胞の絶対数を示す。脾細胞は活性な疾患を有する10匹のMRL/lprマウスからプールした。6種の異なる条件(8ウェル/条件)がアッセイされた:1)細胞だけ、2)ATG(100μg/ml)+活性なTGF‐β1(10ng/ml;Genzyme)、3)ATGだけ(100μg/ml)、4)対照ウサギIgG(100μg/ml)+活性なTGF‐β1(10ng/ml)、5)対照ウサギIgGだけ(100μg/ml)、および6)活性なTGF‐β1だけ(10ng/ml)。5日後、それぞれの培養条件の複製物をプールし、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄し,計数し、FACS解析のために染色した。処置毎に5x10細胞の試料をラット抗‐マウスCD4−Alexa488およびラット抗‐マウスCD25−PerCp−Cy5.5で染色し、フローメトリーにより解析した。処置毎に取得した6,000のリンパ球は、FACS Caliburシステム(Becton Dickinson,San Diego,CA)で染色を解析した。結果は、それぞれの培養条件下で回収されたそれぞれの表現型の細胞の絶対数として表される(FACSによる陽性細胞の割合x培養物から回収した細胞の総数)。〔0024〕図9Bは、図9Aに記載のように処置された脾細胞の培養物中のCD4CD25FOXP3細胞の絶対数を示す。さらに、FOXP3の細胞内検出の場合、表面CD4/CD25について染色された細胞は一晩透過化処理し、FOXP3について染色された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己免疫疾患を患う哺乳動物を治療する方法であって、
(a)哺乳動物の循環するリンパ球を枯渇させること、
(b)リンパ球に再構築を開始させること、および
(c)(b)の再構築相中に、治療的有効量の潜在型TGF‐βおよび/または制御性T細胞の増殖を促進する別の因子を哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
自己免疫疾患が全身性エリテマトーデスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
枯渇したリンパ球が主にT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
リンパ球が抗‐胸腺細胞抗体、抗‐CD52抗体、および抗‐CD3抗体からなる群から選択される因子を投与することによって枯渇する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
抗‐胸腺細胞抗体がThymoglobulin(登録商標)、Atgam(登録商標)、Fresenius(登録商標)、およびTecelac(登録商標)からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
制御性T細胞がCD4CD25T細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
潜在型TGF‐βが成熟TGF‐βならびに:
(a)潜在型結合ペプチド(LAP);および
(b)潜在型TGF‐β結合蛋白質(LTBP)の1種または両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
潜在型TGF‐βがTGF‐β1である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
潜在型TGF‐βが全身的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
制御性T細胞の増殖を促進する因子が:
(1)IL−10、
(2)IL−4、
(3)IFN−α、
(4)ビタミンD3、
(5)デキサメタゾン、および
(6)ミコフェノール酸モフェチルからなる群から選択される1種以上の因子である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
制御性T細胞の増殖を促進する因子がラパマイシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
自己免疫疾患が哺乳動物の腎臓機能損失に関連し、治療の結果として腎臓機能損失の進行が低下するか、または機能が改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
腎臓機能損失の進行低下、または機能の改善が全身血圧、蛋白尿、アルブミン尿、糸球体濾過速度、および/または腎血流量における変化によって示される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
自己免疫疾患が全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ウェゲナー症候群、IgA腎症、IgM腎症、または腎臓機能を損なう別の自己免疫疾患である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
以下のことを含む、自己免疫疾患を患う哺乳動物を治療する方法:
(a)哺乳動物に抗‐リンパ球抗体を投与し、それによって末梢血T細胞の集団を減少させること;および
(b)疾患の進行を遅らせるおよび/または症状を改善するための有効量において潜在型TGF‐βを哺乳動物に投与すること。
【請求項18】
自己免疫疾患の治療のための医薬品の製造における潜在型TGF‐βの使用。
【請求項19】
自己免疫疾患が全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ウェゲナー症候群、IgA腎症、IgM腎症、または腎臓機能を損なう別の自己免疫疾患である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前期治療が抗‐リンパ球抗体の投与を含む、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
自己免疫疾患の治療のための医薬品の製造における抗‐リンパ球抗体の使用であって、治療が潜在型TGF‐βおよび/または制御性T細胞を刺激する別の因子の投与を含む、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−533470(P2009−533470A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505593(P2009−505593)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/066416
【国際公開番号】WO2007/121233
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(391018536)ジェンザイム・コーポレーション (13)
【氏名又は名称原語表記】GENZYME CORPORATION
【Fターム(参考)】