説明

自己整合式帯域阻止フィルタ

本願は、入力ポート、出力ポート、複数の音響共振器、及び該複数の音響共振器のインピーダンスを整合させるインダクタを有する無線周波数帯域阻止フィルタについて記載する。インダクタは、入力ポートとインダクタとの間の静的キャパシタンスが出力ポートインダクタとの間の静的キャパシタンスと略等しくなるように、複数の音響共振器に対して帯域阻止フィルタ内で位置付けられる。複数の音響共振器は、複数の並列共振器、複数の直列共振器、又は直列共振器及び並列共振器の組合せであってよい。無線周波数帯域阻止フィルタは、弾性表面波(SAW)技術、薄膜バルク音響共振器(FBAR)技術、及びバルク音響波(BAW)技術のいずれかにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響共振器帯域阻止フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気通信市場、特に、4G無線通信システムの分野、及び既存の無線システムでは、現在のレベルよりも改善された性能を有した小型のフィルタに対して、強い必要性が存在する。4Gシステムは非常に高速なデータ転送を目標としているので、それらは、GSM、CDMA及びUMTS等の既存のシステムよりも一層幅広い帯域幅を必要とする。他方で、4Gシステムにおける有限な周波数リソースは、無線通信事業各社に、最大限のユーザ容量を可能にするようガードバンドを可能な限り狭く設定するように求める。これらの2つの問題が組み合わさることは、4Gシステムがそれらの無線端末装置に小型のRFフィルタを必要とすることを意味する。
【0003】
サイズが小さく且つ費用が安いために、弾性表面波(SAW(surface acoustic wave))、薄膜バルク音響共振器(FBAR(thin film bulk acoustic resonator))及び/又はバルク音響波(BAW(bulk acoustic wave))フィルタ等の音響材に基づくRFフィルタが、様々な無線システムの小型の携帯型端末装置において幅広く使用されている。しかし、これらのフィルタのフィルタ性能の現在のレベルは、依然として、4G無線システムフィルタ要求からは程遠い。
【0004】
金属タイプのキャビティフィルタ又は誘電体フィルタ等の、一部の音響マイクロ波技術によらないフィルタは、当該用途のためのフィルタ性能要件を満足するよう設計され得るが、このような設計は、費用が極めて高く、且つ、フィルタが物理的に大きくなる。結果として、金属タイプのフィルタ及び誘電体フィルタは、特に、サイズ及び重量が極めて重要となる無線端末における用途にとって好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通信システムにおける多くの目的にとって好ましい、より安価で且つより小型のフィルタが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従って、無線周波数帯域阻止フィルタであって、
入力ポート、
複数の音響共振器と、
前記複数の音響共振器のインピーダンスを整合させるインダクタと、
出力ポートと
を有し、
前記インダクタは、前記入力ポートと前記インダクタとの間の静的キャパシタンスが前記出力ポートと前記インダクタとの間の静的キャパシタンスと略等しくなるように、前記複数の音響共振器に対して当該帯域阻止フィルタ内で位置付けられる、
無線周波数帯域阻止フィルタが提供される。
【0007】
幾つかの実施形態において、前記複数の音響共振器は、複数の並列共振器、複数の直列共振器、並びに直列共振器及び並列共振器の組合せの中の1つである。
【0008】
幾つかの実施形態において、当該無線周波数帯域阻止フィルタは、弾性表面波(SAW)技術、薄膜バルク音響共振器(FBAR)技術、及びバルク音響波(技術)の中の1つにより製造される。
【0009】
幾つかの実施形態において、前記インダクタはショートスタブ・オンチップ・インダクタである。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記インダクタは、0.1ナノヘンリー[nH]以下のインダクタンスを有する。
【0011】
幾つかの実施形態において、当該無線周波数帯域阻止フィルタは、1又はそれ以上の他の無線周波数帯域阻止フィルタとカスケード接続される。
【0012】
幾つかの実施形態において、前記1又はそれ以上の他の無線周波数帯域阻止フィルタの少なくとも1つは、該少なくとも1つの他の無線周波数帯域阻止フィルタ自体のインピーダンスを整合させるインダクタを有する。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記直列共振器及び並列共振器の組合せは、N(N≧2)個の直列共振器と、M(M≧2)個の並列共振器とを有する。
【0014】
幾つかの実施形態において、Nは偶数であり、前記入力ポートと前記インダクタとの間にはN/2個の直列共振器があり、前記出力ポート前記インダクタとの間にはN/2個の直列共振器がある。
【0015】
幾つかの実施形態において、Mは偶数であり、前記入力ポートと前記インダクタとの間にはM/2個の並列共振器があり、前記出力ポートと前記インダクタとの間にはM/2個の並列共振器がある。
【0016】
幾つかの実施形態において、直列共振器及び並列共振器のそれぞれは、一対の並列な導体素子から延在するインターデジタル電極の組によって形成される。
【0017】
幾つかの実施形態において、前記並列共振器に関し、前記一対の並列な導体素子の少なくとも1つは接地に結合される。
【0018】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの直列共振器若しくは少なくとも1つの並列共振器、又はそれら両方に関し、それぞれの共振器を形成する前記一対の並列な導体素子の少なくとも1つは、前記インダクタに結合される。
【0019】
幾つかの実施形態において、前記インダクタは、前記一対の並列な導体素子の少なくとも1つと接地との間に配置されるショートスタブ素子である。
【0020】
幾つかの実施形態において、前記インダクタのインダクタンスは、外部の整合回路が当該フィルタとともに使用されないほど十分正確に製造され得る。
【0021】
本発明の他の態様に従って、
少なくとも1つのアンテナと、
所望の送信周波数を有する1又はそれ以上のキャリア信号を変調するよう構成される送信回路と、
1又はそれ以上の遠隔トランスミッタから情報を運ぶ無線周波数信号を受信するよう構成される受信回路と、
前記受信回路によって受信された受信信号を処理するとともに、前記送信回路による送信のために信号をエンコードするよう構成されるベースバンドプロセッサと、
請求項1乃至15のうちいずれか一項に記載の無線周波数帯域阻止フィルタを有する前記送信回路又は受信回路の少なくとも1つと
を有する電気通信基地局が提供される。
【0022】
本発明の他の態様に従って、
少なくとも1つのアンテナと、
所望の送信周波数を有する1又はそれ以上のキャリア信号を変調するよう構成される送信回路と、
1又はそれ以上の遠隔トランスミッタから情報を運ぶ無線周波数信号を受信するよう構成される受信回路と、
前記受信回路によって受信された受信信号を処理するとともに、前記送信回路による送信のために信号をエンコードするよう構成されるベースバンドプロセッサと、
請求項1乃至15のうちいずれか一項に記載の無線周波数帯域阻止フィルタを有する前記送信回路又は受信回路の少なくとも1つと、
を有する電気通信無線端末が提供される。
【0023】
本発明の他の態様に従って、上記又は下記の無線周波数帯域阻止フィルタを有するデュプレクサが提供される。
【0024】
本発明の他の態様に従って、無線周波数帯域阻止フィルタの製造中のインピーダンス整合の方法であって、
入力ポートを作る段階と、
複数の音響共振器を作る段階と、
前記複数の音響共振器のインピーダンスを整合させるインダクタを作る段階と、
出力ポートを作る段階と
を有し、
前記インダクタを作る段階は、前記入力ポートと前記インダクタとの間の静的キャパシタンスが前記出力ポートと前記インダクタとの間の静的キャパシタンスと略等しくなるように、前記複数の音響共振器に対して前記帯域阻止フィルタにおいて前記インダクタを位置付ける段階を有する、
方法が提供される。
【0025】
幾つかの実施形態において、前記インダクタを作る段階は、所望のインダクタンスを有するショートスタブ・オンチップ素子を作る段階を有する。
【0026】
幾つかの実施形態において、前記所望のインダクタンスを有するショートスタブ・オンチップ素子を作る段階は、当該ショートスタブ・オンチップ素子の長さ、幅、及び厚さの少なくとも1つを制御する段階を有する。
【0027】
本発明の他の態様及び特徴は、添付の図面に関連して本発明の具体的な実施形態に係る以下の記載を読むことで、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来の帯域阻止フィルタの概略図である。
【図2A】更なる従来の帯域阻止フィルタの概略図である。
【図2B】更なる従来の帯域阻止フィルタの概略図である。
【図3A】更なる従来の帯域阻止フィルタの概略図である。
【図3B】更なる従来の帯域阻止フィルタの概略図である。
【図4】自己整合式帯域阻止フィルタの実施形態の概略図である。
【図5】自己整合式帯域阻止フィルタの他の実施形態の概略図である。
【図6】自己整合式帯域阻止フィルタの更なる実施形態の概略図である。
【図7A】自己整合式帯域阻止フィルタの更なる実施形態の概略図である。
【図7B】自己整合式帯域阻止フィルタの更なる実施形態の概略図である。
【図8A】自己整合式帯域阻止フィルタの更なる他の実施形態の概略図である。
【図8B】図8Aの自己整合式帯域阻止フィルタの実施の代表図である。
【図9A】自己整合式帯域阻止フィルタの更なる実施形態の概略図である。
【図9B】図9Aの自己整合式帯域阻止フィルタの実施の代表図である。
【図10A】自己整合式帯域阻止フィルタの更なる他の実施形態の概略図である。
【図10B】図10Aの自己整合式帯域阻止フィルタの実施の代表図である。
【図11A】自己整合式帯域阻止フィルタの他の実施形態の概略図である。
【図11B】図11Aの自己整合式帯域阻止フィルタの実施の代表図である。
【図12A】自己整合式帯域阻止フィルタの更なる実施形態の概略図である。
【図12B】図12Aの自己整合式帯域阻止フィルタの実施の代表図である。
【図13A】自己整合式帯域阻止フィルタの他の実施形態の概略図である。
【図13B】図13Aの自己整合式帯域阻止フィルタの実施の代表図である。
【図14A】自己整合式帯域阻止フィルタの更なる実施形態の概略図である。
【図14B】図14Aの自己整合式帯域阻止フィルタの実施の代表図である。
【図15A】自己整合式帯域阻止フィルタの更なる他の実施形態の概略図である。
【図15B】図15Aの自己整合式帯域阻止フィルタの実施の代表図である。
【図16】本発明の実施形態に従う方法を表すフローチャートである。
【図17】本願の幾つかの実施形態を実施するために使用される基地局の例のブロック図である。
【図18】本願の幾つかの実施形態を実施するために使用される無線端末の例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して記載する。
【0030】
サイズの小型化及び低費用に対する要求のために、弾性表面波(SAW)、薄膜バルク音響共振器(FBAR)及び/又はバルク音響波(BAW)技術フィルタは、様々な最新の無線通信システムのための小型の携帯型端末装置においてますます利用されつつある。帯域通過型及び帯域阻止型の各フィルタは、SAW、FBAR及びBAW技術により設計されてよい。
【0031】
音響共振器に基づくはしご形の帯域阻止フィルタ(BRF)は、通常、整合目的のために、フィルタの内部ノードに接続される複数の並列インダクタを必要とする。また、このような内部整合インダクタが適切に選択されない場合は、入力側及び出力側には外部整合回路が必要である。一般には、このような内部整合インダクタは2nH超の値を有し、それらの一部は10nH以上であってよい。ディスクリート部品タイプのインダクタ又は印刷回路基板(PCB)ショートスタブタイプのインダクタは、このような内部整合を達成するための一般的な従前の選択である。
【0032】
しかし、現実の世界では、特に、BRFフィルタが内部整合のために複数の並列インダクタを必要とする場合に関し、PCBレベルでの内部整合のために正確なインダクタンス値を見つけることは極めて困難である。これは、電気結合を提供するために利用されるボンディングワイヤ及びBRFを収容するよう選択されたパッケージボディの電磁気(EM)特性に起因する。加えて、PCB自体が、このような内部インダクタの値に作用しうる。また、動作周波数が3ギガヘルツ[GHz]よりも大きくなる場合は、BRF自体は極めて小さくなり、従って、複数のこのような並列な内部整合インダクタ並びに装置を囲む入力及び出力整合回路のための十分なスペースが存在するとは考えにくい。
【0033】
この問題を解決するための1つの試みは、ダイ上にショートスタブ伝送ラインを直接作ることである。しかし、インダクタンスの値が2nHを上回る限り、オンチップタイプのショートスタブ・インダクタを作る試みのいずれもが実際の装置設計にとって実用的でない。これは、このような値を有するオンチップタイプのインダクタが、BRFの音響共振器によって占有されるスペースよりも10数倍大きい巨大なフットプリントを必要とするためである。
【0034】
ここでは、BRF装置設計における内部整合インダクタが、オンチップタイプのショートスタブ・インダクタ設計に適した値である0.1nHの範囲にあることを可能にする技術が開示される。幾つかの実施形態において、BRFを含むダイ上の0.1nHの範囲におけるショートスタブ・インダクタの寸法は、音響共振器と同程度であってよい。
【0035】
BRF装置は、基地局及び端末装置の両方のための無線システムのRFフロントエンドにおいて極めて重要な役割を果たすことができる。それは、高調波周波数信号及び何らかのスプリアス信号等の好ましくない信号を除去し、又は電力放射要件を満たすのに役立つ何らかの無線システムのための有用な装置である。
【0036】
オンチップタイプのショートスタブ・インダクタが音響共振器と同じ精度を有して製造される場合に、インダクタンス値は極めて正確に作られ、従って、外部の入力及び出力整合回路は不要となる。従って、自己整合式の、極めて小さいフットプリントのBRF装置が可能となる。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態においてPCB上で外部の入力及び出力整合回路が必要とされないために、BRFは、無線端末及び/又は電気通信基地局等の何らかの装置実施に組み込むことが容易である。また、BRF装置は、改善された電力処理能力を提供するデュプレクサ設計において使用されてよい。
【0038】
本発明の幾つかの実施形態は、弾性表面波(SAW)、薄膜バルク音響共振器(FBAR)及び/又はバルク音響波(BAW)技術(しかし、これらに限られない。)により製造される無線周波数(RF)帯域の音響共振器に基づくBRF(帯域阻止フィルタ)に適用されてよい。幾つかの実施形態において、ここで開示される方法及び装置に従って製造されたBRFは、例えば1ギガヘルツ[GHz]超の高周波用途に適している。
【0039】
本発明の幾つかの実施形態は、BRF設計における単一の製造インダクタLの値を、BRFパッケージ設計へのインダクタの組み込みをより容易にすることができる値へと最小限にする。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態は、大量生産のための多収量を可能にし、BRF装置の製造費用を下げる。
【0041】
図面を参照して、図1は、従来の帯域阻止フィルタの回路図である。図1には、BRF100が示されている。BRF100は、その入力ポートでは第1の整合回路110を有し、その出力ポートでは第2の整合回路140を有する。BRF100は、複数の直列な音響共振器120、122、124及び126と、複数の並列な音響共振器130、132及び134と、複数のディスクリート・インダクタL1、L2及びL3とを有する。
【0042】
直列共振器120は、一方の端子を整合回路110に結合され、他方の端子をインダクタL1、並列共振器130、及び直列共振器122の一方の端子に結合されている。並列共振器130及びインダクタL1は接地150に接続されている。直列共振器122は、他方の端子をインダクタL2、並列共振器132、及び直列共振器124の一方の端子に結合されている。並列共振器132及びインダクタL2は接地150に接続されている。直列共振器124は、他方の端子をインダクタL3、並列共振器134、及び直列共振器126の一方の端子に結合されている。並列共振器134及びインダクタL3は接地150に接続されている。直列共振器126は、他方の端子を整合回路140に結合されている。
【0043】
一般に、L1、L2及びL3の値は2nHより大きく、従って、このようなインダクタンス値のためのショートスタブ・オンチップ・インダクタの寸法は非常に大きくなるので、ショートスタブタイプのマイクロ波伝送ライン技術を用いることによってオンチップでインダクタを製造することは実際的ではない。帯域阻止フィルタのためのこのような製造に係る他の欠点には、図1に示されるような、(1)多数のインダクタがフィルタ全体を整合させるために必要とされること、及び(2)入力及び出力の両ポートで外部整合回路が必要とされること等の1又はそれ以上がある。
【0044】
図2A及び図2Bは、更なる従来の帯域阻止フィルタの回路図である。図2Aで、BRF200は、1/4波伝送ライン220を介して連結されている2つの直列共振器210及び220を有する。図2Bで、BRF250は、1/4波伝送ライン280を介して連結されている2つの直列共振器260及び262と、夫々の直列共振器260及び262と1/4波伝送ライン280との間に配置されている2つの並列共振器270及び272とを有する。インダクタL4及びL5は、夫々、BRF250の入力ポート側における直列共振器160の前と、出力ポート側における直列共振器162の後とに配置されている。
【0045】
このようなインピーダンス整合方法の欠点には、(1)ある周波数のための1/4波伝送ラインはオンチップ設計にとって長すぎること、(2)多数のインダクタがフィルタ全体を整合させるために必要とされること、及び(3)インダクタは大きいインダクタンス値を有し、結果として、チップ上に集積することが困難であること等がある。
【0046】
図3A及び図3Bは、更なる他の従来の帯域阻止フィルタの回路図である。図3Aで、BRF300は、4つの並列共振器310、312、314及び316と、BRF300の入力ポート側において並列共振器310の前に配置されているインダクタL6と、BRF300の出力ポート側において並列共振器316の後に配置されているインダクタL7とを有する。図3Bで、BRF350は、BRF350の入力ポート側において4つの並列共振器360、362、364及び366並びに第2のインダクタL9が後に続く第1のインダクタL8を有する。また、4つの並列共振器360、362、364及び366並びに第1及び第2のインダクタL8及びL9は接地300に結合されている。伝送ライン又はインピーダンスインバータ380は第2のインダクタL9に結合されている。第3のインダクタL10は伝送ライン380に結合されている。4つの更なる並列共振器370、372、374及び376は第3のインダクタL10に結合されている。第4のインダクタL11は、BRF350の出力ポート側において4つの並列共振器370、372、374及び376に結合されている。また、4つの並列共振器370、372、374及び376並びに第3及び第4のインダクタL10及びL11は接地300に結合されている。
【0047】
この第3のタイプのインピーダンス整合に係る欠点の一部は、前述の例の欠点と同じである。欠点には、(1)正号に必要とされるインダクタが多すぎること、(2)インダクタが大きいインダクタンス値を有し、結果として、チップ上に集積することが困難であること、(3)ある周波数のための1/4波伝送ラインはオンチップ設計にとって長すぎること、及び(4)図3A及び図3Bの設計は並列な(シャントとしても知られる)共振器しか使用せず、高性能BRFを達成することが困難であること等がある。
【0048】
図4は、本発明に従う自己整合式BRFの実施形態の回路図である。図4で、BRF400は、6個の直列共振器410、412、414、416、418及び420と、単一の内部整合インダクタL12とを有する。インダクタL12は接地430にも結合されている。また、BRF400は、入力ポート405及び出力ポート425を有するとみなされる。図4の例では、単一整合インダクタL12は、6個の直列共振器の中点に配置されている。整合インダクタL12と入力ポート405との間及び整合インダクタL12と出力ポート425との間には直列共振器が3つずつ存在する。インダクタL12は接地430に結合されている。本願の目的のために、「接地に結合される」との記載は、接地に結合されている各回路素子が2つのポートを有し、第1のポートは回路内の所与の場所に結合され、他のポートは接地に結合されるという意味で使用される。
【0049】
幾つかの実施形態において、インダクタは、インダクタL12の両側にある、すなわち、インダクタL12と入力ポート405との間及びインダクタL12と出力ポート425との間にある共振器の全体的な静的キャパシタンスがほぼ等しい値である限り、複数の直列共振器を整合させるために使用される。従って、幾つかの実施形態において、並列インダクタの両側にある共振器の数は同じである必要はないが、静的キャパシタンスの値は同じでなければならない。この実施形態のBRF設計は、整合インダクタの数を最小限にする。整合インダクタの数を減らすことによりフィルタ(阻止)性能は改善される。
【0050】
本発明の幾つかの実施形態において、単一インダクタは、単一インダクタがBRFを集合的に形成する音響共振器とともに製造されるために、BRFのインピーダンス整合を可能にする。これの例は、図8Bから図15Bにおいて、より詳細に示される。
【0051】
図4の具体例はBRFにおける6個の直列共振器を例示するが、BRFに含まれる共振器の数は実施に特有であり、6個の共振器の場合に限られないことは明らかである。
【0052】
図5は、自己整合式BRFの他の実施形態の回路図である。図5で、BRF500は、全部で5個の並列な音響共振器510、512、514、516及び518と、内部整合インダクタL13とを有する。インダクタL13及び5個の並列共振器は接地520に結合されている。BRF500は、また、入力ポート505及び出力ポート525を有するとみなされる。
【0053】
幾つかの実施形態において、単一の並列インダクタは、インダクタL13の両側にある共振器の全体的な静的キャパシタンスがほぼ同じ値を有する限り、複数の並列共振器を整合させるために使用される。
【0054】
図5の具体例はBRFにおける5個の並列な共振器を例示するが、かかる実施に係るBRFに含まれる共振器の数は実施に特有であることは明らかである。
【0055】
図6は、自己整合式無線周波数帯域BRFの第3の実施形態の回路図である。図6は、入力ポート605及び出力ポート625を有するBRF600を表す。BRF600は、BRF600の入力ポート側にある3つの直列共振器610、612及び614の第1グループと、BRF600の出力ポート側にある3つの直列共振器620、622及び624の第2グループとを有する。第1共振器グループと第2共振器グループとの間には、図5のBRF500に相当する第3共振器グループが配置されている。第3共振器グループは、5個の並列共振器630、632、634、636及び638のグループと、内部整合インダクタL14とを有する。5個の並列共振器及びインダクタL14の夫々は、また、接地640に結合されている。
【0056】
幾つかの実施形態において、BRFは、多数の直列及び/又は並列な共振器を整合させるために、ただ1つのインダクタしか必要としない。幾つかの実施形態において、BRFは、入力ポート及び出力ポートにおいて外部整合回路を必要としない。幾つかの実施形態において、並列インダクタンスは、0.1nH程度の大きさに最小限にされてよい。このインダクタンス値は、例えば、印刷回路基板(PCB)のために、BRFパッケージ設計に容易に集積される値である。幾つかの実施形態において、自己整合式BRF装置は極めて小さいサイズを有し、例えば、5.6GHzの動作周波数において2平方ミリメートル[mm]である。
【0057】
図7A及び図7Bは、自己整合式帯域阻止フィルタの更なる実施形態の回路図である。図7A及び図7Bは、複数のBRFをカスケード接続する例を示す。図7Aは、カスケード接続されている図4のBRF400、図5のBRF500及び図6のBRF600を有するBRF700の第1の例を表す。図7Bは、カスケード接続されている、図6のBRF600に対応する複数のBRFを有するBRF750の第2の例を表す。
【0058】
図7A及び図7Bは、単に、どのように自己整合式BRFがカスケード接続されるのかに関する2つの例である。具体的に、図示される2つの例は、異なる構造タイプのBRFが、個々のBRFのいずれとも異なる動作パラメータの組を有してBRFを形成するようカスケード接続されているところの第1の例、及び、同じ構造を有するが必ずしも構造中の素子に関して同じ動作パラメータを有しているわけではない2又はそれ以上のBRFがカスケード接続されているところの第2の例である。本願で開示されている発明の態様に従って内部で整合される複数の自己整合式BRFがカスケード接続されてよいことは明らかである。BRFの具体的な数、BRFの位置付け、並びにBRFに含まれる特定の構成要素の特性及び/又はパラメータは全て、実施特有である。
【0059】
図8Aは、自己整合式帯域阻止フィルタの他の実施形態の回路図である。図8Aで、BRF800は、BRF800の入力ポート側にあって、整合インダクタL15に結合されている単一の直列共振器810及び単一の並列共振器830を有する。BRF800の出力ポート側にある単一の並列共振器840及び単一の直列共振器820は、整合インダクタL15に結合されている。2つの並列共振器830及び840並びに整合インダクタL15は、また、接地850に結合されている。
【0060】
図8Bは、音響共振器インターデジタル・トランスデューサとしての図8AのBRF800の実施の代表図である。図8Aの直列共振器及び並列共振器の各共振器は、複数の連続したインターデジタル・トランスデューサ電極を有する。直列共振器810は、トランスデューサ要素803の電極と、トランスデューサ要素805の第1の電極組とによって形成される。直列共振器820は、トランスデューサ要素826の電極と、トランスデューサ要素824の第1の電極組とによって形成される。並列共振器830は、トランスデューサ要素807の電極と、トランスデューサ要素805の第2の電極組とによって形成される。並列共振器840は、トランスデューサ要素822の電極と、トランスデューサ要素824の第2の電極組とによって形成される。トランスデューサの要素860は、インダクタL15のための所望のインダクタンスを提供するショートスタブ・コンポーネントである。トランスデューサの要素850は接地バーである。
【0061】
本発明の幾つかの実施形態において、トランスデューサ要素860の厚さ、幅及び長さは、インダクタL15のインダクタンスの間を制御するよう、BRFの製造中に制御される。
【0062】
図9Aは、自己整合式帯域阻止フィルタの他の実施形態の回路図である。図9Aは、複数のBRFをカスケード接続する例を示す。図9Aは、カスケード接続されている3つのBRF800A、800B及び800Cを有するBRF900を表す。これら3つのBRFは、実質的に、図8AのBRF800の構造に対応する。上述されたように、BRF800A、800B及び800Cの要素の構造はBRF800と実質的に同じであってよいが、種々の要素の物理パラメータは必ずしも同じではない。
【0063】
図9Bは、音響共振器インターデジタル・トランスデューサとしての図9AのBRF900の実施の代表図である。図8Bに表されているようなタイプの3つのトランスデューサ800A、800B及び800Cが図示されている。
【0064】
図9A及び図9Bにはたった3つのカスケード接続されたBRFしか図示されていないが、カスケード接続されるBRFの具体的な数は実施特有である。更に、同じ構造の3つのBRFがカスケード接続されているが、新たなBRFを形成するよう複数のBRFがカスケード接続される場合に、当然、複数のBRFは、同じ若しくは異なるパラメータを有して同じ構造であっても、又は異なる構造であってもよい。
【0065】
図10Aは、自己整合式帯域阻止フィルタの更なる実施形態の回路図である。図10Aで、BRF1000は、図8AのBRF800の構造と同じであるBRF1000の部分を有する。便宜上、図8Aの参照符号が図10Aでも用いられる。複数の直列共振器1010(例示のため1つしか図示されていない。)は、BRF800と同じである部分の入力側に結合されている。複数の直列共振器1020(例示のため1つしか図示されていない。)は、BRF800と同じである部分の出力側に結合されている。
【0066】
図10Bは、音響共振器インターデジタル・トランスデューサとしての図10AのBRF1000の実施の代表図である。図8BのBRF800に相当するトランスデューサが、付加的な直列共振器要素1010及び1020とともに図示されている。
【0067】
幾つかの実施形態において、接続バスバーの使用は、BRFのサイズを小さくするよう、最小限にされ得る。例えば、これは、BRFのトランスデューサ要素の長さ、幅及び厚さのいずれかを制御することを含んでよい。
【0068】
図11Aは、自己整合式帯域阻止フィルタの更なる実施形態の回路図である。図11Aで、BRF1100は、図10AのBRF1000と同じ3つのカスケード接続された部分1000A、1000B及び1000Cを有する。
【0069】
図11Bは、音響共振器インターデジタル・トランスデューサとしての図11AのBRF1100の実施の代表図である。図10Bに表されるタイプの3つのトランスデューサ1000A、1000B及び1000Cが図示されている。
【0070】
幾つかの実施形態において、接続バスバーの使用は、BRFのサイズを小さくするよう、最小限にされ得る。幾つかの実施形態において、このようなカスケード接続設計は、BRF性能を改善することができる。
【0071】
図12Aは、自己整合式帯域阻止フィルタの更なる実施形態の回路図である。図12Aで、BRF1200は、入力ポート1205及び出力ポート1275を有するとみなされる。BRF1200は、BRF1200の入力側において複数の直列共振器の第1の直列共振器1210及び第2の直列共振器1220を有する。第1の並列共振器1230は、第2の直列共振器1220に結合されている。整合インダクタL16は、第1の並列共振器1230に結合されている。第2の並列共振器1240及び第3の並列共振器1250は、整合インダクタL16に結合されている。BRF1200の出力ポート側における複数の直列共振回路の第3の直列共振器1260及び第4の直列共振器1270は、第3の並列共振器1250に結合されている。3つの並列共振器1230、1240及び1250並びに整合インダクタL16は、また、接地1280に結合されている。
【0072】
図12Bは、音響共振器インターデジタル・トランスデューサとしての図12AのBRF1200の実施の代表図である。第1、第2、第3及び第4の直列共振器1210、1220、1260及び1270、第1、第2及び第3の並列共振器1230、1240及び1250、並びに整合インダクタL16を実施する要素が図示されている。
【0073】
幾つかの実施形態において、接続バスバーの使用は、BRFのサイズを小さくするよう、最小限にされ得る。例えば、これは、BRFのトランスデューサ要素の長さ、幅及び厚さのいずれかを制御することを含んでよい。
【0074】
図13Aは、自己整合式帯域阻止フィルタの更なる実施形態の回路図である。図13Aで、BRF1300は、入力ポート1305及び出力ポート1385を有するとみなされる。BRF1300は、BRF1300の入力ポート側において複数の直列共振器の第1の直列共振器1310及び第2の直列共振器1320を有する。第1の並列共振器1330及び第2の並列共振器1340は、第2の直列共振器1320に結合されている。整合インダクタL17は、第2の並列共振器1340に結合されている。第3の並列共振器1350及び第4の並列共振器1360は、整合インダクタL17に結合されている。BRF1300の出力ポート側における複数の直列共振器の第3の直列共振器1370及び第4の直列共振器1380は、第4の並列共振器1360に結合されている。第4の並列共振器1330、1340、1350及び1360並びに整合インダクタL17は、また、接地1390に結合されている。
【0075】
図13Bは、音響共振器インターデジタル・トランスデューサとしての図13AのBRF1300の実施の代表図である。第1、第2、第3及び第4の直列共振器1310、1320、1370及び1380、第1、第2、第3及び第4の並列共振器1330、1340、1350及び1360、並びに整合インダクタL17の要素が図示されている。
【0076】
幾つかの実施形態において、接続バスバーの使用は、BRFのサイズを小さくするよう、最小限にされ得る。例えば、これは、BRFのトランスデューサ要素の長さ、幅及び厚さのいずれかを制御することを含んでよい。
【0077】
図14Aは、自己整合式帯域阻止フィルタの更なる実施形態の回路図である。図14Aで、BRF1400は、入力ポート1405及び出力ポート1492を有するとみなされる。BRF1400は、BRF1400の入力ポート側において複数の直列共振器の第1の直列共振器1410及び第2の直列共振器1420を有する。第1の並列共振器1430及び第2の並列共振器1440は、第2の直列共振器1420に結合されている。整合インダクタL18は、第2の並列共振器1440に結合されている。第3の並列共振器1450、第4の並列共振器1460及び第5の並列共振器1470は、整合インダクタL18に結合されている。BRF1400の出力ポート側における複数の直列共振器の第3の直列共振器1480及び第4の直列共振器1490は、第5の並列共振器1470に結合されている。5個の並列共振器1430、1440、1450、1460及び1470並びに整合インダクタL18は、また、接地1495に結合されている。
【0078】
図14Bは、音響共振器インターデジタル・トランスデューサとしての図14AのBRF1400の実施の代表図である。第1、第2、第3及び第4の直列共振器1410、1420、1480及び1490、第1、第2、第3、第4及び第5の並列共振器1430、1440、1450、1460及び1470、並びに整合インダクタL18を実施する要素が図示されている。
【0079】
幾つかの実施形態において、接続バスバーの使用は、BRFのサイズを小さくするよう、最小限にされ得る。例えば、これは、BRFのトランスデューサ要素の長さ、幅及び厚さのいずれかを制御することを含んでよい。
【0080】
図15Aは、自己整合式帯域阻止フィルタの更なる実施形態の回路図である。図15Aで、BRF1500は、入力ポート1505及び出力ポート1592を有するとみなされる。BRF1500は、BRF1500の入力ポート側において複数の直列共振器の第1の直列共振器1510及び第2の直列共振器1515を有する。第1の並列共振器1520、第2の並列共振器1530及び第3の直列共振器1540は、第2の直列共振器1515に結合されている。整合インダクタL19は、第3の並列共振器1540に結合されている。第4の並列共振器1550、第5の並列共振器1560及び第6の並列共振器1570は、整合インダクタL19に結合されている。BRF1500の出力ポート側における複数の直列共振器の第3の直列共振器1580及び第4の直列共振器1590は、第6の並列共振器1570に結合されている。6個の並列共振器1520、1530、1540、1550、1560及び1570並びに整合インダクタL19は、また、接地1595に結合されている。
【0081】
図15Bは、音響共振器インターデジタル・トランスデューサとしての図15AのBRF1500の実施の代表図である。第1、第2、第3及び第4の直列共振器1510、1515、1580及び1590、第1、第2、第3、第4、第5及び第6の並列共振器1520、1530、1540、1550、1560及び1570、並びに整合インダクタL19を実施する要素が図示されている。
【0082】
幾つかの実施形態において、接続バスバーの使用は、BRFのサイズを小さくするよう、最小限にされ得る。例えば、これは、BRFのトランスデューサ要素の長さ、幅及び厚さのいずれかを制御することを含んでよい。
【0083】
SAW、FBAR及び/又はBAW設計技術を用いることによって、本発明の幾つかの実施形態は、物理的なサイズが小さい経済上安価な装置をもたらす。
【0084】
本発明の幾つかの態様は、2009年4月15日に出願された、本願と同一出願人に譲渡された米国特許出願第12/424068号明細書等の特許出願において使用を見出される。
【0085】
本発明の幅広い態様に従って、無線周波数帯域阻止フィルタ(BRF)は入力ポート及び出力ポートを有する。無線周波数BRFは、複数の音響共振器と、該複数の音響共振器のインピーダンスを整合させるインダクタとを有する。前記インダクタは、前記入力ポートと前記インダクタとの間の静的キャパシタンスが前記出力ポートと前記インダクタとの間の静的キャパシタンスと略等しくなるように、前記複数の音響共振器に対して当該BRFにおいて位置付けられる。
【0086】
幾つかの実施形態において、4つの音響共振器は、複数の並列共振器、複数の直列共振器、並びに直列共振器及び並列共振器の組合せの中の1つである。
【0087】
幾つかの実施形態において、前記直列共振器及び並列共振器の組合せは、N(N≧2)個の直列共振器と、M(M≧2)個の並列共振器とを有する。
【0088】
幾つかの実施形態において、Nが偶数である場合、前記入力ポートと前記インダクタとの間にはN/2個の直列共振器が存在し、前記出力ポートと前記インダクタとの間にはN/2個の直列共振器が存在する。
【0089】
幾つかの実施形態において、Mが偶数である場合、前記入力ポートと前記インダクタとの間にはM/2個の並列共振器が存在し、前記出力ポートと前記インダクタとの間にはM/2個の並列共振器が存在する。
【0090】
幾つかの実施形態において、BRFの一部である直列共振器及び並列共振器の夫々は、一対の並列な導体素子から延在するインターデジタル電極の組によって形成されるトランスデューサの部分である。
【0091】
幾つかの実施形態において、並列共振器の場合に、前記一対の並列な導体要素の少なくとも1つは接地に結合される。
【0092】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの直列共振器若しくは少なくとも1つの並列共振器、又はそれら両方は、前記一対の並列な導体要素の少なくとも1つに結合され、該少なくとも1つの導体要素はインダクタに結合される。
【0093】
幾つかの実施形態において、前記インダクタは、前記一対の並列な導体要素の少なくとも1つと接地との間に配置されるショートスタブ素子である。
【0094】
幾つかの実施形態において、前記インダクタは0.1nH以下である。
【0095】
幾つかの実施形態において、当該BRFは、他の無線周波数BRFとカスケード接続されている複数の無線周波数BRFの中の1つである。
【0096】
幾つかの実施形態において、前記他のBRFの一部又は全ては夫々、夫々の無線周波数BRFのインピーダンスを整合させる単一のインダクタを有する。
【0097】
図16を参照して、以下、無線周波数BRFにおいてインピーダンスを整合させる方法について記載する。第1のステップ16−1で、方法は、BRFのための入力ポートを作る段階を有する。第2のステップ16−2は、複数の音響共振器を作る段階を有する。第3のステップ16−3は、複数の音響共振器のインピーダンスを整合させるインダクタを作る段階を有する。第4のステップ16−4は、出力ポートを作る段階を有する。
【0098】
インダクタは、入力ポートとインダクタとの間の静的キャパシタンスが出力ポートとインダクタとの間の静的キャパシタンスと略等しくなるように、複数の音響共振器に対して帯域阻止フィルタにおいて位置付けられる。
【0099】
幾つかの実施形態において、複数の音響共振器は少なくとも4つの音響共振器である。
【0100】
当然、方法のステップは、必ずしも、上述される特定の順序で実行されるわけではない。どのようにBRFが作られるのかに依存して(例えば、異なる材料が互いに層状にされる。)、入力ポート、出力ポート、音響共振器及びインダクタは、同時に、前述の順序で、又は全く異なった順序で作られてよい。
【0101】
BRFの製造は、従来のSAW、FBAR及びBAW技術に従って行われてよく、これらの技術では、インダクタの製造は、所望のインダクタを提供するよう制御される。
【0102】
図17を参照して、基地局14の例が表されている。基地局14は、一般に、制御システム20と、ベースバンドプロセッサ22と、送信回路24と、受信回路26と、複数のアンテナ28と、ネットワークインターフェース30とを有する。受信回路26は、(図11に表されている)モバイル端末16及び(図12に表される)中継局15によって与えられる1又はそれ以上の遠隔の送信器から、情報を運ぶ無線周波数信号を受信する。低雑音増幅器及びフィルタ(図示せず。)は、処理のために信号を増幅して、信号からブロードバンド干渉を除去するよう協働してよい。本願で記載されるタイプのBRFフィルタは、受信回路26に含まれるフィルタの例であってよい。次いで、ダウンコンバージョン及びデジタル化回路(図示せず。)は、フィルタ処理された受信信号を中間又はベースバンド周波数信号にダウンコンバートする。ダウンコンバートされた信号は、次に、1又はそれ以上のデジタルストリームへとデジタル化される。
【0103】
ベースバンドプロセッサ22は、受信信号において伝達された情報又はデータビットを取り出すよう、デジタル化された受信信号を処理する。この処理は、通常、復調、復号化、及びエラー訂正動作を含む。そのようなものとして、ベースバンドプロセッサ22は、一般に、1又はそれ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)又は特定用途向け集積回路(ASIC)において実施される。次いで、受信された情報は、直接に又は中継局15の助けを借りて、ネットワークインターフェース30を介して無線ネットワークをわたって送信され、又は基地局14によるサービス提供を受ける他のモバイル端末16へ送信される。
【0104】
送信側では、ベースバンドプロセッサ22は、音声、データ、又は制御情報を表すデジタル化されたデータを、制御システム20の制御下でネットワークインターフェース30から受信し、該データを送信のためにエンコードする。エンコードされたデータは、送信回路24へ出力される。送信回路24において、データは、所望の送信周波数を有する1又はそれ以上のキャリア信号によって変調される。電力増幅器(図示せず。)は、変調されたキャリア信号を送信に適したレベルへと増幅して、整合ネットワーク(図示せず。)を通ってアンテナ28へ供給する。変調及び処理の詳細については、以下でより詳細に記載する。本願で記載されるタイプのBRFフィルタは、送信回路24にも含まれてよい。
【0105】
図18を参照して、モバイル端末16の例が表されている。基地局14と同様に、モバイル端末16は、制御システム32と、ベースバンドプロセッサ34と、送信回路36と、受信回路38と、複数のアンテナ40と、ユーザインターフェース回路42とを有する。受信回路38は、1又はそれ以上の基地局14及び中継局15から、情報を運ぶ無線周波数信号を受信する。低雑音増幅器及びフィルタ(図示せず。)は、処理のために信号を増幅して、信号からブロードバンド干渉を除去するよう協働してよい。本願記載されるタイプのBRFフィルタは、受信回路38に含まれるフィルタの例であってよい。次いで、ダウンコンバージョン及びデジタル化回路(図示せず。)は、フィルタ処理された受信信号を中間又はベースバンド周波数信号にダウンコンバートする。ダウンコンバートされた信号は、次に、1又はそれ以上のデジタルストリームへとデジタル化される。
【0106】
ベースバンドプロセッサ34は、受信信号において伝達された情報又はデータビットを取り出すよう、デジタル化された受信信号を処理する。この処理は、通常、復調、復号化、及びエラー訂正動作を含む。ベースバンドプロセッサ22は、一般に、1又はそれ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)又は特定用途向け集積回路(ASIC)において実施される。
【0107】
送信のために、ベースバンドプロセッサ34は、音声、データ、又は制御情報を表すデジタル化されたデータを、制御システム32から受信し、該データを送信のためにエンコードする。エンコードされたデータは、送信回路36へ出力される。送信回路36において、データは、所望の送信周波数にある1又はそれ以上のキャリア信号を変調するよう変調器によって使用される。電力増幅器(図示せず。)は、変調されたキャリア信号を送信に適したレベルへと増幅して、整合ネットワーク(図示せず。)を通ってアンテナ40へ供給する。本願で記載されるタイプのBRFフィルタは、送信回路36にも含まれてよい。当業者が利用可能な種々の変調及び処理技術が、直接的に又は中継局を介してモバイル端末と基地局との間で信号を伝送するために使用される。
【0108】
本願の上記実施形態は、単なる例であるよう意図される。当業者は、本願の適用範囲を逸脱することなく、特定の実施形態に対して代替、変更及び置換を行ってよい。
【0109】
本発明の多数の変更及び置換が、上記教示を鑑みて可能である。従って、当然、添付の特許請求の範囲の適用範囲内であれば、本発明は、本願で記載される以外の方法で実施されてよい。
【0110】
[関連出願]
本願は、2008年10月31日に出願された、その全文を参照により本願に援用される米国特許仮出願第61/110147号明細書の優先権を主張するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数帯域阻止フィルタであって、
入力ポート、
複数の音響共振器と、
前記複数の音響共振器のインピーダンスを整合させるインダクタと、
出力ポートと
を有し、
前記インダクタは、前記入力ポートと前記インダクタとの間の静的キャパシタンスが前記出力ポートと前記インダクタとの間の静的キャパシタンスと略等しくなるように、前記複数の音響共振器に対して当該帯域阻止フィルタ内で位置付けられる、
無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項2】
前記複数の音響共振器は、複数の並列共振器、複数の直列共振器、並びに直列共振器及び並列共振器の組合せの中の1つである、
請求項1に記載の無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項3】
当該無線周波数帯域阻止フィルタは、弾性表面波(SAW)技術、薄膜バルク音響共振器(FBAR)技術、及びバルク音響波(技術)の中の1つにより製造される、
請求項1に記載の無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項4】
前記インダクタはショートスタブ・オンチップ・インダクタである、
請求項4に記載の無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項5】
前記インダクタは、0.1ナノヘンリー以下のインダクタンスを有する、
請求項4に記載の無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項6】
1又はそれ以上の他の無線周波数帯域阻止フィルタとカスケード接続される、
請求項1に記載の無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項7】
前記1又はそれ以上の他の無線周波数帯域阻止フィルタの少なくとも1つは、該少なくとも1つの他の無線周波数帯域阻止フィルタ自体のインピーダンスを整合させるインダクタを有する、
請求項6に記載の無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項8】
前記直列共振器及び並列共振器の組合せは、N(N≧2)個の直列共振器と、M(M≧2)個の並列共振器とを有する、
請求項2に記載の無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項9】
Nは偶数であり、前記入力ポートと前記インダクタとの間にはN/2個の直列共振器があり、前記出力ポート前記インダクタとの間にはN/2個の直列共振器がある、
請求項8に記載の無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項10】
Mは偶数であり、前記入力ポートと前記インダクタとの間にはM/2個の並列共振器があり、前記出力ポートと前記インダクタとの間にはM/2個の並列共振器がある、
請求項8又は9に記載の無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項11】
直列共振器及び並列共振器のそれぞれは、一対の並列な導体素子から延在するインターデジタル電極の組によって形成される、
請求項1に記載の無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項12】
前記並列共振器に関し、前記一対の並列な導体素子の少なくとも1つは接地に結合される、
請求項11に記載の無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項13】
少なくとも1つの直列共振器若しくは少なくとも1つの並列共振器、又はそれら両方に関し、それぞれの共振器を形成する前記一対の並列な導体素子の少なくとも1つは、前記インダクタに結合される、
請求項11に記載の無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項14】
前記インダクタは、前記一対の並列な導体素子の少なくとも1つと接地との間に配置されるショートスタブ素子である、
請求項13に記載の無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項15】
前記インダクタのインダクタンスは、外部の整合回路が当該フィルタとともに使用されないほど十分正確に製造され得る、
請求項1に記載の無線周波数帯域阻止フィルタ。
【請求項16】
少なくとも1つのアンテナと、
所望の送信周波数を有する1又はそれ以上のキャリア信号を変調するよう構成される送信回路と、
1又はそれ以上の遠隔トランスミッタから情報を運ぶ無線周波数信号を受信するよう構成される受信回路と、
前記受信回路によって受信された受信信号を処理するとともに、前記送信回路による送信のために信号をエンコードするよう構成されるベースバンドプロセッサと、
請求項1乃至15のうちいずれか一項に記載の無線周波数帯域阻止フィルタを有する前記送信回路又は受信回路の少なくとも1つと
を有する電気通信基地局。
【請求項17】
少なくとも1つのアンテナと、
所望の送信周波数を有する1又はそれ以上のキャリア信号を変調するよう構成される送信回路と、
1又はそれ以上の遠隔トランスミッタから情報を運ぶ無線周波数信号を受信するよう構成される受信回路と、
前記受信回路によって受信された受信信号を処理するとともに、前記送信回路による送信のために信号をエンコードするよう構成されるベースバンドプロセッサと、
請求項1乃至15のうちいずれか一項に記載の無線周波数帯域阻止フィルタを有する前記送信回路又は受信回路の少なくとも1つと、
を有する電気通信無線端末。
【請求項18】
請求項1乃至15のうちいずれか一項に記載の無線周波数帯域阻止フィルタを有するデュプレクサ。
【請求項19】
無線周波数帯域阻止フィルタの製造中のインピーダンス整合の方法であって、
入力ポートを作る段階と、
複数の音響共振器を作る段階と、
前記複数の音響共振器のインピーダンスを整合させるインダクタを作る段階と、
出力ポートを作る段階と
を有し、
前記インダクタを作る段階は、前記入力ポートと前記インダクタとの間の静的キャパシタンスが前記出力ポートと前記インダクタとの間の静的キャパシタンスと略等しくなるように、前記複数の音響共振器に対して前記帯域阻止フィルタにおいて前記インダクタを位置付ける段階を有する、
方法。
【請求項20】
前記インダクタを作る段階は、所望のインダクタンスを有するショートスタブ・オンチップ素子を作る段階を有する、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記所望のインダクタンスを有するショートスタブ・オンチップ素子を作る段階は、当該ショートスタブ・オンチップ素子の長さ、幅、及び厚さの少なくとも1つを制御する段階を有する、
請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2012−507215(P2012−507215A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533497(P2011−533497)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001564
【国際公開番号】WO2010/048725
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(390023157)ノーテル・ネットワークス・リミテッド (153)
【Fターム(参考)】