説明

自閉式防火戸装置

【課題】 安全性に富んだ自閉式の防火戸装置を提供する。
【解決手段】 閉鎖方向に傾斜させたガイドレール内に4輪を有する吊車ユニットと連結具ユニットとを組み合わせて防火戸を床に水平に吊下げ、一方の吊車ユニットに車の回転を利用して発電機を回して制動する調速装置を設け、更に戸先上面に、センサ検知時に発電機を短絡させて急制動可能な回路を有する検知センサが設けられてなる自閉式の防火戸装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
4輪を有する吊車ユニットと連結具ユニットとを組み合わせて構成された吊戸式防火戸を調速自閉させ、センサにより人や物体を検知して防火戸に急制動をかけ、前もって危険を阻止するように構成された防火戸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防火戸は一般に鉄板が用いられるため普通の引き戸に比較して相当重量があり、普通レールに片側1個の車輪を用いて前後で吊下げると1車輪あたり全重量の2分の1を支えることになり、車輪およびレールに相当負担が掛かるが片側4輪の吊車ユニットにすると1車輪あたりは8分の1の重量負担で済み、車輪およびレールにとって好都合である。この片側4輪で形成する吊下げ戸車は古くは防水鉄扉(例えば特許文献1参照)などに使用されており、片側4輪で形成する吊下げ戸車の取付けは4輪の両軸間の中心位置に吊下げ軸を設けて吊戸上面と吊下げ軸とを螺合させるもの(例えば特許文献2参照)や吊戸上面に翼片を設けてこの翼片に上記吊下げ軸を螺合させるもの(例えば特許文献3参照)等がある。
【0003】
【特許文献1】実公昭13−4432号公報、図1、図2
【特許文献2】特開平08−301416号公報、図1〜図3
【特許文献3】特開平09−53364号公報、図1〜図5
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこれら上記3例の片側4輪で形成する吊下げ戸車は走行方向に対する揺動手段がないために断面略C字型のガイドレールを傾斜して敷設させて常閉式防火戸に使用する場合には車輪全てをレールに接触させることが不可であり傾斜させて使用できないという不都合がある。また、防火戸は重量が重く傾斜レールにおいては閉鎖時いくら調速しても慣性力のため多少の加速が生じ、閉鎖時に避難する人が接触衝突して怪我をするという危険性があり、人が接触すれば防火戸はそこで一旦停止するということが望まれてきている。本発明はかかる不都合を解決することを目的として提供されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は片側4輪を有する吊車を用い、更に進行方向に対して揺動可能な揺動手段を設けた上、検知センサを設けて人や物体検知時には調速装置を実質停止速度にする事により掛かる不都合を解決した。
すなわち本発明は一つには全閉時に防火戸が当接する戸先側縦枠と開口部第1上枠と開口部戸尻側縦枠の開口部3方枠と防火戸の戸面周縁部とで防火構造を形成する吊戸式防火戸においてこの開口部第1上枠の上部に断面略C字型のガイドレールが防火戸閉鎖方向に傾斜されて敷設され、この傾斜敷設ガイドレール内に一方が4輪1組で構成された吊車ユニットAと、他方が4輪1組で構成されしかもこの車輪の回転を用いて防火戸開放時には働かず防火戸閉鎖時のみ速度調整可能な制御手段を有する調速装置が設けられた吊車ユニットBと、上記防火戸に対し進行方向とその直角方向に揺動可能に構成された連結具ユニットと、を用いて防火戸が吊下げられ、更にこの防火戸に人又は物体を検知する検知センサと急制動手段とが設けられ、検知センサ作動時は上記急制動手段により実質停止に近い速度に調速装置が制御されて防火戸が閉じることを特徴とする自閉式防火戸装置であり、
また一つは防火戸に人又は物体を検知する検知センサと急制動手段とが設けられてなることは同様であって、上記の自閉式防火戸装置のうち上記開口部3方枠と防火戸の戸面周縁部との間に遮煙部材を設けた自閉式防火戸装置であり、
また一つはこれも防火戸に人又は物体を検知する検知センサと急制動手段とが設けられてなることは同様であって、この自閉式防火戸装置の防火構造に防火戸下部に更に上下動可能な遮煙部材を設けて全閉時に開口部4方が防火遮煙構造に形成された自閉式防火戸装置であり、また一つはそれらに更に防火戸押圧手段を設けて更に遮煙防火性を高めた自閉式防火戸装置ある。
【0006】
本発明は開口部と防火戸とで防火構造を形成させる場合の設定として4つのケースを想定した。1つ目には単に閉じるだけで防火構造が出来る場合、2つ目には開口部3方と当接する防火戸との間に遮煙部材を挟み、閉じた時に初めて防火遮煙構造が出来る場合、3つ目は更に防火戸下部の開口部側にも遮煙部材を設けて開口部周縁4方を塞いだ場合に初めて防火遮煙構造が出来る場合と、そして更に4つ目として全閉の際に防火戸を遮煙部材と共に開口部側に押圧して初めて防火遮煙構造が出来る場合と分類したがこれらはそれぞれのケースにおいてすべて防火構造が形成できることを想定している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の装置は防火戸閉鎖方向に傾斜敷設のガイドレールを用いているために閉鎖時は自閉のため人力が不要であり、片側4車輪であるためドア重量がそれぞれの車輪に分散されるため1車輪あたり普通の単体吊車に比較して小さな負荷を支えれば良いので吊車の寿命が延び、同時にレールの磨耗度も減少するし、そのため重量級の防火戸も懸吊可能である。また、防火戸と吊車ユニットとを連結する連結具ユニットは進行方向とその直角方向に対して揺動可能に連結構成されているため、どのような傾斜のレールにも対応でき、全閉時における押圧手段によって防火戸を開口部周縁全面にわたって密着させることが出来、更に開口部周縁に遮煙部材を用いることにより、全閉時は押圧手段により防火戸が押圧されるため開口部と防火戸とがより密着されて防火だけでなく遮煙効果も高くなる。また閉鎖時は調速手段を備えているため防火戸閉鎖時における慣性加速による恐怖からも解放されるし、更に、検知センサと急停止手段とを備えているため閉鎖時に人又や物体を検知すると実質停止状態になるので安全性が更に高まるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
発明の実施形態1を図に基づいて説明すると図1は通路開口部に検知センサ付の常閉式防火戸装置を設けた正面図であり、図2は吊車ユニットAと連結具ユニットとを連結した正面図、図3は図2の左側面図である。図4は吊車ユニットBの上面図で、図5は調速装置および検知センサによる急制動の構成を示す電気回路である。
【0009】
図1〜図5において、この実施形態1は全閉時に防火戸1が当接する戸先側縦枠2と開口部第1上枠3と開口部戸尻側縦枠4の開口部3方枠と防火戸の戸面周縁部とで防火構造を形成する吊戸式防火戸において、開口部上枠の上部に断面略C字型のガイドレール5が防火戸閉鎖方向に傾斜されて敷設され、ガイドレール5内に吊車ユニットA、吊車ユニットBの車輪12が挿通され、連結具ユニット6が吊車ユニットA、吊車ユニットBにそれぞれ連結され、連結具ユニット6の最下部の連結具6cに防火戸1が吊持ちされてなるものであり、防火戸1の先端上面部には検知センサ7が取り付けされて成る自閉式防火戸装置である。ガイドレール5の傾斜分の補正は一方の最下部の連結具6cと防火戸1との間にライナー8を挿入することにより調整して防火戸1はいつも床と水平に保つように構成されている。
【0010】
吊車ユニットAは図2、図3に示すように2枚の側板9、9とこの2枚の側板間距離を一定に保つための複数個のディスタンスカラー10とにより一体化された本体11の外側に2軸4輪の車輪12が設けられ、本体11の下部にはこの4輪に均等な負荷が掛かる位置に、進行方向に揺動可能な連結具を軸連結するための連結穴が設けられ、連結具ユニット6とは連結軸13により連結される。連結具ユニット6は連結具6a、連結具6b、連結具6cからなりそれぞれが連結軸13により連結されて防火戸1は進行方向及びその直角方向に揺動可能に吊り下げられてなる。
【0011】
図4は吊車ユニットBの上面図で2枚の側板9、9間でしかも4輪車の一方の軸部にワンウェイクラッチ(図示せず)を有する一方向回転駆動歯車14が設けられ、この回転駆動歯車14を介して増速歯車列が設けられ、この増速歯車列最終の大径歯車15と発電機18の軸に設けられた最終小径歯車16とがタイミングベルト17で連結され防火戸閉鎖時のみ発電機18が回転して吊車ユニットBにブレーキが掛かるように構成された調速装置19が付加されたものである。この吊車ユニットBにも吊車ユニットAと同様の連結具ユニット6が取付されて連結軸13により連結される。
【0012】
また、図1に示すように防火戸1の戸先端上面には検知センサ7が設けられ、図5の回路図に示すように調速回路20に並行して短絡回路21及びセンサ回路30が設けられ短絡回路には通常OFF状態のリレー接点が接続されている。また、電池31には検知センサ7と前記した通常OFF状態のリレー接点を閉じるリレー22とが直列に接続されており、通常時は防火戸1は発電機18により調速されて閉鎖走行しているが検知センサ7が人や物体を検知するとリレー22が作動して発電機18の回路が短絡回路21に切り替えられ実質停止に近い速度に制御されるように構成されてなる。ここでは電池31を用いたが電池は消耗品であるため電池の代わりに通常100Vの交流電源をトランスや整流器を用いてこの回路に適した直流電源を用いることが好ましく、また停電のことを考慮すると充電回路を並行して付加する事がより好ましい。
【0013】
次に動作を説明するとガイドレール5が傾斜されて設置されているため防火戸1は一旦開放されると自動的に閉鎖される。そして閉鎖時には防火戸1は吊車ユニットBに設けられた調速装置19により調速されてゆっくりと閉じる。そして全閉時には開口部第1上枠3と開口部戸尻側縦枠4と防火戸戸先側縦枠部2との開口部三方枠と防火戸1とが接触して開口部を閉塞するため火もそこを通過することが出来ない。
【0014】
また、防火戸1が閉鎖途中において防火戸1の先端上面に取付された検知センサ7が人や物体を検知すると検知回路のリレー22が作動して発電機18の回路が短絡回路21に切り替えられ実質停止に近い速度にスピードダウンし、検知センサ7から外れると従来の調速速度で再び閉鎖されてゆくため人は皆危険を感じることなく通過することが出来る。
【0015】
発明の実施形態2を図に基づいて説明すると図6は、図1に更に通路開口部の枠側3方に弾性を有する遮煙部材を設けた正面図であり、その他の構成については実施形態1と同様である。その構成を説明すると開口部側戸先側縦枠2と開口部上枠3と開口部戸尻側縦枠4とに弾性を有する遮煙部材23を設けたものである。
【0016】
次に動作を説明するとガイドレール5が傾斜されて設置されているため防火戸1は一旦開放されると自動的に閉鎖される。そして閉鎖時には防火戸1は吊車ユニットBに設けられた調速装置19により加速されることなく調速されてゆっくりと閉じる。そして全閉時には開口部上枠3と開口部戸尻側縦枠4と防火戸戸先側縦枠部2との開口部三方枠と弾性を有する遮煙部材23と防火戸1とにより隙間を閉塞するため火も煙もそこを通過することが出来なくなる。
【0017】
また、防火戸1が閉鎖中に、防火戸1の先端上面に取付された検知センサ7が人や物体を検知するとリレー22が作動して発電機18の回路が短絡回路21に切り替えられ実質停止に近い速度にスピードダウンし、検知センサ7から外れると従来の調速速度で再び閉鎖されてゆく。
【0018】
発明の実施形態3を図に基づいて説明すると、図7は実施形態3の防火戸1下部の構成を示した断面図である。図7において防火戸1下部における開口部側の戸幅全体に帯状体の下部遮煙部材24を設けたもので、全閉時に初めてこの下部遮煙部材が接地するように構成され、この実施形態3は図6に更に図7の下部遮煙部材24を付加させたもので、全閉時に開口部3方と防火戸下部とで周縁4方で防火遮煙構造になるように構成させたものであり、その他の構成については実施形態2と同様である。
【0019】
次に動作について説明すると全閉時においては実施形態2の動作に並行して更に防火戸下部も遮蔽されるため、開口部3方と防火戸下部とで周縁4方で隙間を閉塞するため火も煙も開口部を通過することが出来なくなる。この場合も閉鎖途中で検知センサ7が作動すると実施形態1、2と同様の動作を行なうことになる。
【0020】
発明の実施形態4を説明すると、図8は防火戸1上面の真中に押圧装置を設けた斜視図、図9は図7のA−A矢視図で全閉時手前における防火戸1下部の押圧装置の構成を示した説明図である。実施形態4は実施形態1〜3の防火戸1の上部と下部とに押圧手段として上部には図8に示すように防火戸1上面に回転可能なクランクアーム25と転向用ブラケット26と押圧用ブラケット27とにより回転モーメントを利用して防火戸1を押圧するように構成し、下部には図9に示すように防火戸1の下部溝内に設けられた防火戸1の振れ止めローラ29を回転体として使用し、溝壁にクサビ状の変位具28を設けて振れ止めローラ29によって防火戸1を開口部側に押圧させるように構成したものである。また、戸先側上面には検知センサ7が設けられてなる。
【0021】
この下部押圧手段は全閉時に防火戸1が遮煙部材23により強く押圧されるためより隙間の閉塞性が高くなって遮煙効果は上昇する。この場合変位具28はうしろに平行部をもったクサビ状のものでも、平行部をもたないクサビ状のものでも良い。
【0022】
また、上部押圧手段の動作は閉鎖時クランクアーム25の長棹側先端の回転体が転向用ブラケット26にあたるとクランクアーム25は回動して短棹側先端の回転体が押圧用ブラケット27にあたって次第に防火戸1を開口部側に押圧してゆき全閉時には確実に隙間を塞ぐことになる。この場合押圧力は梃子の原理により小さな閉鎖力でも確実に防火戸1を開口部側に押し付ける働きをする。
【0023】
また、防火戸1が閉鎖中に、防火戸1の先端上面に取付された検知センサ7が人や物体を検知するとリレー22が作動して発電機18の回路が短絡回路21に切り替えられ実質停止に近い速度にスピードダウンし、検知センサ7から外れると従来の調速速度で再び閉鎖されてゆく。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】通路開口部にセンサ付の自閉式防火戸装置を設けた正面図
【図2】吊車ユニットAと連結具ユニットとを連結した正面図
【図3】図2の左側面図
【図4】吊車ユニットBの上面図
【図5】調速方法説明用電気回路図
【図6】図1に更に開口部3方に遮煙部材を設けた正面図
【図7】防火戸1下部の構成を示した断面図
【図8】上部の押圧装置の取付説明用斜視図
【図9】図7におけるB−B矢視図
【符号の説明】
1、防火戸
2、開口部戸先側縦枠
3、開口部上枠
4、開口部戸尻側縦枠
5、ガイドレール
6、連結具ユニット
7、検知センサ
8、ライナー
9、側板
10、ディスタンスカラー
11、本体
12、車輪
13、連結軸
14、調速装置の回転駆動歯車
15、最終大径歯車
16、最終小径歯車
17、タイミングベルト
18、発電機
19、調速装置
20、調速回路
21、短絡回路
22、リレー
23、遮煙部材
24、下部遮煙部材
25、クランクアーム
26、転向用ブラケット
27、押圧用ブラケット
28、変位具
29、振れ止めローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全閉時に防火戸が当接する開口部戸先側縦枠と開口部上枠と開口部戸尻側縦枠の開口部3方枠と防火戸の戸面周縁部とで防火構造を形成する吊戸式防火戸において、この開口部上枠の上部に断面略C字型のガイドレールが防火戸閉鎖方向に傾斜されて敷設され、この傾斜敷設ガイドレール内に一方が4輪1組で構成された吊車ユニットAと、他方が4輪1組で構成されしかもこの車輪の回転を用いて防火戸開放時には働かず防火戸閉鎖時のみ速度調整可能な制御手段を有する調速装置が設けられた吊車ユニットBと、上記防火戸に対し進行方向とその直角方向に揺動可能に構成された連結具ユニットと、を用いて防火戸が吊下げられ、更にこの防火戸に人又は物体を検知する検知センサ手段と急制動手段とが設けられこの検知センサ手段が作動時は上記急制動手段によりこの防火戸が実質停止に近い速度に制御されることを特徴とする自閉式防火戸装置
【請求項2】
全閉時に防火戸が当接する戸先側縦枠と開口部上枠と開口部戸尻側縦枠との上記開口部3方枠と、この開口部3方枠に当接する防火戸周縁部との何れか一方側に遮煙部材が設けられて全閉時に開口部3方が防火遮煙構造に形成されるかまたは更に上記防火戸下部に遮煙防火部材が接地するように上下動可能に設けられて全閉時に開口部4方が防火遮煙構造に形成されて更に遮煙防火性を高めたことを特徴とする請求項1記載の自閉式防火戸装置
【請求項3】
全閉時に上記防火戸が上記開口部側に押し付けられるように押圧手段が設けられてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の自閉式防火戸装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−154631(P2007−154631A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380722(P2005−380722)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(397000160)株式会社豊和 (47)
【Fターム(参考)】