説明

自閉機能式拡管装置

【課題】逆止弁を内蔵したカプラを用いなくても、ゴム膨張管を拡径状態に保持することのできる自閉機能式の拡管装置を提供する。
【解決手段】拡管装置10を、流体の圧力で拡径方向に膨張し、軸方向に収縮する補強層18の埋設されたゴム膨張管12と、端部金具20及び口金具30と、流入口38と、口金具20に固設され、ゴム膨張管12の内部を軸方向に延びる芯管42とを有するものとなす。その芯管42は、ゴム膨張管12が軸方向の収縮を伴って設定した拡径寸法まで拡径したところで、先端がゴム膨張管12の内面の当接部44に当接して外周側空間50と内側空間48とを遮断状態にシールするものとなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゴム膨張管の拡径方向の膨張に伴う軸方向の収縮を利用して、ゴム膨張管の内部に流体を加圧状態に保持し、ゴム膨張管を拡径状態に維持する自閉機能式拡管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、拡径方向に膨張するとともに軸方向に収縮する、補強層の埋設されたゴム膨張管と、ゴム膨張管の軸方向の一端側に装着された第1端部部材及び他端側に装着された第2端部部材と、第1端部部材又は第2端部部材に形成され、ゴム膨張管の内部に流体を流入させる流入口とを有し、その流入口からゴム膨張管の内部に流体を流入させて、流体の圧力でゴム膨張管を軸方向の収縮を伴って拡径方向に膨張させるようになした拡管装置が様々な用途に用いられている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、拡管装置を硬岩等に形成した孔に挿入し、そして拡管装置におけるゴム膨張管内に高水圧をかけることで、ゴム膨張管を径方向に膨張させ、硬岩等を破砕するようになした例が開示されている。
【0004】
また下記特許文献2には、拡管装置を、隣接するプレキャストコンクリートブロック間にコンクリートを充填及び硬化させる際に、各プレキャストコンクリートブロックの通孔と通孔とを連絡するダクトを成形するためのダクト成形用として用いた例が開示されている。
【0005】
図6はその具体例を示したもので、ここでは隣接するプレキャストコンクリートブロック200,200間にまたがるようにして、それぞれの通孔202に拡管装置204を通し、そして拡管装置204におけるゴム膨張管を膨張させた状態で、プレキャストコンクリートブロック200,200間にコンクリート206を充填及び硬化させ、その後ゴム膨張管を縮径させて拡管装置204を抜き取ることにより、コンクリート206充填部に通孔202と202とを連絡するダクト208を成形するようにしている。
【0006】
一方下記特許文献3には、拡管装置を断面4角形状,コ字形状その他形状のコンクリート成形体の孔成形用として用いた例が開示されている。
図7はその具体例を示している。
ここでは型枠210内部に拡管装置204を挿入してこれを保持孔212にて保持させ、その状態で拡管装置204のゴム膨張管を、内部に流入させた流体の圧力で径方向に膨張させ、そしてその状態で型枠210内部にコンクリートを打設するとともに、打設したコンクリートが固まった後に、ゴム膨張管を縮径させて抜き出し、以てコンクリート成形体214を成形すると同時に、コンクリート成形体214に孔215を成形するようにしている。
【0007】
従来この拡管装置には、流体の供給管との接続用の、逆止弁を内蔵したカプラが用いられている。
図8はその具体例を示している。
図において、216は拡管装置204の主要素をなすゴム膨張管で、内部に補強層218が埋設されている。
このゴム膨張管216は、軸方向の収縮を伴って拡径方向に膨張する。
【0008】
ゴム膨張管216の軸方向の一端側には端部金具(第1端部部材)220が装着され、また他端側には口金具(第2端部部材)222が装着されている。
224は、ゴム膨張管216内部において、ゴム膨張管216に沿って軸方向に延びる金属製の芯管で、ここでは芯管224は口金具222に一体に形成されている。
この芯管224には、これを径方向に貫通する通孔226が設けられている。
尚芯管224は、ゴム膨張管216の縮径状態の下で、これを左右方向の直線形状に形状保持する目的で設けられている。
【0009】
口金具222には、流体の流入口228が設けられており、そこに流入口228を流体の供給管に接続するためのカプラ230が設けられている。
このカプラ230には、図8(B)に示しているように流体を図中右方向に流通可能とする一方、逆方向の流通を阻止する一方向性の逆止弁232が内蔵されている。
【0010】
この逆止弁232は、弁座234と、弾性部材236を介してこの弁座234に図中左向きに当接し閉弁する弁体238と、これを図中左向きに付勢する金属製のスプリング(コイルスプリング)240とを含んで構成されている。
【0011】
この拡管装置204は、供給管242(図9参照)を通じて送られたエア等の流体を、流入口228からゴム膨張管216内部に流入させ、そしてその流体の圧力でゴム膨張管216を拡径方向に膨張させる。
このときゴム膨張管216は、軸方向の収縮を伴って拡径膨張する。
【0012】
また供給管242からの流体が流入口228を通じてゴム膨張管216内部に流入する際、カプラ230に内蔵された逆止弁232は、弁体238を図8(B)中右方向に移動させて開弁し、ゴム膨張管216内部への流体の流入を許容する。
【0013】
一方供給管242からの流体の供給を停止し、逆止弁232に対して図中右向きの流体の圧力が無くなると、逆止弁232は弁体238を弾性部材236を介して弁座234に当接させ閉弁する。そしてこれによって、ゴム膨張管216内部の流体が流入口228を通じて外部に漏れるのを防止する。
即ちゴム膨張管216内部に流体を加圧状態に封止し、これによってゴム膨張管216を径方向に膨張状態に保持する。
【0014】
尚芯管224は、ゴム膨張管216を設定した拡径寸法まで拡径した状態の下で、その先端がゴム膨張管216の図中右端側の内面若しくは端部金具220に達しない長さとされている。
またこの芯管224に形成された通孔226は、芯管224の内側空間と外周側空間との間で流体を通過させる。
【0015】
しかしながらこの拡管装置204の場合、逆止弁232を内蔵した高価なカプラ230が必要で、それによってコストが増大してしまう問題があり、またカプラ230に内蔵した逆止弁232は、弁体238と弾性部材236との間、或いは弾性部材236と弁座234との間に砂等の異物を噛み込んでしまうことがあり、この場合逆止弁232の閉鎖状態の下でも微小な隙間が生じて、そこからゴム膨張管216内部の流体が外部に漏洩してしまう。
また、カプラ230装着時にねじ込み部不具合による漏洩も考えられる。
【0016】
その漏洩は通常極く僅かであり、そのため漏洩が生じているか否か分りづらく、気が付かないまま放置しておくと、いつの間にかゴム膨張管216内部の流体が大きく抜けてしまって、ゴム膨張管216が目的とする拡径状態から径方向に収縮してしまい、拡管装置204使用の際に目的を達せられなくなってしまう。
例えば拡管装置204を、図7に示すコンクリートの孔成形用のものとして用いたとき、コンクリート成形体に目的とする大きさの孔を成形できなくなってしまう。
【0017】
更にこの拡管装置204の場合、図9に示す膨張状態で芯管224の外周側空間及び内側空間を含むゴム膨張管216内部の全体の流体の圧力が、端部金具220及び口金具222に高圧状態で加わった状態にあり、万一例えば端部金具220がゴム膨張管216の一端側から外れたときに、その端部金具220がゴム膨張管216内部の全体の高圧力で勢い良く跳ね飛んでしまう恐れがある。
【0018】
【特許文献1】特公平3−18075号公報
【特許文献2】特許第3229150号公報
【特許文献3】特許第3438522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は以上のような事情を背景とし、上記の逆止弁を内蔵したカプラを用いなくても、ゴム膨張管内部に流入させた流体による加圧力でゴム膨張管を拡径状態に保持することのできる自閉機能式の拡管装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
而して請求項1のものは、(イ)内部に流入した流体の圧力で拡径方向に膨張するとともに軸方向に収縮する、補強層の埋設されたゴム膨張管と、(ロ)該ゴム膨張管の軸方向の一端側に装着された第1端部部材及び他端側に装着された第2端部部材と、(ハ)前記第1端部部材又は第2端部部材に形成され、前記ゴム膨張管内部に前記流体を流入させる流入口と、(ニ)一端側で前記第1又は第2端部部材に固設され、前記ゴム膨張管の内部において該ゴム膨張管の軸方向に延びる剛性の芯管と、を有し、且つ前記芯管は、その長さが前記ゴム膨張管の膨張前の長さよりも短く且つ該ゴム膨張管が軸方向の収縮を伴って設定した拡径寸法まで拡径したところで、該芯管の先端が該先端に対して軸方向に対向して位置する当接部に弾性的に当接する長さとなしてあり、該芯管と該ゴム膨張管との間の、該芯管の外周側空間を該芯管の内側空間と遮断状態にシールするとともに、該芯管の内側空間を前記流入口に連通状態とするものとなしてあることを特徴とする。
【0021】
請求項2のものは、請求項1において、前記当接部が、前記ゴム膨張管の内面自体であって、前記芯管の固設側とは反対側の端側の部位であることを特徴とする。
【0022】
請求項3のものは、請求項1において、前記当接部が、前記芯管の固設されていない側の前記第1端部部材又は第2端部部材の軸方向内面であって、該芯管の先端が、該内面又は該芯管の先端に設けた弾性部材を介して該内面に当接するようになしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0023】
以上のように本発明は、ゴム膨張管の内部を軸方向に延びる芯管の長さを、ゴム膨張管が軸方向の収縮を伴って設定した拡径寸法まで拡径したところで、芯管の先端がこれに対向して位置する当接部に弾性的に当接する長さとなしてあり、芯管とゴム膨張管との間の芯管の外周側空間を、芯管の内側空間と遮断状態にシールするとともに、芯管の内側空間を上記流入口に連通状態とするようになしたものである。
【0024】
かかる本発明の拡管装置では、芯管自体を逆止弁におけるシール用の弁体として働かせるものであるため、従来の拡管装置のように逆止弁を内蔵したカプラを備えておかなくても良く、そのことによって拡管装置に要するコストを低減することができるとともに、必要な部品点数もまた削減することが可能である。
【0025】
また芯管の先端が、対応する当接部との間に異物を噛み込んでゴム膨張管内部の流体の漏洩を生じた場合、その漏洩の量は、カプラに内蔵した逆止弁での漏洩の量に比べて多くなるため、漏洩が生じていることが直ちに分り、従って速やかに対策し得て、気が付かない程度の漏洩が長く続くことによる不都合を解消することができる。
【0026】
また万一ゴム膨張管の軸方向端部に装着された端部部材がゴム膨張管から外れ、これによって芯管の先端が対応する当接部から離間したとしても、その端部部材に対して働く流体の圧力は、芯管の外周側空間の狭い領域(空間)に封じ込められていた流体の圧力のみであるため、端部部材に対してこれを大きく跳ね飛ばそうとする力は働かず、端部部材の跳ね飛びによる危険を生じない利点を有する。
【0027】
次に請求項2は、ゴム膨張管の内面自体、詳しくはその内面における芯管の固設側とは反対側の端側の部位を当接部として、そこに芯管の先端を当接させ、シールをなすようにしたもので、この請求項2によれば、ゴム膨張管の内面自体が弾性を有する当接部となって、芯管の先端とでシールをなすものであるため、特別な当接部を別途に設ける必要がなく、簡単な構造で自閉機能式の拡管装置を構成することが可能となる。
【0028】
一方請求項3は、上記当接部を芯管の固設されていない側の第1端部部材又は第2端部部材の軸方向内面となし、芯管の先端をその内面又は芯管の先端に設けた弾性部材を介してその内面に当接させ、シールするようになしたもので、この請求項3においても当接部のための特別の部材を別途に設けなくても良く、自閉機能式の拡管装置を簡単な構造で構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の自閉機能式の拡管装置で、12はその主要素をなすゴム膨張管である。
尚この実施形態において、拡管装置10の長さLは850mmである。尚、長さLは用途に応じて様々な長さとすることが可能である。
【0030】
ゴム膨張管12は、外面ゴム層14と、内面ゴム層16と、それらの間に積層状態に埋設された補強層18とを有している。
この実施形態において、補強層18は第1補強層と第2補強層とを有しており、その第1補強層の補強糸18-1と、第2補強層の補強糸18-2とが、それぞれ軸方向に対してθの編角(即ち互いに逆向きをなす補強糸18-1と18-2との交差角が2θ)で編組してあり、その編角θは静止角(約54.44°)よりも小さな角度となしてある。
この編角θは5°〜45°の角度となしておくことが望ましい。
この実施形態では、編角θは30°となしてある。
ゴム膨張管12は、補強層18の編角をこのような編角となしてあることによって、径方向の膨張時に軸方向に収縮する。
ここで補強糸18-1,18-2は、この例ではポリエステル糸が用いられているが、他の材質から成る補強糸、例えばポリアミド補強糸或いはその他の補強糸を用いることが可能である。
尚ゴム膨張管12は、成形後の単体状態、即ち自由形状状態で内径及び外径ともに軸方向に均等な直管状をなしている。
【0031】
20はゴム膨張管12の一端側(図中右端側)に装着された端部金具(第1端部部材)で、ゴム膨張管12内部への挿入部22と、その外側のフランジ部24とを有している。
ここで端部金具20は、挿入部22が中実構造となしてあって、ゴム膨張管12の右端側を閉鎖している。
【0032】
26は金属製且つリング状の締付部材で、ゴム膨張管12はこの締付部材26によって縮径方向に締め付けられ、その内周面が端部部材20における挿入部22の外周面に密着状態に接触せしめられている。
この挿入部22の外周面には、断面形状が鋸歯状をなす環状の係合歯28が軸方向(図中左右方向)に一定ピッチで複数形成されており、これら係合歯28が、ゴム膨張管12の内面に抜止方向に食い込んでいる。
【0033】
30はゴム膨張管12の他端側(図中左端側)に装着された口金具(第2端部部材)で、ゴム膨張管12内部への管状の挿入部32と、その外部のフランジ部34とを有している。
口金具30はまた、このフランジ部34に連続してゴム膨張管12の径方向に延びる壁部36を有しており、その壁部36に、ゴム膨張管12内部に流体を流入させるための流入口38が設けられている。
【0034】
40は、ゴム膨張管12の他端側を外周面から縮径方向に締め付ける金属製且つリング状の締付部材で、この締付部材40による締付けによって、ゴム膨張管12は図中左端側が縮径変形せしめられ、その内面が口金具30における挿入部32の外周面に密着状態に接触せしめられている。
【0035】
この口金具30における挿入部32の外周面にもまた、上記と同様の断面形状が鋸歯状をなす環状の係合歯28が軸方向に一定ピッチで複数設けられており、それら係合歯28が、ゴム膨張管12の内面に抜止方向に食い込んでいる。
【0036】
尚この実施形態において、端部金具20における挿入部22の外径Dは、口金具30における挿入部32の外径Dに対して小径をなしており、従って締付部材26,40による締付けによってゴム膨張管12の一端側と他端側とを、それら挿入部22,32に締め付けた状態の下で、図1に示しているようにゴム膨張管12の図中右端側は内径及び外径ともに図中左端側の内径及び外径よりも小径をなしている。
【0037】
42は金属製の芯管で、ここでは芯管42は口金具30に一体に形成されている。但し場合によって芯管42を口金具30と別体に構成して、これを口金具30に固定しても良い。
芯管42は円筒状の部材で(ゴム膨張管12もまた円筒状をなしている)、ゴム膨張管12の内部において、ゴム膨張管12の軸方向に延びている。
但し芯管42はその長さが次のように定めてある。
【0038】
即ち芯管42は、その長さ(図1中L。但しLは一対の締付部材40,26間の長さで、ゴム膨張管12の有効長Lに対応した長さ)がゴム膨張管12の膨張前の長さ(有効長L)よりも短く、且つゴム膨張管12が軸方向の収縮を伴って設定した拡径寸法まで拡径したところで、芯管42の先端がゴム膨張管12の内面に弾性的に当接する長さとなしてある。
即ち芯管42がなく、ゴム膨張管12が拡径して軸方向に収縮した場合の長さをL′としたとき、L>L′となる。
図1において、44はそのゴム膨張管12の内面における当接部を表している。
尚この実施形態では、芯管42に図8に示した従来の拡管装置における通孔226は設けられていない。
【0039】
図2は、拡管装置10の拡管時の作用、即ちゴム膨張管12の径方向の膨張時の作用を表している。
ここでは流体としてのエアの供給管を流入口38と連通状態とし、そして供給管を通じて供給された加圧状態のエアを、流入口38からゴム膨張管12の内部に流入させる。
【0040】
このとき、図2(I)に示しているように流入口38から流入したエアは芯管42の先端を回り込んで、芯管42とゴム膨張管12との間の外周側空間50に供給される。
この加圧状態のエアの供給によって、ゴム膨張管12は径方向に膨張する。
このとき、ゴム膨張管12は径方向の膨張に伴って軸方向に収縮する。従って芯管42の先端46と、ゴム膨張管12の当接部44との間の軸方向の間隔は、ゴム膨張管12の径方向の膨張に伴って漸次狭まって行く。
【0041】
図2(II)は、逆止弁の弁体としての働きを有する芯管42が閉弁する直前の状態、即ち芯管42の先端46がゴム膨張管12の内面の当接部44に当接する直前の状態を表している。
【0042】
この状態で更にゴム膨張管12内部への加圧エアの供給を続行すると、遂には芯管42の先端46詳しくは外周側の角部46Aが、ゴム膨張管12の内面の当接部44に当接し、逆止弁における弁体としての芯管42が閉弁状態となる。
即ち芯管42とゴム膨張管12との間の、芯管42外周側空間50が閉鎖状態となって、芯管42の内側空間48と遮断状態となる。
従って、図2(III)に示しているようにこの段階で芯管42の内側空間48の加圧エアを流入口38から抜いても、外周側空間50の加圧エアは閉じ込められたままとなる。
【0043】
ゴム膨張管12は、その外周側空間50の加圧エアの圧力によって、引き続き径方向に膨張しようとし、また同時にゴム膨張管12はその径方向に膨張しようとする力によって軸方向に収縮しようとする。
そしてゴム膨張管12の収縮方向の力によって、芯管42の先端46詳しくは角部46Aと、当接部44とが強く当接状態に保持される。即ち芯管42の先端46とゴム膨張管12の当接部44とがシール状態に保持される。
その結果としてゴム膨張管12は、設定した拡径寸法にその後も維持される。
【0044】
図3は、芯管42と当接部44とによるシールを解除する手段の一例を示している。
図において52はシールを解除する解除部材で、この解除部材52は、雌ねじ54,56を有する袋ナット58と、雄ねじ57を有する芯管42よりも長さの長い突き棒60と、突き棒60を回転操作する操作部62とを有している。
【0045】
ここでは突き棒60を、雄ねじ57において袋ナット58の雌ねじ56に螺合しておき、そして袋ナット58を雌ねじ54において流入口38の雄ねじ64に螺合して、その状態で操作部62にて突き棒60を回転操作し、これを図中右向きにねじ送りで前進させ、その先端を端部金具20の内面に当接させる。
そして更に突き棒60を右向きにねじ送りで前進させると、ここにおいてゴム膨張管12が強制的に軸方向に伸ばされ、芯管42の先端46とゴム膨張管12の当接部44とが強制的に離間させられる。
【0046】
而してそれら先端46と当接部44とが僅かでも離間すると、そこにおいて先端46と当接部44とによるシールが解除され、外周側空間50内部に加圧状態で閉じ込められていたエアが、それらの間の隙間を通じて内側空間48へと流れ込み、更に流入口38を通じて外部へと流出せしめられる。
ここにおいてゴム膨張管12が膨張前の当初の形状(図1に示す形状)へと復帰する。
【0047】
図4はシールを解除するための他の解除例を示している。
この例は、端部金具20の中心部に貫通の雌ねじ孔66を設けておくとともに、雄ねじ68を有する軸部70と、その回転操作用の操作部72と、端部金具20の内側位置の円板状の押動部74とを有する解除部材76を、予め雄ねじ68において雌ねじ孔66に螺合しておき(円板状の押動部74と端部金具20の軸方向の内面との間にはシート状の弾性部材78が介装されている)、シール解除の際に操作部72を回転操作することで、押動部74を図中左向きにねじ送りで前進させ、そしてその押動部74によって芯管42の先端に設けた径方向内方向きのフランジ部80を図中左向きに押動してシール解除する。
その他シール解除の手段として種々手段を用いることができる。
【0048】
次に、図5は上例とは異なった部位を当接部となした例である。
ここでは端部金具20における挿入部22の外径Dと、口金具30における挿入部32の外径Dとが同径とされており、従ってゴム膨張管12の一端側と他端側とは、内径及び外径ともに同径とされている。
そして端部金具20の軸方向内面の外周部が、ここでは当接部44とされている。
尚端部金具20の内面且つ外周部には、リング状の弾性部材82が設けられている。
【0049】
ここでは、芯管42の先端46が弾性部材82を介して端部金具20の内面の当接部44に当接することで、上記の外周側空間50が内側空間48に対して遮断され且つシールされる。
尚、弾性部材82を端部金具20に設けるのに代えて芯管42の先端面に設けておくことも可能である。
【0050】
以上のような本実施形態の拡管装置10では、芯管42自体を逆止弁におけるシール用の弁体として働かせるものであるため、従来の拡管装置のように逆止弁を内蔵したカプラを備えておかなくても良く、そのことによって拡管装置10に要するコストを低減することができるとともに、必要な部品点数もまた削減することができる。
【0051】
また芯管42の先端が、対応する当接部44との間に異物を噛み込んでゴム膨張管12内部のエア(流体)の漏洩を生じた場合、その漏洩の量はカプラに内蔵した逆止弁での漏洩の量に較べて多くなるため、漏洩が生じていることが直ちに分かり、従って速やかに対策し得て、気が付かない程度の漏洩が長く続くことによる不都合を解消することができる。
【0052】
また万一ゴム膨張管12の軸方向端部に装着された端部金具20,口金具30等がゴム膨張管12から外れ、これによって芯管42の先端が対応する当接部44から離間したとしても、その端部金具20,口金具30等の端部部材に対して働く流体の圧力は、芯管42の外周側空間50の狭い領域(空間)に封じ込められているエアの圧力のみであるため、端部部材に対してこれを大きく跳ね飛ばそうとする力が働かず、端部部材の跳飛びによる危険を生じない。
【0053】
またこれら実施形態では、ゴム膨張管12の内面自体或いは端部金具20の内面自体を当接部44として、そこに芯管42の先端を当接させ、シールするように成していることから、特別な当接部を別途に設ける必要がなく、簡単な構造で自閉機能式の拡管装置10を構成することが可能となる。
【0054】
尚これら実施形態の拡管装置10は、上記例示したコンクリートの孔成形用のものとして好適に使用できることはもとより、上記例示した様々な用途に或いはそれ以外の他の従来公知の様々な用途に使用可能なものである。
【0055】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であ
る。
例えば上記の流入口38を端部金具20の側に設けて口金具30の側を閉鎖構造としたり(この場合には端部金具20が口金具となり、口金具30がゴム膨張管12の端の開口を閉鎖する閉鎖金具となる)、また上記芯管42を、端部金具20の側に一体構成すると否とを問わずこれに固定状態に設けるといったことも可能である。
その他本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を
加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態である自閉機能式拡管装置を示した図である。
【図2】同実施形態の拡管動作の際の作用説明図である。
【図3】同実施形態のシール部の解除の手段の一例を示した図である。
【図4】図3とは異なった解除の手段の例を示した図である。
【図5】本発明の他の実施形態の図である。
【図6】拡管装置の使用の一例を示した図である。
【図7】拡管装置の他の使用の一例を示した図である。
【図8】拡管装置の従来の一例を示した図である。
【図9】図8の拡管装置の作用説明図である。
【符号の説明】
【0057】
10 拡管装置
12 ゴム膨張管
18 補強層
20 端部金具(第1端部部材)
30 口金具(第2端部部材)
38 流入口
42 芯管
44 当接部
78,82 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)内部に流入した流体の圧力で拡径方向に膨張するとともに軸方向に収縮する、補強層の埋設されたゴム膨張管と、
(ロ)該ゴム膨張管の軸方向の一端側に装着された第1端部部材及び他端側に装着された第2端部部材と、
(ハ)前記第1端部部材又は第2端部部材に形成され、前記ゴム膨張管内部に前記流体を流入させる流入口と、
(ニ)一端側で前記第1又は第2端部部材に固設され、前記ゴム膨張管の内部において該ゴム膨張管の軸方向に延びる剛性の芯管と、を有し、
且つ前記芯管は、その長さが前記ゴム膨張管の膨張前の長さよりも短く且つ該ゴム膨張管が軸方向の収縮を伴って設定した拡径寸法まで拡径したところで、該芯管の先端が該先端に対して軸方向に対向して位置する当接部に弾性的に当接する長さとなしてあり、該芯管と該ゴム膨張管との間の、該芯管の外周側空間を該芯管の内側空間と遮断状態にシールするとともに、該芯管の内側空間を前記流入口に連通状態とするものとなしてあることを特徴とする自閉機能式拡管装置。
【請求項2】
請求項1において、前記当接部が、前記ゴム膨張管の内面自体であって、前記芯管の固設側とは反対側の端側の部位であることを特徴とする自閉機能式拡管装置。
【請求項3】
請求項1において、前記当接部が、前記芯管の固設されていない側の前記第1端部部材又は第2端部部材の軸方向内面であって、該芯管の先端が、該内面又は該芯管の先端に設けた弾性部材を介して該内面に当接するようになしてあることを特徴とする自閉機能式拡管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−84794(P2010−84794A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251581(P2008−251581)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】