説明

航空機の平面部材およびその製造方法

本発明は、航空機(2)の平面部材(1)であって、前記平面部材が材料厚(4)を有する面(3)を形成し、前記面が座屈剛性を高めるために、ウエブ高さ(6)を有するウエブ(5)によって規定された少なくとも前記面の一部または部分面(7)に、ビード高さ(9)を有する少なくとも1つの補強ビード(8)を備えて実施されており、前記補強ビードが前記ウエブ(5)の間で前記部分面(7)にわたって延びているものに関する。さらに、特にオートクレーブ内でこのような平面部材の製造を可能とする製造方法がなお提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機、特に飛行機またはヘリコプタの平面部材であって、この平面部材が材料厚を有する面を形成し、かつウエブ高さを備えたウエブ(ストリンガとリブ)を有し、これらのウエブが平面部材の部分面を規定するものに関する。このような平面部材は特に、軽量構造技術で繊維強化複合材料から成る翼、胴体部構成要素、駆動組立体のハウジング等として応用される。さらに、このような平面部材を製造するための方法が明示される。
【背景技術】
【0002】
飛行機を将来環境的に適合させ、製造および運転の点で安価に提供し、なおかつごく厳しい安全規定に即したいとの努力のために、本質的一次構造(例えば翼構成要素または胴体部構成要素)をもはやアルミニウムからではなく繊維強化複合材料から製造する可能性がますます求められる。この軽量構造技術でもって特に飛行機の重量は著しく低減させることができる。このような本質的一次構造を製造するとき考慮しなければならない点として、これらの一次構造はかなりの大きさを占め、例えば飛行機の着陸フラップは数メートルにわたって延びる部材である。それに加えてこれらの部材は運転時に強い負荷に曝されており、こうして特に強度、剛性および品質上の要求条件を遵守しなければならない安全上重要な部材である。
【0003】
このような繊維強化複合材料は一般に2つの主要構成要素、つまり一方で繊維、他方でこの繊維を取り囲む高分子マトリックスを含む。高分子マトリックスは繊維を取り囲み、例えば熱処理によって硬化(重合)され、こうして三次元網状結合が起きる。繊維が互いに強固に結合され、こうして主として剪断応力を介して諸力を繊維中に導入できることは、この重合で達成される。繊維としてカーボン繊維の他に場合によってはガラス繊維も考慮に値する。今日なお比較的高価であるカーボン繊維は通例、少なくとも90重量%が炭素から成る。繊維直径は例えば4.5〜8μm[マイクロメートル]である。このようなカーボン繊維の性質は異方性である。それとは対照的にガラス繊維はアモルファス構造と等方性とを有する。ガラス繊維は主として酸化ケイ素から成り、場合によってはその他の酸化物を混加しておくことができる。ガラス繊維が比較的好ましいのに対して、カーボン繊維はその強度および剛性が高いことを特徴としている。
【0004】
まさに飛行機製造ではいわゆるプリプレグ技術が利用される。この技術では例えば予備含浸織布または別の組み立てられもした繊維半製品が合成樹脂内で含浸され、軽い固化(ゲル化)に至るまで熱処理されるだけであり、こうしてそれらは層ごとに取り扱うことができる。このようなプリプレグ材料は僅かに付着し、こうして所望の部材形状が形成されるまで当該成形金型内に、もしくは層ごとに上下にして、良好に配置することができる。プリプレグ材料と真空構造体との所望の層が配置されている場合、それらは(熱で)硬化させることができる。このプリプレグ部材を硬化させるのに今日利用されるのはいわゆるオートクレーブ、つまり排気された部材の完全硬化を達成するために場合によっては(10バール以下の)ゲージ圧で数時間にわたって加熱される炉である。
【0005】
このような部材では通例一方で重量が重要な位置を占めるが、しかしこのような部材の耐荷能力に対する厳しい要求条件を無視できない事実に鑑み、面積の大きいこれらの部材は通例、各種のウエブによって強化される。これらのウエブは以下で特に、飛行機製造において「ストリンガ」、「リブ」と称される部材の上位概念として使用される。これらの「ストリンガ」は例えば30mm以下の範囲のウエブ高さを有し、所定の伸長方向で部材の面全体にわたって直線的に、特に互いに平行に延びている。さらに、円筒形部材の場合フレームとも称される一層大きないわゆる「リブ」が大抵の場合規則的間隔を置いて配置され、これらのリブはストリンガと一緒に格子の態様で平面部材に載置されてこれと結合されている。平面部材の部分面、つまり平面部材が通例実質的にプリプレグ材料層のみで形成されている部分面は、ウエブのこれらの配置によって規定される。ところでここでも利用時に発生する諸力を捕捉するには十分な強度を実現する必要があり、このため相応数のプリプレグ材料層が利用されるが、しかしこれは所要の座屈剛性を確実には保証しない。この理由から通例、大きな構造様式の飛行機部材では、4mm超の十分な材料厚を達成するために数多くの層、例えば約30の層が利用される。層の数が強度のみに準じて設計されるなら、座屈剛性用に必要な厚さは著しく下まわることになろう。そして安定性が損なわれ、つまり平面部材が望ましくないことにしわ状に面から局所的に突出して変形することがある。こうしてモノリシックに実施された部材の場合、安定性の理由から強度に関して部材が過寸法に設計される虞がしばしば生じ、こうして軽量構造の潜在能力が利用されなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのことを前提に本発明の課題は、先行技術に関連して述べた諸問題を少なくとも一部でも解決することである。特に、重量を低減され、しかし同時に座屈剛性を改善された平面部材が明示されねばならない。それに加えて、このような平面部材を製造するための簡単で安価な方法が明示されねばならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの課題は、請求項1の特徴による平面部材と請求項7の特徴による航空機の平面部材を製造するための方法とで解決される。本発明のその他の有利な諸構成はそれぞれ従属させて作成された請求項に明示されている。指摘しておくなら、請求項のなかで個々に列挙された特徴は技術的に有意義な任意の仕方で互いに組合せることができ、本発明のその他の諸構成を示している。明細書は特に図に関連しても本発明を解説し、付加的実施例を明示するものである。
それによれば本発明は、繊維強化複合材料から成る航空機の平面部材であって、平面部材が材料厚を備えた面を形成し、かつ少なくとも1つの所定ビード高さの補強ビードを備えて実施されており、ビード高さが最大10mmであるものに関する。
【0008】
平面部材は特に航空機の翼面、操縦翼面および/または外板を構成するのに役立ち、平面部材自体はこれら航空機構成要素の内部に配置しまたは一体化しておくこともできる。冒頭の注釈をここで材料に関して参照するように指示する。やはり繊維強化複合材料で製造される補強ビードを設けると平面部材の安定性が高まる。補強ビードは、平面部材に対して垂直な面として20mm〜30mmの最低高さで実施される公知のストリンガまたはリブと比較可能でない。補強ビードは実質的に、平面構造を有するのでなく、むしろ突起の態様の太めの円形、楕円形横断面を有する。従って、少なくとも面に垂直な1方向もしくは材料厚の方向に存在する最大ビード高さは10ミリメートルであり、あるいは最大5ミリメートルにすぎない。
好ましくはさらに繊維強化複合材料から成る本発明に係る航空機平面部材は、平面部材が材料厚を有することになる面を形成し、かつ平面部材の部分面を規定するウエブ高さを備えたウエブを有するように作製されており、少なくとも1つの部分面は隣接ウエブ間で部分面にわたって延びるビード高さを有する少なくとも1つの補強ビードを備えて実施されている。
【0009】
この平面部材は特に、冒頭に述べたような繊維強化複合材料から成る部材である。ウエブの配置およびその構成に関しても冒頭を参照するように指示する。ところで安定性不備(座屈)に対処し、同時に薄いモノリシックな材料厚を可能とするために、少なくとも1つの部分面に、場合によってはすべての部分面にも、補強ビードが設けられる。場合によっては、複数の補強ビードを1つの部分面に一体化することも可能である。このような補強ビードは基本的に部分面にわたって延びており、特別好ましくは補強ビードは部分面の1つの隅領域から部分面の反対側隅領域まで延びている。複数の補強ビードが設けられている場合、補強ビードは少なくとも部分的に互いに平行におよび/または互いに斜めに配置しておくことができる。さらに、特に規則的である一種の骨組みおよび/またはパターンを補強ビードで形成することも可能であり、つまりこうして補強ビード間の中間領域が概ね同じ大きさである。補強ビードは好ましくは平面部材の片側にのみ形成し、つまり例えばウエブも配置されている側に形成されている。ビード高さ、つまり例えば補強ビードの直径は、ウエブ高さと比べて(特にストリンガを基準に)著しく低く実施されており、つまり部分面を取り囲むウエブのウエブ高さの例えば最大15%である。こうして補強ビードが平面部材の局所的に厚くなった領域を形成し、これらの領域が座屈に対抗する。こうして部分面の残りの領域は材料厚を低減して実施しておくことができる。この構造様式では結果として、補強ビードなしのモノリシック構造様式の平面部材を基準に同じ座屈挙動において30%までの重量節減を達成することができる。
【0010】
平面部材の好ましい1実施形態によれば少なくとも面と少なくとも1つの補強ビードがモノリシックに実施されている。特に平面部材のいわゆる「表皮」となる面は例えば、カーボン繊維強化複合材料から成るプリプレグ材料層で製造されている。その際、補強ビードもカーボン繊維強化複合材料から形成されている。製造プロセスの枠内でこれらの要素は次に、顕著な材料移行部をもはや判別させないように、つまり特にモノリシックに(換言するなら一体に)形成されているように互いに結合もしくは硬化される。面と少なくとも1つの補強ビードを相互に異なる材料で準備することが基本的に可能であるとしても、ここではしかし材料は少なくとも十分に一致しているのが望ましい。特に、補強ビードは少なくとも90重量%が面と同じ材料を有する。
【0011】
さらに、1つの部分面の複数の補強ビードが重なり合うと有利であると見做される。これは換言するなら特に、(通常直線状に配置される)補強ビードが交差することを意味する。ビード総高さは両方の補強ビードの重なり領域において(例えばほぼ倍に)増大することがあるが、しかし1つの補強ビードを別の領域へと接近させ、重なり領域では低減させ、重なり合う補強ビードのビード総高さを個々の補強ビードのビード高さに概ね一致させることも可能である。さらに、重なり合う補強ビードを有する少なくとも1つのこのような領域が1つの部分面において実現されていると好ましい。
さらにここでは、ビード高さが少なくとも材料厚に一致し(等しくまたは大きく)、ウエブ高さよりも低いと有利であると見做される。材料厚に関してここで有意義であると見做されるのは例えば3.5mm未満の範囲、つまり例えば3mm未満の範囲、特に約2mmである。材料厚は相応する(低減された)数のプリプレグ材料層で形成される。
【0012】
既に冒頭で述べたように、ウエブ(ストリンガ)はウエブ高さが平均して20mm超、つまり例えば約30mmである。ところでここでは、材料厚およびウエブ高さに関して中間範囲のビード高さを配置しておくことが提案される。その際まったく特別に好ましいビード高さは材料厚の少なくとも2倍であり、場合によっては材料厚の少なくとも5倍、または10倍に一致さえしている。概ね半円形横断面の補強ビードがまったく特別であると判明した。面の材料厚方向においてビード高さは好ましくは2〜4mmである。材料厚に垂直にビード高さは例えば10mm以下とすることができる。単に完全を期す意味でここで指摘しておくなら、補強ビード横断面のこのような構成は強制的なものでなく、平面部材のその都度の負荷および/または形状への適合も異なる形姿をもたらすことがある。横断面形状および/またはビード高さに関してさまざまな補強ビードを設けることも同様に可能である。
【0013】
平面部材の1構成によれば、少なくとも1つの補強ビードが支持構造で取り囲まれている。この支持構造は特に、製造プロセス中(およびその後に)補強ビードの所望する横断面形状もしくはビード高さを維持する働きを有する。支持構造は例えば織布、網等の態様で実施しておくことができ、少なくとも1つの補強ビードを少なくとも部分的に(しかし好ましくは完全に)取り囲むことができる。支持構造は例えば、(少なくとも製造中)補強ビードの形状を安定させる単数または複数の繊維を有することができる。製造中このような補強ビードは例えば、乾燥または予備含浸して束ねられた複数のカーボン繊維ストランドを有する。その際、支持構造の繊維は異なる材料で形成しておくことができ、その際考慮に値するのは特にガラス繊維および/またはアラミド繊維である。その限りでこの支持構造は平面部材の重合後にもそれ自体として判別できるが、しかし面および/または補強ビードの材料と緊密に結合されている。
【0014】
本発明の他の1観点によれば航空機の平面部材を製造するための方法も提案され、この方法は少なくとも、
a)硬化性材料の複数層を積層して面を形成する工程;
b)硬化性材料の少なくとも1つの補強ビードをこの面上に配置する工程;
c)面と少なくとも1つの補強ビードとを一緒に硬化させてモノリシック平面部材とする工程を含む。
本発明に係るこの方法は特に本発明に係る平面部材を製造するのに役立つ。
工程a)では特に複数層のカーボン強化基材が利用される。カーボン繊維は好ましくは、出発状態のときエンドレスな長繊維として実施されており、これらの長繊維は部材内に層状に、場合によっては繊維長手方向を多様に整列させて、配置されている。幾つかのこのような層は次に上下および/または左右で支持台上に位置決めすることができ、面は特にその形姿を湾曲させて形成されている。この面は数平方メートルの寸法を有することがあり、特に(僅かに)湾曲した形状を有する。積層体の形成は特に、表面の所望輪郭もしくは形姿を形成する片面金型内で行われる。
【0015】
工程a)に合せて、またはその後でも、いまや補強ビードは(硬化状態または未硬化状態で)面上に配置される。工程a)および/またはb)と同時にウエブを形成することも基本的に可能であるが、しかしこれは必ずしも必要でない。ウエブは硬化した部材に追加的に固着(接着)することもできる。補強ビードの配置は、平面部材に要望される要求条件に応じて上記整列もしくは前記パターンで行われる。ここで指摘しておくなら、層および/または補強ビードは場合によってはなお個別に処理(例えば含浸)して最終的に硬化させることができる。従って「硬化性材料」との用語は場合によっては、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維から成る乾燥した繊維半製品もしくはストランド等の(未)含浸中間製品も含む。
工程c)による面の硬化は好ましくは熱的に、真空ゲージ圧で行われる。補強ビードが面と直接接触しているので、硬化によって平面部材のモノリシックな一体構成が得られる。
【0016】
少なくとも1つの補強ビードが下記プロセスの少なくとも1つで用意される方法も有利であると見做される:
‐多数の硬化性材料ストランドをねじる;
‐複数の硬化性材料ストランドを束ねる;
‐多数の硬化性材料ストランドを相互に固定させる;
‐多数の硬化性材料ストランドを支持構造に配置する。
上記プロセスは特に、製造時に補強ビードの取り扱いを容易とし、および/または硬化中も補強ビードの(横断面または長手方向の)形状を実質的に維持できることに焦点を合せている。ここで例えば、互いにねじられもしくは相互に撚り合わせた多数の(好ましくはカーボン繊維から成る)ストランドで補強ビードを用意することが提案される。幾つかの事例では、ストランドが例えば織布の態様で互いに固定されていると有意義なこともある。さらに、複数の硬化性材料ストランドを束ねて補強ビードとすることも可能であり、場合によってはこれは好適な表面処理剤を介して行うこともできる。ストランドの数は平面部材の面上の補強ビードの所望する形姿を考慮して選択することができる。必要なら、多数の硬化性材料ストランドを互いに固定するために、付加的手段も利用することができ、これらの手段はストランドと同じ材料またはやはり適した材料で実施しておくことができる。最後に、好適な支持構造を介して多数のストランドを精確な形状に保つことも有利であり、この支持構造はまさに上記工程c)に悪影響を及ぼすべきではない。つまり支持構造は例えば、ストランドを取り囲む網として、または(硬化性材料、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維から成る)繊維基本構造に対する固定繊維としても、実施しておくことができる。
【0017】
さらに、層および少なくとも1つの補強ビードの硬化性材料に工程a)、b)で樹脂を含浸させることも有利であると見做される。これは換言するなら、その際特にいわゆるプリプレグ材料、つまりカーボン繊維から成る合成樹脂含浸織布または別の繊維成形体(予備成形体)が利用されることも意味する。樹脂として考慮に値するのは特に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂またはポリエステル樹脂のうちの1つである。
さらに、工程c)をオートクレーブ内で実施すると有利であると見做される。そのことから、このような平面部材を製造するのに公知の技術および金型に頼る可能性が得られる。いずれにしても製造時に別の多くのプロセスもその際に利用することができ、RTM(resin transfer molding樹脂移送成形法)またはVARI(vacuum assisted resin infiltrated真空支援樹脂注入法)等の溶浸法が例として挙げられる。
【0018】
特に航空機が本発明によりここに述べる種類の少なくとも1つの平面部材を有し、この平面部材が場合によっては本発明によるこの製造法で作製される場合、本発明の諸利点、特に平面部材の重量低減は確認することができる。航空機として考慮に値するのは特に旅客機またはヘリコプタである。
ここに明示した平面部材もしくは提案されたその製造方法でもって、一連の顕著な利点を達成することができる。例えば部材の簡単な検査、特に超音波による非破壊分析が可能である。それに加えて、平面部材の製造はオートクレーブ内で単一の作業過程で行うことができる。それと並んで、数、種類および/または位置に関して補強ビードの応用を用途に即してもしくは負荷に応じて(そして場合によっては自動的にさえ)行うことができることも無視できない。
本発明と技術分野は以下で図に基づいて詳しく説明される。指摘しておくなら、図に示した実施形態は好ましいものではあるが、しかし本発明はそれらに限定されるものでない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】平面部材の部分横断面図である。
【図2】補強ビードの第1実施形態を示す。
【図3】補強ビードの第2実施形態を示す。
【図4】補強ビードの第3実施形態を示す。
【図5】平面部材の斜視図である。
【図6】航空機を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は後に航空機において利用することのできる平面部材1の細部を略横断面で示す。図1の下側に面3が示してあるが、しかしここでは面の左右を短縮して示している。面3は例えば寸法3m×10mのエリアを形成する。この面3を構成もしくは製造するために、予備含浸カーボン繊維織布から成る多数の層11がここで利用される。これらの層が製造中上下および左右に配置され、希望する種類の材料厚4が最終的に達成され、材料厚4は好ましくは3.5mm未満である。ここでは面3が実質的に平らに示してあるが、しかし面は通例湾曲している。
面3を補強するために片側(ここでは上側)に多数のウエブ5(ストリンガ)が設けられており、これらのウエブが所定のウエブ高さ6を形成する。例えば補強ビードと層11を一緒に硬化させたのちにはじめてウエブ5が接合されることを表現するために、図1にはウエブ5が示唆してあるだけである。それにもかかわらず、面3を基準にこれらウエブ5の姿勢もしくは位置が事前に既知であり、ウエブ5の間の部分面7は識別することができる。例えば300mm×200mm範囲内の寸法であるまさにこれらの部分面7にいまや好ましくは(ここには単一の補強ビード8が示してあるだけであるとしても)多数の補強ビード8が設けられている。図1では補強ビード8がウエブ5と平行に延び、部分面7全体にわたって延設されている。補強ビード8はビード高さ9を有するほぼ半円形横断面を備えている。その際認めることができるように、ビード高さ9は材料厚4よりも大きいがウエブ高さ6よりも小さい範囲内にある。
【0021】
図2、図3、図4は、平面部材を製造するのに利用することのできる補強ビードの異なる実施形態を示す。補強ビードは特に多数の硬化性材料ストランド12、特に(含浸)炭素繊維である。図2ではストランド12が螺線状に互いにねじられ、こうして単独で所望のビード高さ9を形成する。明白なことであるが、まさにオートクレーブ内で製造時に補強ビード8の変形がはじまることがあり、出発材料のビード高さ9は通例、硬化性平面部材のビード高さ9よりも大きい。
図3ではストランド12が互いに平行に整列し、但しストランド12を束ねる網状支持構造10によって取り囲まれている。支持構造10は例えば多数のガラス繊維またはアラミド繊維で形成しておくことができる。図3では支持構造が織布もしくは組物またはラッピングの態様で実施されているのに対して、図4は平面的繊維基本構造14上で互いに平行に整列したストランド12の配置を示している。支持構造10の繊維13はストランド12に張り渡して基本構造14(例えばカーボン繊維、高分子繊維および/またはガラス繊維を含む)と結合されている。補強ビード8のこれら3つの実施形態は製造時にごく容易に取り扱うことができ、形状安定的にかつ正確に平面部材の部分面の所望箇所に位置決めすることができる。このことがあてはまるのは特に、補強ビードおよび/または面(の層)が既に樹脂を予備含浸され、これにより面上での位置決めが容易となる場合である。
次に図5には他の平面部材1が斜視図で示してある。認めることができるように、面3は両側15でウエブ5によって多数の部分面7に区分されている。この実施形態ではウエブ5と同じ側15に付加的に補強ビード8が設けられている。しかし2つの交差する補強ビード8が各部分面7内に設けられ、補強ビードがそれぞれ部分面7の境界に対して対角線上で直線的に配置されているように、配置はなされている。
【0022】
次に図6は旅客機の態様の航空機2を示しており、本発明によりいまや著しく軽量化して提供することのできるさまざまな平面部材1が強調されている。平面部材1は例えば胴体部17の流体面16または構成要素を形成する。さらに、例えば原動機外板の構成要素および/または航空機2の機首の構成要素もこうして製造することができる。はっきり認めることができるように、航空機2の面積の大きい一次構造部材は本提案方法で既に製造することができ、同様に航空機2の重量は著しく低減させることができる。そのことに伴う低い燃料消費および/または高い積載質量が本発明の主要な諸利点である。
【符号の説明】
【0023】
1 平面部材
2 航空機
3 面
4 材料厚
5 ウエブ
6 ウエブ高さ
7 部分面
8 補強ビード
9 ビード高さ
10 支持構造
11 層
12 ストランド
13 繊維
14 基本構造
15 側
16 流体面
17 胴体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化複合材料から成る航空機(2)の平面部材(1)であって、前記平面部材は材料厚(4)を有する面(3)を形成し、かつ所定ビード高さ(9)を有する少なくとも1つの補強ビード(8)を備えて実施されており、前記ビード高さ(9)が最大10mmである平面部材。
【請求項2】
平面部材は前記平面部材(1)の部分面(7)を規定するウエブ高さ(6)を有するウエブ(5)を有し、少なくとも1つの前記部分面(7)はビード高さ(9)を有する前記少なくとも1つの補強ビード(8)を備えて実施されており、前記補強ビードは前記ウエブ(5)の間で前記部分面(7)にわたって延びている請求項1記載の平面部材(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの面(3)と前記少なくとも1つの補強ビード(8)がモノリシックに実施されている請求項1または2記載の平面部材(1)。
【請求項4】
前記1つの部分面(7)の複数の前記補強ビード(8)が重なり合う請求項1乃至3のいずれか1項記載の平面部材(1)。
【請求項5】
前記ビード高さ(9)が少なくとも前記材料厚(4)に一致し、かつ前記ウエブ高さ(6)よりも低い請求項1乃至4のいずれか1項記載の平面部材(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの補強ビード(8)が支持構造(10)で取り囲まれている請求項1乃至5のいずれか1項記載の平面部材(1)。
【請求項7】
航空機(2)の平面部材(1)を製造するための方法であって、
a)硬化性材料の複数層(11)を積層して面(3)を形成する工程;
b)硬化性材料の少なくとも1つの補強ビード(8)を前記面(3)上に配置する工程;
c)前記面(3)と前記少なくとも1つの補強ビード(8)とを一緒に硬化させてモノリシック平面部材(1)とする工程を少なくとも含む方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの補強ビード(8)が、
‐多数の硬化性材料ストランド(12)をねじる;
‐複数の前記硬化性材料ストランド(12)を束ねる;
‐多数の前記硬化性材料ストランド(12)を相互に固定させる;
‐多数の前記硬化性材料ストランド(12)を支持構造(10)に配置する
以上のプロセスの少なくとも1つで準備される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記層(11)および前記少なくとも1つの補強ビード(8)の前記硬化性材料が工程a)、b)において樹脂を含浸されている請求項7または8のいずれか記載の方法。
【請求項10】
工程c)がオートクレーブ内で実行される請求項7乃至9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の、または請求項7乃至10のいずれか1項記載の方法に従って製造された少なくとも1つの平面部材(1)を有する航空機(2)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−510395(P2012−510395A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537956(P2011−537956)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065764
【国際公開番号】WO2010/060908
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(509016575)ジーケイエヌ エアロスペース サービシイズ リミテッド (11)
【Fターム(参考)】